(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】充放電要素の充放電制御方法、及び充放電要素の充放電制御装置
(51)【国際特許分類】
H02J 3/32 20060101AFI20241003BHJP
H02J 3/14 20060101ALI20241003BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20241003BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H02J3/32
H02J3/14 130
H02J13/00 311R
H02J7/00 P
H02J7/00 B
(21)【出願番号】P 2021019966
(22)【出願日】2021-02-10
【審査請求日】2023-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健太
【審査官】小林 秀和
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-099173(JP,A)
【文献】国際公開第2020/194010(WO,A1)
【文献】特開2012-249487(JP,A)
【文献】特開2012-249500(JP,A)
【文献】国際公開第2013/030937(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/32
H02J 3/14
H02J 13/00
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の充放電要素が電線の上流側始点から前記電線の下流側終点までの間の異なる位置に接続された電力系統において、前記複数の充放電要素に含まれる1の充放電要素が充電又は放電する電力を制御する充放電制御方法であって、
前記複数の充放電要素に対して同報送信された、充電又は放電を要求する信号を受信し、
他の充放電要素の充電又は放電よりも自己の充電又は放電が優先される度合いを示す前記1の充放電要素の優先度を設定し、
前記電線の上流側始点から前記電線の下流側終点までの第1の電位差に対する、前記電線の上流側始点から前記1の充放電要素が接続された前記電線の位置までの第2の電位差の割合が大きいほど、前記優先度を下げるように補正し、
前記信号及び補正した前記優先度に基づいて前記電力を制御する、
充放電要素の充放電制御方法。
【請求項2】
前記電線の下流側終点の電圧が、予め定められた制限範囲から逸脱する場合、前記補正した優先度に基づいて前記電力を制御し、
前記電線の下流側終点の電圧が、予め定められた制限範囲から逸脱しない場合、補正する前の前記優先度に基づいて前記電力を制御する
請求項1に記載の充放電要素の充放電制御方法。
【請求項3】
前記電線の上流側始点の電圧及び前記電線の下流側終点の電圧に基づく基準電圧を示す情報を取得し、
前記第2の電位差が、前記電線の上流側始点の電圧から前記基準電圧までの電位差よりも大きい場合には、前記優先度を下げるように補正する、
請求項1又は2に記載の充放電要素の充放電制御方法。
【請求項4】
前記電線の上流側始点の電圧と前記電線の下流側終点の電圧を示す信号を受信し、
前記1の充放電要素が接続された前記電線の位置の電圧を計測し、
前記電線の上流側始点の始点電圧、前記電線の下流側終点の終点電圧、及び前記1の充放電要素が接続された前記電線の位置の自己電圧に基づいて、前記優先度を補正する
請求項1又は2に記載の充放電要素の充放電制御方法。
【請求項5】
前記始点電圧から前記自己電圧までの電位差が前記自己電圧から前記終点電圧までの電位差よりも大きい場合、前記優先度を下げるように補正し、
前記始点電圧から前記自己電圧までの電位差が前記自己電圧から前記終点電圧までの電位差以下である場合、前記優先度を上げるように補正する
請求項4に記載の充放電要素の充放電制御方法。
【請求項6】
前記始点電圧から前記終点電圧までの範囲をm個(mは2以上の自然数)の領域に分割し、前記自己電圧が属する領域に応じて、前記優先度を補正する
請求項4に記載の充放電要素の充放電制御方法。
【請求項7】
複数の充放電要素が電線の上流側始点から前記電線の下流側終点までの間の異なる位置に接続された電力系統において、前記複数の充放電要素に含まれる1の充放電要素が充電又は放電する電力を制御する充放電制御装置であって、
前記複数の充放電要素に対して同報送信された、充電又は放電を要求する信号を受信する受信装置と、
他の充放電要素の充電又は放電よりも自己の充電又は放電が優先される度合いを示す前記1の充放電要素の優先度を設定する優先度算出部と、
前記電線の上流側始点から前記電線の下流側終点までの第1の電位差に対する、前記電線の上流側始点から前記1の充放電要素が接続された前記電線の位置までの第2の電位差の割合が大きいほど、前記優先度を下げるように補正する優先度補正部と、
前記信号及び補正した前記優先度に基づいて前記電力を制御する充放電制御部と
