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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】加熱処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/324 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
H01L21/324 T
H01L21/324 R
H01L21/324 K
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021138109
(22)【出願日】2021-08-26
(65)【公開番号】P2023032160
(43)【公開日】2023-03-09
【審査請求日】2023-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000002428
【氏名又は名称】芝浦メカトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 雅彦
【審査官】安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-205991(JP,A)
【文献】特開昭61-251128(JP,A)
【文献】特表2003-526940(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/324
H01L 21/26 -21/268
H01L 21/205
F26B 3/00 - 3/36
F27B 5/00 - 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバと、
前記チャンバの内部に設けられ、複数の第1のヒータを有する第1の加熱部と、
前記チャンバの内部に設けられ、複数の第2のヒータを有し、前記第1の加熱部と対向する第2の加熱部と、
箱状を呈し、内部にワークが支持される空間を有し、前記第1の加熱部と、前記第2の加熱部との間に着脱自在に設けられた処理部と、
前記処理部の外部の前記第1の加熱部側、および、前記処理部の外部の前記第2の加熱部側の少なくともいずれかに設けられたパネルと、
前記パネルと、前記処理部との間に冷却ガスを供給するノズルと、
前記ノズルに接続されたバルブと、
を備え
前記第1のヒータおよび前記第2のヒータは、それぞれ、前記ワークの一方向における全域に亘って並べられるように設けられ、
前記パネルは前記ワークの中央領域と対向するように設けられ、前記パネルの平面寸法は、前記処理部の平面寸法よりも小さい加熱処理装置。
【請求項2】
前記処理部は、
骨組み構造、または、枠体であるフレームと、
前記フレームの上部に設けられた、少なくとも1つの板状の上部均熱板と、
前記フレームの下部に設けられた、少なくとも1つの板状の下部均熱板と、
を有し、
前記ノズルは、前記パネルと、前記上部均熱板との間、および、前記パネルと、前記下部均熱板との間の、少なくともいずれかに前記冷却ガスを供給する請求項1記載の加熱処理装置。
【請求項3】
前記バルブは、オープン時に前記冷却ガスの供給量を緩やかに増加させる請求項1または2に記載の加熱処理装置。
【請求項4】
前記バルブに接続され、前記冷却ガスの供給量を制御する流量調整部と、
前記第1の加熱部、前記第2の加熱部、前記バルブ、および前記流量調整部を制御するコントローラと、
をさらに備え、
前記コントローラは、予め定められた前記第1の加熱部および前記第2の加熱部による加熱タイミングと、予め定められた前記バルブによる前記冷却ガスの供給タイミングと、予め定められた前記流量調整部による前記冷却ガスの供給量と、を含む制御プログラムを格納し、
前記コントローラは、格納された前記制御プログラムに基づいて、前記処理部の内部に支持されたワークの処理を行う請求項1~3のいずれか1つに記載の加熱処理装置。
【請求項5】
前記処理部の内部に設けられ、前記ワークの、前記パネルに対向する第1の領域の温度を検出する第1の温度センサと、
前記処理部の内部に設けられ、前記ワークの、前記第1の領域とは異なる第2の領域の温度を検出する第2の温度センサと、
前記第1の温度センサにより検出された前記第1の領域の温度、および前記第2の温度センサにより検出された前記第2の領域の温度に基づいて、前記バルブを制御するコントローラと、
をさらに備え、
前記コントローラは、前記第1の領域の温度が前記第2の領域の温度よりも高い場合には、前記バルブを制御して、前記ノズルから前記パネルと前記処理部との間に前記冷却ガスを供給する請求項1~3のいずれか1つに記載の加熱処理装置。
【請求項6】
前記バルブに接続され、前記冷却ガスの供給量を制御する流量調整部をさらに備え、
前記コントローラは、前記流量調整部をさらに制御し、前記第1の領域の温度と前記第2の領域の温度との差に基づいて、前記流量調整部による前記冷却ガスの供給量を変化させる請求項5記載の加熱処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、加熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ワークを加熱して、ワークの表面に膜などを形成したり、ワークの表面を処理したりする加熱処理装置がある。
例えば、基板と、基板の表面に塗布された溶液とを有するワークを加熱することで、基板の上に有機膜を形成する加熱処理装置が提案されている。(例えば、特許文献1を参照)
この様な加熱処理装置においては、チャンバの内部空間を大気圧よりも減圧し、大気圧よりも減圧された雰囲気において、ワークを100℃~600℃程度の温度にまで加熱する場合がある。また、ワークの表面側(上側)と、ワークの裏面側(下側)にヒータを設け、ワークの両面側から加熱を行うことで、処理期間の短縮を図ることも行われている。
【0003】
ここで、加熱処理の際に、ワークの面内の温度分布にばらつきが生じると、形成された膜や、処理された層の品質にワークの面内においてばらつきが生じるおそれがある。そこで、ワークの表面に対向する板材と、ワークの裏面に対向する板材とを設け、ワークの表面およびワークの裏面に均等に熱を加える技術が提案されている。(例えば、特許文献1および特許文献2を参照)
