(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】医療用画像処理装置及び医療用観察システム
(51)【国際特許分類】
A61B 1/045 20060101AFI20241003BHJP
A61B 1/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
A61B1/045 610
A61B1/00 511
(21)【出願番号】P 2021542977
(86)(22)【出願日】2020-08-26
(86)【国際出願番号】 JP2020032250
(87)【国際公開番号】W WO2021039869
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2023-07-25
(31)【優先権主張番号】P 2019156097
(32)【優先日】2019-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】313009556
【氏名又は名称】ソニー・オリンパスメディカルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】道畑 泰平
(72)【発明者】
【氏名】水上 聡
【審査官】渡戸 正義
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-079249(JP,A)
【文献】国際公開第2019/087557(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0276008(US,A1)
【文献】特開2015-096920(JP,A)
【文献】特開2018-187023(JP,A)
【文献】特表2016-518197(JP,A)
【文献】特開2012-123688(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 - 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の波長帯域とは異なる第2の波長帯域の励起光が照射されることで蛍光を発する観察対象であり、前記第1の波長帯域の光が照射された前記観察対象からの光を撮像した第1の撮像画像を取得する第1の撮像画像取得部と、
前記励起光が照射された前記観察対象からの前記蛍光を撮像した第2の撮像画像を取得する第2の撮像画像取得部と、
第1の観察モードまたは第2の観察モードに切り替えるモード切替部と、
画像を一時的に記憶するメモリと、
前記メモリへの画像の書込み及び前記メモリからの画像の読出しをそれぞれ制御するメモリコントローラと、
入力された各画像に対して並列に画像処理を実行する複数の画像処理部とを備え、
前記メモリコントローラは、
前記第1の観察モードである場合には、前記第1の撮像画像を前記メモリにおける第1のメモリ領域に書き込むとともに、前記第1の撮像画像を前記画像処理部の数に対応する数に分割した複数の分割画像を前記第1のメモリ領域における前記複数の分割画像がそれぞれ書き込まれた複数の分割領域からそれぞれ読み出して前記複数の画像処理部にそれぞれ出力し、
前記第2の観察モードである場合には、
画素数を縮小する間引き処理後の前記第1の撮像画像及び前記第2の撮像画像を前記メモリにおける前記分割領域と同一のメモリ容量をそれぞれ有する第2のメモリ領域及び第3のメモリ領域にそれぞれ書き込むとともに、前記第2のメモリ領域及び前記第3のメモリ領域から前記第1の撮像画像及び前記第2の撮像画像をそれぞれ読み出して前記複数の画像処理部のうち2つの画像処理部にそれぞれ出力する医療用画像処理装置。
【請求項2】
前記画像処理部は、
前記分割画像または前記第1の撮像画像が入力された場合に第1の画像処理を実行し、前記第2の撮像画像が入力された場合に前記第1の画像処理とは異なる第2の画像処理を実行する請求項1に記載の医療用画像処理装置。
【請求項3】
前記第1の画像処理は、
前記分割画像または前記第1の撮像画像における画素値に対して第1のデジタルゲインを乗算して増幅するデジタルゲイン処理を含み、
前記第2の画像処理は、
前記第2の撮像画像における画素値に対して前記第1のデジタルゲインとは異なる第2のデジタルゲインを乗算して増幅するデジタルゲイン処理を含む請求項2に記載の医療用画像処理装置。
【請求項4】
前記第1の画像処理は、
前記分割画像または前記第1の撮像画像に対して第1の強度で画像を強調する画像強調処理を含み、
前記第2の画像処理は、
前記第2の撮像画像に対して前記第1の強度とは異なる第2の強度で画像を強調する画像強調処理を含む請求項2に記載の医療用画像処理装置。
【請求項5】
前記第2の強度は、
前記第1の強度よりも低い請求項4に記載の医療用画像処理装置。
【請求項6】
前記メモリには、
前記第1の観察モードでは、全画素数が第1の画素数である前記第1の撮像画像が前記第1のメモリ領域に書き込まれ、
前記第2の観察モードでは、前記画像処理部の数をNとした場合に、全画素数を前記第1の画素数の1/N以下の第2の画素数とする
前記間引き処理後の前記第1の撮像画像及び前記第2の撮像画像が前記第2のメモリ領域及び前記第3のメモリ領域にそれぞれ書き込まれる請求項1に記載の医療用画像処理装置。
【請求項7】
前記第1の撮像画像取得部及び前記第2の撮像画像取得部は、
前記第2の観察モードである場合に、前記第1の撮像画像と前記第2の撮像画像とを時分割で交互に取得し、
前記メモリコントローラは、
前記第2の観察モードである場合には、
前記間引き処理後の前記第1の撮像画像及び前記第2の撮像画像を前記第2のメモリ領域及び前記第3のメモリ領域に時分割で交互に書き込むとともに、前記第1の撮像画像及び前記第2の撮像画像のうち一方を書き込み始めるタイミングで、前記第2のメモリ領域及び前記第3のメモリ領域から前記第1の撮像画像及び前記第2の撮像画像のうち既に書き込んだ他方と当該一方とをそれぞれ同時に読み出す請求項1に記載の医療用画像処理装置。
【請求項8】
第1の波長帯域の光、及び前記第1の波長帯域とは異なる第2の波長帯域の励起光を出射する光源装置と、
前記励起光が照射されることで蛍光を発する観察対象であり、前記第1の波長帯域の光が照射された前記観察対象からの光を撮像することで第1の撮像画像を生成するとともに、前記励起光が照射された前記観察対象からの前記蛍光を撮像することで第2の撮像画像を生成する撮像装置と、
前記第1の撮像画像及び前記第2の撮像画像を処理する請求項1に記載の医療用画像処理装置とを備える医療用観察システム。
【請求項9】
第1の波長帯域の光、及び前記第1の波長帯域とは異なる第2の波長帯域の励起光を出射する光源装置と、
前記励起光が照射されることで蛍光を発する観察対象であり、前記第1の波長帯域の光が照射された前記観察対象からの光を撮像することで第1の撮像画像を生成するとともに、前記励起光が照射された前記観察対象からの前記蛍光を撮像することで第2の撮像画像を生成する撮像装置と、
