(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】親和性膜及び製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 20/30 20060101AFI20241003BHJP
B01J 20/281 20060101ALI20241003BHJP
B01J 20/26 20060101ALI20241003BHJP
B01J 20/285 20060101ALI20241003BHJP
G01N 30/88 20060101ALI20241003BHJP
C07K 16/00 20060101ALN20241003BHJP
C07K 1/14 20060101ALN20241003BHJP
C12N 11/12 20060101ALN20241003BHJP
【FI】
B01J20/30
B01J20/26 L
B01J20/26 H
B01J20/281 G
B01J20/281 X
B01J20/281 R
B01J20/285 T
G01N30/88 D
C07K16/00
C07K1/14
C12N11/12
(21)【出願番号】P 2021532819
(86)(22)【出願日】2019-12-11
(86)【国際出願番号】 US2019065805
(87)【国際公開番号】W WO2020123714
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-12-08
(32)【優先日】2018-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591163214
【氏名又は名称】ドナルドソン カンパニー,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュウ,ジンシャン
(72)【発明者】
【氏名】テンプレス,グラハム
(72)【発明者】
【氏名】ヘン,ダニエル
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】特表平11-503005(JP,A)
【文献】国際公開第2017/069254(WO,A1)
【文献】特開2009-262078(JP,A)
【文献】特表2009-522580(JP,A)
【文献】特開2004-041341(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00-20/34
G01N 30/00-30/96
C12N 11/00-13/00
C07K 1/00-19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的製剤分子を結合するための吸着媒体を製造するための方法であって:
マクロ孔質支持体を提供する工程;
前記マクロ孔質支持体を、溶媒溶液中のカップリング試薬の第一の溶液中に、前記カップリング試薬を結合させるために浸漬して、カップリング基を形成する工程;
前記マクロ孔質支持体を、生物学的製剤ターゲットに対する親和性を有する分子を前記カップリング基の少なくとも一部に結合させるために、インキュベーション溶液中に浸漬する工程であって、前記インキュベーション溶液が、前記分子、水、および有機溶媒を含み、前記有機溶媒が
前記インキュベーション溶液の温度での前記分子の曇点における前記有機溶媒の体積量に実質的に近いが、著しく超えない量で存在し、前記分子がペプチド、ポリペプチド、タンパク質、及び酵素から成る群より選択されるインキュベーション溶液中に浸漬する工程、を含む、方法。
【請求項2】
生物学的製剤分子を結合するための吸着媒体を製造するための方法であって:
膨潤溶媒溶液中のN,N’-ジスクシンイミジルカーボネート(DSC)、1,1’-カルボニルジイミダゾール(CDI)、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロリド)(EDC)、ハロゲン化シアン、ジイソシアネート、ジグリシジルエーテル、エピクロロヒドリン、塩化トシル、グルタルアルデヒド、ジビニルスルホン、ハロゲン化アシル、トリアジン、無水物、及びこれらの組み合わせから成る群より選択されるカップリング試薬の第一の溶液に膜を浸漬して、前記膜を膨潤させ、前記カップリング試薬の結合のための前記膜上の反応性部位の露出を増加させてカップリング基を形成する工程;
分子をカップリング基に結合させるために、前記膜を、0.5Mから3Mのコスモトロピック塩と生物学的製剤ターゲットに対する親和性を有する分子とを含むインキュベーション溶液に浸漬する工程であって、前記分子がヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、及び酵素から成る群より選択されるインキュベーション溶液中に浸漬する工程、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1)発明の分野
本発明は、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、ポリヌクレオチド、ヌクレオチド、ウィルスベクター、及びワクチンなどの生物学的製剤を、親和性分離法を用いて精製するための膜に関し、より詳細には、短い保持時間で生物学的製剤に対する高い結合容量を提供する膜、及び膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2)関連技術の記載
モノクローナル抗体(mAb)を含む生物学的製剤は、癌、自己免疫障害、心血管疾患、及び多くの難病などの慢性的病状のための多くの治療計画の主要な成分である。しかし、生物学的製剤は、最も高価な薬物の1つである。例えば、最近の報告では、mAbの研究、開発、及び製造のためのコストは、薬物価格の約35%を占めることが示されている。薬物の研究は、年々高価になってきており、FDA承認薬物を開発するためのR&Dコストは、9年ごとに倍増している。加えて、業界は、競合の激化に起因する市場の不確定性を低減する戦略として、小バッチ生産へ動いている。特に、競合、並びに個別化医療及びオーファンドラッグなどの新興市場のために、小バッチ生産操業への需要が拡大している。しかし、生物学的製剤の小バッチ生産における用量あたりのコストは、大スケール生産よりも10倍高くなり得る。生物学的製剤を迅速かつ効率的に精製することができる技術は、手ごろな価格の薬物の生産を可能とすることで、ヒトの健康向上に貢献することになる。
【0003】
樹脂ベースのカラムの主要な欠点は、流量が上昇すると(保持時間が短縮)、結合容量が低下することである。樹脂の小細孔構造を通してのタンパク質の物質移動が遅いことによって高い容量を得るために、長い保持時間を用いる必要がある。典型的な樹脂クロマトグラフィ製品では、最適な結合容量を実現するのに6分間以上の保持時間が掛かる。そのような長い保持時間の結果、非常に低い生産性となり、場合によっては、それは生成物の分解にも繋がる。
【0004】
例えば、業界では、プロテインAリガンドが、抗体のFc領域に対するその高い親和性のために、mAb捕捉のためのプラットフォーム技術として日常的に用いられてきた。mAbの精製にプロテインAベースの製品を用いることが強く好まれてきたにもかかわらず、最も主要なプロテインA樹脂クロマトグラフィ製品の容量は、6分間の保持時間で60~80mg mAb/mLである。その容量は、1~2分間の保持時間では、18~30mg/mLに低下する。このため、現時点で市場には、6秒以下の保持時間で>40mg/mLの結合容量のプロテインAクロマトグラフィ製品は存在しない(又は開発中であることも知られていない)。同様に、プラスミドDNA、メッセンジャーRNA、ウィルスベクター、ウィルス粒子、ウィルス様粒子、天然タンパク質、組換えタンパク質、及びエンドトキシンなどの他の生物学的製剤のための高生産性親和性クロマトグラフィ製品も入手可能なものがない。
【0005】
膜クロマトグラフィは、この問題に対処するものであり、樹脂ベースのクロマトグラフィの代替物を提供する。大きい貫通細孔を有する吸着膜は、短い保持時間で作用することができるが、結合容量は低いものであった。既存の多孔質ヒドロゲル膜は、表面積が大きいことに起因して、改善された静的結合容量を示す。しかし、メッシュサイズが小さい結果として、高分子のアクセス性が悪く、それによって、短い保持時間(<60秒)での容量が低い。短い保持時間に伴う流量の上昇に起因する高い背圧(>3バール)は、多孔質ヒドロゲル膜に付随する別の課題である。したがって、短い保持時間で高い結合容量を有する親和性カラムには、技術的ギャップが依然として存在する。そのような発明があれば、下流での生物学的製剤の精製生産性が経済的に上昇することになる。
【0006】
長い保持時間を用いる必要があることに加えて、従来の樹脂ベースカラムの小細孔構造はさらに、大きい生物学的製剤の精製での使用を制限する。特に、大きい生物学的製剤の分取用精製の需要が、遺伝子及び細胞治療産業の発展と共に急速に高まりつつある。そのような生物学的製剤の例としては、プラスミドDNA、メッセンジャーRNA、ウィルスベクター、ウィルス粒子、ウィルス様粒子、並びに一部の天然及び組換えタンパク質が挙げられる。これらの生物学的製剤は、樹脂ビーズの細孔に近い大きさであるか又はそれよりも大きい。これらの大きい生物学的製剤の場合、樹脂ベースのカラムでは、通常、長い保持時間であっても結合容量は低い。樹脂ベースのカラムはまた、詰まり又は付着汚れを非常に起こし易い。マクロ孔質構造を有する膜クロマトグラフィ製品は、この問題に対処することができる。しかし、そのような用途のための親和性膜クロマトグラフィ製品で、入手可能なものはない。
【0007】
したがって、本発明の目的は、抗体、プラスミドDNA、メッセンジャーRNA、ウィルスベクター、ウィルス粒子、ウィルス様粒子、天然タンパク質、組換えタンパク質、エンドトキシン、及び他の生物学的製剤などの生物学的製剤を、特にモノクローナル抗体を迅速かつ効率的に精製するための膜、並びに親和性膜を製造するための方法を提供することである。
【0008】
本発明のさらなる目的は、低背圧下での抗体捕捉工程での精製(antibody capture-step purification)のための短い保持時間及び高い結合容量を有するプレパッククロマトグラフィカラムで使用するための膜を提供することである。
【0009】
本発明のさらなる目的は、短い保持時間及び低い背圧で高い結合容量を有するプロテインA膜を提供することである。
【発明の概要】
【0010】
