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  • 特許-引抜き防止用具 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】引抜き防止用具
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/20 20060101AFI20241003BHJP
   E02D 5/48 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
E02D5/20 101
E02D5/48
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021057507
(22)【出願日】2021-03-30
(65)【公開番号】P2022154456
(43)【公開日】2022-10-13
【審査請求日】2023-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100070024
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 宣行
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 正美
(72)【発明者】
【氏名】小川 敦
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-140930(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0041391(KR,A)
【文献】特開平09-003885(JP,A)
【文献】特開平11-093159(JP,A)
【文献】実開昭53-125216(JP,U)
【文献】米国特許第04283162(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/00-5/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソイルセメント柱列壁の芯材であるH形鋼に適用される引抜き防止用具であって、
軸線を共通にする筒形部と、前記筒形部に連なり前記軸線の伸長方向に関して前記筒形部の下端から前記筒形部の周囲を上方に向けて末広がりに伸びる錐台形部とを備え、
前記筒形部は角筒状を呈しまた前記錐台形部は角錐台状を呈し、
前記引抜き防止用具は、その使用に際して、前記筒形部において前記H形鋼の周囲を取り囲むように配置されかつ前記H形鋼に固定される、引抜き防止用具。
【請求項2】
埋込杭の形成に用いられる管状の既製杭に適用される引抜き防止用具であって、
軸線を共通にする筒形部と、前記筒形部に連なり前記軸線の伸長方向に関して前記筒形部の下端から前記筒形部の周囲を上方に向けて末広がりに伸びる錐台形部とを備え、
前記筒形部は円筒状を呈しまた前記錐台形部は円錐台状を呈し、
前記引抜き防止用具は、その使用に際して、前記筒形部において前記既製杭の周囲のみを取り囲むように配置されかつ前記既製杭に固定される、引抜き防止用具。
【請求項3】
前記引抜き防止用具は前記軸線を含む平面を対称面とする2つの半割体からなる、請求項1又は2に記載の引抜き防止用具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソイルセメント柱列壁の芯材であるH形鋼に適用される引抜き防止用具及び埋込杭の形成に用いられる管状の既製杭に適用される引抜き防止用具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、H形鋼を芯材とするソイルセメント柱列壁について、建物を支える本設杭として利用することが提案されている。本設杭を構成するH形鋼は、建物が地震力を受けて水平変位をするとき、引抜き力の作用を受ける。このため、後述する、埋込杭を構成する管状の既製杭に対するのと同様に、本設杭としての利用を前提とするH形鋼についても引抜き防止対策が施されることが望ましい。
【0003】
前記管状の既製杭については、従来、次のような引抜き防止対策を施すことが提案されている。この提案では、管状の既製杭の内部にその下方へ突出する棒状部材を配置し、棒状部材の下端部に円板状のプレートを取り付けることとされている。前記棒状部材及びプレートは杭周固定液が満たされた削孔内に既製杭と共に建て込まれる。前記杭周固定液の固化物であるソイルセメント中に存置された前記プレートは、地震時に既製杭に作用する引抜き力に対する抵抗体としての働きをなす。しかし、この提案にあっては前記既製杭の建て込みに当たり、前記棒状部材及びプレートの配置並びに建て込み作業に時間と労力とを要するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-119968号公報
【文献】特開2013-36188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記従来の事情に鑑み、ソイルセメント柱列壁の芯材をなすH形鋼に引抜き防止対策を施すことが可能でありまた容易である引抜き防止用具を提供する。また、本発明は、埋込杭として使用される管状の既製杭に引抜き防止対策を施すことが可能でありまた容易である引抜き防止用具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ソイルセメント柱列壁の芯材をなすH形鋼に適用される引抜き防止用具は、軸線を共通にする筒形部と、前記筒形部に連なり前記軸線の伸長方向に関して該筒形部の端から前記筒形部の周囲を上方に向けて末広がりに伸びる錐台形部とを備える。ここに、前記筒形部は角筒状を呈しまた前記錐台形部は角錐台状を呈する。前記引抜き防止用具は、その使用に際して、前記筒形部において前記H形鋼の周囲を取り囲むように配置されかつ前記H形鋼に固定される。