しかしながら、例えば、ワークの外側にはチャンバがあるので、ワークの周縁領域の熱がチャンバに奪われやすくなる。そのため、ワークの表面に対向する板材と、ワークの裏面に対向する板材とを設けても、ワークの中央領域の温度がワークの周縁領域の温度よりも高くなって、ワークの面内の温度分布にばらつきが生じる場合がある。
そこで、ワークの面内の温度分布にばらつきが生じるのを抑制することができる加熱処理装置の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2019/117250号
【文献】特開平06-310448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、ワークの面内の温度分布にばらつきが生じるのを抑制することができる加熱処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る加熱処理装置は、チャンバと、前記チャンバの内部に設けられ、複数の第1のヒータを有する第1の加熱部と、前記チャンバの内部に設けられ、複数の第2のヒータを有し、前記第1の加熱部と対向する第2の加熱部と、箱状を呈し、内部にワークが支持される空間を有し、前記第1の加熱部と、前記第2の加熱部との間に着脱自在に設けられた処理部と、前記処理部の外部の前記第1の加熱部側、および、前記処理部の外部の前記第2の加熱部側の少なくともいずれかに設けられたパネルと、前記パネルと、前記処理部との間に冷却ガスを供給するノズルと、前記ノズルに接続されたバルブと、を備え
前記第1のヒータおよび前記第2のヒータは、それぞれ、前記ワークの一方向における全域に亘って並べられるように設けられ、前記パネルは前記ワークの中央領域と対向するように設けられ、前記パネルの平面寸法は、前記処理部の平面寸法よりも小さい
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態によれば、ワークの面内の温度分布にばらつきが生じるのを抑制することができる加熱処理装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施の形態に係る加熱処理装置を例示するための模式断面図である。
図2】処理部の外観を例示するための模式斜視図である。
図3図1における温度制御部のA-A線方向の模式平面図である。
図4】ワークの加熱プロセスを例示するためのグラフである。
図5】ワークの中央領域の温度と、ワークの周縁領域の温度とを例示するためのグラフである。
図6】他の実施形態に係る温度制御部を例示するための模式平面図である。
図7】他の実施形態に係る温度制御部を例示するための模式断面図である。
図8】他の実施形態に係る温度制御部を例示するための模式断面図である。
図9】他の実施形態に係る温度制御部を例示するための模式断面図である。
図10図9における温度制御部のB-B線方向の模式平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
以下においては、一例として、大気圧よりも減圧された雰囲気においてワークを加熱して、ワークの表面に有機膜を形成する加熱処理装置を説明する。しかしながら、本発明は、これに限定されるわけではない。例えば、本発明は、ワークを加熱して、ワークの表面に無機膜などを形成したり、ワークの表面を処理したりする加熱処理装置にも適用することができる。
【0010】
また、加熱前のワークは、例えば、基板と、基板の表面に塗布された溶液とを有するものであってもよいし、基板のみであってもよい。以下においては、一例として、加熱前のワークが、基板と、基板の表面に塗布された溶液とを有する場合を説明する。なお、溶液には、液体が仮焼成されて半硬化状態(流れない状態)のものも含まれる。
【0011】
図1は、本実施の形態に係る加熱処理装置1を例示するための模式断面図である。
なお、図1中のX方向、Y方向、およびZ方向は、互いに直交する三方向を表している。本明細書における上下方向は、Z方向とすることができる。
図2は、処理部50の外観を例示するための模式斜視図である。
図3は、図1における温度制御部60のA-A線方向の模式平面図である。
加熱前のワーク100は、基板と、基板の表面に塗布された溶液とを有する。
基板は、例えば、ガラス基板や半導体ウェーハなどである。ただし、基板は、例示をしたものに限定されるわけではない。
溶液は、例えば、有機材料と溶剤を含んでいる。有機材料は、溶剤により溶解が可能なものであれば特に限定はない。溶液は、例えば、ポリアミド酸を含むワニスなどとすることができる。ただし、溶液は、例示をしたものに限定されるわけではない。
【0012】
図1に示すように、加熱処理装置1には、例えば、チャンバ10、排気部20、加熱部30、冷却部40、処理部50、温度制御部60、およびコントローラ70が設けられている。
【0013】
コントローラ70は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などの演算部と、メモリなどの記憶部とを備えている。コントローラ70は、例えば、コンピュータなどである。コントローラ70は、記憶部に格納されている制御プログラムに基づいて、加熱処理装置1に設けられた各要素の動作を制御する。
【0014】
チャンバ10は、箱状を呈している。チャンバ10は、大気圧よりも減圧された雰囲気を維持可能な気密構造を有している。チャンバ10の外観形状には特に限定はない。チャンバ10の外観形状は、例えば、直方体や円筒とすることができる。チャンバ10は、例えば、ステンレスなどの金属から形成することができる。
【0015】
例えば、Y方向におけるチャンバ10の一方の端部には、開閉扉11を設けることができる。開閉扉11を閉めた際には、Oリングなどのシール材により、チャンバ10の開口が気密になるように閉鎖される。開閉扉11を開けた際には、チャンバ10の開口を介したワーク100の搬入または搬出を行うことができる。
【0016】
