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特許7565274試料のデジタル化のためのマイクロ流体アレイ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】試料のデジタル化のためのマイクロ流体アレイ
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20241003BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20241003BHJP
   C12Q 1/68 20180101ALI20241003BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C12M1/34 B
C12Q1/68
【請求項の数】 41
(21)【出願番号】P 2021532493
(86)(22)【出願日】2019-12-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-11
(86)【国際出願番号】 US2019065287
(87)【国際公開番号】W WO2020123406
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】62/777,616
(32)【優先日】2018-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518337142
【氏名又は名称】コンビナティ インコーポレイテッド
【住所又は居所原語表記】5823 Newton Dribe Carlsbad,California 92008 United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】リン,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ハン,チュ-ソン
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0014695(US,A1)
【文献】特表2009-513978(JP,A)
【文献】特表2008-514901(JP,A)
【文献】国際公開第2017/176699(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/011867(WO,A2)
【文献】国際公開第2005/024436(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00- 3/10
C12Q 1/00- 3/00
B81B 1/00- 7/04
B81C 1/00- 99/00
B01J 10/00- 19/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を含む、生体試料を処理するためのマイクロ流体デバイスであって、
前記基板は、
前記生体試料を含む溶液を導くように構成される入口ポートと、
記入口ポートに接続されたチャネルであって、ここで前記チャネルは前記入口ポートを介して前記生体試料を含む前記溶液を受け取り、および、ここで前記チャネルは出口ポートを有さない流体流路の少なくとも一部を画定する、チャネルと、
前記チャネルとのみ流体連通している複数のチャンバであって、ここで、前記複数のチャンバの1つのチャンバは、前記チャネルの側壁を介して前記チャネルに接続された単一のチャンバポートを含み、ここで前記チャンバは、前記チャネルから前記溶液の少なくとも一部を、前記チャンバポートを介して受け取り、かつ前記生体試料の処理中に、前記溶液の少なくとも一部を保持するように構成される、複数のチャンバと、
前記チャンバを覆う熱可塑性プラスチックのフィルムであって、液体に対して不浸透性であり且つ所定の圧力閾値を超えたガスに対して浸透性を有し、ここで前記熱可塑性プラスチックのフィルムは、前記入口ポートに圧力を適用する加圧ガス放出を介して前記マイクロ流体デバイスのガスファウリングを防止するように構成される、熱可塑性プラスチックのフィルムと
を含む、基板を含む、
マイクロ流体デバイス。
【請求項2】
前記熱可塑性プラスチックのフィルムは、ポリマーのフィルムまたは膜であることを特徴とする、請求項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項3】
前記ポリマーのフィルムは、エラストマーを含まないことを特徴とする、請求項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項4】
前記熱可塑性プラスチックのフィルムは、約100μm未満の厚みを有していることを特徴とする、請求項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項5】
前記厚みが、50μm未満であることを特徴とする、請求項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項6】
前記流体流路または前記チャンバは弁を含まないことを特徴とする、請求項1に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項7】
前記チャンバの体積は、約500ピコリットル以下であることを特徴とする、請求項1に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項8】
前記チャンバの体積は、約250ピコリットル以下であることを特徴とする、請求項1に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項9】
前記チャンバは、約250μm以下の断面寸法を有していることを特徴とする、請求項1に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項10】
前記チャンバは、約250μm以下の深さを有していることを特徴とする、請求項1に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項11】
前記チャネルと前記チャンバの間に配置された吸い上げ開口部をさらに含み、ここで前記吸い上げ開口部は、前記チャネルと前記チャンバの間で流体連通を提供するように構成される、請求項1に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項12】
前記チャネルと流体連通している犠牲チャンバをさらに含む、請求項1に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項13】
前記犠牲チャンバは、前記生体試料を含む溶液の過剰部分を保持するように構成されることを特徴とする、請求項12に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項14】
生体試料を処理するための方法であって、
(a)(i)チャネルと入口ポートを含む流体流路であって、出口ポートを含まない、流体流路と、(ii)前記チャネルとのみ流体連通しているチャンバとを含む、デバイスを提供する工程、
(b)前記入口ポートから前記チャネルに前記生体試料を含む溶液を導く工程、
(c)前記チャネルから前記チャンバに前記溶液の少なくとも一部を導く工程であって、前記生体試料の処理中に、前記チャンバは前記溶液の少なくとも一部を保持する、工程、および、
(d)前記入口ポートから前記チャネルに、および前記チャネルから前記チャンバに、前記溶液を導くために、前記入口ポートに圧力差を適用する工程を含み、
ここで前記チャンバは、熱可塑性プラスチックのフィルムで覆われ、前記熱可塑性プラスチックのフィルムは、液体に対して不浸透性であり且つ所定の圧力閾値を超えたガスに対して浸透性を有し、前記圧力差により前記チャンバにおけるガスの加圧ガス放出を可能にする、方法。
【請求項15】
前記デバイスは、前記チャネルと流体連通している複数のチャンバを含み、前記複数のチャンバは前記チャンバを含むことを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記入口ポートから前記チャネルに前記溶液を導くために、前記入口ポートに第1の圧力差を適用する工程をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記チャネルから前記チャンバに前記溶液を導くために、前記入口ポートに第2の圧力差を適用する工程をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第2の圧力差は、前記第1の圧力差よりも大きいことを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第2の圧力差は、前記チャンバにおいてガスの加圧ガス放出を可能にすることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記溶液の体積は、前記チャンバの体積以下であることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記デバイスは、残余溶液が前記チャネル内に残らないように、前記生体試料を含む前記溶液を前記チャンバの中へと分配することを特徴とする、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記入口ポートに不混和性の流体を供給し、および、前記不混和性の流体を前記チャネルに導く工程をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項23】
前記不混和性の流体の体積は、前記チャネルの体積より大きいことを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記生体試料は核酸分子であることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項25】
前記チャンバを熱サイクルすることによって前記核酸分子を増幅する工程をさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記チャネルまたは前記チャンバの温度を制御する工程をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項27】
前記チャンバにおいて、前記生体試料の1つ以上の構成要素、または前記生体試料の前記1つ以上の構成要素との反応を検知する工程をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項28】
前記生体試料の前記1つ以上の構成要素または前記反応を検知する工程は、前記チャンバを画像化することを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
生体試料を処理するためのシステムであって、
デバイスであって、(i)チャネルと入口ポートを含む流体流路であって、ここで前記流体流路は、出口ポートを含まず、および、ここで前記入口ポートが前記チャネルに前記生体試料を含む溶液を導くように構成される、流体流路と、(ii)前記チャネルとのみ流体連通しているチャンバであって、ここで前記チャンバは前記生体試料の処理中に、前記チャネルから前記溶液の少なくとも一部を受け取り、および前記溶液の少なくとも一部を保持するように構成されるチャンバと、前記チャンバを覆う熱可塑性プラスチックのフィルムであって、液体に対して不浸透性であり且つ所定の圧力閾値を超えたガスに対して浸透性を有し、ここで前記熱可塑性プラスチックのフィルムは、前記入口ポートに圧力を適用する加圧ガス放出を介して前記デバイスのガスファウリングを防止するように構成される、熱可塑性プラスチックのフィルムとを含む、デバイス、
前記生体試料の処理中に前記デバイスを収容または保持するように構成されるホルダー、および、
流体流モジュールであって、前記入口ポートに流体結合し、および、(i)前記溶液を前記入口ポートから前記チャネルへと流し、および、(ii)前記溶液の少なくとも一部を前記チャネルから前記チャンバへと流すために、圧力差を供給するように構成される、流体流モジュール
を含み、前記デバイスの前記チャンバは、前記流体流モジュールが前記圧力差を前記入口ポートに適用する時、前記チャンバにおいてガスの加圧ガス放出を可能にするように構成される、システム。
【請求項30】
前記デバイスは、前記チャネルとのみ流体連通している複数のチャンバを含み、前記複数のチャンバは前記チャンバを含むことを特徴とする、請求項29に記載のシステム。
【請求項31】
前記流体流モジュールに動作可能に結合された1つ以上のコンピュータプロセッサをさらに含み、ここで前記1つ以上のコンピュータプロセッサは、前記流体流モジュールが前記入口ポートに流体結合される時、圧力差を供給することを前記流体流モジュールに指示するように、個別に、または総体的にプログラムされ、それによって、前記溶液を前記入口ポートから前記チャネルへと流し、および、前記溶液の少なくとも一部を、前記チャネルから前記チャンバに導く、請求項29に記載のシステム。
【請求項32】
前記チャンバと熱的連通する熱モジュールであって、前記生体試料の処理の間、前記チャンバの温度を制御するように構成される熱モジュールをさらに含む、請求項29に記載のシステム。
【請求項33】
前記チャンバと連通する検知モジュールであって、前記生体試料の処理の間、前記チャンバの内容物を検知するように構成される、検知モジュールをさらに含む、請求項29に記載のシステム。
【請求項34】
前記検知モジュールは、前記チャンバと光連通する光学モジュールであることを特徴とする、請求項33に記載のシステム。
【請求項35】
前記光学モジュールは、前記チャンバを画像化するように構成されることを特徴とする、請求項34に記載のシステム。
【請求項36】
生体試料を処理するためのシステムであって、
デバイスを保持するように構成されたホルダーであって、前記デバイスは、(i)チャネルと入口ポートを含む流体流路であって、出口ポートを含まない、流体流路と、(ii)前記チャネルとのみ流体連通しているチャンバと、(iii)前記チャンバを覆う熱可塑性プラスチックのフィルムであって、液体に対して不浸透性であり且つ所定の圧力閾値を超えたガスに対して浸透性を有し、ここで前記熱可塑性プラスチックのフィルムは、前記入口ポートに圧力を適用する加圧ガス放出を介して前記デバイスのガスファウリングを防止するように構成される、熱可塑性プラスチックのフィルムとを含む、ホルダー、および、
前記デバイスが前記ホルダーによって保持される時、前記デバイスに動作可能に結合されるように構成される1つ以上のコンピュータプロセッサであって、ここで前記1つ以上のコンピュータプロセッサは、(i)前記入口ポートから前記チャネルに前記生体試料を含む溶液を導くように、および、(ii)前記チャネルから前記チャンバに前記溶液の少なくとも一部を導くように、個別に、または総体的にプログラムされ、ここで前記生体試料の処理の間、前記チャンバは前記溶液の少なくとも一部を保持する、1つ以上のコンピュータプロセッサ
を含む、システム。
【請求項37】
前記1つ以上のコンピュータプロセッサに動作可能に結合された流体流モジュールをさらに含み、ここで、前記流体流モジュールは、前記デバイスが前記ホルダーによって保持される時、前記デバイスに動作可能に結合されるように構成され、前記1つ以上のコンピュータプロセッサは、前記入口ポートから前記チャネルに前記溶液を導くことを前記流体流モジュールに指示するようにプログラムされる、請求項36に記載のシステム。
【請求項38】
前記デバイスが前記ホルダーによって保持される時、前記チャンバと熱的連通するように構成される熱モジュールであって、前記生体試料の処理の間、前記チャンバの温度を制御するように構成される、熱モジュールをさらに含む、請求項36に記載のシステム。
【請求項39】
前記デバイスが前記ホルダーによって保持される時、前記チャンバと連通するように構成される検知モジュールであって、前記生体試料の処理の間、前記チャンバの内容物を検知するように構成される、検知モジュールをさらに含む、請求項36に記載のシステム。
【請求項40】
前記検知モジュールは、光連通する光学モジュールであることを特徴とする、請求項39に記載のシステム。
【請求項41】