前記第1の撮像画像及び前記第2の撮像画像を処理する請求項2に記載の医療用画像処理装置とを備える医療用観察システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医療用画像処理装置及び医療用観察システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば画素数が4K以上等のデータ量が比較的に多い撮像画像を迅速に処理する医療用画像処理装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の医療用画像処理装置では、撮像画像をメモリにおける特定のメモリ領域に書き込む。この後、当該医療用画像処理装置では、当該撮像画像を分割した複数の分割画像を上述したメモリ領域における当該複数の分割画像がそれぞれ書き込まれた複数の分割領域からそれぞれ読み出す。そして、当該医療用画像処理装置では、当該分割画像と同一の数の画像処理部を用いて、当該読み出した複数の分割画像に対して並列に画像処理を実行する。
【0003】
また、従来、第1,第2の撮像画像をそれぞれ取得し、当該第1,第2の撮像画像を対応する画素同士で重畳して重畳画像を生成する医療用画像処理装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
ここで、第1の撮像画像は、第1の波長帯域の光が観察対象に照射され、当該観察対象で反射された光を撮像素子にて撮像した画像である。また、第2の撮像画像は、第1の波長帯域とは異なる第2の波長帯域の励起光が観察対象に照射され、当該励起光によって励起された当該観察対象からの蛍光を撮像素子にて撮像した画像である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-79249号公報
【文献】米国特許出願公開第2014/276008号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献2に記載の医療用画像処理装置において、例えば、第1の撮像画像によって観察対象を観察する第1の観察モードと、重畳画像によって観察対象を観察する第2の観察モードとをそれぞれ設けた場合を想定する。この場合において、第1の観察モードでは第1の撮像画像を迅速に処理し、第2の観察モードでは第1,第2の撮像画像を迅速に処理する構成としては、以下の構成が考えられる。
【0006】
すなわち、第1の撮像画像を処理するために、上述した特許文献1に記載の医療用画像処理装置のように、上述したメモリ(以下、第1のメモリと記載)と上述した複数の画像処理部(以下、複数の第1の画像処理部と記載)とを設ける。そして、第1の撮像画像については、第1のメモリ及び複数の第1の画像処理部を用いて、当該第1の撮像画像を複数の分割画像に分割して並列に画像処理を実行する。さらに、第2の撮像画像を処理するために、第1のメモリとは異なる第2のメモリと複数の第1の画像処理部とは異なる複数の第2の画像処理部とを設ける。そして、第2の撮像画像については、第2のメモリ及び複数の第2の画像処理部を用いて、当該第2の撮像画像を複数の分割画像に分割して並列に画像処理を実行する。
しかしながら、第1のメモリ及び複数の第1の画像処理部に加えて、第2のメモリ及び複数の第2の画像処理部を設けた場合には、回路規模が増大してしまう、という問題がある。
そこで、回路規模が増大することなく観察に適した画像を生成することができる技術が要望されている。
【0007】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、回路規模が増大することなく観察に適した画像を生成することができる医療用画像処理装置及び医療用観察システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る医療用画像処理装置は、第1の波長帯域とは異なる第2の波長帯域の励起光が照射されることで蛍光を発する観察対象であり、前記第1の波長帯域の光が照射された前記観察対象からの光を撮像した第1の撮像画像を取得する第1の撮像画像取得部と、前記励起光が照射された前記観察対象からの前記蛍光を撮像した第2の撮像画像を取得する第2の撮像画像取得部と、第1の観察モードまたは第2の観察モードに切り替えるモード切替部と、画像を一時的に記憶するメモリと、前記メモリへの画像の書込み及び前記メモリからの画像の読出しをそれぞれ制御するメモリコントローラと、入力された各画像に対して並列に画像処理を実行する複数の画像処理部とを備え、前記メモリコントローラは、前記第1の観察モードである場合には、前記第1の撮像画像を前記メモリにおける第1のメモリ領域に書き込むとともに、前記第1の撮像画像を前記画像処理部の数に対応する数に分割した複数の分割画像を前記第1のメモリ領域における前記複数の分割画像がそれぞれ書き込まれた複数の分割領域からそれぞれ読み出して前記複数の画像処理部にそれぞれ出力し、前記第2の観察モードである場合には、前記第1の撮像画像及び前記第2の撮像画像を前記メモリにおける前記分割領域と同一のメモリ容量をそれぞれ有する第2のメモリ領域及び第3のメモリ領域にそれぞれ書き込むとともに、前記第2のメモリ領域及び前記第3のメモリ領域から前記第1の撮像画像及び前記第2の撮像画像をそれぞれ読み出して前記複数の画像処理部のうち2つの画像処理部にそれぞれ出力する。
【0009】
また、本開示に係る医療用観察システムは、第1の波長帯域の光、及び前記第1の波長帯域とは異なる第2の波長帯域の励起光を出射する光源装置と、前記励起光が照射されることで蛍光を発する観察対象であり、前記第1の波長帯域の光が照射された前記観察対象からの光を撮像することで第1の撮像画像を生成するとともに、前記励起光が照射された前記観察対象からの前記蛍光を撮像することで第2の撮像画像を生成する撮像装置と、前記第1の撮像画像及び前記第2の撮像画像を処理する上述した医療用画像処理装置とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係る医療用画像処理装置及び医療用観察システムによれば、回路規模が増大することなく観察に適した画像を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る医療用観察システムの構成を示す図である。
【
図2】
図2は、カメラヘッド及び制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、撮像部から出力される撮像画像を説明する図である。
【
図4】
図4は、第1の画像処理部の構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、制御装置の動作を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、通常観察モードでのメモリコントローラの動作を説明する図である。