例えば、Y方向におけるチャンバ10の他方の端部には、蓋12を設けることができる。例えば、蓋12は、ネジなどの締結部材を用いて、チャンバ10の他方の端部に着脱可能に設けることができる。蓋12を取り付けた際には、Oリングなどのシール材により、チャンバ10の開口が気密になるように閉鎖される。着脱可能な蓋12が設けられていれば、加熱処理装置1のメンテナンスが容易となる。また、加熱処理装置1のメンテナンス時には、処理部50の搬入または搬出を行うことができる。
【0017】
チャンバ10の外壁には冷却部13を設けることができる。冷却部13には、図示しない冷却水供給部が接続されている。冷却部13は、例えば、ウォータージャケット(Water Jacket)とすることができる。冷却部13が設けられていれば、チャンバ10の外壁温度が所定の温度よりも高くなるのを抑制することができる。
【0018】
排気部20は、チャンバ10の内部を排気する。排気部20は、第1の排気部21と、第2の排気部22を有する。
第1の排気部21は、チャンバ10の底面に設けられた排気口17に接続されている。 第1の排気部21は、排気ポンプ21aと、圧力制御部21bを有する。
排気ポンプ21aは、大気圧から所定の圧力まで粗引き排気を行う排気ポンプとすることができる。そのため、排気ポンプ21aは、後述する排気ポンプ22aよりも排気量が多い。排気ポンプ21aは、例えば、ドライ真空ポンプなどとすることができる。
【0019】
圧力制御部21bは、排気口17と排気ポンプ21aとの間に設けられている。圧力制御部21bは、チャンバ10の内圧を検出する図示しない真空計などの出力に基づいて、チャンバ10の内圧が所定の圧力となるように制御する。圧力制御部21bは、例えば、APC(Auto Pressure Controller)などとすることができる。
【0020】
第2の排気部22は、チャンバ10の底面に設けられた排気口18に接続されている。 第2の排気部22は、排気ポンプ22aと、圧力制御部22bを有する。
排気ポンプ22aは、排気ポンプ21aによる粗引き排気の後、さらに低い所定の圧力まで排気を行う。排気ポンプ22aは、例えば、高真空の分子流領域まで排気可能な排気能力を有する。例えば、排気ポンプ22aは、ターボ分子ポンプ(TMP:Turbo Molecular Pump)などとすることができる。
【0021】
圧力制御部22bは、排気口18と排気ポンプ22aとの間に設けられている。圧力制御部22bは、チャンバ10の内圧を検出する図示しない真空計などの出力に基づいて、チャンバ10の内圧が所定の圧力となるように制御する。圧力制御部22bは、例えば、APCなどとすることができる。
【0022】
排気口17、および排気口18は、チャンバ10の底面に配置されている。そのため、チャンバ10の内部に、チャンバ10の底面に向かうダウンフローの気流が形成される。ダウンフローの気流が形成されれば、ワーク100を加熱した際に生じた、有機材料を含む昇華物が、ダウンフローの気流に乗ってチャンバ10の外部に排出される。そのため、チャンバ10の内壁などに昇華物などの異物が付着するのを抑制することができる。
【0023】
なお、以上においては、排気口17および排気口18がチャンバ10の底面に設けられる場合を例示したが、排気口17および排気口18は、例えば、チャンバ10の天井面や側面に設けることもできる。排気口17および排気口18がチャンバ10の底面、または天井面に設けられていれば、チャンバ10の内部に、チャンバ10の底面、または天井面に向かう気流を形成することができる。
【0024】
チャンバ10の内部空間の圧力が減圧されれば、チャンバ10の外部に放出される熱を抑制することができる。そのため、加熱効率と蓄熱効率を向上させることができるので、ヒータ33に印加する電力を低減できる。ヒータ33に印加する電力を低減できれば、ヒータ33の温度が所定の温度以上となるのを抑制できる。そのため、ヒータ33の寿命を長くすることができる。
【0025】
加熱部30は、例えば、第1の加熱部31、および第2の加熱部32を有する。第1の加熱部31、および第2の加熱部32は、チャンバ10の内部に設けられている。
第1の加熱部31は、処理部50の上方に設けられている。第2の加熱部32は、処理部50の下方に設けられている。第2の加熱部32は、第1の加熱部31と対向している。後述するように、処理部50の内部にはワーク100が支持されている。そのため、第1の加熱部31は、処理部50の内部に支持されたワーク100の表面(上面)を加熱する。第2の加熱部32は、処理部50の内部に支持されたワーク100の裏面(下面)を加熱する。
【0026】
例えば、図1に示すように、複数の処理部50が、チャンバ10の内部において、上下方向(Z方向)に並べて設けられる場合がある。この様な場合には、上側の処理部50の下方に設けられた第2の加熱部32を、下側の処理部50の上方に設けられた第1の加熱部31とすることができる。すなわち、処理部50と処理部50との間に設けられた第1の加熱部31または第2の加熱部32は、兼用することができる。
【0027】
この場合、上側の処理部50の内部に支持されたワーク100の裏面(下面)は、兼用される第1の加熱部31または第2の加熱部32により加熱される。下側の処理部50の内部に支持されたワーク100の表面(上面)は、兼用される第1の加熱部31または第2の加熱部32により加熱される。この様にすれば、第1の加熱部31または第2の加熱部32の数を減らすことができるので消費電力の低減、製造コストの低減、省スペース化などを図ることができる。
【0028】
第1の加熱部31は、少なくとも1つのヒータ33(第1のヒータの一例に相当する)を有する。第2の加熱部32は、少なくとも1つのヒータ33(第1のヒータの一例に相当する)を有する。ヒータ33は、例えば、チャンバ10の内部に設けられた図示しないホルダに保持される。ヒータ33の端子側の端部は、チャンバ10の蓋12の外側に露出している。この様にすれば、ヒータ33のメンテナンスが容易となる。
【0029】
