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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】スイッチング電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
H02M3/28 H
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021038142
(22)【出願日】2021-03-10
(65)【公開番号】P2022138327
(43)【公開日】2022-09-26
【審査請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 直久
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0201055(US,A1)
【文献】特開2007-202370(JP,A)
【文献】特開平11-187665(JP,A)
【文献】特開平07-284269(JP,A)
【文献】特開2014-192952(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0358988(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電圧を脈流電圧に変換する電圧変換回路と、
一次巻線および二次巻線を有するトランスと、
前記脈流電圧をスイッチングして前記一次巻線に印加する第1スイッチング素子と、
前記第1スイッチング素子を制御する第1制御部と、
前記二次巻線の誘起電圧を直流化した出力電圧を出力する直流化回路と、
を備えるスイッチング電源装置であって、
直列接続されたコンデンサおよび第2スイッチング素子からなり、一端が前記電圧変換回路の高電位側の出力端に接続され、他端が前記電圧変換回路の低電位側の出力端に接続される直列回路と、
前記第2スイッチング素子を制御する第2制御部と、
前記脈流電圧を検出する検出回路と、
前記出力電圧を検出して前記第1制御部にフィードバック信号を出力するフィードバック回路と、を備え、
前記第1制御部は、前記フィードバック信号が入力されるフィードバック端子を備え、
前記第2制御部は、
前記フィードバック端子の端子電圧の電圧値が所定の閾値以下となる第1状態時か、前記電圧値が前記閾値よりも大となる第2状態時かを判定する判定処理と、
前記第1状態時に、前記検出回路の検出値が最小値から所定の設定電圧値に達するまでの第1期間は前記第2スイッチング素子をオン状態にする一方、前記検出値が前記設定電圧値を上回ってから前記最小値に達するまでの第2期間は前記第2スイッチング素子をオフ状態にする第1制御処理と、
前記第2状態時に、前記第2スイッチング素子を連続オン状態にする第2制御処理と、
を実行することを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項2】
前記検出回路は、
前記脈流電圧を分圧する抵抗分圧回路と、
前記抵抗分圧回路の分圧点と前記第2制御部との間に設けられたヒステリシス回路と、
を備え、
前記ヒステリシス回路は、
前記第1期間に第1レベルの信号を出力する一方、前記第2期間に第2レベルの信号を出力し、
前記第2制御部は、
前記第1レベルの信号が入力されている間は前記第2スイッチング素子をオン状態にする一方、前記第2レベルの信号が入力されている間は前記第2スイッチング素子をオフ状態にすることを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源装置。
【請求項3】
前記抵抗分圧回路の一端は、
前記電圧変換回路の前記高電位側の出力端に接続されるとともに、ダイオードを介して前記直列回路の前記一端に接続され、
前記抵抗分圧回路の他端は、
前記電圧変換回路の前記低電位側の出力端に接続されることを特徴とする請求項2に記載のスイッチング電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチング電源装置としては、例えば、特許文献1に記載の自励式のフライバックコンバータや、図5に示す他励式のフライバックコンバータ1Cが知られている。