を備える充放電要素の充放電制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充放電要素の充放電制御方法、及び充放電要素の充放電制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電力系統から受電する複数の需要家のうちの一部又は全部の需要家に設けられ、電動車両に搭載された走行用の蓄電池の充電及び放電を制御する制御装置が国際公開第2015/001767号に開示されている。この制御装置は、電力系統の電圧が制限範囲の上限値を超えると予測される対策期間において、電力系統の電圧が制限範囲を維持するように蓄電池の充電を指示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
各需要家は、電線上の自己の受電端電圧を把握することはできるが、同じ電線の異なる位置に接続された他の需要家の受電端電圧を把握することはできない。このため、他の需要家の受電端電圧が、電圧系統の電圧の制限範囲を逸脱しても、前記した需要家はそれを検知することはできない。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みて成されたものであり、その目的は、複数の充放電要素に対して同報送信された充電又は放電の要求に応えつつ、電線の電圧が所定の制限範囲を逸脱することを抑制する充放電要素の充放電制御方法及び充放電要素の充放電制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係わる充放電要素の充放電制御方法は、複数の充放電要素が電線の上流側始点から前記電線の下流側終点までの間の異なる位置に接続された電力系統において、複数の充放電要素に含まれる1の充放電要素が充電又は放電する電力を制御する。複数の充放電要素に対して同報送信された、充電又は放電を要求する信号を受信し、他の充放電要素よりも自己が優先される度合いを示す1の充放電要素の優先度を設定し、上流側始点から下流側終点までの第1の電位差に対する、上流側始点から1の充放電要素が接続された電線の位置までの第2の電位差の割合が大きいほど、優先度を下げるように補正し、信号及び補正した優先度に基づいて、1の充放電要素が充電又は放電する電力を制御する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、複数の充放電要素に対して同報送信された充電又は放電の要求に応えつつ、電線の電圧が所定の制限範囲を逸脱することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係わる充放電制御装置をそれぞれ搭載した電気自動車EV1~EV10、及び電気自動車EV1~EV10が接続された電力系統の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、
図1に示した電気自動車EV1~EV10の各々に搭載された充放電制御装置23及びその周辺装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、
図2の充放電制御装置23による充放電制御方法の一例を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、第1実施例に係る電線17上の電圧の分布を示すグラフである。
【
図5】
図5は、第2実施例に係る電線17上の電圧の分布を示すグラフである。
【
図6】
図6は、第3実施例に係る電線17上の電圧の分布を示すグラフである。
【
図7A】
図7Aは、電気自動車(EV1~EV10)の各々が3kWの充電を行っている時の電線17上の電圧の分布を示すグラフである。
【
図7B】
図7Bは、電気自動車(EV1~EV10)の各々が6kWの充電を行っている時の電線17上の電圧の分布を示すグラフである。
【
図7C】
図7Cは、電気自動車(EV1~EV10)の各々が4kWの充電を行っている時の電線17上の電圧の分布を示すグラフである。
【
図8A】
図8Aは、電線17aに接続された電気自動車(C1~C10)が一斉に充電を行い、電線17bに接続された電気自動車(D1~D10)が一斉に放電を行った状態を示すブロック図である。
【
図8B】
図8Bは、電気自動車(C1~C10)が接続された電線17a上の電圧の分布を示すグラフである。
【
図8C】
図8Cは、電気自動車(D1~D10)が接続された電線17b上の電圧の分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面を参照して、実施形態及びその変形例、実施形態又はその変形例を適用した具体的な実施例を説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0010】
(電力系統)
図1を参照して、実施形態に係わる充放電制御装置をそれぞれ搭載した電気自動車EV1~EV10、及び電気自動車EV1~EV10が接続された電力系統の構成を説明する。
【0011】
電気自動車EV1~EV10(充放電要素の一例)は、実施形態に係わる充放電制御装置をそれぞれ搭載し、共通の電線17を介して電力網14に電気的に接続されている。電気自動車EV1~EV10は、電線17を介して、電力網14から電力を受電(充電)し、且つ電力網14へ電力を送電(放電)することができる。充放電制御装置の各々は、自らが搭載された電気自動車EV1~EV10が充放電する電力(充放電電力)を自律的に制御する。