上記の目的は、生物学的製剤分子を結合するための膜を製造するための方法を提供することによって本発明に従って達成され、方法は、第一の膨潤溶媒溶液中のカップリング試薬の第一の溶液に膜を浸漬して、前記膜を膨潤させ、前記カップリング試薬の結合のための前記膜上の反応性部位の露出を増加させてカップリング基を形成する工程;前記膜を、第二の膨潤溶媒溶液中に吸着基を含む第二の溶液に浸漬して、前記カップリング基の少なくとも一部分を、リガンド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、及び酵素から成る群より選択される少なくとも1つを前記カップリング基にカップリングさせるための濃縮効果を提供する吸着基と反応させる工程;並びに前記膜を、生物学的製剤ターゲット分子に対する親和性を有するリガンド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、及び酵素の溶液から成る群より選択されるインキュベーション溶液に浸漬して、リガンド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、及び酵素のうちの1つを、前記膜に曝露された場合の前記生物学的製剤ターゲット分子と結合させるために、前記膜の前記カップリング基の少なくとも一部分にカップリングさせる工程、を含む。
【0011】
さらなる有利な実施形態では、膜は、約0.1~20m^2/mLの比表面積を有する再生セルロース膜であり;リガンドは、プロテインAであり;前記膜は、約6秒の保持時間、3バール未満の背圧で、約20~90mgヒト免疫グロブリンG/mL膜の動的タンパク質結合容量を有し;並びに前記膜は、60mgヒト免疫グロブリンG/mL膜を超える静的タンパク質結合容量を有する。
【0012】
さらなる有利な実施形態では、前記第一及び第二の膨潤溶媒溶液は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、DMSOと他の溶媒との、DMSO含有量が70体積%超である混合物、有機溶媒、ヘキサメチルホスホラミド、イオン液体、スルホラン、及びこれらの組み合わせから成る群より選択される少なくとも1つの膨潤溶媒を含む。
【0013】
さらなる有利な実施形態では、前記カップリング試薬は、N,N’-ジスクシンイミジルカーボネート(DSC)、1,1’-カルボニルジイミダゾール(CDI)、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロリド)(EDC)、ハロゲン化シアン、ジイソシアネート、ジグリシジルエーテル、エピクロロヒドリン、塩化トシル、グルタルアルデヒド、ジビニルスルホン、ハロゲン化アシル、トリアジン、無水物、及びこれらの組み合わせから成る群より選択される。
【0014】
さらなる有利な実施形態では、前記第二の溶液の前記吸着基は、三級アミン含有基、負に帯電した部分、正に帯電した部分、疎水性、親水性、及びπ-πスタッキング相互作用を促進する部分を含む官能基、並びにこれらの組み合わせから成る群より選択される。
【0015】
さらなる有利な実施形態では、前記第一及び第二の膨潤溶媒溶液は、ジメチルスルホキシド(DMSO)から成り、前記カップリング試薬は、N,N’-ジスクシンイミジルカーボネート(DSC)から成り、前記吸着基は、N,N’-ジメチルエチレンジアミン(DMEDA)から成り、前記インキュベーション溶液は、プロテインA溶液を含み、前記プロテインA溶液は、10mg/mL以下のプロテインA濃度を有する。
【0016】
上記目的はさらに、生物学的製剤分子を結合するための吸着媒体を製造するための方法を提供することによって本発明に従って達成され、方法は、マクロ孔質支持体を提供する工程;前記マクロ孔質支持体を、溶媒溶液中のカップリング試薬の第一の溶液中に、前記カップリング試薬を結合させるために浸漬して、カップリング基を形成する工程;前記マクロ孔質支持体を、有機溶媒と、生物学的製剤ターゲット分子に対する親和性を有するリガンド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、及び酵素の溶液から成る群より選択されるターゲット結合溶液と、を含むインキュベーション溶液中に浸漬して、前記マクロ孔質支持体に曝露された場合の前記生物学的製剤ターゲット分子と結合させるために、前記リガンド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、及び酵素のうちの1つを、前記マクロ孔質支持体の前記カップリング基の少なくとも一部分にカップリングさせる工程、を含む。
【0017】
さらなる有利な実施形態では、前記マクロ孔質支持体は、ポリオレフィン膜、ポリエーテルスルホン膜、ポリ(テトラフルオロエチレン)膜、ナイロン膜、グラスファイバー膜、ヒドロゲル膜、ヒドロゲルモノリス(hydrogel monoliths)、ポリビニルアルコール膜;天然ポリマー膜、セルロースエステル膜、酢酸セルロース膜、再生セルロース膜、セルロース系ナノファイバー膜、セルロース系モノリス、フィルターペーパー膜、及び実質的にセルロース又はその誘導体を含有するマクロ孔質支持膜、並びにこれらの組み合わせから成る群より選択される。
【0018】
さらなる有利な実施形態では、親和性吸着媒体製造時のいずれかの工程の前又は後に、マクロ孔質支持体を膨潤溶媒溶液に浸漬して、前記マクロ孔質支持体を膨潤させ、反応性部位、カップリング基、及びリガンド部位のうちの少なくとも1つの露出を増加させる。
【0019】
さらなる有利な実施形態では、前記膨潤溶媒溶液は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、DMSOと他の溶媒との、DMSO含有量が70体積%超である混合物、有機溶媒、ヘキサメチルホスホラミド、イオン液体、スルホラン、及びこれらの組み合わせから成る群より選択される少なくとも1つの膨潤溶媒を含む。
【0020】
さらなる有利な実施形態では、前記マクロ孔質支持体は、約0.1~20m^2/mLの比表面積を有する再生セルロース膜であり;リガンドは、プロテインAであり;前記マクロ孔質支持体は、約6秒の保持時間、3バール未満の背圧で、約20~90mgヒト免疫グロブリンG/mL膜の動的タンパク質結合容量を有し;並びに前記マクロ孔質支持体は、60mgヒト免疫グロブリンG/mL膜を超える静的タンパク質結合容量を有する。
【0021】
さらなる有利な実施形態では、前記カップリング試薬は、N,N’-ジスクシンイミジルカーボネート(DSC)、1,1’-カルボニルジイミダゾール(CDI)、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロリド)(EDC)、ハロゲン化シアン、ジイソシアネート、ジグリシジルエーテル、エピクロロヒドリン、塩化トシル、グルタルアルデヒド、ジビニルスルホン、ハロゲン化アシル、トリアジン、無水物、及びこれらの組み合わせから成る群より選択される。
【0022】
さらなる有利な実施形態では、前記リガンド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、及び酵素のうちの1つの前記マクロ孔質支持体へのカップリングを促進するために、前記有機溶媒は、水混和性アルコール、ケトン、エーテル、アミド、及びこれらの組み合わせから成る群より選択される。
【0023】
さらなる有利な実施形態では、前記有機溶媒は、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、及びジメチルスルホキシド(DMSO)から成る群より選択される。
【0024】
さらなる有利な実施形態では、前記第一の溶液は、ジメチルスルホキシド(DMSO)から成り;前記カップリング試薬は、N,N’-ジスクシンイミジルカーボネート(DSC)から成り;前記インキュベーション溶液は、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)から成る群より選択される少なくとも1つの有機溶媒を含み、前記インキュベーション溶液は、プロテインA溶液を含み;並びに前記プロテインA溶液は、10mg/mL以下のプロテインA濃度を有する。
【0025】
さらなる有利な実施形態では、前記インキュベーション溶液中の前記有機溶媒の量は、リガンド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、及び酵素の溶液の曇点に実質的に近いが、それを著しく超えない。
【0026】
上記目的はさらに、生物学的製剤分子を結合するための吸着媒体を製造するための方法を提供することによって本発明に従って達成され、方法は、膨潤溶媒溶液中のN,N’-ジスクシンイミジルカーボネート(DSC)、1,1’-カルボニルジイミダゾール(CDI)、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロリド)(EDC)、ハロゲン化シアン、ジイソシアネート、ジグリシジルエーテル、エピクロロヒドリン、塩化トシル、グルタルアルデヒド、ジビニルスルホン、ハロゲン化アシル、トリアジン、無水物、及びこれらの組み合わせから成る群より選択されるカップリング試薬の第一の溶液に膜を浸漬して、前記膜を膨潤させ、前記カップリング試薬の結合のための前記膜上の反応性部位の露出を増加させてカップリング基を形成する工程;前記膜を、生物学的製剤ターゲット分子に対する親和性を有するリガンド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、及び酵素の溶液から成る群より選択されるインキュベーション溶液中に浸漬して、前記膜に曝露された場合の前記生物学的製剤ターゲット分子と結合させるために、前記リガンド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、及び酵素のうちの1つを、前記膜の前記カップリング基の少なくとも一部分にカップリングさせる工程、を含む。
【0027】
さらなる有利な実施形態では、前記リガンド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、及び酵素のうちの1つの前記膜へのカップリングを促進するために、前記インキュベーション溶液は、リン酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、又は硫酸アンモニウム、及びこれらの組み合わせから成る群より選択されるコスモトロピック塩を含む。
【0028】
さらなる有利な実施形態では、前記インキュベーション溶液は、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、及びジメチルスルホキシド(DMSO)から成る群より選択される有機溶媒を含む。
【0029】
さらなる有利な実施形態では、前記インキュベーション溶液中の前記有機溶媒の量は、リガンド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、及び酵素の溶液の曇点に実質的に近いが、それを著しく超えない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
本発明を実施するための設計されたシステムについて、他の特徴と共に以降で記載する。本発明は、以下の明細書を読むこと、及びその一部を形成し、本発明の例を示す添付の図面を参照することによって、より容易に理解される。