【0003】
フライバックコンバータ1Cは、一次巻線N1および二次巻線N2を有するトランスTR1を備え、一次巻線N1側にブリッジダイオードD1、コンデンサC1、スイッチング素子Q1、制御部IC1を備え、二次巻線N2側にダイオードD2、コンデンサC2、フィードバック回路(抵抗R1~R4、シャントレギュレータIC2、フォトカプラPC1)を備える。
【0004】
フライバックコンバータ1Cは、交流電源Eから入力された交流電圧をブリッジダイオードD1で全波整流し、コンデンサC1で平滑することで直流電圧に変換し、変換した直流電圧をスイッチング素子Q1でスイッチングしてトランスTR1の一次巻線N1に印加する。スイッチング素子Q1は、制御部IC1の制御下でPWM制御される。
【0005】
トランスTR1の一次巻線N1に電圧が印加されると、トランスTR1の二次巻線N2に電圧が誘起される。フライバックコンバータ1Cは、二次巻線N2の誘起電圧をダイオードD2で整流し、コンデンサC2で平滑することで、直流の電圧(出力電圧)に変換して出力する。
【0006】
フライバックコンバータ1Cは、出力電圧を抵抗R1、R2で分圧し、シャントレギュレータIC2で分圧電圧と所定の基準電圧とを比較し、比較結果に関する信号をフォトカプラPC1で制御部IC1のフィードバック端子FBにフィードバックする。制御部IC1は、フィードバック端子FBの端子電圧(以下、FB電圧)に基づいて、スイッチング素子Q1のPWM制御信号を生成する。
【0007】
具体的には、制御部IC1は、三角波電圧を発振する三角波発振器を備え、三角波電圧とFB電圧とを比較することで、PWM制御信号を生成する。図6(A)は、待機時(軽負荷時)における三角波電圧とFB電圧との関係を示し、図6(B)は、定格時(重負荷時)における三角波電圧とFB電圧との関係を示す。制御部IC1は、FB電圧が三角波電圧よりも小さいときはスイッチング素子Q1をオフさせ、FB電圧が三角波電圧以上のときはスイッチング素子Q1をオンさせるようなPWM制御信号を生成する。
【0008】
図6に示すように、定格時に比べて待機時はFB電圧が低下するので、制御部IC1は、FB電圧に基づいて待機時か定格時かを判定する。待機時と判定した場合、制御部IC1は、例えば、三角波電圧の周波数を自動的に低下させることで、スイッチング素子Q1のスイッチング周波数を自動的に低下させる。または、制御部IC1は、スイッチング素子Q1のスイッチング動作を自動的に間欠動作に切り換える。これにより、待機時のスイッチングロスを低減し、待機電力を低減することができる。
【0009】
しかしながら、入力電圧範囲が広い仕様の場合、例えば、入力電圧が全世界対応のAC85[V]~AC264[V]の場合、高い入力電圧時に高電圧スイッチングによるスイッチングロスが増加し、待機電力が増加するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2012-44821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その課題とするところは、高入力電圧時における待機電力を改善することが可能なスイッチング電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明に係るスイッチング電源装置は、
入力電圧を脈流電圧に変換する電圧変換回路と、
一次巻線および二次巻線を有するトランスと、
前記脈流電圧をスイッチングして前記一次巻線に印加する第1スイッチング素子と、
前記第1スイッチング素子を制御する第1制御部と、
前記二次巻線の誘起電圧を直流化した出力電圧を出力する直流化回路と、
を備えるスイッチング電源装置であって、
直列接続されたコンデンサおよび第2スイッチング素子からなり、一端が前記電圧変換回路の高電位側の出力端に接続され、他端が前記電圧変換回路の低電位側の出力端に接続される直列回路と、
前記第2スイッチング素子を制御する第2制御部と、
前記脈流電圧を検出する検出回路と、
を備え、
前記第2制御部は、
第1状態時か前記第1状態時よりも前記出力電圧の電圧値が大となる第2状態時かを判定する判定処理と、
