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特許7565286解重合方法を統合した、テレフタル酸系ポリエステルを製造する方法
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  • 特許-解重合方法を統合した、テレフタル酸系ポリエステルを製造する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】解重合方法を統合した、テレフタル酸系ポリエステルを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/78 20060101AFI20241003BHJP
   C07C 69/82 20060101ALI20241003BHJP
   C07C 67/29 20060101ALI20241003BHJP
   C08G 63/183 20060101ALI20241003BHJP
   C08J 11/24 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C08G63/78
C07C69/82 B ZAB
C07C67/29
C08G63/183
C08J11/24 CFD
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021544500
(86)(22)【出願日】2020-01-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-27
(86)【国際出願番号】 EP2020051844
(87)【国際公開番号】W WO2020156965
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2023-01-24
(31)【優先権主張番号】1901024
(32)【優先日】2019-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 尚之
(72)【発明者】
【氏名】ティノン オリヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】ゴーティエ ティエリー
【審査官】久保田 葵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/007356(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/034780(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/181319(WO,A1)
【文献】特開平11-217429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/78
C07C 69/82
C07C 67/29
C08G 63/183
C08J 11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生処理されるべきポリエステルの少なくとも1種の供給原料からテレフタル酸系ポリエステルを製造するための方法であって、該供給原料は、少なくとも10重量%の不透明PETを含み、少なくとも以下の工程:
a) 再生処理されるべきポリエステルの前記供給原料の解重合工程であって、解重合工程は、再生処理されるべきポリエステルの前記供給原料およびグリコール供給原料が供給される、少なくとも1つの反応セクションを含み、該グリコール供給原料は、精製されたジオールの流れの少なくとも1つのフラクションを含み、前記反応セクションは、温度が150℃~400℃、圧力が少なくとも0.1MPa、反応器毎の滞留時間が0.05~10時間で操作され、これにより、解重合反応流出物が得られる、解重合工程と、
b) 解重合工程a)の終わりに得られた前記解重合反応流出物が供給される少なくとも1つの分離セクションを含む分離工程であって、これにより、少なくとも1種のグリコール流出物および1種のジエステル流出物が得られる、分離工程と、
c) 工程b)の終わりに得られたジエステル流出物の精製工程であって、工程b)の終わりに得られた前記ジエステル流出物が供給されて、温度が250℃以下、圧力が0.001MPa以下、セクション毎の液体滞留時間が10分以下で操作される少なくとも1つの分離セクションと、次いで、吸着剤の存在下に、温度が100℃~250℃、圧力が0.1~1.0MPaで操作される脱色セクションとを含み、これにより、少なくともビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)を含む精製された液体ジエステル流出物が得られる、精製工程と、
d) テレフタル酸またはテレフタル酸ジメチルを含む少なくとも1種のテレフタル酸供給原料と、工程c)で得られた前記精製された液体ジエステル流出物の少なくとも1つのフラクションと、少なくとも一部、精製されたジオールの流れであるフラクションであるジオールモノマー供給原料とが供給される少なくとも1つの混合セクションを含む、重合供給原料の調製工程であって、前記混合セクションに導入される、少なくとも前記テレフタル酸供給原料および精製された液体ジエステル流出物の前記フラクションの量は、前記混合セクションに導入される、式-[C(n+1)(2n+2)]-(式中、nは1以上の整数である)のジオール単位の全モル数の、前記混合セクションに導入される、式-[CO-(C)-CO]-のテレフタル酸単位の全モル数に対する比が、1.0~2.0であるように調整され、前記混合セクションは、温度が100℃~150℃、圧力が0.1MPa以上で操作される、調製工程と、
e) 少なくとも1種の縮合反応流出物、1種のジオール流出物、および1種の水性流出物または1種のメタノール流出物を生じさせるための、工程d)に由来する前記重合供給原料の縮合工程であって、前記縮合工程は、温度が150℃~400℃、圧力が0.05~1MPa、滞留時間が0.5~10時間で操作される少なくとも1つの反応セクションと、少なくとも1つの分離セクションとを含む、縮合工程と、
f) 少なくとも前記テレフタル酸系ポリエステルおよびジオール流出物を得るための、工程e)で得られた前記縮合反応流出物の重縮合工程であって、前記重縮合工程は、少なくとも1つの反応セクションを含み、反応セクションは、重縮合が行われる少なくとも1つの反応器を含み、温度が200℃~400℃、圧力が0.0001~0.1MPa、滞留時間が0.1~5時間で操作され、前記反応セクションはまた、前記ジオール流出物の抜き出しを少なくとも1つ含む、重縮合工程と、
g) ジオールの処理工程であって、処理されるべきジオールの流れを得るために、少なくとも、工程b)に由来するグリコール流出物の全部または一部と、工程f)に由来するジオール流出物の全部または一部とが供給される回収セクションと、少なくとも工程a)またはd)に完全にまたは部分的に送られる精製されたジオールの流れを得るための、処理されるべき前記ジオールの流れの精製セクションとを含む、処理工程と、
を含む、製造方法。
【請求項2】
再生処理されるべきポリエステルの前記供給原料は、少なくとも15重量%の不透明PETを含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
再生処理されるべきポリエステルの前記供給原料は、0.1重量%~10重量%の顔料を含む、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
工程a)の反応セクションには、再生処理されるべきポリエステルの前記供給原料および前記グリコール供給原料が供給され、前記グリコール供給原料に含まれるグリコール化合物の量が、前記反応セクションの入口において、再生処理されるべきポリエステルの前記供給原料に含まれるポリエステルの基本となる繰返し単位のモル当たり、グリコール化合物が1~20モルに相当するようになされる、請求項1~3のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項5】
前記反応セクションの入口において、前記グリコール供給原料に含まれるグリコール化合物の量が、再生処理されるべきポリエステルの前記供給原料に含まれるポリエステルの基本となる繰返し単位のモル当たり、グリコール化合物が3~10モルに相当する、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
工程a)の反応セクションは、200℃~280℃の温度で操作される、請求項1~5のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項7】
工程a)の反応セクションは、少なくとも0.4MPaの圧力で操作される、請求項1~6のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項8】
工程b)の分離セクションは、温度が100℃~250℃、圧力が0.00001~0.2MPaで行われる、一続きの1~5つの気-液分離を含む、請求項1~のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項9】
精製工程c)の分離セクションは、温度が250℃以下、圧力が0.001MPa以下での、流下膜もしくは薄膜の短工程蒸留、または一続きのいくつかの流下膜もしくは薄膜の短工程蒸留および/または蒸発による、流下膜または薄膜の蒸発システムを用いる、請求項1~のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項10】
精製工程c)における分離セクションのシステムは、200℃以下の温度および0.0001MPa以下の圧力にある、請求項1~9のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項11】
工程c)の脱色セクションの吸着剤は、活性炭である、請求項1~10のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項12】
記混合セクションに導入されるジオール単位の全モル数の、前記混合セクションに導入されるテレフタル酸単位の全モル数に対する比は、1.0~1.5でる、請求項1~11のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項13】
前記混合セクションに導入されるジオール単位の全モル数の、前記混合セクションに導入されるテレフタル酸単位の全モル数に対する比は、1.0~1.3である、請求項1~12のいずれか1つに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル、特にポリエチレンテレフタラート(PET)を製造する方法であって、この方法は、特に不透明なポリエステルを含む、再生処理されるべきポリエステルの供給原料の解重合方法を統合したものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル、特にポリエチレンテレフタラート(PET)のケミカルリサイクルは、数多くの調査研究の主題となっている。これらの研究では、廃棄物の形態で回収されたポリエステルを、重合方法のための供給原料として再利用され得るモノマーに分解することを目的としている。