【0031】
【
図1】
図1は、本発明に従う、DSCとの反応、DMEDAとの部分置換、及びプロテインAの固定化を介してのプロテインA膜の合成を示す。
【
図2】
図2は、本発明に従う、膜表面でのプロテインAの局所的濃縮、及び膜への固定化を示す。
【
図3】
図3は、本発明に従う、DSCによる、及び続いて高濃度溶液でのプロテインAの固定化によるセルロース膜の直接修飾を示す。
【
図4】
図4は、本発明に従う、DSCによる、及び続いて有機溶媒を含有する低濃度溶液でのプロテインAの固定化によるセルロース膜の直接修飾を示す。
【
図5】
図5は、本発明に従う、DSCによる、及び続いてコスモトロピック塩を含有する低濃度溶液でのプロテインAの固定化によるセルロース膜の直接修飾を示す。
【
図6】
図6は、本発明に従う方法1を用いて製造したプロテインA膜の静的結合容量を示す。
【
図7】
図7は、本発明に従う方法1~4を用いて製造したプロテインA膜の静的結合容量の比較を示す。
【
図8】
図8は、本発明に従う表面活性化工程の過程で異なる有機溶媒を用いて製造したプロテインA膜の静的結合容量を示す。
【
図9】
図9は、本発明に従う方法2を用い、表面活性化工程の過程でDMSO/アセトニトリル混合溶媒を用いて製造したプロテインA膜の静的結合容量を示す。
【
図10】
図10は、本発明に従う方法3を用い、表面活性化工程の過程でDMSO/アセトニトリル混合溶媒を用いて製造したプロテインA膜の静的結合容量を示す。
【
図11】
図11は、本発明に従う方法3を用い、表面活性化工程の過程でDMSO/アセトニトリル混合溶媒を用いて製造したコンカナバリンA膜の静的結合容量を示す。
【
図12】
図12は、本発明に従う方法2を用い、プロテインA濃度を増加させた場合の静的結合容量の変化を示す。
【
図13】
図13は、本発明に従う方法4を用い、1~16.6mg/mLのプロテインA濃度の場合の静的結合容量の変化を示す。
【
図14】
図14は、本発明に従う方法3を用い、異なるカップリング試薬及び有機溶媒を用いて製造したプロテインA膜の静的結合容量を示す。
【
図15】
図15は、エピクロロヒドリンを用いて製造し、本発明に従う方法3及び4を用いてさらに修飾したプロテインA膜の静的結合容量を示す。
【
図16】
図16は、本発明に従う方法5に記載のさらなるDMSO浸漬を用いたプロテインA膜の静的結合容量を示す。
【
図17】
図17は、本発明に従う方法3において、異なる量のエタノールを用いたコンカナバリンA膜の静的結合容量を示す。
【
図18】
図18は、本発明に従う方法1を用いたプロテインA膜の動的結合容量を示す。
【
図19】
図19は、本発明に従う方法2を用いたプロテインA膜の動的結合容量を示す。
【
図20】
図20は、本発明に従う方法3を用いたプロテインA膜の動的結合容量を示す。
【
図21】
図21は、本発明に従う方法3を用いたプロテインA膜の動的結合容量を示す。
【
図22】
図22は、本発明に従う膜の、他の市販の膜製品との比較を示す。
【
図23】
図23は、本発明に従う膜の、市販の樹脂製品との比較を示す。
【0032】
当業者であれば、本発明の1又は複数の態様が、ある特定の目的を満たすことができ、一方1又は複数の他の態様が、ある特定の他の目的を満たすことができることは理解される。各目的は、そのあらゆる点において、本発明のすべての態様に対して同等に当てはまらない可能性がある。このため、前述の目的は、本発明のいずれか1つの態様に関する別の選択肢として見なされ得る。本発明のこれらの及び他の目的並びに特徴は、以下の詳細な記述を添付の図面及び例と合わせて読むことで、より充分に明らかとなるであろう。しかし、前述の本発明の概要及び以下の詳細な記述が、好ましい実施形態のものであって、本発明又は本発明の他の選択肢の実施形態を限定するものではないことは理解されたい。特に、本発明は、いくつかの具体的な実施形態を参照して本明細書において記載されるが、その記述は、本発明の例示であって、本発明を限定するものとして構築されていないことは理解される。当業者であれば、添付の請求項に記載される本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な改変及び適用を思い付くであろう。同様に、本発明の他の目的、特徴、有益性、及び利点は、本概要及び以下で述べるある特定の実施形態から明らかとなり、当業者であれば容易に明らかとなるであろう。そのような目的、特徴、有益性、及び利点は、上記から、添付の例、データ、図面、及びそれらから導かれるすべての合理的な推論と合わせて、単独で、又は本明細書に援用される参考文献の考察と共に、明らかとなるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図面を参照して、本発明についてより詳細に以降で記載する。特に定めのない限り、本明細書で用いるすべての技術的及び科学的用語は、本発明で開示される主題が属する技術分野の当業者に一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書で述べるものと類似の又は同等のいかなる方法、装置、及び材料が、本発明で開示される主題の実践又は試験に用いられてもよいが、本明細書では、代表的な方法、装置、及び材料について記載する。
【0034】
特に記載のない限り、本文書で用いられる用語及び句、並びにその変化形は、特に明示的な記載のない限り、限定的とは対照的な非限定的意味として解釈されるべきである。同様に、接続詞「及び」で連結される項目の群は、これらの項目の一つ一つがその集団に存在することが必要であるとして読み取られるべきではなく、特に明示的な記載のない限り、「及び/又は」として読み取られるべきである。同様に、接続詞「又は」で連結される項目の群は、その群の中で互いに排他的であることが必要であるとして読み取られるべきではなく、特に明示的な記載のない限り、これも「及び/又は」として読み取られるべきである。
【0035】
さらに、本開示の項目、要素、又は成分は、単数形で記載又は請求され得るが、単数形への限定が明示的に記載されていない限り、複数形も、本開示の範囲内であると意図される。いくつかの場合における「1又は複数の」、「少なくとも」、「限定されないが」、又は他の類似の句などの意味を広げる語及び句の存在は、そのような意味を広げる句が存在しないであろう場合に、より狭いケースが意図される又は必要とされることを意味するものと読み取ってはならない。
【0036】
本発明は、モノクローナル抗体(mAb)、プラスミドDNA、メッセンジャーRNA、ウィルスベクター、ウィルス粒子、ウィルス様粒子、天然タンパク質、組換えタンパク質、及びエンドトキシン、又は他のターゲット生物学的製剤などのタンパク質の迅速な捕捉工程での精製を可能とする親和性膜を含む。それは、プロテインAクロマトグラフィカラムなどの既存の樹脂製品よりも高い生産性を提供する。プロテインA親和性膜を製造する1つの実施形態において、本明細書で述べる方法に従って製造される膜は、6秒以下の保持時間、<3バールの背圧で、60~100mgヒト免疫グロブリンG/mLの静的タンパク質結合容量、及び20~90mgヒト免疫グロブリンG/mLの動的タンパク質結合容量を提供することができる。
【0037】
プロテインAカラムは、結合-溶出モードで作動する。プロセスの生産性は、以下の式を用いて定義することができる。分母のVtotは、充填、リンス、溶出、及び再生の工程を含むプロセス全体の過程でカラムを通過する溶液の総体積である。BVは、プロテインA媒体層の体積であり、Tは、保持時間である。充填体積は、プロテインA媒体の動的結合容量に比例する。したがって、プロセスの生産性は、結合容量の増加及び保持時間の短縮に伴って上昇する。
【0038】
市場で主流である樹脂カラム製品は、360秒の保持時間で作動し、その動的結合容量は、80mg/mLである。同じ動的結合容量を有し同じ生成物収率を実現する2つの媒体において、充填生産性の比は、保持時間の逆比によって算出することができる。したがって、≦6秒の保持時間で60mg/mLの動的結合容量を有する本発明の膜と比較すると、本明細書で述べる膜の充填生産性は、mAbの捕捉及び精製において、主流の樹脂カラム製品の45倍(=60/80×360秒/6秒)であり得る。現時点において、本発明で実現される生産性レベルに近づく樹脂又は膜製品で入手可能なものは存在しない。
【0039】
本発明によると、親和性分離手順に用いるための膜の製造は、異なる製造方法を含む。1つの実施形態では、これらの方法を用いて製造される親和性膜は、モノクローナル抗体(mAb)を含む抗体などのタンパク質に対する、短い保持時間でのその優れた結合容量に基づいて、競合する技術と差別化される。本明細書で述べる実施形態の例では、本発明は、膜に化学的に結合したオリゴデオキシチミジン、プロテインA、コンカナバリンA、トリプシン、プロテアーゼ、又はエンドヌクレアーゼなどのリガンド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、又は酵素の使用を含み、プロテインAのケースでは、6秒以下の保持時間、<3バールの背圧で、60~100mgヒト免疫グロブリンG/mLの静的タンパク質結合容量、及び20~90mgヒト免疫グロブリンG/mLの動的タンパク質結合容量を提供する。1つの用途では、この膜は、結合-溶出操作を通してのタンパク質の捕捉工程での精製に用いられる。
【0040】
膜製造方法1:この方法は、生物学的製剤を結合するための膜を製造することを含み、1)膨潤溶媒中にカップリング試薬を含む第一の溶液に膜を浸漬して、前記膜を膨潤させ、前記カップリング試薬の結合のための前記膜上の反応性部位の露出を増加させる工程;2)前記膜を、第二の膨潤溶媒溶液中に吸着基を含有する第二の溶液に浸漬して、前記カップリング基の少なくとも一部分を、リガンド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、及び酵素のうちの少なくとも1つを前記カップリング基にカップリングさせるための濃縮効果を提供する吸着基と反応させる工程;並びに3)前記膜を、生物学的製剤ターゲット分子に対する親和性を有するリガンド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、及び酵素の溶液から成る群より選択されるインキュベーション溶液に浸漬して、前記リガンド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ペプチド、及び酵素のうちの1つを、前記膜に曝露された場合の前記生物学的製剤ターゲット分子と結合させるために、前記膜の前記カップリング基の少なくとも一部分にカップリングさせる工程、を含む。プロテインA親和性膜を製造するこの実施形態は、>60mgヒト免疫グロブリンG/mLの高い静的タンパク質結合容量が可能な膜を提供することができる。
【0041】