【0012】
電気自動車EV1~EV10は、電線17の上流側始点(Ps)から電線17の下流側終点(Pe)までの間の電線17上の異なる位置に接続されている。つまり、電線17上の受電端の位置は電気自動車EV1~EV10の間で異なっている。電線17の上流側始点(Ps)の側から見て、電気自動車EV1~EV10の順番で接続されている。電線17の上流側始点(Ps)は、電流計測装置16及び変圧器15を介して電力網14に接続されている。電気自動車EV1~EV10は、上流側始点(Ps)側から電力を受電し、上流側始点(Ps)側に向けて電力を送電する。
【0013】
電流計測装置16は、電線17に流れる電流を計測し、計測した電流及び電線17の電圧に基づいて、電線17を経由して電気自動車EV1~EV10全体が充電又は放電している総充放電電力の現在値(Pall_now)を算出する。変圧器15の一例として、高圧配電線路に印加されている電圧を家庭や事務所等で使用する電圧に変更する柱上変圧器(ポールトランス)が挙げられる。
【0014】
電線17の上流側始点(Ps)には、電圧計18が接続されている。電圧計18は、上流側始点(Ps)における電線17の電圧を計測する。電線17の下流側終点(Pe)には、電圧計19が接続されている。電圧計19は、下流側終点(Pe)における電線17の電圧を計測する。
【0015】
ここで、電力系統とは、電力の流れを供給側・需要側の両方から制御し、最適化できる電力システムであって、スマートグリッド、スマートコミュニティ、及び、事業所や工場などの限られた範囲でエネルギー供給源から末端消費部分を通信網で管理するマイクログリッド又はBEMS(Building Energy Management System)を含む概念である。電力系統には、
図1に示す電力網14、電流計測装置16、変圧器15、電線17が含まれる。電力網14には、火力、原子力、水力などの各種発電所、及び数十万ボルト(V)から数千Vへ電圧を変圧する変電所が含まれる。さらに、電力系統に、電圧計18及び電圧計19が含まれていても構わない。
【0016】
実施形態において、電力系統には、電圧情報送信装置11が更に含まれる。電圧情報送信装置11は、電力の流れを供給側・需要側の両方から制御し、最適化するコンピュータ又はサーバであって、コンピュータネットワークを介して、電流計測装置16、電圧計18及び電圧計19に接続されている。或いは、電力網14を介して電流計測装置16、電圧計18及び電圧計19から各種の電力情報を取得してもよい。
【0017】
電圧情報送信装置11は、電力系統から供給される各種の電力情報に基づいて、電気自動車EV1~EV10全体へ充電又は放電を要求する信号を生成する計算部12と、計算部12が生成した信号を電気自動車EV1~EV10に対して同報送信する同報送信部13a及び同報送信装置13bとを有する。
【0018】
電気自動車EV1~EV10全体へ充電又は放電を要求する信号には、電気自動車EV1~EV10全体に対する充電又は放電の要求、すなわち「系統要求」が含まれる。系統要求とは、例えば、総充放電電力の最大値(Pall_max)から総充放電電力の現在値(Pall_now)を減した差分電力(△P)である。総充放電電力の最大値(Pall_max)は、電線17を介して電気自動車EV1~EV10全体が充電又は放電することできる電力量の最大値である。総充放電電力の現在値(Pall_now)は、電線17を介して電気自動車EV1~EV10全体が充電又は放電している電力量の現在値である。
【0019】
計算部12は、(1)式に示すように、総充放電電力の最大値(Pall_max)から総充放電電力の現在値(Pall_now)を減ずることにより差分電力(△P)を算出する。電力系統が電気自動車EV1~EV10に対して充電を要求している状況において、計算部12は、電線17が電気自動車EV1~EV10全体に送電することができる総充電電力の最大値から、電線17を経由して電気自動車EV1~EV10全体に送電している総充電電力の現在値を減ずることにより差分電力(△P)を算出する。一方、電力系統が電気自動車EV1~EV10に対して放電を要求している状況において、計算部12は、電線17が電気自動車EV1~EV10全体から受電することができる総放電電力の最大値から、電線17を経由して電気自動車EV1~EV10全体から受電している総放電電力の現在値を減ずることにより差分電力(△P)を算出する。差分電力(△P)は、0以上の正の値であり、充電の差分電力(△P)及び放電の差分電力(△P)を含む概念である。
【0020】
なお、電力系統が電気自動車EV1~EV10に対して充電又は放電を要求している状況は、電力系統における電力の需給バランスに応じて変化する。電圧情報送信装置11は、総充放電電力の最大値(Pall_max)を示すデータを予め記憶した記憶装置を備え、計算部12は、記憶装置から読み出した総充放電電力の最大値(Pall_max)を示すデータを用いて差分電力(△P)を算出する。差分電力(△P)の算出方法として、国際公開第2020/194010号に開示された方法を用いることができる。
