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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】変位センサ
(51)【国際特許分類】
   G01C 3/06 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
G01C3/06 110A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021027332
(22)【出願日】2021-02-24
(65)【公開番号】P2022128878
(43)【公開日】2022-09-05
【審査請求日】2023-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】591036457
【氏名又は名称】三菱電機エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】中村 和彦
(72)【発明者】
【氏名】西山 泰裕
(72)【発明者】
【氏名】田所 雅也
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-089521(JP,A)
【文献】特開2003-207832(JP,A)
【文献】特開2000-111315(JP,A)
【文献】特開2014-136314(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 3/06
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検出物体に向けて光を投光する投光部と、
前記被検出物体から反射される反射光を結像位置で結像し、前記結像位置に応じた電気信号を生成する検出部と、
前記検出部が生成した前記電気信号に基づいて、前記投光部と前記被検出物体との間の距離を計算する計算部と、
を備え、
前記投光部は、中心点から基準光軸に沿って光を出力する光源と、前記光源から出力される光を集約させて前記被検出物体に向けて投光させる投光レンズとを有し、
前記検出部は、前記反射光を結像する受光レンズと、前記結像位置に応じた前記電気信号を生成する検出素子とを有し、
前記投光部と前記検出部とは、
前記受光レンズと前記投光レンズとが、異なる角度に設けられており、
前記受光レンズと前記検出素子との間の距離が、前記受光レンズの焦点距離に一致しており、
前記受光レンズが、前記基準光軸上で変位する前記被検出物体の位置に応じて前記被検出物体から反射される前記反射光の一部を集光スポットの位置に集光させ、
前記受光レンズによる前記反射光の結像位置と、前記検出素子における前記集光スポットの受光位置とが一致し、
前記投光部と前記被検出物体との間の前記距離と前記結像位置とが線形関係となる
ように構成されており、
前記計算部は、
前記検出部が生成した前記電気信号から前記検出素子上における前記集光スポットの前記受光位置に応じた位置信号を求める位置信号生成部と、
前記結像位置と前記距離との前記線形関係から得られるモデル式に含まれるパラメータを求めるパラメータ生成部と、
前記パラメータと、前記位置信号と、に基づいて、前記距離を求める距離信号計算部と、
を含む
変位センサ。
【請求項2】
前記パラメータ生成部は、出荷前の準備段階の処理として前記モデル式に従い、前記投光部及び前記検出部の組み付け精度により変動しうる機器固有パラメータを最小二乗法により求める請求項1に記載の変位センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、変位センサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、工場のファクトリーオートメーション化が進んでいる。生産ラインでは、被測定物体までの距離を非接触で測定できる変位センサとして、三角測量方式に基づいて光学的に距離を測定するものが実用化されている。
【0003】
このような変位センサは、例えば、半導体レーザー、受光用光学系、撮像素子、受光回路等を備えている。半導体レーザーは、光ビームを被測定物体に投光する。被測定物体の表面は、光ビームを反射光として反射する。受光用光学系は、被測定物体による反射光の一部を集光スポットの位置に集光させる。撮像素子は、受光用光学系によって集光スポットの位置に集光された光を受光し、受光した位置に対応した電流の位置信号を受光回路に出力する。受光回路は、電流の位置信号を増幅し、電圧信号に変換する。受光回路により変換された電圧信号は、各種処理により、測距信号に変換される。
【0004】
