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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】飛沫感染防止のための衝立
(51)【国際特許分類】
   A47B 13/00 20060101AFI20241003BHJP
   A47B 96/04 20060101ALI20241003BHJP
   A47G 5/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
A47B13/00 Z
A47B96/04 Z
A47G5/00 D
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021039488
(22)【出願日】2021-03-11
(65)【公開番号】P2022139213
(43)【公開日】2022-09-26
【審査請求日】2023-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】北島 信行
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-159034(JP,A)
【文献】特開平08-207899(JP,A)
【文献】特開2022-057326(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 13/00
A47B 96/04
A47G 5/00
A47B 17/00
A47B 17/04
F24F 9/00
E04B 2/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波ミスト発生器、
前記超音波ミスト発生器に接続するように構成され、前記超音波ミスト発生器によって発生するミストが通過可能な少なくとも一つの第1の開口を有するガイドチューブ、および
複数の第2の開口を有するパネルを備え、
前記パネルは、折り畳まれることによって、互いに重なる二つの折り重なり部分で前記ガイドチューブを挟むように構成され、
前記複数の第2の開口は、前記二つの折り重なり部分に含まれるように配置される、飛沫感染防止のための衝立。
【請求項2】
前記パネルは、前記パネルが折り畳まれた際、前記二つの折り重なり部分の境界に対して平行な方向に前記ガイドチューブが延伸するように前記ガイドチューブを挟む、請求項1に記載の衝立。
【請求項3】
前記パネルは、前記パネルが折り畳まれた際、前記二つの折り重なり部分の境界に対して垂直な方向に前記ガイドチューブが延伸するように前記ガイドチューブを挟む、請求項1に記載の衝立。
【請求項4】
前記ガイドチューブは分岐する、請求項1に記載の衝立。
【請求項5】
前記パネルは、第1の領域、第の領域、および前記第1の領域と前記第の領域に挟まれる第の領域を有し、
前記複数の第2の開口は、前記第2の領域に選択的に配置される、請求項1に記載の衝立。
【請求項6】
溝を有する台座をさらに備え、
前記溝は、前記二つの折り重なり部分の主面が水平面に対して垂直な状態で前記パネルを支持するように構成される、請求項1に記載の衝立。
【請求項7】
前記溝に収容されるヒータをさらに備える、請求項6に記載の衝立。
【請求項8】
超音波ミスト発生器、
前記超音波ミスト発生器に接続するように構成され、前記超音波ミスト発生器によって発生するミストが通過可能な少なくとも一つの第1の開口を有するガイドチューブ、および
複数の第2の開口をそれぞれ有する第1のパネルと第2のパネルを備え、
前記第1のパネルと前記第2のパネルは、前記ガイドチューブを挟むように構成される、飛沫感染防止のための衝立。
【請求項9】
前記第1のパネルと前記第2のパネルを互いに固定する固定具をさらに備え、
前記固定具は、前記第1のパネルと前記第2のパネルの主面が水平面に対して垂直な状態において前記ガイドチューブが前記第1のパネルと前記第2のパネルに挟まれるように、前記第1のパネルと前記第2のパネルを固定する、請求項8に記載の衝立。
【請求項10】
前記ガイドチューブは、前記第1のパネルと前記第2のパネルに挟まれた際、水平面に対して平行に配置されるように構成される、請求項8に記載の衝立。
【請求項11】
前記ガイドチューブは分岐する、請求項8に記載の衝立。
【請求項12】
前記第1のパネルと前記第2のパネルの各々は、第1の領域、第の領域、および前記第1の領域と前記第の領域に挟まれる第の領域を有し、
前記複数の第2の開口は、前記第2の領域に選択的に配置される、請求項8に記載の衝立。