【0021】
【0022】
電圧情報送信装置11は、電圧計18が計測した上流側始点(Ps)における電線17の電圧(始点電圧:Vini)を示す信号(各種の電力情報の一例)と、電圧計19が計測した電線17の下流側終点(Pe)における電線17の電圧(終点電圧:Vend)を示す信号(各種の電力情報の一例)とを、コンピュータネットワーク又は電力網14を介して受信する。計算部12は、始点電圧(Vini)及び終点電圧(Vend)に基づいて、電線17に係る電圧情報(Vinfo)を生成する。電線17に係る電圧情報(Vinfo)の具体例については後述する。
【0023】
同報送信部13aは、同報送信装置13bを用いて、差分電力(△P)及び電線17に係る電圧情報(Vinfo)を示す電気信号を、全ての電気自動車(EV1、EV2、EV3、・・・、EV10)に対して、同報送信(ブロードキャスト)する。同報送信の方法としては、Wi-Fi(ワイファイ:登録商標)のような無線LAN(Local Area Network)又はBluetooth(登録商標)を用いることができる。
【0024】
実施形態において、「電気自動車EV1~EV10」は、電線17を経由して電力を充放電する「充放電要素」の一例である。充放電要素は、受電した電力をバッテリ(二次電池、蓄電池、充電式電池を含む)に蓄える。「充放電要素」には、車両(電気自動車、ハイブリッド車、建設機械、農業機械を含む)、鉄道車両、遊具、工具、家庭製品、日用品など、バッテリを備える、あらゆる機器及び装置が含まれる。実施形態において、充放電要素の一例として、電気をエネルギー源とし、モータを動力源として走行する電気自動車(EV)を挙げる。しかし、本発明における充放電要素を電気自動車(EV)に限定することは意図していない。
【0025】
「充放電要素」は、実施形態に係る充放電制御装置による充放電制御の単位構成を示す。即ち、充放電要素を単位として実施形態に係わる充放電制御が行われる。例えば、複数の電気自動車(EV1、EV2、EV3、・・・)の各々について、互いに独立して並列に充放電制御が行われる。
【0026】
(電気自動車)
図2を参照して、電気自動車EV1~EV10の各々に搭載された充放電制御装置23及びその周辺装置の構成を説明する。なお、以後、電気自動車EV1~EV10のうち、電気自動車EV1(1の充放電要素の一例)を例にとり、説明するが、その他の電気自動車EV2~EV10も同様な構成を有し、同様に動作することができる。
【0027】
電気自動車EV1には、充放電制御装置23の周辺装置として、受信装置21、車両状態取得装置22、充放電装置24、モータ26、及びバッテリ25が搭載されている。
【0028】
受信装置21は、同報送信装置13bから同報送信された電気信号(無線信号)を受信する装置である。受信装置21が受信する電気信号には、電気自動車EV1~EV10全体へ充電又は放電を要求する信号、及び電線17に係る電圧情報(Vinfo)が含まれる。電気自動車EV1~EV10全体へ充電又は放電を要求する信号には、系統要求の一例としての差分電力(△P)の情報が含まれる。
【0029】
車両状態取得装置22は、電気自動車EV1の状態を表す情報を取得する。例えば、「電気自動車EV1の状態」には、電気自動車EV1が備えるバッテリ25の充電率の現在値(SOCnow)、及び電気自動車EV1のユーザの要求を表す数値が含まれる。電気自動車EV1のユーザの要求を表す数値は、例えば、バッテリ25の充電率の目標値(SOCgoal)、及び電気自動車EV1の充放電を終了する時刻(充放電の終了時刻Td)である。終了時刻Tdまでの残り時間(T)は、電気自動車EV1が充放電を行うことができる残り時間である。
【0030】
充放電装置24は、オンボードチャージャー(OBC)であって、充放電制御装置23による制御の下で、電線17を介してバッテリ25の充放電を実行する。充放電装置24は、受電した電力をバッテリ25に蓄える。或いは、充放電装置24は、受電した電力を、バッテリ25に蓄えず、駆動源としてのモータ26へ直接送電しても構わない。一方、充放電装置24は、バッテリ25に蓄えられている電力又はモータ26が発電した電力を、電線17を介して電力網14へ放電する。
【0031】
充放電装置24は、電圧計24aを備える。電圧計24aは、電気自動車EV1が接続された電線17上の位置の電圧である受電端電圧(V1)を計測する。電気自動車EV1が接続された電線17上の位置を、電気自動車EV1の「受電端」と呼ぶ。
【0032】
バッテリ25は、充放電装置24が受電した電力を蓄える二次電池、蓄電池、充電式電池を含む。モータ26は、バッテリ25が蓄える電気エネルギー又電力に基づいて駆動する電気自動車EV1の駆動源である。
【0033】
充放電制御装置23は、CPU(中央処理装置)、メモリ、及び入出力部を備えるマイクロコンピュータを用いて実現可能である。マイクロコンピュータを充放電制御装置23として機能させるためのコンピュータプログラムを、マイクロコンピュータにインストールして実行する。これにより、マイクロコンピュータは、充放電制御装置23が備える複数の情報処理部(31~37)として機能させることができる。ここでは、ソフトウェアによって充放電制御装置を実現する例を示すが、もちろん、各情報処理を実行するための専用のハードウェアを用意して、充放電制御装置23を構成することも可能である。専用のハードウェアには、実施形態に記載された機能を実行するようにアレンジされた特定用途向け集積回路(ASIC)や従来型の回路部品のような装置を含む。
