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特許7565239帯鋸刃および帯鋸盤に帯鋸刃を装着する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】帯鋸刃および帯鋸盤に帯鋸刃を装着する方法
(51)【国際特許分類】
   B23D 61/12 20060101AFI20241003BHJP
   B24C 1/10 20060101ALI20241003BHJP
   B24C 1/00 20060101ALI20241003BHJP
   B24C 3/32 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B23D61/12 B
B24C1/10 A
B24C1/00 Z
B24C3/32 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021044740
(22)【出願日】2021-03-18
(65)【公開番号】P2022143940
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2024-01-04
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(73)【特許権者】
【識別番号】504279326
【氏名又は名称】株式会社アマダマシナリー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】辻本 晋
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-104940(JP,A)
【文献】特表平9-503166(JP,A)
【文献】特開2010-46731(JP,A)
【文献】特開2013-139078(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第0982093(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23D 61/12
B24C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯鋸盤に設けられた複数のホイールに巻回されて、前記帯鋸盤に装着され、
帯状部材の帯幅方向の片端面に、適宜間隔に形成されてそれぞれが先端部分に切削歯部を含む複数の鋸歯台と、前記複数の鋸歯台の各鋸歯台間に位置し歯底面を含むガレット部と、を備え、
前記ガレット部は、前記切削歯部で生じた切粉を収容し前記歯底面で前記切粉を案内する、前記歯底面が前記帯状部材の帯厚の方向に傾斜することのない直線部を含み、
前記ガレット部の前記歯底面は、前記帯状部材の両側面と直交し、
前記ガレット部の、前記帯鋸盤に装着された状態で前記複数のホイールと接触しない前記帯状部材の外側側面の側である歯底面の第一の側の第一側縁には、面取り加工部が形成されており、
帯鋸刃の帯厚をtとすると、前記帯鋸刃の前記帯厚の方向における前記面取り加工部の面取り量が0.1mm以上且つt/3以下である帯鋸刃。
【請求項2】
前記ガレット部において、前記帯鋸盤に装着された状態で前記複数のホイールと接触する前記帯状部材の内側側面の側である前記歯底面の第二側縁が0.1mm未満の面取り寸法でR面取りされており、前記面取り加工部と前記歯底面との縁および前記面取り加工部と前記帯状部材の外側側面との縁が0.1mm未満の面取り寸法でR面取りされており、各R面取りが、ショットブラストあるいはショットピーニングによって施されている、請求項1に記載の帯鋸刃。
【請求項3】
前記歯底面の直線部が、平面状部分を有する請求項1または請求項2に記載の帯鋸刃。
【請求項4】
前記歯底面における前記平面状部分の前記帯厚の方向における厚さが、2t/3~(t-0.1mm)である請求項3に記載の帯鋸刃。
【請求項5】
各切削歯部が、歯先側で次第に幅狭になるベベル有り歯あるいは歯先側で次第に幅広になるベベル無し歯である請求項1~4の何れか一項に記載の帯鋸刃。
【請求項6】
前記面取り加工部が、圧縮残留応力が付与された梨地仕上げの面である請求項1~5の何れか一項に記載の帯鋸刃。
【請求項7】
帯状部材の帯幅方向の片端面に、適宜間隔に形成されてそれぞれが先端部分に切削歯部を含む複数の鋸歯台と、前記複数の鋸歯台の各鋸歯台間に位置し歯底面を含むガレット部とを備え、前記ガレット部の前記歯底面が前記帯状部材の帯厚の方向に傾斜することのない直線部を含み、前記歯底面は前記帯状部材の両側面と直交し、前記ガレット部における前記帯厚の方向の第一の側の第一側縁に面取り加工部が形成された、帯鋸刃を帯鋸盤へ装着する方法であって、
前記面取り加工部が形成された前記帯厚の方向の前記第一の側が、前記帯鋸盤に備わる複数のホイールと接触しない側となるように前記帯鋸刃を前記複数のホイールに巻回して、前記帯鋸刃を前記帯鋸盤に装着し、
前記ガレット部が、前記切削歯部で生じた切粉を収容し前記歯底面で前記切粉を案内する構成にされており、
前記帯鋸刃の帯厚をtとすると、前記帯鋸刃の前記帯厚の方向における前記面取り加工部の面取り量が0.1mm以上且つt/3以下である帯鋸刃の帯鋸盤への装着方法。
【請求項8】
前記ガレット部において、前記帯鋸盤に装着された状態で前記複数のホイールと接触する前記帯状部材の内側側面の側における前記歯底面の第二側縁が0.1mm未満の面取り寸法でR面取りされており、前記面取り加工部と前記歯底面との縁および前記面取り加工部と前記帯状部材の外側側面との縁が0.1mm未満の面取り寸法でR面取りされており、
各R面取りが、ショットブラストあるいはショットピーニングによって施されている
