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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】トラクタ
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/50 20060101AFI20241003BHJP
   A01B 69/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B60Q1/50 Z
A01B69/00 303M
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021150248
(22)【出願日】2021-09-15
(62)【分割の表示】P 2018020904の分割
【原出願日】2018-02-08
(65)【公開番号】P2022000378
(43)【公開日】2022-01-04
【審査請求日】2021-09-15
【審判番号】
【審判請求日】2023-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(72)【発明者】
【氏名】工藤 純子
【合議体】
【審判長】筑波 茂樹
【審判官】草野 顕子
【審判官】澤崎 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-177934(JP,A)
【文献】特開2007-308031(JP,A)
【文献】特開2006-248342(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q1/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビンを有し、自動走行可能なトラクタ本体と、
前記トラクタ本体の状態を検知する状態検知部と、
前記状態検知部にて検知した前記トラクタ本体の状態に応じた状態表示を行う状態表示部と、
前記キャビンのキャビンフレームから前方に突出するミラー取付部にて支持されるミラーと、を備え、
前記状態表示部は、
前記キャビンの外側に設けられており、かつ、平面視において、前記ミラーと同じ前記キャビンの角部に配置されており、
さらに、前記ミラーよりも後方であって、かつ、前記ミラーよりも高い位置に配置されている、
トラクタ。
【請求項2】
前記状態表示部は、点灯色が異なる複数の表示灯を含む、
請求項1に記載のトラクタ。
【請求項3】
前記状態表示部は、支持ステーを介して前記キャビンのキャビンフレームに取り付けられている、
請求項1又は2に記載のトラクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動走行可能なトラクタに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような作業車両は、衛星測位システムを用いて作業車両の現在位置を取得し、予め設定された目標走行経路に沿って自動走行している(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このような作業車両では、ユーザや作業地周辺の人等が作業車両の状態がどのような状態であるかを把握できるように、作業車両の状態を表示する状態表示部を備えることが望まれている。そこで、特許文献1に記載の作業車両では、複数のランプやスピーカ等を有する状態表示部がキャビンの上部に備えられている。キャビンの上部には、衛星測位システムのGPSアンテナやデータ受信アンテナ等を有するアンテナユニットが配置されており、アンテナユニットに状態表示部が備えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-94093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
状態表示部は、作業車両において、ユーザや作業地周辺の人等が視認し易い箇所に配置することが好ましい。その点、特許文献1に記載の作業車両では、状態表示部がキャビンの上部に備えられているので、ユーザや作業地周辺の人等が状態表示部を視認し易い箇所に状態表示部が配置されている。
【0006】
しかしながら、キャビンの上部に状態表示部を取り付ける場合には、その取り付け位置が高い位置にあるので、状態表示部の取付作業に手間がかかる。また、キャビンの上部から更に状態表示部が上方側に突出するので、車高が高くなり、作業車両を運搬する際や納屋等に作業車両を収納する際に、状態表示部が何かに接触して損傷する可能性もある。
【0007】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、状態表示部の取付作業の簡素化や状態表示部の損傷を防止しながら、状態表示部の視認性の向上を図ることができるトラクタを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係るトラクタは、トラクタ本体と、状態検知部と、状態表示部と、を備える。前記トラクタ本体は、キャビンを有し、自動走行可能に構成されている。前記状態検知部は、前記トラクタ本体の状態を検知する。前記状態表示部は、前記状態検知部にて検知した前記トラクタ本体の状態に応じた状態表示を行う。前記状態表示部は、前記キャビンの外側に設けられており、かつ、平面視において、前記キャビンの角部に配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】自動走行システムの概略構成を示す図
図2】自動走行システムの概略構成を示すブロック図
図3】目標走行経路を示す図
図4】正面視におけるトラクタを示す図
図5】背面視におけるトラクタを示す図
図6】斜め左側前方視におけるトラクタを示す斜視図
図7】斜め左側後方視におけるトラクタを示す斜視図
図8】斜め右側前方視におけるトラクタを示す斜視図
図9】斜め右側後方視におけるトラクタを示す斜視図
図10】第1状態表示部の取り付け構成を示す図
図11】第2状態表示部の取り付け構成を示す図
図12】第3状態表示部の取り付け構成を示す図
図13】第4状態表示部の取り付け構成を示す図
図14】第7状態表示部の取り付け構成を示す図
図15】キャビンの内部を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る作業車両を自動走行システムに適用した場合の実施形態を図面に基づいて説明する。
この自動走行システムは、図1に示すように、作業車両としてトラクタ1を適用しているが、トラクタ以外の、乗用田植機、コンバイン、乗用草刈機、ホイールローダ、除雪車等の乗用作業車両、及び、無人草刈機等の無人作業車両に適用することができる。