前記光学モジュールは、前記チャンバを画像化するように構成されることを特徴とする、請求項40に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本発明は、2018年12月10日に出願された米国仮特許出願第62/77,616号の利益を主張し、これは参照によって本明細書に全体的に組み込まれる。<特許に係る
【0002】
政府の権利の陳述
本発明は、National Cancer Instituteによって与えられたSmall Business Innovation Research認可番号1R43CA221597-01A1の下で政府の支援を受けて成された。米国政府は本発明に一定の権利を有している。
【背景技術】
【0003】
マイクロ流体デバイスは、小規模に流体を扱う構造を包含するデバイスである。典型的には、マイクロ流体デバイスはサブミリメートル規模で動作し、マイクロリットル、ナノリットル、またはより少ない量の流体を扱う。マイクロ流体構造の1つの用途は、デジタルポリメラーゼ連鎖反応(dPCR)にある。例えば、複数の区画(partition)を備えたマイクロ流体の構造は、dPCRのための核酸サンプルを分配する(partition)ために用いられ得る。dPCRでは、核酸試料は1以下の核酸鋳型が区画内にあるように薄められる場合があり、および、PCR反応が各区画において遂行され得る。その核酸鋳型が成功裡にPCR増幅された区画を数え、その結果にポアソン統計を適用することによって、標的の核酸が定量化される。
【0004】
ゲノムの研究者および臨床医にとって、dPCRは、珍しい突然変異の検出、コピー数多型の定量化、および次世代の配列決定ライブラリの定量化において特に強力である。無細胞DNAおよびウイルス量の定量化を用いる液体細胞診のための臨床の環境における潜在的な用途はさらに、dPCR技術の価値を上昇させる。
【発明の概要】
【0005】
生体試料の分析、例えば、核酸を増幅し、および定量することのために役立ち得る方法およびデバイスが本明細書に提供される。本開示は、dPCRの使用によって、試料の調製、試料の増幅、および試料の分析を容易にし得る方法、システム、およびデバイスを提供する。試料は、ほんの少ししか、あるいはまったく無駄を出さずに(例えば、0または約0の試料デッドボリューム)、デジタル化または分析され得る。これによって、試料分析、例えば、核酸増幅と定量は、他のシステムおよび方法と比較して、低いコストおよび低い複雑性で、可能となり得る。
【0006】
一態様では、本開示は、生体試料を処理するためのマイクロ流体デバイスを提供し、該マイクロ流体デバイスは:チャネルと入口ポートを含む流体流路であって、ここで流体流路は、出口ポートを含まず、および、ここで入口ポートは、生体試料を含む溶液をチャネルに導くように構成される、流体流路と、チャネルと流体連通しているチャンバであって、ここで、チャンバは処理中に、チャネルから溶液の少なくとも一部を受け取り、および溶液の少なくとも一部を保持するように構成される、チャンバと、を含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、マイクロ流体デバイスはチャネルと流体連通している複数のチャンバを含み、ここで複数のチャンバはチャンバを含む。いくつかの実施形態では、チャネルは、第1の端部と第2の端部を含み、および、ここで第1の端部と第2の端部は、単一の入口ポートに接続される。いくつかの実施形態では、流体流路は、環状である。いくつかの実施形態では、チャネルは、第1の端部と第2の端部を含み、および、ここで第1の端部は、入口ポートに接続され、および、第2の端部は、異なる入口ポートに接続される。
【0008】
いくつかの実施形態では、チャンバは、加圧ガス放出を可能にするように構成される。いくつかの実施形態では、チャンバは、加圧ガス放出を可能にするフィルムまたは膜を含む。いくつかの実施形態では、前記フィルムまたは膜は、ポリマーのフィルムまたは膜である。いくつかの実施形態では、前記ポリマーのフィルムまたは膜は、エラストマーを含まない。いくつかの実施形態では、前記フィルムまたは膜は、約100μm未満の厚みを有する。いくつかの実施形態では、前記厚みは約50μm未満である。いくつかの実施形態では、前記フィルムまたは膜は、液体に対して実質的に不浸透性である。
【0009】
いくつかの実施形態では、流体流路またはチャンバは弁を含まない。いくつかの実施形態では、チャンバの容積は約250ピコリットル以下である。いくつかの実施形態では、チャンバの容積は約500ピコリットル以下である。いくつかの実施形態では、チャンバは、約250μm以下の断面寸法を有する。いくつかの実施形態では、チャンバは、約250μm以下の深さを有する。いくつかの実施形態では、マイクロ流体デバイスは、チャネルとチャンバの間で配置された吸い上げ開口部をさらに含み、ここで吸い上げ開口部は、チャネルとチャンバの間で流体連通を提供するように構成される。
【0010】
他の態様では、本開示は、生体試料を処理するための方法を提供し、該方法は:デバイスであって、(i)チャネルと入口ポートを含む流体流路であって、出口ポートを含まない、流体流路と、(ii)チャネルと流体連通しているチャンバと、を含むデバイスを提供する工程と、入口ポートからチャネルに生体試料を含む溶液を導く工程と、チャネルからチャンバに溶液の少なくとも一部を導く工程であって、処理の間、チャンバは溶液の少なくとも一部を保持する、工程と、を含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、デバイスは、チャネルと流体連通している複数のチャンバを含み、および、ここで複数のチャンバはチャンバを含む。いくつかの実施形態では、方法は、入口ポートからチャネルに、およびチャネルからチャンバに、溶液を導くために、入口ポートに単一の圧力差を適用する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、前記単一の圧力差は、チャンバにおけるガスの加圧ガス放出を可能にする。
【0012】
いくつかの実施形態では、方法は、入口ポートからチャネルに溶液を導くために、入口ポートに第1の圧力差を適用する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は、チャネルからチャンバに溶液を導くために、入口ポートに第2の圧力差を適用する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、第2の圧力差は、第1の圧力差よりも大きい。いくつかの実施形態では、第2の圧力差は、チャンバにおけるガスの加圧ガス放出を可能にする。いくつかの実施形態では、チャンバはフィルムまたは膜を含み、およびここでフィルムまたは膜はチャンバにおいてガスの加圧ガス放出を可能にする。
【0013】
いくつかの実施形態では、溶液の体積は、チャンバの容積以下である。いくつかの実施形態では、デバイスは、残余溶液がチャネル内に残らないように、生体試料を含む前記溶液をチャンバの中へと分配する。いくつかの実施形態では、方法は、入口ポートに不混和性の流体を供給し、および、不混和性の流体をチャネルに導く工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、不混和性の流体の体積は、チャネルの容積より大きい。いくつかの実施形態では、生体試料は核酸分子である。いくつかの実施形態では、方法は、チャンバを熱サイクルすることによって核酸分子を増幅する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は、チャネルまたはチャンバの温度を制御する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は、チャンバにおいて、生体試料の1つ以上の構成要素、または生体試料の1つ以上の構成要素を伴う反応を検知する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、生体試料または反応の1つ以上の構成要素を検知する工程は、チャンバを画像化することを含む。
【0014】
別の態様では、本開示は、生体試料を処理するためのシステムを提供し、該システムは:デバイスであって、(i)チャネルと入口ポートを含む流体流路であって、ここで流体流路は、出口ポートを含まず、および、ここで入口ポートは、生体試料を含む溶液をチャネルに導くように構成される、流体流路と、(ii)チャネルと流体連通しているチャンバであって、ここで、チャンバは、処理中に、チャネルから溶液の少なくとも一部を受け取り、および溶液の少なくとも一部を保持するように構成されるチャンバと、を含む、デバイスと、処理中にデバイスを収容および保持するように構成されるホルダーと、入口ポートに流体結合し、および被験体に圧力差を供給するように構成される流体流モジュールであって、(i)前記溶液に、入口ポートからチャネルへと流すために、および、(ii)溶液の少なくとも一部に、チャネルからチャンバへと流すために、圧力差を供給するように構成される、流体流モジュールと、を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、デバイスは、チャネルと流体連通している複数のチャンバを含み、および、ここで複数のチャンバはチャンバを含む。いくつかの実施形態では、デバイスのチャンバは、流体流モジュールが圧力差を入口ポートに適用する時、チャンバにおいてガスの加圧ガス放出を可能にするように構成される。いくつかの実施形態では、チャンバは、前記加圧ガス放出を可能にするように構成されたフィルムまたは膜を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、流体流モジュールに動作可能に結合された1つ以上のコンピュータプロセッサを含み、ここで1つ以上のコンピュータプロセッサは、流体流モジュールが入口ポートに流体結合される時、圧力差を供給することを流体流モジュールに指示し、それによって前記溶液に入口ポートからチャネルへと流し、および、溶液の少なくとも一部をチャネルからチャンバに導く。いくつかの実施形態では、システムは、チャンバと熱的連通する熱モジュールをさらに含み、ここで、熱モジュールは、処理中に、チャンバの温度を制御するように構成される。いくつかの実施形態では、システムは、チャンバと連通する検知モジュールであって、処理の間、チャンバの内容物を検知するように構成される、検知モジュールをさらに含む。いくつかの実施形態では、検知モジュールはチャンバと光通信における光学モジュールである。いくつかの実施形態では、光学モジュールはチャンバを画像化ように構成される。
【0017】
別の態様では、本開示は、生体試料を処理するためのシステムを提供し、該システムは:デバイスを保持するように構成されたホルダーであって、該デバイスは、(i)チャネルと入口ポートを含む流体流路であって、出口ポートを含まない、流体流路と、(ii)前記チャネルと流体連通している前記チャンバと、を含む、ホルダーと、前記デバイスが前記ホルダーによって保持される時、前記デバイスに動作可能に結合されるように構成される1つ以上のコンピュータプロセッサであって、ここで前記1つ以上のコンピュータプロセッサは、(i)前記入口ポートから前記チャネルに前記生体試料を含む溶液を導くように、および、(ii)前記チャネルから前記チャンバに前記溶液の少なくとも一部を導き、ここで前記処理の間、前記チャンバは前記溶液の前記少なくとも前記一部を保持するように、個別に、または総体的にプログラムされる、1つ以上のコンピュータプロセッサと、を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、システムは、前記1つ以上のコンピュータプロセッサに動作可能に結合された流体流モジュールをさらに含み、ここで、前記流体流モジュールは、前記デバイスが前記ホルダーによって保持される時、動作可能に前記デバイスに結合されるように構成され、および、ここで、前記1つ以上のコンピュータプロセッサは、前記入口ポートから前記チャネルに前記溶液を導くことを前記流体流モジュールに指示するようにプログラムされる。
【0019】
いくつかの実施形態では、システムは、前記デバイスが前記ホルダーによって保持される時、前記チャンバと熱的連通する熱モジュールをさらに含み、ここで、前記熱モジュールは、前記処理中に、前記チャンバの温度を制御するように構成される。
【0020】
いくつかの実施形態では、システムは、前記デバイスが前記ホルダーによって保持される時、前記チャンバと連通するように構成された検知モジュールをさらに含み、ここで、前記検知モジュールは、前記処理中に、チャンバの内容物を検知するように構成される。いくつかの実施形態では、検知モジュールは、光通信する光学モジュールである。いくつかの実施形態では、光学モジュールは、前記チャンバを画像化するように構成される。
【0021】
本開示のさらなる態様および利益は、以下の詳細な説明から、当業者に容易に明らかとなり、ここでは、本開示の例示的な実施形態のみが示され、記載される。以下の記載から分かるように、本開示は他のおよび異なる実施形態であってもよく、そのそれぞれの詳細は、全てが本開示から逸脱することなく、様々な明白な点において修正が可能である。したがって、図面および説明は、本質的に例示であるとみなされ、限定するものではない。
【0022】
参照による組み込み
明細書で言及される公報、特許、および特許出願はすべて、あたかもそれぞれの公報、特許、または特許出願が参照によって具体的かつ個別に組み込まれるかのような同じ程度、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に包含される開示に矛盾して、参照によって組み込まれた刊行物および特許または特許出願については、本明細書は、そのように矛盾した資料のいずれに対しても取って代わり、および/または、優先するように意図される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本発明の新規な特徴は、とりわけ添付の特許請求の範囲において記載される。本発明の特徴および利点のより良い理解は、本発明の原理が利用される実施形態を明記する以下の詳細な説明と、以下の添付図面(または本明細書における「図」)とを引用することによって得られる。
【0024】
図1A図1Aから図1Fは、マイクロ流体デバイスと、そのマイクロ流体デバイスを満たすための方法の例を概略的に図解し、図1Aは、試料および不混和性の流体をマイクロ流体デバイスへと充填することを概略的に図解する。
図1B図1Aから図1Fは、マイクロ流体デバイスと、そのマイクロ流体デバイスを満たすための方法を概略的に図解し、図1Bは、試料をチャネルへと充填するためにマイクロ流体デバイスを加圧することを概略的に図解する。
図1C図1Aから図1Fは、マイクロ流体デバイスと、そのマイクロ流体デバイスを満たすための方法を概略的に図解し、図1Cは、流体流路をガス抜きし、および、チャネル中に試料を充填し続けるための、継続される加圧を概略的に図解する。
図1D図1Aから図1Fは、マイクロ流体デバイスと、そのマイクロ流体デバイスを満たすための方法を概略的に図解し、図1Dは、チャンバの中への試料の部分的なデジタル化、チャネル中への油の充填、および空気の移動を概略的に図解する。
図1E図1Aから図1Fは、マイクロ流体デバイスと、そのマイクロ流体デバイスを満たすための方法を概略的に図解し、図1Eは、さらなるデジタル化および空気の移動を概略的に図解する。
図1F図1Aから図1Fは、マイクロ流体デバイスと、そのマイクロ流体デバイスを満たすための方法を概略的に図解し、図1Fは、試料の完全なデジタル化を概略的に図解する。
図2A図2Aから図2Eは、マイクロ流体デバイスにおける試料デジタル化の画像の例を示し、図2Aは、マイクロ流体デバイスの例を示す。
図2B図2Aから図2Eは、マイクロ流体デバイスにおける試料デジタル化の画像の例を示し、図2Bは、マイクロ流体デバイスへの試料の加圧された充填の例を示す。
図2C図2Aから図2Eは、マイクロ流体デバイスにおける試料デジタル化の画像の例を示し、図2Cは、チャネルを満たす試料と不混和性の流体の例を示す。
図2D図2Aから図2Eは、マイクロ流体デバイスにおける試料デジタル化の画像の例を示し、図2Dは、チャンバの中への試料の部分的な充填の例を示す。
図2E図2Aから図2Eは、マイクロ流体デバイスにおける試料デジタル化の画像の例を示し、図2Eは、試料の完全なデジタル化の例を示す。