請求項7に記載の帯鋸刃の帯鋸盤への装着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯鋸刃および帯鋸刃の帯鋸盤への装着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、胴部材(帯状部材)に大略三角形状の複数の鋸歯台を適宜間隔に備え、各鋸歯台の先端部に超硬合金などで構成された切削歯部を備えた帯鋸刃が知られている(例えば特許文献1参照)。このような帯鋸刃の各鋸歯台の間には、切削歯部によって切削した切粉と接触する歯底面を有したガレット部が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表平8-505818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、無端状に構成された帯鋸刃は、帯鋸盤に設けられた複数のホイールで張力を調整して使用されるものである。近年の帯鋸盤の大型化、高剛性化、高馬力化、切削速度の高速化に伴い、帯鋸刃を使用する際に、帯鋸刃がホイールと接しまたは解放される状態を繰り返し、帯鋸刃胴部材に繰り返し作用する曲げ応力(引っ張り応力および圧縮応力)等が大きくなっている。
【0005】
このため、従来から帯鋸刃のガレット部にショットピーニングを行うことなどで胴部材の長寿命化が図られてきたが(例えば特許文献1参照)、帯鋸刃には、更なる胴部材の長寿命化が望まれている。
【0006】
また、近年の帯鋸盤の大型化、高剛性化、高馬力化、切削速度の高速化に伴い、切削加工中の帯鋸刃では、胴部材の切削箇所近傍に帯幅方向への撓みが生じることなどによる、胴部材への局所的な曲げ応力の負荷も大きくなっている。このため、帯鋸刃には、このような胴部材にかかる局所的な負荷に対する耐久性の向上も望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る帯鋸刃は、帯鋸盤に設けられた複数のホイールに巻回されて、前記帯鋸盤に装着され、帯状部材の帯幅方向の片端面に、適宜間隔に形成されてそれぞれが先端部分に切削歯部を含む複数の鋸歯台と、前記複数の鋸歯台の各鋸歯台間に位置し歯底面を含むガレット部と、を備える。前記ガレット部は、前記切削歯部で生じた切粉を収容し前記歯底面で前記切粉を案内するように、前記歯底面が前記帯状部材の帯厚の方向に傾斜することのない直線部を含む。前記ガレット部の前記歯底面は、前記帯状部材の両側面と直交する。前記ガレット部の、前記帯鋸盤に装着された状態で前記複数のホイールと接触しない前記帯状部材の外側側面の側である歯底面の、第一側縁には、面取り加工部が形成されている。前記帯鋸刃の帯厚をtとすると、前記帯鋸刃の前記帯厚の方向における前記面取り加工部の面取り量が0.1mm以上でt/3以下の範囲である。
【0008】
本発明の一態様に係る帯鋸刃では、帯鋸刃のガレット部における歯底面の第一側縁に面取り加工部が形成されている。そして、前記面取り加工部の面取り量が0.1mm以上にされている。このため、帯鋸刃の使用中にホイールと接触して鋸刃進行方向が変化する領域で帯鋸刃の外側側面に繰り返し作用する曲げ応力(引っ張り応力)が、この面取り加工部が形成された歯底面の第一側縁で応力集中し難くされている。さらに、前記面取り加工部の面取り量がt/3以下とされている。このため、前記歯底面の帯厚が十分確保されつつ、切削加工時に帯状部材の切削箇所近傍が帯幅方向に撓むことで帯鋸刃に掛かる局所的な曲げ応力に対する耐久性を確保することができる。
【0009】
本発明の一態様に係る帯鋸刃の帯鋸盤への装着方法は、帯状部材の帯幅方向の片端面に、適宜間隔に形成されてそれぞれが先端部分に切削歯部を含む複数の鋸歯台と、前記複数の鋸歯台の各鋸歯台間に位置し歯底面を含むガレット部とを備え、前記ガレット部の前記歯底面が前記帯状部材の帯厚の方向に傾斜することのない直線部を含み、前記歯底面は前記帯状部材の両側面と直交し、前記ガレット部における前記帯厚の方向の第一の側の第一側縁に面取り加工部が形成された、帯鋸刃を帯鋸盤へ装着する方法である。前記帯鋸刃の前記帯鋸盤への装着方法は、前記面取り加工部が形成された外側側面の前記帯厚の方向の前記第一の側が、前記帯鋸盤に備わる複数のホイールと接触しない側となるように前記帯鋸刃を前記複数のホイールに巻回して、前記帯鋸刃を前記帯鋸盤に装着される。前記ガレット部が、前記切削歯部で生じた切粉を収容し前記歯底面で前記切粉を案内する構成にされている。前記帯鋸刃の帯厚をtとすると、前記帯鋸刃の前記帯厚の方向における前記面取り加工部の面取り量が0.1mm以上でt/3以下である。
【0010】
本発明の一態様に係る帯鋸刃の帯鋸盤への装着方法では、帯鋸刃のガレット部における歯底面の第一側縁に面取り加工部が形成されている。そして、前記面取り加工部の面取り量が0.1mm以上にされている。さらに、前記面取り加工が施された外側側面が帯鋸盤に備わる複数のホイールと接触しない側となるように前記帯鋸刃を前記複数のホイールに巻回されている。このため、帯鋸刃の使用中にホイールと接触して鋸刃進行方向が変化する領域で帯鋸刃の外側側面に繰り返し作用する曲げ応力(引っ張り応力)が、この面取り加工部が形成された歯底面の第一側縁で応力集中し難くされている。さらに、前記面取り加工部の面取り量がt/3以下とされている。このため、前記歯底面の帯厚が十分確保されつつ、切削加工時に帯状部材の切削箇所近傍が帯幅方向に撓むことで帯鋸刃に掛かる局所的な曲げ応力に対する耐久性を確保することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様に係る帯鋸刃および帯鋸刃の帯鋸盤への装着方法では、帯鋸刃のガレット部における歯底面の第一側縁に面取り加工部が形成されているため、帯鋸刃の使用中にホイールと接触して鋸刃進行方向が変化する領域で帯鋸刃の外側側面に繰り返し作用する曲げ応力(引っ張り応力)が帯鋸刃の歯底面の第一側縁における応力集中を抑制できる。さらに、前記面取り加工部の面取り量が0.1mm以上t/3以下とされているため、胴部材(帯状部材)の切削箇所近傍に作用する切削加工に伴う局所的な曲げ応力に対する耐久性を向上できる。したがって、帯鋸刃および帯鋸刃の帯鋸盤への装着方法によれば、帯鋸刃の胴部破断を効果的に抑制でき、帯鋸刃の長寿命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本実施形態に用い得る横型の帯鋸盤の正面図である。