前記第1状態時に、前記検出回路の検出値が最小値から所定の設定電圧値に達するまでの第1期間は前記第2スイッチング素子をオン状態にする一方、前記検出値が前記設定電圧値を上回ってから前記最小値に達するまでの第2期間は前記第2スイッチング素子をオフ状態にする第1制御処理と、
前記第2状態時に、前記第2スイッチング素子を連続オン状態にする第2制御処理と、
を実行することを特徴とする。
【0013】
この構成では、第1制御処理により、第1期間に脈流電圧がコンデンサにより平滑される一方で、第2期間は脈流電圧が平滑されない。コンデンサの電圧は第1期間の終了時点の低い電圧に維持されるので、第2期間において第1スイッチング素子の電流路に印加される電圧を低減することができ、第1スイッチング素子のスイッチングロスを低減することができる。したがって、この構成によれば、高入力電圧時における待機電力を改善することができる。
【0014】
上記スイッチング電源装置において、
前記検出回路は、
前記脈流電圧を分圧する抵抗分圧回路と、
前記抵抗分圧回路の分圧点と前記第2制御部との間に設けられたヒステリシス回路と、
を備え、
前記ヒステリシス回路は、
前記第1期間に第1レベルの信号を出力する一方、前記第2期間に第2レベルの信号を出力し、
前記第2制御部は、
前記第1レベルの信号が入力されている間は前記第2スイッチング素子をオン状態にする一方、前記第2レベルの信号が入力されている間は前記第2スイッチング素子をオフ状態にするよう構成できる。
【0015】
上記スイッチング電源装置において、
前記抵抗分圧回路の一端は、
前記電圧変換回路の前記高電位側の出力端に接続されるとともに、ダイオードを介して前記直列回路の前記一端に接続され、
前記抵抗分圧回路の他端は、
前記電圧変換回路の前記低電位側の出力端に接続されるよう構成できる。
【0016】
上記スイッチング電源装置において、
前記出力電圧を検出して前記第1制御部にフィードバック信号を出力するフィードバック回路をさらに備え、
前記第1制御部は、前記フィードバック信号が入力されるフィードバック端子を備え、
前記第2制御部は、前記フィードバック端子の端子電圧に基づいて前記判定処理を実行するよう構成できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、高入力電圧時における待機電力を改善することが可能なスイッチング電源装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態に係るスイッチング電源装置の回路図である。
図2】ヒステリシス回路の回路図である。
図3】待機時における第2スイッチング素子のオン/オフ期間を示す図である。
図4】第2実施形態に係るスイッチング電源装置の回路図である。
図5】従来のスイッチング電源装置の回路図である。
図6】第1スイッチング素子のオン/オフ期間を示す図であって、(A)は待機時の図、(B)は定格時の図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明に係るスイッチング電源装置の実施形態について説明する。
【0020】
[第1実施形態]
図1に、本発明の第1実施形態に係るスイッチング電源装置1Aを示す。スイッチング電源装置1Aは、広い入力電圧範囲に対応した(例えば、入力電圧が全世界対応のAC85[V]~AC264[V]の)フライバックコンバータである。
【0021】
スイッチング電源装置1Aは、トランスTR1と、電圧変換回路2と、第1スイッチ回路3と、直流化回路4と、フィードバック回路5と、検出回路6と、ダイオードD3と、第2スイッチ回路7とを備える。
【0022】
トランスTR1は、一次巻線N1および二次巻線N2を備える絶縁トランスである。一次巻線N1および二次巻線N2は、コイルの巻き方向が逆になっている。トランスTR1は、一次巻線N1に電圧が印加されると、二次巻線N2に電圧が誘起される。
【0023】
電圧変換回路2は、ブリッジダイオードD1を含む。ブリッジダイオードD1の入力端は交流電源Eに接続される。ブリッジダイオードD1の高電位側の出力端は、ダイオードD3を介してトランスTR1の一次巻線N1の一端(黒丸側)に接続され、一次巻線N1の他端は、第1スイッチ回路3に含まれる第1スイッチング素子Q1の電流路を介してブリッジダイオードD1の低電位側の出力端に接続される。ブリッジダイオードD1は、交流電源Eから供給された交流電圧(本発明の「入力電圧」に相当)を全波整流し、脈流電圧に変換して出力する。