図3】試料のデジタル化のための方法の例を概略的に図解する。
図4】デジタルポリメラーゼチェーンリアクション(dPCR)のための方法の例を概略的に図解する。
図5】試料をデジタル化および分析するためのシステムの例を概略的に図解する。
図6】本明細書で提供される方法を実施するようにプログラムまたは構成される、コンピュータシステムを示す。
図7A図7Aおよび図7Bは、各スライドが複数の処理ユニットを含んでいる、複数のスライドを含む、マイクロ流体デバイスを示す。
図7B図7Aおよび図7Bは、各スライドが複数の処理ユニットを含んでいる、複数のスライドを含む、マイクロ流体デバイスを示す。
図8】単一の処理ユニットの顕微鏡画像を示す。
図9A図9Aから図9Dは、デジタル化プロセスの間の4つの異なる時点を示す。
図9B図9Aから図9Dは、デジタル化プロセスの間の4つの異なる時点を示す。
図9C図9Aから図9Dは、デジタル化プロセスの間の4つの異なる時点を示す。
図9D図9Aから図9Dは、デジタル化プロセスの間の4つの異なる時点を示す。
図10】本明細書に記載される試薬デジタル化プロセスを統合するラボラトリのワークフローを示す。
図11】画像解析ソフトウェアのスクリーンショットの例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の様々な実施形態が本明細書中で示され、記載されてきたが、このような実施形態はほんの一例として提供されているに過ぎないことは当業者に明らかであろう。多くの変更、変化、および置換が、本発明から逸脱することなく当業者に想到されることもある。本明細書に記載される本発明の実施形態の様々な代案が、利用されることもあることを理解されたい。
【0026】
本明細書で使用されるように、用語「増幅」および、「増幅する」は、核酸の1つ以上のコピーまたは「増幅産物」を生成することを指すように、交換可能に、かつ通常に使用される。例えば、そのような増幅は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)または等温増幅を使用していることもある。
【0027】
本明細書において使用されるように、用語「核酸」は、通常、任意の長さの(例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、100、500、または1000ヌクレオチド)の核酸サブユニット(例えば、ヌクレオチド)、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドのいずれか、またはそれらのアナログを含む生物学的高分子を指す。核酸は、アデノシン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(TO)、およびウラシル(U)、またはそれらの変異体から選択された1つ以上のサブユニット、を含み得る。ヌクレオチドは、A、C、G、T、もしくはU、またはそれらの変異体を含みうる。ヌクレオチドは、伸長している核酸鎖へと組み込まれうる任意のサブユニットを含み得る。そのようなサブユニットは、A、C、G、T、もしくはU、またはより相補的なA、C、G、T、もしくはUの1つに特異的な、あるいはプリン(すなわち、AもしくはG、またはそれらの変異体)もしくはピリミジン(すなわちC、T、もしくはU、またはそれらの変異体)に相補的な、他のいかなるサブユニットであってもよい。いくつかの例では、核酸は一本鎖または二本鎖であってよく、場合によっては、核酸分子は環状である。核酸の限定しない例は、DNAおよびRNAを含むデオキシリボ核酸(DNA)とリボ核酸(RNA)を含む。核酸は、遺伝子または遺伝子断片のコード領域またはノンコーディング領域、連鎖解析から定義された遺伝子座、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、転移RNA、リボソームRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、ショートヘアピンRNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、リボザイム、cDNA、組換え核酸、分枝核酸、プラスミド、ベクター、あらゆる配列の単離されたDNA、あらゆる配列の単離されたRNA、核酸プローブ、およびプライマーを含み得る。核酸は、メチル化されたヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログなど、1つ以上の修飾されたヌクレオチドを含むこともある。
【0028】
本明細書に使用されるように、用語「ポリメラーゼ連鎖反応の試薬」または「PCR試薬」は、核酸増幅反応(例えばDNA増幅)を成就するための試薬を含む組成物を指すように、交換可能にかつ通常に使用され、そのような試薬の非限定的な例は、標的核酸に対する特異性を有するプライマーセットまたはプライミング部位(例えばニック)、ポリメラーゼ、適切な緩衝液、補助因子(例えば二価カチオンおよび一価カチオン)、dNTPs、および他の酵素を含む。PCR試薬はまた、プローブ、インジケータ、ならびにプローブおよびインジケータを含む分子を含むこともある。
【0029】
本明細書において使用されるように、用語「プローブ」は、通常、検出可能な部分を含む分子を指し、プローブの有無は、増幅産物の有無を検出するために使用されることもある。検出可能な部分の非限定的な例は、放射標識、安定同位体標識、蛍光標識、化学発光標識、酵素標識、比色標識、または任意のそれらの組み合わせを含むこともある。
【0030】
明細書において使用されるように、用語「伸長(extension)」は、通常、鋳型指向性の様式(template directed fashion)の、核酸へのヌクレオチドの組み込みを指す。伸長は酵素の支援を介して生じることもある。例えば、伸長はポリメラーゼの支援を介して生じることもある。伸長が生じうる条件は、伸長が達成される温度を一般的には指す「伸長温度」、および発生する伸長のために割り当てられた時間の量を一般的には指す「伸長の継続時間」を含む。
【0031】
明細書において使用されるように、用語「指示薬分子」は、通常、検出可能な部分を含む分子を指し、指示薬分子の有無は試料の分配を示すために使用されることもある。検出可能な部分の非限定的な例は、放射標識、安定同位体標識、蛍光標識、化学発光標識、酵素標識、比色標識、または任意のそれらの組み合わせを含むこともある。
【0032】
用語「試料」は、通常、明細書において使用されるように、核酸分子を含む、または含んでいる疑いのある試料を指す。例えば、試料は、1つ以上の核酸分子を含む生体試料になり得る。生体試料は、血液(例えば全血)、血漿、血清、尿、唾液、粘膜の排出物、唾液、便および涙から得られる(例えば、抽出または分離される)か、またはそれらを含み得る。生体試料は、液体組織または組織試料(例えば皮膚試料)になりうる。いくつかの例では、試料は全血などの無細胞の体液から得られる。そのような実例において、試料は無細胞DNAおよび/または無細胞RNAを含み得る。いくつかの例では、試料は循環腫瘍細胞を含みうる。いくつかの実施形態では、試料は、環境試料(例えば、土、廃棄物、周囲空気等)、工業試料(例えば、任意の工業プロセスからの試料)、および食物試料(例えば、乳製品、野菜製品、および肉製品)である。試料は、マイクロ流体デバイス中への充填の前に処理される場合がある。例えば、試料は、細胞を溶解するため、核酸分子を精製するため、および/または試薬を含めるために、処理される場合がある。
【0033】
本明細書において使用されるように、用語「流体」は、通常、液体またはガスを指す。液体は定められた形状を維持することができず、観察可能な時間枠(observable time frame)の間に流れ、液体が入れられる容器を充填するだろう。したがって、流体は、流れることができる適切な粘度を有しうる。2以上の流体が存在する場合、各流体は、独立して、当業者によって、本質的にいかなる流体(液体、ガスなど)からも選択されてもよい。
【0034】
本明細書において使用されるように、用語「分配する(partition)」は、通常、複数の部分への分割もしくは分散、または割り当て(share)を指す。例えば、分配された試料は、他の試料から隔離された試料である。試料の分配を可能にする構造の例は、ウェルおよびチャンバを含む。
【0035】
本明細書において使用されるように、用語「デジタル化された」または「デジタル化」は、交換可能に用いられてもよく、通常、1つ以上の区画の中へ分配された試料を指す。デジタル化された試料は、別のデジタル化された試料と流体連通していても、流体連通していなくてもよい。デジタル化された試料は、他のデジタル化された試料と相互作用しない場合も、物質(例えば、試薬、検体など)を交換しない場合もある。
【0036】
本明細書において使用されるように、用語「マイクロ流体の」は、通常、少なくとも1つのチャネル、複数の吸い上げ開口部、およびチャンバのアレイを含む、チップ、エリア、デバイス、物品、またはシステムを指す。チャネルは、約10ミリメートル(mm)以下、約5mm以下、約4mm以下、約3mm以下、約2mm以下、約1.5mm以下、約1mm以下、約750マイクロメートル(μm)以下、約500μm以下、約250μm以下、約100μm以下、またはそれ未満の断面寸法を有する場合がある。
【0037】
本明細書において使用されるように、用語「深さ」は、通常、チャネル、吸い上げ開口部、またはチャンバの底部から、チャネル、複数の吸い上げ開口部、およびチャンバのアレイをキャップする薄膜までの測定された距離を指す。
【0038】
本明細書において使用されるように、用語「断面」、「断面の」は、交換可能に使用されてもよく、および、通常は、チャネルまたは吸い上げ開口部の、外観の長寸法に実質的に垂直である寸法またはエリアを指す。
【0039】
本明細書において使用されるように、用語「加圧ガス放出」または「加圧ガス抜き」は交換可能に使用されてもよく、および、通常、圧力差の適用によってデバイス(例えば、マイクロ流体デバイス)のチャネルまたはチャンバからガス(例えば、空気、窒素、酸素など)をチャネルまたはチャンバの外の環境へと除去または排出することを指す。圧力差は、チャネルまたはチャンバと、チャネルまたはチャンバの外の環境との間で適用され得る。圧力差は、デバイスの1つ以上の入口に対する圧力源の作用により、または、デバイスの1つ以上の表面に対する真空源の作用により、提供される場合がある。加圧ガス放出または加圧ガス抜きは、チャネルまたはチャンバの1つ以上の側面を包むフィルムまたは膜を介して可能になり得る。
【0040】
用語「少なくとも」、「より大きい」、または、「以上」が2つ以上の一連の数値における第1の数値に先行するときは常に、用語「少なくとも」、「より大きい」、または「以上の」は、その一連の数値における数値の各々に適用される。例えば、1以上、2、または3は、1以上、2以上、または3以上と同等である。
【0041】
用語「わずか」、「未満」、または、「以下」が2つ以上の一連の数値における第1の数値に先行するときは常に、用語「わずか」、「未満」、または、「以下」は、その一連の数値における数値の各々に適用される。例えば、3以下、2、または1は、3以下、2以下、または1以下と同等である。
【0042】
本開示は、試料の処理および/または分析のためのマイクロ流体デバイスを提供する。本開示のマイクロ流体デバイスは、高分子材料(例えば、熱可塑性プラスチック)から形成される場合があり、および、圧力が解放されるときにガスバリアとして役立ちながら、加圧ガス抜きを可能にする薄膜フィルムを含み得る。そのマイクロ流体デバイスは、チップまたはカートリッジであってもよい。本開示のマイクロ流体デバイスは、単回使用および/または使い捨てのデバイスであり得る。代替として、マイクロ流体デバイスは、多回使用デバイスであり得る。マイクロ流体構造を形成するためにポリマー(例えば、熱可塑性プラスチック)を使用することは、低価格で高度にスケーラブルな射出成形法の使用を可能にし得るが、さらに、薄膜が、そのような薄膜を組み込まない幾らかのマイクロ流体構造に存在しうるファウリングの問題を回避しつつ、加圧を介してガスを抜く能力を提供する。
【0043】
例えば、マイクロ流体デバイスはサブミリメートル規模で動作し、マイクロリットル、ナノリットル、またはより少ない量の流体を扱うため、主なファウリングの仕組み(fouling mechanism)は、マイクロ構造の内部に閉じ込められた空気、すなわち気泡であり得る。このことは、マイクロ流体構造を作製するために熱可塑性プラスチックなどのポリマー材料を使用するときに、熱可塑性プラスチックのガス透過率が非常に低いため、特に問題となり得る。閉じ込められた空気によるファウリングを避けるために、他のマイクロ流体構造は、熱可塑性プラスチック材料で単純な直線チャネルの設計または単純な分岐チャネルの設計のいずれかを使用するか、そうでなければエラストマーなどの、ガス透過率の高い材料を使用して、デバイスを製造する。しかしながら、単純な設計は、マイクロ流体デバイスの可能な機能を制限し、および、エラストマー材料は、特に規模の面で、製造するのが難しく、および高価である。
【0044】
この構造のための1つの使用は、熱可塑性プラスチックから形成され、チャネルによって接続された、行き止まりのチャンバのアレイを組み込むマイクロ流体の設計である。この設計は、生体検体の検知および分析において用いられてもよい。例えば、前記マイクロ流体設計は、デジタル・ポリメラーゼチェーンリアクション(dPCR)用途でチャンバのアレイ(例えば、複数のチャンバ)の中へ試薬を分配するために用いられていてもよく、および、それによって、dPCRにおいて核酸を定量化するために使用されてもよい。
【0045】
生体試料を分析するためのマイクロ流体デバイス
ある態様では、本開示は、生体試料を処理するためのデバイス(例えば、マイクロ流体デバイス)を提供する。デバイス(例えば、マイクロ流体デバイス)は、流体流路とチャンバを含む、1つのユニットを含み得る。デバイスは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、30、またはそれより多くのユニットを含み得る。流体流路は、チャネルと入口ポートを含み得る。流体流路は、出口ポートを含まない場合がある。入口ポートは、チャネルと流体連通にあり得る。入口ポートは、チャネルに生体試料を導くように構成され得る。チャンバは、チャネルと流体連通にあり得る。チャンバは、チャネルから溶液の少なくとも一部を受け取り、および、処理中に溶液の一部を保持するように構成され得る。
【0046】
流体流路は、1つのチャネルまたは複数のチャネルを含み得る。流体流路は、少なくとも1、2、3、4、5、6、8、10、12、15、20、25、30、40、50、またはそれより多くのチャネルを含み得る。チャネルは各々、互いから流体的に隔離され得る。代替的に、または付加的に、複数のチャネルは互いと流体連通にあってもよい。チャネルは、第1の端部と第2の端部とを含み得る。第1の端部と第2の端部は、単一の入口ポートに接続され得る。単一の入口ポートに接続された第1の端部と第2の端部があるチャネルは、入口ポートを介してチャネルに入る流体がチャネルの第1の端部と第2の端部を通って同時に導かれ得るように、環状および/またはループ状の構成であり得る。代替的に、第1の端部および第2の端部は、異なる入口ポートに接続され得る。流体流路および/またはチャンバは、流体流を止めるための、あるいは遅らせるための、またはチャンバを分離するための弁を含まなくてもよい。
【0047】