図2図2は、本実施形態に用い得る横型の帯鋸盤の側面図である。
図3図3は、本実施形態に用い得る横型の帯鋸盤の平面図であって、加工テーブルを省略してある。
図4図4は、本実施形態に用い得る横型の帯鋸盤におけるホイールと、帯鋸刃のホイールに巻回された部分に対してかかる繰り返し応力を説明する説明図である。
図5図5は、本実施形態に係る帯鋸刃の構成を説明する、帯鋸刃を歯先側(刃先側)から見た図である。
図6図6は、本実施形態に係る帯鋸刃の構成を説明する、帯鋸刃を面取り加工部が形成された側の側面から見た図である。
図7図7は、本実施形態に係る帯鋸刃の構成を説明する帯鋸刃を鋸刃進行方向から見た図である。
図8図8は、本実施形態の変更例に係る帯鋸刃の構成を説明する、帯鋸刃を面取り加工部が形成された側の側面から見た図である。
図9図9は、本実施形態の変更例に用い得る縦型の帯鋸盤の正面図である。
図10図10は、図9におけるX-X線に沿った図である。
図11図11は、本実施形態の変更例に用い得る縦型の帯鋸盤の平面図であって、搬送ローラ等を省略してある。
図12図12は、本実施形態に用い得る縦型の帯鋸盤におけるホイールと、帯鋸刃のホイールに巻回された部分に対してかかる繰り返し応力を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。なお、同一の機能や構成には、同一または類似の符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0014】
なお、図面中、「FF」は前方向(帯鋸盤における被切断材WKの搬送方向の下流側の方向)、「FR」は後方向(帯鋸盤の搬送方向の上流側の方向)、「LT」は前方向から見た左方向、「RT」は前方向から見た右方向、「UP」は上方向、「DN」は下方向をそれぞれ指している。
【0015】
(1)帯鋸刃BBを装着し得る帯鋸盤1の概略構成
図1は、本実施形態に用い得る横型の帯鋸盤の正面図である。図2は、本実施形態に用い得る横型の帯鋸盤の側面図である。図3は、本実施形態に用い得る横型の帯鋸盤の平面図である。なお、図3では、加工テーブルが省略してある。図4は、本実施形態に用い得る横型の帯鋸盤におけるホイールと、帯鋸刃のホイールに巻回された部分に対してかかる繰り返し応力を説明する説明図である。
【0016】
図1から図3に示すように、本実施形態に用い得る横型の帯鋸盤1は、無端状の帯鋸刃BBを循環走行させつつ、搬送方向(前方向)へ搬送位置決めされた被切断材WKに対して切断加工を行うものである。本実施形態に係る横型の帯鋸盤1の具体的な構成は、以下のようになる。
【0017】
図1図2に示すように、横型の帯鋸盤1は、搬送方向に直交する搬送幅方向(左右方向)に延びた基台3を具備している。この基台3は、本実施例では丸棒状である被切断材WKを、支持する加工テーブル5を備えている。また、基台3の上面(上側)における切断位置CPの前側(搬送方向の下流側)には、被切断材WKを挟持する本体バイス機構7が設けられている。この本体バイス機構7は、固定バイス9、及び固定バイス9に対向しかつ搬送幅方向へ移動可能な可動バイス11を備えている。
【0018】
基台3の後側には、リアフレーム13が設けられている。リアフレーム13の上側には、被切断材WKを搬送方向へ移動可能に支持するリアテーブル15が設けられている。リアテーブル15は、搬送方向へ間隔を置いて並びかつ搬送幅方向に平行な軸心周りに回転可能な複数の搬送ローラ17を備えている。
【0019】
また、図2図3に示すように、リアフレーム13におけるリアテーブル15の下側には、搬送方向へ延びた一対のガイドレール19,21が設けられている。一対のガイドレール19,21には、リアスライダ23が搬送方向へ移動可能に案内支持されている。換言すれば、リアフレーム13には、リアスライダ23が一対のガイドレール19,21を介して搬送方向へ移動可能に設けられている。また、リアスライダ23は、基台3の適宜位置に設けられたリアスライダ用電動モータ(図示省略)とボールネジ(図示省略)、或いはリアスライダ用油圧シリンダ(図示省略)等の駆動機構により搬送方向へ移動するようになっている。リアスライダ23には、被切断材WKを挟持するリアバイス機構25が設けられている。リアバイス機構25は、固定バイス27、及びこの固定バイス27に対向しかつ搬送幅方向へ移動可能な可動バイス29を備えている。
【0020】
図1及び図2に示すように、基台3の背面(後面)には、一対のコラム31,33が搬送幅方向に離隔して立設されている。各コラム31,33には、上下方向へ延びたガイドレール(LMガイド)35,37が設けられている。また、一方のコラム31の上部と他方のコラム33の上部との間には、一方のコラム31と他方のコラム33とを連結するように、連結板39が設けられている。なお、一方のコラム31の中間部と他方のコラム33の中間部との間を連結する別の連結部材(図示省略)を、さらに設ける構成にしてもよい。
【0021】