しかし、測距信号は、被測定物体の変位距離に対して直線的ではない。従って、変位センサの測定精度は一定にならない。そこで、変位センサは、測距信号を被測定物体の変位距離に比例する距離信号に変換している。変位センサは、測距信号を距離信号に変換する際、撮像素子の分解能に基づいて距離信号を補間している(例えば、特許文献1参照)。このため、精度を向上させるには区間を分割し、区間ごとにデータを測定する必要がある。例えば、要求精度により数十~数万点のデータを区間ごとに測定する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平03-195915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の技術においては、距離信号を補間するときには撮像素子の分解能に基づいて補間処理を行うため、補間処理に伴う計算誤差が生じる。よって、測定精度を一定にするために線形関係を形成する処理が測定精度を低下させる要因となっている。
【0007】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、測定精度を向上させることができる変位センサを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る変位センサは、被検出物体に向けて光を投光する投光部と、前記被検出物体から反射される反射光を結像位置で結像し、前記結像位置に応じた電気信号を生成する検出部と、前記検出部が生成した前記電気信号に基づいて、前記投光部と前記被検出物体との間の距離を計算する計算部と、を備え、前記投光部は、中心点から基準光軸に沿って光を出力する光源と、前記光源から出力される光を集約させて前記被検出物体に向けて投光させる投光レンズとを有し、前記検出部は、前記反射光を結像する受光レンズと、前記結像位置に応じた前記電気信号を生成する検出素子とを有し、前記投光部と前記検出部とは、前記受光レンズと前記投光レンズとが、異なる角度に設けられており、前記受光レンズと前記検出素子との間の距離が、前記受光レンズの焦点距離に一致しており、前記受光レンズが、前記基準光軸上で変位する前記被検出物体の位置に応じて前記被検出物体から反射される前記反射光の一部を集光スポットの位置に集光させ、前記受光レンズによる前記反射光の結像位置と、前記検出素子における前記集光スポットの受光位置とが一致し、前記投光部と前記被検出物体との間の前記距離と前記結像位置とが線形関係となるように構成されており、前記計算部は、前記検出部が生成した前記電気信号から前記検出素子上における前記集光スポットの前記受光位置に応じた位置信号を求める位置信号生成部と、前記結像位置と前記距離との前記線形関係から得られるモデル式に含まれるパラメータを求めるパラメータ生成部と、前記パラメータと、前記位置信号と、に基づいて、前記距離を求める距離信号計算部と、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、測定精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態における変位センサの構成例を示す図である。
図2図1の変位センサの検出原理を説明する図である。
図3図1の変位センサの機能を説明するブロック図である。
図4図3の変位センサの準備段階の動作を説明するフローチャートである。
図5図3の変位センサの計測段階の動作を説明するフローチャートである。
図6】ハードウェア構成例を説明する図である。
図7】他のハードウェア構成例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、実施の形態における変位センサ1の構成例を示す図である。変位センサ1は、被検出物体dbの変位を検出する。変位センサ1は、投光部5と、検出部7と、計算部9と、筐体3と、を備えている。投光部5、検出部7及び計算部9は、筐体3に設けられている。
【0012】
投光部5は、光源51と、投光レンズ52と、を備えている。投光部5は、投光レンズ52を含む投光用光学系を介して、被検出物体dbに向けて光を投光する。
【0013】
光源51は、例えば、LED(Light Emitting Diode)、有機EL(OLED;Organic Light Emitting Diode)、半導体レーザー(Semiconductor Laser)等の自発光半導体型光源である。光源51には、矩形状の発光面が形成されている。矩形状の発光面の中心は、光源51の中心である中心点CPに一致している。光源51は、矩形状の発光面の中心を基準光軸pvとしている。よって、基準光軸pvは、光源51の中心点CPを通る。光源51は、中心点CPから基準光軸pvに沿って、光を出力する。図示は省略するが、光源51から光を出力するタイミングを設定する発振回路と、光源51を駆動するドライブ回路とが、投光部5には設けられている。
【0014】
投光レンズ52の断面は、凸レンズの断面形状と同様に形成されている。投光レンズ52の光軸が光源51の基準光軸pvと同一光軸上になるように、投光レンズ52は筐体3に設けられている。よって、投光レンズ52の光軸は、光源51の基準光軸pvと同一光軸上になる。投光レンズ52は、光源51から出力される光を集約させて被検出物体dbに向けて投光させる。