【0011】
この自動走行システムは、図1及び図2に示すように、トラクタ1に搭載された自動走行ユニット2、及び、自動走行ユニット2と通信可能に通信設定された携帯通信端末3を備えている。携帯通信端末3には、タッチ操作可能な液晶パネル4等を有するタブレット型のパーソナルコンピュータやスマートフォン等を採用することができる。
【0012】
トラクタ1は、その後部に3点リンク機構5を介して、作業装置の一例であるロータリ耕耘装置を昇降可能かつローリング可能に連結することで、ロータリ耕耘仕様に構成することができる。トラクタ1の後部には、ロータリ耕耘装置に代えて、プラウ、播種装置、散布装置、等の作業装置を連結することができる。
【0013】
図1に示すように、トラクタ1には、駆動可能な操舵輪として機能する左右の前輪7、駆動可能な左右の後輪8、搭乗式の運転部を形成するキャビン9、コモンレールシステムを備えた電子制御式のディーゼルエンジン(以下、エンジンと称する)10が備えられている。また、トラクタ1には、図2に示すように、エンジン10からの動力を変速する電子制御式の変速装置11、左右の前輪7を操舵する全油圧式のパワーステアリング機構12、左右の後輪8を制動する左右のサイドブレーキ(図示せず)、左右のサイドブレーキの油圧操作を可能にする電子制御式のブレーキ操作機構13、ロータリ耕耘装置等の作業装置への伝動を断続する作業クラッチ(図示せず)、作業クラッチの油圧操作を可能にする電子制御式のクラッチ操作機構14、ロータリ耕耘装置等の作業装置を昇降駆動する電子油圧制御式の昇降駆動機構15、トラクタ1の自動走行等に関する各種の制御プログラム等を有する車載電子制御ユニット16、トラクタ1の車速を検出する車速センサ17、前輪7の操舵角を検出する舵角センサ18、及び、トラクタ1の現在位置及び現在方位を測定する測位ユニット19等が備えられている。
【0014】
なお、エンジン10には、電子ガバナを備えた電子制御式のガソリンエンジンを採用してもよい。変速装置11には、油圧機械式無段変速装置(HMT)、静油圧式無段変速装置(HST)、または、ベルト式無段変速装置等を採用することができる。パワーステアリング機構12には、電動モータを備えた電動式のパワーステアリング機構12等を採用してもよい。
【0015】
図1に示すように、キャビン9の内部には、パワーステアリング機構12を介した左右の前輪7の手動操舵を可能にするステアリングホイール20、及び、ユーザ用の座席21が備えられている。
【0016】
キャビン9は、図4図9及び図15に示すように、キャビン9の四隅に配置される支柱フレーム42と、前方側を覆うフロントガラス43と、後方側を覆うリアガラス44と、上下方向に沿う軸心周りで揺動開閉可能な左右一対のドア45と、天井側のルーフ46とを備えた箱状に構成されている。支柱フレーム42は、前端部に配置された左右一対の前側支柱47と、後端部に配置された左右一対の後側支柱48とを備えており、平面視において、キャビン9の四隅に相当する位置に、前側支柱47又は後側支柱48が配置されている。
【0017】
キャビン9には、図15に示すように、キャビン9の床部を構成するために、前側床フレーム49及び後側床フレーム50が備えられている。前側床フレーム49の前方側に、ハンドルポスト等を介してステアリングホイール20(図1参照)が配置されており、後側床フレーム50の上部に座席21(図1参照)が配置されている。後側床フレーム50の後方には、起立姿勢の背面フレーム64が備えられ、後側床フレーム50及び背面フレーム64の左右両側には、左右一対のフェンダー51が備えられている。このようにして、前側床フレーム49、後側床フレーム50、背面フレーム64、及び、左右一対のフェンダー51は、溶接等により一体的に備えられている。
【0018】
前側床フレーム49の左右両側の前端部には、図15に示すように、前側支柱47が備えられ、左右一対のフェンダー51の後端部の夫々には、後側支柱48が備えられている。支柱フレーム42(前側支柱47及び後側支柱48)、前側床フレーム49、後側床フレーム50、背面フレーム64、及び、左右一対のフェンダー51がキャビン9を構成するキャビンフレームとして一体的に備えられている。このキャビン9を構成するキャビンフレームは、弾性体等の防振部材を介して機体6上に支持されており、エンジン10等からの振動がキャビン9に伝達されるのを防止する防振対策が施された状態で、キャビン9が備えられている。
【0019】
図2に示すように、車載電子制御ユニット16は、変速装置11の作動を制御する変速制御部16a、左右のサイドブレーキの作動を制御する制動制御部16b、ロータリ耕耘装置等の作業装置の作動を制御する作業装置制御部16c、予め設定された自動走行用の目標走行経路P(例えば、図3参照)等を記憶する不揮発性の車載記憶部16d、及び、自動走行時に左右の前輪7の目標操舵角を設定してパワーステアリング機構12に出力する操舵角設定部16e、等を有している。
【0020】
図1及び図2に示すように、測位ユニット19には、衛星測位システム(NSS:Navigation Satellite System)の一例であるGPS(Global Positioning System)を利用してトラクタ1の現在位置と現在方位とを測定する衛星航法装置22、及び、3軸のジャイロスコープ及び3方向の加速度センサ等を有してトラクタ1の姿勢や方位等を測定する慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)23、等が備えられている。GPSを利用した測位方法には、DGPS(Differential GPS:相対測位方式)やRTK-GPS(Real Time Kinematic GPS:干渉測位方式)等がある。本実施形態においては、移動体の測位に適したRTK-GPSが採用されている。そのため、圃場周辺の既知位置には、RTK-GPSによる測位を可能にする基準局24が設置されている。
【0021】
トラクタ1と基準局24とのそれぞれには、図2に示すように、GPS衛星25(図1参照)から送信された電波を受信するGPSアンテナ26,27、及び、トラクタ1と基準局24との間における測位データを含む各種データの無線通信を可能にする通信モジュール28,29、等が備えられている。これにより、衛星航法装置22は、トラクタ側のGPSアンテナ26がGPS衛星25からの電波を受信して得た測位データと、基地局側のGPSアンテナ27がGPS衛星25からの電波を受信して得た測位データとに基づいて、トラクタ1の現在位置及び現在方位を高い精度で測定することができる。また、測位ユニット19は、衛星航法装置22と慣性計測装置23とを備えることにより、トラクタ1の現在位置、現在方位、姿勢角(ヨー角、ロール角、ピッチ角)を高精度に測定することができる。
【0022】