横型の鋸刃ハウジング41は、一対のコラム31,33の間に亘って設けられている。横型の鋸刃ハウジング41は、上下方向へ移動可能にされている。また、鋸刃ハウジング41は、搬送幅方向へ延びかつ箱状に構成されたビーム部43、及びこのビーム部43の両端に下方向へ突出するようにそれぞれ一体形成されかつ箱状に構成されたホイール支持部45,47を備えている。鋸刃ハウジング41の正面視形状は、図1に示すように、下側を開いたU字形状を呈している。そして、一方のホイール支持部45の背面の上部及び下部には、一方のガイドレール35に上下方向へ案内支持されるスライダ49,51がそれぞれ設けられている。換言すれば、一方のホイール支持部45の背面の上部及び下部は、一方のコラム31に一方のガイドレール35及び一対のスライダ49,51を介して上下方向へ案内支持されている。同様に、他方のホイール支持部47の背面の上部及び下部には、他方のガイドレール37に上下方向へ案内支持されるスライダ53,55がそれぞれ設けられている。換言すれば、他方のホイール支持部47の背面の上部及び下部は、他方のコラム33に他方のガイドレール37及び一対のスライダ53,55を介して上下方向へ案内支持されている。更に、鋸刃ハウジング41は、基台3の適宜位置に設けられたハウジング用電動モータ(図示省略)とボールネジ(図示省略)、或いはハウジング用油圧シリンダ(図示省略)等の駆動機構により昇降するようになっている。
【0022】
鋸刃ハウジング41における一対のホイール支持部45,47の先端(先端側)には、鋸刃ホイール57,59が鋸刃ハウジング41の移動方向に平行な軸心周りに回転可能にそれぞれ設けられている。つまり、鋸刃ホイール57,59は、鉛直な軸心周りに回転可能にそれぞれ設けられている。図3に示すように、一対の鋸刃ホイール57,59は、巻回された帯鋸刃BBに張力を付与して支持することで、帯鋸刃BBを帯鋸盤1に装着された状態に保持するものである。ここで、一対の鋸刃ホイール57,59は、鋸刃ハウジング41の適宜位置に設けられたホイール用電動モータ(図示省略)の駆動によって回転するようになっている。
【0023】
一対の鋸刃ホイール57,59は、帯鋸刃BBに所定の張力を付与するために、一方の鋸刃ホイール57が、鋸刃ハウジング41の適宜位置に設けられたホイール用油圧シリンダ(図示省略)の駆動によって搬送幅方向へ位置調節可能になっている。
【0024】
図2図3に示すように、鋸刃ハウジング41におけるビーム部43のコラム31,33側(後側)には、一対の鋸刃ガイド61,63が搬送幅方向に離隔して設けられている。一対の鋸刃ガイド61,63は、帯鋸刃BBの歯先が下側を向いた状態で帯鋸刃BBにおけるコラム31,33に近い部分Bnを捻ることなく切削方向である下方(DN方向)へ案内支持するものである。ここで、一方の鋸刃ガイド61は、被切断材WKの大きさに合わせて搬送幅方向へ位置調節可能になっている。
【0025】
(2)帯鋸刃BBの構成
図5は、本実施形態に係る帯鋸刃の構成を説明する、帯鋸刃を歯先側(刃先側)から見た図である。図6は、本実施形態に係る帯鋸刃の構成を説明する、帯鋸刃を面取り加工部が形成された側の側面から見た図である。図7は、本実施形態に係る帯鋸刃の構成を説明する帯鋸刃を鋸刃進行方向から見た図である。
【0026】
本実施形態の帯鋸刃BBは、図1~3に示された帯鋸盤1に設けられた複数のホイール57,59に巻回されることで、帯鋸盤1に装着されるものである。本実施形態の帯鋸刃BBの構成は、以下のようになっている。
【0027】
図5図6図7に示されるように、帯鋸刃BBは、帯状部材203の帯幅方向(Z方向)の片端面に、適宜間隔に形成されてそれぞれが先端部分に切削歯部209を備えた複数の鋸歯台205A,205Bと、各鋸歯台205A,205Bの間に位置し歯底面213を有するガレット部211と、を備える。
【0028】
そして、図6に示すように、ガレット部211は、切削歯部209で生じた切粉219を収容し歯底面213で切粉219を案内するように、歯底面213が帯状部材203の帯厚の方向に傾斜することのない直線部217を備えている。
【0029】
さらに、図7に示すように、ガレット部211の歯底面213は、帯状部材203の両側面と直交している。そして、帯鋸盤1に装着された図3図4に示された状態で、複数のホイール57,59と接触しない前記帯状部材の外側側面の側であるガレット部211の第一側縁には、面取り加工部215が形成されている。
【0030】
なお、帯鋸刃BBの帯厚をt(mm)とすると、帯鋸刃BBの帯厚の方向における面取り加工部215の面取り量W1は、0.1mm以上でt/3以下である。
【0031】
ガレット部211において、帯鋸盤1に装着された状態で複数のホイール57,59と接触する帯状部材203の内側側面の側である歯底面213の第二側縁が0.1mm未満の面取り寸法でR面取りされている。さらに、面取り加工部215と歯底面213との縁215aおよび面取り加工部215と帯状部材203の外側側面との縁215bが0.1mm未満の面取り寸法でR面取りされている。
【0032】
本実施形態では、図5~7に示すように、歯底面213の直線部217は、平面状部分217Aを含んでいる。そして、前記平面状部分217Aの帯厚の方向における幅W0は、2t/3~(t-0.1mm)(W0=t-W1であるため、2t/3<W0<t-0.1)である。
【0033】
以下、本実施形態の帯鋸刃BBの具体的な構成について、さらに説明する。図4に示すように、本実施形態に係る帯鋸刃BBは、無端状に構成されており、帯鋸盤1に設けられた複数のホイール57,59に巻回されて使用されるものである。なお、帯鋸刃BBは、帯鋸盤1に装着される際、歯先(図5の紙面表側、図6図7のZ軸方向上側)を下向き(DN方向)にした状態で、帯鋸盤1に装着される。
【0034】
図4~6に示すように、帯鋸刃BBの本体である胴部材(帯状部材)203の帯幅方向(図6中のZ軸方向)の一側(一端面)には、複数の鋸歯台205A,205Bが適宜間隔に形成されている。具体的に、複数の鋸歯台205A,205Bは、図4のように帯鋸盤1に装着された状態で帯鋸刃BBが進行する方向(鋸刃進行方向)に沿う方向である図5図6中のX軸方向に沿って、適宜間隔に形成されている。
【0035】
各鋸歯台205A,205Bの先端部分には切削歯部209を形成する切削歯部材207A,207Bが一体的に設けられている。切削歯部材207A,207Bは、例えば高速度鋼や超硬合金(例えば炭化タングステンやコバルトを含有する硬質材料)からなる硬質チップである。そして、各鋸歯台205A,205Bの間には、ガレット部211が備えられている。