【0015】
検出部7は、受光レンズ71と、検出素子72と、を備えている。検出部7は、受光レンズ71を含む受光用光学系を介して、被検出物体dbによる反射光の一部を結像位置で結像させる。
【0016】
受光レンズ71は、投光レンズ52とは異なる角度に設けられている。受光レンズ71の断面は、凸レンズの断面形状と同様に形成されている。受光レンズ71と検出素子72との間の距離は、受光レンズ71の焦点距離に一致させている。これにより、受光レンズ71による反射光の結像位置と、検出素子72における集光スポットの受光位置とが一致している。
【0017】
受光レンズ71による反射光の結像位置以外の光量と比べ、受光レンズ71による反射光の結像位置の光量は多い。よって、受光レンズ71による反射光の結像位置で検出素子72上に集光スポットを形成させれば、検出素子72における集光スポットの受光位置には光量が多く集まる。このため、被検出物体db以外からの散乱光による光量を無視できるので、受光レンズ71は、検出素子72における集光スポットの位置の変化の誤検出の動作を生じさせない。この結果、受光レンズ71は、集光スポットの位置の変化を検出素子72に正しく検出させることができる。
【0018】
検出素子72は、イメージセンサから構成されている。検出素子72から出力された電気信号には、結像位置における集光スポットの光量に関する情報が含まれている。
【0019】
ここで、光源51の中心点CPから基準光軸pv上にある変位センサ1の表面までの距離、すなわち、光源51の中心点CPから基準光軸pv上にある筐体3の表面までの距離が固定距離sに設定されている。固定距離sは、常時一定となる距離である。また、基準光軸pv上の変位センサ1の表面から被検出物体dbまでの距離、すなわち、基準光軸pv上にある筐体3の表面から被検出物体dbまでの距離が任意距離sに設定されている。任意距離sは、被検出物体dbの変位に応じて変化する。
【0020】
なお、iは、変位センサ1における実測値の序数を表している。例えば、任意距離sは、変位センサ1においてi番目に実測されたことを意味する。また、例えば、任意距離si+1は、変位センサ1においてi+1番目に実測されたことを意味する。変位センサ1における実測値の個数の上限を1以上の整数のnで表すと、iが取り得る範囲は、1≦i≦nとなる。
【0021】
また、光源51の中心点CPと受光レンズ71の中心である原点Oとを結ぶ直線と、光源51の中心点CPと投光レンズ52の中心とを結ぶ直線とのなす角度がθに設定されている。
【0022】
また、光源51の中心点CPと受光レンズ71の中心である原点Oとを結ぶ直線と、光源51の中心点CPと検出素子72の基準点rpとを結ぶ直線とのなす角度がφに設定されている。
【0023】
また、光源51の中心点CPから検出素子72の基準点rpまでの距離が基準結像距離tに設定されている。検出素子72の基準点rpは、被検出物体dbが基準反射位置rrpにあるときに被検出物体dbからの反射光を受光レンズ71が結像する結像位置になる。従って、被検出物体dbが基準反射位置rrpにあるときの検出素子72における集光スポットの受光位置は、光源51の中心点CPから基準結像距離tだけ離れた位置になる。
【0024】
ここで、被検出物体dbが基準反射位置rrpにあるときの検出素子72における集光スポットの受光位置が、中心点CPと基準点rpとを結ぶ直線上に投影されたときの位置と、光源51の中心点CPとの間の距離は、基準結像距離tである。
【0025】
また、被検出物体dbが基準光軸pv上の変位センサ1の表面から任意距離sだけ離れた位置にあるときの検出素子72における集光スポットの受光位置は、光源51の中心点CPから基準結像距離tだけ離れた位置になる。
【0026】
ここで、被検出物体dbが基準光軸pv上の変位センサ1の表面から任意距離sだけ離れた位置にあるときの検出素子72における集光スポットの受光位置が、中心点CPと基準点rpとを結ぶ直線上に投影されたときの位置と、光源51の中心点CPとの間の距離は、基準結像距離tである。
【0027】
以上の説明から、被検出物体dbが基準光軸pv上の変位センサ1の表面から任意距離sだけ離れた位置にあるとき、検出素子72の集光スポットの受光位置は、光源51の中心点CPから、中心点CPと基準点rpとを結ぶ直線に沿って変動結像距離tだけ離れた位置と等価である。また、被検出物体dbが基準光軸pv上の変位センサ1の表面から任意距離si+1だけ離れた位置にあるとき、検出素子72の集光スポットの受光位置は、光源51の中心点CPから、中心点CPと基準点rpとを結ぶ直線に沿って変動結像距離ti+1だけ離れた位置と等価である。
【0028】
また、変動結像距離tと、変動結像距離ti+1との差から換算された被検出物体dbの変位量は、diff[i,i+1]に設定されている。