【0007】
また、埋込杭の形成に用いられる管状の既製杭に適用される引抜き防止用具は、軸線を共通にする筒形部と、前記筒形部に連なり前記軸線の伸長方向に関して該筒形部の端から前記筒形部の周囲を上方に向けて末広がりに伸びる錐台形部とを備える。ここに、前記筒形部は円筒状を呈しまた前記錐台形部は円錐台状を呈する。前記引抜き防止用具は、その使用に際して、前記筒形部において前記既製杭の周囲のみを取り囲むように配置されかつ前記既製杭に固定される。
【0008】
前記H形鋼に適用される引抜き防止用具は、角筒状を呈する筒形部をこれが前記H形鋼の周囲を取り囲む状態におき、H形鋼に固定することにより、比較的容易に前記H形鋼に取り付けることができる。前記H形鋼に取り付けられた引抜き防止用具は、前記H形鋼と共に削孔内の杭周固定液(掘削土砂とセメントミルクとからなる液状の混合物)中に建て込まれ、前記杭周固定液の固化物であるソイルセメント中に埋設される。前記引抜き防止用具は、前記H形鋼が支持する建物が地震力を受けて水平方向に揺れこれに起因して前記H形鋼が引抜き力を受けるとき、角錐台状の錐台形部において、前記引抜き力に抵抗する。前記錐台形部は前記筒形部の端から前記筒形部の周囲を上方に向けて末広がりに伸びる形態をなしていることから、前記引抜き防止用具が前記ソイルセメント中においてアンカーに相当する機能を発揮し、前記H形鋼の引抜きを防止する働きをなす。
【0009】
前記埋込杭の形成に用いられる管状の既製杭に適用される引抜き防止用具も、また、前記H形鋼に対すると同様にして、前記既製杭に取り付けることができる。すなわち、円筒状を呈する筒形部をこれが前記既製杭の周囲を取り囲む状態におき、既製杭に固定することにより、比較的容易に前記既製杭に取り付けることができる。前記既製杭に取り付けられた引抜き防止用具は、前記既製杭と共に削孔内の杭周固定液(土砂とセメントミルクとからなる液状の混合物)中に建て込まれ、前記杭周固定液の固化物であるソイルセメント中に埋設される。前記引抜き防止用具は、前記既製杭が支持する建物が地震力を受けて水平方向に揺れこれに起因して前記既製杭が引抜き力を受けるとき、円錐台状の錐台形部において、前記引抜き力に抵抗する。前記錐台形部は前記筒形部の端から前記筒形部の周囲を上方に向けて末広がりに伸びる形態をなしていることから、前記引抜き防止用具が前記ソイルセメント中においてアンカーに相当する機能を発揮し、前記既製杭の引抜きを防止する働きをなす。
【0010】
記引抜き防止用具はその軸線を含む平面を対称面とする2つの半割体からなるものとすることができる。前記2つの半割体は、特に、前記既製杭がコンクリート杭からなる場合に有用である。前記2つの半割体からなる引抜き防止用具は、前記2つの半割体を前記コンクリート杭の周りに互いに相対するように配置し、これらの2つの半割体を例えば両半割体の筒形部の周囲を取り巻く複数対のフランジ継手を用いて互いに突き合わせることにより、前記コンクリート杭に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一の例に係る引抜き防止用具の断面図である。
図2】ソイルセメント柱列壁及び地中に建造された建物の断面図である。芯材であるH形鋼とこれに適用された前記一の例に係る引抜き防止用具とがこれらの側面図をもって示されている。
図3】本発明の他の例に係る引抜き防止用具の断面図である。
図4】H形鋼又は既製杭と、前記H形鋼又は既製杭に取り付けられた前記一の例に係る複数の引抜き防止用具とを示す側面図である。
図5】H形鋼又は既製杭と、前記H形鋼又は既製杭に取り付けられた前記他の例に係る複数の引抜き防止用具とを示す側面図である。
図6】H形鋼又は既製杭と、前記H形鋼又は既製杭に取り付けられた前記一の例に係る引抜き防止用具及び他の例に係る引抜き防止用具とを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1及び図3を参照すると、本発明の一の例に係る引抜き防止用具及び他の例に係る引抜き用具が、それぞれ、断面図をもって全体に符号10で示されている。
【0013】
引抜き防止用具10は、好ましくは鋼材料で形成されており、図上を上下方向へ伸びる軸線lを有する。引抜き防止用具10は、軸線lを共通の軸線とする筒形部10aと、該筒形部に連なる錐台形部10bとを備える。
【0014】
図1に示す前記一の例に係る引抜き防止用具10にあっては、その錐台形部10bが筒形部10aの端(下端)から下方に向けて末広がりに伸びている。他方、図3に示す前記他の例に係る引抜き防止用具10の錐台形部10bは、筒形部10aの端(下端)から筒形部10aの周囲を上方に向けて末広がりに伸びている。
【0015】
また、図1に示す引抜き防止用具10の筒形部10aに対する錐台形部10bの交差角度αは、例えば10~60度の範囲内に設定される。他方、図3に示す引抜き防止用具10の筒形部10aに対する錐台形部10bの交差角度βも、また、例えば10~60度の範囲内に設定される。
【0016】
引抜き防止用具10は、ソイルセメント柱列壁12(図2参照)の芯材であるH形鋼14に適用され、あるいは、また、埋込杭の形成に用いられる鋼管コンクリート杭(SC杭)やコンクリート杭からなる管状の既製杭16に適用される。