【0036】
図6に示すように、切削歯部材207Aは、被切断材の切断(切削)を行う際に、先行して被切断材に切込む先行歯をなすものである。そして、切削歯部材207Bは、後続して被切断材に切込む後続歯をなすものである。図7に示すように、切削歯部材207Aは、歯先側(図7における上側)が次第に幅小になるベベル有り歯になっている。切削歯部材207Bは、切削歯部材207Aが切削加工した切削溝を拡開する作用をなすものであって、基準位置(基準線)RLからの歯高寸法H2が、切削歯部材207Aの歯高寸法H1よりも低くされている。そして、歯先側が次第に幅広になるベベル無し歯になっている。
【0037】
本実施形態では、切削歯部材207Bの帯厚方向の幅をWEに設定してある。そして、切削歯部209で生じる切粉219の細分化を図るために、切削歯部材207Aの帯厚方向の幅を約WE/3に設定してある。
【0038】
ところで、帯鋸刃BBの製造は、従来の帯鋸刃と同様に製造されるものである。すなわち、例えばミーリング加工、切削加工、レーザ加工などによって、胴部材203に鋸歯台205A,205Bが加工されると共に、ガレット部211が加工される。そして、鋸歯台205A,205Bの先端部に、切削歯部材207A,207Bが一体的に固定される。
【0039】
上述のように、胴部材203に鋸歯台205A,205B及びガレット部211を加工した状態において、ガレット部211における歯底面213の両側縁は、面取り加工が行われない状態にある。すなわち、歯底面213と帯鋸刃BBの側面と直交している。
【0040】
図5~7に示されるように、ガレット部211の歯底面213の第一側縁、即ち、胴部材203の帯厚方向(Y軸方向)の一側縁には、面取り加工部215が形成されている。
【0041】
面取り加工部215は、歯底面213の部分から、各鋸歯台205A,205Bにおける掬い面及び逃げ面の適宜範囲(歯底面213から所定の高さの範囲であって、歯底面取り加工を歯底面213より上部のガレット211で確認できる高さから歯材やその接合部に掛からない高さまでの範囲を高さの範囲とする)に亘って形成してある。
【0042】
本実施形態において、面取り加工部215の面取り形状は、面取りの角度が45°のC面取りである。ただし、面取り加工部215の面取り形状はC面取り又はR面取りであってもよい。さらに、C面取りである場合、C面取りの角度を、例えば30°のように、45°以外の角度にしてもよい。
【0043】
また、本実施形態の帯鋸刃BBでは、帯厚をtとすると、帯鋸刃BBの帯厚の方向(Y方向)における面取り加工部215の面取り量W1が0.1mm以上でt/3以下であるようにされている。
【0044】
なお、面取り加工部215は、例えば研削加工、切削加工、レーザ加工などによって歯底面213における第一側縁の一部を除去することによって加工されている。つまり、面取り加工部215の加工は、第一側縁に大きな塑性変形を付与することなく材料を除去する材料除去加工方法(前記研削加工、切削加工、レーザ加工等)によって行われる。このため、面取り加工部215の面取り量W1(図7参照)を、例えば0.1mm以上の大きさとすることが容易である。
【0045】
ところで、図7に示すように、胴部材(帯状部材)203のガレット部211における鋸刃進行方向(X軸方向)に垂直な断面には、胴部材203の帯厚方向(図7のY方向)に対して傾斜することのない直線状を呈する直線部217が歯底面213に形成されている。そして、直線部217の一側が面取り加工部215に連続している。直線部217は、切削歯部材207Aによる被切断材(図示省略)の切削時に連続した形態で生じる切粉219に接触する接触面217F(図6参照)の一部である。
【0046】
図6に示すように、本実施形態において、直線部217は、歯底面213に鋸刃進行方向(X方向)に延びて平滑面を形成している。具体的に、直線部217は、歯底面213に、鋸刃進行方向(X方向)と胴部材203の帯厚方向(図7のY方向)に平行な平面状部分217Aを含んでおり、この平面状部分217Aが鋸刃進行方向(X方向)における両端で、隣接する各鋸歯台205A,205Bに滑らかな曲面を介して連続している。
【0047】
また、歯底面213の直線部217は、図7に示すように、胴部材203の帯厚方向(Y方向)において、面取り加工部215の端部と交差する位置から面取り加工部215が形成されていない側の帯鋸刃BBの側面まで形成されている。本実施形態において、面取り量W1が0.1mm以上t/3以下であるため、直線部217の帯厚方向(Y方向)の長さW0は、2t/3より大きく(t-0.1mm)未満になる。
【0048】
実施形態の帯鋸刃BBは、歯底面213および面取り加工部215に対してショットブラストあるいはショットピーニングが施されている。ショットブラストあるいはショットピーニングが施された歯底面213および面取り加工部215の表面は、圧縮残留応力が付与された微小凹凸面(梨地肌面)にされている。さらに、歯底面213において、帯厚の方向(Y方向)における他方側である第二側縁が0.1mm未満の面取り寸法でR面取りされている。さらに、面取り加工部215と歯底面213との縁215aおよび面取り加工部215と帯状部材203の第一側縁側の側面との縁215bのそれぞれが0.1mm未満の面取り寸法でR面取りされている。具体的に、これらのR面取りの面取り量は、0.05mm以上0.09mm以下になっている。
【0049】
(3)帯鋸刃BBの帯鋸盤1への装着方法