【0034】
なお、充放電制御装置23、受信装置21、車両状態取得装置22、及び充放電装置24を異なる部材として説明したが、勿論、任意に選んだ2以上の装置を1つの装置として構成してもよい。あるいは、複数の情報処理部(31~37)を分割して2以上の異なる装置を用いて構成しても構わない。さらに、複数の情報処理部(31~37)の全てまたは一部を、電気自動車EV1に搭載されたその他のECU(Electronic Control Unit)を用いて構成しても構わない。
【0035】
充放電制御装置23は、以下に示す優先度(β)の補正に係る処理を除くその他の電気自動車EV1の充放電制御に関する処理に対して、国際公開第2020/194010号に開示された受電制御装置が行う処理を適用することができる。
【0036】
充放電制御装置23は、複数の情報処理部(31~37)として、充放電要求取得部31、電圧情報取得部32、終点電圧判断部33、優先度算出部34、優先度補正部35、充放電電力算出部36、及び充放電制御部37を備える。
【0037】
充放電要求取得部31は、受信装置21が受信した電気信号から、系統要求の一例としての差分電力(△P)を示す情報を取得し、電線17に係る電圧情報(Vinfo)を取得する。電線17に係る電圧情報(Vinfo)は、例えば、始点電圧(Vini)、終点電圧(Vend)、及び基準電圧(Vave)が含まれる。平均電圧値(Vave)とは、始点電圧(Vini)と終点電圧(Vend)の平均値を示す。
【0038】
電圧情報取得部32は、電圧計24aにより計測された受電端電圧(V1)を示す情報を取得する。
【0039】
終点電圧判断部33は、充放電要求取得部31により取得された終点電圧(Vend)が、予め定められた制限範囲から逸脱するか否かを判断する。「予め定められた制限範囲」とは、電力系統を正常に動作させるために定められた電線17の電圧の制限範囲(レギュレーション)である。
【0040】
優先度算出部34は、電気自動車EV1のユーザの要求を表す数値及び電気自動車EV1の状態に基づいて、他の電気自動車(EV2、2V3、・・・、EV10)の充電又は放電よりも自己EV1の充電又は放電が優先される度合いを示す電気自動車EV1の優先度(β)を算出する。具体的に、優先度算出部34は、(2)式を用いて、現時刻(To)から充放電の終了時刻(Td)までの残り時間(T)から優先度(β)を算出する。(2)式において、Nは、充放電を行う電気自動車の総数(ここでは、10)を示す。充電率の現在値(SOCnow)及び充電率の目標値(SOCgoal)を用いた優先度(β)の算出方法として、国際公開第2020/194010号に開示された方法を用いることができる。
【0041】
【0042】
優先度補正部35は、優先度算出部34により算出された優先度(β)を、自己EV1の充放電が電線17の電圧の制限範囲からの逸脱に与える影響の大きさに応じて補正する。優先度補正部35は、前記した影響が大きいほど、自己EV1の優先度(β)を下げるように補正する。または、優先度補正部35は、前記した影響が小さいほど、自己EV1の優先度(β)を上げるように補正する。或いは、優先度補正部35は、前記した影響の大きさに応じて優先度(β)を下げる補正と前記した影響の大きさに応じて優先度(β)を上げる補正とを同時に行ってもよい。
【0043】
例えば、前記した影響の大きさを、電線17の上流側始点(Ps)から電線17の下流側終点(Pe)までの第1の電位差(Vini-Vend)に対する、電線17の上流側始点(Ps)から電気自動車EV1が接続された電線の位置(受電端)までの第2の電位差(Vini-V1)の割合で評価することができる。前記した割合が大きいほど、前記した影響も大きくなる。よって、優先度補正部35は、前記した割合が大きいほど、自己EV1の優先度(β)を下げるように補正する。または、優先度補正部35は、前記した割合が小さいほど、自己EV1の優先度(β)を上げるように補正する。或いは、優先度補正部35は、前記した割合の大きさに応じて優先度(β)を下げる補正と前記した割合の大きさに応じて優先度(β)を上げる補正とを同時に行ってもよい。なお、具体的な補正方法は、実施例を参照して後述する。
【0044】
本実施形態において、電線17上の2点間の「電位差」は、電圧の差の絶対値を示す。
【0045】
充放電電力算出部36は、(3)式に示すように、差分電力(△P)に、優先度補正部35により補正された優先度(β’)を乗じることにより要素差分電力(β’△P)を算出する。そして、前回の処理サイクルにおける充放電電力(Pt)に、要素差分電力(β’△P)を加算することにより、充放電電力(Pt+1)を更新する。なお、充放電電力を示す記号「P」の添え字(右下付文字)「t」「t+1」は、「処理サイクル」の繰り返し回数を示す。tは、零を含む正の整数である。
【0046】
【0047】