図1及び2を参照すると、1つの実施形態では、本発明は、膜を膨潤する溶媒、予め固定化されたカップリング、及び吸着基を合わせて使用することで、リガンドを組み込んだ膜を製造することを含む。いくつかの実施形態では、膜は、ポリオレフィン、ポリエーテルスルホン膜、ポリ(テトラフルオロエチレン)膜、ナイロン膜、グラスファイバー膜、ヒドロゲル膜、ヒドロゲルモノリス、ポリビニルアルコール膜;セルロースエステル膜、酢酸セルロース膜、再生セルロース膜、セルロース系ナノファイバー膜、セルロース系モノリス、若しくはフィルターペーパーを含むがこれらに限定されないセルロース若しくはその誘導体などの天然ポリマー;又は実質的にセルロース若しくはその誘導体を含有するマクロ孔質支持体、などの材料を含むがこれらに限定されない群から選択される。いくつかの実施形態では、膨潤溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(THF)、及びジメチルホルムアミド(DMF)、ヘキサメチルホスホラミド、イオン液体、スルホラン、又はこれらの混合物などの有機溶媒などの化学物質を含むがこれらに限定されない群から選択される。以下の詳細な実施形態では、膜は、再生セルロース(RC)を含み、膨潤溶媒は、DMSOである。しかし、膜は、プロテインAリガンドが組み込まれた安定化再生セルロース又は他のセルロースベースの膜を含んでもよいが、方法は、当業者であれば理解されるように、この膜化学に限定されない。
【0042】
1つの実施形態では、約0.1~10.0μm、0.1μm~0.2μm、0.1μm~0.45μm、0.1μm~1μm、0.1μm~2μm、0.2~0.45、0.2~1μm、0.2~2μm、0.2~10μm、0.45μm~1μm、0.45μm~2μm、0.45μm~10μm、1μm~2μm、又は1μm~5μmの細孔サイズ、>500μm、>250μm、>100μm、>80μm、>50μm、>30μm、30μm~500μm、50μm~500μm、80μm~500μm、100μm~500μm、250μm~500μm、30μm~250μm、50μm~250μm、80μm~250μm、100μm~2500μm、30μm~100μm、50μm~100μm、80μm~100μmの厚さの膜が用いられる。本発明に従って、細孔サイズが1μm、0.45μm、及び0.2μmの膜を試験し、<6秒の保持時間、<3バールの背圧を実現した。膜は、マクロ孔質であっても、又はファイバーベースであってもよい。膜は、任意の用途に対して容量を増加させるために、多層配列にスタックされてもよい。1つの実施形態では、膜のスタック配列は、およそ70μm~10000μm、>10000μm、>7500μm、>5000μm、>2500μm、>1000μm、>900μm、>800μm、>700μm、>600μm、>500μm、>400μm、>300μm、>200μm、>100μm、>70μm、70μm~100μm、70μm~200μm、70μm~300μm、70μm~400μm、70μm~500μm、70μm~750μm、70μm~1000μm、70μm~2000μm、70μm~3000μm、70μm~4000μm、70μm~5000μm、250μm~300μm、250μm~400μm、250μm~500μm、250μm~750μm、250μm~1000μm、250~2000μm、250~3000μm、250~4000μm、250~5000μm、500μm~1000μm、500~2000μm、500~3000μm、500~4000μm、500~5000μmの厚さである。好ましくは、膜は、細孔サイズが0.2~5.0μm、厚さが70~2000μmであり、スタック配列がおよそ70~10000μmの高さである再生セルロース膜である。
【0043】
工程1:高膨潤溶媒中での膜表面活性化:
【0044】
例示的な実施形態の第一の工程では、再生セルロース膜を、N,N’-ジスクシンイミジルカーボネート(DSC)、トリエチルアミン(TEA)、及びジメチルスルホキシド(DMSO)の混合物に浸漬する。DMSOが好ましい膨潤溶媒であるが、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(THF)、及びジメチルホルムアミド(DMF)などの他の膨潤溶媒が用いられてもよい。
図1に示されるように、再生セルロース支持膜上のヒドロキシル基がDSCと反応して、アミノ反応性カーボネート中間体(-NHS)を形成する。表面活性化フェーズの過程で好ましい溶媒としてDMSOを用いて製造した膜は、他の有機溶媒を用いて製造した膜よりも著しく高い結合容量を有する。膨潤溶媒は、DSCとの反応のためにアクセス可能なヒドロキシル基を増加させ、したがって、続いてのタンパク質リガンドカップリングのための部位も増加させる。セルロースに対する他の溶媒のケースでは、膨潤が少なくなり、表面積及びタンパク質リガンドカップリング部位が減少する。
【0045】
この例示的な実施形態では、第一の工程のプロセスは、DMSO、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(THF)、及びジメチルホルムアミド(DMF)、ヘキサメチルホスホラミド、スルホラン、又は膜を膨潤させる他のいずれかの溶媒/溶液中0.1~120mg/mLのDSC及び5~100μL/mLのトリエチルアミン(TEA)を、約10~60℃の温度で約1~1800分間にわたって用いることによって行うことができる。例えば、直径47mm及び厚さ70μmの膜を、300mgのDSC、139μLのTEAを溶解した10mLのDMSOに、40℃で16時間にわたって浸漬する。
【0046】
膜の材料に応じて、溶媒は様々な量の膨潤を生じさせ得る。したがって、高い度合いの膨潤を生ずる溶媒が選択されるべきである。セルロース系の膜に関しては、単独で用いられるか、又は水を含む他の溶媒と組み合わせて用いられるかに関わらず、DMSOが好ましい溶媒である。しかし、セルロース系の膜と共に用いられる他の溶媒としては、限定されないが、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(THF)、及びジメチルホルムアミド(DMF)、ヘキサメチルホスホラミド、イオン液体、スルホラン、又はこれらの混合物などの他の有機溶媒が挙げられる。
【0047】
DSC以外の用いられ得る適切なカップリング試薬としては、限定されないが、1,1’-カルボニルジイミダゾール(CDI)、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロリド)(EDC)、ハロゲン化シアン、ジイソシアネート、ジグリシジルエーテル、エピクロロヒドリン、塩化トシル、グルタルアルデヒド、ジビニルスルホン、ハロゲン化アシル、トリアジン、無水物、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0048】
工程2:活性化表面の一部分の吸着基による修飾:
【0049】
1つの例示的な実施形態の
図1に示される第二の工程では、工程1からのDSC活性化膜を、ジメチルスルホキシド(DMSO)溶媒中のN,N-ジメチルエチレンジアミン(DMEDA)の溶液中に浸漬して、カップリング基の一部分を三級アミン基を含有するリガンドで置換する。DMEDAは、プロテインAリガンドを吸着し(
図2参照)、そのことが、より低い濃度溶液中での膜へのプロテインAリガンドのカップリングを補助する。
【0050】
この例示的な実施形態では、第二の工程のプロセスは、DMSO、他の有機溶媒のアセトニトリル、テトラヒドロフラン(THF)、及びジメチルホルムアミド(DMF)、ヘキサメチルホスホラミド、スルホランなど、又は膜を膨潤させる他のいずれかの溶媒/溶液中、約1~100μL/mL、<100μL/mL、<75μL/mL、<50μL/mL、<20μL/mL、<10μL/mL、1~10μL/mL、1~20μL/mL、1~50μL/mL、1~75μL/mL、1~100μL/mL、10~20μL/mL、10~50μL/mL、10~75μL/mL、10~100μL/mL、20~50μL/mL、20~75μL/mL、20~100μL/mL、50~75μL/mL、50~100μL/mLのDMEDAを、約10~60℃で約1分間~24時間にわたって用いることによって行うことができる。例えば、膜を、DMSO中15μL/mLのDMEDA溶液中に、室温で30分間配置する。
【0051】
三級アミン含有基以外の適切な吸着基としては、カップリングされることになるリガンドに応じて、負に帯電した部分、正に帯電した部分、疎水性、親水性、若しくはπ-πスタッキング相互作用を促進する部分、又はこれらの混合が挙げられ得るがこれらに限定されない官能基が挙げられる。
【0052】
工程3:リガンドカップリング、1つの実施形態ではリガンドはプロテインA:
【0053】
1つの例示的な実施形態の
図1に示される第三の工程では、DMEDA/DSC修飾膜を、プロテインA溶液中でインキュベートする。この工程では、DMEDA基が、タンパク質の物理的吸着を通してタンパク質のカップリング効率を高めることができる。DMEDA基を組み込むことで、
図2に示されるような濃縮効果により、この工程で低濃度のプロテインA(約0.5~5mg/mL)の使用が可能となる。この例示される実施形態は、プロテインA溶液に関して記載されるが、他のリガンド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、又は酵素の溶液が、抗体、プラスミドDNA、メッセンジャーRNA、ウィルスベクター、ウィルス粒子、ウィルス様粒子、天然タンパク質、組換えタンパク質、エンドトキシン、及び他の生物学的製剤が挙げられるがこれらに限定されない任意のターゲットに対して用いられてもよい。例えば、プロテインA溶液は、免疫グロブリンGを標的とするために用いることができ、オリゴヌクレオチド溶液は、プラスミドDNA又はメッセンジャーRNAを標的とするために、コンカナバリンA溶液は、糖タンパク質を標的とするために用いられてよい。
【0054】
例示的な実施形態では、第三の工程のプロセスは、0.1~20mg/mL、<0.1mg/mL、<0.5mg/mL、<0.75mg/mL、<1mg/mL、<2.5mg/mL、<5mg/mL、<10mg/mL、<20mg/mL、<45mg/mL、0.1~0.5mg/mL、0.1~0.75mg/mL、0.1~1mg/mL、0.1~2.5mg/mL、0.1~5mg/mL、0.1~10mg/mL、0.1~20mg/mL、0.1~45mg/mL、0.5~0.75mg/mL、0.5~1mg/mL、0.5~2.5mg/mL、0.5~5mg/mL、0.5~10mg/mL、0.5~20mg/mL、0.5~45mg/mL、0.75~1mg/mL、0.75~2.5mg/mL、0.75~5mg/mL、0.75~10mg/mL、0.75~20mg/mL、0.75~45mg/mL、1~2.5mg/mL、1~5mg/mL、1~10mg/mL、1~20mg/mL、1~45mg/mL、2.5~5mg/mL、2.5~10mg/mL、2.5~20mg/mL、2.5~45mg/mL、5~10mg/mL、5~20mg/mL、5~45mg/mL、10~20mg/mL、10~45mg/mL、20~45mg/mLのプロテインA濃度を、pH=7.0である約0.01~1Mのトリス塩基、リン酸、又は炭酸緩衝液の緩衝液と共に、0~45℃の温度で、約1分間~24時間のいずれかの時間にわたって用いることによって行うことができる。例えば、膜を、プロテインA濃度が5mg/mLのプロテインA溶液中に、pH=7.0である20mMのトリス塩基と共に、室温で16時間配置する。