トラクタ1に備えられるGPSアンテナ26、通信モジュール28、及び、慣性計測装置23は、図1に示すように、アンテナユニット40に収納されている。アンテナユニット40は、キャビン9の外部の前面側の上部位置において、トラクタ1の左右方向の中央部に配置されている。アンテナユニット40は、キャビン9の支柱フレーム42に固定されたトラクタ1の左右方向に延びるアンテナユニット支持フレーム41に取り付けられている。
【0023】
図2に示すように、携帯通信端末3には、液晶パネル4等の作動を制御する各種の制御プログラム等を有する端末電子制御ユニット30、及び、トラクタ側の通信モジュール28との間における測位データを含む各種データの無線通信を可能にする通信モジュール31、等が備えられている。端末電子制御ユニット30は、トラクタ1を自動走行させるための走行案内用の目標走行経路P(例えば、図3参照)を生成する走行経路生成部32、及び、ユーザが入力した各種の入力データや走行経路生成部32が生成した目標走行経路P等を記憶する不揮発性の端末記憶部33、等を有している。
【0024】
走行経路生成部32が目標走行経路Pを設定するに当たり、携帯通信端末3の液晶パネル4に表示された目標走行経路設定用の入力案内に従って、ユーザが作業車両や作業装置の種類や機種等の車体データを入力しており、入力された車体データが端末記憶部33に記憶されている。目標走行経路Pの設定対象となる走行領域Sを圃場としており、携帯通信端末3の端末電子制御ユニット30は、圃場の形状や位置を含む圃場データを取得して端末記憶部33に記憶している。
【0025】
圃場データの取得について説明すると、ユーザ等が運転操作してトラクタ1を実際に走行させることで、端末電子制御ユニット30は、測位ユニット19にて取得するトラクタ1の現在位置等から圃場の形状や位置等を特定するための位置情報を取得することができる。端末電子制御ユニット30は、取得した位置情報から圃場の形状及び位置を特定し、その特定した圃場の形状及び位置から特定した走行領域Sを含む圃場データを取得している。図3では、矩形状の走行領域Sが特定された例を示している。
【0026】
特定された圃場の形状や位置等を含む圃場データが端末記憶部33に記憶されると、走行経路生成部32は、端末記憶部33に記憶されている圃場データや車体データを用いて、目標走行経路Pを生成する。
【0027】
図3に示すように、端末電子制御ユニット30は、まず、走行領域S内に作業領域Rを設定している。作業領域Rは、トラクタ1を自動走行させながら、所定の作業(例えば、耕耘等の作業)を行う領域となっている。端末電子制御ユニット30は、例えば、車体データに含まれる旋回半径やトラクタ1の前後幅及び左右幅等から、トラクタ1を旋回走行させるために必要となる旋回走行用のスペースや、トラクタ1が走行領域S外に飛び出す等の障害がないように確保すべき安全用のスペース等を求めている。よって、端末電子制御ユニット30は、走行領域Sの外周部の内側に求めたスペース分を確保する状態で、走行領域Sの内側に作業領域Rを設定している。
【0028】
作業領域Rを設定した上で、走行経路生成部32は、図3に示すように、車体データや圃場データ等を用いて、目標走行経路Pを生成している。例えば、目標走行経路Pは、同じ直進距離を有して作業幅に対応する一定距離をあけて平行に配置設定された複数の作業経路P1と、隣接する作業経路P1の始端と終端とを連結する連結経路P2とを有している。複数の作業経路P1は、トラクタ1を自動走行させながら、所定の作業を行うための経路であり、図3に示すものでは、トラクタ1を前進させる直線状の経路が例示されている。連結経路P2は、トラクタ1の走行方向を転換させるための経路であり、作業経路P1の終端と隣接する次の作業経路P1の始端とを連結している。図3に示すものでは、連結経路P2が、トラクタ1の走行方向を180度転換させるために、トラクタ1を旋回走行させるUターン経路が例示されている。このようにして、隣接する作業経路P1同士は、走行方向がお互いに反対側となるように設定されており、トラクタ1が、複数の作業経路P1を往復走行しながら、所定の作業を行う目標走行経路Pが設定されている。ちなみに、図3に示す目標走行経路Pは、あくまで一例であり、どのような目標走行経路を設定するかは適宜変更が可能である。
【0029】
走行経路生成部32にて生成された目標走行経路Pは、液晶パネル4に表示可能であり、車体データ及び圃場データ等と関連付けた経路データとして端末記憶部33に記憶されている。経路データには、目標走行経路Pの方位角、及び、目標走行経路Pでのトラクタ1の走行形態等に応じて設定された設定エンジン回転速度や目標走行速度、等が含まれている。
【0030】
このようにして、走行経路生成部32が目標走行経路Pを生成すると、端末電子制御ユニット30が、携帯通信端末3からトラクタ1に経路データを転送することで、トラクタ1の車載電子制御ユニット16が、経路データを取得することができる。車載電子制御ユニット16は、取得した経路データに基づいて、測位ユニット19にて自己の現在位置(トラクタ1の現在位置)を取得しながら、目標走行経路Pに沿ってトラクタ1を自動走行させることができる。測位ユニット19にて取得するトラクタ1の現在位置については、リアルタイム(例えば、数秒周期)でトラクタ1から携帯通信端末3に送信されており、携帯通信端末3にてトラクタ1の現在位置を把握している。
【0031】
経路データの転送に関しては、トラクタ1が自動走行を開始する前の段階において、経路データの全体を端末電子制御ユニット30から車載電子制御ユニット16に一挙に転送することができる。また、例えば、目標走行経路Pを含む経路データを、データ量の少ない所定距離ごとの複数の経路部分に分割することもできる。この場合には、トラクタ1が自動走行を開始する前の段階においては、経路データの初期経路部分のみが端末電子制御ユニット30から車載電子制御ユニット16に転送され、自動走行の開始後は、トラクタ1がデータ量等に応じて設定された経路取得地点に達するごとに、その地点に対応する以後の経路部分のみの経路データが端末電子制御ユニット30から車載電子制御ユニット16に転送するようにしてもよい。
【0032】
トラクタ1の自動走行を開始する場合には、例えば、ユーザがスタート地点にトラクタ1を移動させて、各種の自動走行開始条件が満たされると、携帯通信端末3にて、ユーザが液晶パネル4を操作して自動走行の開始を指示することで、携帯通信端末3は、自動走行の開始指示をトラクタ1に送信する。これにより、トラクタ1では、車載電子制御ユニット16が、自動走行の開始指示を受けることで、測位ユニット19にて自己の現在位置(トラクタ1の現在位置)を取得しながら、目標走行経路Pに沿ってトラクタ1を自動走行させる自動走行制御を開始する。
【0033】