図1に例示をした第1の加熱部31および第2の加熱部32は、複数のヒータ33を有している。複数のヒータ33は、例えば、X方向に並べて設けることができる。複数のヒータ33は、例えば、Y方向に並べて設けることもできる。複数のヒータ33は、例えば、等間隔に並べることができる。第2の加熱部32に設けられるヒータ33の仕様、数、間隔などは、第1の加熱部31に設けられるヒータ33の仕様、数、間隔などと同じとすることもできるし、異なるものとすることもできる。ヒータ33の仕様、数、間隔などは、加熱する溶液の組成(溶液の加熱温度)、ワーク100の大きさなどに応じて適宜変更することができる。ヒータ33の仕様、数、間隔などは、シミュレーションや実験などを行うことで適宜決定することができる。
【0030】
ヒータ33は、例えば、シーズヒータ、遠赤外線ヒータ、遠赤外線ランプ、セラミックヒータ、カートリッジヒータなどである。また、各種ヒータを石英カバーで覆うこともできる。
また、ヒータ33は、一方向に延びる棒状のヒータとすることができる。複数のヒータ33が設けられる場合には、例えば、複数のヒータ33が並ぶ方向と直交する方向に延びる棒状のヒータとすることができる。なお、本明細書においては、石英カバーで覆われた各種ヒータをも含めて「棒状のヒータ」と称する。また、「棒状」の外観形状には限定がなく、例えば、円柱状や角柱状などとすることができる。
【0031】
また、ヒータ33は、大気圧よりも減圧された雰囲気においてワーク100を加熱できれば、前述したものに限定されない。すなわち、ヒータ33は、放射による熱エネルギーを利用するものであればよい。
【0032】
冷却部40は、チャンバ10の内部に冷却ガスを供給する。冷却部40は、処理部50に設けられた図示しない孔などを介して、処理部50の内部にも冷却ガスを供給するようにしてもよい。冷却部40は、冷却ガスにより、処理部50を冷却する。処理部50が冷却されることで、高温状態にあるワーク100が間接的に冷却される。また、処理部50が冷却されることで、処理部50の熱がワーク100に伝わるのを抑制することができる。冷却ガスが、処理部50の内部に供給される場合には、高温状態にあるワーク100が冷却ガスにより直接冷却される。
【0033】
なお、冷却部40は必ずしも必要ではなく、省くこともできる。ただし、冷却部40が設けられていれば、ワーク100の冷却時間を短縮することができる。また、ワーク100の冷却の際に、処理部50からの熱で、ワーク100の面内の温度分布にばらつきが生じるのを抑制することができる。
【0034】
冷却部40は、例えば、ノズル41、ガス源42、およびガス制御部43を有する。
ノズル41は、例えば、チャンバ10の壁面などに設けることができる。なお、ノズル41の数や配置は適宜変更することができる。
【0035】
ガス源42は、ノズル41に冷却ガスを供給する。ガス源42は、例えば、高圧ガスボンベ、工場配管などとすることができる。また、ガス源42は、複数設けることもできる。
【0036】
冷却ガスは、加熱されたワーク100と反応し難いガスとすることができる。冷却ガスは、例えば、窒素ガス、炭酸ガス(CO)、希ガスなどである。希ガスは、例えば、アルゴンガスやヘリウムガスなどである。冷却ガスの温度は、例えば、室温(例えば、25℃)以下とすることができる。
【0037】
ガス制御部43は、ノズル41とガス源42との間に設けられている。ガス制御部43は、例えば、冷却ガスの供給と、供給の停止と、冷却ガスの流速および流量の少なくともいずれかの制御と、を行うことができる。
【0038】
処理部50は、第1の加熱部31と第2の加熱部32との間に着脱自在に設けられる。例えば、処理部50は、メンテナンス時にチャンバ10の、蓋12が設けられた側の開口を介して、チャンバ10の内部に搬入される。例えば、処理部50は、メンテナンス時に蓋12が設けられた側の開口を介して、チャンバ10の外部に搬出される。
【0039】
処理部50は、少なくとも1つ設けられる。図1においては、2つの処理部50が設けられる場合を例示したが、処理部50の数は1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0040】
図1、および図2に示すように、処理部50は、箱状を呈し、内部にワーク100が支持される空間を有している。処理部50の外観形状は、例えば、直方体とすることができる。
処理部50は、例えば、フレーム51、上部均熱板52、下部均熱板53、側部均熱板54、側部均熱板55、支持部56、温度センサ57、および保持部58を有する。
【0041】
フレーム51は、例えば、細長い板材や形鋼などを用いた骨組み構造、または、板金加工などで形成された枠体などとすることができる。フレーム51は、例えば、ステンレスなどの金属から形成される。
【0042】
上部均熱板52は、板状を呈し、フレーム51の上部に設けられる。上部均熱板52は、フレーム51の上部に着脱自在に設けることができる。上部均熱板52は、少なくとも1つ設けることができる。図2に例示をした処理部50には15個の上部均熱板52が設けられている。上部均熱板52の平面形状は、例えば、四角形とすることができる。上部均熱板52の数と平面形状は、フレーム51の上部の大きさと形状に応じて適宜変更することができる。
【0043】
下部均熱板53は、板状を呈し、フレーム51の下部に設けられる。下部均熱板53は、フレーム51の下部に着脱自在に設けることができる。下部均熱板53は、上部均熱板52と対向している。下部均熱板53は、少なくとも1つ設けることができる。下部均熱板53の数と平面形状は、例えば、上部均熱板52の数と平面形状と同じとすることもできるし、異なるものとすることもできる。
【0044】
側部均熱板54は、板状を呈し、フレーム51の、互いに対向する側部のそれぞれに設けられる。フレーム51の、側部均熱板54が設けられる側部は開口している。フレーム51の側部に設けられた開口を介して、処理部50の内部にワーク100を搬入したり、処理部50の内部からワーク100を搬出したりする。そのため、一対の側部均熱板54の少なくとも一方は、フレーム51の側部に開閉自在、または着脱自在に設けることができる。例えば、一対の側部均熱板54の少なくとも一方は、開閉扉11に設けることができる。
【0045】