【
図7】
図7は、通常観察モードでのメモリコントローラの動作を説明する図である。
【
図8】
図8は、蛍光観察モードでのメモリコントローラの動作を説明する図である。
【
図9】
図9は、蛍光観察モードでのメモリコントローラの動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、図面を参照して、本開示を実施するための形態(以下、実施の形態)について説明する。なお、以下に説明する実施の形態によって本開示が限定されるものではない。さらに、図面の記載において、同一の部分には同一の符号を付している。
【0013】
〔医療用観察システムの概略構成〕
図1は、本実施の形態に係る医療用観察システム1の構成を示す図である。
医療用観察システム1は、医療分野において用いられ、被写体となる生体内(観察対象)を撮像(観察)するシステムである。この医療用観察システム1は、
図1に示すように、挿入部2と、光源装置3と、ライトガイド4と、カメラヘッド5と、第1伝送ケーブル6と、表示装置7と、第2伝送ケーブル8と、制御装置9と、第3伝送ケーブル10とを備える。
【0014】
本実施の形態では、挿入部2は、硬性内視鏡で構成されている。すなわち、挿入部2は、全体が硬質、または一部が軟質で他の部分が硬質である細長形状を有し、生体内に挿入される。この挿入部2内には、1または複数のレンズを用いて構成され、被写体からの光を集光する光学系が設けられている。
【0015】
光源装置3は、ライトガイド4の一端が接続され、制御装置9による制御の下、当該ライトガイド4の一端に生体内に照射する光を供給する。この光源装置3は、
図1に示すように、第1の光源31と、第2の光源32とを備える。
第1の光源31は、第1の波長帯域の光を出射(発光)する。本実施の形態では、第1の光源31は、白色光(第1の波長帯域の光)を発光するLED(Light Emitting Diode)で構成されている。
第2の光源32は、第1の波長帯域とは異なる第2の波長帯域の励起光を出射(発光)する。本実施の形態では、近赤外の波長帯域の近赤外励起光(第2の波長帯域の励起光)を発光する半導体レーザで構成されている。
【0016】
第2の光源32が発光する近赤外励起光は、インドシアニングリーン等の蛍光物質を励起する励起光である。また、当該インドシアニングリーン等の蛍光物質は、当該近赤外励起光で励起すると、当該近赤外励起光の波長帯域の中心波長よりも長波長側に中心波長を有する蛍光を発光する。なお、近赤外励起光の波長帯域と蛍光の波長帯域とは、一部が重なり合うように設定してもよく、あるいは、全く重なり合わないように設定してもよい。
【0017】
そして、本実施の形態に係る光源装置3では、制御装置9による制御の下、通常観察モードにおいて、第1の光源31が駆動する。すなわち、通常観察モードでは、光源装置3は、通常光(白色光)を発光する。当該通常観察モードは、本開示に係る第1の観察モードに相当する。一方、光源装置3では、制御装置9による制御の下、蛍光観察モードにおいて、交互に繰り返される第1,第2の期間のうち、第1の期間において第1の光源31が駆動し、第2の期間において第2の光源32が駆動する。すなわち、蛍光観察モードでは、光源装置3は、第1の期間において通常光(白色光)を発光し、第2の期間において近赤外励起光を発光する。当該蛍光観察モードは、本開示に係る第2の観察モードに相当する。
なお、本実施の形態では、光源装置3は、制御装置9とは別体で構成されているが、これに限らず、当該制御装置9内部に設けられた構成を採用しても構わない。
【0018】
ライトガイド4は、一端が光源装置3に着脱自在に接続されるとともに、他端が挿入部2に着脱自在に接続される。そして、ライトガイド4は、光源装置3から供給された光(通常光や近赤外励起光)を一端から他端に伝達し、挿入部2に供給する。生体内に通常光(白色光)が照射された場合には、当該生体内で反射された通常光が挿入部2内の光学系により集光される。なお、以下では、説明の便宜上、挿入部2内の光学系により集光された当該通常光を第1の被写体像と記載する。また、生体内に近赤外励起光が照射された場合には、当該生体内で反射された近赤外励起光と、当該生体内における病変部に集積するインドシアニングリーン等の蛍光物質が励起され、当該蛍光物質から発せられた蛍光とが挿入部2内の光学系により集光される。なお、以下では、説明の便宜上、挿入部2内の光学系により集光された近赤外励起光と蛍光とを第2の被写体像と記載する。
【0019】
カメラヘッド5は、本開示に係る撮像装置に相当する。このカメラヘッド5は、挿入部2の基端(接眼部21(
図1))に着脱自在に接続される。そして、カメラヘッド5は、制御装置9による制御の下、挿入部2にて集光された第1の被写体像(通常光)や第2の被写体像(近赤外励起光及び蛍光)を撮像し、当該撮像による画像信号(RAW信号)を出力する。
なお、カメラヘッド5の詳細な構成については、後述する。
【0020】
第1伝送ケーブル6は、一端がコネクタCN1(
図1)を介して制御装置9に着脱自在に接続され、他端がコネクタCN2(
図1)を介してカメラヘッド5に着脱自在に接続される。そして、第1伝送ケーブル6は、カメラヘッド5から出力される画像信号等を制御装置9に伝送するとともに、制御装置9から出力される制御信号、同期信号、クロック、及び電力等をカメラヘッド5にそれぞれ伝送する。
なお、第1伝送ケーブル6を介したカメラヘッド5から制御装置9への画像信号等の伝送は、当該画像信号等を光信号で伝送してもよく、あるいは、電気信号で伝送しても構わない。第1伝送ケーブル6を介した制御装置9からカメラヘッド5への制御信号、同期信号、クロックの伝送も同様である。
【0021】
表示装置7は、液晶または有機EL(Electro Luminescence)等を用いた表示ディスプレイで構成され、制御装置9による制御の下、当該制御装置9からの映像信号に基づく画像を表示する。
第2伝送ケーブル8は、一端が表示装置7に着脱自在に接続され、他端が制御装置9に着脱自在に接続される。そして、第2伝送ケーブル8は、制御装置9にて処理された映像信号を表示装置7に伝送する。
【0022】
制御装置9は、本開示に係る医療用画像処理装置に相当する。この制御装置9は、CPU(Central Processing Unit)やFPGA(Field-Programmable Gate Array)等で構成され、光源装置3、カメラヘッド5、及び表示装置7の動作を統括的に制御する。
なお、制御装置9の詳細な構成については、後述する。
第3伝送ケーブル10は、一端が光源装置3に着脱自在に接続され、他端が制御装置9に着脱自在に接続される。そして、第3伝送ケーブル10は、制御装置9からの制御信号を光源装置3に伝送する。
【0023】
〔カメラヘッドの構成〕
次に、カメラヘッド5の構成について説明する。
図2は、カメラヘッド5及び制御装置9の構成を示すブロック図である。
なお、