自動走行制御には、変速装置11の作動を自動制御する自動変速制御、ブレーキ操作機構13の作動を自動制御する自動制動制御、左右の前輪7を自動操舵する自動操舵制御、及び、ロータリ耕耘装置等の作業装置の作動を自動制御する作業用自動制御、等が含まれている。
【0034】
自動変速制御においては、変速制御部16aが、目標走行速度を含む目標走行経路Pの経路データと測位ユニット19の出力と車速センサ17の出力とに基づいて、目標走行経路Pでのトラクタ1の走行形態等に応じて設定された目標走行速度がトラクタ1の車速として得られるように変速装置11の作動を自動制御する。
【0035】
自動制動制御においては、制動制御部16bが、目標走行経路Pと測位ユニット19の出力とに基づいて、目標走行経路Pの経路データに含まれている制動領域において左右のサイドブレーキが左右の後輪8を適正に制動するようにブレーキ操作機構13の作動を自動制御する。
【0036】
自動操舵制御においては、トラクタ1が目標走行経路Pを自動走行するように、操舵角設定部16eが、目標走行経路Pの経路データと測位ユニット19の出力とに基づいて左右の前輪7の目標操舵角を求めて設定し、設定した目標操舵角をパワーステアリング機構12に出力する。パワーステアリング機構12が、目標操舵角と舵角センサ18の出力とに基づいて、目標操舵角が左右の前輪7の操舵角として得られるように左右の前輪7を自動操舵する。
【0037】
作業用自動制御においては、作業装置制御部16cが、目標走行経路Pの経路データと測位ユニット19の出力とに基づいて、トラクタ1が作業経路P1(例えば、図3参照)の始端等の作業開始地点に達するのに伴って作業装置による所定の作業(例えば耕耘作業)が開始され、かつ、トラクタ1が作業経路P1(例えば、図3参照)の終端等の作業終了地点に達するのに伴って作業装置による所定の作業が停止されるように、クラッチ操作機構14及び昇降駆動機構15の作動を自動制御する。
【0038】
このようにして、トラクタ1においては、変速装置11、パワーステアリング機構12、ブレーキ操作機構13、クラッチ操作機構14、昇降駆動機構15、車載電子制御ユニット16、車速センサ17、舵角センサ18、測位ユニット19、及び、通信モジュール28、等によって自動走行ユニット2が構成されている。
【0039】
この実施形態では、キャビン9にユーザ等が搭乗せずにトラクタ1を自動走行させるだけでなく、キャビン9にユーザ等が搭乗した状態でトラクタ1を自動走行させることも可能となっている。よって、キャビン9にユーザ等が搭乗せずに、車載電子制御ユニット16による自動走行制御により、トラクタ1を目標走行経路Pに沿って自動走行させることができるだけでなく、キャビン9にユーザ等が搭乗している場合でも、車載電子制御ユニット16による自動走行制御により、トラクタ1を目標走行経路Pに沿って自動走行させることができる。
【0040】
キャビン9にユーザ等が搭乗している場合には、車載電子制御ユニット16にてトラクタ1を自動走行させる自動走行状態と、ユーザ等の運転操作に基づいてトラクタ1を走行させる手動走行状態とに切り替えることもできる。よって、自動走行状態にて目標走行経路Pを自動走行している途中に、自動走行状態から手動走行状態に切り替えることができ、逆に、手動走行状態にて走行している途中に、手動走行状態から自動走行状態に切り替えることもできる。手動走行状態と自動走行状態との切り替えについては、例えば、座席21の近傍に、自動走行状態と手動走行状態とに切り替えるための切替操作部を備えることができるとともに、その切替操作部を携帯通信端末3の液晶パネル4に表示させることもできる。また、車載電子制御ユニット16による自動走行制御中に、ユーザがステアリングホイール20を操作すると、自動走行状態から手動走行状態に切り替えることができる。
【0041】
トラクタ1は、キャビン9にユーザ等が搭乗せずに自動走行可能であるので、ユーザやトラクタ1の周辺の人等がトラクタ1の状態がどのような状態であるかを把握できるように、トラクタ1の状態を表示することが望まれている。そこで、図2に示すように、トラクタ1には、トラクタ1の状態を検知する状態検知部34と、その状態検知部34にて検知したトラクタ1の状態に応じた状態表示を行う状態表示部35と、その状態表示部35の状態表示を制御する状態表示制御部36とが備えられている。ちなみに、図1では、状態表示部35を省略して図示している。
【0042】
車載電子制御ユニット16は、トラクタ1が自動走行状態であるか又は手動走行状態であるか等、どのような走行状態であるかを把握しているとともに、走行状態が自動走行状態である場合には、自動走行状態においてどのような状態であるかも把握している。そこで、状態検知部34は、車載電子制御ユニット16の把握状況に応じて、トラクタ1がどのような状態であるかを検知している。
【0043】
状態検知部34は、例えば、トラクタ1が自動走行状態であるか又は手動走行状態であるか等、どのような走行状態であるかを検知しているとともに、走行状態が自動走行状態である場合には、自動走行状態においてどのような状態であるかを検知している。状態検知部34は、例えば、自動走行の準備済みの状態であるか、自動走行を開始する状態であるか、自動走行中の状態であるか、自動走行を一時停止している状態であるか、自動走行を非常停止している状態であるか等を検知している。
【0044】
自動走行の一時停止については、ユーザ等が携帯通信端末3を操作することで、トラクタ1の自動走行を一時停止できるとともに、例えば、障害物を検知した場合やトラクタ1の現在位置を取得し難い場合に、車載電子制御ユニット16がトラクタ1の自動走行を一時停止できる。よって、状態検知部34は、携帯通信端末3の操作により自動走行を一時停止している状態であるか、車載電子制御ユニット16により自動走行を一時停止している状態であるかを識別して検知している。
【0045】
自動走行の非常停止についても、ユーザ等が携帯通信端末3を操作することで、トラクタ1の自動走行を非常停止できるとともに、例えば、トラクタ1に備えられる装置の故障や目標走行経路Pからのズレ量が所定量以上となった場合に、車載電子制御ユニット16がトラクタ1の自動走行を非常停止できる。よって、状態検知部34は、携帯通信端末3の操作により自動走行を非常停止している状態であるか、車載電子制御ユニット16により自動走行を非常停止している状態であるかを識別して検知している。
【0046】
状態表示部35は、図10図14に示すように、例えば、点灯する色が異なる複数の表示灯35a~35c(例えば、3つの表示灯)と、表示灯35a~35cを支持する支持部35dとを備えている。状態表示部35は、下方側から、支持部35d、表示灯35a~35cの順に配置されており、表示灯35a~35cの夫々を個別に着脱自在に構成されている。