側部均熱板55は、フレーム51の内部に一対設けられる。一対の側部均熱板55は、互いに対向し、一対の側部均熱板54の間を延びている。一対の側部均熱板55の一方は、フレーム51の、保持部58が設けられる一方の側部の近傍に設けられる。一対の側部均熱板55の他方は、フレーム51の、保持部58が設けられる他方の側部の近傍に設けられる。
【0046】
上部均熱板52、下部均熱板53、側部均熱板54、および側部均熱板55により囲まれた空間が、ワーク100を加熱する処理空間となる。処理部50の内部の処理空間と、チャンバ10の内部空間とは、例えば、複数の上部均熱板52同士の間の隙間などを介して繋がっている。そのため、チャンバ10の内部空間の圧力が減圧されると、処理部50の内部の処理空間の圧力も減圧される。
【0047】
ここで、前述したように、複数のヒータ33は、棒状を呈し、所定の間隔を空けて並べて設けられている。そのため、棒状を呈する複数のヒータ33を用いてワーク100を直接加熱すると、加熱されたワーク100の面内の温度分布にばらつきが生じる。
【0048】
ワーク100の面内の温度分布にばらつきが生じると、形成された有機膜の品質が低下するおそれがある。例えば、温度が高くなった部分において、泡が発生したり、有機膜の組成が変化したりするおそれがある。
【0049】
上部均熱板52、および下部均熱板53が設けられていれば、複数のヒータ33から放射された熱は、上部均熱板52および下部均熱板53に入射する。上部均熱板52および下部均熱板53に入射した熱は、これらの内部を面方向に伝搬しながらワーク100に向けて放射される。そのため、ワーク100の面内の温度分布にばらつきが生じるのを抑制することができ、ひいては形成される有機膜の品質を向上させることができる。
【0050】
上部均熱板52および下部均熱板53の材料は、熱伝導率の高い材料とすることが好ましい。これらの材料は、例えば、アルミニウム、銅、ステンレスなどとすることができる。なお、アルミニウムや銅などの酸化しやすい材料を用いる場合には、酸化しにくい材料を含む層を表面に設けることができる。
【0051】
上部均熱板52および下部均熱板53から放射された熱の一部は、処理空間の側方に向かう。そのため、処理部50には側部均熱板54、55が設けられている。側部均熱板54、55に入射した熱は、側部均熱板54、55を面方向に伝搬しながら、その一部がワーク100に向けて放射される。そのため、ワーク100の加熱効率を向上させることができる。
側部均熱板54、55の材料は、前述した上部均熱板52および下部均熱板53の材料と同じとすることができる。
【0052】
なお、図2においては、複数の上部均熱板52および複数の下部均熱板53が、設けられる場合を例示したが、上部均熱板52および下部均熱板53の少なくとも一方は、単一の板状部材とすることもできる。
【0053】
以上に説明した様に、処理部50の内部の処理空間に支持されたワーク100は、上部均熱板52、下部均熱板53、および側部均熱板54、55を介して加熱される。ここで、溶液を加熱する際に生じた昇華物を含む蒸気は、加熱対象であるワーク100の温度よりも低い温度の物に付着しやすい。この場合、上部均熱板52、下部均熱板53、および側部均熱板54、55は加熱されているので、昇華物が上部均熱板52、下部均熱板53、および側部均熱板54、55に付着するのが抑制される。また、発生した昇華物は、上部均熱板52同士の間の隙間などを介して処理部50の外部に排出され、前述したダウンフローの気流に乗ってチャンバ10の外に排出される。そのため、発生した昇華物がワーク100に付着するのを抑制できる。
【0054】
また、処理部50は、チャンバ10の内部に着脱自在に設けられている。そのため、昇華物が処理部50の構成要素に付着した場合には、チャンバ10の外部において付着物の除去を行うことができる。そのため、メンテナンス性の向上を図ることができる。
また、処理部50は予め余分に作製することができる。そのため、例えば、付着物の付いた処理部50を清掃している間に、他の処理部50を用いてワーク100の処理を行うことができる。
【0055】
支持部56は、処理部50の内部に複数設けられている。複数の支持部56は、上部均熱板52、下部均熱板53、側部均熱板54、および側部均熱板55により囲まれた空間、すなわちワーク100を加熱する処理空間においてワーク100を支持する。複数の支持部56は、上部均熱板52と下部均熱板53とに対向するようにワーク100を支持する。
【0056】
複数の支持部56は、棒状体とすることができる。
複数の支持部56の一方の端部(ワーク100側の端部)の形状は、半球状などとすることができる。複数の支持部56の一方の端部の形状が半球状であれば、ワーク100の下面に損傷が発生するのを抑制することができる。また、ワーク100の下面と複数の支持部56との接触面積を小さくすることができるので、ワーク100から複数の支持部56に伝わる熱を少なくすることができる。
【0057】
複数の支持部56の他方の端部(ワーク100側とは反対側の端部)は、フレーム51の、下部均熱板53が取り付けられる部分などに固定することができる。
【0058】
複数の支持部56は、例えば、ステンレスなどから形成される。
複数の支持部56の数、配置、間隔などは、ワーク100の大きさや剛性(撓み)などに応じて適宜変更することができる。
【0059】
温度センサ57は、処理部50の内部に少なくとも1つ設けられている。温度センサ57は、上部均熱板52、下部均熱板53、側部均熱板54、および側部均熱板55により囲まれた空間、すなわちワーク100を加熱する処理空間において、ワーク100の温度を検出する。
【0060】
ここで、ワーク100の中央領域は、ワーク100の周縁領域に比べて、外部への放熱が生じ難い。そのため、ワーク100の中央領域の温度が、ワーク100の周縁領域の温度よりも高くなりやすい。この場合、複数の温度センサ57が設けられていれば、ワーク100の面内における温度分布を求めることができる。
【0061】
例えば、図2に示すように、ワーク100の、パネル61に対向する中央領域(第1の領域の一例に相当する)の温度を検出する温度センサ57(第1の温度センサの一例に相当する)を設けることができる。ワーク100の、周縁領域(第2の領域の一例に相当する)の温度を検出する温度センサ57(第2の温度センサの一例に相当する)を設けることができる。ただし、温度センサ57の配置と数などは、例示をしたものに限定されるわけではなく、ワーク100大きさや、加熱温度などに応じて適宜変更することができる。