【0029】
なお、図1の一例では、図示の都合上、被検出物体dbから反射される反射光は、受光レンズ71の中心である原点Oを通過するものとして図示する。また、同様に、受光レンズ71内における被検出物体dbから反射される反射光が屈折されて通過する屈折光の図示及び説明は省略している。
【0030】
計算部9には、検出素子72から出力された電気信号が入力される。計算部9は、入力された電気信号に含まれる結像位置の情報に基づいて位置信号を求める。計算部9は、位置信号に基づいて、投光部5と被検出物体dbとの間の任意距離sを計算する。
【0031】
具体的には、計算部9は、光源51、投光レンズ52、受光レンズ71及び検出素子72を用いて三角測量方式を適用することにより位置信号から投光部5と被検出物体dbとの間の任意距離sを計算する。
【0032】
つまり、計算部9は、検出素子72により検出された集光スポットの位置を、投光部5と被検出物体dbとの間の任意距離sに換算する。この換算した任意距離sが、被検出物体dbの変位となる。
【0033】
図2は、図1の変位センサ1の検出原理を説明する図である。図2において、原点Oは、図1と同様に、受光レンズ71の中心を表している。また、図2において、中心点CPは、図1と同様に、光源51の中心を表している。
【0034】
また、図2において、θは、図1と同様に、光源51の中心点CPと受光レンズ71の中心である原点Oとを結ぶ直線と、光源51の中心点CPと投光レンズ52の中心とを結ぶ直線とのなす角度を表している。
【0035】
また、図2において、φは、図1と同様に、光源51の中心点CPと受光レンズ71の中心である原点Oとを結ぶ直線と、光源51の中心点CPと検出素子72の基準点rpとを結ぶ直線とのなす角度を表している。
【0036】
また、図2において、固定距離sは、図1と同様に、光源51の中心点CPから基準光軸pv上にある筐体3の表面までの常時一定となる距離を表している。また、図2において、任意距離sは、図1と同様に、基準光軸pv上にある筐体3の表面から被検出物体dbの変位によって変化する距離を表している。なお、固定距離sは、光源51を筐体3に組み付ける組み付け精度に応じて異なるものである。
【0037】
また、図2において、基準結像距離tは、図1と同様に、被検出物体dbが基準反射位置rrpにあるときの検出素子72における集光スポットの受光位置が、中心点CPと基準点rpとを結ぶ直線上に投影されたときの位置を表している。また、図2において、変動結像距離tは、図1と同様に、基準光軸pv上の変位センサ1の表面から任意距離sだけ離れた位置にあるときの検出素子72における集光スポットの受光位置が、中心点CPと基準点rpとを結ぶ直線上に投影されたときの位置を表している。なお、基準結像距離tは、光源51、投光レンズ52、受光レンズ71及び検出素子72を筐体3に組み付ける組み付け精度に応じて異なるものである。
【0038】
また、図2において、原点Oと中心点CPとを通る直線は、直交座標系における縦軸としてy軸又はy’軸を表す。また、図2において、θが存在する側の座標平面であって、原点Oからy軸に直交する直線は、直交座標系における横軸としてx軸を表す。また、図2において、φが存在する側の座標平面であって、原点Oからy’軸に直交する直線は、直交座標系における横軸としてx’軸を表す。
【0039】
よって、図2においては、θが存在する側の座標平面には、二次元の直交座標系xyが表されている。また、図2においては、φが存在する側の座標平面には、二次元の直交座標系x’y’が表されている。
【0040】
直交座標系xyの座標平面上において、固定距離sに対応する座標(xs0,ys0)の点と任意距離sに対応する座標(xsi,ysi)の点とを通る線形方程式が、次の式(1)により表される。
【0041】
【数1】
【0042】
また、直交座標系x’y’の座標平面上において、基準結像距離tに対応する座標(x’t0,y’t0)の点と変動結像距離tに対応する座標(x’ti,y’ti)の点とを通る線形方程式が、次の式(2)により表される。
【0043】
【数2】
【0044】
また、任意距離sだけ離れた位置に被検出物体dbがあるときに、被検出物体dbから反射された反射光は、変動結像距離tの位置で結像する。また、任意距離sに対応する座標(xsi,ysi)の点と、変動結像距離tに対応する座標(x’ti,y’ti)の点と、を結ぶ直線は、原点Oを通る直線となっている。よって、式(1)により求まる座標(x,y)と原点Oとを結ぶ直線と、式(2)により求まる座標(x’,y’)と原点Oとを結ぶ直線とのそれぞれの傾きは同じである。従って、y/x=y’/x’の関係が成立する。ここに、式(1)と式(2)とを代入すると、(ax+b)/x=(cx’+d)/x’となる。これを次の式(3)の形に変形する。
【0045】
【数3】
【0046】