デバイスは長寸法と短寸法を含み得る。長寸法は、約20センチメートル(cm)以下、約15cm以下、約10cm以下、約8cm以下、約6cm以下、約5cm以下、約4cm以下、約3cm以下、約2cm以下、約1cm以下、または、より小さい場合がある。デバイスの短寸法は、約10cm以下、約8cm以下、約6cm以下、約5cm以下、約4cm以下、約3cm以下、約2cm以下、約1cm以下、約0.5cm以下、または、より小さい場合がある。一例では、デバイス(例えば、マイクロ流体デバイス)の寸法は、約7.5cm×2.5cmである。チャネルは、マイクロ流体デバイスの長寸法に対して実質的に平行であり得る。代替的に、または付加的に、チャネルは、マイクロ流体デバイス(例えば、デバイスの短寸法と平行)の長寸法に対して実質的に垂直であり得る。代替的に、または付加的に、チャネルは、マイクロ流体デバイスの長寸法に対して、実質的に平行でも、実質的に垂直でもない場合がある。チャネルとマイクロ流体デバイスの長寸法の間の角は、少なくとも約5度、約10度、約15度、約20度、約30度、約40度、約50度、約60度、約70度、または約90度であり得る。一例では、チャネルは単一の長いチャネルである。代替的に、または付加的に、チャネルは、屈曲部、湾曲部、または角部を有する場合がある。チャネルは、約100ミリメートル(mm)以下、約75mm以下、約50mm以下、約40mm以下、約30mm以下、約20mm以下、約10mm以下、約8mm以下、約6mm以下、約4mm以下、約2mm以下の、または、より小さい長寸法を有する場合がある。チャネルの長さは、マイクロ流体デバイスの外部の長さあるいは幅により制限される場合がある。チャネルは、500マイクロメートル(μm)以下、約250μm以下、約100μm以下、約80μm以下、約60μm以下、約30μm以下、約20μm以下、約10μm以下の、または、より小さい深さを有している場合がある。チャネルは、約500μm以下、約250μm以下、約100μm以下、約75μm以下、約50μm以下、約40μm以下、約30μm以下、約20μm以下、約10μm以下の、または、より小さい断面寸法(例えば、幅または直径)を有している場合がある。
【0048】
いくつかの例では、チャネルの断面の寸法は、幅約100μm、深さ約100μmであり得る。いくつかの例では、チャネルの断面の寸法は、幅約100μm、深さ約80μmであり得る。いくつかの例では、チャネルの断面の寸法は、幅約100μm、深さ約60μmであり得る。いくつかの例では、チャネルの断面の寸法は、幅約100μm、深さ約40μmであり得る。いくつかの例では、チャネルの断面の寸法は、幅約100μm、深さ約20μmであり得る。いくつかの例では、チャネルの断面の寸法は、幅約100μm、深さ約10μmであり得る。いくつかの例では、チャネルの断面の寸法は、幅約80μm、深さ約100μmであり得る。いくつかの例では、チャネルの断面の寸法は、幅約60μm、深さ約100μmであり得る。いくつかの例では、チャネルの断面の寸法は、幅約40μm、深さ約100μmであり得る。いくつかの例では、チャネルの断面の寸法は、幅約20μm、深さ約100μmであり得る。いくつかの例では、チャネルの断面の寸法は、幅約10μm、深さ約100μmであり得る。いくつかの例では、チャネルの断面の寸法は、幅約80μm、深さ約80μmであり得る。いくつかの例では、チャネルの断面の寸法は、幅約60μm、深さ約60μmであり得る。いくつかの例では、チャネルの断面の寸法は、幅約40μm、深さ約40μmであり得る。いくつかの例では、チャネルの断面の寸法は、幅約20μm、深さ約20μmであり得る。いくつかの例では、チャネルの断面の寸法は、幅約10μm、深さ約10μmであり得る。
【0049】
チャネルの断面形状は、限定されないが、円形、楕円形、三角形、正方形、または長方形を含む、任意の適切な断面形状であり得る。チャネルの断面積は、チャネルの長さに沿って一定であり得る。代替的に、または付加的に、チャネルの断面積は、チャネルの長さに沿って異なってもよい。チャネルの断面積は、約50%から150%、約60%から125%、約70%から120%、約80%から115%、約90%から110%、約95%から100%、または約98%から102%に及び得る。チャネルの断面積は、約10,000平方マイクロメートル(μm)以下、約7,500μm以下、約5,000μm以下、約2,500μm以下、約1,000μm以下、約750μm、約500μm以下、約400μm以下、約300μm以下、約200μm以下、約100μm以下であるか、またはより小さい場合がある。
【0050】
チャネルは、単一の入口または複数の入口を有する場合がある。入口(複数可)は、およびは同じ直径を有する場合も、異なる直径を有する場合もある。入口(複数可)は、約2.5ミリメートル(mm)以下、約2mm以下、約 1.5mm以下、約1mm以下、約0.5mm以下の、または、より小さい直径を有する場合がある。
【0051】
デバイスは、複数のチャンバを含み得る。複数のチャンバは、チャンバのアレイであり得る。デバイスは、チャンバの単一のアレイ、または各アレイが他のアレイから流体的に隔離された、チャンバの複数のアレイを含む場合がある。チャンバのアレイは、一列に、グリッド構成で、交互するパターンで、または他のいかなる構成でも、配置され得る。マイクロ流体デバイスは、1、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、またはそれより多くの、チャンバ・アレイを有し得る。チャンバのアレイは、同一であっても、異なっていてもよい(例えば、チャンバの異なる数または構成を有する)。チャンバのアレイは、すべて同じ外部寸法(すなわち、チャンバのアレイの全ての部分を囲む、チャンバのアレイの長さおよび幅)を有してもよく、または、チャンバのアレイは、異なる外部寸法を有してもよい。チャンバのアレイは、約100mm以下、約75mm以下、約50mm以下、約40mm以下、約30mm以下、約20mm以下、約10mm以下、約8mm以下、約6mm以下、約4mm以下、約2mm以下、約1mm以下の、または、より小さい幅を有する場合がある。チャンバのアレイは、約50mm以下、約40mm以下、約30mm以下、約20mm以下、約10mm以下、約8mm以下、約6mm以下、約4mm以下、約2mm以下、約1mm以下の、または、より小さい長寸法を有する場合がある。幅は、約1mmから100mmまで、または10mmから50mmまでであってもよい。長さは、約1mmから50mmまで、または5mmから20mmまでであってもよい。
【0052】
チャンバのアレイは、約1,000以上のチャンバ、約5,000のチャンバ、約10,000のチャンバ、約20,000のチャンバ、約30,000のチャンバ、約40,000のチャンバ、約50,000のチャンバ、約100,000のチャンバ、またはそれより多くのチャンバを有する場合がある。一例では、マイクロ流体デバイスは、約10,000から30,000までのチャンバを有する場合がある。別の例では、マイクロ流体デバイスは、約15,000から25,000までのチャンバを有する場合がある。チャンバは、円筒形、半球形、または円筒形もしくは半球形の組み合わせであってもよい。代替的に、または付加的に、チャンバは立方体の形状であってもよい。チャンバは、約500μm以下、約250μm以下、約100μm以下、約80μm以下、約60μm以下、約30μm以下、約15μm以下の、または、より小さい断面寸法を有する場合がある。一例では、チャンバは、約250μm以下の断面寸法(例えば、直径または辺長)を有する。別の例では、チャンバは、約100μm以下の断面寸法(例えば、直径または辺長)を有する。別の例では、チャンバは、約50μm以下の断面寸法(例えば、直径または辺長)を有する。
【0053】
チャンバの深さは、約500μm以下、約250μm以下、約100μm以下、約80μm以下、約60μm以下、約30μm以下、約15μm以下の、または、より小さい場合がある。一例では、チャンバは、約30μmの断面寸法と約100μmの深さを有する場合がある。別の例では、チャンバは、約35μmの断面寸法と約80μmの深さを有する場合がある。別の例では、チャンバは、約40μmの断面寸法と約70μmの深さを有する場合がある。別の例では、チャンバは、約50μmの断面寸法と約60μmの深さを有する場合がある。別の例では、チャンバは、約60μmの断面寸法と約40μmの深さを有する場合がある。別の例では、チャンバは、約80μmの断面寸法と約35μmの深さを有する場合がある。別の例では、チャンバは、約100μmの断面寸法と約30μmの深さを有する場合がある。別の例では、チャンバとチャネルは同じ深さを有する。代替的な一実施形態では、チャンバとチャネルは異なる深さを有する。
【0054】
チャンバは、いかなる容積を有してもよい。チャンバは、同じ容積を有してもよく、または、容積はマイクロ流体デバイスにわたって、異なってもよい。チャンバは、約1000ピコリットル(pL)以下、約900pL以下、約800pL以下、約700pL以下、約600pL以下、約500pL以下、約400pL以下、約300pL以下、約200pL以下、約100pL以下、約75pL以下、約50pL以下、約25pL以下、またはより少ないピコリットルの容積を有する場合がある。チャンバは、約25pLから50pLまでの、約25pLから75pLまでの、約25pLから100pLまでの、約25pLから200pLまでの、約25pLから300pLまでの、約25pLから400pLまでの、約25pLから500pLまでの、約25pLから600pLまでの、約25pLから700pLまでの、約25pLから800pLまでの、約25pLから900pLまでの、または、約25pLから1000pLまでの容積を有する場合がある。一例では、チャンバは、250pL以下の容積を有する。別の例では、チャンバは、約150pL以下の容積を有する。
【0055】
チャネルの容積は、チャンバの全容積以下であっても、以上であってもよい。一例では、チャネルの容積は、チャンバの全容積より小さい。チャネルの容積は、チャンバの全容積の95%以下、90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下の、またはより小さい容積を有する場合がある。
【0056】
デバイスは、チャネルとチャンバの間に配置された吸い上げ開口部をさらに含み得る。吸い上げ開口部は、チャネルを複数のチャンバに接続する複数の吸い上げ開口部の1つであり得る。ここで吸い上げ開口部は、チャネルとチャンバの間で流体連通を提供するように構成される。吸い上げ開口部の長さは、デバイス(例えば、マイクロ流体デバイス)にわたって、一定でも、異なっていてもよい。吸い上げ開口部は、約150以下、約100μm以下、約50μm以下、約25μm以下、約10μm以下、約5μm以下の、または、より小さい長寸法を有する場合がある。吸い上げ開口部の深さは、約50μm以下、約25μm以下、約10μm以下、約5μm以下であるか、または、より小さい場合がある。吸い上げ開口部は、約50μm以下、約40μm以下、約30μm以下、約20μm以下、約10μm以下、約5μm以下の、または、より小さい断面寸法を有する場合がある。
【0057】
吸い上げ開口部の断面形状は、限定されないが、円形、楕円形、三角形、正方形、または長方形を含む、任意の適切な断面形状であることもある。吸い上げ開口部の断面積は、吸い上げ開口部の長さに沿って一定であってもよい。代替的に、または付加的に、吸い上げ開口部の断面積は、吸い上げ開口部の長さに沿って異なってもよい。吸い上げ開口部の断面積は、チャネルへの接続部において、チャンバへの接続部における吸い上げ開口部の断面積よりも大きい場合がある。代替的に、チャンバへの接続部における吸い上げ開口部の断面積は、チャネルへの接続部における吸い上げ開口部の断面積よりも大きい場合がある。吸い上げ開口部の断面積は、約50%から約150%、約60%から約125%、約70%から約120%、約80%から約115%、約90%から約110%、約95%から約100%、または約98%から約102%に及び得る。吸い上げ開口部の断面積は、約2,500μm以下、約1,000μm以下、約750μm、約500μm以下、約250μm以下、約100μm以下、約75μm以下、約50μm以下、約25μm以下であるか、またはより小さい場合がある。チャネルへの接続部における吸い上げ開口部の断面積は、チャネルの断面積以下であってもよい。チャネルへの接続部における吸い上げ開口部の断面積は、チャネルの断面積の約98%以下、約95%以下、約90%以下、約85%以下、約80%以下、約75%以下、約70%以下、約60%以下、約50%以下、約40%以下、約30%以下、約20%以下、約10%以下、約5%以下、約1%以下、約0.5%以下であるか、またはより小さい場合がある。吸い上げ開口部は、チャネルに実質的に垂直であり得る。代替的に、または付加的に、吸い上げ開口部は、チャネルに対して実質的に垂直ではない。吸い上げ開口部とチャネルの間の角は、少なくとも約5度、約10度、約15度、約20度、約30度、約40度、約50度、約60度、約70度、または、約90度であり得る。
【0058】
マイクロ流体デバイスは、チャネル、チャンバ、吸い上げ開口部、またはそのいかなる組合せの加圧ガス放出またはガス抜きを可能にするように構成され得る。加圧ガス放出またはガス抜きは、加圧ガス放出またはガス抜きを可能にするように構成されたフィルムまたは膜によって提供され得る。フィルムまたは膜は、圧力閾値を超えたガスに対して浸透性があり得る。フィルムまたは膜はなどの液体は、限定されないが、油または他の溶剤などの液体に対して浸透性がなくてもよい(例えば、不浸透性または実質的に不浸透性であってもよい)。チャネル、チャンバ、吸い上げ開口部、またはそれらのいずれかの組合せは、フィルムまたは膜を含み得る。一例では、チャンバはガス浸透性のフィルムまたは膜を含み、および、チャネルおよび/または吸い上げ開口部はガス浸透性のフィルムまたは膜を含まない。別の例では、チャンバおよび吸い上げ開口部はガス浸透性のフィルムまたは膜を含み、および、チャネルはガス浸透性のフィルムまたは膜を含まない。別の例では、チャンバ、チャネル、および吸い上げ開口部は、ガス浸透性のフィルムまたは膜を含む。
【0059】
フィルムまたは膜は、薄膜フィルムであり得る。フィルムまたは膜は、ポリマーであり得る。フィルムは、熱可塑性のフィルムまたは膜であり得る。フィルムまたは膜は、エラストマー材料を含まない場合がある。ガス浸透性のフィルムまたは膜は、流体流路、チャネル、チャンバ、またはそれらの任意の組合せを覆う場合がある。一例では、ガス浸透性のフィルムまたは膜は、チャンバを覆う。別の例では、ガス浸透性のフィルムまたは膜は、チャンバとチャネルを覆う。フィルムのガス透過性は、高圧によって誘発されてもよい。フィルムの厚みは、500マイクロメートル(μm)以下、約250μm以下、約200μm以下、約150μm以下、約100μm以下、約75μm以下、約50μm以下、約25μm以下の、または、より薄い、場合がある。一例では、フィルムまたは膜は、約100μm以下の厚みを有する。別の例では、フィルムまたは膜は、約50μm以下の厚みを有する。別の例では、フィルムまたは膜は、約25μm以下の厚みを有する。フィルムまたは膜の厚みは、約0.1μmから約200μmまで、約0.5μmから約150μmまで、または、約25μmから約100μmまで、であり得る。一例では、フィルムまたは膜の厚みは、約25μmから約100μmまでである。フィルムの厚さは、フィルムの製造可能性、フィルムの空気透過性、ガス抜きされる各チャンバまたは区画の容積、利用可能な圧力、および/またはデジタル化プロセスを完了するための時間により、選択されてもよい。
【0060】
フィルムまたは膜は、様々な適用圧力下での様々な浸透特性を利用するように構成され得る。例えば、薄膜フィルムは、第1の圧力差(例えば、低圧力)においてガス不浸透性であり、および第2の圧力差(例えば、高圧力)において少なくとも部分的にガス浸透性であり得る。第1の圧力差(例えば、低圧力差)は、約8ポンド平方インチ(psi)以下、6psi以下、4psi以下、2psi以下、1psi以下であるか、またはより少ない場合がある。一例では、フィルムまたは膜は、4psi未満の圧力差のガスに対して実質的に不浸透性である。第2の圧力差(例えば、高圧力差)は、約1psi以上、約2psi以上、約4psi以上、約6psi以上、約8psi以上、約10psi以上、約12psi以上、約14psi以上、約16psi以上、約20psi以上であるか、またはより大きい場合がある。一例では、フィルムまたは膜は、4psi以上の圧力において実質的にガス透過性である。生体試料を分析するための方法
【0061】
他の態様では、本開示は、生体試料を処理するための方法を提供する。方法は、デバイス(例えば、マイクロ流体デバイス)を提供する工程を含み得る。デバイスは、流体流路とチャンバを含み得る。流体流路は、チャネルと入口ポートを含み得る。流体流路は、出口ポートを含まない場合がある。チャンバは、チャネルと流体連通にあり得る。生体試料を含む溶液は、入口ポートからチャネルに導かれ得る。溶液の少なくとも一部は、チャネルからチャンバに導かれ得る。チャンバは、溶液および生体試料の処理中に、試料の前記一部を保持し得る。
【0062】