【0047】
状態表示制御部36は、トラクタ1の状態に応じて、状態表示部35における複数の表示灯35a~35cのうち、どの表示灯を点灯させるかを変更させることで、状態表示部35の状態表示を制御している。
【0048】
例えば、状態検知部34にて手動走行状態である状態を検知した場合には、状態表示制御部36が、状態表示部35における複数の表示灯35a~35cの全てを消灯させる。状態検知部34にて自動走行状態において自動走行の準備済みの状態を検知した場合には、状態表示制御部36が、状態表示部35における複数の表示灯35a~35cの全てを点灯させる。状態検知部34にて自動走行状態において自動走行中の状態を検知した場合には、状態表示制御部36が、状態表示部35における複数の表示灯35a~35cのうち、特定の1つの表示灯のみを点灯させる。状態検知部34にて自動走行状態において自動走行を一時停止している状態を検知した場合には、状態表示制御部36が、状態表示部35における複数の表示灯35a~35cのうち、別の特定の1つの表示灯のみを点灯させる。このようにして、状態表示制御部36は、状態検知部34にて検知したトラクタ1の状態に応じて、状態表示部35の状態表示を変更させることで、トラクタ1の状態がどのような状態であるかをユーザ等が認識可能となっている。
【0049】
状態表示部35は、ユーザ等に対して視覚的な表示を行うだけでなく、聴覚的な報知も行えるように構成されている。状態表示部35は、例えば、報知ブザー等の報知部を備えている。状態表示制御部36は、状態検知部34にて検知したトラクタ1の状態に応じて、状態表示部35の状態表示を変更させるだけでなく、報知部の報知方法を変更させることで、トラクタ1の状態がどのような状態であるかをユーザ等が認識可能となっている。報知部の報知方法としては、例えば、1回だけ報知部にて報知させる方法、所定回数だけ断続的に報知部にて報知させる方法、連続的に報知部にて報知させる方法等の各種の方法を適用することができる。
【0050】
以下、図4図9等に基づいて、状態表示部35の配置位置について説明する。
状態表示部35の配置位置については、各種の箇所を適用することができるが、状態表示部35は、平面視において、少なくともトラクタ1の対角(作業車両本体の対角に相当する)に一対配置されている。ちなみに、図4図9では、状態表示部35の配置位置を中心に説明するために、アンテナユニット40、アンテナユニット支持フレーム41、及び、3点リンク機構5等を省略して図示している。
【0051】
図4図9では、図中実線で示すように、状態表示部35として、キャビン9の左前の角部に相当する位置に配置された第1状態表示部101と、キャビン9の右後の角部に相当する位置に配置された第2状態表示部102とを備えている。このように、第1状態表示部101と第2状態表示部102とは、キャビン9の対角に相当する位置に配置されている。
【0052】
第1状態表示部101は、図4図6及び図8に示すように、キャビン9の左前の角部に相当する位置において、左側の前側支柱47の近傍位置に配置されている。キャビン9の前方側には、キャビン9の右前の角部に相当する位置に、上下方向に延びる状態でマフラー52が配置されているので、第1状態表示部101は、キャビン9の左右方向においてマフラー52とは反対側で且つキャビン9よりも前方側に配置されている。第1状態表示部101は、上下方向において、ルーフ46よりも下方側で且つフロントガラス43の上方側領域に相当する位置に配置されている。例えば、キャビン9内の座席21に着座したユーザ等が第1状態表示部101を見た場合に、左側の前側支柱47が第1状態表示部101の少なくとも一部と重複して、左側の前側支柱47にて第1状態表示部101の少なくとも一部が隠れるように、第1状態表示部101を配置することができる。
【0053】
左側の前側支柱47には、図4図6及び図8に示すように、上下方向に延びる手摺53が取り付けられているので、第1状態表示部101は、手摺53を利用して取り付けられている。手摺53の上端部位には、図10に示すように、板状の支持ステー201が備えられ、第1状態表示部101が、支持ステー201から上方側に延びる起立姿勢にて備えられている。このようにして、第1状態表示部101は、支持ステー201及び手摺53を介して、支柱フレーム42における左側の前側支柱47に取り付けられている。よって、第1状態表示部101は、防振対策が施されたキャビン9を構成するキャビンフレームに取り付けられており、エンジン10等からの振動が第1状態表示部101に伝達されるのを防止している。
【0054】
支持ステー201は、図10に示すように、ボルトナット等の取付具を用いて手摺53に取り付けられている。例えば、支持ステー201を手摺53に対して上方側から当接させた横向き姿勢とし、U字状のボルト54を手摺53に対して下方側から当接させて、支持ステー201の孔部を貫通させてナット55にて締め付けることで、手摺53に対して支持ステー201を取り付けている。また、第1状態表示部101は、ボルト等の取付具56を用いて支持ステー201に着脱自在に備えられている。例えば、取付具56を、支持ステー201の孔部に挿通させた状態で、支持部35dに形成された孔部に締め付けることで、支持ステー201に対して第1状態表示部101を取り付けている。図10では、第1状態表示部101と取付具56を取り外した状態を点線にて示している。これにより、第1状態表示部101は、手摺53に対して支持ステー201とともに着脱自在に備えられているとともに、第1状態表示部101単体で支持ステー201に対して着脱自在に備えられている。
【0055】
第2状態表示部102は、図5図7及び図9に示すように、キャビン9の右後の角部に相当する位置において、右側の後側支柱48の近傍位置に配置されている。キャビン9の右後の角部に相当する位置には、フェンダー51が備えられているので、第2状態表示部102は、フェンダー51を利用して取り付けられている。フェンダー51の上部には、図11に示すように、トラクタ1の後方の下方側を照らす後方下方側ライト60がライト支持ステー61を介して取り付けられている。第2状態表示部102は、ライト支持ステー61から上方側に延びる起立姿勢にて備えられている。
【0056】
例えば、キャビン9内の座席21に着座したユーザ等が第2状態表示部102を見た場合に、右側の後側支柱48が第2状態表示部102の少なくとも一部と重複して、右側の後側支柱48にて第2状態表示部102の少なくとも一部が隠れるように、第2状態表示部102を配置することができる。
【0057】