帯鋸刃BBの帯鋸盤1への装着方法では、上述の帯鋸刃BBである、帯状部材203の帯幅方向(Z方向)の片端面に、適宜間隔に形成されてそれぞれが先端部分に切削歯部209を備えた複数の鋸歯台205A,205Bと、複数の鋸歯台205A,205Bの各鋸歯台205A,205B間に位置し歯底面213を有するガレット部211とを備え、ガレット部211の歯底面213が帯状部材203の帯厚の方向(Y方向)に傾斜することのない直線部217を備えており、歯底面213は帯状部材203の両側面と直交し、ガレット部211における帯厚の方向の第一の側の第一側縁に面取り加工部215が形成された帯鋸刃BBを用いる。
【0050】
帯鋸刃BBは、帯鋸盤1に装着される際、面取り加工部215が形成された帯厚の方向(Y方向)の第一の側が、帯鋸盤1に備わる複数のホイール57,59と接触しない側である外側となるように帯鋸刃BBをホイール57,59に巻回される。
【0051】
なお、帯鋸刃BBのガレット部211は、上述の通り、被切断材(図示省略)の切削時に切削歯部209で生じた切粉219を収容し歯底面213で切粉219を案内する構成にされており、帯鋸刃BBの帯厚をtとすると、帯鋸刃BBの帯厚の方向(Y方向)における面取り加工部215の面取り量W1が0.1mm以上でt/3以下の範囲になっている。
【0052】
本実施形態に係る帯鋸刃BBの帯鋸盤1への装着方法は、帯鋸刃BBを上述の帯鋸盤1に用いた場合、特に優れた作用および効果を奏する。
【0053】
具体的に、上述の帯鋸盤1は、一対の鋸刃ガイド61,63によって帯鋸刃BBを捻ることなく案内支持するによって、切削速度を高速化した場合にも帯鋸刃BBに作用する繰り返し応力を低減することで、生産性の向上を図りつつ帯鋸刃BBの胴部材203の疲労寿命を延ばす構成を備える帯鋸盤1である。帯鋸盤1によれば一対の鋸刃ガイド61,63によって帯鋸刃BBに作用する繰り返し応力を低減されるが、更なる生産性の向上と帯鋸刃BBの長寿命化が望まれている。
【0054】
帯鋸刃BBに作用する繰り返し応力について、帯鋸盤1には、帯鋸刃BBが一対の鋸刃ホイール57,59に巻回されて支持される。このとき、鋸刃ホイール57,59に支持された状態の帯鋸刃BBには、鋸刃ホイール57,59によって帯鋸刃BBの帯長手方向に所定の張力が帯鋸刃BB全体に付与される。図4に示すように、帯鋸刃BBが一対の鋸刃ホイール57,59に巻回されてホイール用電動モータ(図示省略)等で(帯長手方向に沿う)鋸刃進行方向に駆動されている状態では、帯鋸刃BBにおける鋸刃ホイール57,59のそれぞれと接触する位置において、鋸刃ホイール57,59と接触している内側側面の側に相対的な曲げによる圧縮応力(前記所定の張力よりも低減された張力)が作用し、鋸刃ホイール57,59と接触していない外側側面の側に相対的な曲げによる引っ張り応力(前記所定の張力よりも増加した張力)が作用することで、曲げ応力が作用する。
【0055】
つまり、ホイール用電動モータ(図示省略)等で帯鋸刃BBが鋸刃進行方向に駆動されると、帯鋸刃BBの内側側面の側には、前記所定の張力より低減された圧縮応力が繰り返し作用することになり、外側側面の側には、前記所定の張力より増加した引っ張り応力が繰り返し作用することになる。
【0056】
本実施形態の帯鋸刃BBの帯鋸盤1への装着方法では、前記所定の張力よりも増加した張力(曲げによる引っ張り応力)が作用する外側側面の側が、面取り加工部215が形成された帯鋸刃BBの第一側縁の側となるように、帯鋸刃BBが鋸刃ホイール57,59に巻回される。このため、帯鋸刃BBの、増加した張力(曲げによる引っ張り応力)が作用する箇所における応力集中を効果的に抑制することができる。
【0057】
言い換えると、本実施形態の帯鋸刃BBは、帯鋸盤1に装着する方向が指定されている帯鋸刃BBであり、鋸刃ホイール57,59に巻回された状態で、面取り加工部215が前記増加した張力が繰り返し作用する外側側面の側に配置されることで、前記増加した張力が歯底面213の一側縁において応力集中することを効果的に抑制する構成にされたものである。
【0058】
(4)作用・効果
本実施形態の帯鋸刃BBにおいて、図5~7に示されるように、ガレット部211の歯底面213の第一側縁には、面取り加工部215が形成されている。そして、この面取り加工部215の帯鋸刃BBの帯厚の方向(Y方向)における面取り量W1は、帯厚をtとすると、0.1mm以上、t/3以下であるようにされている。
【0059】
本実施形態の帯鋸刃BBは、歯底面213の第一側縁に、面取り量W1が0.1mm以上である大きな面取り加工部215を備えるため、歯底面213における第一側縁の側に作用する所定の張力よりも増加した引っ張り応力が歯底面213の側縁で応力集中することを効果的に緩和することができる。これにより、帯鋸刃BBの胴部材203の疲労寿命を延ばすことができる。
【0060】
また、帯鋸刃BBは、歯底面213の第一側縁における面取り量W1がt/3以下にされている。つまり、本実施形態の帯鋸刃BBでは、面取り加工部215に隣接する歯底面213の帯厚の方向(Y方向)における厚さが2t/3より大きくなっている。このため、帯鋸刃BBには歯底面213の面積が十分確保されて、切削加工時の切削抵抗が大きくなり帯鋸刃BBにおける帯幅方向の撓みが大きくなった場合でも、歯底でクラックが生じることを効果的に抑制することができる。
【0061】
また、本実施形態では、図6に示すように、直線部217が歯底面213に鋸刃進行方向(X方向)に延びて平滑面を形成している。具体的に、直線部217は、歯底面213に、鋸刃進行方向(X方向)と胴部材203の帯厚方向(図7のY方向)に平行な平面状部分217Aを含んでおり、この平面状部分217Aが鋸刃進行方向(X方向)における両端で、隣接する各鋸歯台205A,205Bに滑らかな曲面を介して連続している。
【0062】
そして、直線部217は、図7に示すように、胴部材203の帯厚方向(Y方向)において、面取り加工部215の端部と交差する位置から、面取り加工部215が形成されていない側の帯鋸刃BBの側面まで形成されている。このとき、面取り加工部215の面取り量W1がt/3以下であるため、直線部217の帯厚方向(Y方向)の長さW0は、2t/3より大きくなっている。