デバイスは、チャンバまたは複数のチャンバを含み得る。デバイスは、単一の入口ポートまたは複数の入口ポートを有する場合がある。一例では、デバイスは単一の入口ポートを含む。別の例では、デバイスは2つ以上の入口ポートを含む。デバイスは、本明細書の他の箇所に記載されるとおりであり得る。
【0063】
方法は、入口ポートからチャネルに溶液を導くために、入口ポートに単一の、または複数の圧力差を適用する工程をさらに含み得る。代替的に、または付加的に、デバイスは複数の入口ポートを含み、および、圧力差は複数の入口ポートに適用される場合がある。デバイス(例えば、マイクロ流体デバイス)の入口は、空圧ポンプ、真空源、またはコンプレッサなどの流体流モジュールと流体連通にあり得る。流体流モジュールは、入口に正または負の圧を供給し得る。流体流モジュールは、デバイスを試料で満たし、およびチャンバの中へ試料を分配する(例えば、デジタル化する)ために圧力差を適用し得る。代替的に、または付加的に、試料は本明細書の他の箇所に別記されるように、複数のチャンバの中へ分配され得る。試料を満たすこと、および分配することは、試料を分離するために、チャンバとチャネルとの間でバルブを使用することなく実施され得る。例えば、チャネルの充填は、入口ポート内の試料とチャネルとの間に圧力差を適用することにより実施され得る。この圧力差は、試料を加圧することにより、またはチャネルあるいはチャンバに真空を適用することにより達成され得る。チャンバを満たすこと、および溶液を分配することは、チャネルとチャンバとの間に圧力差を加えることにより実施され得る。このことは、入口ポートを介してチャネルを加圧することにより、またはチャンバに真空を適用することにより達成され得る。試料を含む溶液は、各チャンバが溶液の少なくとも一部を包含するように、チャンバに入る場合がある。
【0064】
いくつかの場合では、ある単一の圧力差は、生体試料を含む(関心の分子標的を含む)溶液をチャネルに送達するために用いられてもよく、および、同じ圧力差は、溶液でチャンバをデジタル化(すなわち、チャネルからチャンバまで溶液を送達)し続けるために、用いられていてもよい。さらに、前記単一の圧力差は、チャネルおよび/またはチャンバの加圧ガス放出またはガス抜きを可能にするために十分に高い場合がある。代替的に、または付加的に、チャネルに試料を含む溶液を送達するための圧力差は、第1の圧力差であり得る。チャネルからチャンバ(複数可)まで溶液を送達するための圧力差は、第2の圧力差であり得る。第1の圧力差および第2の圧力差は、同じであっても、異なっていてもよい。一例では、第2の圧力差は、第1の圧力差よりも大きい。あるいは、第2の圧力差は、第1の圧力差よりも小さくてもよい。第1の圧力差、第2の圧力差、またはその両方は、チャネルおよび/またはチャンバの加圧ガス放出またはガス抜きを可能にするように、十分に高い場合がある。いくつかの場合、チャネルおよび/またはチャンバの加圧ガス放出またはガス抜きを可能にするように、第3の圧力差が使用される場合がある。チャネルまたはチャンバ(複数可)の加圧ガス放出またはガス抜きは、フィルムまたは膜によって可能にされ得る。例えば、圧力閾値が到達された時、フィルムまたは膜は、ガスが、チャンバおよび/またはチャネルから、フィルムまたは膜を通って、チャンバおよび/またはチャネルの外部環境に移動することを可能にする場合がある。
【0065】
フィルムまたは膜は、様々な適用圧力下での様々な浸透特性を利用するように構成され得る。例えば、フィルムまたは膜は、第1の圧力差(例えば、低圧力)においてガス不浸透性であり、および第2の圧力差(例えば、高圧力)においてガス浸透性であり得る。第1の圧力差および第2の圧力差は同じでも、異なっていてもよい。マイクロ流体デバイスを充填する間、入口ポートの圧力はチャネルの圧力より高く、入口ポートにおける溶液がチャネルに入ることを可能にする場合がある。第1の圧力差(例えば、低圧力差)は、約8psi以下、約6psi以下、約4psi以下、約2psi以下、約1psi以下であるか、またはより少ない場合がある。一例では、第1の圧力差は約1psiから8psiまでであり得る。別の例では、第1の圧力差は約1psiから6psiまでであり得る。別の例では、第1の圧力差は約1psiから4psiまでであり得る。デバイスのチャンバは、入口とチャンバとの間の第2の圧力差を適用することにより満たされ得る。第2の圧力差は、流体をチャネルからチャンバへと導き、および、ガスをチャネルおよび/またはチャンバから、チャネルおよび/またはチャンバに対して外部にある環境へとガスを導く、場合がある。第2の圧力差は、約1psi以上、約2psi以上、約4psi以上、約6psi以上、約8psi以上、約10psi以上、約12psi以上、約14psi以上、約16psi以上、約20psi以上であるか、またはより大きい場合がある。一例では、第2の圧力差は、4psiよりも大きい。一例では、第2の圧力差は、8psiよりも大きい。約20分以下、約15分、約10分、約5分、約3分、約2分、約1分以下の、またはより少ない時間、第1の圧力差、第2の圧力差、またはその組合せを適用することによって、マイクロ流体デバイスは満たされ、および試料は分配される、場合がある。
【0066】
試料は、生体試料を含む水溶液と不混和性のガスまたは流体でチャネルを再充填することによってチャネルから過剰試料を取り除くことにより、分配されてもよい。不混和性の流体は、最初に溶液がチャネルに入り、続いて不混和性の流体が入るように、試料を含む溶液の提供の後で提供される場合がある。不混和性の流体は、水性の流体に混合しない任意の流体であり得る。ガスは、酸素、窒素、二酸化炭素、空気、貴ガス、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。不混和性の流体は、油または有機溶媒であり得る。例えば、不混和性の流体は、シリコーン油、またはシリコーン油と比較して同様の特性を有する他のタイプの油/有機溶媒であり得る。あるいは、チャネルから試料を除去することは、1つのチャンバの中の試薬が、吸い上げ開口部を介して、チャネルの中へ、および他のチャンバの中へ拡散することを防止し得る。チャネル内の試料は、試料がチャネル内に残らないように、チャンバの中へ試料を分配することにより、または、過剰試料をチャネルから取り除くことにより、チャネルから取り除かれる。
【0067】
チャネルからチャンバまたは複数のチャンバに溶液を導くことは、試料を分配し得る。デバイスは、残余溶液がチャネルおよび/または吸い上げ開口部に残らないように(例えば、試料のデッドボリュームがまったく又は実質的にないように)、チャンバの中へと試料を分割すること、または試料をデジタル化することを、可能にする場合がある。試料を含む溶液は、試料デッドボリュームが0であるように、分配される(例えば、デバイスへの試料および試薬のインプットはすべて、チャンバ内に流体的に隔離される)場合があり、そのことは試料と試薬の浪費を防止または縮小し得る。代替的に、または付加的に、試料は、チャンバの容積より小さい体積の試料を提供することによって分配されてもよい。チャネルの中へ充填されたすべての試料がチャンバに分配されるように、チャネルの容積はチャンバの全容積より小さい場合がある。試料を含む溶液の全体積は、チャンバの全容積より小さい場合がある。溶液の体積は、チャンバの全容積の100%、99%、98%、95%、90%、85%、80%、またはそれ未満であり得る。溶液は、入口ポートに加えられるガスまたは不混和性の流体と同時に、またはそれらに先立って、入口ポートに加えられ得る。ガスまたは不混和性の流体の体積は、チャンバを流体的に分離するために、チャネルの容積以上であり得る。小量のガスまたは不混和性の流体は、吸い上げ開口部またはチャンバに進入してもよい。
【0068】
図1Aから図1Fは、マイクロ流体デバイスを満たすための方法の例を概略的に図解する。図1Aは、試料および不混和性の流体をマイクロ流体デバイスへと充填することを概略的に図解する。マイクロ流体デバイスは、入力ポート(101)、チャネル(102)、およびチャンバ(103)を含む。チャネルおよびマイクロ流体デバイスのチャンバは、空気(104)で満たされる。試料(105)は入力ポート(101)に導かれるか、または注入される。図1Bは、試料(105)をチャネル中に充填するためにマイクロ流体デバイスを加圧することを概略的に図解する。この例では、マイクロ流体デバイスは、ループ構成にあるチャネルの両端部に接続された単一の入口ポートを含む。圧力が加えられると、試料(105)は、チャネルの両方の端部を同時に介して導かれる。図1Cは、流体流路をガス抜きし、および、チャネル中に試料を充填し続けるための、継続される加圧を概略的に図解する。試料(105)がチャンバ(103)に入ると、チャネル(102)の一部は、油またはガスなどの不混和性の流体(106)で充填されるが、その不混和性の流体(106)は、試料と同時に、または連続して(例えば、試料の次に不混和性の流体)加えられ得る。試料(105)および不混和性の流体(106)がチャネルとチャンバを満たすと、空気(104はフィルムまたは膜を通して、およびデバイスの外部から導かれる。図1Dは、試料(105)のチャンバ(103)への部分的なデジタル化と、チャネル(102)への不混和性流体(106)の継続される充填と、を概略的に例示する。試料(105)がチャンバ(103)に入ると、チャンバ(103)内の空気(104)はフィルムまたは膜を通して排出される。図1Eは、さらなるデジタル化および空気(104)の移動を概略的に図解する。不混和性の流体(106)が両端部からチャネルを満たすと、試料はチャンバ(103)の中へ導かれ、および、チャネル内の試料(105)の体積は減少される。図1Fは、試料(105)の完全なデジタル化を概略的に例示し、ここで不混和性の流体(106)はチャネル(102)全体を満たし、および試料(105)がチャンバ(103)内に隔離される。別の例では、デバイスは複数の入口ポートを有し、および、試料と不混和性の流体はチャネルとチャンバを満たすために各ポートに同時に注入される。
【0069】
図2Aから図2Eは、マイクロ流体デバイスにおける試料デジタル化の画像の例を示す。図2Aは、2つの入口ポートがあるマイクロ流体デバイスを示す。試料および不混和性の流体、この例では油が、両方の入口ポートに同時に注入される。図2Bは、マイクロ流体デバイスへの、試料と油の加圧による充填を示す。両方の入口ポートは、デバイスのチャネルの中に試料と油を均等に導くために同時に加圧される。図2C図2Dは、デバイスのチャネルとチャンバを次第に満たす試料と油を示す。図2Eは、デバイス内におけるデジタル化または試料の分割の完了後のデバイスの例を示す。
【0070】
図3は、試料のデジタル化のための方法の例を概略的に図解する。試料および不混和性の流体は、マイクロ流体デバイスの入口ポート(複数可)にて供給され得る(301)。入口ポート(複数可)は、チャネルに試料および不混和性の流体を充填するために、加圧され得る(302)。入口ポートは、チャンバの中に試料を充填し、およびチャネルを不混和性の流体で満たして、試料の完全なデジタル化を提供するために、さらに加圧され得る(304)。
【0071】
試料の分配は、試薬内の指示薬の存在により確認されることもある。指示薬は、検出可能な部分を含む分子を含むこともある。検出可能な部分は、放射性種、蛍光標識、化学発光標識、酵素標識、比色標識、またはそれらの任意の組み合わせを含むこともある。放射性種の非限定的な例は、H、14C、22Na、32P、33P、35S、42K、45Ca、59Fe、123I、124I、125I、131I、または203Hgを含む。蛍光標識の非限定的な例は、蛍光タンパク質、光学活性な色素(例えば蛍光色素)、有機金属のフルオロフォア、またはそれらの任意の組み合わせを含む。化学発光標識の非限定的な例は、ウミホタル(Cypridina)ルシフェラーゼ、ガウシア(Gaussia)ルシフェラーゼ、ウミシイタケ(Renilla)ルシフェラーゼ、およびホタル(Firefly)ルシフェラーゼなどのルシフェラーゼのクラスの酵素を含む。酵素標識の非限定的な例は、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ(AP)、βガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、または他のタイプの標識を含む。
【0072】
指示微粒子は蛍光分子であり得る。蛍光分子は、蛍光タンパク質、蛍光色素、および有機金属のフルオロフォアを含むこともある。いくつかの実施形態では、指示薬分子はタンパク質のフルオロフォアである。タンパク質フルオロフォアは、緑色蛍光タンパク質、を含むこともある。(GFP、スペクトルの緑色領域において蛍光を発し、一般的には500-550ナノメートルの波長を有する光を放射する蛍光タンパク質)シアン蛍光蛋白質(CFPs、スペクトルの緑色領域において蛍光を発し、一般的には450-500ナノメートルの波長を有する光を放射する蛍光タンパク質)、赤色蛍光タンパク質(RFP、スペクトルの赤色領域において蛍光を発し、一般的には600-650ナノメートルの波長を有する光を放射する蛍光タンパク質)タンパク質のフルオロフォアの非制限的な例は、AcGFP、AcGFP1、AmCyan、AmCyan1、AQ143、AsRed2、Azami Green、Azurite、BFP、Cerulean、CFP、CGFP、Citrine、copGFP、CyPet、dKeima-Tandem、DsRed、dsRed-Express、DsRed-Monomer、DsRed2、dTomato、dTomato-Tandem、EBFP、EBFP2、ECFP、EGFP、Emerald、EosFP、EYFP、GFP、HcRed-Tandem、HcRed1、JRed、Katuska、Kusabira Orange、Kusabira Orange2、mApple、mBanana、mCerulean、mCFP、mCherry、mCitrine、mECFP、mEmerald、mGrape1、mGrape2、mHoneydew、Midori-Ishi Cyan、mKeima、mKO、mOrange、mOrange2、mPlum、mRaspberry、mRFP1、mRuby、mStrawberry、mTagBFP、mTangerine、mTeal、mTomato、mTurquoise、mWasabi、PhiYFP、ReAsH、Sapphire、Superfolder GFP、T-Sapphire、TagCFP、TagGFP、TagRFP、TagRFP-T、TagYFP、tdTomato、Topaz、TurboGFP、Venus、YFP、YPet、ZsGreen、およびZsYellow1を含む。
【0073】