【請求項13】
溝を有する台座をさらに備え、
前記溝は、前記第1のパネルと前記第2のパネルの主面が水平面に対して垂直な状態で前記第1のパネルと前記第2のパネルを支持するように構成される、請求項8に記載の衝立。
【請求項14】
前記溝に収容されるヒータをさらに備える、請求項13に記載の衝立。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態の一つは、飛沫感染防止のための道具に関する。
【背景技術】
【0002】
感染症が伝播する経路の一つが、飛沫感染である。室内で飛沫感染を防止するためのツールとして、自由に高さ調整可能なパネルを備える衝立(間仕切り)が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6822600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態の一つは、飛沫感染を効果的に防止できる道具を提供することを課題の一つとする。例えば、本発明の実施形態の一つは、簡便に組み立てることができ、かつ、呼気中に含まれる感染症の原因となる物質を捕捉可能な衝立を提供することを課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態の一つは、飛沫感染防止のための衝立である。この衝立は、超音波ミスト発生器、ガイドチューブ、およびパネルを備える。ガイドチューブは、超音波ミスト発生器に接続するように構成され、超音波ミスト発生器によって発生するミストが通過可能な少なくとも一つの第1の開口を有する。パネルは、複数の第2の開口を有する。パネルは、折り畳まれることによって、互いに重なる二つの折り重なり部分でガイドチューブを挟むように構成される。複数の第2の開口は、二つの折り重なり部分に含まれるように配置される。
【0006】
本発明の実施形態の一つは、飛沫感染防止のための衝立である。この衝立は、超音波ミスト発生器、ガイドチューブ、第1のパネル、および第2のパネルを備える。ガイドチューブは、超音波ミスト発生器に接続するように構成され、超音波ミスト発生器によって発生するミストが通過可能な少なくとも一つの第1の開口を有する。第1のパネルと第2のパネルの各々は、複数の第2の開口を有する。第1のパネルと第2のパネルは、ガイドチューブを挟むように構成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態の一つにより、感染症の感染者が会話中であっても、呼気に含まれる感染症原因物質を効果的に捕捉することができる。また、本発明の実施形態の一つにより、感染症蔓延を防止しつつ、自然な会話を行うことができる衝立を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態の一つに係る衝立の模式的正面図。
図2】本発明の実施形態の一つに係る衝立の一部の模式的正面図と端面図。
図3】本発明の実施形態の一つに係る衝立の模式的端面図。
図4】本発明の実施形態の一つに係る衝立の模式的端面図。
図5】本発明の実施形態の一つに係る衝立の実施態様を示す模式図。
図6】本発明の実施形態の一つに係る衝立の一部の模式的上面図と端面図。
図7】本発明の実施形態の一つに係る衝立の模式的正面図と側面図。
図8】本発明の実施形態の一つに係る衝立の模式的正面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の各実施形態について、図面などを参照しつつ説明する。ただし、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な態様で実施することができ、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0010】
図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状などについて模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0011】
以下、本発明の実施形態の一つに係る、飛沫感染防止のための衝立100について説明する。衝立100は、人の呼気に含まれ、感染症の原因となる物質である細菌やウイルス、真菌などを捕捉する間仕切り板として機能し、床面の上、机などの移動可能な家具の上、あるいはカウンターなどの室内または屋外に固定された備品上に設置することができる。図1に示すように、衝立100は、ミスト発生器110、ガイドチューブ130、およびパネル120を基本的な構成として備える。