図2では、説明の便宜上、制御装置9及びカメラヘッド5と第1伝送ケーブル6との間のコネクタCN1,CN2、制御装置9及び表示装置7と第2伝送ケーブル8との間のコネクタ、制御装置9及び光源装置3と第3伝送ケーブル10との間のコネクタの図示を省略している。
カメラヘッド5は、
図2に示すように、レンズユニット51と、撮像部52と、通信部53とを備える。
【0024】
レンズユニット51は、1または複数のレンズを用いて構成され、挿入部2にて集光された第1の被写体像(通常光)や第2の被写体像(近赤外励起光及び蛍光)を撮像部52(撮像素子522)の撮像面に結像する。
撮像部52は、制御装置9による制御の下、生体内を撮像する。この撮像部52は、
図2に示すように、励起光カットフィルタ521と、撮像素子522と、信号処理部523とを備える。
【0025】
励起光カットフィルタ521は、レンズユニット51と撮像素子522との間に設けられ、特定の波長帯域を除去するバンドストップフィルタで構成されている。なお、以下では、説明の便宜上、励起光カットフィルタ521にてカット(除去)する波長帯域をカット帯域と記載し、当該カット帯域よりも短波長側であって当該励起光カットフィルタ521を透過する波長帯域を短波側透過帯域と記載し、当該カット帯域よりも長波長側であって当該励起光カットフィルタ521を透過する波長帯域を長波側透過帯域と記載する。
ここで、カット帯域は、近赤外励起光の波長帯域のうち少なくとも一部の波長帯域を含む。本実施の形態では、カット帯域は、近赤外励起光の波長帯域の一部の波長帯域を含む。また、長波側透過帯域は、近赤外励起光の波長帯域の一部の波長帯域と蛍光の波長帯域とを含む。さらに、短波側透過帯域は、通常光(白色光)の波長帯域(第1の波長帯域)を含む。
すなわち、励起光カットフィルタ521は、レンズユニット51から撮像素子522に向かう第1の被写体像(通常光(白色光))を透過させる。一方、励起光カットフィルタ521は、レンズユニット51から撮像素子522に向かう第2の被写体像(近赤外励起光及び蛍光)については、近赤外励起光の一部と蛍光とを透過させる。
【0026】
撮像素子522は、励起光カットフィルタ521を透過した光を受光して電気信号(アナログ信号)に変換するCCD(Charge Coupled Device)またはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等で構成されている。
【0027】
ここで、撮像素子522の撮像面(受光面)には、透過させる光(R(赤),G(緑),B(青))の波長帯域に応じてグループ分けされた3つのフィルタ群が所定の形式(例えば、ベイヤ配列)で配列されたカラーフィルタ522a(
図2)が設けられている。
具体的に、カラーフィルタ522aは、Rの波長帯域の光を主に透過させるRフィルタ群と、Bの波長帯域の光を主に透過させるBフィルタ群と、Gの波長帯域の光を主に透過させるGフィルタ群とを有する。
なお、R,G,Bの各フィルタ群は、近赤外励起光及び蛍光についても透過させる。そして、撮像素子522は、R,G,Bの波長帯域の光のみならず、近赤外励起光及び蛍光の波長帯域の光に対しても感度を有する。
【0028】
そして、撮像素子522は、制御装置9による制御の下、通常観察モードにおいて、所定のフレームレートで第1の被写体像(通常光)を撮像する。また、撮像素子522は、制御装置9による制御の下、蛍光観察モードにおいて、光源装置3の発光タイミングに同期して、交互に繰り返される第1,第2の期間毎に撮像を行う。
以下では、説明の便宜上、撮像素子522により第1の被写体像(通常光)を撮像することで生成された画像を通常光画像(本開示に係る第1の撮像画像に相当)と記載する。また、撮像素子522により第2の被写体像(近赤外励起光及び蛍光)を撮像することで生成された画像を蛍光画像(本開示に係る第2の撮像画像に相当)と記載する。また、通常光画像及び蛍光画像を纏めて撮像画像と記載する。
【0029】
信号処理部523は、制御装置9による制御の下、撮像素子522にて生成された撮像画像(アナログ信号)に対して信号処理を行って撮像画像(RAW信号(デジタル信号))を出力する。
ここで、信号処理部523が行う信号処理としては、例えば、A/D変換や間引き処理を例示することができる。
間引き処理は、撮像素子522にて生成された撮像画像の全画素数を第1の画素数とした場合に、当該撮像画像の全画素数を当該第1の画素数の1/N以下(縦横それぞれ2/N以下)の第2の画素数とする処理である。すなわち、例えば、画素数が4Kの撮像画像は、当該間引き処理により、画素数がフルHD(High Definition)以下の撮像画像に変換される。なお、当該間引き処理は、全画素数が第1の画素数である撮像画像の画素を一定周期で削除することで当該撮像画像の全画素数を第2の画素数としてもよく、全画素数が第1の画素数である撮像画像における隣接する画素を加算することで当該撮像画像の全画素数を第2の画素数としても構わない。
【0030】
図3は、撮像部52から出力される撮像画像を説明する図である。具体的に、
図3は、撮像素子522における各画素522bの物理的な配置を模式的に示す図である。
なお、
図3では、説明の便宜上、撮像素子522における全画素のうち一部の画素522bのみを図示している。
撮像部52は、撮像画像をラスター単位で順次、出力する。具体的に、撮像素子522において、各画素522bは、マトリクス状に配列されている。そして、撮像部52は、
図3に矢印及び破線で示すように、第1行の各画素522bにおいて、第1列に配列された画素522bから最終列に配列された画素522bまで順次、当該各画素522bから1ライン分の画像を出力する。なお、
図3に示した1つの矢印は、1ライン分の画像を示している。続いて、撮像部52は、第2行の各画素522bにおいて、第1列に配列された画素522bから最終列に配列された画素522bまで順次、当該各画素522bから1ライン分の画像を出力する。そして、撮像部52は、以上の処理を最終行まで継続することで、1フレーム分の撮像画像を出力する。次のフレームの撮像画像を出力する際には、撮像部52は、第1行の各画素522bに戻って上記同様の処理を行う。
なお、上記では、上述した間引き処理が行われていない場合での撮像画像のラスター出力を説明したが、上述した間引き処理が行われた場合でも
図3に矢印及び破線で示した順序で間引き処理後の撮像画像がラスター単位で順次、出力される。
【0031】
通信部53は、第1伝送ケーブル6を介して、撮像部52から順次、出力されるラスター単位の撮像画像を制御装置9に送信するトランスミッタとして機能する。この通信部53は、例えば、第1伝送ケーブル6を介して、制御装置9との間で、1Gbps以上の伝送レートで撮像画像の通信を行う高速シリアルインターフェースで構成されている。
【0032】
〔制御装置の構成〕
次に、制御装置9の構成について
図2を参照しながら説明する。
制御装置9は、