【0062】
例えば、温度センサ57は、ワーク100の下面近傍の空間において、ワーク100の温度を間接的に測定する。この場合、ワーク100が撓むなどして、ワーク100と温度センサ57との間の距離がばらつくと検出値の誤差が大きくなる。この場合、ワーク100の、支持部56により支持されている部分は撓みなどが小さいので、温度センサ57が支持部56の近傍に設けられていれば検出値の誤差を小さくすることができる。そのため、温度センサ57は、支持部56の近傍に設けることが好ましい。
なお、赤外線センサなどの非接触温度センサを用いてワーク100の温度を直接検出してもよい。
【0063】
温度センサ57がワーク100に接触しなければ、ワーク100に損傷が発生することがない。また、ワーク100の繰り返しの出し入れによる衝撃が、温度センサ57に加わらないため、温度センサ57が損傷するのを抑制することができる。
温度センサ57は、例えば、熱電対、測温抵抗体、サーミスタ、赤外線センサなどとすることができる。ただし、温度センサ57は、例示をしたものに限定されるわけではない。
【0064】
温度センサ57には、配線57aが電気的に接続されている。図2に示すように、配線57aの端部は処理部50の外部に設けられている。配線57aの端部には、コネクタ57bが電気的に接続されている。チャンバ10には、例えば、コントローラ70と電気的に接続された配線14が設けられている。配線14の端部には、コネクタ14aが設けられている。コネクタ14aは、コネクタ57bと電気的および機械的に着脱自在となっている。処理部50をチャンバ10の内部に搬入した際には、コネクタ57bをコネクタ14aに接続する。処理部50をチャンバ10の内部から搬出する際には、コネクタ57bをコネクタ14aから取り外す。この様にすれば、温度センサ57を備えた処理部50をチャンバ10の内部に着脱自在に設けることができる。
【0065】
なお、温度センサ57は省くこともできる。加熱プロセスにおけるワーク100の温度は予め知ることができる。例えば、複数の温度センサが設けられたワークを加熱して加熱プロセスにおけるワーク100の温度を求めたり、シミュレーションにより加熱プロセスにおけるワーク100の温度を求めたりすることができる。
ただし、温度センサ57が設けられていれば、加熱プロセスにおけるワーク100の温度を正確、且つ、リアルタイムに求めることができる。
【0066】
保持部58は、フレーム51の、側部均熱板54が設けられる側面に交差する側面に設けられている。保持部58は、一対設けられている。保持部58は、フレーム51の側面から外部に向けて突出し、側部均熱板54が設けられる側面同士の間を延びている。
【0067】
図1に示すように、チャンバ10の内部には、1つの処理部50に対して一対の桟15が設けられている。チャンバ10の内部に搬入された処理部50の保持部58は、桟15の上に載置される。処理部50は、一対の保持部58と一対の桟15とにより、チャンバ10の内部に着脱自在に保持される。
【0068】
ここで、前述したように、上部均熱板52および下部均熱板53が設けられていれば、ワーク100の面内温度がばらつくのを抑制することができる。ところが、処理部50の外側(ワーク100の外側)にはチャンバ10の内壁などがあるので、ワーク100の周縁領域は、ワーク100の中央領域に比べて外部への放熱が生じ易い。そのため、上部均熱板52および下部均熱板53を設けただけでは、ワーク100の面内温度をさらに均一にするのが難しい。
【0069】
そこで、本実施の形態に係る加熱処理装置1には温度制御部60が設けられている。複数の処理部50が設けられる場合には、複数の処理部50毎に温度制御部60を設けることができる。また、1つの処理部50に対して、少なくとも1つの温度制御部60を設けることができる。
温度制御部60は、ワーク100の所定の領域の温度を低下させることで、ワーク100の面内温度のばらつきを小さくする。
【0070】
図1、および図3に示すように、温度制御部60は、例えば、パネル61、ノズル62、バルブ63、流量調整部64、およびガス源65を有する。
パネル61は、例えば、スペーサやブラケットなどを用いて、処理部50、または、チャンバ10の内壁に設けることができる。パネル61は、板状を呈し、処理部50の上面(上部均熱板52)に対向している。パネル61は、例えば、処理部50の上面と略平行に設けられる。パネル61の平面寸法は、処理部50の上面の平面寸法よりも小さくすることができる。
【0071】
パネル61は、ワーク100の、温度を低下させる領域に対向する位置に設けられる。前述したように、ワーク100の中央領域は、ワーク100の周縁領域に比べて温度が高くなりやすい。そのため、一般的には、パネル61は、ワーク100の中央領域に対向する位置に設けられる。
【0072】
パネル61と処理部50の上面との間の隙間には、後述する温度制御ガスが供給される。そのため、パネル61は、供給された温度制御ガスがチャンバ10の内部に拡散するのを抑制するために設けられる。パネル61と処理部50の上面との間には、温度制御ガスをある程度保持することができる。そのため、パネル61の平面寸法と平面形状は、例えば、ワーク100の、温度を低下させる領域の平面寸法と平面形状と同程度とすることができる。ただし、パネル61の平面寸法と平面形状は、ワーク100の大きさや温度などに応じて適宜変更することができる。パネル61の平面寸法と平面形状は、実験やシミュレーションを行うことで適宜決定することができる。
パネル61の材料は、例えば、上部均熱板52の材料と同じとすることができる。
【0073】
ノズル62は、パネル61と処理部50の上面との間の隙間に温度制御ガスを供給する。ノズル62は、例えば、パネル61に固定することができる。ノズル62は、少なくとも1つ設けることができる。例えば、ノズル62はパネル61の中央に1つ設けることもできるし、パネル61の複数の箇所に設けることもできる。ノズル62の数や配置は、ワーク100の、温度を低下させる領域の大きさなどに応じて適宜変更することができる。ノズル62の数や配置は、実験やシミュレーションを行うことで適宜決定することができる。