【0012】
1.ミスト発生器
ミスト発生器110は、霧状の水(以下、ミスト)を生成する装置である。ミストの平均直径は、例えば5μm以上50μm以下または10μm以上20μm以下である。ミスト発生器110がミストを発生する機構に制約はなく、水をヒータによって加熱することでミストを発生させてもよく、機械的にミストを発生させてもよい。機械的手法を採用する場合には、空気または加熱された空気を水に供給することでミストを発生させてもよく、あるいは圧電素子に高周波交流電圧を印加することで生じる超音波によってミストを発生させてもよい。発生させるミストの量は、ガイドチューブ130やパネル120の大きさを考慮して適宜調整すればよく、例えば1時間当たり100mL以上1000mL以下のミストを発生するようにミスト発生器110を構成すればよい。
【0013】
ミストの原料となる水は、水単体でもよく、エタノールや次亜塩素酸、次亜塩素酸ナトリウム、クエン酸、乳酸、グリセリン脂肪酸エステルなどの消毒または殺菌作用を有する薬品を含んでもよい。この場合、ミスト中に薬品が含まれるようにミストを生成するために、超音波を利用してミストを発生する超音波ミスト発生器をミスト発生器110として用いることが好ましい。
【0014】
2.ガイドチューブ
ガイドチューブ130は、ミスト発生器110によって生成するミストをパネル120に供給する機能を有する。このため、ガイドチューブ130は管状構造を有し、少なくとも一方の端部は閉じられておらず、ミスト発生器110に接続されるように構成される。ガイドチューブ130の直径や長さは、パネル120の大きさやミスト発生器110との距離などによって適宜設定すればよい。例えばガイドチューブ130の直径は、3cm以上20cm以下または5cm以上10cm以下の範囲から適宜選択すればよい。ガイドチューブ130の長さは、50cm以上5m以下、75cm以上3m以下、または90cm以上2m以下の範囲から選択すればよい。
【0015】
図2(A)にガイドチューブ130の模式的側面図を示す。この図から理解されるように、ガイドチューブ130は、全体または一部に少なくとも一つの開口134を有する。少なくとも一つの開口134は複数の開口134を含んでもよい。ガイドチューブ130の一部に開口134が設けられる場合には、パネル120と水平方向または鉛直方向において重なる領域(重畳領域)132に開口134を設ければよく、開口134が設けられる部分とミスト発生器110の間の部分(非重畳領域)には開口134を設けなくてもよい。
【0016】
開口134はミストが通過できる大きさを有し、例えば0.25mm以上10mm以下の面積を有する開口134がガイドチューブ130の側面に設けられる。開口134の配置も任意であり、図2(B)に示すようにガイドチューブ130の側面に均一な密度で配置されていてもよく、あるいは図2(A)に示すように不均一に配置されていてもよい。前者の場合、ガイドチューブ130はメッシュ状であってもよい。例えば、ガイドチューブ130の延伸方向に垂直な模式的端面図(図2(D))に示すように、巻かれたメッシュ状のシートでもよい。開口134の形状も任意に決定すればよく、円や楕円でもよく、あるいは図2(C)に示すように、スリット形状を有してもよい。スリット形状を有する場合には、幅に対する長さが2倍以上10倍以下の範囲になるよう、開口134を設ければよい。なお、ミスト発生器110に接続される端部と反対側の端部は、開放されていてもよく、閉じられていてもよい。
【0017】
ガイドチューブ130は、例えばアルミニウムやステンレスなどの金属材料を含んでもよく、あるいはポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリスチレンや置換ポリスチレンなどのポリスチレン類、メチル(メタ)クリレートやエチル(メタ)クリレートなどのポリ(メタ)クリレート、ポリ(エチレンテレフタレート)やポリ(エチレンナフタレート)などのポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、シリコンゴム、ポリ乳酸、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンの共重合体、ポリ塩化ビニルなどに例示される高分子材料を含んでもよい。あるいは、ガイドチューブ130はガラスを含んでもよい。ガイドチューブ130は、自由に変形できるよう可撓性を有してもよく、あるいは変形が実質的にできない程度の高い剛性(低い可撓性)を有してもよい。あるいは、重畳領域132は変形が実質的にできない程度の高い剛性を有し、開口134が設けられない非重畳領域は変形可能な程度の可撓性を備えるよう、ガイドチューブ130を構成してもよい。図示しないが、ガイドチューブ130の一部(例えば、開口134が設けられる部分)または全体が蛇腹の形状を有してもよい。