充放電制御部37は、更新後の充放電電力(Pt+1)を充電又は放電するように充放電装置24を制御する。このように、充放電制御装置23は、以下に示す(a)~(f)の処理サイクルを繰り返すことにより、電気自動車EV1が充放電する電力である充放電電力(P)を制御する。
(a)差分電力(△P)を示す情報を取得し、
(b)優先度(β)を算出し、
(c)優先度(β)を補正し、
(d)差分電力(△P)に補正後の優先度(β’)を乗じることにより要素差分電力(β’△P)を算出し、
(e)前回の処理サイクルにおける充放電電力(Pt)に、要素差分電力(β△P)を加算することにより充放電電力(Pt+1)を更新し、そして、
(f)更新後の要素受電電力(Pt+1)を受電するように充放電装置24を制御する。
【0048】
図3のフローチャートを参照して、
図2の充放電制御装置23による充放電制御方法の一例を説明する。なお、当業者であれば、
図2の充放電制御装置23の具体的な構成及び機能の説明から、充放電制御装置23による充放電制御方法の具体的な手順を、容易に理解できる。よって、ここでは、
図2の充放電制御装置23による充放電制御方法として、充放電制御装置23の主要な処理動作を説明し、詳細な処理動作の説明は、
図2を参照した説明と重複するため割愛する。
【0049】
まず、ステップS01で、受信装置21は、同報送信装置13bから電気自動車EV1~10全体に向けて同報配信された電気信号(無線信号)を受信する。電気信号には、系統要求の一例としての差分電力(△P)を示す情報、及び電線17に係る電圧情報(Vinfo)が含まれる。
【0050】
ステップS02に進み、車両状態取得装置22は、電気自動車EV1の状態を表す情報、例えば、充電率の現在値(SOCnow)、充電率の目標値(SOCgoal)、及び充放電の終了時刻Td(出発予定時刻)を取得する。例えば、優先度算出部34は、(2)式を用いて、現時刻(To)から充放電の終了時刻(Td)までの残り時間(T)から優先度(β)を算出する。
【0051】
ステップS03に進み、終点電圧判断部33は、充放電要求取得部31により取得された終点電圧(Vend)が、予め定められた制限範囲から逸脱するか否かを判断する。逸脱した場合(S03でYES)、ステップS04へ進み、逸脱していない場合(S03でNO)、ステップS06へ進む。
【0052】
ステップS04において、優先度補正部35は、優先度算出部34により算出された優先度(β)を、自己EV1の充放電が電線17の電圧の制限範囲からの逸脱に与える影響の大きさに応じて補正する。例えば、優先度補正部35は、前記した影響の大きさとして、電線17の上流側始点(Ps)から電線17の下流側終点(Pe)までの第1の電位差(Vini-Vend)に対する、電線17の上流側始点(Ps)から電気自動車EV1が接続された電線の位置(受電端)までの第2の電位差(Vini-V1)の割合で算出する。優先度補正部35は、算出した割合が大きいほど、前記した影響度が大きいと判断して、優先度(β)を下げるように補正する。
【0053】
ステップS05に進み、充放電電力算出部36は、(3)式に示すように、差分電力(△P)に、優先度補正部35により補正された優先度(β’)を乗じることにより要素差分電力(β’△P)を算出する。そして、前回の処理サイクルにおける充放電電力(Pt)に、要素差分電力(β’△P)を加算することにより、充放電電力(Pt+1)を更新する。その後、ステップS07へ進む。
【0054】
一方、ステップS06では、終点電圧(Vend)が制限範囲から逸脱していないため、優先度(β)を補正せず、補正前の優先度(β)を用いて、充放電電力(Pt+1)を更新する。すなわち、(3)式における補正後の優先度(β’)の代わりに補正前の優先度(β)を代入して、充放電電力(Pt+1)を更新する。その後、ステップS07へ進む。
【0055】
ステップS07において、充放電制御部37は、更新された充放電電力(Pt+1)に従って充放電装置24を制御する。すなわち、充放電制御部37は、電気自動車EV1が更新後の充放電電力(Pt+1)を充電又は放電するように充放電装置24を制御する。
【0056】
本発明の実施形態によれば、以下の作用効果を得られる。
【0057】
電線17に接続された電気自動車(EV1~EV10)が充電又は放電を行うことによって電線17の電圧は変動する。具体的には、
図8Aに示すように、電線17aに接続された電気自動車(C1~C10)が一斉に充電を行い、電線17bに接続された電気自動車(D1~D10)が一斉に放電を行った場合を考える。電線17a及び電線17bは上流側始点が共通しているが、下流側終点が異なり、互いに独立した電線である。
【0058】
図8Bに示すように、受電端電圧(V1~V10)は、上流側から下流側に向けて低くなっていき、下流側の電気自動車(C7~C10)の受電端電圧(V7~V10)が、制限範囲の下限値(Vlim_low)を下回っている。一方、
図8Cに示すように、受電端電圧(V11~V20)は、上流側から下流側に向けて高くなっていき、下流側の電気自動車(D7~D10)の受電端電圧(V17~V20)が、制限範囲の上限値(Vlim_high)を上回っている。電気自動車(C7~C10、D7~D10)の受電端電圧が制限範囲を逸脱することにより、電線(17a、17b)を含む電力系統を正常に動作させることができなくなる恐れがある。