第2状態表示部102を支持する支持ステーとして、図11に示すように、後方下方側ライト60を支持するためのライト支持ステー61が兼用されている。ライト支持ステー61は、フェンダー51に形成された貫通孔を通してボルトナット等の取付具を取り付けることで、フェンダー51の上部に取り付けられている。第2状態表示部102は、ライト支持ステー61を介して、キャビン9を構成するキャビンフレームであるフェンダー51に取り付けられている。フェンダー51は、キャビン9を構成するキャビンフレームとして、支柱フレーム42等と一体的に備えられているので、第2状態表示部102は、防振対策が施されたキャビン9を構成するキャビンフレームに取り付けられており、エンジン10等からの振動が第2状態表示部102に伝達されるのを防止している。
【0058】
図11では、後方下方側ライト60を設ける場合に、後方下方側ライト60を取り付けるライト支持ステー61を用いて、第2状態表示部102をフェンダー51に取り付ける例を示しているが、例えば、後方下方側ライト60を設けずに、ライト支持ステー61を用いて第2状態表示部102をフェンダー51に取り付けることもできる。また、後方下方側ライト60を設ける場合でも、後方下方側ライト60を取り付ける支持ステーと第2状態表示部102を取り付ける支持ステーとを別々に設け、後方下方側ライト60と第2状態表示部102を別々にフェンダー51に取り付けることもできる。
【0059】
また、第2状態表示部102は、図示は省略するが、第1状態表示部101と同様に、ボルト等の取付具を用いて、ライト支持ステー61に対して着脱自在に備えられている。これにより、第2状態表示部102は、フェンダー51に対して、ライト支持ステー61及び後方下方側ライト60とともに着脱自在に備えられているとともに、第2状態表示部102単体でライト支持ステー61に対して着脱自在に備えられている。
【0060】
第1状態表示部101及び第2状態表示部102は、所望の配置位置に対して着脱自在に備えられているので、例えば、圃場等の走行領域S内では、第1状態表示部101及び第2状態表示部102を所望の配置位置に取り付けた状態でトラクタ1の自動走行を行うことができる。また、トラクタ1の収納位置から圃場に移動する場合や圃場と圃場との間を移動する場合等、走行領域S外をユーザ等の手動走行にてトラクタ1を走行させる場合には、第1状態表示部101及び第2状態表示部102を所望の配置位置から取り外した状態でトラクタ1を走行させることができる。このようにして、ユーザ等は、必要に応じて、第1状態表示部101及び第2状態表示部102の着脱作業を行うことができる。このとき、第1状態表示部101及び第2状態表示部102は、ルーフ46よりも下方側に配置されているので、ユーザ等がキャビン9に搭乗したり、脚立に乗る等によりユーザ等の手の届く範囲に第1状態表示部101及び第2状態表示部102が位置することになり、着脱作業の簡素化を図ることができる。
【0061】
また、第1状態表示部101及び第2状態表示部102は、ルーフ46よりも下方側に配置されていることで、第1状態表示部101及び第2状態表示部102を所望の配置設置に取り付けた状態において、トラクタ1の車高が高くなるのを抑制することができる。よって、トラクタ1を運搬する際や納屋等にトラクタ1を収納する際に、第1状態表示部101及び第2状態表示部102が何かに接触して損傷するのを防止することができる。
【0062】
図15に基づいて、状態表示制御部36の配置位置について説明する。
上述の如く、キャビン9の床部を構成するフレームとして、前側床フレーム49、後側床フレーム50、背面フレーム64、及び、左右一対のフェンダー51が備えられている。後側床フレーム50は、前側床フレーム49よりも左右方向の幅が幅狭に構成されている。左右一対のフェンダー51の夫々には、左右方向の内側に張り出す状態で各種の操作具が備えられる操作パネル部62が備えられている。
【0063】
状態表示制御部36は、キャビン9内において、右側の操作パネル部62の内部に備えられている。右側の操作パネル部62の内部には、状態表示制御部36だけでなく、車載電子制御ユニット16における各制御部が配置されている。このように、右側の操作パネル部62の内部には、操作パネル部62の内部空間を利用して、車載電子制御ユニット16における複数の制御部が集中して配置されている。よって、各制御部における複数の配線を纏めて設置することができるとともに、キャビン9の内部と外部とを連通する共通の連通部を通して複数の配線を配設することができ、配線作業や配線構成の簡素化を図ることができる。
【0064】
ちなみに、図示は省略するが、右側の操作パネル部62には、例えば、ロータリ耕耘装置等の作業装置の手動昇降操作を可能にする昇降操作具やPTOへの動力伝達を開始するためのPTO操作具等の操作具が備えられており、左側の操作パネル部62には、その他の各種の操作具が備えられている。
【0065】
状態表示部35の配置位置については、図4図9において、図中点線にて示すように、第1状態表示部101及び第2状態表示部102の配置位置以外に、各種の箇所を適用することができる。以下、第1状態表示部101及び第2状態表示部102以外の状態表示部35の配置位置について説明する。
【0066】
キャビン9の左前の角部に相当する位置に対して状態表示部35を配置するに当たり、上述の如く、第1状態表示部101の配置位置を採用することができるが、これに代えて、図4図6及び図8に示すように、第1状態表示部101よりも上方側に第3状態表示部103を配置することができる。
【0067】
左側の前側支柱47には、図4図6及び図8に示すように、ミラー取付部58が取り付けられ、そのミラー取付部58にミラー59が取り付けられているので、第3状態表示部103は、ミラー取付部58を利用して取り付けられている。例えば、キャビン9内の座席21に着座したユーザ等が第3状態表示部103を見た場合に、左側の前側支柱47が第3状態表示部103の少なくとも一部と重複して、左側の前側支柱47にて第3状態表示部103の少なくとも一部が隠れるように、第3状態表示部103を配置することができる。
【0068】
第3状態表示部103が、図12に示すように、ミラー取付部58から上方側に延びる起立姿勢にて備えられ、第3状態表示部103を支持する支持ステーとして、ミラー59を取り付けるためのミラー取付部58が兼用されている。ミラー取付部58が左側の前側支柱47に取り付けられているので、第3状態表示部103が、ミラー取付部58を介して、支柱フレーム42における左側の前側支柱47に取り付けられている。よって、第3状態表示部103は、防振対策が施されたキャビン9を構成するキャビンフレームに取り付けられており、エンジン10等からの振動が第3状態表示部103に伝達されるのを防止している。
【0069】
第3状態表示部103は、図示は省略するが、第1状態表示部101と同様に、ボルト等の取付具を用いて、ミラー取付部58に対して着脱自在に備えられている。これにより、第3状態表示部103単体でミラー取付部58に対して着脱自在に備えられている。