図2に示すように、通信部91と、メモリ92と、観察画像生成部93と、制御部94と、入力部95と、出力部96と、記憶部97とを備える。
通信部91は、第1伝送ケーブル6を介して、カメラヘッド5(通信部53)から順次、出力されるラスター単位の撮像画像を受信するレシーバとして機能する。この通信部91は、例えば、通信部53との間で、1Gbps以上の伝送レートで撮像画像の通信を行う高速シリアルインターフェースで構成されている。すなわち、通信部91は、本開示に係る第1の撮像画像取得部及び第2の撮像画像取得部に相当する。
メモリ92は、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等で構成されている。このメモリ92は、カメラヘッド5(通信部53)から順次、出力されるラスター単位の撮像画像を複数フレーム分、一時的に記憶する。
【0033】
観察画像生成部93は、制御部94による制御の下、カメラヘッド5(通信部53)から順次、出力され、通信部91にて受信したラスター単位の撮像画像を処理する。この観察画像生成部93は、
図2に示すように、メモリコントローラ931と、第1~第4の画像処理部932~935とを備える。
メモリコントローラ931は、制御部94による制御の下、メモリ92への画像の書込み、及び当該メモリ92からの画像の読出しを制御する。なお、メモリコントローラ931の機能の詳細については、後述する「制御装置の動作」で説明する。
【0034】
第1~第4の画像処理部932~935は、制御部94による制御の下、入力された各画像に対して並列に画像処理を実行する。
図4は、第1の画像処理部932の構成を示すブロック図である。
なお、第1~第4の画像処理部932~935の構成は、同一である。このため、以下では、第1の画像処理部932の構成についてのみ説明する。
第1の画像処理部932は、
図4に示すように、クランプ処理部932Aと、WB処理部932Bと、デジタルゲイン処理部932Cと、デモザイク処理部932Dと、色マトリクス処理部932Eと、ガンマ処理部932Fと、YC処理部932Gと、第1の拡大処理部932Hと、画像強調処理部932Iと、第2の拡大処理部932Jと、SDI(Serial Digital Interface)変換部932Kとを備える。
【0035】
ここで、第1~第4の画像処理部932~935に入力される画像(カメラヘッド5から出力される撮像画像(RAWデータ)に対応する画像)は、画素毎に、カラーフィルタ522aを構成するR,G,Bの各フィルタ群に対応するR,G,Bのいずれかの成分情報(画素データ)を含む。以下では、説明の便宜上、Rの成分情報をr値と記載し、Gの成分情報をg値と記載し、Bの成分情報をb値と記載する。
【0036】
クランプ処理部932Aは、入力された画像に対して、黒レベルを固定するクランプ処理を実行する。
WB処理部932Bは、クランプ処理後の画像におけるr値、g値、及びb値に特定のゲインをそれぞれ乗算するWB処理(ホワイトバランス調整処理)を行う。
デジタルゲイン処理部932Cは、WB処理後の画像におけるr値、g値、及びb値にデジタルゲインを乗算して当該r値、g値、及びb値を増幅するデジタルゲイン処理を実行する。
【0037】
デモザイク処理部932Dは、デジタルゲイン処理後の画像に対して、1画素毎に補間によりr値、g値、及びb値の画素値(R(r値),G(g値),B(b値))を持たせるデモザイク処理を実行する。
色マトリクス処理部932Eは、デモザイク処理後の画像に対して、色補正マトリクスを用いることにより、1画素毎の画素値(R,G,B)を画素値(Rm,Gm,Bm)に補正する色マトリクス処理を実行する。
ガンマ処理部932Fは、色マトリクス処理後の画像に対して、ガンマ処理(γ補正)を実行する。
YC処理部932Gは、ガンマ処理後の画像を輝度信号及び色差信号(Y,CB/CR信号)に変換するYC変換を実行する。
【0038】
第1の拡大処理部932Hは、YC変換後の画像に対して第1の拡大処理(電子ズーム)を実行する。
画像強調処理部932Iは、第1の拡大処理(電子ズーム)後の画像に対して画像強調処理を実行する。
第2の拡大処理部932Jは、画像強調処理後の画像に対して第2の拡大処理(電子ズーム)を実行する。
SDI変換部932Kは、第2の拡大処理(電子ズーム)後の画像に対してSDI変換を実行する。
そして、第1~第4の画像処理部932~935における各SDI変換部932Kからの画像は、第2伝送ケーブル8を介して、後述する第1の映像信号または第2の映像信号として表示装置7に出力される。
【0039】
制御部94は、例えば、CPUやFPGA等を用いて構成され、第1~第3伝送ケーブル6,8,10を介して制御信号を出力することで、光源装置3、カメラヘッド5、及び表示装置7の動作を制御するとともに、制御装置9全体の動作を制御する。この制御部94は、
図2に示すように、光源制御部941と、撮像制御部942と、モード切替部943とを備える。なお、光源制御部941、撮像制御部942、及びモード切替部943の機能については、後述する「制御装置の動作」で説明する。
【0040】
入力部95は、マウス、キーボード、及びタッチパネル等の操作デバイスを用いて構成され、医師等のユーザによるユーザ操作を受け付ける。そして、入力部95は、当該ユーザ操作に応じた操作信号を制御部94に出力する。
出力部96は、スピーカやプリンタ等を用いて構成され、各種情報を出力する。
記憶部97は、制御部94が実行するプログラムや、制御部94の処理に必要な情報等を記憶する。
【0041】
〔制御装置の動作〕
次に、上述した制御装置9の動作について説明する。
図5は、制御装置9の動作を示すフローチャートである。
なお、以下では、撮像素子522は、画素数が4Kの撮像画像を生成する撮像素子であるものとする。また、第1の画像処理部932において、処理可能とする最大データ量は、画素数がHDの画像のデータ量であるものとする。他の第2~第4の画像処理部933~935も同様である。
先ず、制御部94は、現時点での制御装置9のモードが通常観察モードであるか否かを判断する(ステップS1)。
なお、制御装置9のモードは、モード切替部943にて切り替えられる。具体的に、モード切替部943は、医師等のユーザによる入力部95へのユーザ操作に応じて、制御装置9のモードを通常観察モードまたは蛍光観察モードに切り替える。
【0042】
通常観察モードであると判断された場合(ステップS1:Yes)には、光源制御部941は、第1の光源31を駆動させる(ステップS2)。すなわち、生体内には、通常光(白色光)が照射される。
ステップS2の後、撮像制御部942は、所定のフレームレートで第1の被写体像(通常光)を撮像素子522に撮像させる(ステップS3)。そして、撮像部52は、画素数が4Kの通常光画像をラスター単位で順次、出力する。
【0043】
ステップS3の後、メモリコントローラ931は、メモリ92への画像の書込み、及び当該メモリ92からの画像の読出しを制御する(ステップS4)。