【0074】
バルブ63は、ノズル62に接続されている。バルブ63は、チャンバ10の外部であって、ノズル62とガス源65との間に設けられている。バルブ63は、温度制御ガスの供給の開始と、供給の停止とを切り替える。
また、バルブ63は、バルブ63のオープン時に温度制御ガスの供給量を緩やかに増加させるものとすることが好ましい。例えば、バルブ63は、いわゆるスロースタートバルブやスローオープンバルブなどとすることができる。バルブ63のオープン時に温度制御ガスの供給量が緩やかに増加すれば、処理部50の温度、ひいてはワーク100の温度が急激に変化するのを抑制することができる。そのため、ワーク100の面内において、形成された有機膜の品質にばらつきが生じるのを抑制することができる。
【0075】
流量調整部64は、バルブ63に接続されている。流量調整部64は、チャンバ10の外部であって、バルブ63とガス源65との間に設けられている。流量調整部64は、温度制御ガスの供給量を制御する。流量調整部64は、例えば、マスフローコントローラ(Mass Flow Controller)などとすることができる。流量調整部64は、前述したバルブ63の機能をさらに有することもできる。流量調整部64がバルブ63の機能を有する場合には、バルブ63を省くことができる。
【0076】
ガス源65は、チャンバ10の外部に設けられている。ガス源65は、バルブ63および流量調整部64を介して、ノズル62に温度制御ガスを供給する。ガス源65は、例えば、高圧ガスボンベ、工場配管などとすることができる。温度制御ガスは、加熱されたワーク100と反応し難いガスとすることができる。温度制御ガスは、例えば、窒素ガス、炭酸ガス(CO)、希ガスなどである。希ガスは、例えば、アルゴンガスやヘリウムガスなどである。温度制御ガスの温度は、例えば、室温(例えば、25℃)以下とすることができる。温度制御ガスは、前述した冷却ガスと同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0077】
前述したように、処理部50は、チャンバ10の内部に着脱自在に設けられる。そのため、パネル61とノズル62が処理部50に設けられる場合には、ノズル62とバルブ63との間に、コネクタ66を設けることができる。コネクタ66は、ノズル62側の配管とバルブ63の配管との接続、および分離を行う。コネクタ66が設けられていれば、パネル61とノズル62が設けられた処理部50を、チャンバ10の内部に搬入、搬出する際の作業が容易となる。
【0078】
次に、温度制御部60の作用および効果についてさらに説明する。
図4は、ワーク100の加熱プロセスを例示するためのグラフである。
図4に示すように、チャンバ10の内部に搬入されたワーク100は、昇温工程(1)、加熱処理工程(1)、および昇温工程(2)を経て、所定の温度まで加熱される。加熱処理工程(2)においては、ワーク100の温度を所定の期間維持することで、例えば、基板の上に有機膜を形成する。その後、ワーク100を冷却する冷却工程を経て、加熱処理されたワーク100がチャンバ10の外部に搬出される。
【0079】
図5は、ワーク100の中央領域の温度と、ワーク100の周縁領域の温度とを例示するためのグラフである。
前述したように、ワーク100の周縁領域は、ワーク100の中央領域に比べて、外部への放熱が生じ易い。そのため、図5に示すように、ワーク100の中央領域の温度が、ワーク100の周縁領域の温度よりも高くなりやすい。この場合、ワーク100の温度が高くなるほど、中央領域の温度と周縁領域の温度との差が大きくなる。例えば、加熱処理工程(1)における中央領域の温度と周縁領域の温度との差T1よりも、加熱処理工程(2)における中央領域の温度と周縁領域の温度との差T2の方が大きくなる。加熱処理工程(2)においては、例えば、基板の上に有機膜が形成されるので、中央領域の温度と周縁領域の温度との差T2が大きくなると、ワーク100の面内において、形成された有機膜の品質にばらつきが生じるおそれがある。
【0080】
本実施の形態に係る加熱処理装置1には温度制御部60が設けられているので、ワーク100の中央領域に対向する位置に温度制御ガスを供給することで、中央領域の温度と周縁領域の温度との差が小さくなる様にすることができる。そのため、ワーク100の面内において、形成された有機膜の品質にばらつきが生じるのを抑制することができる。
なお、ワーク100の中央領域に対向する位置に温度制御ガスを供給する場合を説明したが、ワーク100の温度が高い領域に対向する位置に温度制御ガスを供給すればよい。
【0081】
温度センサ57が設けられている場合には、コントローラ70は、温度センサ57からの信号に基づいて、バルブ63および流量調整部64を制御することで、温度制御ガスの供給タイミングと供給量を制御することができる。
【0082】
例えば、コントローラ70は、ワーク100の、パネル61に対向する中央領域の温度、および、ワーク100の周縁領域の温度に基づいて、バルブ63を制御する。そして、コントローラ70は、中央領域の温度が周縁領域の温度よりも高い場合には、バルブ63を制御して、ノズル62からパネル61と処理部50との間に温度制御ガスを供給する。
【0083】
また、コントローラ70は、中央領域の温度と周縁領域の温度との差に基づいて、流量調整部64による温度制御ガスの供給量を変化させる。例えば、温度差が大きい場合には温度制御ガスの供給量を増加させ、温度差が小さい場合には温度制御ガスの供給量を減少させる。
【0084】
温度センサ57が設けられていない場合には、コントローラ70は、予め求められた制御条件に基づいて、バルブ63および流量調整部64を制御することで、温度制御ガスの供給タイミングと供給量を制御することができる。前述したように、温度センサ57が設けられていない場合の制御条件は、例えば、複数の温度センサが設けられたワークを加熱して加熱プロセスにおけるワーク100の温度を求めたり、シミュレーションにより加熱プロセスにおけるワーク100の温度を求めたりすることで求めることができる。
