(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】ツィール及びそのツィールの製造方法
(51)【国際特許分類】
C03B 18/16 20060101AFI20241003BHJP
C03B 7/02 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C03B18/16
C03B7/02
(21)【出願番号】P 2021213750
(22)【出願日】2021-12-28
【審査請求日】2023-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】507182807
【氏名又は名称】クアーズテック合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【氏名又は名称】木下 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100187506
【氏名又は名称】澤田 優子
(72)【発明者】
【氏名】寺西 久広
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-527450(JP,A)
【文献】米国特許第03884665(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 18/00-18/22,5/43,7/02,
C04B 35/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロート成形法で板ガラスを製造する際に溶融ガラスの流量調整に用いられるツィールであって、
基体は、溶融シリカ含有率が99重量%以上で、嵩密度が1.90g/cm
3以上、1.99g/cm
3以下の溶融シリカ質耐火物からなり、
少なくとも表面から3mmの厚さ領域が、通気性評価法における60分後の内部圧力が0.005MPa以上となる通気性を有し、
かつ、前記厚さ領域における、Ca濃度が100ppm以下、Na濃度が50ppm以下、K濃度が50ppm以下であることを特徴とするツィール。
【請求項2】
前記基体の表面の中心線平均粗さRaが1μm以上10μm以下であることを特徴とする請求項1記載のツィール。
【請求項3】
フロート成形法で板ガラスを製造する際に溶融ガラスの流量調整に用いられるツィールの製造方法であって、
溶融シリカ粉末に溶媒を加え原料スラリーを生成し、成形後、焼成し
焼成体とした後、前記焼成体の表層を研削除去することを特徴とするツイールの製造方法。
【請求項4】
前記溶融シリカ粉末が、Ca濃度が100ppm以下、Na濃度が50ppm以下、K濃度が50ppm以下の純度99%以上の溶融シリカ粉末であり、前記溶媒がイオン交換水であり、前記焼成の温度が1050℃~1100℃であることを特徴とする請求項3記載のツイールの製造方法。
【請求項5】
前記成形が鋳込法であって、前記研削除去する厚みが1mm以上であることを特徴とする請求項3または4記載のツィールの製造方法。
【請求項6】
前記研削後に、基体の表面の中心線平均粗さRaが1μm以上10μm以下となるまで研磨することを特徴とする請求項5記載のツィールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロート成形法で板ガラスを製造する際に、溶融ガラスの流量を調整するツィールおよびそのツィールの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フロート成形法は、例えば、特許文献1(特開2011-157249号公報)に示されるように、ガラス原料を溶融槽にて加熱し、溶解した溶融ガラスを、フロートガラス製造装置の溶融ガラス供給部に送給し、溶融ガラス量を調節して、フロートバスの溶融錫上に供給し、リボン状のガラスに成形する方法である。尚、この溶融ガラス供給部にはツィールが設けられ、溶融ガラス量の流量が調整される。
【0003】
図3は、特許文献1に示された溶融ガラス供給部を示したものである。この図に基づいて説明すると、溶融ガラス20は供給パイプ21によってフロートガラス製造装置の溶融ガラス供給部22に送給される。
そして、溶融ガラス供給部22に送給された溶融ガラス20は、該溶融ガラス供給部22に設置したツィール23で、溶融ガラス量が調節され、一定幅の溶融ガラス流となってリップタイル24からフロートバス25の溶融錫26上に供給され、リボン状ガラス27に成形される。