図6及び
図7は、通常観察モードでのメモリコントローラ931の動作を説明する図である。具体的に、
図6は、メモリ92への通常光画像の書込みを説明する図である。
図7は、メモリ92からの通常光画像の読出しを説明する図である。なお、
図6及び
図7では、メモリ92における複数のバンクのうち特定のバンク921を模式的に示している。当該バンク921は、本開示に係る第1のメモリ領域に相当し、本実施の形態では、画素数が4Kの画像のデータ量に対応したメモリ容量を有する。また、
図7では、バンク921における全領域を田の字状に4つの第1~第4の分割領域Ar1~Ar4に均等に区分けしている。すなわち、本実施の形態では、第1~第4の分割領域Ar1~Ar4は、画素数がHDの画像のデータ量に対応したメモリ容量を有する。
【0044】
具体的に、メモリコントローラ931は、
図6に矢印及び破線で示すように、撮像部52から順次、出力され、通信部91にて受信したラスター単位の通常光画像(画素数:4K)を1ライン毎にバンク921に順次、書き込む。なお、
図6に示した1つの矢印は、通常光画像(画素数:4K)における1ライン分の画像を示している。
また、メモリコントローラ931は、1フレームの通常光画像(画素数:4K)を第4の記憶位置P4(
図7)まで書き込むタイミングと略同時に、
図7に矢印及び破線で示すように、第1~第4の分割領域Ar1~Ar4にそれぞれ書き込まれた画像を第1~第4の記憶位置P1~P4から1ライン毎に順次、読み出す。
【0045】
なお、第1の分割領域Ar1に書き込まれた画像(以下、第1の分割画像と記載)は、通常光画像のうち、左上角位置を含む矩形状の領域の画像である。そして、第1の記憶位置P1に記憶された画素データは、第1の分割画像における左上角位置の画素の画素データである。また、第2の分割領域Ar2に書き込まれた画像(以下、第2の分割画像と記載)は、通常光画像のうち、右上角位置を含む矩形状の領域の画像である。そして、第2の記憶位置P2に記憶された画素データは、第2の分割画像における左上角位置の画素の画素データである。さらに、第3の分割領域Ar3に書き込まれた画像(以下、第3の分割画像と記載)は、通常光画像のうち、左下角位置を含む矩形状の領域の画像である。そして、第3の記憶位置P3に記憶された画素データは、第3の分割画像における左上角位置の画素の画素データである。また、第4の分割領域Ar4に書き込まれた画像(以下、第4の分割画像と記載)は、通常光画像のうち、右下角位置を含む矩形状の領域の画像である。そして、第4の記憶位置P4に記憶された画素データは、第4の分割画像における左上角位置の画素の画素データである。
以上説明した第1~第4の分割画像は、画素数が4Kの通常光画像を4つに均等に分割された画像であるため、画素数がHDの画像である。
そして、当該読み出された第1~第4の分割画像(画素数:HD)は、1ライン毎に順次、第1~第4の画像処理部932~935にそれぞれ入力される。なお、
図7に示した1つの矢印は、第1~第4の分割画像(画素数:HD)における1ライン分の画像を示している。
【0046】
ステップS4の後、第1~第4の画像処理部932~935は、入力された第1~第4の分割画像(画素数:HD)に対して並列に画像処理を実行する(ステップS5)。ここで、第1~第4の画像処理部932~935は、第1の画像処理を実行する。なお、当該第1の画像処理については、後述する「第1,第2の画像処理について」で説明する。
ステップS5の後、観察画像生成部93は、第2伝送ケーブル8を介して、第1の画像処理がそれぞれ実行された後の第1~第4の分割画像を合成した通常光画像(画素数:4K)を表示するための第1の映像信号を表示装置7に出力する(ステップS6)。これにより、表示装置7は、第1の映像信号に基づく通常光画像(画素数:4K)を表示する。
【0047】
ステップS1に戻って、蛍光観察モードであると判断された場合(ステップS1:No)には、光源制御部941は、第1,第2の光源31,32の時分割駆動を実行する(ステップS7)。具体的に、光源制御部941は、ステップS7において、同期信号に基づいて、交互に繰り返される第1,第2の期間のうち、第1の期間において第1の光源31を発光させ、第2の期間において第2の光源32を発光させる。
【0048】
ステップS7の後、撮像制御部942は、同期信号に基づいて、第1,第2の光源31,32の発光タイミングに同期させ、撮像部52に第1,第2の期間において第1,第2の被写体像をそれぞれ撮像させる(ステップS8~S11)。すなわち、撮像素子522は、第1の期間である場合(ステップS8:Yes)、言い換えれば、生体内に通常光(白色光)が照射された場合には、第1の被写体像(通常光)を撮像して通常光画像を生成する(ステップS9)。一方、撮像素子522は、第2の期間である場合(ステップS8:No)、言い換えれば、生体内に近赤外励起光が照射された場合には、第2の被写体像(近赤外励起光及び蛍光)を撮像して蛍光画像を生成する(ステップS10)。また、信号処理部523は、間引き処理を実行する(ステップS11)。当該間引き処理により、画素数が4Kの通常光画像及び蛍光画像は、それぞれ画素数がHDの通常光画像及び蛍光画像とされる。
そして、撮像部52は、第1の期間において撮像することで得られた画素数がHDの通常光画像をラスター単位で順次、出力するとともに、第2の期間において撮像することで得られた画素数がHDの蛍光画像をラスター単位で順次、出力する。
【0049】
ステップS11の後、メモリコントローラ931は、メモリ92への画像の書込み、及び当該メモリ92からの画像の読出しを制御する(ステップS12)。
図8及び
図9は、蛍光観察モードでのメモリコントローラ931の動作を説明する図である。具体的に、
図8(a)は、メモリ92への通常光画像の書込みを説明する図である。
図8(b)は、メモリ92への蛍光画像の書込みを説明する図である。
図9(a)は、メモリ92からの通常光画像の読出しを説明する図である。
図9(b)は、メモリ92からの蛍光画像の読出しを説明する図である。なお、
図8及び
図9では、メモリ92における複数のバンクのうち特定のバンク922,923を模式的に示している。当該バンク922,923は、バンク921と同一のメモリ容量(本実施の形態では画素数が4Kの画像のデータ量に対応したメモリ容量)を有する。また、
図8及び
図9では、バンク922における全領域を田の字状に4つの第5~第8の分割領域Ar5~Ar8に均等に区分けしているとともに、バンク923における全領域を田の字状に4つの第9~第12の分割領域Ar9~Ar12に均等に区分けしている。すなわち、第5~第12の分割領域Ar5~Ar12は、第1~第4の分割領域Ar1~Ar4と同一のメモリ容量(本実施の形態では画素数がHDの画像のデータ量に対応したメモリ容量)を有する。なお、バンク922における第5の分割領域Ar5は、本開示に係る第2のメモリ領域に相当する。また、バンク923における第9の分割領域Ar9は、本開示に係る第3のメモリ領域に相当する。