【0059】
図1に示す各電気自動車(EV1~EV10)は、電線17上の自己の接続位置(受電端)における電圧(受電端電圧)を把握することはできる。しかし、同じ電線17の異なる位置に接続された他の電気自動車の接続位置における電圧を把握することはできない。このため、複数の電気自動車(EV1~EV10)に対して同報送信された充電又は放電を要求する信号(差分電力△P)に従って、各電気自動車が充電又は放電を同時に行った場合に、他の電気自動車の接続位置における電圧が、電線17を含む電力系統を正常に動作させるために定められた所定の制限範囲(レギュレーション)を逸脱しても、電気自動車は制限範囲の逸脱を検知することは難しい。
【0060】
電線17の上流側始点(Ps)から電線17の下流側終点(Pe)までの第1の電位差(Vini-Vend)に対する、電線17の上流側始点(Ps)から電気自動車EV1が接続された電線17の位置までの第2の電位差(Vini-V1)の割合が大きいほど、電線17の電圧の制限範囲からの逸脱に与える影響は大きい。そこで、前記した割合が大きいほど、電気自動車EV1の優先度(β)を低く補正し、補正後の優先度(β’)に基づいて電気自動車EV1の充放電電力(P)を制御する。これにより、前記した割合が大きい電気自動車の充電量又は放電量を下げて、電線17の電圧が制限範囲から逸脱し難くすることができる。一方、前記した割合が小さい電気自動車の充電量又は放電量を、充電又は放電を要求する信号(差分電力△P)に従って制御することができるので、電気自動車(EV1~EV10)全体としては同報送信された充電又は放電の要求に応えることができる。従って、実施形態の電気自動車EV1の充放電制御方法及び充放電制御装置によれば、同報送信された充電又は放電の要求に応えつつ、電線17の電圧が所定の制限範囲を逸脱することを抑制することができる。また、電力系統が電気自動車の各々の充放電電力を集中的に制御することなく、電気自動車(EV1~EV10)の各々が自らの判断で自己の充放電電力を制御することができる。
【0061】
図7Aは、電気自動車(EV1~EV10)の各々が3kWの充電を行っている時の電線17上の電圧の分布を示している。この時の電気自動車(EV1~EV10)全体の充電電圧は30kWである。この時に充電の要求(60kW)が同報送信された。電気自動車(EV1~EV10)の各々が充電電力を6kWに増やすことにより、充電の要求(60kW)に応えることは出来るが、
図7Bに示すように、電位差が大きくなり、下流側の電気自動車(EV8~EV10)の受電端電圧が下限値(Vlim_low)を下回ってしまう。一方、電気自動車(EV1~EV10)の各々が充電電力を4kWに増やすと、
図7Cに示すように、受電端電圧が下限値(Vlim_low)よりも大きくすることができるが、充電の要求(60kW)に応えることは出来なくなる。
【0062】
図4に示すように、電線17の上流側に接続された電気自動車(EV1~EV5)については、第1の電位差(Vini-Vend)に対する第2の電位差(Vini-Vn)の割合が小さい。すなわち、自己の充放電が電圧の制限範囲の逸脱に与える影響が小さい。そこで、優先度(β)を大きくする補正を行って、充電電力を9kWとする。一方、電線17の下流側に接続された電気自動車(EV6~EV10)については、第1の電位差(Vini-Vend)に対する第2の電位差(Vini-Vn)の割合が大きい。すなわち、自己の充放電が電圧の制限範囲の逸脱に与える影響が大きい。そこで、優先度(β)を小さくする補正を行って、充電電力を4kWとする。
【0063】
これにより、電気自動車(EV1~EV10)全体の充電電力が充電の要求(60kW)に応えることができると同時に、電線17の下流側での電圧が下限値(Vlim_low)を下回ることを回避できる。
【0064】
充放電制御装置23は、電線17の下流側終点(Pe)の電圧(Vend)が、予め定められた制限範囲から逸脱する場合(S03でYES)、補正した優先度(β’)に基づいて充放電電力を制御する。一方、充放電制御装置23は、電線17の下流側終点(Pe)の電圧(Vend)が、予め定められた制限範囲から逸脱しない場合(S03でNO)、補正する前の優先度(β)に基づいて充放電電力を制御する。電圧(Vend)が制限範囲から逸脱する場合に限って優先度(β)を補正することができるので、同報送信された充電又は放電の要求に応えつつ、電線17の電圧が所定の制限範囲を逸脱することを抑制することができる。
【0065】
(第1実施例)
図4を参照して、第1実施例に係る充放電制御装置及び充放電制御方法を説明する。
図4に示すように、電線17の上流側始点(Ps)の電圧(Vini)及び電線17の下流側終点(Pe)の電圧(Vend)に基づく基準電圧(Vave)に基づいて、優先度を補正する。基準電圧(Vave)には、電圧(Vini)及び電圧(Vend)の中央値又は平均値が含まれる。
図1の電圧情報送信装置11が、電線17に係る電圧情報(Vinfo)として、基準電圧(Vave)を生成してもよい。この場合、同報送信部13aは基準電圧(Vave)を示す電気信号を同報送信し、