ここで、任意距離sを一般化したものとして任意距離sと表す。また、変動結像距離tを一般化したものとして変動結像距離tと表す。さらに、式(3)のxにsinθ×(s+s)が代入され、式(3)のx’にsinφ×(t-t)が代入されてから次の式(4)の形に変形する。
【0047】
【数4】
【0048】
式(4)において、1/(t-t)を独立変数とし、1/(s+s)を従属変数として、次の式(5)の形に変形する。
【0049】
【数5】
【0050】
式(5)において、独立変数である1/(t-t)をXとし、従属変数である1/(s+s)をYとし、dsinθ/bsinφをAとし、(a-c)sinθ/bをBとして、次の式(6)の形に変形する。
【0051】
【数6】
【0052】
式(6)で表される線形方程式は、線形回帰モデルである。よって、YとXとが直線的な関係で表されている。従って、YとXとは線形関係にある。
【0053】
また、Yは1/(s+s)で表され、Xは1/(t-t)で表され、θ、φ、a、b、c、d、基準結像距離t及び固定距離sは変位センサ1の製造時に定まる固定値である。また、固定距離s及び基準結像距離tは非線形項として与えられることによりdsinθ/bsinφ及び(a-c)sinθ/bが求められる。よって、式(5)は、結局、変動結像距離tと、投光部5と被検出物体dbとの間の任意距離sとの関係が、線形関係に写像されたものとなる。
【0054】
よって、式(5)は、変動結像距離tと、投光部5と被検出物体dbとの間の任意距離sとにおける線形関係を成立させるためのモデル式となる。そこで、モデル式としての式(5)を変形した式(6)を利用し、式(6)に含まれるA及びBを最小二乗法で求める。これにより、式(6)によって計算される1/(s+s)と、任意距離sから得られる1/(s+s)との残差は最小になり、モデル式の精度は上がる。
【0055】
ここで、A及びBは、本開示におけるパラメータに相当する。よって、本開示におけるパラメータには、θ、φ、a、b、c、d、基準結像距離t及び固定距離sが含まれている。また、基準結像距離t及び固定距離sは、本開示における機器固有パラメータに相当する。つまり、機器固有パラメータは、パラメータの一部であって、且つ投光部5及び検出部7の組み付け精度により変動しうるものであり、最小二乗法により求まるものである。
【0056】
なお、未知のパラメータは、基準結像距離t、固定距離s、dsinθ/bsinφ及び(a-c)sinθ/bの4点である。よって、最小二乗法での精度を確保するために、5≦nが望ましい。つまり、未知のパラメータの点数+1以上を測定点数とすることが望ましい。このように、従来の補正方法で精度を向上するために必要としていた大量の測定データの点数が不要となる。
【0057】
図3は、図1の変位センサ1の機能を説明するブロック図である。図3においては、変位センサ1の機能のうち、計算部9の機能の詳細が示されている。
【0058】
計算部9は、位置信号生成部91、パラメータ生成部92、距離信号計算部93及び距離信号出力部94の各機能を備えている。計算部9は、例えば、ROM、RAM、CPU、FPGA、ASIC、メモリ及びI/Oインターフェースを備えている。計算部9は、CPUにより位置信号生成部91、パラメータ生成部92、距離信号計算部93及び距離信号出力部94の各機能を実現させている。なお、計算部9には、位置信号生成部91、パラメータ生成部92、距離信号計算部93及び距離信号出力部94の各機能を実現する布線論理回路が実装されてもよい。
【0059】
位置信号生成部91は、検出素子72から出力された電気信号を受信する。位置信号生成部91が受信した電気信号には、光スポットの光量の情報と、結像位置の情報とが含まれる。位置信号生成部91は、光量の情報と、結像位置の情報と、に基づいて、位置信号を生成する。
【0060】
なお、検出素子72から出力された電気信号は、本開示において変動結像距離tに応じて検出部7が生成した信号に相当する。
【0061】
パラメータ生成部92は、結像位置と、投光部5と被検出物体dbとの間の任意距離sと、の光学的な関係から得られるモデル式に含まれるパラメータを求める。パラメータ生成部92は、求めたパラメータを距離信号計算部93へ出力する。
【0062】
つまり、前記パラメータ生成部は、出荷前の準備段階の処理としてモデル式に従い、投光部5及び検出部7の組み付け精度により変動しうる機器固有パラメータを最小二乗法により求める。
【0063】
なお、パラメータを求める処理は、例えば、変位センサ1の出荷前に準備段階の処理として実施される。変位センサ1の出荷時には、パラメータ生成部92により求められたパラメータが例えば距離信号計算部93に記憶されている。変位センサ1の使用時には、パラメータ生成部92により求められたパラメータと、投光部5から投光される光のゲイン等のような各種設定とが計算部9のメモリに記憶されている。
【0064】