【0050】
具体的に、メモリコントローラ931は、
図8(a)に矢印及び破線で示すように、撮像部52から順次、出力され、通信部91にて受信したラスター単位の通常光画像(画素数:HD)を1ライン毎にバンク922における第5の分割領域Ar5に順次、書き込む。なお、
図8(a)に示した1つの矢印は、通常光画像(画素数:HD)における1ライン分の画像を示している。また、メモリコントローラ931は、バンク922に対して1フレームの通常光画像(画素数:HD)を書き込んだ後、
図8(b)に矢印及び破線で示すように、撮像部52から順次、出力され、通信部91にて受信したラスター単位の蛍光画像(画素数:HD)を1ライン毎にバンク923における第9の分割領域Ar9に順次、書き込む。なお、
図8(b)に示した1つの矢印は、蛍光画像(画素数:HD)における1ライン分の画像を示している。
【0051】
また、メモリコントローラ931は、蛍光画像(画素数:HD)を第6の記憶位置P6から書き込み始めるタイミングと略同時に、
図9に矢印及び破線で示すように、第5,第9の分割領域Ar5,Ar9にそれぞれ書き込まれた通常光画像(画素数:HD)及び蛍光画像(画素数:HD)を第5,第6の記憶位置P5,P6から1ライン毎に順次、読み出す。なお、
図9に示した1つの矢印は、通常光画像(画素数:HD)及び蛍光画像(画素数:HD)における1ライン分の画像を示している。また、
図8及び
図9では、時間的に同一のタイミングの矢印については同一の太さの矢印としている。すなわち、
図8(b)及び
図9(a),
図9(b)に示した矢印は同一の太さであり、
図8(a)に示した矢印とは異なる太さである。ここで、第5の記憶位置P5に記憶された画素データは、通常光画像(画素数:HD)における左上角位置の画素の画素データである。また、第6の記憶位置P6に記憶された画素データは、蛍光画像(画素数:HD)における左上角位置の画素の画素データである。
そして、当該読み出された通常光画像(画素数:HD)及び蛍光画像(画素数:HD)は、1ライン毎に順次、第1,第2の画像処理部932,933にそれぞれ入力される。なお、第3,第4の画像処理部934,935は、蛍光観察モードでは、何ら処理を実行しない。
【0052】
ステップS12の後、第1,第2の画像処理部932,933は、入力された通常光画像(画素数:HD)及び蛍光画像(画素数:HD)に対して並列に画像処理を実行する(ステップS13)。ここで、第1の画像処理部932は、入力された通常光画像(画素数:HD)に対して第1の画像処理を実行する。一方、第2の画像処理部933は、入力された蛍光画像(画素数:HD)に対して第2の画像処理を実行する。なお、当該第1,第2の画像処理については、後述する「第1,第2の画像処理について」で説明する。
ステップS13の後、観察画像生成部93は、第2伝送ケーブル8を介して、第1の画像処理が実行された後の通常光画像と、第2の画像処理が実行された後の蛍光画像と、当該通常光画像及び当該蛍光画像を対応する画素同士で重畳した重畳画像との少なくともいずれかの画像を表示するための第2の映像信号を表示装置7に出力する(ステップS14)。これにより、表示装置7は、第2の映像信号に基づく画像(画素数:4K)を表示する。
【0053】
〔第1,第2の画像処理について〕
第1,第2の画像処理では、制御部94による制御の下、例えば、クランプ処理、WB処理、デジタルゲイン処理、デモザイク処理、色マトリクス処理、ガンマ処理、YC処理、第1の拡大処理、及び画像強調処理が以下のように実行される。
(1)クランプ処理について
第1,第2の画像処理では、同一のクランプ処理が実行される。
【0054】
(2)WB処理について
第1,第2の画像処理では、WB処理において、異なるゲインを用いる。
具体的に、第1の画像処理では、WB処理において、クランプ処理後の第1~第4の分割画像(画素数:HD)のいずれかの分割画像または通常光画像(画素数:HD)におけるr値、g値、及びb値に3つの第1のゲインをそれぞれ乗算する。当該3つの第1のゲインは、通常光(白色光)の波長帯域において、r値、g値、及びb値のホワイトバランスを取るためのゲインである。
一方、第2の画像処理では、WB処理において、クランプ処理後の蛍光画像(画素数:HD)におけるr値、g値、及びb値に3つの第2のゲインをそれぞれ乗算する。ここで、3つの第2のゲインは、撮像素子522における蛍光に対する感度がR,G,Bでほぼ同じであるため、略同一の値である。
【0055】
(3)デジタルゲイン処理について
第1,第2の画像処理では、デジタルゲイン処理において、異なるデジタルゲインを用いる。すなわち、第1の画像処理では、デジタルゲイン処理において、第1のデジタルゲインを用いる。一方、第2の画像処理では、デジタルゲイン処理において、第1のデジタルゲインとは異なる第2のデジタルゲインを用いる。
具体的に、第2の画像処理では、デジタルゲイン処理において、WB処理後の蛍光画像(画素数:HD)におけるr値、g値、及びb値に対して、当該蛍光画像の明るさが低いため、通常光画像と同一の明るさになるように全画素共通のデジタルゲインを乗算する。
【0056】
(4)デモザイク処理について
第2の画像処理では、デモザイク処理を実行しなくても構わない。
【0057】
(5)色マトリクス処理について
第1の画像処理では、色マトリクス処理を実行する。
一方、第2の画像処理では、蛍光画像には色がないため、色マトリクス処理を実行しない。あるいは、第2の画像処理では、色を補正しない色補正マトリクスを用いて色マトリクス処理を実行する。
【0058】
(6)ガンマ処理について
第2の画像処理では、第1の画像処理に対して、よりコントラストの高いγ補正を実行する。
【0059】
(7)YC変換について
第2の画像処理では、YC変換後の輝度信号及び色差信号において、色差値(Cb値及びCr値)を0とする(白黒の画像とする)。あるいは、第2の画像処理では、少し色差値を加えて色を付けても構わない。
【0060】
(8)第1の拡大処理について
第1,第2の画像処理では、第1の拡大処理において、同一の電子ズーム倍率としてもよく、あるいは、異なる電子ズーム倍率としても構わない。
【0061】
(9)画像強調処理について
第1,第2の画像処理では、画像強調処理において、画像を強調する強度が異なる。すなわち、第1の画像処理では、当該強度として第1の強度とする。一方、第2の画像処理では、当該強度として第1の強度とは異なる第2の強度とする。
ここで、第2の画像処理では、蛍光画像が暗くてノイズが含まれているため、画像強調の強度(第2の強度)を第1の画像処理での画像強調の強度(第1の強度)よりも下げても構わない。さらに、第2の画像処理では、ノイズリダクション処理を追加で実行しても構わない。
【0062】
以上説明した本実施の形態によれば、以下の効果を奏する。