【0055】
例示的な実施形態の第三の工程で膜にカップリングさせたプロテインAリガンドは、mAbを含む抗体を結合することができる部位を含有する。1つの実施形態では、方法1を用いて製造した4層の70μm厚の膜を、シリンジフィルター様のカラムにスタックする。この配置によって、保持時間≦6秒及び背圧<3バールで、約20~90mgヒト免疫グロブリンG/mLのターゲット生物学的製剤の結合容量が得られた。膜クロマトグラフィの広く認められている利点は、樹脂又はゲルクロマトグラフィが受けているものと同じ拡散物質移動の制限を受けないことである。その結果、マクロ孔質吸着膜では、広範囲の保持時間にわたって動的結合容量の流量依存性が低減する。タンパク質吸着のための特徴的な時間が、カラムを通流する保持時間よりも長い場合である充分に短い保持時間において、制限は存在する。しかし、ターゲット生物学的製剤の反応速度が物質移動の対流速度と比較して充分に速い限り、動的容量は、保持時間による影響を受けにくい。
【0056】
膜製造方法2:この方法は、生物学的製剤を結合するための膜を製造することを含み、1)膨潤溶媒中にカップリング試薬を含む溶液に膜を浸漬して、前記膜を膨潤させ、前記カップリング試薬の結合のための前記膜上の反応性部位の露出を増加させる工程;及び2)前記膜を、リガンド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、及び酵素から成る群より選択され、膜にカップリングさせるための高い濃度のリガンド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、及び酵素を有する溶液中でインキュベートする工程、を含む。プロテインA親和性膜を製造する1つの実施形態では、プロテインAリガンド溶液の濃度は、少なくとも30mg/mLである。
【0057】
方法1は、膜へのカップリング時に低濃度のリガンド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、又は酵素溶液を用いて高い結合容量を可能とするものであるが、方法2は、高濃度のリガンド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、又は酵素溶液に焦点を合わせている。
図3を参照すると、例えばDSC及び続いてのリガンド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、及び酵素による、DMEDA吸着基工程(上記で記載した方法1の工程2)なしでの膜の直接修飾を通しても、短い保持時間及び低い背圧で同じ高い結合容量を実現することができる。しかし、高濃度のリガンド、オリゴヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、又は酵素溶液(例:プロテインAの場合、約>30mg/mL、>45mg/mL、>75mg/mL、>100mg/mL、125mg/mL、>150mg/mL、>175mg/mL、30~45mg/mL、30~100mg/mL、30~125mg/mL、30~150mg/mL、30~200mg/mL、45~100mg/mL、45~125mg/mL、45~150mg/mL、45~200mg/mL、75~100mg/mL、75~125mg/mL、75~150mg/mL、75~200mg/mL、100~125mg/mL、100~150mg/mL、100~200mg/mL、125~150mg/mL、125~200mg/mL、150~200mg/mL)を用いることが必要となる。1つの実施形態では、>80mg/mLのプロテインA濃度が選択される。
【0058】
工程1:高膨潤溶媒中での膜表面活性化:
【0059】
1つの例示的な実施形態において、第一の工程では、再生セルロース膜を、N,N’-ジスクシンイミジルカーボネート(DSC)、トリエチルアミン(TEA)、及びジメチルスルホキシド(DMSO)の混合物に浸漬する。DMSOが好ましい膨潤溶媒であるが、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(THF)、及びジメチルホルムアミド(DMF)などの他の膨潤溶媒が用いられてもよい。
図8に示されるように、方法2を用いて製造した場合、膨潤溶媒としてDMSO、アセトニトリル、DMF、THFを用いて製造した膜は、90、50、51、50mgヒト免疫グロブリンG/mLの静的結合容量を有する。再生セルロース支持膜上のヒドロキシル基がDSCと反応して、アミノ反応性カーボネート中間体(-NHS)を形成する。表面活性化フェーズの過程で好ましい溶媒としてDMSOを用いて製造した膜は、他の有機溶媒を用いて製造した膜よりも著しく高い結合容量を有する。膨潤溶媒は、DSCとの反応のためにアクセス可能なヒドロキシル基を増加させ、したがって、続いてのタンパク質リガンドカップリングのための部位も増加させる。セルロースに対する他の溶媒のケースでは、膨潤が少なくなり、表面積及びタンパク質リガンドカップリング部位が減少する。
【0060】
1つの例示的な実施形態では、第一の工程のプロセスは、DMSO、他の有機溶媒のアセトニトリル、テトラヒドロフラン(THF)、及びジメチルホルムアミド(DMF)、ヘキサメチルホスホラミド、スルホランなど、又は膜を膨潤させる他のいずれかの溶媒/溶液中、0.1~120mg/mLのDSC及び5~100μL/mLのトリエチルアミン(TEA)を、約10~60℃の温度で約1~1800分間にわたって用いることによって行うことができる。例えば、直径47mm及び厚さ70μmの膜を、300mgのDSC、139μLのTEAを溶解した10mLのDMSOに、40℃で16時間にわたって浸漬する。
【0061】
膜の材料に応じて、溶媒は様々な量の膨潤を生じさせ得る。したがって、高い度合いの膨潤を生ずる溶媒が選択されるべきである。セルロース系の膜に関しては、単独で用いられるか、又は水を含む他の溶媒と組み合わせて用いられるかに関わらず、DMSOが好ましい溶媒である。しかし、セルロース系の膜と共に用いられる他の溶媒としては、限定されないが、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(THF)、及びジメチルホルムアミド(DMF)、ヘキサメチルホスホラミド、イオン液体、スルホラン、又はこれらの混合物などの有機溶媒が挙げられる。
【0062】
DSC以外の用いられ得る適切なカップリング試薬としては、限定されないが、1,1’-カルボニルジイミダゾール(CDI)、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロリド)(EDC)、ハロゲン化シアン、ジイソシアネート、ジグリシジルエーテル、エピクロロヒドリン、塩化トシル、グルタルアルデヒド、ジビニルスルホン、ハロゲン化アシル、トリアジン、無水物、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0063】
工程2:高濃度の親和性リガンドを用いたリガンドカップリング、1つの実施形態ではリガンドはプロテインA:
【0064】
1つの例示的な実施形態において、この第二の工程では、DSC修飾膜をプロテインA溶液中で直接インキュベートし、上記で記載した方法1の工程2を省略する。しかし、これには、本明細書で詳細に述べるように、>45mg/mLのプロテインA溶液濃度を例とする高いリガンド濃度が必要である。
【0065】
1つの例示的な実施形態では、第二の工程のプロセスは、約>30mg/mL、>45mg/mL、>75mg/mL、>100mg/mL、125mg/mL、>150mg/mL、>175mg/mL、30~45mg/mL、30~100mg/mL、30~125mg/mL、30~150mg/mL、30~200mg/mL、45~100mg/mL、45~125mg/mL、45~150mg/mL、45~200mg/mL、75~100mg/mL、75~125mg/mL、75~150mg/mL、75~200mg/mL、100~125mg/mL、100~150mg/mL、100~200mg/mL、125~150mg/mL、125~200mg/mL、150~200mg/mLの濃度を、約6.0~10.0のpHレベルである0.01~1Mのトリス塩基、リン酸、又は炭酸緩衝液の緩衝液濃度と共に、0~45℃の温度で、約1分間~48時間にわたって用いることによって行うことができる。例えば、膜を、プロテインA濃度が約45~160mg/mLのプロテインA溶液中に、pH=8.0である約20~200mMのトリス塩基と共に、室温で16時間配置する。この例示される実施形態は、プロテインA溶液に関して記載されるが、リガンド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、又は酵素の溶液が、抗体、プラスミドDNA、メッセンジャーRNA、ウィルスベクター、ウィルス粒子、ウィルス様粒子、天然タンパク質、組換えタンパク質、エンドトキシン、及び他の生物学的製剤が挙げられるがこれらに限定されない任意のターゲットに対して用いられてもよい。例えば、プロテインA溶液は、免疫グロブリンGを標的とするために用いることができ、オリゴヌクレオチド溶液は、プラスミドDNA又はメッセンジャーRNAを標的とするために、コンカナバリンA溶液は、糖タンパク質を標的とするために用いられてよい。
【0066】
膜製造方法3:この方法は、生物学的製剤を結合するための膜を製造することを含み、1)膨潤溶媒中にカップリング試薬を含む溶液に膜を浸漬して、前記膜を膨潤させ、前記カップリング試薬の結合のための前記膜上の反応性部位の露出を増加させる工程;及び2)前記膜を、有機溶媒と、リガンド、オリゴヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、及び酵素から成る群より選択されるターゲット結合溶液とを含有する溶液中でインキュベートして、前記リガンド、オリゴヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、及び酵素のうちの1つを膜にカップリングさせる工程、を含む。プロテインA親和性膜を製造する1つの実施形態では、プロテインA溶液の濃度は、10mg/mL以下である。
【0067】
方法1は、リガンドカップリング時に低いリガンド溶液濃度(<5mg/mL)を用いたものの、高い結合容量を可能とするものである。方法2は、高い結合容量を可能とするが、リガンドカップリング時(工程2)に高いリガンド濃度が必要である。