指示薬分子は蛍光色素であり得る。蛍光色素の非制限的な例は、サイバーグリーン、SYBR blue、DAPI、ヨウ化プロピジウム(propidium iodine)、Hoeste、SYBR gold、臭化エチジウム、アクリジン、プロフラビン、アクリジンオレンジ、アクリフラビン、フルオロクマニン(fluorcoumanin)、エリプチシン、ダウノマイシン、クロロキン、ジスタマイシンD、クロモマイシン、ホミジウム、ミトラマイシン、ルテニウムポリピリジル、アントラマイシン、フェナントリジンおよびアクリジン、臭化エチジウム、ヨウ化プロピジウム、ヨウ化ヘキシジウム(hexidium iodide)、ジヒドロエチジウム、エチジウムホモダイマー-1およびエチジウムホモダイマー-2、エチジウムモノアジド、ならびにACMA、Hoechst 33258、Hoechst 33342、Hoechst 34580、DAPI、アクリジンオレンジ、7-AAD、アクチノマイシンD、LDS751、ヒドロキシスチルバミジン、SYTOX Blue、SYTOX Green、SYTOX Orange、POPO-1、POPO-3、YOYO-1、YOYO-3、TOTO-1、TOTO-3、JOJO-1、LOLO-1、BOBO-1、BOBO-3、PO-PRO-1、PO-PRO-3、BO-PRO-1、BO-PRO-3、TO-PRO-1、TO-PRO-3、TO-PRO-5、JO-PRO-1、LO-PRO-1、YO-PRO-1、YO-PRO-3、PicoGreen、OliGreen、RiboGreen、SYBR gold、サイバーグリーンI、サイバーグリーンII、SYBR DX、SYTO-40、-41、-42、-43、-44、-45(青)、SYTO-13、-16、-24、-21、-23、-12、-11、-20、-22、-15、-14、-25(緑)、SYTO-81、-80、-82、-83、-84、-85(オレンジ)、SYTO-64、-17、-59、-61、-62、-60、-63(赤)、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC)、ローダミン、テトラメチルローダミン、Rフィコエリトリン、Cy-2、Cy-3、Cy-3.5、Cy-5、Cy5.5、Cy-7、Texas Red、Phar-Red、アロフィコシアニン(APC)、Sybr Green I、Sybr Green II、Sybr Gold、CellTracker Green、7-AAD、エチジウムホモダイマーI、エチジウムホモダイマーII、エチジウムホモダイマーIII、臭化エチジウム、ウンベリフェロン、エオシン、緑色蛍光タンパク質、エリトロシン、クマリン、メチルクマリン、ピレン、マラカイトグリーン、スチルベン、ルシファーイエロー、カスケードブルー(cascade blue)、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン(dichlorotriazinylamine fluorescein)、ダンシルクロリド、ユウロピウムおよびテルビウムを含むものなどの蛍光性ランタニド錯体、カルボキシテトラクロロフルオレセイン、5および/または6-カルボキシフルオレセイン(FAM)、5-(または6-)ヨードアセトアミドフルオレセイン、5-{[2(および3)-5-(アセチルメルカプト)-スクシニル]アミノ}フルオレセイン(SAMSA-フルオレセイン)、リサミンローダミンBスルホニルクロリド、5および/または6カルボキシローダミン(ROX)、7-アミノ-メチル-クマリンおよび7-アミノ-4-メチルクマリン-3-酢酸(AMCA)、BODIPYフルオロフォア、8-メトキシピレン-1,3,6-トリスルホン酸三ナトリウム塩、3,6-二スルホン酸塩-4-アミノ-ナフタルイミド、フィコビリタンパク質、AlexaFluor350、405、430、488、532、546、555、568、594、610、633、635、647、660、680、700、750、および790色素、DyLight350、405、488、550、594、633、650、680、800色素、または他のフルオロフォア、を含む。
【0074】
指示薬分子は有機金属のフルオロフォアであり得る。有機金属のフルオロフォアの非限定的な例は、ランタニドイオンキレートを含み、ランタニドイオンキレートの非限定的な例は、トリス(ジベンゾイルメタン)モノ(1,10-フェナントロリン)ユウロピウム(lll)、トリス(ジベンゾイルメタン)モノ(5-アミノ-1,10-フェナントロリン)ユウロピウム(lll)、およびLumi4-Tbクリプテートを含む。
【0075】
図4は、マイクロ流体デバイスを使用するデジタルポリメラーゼチェーンリアクション(dPCR)のための方法の例を概略的に図解する。試料と試薬は図2A-2Eで示されるように分配される場合がある(401)。試料と試薬は、チャンバ内の試薬においてPCR反応を実行するために熱サイクル(402)にかけられる。熱サイクルは、例えばフラットブロックサーマルサイクラー(flat block thermal cycler)を使用して実施され得る。画像の取得(403)は、どのチャンバが成功裡にPCR反応を実行したか判定するために実施され得る。画像の取得は、例えば、3色プローブ検出ユニットを使用して実施されることもある。ポアソンの統計学は、(403)で求められた陽性のチャンバの未加工の数値を核酸濃度に変換するために、チャンバの計算について適用され得る(404)。
【0076】
方法は、溶液の1つ以上の構成要素、生体試料の1つ以上の構成要素、または生体試料の1つ以上の構成要素との反応、を検知する工程をさらに含み得る。溶液の1つ以上の構成要素、生体試料の1つ以上の構成要素、または反応を検知する工程は、チャンバを画像化することを含み得る。マイクロ流体デバイスの画像が撮られ得る。単一のチャンバ、チャンバの1つのアレイ、またはチャンバの多数のアレイの画像が同時に撮られてもよい。画像はマイクロ流体デバイスの本体を介して撮られ得る。画像は、マイクロ流体デバイスのフィルムまたは膜を介して撮られ得る。一例では、画像は、マイクロ流体デバイスの本体および薄膜の両方を介して撮られる。マイクロ流体デバイスの本体は、実質的に光学的に透明であり得る。あるいは、マイクロ流体デバイスの本体は、実質的に光学的に不透明であり得る。一例では、フィルムまたは膜は、実質的に光学的に透明であり得る。画像は、マイクロ流体デバイスを試料で充填する前に撮られ得る。画像は、マイクロ流体デバイスを試料で充填した後に撮られることも。画像は、マイクロ流体デバイスを試料で充填している間に撮られ得る。画像は、試料分配を確認するために撮られてもよい。画像は、反応の産物をモニタリングするために反応の間に撮られてもよい。一例では、反応の産物は増幅産物を含む。画像は所定の間隔で撮られ得る。代替的に、または付加的に、マイクロ流体デバイスのビデオが撮られてもよい。所定の間隔は、反応の間、少なくとも約300秒、240秒、180秒、120秒、90秒、60秒、30秒、15秒、10秒、5秒、4秒、3秒、2秒、1秒ごとに、または、より頻繁に画像を撮ることを含み得る。
【0077】
生体試料は、限定されないが、核酸分子、タンパク質、酵素、抗体、または他の生体分子などの、任意の生体検体であり得る。例えば、生体試料は、1つ以上の核酸分子を含む場合がある。核酸分子を処理することは、核酸分子を増幅するためにチャンバ(複数可)を熱サイクルする工程をさらに含む場合がある。方法は、チャネルまたはチャンバ(複数可)の温度を制御する工程をさらに含む場合がある。マイクロ流体デバイスを使用するための方法は、核酸試料の増幅をさらに含む場合がある。マイクロ流体デバイスは、核酸分子、増幅反応に使用される成分、指示薬分子、および増幅プローブを含む増幅試薬で充填されることもある。増幅は、複数のチャンバを熱サイクルすることにより実施されることもある。核酸増幅の検出は、マイクロ流体デバイスのチャンバを画像化することにより実施されることもある。核酸分子は、核酸分子が成功裡に増幅されたチャンバを数えて、ポアソン統計を適用することにより、定量化されることもある。いくつかの実施形態では、核酸の増幅および定量化は、単一の統合されたユニットにおいて実施されることもある。
【0078】
様々な核酸増幅反応は、増幅産物を生成するために、試料中の核酸分子を増幅するように使用され得る。核酸標的の増幅は、一次関数的、指数関数的、またはそれらの組み合わせであり得る。核酸の増幅方法の非限定的な例は、プライマー伸長、ポリメラーゼ連鎖反応、逆転写、等温増幅、リガーゼ連鎖反応、ヘリカーゼ依存性増幅、不斉増幅、ローリングサークル増幅、および多置換増幅を含む。いくつかの実施形態では、増幅産物はDNAまたはRNAである。DNA増幅を対象とする実施形態に関しては、いかなるDNA増幅の方法も利用され得る。DNA増幅の方法は、限定されないが、PCR、リアルタイムPCR、アセンブリPCR、非対称PCR、デジタルPCR、ダイヤルアウトPCR(dial-out PCR)、ヘリカーゼ依存性PCR(helicase-dependent PCR)、ネステッドPCR、ホットスタートPCR、逆PCR、メチル化特異的PCR、ミニプライマーPCR(miniprimer PCR)、マルチプレックスPCR、重複伸長PCR、熱非対称インターレースPCR(thermal asymmetric interlaced PCR)、タッチダウンPCR、およびリガーゼ連鎖反応を含む。いくつかの実施形態では、DNA増幅は、一次的、指数関数的、またはそれらの任意の組み合わせである。いくつかの実施形態では、DNA増幅はデジタルPCR(dPCR)を用いて達成される。
【0079】
核酸増幅に使用される試薬は、重合酵素、リバースプライマー、フォワードプライマー、および増幅プローブを含むこともある。重合酵素の例は、限定されることなく、核酸ポリメラーゼ、転写酵素、またはリガーゼ(すなわち結合の形成を触媒する酵素)を含む。重合酵素は、自然に発生している、または合成されうる。ポリメラーゼの例は、DNAポリメラーゼ、および、RNAポリメラーゼ、熱安定性ポリメラーゼ、野生型ポリメラーゼ、改変されたポリメラーゼ、大腸菌(E.coli)DNAポリメラーゼI、T7 DNAポリメラーゼ、バクテリオファージT4 DNAポリメラーゼ、Φ29(phi29)DNAポリメラーゼ、Taqポリメラーゼ、Tthポリメラーゼ、Tliポリメラーゼ、Pfuポリメラーゼ、Pwoポリメラーゼ、VENTポリメラーゼ、DEEPVENTポリメラーゼ、Ex-Taqポリメラーゼ、LA-Tawポリメラーゼ、Ssoポリメラーゼ、Pocポリメラーゼ、Pabポリメラーゼ、Mthポリメラーゼ、ES4ポリメラーゼ、Truポリメラーゼ、Tacポリメラーゼ、Tneポリメラーゼ、Tmaポリメラーゼ、Tcaポリメラーゼ、Tihポリメラーゼ、Tfiポリメラーゼ、Platinum Taqポリメラーゼ、Tbrポリメラーゼ、Tflポリメラーゼ、PfuTuboポリメラーゼ、Pyrobestポリメラーゼ、KODポリメラーゼ、Bstポリメラーゼ、Sacポリメラーゼ、3’-5’エキソヌクレアーゼ活性を有するクレノウ断片ポリメラーゼ、ならびにそれらの変異体、修飾された産物、および誘導体を含む。ホットスタートポリメラーゼに関しては、約2分間から10分間、約92℃から95℃の温度での、変性サイクルが使用され得る。
【0080】
増幅プローブは配列特異的オリゴヌクレオチドプローブであり得る。増幅プローブは、増幅産物とハイブリダイズされたときに、光学活性であってもよい。いくつかの実施形態では、増幅プローブは、核酸増幅が進行するときにのみ、検知可能である。光学信号の強度は、増幅産物の量に比例し得る。プローブは、本明細書に記載された光学活性な検出可能な部分(例えば色素)のいずかに結合されることもあり、さらにまた、関連する色素の光学活性を遮断することができるクエンチャーを含むこともある。検出可能な部分として有用でありうるプローブの非限定的な例は、TaqManプローブ、TaqMan Tamaraプローブ、TaqMan MGBプローブ、Lionプローブ(Lion probes)、ロックド核酸プローブ、または分子ビーコンを含む。プローブの光学活性を遮断するのに有用でありうるクエンチャーの非限定的な例は、Black Hole Quencher(BHQ)、Iowa Black FQクエンチャーおよびIowa Black RQクエンチャー、または内部ZENクエンチャーを含む。代替的に、または付加的に、プローブまたはクエンチャーは、本開示の方法のコンテキストにおいて有用な、任意のプローブであってよい。
【0081】
増幅プローブは二重標識の蛍光プローブである。二重標識プローブは、核酸に結合された、蛍光レポーターおよび蛍光クエンチャーを含むこともある。蛍光レポーターおよび蛍光クエンチャーは互いに近接して位置付けられることもある。蛍光レポーターおよび蛍光クエンチャーの接近によって、蛍光レポーターの光学活性が遮断されることもある。二重標識プローブは増幅される予定の核酸分子に対して結合することもある。増幅中に、蛍光レポーターおよび蛍光クエンチャーは、ポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ活性により切断されることもある。増幅プローブからの蛍光レポーターおよび蛍光クエンチャーを切断すると、蛍光レポーターはその光学活性を回復し、検出を可能にし得る。二重標識の蛍光プローブは、少なくとも約450ナノメートル(nm)、500nm、525nm、550nm、575nm、600nm、625nm、650nm、675nm、700nm、またはより高い励起波長の最大値、または約500nm、525nm、550nm、575nm、600nm、625nm、650nm、675nm、700nm、またはより高い発光波長の最大値を有する5’蛍光レポーターを含む場合がある。二重標識の蛍光プローブはまた、3’蛍光クエンチャーを含むこともある。蛍光クエンチャーは、約380nmから550nm、390nmから625nm、470nmから560nm、480nmからび580nm、550nmから650nm、550nmから750nm、または620nmから730nmの蛍光の発光波長を消光することもある。
【0082】
核酸増幅は、マイクロ流体デバイスのチャンバを熱サイクルすることにより実施されることもある。熱サイクルは、マイクロ流体デバイスに加熱または冷却を施すことによって、マイクロ流体デバイスの温度を制御することを含むこともある。加熱方法もしくは冷却方法は、抵抗加熱もしくは抵抗冷却、放射加熱もしくは放射冷却、伝導加熱もしくは伝導冷却、対流加熱もしくは対流冷却、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。熱サイクルは、ある継続時間にわたって核酸分子を変性させるほど十分高い温度でチャンバをインキュベートし、その後、伸長の継続時間にわたって伸長温度でチャンバをインキュベートするサイクルを含むこともある。変性温度は、例えば、特定の核酸試料、使用される試薬、および反応条件に依存して変動することもある。変性温度は、約80℃~110℃、85℃~約105℃、90℃~約100℃、90℃~約98℃、92℃~約95℃、であり得る。変性温度は少なくとも約80℃、81℃、82℃、83℃、84℃、85℃、86℃、87℃、88℃、89℃、90℃、91℃、92℃、93℃、94℃、95℃、96℃、97℃、98℃、99℃、100℃、またはより高い温度であり得る。
【0083】
変性のための継続時間は、例えば、特定の核酸試料、使用される試薬、およびの反応条件に依存して変動することもある。変性のための継続時間は、約300秒以下、240秒以下、180秒以下、120秒以下、90秒以下、60秒以下、55秒以下、50秒以下、45秒以下、40秒以下、35秒以下、30秒以下、25秒以下、20秒以下、15秒以下、10秒以下、5秒以下、2秒以下、または約1秒以下であってもよい。
【0084】
伸長温度は、例えば、特定の核酸試料、使用される試薬、および反応条件に依存して変動することもある。伸長温度は、約30℃~80℃、35℃~75℃、45℃~65℃、55℃~65℃、40℃~60℃、であり得る。伸長温度は、少なくとも約35℃、36℃、37℃、38℃、39℃、40℃、41℃、42℃、43℃、44℃、45℃、46℃、47℃、48℃、49℃、50℃、51℃、52℃、53℃、54℃、55℃、56℃、57℃、58℃、59℃、60℃、61℃、62℃、63℃、64℃、65℃、66℃、67℃、68℃、69℃、70℃、71℃、72℃、73℃、74℃、75℃、76℃、77℃、78℃、79℃、または約80℃温度であり得る。
【0085】
伸長時間は、例えば、特定の核酸試料、使用される試薬、およびの反応条件に依存して変動することもある。いくつかの実施形態では、伸長のための継続時間は、約300秒以下、240秒以下、180秒以下、120秒以下、90秒以下、60秒以下、55秒以下、50秒以下、45秒以下、40秒以下、35秒以下、30秒以下、25秒以下、20秒以下、15秒以下、10秒以下、5秒以下、2秒以下、または約1秒以下であってもよい。代替的な一実施形態では、伸長のための継続時間は、わずか約120秒、90秒、60秒、55秒、50秒、45秒、40秒、35秒、30秒、25秒、20秒、15秒、10秒、5秒、2秒、または約1秒であってもよい。一例では、伸長反応の継続時間は、約10秒以下である。
【0086】
核酸増幅は、熱サイクルの多数のサイクルを含むこともある。任意の適切な数のサイクルが実施されうる。サイクル数は、約5、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100サイクル、またはそれを超えるサイクルよりも多い場合がある。実施されるサイクルの数は、検出可能な増幅産物を得るのに必要なサイクルの数に依存することもある。例えば、dPCR中に核酸増幅を検知するのに必要なサイクル数は、約100サイクル以下、90サイクル以下、80サイクル以下、70サイクル以下、60サイクル以下、50サイクル以下、40サイクル以下、30サイクル以下サイクル以下、20サイクル以下、15サイクル以下、10サイクル以下、5サイクル以下、またはより少ない場合がある。一例では、約40以下のサイクルが用いられ、および、サイクル時間は約20分以下である。
【0087】