【0024】
第1スイッチ回路3は、第1スイッチング素子Q1と、第1制御部IC1とを含む。第1スイッチング素子Q1は、FET(本実施形態では、NチャネルMOSFET)であり、第1制御部IC1は、PWM制御を行うためのフライバックコンバータ制御ICである。
【0025】
第1スイッチング素子Q1は、ゲートが第1制御部IC1の出力端子に接続され、ドレインが一次巻線N1の他端に接続され、ソースがブリッジダイオードD1の低電位側の出力端に接続される。第1スイッチング素子Q1は、ブリッジダイオードD1から出力された脈流電圧をスイッチングして一次巻線N1に印加する。
【0026】
第1制御部IC1は、三角波発振器、出力端子およびフィードバック端子FBを有する。第1制御部IC1は、三角波発振器で発振した三角波電圧とフィードバック端子FBの端子電圧(以下、FB電圧)とを比較することでPWM制御信号を生成し、PWM制御信号に基づいて第1スイッチング素子Q1をオン/オフさせる。
【0027】
また、第1制御部IC1は、FB電圧に基づいて待機時(軽負荷時)か定格時(重負荷時)かを判定する。第1制御部IC1は、FB電圧が所定の閾値以下の場合に待機時と判定し、FB電圧が上記閾値よりも大きい場合に定格時と判定する。待機時と判定した場合、第1制御部IC1は、第1スイッチング素子Q1のスイッチング周波数を自動的に低下させるか、または第1スイッチング素子Q1のスイッチング動作を自動的に間欠動作に切り換えることが好ましい。待機時(軽負荷時)は、本発明の「第1状態時」に相当し、定格時(重負荷時)は、本発明の「第2状態時」に相当する。
【0028】
直流化回路4は、ダイオードD2と、コンデンサC2とを含む。ダイオードD2は、アノードがトランスTR1の二次巻線N2の他端に接続され、カソードがコンデンサC2の一端(+側)に接続される。コンデンサC2の他端(-側)は、トランスTR1の二次巻線N2の一端(黒丸側)に接続される。直流化回路4は、二次巻線N2の誘起電圧をダイオードD2で整流し、コンデンサC2で平滑することで、直流の電圧(本発明の「出力電圧」に相当)に変換して出力する。
【0029】
フィードバック回路5は、抵抗R1~R4と、シャントレギュレータIC2と、フォトカプラPC1とを含む。抵抗R1、R2は抵抗分圧回路を構成し、一端(抵抗R1側)がコンデンサC2の一端(+側)に接続され、他端(抵抗R2側)がコンデンサC2の他端(-側)に接続される。シャントレギュレータIC2は、リファレンス端子が抵抗R1、R2の接続点に接続され、アノード端子が抵抗R2とコンデンサC2との接続点に接続され、カソード端子がフォトカプラPC1の発光素子に接続される。フォトカプラPC1の受光素子は、第1制御部IC1のフィードバック端子FBに接続される。
【0030】
フィードバック回路5は、直流化回路4から出力された出力電圧を抵抗R1、R2で分圧し、シャントレギュレータIC2で分圧電圧と所定の基準電圧とを比較し、比較結果に関する信号をフォトカプラPC1で第1制御部IC1のフィードバック端子FBにフィードバックする。
【0031】
検出回路6は、抵抗R5、R6と、ヒステリシス回路5aとを含む。抵抗R5、R6は抵抗分圧回路を構成し、ブリッジダイオードD1の出力端間に接続される。抵抗R5、R6からなる抵抗分圧回路の分圧点は、ヒステリシス回路5aを介して第2スイッチ回路7の第2制御部IC3に接続される。分圧点における電圧値が、本発明の「検出値」に相当する。
【0032】
図2に、ヒステリシス回路5aの回路図を示す。ヒステリシス回路5aは、ヒステリシスコンパレータであって、入力端T1と、出力端T2と、コンパレータCP1と、抵抗R11~R14、抵抗Rpとを備える。入力端T1は抵抗R5、R6からなる抵抗分圧回路の分圧点に接続され、出力端T2は第2制御部IC3に接続される。
【0033】
ヒステリシス回路5aは、入力端T1に入力される入力信号に応じて、第1レベル(ハイレベル)または第2レベル(ローレベル)の出力信号を出力する。具体的には、ヒステリシス回路5aは、入力信号の電圧値(検出値)が所定の第1基準値を上回ると、出力信号を第1レベルから第2レベルに切り替え、検出値が所定の第2基準値を下回ると、出力信号を第2レベルから第1レベルに切り替える。第1基準値は、後述する「設定電圧値」に設定され、第2基準値は、ゼロ近辺の値、例えば、ゼロを含まない最小設定値に設定される。