図4を参照すると、方法3は、メタノール、エタノール、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、並びに他のアルコール、ケトン、エーテル、アミド、及びこれらの組み合わせなどの他のいずれかの水混和性有機溶媒などの水混和性有機溶媒を、固定化溶液の成分として用いて、親和性リガンドのカップリング効率を高めるものであり、それによって、カップリグ溶液中の低リガンド濃度を用いることが可能となる。方法3は、有機溶媒の割合を増加させて用いて(用いる有機溶媒に応じて20体積%~80体積%)、溶液を、有機溶媒の濃度を増加させるとタンパク質溶液が濁り始める点である曇点に近付けた。方法3では、有機溶液が、タンパク質の溶媒和殻の水分子を置き換え、このことが、リガンドと膜との間のより強い相互作用を促進し得る。曇点を超えて有機溶液をさらに添加すると、リガンドの集合及び凝集動態が悪化し、それは、カップリング反応の効率を比較的に低下させ得る。
【0068】
工程1:高膨潤溶媒中での膜表面活性化:
【0069】
例示的な実施形態において、第一の工程では、再生セルロース膜を、N,N’-ジスクシンイミジルカーボネート(DSC)、トリエチルアミン(TEA)、及びジメチルスルホキシド(DMSO)の混合物に浸漬する。DMSOが好ましい膨潤溶媒であるが、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(THF)、及びジメチルホルムアミド(DMF)などの他の膨潤溶媒が用いられてもよい。再生セルロース支持膜上のヒドロキシル基がDSCと反応して、アミノ反応性カーボネート中間体(-NHS)を形成する。表面活性化フェーズの過程で好ましい溶媒としてDMSOを用いて製造した膜は、他の有機溶媒を用いて製造した膜よりも著しく高い結合容量を有する。膨潤溶媒は、DSCとの反応のためにアクセス可能なヒドロキシル基を増加させ、したがって、続いてのタンパク質リガンドカップリングのための部位も増加させる。セルロースに対する他の溶媒のケースでは、膨潤が少なくなり、表面積及びタンパク質リガンドカップリング部位が減少する。
【0070】
この例示的な実施形態では、第一の工程のプロセスは、DMSO、他の有機溶媒のアセトニトリル、テトラヒドロフラン(THF)、及びジメチルホルムアミド(DMF)、ヘキサメチルホスホラミド、スルホランなど、又は膜を膨潤させる他のいずれかの溶媒/溶液中、0.1~120mg/mLのDSC及び5~100μL/mLのトリエチルアミン(TEA)を、約10~60℃の温度で約1~1800分間にわたって用いることによって行うことができる。例えば、直径47mm及び厚さ70μmの膜を、300mgのDSC、139μLのTEAを溶解した10mLのDMSOに、40℃で16時間にわたって浸漬する。
【0071】
膜の材料に応じて、溶媒は様々な量の膨潤を生じさせ得る。したがって、高い度合いの膨潤を生ずる溶媒が選択されるべきである。セルロース系の膜に関しては、単独で用いられるか、又は水を含む他の溶媒と組み合わせて用いられるかに関わらず、DMSOが好ましい溶媒である。しかし、セルロース系の膜と共に用いられる他の溶媒としては、限定されないが、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(THF)、及びジメチルホルムアミド(DMF)、ヘキサメチルホスホラミド、イオン液体、スルホラン、又はこれらの混合物などの他の有機溶媒が挙げられる。
【0072】
DSC以外の用いられ得る適切なカップリング試薬としては、限定されないが、1,1’-カルボニルジイミダゾール(CDI)、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロリド)(EDC)、ハロゲン化シアン、ジイソシアネート、ジグリシジルエーテル、エピクロロヒドリン、塩化トシル、グルタルアルデヒド、ジビニルスルホン、ハロゲン化アシル、トリアジン、無水物、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0073】
工程2:低濃度のリガンドを用いたリガンドカップリング、1つの実施形態ではリガンドはプロテインA:
【0074】
1つの例示的な実施形態において、この第二の工程では、DSC、塩化トシル、又はエピクロロヒドリンで修飾した膜を、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、アセトニトリル、アセトンを含む有機溶媒を含有する低濃度のプロテインA溶液中で直接インキュベートする。
【0075】
1つの例示的な実施形態では、第二の工程のプロセスは、約0.1~20mg/mL、<0.1mg/mL、<0.5mg/mL、<0.75mg/mL、<1mg/mL、<2.5mg/mL、<5mg/mL、<10mg/mL、<20mg/mL、<45mg/mL、0.1~0.5mg/mL、0.1~0.75mg/mL、0.1~1mg/mL、0.1~2.5mg/mL、0.1~5mg/mL、0.1~10mg/mL、0.1~20mg/mL、0.1~45mg/mL、0.5~0.75mg/mL、0.5~1mg/mL、0.5~2.5mg/mL、0.5~5mg/mL、0.5~10mg/mL、0.5~20mg/mL、0.5~45mg/mL、0.75~1mg/mL、0.75~2.5mg/mL、 0.75~5mg/mL、0.75~10mg/mL、0.75~20mg/mL、0.75~45mg/mL、1~2.5mg/mL、1~5mg/mL、1~10mg/mL、1~20mg/mL、1~45mg/mL、2.5~5mg/mL、2.5~10mg/mL、2.5~20mg/mL、2.5~45mg/mL、5~10mg/mL、5~20mg/mL、5~45mg/mL、10~20mg/mL、10~45mg/mL、20~45mg/mLの親和性リガンド濃度を、著しい部分の有機溶媒と混合した約6.0~10.0のpHレベルである0.01~1Mのトリス塩基、リン酸、又は炭酸緩衝液の緩衝液濃度と共に、約0~45℃の温度で、約1分間~48時間にわたって用いることによって行うことができる。例えば、膜を、プロテインA濃度が約0.1~20mg/mLのプロテインA溶液中に、pH=8.0である約20~200mMのトリス塩基と共に、室温で16時間配置する。しかし、より高い濃度のプロテインAが用いられてもよい(20~175mg/mL)。有機溶媒の割合は、有機溶媒の濃度を増加させるとタンパク質溶液が濁り始める点である曇点に溶液を近付けるのに必要とされる量に応じて、1体積%~99体積%である。本発明での使用に適する有機溶媒としては、限定されないが、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)、及びジメチルホルムアミド(DMF)が挙げられる。
【0076】
当業者であれば、最適な割合が、リガンド及び有機溶媒に依存することは理解することができる。さらに、有機溶媒の添加が、アミンカップリング反応の速度と比較した加水分解の速度を低下させ、それによってカップリング効率が向上することから、水不安定性リンカーを用いた場合に、本方法のさらなる利点が存在する。この例示される実施形態は、プロテインA溶液に関して記載されるが、他のリガンド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、又は酵素の溶液が、抗体、プラスミドDNA、メッセンジャーRNA、ウィルスベクター、ウィルス粒子、ウィルス様粒子、天然タンパク質、組換えタンパク質、エンドトキシン、及び他の生物学的製剤が挙げられるがこれらに限定されない任意のターゲットに対して用いられてもよい。例えば、プロテインA溶液は、免疫グロブリンGを標的とするために用いることができ、オリゴヌクレオチド溶液は、プラスミドDNA又はメッセンジャーRNAを標的とするために、コンカナバリンA溶液は、糖タンパク質を標的とするために用いられてよい。
【0077】
インキュベーション溶液中の有機溶媒の量は、曇点に実質的に近いが、それを著しく超えるべきではない。インキュベーション溶液中の有機溶媒の適切な量の範囲を定めることが可能であり、上限は、[V%cp+a(100%-V%cp)]として表され、下限は、[V%cp-bV%cp]として表され、ここで、「V%cp」は、曇点でのリガンド溶液中の有機溶媒の体積パーセントであり、「a」は、曇点からの上側の許容差であり、「b」は、曇点からの下側の許容差である。例の目的で、曇点でのリガンド溶液中の有機溶媒の体積パーセント(V%cp)が、60%であり、上限及び下限がa=0.3及びb=0.5で定められる場合、インキュベーション溶液中の有機溶媒の対応する適切な量は、30体積%~72体積%の範囲内の有機溶媒となる。1つの例示的な実施形態では、第二の工程のプロセスは、「a」が、約0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.12、0.14、0.16、0.18、0.2、0.25、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、0.99であり、「b」が、約0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.12、0.14、0.16、0.18、0.2、0.25、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、0.99であるインキュベーション溶液中の有機溶媒の量を用いることによって行うことができる。100mMのトリス中5mg/mLのプロテインAのケースでは、溶液を曇点よりも僅かに下の状態とするためのメタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、アセトニトリル、アセトンの体積パーセントは、それぞれ、およそ74%、62%、50%、57%、20%、20%、43%、50%であることが見出された。この例示される実施形態は、プロテインA溶液に関して記載されるが、他のリガンド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、又は酵素の溶液が、抗体、プラスミドDNA、メッセンジャーRNA、ウィルスベクター、ウィルス粒子、ウィルス様粒子、天然タンパク質、組換えタンパク質、エンドトキシン、及び他の生物学的製剤が挙げられるがこれらに限定されない任意のターゲットに対して用いられてもよい。例えば、プロテインA溶液は、免疫グロブリンGを標的とするために用いることができ、オリゴヌクレオチド溶液は、プラスミドDNA又はメッセンジャーRNAを標的とするために、コンカナバリンA溶液は、糖タンパク質を標的とするために用いられてよい。
【0078】