【0003】
数多くのポリエステル類が、材料を収集および分別するサイクルによって生じている。特に、ポリエステル、とりわけPETは、ボトル、容器、フィルム、樹脂、および/またはポリエステルからなる繊維(例えば、織物繊維、タイヤ繊維)の収集に由来し得る。収集および分別の産業に由来するポリエステルは、再生処理されるべきポリエステルとして知られている。
【0004】
再生処理されるべきPETは、主に4つのカテゴリーに分類され得る:
‐クリアPET。無色の透明PET(一般的に少なくとも60重量%)と、空色に着色された透明PETが、圧倒的に多い。顔料を含有しておらずメカニカルリサイクル方法に装入され得る;
‐暗色または着色(緑、赤、等)PET。一般的に0.1重量%までの染料または顔料を含有し得るが、依然として透明または半透明のままである;
‐不透明PET。ポリマーを不透明にするために、有意量の顔料を含有する。含有率は、典型的には、0.25%~5.0重量%の範囲で変動する。例えば、牛乳ボトル等の食品容器の製造において、ならびに、化粧品、植物保護剤または染料のボトルの組成物中に、ますます多くの不透明PETが使用されている;
‐多層PET。バージンPET(すなわち、再生処理が施されていないPET)の層と層の間にPET以外のポリマーの層または再生処理されたPETの層を含むか、あるいは、例えばアルミニウムのフィルムを含む。多層PETは、容器等のパッケージを製造するために熱成形した後に用いられる。
【0005】
再生処理産業への供給を可能にする収集産業は、国によって異なって構築されている。収集産業は、廃棄物の性質および流れ量、ならびにその分別技術に応じて、廃棄物から再生処理されるプラスチックの量を最大にするために、進化している。廃棄物の流れを再生処理する産業は、一般的に、フレークの形態でコンディショニングする第1の段階からなる。この段階において、未処理のパッケージのベールが、洗浄・精製・分別され、粉砕され、次いで再び精製・分別される。これにより、一般的に1重量%未満の「肉眼で見える」不純物(ガラス、金属、他のプラスチック、木材、紙、段ボール、無機元素)と、優先的には0.2%未満の、更に一層優先的には0.05%未満の「肉眼で見える」不純物を、含有するフレークの流れが生じる。
【0006】
クリアPETフレークは、その後に、押出-ろ過の工程に付され得る。この工程により、バージンPETとの混合物として後に再利用され得る押出物を生じさせることが可能になる。これにより、新たな製品(ボトル、繊維、フィルム)が製造される。食品用に使用されるためには、真空下の固相重合(頭字語SSPの下に知られている)の工程が、必要である。このタイプの再生処理は、メカニカルリサイクルとして知られている。
【0007】
暗色(または着色)PETフレークにも、メカニカルリサイクルを施すことが可能である。しかし、着色流れから成形される押出物の着色により、その使用が制限されている:暗色PETは、一般的に、包装用帯状物や包装用繊維を製造するために使用される。このように、その出口は、クリアPETの出口と比較すると、より制限されている。
【0008】
再生処理されるべきPET中に、高い含有率で顔料を含有する不透明PETが存在すると、この不透明PETが、再生処理されるPETの機械的特性に悪影響を与えるため、リサイクラーに対し問題が提起されている。不透明PETは、現在、着色PETとともに収集されて、着色PETの流れの中に見出される。再生処理されるべき着色PETの流れ中の不透明PETの含有率は、現在、5~20重量%であるが、不透明PETの用途が開発されていることを考慮すると、更に増加する傾向にある。数年の期間のうちに、着色PETの流れ中の不透明PETの含有率は、20~30重量%超を達成する可能性が出てくるであろう。実際に、着色PETの流れ中の不透明PETが10~15%を超える場合、再生処理されるPETの機械的特性に悪影響が与えられること(参照:Impact du developpement du PET opaque blanc sur le recyclage des emballages en PET(PETパッケージのリサイクルに関し、白色不透明PETの増加が与える影響)、COTREPの予備報告書、2013年12月5日発行)、および、上記の場合、再生処理されるPETの機械的特性により、着色PETのための産業の主な出口である、繊維の形態での再生処理が妨げられることが示されている。
【0009】
染料は、特にポリエステル材料に可溶な、天然または合成の物質であり、ポリエステル材料を着色するために、その材料の中に導入されて使用される。一般的に使用される染料は、それぞれ異なる性質を有し、しばしば、O型およびN型のヘテロ原子と、例えば、キノン、メチン、またはアゾ官能基、またはピラゾロンおよびキノフタロン等の分子等の共役不飽和とを含有する。顔料は、特にポリエステル材料に不溶な微細に分割された物質であり、材料を着色および/または不透明化するために、その材料の中に導入されて使用される。ポリエステル、特にPETを着色および/または不透明化するために使用される主な顔料は、TiO2、CoAl2O4、またはFe2O3等の金属酸化物、ケイ酸塩、ポリスルフィド、ならびに、カーボンブラックである。顔料は、一般的に0.1~10μm、圧倒的に0.4~0.8μmのサイズを有する粒子である。ろ過によりこれらの顔料を完全に除去することは、不透明PETの再生処理を想定するためには必要であるが、顔料は極端に高い閉塞性を有するため、技術的に困難である。
【0010】
着色PETおよび不透明PETの再生処理は、このように極めて難しい問題をはらんでいる。
【0011】
ポリエステル、特にPETのケミカルリサイクルのためのいくつかの方法が、文献に提案されている。しかし、それらの方法は全て、テレフタル酸エステルポリマーを再び製造するために後に用いられることとなる最終生成物として、同じ最終生成物を得るために意図されたものではない。
【0012】
特に、特許文献1には、良質なポリエステルの製造が開示されている。それは、ビス(2‐ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)ベース中の、エチレングリコールの存在下に、大気圧でPETフレークをグリコリシスによって解重合するための方法を含む。解重合段階の終わりに得られる中間生成物は、焼結システムを通すことでろ過されて、これにより、重合反応器に導入される前に最小で25μmの粒子が保持され、その結果、良質なポリエステルが得られる。
特許文献2においては、加水分解またはメタノリシスによりポリアルキレンテレフタラート樹脂の解重合の後、結晶の形態のカルボン酸のモノマーと、液体の形態のポリオールのモノマーとが回収され、次いで再び結合させられて、ポリエステルが再形成される。
特許文献3自体には、再生処理された高いモノマー含有量を有するコポリエステルを調製するための方法が記載されている。この方法は、メタノリシスによる解重合の工程と、放出されたテレフタル酸ジメチルの分離の工程と、それに続く、テレフタル酸ジメチルの、少なくとも1種のポリオールとの重合の工程とを含む。
【0013】
特許文献4には、特に緑色に着色されたPETボトルの回収に由来する、着色PETのグリコリシスによる解重合方法が開示されている。グリコリシス工程の終わりに得られるBHETの流れは、青色染料のような所定の染料を分離するために活性炭に通され、次いで、アルコールまたは水によって、黄色染料等の残留染料を抽出することで、精製される。BHETは、抽出溶剤から結晶化し、次いでPET重合方法において使用可能となることを目的として分離される。
特許文献5においては、クリアPET、青色PET、緑色PET、および/または琥珀色PET等の、さまざまな色で着色されたPETの混合物を含む、使用済(post-consumption)PETが、アミン触媒およびアルコールの存在下に、グリコリシスによって解重合される。その際得られるジエステルモノマーは、ろ過、イオン交換、および/または活性炭を通過させることにより、精製され得、その後に、結晶化されてろ過により回収され、このようにして重合させられて、したがってポリエステルを再形成することができる。
【0014】
特許文献6には、グリコール変性ポリエチレンテレフタラート(r-PETG)の調製方法が開示されている。この方法は、モノエチレングリコール(MEG)とネオペンチルグリコールの混合物の存在下におけるPETの解重合段階と、その直後に続く、反応流出物の重合段階とを含む。
【0015】
特許文献7には、とりわけ0.1~10重量%の顔料を含む、ポリエステル供給原料の解重合方法が記載されている。この解重合は、エチレングリコールの存在下におけるグリコリシスにより行われる。ビス(2‐ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)モノマーの流出物は、特定の分離および精製の段階の後に得られるものであり、なんら条件を特定されることなく、PETを製造することを目的とした重合の段階に供給され得る。
特許文献8において、性質が特定されないポリエステルの解重合のための方法は、ジオールの存在下での解重合、ジオールの蒸発、高温溶媒中での混合物の溶解、ろ過、ろ過された溶液の沈殿の工程を含む。この沈殿物は、その後に、ポリマーを新たに調製する際、用いられることが可能である。
【0016】
特許文献9には、PETから精製BHETを製造することが記載されており、得られたBHETは、プラスチック製品の製造方法において、原材料として使用されることができる。解重合の後に、冷却、ろ過、吸着、およびイオン交換樹脂による処理(これは、非常に重要なものとして提示される)による、予備精製の工程が行われ、次いで、グリコールの蒸発およびBHETの精製が行われる。予備精製により、後に続く精製工程におけるBHETの再重合を防ぐことが可能になる。しかし、ろ過およびイオン交換樹脂の工程を施すことは、供給原料が、顔料等の非常に小さい固体粒子を大量に含む場合、極めて難しい問題となり得る。これは、処理された供給原料が、不透明PETを、とりわけ相当大きい割合(10重量%超の不透明PET)で含む場合である。
同様に、特許文献10には、高品質のポリエステルを再生するための原材料として、高純度のビス(2‐ヒドロキシエチル)テレフタラートを場合により使用することが開示されている。この目的のために、欧州特許第1120394号明細書には、エチレングリコールの存在下でのグリコリシスの工程を含むポリエステルの解重合方法と、カチオン交換樹脂およびアニオン交換樹脂を用いたビス(2‐ヒドロキシエチル)テレフタラートの溶液の精製方法とが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】メキシコ特許出願公開第2007/004429号明細書
【文献】米国特許第4,578,502号明細書
【文献】国際公開第2013/025186号パンフレット
【文献】米国特許出願公開第2006/0074136号明細書
【文献】米国特許出願公開第2015/0105532号明細書
【文献】国際公開第2017/006217号パンフレット
【文献】仏国特許出願公開第3053691号明細書
【文献】欧州特許第0865464号明細書
【文献】日本国特許第3715812号公報
【文献】欧州特許第1120394号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