【0034】
再び図1を参照して、ダイオードD3は、アノードがブリッジダイオードD1の高電位側の出力端と抵抗R5との接続点に接続され、カソードが第2スイッチ回路7に含まれるコンデンサC1の一端(+側)に接続される。
【0035】
第2スイッチ回路7は、コンデンサC1および第2スイッチング素子Q2からなる直列回路と、第2制御部IC3とを含む。第2スイッチング素子Q2は、FET(本実施形態では、NチャネルMOSFET)であり、第2制御部IC3は、第2スイッチング素子Q2の駆動回路である。
【0036】
コンデンサC1は、一端(+側)がダイオードD3のカソードおよび一次巻線N1の一端に接続され、他端(-側)が第2スイッチング素子Q2のドレインに接続される。第2スイッチング素子Q2は、ゲートが第2制御部IC3の出力端子に接続され、ソースがブリッジダイオードD1の低電位側の出力端に接続される。
【0037】
第2制御部IC3は、入力端子、出力端子およびフィードバック端子FB’を有する。入力端子はヒステリシス回路5aの出力端T2に接続され、出力端子は第2スイッチング素子Q2のゲートに接続され、フィードバック端子FB’は第1制御部IC1のフィードバック端子FBに接続される。
【0038】
第2制御部IC3は、判定処理と、第1制御処理と、第2制御処理とを実行する。判定処理において、第2制御部IC3は、第1制御部IC1のフィードバック端子FBの端子電圧(FB電圧)に基づいて待機時か定格時かを判定する。第2制御部IC3は、FB電圧が所定の閾値(第1制御部IC1において設定された閾値)以下の場合に待機時と判定し、第1制御処理に移行する一方、FB電圧が上記閾値よりも大きい場合に定格時と判定して、第2制御処理に移行する。
【0039】
第1制御処理において、第2制御部IC3は、ヒステリシス回路5aから第1レベルの信号が入力されている間(第1期間)は第2スイッチング素子Q2をオン状態にする一方、ヒステリシス回路5aから第2レベルの信号が入力されている間(第2期間)は第2スイッチング素子Q2をオフ状態にする。
【0040】
換言すれば、図3に示すように、検出回路6で検出された検出値(抵抗R5、R6からなる抵抗分圧回路の分圧点における電圧値)が最小値(本実施形態では、ゼロ)から設定電圧値V1に達するまでの第1期間は、第2スイッチング素子Q2がオン状態になる一方、検出値が設定電圧値V1を上回ってから再び最小値(本実施形態では、ゼロ)に達するまでの第2期間は、第2スイッチング素子Q2がオフ状態になる。図3において、第1期間はt0~t1、t2~t3、t4~t5の期間であり、第2期間はt1~t2、t3~t4、t5~t6の期間である。
【0041】
第1期間では、第2スイッチング素子Q2がオン状態になってコンデンサC1は充電されるが、コンデンサC1の電圧はなだらかに上昇するため、コンデンサC1に対する急激な充電電流(突入電流)は発生しない。第1期間から第2期間に移行すると、コンデンサC1の電圧は、第2スイッチング素子Q2がオフする直前の低い電圧に維持される。
【0042】
第2期間では、第2スイッチング素子Q2の寄生ダイオードにより、コンデンサC1に充電された電荷を放電するため放電経路が形成される(なお、第2スイッチング素子Q2としてトランジスタを使用する場合は、コレクタ・エミッタ間にダイオードを接続する必要がある)。第2期間では、第1スイッチング素子Q1がコンデンサC1の電圧をスイッチングして一次巻線N1に印加する。上記のとおり、コンデンサC1の電圧は第2スイッチング素子Q2がオフする直前の低い電圧であるため、第1スイッチング素子Q1の電流路(ドレイン・ソース間)に印加される電圧も低くなる。その結果、第1スイッチング素子Q1のスイッチングロスが低減され、待機電力が改善される。
【0043】
第2期間のうち、検出値が設定電圧値V1を下回ってからゼロに達するまでの期間に第2スイッチング素子Q2をオン状態にしないのは、当該期間に第2スイッチング素子Q2をオン状態にすると、コンデンサC1に対する急激な充電電流(突入電流)が発生し、電力損失が発生するためである。
【0044】