【0070】
キャビン9の右後の角部に相当する位置に対して状態表示部35を配置するに当たり、上述の如く、第2状態表示部102の配置位置を採用することができるが、これに代えて、図5図8及び図9に示すように、第2状態表示部102よりも上方側に第4状態表示部104を配置することができる。
【0071】
第4状態表示部104は、図5図8及び図9に示すように、上下方向において、ルーフ46よりも下方側でかつ右側のドア45の上方側領域に相当する位置に配置されている。例えば、キャビン9内の座席21に着座したユーザ等が第4状態表示部104を見た場合に、右側の後側支柱48が第4状態表示部104の少なくとも一部と重複して、右側の後側支柱48にて第4状態表示部104の少なくとも一部が隠れるように、第4状態表示部104を配置することができる。
【0072】
第4状態表示部104は、図13に示すように、支持ステー202を介して、支柱フレーム42における右側の後側支柱48に取り付けられている。支持ステー202は、右側の後側支柱48の上端側からキャビン9の外側に延びる第1ステー202aと、その第1ステー202aに連結されて後方側に延びる板状の第2ステー202bと、その第2ステー202bの後端部から下方側に延びてその下端部に板状部202dを有する第3ステー202cとが備えられている。第4状態表示部104は、第3ステー202cにおける板状部202dから上方側に延びる起立姿勢にて備えられている。
【0073】
このようにして、第4状態表示部104は、支持ステー202を介して、支柱フレーム42における右側の後側支柱48に取り付けられている。よって、第4状態表示部104は、防振対策が施されたキャビン9を構成するキャビンフレームに取り付けられており、エンジン10等からの振動が第4状態表示部104に伝達されるのを防止している。
【0074】
第2ステー202bは、ボルト等の取付具57の締結により第1ステー202aに固定されており、第3ステー202cは、溶接等により第2ステー202bに一体的に連結されている。また、第4状態表示部104は、図示は省略するが、第1状態表示部101と同様に、ボルト等の取付具を用いて、支持ステー202の第3ステー202cに対して着脱自在に備えられている。これにより、第4状態表示部104は、右側の後側支柱48に対して、支持ステー202における第2ステー202b及び第3ステー202cとともに着脱自在に備えられているとともに、第4状態表示部104単体で支持ステー202の第3ステー202cに対して着脱自在に備えられている。
【0075】
第1~第4状態表示部101~104は、キャビン9の左前と右後の対角に配置する例を示したが、キャビン9の左後の角部に相当する位置に状態表示部35を配置することもできる。
【0076】
状態表示部35として、図5図7に示すように、第5状態表示部105を、キャビン9の左後の角部に相当する位置において、左側の後側支柱48の近傍位置に配置することができる。第5状態表示部105は、第2状態表示部102と同様に、フェンダー51の上部に配置されている。第5状態表示部105の取り付け構成については、第2状態表示部102と同様であるので、説明は省略する。
【0077】
状態表示部35として、図5図7に示すように、第5状態表示部105に代えて、第6状態表示部106を、上下方向において、ルーフ46よりも下方側でかつ右側のドア45の上方側領域に相当する位置に配置することができる。第6状態表示部106の取り付け構成については、第4状態表示部104と同様であるので、説明は省略する。
【0078】
状態表示部35として、図4図6及び図8に示すように、第7状態表示部107をキャビン9よりも前方側に配置することができる。第7状態表示部107は、図14に示すように、支持ステー203を介してボンネット63の上部に配置されている。
【0079】
上述の如く、状態表示部35の配置位置としては、平面視において、少なくともトラクタ1の対角に一対の状態表示部35(第1状態表示部101又は第3状態表示部103と、第2状態表示部102又は第4状態表示部104との一対)を配置することができる。例えば、第1状態表示部101と第2状態表示部102を、トラクタ1におけるキャビン9の対角に相当する位置に配置することで、図4図9に示すように、ユーザやトラクタ1の周辺に居る人がどの方向からトラクタ1を見ても、第1状態表示部101及び第2状態表示部102の少なくとも一方を視認することができる。これにより、ユーザやトラクタ1の周辺に居る人は、トラクタ1がどのような状態であるかを容易に把握することができ、状態表示部35の視認性の向上を図ることができる。ちなみに、第1状態表示部101に代えて第3状態表示部103を配置したり、第2状態表示部102に代えて第4状態表示部104を配置した場合も、同様に、状態表示部35の視認性の向上を図ることができる。
【0080】
また、第1状態表示部101及び第2状態表示部102は、図4及び図5に示すように、正面視で且つ後面視でトラクタ1の左右方向において、キャビン9よりも外側でかつトラクタ1の車輪7、8(走行部に相当する)の外側端部よりも内側に配置されている。よって、トラクタ1の左右方向においても、第1状態表示部101及び第2状態表示部102が車輪7、8よりも外側に飛び出すことがなく、トラクタ1の自動走行中等において、第1状態表示部101及び第2状態表示部102が何かに接触して損傷するのを防止することができる。ちなみに、第1状態表示部101に代えて第3状態表示部103を配置したり、第2状態表示部102に代えて第4状態表示部104を配置した場合も、第3状態表示部103及び第4状態表示部104は、同様に、正面視で且つ後面視でトラクタ1の左右方向において、キャビン9よりも外側でかつトラクタ1の車輪7、8(走行部に相当する)の外側端部よりも内側に配置されている。
【0081】
キャビン9の左前の角部に相当する位置、キャビン9の右後の角部に相当する位置、及び、キャビン9の左後の角部に相当する位置の夫々において、状態表示部35の配置位置として、上下方向で間隔を隔てた2つの配置位置が選択可能に構成されている。よって、ユーザ等の好みや視認性を考慮しながら、状態表示部35の配置位置として、2つの配置位置の何れかを選択することができる。特に、キャビン9の右後の角部に相当する位置、及び、キャビン9の左後の角部に相当する位置については、キャビン9の上方側部位に相当する配置位置とキャビン9の下方側部位に相当する配置位置とが選択可能であり、ユーザ等の好みや視認性に応じて、状態表示部35の配置位置を有用に選択することができる。
【0082】