【0004】
この場合、溶融ガラス供給部22で形成された一定幅の溶融ガラス流は、そのままフロートバス25に供給され、リボン状ガラス27に成形されるため、溶融ガラス流の幅方向端部はリボン状ガラス27の幅方向端部(製品以外の部分)となり、溶融ガラス流の幅方向中央部はリボン状ガラス27の幅方向中央部(製品となる部分)となる。
【0005】
前記ツィール23は、
図4に示すようにシリカガラスセラミックなどの耐熱材料で作製された矩形板状体で、上部に取り付けた金具23aを介して吊り棒23bで吊持される。
また、前記ツィール23は、
図3に示すように、フロートバス25の溶融ガラス供給部22に、側面を前記供給パイプ21の開口部に対向して、上下可能に設置される。
【0006】
このツィール23は、供給パイプ21の開口部の横幅および溶融ガラス供給部22の幅とほぼ同じ幅を有し、上下動させて高さを変えることによってフロートバス25に供給する溶融ガラス量を調節する。
このツィール23は、その位置を最下位置にすることによって、フロートバス25への溶融ガラス20の供給を停止させることもできる。
【0007】
このように、このツイール23は略矩形の厚肉板状体(基体)であって、溶融ガラスの一部を堰き止めた状態で残余の溶融ガラスを通過させる役割を果たすものであるため、高温の溶融ガラスと接触すると同時に高温雰囲気に晒される関係上、耐熱性材料で形成する必要がある。
【0008】
このツイールの基体としては、一般的に、溶融シリカを主成分とする所謂シリカ質耐火物で形成されている。このシリカ質耐火物の製造方法は、例えば、特許文献2(特開平11-60330号公報)に記載されている。
具体的には、粒度調整された溶融シリカ粉末100重量%に、硼素および燐よりなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を含有する化合物をB2O3、またはP2O5に換算した合計量で0.5重量%~10重量%の範囲となるように添加し、さらに適当な成形助剤を混合して成形用混合物(スリップ)を生成し、前記成形用混合物を石膏型に流し込み所望形状に成形(所謂、鋳込み成形)して成形体を得、前記成形体を50容量%以上の水蒸気を含む雰囲気下で焼成することで、溶融シリカ質耐火物が製造される。
【0009】
ところで、フロートガラス製造装置で製造されるガラスとしては、例えば、携帯電話、スマートフォン、携帯情報端末(PDA)、タブレット端末等のモバイル機器のディスプレイ装置のカバーガラス等に用いられるガラスがある。
これらディスプレイ装置のカバーガラス等に用いられるガラスは、落下の際にも割れにくいように高い強度が求められることから、化学強化ガラスが用いられている。
【0010】
このような化学強化に適したガラスとしては、特許文献3に示すように、リチウムアルミノシリケートガラスが提案されている。
また特許文献4に示すように、SiO2、Al2O3、MgO+CaO+SrO+BaO及びNa2O+K2Oからなるガラスが提案されている。
【0011】
そしてまた、特許文献5に示すように、これらのガラスにおいては、Fe2O3が熱線を吸収するところから溶解性を向上させる効果があるため、これを含有させることが行われている。また、Na2OおよびK2Oが、ガラスの溶融性を向上させ、結晶成長速度を小さくする成分であり、イオン交換性能を向上させる目的で添加されることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2011-157249号公報
【文献】特開平11-60330号公報
【文献】国際公開第2018/074335号公報
【文献】特開2001-26437号公報
【文献】特開2021-31317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
前記したようなディスプレイ装置のカバーガラス等に用いられるガラスを、前記フロートガラス製造装置で製造すると、溶融ガラス中にシリカ系異物結晶が混入し、板ガラス製品の歩留りが低下するという課題があった。
【0014】
本発明者らは、溶融ガラス中にシリカ系異物結晶が混入する原因ついて鋭意、研究した。
その結果、溶融シリカ質耐火物のツィールが、高温下で、Fe成分が多く含まれる溶融ガラスと接触すると、溶融シリカ質耐火物のツィール表層にトリジマイト結晶の析出が増加し、異物(トリジマイト結晶)が板ガラスに混入することが判明した。