膜製造方法4:この方法は、方法3に類似するが、有機溶媒の代わりにコスモトロピック塩を使用することを含む。方法1は、リガンドカップリング時に低いリガンド溶液濃度を用いたものの、高い結合容量を可能とするものである。方法2は、高い結合容量を可能とするが、リガンドカップリング時(工程2)に高いリガンド濃度が必要である。方法3は、固定化溶液の成分として水混和性有機溶媒を用いて、リガンドカップリング効率を向上させるものであり、それによって、カップリング溶液中の低いリガンド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、及び酵素濃度の使用が可能となる。
図5を参照すると、方法4では、この高い容量を、DSCによる膜の直接修飾、及び続いての、リン酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、又は硫酸アンモニウムが挙げられるがこれらに限定されないコスモトロピック塩を利用してのプロテインAリガンドのカップリングによっても実現することが可能である。
【0079】
方法4は、リガンド溶液を、コスモトロピック塩の濃度を増加させるとタンパク質溶液が濁り始める点である曇点に実質的に近いが、それを著しく超えない状態とするためにコスモトロピック塩の割合を増加させて用いるものであり、この点を超えて塩をさらに添加すると、リガンドの集合及び凝集動態が悪化し、それは、カップリング反応の効率を比較的に低下させ得る。方法4では、コスモトロピック塩が、タンパク質の溶媒和殻を乱し、このことが、プロテインAと膜との間のより強い相互作用を促進し得る。曇点近くでは、リガンド分子間の静電反発相互作用が、溶媒和層の圧縮及びタンパク質中の帯電基間の相互作用によって軽減され、塩は、ここで露出度が増加したタンパク質の疎水性部分と膜との間の相互作用を強化して、膜/溶液界面に沿ったリガンドの局所化を高め、このことが、カップリング反応の効率を高め得る。
【0080】
工程1:高膨潤溶媒中での膜表面活性化:
【0081】
例示的な実施形態において、第一の工程では、再生セルロース膜を、N,N’-ジスクシンイミジルカーボネート(DSC)、トリエチルアミン(TEA)、及びジメチルスルホキシド(DMSO)に浸漬する。DMSOは、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(THF)、及びジメチルホルムアミド(DMF)などの他の多くの有機溶媒と比較して、セルロースをより著しく膨潤させる。再生セルロース支持膜上のヒドロキシル基がDSCと反応して、アミノ反応性カーボネート中間体(-NHS)を形成する。表面活性化フェーズの過程で好ましい溶媒としてDMSOを用いて製造した膜は、他の有機溶媒を用いて製造した膜よりも著しく高い結合容量を有する。膨潤溶媒は、DSCとの反応のためにアクセス可能なヒドロキシル基を増加させ、したがって、続いてのタンパク質リガンドカップリングのための部位も増加させる。セルロースに対する他の溶媒のケースでは、膨潤が少なくなり、表面積及びタンパク質リガンドカップリング部位が減少する。
【0082】
この例示的な実施形態では、第一の工程のプロセスは、DMSO、他の有機溶媒のアセトニトリル、テトラヒドロフラン(THF)、及びジメチルホルムアミド(DMF)、ヘキサメチルホスホラミド、スルホランなど、又は膜を膨潤させる他のいずれかの溶媒/溶液中、0.1~120mg/mLのDSC及び5~10μL/mLのトリエチルアミン(TEA)を、約10~60℃の温度で約1~1800分間にわたって用いることによって行うことができる。例えば、直径47mm及び厚さ70μmの膜を、300mgのDSC、139μLのTEAを溶解した10mLのDMSOに、40℃で16時間にわたって浸漬する。
【0083】
膜の材料に応じて、溶媒は様々な量の膨潤を生じさせ得る。したがって、高い度合いの膨潤を生ずる溶媒が選択されるべきである。セルロース系の膜に関しては、単独で用いられるか、又は水を含む他の溶媒と組み合わせて用いられるかに関わらず、DMSOが好ましい溶媒である。しかし、セルロース系の膜と共に用いられる他の溶媒としては、限定されないが、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(THF)、及びジメチルホルムアミド(DMF)、ヘキサメチルホスホラミド、イオン液体、スルホラン、又はこれらの混合物などの他の有機溶媒が挙げられる。
【0084】
DSC以外の用いられ得る適切なカップリング試薬としては、限定されないが、1,1’-カルボニルジイミダゾール(CDI)、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロリド)(EDC)、ハロゲン化シアン、ジイソシアネート、ジグリシジルエーテル、エピクロロヒドリン、塩化トシル、グルタルアルデヒド、ジビニルスルホン、ハロゲン化アシル、トリアジン、無水物、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0085】
工程2:低濃度の親和性リガンドを用いたリガンドカップリング、1つの実施形態ではリガンドはプロテインA:
【0086】
1つの例示的な実施形態において、この第二の工程では、DSC修飾膜を、濃縮コスモトロピック塩溶液中の低濃度のプロテインA溶液中に直接インキュベートする。
【0087】
1つの例示的な実施形態では、第二の工程のプロセスは、約1~20mg/mL、<1mg/mL、<2.5mg/mL、<5mg/mL、<10mg/mL、<20mg/mL、<45mg/mL、1~2.5mg/mL、1~5mg/mL、1~10mg/mL、1~20mg/mL、1~45mg/mL、2.5~5mg/mL、2.5~10mg/mL、2.5~20mg/mL、2.5~45mg/mL、5~10mg/mL、5~20mg/mL、5~45mg/mL、10~20mg/mL、10~45mg/mL、20~45mg/mLのリガンド濃度を、約6.0~10.0のpHレベルで、0.5~3M、0.5~1M、0.5~2M、0.5~2.5M、0.5~3M、1~2M、1~2.5M、1~3M、1.5~2M、1.5~2.5M、1.5~3M、2~2.5M、2~3M、2.5~3Mの塩濃度と共に、約0~45℃の温度で、約1分間~48時間にわたって用いることによって行うことができる。例えば、膜を、プロテインA濃度が約5mg/mLのプロテインA溶液中に、pH=6.5である約2MのNa2SO4と共に、室温で16時間配置する。しかし、より高い濃度のプロテインAが用いられてもよい(20~175mg/mL)。コスモトロピック塩濃度は、溶液を、コスモトロピック塩の濃度を増加させるとタンパク質溶液が濁り始める点である曇点に近いが、好ましくは曇点よりも下の状態とするために(上記の方法3で詳細に述べたように)、0.5~3Mであってよい。当業者であれば、最適な割合が、リガンド及びコスモトロピック塩に依存することは理解することができる。この例示される実施形態は、プロテインA溶液に関して記載されるが、他のリガンド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、又は酵素の溶液が、抗体、プラスミドDNA、メッセンジャーRNA、ウィルスベクター、ウィルス粒子、ウィルス様粒子、天然タンパク質、組換えタンパク質、エンドトキシン、及び他の生物学的製剤が挙げられるがこれらに限定されない任意のターゲットに対して用いられてもよい。例えば、プロテインA溶液は、免疫グロブリンGを標的とするために用いることができ、オリゴヌクレオチド溶液は、プラスミドDNA又はメッセンジャーRNAを標的とするために、コンカナバリンA溶液は、糖タンパク質を標的とするために用いられてよい。
【0088】
膜製造方法5:この方法は、方法1~4に記載の親和性膜製造時のいずれかの工程の前又は後に膨潤溶媒を用いることによって、生物学的製剤を結合するための膜を製造することを含む。1つの実施形態では、膨潤溶媒は、DMSOであり、リガンドは、プロテインAであり、再生セルロース膜をDMSOに予め浸漬した後に、活性化工程を、続いてプロテインAリガンドの固定化を行った。別の実施形態では、活性化工程の後に再生セルロース膜をDMSOに浸漬し、続いてプロテインAリガンドの固定化を行った。別の実施形態では、プロテインAで官能化した再生セルロース膜をDMSOに浸漬した。結果から、これらの様々な処理において、膨潤は、未膨潤膜と比較して、結合容量を45%向上可能であることが示された。
【0089】
1つの実施形態では、再生セルロース膜をDMSOに予め浸漬した後に、活性化工程を、続いてプロテインAリガンドの固定化を行った。例えば、直径47mm及び厚さ70μmの膜を、10mLのDMSOに40℃で16時間にわたって浸漬する。
【0090】
別の実施形態では、活性化工程の後に再生セルロース膜をDMSOに浸漬し、続いてプロテインAリガンドの固定化を行った。例えば、直径47mm及び厚さ70μmのNHS活性化膜を、10mLのDMSOに40℃で16時間にわたって浸漬する。
【0091】
別の実施形態では、プロテインAで官能化した再生セルロース膜をDMSOに浸漬した。例えば、直径47mm及び厚さ70μmのプロテインA官能化膜を、10mLのDMSOに40℃で16時間にわたって浸漬する。
【0092】
方法5では、膨潤溶媒中で活性化工程を完了させる必要がなく、なぜなら、いずれかの工程の前又は後での膨潤工程が、高結合容量の膜を得るのに充分なように、反応性部位、カップリング部位、又はリガンド部位の露出を増加させることができるからである。
【0093】
膜の性能:
【0094】
上記に記載した方法に従って製造した膜を備えたカラムの重要な性能の尺度としては、静的結合容量(SBC)及び10%ブレークスルー時の動的結合容量(DBC10%)が挙げられる。1つの実施形態では、試験時に調べた主要な生物学的製剤は、精製されたポリクローナルヒト免疫グロブリンG(hIgG)であったが、なぜなら、それは、プロテインAベースの製品の性能試験の標準化のためのモデル抗体として業界で用いられることが多いからである。これらのタンパク質は、およそ150000Daの分子量の抗体である。これらの分子の等電点は、試験時に特に特定しなかったが、6.1~9.4の範囲内である。
【0095】
別の実施形態では、コンカナバリンA(ConA)を親和性リガンドとして用いた。ConAは、グリコシル化タンパク質の精製に用いられてきた。ConA親和性膜の性能を評価するためには、業界標準であるhIgG又はブタサイログロブリンを用いた。
【0096】
i:SBC測定:静的結合容量(SBC)試験は、初期のスクリーニング実験のための良好なベンチマークを提供する。SBCは、Nanodrop UV分光光度計を用いて測定した初期及び平衡時のhIgG濃度を用いた質量バランスによって測定した。
図6は、方法1によって製造したプロテインA膜のSBCが、工程2(方法1)でのDMEDAの濃度に応じて変化することを示す。この実験で用いたプロテインA濃度は、pH7.0である20mMのトリス中、5mg/mLであった。モデル抗体としてhIgGを用いた。記載した例のすべてにおいて、DMSOを溶媒として用いている。方法1を用いて得た最も高いSBCは、100mg/mL超である。
【0097】