いずれの文献も、暗色および/または不透明PETを含む、特に再生処理されるべきPETの、解重合工程と、とりわけ材料の流れ、特にジオールの流れが最適に統合された、得られる中間製品の重合工程とを、直接的に関連させることを提案していないが、これらの工程を直接的に関連させることで、原材料およびエネルギーの消費を相当量低減することが可能になる。
【0019】
本発明の主題は、再生処理されるべきポリエステルの少なくとも1種の供給原料からテレフタル酸系ポリエステルを製造するための方法であって、少なくとも以下の工程:
a)再生処理されるべきポリエステルの前記供給原料の解重合工程であって、再生処理されるべきポリエステルの前記供給原料およびグリコール供給原料が供給される反応セクションを少なくとも1つ含み、前記反応セクションは、温度が150°C~400°C、好ましくは180°C~300°C、より好ましくは200°C~280°C、圧力が少なくとも0.1MPa、優先的には少なくとも0.4MPa、反応器毎の滞留時間が0.05~10時間で操作され、これにより、解重合反応流出物が得られる、解重合工程と、
b)解重合工程a)の終わりに得られた前記解重合反応流出物が供給される分離セクションを少なくとも1つ含む分離工程であって、これにより、少なくとも1種のグリコール流出物および1種のジエステル流出物が得られる、分離工程と、
c)工程b)の終わりに得られたジエステル流出物の精製工程であって、工程b)の終わりに得られた前記ジエステル流出物が供給されて、温度が250°C以下、圧力が0.001MPa以下、セクション毎の液体滞留時間が10分以下で操作される少なくとも1つの分離セクションと、次いで、吸着剤の存在下に、温度が100°C~250°C、圧力が0.1~1.0MPaで操作される脱色セクションとを含み、これにより、精製された液体ジエステル流出物が得られる、精製工程と、
d)少なくとも1種のテレフタル酸供給原料と、液体の形態で、工程c)で得られた前記精製されたジエステル流出物の少なくとも1つのフラクションとが供給される、少なくとも1つの混合セクションを含む、重合供給原料の調製工程であって、前記混合セクションに導入される、少なくとも前記テレフタル酸供給原料および精製されたジエステル流出物の前記フラクションの量は、前記混合セクションに導入される、式-[C(n+1)H(2n+2)O2]-(式中、nは1以上の整数である)のジオール単位の全モル数の、前記混合セクションに導入される、式-[CO-(C6H4)-CO]-のテレフタル酸単位の全モル数に対する比が、1.0~2.0であるように調整され、前記混合セクションは、温度が25°C~250°C、圧力が0.1MPa以上で操作される、調製工程と、
e)少なくとも1種の縮合反応流出物、1種のジオール流出物、および1種の水性流出物または1種のメタノール流出物を生じさせるための、工程d)に由来する前記重合供給原料の縮合工程であって、前記縮合工程は、温度が150°C~400°C、圧力が0.05~1MPa、滞留時間が1~10時間で操作される少なくとも1つの反応セクションと、少なくとも1つの分離セクションとを含む、縮合工程と、
f)少なくとも前記テレフタル酸系ポリエステルおよびジオール流出物を得るための、工程e)で得られた前記縮合反応流出物の重縮合工程であって、前記重縮合工程は、少なくとも1つの反応セクションを含み、反応セクションは、重縮合が行われる少なくとも1つの反応器を含み、温度が200°C~400°C、圧力が0.0001~0.1MPa、滞留時間が0.1~5時間で操作され、前記反応セクションはまた、前記ジオール流出物の抜き出しを少なくとも1つ含む、重縮合工程と、
g)ジオールの処理工程であって、処理されるべきジオールの流れを得るために、少なくとも、工程b)に由来するグリコール流出物の全部または一部と、工程f)に由来するジオール流出物の全部または一部とが供給される回収セクションと、精製されたジオールの流れを得るための、処理されるべき前記ジオールの流れの精製セクションとを含む、処理工程と、
を含む、製造方法である。
【0020】
好ましくは、本発明は、上記の工程a)、b)、c)、d)、e)、f)、およびg)からなる、再生処理されるべき少なくとも1種のポリエステル供給原料から、テレフタル酸系ポリエステルを製造するための方法に関する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の主な利点は、製造されるポリエステルの質を損なうことなく、再生処理されるべきポリエステルに由来する化合物から、少なくとも部分的に、ポリエステルを製造することにあり、再生処理されるべきポリエステルは、相当多くの量であり、収集および分別産業に由来するポリエステル材料において遭遇する量と一致する量の不透明なポリエステルを特に含む。具体的には、本発明は、再生処理されるべきポリエステルから、少なくとも部分的に、ポリエステルを製造することを可能にする。再生処理されるべきポリエステルは、同じタイプのバージンポリエステルの特性と同様の特性、特に物理化学的かつ機械的な特性を有する。
【0022】
本発明は、再生処理されるべきポリエステル材料の、特にグリコリシスによる、解重合方法と、ポリエステルの重合方法とを、関連付けることを含む特定の方法に関し、これにより、材料の流れを統合することが可能になる。それは、より具体的には、とりわけ特定の再生処理システムによって、解重合段階と重合段階の間に導入され回収されるジオールの流れを最適に統合することを可能にする。本発明はまた、重合方法の規格に適合し、かつ、それ故に、重合工程に直接供給することが可能になる、精製された液体ジエステル中間体の製造を可能にするものである。この製造は、精製および/または状態調節(例えば、前記中間体の結晶化、およびそれに次ぐ、前記結晶性ジエステル中間体の、液相への転移等)の中間工程なしで行われ、これにより、追加的な処理操作および高いエネルギー消費を防ぐことが可能になる。同時に、解重合工程の終わりに液体の形態で得られる、精製されたジエステル中間体を、重合工程、特に、モノマーの混合物中に組み入れることにより、とりわけ重合方法のモノマー混合物を調製する工程の良好な操作性を保持しながら、重合方法に供給するジオールモノマー供給原料の量を低減することが可能になる。混合物に導入されるジオールの量が低減するので、重合方法の、その後に続く操作において、再生処理されるべきジオールの量が低減し、したがって、再生処理されるべきポリエステル材料から、少なくとも部分的に、ポリエステルを製造するための全体的な方法の、エネルギー消費が低減される。
【0023】
本発明の別の利点は、解重合方法および重合方法に由来するジオール流出物を回収および精製するための操作を共有することにあり、このことにより、具体的には、全体的な方法のエネルギー消費が低減され、かつ設備コストが低減されるに至る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明によるポリエチレンテレフタラート(PET)の製造方法の、1つの特定の構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、ポリエステルを製造するための方法であって、特に不透明なポリエステルを含む、再生処理されるべきポリエステル供給原料の解重合方法を統合する方法に関する。
【0026】
本発明によると、用語「ポリエステル」、「テレフタル酸系ポリエステル」、および「ポリアルキレンテレフタラート」は、置き換えが可能であり、その基本となる繰返し単位が、テレフタル酸単位-[CO-(C6H4)-CO]-(式中、-(C6H4)-は、芳香環を表し、この芳香環が、ジオール単位-[O-C(n+1)H(2n+2)-O]-(式中、nは、1以上、好ましくは1~5、優先的には1~3の整数である)に共有結合している)を含むポリマー(すなわち、共有結合により互いに結合したモノマーからなる高分子量の分子)を示す。非常に一般的には、ポリアルキレンテレフタラートは、ジオール(またはグリコール)モノマーの、テレフタル酸(またはテレフタル酸ジメチル)モノマーとの重縮合の結果である。本発明による、テレフタル酸系ポリエステルまたはポリアルキレンテレフタラートは、特に、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタラート(PTT)、または任意の他のポリマーであり、その主鎖の繰返し単位は、エステルの官能基と、テレフタル酸(または、そのエステルの1つから、特に、テレフタル酸ジメチル)に由来する芳香環とを含有する。本発明によると、好ましいテレフタル酸系ポリエステルは、ポリエチレンテレフタラート、またはポリ(エチレンテレフタラート)であり、これは単純にPETとしても知られている。その、基本となる繰返し単位は、以下の式を有する:
【0027】
【化1】
【0028】
従来、PETは、テレフタル酸(PTA)またはテレフタル酸ジメチル(DMT)の、エチレングリコールとの重縮合により得られる。
【0029】
本発明によると、「再生処理されるべき」という表現は、プラスチック廃棄物を収集および分別する産業に由来する、とりわけポリエステルを含む、任意の材料を説明するものである。これに対し、バージンポリエステルは、少なくとも1種のジカルボン酸(例えば、テレフタル酸、PTA)または1種のジカルボン酸エステル(例えば、テレフタル酸ジメチル、DMT)と、ジオール類またはグリコール類の少なくとも1種の化合物(例えば、エチレングリコール)とを含むモノマー供給原料の重合のみに由来する。
【0030】
本発明によると、用語「ジエステルモノマー」は、化学式HOC(m+1)H(2m+2)-CO2-(C6H4)-CO2-C(n+1)H(2n+2)OHのテレフタル酸エステル化合物を意味する。この化学式中、-(C6H4)-は、芳香環を表し、nおよびmは、同一または異なる整数であり、好ましくは同一の整数であり(すなわち、n=m)、かつ、1以上、好ましくは1~5、より好ましくは1~3の整数である。ジエステルモノマーの分子は、テレフタル酸HOOC-(C6H4)-COOH(式中、-(C6H4)-は、芳香環を表す)の分子1つと、少なくとも1種のジオール(またはグリコール)の分子2つとのエステル化に由来する化合物に相当する。より具体的には、この分子2つとは、化学式HO-C(n+1)H(2n+2)-OHのジオールの分子1つと化学式HO-C(m+1)H(2m+2)-OHのジオールの分子1つである。好ましいジエステルモノマーは、ビス(2‐ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)である。
【0031】
オリゴマーという用語は、典型的には、小さいサイズのポリマーを示す。これは、一般的には、2~20個の、基本となる繰返し単位からなる。
【0032】
本発明によると、用語「エステルオリゴマー」は、テレフタル酸エステルオリゴマーを意味し、これは、式-[O-CO-(C6H4)-CO-O- C(n+1)H(2n+2)]-(式中、-(C6H4)-は芳香環であり、nは1以上、好ましくは1~5、より好ましくは1~3の整数である)の、基本となる繰返し単位を2~20個、好ましくは2~5個含む。
【0033】
用語「染料」は、ポリエステル材料に可溶であり、かつポリエステル材料を着色するために使用される物質を意味すると理解される。染料は、天然または合成由来のものであり得る。
【0034】