【0018】
3.パネル
パネル120は、ガイドチューブ130に導入された後に開口134から流出するミストを一定の厚さを有する平坦な空間へ拡散させることによってミストのカーテンを形成する機能を有する。このため、図1図3(A)に示すように、パネル120は、ガイドチューブ130の少なくとも一部を内部に収容できるように折り畳まれた構造を有する。可撓性を有するパネル120を用い、ガイドチューブ130を内部に収容するように折り曲げるまたは折り畳んでもよい。パネル120の形状は任意であるが、正方形または長方形が好ましい。正方形、または長方形の形状を有することで、パネル120を二つ折りにした際、互いに重なる二つの辺でパネル120を安定的に静置することができる(図3(A))。
【0019】
パネル120に可撓性を付与する場合には、パネル120は、ポリオレフィン、ポリスチレン類、ポリ(メタ)クリレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、シリコンゴム、ポリ乳酸、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンの共重合体、ポリ塩化ビニルなどの高分子を含み、折り曲げるまたは折り畳むことが可能な厚さで形成される。具体的には、0.1mm以上5mm以下または1mm以上3mm以下の厚さで形成することができる。パネル120は着色されていてもよく、可視光の波長領域全体に亘って透明または実質的に透明でもよい。
【0020】
ミストは空気よりも重い。このため、ミストのカーテンを形成するため、図3(A)に示すように、パネル120は、折り畳まれたパネル120の折り目側(すなわち、折り重なる二つの部分の境界側)が上に位置するように設置される。ガイドチューブ130は、パネル120の互いに折り重なる部分によって挟まれ、かつ、これらの折り重なり部分によって形成される平坦な空間(以下、拡散空間)の上部に配置される。この場合、ガイドチューブ130は、折り重なり部分の境界と平行になるように配置される。開口134が不均一にガイドチューブ130に設けられる場合には、開口134が高密度で形成された側面が下に向くようにガイドチューブ130を配置することが好ましい。このような配置により、ガイドチューブ130の開口134から流出するミストが拡散空間内で拡散しながら下降流を形成し、ミストのカーテンが形成される。
【0021】
パネル120とガイドチューブ130は、これらの間の摩擦力によって互いに固定されてもよく、図示しない接着剤や固定具を用いて固定してもよい。固定具としては、例えば人工繊維または天然繊維で形成されるロープ、結束バンド、針金などを用いればよい。
【0022】
さらに、衝立100によって感染症の原因となる物質をミストのカーテンで捕捉するため、パネル120には複数の開口122が設けられる(図1図3(A))。各開口122の形状や大きさは任意に決定すればよいが、ミストがパネル120から流出する速度を抑制してミストのカーテンを安定的に形成し、かつ、パネル120に向かって飛翔する感染症の原因となる物質が通過できるように調整される。例えば、開口122は、0.25mm以上100mm以下または1mm以上25mm以下の面積を有する円形、正方形、四角形、楕円、またはこれらの組み合わせの形状を有することができる。パネル120はメッシュ状でもよい。
【0023】
パネル120は、単一の部材で一体的に形成され、折り畳むことで拡散空間を形成してもよいが、図3(B)に示すように、パネル120を一対のパネル(第1のパネル120-1、第2のパネル120-2)で構成してもよい。すなわち、衝立100は二つのパネル120を備えてもよい。一対のパネル120は、互いに対向するように設置される。衝立100が設置されたまたは使用される状態では、パネル120の主面は互いに平行であり、水平面に対して垂直でもよい。図示しないが、ガイドチューブ130から離れるにしたがって一対のパネル120間の距離が大きくなるように一対のパネル120を設置してもよい。一対のパネル120は折り畳まずにまたは折り曲げずに使用してもよいため、変形できる程度の高い可撓性を有する必要は無い。したがって、その厚さは、0.1mm以上10mm以下または1mm以上5mm以下でもよい。また、一対のパネル120は上述した高分子材料を含んでもよく、あるいは金属やガラスなどの無機化合物を含んでもよい。