【0085】
例えば、コントローラ70は、予め定められた第1の加熱部31および第2の加熱部32による加熱タイミングと、予め定められたバルブ63による温度制御ガスの供給タイミングと、予め定められた流量調整部64による温度制御ガスの供給量と、を含む制御プログラムを格納することができる。そして、コントローラ70は、格納された制御プログラムに基づいて、処理部50の内部に支持されたワーク100の処理を行うことができる。
【0086】
図6は、他の実施形態に係る温度制御部60aを例示するための模式平面図である。
図6に示すように、温度制御部60aは、例えば、パネル61、複数のノズル62、複数のバルブ63、複数の流量調整部64、およびガス源65を有する。
すなわち、温度制御部60aには、ノズル62、バルブ63、および流量調整部64が複数組設けられている。図6に例示をした温度制御部60aの場合には、ノズル62、バルブ63、および流量調整部64が3組設けられている。
【0087】
例えば、ワーク100の平面寸法が大きい場合などにおいては、ワーク100の中央領域においても、さらに温度が異なる領域が生ずる場合がある。例えば、ワーク100の中央領域の中心近傍の温度が、ワーク100の中央領域の周縁側の温度よりも高くなる場合がある。
【0088】
この場合、ノズル62、バルブ63、および流量調整部64が複数組設けられていれば、温度制御を行う領域の数を増やすことができるので、ワーク100の面内の温度分布にばらつきが生じるのをさらに抑制することができる。
【0089】
図7は、他の実施形態に係る温度制御部60bを例示するための模式断面図である。
図7に示すように、温度制御部60bは、例えば、パネル61a、ノズル62、バルブ63、流量調整部64、およびガス源65を有する。
【0090】
パネル61aは、前述したパネル61と同様とすることができる。ただし、パネル61aにはノズル62が設けられないので、ノズル62を挿通する孔などは設けられていない。
ノズル62は、例えば、処理部50のフレーム51などに設けることができる。ノズル62は、パネル61aと処理部50の上面との間の隙間に温度制御ガスを供給する。ノズル62の数や配置などは、前述した温度制御部60と同様とすることができる。
【0091】
ノズル62を処理部50側に設けるようにしても、パネル61aと処理部50の上面との間の隙間に温度制御ガスを供給することができるので、前述した温度制御部60の効果を享受することができる。
【0092】
図8は、他の実施形態に係る温度制御部60cを例示するための模式断面図である。
図8に示すように、温度制御部60cは、例えば、パネル61、ノズル62、バルブ63、流量調整部64、およびガス源65を有する。
【0093】
前述した温度制御部60の場合には、パネル61およびノズル62が、処理部50の上面側に設けられている。すなわち、温度制御部60は、ワーク100の表面側からワーク100の温度を制御する。これに対して、温度制御部60cの場合には、パネル61およびノズル62が、処理部50の下面側に設けられている。すなわち、温度制御部60cは、ワーク100の裏面側からワーク100の温度を制御する。
【0094】
ノズル62は、パネル61と処理部50の下面(下部均熱板53)との間の隙間に温度制御ガスを供給する。ノズル62の数や配置などは、前述した温度制御部60と同様とすることができる。
【0095】
パネル61およびノズル62を処理部50の下面側に設けるようにしても、前述した温度制御部60の効果を享受することができる。
なお、パネル61およびノズル62を処理部50の上面側および下面側に設けることもできる。
すなわち、パネル61およびノズル62は、処理部50の外部の第1の加熱部31側、および、処理部50の外部の第2の加熱部32側の少なくともいずれかに設けることができる。
【0096】
図9は、他の実施形態に係る温度制御部60dを例示するための模式断面図である。
図10は、図9における温度制御部60dのB-B線方向の模式平面図である。
図9および図10に示すように、温度制御部60dは、例えば、パネル61a、ノズル62a、バルブ63、流量調整部64、およびガス源65を有する。
【0097】
ノズル62aは、筒状を呈し、パネル61aと処理部50の上面との間を延びている。例えば、ノズル62aは、処理部50の長手方向に延びている。平面視において、ノズル62aの中心線は、処理部50の中心線と重なるようにすることができる。平面視において、ノズル62aの、中心線に交差する方向の両側面には、複数の吐出口を設けることができる。図10に示すように、ノズル62aに供給された温度制御ガスは、複数の吐出口から、パネル61aと処理部50の上面との間の隙間に供給される。
【0098】
複数の吐出口から温度制御ガスを供給すれば、広い範囲に温度制御ガスを供給することができるので、例えば、平面寸法が大きいワーク100の温度制御が容易となる。
【0099】
以上、実施の形態について例示をした。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。
前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
例えば、加熱処理装置1の形状、寸法、配置などは、例示をしたものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
【0100】
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0101】
1 加熱処理装置、10 チャンバ、20 排気部、30 加熱部、31 第1の加熱部、32 第2の加熱部、33 ヒータ、50 処理部、51 フレーム、52 上部均熱板、53 下部均熱板、56 支持部、57 温度センサ、58 保持部、60 温度制御部、60a~60d 温度制御部、61 パネル、61a パネル、62 ノズル、62a ノズル、63 バルブ、64 流量調整部、65 ガス源、70 コントローラ、100 ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10