【0063】
このため、接触面217Fは、被切断材の切削時に、切削歯部材207Bで連続的に生じる切粉219をカーリングする際に、歯底面213の直線部217で切粉219を安定した状態でカーリングするように案内できる。さらに、ガレット部211が被切断材の外部に移動するまでの間、切粉219をガレット部211内に収容保持する機能を奏する。
【0064】
また、本実施形態のように、帯鋸刃の鋸歯台の強度を十分確保しつつ歯底面に面取り加工部を形成する場合、面取り加工は各歯底面の側縁に対して面取り加工を施すことになる。このため、面取り加工部を形成するプロセスの時間短縮が望まれていた。
【0065】
本実施形態では、より大きな繰り返しの引っ張り応力が増加することでクラックが生じやすい第一側縁のみに面取り加工部215を設けているため、例えば、同様にクラック発生を抑制する構成として面取り加工部を歯底面の両側面に形成する場合よりも、大幅に製造時間の短縮を図ることができ、帯鋸刃のコストを下げることができる。
【0066】
本実施形態では、ガレット部211の歯底面213および面取り加工部215にショットブラストあるいはショットピーニングが施されている。これにより、歯底面213および面取り加工部215の表面に圧縮残留応力が付与されてクラックの発生などが抑制されるため、胴部材203の長寿命化を図ることができる。
【0067】
また、帯鋸刃BBは、歯底面213の、面取り加工部215に隣接する位置に平面状部分217Aを有している。そして、平面状部分217の帯厚方向(Y方向)の厚さは2t/3より大きくなっている。この構成によれば、歯底面213が曲面状に形成された場合よりも切削時に鋸歯台205A,205Bの間に掛かる帯幅方向の撓みが大きくなった場合でも、歯底面213の面積が十分確保されており、応力集中することを緩和することができる。このため、歯底でクラックが生じることをより効果的に抑制することができる。
【0068】
本実施形態では、切削歯部材207Bの帯厚方向の幅をWEに設定してある。そして、切削歯部209で生じる切粉219の細分化を図るために、切削歯部材207Aの帯厚方向の幅を約WE/3に設定してある。
【0069】
ここで、ガレット部211に形成された直線部217の長さ(接触面217Fの幅)W0が切粉219の幅寸法(WE/3)の1/2以上の幅である場合、切削歯部材207Aの切削作用によって生じた切粉219が、ガレット部211の歯底面213(接触面217F)の直線部217によって安定的にカーリングするように案内され、かつ安定的に収容保持される。したがって、直線部217の長さ(接触面217Fの幅)W0は、WE×1/3×1/2=WE/6以上であることが望ましい。
【0070】
直線部217の長さ(接触面217Fの幅)W0と、胴部材203の帯厚tおよび面取り加工部215の面取り量W1との関係はW0=t-W1の関係にある。このため、切粉219を細分化しつつ、切粉219が歯底面213で安定的にカーリングするように案内され、かつ安定的に収容保持されるためには、面取り量W1と切削歯部材207Bの帯厚方向の幅WEが、W1≦t-WE/6の関係を満たすことが望ましい。
【0071】
(5)変更例
(5.1)帯鋸刃の変更例
なお、本発明は、前述したごとき実施形態に限ることなく、適宜の変更を行うことにより別の形態でもって実施可能なものである。例えば、歯底面213の直線部217は、本実施形態のように、図6に示した平面状部分217Aを有しなくてもよい。具体的に、歯底面213は、図8に示すように、帯幅方向(Y方向)の傾斜することのない直線部217全体が、滑らかな曲面で形成されていてもよい。
【0072】
また、本実施形態では、帯鋸刃BBがベベル無し歯とベベル有り歯との組合せの帯鋸刃について説明した。しかし、帯鋸刃は、直歯と左右のアサリ歯とを備えたアサリ出し帯鋸刃に対して、ガレット部の歯底面における第一側縁に面取り加工部を設けることで、アサリ出し帯鋸刃の胴部材の長寿命化を図るものであってよい。
【0073】
(5.2)帯鋸刃BBを装着する帯鋸盤の変更例
帯鋸刃BBを装着する帯鋸盤の変更例について図9から図12を参照して説明する。
【0074】
図9は、本実施形態の変更例に用い得る縦型の帯鋸盤77の正面図である。図10は、図9におけるX-X線に沿った図である。図11は、本実施形態の変更例に用い得る縦型の帯鋸盤77の平面図であって、搬送ローラ109等を省略してある。図12は、本実施形態に用い得る縦型の帯鋸盤77におけるホイール139,141と、帯鋸刃BBのホイール139,141に巻回された部分に対してかかる繰り返し応力を説明する説明図である。
【0075】
図9から図11に示すように、帯鋸刃BBを装着し得る帯鋸盤の変更例である縦型の帯鋸盤77は、無端状の帯鋸刃BBを循環走行させつつ、搬送方向(前方向)へ搬送位置決めされた被切断材WKに対して切断加工を行うものである。本変更例に係る縦型の帯鋸盤77の具体的な構成は、以下のようになる。
【0076】
図9~11に示すように、縦型の帯鋸盤77は、搬送方向に平行な方向(前後方向)へ延びた基台79を具備しており、この基台79は、前側に、被切断材WKを支持する加工テーブル81を備えている。また、基台79の前部には、被切断材WKを挟持する本体バイス機構83が設けられている。この本体バイス機構83は、固定バイス85、及び固定バイス85に対向しかつ搬送方向に直交する搬送幅方向(左右方向)へ移動可能な可動バイス87を備えている。
【0077】
基台79における加工テーブル81の後側には、被切断材WKを搬送方向へ移動可能に支持するリアテーブル89が設けられている。リアテーブル89は、搬送方向へ間隔を置いて並びかつ搬送幅方向に平行な軸心周りに回転可能な複数の搬送ローラ91を備えている。
【0078】