用語「顔料」、より具体的には、着色顔料および/または不透明化顔料は、ポリエステル材料に不溶な、微細に分割された物質を意味すると理解される。顔料の形態は、一般的に0.1~10μm、圧倒的に0.4~0.8μmのサイズを有する粒子である。顔料は、しばしば無機物の性質を有する。一般的に用いられる顔料、特に不透明化顔料は、TiO2、CoAl2O4またはFe2O3等の金属酸化物、ケイ酸塩、ポリスルフィド、およびカーボンブラックである。
【0035】
本発明によると、「・・・~・・・」という表現は、記載された2つの値の範囲において、その隔たりの、両端にある限界値が含まれていることを意味する。そうでない場合であって、記載された範囲にその限界値が含まれていない場合、本発明によって、その旨が正確に記載されることとなる。
【0036】
供給原料
本発明によると、前記方法には、再生処理されるべきポリエステルの少なくとも1種の供給原料が供給される。
【0037】
有利には、再生処理されるべきポリエステルの前記供給原料は、廃棄物、特にプラスチック廃棄物を収集および分別する産業に由来する。再生処理されるべきポリエステルの前記供給原料は、例えば、ポリエチレンテレフタラートからなる、ボトル、容器、フィルム、樹脂および/または繊維の収集に由来してよい。
【0038】
再生処理されるべきポリエステルの前記供給原料は、完全にまたは部分的に、フレークの形態であってよい。フレークは、最大長さが10cm未満、優先的には5~25mmであり、あるいは超微粉砕された固体の形態、すなわち、好ましくは10ミクロン~1mmのサイズを有する、粒子の形態である。再生処理されるべきポリエステルの供給原料は、好ましくは、2重量%未満、優先的には1重量%未満の「肉眼で見える」不純物(ガラス、金属、テレフタル酸系ポリエステル以外のプラスチック、木材、紙、段ボール、または無機元素、等)を含む。再生処理されるべきポリエステルの前記供給原料はまた、綿、ポリアミド繊維、またはポリエステル繊維以外の任意の他の織物繊維を除去するために場合により前処理された織物繊維等の、あるいは、特に、ポリアミド繊維、ゴム、またはポリブタジエンの残渣を除去するために場合により前処理されたタイヤ繊維等の、繊維の形態であってもよい。再生処理されるべきポリエステルの前記供給原料は、更に、ポリエステル材料の重合および/または転換方法からの製造スクラップに由来するポリエステルを含んでもよい。
【0039】
有利には、再生処理されるべきポリエステルの前記供給原料は、50重量%超のポリアルキレンテレフタラート、好ましくは70重量%超、より好ましくは90重量%超のポリアルキレンテレフタラートを含有する。
【0040】
好ましくは、再生処理されるべきポリエステルの前記供給原料は、再生処理されるべきポリエチレンテレフタラートの供給原料(または、再生処理されるべきPETの供給原料)であり、50重量%超のポリエチレンテレフタラート(PET)、好ましくは70重量%超のポリエチレンテレフタラート(PET)、より好ましくは90重量%超のポリエチレンテレフタラート(PET)を含む。再生処理されるべきPETの前記供給原料は、有利には、不透明PET、暗色(または着色)PET、多層PET、クリア(すなわち、無色透明および/または空色に着色された透明)PET、ならびにこれらの混合物を含み、好ましくは、少なくとも不透明PETを含む。好ましくは、それは、少なくとも10重量%の不透明PET、非常に好ましくは、少なくとも15重量%の不透明PETを含む。
【0041】
再生処理されるべき前記ポリエステルの供給原料は、10重量%までの顔料、特に0.1重量%~10重量%の顔料、とりわけ0.1重量%~5重量%の顔料、および/または、1重量%までの染料、特に0.05重量%~1重量%の染料、とりわけ0.05重量%~0.2重量%の染料を含有してよい。
【0042】
再生処理されるべきポリエステルの前記供給原料はまた、ポリエステル製造方法において重合触媒および/または安定剤として使用される元素(アンチモン、チタン、またはスズ等)を含有してよい。
【0043】
本発明によると、解重合工程a)には、更にグリコール供給原料が供給される。前記グリコール供給原料は、少なくとも1種の、好ましくは1種の、グリコール(またはジオール)化合物を含み、これは、再生処理されるべきポリエステルの供給原料の、基本となるポリアルキレンテレフタラート単位のジオール単位に相当するジオールと同一または異なる種類のものである。有利には、前記グリコール供給原料中の前記グリコール化合物の重量含有率は、前記グリコール供給原料の全重量に対して、80重量%以上、優先的には90重量%以上、好ましくは95重量%以上である。
【0044】
好ましくは、解重合工程a)に供給される、本方法のグリコール供給原料は、モノエチレングリコール(MEG)としても知られているエチレングリコールを含み、その重量含有率は、有利には、前記グリコール供給原料の全重量に対して、80重量%以上、優先的には90重量%以上、好ましくは95重量%以上である。この場合、グリコール供給原料は、エチレングリコール供給原料と称される。
【0045】
エチレングリコールは、有利には、エチレンオキシドの加水分解、グリコールアルデヒドの選択的水素化、ポリエステルの解重合、または、重合方法によって要求される規格に適合したエチレングリコール供給原料を得ることが可能な任意の他の方法によって生じさせられてよい。エチレングリコールは、化石炭化水素源またはバイオマスに由来するものであってもよい。
【0046】
本発明による方法の解重合工程a)に供給される前記グリコール供給原料は、本発明によるテレフタル酸系ポリエステルの製造方法の工程g)の終わりに得られる前記精製されたジオールの流れの少なくとも1つのフラクションを、有利には含み、好ましくは、前記精製されたジオールの流れの少なくとも1つのフラクションのみからなる。
【0047】
本発明によると、前記方法にはまた、重合供給原料の調製の工程d)において、少なくとも1種のテレフタル酸供給原料が供給される。本発明によると、テレフタル酸供給原料は、テレフタル酸単位を有する化合物としてのテレフタル酸を含むテレフタル酸供給原料、または、テレフタル酸単位を有する化合物としてのテレフタル酸ジメチルを含むテレフタル酸ジメチル供給原料である。
【0048】
前記テレフタル酸供給原料は、テレフタル酸(PTA)またはテレフタル酸ジメチル(DMT)を、前記テレフタル酸の全重量に対して、95重量%以上、優先的には98重量%以上、好ましくは99重量%以上の重量含有率で含む。
【0049】
1つの好ましい実施形態において、前記供給原料は、テレフタル酸(PTA)を含むテレフタル酸供給原料である。テレフタル酸供給原料のテレフタル酸は、有利には、パラキシレンの酸化、ポリエステルの解重合、あるいは、重合方法によって要求される規格に適合した満たすテレフタル酸供給原料を得ることが可能になる任意の他の方法によって、製造することが可能である。テレフタル酸は、化石炭化水素源またはバイオマスに由来し得る。
【0050】
テレフタル酸供給原料は、有利には粉末の形態であり、すなわち、固体のテレフタル酸粒子の形態である。好ましくは、モノマーの混合物中に組み入れられるテレフタル酸粒子は、好ましくは1~1000μm、特に30~500μm、とりわけ80~200μmの平均直径を有する。テレフタル酸粒子の平均直径は、例えば、レーザ回折またはふるい分けによって、好ましくは、当業者に知られた技術により適切なふるいのカラムを通してふるい分けすることで、当業者に知られた粒子サイズ分析の任意の方法によって求められる。
【0051】
解重合工程a)
本発明によると、テレフタル酸系ポリエステルの製造方法は、再生処理されるべきポリエステルの供給原料の解重合の工程a)を含み、これにより解重合反応流出物が得られる。前記解重合工程a)は、少なくとも1つの反応セクションを含み、このセクションに、再生処理されるべきポリエステルの前記供給原料およびグリコール供給原料が供給される。
【0052】
有利には、前記グリコール供給原料の供給は、前記グリコール供給原料中に含まれるグリコール化合物の量が、前記反応セクションの入口で、再生処理されるべきポリエステルの前記供給原料中に含まれるポリエステルの基本となる繰返し単位のモル当たり、グリコール化合物1~20モル、好ましくは3~10モルに相当するように調整される。
【0053】
有利には、前記グリコール供給原料は、本発明によるテレフタル酸系ポリエステルの製造方法の工程g)の終わりに得られる前記精製されたジオールの流れの少なくとも1つのフラクションを、有利には含み、好ましくは、前記精製されたジオールの流れの少なくとも1つのフラクションのみからなる。
【0054】
有利には、解重合工程a)は、特に前記反応セクションにおいて、前記グリコール供給原料のグリコール化合物(単数または複数)の存在下での、再生処理されるべきポリエステルの前記供給原料のポリアルキレンテレフタラートのグリコリシス反応を採用している。
【0055】
解重合工程a)の前記反応セクションは、好ましくは1つ以上の反応器において、温度が150°C~400°C、好ましくは180°C~300°C、より好ましくは200°C~280°C、圧力が少なくとも0.1MPa、優先的には少なくとも0.4MPa、反応器毎の滞留時間が0.05~10時間、優先的には0.1~6時間、好ましくは0.5~4時間で操作される。工程a)の前記反応セクションの反応器中の滞留時間は、前記反応セクションの反応器中の反応液体の体積の、前記反応セクションの前記反応器に供給される流れの体積流量に対する比として定義される。
【0056】
解重合またはエステル交換反応を行うことを可能にする、当業者に知られた任意のタイプの反応器が、工程a)の反応セクションにおいて用いられてよい。好ましくは、工程a)の反応セクションにおける反応器(単数または複数)では、機械的攪拌システム、再循環ループ、および/または流動化によって攪拌される。前記反応器(単数または複数)は、不純物を抜き取ることが可能になる円錐形のベースを含んでいてよい。有利には、工程a)の前記反応セクションは、直列または並列の、1つ以上の管型反応器、または、1つ以上の攪拌式反応器および1つ以上の管型反応器の組み合わせを含んでよい。
【0057】
本発明の1つの特定の実施形態において、解重合工程a)は、再生処理されるべきPETの供給原料とエチレングリコール供給原料とが供給される少なくとも1つの反応セクションを含み、前記エチレングリコール供給原料に含まれるエチレングリコールの量は、基本となる繰返し単位、すなわち、再生処理されるべきPETの前記供給原料中のテレフタル酸単位のモル当たり、前記エチレングリコール供給原料のエチレングリコールが、1~20モル、好ましくは3~10モルに相当するようになされ、前記反応セクションは、1つ以上の反応器において、温度が150°C~400°C、好ましくは180°C~300°C、より好ましくは200°C~280°C、操作圧力が少なくとも0.1MPa、優先的には少なくとも0.4MPa、反応器毎の滞留時間が0.05~10時間、好ましくは0.1~6時間、より好ましくは0.5~4時間で操作され、反応器毎の前記滞留時間は、反応器の液体体積の、前記反応器に供給される流れの体積流量に対する比として定義される。
【0058】
本発明による方法の工程a)の解重合反応は、触媒を加えて、または加えることなく行われてよい。触媒を加えた後に解重合反応が行われる場合、触媒は、均一系または不均一系であり得、当業者に知られたエステル化触媒、例えば、アンチモン、スズ、またはチタンの錯体、酸化物、および塩、元素周期律表の第(I)族および第(IV)族からの金属のアルコキシド、有機過酸化物、または酸性/塩基性の金属酸化物等から選ばれる。好ましくは、解重合反応は、触媒を加えることなく行われる。