また、従来の鋳込み成形による溶融シリカ質耐火物のツィールでは、ツイール表面に内部に比べ密度の高い緻密層が形成され、この緻密層の存在により、前記トリジマイト結晶の析出が生じていることが判明した。
【0015】
更に、溶融シリカ質のツィールの表層に、Ca、NaおよびK成分が多く存在する場合、高温の溶融ガラスとの接触により、クリストバライト結晶の析出が増加し、異物(クリストバライト結晶)が板ガラスに混入することが判明した。
【0016】
本発明は、上記技術的課題を解決するためになされたものであり、溶融ガラス中へのシリカ系異物結晶の混入を抑制し、フロートガラス製造装置で製造される板ガラス製品の歩留りを向上させる、ツィール及びそのツィールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記技術的課題を解決するためになされた本発明にかかるツィールは、フロート成形法で板ガラスを製造する際に溶融ガラスの流量調整に用いられるツィールであって、基体は、溶融シリカ含有率が99重量%以上で、嵩密度が1.90g/cm3以上、1.99g/cm3以下の溶融シリカ質耐火物からなり、少なくとも表面から3mmの厚さ領域が、通気性評価法における60分後の内部圧力が0.005MPa以上となる通気性を有し、かつ、前記厚さ領域における、Ca濃度が100ppm以下、Na濃度が50ppm以下、K濃度が50ppm以下であることを特徴としている。
【0018】
ここで、基体の表面の中心線平均粗さRaが1μm以上10μm以下であることが望ましい。
【0019】
また、上記技術的課題を解決するためになされた本発明にかかるツィールの製造方法は、フロート成形法で板ガラスを製造する際に溶融ガラスの流量調整に用いられるツィールの製造方法であって、溶融シリカ粉末に溶媒を加え原料スラリーを生成し、成形後、焼成し焼成体とした後、前記焼成体の表層を研削除去することを特徴としている。
【0020】
ここで、前記溶融シリカ粉末が、Ca濃度が100ppm以下、Na濃度が50ppm以下、K濃度が50ppm以下の純度99%以上の溶融シリカ粉末であり、前記溶媒がイオン交換水であり、前記焼成の温度が1050℃~1100℃であることが好ましい。
また、前記成形が鋳込法であって、前記研削除去する厚みが1mm以上であることが望ましい。
また、前記研削後に、基体の表面の中心線平均粗さRaが1μm以上10μm以下となるまで研磨することが望ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、溶融ガラス中にシリカ系異物結晶が混入するのを抑制でき、板ガラス製品の歩留りを向上させる、ツィール及びそのツィールの製造方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】通気性評価法に用いる装置の概略構成を示した図である。
【
図2】浸食試験を行う試験装置の概略を示した図である。
【
図3】フロート成形法で板ガラスを製造する製造装置(溶融ガラス供給部)を示す概略構成図である。
【
図4】本発明及び従来のツィールの外観形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明にかかるツィール及びそのツィールの製造方法の実施形態を説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。
本発明にかかるツィールは、フロート成形法で板ガラスを製造する際に溶融ガラスの流量調整に用いられるツィールである。
【0024】
このツィールの基体は、溶融シリカ含有率が99重量%以上で、嵩密度が1.90g/cm3以上、1.99g/cm3以の溶融シリカ質耐火物で形成されている。
また、このツィールの基体の少なくとも表面から3mmの厚さ領域は、通気性評価法における60分後の内部圧力が0.005MPa以上となる通気性を有している。
更に、前記厚さ領域における、Ca濃度は100ppm以下、Na濃度は50ppm以下、K濃度は50ppm以下である。
【0025】
このように、本発明にかかるツィールの基体が、溶融シリカ含有率が99重量%以上で嵩密度が1.90g/cm3以上であるため、溶融ガラスとの接触に伴うツィールの激しい損耗を抑制できる。
また、ツィールの基体の嵩密度が、1.99g/cm3以下であり、かつ、少なくとも表面から3mmの厚さ領域が、通気性評価法における60分後の内部圧力が0.005MPa以上となる通気性を有する多孔質構造であることによって、溶融ガラス中のFe成分によるトリジマイト結晶の析出を抑制できる。その結果、高い耐用寿命とすることができる共に、溶融ガラスへの異物混入量を抑制できる。