【0024】
一対のパネル120を用いる場合には、衝立100は、一対のパネル120を互いに固定する固定具を含んでもよい。固定具の固定機構は任意に選択すればよく、例えば一対の溝112aが形成された固定板112を用いてもよい。あるいは、人工繊維または天然繊維で形成されるロープ、結束バンド、針金などを固定具として用いてもよい。あるいは、図3(C)に示すように、一つの辺から当該辺に最も近い開口122までの全体または一部の厚さを、他の部分の厚さよりも大きくなるようにパネル120を構成してもよい。これにより、厚さが大きい部分が脚124として働き、固定具を用いなくてもパネル120を自立させることができる。
【0025】
上述したように、パネル120には複数の開口122が設けられるが、必ずしもパネル120の全面に亘って開口122を設ける必要は無く、部分的に設けてもよい。例えば、パネル120の主面の面積の10%以上60%以下または20%以上50%以下の領域に選択的に開口122を設けてもよい。例えば、可撓性の単一のパネル120を用いる場合には、図4(A)に示すように、パネル120に第1の領域120a、第2の領域120b、第3の領域120c、第4の領域120d、および第5の領域120eをこの順で設定すればよい。この時、パネル120を折り畳むと、第1の領域120aと第5の領域120eが折り重なり、第2の領域120bと第4の領域120dが折り重なり、第3の領域120cに折り重なり部分の境界が位置するよう、これらの領域を設定する。そして、第1の領域120a、第3の領域120c、および第5の領域120eには開口122を設けず、第1の領域120aと第3の領域120cに挟まれる第2の領域、および第3の領域120cと第5の領域120eに挟まれる第4の領域120dに開口122が含まれるようにパネル120を構成すればよい。一方、一対のパネル120を用いる場合には、各パネル120に第1の領域120a、第3の領域120c、および第1の領域120aと第3の領域120cに挟まれる第2の領域120bを設け、第2の領域120bに開口122を形成すればよい(図4(B)。なお、開口122は、衝立100を設置した際、水平方向において人の口と重なるように設定すればよい。単一のパネル120を折り曲げて使用し、かつ、開口122をパネル120に部分的に設ける場合には、第2の領域120bと第4の領域120dのパネル120中での位置は、水平方向において人の口と重なるように設定すればよい。同様に、一対のパネル120を用いる場合には、衝立100を設置した際に第2の領域120bが水平方向において人の口と重なるように設定すればよい。
【0026】
このように開口122を設けることで、ミストが開口122を介して拡散空間の外部へ短時間で流出することを抑制することができる。このため、拡散空間内部にはミストの下降流が維持される。一方、感染症の原因となる物質を開口122を介して拡散空間内部のミストに接触させることができる。このため、図5に模式的に示すように、複数の人が会話をする際に本発明の実施形態の一つである衝立100を人と人の間に設置することで、人の呼気に含まれる感染症原因物質を効果的に捕捉することができる。具体的には、発言する人が感染症に感染している場合、発言者の呼気(図中、曲線矢印)には感染症の原因となる物質と水を含む飛沫が含まれる。この飛沫が空気に接すると、飛沫は急速に水を失ってエアロゾルとなり、床面や机上に落ちること無く、長時間にわたり空気中を漂う。これは感染症が蔓延する原因の一つとなっている。しかしながら、衝立100を会話する人の間に設置すると、発言者の呼気から生成されるエアロゾルは開口122を通ってミストのカーテンと接する。その結果、エアロゾルに水が供給され、拡散空間の内部で飛沫となって落下させることができる(図中、直線矢印)。このため、会話する人の間で感染症原因物質が伝播する確率を低下させることができる。また、パネル120が着色していても、開口122を通して相手を視認することができるため、衝立100を介しても自然な会話を行うことができる。
【0027】
上述したように、衝立100は、ミスト発生器110とパネル120、およびミスト発生器110とパネル120を接続するガイドチューブ130を基本構成として備える。このため、簡便に組み立てることができ、解体も容易である。特にパネル120とガイドチューブ130は、これらを高分子材料で形成することで軽量となるため、衝立100を容易に移動して任意の場所に設置することができる。
【0028】
4.他の構成