【0059】
解重合反応はまた、有利には、粉末形態または成形された形態の固体吸着剤の存在下に行われてよい。固体吸着剤の役割は、不純物、特に着色不純物の少なくとも一部を捕捉し、それ故に、工程b)の精製段階にかかる負担を緩和することにある。前記固体吸着剤は、とりわけ活性炭である。
【0060】
解重合工程a)の終わりに得られる解重合反応 流出物は、ジエステルモノマー(すなわち、化学式HOC(m+1)H(2m+2)-CO2-(C6H4)-CO2-C(n+1)H(2n+2)OH(式中、-(C6H4)-は、芳香環を表し;nおよびmは、同一または異なる整数であり、好ましくは同一の整数であり、1以上、好ましくは1~5、より好ましくは1~3の整数である)の化合物)と、式-[O-CO-(C6H4)-CO-O-C(n+1)H(2n+2)]-(式中、nは、1~5、好ましくは1~5の整数である)の基本単位を1~5個、好ましくは1~3個含むオリゴマーと、ジオール化合物と、再生処理されるべきポリエステルの前記供給原料中に場合により存在する不純物と、例えばエーテル化反応または分解反応等の、副反応の終わりに場合により生じる化合物との混合物を含む。解重合反応流出物中に場合により存在するジオール化合物は、有利には、解重合反応の終わりに、再循環させられて放出されるべき、ポリエステルの供給原料の組成に組み入れられるジオールモノマーおよびコモノマー、ならびに、解重合工程a)に供給されるグリコールの流れに由来する未反応のものである。前記解重合反応流出物は、未転化ポリエステルおよび他のポリマーを含有してもよい。
【0061】
分離工程b)
本発明によると、テレフタル酸系ポリエステルの製造方法は、分離工程b)を含み、分離工程b)は、解重合工程a)の終わりに得られた前記解重合反応流出物が供給される少なくとも1つの分離セクションを含み、これにより、少なくとも1種のグリコール流出物と1種のジエステル流出物が得られる。
【0062】
前記分離工程b)により、有利には、未反応の工程a)のグリコール供給原料のジオール化合物と、解重合反応の間に場合により放出されたジオール化合物とを回収することが可能になる。前記工程b)の終わりに得られる前記グリコール流出物は、好ましくは、少なくとも50重量%、優先的には少なくとも70重量%、好ましくは90重量%超のジオール化合物を含む。
【0063】
有利には、前記分離セクションは、1回以上の分離操作を含み、これにより、ジオールを豊富に含む流出物(グリコール流出物と称される)の回収、ならびに、場合による、軽質不純物を豊富に含む流出物と重質不純物を豊富に含む流出物の回収が可能になる。特に、分離セクションは、1つ以上の分離(蒸留、ストリッピング、精留)塔を含んでよく、これにより、ジオールを豊富に含む少なくとも1種の流出物(すなわち、グリコール流出物)と、場合による、軽質不純物を豊富に含む流出物および重質不純物を豊富に含む流出物を得ることが可能になる。好ましくは、前記分離セクションは、一続きの気/液分離、好ましくは1~5つの気/液分離、優先的には3~5つの気/液分離を含み、温度が100°C~250°C、好ましくは110°C~220°C、より好ましくは120°C~210°C、圧力が0.00001~0.2MPa、好ましくは0.00004~0.15MPa、より好ましくは0.00004~0.1Mpaで行われる。前記気/液分離は、有利には、当業者に知られた任意の方法によって攪拌される。このような圧力および温度の条件下に、液体の形態の、反応流出物中のジオールの少なくとも一部が、気/液分離のそれぞれにおいて蒸発させられ、ジエステルモノマーを含む液体流れから分離されて、その結果、ジエステルモノマーの結晶化および重合が防止される。有利には、後続の気/液分離の温度および圧力は、先行する気/液分離の温度および圧力より低く、そのため、先行する分離から出たグリコール流出物の少なくとも一部は、縮合の際、後続の分離の液体流出物の一部を再沸騰させ得る。この構成において、グリコールを回収するための熱の供給が最小限に抑えられる。
【0064】
有利には、場合による一続きの気/液分離によって回収されたグリコール内での、種々のジオールと、場合による染料、軽質アルコール、または水とを分離する操作が、分離工程b)において行われてよい。したがって、工程b)の終わりに得られるグリコール流出物は、再生処理されるべきポリエステルの供給原料のポリアルキレンテレフタラートの基本単位のジオール単位に相当するジオール化合物を、含有率が50重量%以上、優先的には70重量%以上、好ましくは90重量%以上で含む。好ましくは、この、場合による分離操作は、蒸留、ストリッピングまたは精留塔内で行われ、有利には、温度が50°C~250°C、好ましくは60°C~210°C、より好ましくは70°C~180°C、圧力が0.00001~0.2MPa、好ましくは0.00004~0.15MPa、より好ましくは0.00004~0.1MPaで行われる。
【0065】
好ましくは、工程b)の終わりに得られる前記グリコール流出物の全部または一部は、有利には、本発明による方法の処理工程g)に送られる。
【0066】
工程b)の終わりに回収される前記グリコール流出物の全部または一部は、工程b)に含まれるジオールの予備精製のためのセクションにおいて予備精製されてよく、これにより、前記グリコール流出物を伴出する不純物、例えば、染料、顔料、または他の固体粒子等、の一部が除去される。前記グリコール流出物の全部または一部が供給される予備精製セクションは、非制限的な例として、固体(例えば活性炭)への吸着、およびろ過システムを含んでよい。前記予備精製されたグリコール流出物の少なくとも一部は、解重合工程a)および/またはエステル化供給原料を調製する工程c)に直接再循環させられてよい。
【0067】
有利には液体の形態で、分離工程b)の終わりに得られるジエステル流出物は、有利には、10重量%超、好ましくは25重量%超、より好ましくは50重量%超の、ジエステルモノマーおよびエステルオリゴマーを含む。
【0068】
工程b)の分離セクションは、場合により有利には、直列または並列の、1つ以上の流下膜または薄膜蒸発システムを含んでよい。これは、温度が200°C以下、好ましくは180°C以下、圧力が0.001MPa以下、好ましくは0.0005MPa以下で行われ、これにより、前記ジエステル流出物中のジエステルモノマーの重合を最小限に抑えながら、ジエステル流出物中に場合により残留しているジオールの量を更に低減させることができる。
【0069】
精製工程c)
本発明によると、分離工程b)の終わりに得られる前記ジエステル流出物は、次いで、精製工程c)に供給される。精製工程c)は、少なくとも1つの分離セクションおよびその後に次ぐ1つの脱色セクションを含む。
【0070】
有利には、分離工程b)の終わりに得られるジエステル流出物を精製するための工程により、ジエステルモノマーの損失を最小限に抑えながら、解重合工程a)に由来する以下の化合物の全てまたはいくつかの化合物から、少なくとも1種の精製されたジエステル流出物を分離することが可能になる:エステルオリゴマー、場合による未転化ポリエステル、再生処理されるべきポリエステルの供給原料中に場合により存在する不純物(他のポリマー、顔料、染料、重合触媒、または、再生処理されるべきポリエステルの前記供給原料を構成するか、もしくは、解重合工程a)中に形成された任意の他の無機化合物、および、必要である場合、まだ分離されていないジオール化合物、等)。
【0071】
したがって、前記精製工程により、精製された前記ジエステル流出物中のジエステルモノマーの収率が、50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上である、精製されたジエステル流出物を回収することが可能になる。表現「前記ジエステル流出物中のジエステルモノマーの収率」は、工程b)の精製セクションに導入されるジエステルモノマーの全量に対する、前記ジエステル流出物中のジエステルモノマーの量を意味する。
【0072】
好ましくは、精製工程では、ろ過、蒸発、蒸留、捕捉体(trapping mass)への吸着等の精製操作を1回以上行う。
【0073】
本発明によると、精製工程c)は、工程b)の終わりに得られるジエステル流出物を分離するための1つ以上のセクションを含む。この分離セクションは、特に再重合によるジエステルモノマーの損失を最小限に抑えながら、気化したジエステルモノマーを、重質不純物から分離することを目的としている。この重質不純物とは、特に、オリゴマー、および、場合により工程a)で転化されていないポリエステルであり、これらは、液体のままであり、それ故に固体不純物(特に、顔料、未転化ポリマー、場合により存在する他のポリマー、および重合触媒)を捕捉するものである。いくつかのエステルオリゴマーが、ジエステルモノマーとともに伴出されてもよい。
【0074】
工程c)の前記分離セクション(単数または複数)には、有利には、工程b)の終わりに得られる前記ジエステル流出物が供給されて、温度が250°C以下、好ましくは230°C以下、非常に好ましくは200°C以下、圧力が0.001MPa以下、好ましくは0.0001MPa以下、より好ましくは0.00005MPa以下、セクション毎の液体滞留時間が10分以下、好ましくは5分以下、より好ましくは1分以下で操作される。本発明によると、セクション毎の液体滞留時間は、前記セクションの液体体積の、前記セクションから出る最も高温の流れの体積流量に対する比によって定義される。精製工程c)の前記分離セクション(単数または複数)の終わりに、重質不純物中に濃縮された少なくとも1種の液体流出物と、1種の予備精製されたジエステル流出物とが得られる(好ましくは不純物は少ない)。
【0075】
前記予備精製されたジエステル流出物および重質不純物中に濃縮された前記液体流出物の分離は、有利には、流下膜または薄膜蒸発のシステムにおいて、流下膜または薄膜短工程蒸留、または、一続きの、いくつかの流下膜または薄膜短工程蒸留および/または蒸発によって、温度が250°C以下、好ましくは230°C以下、非常に好ましくは200°C以下、圧力が0.001MPa以下、好ましくは0.0001MPa以下、好ましくは0.00005MPa以下で行われる。ジエステルモノマーの気化を可能にしながら、250°C以下、好ましくは230°C以下の温度で前記分離を行うためには、操作圧力を非常に低くする必要がある。
【0076】
重合禁止剤は、有利には、前記精製工程c)に供給される前に、工程b)の終わりに得られるジエステル流出物と混合されてよい。有利には、フラックスもまた、前記工程c)に供給される前に、工程b)に由来するジエステル流出物と混合されてよく、これにより、短工程蒸留または蒸発システムの塔底において、重質不純物、特に顔料の除去が促進される。フラックスが導入される場合、それは、工程c)の操作条件下において、ジエステル流出物のジエステルモノマーより、はるかに高い沸点を有する必要がある。それは、例えば、ポリエチレングリコール、またはPETオリゴマーであり得る。
【0077】
重質不純物中に濃縮される液体流出物は、有利には、オリゴマー、未転化PET、および重質不純物、特に、顔料、場合により存在する他のポリマー、および重合触媒を濃縮する。前記工程c)の分離セクション(単数または複数)における分離の操作条件は、再重合によるジエステルモノマーの損失が最小限に抑えられるように調整される。いくつかのオリゴマーは、特にガス状の形態の、予備精製されたジエステル流出物中のジエステルモノマーとともに伴出されてもよい。