また、図10,11に示すように、基台79におけるリアテーブル89の下側には、搬送方向へ延びた一対のガイドレール93,95が設けられている。更に、一対のガイドレール93,95には、リアスライダ97が搬送方向へ移動可能に案内支持されている。このリアスライダ97は、基台79の適宜位置に設けられたリアスライダ用電動モータ(図示省略)とボールネジ(図示省略)或いはリアスライダ用油圧シリンダ(図示省略)等の駆動機構により搬送方向へ移動するようになっている。リアスライダ97には、被切断材WKを挟持するリアバイス機構99が設けられている。リアバイス機構99は、固定バイス101、及びこの固定バイス101に対向しかつ搬送幅方向へ移動可能な可動バイス103を備えている。
【0079】
図10、11に示すように、基台79の前側には、被切断材WKから取り出した製品WAを搬送方向へ移動可能に支持するフロントテーブル105が複数の支柱107を介して設けられている。フロントテーブル105は、搬送方向に間隔を置いて並びかつ搬送幅方向に平行な軸心周りに回転可能な複数の搬送ローラ109を備えている。
【0080】
また、図11に示すように、基台79の前側におけるフロントテーブル105の左側には、フロントフレーム111が設けられている。フロントフレーム111には、搬送方向へ延びた一対のガイドレール113,115が設けられている。更に、一対のガイドレール113,115には、フロントスライダ117が搬送方向へ移動可能に案内支持されている。フロントスライダ117は、フロントフレーム111の適宜位置に設けられたフロントスライダ用電動モータ(図示省略)とボールネジ(図示省略)或いはフロントスライダ用油圧シリンダ(図示省略)等の駆動機構により搬送方向へ移動するようになっている。フロントスライダ117には、製品(被切断材WKから取り出す前の製品に相当する部分を含む)WAを挟持するフロントバイス機構119が設けられている。このフロントバイス機構119は、固定バイス121、及び固定バイス121に対向しかつ搬送幅方向へ移動可能な可動バイス123を備えている。
【0081】
図9、10に示すように、基台79の前部には、門型の支持フレーム125がリアテーブル89を跨ぐように立設されている。支持フレーム125の水平部125a及び基台79の前側(前面)には、搬送幅方向へ延びたガイドレール127,129がそれぞれ設けられている。また、一対のガイドレール127,129には、縦型の鋸刃ハウジング131が搬送幅方向へ移動可能に案内支持されている。換言すれば、基台79の前側には、縦型の鋸刃ハウジング131が一対のガイドレール127,129及び支持フレーム125を介して搬送幅方向へ移動可能に設けられている。
【0082】
更に、図9に示すように、鋸刃ハウジング131は、上下方向(鉛直方向)へ延びたビーム部133と、このビーム部133の両端に搬送幅方向の一方側(左方向)へ突出するようにそれぞれ一体形成されたL型のホイール支持部135,137を備えている。そして、鋸刃ハウジング131は、基台79の適宜位置に設けられたハウジング用電動モータ(図示省略)とボールネジ(図示省略)或いはハウジング用油圧シリンダ(図示省略)等の駆動機構により搬送幅方向へ移動するようになっている。
【0083】
鋸刃ハウジング131における一対のホイール支持部135,137の先端(先端側)には、鋸刃ホイール139,141が搬送幅方向(換言すれば、鋸刃ハウジング131の移動方向)に平行な軸心周りに回転可能にそれぞれ設けられている。一対の鋸刃ホイール139,141は、帯鋸刃BBを巻回して支持するものである。ここで、一対の鋸刃ホイール139,141は、基台79の適宜位置に設けられたホイール用電動モータ(図示省略)の駆動により回転するようになっている。また、一対の鋸刃ホイール139,141は、帯鋸刃BBに張力を付与するために、一方の鋸刃ホイール139が、上下方向へ位置調節可能になっている。
【0084】
図9に示すように、鋸刃ハウジング131におけるビーム部133には、一対の鋸刃ガイド143,145が上下方向に離隔して設けられている。一対の鋸刃ガイド143,145は、帯鋸刃BBの歯先が搬送幅方向の一方側を向いた状態で帯鋸刃BBを捻ることなく切削方向へ案内支持するものである。ここで、一方の鋸刃ガイド143は、被切断材WKの大きさに応じて上下方向へ位置調節可能になっている。
【0085】
この帯鋸盤77に対しても、本実施形態の帯鋸刃BBは、同様の方法で装着される。具体的に、帯鋸刃BBが帯鋸盤77に装着される際、面取り加工部215が形成された帯厚の方向(Y方向)の第一の側が、帯鋸盤77に備わる複数のホイール139,141と接触しない側となるように帯鋸刃BBをホイール139,141に巻回される。そして、このような方法で帯鋸盤77に装着された帯鋸刃BBは、帯鋸盤1を装着した場合と同様の効果を奏する。
【0086】
なお、帯鋸刃BBを装着し得る帯鋸盤の例として横型の帯鋸盤1や縦型の帯鋸盤77の例を挙げた。これらの帯鋸盤1,77は、いずれも一対の鋸刃ガイド19,12、143,145が、帯鋸刃BBの歯先が搬送幅方向の一方側を向いた状態の帯鋸刃BBを捻ることなく切削方向へ案内支持するものであった。しかし、帯鋸刃BBを装着し得る帯鋸盤の構成はこれに限定されるものでない。即ち、帯鋸盤は、鋸刃ガイドが帯鋸刃BBを捻るものであってもよい。
【0087】
上記のように、本発明の実施形態および複数の変更例を記載したが、この開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0088】
1,77 帯鋸盤
57,59,139,141 ホイール
203 胴部材(帯状部材)
205A,205B 鋸歯台
207A,207B 切削歯部材
209 切削歯部
211 ガレット部
213 歯底面
215 面取り加工部
217 直線部
217A 平面状部分
219 切粉
BB 帯鋸刃
t 帯鋸刃の帯厚
W1 面取り量
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12