任意の構成として、図3(A)、図3(B)、図4(A)、図4(B)に示すように、衝立100は、落下した飛沫を受ける台座140を含んでもよい。台座140は、ガイドチューブ130に対向する側に、ガイドチューブ130に対して下に配置される。台座140は溝を有しており、この溝に折り畳まれた一つのパネル120、または一対のパネル120を収容するように構成される。台座140を設けることで、単一のパネル120が折り畳まれた際には折り重なり部分の主面が水平面に対して垂直な状態となるように、パネル120を支持することができる。一対のパネル120を用いる場合には、これらの主面が水平面に対して垂直な状態となるように、パネル120を支持することができる。また、溝を有する台座140を設けることで、落下した飛沫やミストが床面や机上に広がることを防止することができるので、捕捉された感染症原因物質による衛生環境の悪化を防止することができる。
【0029】
模式的上面図である図6(A)に示すように、衝立100はさらに、任意の構成として、台座140の溝内に配置される一つまたは複数のヒータ142を備えてもよい。ヒータ142は、図示しないケーブルを介して電源と接続されてもよく、台座140内にバッテリを搭載し、バッテリからの電源の供給を受けてもよい。ヒータ142の構成に制約はないが、例えば図6(A)の鎖線A-A´に沿った断面の模式図(図6(B))に示されるように、ヒータ142は、電流を流すことで発熱する電熱線144や、電熱線144を取り囲み、電熱線144で生成する熱を効果的に伝えるための絶縁体146、および絶縁体を取り囲む金属シース148などで構成してもよい。ヒータ142は、例えば100℃以上300℃以下または100℃以上200℃以下に加熱されるように構成することができる。ヒータ142を設置することで、台座140に落下した飛沫を急速に加熱殺菌することができる。
【0030】
5.変形例
上述した実施形態では、ガイドチューブ130は水平面に対して平行になるように、折り畳まれたパネル120または一対のパネル120が形成する拡散空間に配置される。ガイドチューブ130の配置はこれに限られず、例えば図7(A)と図7(B)の模式的正面図と側面図に示すように、ガイドチューブ130を鉛直方向に延伸するように配置してもよい。単一のパネル120を折り畳む場合には、二つの折重なり部分の境界に対して垂直な方向に延伸するようにガイドチューブ130が配置される。このような配置を採用した場合も、ガイドチューブの開口134からミストを放出することができ、拡散空間内にミストのカーテンを形成することができる(図中矢印参照)。
【0031】
また、ガイドチューブ130は直鎖状に限られず、分岐していてもよい。ガイドチューブ130を分岐させ、複数の分岐部分を鉛直方向に延伸させることで、折り畳まれたパネル120を安定的に保持・固定することができる。
【0032】
さらに図8に示すように、衝立100は複数のミスト発生器110とそれに接続される複数のガイドチューブ130を含んでもよい。この場合には、折り畳まれることで複数のガイドチューブ130の全てを挟むことができる単一のパネル120、または複数のガイドチューブ130の全てと水平方向で重なる形状を有する一対のパネル120が衝立100に含まれる。複数のミスト発生器110を用いることで、より大量のミストを発生することができるため、大型のミストカーテンを形成する衝立100を提供することができる。
【0033】
本発明の実施形態として上述した各実施形態は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。各実施形態を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0034】
上述した各実施形態によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、または、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと理解される。
【符号の説明】
【0035】
100:衝立、110:ミスト発生器、112:固定板、112a:溝、120:パネル、120-1:第1のパネル、120-2:第2のパネル、120a:第1の領域、120b:第2の領域、120c:第3の領域、120d:第4の領域、120e:第5の領域、122:開口、124:脚、130:ガイドチューブ、132:重畳領域、134:開口、140:台座、142:ヒータ、144:電熱線、146:絶縁体、148:金属シース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8