第2制御処理において、第2制御部IC3は、第2スイッチング素子Q2を連続オン状態にする。これにより、定格時(重負荷時)は、ブリッジダイオードD1の出力端間にコンデンサC1が接続された状態となり、コンデンサC1が平滑用コンデンサとして機能する。
【0045】
結局、本実施形態に係るスイッチング電源装置1Aでは、待機時(軽負荷時)において、第2スイッチング素子Q2がオン状態の第1期間に脈流電圧がコンデンサC1により平滑される一方で、第2スイッチング素子Q2がオフ状態の第2期間は脈流電圧が平滑されない。コンデンサC1の電圧は第1期間の終了時点の低い電圧に維持されるので、第2期間において第1スイッチング素子Q1の電流路に印加される電圧も低減される。
【0046】
したがって、本実施形態に係るスイッチング電源装置1Aによれば、第1スイッチング素子Q1のスイッチングロスを低減することができ、高入力電圧時における待機電力を改善することができる。
【0047】
[第2実施形態]
図4に、本発明の第2実施形態に係るスイッチング電源装置1Bを示す。スイッチング電源装置1Bは、ダイオードD3を有していない点、電圧変換回路2’がダイオードD4、D5を有している点において、第1実施形態と異なる。
【0048】
ダイオードD4、D5は、カソード同士が接続されており、ブリッジダイオードD1の入力端間に設けられている。ダイオードD4、D5のカソード同士の接続点は、抵抗R5、R6からなる抵抗分圧回路の一端(抵抗R5側)に接続される。
【0049】
本実施形態に係るスイッチング電源装置1Bによれば、第1実施形態と同様に、第1スイッチング素子Q1のスイッチングロスを低減することができ、高入力電圧時における待機電力を改善することができる。
【0050】
また、本実施形態に係るスイッチング電源装置1Bによれば、ダイオードD4、D5を有しているため、第1実施形態と比較して回路構成が大型化するものの、定格時(重負荷時)に、ダイオードD3による電力損失を回避することができる。
【0051】
[変形例]
以上、本発明に係るスイッチング電源装置の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0052】
本発明のスイッチング電源装置は、入力電圧を脈流電圧に変換する電圧変換回路と、トランスと、脈流電圧をスイッチングしてトランスの一次巻線に印加する第1スイッチング素子と、第1スイッチング素子を制御する第1制御部と、電圧変換回路の出力端間に接続されたコンデンサおよび第2スイッチング素子を含む直列回路と、第2スイッチング素子を制御する第2制御部と、脈流電圧を検出する検出回路と、を備えていればよい。
【0053】
そして、第2制御部が、第1状態時か第1状態時よりも出力電圧の電圧値が大となる第2状態時かを判定する判定処理と、第1状態時に、検出回路の検出値が最小値から設定電圧値に達するまでの第1期間は第2スイッチング素子をオン状態にする一方、検出値が設定電圧値を上回ってから最小値に達するまでの第2期間は第2スイッチング素子をオフ状態にする第1制御処理と、第2状態時に、第2スイッチング素子を連続オン状態にする第2制御処理とを実行するのであれば、適宜構成を変更できる。
【0054】
本発明のヒステリシス回路は、第1期間に第1レベルの信号を出力する一方、第2期間に第2レベルの信号を出力するのであれば、適宜構成を変更できる。
【0055】
上記実施形態では、フライバックコンバータを例に挙げて説明したが、本発明は他の方式のスイッチング電源装置、例えば、フォワードコンバータ、ハーフブリッジコンバータ、フルブリッジコンバータ、プッシュプルコンバータ等にも適用できる。
【0056】
上記実施形態では、第2制御部IC3と第1制御部IC1とを別の構成にしているが、単一の制御部として構成してもよい。また、第2制御部IC3がヒステリシス回路5aの機能(ヒステリシス)を備えていてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1A、1B スイッチング電源装置
2、2’ 電圧変換回路
3 第1スイッチ回路
4 直流化回路
5 フィードバック回路
5a ヒステリシス回路
6 検出回路
7 第2スイッチ回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6