【0017】
H形鋼14に適用される引抜き防止用具10にあっては、その筒形部10a及び錐台形部10bがそれぞれ角筒状及び角錐台状を呈し、筒形部10aはH形鋼14を受け入れ可能である矩形の断面形状を有する。筒形部10aは、好ましくは、前記矩形の長辺の長さに相当する軸線方向長さaを有する。また、錐台形部10bは、好ましくは、前記矩形の長辺の長さの2倍以上に相当する軸線方向長さbを有する。
【0018】
これに対し、管状の既製杭16に適用される引抜き防止用具10にあっては、その筒形部10a及び錐台形部10bがそれぞれ円筒状及び円錐台状を呈し、筒形部10aは既製杭16を受け入れ可能である円形の断面形状を有する。筒形部10aは、好ましくは、既製杭16の外径に相当する軸線方向長さaを有する。錐台形部10bは、好ましくは、既製杭16の外径以上の長さに相当する軸線方向長さbを有する。
【0019】
引抜き防止用具10は、その使用に際して、筒形部10aにおいてH形鋼14及び既製杭16のそれぞれの周囲を取り囲むように配置されかつH形鋼14及び既製杭16のそれぞれに例えば溶接により固定される。但し、既製杭16がコンクリート杭からなる場合にあっては、軸線lを含む平面を対称面とする2つの半割体(図示せず)からなるものとした引抜き防止用具10を使用する。前記2つの半割体は前記コンクリート杭の周りに互いに相対するように配置され、互いに突き合わされる。互いに突き合わされた両半割体は、これらが規定する筒形部10aの周囲に配置された複数対のフランジ継手(図示せず)を介して、前記コンクリート杭に固定される。
【0020】
図2を参照すると、建物18を建造するために地中に形成される仮設の山止め壁であるソイルセメント柱列壁12が示されている。ソイルセメント柱列壁12は互いに間隔をおいて配置された複数のH形鋼14を芯材とする。これらのH形鋼14を、建物18を支持する本設の杭としての利用に供すべく、H形鋼14の下端部(先端部)に引抜き防止用具10が取り付けられている。
【0021】
H形鋼14は、これに取り付けられた引抜き防止用具10と共に、地中を支持地盤20まで伸びる削孔22内の杭周固定液(掘削土砂とセメントミルクとの液状の混合物)中に建て込まれ、前記杭周固定液の固化物であるソイルセメント24中に埋設されている。なお、地中に形成される削孔22は、引抜き防止用具10の錐台形部10bの断面より大きく、錐台形部10bの周囲を該錐台形部から間隔をおいて取り巻く周壁を有する。図中の符号18aは、H形鋼14の建て込み後、削孔22内に形成された建物18の一部を示す。建物18の一部18aには、H形鋼14に溶接された複数のスタッドボルトのような接合部材(図示せず)が埋設されている。符号26は、建物18下を支持地盤20まで伸びる支持杭を示す。また、符号28及び30はそれぞれ建物20の柱及び梁を示す。
【0022】
H形鋼14に取り付けられた引抜き防止用具10は、建物18が地震力を受けて水平方向に揺れこれに起因してH形鋼14が引抜き力を受けるとき、錐台形部10bにおいて、前記引抜き力に抵抗する。錐台形部10bは筒形部10aの端から末広がりに伸びる形態をなしていることから、引抜き防止用具10がソイルセメント24中においてアンカーに相当する機能を発揮し、H形鋼14の引抜きを防止する働きをなす。
【0023】
前記埋込杭の形成に用いられる管状の既製杭16に適用される引抜き防止用具10も、また、前記H形鋼に対すると同様にして、既製杭16に取り付けることができる。すなわち、円筒状を呈する筒形部10aを既製杭16の周囲を取り囲む状態におき、溶接により筒形部10aを既製杭16に固定することができる。
【0024】
既製杭16に取り付けられた引抜き防止用具10も、また、H形鋼14におけると同様に、既製杭16と共に削孔(図示せず)内の杭周固定液中に建て込まれ、前記杭周固定液の固化物であるソイルセメント中に埋設される。引抜き防止用具10は、H形鋼14におけると同様に、既製杭16が支持する建物(図示せず)が地震力を受けて水平方向に揺れこれに起因して既製杭16が引抜き力を受けるとき、錐台形部10bにおいて、前記引抜き力に抵抗する。錐台形部10bは筒形部10aの端から末広がりに伸びる形態をなしていることから、前記引抜き防止用具が前記ソイルセメント中においてアンカーに相当する機能を発揮し、既製杭16の引抜きを防止する働きをなす。
【0025】
図1に示す引抜き防止用具10は、その取付数を1とすることに代えて、任意の数の複数個とすることができる。複数の引抜き防止用具10は、H形鋼14にまた既製杭16にこれらの伸長方向に適当な間隔をおいて配置することができる(図4)。
【0026】
同様に、図3に示す引抜き防止用具10もまたその取付数を1とすることに代えて、任意の数の複数個とすることができる。また、同様に、引抜き防止用具10は、H形鋼14にまた既製杭16にこれらの伸長方向に適当な間隔をおいて配置することができる(図5)。
【0027】
さらに、図1に示す引抜き防止用具10及び図3に示す引抜き防止用具10の双方を、1のH形鋼14にまた1の既製杭16に、互いに間隔をおいて取り付けることができる(図6)。ここにおいて、図1に示す引抜き防止用具10の数及び図3に示す引抜き防止用具10の数は任意に定めることができる。
【符号の説明】
【0028】
10 引抜き防止用具
10a、10b 筒形部及び錐台形部
12 ソイルセメント柱列壁
14 H形鋼
16 既製杭
22 削孔
24 ソイルセメント
図1
図2
図3
図4
図5
図6