【0078】
重質不純物中に濃縮された前記液体流出物の少なくとも1つのフラクションは、有利には、解重合工程a)に再循環させられてよく、これにより解重合方法のジエステルモノマーの収率が上昇する。任意の再循環操作の前に、重質不純物中に濃縮された前記液体流出物は、有利には、少なくとも1つの精製工程、好ましくはろ過工程に付され、これにより、顔料および/または場合により存在する他の固体不純物の量が低減する。重質不純物中に濃縮された前記液体流出物の全部または一部はまた、有利には、方法から抜き取られて、焼却システムまたは顔料回収システムに送られてもよい。
【0079】
重質不純物中に濃縮された液体流出物は、有利には、分離工程b)の終わりに得られるグリコール流出物の少なくとも1つのフラクション、および/または、本発明による方法の工程g)の終わりに得られる精製されたジオールの流れの少なくとも1つのフラクションと混合されてよく、これにより、重質不純物中に濃縮された前記液体流出物の粘度が低減され、解重合工程a)への前記液体流出物の輸送、および場合による、ろ過工程における前記液体流出物の処理が促進される。
【0080】
場合により、予備精製されたジエステル流出物は、有利には、分離工程b)に由来するグリコール流出物の少なくとも1つのフラクション、および/または、工程g)に由来する精製されたジオールの流れの少なくとも1つのフラクションと混合されてよい。
【0081】
本発明によると、精製工程c)は、予備精製されたジエステル流出物の脱色のためのセクションを含み、有利には、温度が100°C~250°C、好ましくは110°C~200°C、より好ましくは120°C~180°C、圧力が0.1~1.0MPa、好ましくは0.2~0.8MPa、より好ましくは0.3~0.5Mpaで、吸着剤の存在下に操作され、これにより精製されたジエステル流出物が生じる。前記吸着剤は、活性炭または粘土等の染料、好ましくは活性炭を捕捉することが可能な当業者に知られた任意の吸着剤であってよい。
【0082】
工程c)の終わりに得られる精製されたジエステル流出物は、少なくとも1種のジエステルモノマーを含む。それは、場合により、好ましくは、前記精製されたジエステル流出物の前記ジエステルモノマーに含まれるジオール単位に相当する、少なくとも1種のジオール(またはグリコール)を含んでよい。有利には、工程c)の終わりに得られる精製されたジエステル流出物は、少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも20重量%のジエステルモノマーを含む。それは、好ましくは、再生処理されるべきポリエステルの供給原料とともに方法に導入される1重量%未満、好ましくは0.1重量%未満の顔料と、再生処理されるべきポリエステルの供給原料とともに方法に導入される10重量%未満、好ましくは1重量%未満の染料とを含有する。好ましくは、工程c)の終わりに得られる、精製されたジエステル流出物は、場合により前記ジエステルのオリゴマー以外の、前記ジエステルモノマーより重質な不純物を、10重量%未満、優先的には1重量%未満、好ましくは0.1重量%未満含む。非常に有利には、工程c)の終わりに得られる精製されたジエステル流出物は、着色された不純物、または、顔料、染料、解重合触媒、およびイオン等の無機不純物を皆無にしている。好ましくは、精製されたジエステルモノマーは、ジエステルモノマー、および場合により重合度が2~5である前記ジエステルのオリゴマーの分子を含む。本発明によると、用語「皆無」は、精製されたジエステル流出物中の、対象となる化合物の含有率が、前記含有率を求めるために用いられる分析方法の定量(determination)の限界値より低いことを意味する。
【0083】
有利には、精製されたジエステル流出物は、液体の形態で、工程c)の終わりに得られる。液体の形態で、工程c)の終わりに得られる前記精製されたジエステル流出物の少なくとも1つのフラクションは、本発明による方法の工程d)に供給される。前記精製されたジエステル流出物の少なくとも1つのフラクションはまた、本発明によるテレフタル酸系ポリエステルの製造方法の工程a)に再循環させられてよい。
【0084】
重合供給原料の調製の工程d)
本発明によると、テレフタル酸系ポリエステルの製造方法は、重合供給原料の調製の工程d)を含む。前記工程d)は、少なくとも1種のテレフタル酸供給原料と、液体の形態で、工程c)の終わりに得られる前記精製されたジエステル流出物の少なくとも1つのフラクションとが供給される少なくとも1つの混合セクションを含む。有利には、前記テレフタル酸供給原料は、テレフタル酸単位を有する化合物としてテレフタル酸を含むテレフタル酸供給原料、または、テレフタル酸単位を有する化合物としてテレフタル酸ジメチルを含むテレフタル酸ジメチル供給原料である。
【0085】
テレフタル酸供給原料が、テレフタル酸を含むテレフタル酸供給原料である、1つの特定の実施形態において、工程d)の終わりに得られる重合供給原料は、少なくともテレフタル酸と、ジエステルモノマーと、場合によるジオール(またはグリコール)を含む均質な二相混合物である。用語「二相」は、有利には、液体またはペースト状の相中に、固体相が懸濁した状態を意味すると理解される。用語「均質な」は、液体またはペースト状の相に懸濁した固体相が、液体またはペースト状の相全体を通して、均質に分布していることを意味すると理解されるべきである。より具体的には、本実施形態における重合供給原料は、ジエステルモノマーを含む液体またはペースト状の相中に均質に分布する、典型的には1~1000μm、特に80~300μmの直径を有する、固体テレフタル酸粒子の混合物である。
【0086】
テレフタル酸供給原料が、テレフタル酸ジメチルを含むテレフタル酸ジメチル供給原料である、別の特定の実施形態において、少なくともテレフタル酸ジメチル、ジエステルモノマー、および、場合によるジオール(またはグリコール)供給原料を含む重合供給原料は、有利には、単相混合物である。
【0087】
有利には、前記混合セクションに導入されるテレフタル酸供給原料および精製されたジエステル流出物の量は、前記混合セクションに導入される、式-[C(n+1)H(2n+2)O2]-(式中、nは1以上、好ましくは1~5、優先的には1~3の整数である)のジオール単位の全モル数の、前記混合セクションに導入される、式-[CO-(C6H4)-CO]-のテレフタル酸単位の全モル数に対する比が、1.0~2.0、好ましくは1.0~1.5、優先的には1.0~1.3であるように調整される。
【0088】
本発明の1つの実施形態によると、本発明による方法の前記工程d)の前記混合セクションには、好ましくは、化学式HO-C(n+1)H(2n+2)-OH(式中、nは1以上、好ましくは1~5、より好ましくは1~3の整数である)のジオールモノマーを含む、ジオールモノマー供給原料が、更に供給される。好ましくは、前記ジオールモノマー供給原料は、目的とするテレフタル酸系ポリエステルの個々の単位の組成に組み入れられるジオールモノマーを、少なくとも90モル%、優先的には少なくとも95モル%、非常に好ましくは98モル%含む。好ましくは、ジオールモノマー供給原料は、エチレングリコールを、90モル%以上、少なくとも95モル%、優先的には少なくとも98モル%の含有率で好ましくは含む。前記ジオールモノマー供給原料のジオールは、解重合工程a)の再生処理されるべきポリエステルの供給原料の組成に組み入れられるジオールモノマーの化学構造と、異なる化学構造を有していても同じ化学構造を有していてもよく、好ましくは、同じ化学構造を有している。好ましくは、前記ジオールモノマー供給原料は、少なくともその一部が、本発明による方法の工程g)で得られる精製されたジオールの流れのフラクションであってよく、および/または、本発明による方法の工程b)の終わりに得られるグリコール流出物の少なくとも一部のフラクションであってよい。
【0089】
ジオールモノマー供給原料が、工程d)の混合セクションに組み入れられる場合、工程d)の混合セクションに導入される前記ジオール供給原料の量は、上記に定義したように、工程d)の混合物中のジオール単位の数の、テレフタル酸単位の数に対する比が、1.0~2.0、好ましくは1.0~1.5、優先的には1.0~1.3であるように調整される。
【0090】
有利には、工程d)の混合セクションに導入される精製されたジエステル流出物のジエステルモノマーの分子量は、テレフタル酸(PTA)、またはテレフタル酸ジメチル(DMT)の重量に対して、少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも15重量%を表す。
【0091】
ジエステルモノマーの分子が、2つのジオール単位と1つのテレフタル酸単位とを含み、テレフタル酸またはテレフタル酸ジメチルの分子が、1つのテレフタル酸単位を含み、ジオールの分子が、1つのジオール単位を含む限りにおいて、1モルのジエステルモノマー、例えば、1モルのビス(2‐ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)を、テレフタル酸またはテレフタル酸ジメチルモノマー供給原料と、エチレングリコール等のジオールモノマー供給原料との混合物として組み入れることにより、前記テレフタル酸供給原料の一部と、前記ジオール供給原料の全部またはいくつかを置き換えることが可能になる。
【0092】
有利には、前記テレフタル酸供給原料と、前記精製されたジエステル流出物の少なくとも1つのフラクションと、場合による前記ジオールモノマー供給原料との混合は、当業者に知られた、効果的な混合を可能にする任意の機器において行われる。重合供給原料がテレフタル酸を含む特定の実施形態においては、工程d)により、液体混合物またはペースト中に懸濁した固体の均質な分布を得ることが可能になる。好ましくは、本発明による方法の工程d)の混合は、機械的攪拌を伴うミキサーにおいて行われ、あるいは、それは、液体または前記混合物の再循環によって、例えば、ループ状に混合物を循環させるポンプを用いて、攪拌される。
【0093】
前記テレフタル酸供給原料、前記精製されたジエステル流出物のフラクション、および場合による前記ジオールモノマー供給原料は、一緒にまたは別々に、ミキサーに導入される。
【0094】
有利には、本発明による方法の工程d)における前記混合セクションは、温度が25°C~250°C、好ましくは60°C~200°C、好ましくは100°C~150°C、圧力が0.1MPa以上で操作される。前記混合セクションの圧力は、非常に有利には5MPa以下である。
【0095】
加えて、1種以上の重合触媒が、本発明による方法の工程d)の混合物中に組み入れられてよい。
【0096】
他のモノマー(またはコモノマー)化合物は、有利には、混合物中に導入されてもよく、エステル化供給原料中に見出され得る。非制限的な例として、前記他のモノマー化合物は、ジカルボン酸(例えば、イソフタル酸等)、ならびに、ジオール(例えば、1,4-ジヒドロキシメチルシクロヘキサンおよびジエチレングリコール等)であり得る。
【0097】