【0026】
前記トリジマイト結晶の析出がどのような現象により抑制されるのか十分な解明はなされていないが、トリジマイト結晶は溶融シリカ質耐火物より大きな熱膨張性を有するため、溶融シリカ質耐火物に上記適度な多孔性があることで、基体からのトリジマイト結晶の析出(はみ出し)を抑制することができるものと推察される。
【0027】
また、前記基体は、溶融シリカが少なくとも99重量%の溶融シリカ質耐火物からなり、少なくとも表面から3mmの厚さ領域のCa濃度が100ppm以下、Na濃度が50ppm以下、K濃度が50ppm以下である。
このCa、Na、K濃度は、試料を背面側から平面研削して所定の厚さとした後にメノウ乳鉢で粉砕し、各粉砕試料をICP分析にて、指定の成分分析を実施することにより、検証することができる。
【0028】
このように、少なくとも表面から3mmの厚さ領域のCa濃度が100ppm以下、Na濃度が50ppm以下、K濃度が50ppm以下であるあるため、高温の溶融ガラスとの接触によるクリストバライト結晶の発生、析出を抑制することができる。
【0029】
なお、前記通気性評価法は、ツイールの基体表面から、厚さ8mm×直径35mmのサンプルSを切出し、このサンプルSを、
図1に示すSUS製1インチユニオン継手(内径38mm)1内に、圧縮荷重1kNで、Oリング2で固定し、前記ユニオン継手1に接続した容器3の内部空間754cm
3(直径80mm×150mm)を介して真空ポンプ4で真空引きを行い、60分経過後の前記内部空間の内部圧力を真空計5で計測することによって、通気性を評価する方法である。
【0030】
また、前記基体は、基体表面の中心線平均粗さRaが1μm以上10μm以下であることが好ましい。
これにより、溶融ガラスとの接触による損耗をより低減することができ、耐久性を向上させることができる。
【0031】
次に、本発明にかかるツィールの製造方法について説明する。
本発明にかかるツイールの製造方法は、溶融シリカ粉末に溶媒を加え原料スラリーを生成し、成形後、焼成し、その後、前記焼成体の表層を研削除去することからなる。
このように、焼成体の表層を研削除去することで、前記成形及び焼成により形成される表面の緻密層が除かれ、通気性評価法における60分後の内部圧力が0.005MPa以上となる通気性を得ることができ、トリジマイト結晶の析出を抑制できる。
【0032】
本発明にかかるツイールの製造方法は、好ましくは、Ca濃度が100ppm以下、Na濃度が50ppm以下、K濃度が50ppm以下の純度99%以上の溶融シリカ粉末に、イオン交換水を加え原料スラリーを生成し、成形後、1050℃~1100℃で焼成し、その後、前記焼成体の表層を研削除去することからなる。以下、この製造方法につき、詳細に説明する。
【0033】
まず、Ca濃度が100ppm以下、Na濃度が50ppm以下、K濃度が50ppm以下の純度99%以上の溶融シリカ粉末90重量%に、イオン交換水10重量%を加え原料スラリーを生成する。
そして、前記原料スラリーを成形型に入れ、成形後、1050℃~1100℃で焼成する。その後、前記焼成体の表層を研削除去することにより、ツィールの基体が製造される。
【0034】
このように、前記成形方法として鋳込法を用い、焼成体の表層の研削除去は、厚みが1mm以上とすることが好ましい。
鋳込法はプレス成型に比べて安価に型を作成でき、ツィールのような大型で複雑な形状品の成形に適している。そのため、溶融シリカ質の基体の成形方法としては、石膏型の中へ泥漿スラリーを流しこむ鋳込成形法を利用するのが好ましい。
【0035】
また、この鋳込成形したツィールの基体表面には、石膏型に着肉開始した際の緻密層が発生する。この緻密層は焼成後も緻密層として存在する。そして、この緻密層の存在により、前記トリジマイト結晶の析出が生じているところから、焼成体の表層(緻密層)を研削除去する。
この焼成体の表層(緻密層)の研削除去によって、通気性評価法における60分後の内部圧力が0.005MPa以上となる通気性を得ることができ、トリジマイト結晶の析出を抑制できる。
【0036】
この研削除去する厚みが1mm以上であることにより、ツイール基体表面の緻密層を除去することができる。より確実に除去するには3mm以上の除去が望ましい。前記表層の緻密層を除去(研削)は、例えば、グラインダーで行うことができる。
【0037】
また、前記研削後に、基体の表面の中心線平均粗さRaが1μm以上10μm以下となるまで研磨することが望ましい。これにより、溶融ガラスとの接触による損耗をより低減することができる。前記研磨は、ベルトサンダーで行うことができる。