距離信号計算部93は、パラメータ生成部92から出力されたパラメータと、位置信号生成部91から出力された位置信号と、を用いて、投光部5と被検出物体dbとの間の任意距離sを求める。具体的には、距離信号計算部93は、上記の式(5)に基づいて、投光部5と被検出物体dbとの間の任意距離sを求める。距離信号計算部93は、投光部5と被検出物体dbとの間の任意距離sの情報を含む距離信号を距離信号出力部94へ出力する。
【0065】
つまり、計算部9は、モデル式に従って機器固有パラメータを用い、位置信号から任意距離の情報を含む距離信号を算出する。
【0066】
距離信号出力部94は、距離信号計算部93から出力された投光部5と被検出物体dbとの間の任意距離sの情報を含む距離信号に基づいて、出力先の通信プロトコルに準拠した通信信号に変換し、変換した通信信号を出力する。例えば、出力先がシーケンサーであれば、距離信号出力部94は、シーケンサーの通信プロトコルに準拠した通信信号に、投光部5と被検出物体dbとの間の任意距離sの情報を含む距離信号を変換し、出力又は表示する。
【0067】
変位センサ1の準備段階では以下のことが実施される。筐体3からの距離が判明している任意距離sの位置に被検出物体dbを置いてそのときの変動結像距離tの値をデータとして収集することを、任意距離sの位置を任意距離sから任意距離sまで変えながらn回行い、パラメータを求める。
【0068】
図4は、図3の変位センサ1の準備段階の動作を説明するフローチャートである。図4では、図2に示すように筐体3からの距離の判明しているsの位置に被検出物体dbを置き、tに応じたデータを収集することをsの位置を変えながらn回繰り返し、パラメータを求める。nは、上記したように変位センサ1における実測値の個数の上限を1以上の整数で表したものである。予め設定された繰り返し回数の上限値を意味する。図4に示すステップS11~ステップS17の処理は、例えば、変位センサ1の出荷時までに実施される。
【0069】
ステップS11において、筐体3からの距離の判明している任意距離sの位置に被検出物体dbが設置される。次に、ステップS11の処理は、ステップS12の処理に進む。
【0070】
ステップS12において、投光部5は、被検出物体dbに向けて光を投光する。次に、ステップS12の処理は、ステップS13の処理に進む。
【0071】
ステップS13において、検出部7は、結像位置に応じた電気信号を生成する。次に、ステップS13の処理は、ステップS14の処理に進む。
【0072】
ステップS14において、位置信号生成部91は、電気信号から位置信号を求める。次に、ステップS14の処理は、ステップS15の処理に進む。
【0073】
ステップS15において、位置信号生成部91は、位置信号に基づいたデータをn個収集し終えたか否かを判定する。位置信号生成部91により位置信号に基づいたデータをn個収集し終えたと判定された場合、ステップS15の処理は、ステップS16の処理に進む。一方、位置信号生成部91により位置信号に基づいたデータをn個収集し終えていないと判定された場合、ステップS15の処理は、ステップS11の処理に戻る。
【0074】
ステップS16において、位置信号生成部91は、モデル式に含まれるパラメータを算出する。次に、ステップS16の処理は、ステップS17の処理に進む。
【0075】
ステップS17において、パラメータ生成部92は、パラメータを記憶させる。次に、ステップS17の処理は、終了する。
【0076】
変位センサ1の計測段階では、計算部9は、ステップS11~ステップS17の処理を実施して記憶したパラメータと、位置信号と、に基づいて、投光部5と被検出物体dbとの間の距離を計算する。
【0077】
図5は、図3の変位センサ1の計測段階の動作を説明するフローチャートである。
【0078】
ステップS31~ステップS33の処理は、ステップS12~ステップS14の処理と同様の処理である。よって、それらの処理の説明は省略される。
【0079】
ステップS34において、距離信号計算部93は、パラメータを含むモデル式と、位置信号と、に基づいて、任意距離sを求める。次に、ステップS34の処理は、終了する。
【0080】
以上の説明から、本実施の形態においては、計算部9は、結像位置と、投光部5と被検出物体dbとの間の任意距離sとの関係から得られるモデル式に含まれるパラメータを求める。計算部9は、パラメータと、位置信号と、を用いて、任意距離sに基づいて生成される距離信号を補正する。
【0081】
このような構成により、モデル式は、結像位置と、投光部5と被検出物体dbとの間の任意距離sとの関係をモデル化しているため、機械的な影響が除去されている。機械的な影響としては、変位センサ1の組み付け精度に起因する製造誤差が挙げられる。従って、変位センサ1の製造誤差に起因する製造ばらつきによる検出誤差を、最小二乗法によりパラメータに反映することにより、補正することができる。これにより、測定精度を向上させることができる。
【0082】