テレフタル酸供給原料が使用される、本発明の特定の実施形態の1つによると、ジエステルモノマー、例えばBHETモノマーの、重合供給原料への組み入れにより、ポリエステルの製造のためのモノマーの二相混合物中で、固体粒子の粉末の形態の化合物であるテレフタル酸の一部を置き換えることが可能になる。本発明による方法において、このように、テレフタル酸の一部と、全てまたはいくつかのジオールとを、ジエステルモノマーに置き換えることにより、二相混合物の固形分が同一である場合において、従来のポリエステル製造方法のものと比較比較すると、混合物中に過剰に導入される、ジオール、例えばエチレングリコールの量を相当量低減させることが可能になり、これにより、コスト、特に原材料コストが低減されるに至るだけでなく、ポリエステル製造方法のエネルギー消費が相当量低減されるに至る。このことは、処理されて再循環させられるべき、重合中に回収されるジオールの量の減少によるものである。
【0098】
縮合工程e)
本発明によると、テレフタル酸系ポリエステルの製造方法は、工程d)の終わりに得られる重合供給原料の縮合の工程e)を含み、これにより、少なくとも1種の縮合反応流出物、1種のジオール流出物、および、1種の水性流出物または1種メタノール流出物が生じさせられる。前記縮合工程e)は、少なくとも1つの反応セクションと少なくとも1つの分離セクションとを含む。
【0099】
テレフタル酸系供給原料がテレフタル酸供給原料である、特定の実施形態において、工程e)で行われる反応は、有利には、エステル化反応を含み、このエステル化反応は、工程c)において生じ、工程d)において少なくとも部分的に重合供給原料に組み入れられる、精製されたジエステル流出物のフラクションのジエステルモノマー、および、重合供給原料中に場合により存在するジオールモノマーの、少なくとも水酸基(-OH)と、工程d)において重合供給原料に組み入れられるテレフタル酸供給原料のテレフタル酸の少なくともカルボキシ基(-COOH)との縮合反応からなる。このエステル化反応により、ジエステルモノマー、例えば、ビス(2‐ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)の分子、および、有利には2~5個のテレフタル酸単位を含むジエステルオリゴマーの分子が生じる。エステル化反応はまた、水を放出する。本発明による方法の工程e)で行われる反応はまた、有利には、ジエステルモノマーの分子同士の縮合反応からなるエステル交換反応を含み、これによりジオール分子が放出される。
【0100】
テレフタル酸系供給原料がテレフタル酸ジメチル供給原料である他の特定の実施形態において、工程e)で行われる反応は、有利には、エステル交換反応を含む。このエステル交換反応は、工程c)において生じ、工程d)において少なくとも部分的に重合供給原料に組み入れられる、精製されたジエステル流出物のフラクションのジエステルモノマー、および、重合供給原料中に場合により存在するジオールモノマーの少なくとも水酸基(-OH)と、工程d)において重合供給原料に組み入れられるテレフタル酸ジメチル供給原料のテレフタル酸ジメチルの少なくともカルボキシラート(-COO-)の基との縮合反応からなる。このエステル交換反応により、ジエステルモノマー、例えばビス(2‐ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)の分子、および有利には2~5個のテレフタル酸単位を含むジエステルオリゴマーの分子が生じる。それはまた、メタノールを放出する。本発明による方法の工程e)において行われる反応はまた、有利には、ジエステルモノマーの分子同士の縮合反応からなるエステル交換反応を含み、したがってジオール分子を放出する。
【0101】
有利には、前記反応セクションは、直列または並列の、1つ以上の反応器において、温度が150°C~400°C、好ましくは200°C~300°C、圧力が0.05~1MPa、好ましくは0.1~0.3MPa、滞留時間が0.5~10時間、好ましくは1~5時間で操作される。本発明によると、前記エステル化工程d)における滞留時間は、前記反応セクションの反応器の反応体積の、前記反応器から出る液体流れの体積流量に対する比として定義される。
【0102】
有利には、特に重合供給原料から出発するエステル化反応の場合、当業者に知られた重合触媒は、場合によりジオールの流れとの混合物として、縮合工程e)の反応セクションに場合により導入されてよい。非制限的な例として、重合触媒は、アンチモン、スズ、ゲルマニウムまたはアルミニウム、酢酸亜鉛、カルシウムまたはマンガンをベースとする触媒である。重合供給原料がテレフタル酸ジメチル供給原料を含む特定の実施形態において、当業者に知られたエステル交換触媒は、場合により、有利にはジオールの流れとの混合物として、工程e)の反応セクションに加えられる。
【0103】
縮合反応は、有利には、1つ以上の攪拌式反応器、1つ以上の管型反応器、または攪拌式反応器と管型反応器の組み合わせにおいて行われる。
【0104】
有利には、反応セクションはまた、水またはメタノール、およびジオールを豊富に含む、抜き出された流出物の少なくとも1つの抜き出しを含む。前記抜き出された流出物中の水またはメタノール、およびジオールは、工程e)の分離セクションにおいて分離される。工程e)の分離セクションには、水またはメタノール、およびジオールを豊富に含む、前記抜き出された流出物が供給され、有利には、水性またはメタノール流出物、およびジオール流出物が生じる。有利には、水またはメタノールは、揮発度の差異によって、例えば、蒸留、または、反応媒体中に存在する放出された、ジオール、および水またはメタノールを少なくとも一部含有する前記抜き出された流出物から出発する吸着によって、分離される。
【0105】
有利には、本発明による方法の工程e)において得られる前記ジオール流出物の少なくとも1つのフラクションは、場合により、ジオールを処理するための工程g)に送られるか、あるいは、前記工程e)の反応セクションに直接送り返されてよい。好ましくは、工程e)の分離セクションの終わりに得られる前記ジオール流出物は、前記工程e)の反応セクションに直接送り返される。
【0106】
前記工程e)の終わりに、特に、工程e)の反応器セクションの出口で、得られる前記縮合反応流出物は、ジエステルモノマーとエステルオリゴマーとを含む。好ましくは、前記縮合反応流出物中のジエステルモノマーは、工程c)で得られて、工程d)の混合物に少なくとも一部が組み入れられる、精製された液体ジエステル流出物のジエステルモノマーと同じタイプのものである。好ましくは、前記縮合反応流出物中のエステルオリゴマーは、有利には、本発明による方法によって目的とされるテレフタル酸系ポリエステルの基本となる繰返し単位に相当する基本単位からなる。
【0107】
重合のモノマー供給原料中に、精製されたジエステル流出物の少なくとも1つのフラクションを組み入れることにより、少なくとも一部のテレフタル酸供給原料と、全てまたは一部のジオール供給原料を置き換えることが可能になり、これにより、放出される水またはメタノールの量を低減させること、およびそれ故に、処理されるべき反応媒体から抜き出される水性またはメタノール流出物の量を制限することが可能になる。これにより、エネルギー消費が、有利には、低減させられる。
【0108】
重縮合工程f)
本発明によると、テレフタル酸系ポリエステルの製造方法は、工程e)で得られた縮合反応流出物の重縮合の工程f)を含み、これにより、少なくとも前記テレフタル酸系ポリエステルとジオール流出物が得られる。前記ジオール流出物は、本発明による方法の工程d)の混合セクションに、少なくとも一部が供給される、精製されたジエステル流出物のジエステルモノマーの、式-[C(n+1)H(2n+2)O2]-(式中、nは、1以上、好ましくは1~5、優先的には1~3の整数である)のジオール単位に有利には相当する、少なくとも1種のジオールモノマーを含む。
【0109】
重縮合工程f)は、工程e)で得られる縮合反応流出物のジエステルモノマーとエステルオリゴマーとの縮合反応を行うことにあり、これにより、所与の重合度と所望の物理化学的特性(例えば、粘度指数、結晶化度、色、機械的特性、等)を有するポリエステルが得られる。前記縮合反応は、ジオール化合物、場合による水またはメタノール、および副生成物を放出し、これらは、除去することが推奨される。
【0110】
重縮合工程f)は、重縮合反応が行われる少なくとも1つの反応器を含む少なくとも1つの反応セクションと、ジオール流出物の抜き出しを少なくとも1つ含み、ジオール流出物は、少なくとも1種のジオールモノマーを含み、ジオールモノマーは有利には、精製されたジエステル流出物のジエステルモノマーの式-[C(n+1)H(2n+2)O2]-(式中、nは、1以上、好ましくは1~5、優先的には1~3の整数である)のジオール単位に相当する。
【0111】
有利には、工程f)の前記反応セクションは、直列または並列で機能する、1つ以上の反応器において、温度が200°C~400°C、好ましくは250°C~300°C、圧力が0.0001~0.1MPa、好ましくは0.0004~0.01MPa、滞留時間が0.1~5時間、好ましくは0.5~3時間で操作される。本発明によると、前記重縮合工程f)における滞留時間は、前記反応セクションの反応器の反応体積の、前記反応器から出る液体流れの体積流量に対する比として定義される。工程f)の重縮合反応は、2つの連続する反応工程:溶融相縮合工程、およびそれに続く固相後縮合工程、において行われてよい。
【0112】
有利には、重合添加剤および重合触媒が、重縮合工程f)に導入され得る。非制限的な例として、添加剤は、例えば、アミン(n-ブチルアミン、ジイソプロピルアミン、もしくはトリエチルアミン)、水酸化ナトリウム、有機水酸化物、炭酸リチウム等のエーテル化副反応の阻害剤と、亜リン酸塩またはリン酸塩等の安定剤と、アセトアルデヒド等の分解生成物の量を低減させるためのポリアミドタイプの化合物とを含み得る。一般的に使用される重合触媒は、例えば、アンチモン、チタン、ゲルマニウムまたはアルミニウム、酢酸亜鉛、カルシウムまたはマンガンをベースとする触媒等である。
【0113】
有利には、前記ジオール流出物の抜き出しは、前記段階f)の反応セクションの反応器(単数または複数)に有利には接続された、1つ以上の抜き出しシステム(単数または複数)を用いて行われ、これにより、重縮合反応の間に放出されるジオールモノマーと、場合による水またはメタノールと、縮合反応中に場合により放出される他の副生成物とを分離することが可能になる。好ましくは、段階f)の反応器(単数または複数)から抜き出される、ジオール流出物は、気体の形態で抜き出され、次いで、有利には0~100°Cの温度に冷却されて凝縮され、これにより液体ジオール流出物が得られる。
【0114】
好ましくは、液体ジオール流出物の少なくとも1つのフラクションが、本発明による方法の工程g)に送られる。前記液体ジオール流出物の少なくとも1つのフラクションはまた、重合供給原料の調製の工程d)に直接再循環させられてもよい。非常に特定の実施形態において、前記液体ジオール流出物は、完全にあるいは部分的に、縮合工程e)に直接再循環させられてもよい。
【0115】
ジオールの処理工程g)
本発明によると、テレフタル酸系ポリエステルの製造方法は、ジオールを処理する工程g)を含む。ジオールの処理工程g)は、処理されるべきジオールの流れを得るために、少なくとも、工程b)に由来するグリコール流出物の全部または一部と、工程f)に由来するジオール流出物の全部または一部とが供給される回収セクションと、精製されたジオールの流れを得るために、処理されるべき前記ジオール流れの精製セクションとを含む。