検知可能な量の増幅産物を達成する時間は、特定の核酸試料、使用される試薬、使用される増幅反応、使用される増幅サイクル数、およびの反応条件に依存して、変動することもある。いくつかの実施形態では、検出可能な量の増幅産物を達成する時間は、約120分以下、90分以下、60分以下、50分以下、40分以下、30分以下、20分以下、10分以下、または約5分以下であってもよい。一例では、増幅産物の検知可能な量は、20分未満で達され得る。
【0088】
いくつかの実施形態では、ランピングレート(すなわちチャンバがある温度から別の温度まで移行するレート)は、増幅にとって重要である。例えば、増幅反応により検出可能な量の増幅産物がもたらされる温度および時間は、ランピングレートに依存して変動することもある。ランピングレートは、増幅中に使用される、時間、温度、または時間および温度の両方に影響を与えることもある。いくつかの実施形態では、ランピングレートはサイクル間で一定である。いくつかの実施形態では、ランピングレートはサイクル間で変動する。ランピングレートは処理されている試料に基づいて調整されることもある。例えば、最適なランピングレートは、ロバストで効率的な増幅方法を提供するために選択され得る。
【0089】
生体試料を分析するためのシステム
別の態様において、本開示は、生体試料を処理するためのシステムを提供する場合がある。システムは、デバイス(例えば、マイクロ流体デバイス)ホルダー、および、流体流チャネルを含み得る。デバイスは、流体流路とチャンバを含み得る。流体流路は、チャネルと入口ポートを含み得る。流体流路は、出口ポートを含まない場合がある。入口ポートは、チャネルの中へ生体試料を導くように構成され得る。チャンバは、チャネルと流体連通にあり得る。チャンバは、チャネルから生体試料を含む溶液の少なくとも一を受け取り、および、処理中に溶液を保持するように構成され得る。ホルダーは、処理中にデバイスを収容および保持するように構成される。流体流モジュールは、入口ポートに流体結合し、および溶液を入口ポートからチャネルへと流すための圧力差を供給するように構成される。付加的に、流体流モジュールは、溶液をチャネルからチャンバに流れさせるための圧力差を供給するように構成される。
【0090】
ホルダーは、デバイスを収容するための、棚、受け器、またはステージであり得る。一例では、ホルダーは、移送ステージである。移送ステージは、マイクロ流体デバイスを入れ(input)、マイクロ流体デバイスを保持し、マイクロ流体デバイスを出す(output)するように構成されることもある。マイクロ流体デバイスは、本明細書の他の箇所に記載される任意のデバイスであってよい。移送ステージは1つ以上の座標において静止していることもある。代替的に、または付加的に、移送ステージは、X方向、Y方向、Z方向、またはそれらの任意の組み合わせで動作可能であってもよい。移送ステージは、単一のマイクロ流体デバイスを保持可能であってもよい。代替的に、または付加的に、移送ステージは、少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10つ、またはそれより多いマイクロ流体デバイスを保持可能であってもよい。
【0091】
流体流モジュールは、空圧モジュールおよび/または真空モジュールであってもよい。流体流モジュールは、マイクロ流体デバイスの入口ポート(複数可)と流体連通するように構成され得る。流体流モジュールは、多数の入口ポートに接続可能な多数の接続点を有することもある。流体流モジュールは、チャンバの単一のアレイを一度に、またはチャンバの多数のアレイを相前後して、充填、再充填、および分配できてもよい。流体流モジュールは、真空モジュールと組み合わされた空圧モジュールであり得る。流体流モジュールは、マイクロ流体デバイスに圧上昇をもたらすことも、マイクロ流体デバイスに真空をもたらすこともある。
【0092】
システムは熱モジュールをさらに含み得る。熱モジュールは、マイクロ流体デバイスのチャンバと熱的連通するように構成されることもある。熱モジュールは、チャンバの単一のアレイの温度を制御するように、またはチャンバの多数のアレイの温度を制御するように構成されることもある。チャンバのアレイは各々、熱のモジュールによって個別に指定可能な場合がある。例えば、熱モジュールは全てのチャンバ・アレイにわたって同じ熱的プログラムを実施することも、または様々なチャンバ・アレイで様々な熱的プログラムを実施することもある。熱モジュールは、マイクロ流体デバイスのマイクロ流体デバイスおよび/またはチャンバと熱的連通するように構成され得る。熱モジュールは、マイクロ流体デバイスを熱する場合も、冷やす場合もある。マイクロ流体デバイスの1つ以上の表面が熱モジュールと直接接触する場合がある。代替的に、または付加的に、熱モジュールとマイクロ流体デバイスの間に熱伝導性の材料が配置される場合がある。熱モジュールは、変位が約2℃以下、1.5℃以下、1℃以下、0.9℃以下、0.8℃以下、0.7℃以下、0.6℃以下、0.5℃以下、0.4℃以下、0.3℃以下、0.2℃以下、0.1℃以下であるか、または、より少ないように、マイクロ流体デバイスの表面にわたって温度を維持する場合がある。熱モジュールは、マイクロ流体デバイスの表面の温度を温度設定値からプラス・マイナス0.5℃、0.4℃、0.3℃、0.2℃、0.1℃、0.05℃以内に、またはより狭い範囲に維持し得る。
【0093】
システムは検知モジュールをさらに含む場合がある。検知モジュールは、電子的または光学的検知を提供する場合がある。一例では、検知モジュールは、光学的検知を提供する光モジュールである。光モジュールは、多波長の光を放出して、検知するように構成されることもある。発光波長は、使用される指示薬および増幅プローブの励起波長に相当することもある。放出光は、約450nm、500nm、525nm、550nm、575nm、600nm、625nm、650nm、675nm、700nm、またはそれらの任意の組み合わせの、最大強度を有する波長を含んでもよい。検出光は、約500nm、525nm、550nm、575nm、600nm、625nm、650nm、675nm、700nm、またはそれらの任意の組み合わせの、最大強度を有する波長を含んでもよい。光モジュールは、1つ、2つ、3つ、または4つ以上の光の波長を放出するように構成されることもある。光モジュールは、1つ、2つ、3つ、または4つ以上の光の波長を検出するように構成されることもある。光の1つの放出された波長は、指示薬分子の励起波長に相当することもある。光の別の放出された波長は、増幅プローブの励起波長に相当することもある。光の1つの検知された波長は、指示薬分子の発光波長に相当することもある。光の別の検知された波長は、チャンバ内の反応を検知するために使用される、増幅プローブに相当することもある。光モジュールは、チャンバのアレイのセクションを画像化するように構成されることもある。代替的に、または付加的に、光モジュールは、単一の画像中のチャンバのアレイ全体を画像化することもある。一例では、光学モジュールはデバイスのビデオを撮影するように構成される。
【0094】
図5は、単一のシステムにおいて図4のプロセスを実施するためのシステム(500)を例示する。システム(500)は、流体流モジュール(501)を含み、その流体流モジュールは、ポンプ、真空、およびマニホールドを含み、かつZ方向で移動させられ、図1A図1Fに記載されるような圧力の適用を実施するように動作可能であり得る。システム(500)はまた、フラットブロックサーマルサイクラーなどの熱モジュール(502)を含み、マイクロ流体デバイスを熱的にサイクルさせ、それによって、ポリメラーゼ連鎖反応を起こさせ得る。システム(500)はさらに、epi-蛍光性の光モジュールなどの、マイクロ流体デバイス中のチャンバが、PCR反応を成功裡に実行したかを光学的に判定することができる、光モジュール(503)を含む。光モジュール(503)は、プロセッサ(504)にこの情報を供給し、このプロセッサ(504)は、成功したチャンバの生の計数を核酸濃度に変換するために、ポアソン統計を使用する場合がある。ホルダー(505)は、様々なモジュールの間で所与のマイクロ流体デバイスを移動させ、かつ多数のマイクロ流体デバイスを同時に扱うために使用されてもよい。単一のマシンへのこの機能の組み込みに組み合わせられる、上記のマイクロ流体デバイスは、dPCRの他の実施よりも、dPCRに関するコスト、ワークフローの複雑さ、および空間要求を低減し得る。
【0095】
システムはさらにロボットアームを含んでもよい。ロボットアームは、マイクロ流体デバイスの位置を移動、変更、または整え得る。代替的に、または付加的に、ロボットアームは、システムの他の構成要素(例えば、流体流モジュールまたは検知モジュール)を配置または移動する場合がある。検知モジュールは、カメラ(例えば、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)カメラ)およびフィルタキューブを含み得る。フィルタキューブは、カメラによって検知された励起光の波長および/または光の波長を変更または修正する場合がある。流体流モジュールは、マニホールド(例えば、空圧マニホールド)および/または1つ以上のポンプを含む場合がある。マニホールドがマイクロ流体デバイスと接触しないように、マニホールドは直立位置にあり得る。マイクロ流体デバイスを充填および/または画像化する時、直立位置が用いられていてもよい。マニホールドがマイクロ流体デバイスと接触するように、マニホールドは下向きの位置にあり得る。マニホールドは、マイクロ流体デバイスに流体(例えば、試料と試薬)を充填するために用いられていてもよい。マニホールドは、使用の間、デバイスを適所に保持するように、および/または反り、曲げ、または他の応力を防止するように、流体流デバイスに圧力を加える場合がある。一例では、マニホールドは、下方圧力を加え、および、熱モジュールに対してマイクロ流体デバイスを保持する。
【0096】
システムはさらに1つ以上のコンピュータプロセッサを含み得る。1つ以上のコンピュータプロセッサは、流体流モジュール、ホルダー、熱モジュール、検知モジュール、ロボットアーム、またはそれらの任意の組合せに動作可能に結合され得る。一例では、1つ以上のコンピュータプロセッサは、流体流モジュールに動作可能に結合される。チャンバの加圧ガス放出を通じて溶液を入口ポートからチャネルに、および/またはチャネルからチャンバ(複数可)へと流し、および、それによって分配するために流体流モジュールが入口ポートに流体結合される時、入口ポートに圧力差を供給するように流体流モジュールに命令するように、1つ以上のコンピュータプロセッサは個別にまたは総体的にプログラムされ得る。
【0097】
本開示の範囲は、本明細書に記載された特定の実施形態によって限定されることはない。実際に、本明細書に記載されたものだけではなく、本開示の他の様々な実施形態および変形形態は、前述の記載および添付の図面からの当業者に明らかとなるだろう。
【0098】
例えば、dPCRの応用のコンテキストにおいて記載されたが、ガスまたは他の流体を介して単離される液体で充填された、多数の隔離されたチャンバを必要としうる他のマイクロ流体デバイスは、薄い熱可塑性プラスチック膜の使用から利益を得て、ガス抜きがガスファウリングを避けることを可能する一方で、製造可能性およびコストに関しての利益も提供する。PCRとは別に、ループ介在等温増幅(loop mediated isothermal amplification)などの他の核酸増幅方法は、本開示の実施形態の特定の核酸配列のデジタル検出を実施するのに適用され得る。チャンバは単一の細胞を単離するためにも使用されることもでき、吸い上げ開口部は、単離される細胞の直径に近くなるように設計される。いくつかの実施形態では、吸い上げ開口部が血液細胞の大きさよりもはるかに小さいとき、本開示の実施形態は、全血から血漿を分離させるために使用されうる。
【0099】
記載されたシステムは、本明細書の別の箇所に記載された任意のデバイス(例えば、マイクロ流体デバイス)と共に用いられていてもよい。加えて、記載されたシステムは本明細書の他の箇所に記載された方法のいずれかを実施するために用いられていてもよい。
【0100】
コンピュータシステム
本開示は、本開示の方法を実施するようにプログラムされるコンピュータシステムを提供する。図6は、生体試料(例えば、核酸分子)の処理および分析のためにプログラムされるか、さもなければ構成される、計算機装置(601)を示す。計算機デバイス(601)は、例えば、生体試料を充填すること、デジタル化すること、分析すること、などの、本開示のシステムおよび方法の様々な態様を調節することができる。コンピューターシステム(601)は、ユーザーまたはコンピュータシステムの電子デバイスであり、ユーザーまたはコンピュータシステムは電子デバイスに対して遠隔に位置付けられる。電子デバイスは、生物学的分析システムを監視および制御を行なう能力があるか、さもなければ、行なうように構成されたモバイル電子デバイスであってもよい。
【0101】
コンピュータシステム(601)は、単一コアまたはマルチコアプロセッサ、または並列処理のための複数のプロセッサとすることができる中央処理装置(CPU、本明細書では「プロセッサ」および「コンピュータプロセッサ」)(605)を含む。コンピューターシステム(601)はまた、メモリ又はメモリ位置(610)(例えば、ランダムアクセスメモリ、読み取り専用メモリ、フラッシュメモリ)、電子記憶デバイス(615)(例えばハードディスク)、1つ以上の他のシステムと通信するための通信インターフェース(620)(例えばネットワークアダプタ)、及び、キャッシュ、他のメモリ、データ記憶デバイス、および/または電子ディスプレイアダプタなどの周辺機器(625)を含む。メモリ610、記憶デバイス615、インターフェース620および周辺機器625は、マザーボードなどの通信バス(実線)を通じて、CPU605と通信する。ストレージユニット(615)は、データを保存するためのデータストレージユニット(またはデータリポジトリ)であってもよい。コンピュータシステム(601)は、通信インターフェース(620)の助けによってコンピュータネットワーク(「ネットワーク」)(630)に動作可能に連結され得る。ネットワーク(630)は、インターネット、インターネットおよび/またはエクストラネット、またはインターネットと通信しているイントラネットおよび/またはエクストラネット、であり得る。ネットワーク(630)は、場合によっては、電気通信および/またはデータネットワークである。ネットワーク(630)は、クラウドコンピューティングのような分散コンピューティングを可能にすることができる1つ以上のコンピュータサーバを含むことができる。ネットワーク(630)は、場合によってはコンピュータシステム(601)の助けにより、ピアツーピア・ネットワークを実施することができ、これは、コンピュータシステム(601)に連結されたデバイスが、クライアント又はサーバーとして動くことを可能にし得る。
【0102】
CPU(605)は、プログラムまたはソフトウェアに統合され得る一連の機械可読命令を実行することができる。この命令は、メモリ(610)などのメモリ位置に保存され得る。この命令は、CPU(605)に向けることができ、これは後に、本開示の方法を実施するようにCPU(605)をプログラムまたは構成することができる。CPU(605)により実行される動作の例は、フェッチ、デコード、実行、およびライトバックを含み得る。
【0103】
CPU(605)は、集積回路など回路の一部であり得る。システム(601)の1つ以上の他のコンポーネントを回路に含めることができる。場合によっては、その回路は特定用途向け集積回路(ASIC)である。
【0104】
記憶装置(615)は、ドライバー、ライブラリ、およびセーブされたプログラムなどのファイルを記憶することができる。記憶装置(615)は、ユーザーデータ、例えばユーザーの嗜好性およびユーザーのプログラムを記憶することができる。コンピュータシステム(601)は、場合によっては、イントラネットまたはインターネットを通じてコンピュータシステム(601)と通信状態にあるリモートサーバー上に位置付けられるなど、コンピュータシステム(601)の外側にある1つ以上の追加のデータ記憶デバイスを含み得る。
【0105】