図7は、方法1、2、3、及び4を用いて製造した細孔サイズが1、0.45、及び0.2μmであるプロテインA膜のSBCを比較するものである。この例では、方法1、2、及び3におけるリガンドカップリング時に、5mg/mLのプロテインA溶液を用いた。方法4では、16.6mg/mLのプロテインA溶液を用いる。全体として、方法1、3、及び4では、より低い濃度のプロテインA溶液を用いた方法2よりも非常に高いSBCが得られる。SBC性能の差異は、細孔サイズがより小さい支持膜の場合により著しい。したがって、方法2では、方法1、3、及び4と同様の結果を実現するには、45mg/mLよりも高いプロテインA濃度が必要である。方法4を用いた細孔サイズ1μmの膜についてはデータを収集しなかった。
【0098】
図8は、表面活性化時に膨潤溶媒としてDMSOを用いて製造した膜が、方法2を用いてアセトニトリル、DMF、又はTHFを用いて製造した膜よりも著しく高いhIgG結合容量を有することを示す。これは、pH8.0~9.0である100mMのトリス塩基中、90mg/mLのプロテインAを用いて製造した。
図9は、方法2を用い、pH8.0~9.0である100mMのトリス塩基中、90mg/mLのプロテインAを用いて、異なる体積割合のDMSO-アセトニトリル混合溶媒(0、30%、50%、70%、100%のDMSO)で活性化した膜のIgG結合容量を示す。膜の結合容量は、DMSO含有量と共に増加しており、なぜなら、膨潤溶媒は、DSCとの反応のためにアクセス可能なヒドロキシル基を増加させ、したがって、続いてのタンパク質リガンドカップリングのための部位も増加させるからである。
図10に示されるように、プロテインA親和性膜吸着体の製造に方法3を用いた場合でも同じ傾向が観察されており、これは、工程1(方法3)の過程でDMSO-アセトニトリル混合溶媒を、及びリガンドカップリング工程の過程で約60体積%のエタノールと共にpH8.0~9.0である100mMのトリス塩基中5mg/mLのプロテインAを用いて製造した。
【0099】
図11では、ConA膜を、方法3により、膜活性化工程で異なる体積割合のDMSO-アセトニトリル(0、25%、50%、75%、100%のDMSO)を用いて製造した。エタノール(19.6体積%)を、リガンドカップリング工程での有機溶媒として用い、ConAリガンドの濃度は、5mg/mLであった。ブタサイログロブリンを、20mMのトリス、pH7.4、0.5MのNaCl、1mMのMnCl
2、1mMのCaCl
2でのSBC測定のためのプローブタンパク質として用いた。結合容量はまた、一般に、用いたDMSOの体積割合と共に増加する。
【0100】
表1は、DMSO/アセトニトリル混合溶媒で活性化し、続いて異なる緩衝液条件でプロテインAを固定化したプロテインA膜のSBCを示す。全体として、活性化工程で用いた溶媒がDMSOからアセトニトリルに移行するに従ってSBCが減少しており、なぜなら、膨潤溶媒は、DSCとの反応のためにアクセス可能なヒドロキシル基を増加させ、したがって、続いてのタンパク質リガンドカップリングのための部位も増加させるからである。
表1:方法3を用い、工程1の過程ではDMSO-アセトニトリル混合溶媒を、リガンドカップリング工程の過程では約60体積%のエタノールと共に、所定のpHで100mMの所定の緩衝液及び5mg/mLのプロテインAを用いて製造した膜のSBC
【0101】
図12は、SBC>80mg hIgG/mLを実現するには、方法2のリガンドカップリング工程で>100mg/mLのプロテインA濃度を用いることが必要であることを示している。比較として、方法1、3、及び4では、SBC>80mg hIgG/mLの膜を製造するには、濃度<20mg/mLのプロテインA溶液を用いればよい。その結果、方法1、3、及び4では、低下したタンパク質濃度で、同等の結合容量を持つ膜を製造するのに充分であることから、膜の製造コストを大きく低減することができる。
【0102】
図13では、方法4によって膜を製造した。この図は、2Mの硫酸ナトリウムを伴う様々なプロテインA濃度にわたって、SBCが同様に維持されることを示している。細孔サイズ0.2umの支持膜を、活性化工程の過程で5mg DSC/mL DMSOに浸漬した。
【0103】
図14は、方法3を用いて、様々なカップリング試薬によって高容量のプロテインA膜を得ることができることを示す。この例では、DSC、塩化トシル、及びエピクロロヒドリンを用いて、細孔サイズ0.2μmの再生セルロース膜を活性化した。これらの膜を、それぞれ以下の溶液に浸漬した:5mg DSC/mL DMSOを含有する溶液;0.12mLの1M NaOH、0.13mLのエピクロロヒドリン/mL DMSOを含有する溶液;及び22.5mg 塩化トシル/mL DMSOを含有する溶液。
【0104】
図15では、細孔サイズ0.2μmの膜を、各々が異なる塩基触媒を用いた2つの異なるエピクロロヒドリン溶液中で活性化した。溶液Aは、1.45mgのアミドナトリウム、0.132mLのエピクロロヒドリン/mL DMSOであり、溶液Bは、0.067mLのTEA、0.132mLのエピクロロヒドリン/mL DMSOである。続いて、活性化した膜を、方法3及び4に記載の組成を用いたプロテインA溶液に浸した。
【0105】
これまでの例は、表面活性化の過程でDMSOなどの膨潤溶媒に膜を浸漬することで、結合容量が増加されることを示した。
図16は、表面活性化の前又は後、及びリガンド固定化の後を含む、方法1~4に従う親和性膜製造時のいずれかの工程の前又は後に膜を膨潤させることによっても、結合容量を増加可能であることを示す。この例では、再生セルロース膜を、DSC/DMSO又はDSC/アセトニトリルのいずれかで活性化した。プロテインAカップリング溶液は、約60%のエタノール及び5mg/mLのプロテインAをpH=8.0~9.0の100mMのトリス塩基緩衝液中に含有する。製造した膜を、表面活性化の前、表面活性化の後、又はリガンドカップリングの後に、DMSO中に40℃で15時間浸漬した。結果から、膨潤は、未膨潤膜と比較して、結合容量を45%向上可能であることが示された。膨潤処理を受けた膜は、反応部位、カップリング部位、又はリガンド部位の露出を増加させることによって結合容量を増加させる。
【0106】
図17は、方法3のリガンドカップリング工程で、5mg/mLのリガンド濃度と共に異なる量のエタノール(0体積%、24.5体積%、29.4体積%、及び40体積%のエタノール)を用いて製造したConA膜のSBCを示す。hIgGを、20mMのトリス、pH7.4、0.5MのNaCl、1mMのMnCl
2、1mMのCaCl
2、でのSBC測定のための試験糖タンパク質として用いた。SBCは、エタノール添加量の増加と共に増加する。この例での最大SBCは、40体積%のエタノールでの曇点付近で得られる。
【0107】
ii:DBC10%測定:DBC10%は、膜層からの溶出液中のタンパク質濃度が供給濃度の10%の到達したときの膜層の単位体積あたりに結合したタンパク質の質量を表す。膜を、プラスチック製のプロトタイプミニカラム(膜体積=0.08~0.1mL)に充填して、DBC10%値を測定した。試験は、AKTA Pureクロマトグラフィシステムを用いて行った。6~0.6秒の保持時間に相当する10~100カラム体積/分(CV/分)の流量を用いてDBC10%を測定した。試験溶液は、pH=7.3の1×PBS緩衝液中、異なる濃度のヒトIgGとした。
【0108】
図18は、シリンジフィルター様膜ホルダーに充填したプロテインA膜のDBC
10%を示す。DBC
10%は、異なる濃度のhIgG溶液を用いて収集した。示したデータは、3回行った平均であり、エラーバーは標準誤差を示す。これらの膜は、方法1によって製造した。細孔サイズ0.45μmの膜を、50mg DSC/mL DMSOの溶液中で活性化し、続いて50uL DMEDA/mL DMSOの溶液中でさらに修飾し、その後pH=7.0である20mMのトリス塩基緩衝液中5mg/mLのプロテインAを用いてリガンドカップリングを行った。
【0109】
図19は、シリンジフィルター様膜ホルダーに充填したプロテインA膜のDBC
10%を示す。DBC
10%は、異なる濃度のhIgG溶液を用いて収集した。これらの膜は、方法2によって製造した。細孔サイズ0.45μmの膜を、30mg DSC/mL DMSOの溶液中で活性化し、続いてpH=8.0~9.0である100mMのトリス塩基緩衝液中120mg/mLのプロテインAを用いてリガンドカップリングを行った。
【0110】
図20は、シリンジフィルター様膜ホルダーに充填したプロテインA膜のDBC
10%を示す。DBC
10%は、異なる濃度のhIgG溶液を用いて収集した。示したデータは、3回行った平均であり、エラーバーは標準誤差を示す。これらの膜は、方法3によって製造した。細孔サイズ0.2μm及び0.45μmの膜を、5mg DSC/mL DMSOの溶液中で別々に活性化し、続いてpH=8.0~9.0である約60%のエタノール、100mMのトリス塩基中、5mg/mLのプロテインAを用いてリガンドカップリングを行った。
【0111】
図21は、方法3を用いて製造したプロテインA膜のDBC
10%を示す。2つの異なるIgG濃度を、2.32秒の保持時間で用いた。示したデータは、3回行った平均であり、エラーバーは標準誤差を示す。細孔サイズ0.2μmの再生セルロース膜を、0.0665mLのTEA、0.131mLのエピクロロヒドリン/mL DMSOの溶液中で活性化した。続いてのカップリング溶液は、pH=8.0~9.0である約60%のエタノール、100mMのトリス塩基中、5mg/mLのプロテインAを含有する。
【0112】
図22及び23は、プロテインA膜カラムの性能を、Comp1、Comp2、及びComp3として識別される市販製品と比較するものである。本発明に従って製造した膜では、0.6~6秒の保持時間で40、54、及び66mg hIgG/mLの優れたDBC
10%が得られ、市販のプロテインA膜製品Comp1及びComp2(
図22)、並びに別のプロテインA樹脂製品Comp3(
図23)を大きく上回る性能を示している。
図23は、業界トップの樹脂カラムとの性能比較であり、これは、60秒の保持時間で僅かに25mg hIgG/mLしか得られていない。
【0113】
表2は、再生セルロース膜でのmL単位の膜体積あたりの平方メートル単位の比表面積(SSA)に対する異なる処理の効果を示す。データは、BET分析から得た。
表2:DSC、DMSO、及びアセトニトリルの組み合わせで処理した膜の膜体積あたりの比表面積(m^2/mL)
【0114】
本発明の主題を具体的な例示的実施形態及びその方法に関して詳細に述べてきたが、当業者であれば、前述の内容を理解することで、そのような実施形態に対する変更、変形、及び均等物を容易に成し得ることは理解される。したがって、本開示の範囲は、限定としてではなく例としてのものであり、本明細書で開示される教示内容を用いれば当業者に容易に明らかであるように、本主題の開示は、本発明の主題に対するそのような改変、変形、及び/又は追加を含むことを除外するものではない。