【実施例】
【0038】
鋳込成形で製造した溶融シリカ質耐火物を準備し、石膏型接触面を平面研削し、試料を製造した。以下に、詳細な製造方法を示す。
Ca濃度が100ppm以下、Na濃度が50ppm以下、K濃度が50ppm以下の純度99%以上の溶融シリカ粉末90重量%に、イオン交換水10重量%を加え、原料スラリーを生成し、
図4に示すツィール形状の石膏鋳型に流し込んで成形した。
【0039】
得られた成形体を、110℃~130℃で乾燥し、1050℃~1100℃で焼成を適宜実行し、溶融シリカ質耐火物からなる
図4に示すようなツィール23形状体(外形サイズ:全長1100mm×全高800mm×幅120mm)を得た。
その後、ツィール形状体の全表面において、グラインダーで研削を行い、さらにベルトサンダーで研磨加工を行った。
【0040】
そして、前記研削、研磨加工を行うことで、表1に示す表面研削量を研削研磨して、溶融シリカ質耐火物からなるツィール基体(実施例1~3、比較例1、比較例2)を得た。なお、実施例2のツィール形状体を用いて、研削及び研磨加工を行わない場合を、従来例とした。
そして、各試料について、嵩密度、通気性評価、表面粗さRa及び純度測定を行うとともにトリジマイト生成試験を行った。
【0041】
具体的評価方法は、以下の通りである。
密度(嵩密度)の測定方法は、ツイール基体の表面から、厚さ3mm×100mm×100mmのブロック切出しを行い、この一部から、JIS R2205に準じて測定を実施した。試料に煮沸浸水させアルキメデス法にて測定した。
焼成体表面(ツイール基体表面)の純度の測定方法は、上記ブロックから、厚さ3mm×10mm×10mmに切出した後にメノウ乳鉢で粉砕を実施した。各粉砕サンプルをICP分析にて指定の成分分析を実施した。
【0042】
また、通気性評価は、上記ブロックから、厚さ3mm×直径35mmの試料を切出し、
図1に示すSUS製1インチユニオン継手1(内径直径38mm)内に、圧縮荷重1kNで、Oリング2で固定した。
そして、前記ユニオン継手1に接続した内部空間754cm
3(D80×150mm)を介して真空ポンプ4で真空引きを行い、60分経過後の前記内部空間3の内部圧力を計測した。
【0043】
表面粗さRaの測定方法は、市販の表面粗さ計(株式会社ミツトヨ製小型表面粗さ測定機 SURFTEST SJ-210)を用い、JIS B0601:2013に準拠し測定を行った。
【0044】
上記実施例1~3、比較例1、2及び従来例のツイール基体の表面から厚さ10mm×50mm×50mmのブロックを切り出し、表2の組成の自動車用板ガラス粉末を浸食材とした浸食試験を実施した。
浸食試験条件は、
図2に示すように、アルミナ坩堝10の中に、表2のガラス粉末から形成される溶融ガラスを収容すると共に、アルミナ坩堝10の開口部を、観察面を溶融ガラスに対向するようにして試料によって閉塞する。そして、1200℃で、240時間、加熱する。その後、1200℃、240時間保持曝露された試料内面のトリジマイト生成量を、粉末X線回折測定結果から得た。定量化は市販のX線標準サンプルとのピーク強度比較で実施した。
上記結果を表1に示す。
【0045】
【0046】
【0047】
表1に示すように、実施例1~3のツイール基体によれば、従来例及び比較例のツイー基体に比べ、トリジマイト発生率を大幅に低減できることが確認された。
【0048】
次に、上記実施例2、従来例及び比較例1のツイール基体について、フロート炉にて1ヶ月使用し、トリジマイト及びクリストバライトのシリカ系異物結晶混入での欠陥発生による板ガラス製品の歩留り及び各ツイール基体の損耗量の確認を行なった。
その結果、実施例2のツイール基体は従来例のツイー基体に比べ、10倍の歩留りとなることが確認された。
【0049】
また、比較例1のツイール基体は、実施例2及び従来例のツイール基体に比べ、損耗量が1.5倍となること確認された。これは、比較例1の表面の中心線平均粗さRaが15μmと、実施例2及び従来例に比べて大きく、また比較例1の嵩密度が1.85g/cm3と小さいことによるものと確認された。
【0050】
このように、本発明のツイールによれば、損耗量を低く抑え、かつ、溶融ガラス中へのシリカ系異物結晶の混入を抑制し、フロートガラス製造装置で製造される板ガラス製品の歩留りを向上できる。
【符号の説明】
【0051】
1 ユニオン継手
2 Oリング
3 容器(内部空間)
4 真空ポンプ
5 真空計