コンピュータシステム(601)は、ネットワーク(630)を通じて1つ以上のリモートコンピュータシステムと通信することができる。例えば、コンピュータシステム(601)は、ユーザー(例えば、検査技師、科学者、研究者、または医療技師)のリモートコンピュータシステムと通信することができる。リモートコンピュータシステムの例は、パーソナルコンピュータ(例えば、ポータブルPC)、スレートPCまたはタブレットPC(例えば、Apple(登録商標)iPad(登録商標)、Samsung(登録商標)Galaxy Tab)、電話、スマートフォン(例えば、Apple(登録商標)iPhone(登録商標)、アンドロイド対応のデバイス、Blackberry(登録商標))、または携帯情報端末を含む。ユーザーは、ネットワーク(630)を介してコンピュータシステム(601)にアクセスすることができる。
【0106】
本明細書に記載されるような方法は、例えばメモリ(610)又は電子記憶装置(615)の上など、コンピュータシステム(601)の電子記憶装置の位置に記憶された機械(例えばコンピュータプロセッサ)実行可能コードによって実施することができる。マシン実行可能な、またはマシン読み取り可能なコードは、ソフトウェアの形で提供され得る。使用中に、コードはプロセッサ(605)によって実行され得る。いくつかの場合では、コードは、電子記憶デバイス(615)から取得され、プロセッサ(605)による容易なアクセスのためのメモリ(610)に保存することができる。いくつかの状況において、電子記憶デバイス(615)は除外することができ、およびマシン実行可能命令がメモリ(610)に保存される。
【0107】
コードは、コードを実行するのに適したプロセッサを持つ機械との使用のために予めコンパイルされ且つ構成することができ、或いは、実行時間中にコンパイルすることができる。コードは、予めコンパイルされた様式か、コンパイルされたままの様式で、コードを実行可能なように選択できる、プログラミング言語で提供されうる。
【0108】
コンピュータシステム(601)などの、本明細書で提供されるシステムと方法の態様は、プログラミングの際に統合することができる。技術の様々な態様は、典型的にマシン(またはプロセッサ)実行可能コードおよび/または一種のマシン可読媒体において具体化される関連データの形態で「産物」または「製品」として考えられうる。マシン実行可能コードは、メモリ(例えば、リードオンリーメモリ、ランダムアクセスメモリ、フラッシュメモリ)またはハードディスクなどの電子記憶デバイスに記憶することができる。「記憶」型の媒体は、ソフトウェアプログラミングに関するいかなる時にも非一時的な記憶を提供しうる、様々な半導体メモリ、テープドライブ、ディスクドライブなどの、コンピュータ、プロセッサなどの有形メモリ、またはそれらの関連するモジュールのいずれかまたは全てを含むことができる。ソフトウェアの全てまたは一部は、インターネットまたは様々な他の通信ネットワークを介して時々通信されることもある。そのような通信は、例えば、1つのコンピュータまたはプロセッサから別のコンピュータまたはプロセッサへの、例えば、管理サーバーまたはホストコンピューターからアプリケーションサーバーのコンピュータプラットフォームへのソフトウェアのロードを可能にし得る。したがって、ソフトウェア要素を保持しうる別のタイプの媒体には、ローカルデバイス間の有線および光陸上通信線ネットワーク、および様々なエアリンクを介して使用されるような、光、電気、および電磁波が含まれる。有線または無線リンク、光リンクなどの、このような波を運ぶ物理的要素もまた、ソフトウェアを保持する媒体とみなしてもよい。本明細書に使用されるように、非一時的な有形「記憶」媒体に限定されない限り、コンピュータまたはマシンの「可読媒体」などの用語は、実行のためのプロセッサに命令を提供する際に関与する任意の媒体を指す。
【0109】
従って、コンピュータ実行可能コードなどの機械可読媒体は、有形記憶媒体、搬送波媒体、又は物理送信媒体を含むがこれらに限定されない、多くの形態をとってもよい。不揮発性ストレージ媒体は、例えば、図面に示されるデータベースなどを実装するために使用されることもあるような、任意のコンピュータ(複数可)などにおける、記憶デバイスのいずれかなどの光学ディスクまたは磁気ディスクを含む。揮発性ストレージ媒体は、そのようなコンピュータプラットフォームのメインメモリのような動的メモリを含む。実体的な伝送媒体は、コンピュータシステム内のバスを含むワイヤを含めて、同軸ケーブル、銅線、および光ファイバーを含む。搬送波送信媒体は、無線周波(RF)および赤外線(IR)データ通信中に生成されたものなどの、電気信号または電磁気信号、あるいは音波または光波の形態をとりうる。したがって、コンピュータ可読媒体の共通の形式は、例えば:フロッピーディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、他の磁気媒体、CD-ROM、DVDもしくはDVD-ROM、他の光学媒体、パンチカード、紙テープ(paper tame)、穴のパターンを有する他の物理的な記憶媒体、RAM、ROM、PROMおよびEPROM、FLASH-EPROM、他のメモリチップもしくはカートリッジ、データもしくは命令を輸送する搬送波、そのような搬送波を伝達するケーブルもしくはリンク、またはコンピュータがプログラミングのコードおよび/もしくはデータを読み取りうる他の媒体を含む。コンピュータ可読媒体のこれらの形態の多くは、実行のためのプロセッサに1つ以上の命令の1つ以上のシーケンスを搬送する際に関係し得る。
【0110】
コンピュータシステム(601)は、処理パラメータ、データ分析、および生物学的アッセイまたは反応(例えば、PCR)の結果を提供するためのユーザーインターフェース(UI)(640)を含む電子表示装置(635)を含むか、または電子表示装置(635)と通信する。UIの例は、限定することなく、グラフィカルユーザーインターフェース(GUI)およびウェブベースのユーザーインターフェースを含む。
【0111】
本開示の方法とシステムは、1つ以上のアルゴリズムによって実施することができる。アルゴリズムは、中央処理ユニット(605)による実行時にソフトウェアとして実装することができる。アルゴリズムは、例えば、システムを調節または制御することができるか、または本明細書に提供される方法(例えば、試料充填、熱サイクル、検知など)を実施することができる。
【実施例
【0112】
実施例1:複数の処理ユニットを含んでいるマイクロ流体デバイス
図7Aおよび図7Bは、生体試料を処理するためのマイクロ流体デバイスの例を示す。マイクロ流体デバイス(701)は複数のスライド、例えば、図7Bに示されるような4つのスライドを含む。マイクロ流体デバイス(701)は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれより多くのスライドを含んでもよい。複数のスライドが溶接によってオートメーション対応プレート枠に接合されてもよい。プレート枠は、図7Bにおいて示されるような複数の単一入口ウェルを含む、標準形式プレート枠であり得る。他の適切な方法も複数のスライドを一体的に接合するために用いられ得る。単一のスライド(702)(ユニット当り約20,000の区画を備えた4ユニットのアレイ)は、複数の処理ユニット、例えば、図7Aにおいて示されるような4つの処理ユニット、を含む。さらに、スライド(702)は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10の、またはそれより多くの処理ユニットを含んでもよい。
【0113】
さらに、単一の処理ユニットは約20,000のチャンバ/区画を含み、および、単一の区画/チャンバ(704)は図7Aにおいて示される。また、処理ユニットは各々、図1A図1Fにおいて例示されるようなチャネルを包含している。処理ユニットは各々、本明細書に記載されるように、単一の入口ポートを含む。単一のチャンバ/区画(704)は、約85μmの長さ、約65μmの幅、および約100μmの高さを有する。さらに、単一のチャンバ/区画(704)は、マイクロチャネル(705)を含む場合があり、そのマイクロチャネル(705)は約10μmの深さと約15μmの幅を有する。各処理ユニットの寸法の結果として、例えば、処理ユニット(703)は、合計約11.5μLの分析体積を含んでもよい。さらに、処理ユニットは各々、10%未満のデッドボリュームを包含している。
【0114】
実施例2:マイクロ流体デバイスへの生体試料と反応試薬の充填
図8は、単一の処理ユニット(801)の顕微鏡画像を示す。図8は、顕微鏡画像の隅に実線で示された650μmスケールバーをさらに含む。メインチャネルの様々な構成(802)、(803)、および(804)によって示されるように、メインチャネル(805)は、1つ以上の区画/チャンバに接続し、および流体連通するように構成された複数のマイクロチャネルに通じるように構成される。
【0115】
例えば、処理ユニットを充填するために、生体試料と反応試薬を組み合わせた液体が、最初に処理ユニットの中へ流れ、続いて不活性のシリコーン油などの不混和性流体が流れる。不混和性の流体は、メインチャネルから組合せ液体を取り除き、かつ熱サイクルなどのPCR反応および後の検知分析のために個別の区画/チャンバを隔離するように構成される。
【0116】
さらに、流体を過剰に充填する問題を解決するために、処理ユニットは各々、1つ以上の犠牲チャンバ(806)を含んでもよく、その犠牲チャンバ(806)はメインチャネル(805)に接続しおよび流体連通するように構成される。メインチャネルは各々、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10の、またはそれより多くの犠牲チャンバに接続し、および流体連通する場合がある。犠牲チャンバは、異なる形状でもよく、また、異なる容積を包含してもよい。特に流体流が終わる頃、処理ユニットが流体を過剰に充填され、一部の残留液がメインチャネルに残る時、1つ以上の近隣の区画/チャンバは過剰に充填されている処理ユニットに流体連通するようになる。さらに、過剰充填流体に包含される1つ以上の標的分子が、PCR増幅プロセスの間に隣接した区画/チャンバの中へにじむかもしれない。各処理ユニットに位置する1つ以上の犠牲チャンバ(806)は、過剰流体を捕らえ、および不混和性の流体が完全にメインチャネルをパージすることを可能にするように、構成される。その結果、犠牲チャンバは、充填された組み合わせた流体(例えば、生体試料と試薬)の体積におけるわずかな変位(例えば、わずかな変位はピペッティング誤差によって引き起こされ得る)に対処するのを支援する。犠牲チャンバ(806)は、また、PCR反応から生成されたシグナルが正確に定量化されるように、各区画/チャンバでのPCR反応を隔離することを支援する場合がある。
【0117】
実施例3:生体試料と反応試薬とを組み合わせた流体のデジタル化
図9A図9Dは、単一の入口を任意の出口と共に使用した、生体試料と反応試薬とを組み合わせた流体の充填およびデジタル化を示す。空気圧制御装置(図9A図9Dに示されず)を利用し、および、共通qPCR補正色素ROXを含むPCR試薬ミックスをデジタル化プロセスを視覚化するために用いる。
【0118】
デジタル化プロセスは単一の圧力工程または複数の圧力工程のいずれかを用いて達成され得る。例えば、マイクロ流体デバイス(701)(図7A)の各処理ユニットに充填するために、約10μLの反応試薬(生体試料からの標的核酸分子を含む)を、マイクロ流体デバイス(701)上の入口ウェル(706)(図7A)に(例えば、ピペッティングによって)充填する。さらに、約7μLの隔離バッファー/シリコーン油を、マイクロ流体デバイス(701)上の入口ウェル(706)に(例えば、ピペッティングによって)充填する。続いて、空気圧制御装置を用いて、約60分間または試薬デジタル化の完了まで、約50PSIの正圧を入口ウェル(706)に加える。約50PSIの圧力を徐々に増加してもよい。隔離バッファー/シリコーン油は、オーバーレイ液体として役立ち、および充填プロセスの間にPCR試薬上に静止するように構成され、そのことによってPCR試薬が最初にマイクロ流体アレイに進入することが確実となるが、その理由は隔離バッファー/シリコーン油が水より低い密度を有するためである。デジタル化プロセスが終わった後、区画/チャンバは流体的に隔離され、活性化された時に独立したPCRを行なうことが可能となる。
【0119】
さらに、図9Aから図9Dは、デジタル化プロセスの間の4つの異なる時点を示す。図9Aは、第1の試薬が最初にアレイに入る、第1の時点を示す。図9Bは、試薬がほとんどアレイ全体を通過し、および、アレイにおける充填チャネルが試薬で満たされているが、マイクロチャンバは大部分が空である、第2の時点を示す。図9Cは、試薬がマイクロチャンバに入ったが、チャンバはこの時依然として流体連通している、第3の時点を示し、および、図9Dは、試薬がなくなった後、油がアレイを通って移動し、メインの流体チャネル中の試薬をすべて排出する、第4の時点を示す。図9A図9Dの最初の段は、試薬がアレイを充填し始め、メインの充填用チャネルのほとんどを満たし、マイクロチャンバに入り、そして、メインのチャネルでのみシリコンオイルに置き換えられる、進行中の4つの時点におけるアレイ全体の蛍光画像を実証している。図9A図9Dの中央の段は、上述の4つの時点におけるマイクロチャンバ・アレイの図式表現を示す。図9A図9Dの最後の段は、時点進行の拡大画像を示す。
【0120】
実施例4:デジタル化プロセスのラボラトリ・ワークフローへの統合
本発明のデジタル化プロセスは、図10によって例示されるように、核酸アッセイのための一般的なラボラトリ・ワークフローへと容易に統合することができる。生体試料調製(試料調製工程)は核酸の単離と、Master Mixおよびプライマー/プローブを生体試料と組み合わせることと、を含む、他のPCRベースのワークフローで行なわれてもよい。マイクロ流体デバイス(701)は、本明細書に記載されるように(例えば、試料混合物をピペッティングし、続いて油オーバーレイをピペッティングして)充填され(充填プレート工程)、その後、試薬の空圧充填/デジタル化と、熱サイクリングと、データ/画像取得とを統合する機器の中に入れる。(試薬分配+PCR+画像取得工程および分析ステップ)。そして、PCR反応の取得データは、もとの生体試料における標的遺伝子の濃度などの結果を提供するために下流のソフトウェアによって分析することができる。
【0121】
実施例5:画像分析
図11は、取得した画像についての分析を行なうソフトウェアのユーザーインターフェースのスクリーンショットを示す。図11は、試料としてヒト・ゲノムDNAを使用して、4つの異なる指示薬(4つの異なる蛍光色によって指示される)を用いたdPCRアッセイからの実結果を実証する。パネル(1101)に表示された分析設定は、ユーザーによって選択可能である。マイクロ流体デバイス(701)上の16の処理ユニットのうち1つの処理ユニット(この場合、ユニットC3)からの結果を、パネル(1104)の散布図の形式およびパネル(1103)における濃度値形式で示す。パネル(1102)における中央の画像は、標的遺伝子を検知するために、4つの光学チャネルのそれぞれからの陽性を重ね合わせた複合画像である。第5の光チャネルは品質対照チャネルとして用いられている。
【0122】
本発明の好ましい実施形態が本明細書中に示され記述される一方、そのような実施形態が一例としてしか提供されていないことは当業者にとって明白だろう。本発明が本明細書内で提供された特定の実施例により限定されることは、意図されていない。本発明は前述の明細書を参照して記載されている一方、本明細書における実施形態の記載および例示は限定的な意味で解釈されることは意図されていない。多くの変更、変化、および置換が、本発明から逸脱することなく、当業者の心に思い浮かぶであろう。さらに、本発明の全ての態様は、様々な条件および変数に依存する、本明細書で述べられた特定の描写、構成、または相対的比率に限定されないことが理解されるだろう。本明細書に記載される本発明の実施形態の様々な代案が、本発明の実施において利用されるかもしれないことを理解されたい。したがって、本発明は、任意のそのような代替案、修正、変形、または同等物にも及ぶことが考えられる。以下の請求項は本発明の範囲を定義するものであり、この請求項とその均等物の範囲内の方法、および構造体がそれによって包含されるものであるということが意図されている。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図10
図11