また、各実施の形態について、計算部9を実行するための処理回路が備えられている。処理回路は、専用のハードウェアであっても、メモリに格納されるプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit、中央処理装置、処理装置、計算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサ、DSPともいう)であってもよい。
【0083】
図6は、ハードウェア構成例を説明する図である。図6においては、処理回路501がバス502に接続されている。処理回路501が専用のハードウェアである場合、処理回路501は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA又はこれらを組み合わせたものが該当する。計算部9の各部の機能のそれぞれは、処理回路501で実現されてもよいし、各部の機能はまとめて処理回路501で実現されてもよい。
【0084】
図7は、他のハードウェア構成例を説明する図である。図7は、他のハードウェア構成例を説明する図である。図7においては、プロセッサ503及びメモリ504がバス502に接続されている。処理回路がCPUの場合、計算部9の各部の機能は、ソフトウェア、ファームウェア又はソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェア又はファームウェアはプログラムとして記述され、メモリ504に格納される。処理回路は、メモリ504に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、各部の機能を実現する。すなわち、計算部9は、処理回路により実行されるときに、ステップが結果的に実行されることになるプログラムを格納するためのメモリ504を備えている。また、これらのプログラムは、実行する手順又は方法をコンピュータに実行させるものであるといえる。ここで、メモリ504とは、RAM、ROM、フラッシュメモリ、EPROM、EEPROM等の、不揮発性若しくは揮発性の半導体メモリ又は、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD等が該当する。
【0085】
なお、計算部9の各部の機能は、一部が専用のハードウェアで実現され、他の一部がソフトウェア又はファームウェアで実現されるようにしてもよい。例えば、専用のハードウェアとしての処理回路で各機能のうちパラメータ生成部92を実現させることができる。また、処理回路がメモリ504に格納されたプログラムを読み出して実行することによって各機能のうち距離信号計算部93を実現させることが可能である。
【0086】
このように、処理回路は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア又はこれらの組み合わせによって、上記の各機能を実現することができる。
【0087】
また、本実施の形態には、モデル式の計算に最小二乗法が用いられる一例が記載されているが、特にこれに限定されるものではない。例えば、モデル式の計算にマハラノビスタグチ法が用いられてもよい。また、ノルム最小化によってモデル式のパラメータが求められてもよい。
【0088】
また、本実施の形態には、検出素子72として、イメージセンサから構成されている一例が記載されているが、特にこれに限定されるものではない。例えば、検出素子72は、撮像素子から構成されてもよい。
【0089】
また、本実施の形態には、計算部9を変位センサ1の内部に設けられた一例が記載されているが、特にこれに限定されるものではない。例えば、計算部9の機能が変位センサ1の外部に設けられてもよい。
【0090】
また、本実施の形態には、変位センサ1は、結像位置の変位を2次元とする2次元平面モデルとして構成される一例が記載されているが、特にこれに限定されるものではない。例えば、変位センサ1は、2次元射影面モデル又は結像位置の変位を3次元とする3次元空間モデルとして構成されてもよい。
【0091】
また、本実施の形態には、検出素子72の出力する信号として電気信号が用いられる一例が記載されているが、特にこれに限定されるものではない。例えば、検出素子72の出力する信号は、光信号であってもよい。つまり、検出素子72の出力する信号の媒体は、特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0092】
1 変位センサ、3 筐体、5 投光部、7 検出部、9 計算部、51 光源、52 投光レンズ、71 受光レンズ、72 検出素子、91 位置信号生成部、92 パラメータ生成部、93 距離信号計算部、94 距離信号出力部、db 被検出物体、pv 基準光軸、rrp 基準反射位置、rp 基準点、O 原点、CP 中心点、s 固定距離、s,s任意距離、t 基準結像距離、t,t 変動結像距離。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7