状態表示部35は、所望の配置位置に対して着脱自在に備えられているので、作業状態の変化等、状況に応じて、状態表示部35の配置位置を変更することも可能である。例えば、キャビン9の右後の角部に相当する位置において、状況に応じて、第2状態表示部102の配置位置から第4状態表示部104の配置位置に変更することで、状態表示部35をより上方側の配置位置に変更することができる。
【0083】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。
尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0084】
(1)作業車両の構成は種々の変更が可能である。
例えば、作業車両は、エンジン10と走行用の電動モータとを備えるハイブリット仕様に構成されていてもよく、また、エンジン10に代えて走行用の電動モータを備える電動仕様に構成されていてもよい。
例えば、作業車両は、走行部として、左右の後輪8に代えて左右のクローラを備えるセミクローラ仕様に構成されていてもよい。
例えば、作業車両は、左右の後輪8が操舵輪として機能する後輪ステアリング仕様に構成されていてもよい。
【0085】
(2)上記実施形態では、状態表示部35として、複数の表示灯35a~35cを備えたものを例示したが、表示灯の数は適宜変更が可能であり、1つの表示灯を備えるものや、4つ以上の表示灯を備えるものを適用することができる。この場合、表示灯は個別に着脱自在であるので、表示灯の個数の追加作業や減少作業を容易に行うことができる。
【0086】
(3)上記実施形態では、状態表示部35の配置位置として、平面視において、少なくともトラクタ1の対角に一対の状態表示部35を配置する例を示したが、状態表示部35の配置位置としてどのような位置を組み合わせるかは適宜変更が可能である。
【0087】
例えば、状態表示部35として、ボンネット63の上部に配置された第7状態表示部107だけを備えることもできる。また、状態表示部35として、ボンネット63の上部に配置された第7状態表示部107と、キャビン9の後側に配置された第2状態表示部102、第4状態表示部104、第5状態表示部105、第6状態表示部106の何れか1つとを備えることもできる。更に、状態表示部35として、キャビン9の右後の角部に相当する位置に配置された第2状態表示部102又は第4状態表示部104の何れか1つと、キャビン9の左後の角部に相当する位置に配置された第5状態表示部105又は第6状態表示部106の何れか1つとを備えることもできる。
【0088】
<発明の付記>
本発明の第1実施態様は、自動走行可能な作業車両本体と、その作業車両本体の状態を検知する状態検知部と、その状態検知部にて検知した作業車両本体の状態に応じた状態表示を行う状態表示部とが備えられ、前記状態表示部は、平面視において、少なくとも前記作業車両本体の対角に一対配置されている点にある。
【0089】
本構成によれば、状態表示部は、作業車両本体の対角に一対配置されているので、ユーザや作業車両の周囲に居る人は、一対の状態表示部の少なくとも一方を視認することができ、視認性の向上を図ることができる。しかも、キャビンよりも上方側ではなく、作業車両本体の対角に一対の状態表示部を配置すればよく、状態表示部を比較的低い位置に配置することができる。よって、状態表示部の取付作業の簡素化を図ることができるとともに、作業車両の車高が高くなるのを防止でき、状態表示部の損傷等も防止することができる。
【0090】
本発明の第2実施態様は、前記作業車両本体は、キャビンを有し、前記状態表示部は、正面視において、前記キャビンよりも外側でかつ前記作業車両本体の走行部の外側端部よりも内側に配置されている点にある。
【0091】
本構成によれば、状態表示部は、正面視において、キャビンよりも外側に配置されているので、正面視において、キャビンによって状態表示部が見え難くなるのを防止することができる。しかも、状態表示部は、正面視において、走行部の外側端部よりも内側に配置されているので、作業車両本体の左右方向において、状態表示部が走行部よりも外側に飛び出すことがなく、作業車両本体の自動走行中等において、状態表示部が何かに接触して損傷するのを防止することができる。
【0092】
本発明の第3実施態様は、前記キャビンの前方側で且つ前記キャビンの左右方向の一方側にマフラーが備えられ、一対の前記状態表示部の1つは、前記キャビンの前方側で且つ前記キャビンの左右方向において前記マフラーが位置する側とは反対側に配置されている点にある。
【0093】
本構成によれば、キャビンの左右方向において、マフラーが位置する側とは反対側に状態表示部が配置されているので、マフラーの邪魔になることなく、視認性の向上を確保できる位置に状態表示部を配置することができる。
【0094】
本発明の第4実施態様は、前記状態表示部は、支持ステーを介して前記キャビンのキャビンフレームに対して着脱自在に備えられている点にある。
【0095】
本構成によれば、状態表示部は、支持ステーを介してキャビンフレームに対して着脱自在であるので、必要に応じて、状態表示部を取り付け及び取り外すことができ、使い勝手のよいものとなる。また、作業車両に対して状態表示部を後付けすることも可能であるので、作業車両に対して状態表示部を後付けすることで、自動走行用の作業車両に変更することもでき、そのための作業の簡素化を図ることができる。しかも、通常、キャビンフレームにて構成されるキャビンは、弾性体等の防振部材を介して支持されているので、状態表示部が、支持ステーを介してキャビンフレームに取り付けられることで、状態表示部に対する振動の伝達を防止する状態で状態表示部を設置することができる。
【0096】
本発明の第5実施態様は、前記状態表示部の状態表示を制御する状態表示制御部が備えられ、前記状態表示制御部は、前記キャビン内において、前記操作パネル部の内部に配置されている点にある。
【0097】
本構成によれば、状態表示制御部を備えることで、状態表示部の状態表示を適切に行うことができながら、状態表示制御部の配置位置として、操作パネル部の内部を有効に活用することができる。通常、操作パネル部の内部には、作業車両に搭載する各種の制御部を配置させることができるので、これらの制御部と状態表示制御部との配線を纏めて設置することができ、配線の単純化及び配線作業の簡素化を図ることができる。
【符号の説明】
【0098】
1 トラクタ(作業車両本体)
9 キャビン
7 前輪(走行部)
8 後輪(走行部)
34 状態検知部
35 状態表示部
36 状態表示制御部
47 前側支柱(キャビンフレーム)
48 後側支柱(キャビンフレーム)
51 フェンダー(キャビンフレーム)
52 マフラー
58 ミラー取付部(支持ステー)
61 ライト支持ステー(支持ステー)
201 支持ステー
202 支持ステー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15