図2の受信装置21が、基準電圧(Vave)を示す電気信号(無線信号)を受信する。或いは、
図2の充放電要求取得部31が、始点電圧(Vini)及び終点電圧(Vend)から基準電圧(Vave)を計算してもよい。
【0066】
図4に示すように、優先度補正部35は、第2の電位差(Vini-V1)が、電線17の上流側始点の電圧から基準電圧までの電位差(Vini-Vave)よりも大きい場合には、優先度を下げるように補正する。又は、優先度補正部35は、第2の電位差(Vini-V1)が、電位差(Vini-Vave)以下である場合に、優先度を上げるように補正してもよい。或いは、優先度補正部35は、優先度を下げる補正及び優先度を上げる補正を同時に行ってもよい。
【0067】
充放電制御装置23は、電線17に係る電圧情報(Vinfo)として、基準電圧(Vave)を示す情報を取得し、第2の電位差が、電圧(Vini)から基準電圧(Vave)までの電位差よりも大きい場合には、優先度を下げるように補正する。換言すれば、基準電圧(Vave)に対して、電気自動車EV1が接続された電線17の位置の自己電圧(V1)が小さければ優先度を下げるように補正し、及び/又は電気自動車EV1が接続された電線17の位置の自己電圧(V1)が大きければ優先度を上げるように補正する。これにより、電気自動車(EV1~EV10)全体の充電電力が充電の要求(60kW)に応えることができると同時に、電線17の下流側での電圧が下限値(Vlim_low)を下回ることを回避できる。
【0068】
(第2実施例)
第2実施例及び第3実施例では、優先度補正部35が、電線17の始点電圧(Vini)、終点電圧(Vend)、及び電気自動車EV1が接続された電線17の位置の自己電圧(V1)に基づいて、電気自動車EV1の優先度(β)を補正する実施例を説明する。
【0069】
図5を参照して、第2実施例に係る充放電制御装置及び充放電制御方法を説明する。第2実施例では、優先度補正部35は、始点電圧(Vini)から自己電圧(V1)までの電位差(Vini-V1)と、自己電圧(V1)から終点電圧(Vend)までの電位差(V1-Vend)との比較結果に基づいて、電気自動車EV1の優先度(β)を補正する。具体的には、始点電圧から自己電圧までの電位差(Vini-V1)が自己電圧から終点電圧までの電位差(V1-Vend)よりも大きい場合、前記した影響度が大きいと判断して、優先度を下げるように補正する。一方、始点電圧から自己電圧までの電位差(Vini-V1)が自己電圧から終点電圧までの電位差(V1-Vend)以下である場合、前記した影響度が小さいと判断して、優先度を上げるように補正する。
図5に示す例では、電気自動車(EV1~EV5)の優先度を上げ、電気自動車(EV6~EV10)の優先度を下げた結果、電気自動車(EV1~EV5)の充電電力は9kWとなり、電気自動車(EV6~EV10)の充電電力は3kWとなる。
【0070】
これにより、電気自動車(EV1~EV10)全体の充電電力が充電の要求(60kW)に応えることができると同時に、電線17の下流側での電圧が下限値(Vlim_low)を下回ることを回避できる。
【0071】
(第3実施例)
図6を参照して、第3実施例に係る充放電制御装置及び充放電制御方法を説明する。第3実施例では、優先度補正部35は、始点電圧(Vini)から終点電圧(Vend)までの範囲をm個(mは2以上の自然数)の領域に分割し、自己電圧(V1)が属する領域に応じて、優先度(β)を補正する。例えば、
図6に示すように、始点電圧(Vini)から終点電圧(Vend)までの範囲を、4つの領域(Sg1~Sg4)に分割する。始点電圧(Vini)から終点電圧(Vend)までの電位差を4等分することにより、自己電圧(V1)が、どの領域に属するかを判断することができる。電気自動車EV1の受電端電圧(V1)は上流側の領域Sg1に属するため、優先度(β)を上げるように補正する。又は、電気自動車EV10受電端電圧(V10)は、下流側の領域Sg4に属するため、優先度(β)を下げるように補正する。同様にして、領域(g2、Sg3)に属する電気自動車の優先度(β)を補正する。
【0072】
これにより、電気自動車(EV1~EV10)全体の充電電力が充電の要求(62kW)に応えることができると同時に、電線17の下流側での電圧が下限値(Vlim_low)を下回ることを回避できる。
【0073】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0074】
上記した実施形態及び第1乃至第3実施例では、主に、系統要求(差分電力△P)が充電要求であり、全ての電気自動車が充電するシーンを例にとり、放電制御の例を示したが、本発明は、系統要求(差分電力△P)が充電要求である場合にも適用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0075】
EV1~EV10 電気自動車(充放電要素)
17 電線
Ps 上流側始点
Pe 下流側終点
β 優先度
Vini 電線の上流側始点の電圧
Vend 電線の下流側終点の電圧
21 受信装置
34 優先度算出部
35 優先度補正部
37 充放電制御部