本実施の形態に係る制御装置9では、通常観察モードにおいて、メモリ92及び第1~第4の画像処理部932~935を用いて、通常光画像(画素数:4K)を第1~第4の分割画像に分割して並列に画像処理を実行する。一方、制御装置9では、蛍光観察モードにおいて、メモリ92及び第1,第2の画像処理部932,933を用いて、通常光画像(画素数:HD)及び蛍光画像(画素数:HD)に対して並列に画像処理を実行する。
すなわち、通常光画像及び蛍光画像に対応させてメモリ及び複数の画像処理部をそれぞれ別々に設ける必要がなく、単体のメモリ92及び4つの画像処理部932~935を設けるだけで通常観察モード及び蛍光観察モードに対応させることができる。
したがって、回路規模が増大することなく観察に適した画像を生成することができる。
【0063】
(その他の実施の形態)
ここまで、本開示を実施するための形態を説明してきたが、本開示は上述した実施の形態によってのみ限定されるべきものではない。
上述した実施の形態では、本開示に係る画像処理部の数を4つとしていたが、これに限らず、その他の数だけ設けても構わない。例えば、通常観察モードにおいて、画素数が8Kの通常光画像を処理する場合には、上述した実施の形態と同様に処理可能とする最大データ量がHDの画像のデータ量である画像処理部を用いるとすると、16個の画像処理部を設ける必要がある。
【0064】
上述した実施の形態において、撮像素子522がHDの撮像画像を生成する撮像素子である場合には、以下のように処理しても構わない。
例えば、通常観察モードにおいて、ステップS3の後、信号処理部523は、撮像制御部942による制御の下、通常光画像(画素数:HD)の画素数を4Kに拡大する。そして、メモリコントローラ931は、当該通常光画像(画素数:4K)をバンク921に記憶する。この後、制御装置9は、上述した実施の形態と同様の処理(ステップS4~S6)を実行する。一方、蛍光観察モードにおいて、制御装置9は、上述した実施の形態で説明したステップS7~S14のうち、ステップS11のみ実行しない。
【0065】
上述した実施の形態では、蛍光観察モードにおいて、第1の波長帯域の光と第2の波長帯域の励起光とを時分割で出射させていたが、これに限らない。例えば、第1の波長帯域の光と第2の波長帯域の励起光とを同時期に出射させ、撮像する側において、フィルタによって、第1の波長帯域の光と第2の波長帯域の励起光及び蛍光とを分離し、2つの撮像素子によってそれぞれ撮像する構成としても構わない。
【0066】
上述した実施の形態では、第1の波長帯域の光を白色光とし、第2の波長帯域の励起光を近赤外励起光としていたが、これに限らない。第1,第2の波長帯域が互いに異なる第1,第2の光源31,32としては、第1の光源31が第1の波長帯域の光を発光し、第2の光源32が第1の波長帯域とは異なる第2の波長帯域の光を発光していれば、その他の構成を採用しても構わない。この際、第1,第2の波長帯域は、一部が重複する帯域であってもよく、あるいは、全く重複しない帯域であっても構わない。また、第1の光源31は、狭帯域光を発光しても構わない。
【0067】
ところで、従来、癌細胞を検出する癌診断法の一つである光線力学診断(Photo Dynamic Diagnosis:PDD)が知られている。
当該光線力学診断では、例えば5-アミノレブリン酸(以下、5-ALAと記載)等の光感受性物質が用いられる。当該5-ALAは、元来、動植物の生体内に含まれる天然アミノ酸である。この5-ALAは、体内投与後に細胞内に取り込まれ、ミトコンドリア内でプロトポルフィリンに生合成される。そして、癌細胞では、当該プロトポルフィリンが過剰に集積する。また、当該癌細胞に過剰集積するプロトポルフィリンは、光活性を有する。このため、当該プロトポルフィリンは、励起光(例えば375nm~445nmの波長帯域の青色可視光)で励起すると、蛍光(例えば600nm~740nmの波長帯域の赤色蛍光)を発光する。このように、光感受性物質を用いて癌細胞を蛍光発光させる癌診断法を光線力学診断という。
そして、上述した実施の形態において、白色光を発光するLEDで第1の光源31を構成し、プロトポルフィリンを励起する励起光(例えば375nm~445nmの波長帯域の青色可視光)を発光する半導体レーザで第2の光源32を構成しても構わない。このように構成した場合であっても、上述した実施の形態と同様の効果を奏する。
【0068】
上述した実施の形態では、蛍光観察モードにおいて、第1,第2の期間が交互に繰り返すように設定されていたが、これに限らず、第1,第2の期間の少なくともいずれかが連続し、第1,第2の期間の頻度の比率が1:1以外の比率となるように構成しても構わない。
【0069】
上述した実施の形態では、挿入部2を硬性内視鏡で構成した医療用観察システム1に本開示に係る医療用画像処理装置を搭載していたが、これに限らない。例えば、挿入部2を軟性内視鏡で構成した医療用観察システムに本開示に係る医療用画像処理装置を搭載しても構わない。また、被写体内(生体内)や被写体表面(生体表面)の所定の視野領域を拡大して観察する手術用顕微鏡(例えば、特開2016-42981号公報参照)等の医療用観察システムに本開示に係る医療用画像処理装置を搭載しても構わない。
上述した実施の形態において、カメラヘッド5の一部の構成や制御装置9の一部の構成を例えばコネクタCN1やコネクタCN2に設けても構わない。
【符号の説明】
【0070】
1 医療用観察システム
2 挿入部
3 光源装置
4 ライトガイド
5 カメラヘッド
6 第1伝送ケーブル
7 表示装置
8 第2伝送ケーブル
9 制御装置
10 第3伝送ケーブル
21 接眼部
31 第1の光源
32 第2の光源
51 レンズユニット
52 撮像部
53 通信部
91 通信部
92 メモリ
93 観察画像生成部
94 制御部
95 入力部
96 出力部
97 記憶部
521 励起光カットフィルタ
522 撮像素子
522a カラーフィルタ
523 信号処理部
921~923 バンク
931 メモリコントローラ
932 第1の画像処理部
932A クランプ処理部
932B WB処理部
932C デジタルゲイン処理部
932D デモザイク処理部
932E 色マトリクス処理部
932F ガンマ処理部
932G YC処理部
932H 第1の拡大処理部
932I 画像強調処理部
932J 第2の拡大処理部
932K SDI変換部
933 第2の画像処理部
934 第3の画像処理部
935 第4の画像処理部
941 光源制御部
942 撮像制御部
943 モード切替部
Ar1 第1の分割領域
Ar2 第2の分割領域
Ar3 第3の分割領域
Ar4 第4の分割領域
Ar5 第5の分割領域
Ar6 第6の分割領域
Ar7 第7の分割領域
Ar8 第8の分割領域
Ar9 第9の分割領域
Ar10 第10の分割領域
Ar11 第11の分割領域
Ar12 第12の分割領域
CN1,CN2 コネクタ
P1 第1の記憶位置
P2 第2の記憶位置
P3 第3の記憶位置
P4 第4の記憶位置
P5 第5の記憶位置
P6 第6の記憶位置