【0116】
工程g)の前記回収セクションには更に、縮合工程e)に由来するジオール流出物の少なくとも1つのフラクション、および/または外部から補われるジオールが、場合により供給されてよい。
【0117】
有利には、回収セクションは、1つ以上のろ過操作を含んでよい。
【0118】
工程g)の回収セクションの終わりに得られる前記処理されるべき前記ジオールの流れは、工程g)の精製セクションに送られ、これにより精製されたジオールの流れが得られる。
【0119】
前記精製セクションは、例えば、気/液分離、蒸留または吸着等の、当業者に知られた、物理的、物理化学的、または化学的な分離方法のうち、任意の方法を行う、少なくとも1つの分離システムを含む。好ましくは、処理されるべき前記ジオール流出物の精製は、少なくとも1つの蒸留塔、好ましくは一連の蒸留塔を採用し、温度が50°C~250°C、好ましくは70°C~220°C、圧力が0.001~0.2MPa、好ましくは0.01~0.1Mpaで操作される。好ましくは、前記精製セクションは、好ましくは一連の蒸留塔において、処理されるべきジオールの流れ中のジオールモノマーより軽質な不純物の分離の段階と、処理されるべきジオールの流れ中のジオールモノマーより重質な不純物の分離の段階とを含む。
【0120】
有利には、前記工程g)はまた、揮発性有機化合物を環境に排出することを防ぐために、前記化合物の、熱または触媒による燃焼によって、前記化合物を除去するセクションを含んでよい。非制限的な例として、不純物の処理のための前記セクションは、固体粒子、および触媒または非触媒燃焼システムが存在する場合、ろ過を含む。
【0121】
本発明による方法の工程g)の終わりに得られる前記精製されたジオールの流れは、次いで、完全にあるいは部分的に、本発明による方法の少なくとも工程a)およびd)に送られてよい。
【0122】
したがって、本発明による方法により、「新鮮な」原材料の消費と全体的なエネルギー消費とを制限しながら、収集および分別産業に由来する再生処理されるべきポリエステル材料から、有利には、目的とする重合度と所望の物理化学的特性とを有する、テレフタル酸系ポリエステルを得ることが可能になる。とりわけジオール(単数または複数)の最適化された再循環システムのおかげで、エネルギー消費の低減が可能になる。このジオールは、特に重合の間に放出されたジオールと、重合のためにモノマーの混合物(すなわち、重合供給原料)に場合により導入される未転化のジオールである。
【0123】
本発明の方法により、工程a)、b)、およびc)の終わりに、非常に有利には、テレフタル酸ジエステル(例えば、BHET等)を含み、テレフタル酸系ポリエステルを得るための重合方法によって要求される規定に適合した高純度の中間体の流れを生じさせることが可能になる。前記液体ジエステル中間体の流れは、いわゆる重合工程に直接注入されることが可能であり、特に、好ましくは前記モノマー供給原料の少なくとも一部を取り替えるものとして、重合セクションに供給されるモノマー供給原料の混合物に直接組み入れられることが可能である。前記ジエステル中間体の流れを直接注入することにより、解重合方法と重合方法の合計よりも低いエネルギー消費量を有することが可能になる。好ましくは、テレフタル酸ジエステルは、エチレングリコールによる、PETのグリコリシスに由来する、ビス(2‐ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)である。
【0124】
本発明の方法により、不透明PET等の、今日まで再生処理が困難であったプラスチックの再生処理が可能になるため、環境保護的要求に応えることが可能になる。
【0125】
以下の図および実施例により、本発明を説明するが、これらは本発明の範囲を制限するものではない。
【0126】
図1は、本発明によるポリエチレンテレフタラート(PET)の製造方法の、1つの特定の構成を示す。この構成は、再生処理されるべきPETの供給原料を、好ましくはグリコリシスにより、解重合するためのスキームと、解重合方法により得られる中間の精製されたBHETの流れと、テレフタル酸と、モノエチレングリコールジオール(またはエチレングリコール、MEG)とを含む混合物を重合するためのスキームとを統合したものである。
【0127】
図1のグリコリシス方法は、一続きとなる、解重合工程a)と、次の分離工程b)と、次の精製工程c)とを含む。
【0128】
解重合工程a)には、少なくとも、再生処理されるべきPETの前記供給原料(1)と、MEG供給原料(3c)とが供給される。有利には、再生処理されるべきPETの前記供給原料は、前記工程a)の操作条件の下に、予熱され加圧される。有利には、少なくとも80重量%、非常に有利には少なくとも90重量%、優先的には少なくとも95重量%の供給原料が、液体の形態で、工程a)に導入される。再生処理されるべきPETの供給原料の温度は、有利には225°C~275°Cである。導入に必要な時間およびそれに関連する温度は、ポリエステルの熱分解が最小限に抑えられるように調整される。
【0129】
有利には、前記工程a)は、押出セクションと称される、スクリュー搬送セクションを含み、このセクションに、再生処理されるべきPETの前記供給原料が供給される。前記押出セクションにおける滞留時間は、前記セクションの体積を、供給原料の体積流量で除したものとして定義され、有利には15分未満、好ましくは10分未満、より好ましくは2分未満である。前記押出セクションは、有利には、真空抽出システムと接続されており、これにより、再生処理されるべきPETの供給原料中に存在する、溶解ガス、軽質有機化合物、および/または湿気等の不純物が除去される。前記押出セクションはまた、有利には、ろ過システムを含み得、これにより、40μm超、好ましくは3~40μmのサイズを有する、砂粒子等の固体粒子が除去される。
【0130】
再生処理されるべきPETの供給原料は、有利には、反応押出セクションとも称される、前記押出セクション内で、工程b)に由来するMEG流出物(3c)の少なくとも一1つのフラクションと、有利には接触させられる。MEGの流れ(3c)は、有利には、工程a)に供給される前に過熱させられてよく、これにより、再生処理されるべきPETの供給原料の加熱が促進される。再生処理されるべきPETの前記供給原料中のジエステルのモル当たりの、工程b)に由来するMEGのモル数は、有利には1.0以下、好ましくは0.5以下である。
【0131】
前記工程a)にはまた、有利には、工程c)に由来する流出物(5)のフラクションが供給されてもよく、前記フラクションは、未転化オリゴマーとポリエステルの混合物を含み、優先的には、ろ過工程において精製されたものである。
【0132】
解重合工程a)は、反応セクションを含む。この反応セクションは、1つ以上の反応器において、温度が150°C~400°C、好ましくは180°C~300°C、より好ましくは200°C~280°Cで、液相中で、再生処理されるべきPETの前記供給原料中のジエステルのモル当たり、1~20モル、好ましくはモル当たり3~15モル、より好ましくはモル当たり5~10モルのMEGで、滞留時間が0.1~6時間、好ましくは0.5~4時間、操作圧力が少なくとも0.1MPa、優先的には少なくとも0.4Mpaで操作される。好ましくは、前記解重合工程は、触媒を加えることなく行われる。
【0133】
グリコリシス反応により、再生処理されるべきPETの供給原料を転化して、ビス(2‐ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)モノマーとBHETオリゴマーとを与えることが可能になる。前記解重合工程において、再生処理されるべきPETの供給原料の転化率は、50%超、好ましくは70%超、より好ましくは85%超である。BHETのモル収率は、50%超、好ましくは70%超、より好ましくは85%超である。BHETのモル収率は、再生処理されるべきPETの供給原料(1)中のジエステル単位のモル流量に対する、前記工程a)の出口におけるBHETのモル流量に相当する。
【0134】
内部再循環ループが、有利には、工程a)においても使用される。それは、反応系(すなわち、前記反応セクション内に存在する、全ての成分および相)のフラクションの抜き出しと、このフラクションのろ過と、前記フラクションの、前記工程a)への再注入とを含む。この内部再循環ループにより、有利には、場合により反応液体内に存在する固体不純物を除去することが可能になる。
【0135】
解重合工程a)に由来する反応流出物(2)は、MEGの分離の工程b)に供給される。分離工程b)は、反応流出物(2)のフラクションを気化させるために、工程a)の圧力より低い圧力で操作され、これにより、50重量%超、好ましくは70重量%超、より好ましくは90重量%超のMEGを含む、少なくとも1種の気体MEG流出物と、BHETモノマー(4)を豊富に含む液体流出物とが与えられる。
【0136】
工程b)は、有利には、一続きの気/液分離を含み、有利には、1~5つ、非常に有利には3~5つの連続する気/液分離を含み、これは、温度が100°C~250°C、好ましくは110°C~220°C、より好ましくは120°C~210°Cで行われる。先行する分離器からの液体流出物は、後続の分離器に供給される。最終の気/液分離に由来する液体流出物は、BHETモノマーを豊富に含む液体流出物(4)を構成する。回収される気体MEG流出物の少なくとも1つのフラクションは、凝縮させられて、液体MEG流出物が与えられる。
【0137】
後続の分離器の温度および圧力は、先行する分離器のものより低く、これにより、先行する分離から出る気体MEG流出物の少なくとも一部が、凝縮に際し、後続の分離による液体流出物の一部を再沸騰し得るようになされている。この構成において、MEGを回収するための熱の供給が、最小限に抑えられる。
【0138】
工程b)は、液体流出物の温度が、BHETモノマーの沈殿温度を超える温度であり、かつ、ジオール/モノマーのモル比によるが、その温度を超えるとBHETモノマーが相当量再重合するような高い値を下回る温度に維持されるように、行われる。工程b)の気/液分離セクション内の温度は、100°C~250°C、好ましくは110°C~220°C、より好ましくは120°C~210°Cである。工程b)の気/液分離器内の圧力は、再重合を最小限に抑え、最適なエネルギー統合が可能になるような温度で、MEG、および反応流出物(2)中に場合により存在する不純物の蒸発が、可能になるように調整される。それは、一般的に、0.00001~0.2MPa、好ましくは0.00004~0.15MPa、好ましくは0.00004~0.1Mpaである。
【0139】
前記気/液分離に由来する気体および液体MEG流出物は、染料、軽質アルコール、水、ジエチレングリコール等の、他の化合物を含有してよい。工程b)は、有利には、前記気体および液体MEG流出物の全部または一部を分別するためのセクションを1つ以上含み、これにより、少なくとも軽質不純物を豊富に含む流出物(3a)と、重質不純物を豊富に含む流出物不純物(3b)と、MEG流出物(3c)とが与えられる。上記セクションは、温度が50°C~250°C、好ましくは60°C~210°C、より好ましくは70°C~180°C、圧力が0.00001~0.2MPa、好ましくは0.00004~0.15MPa、より好ましくは0.00004~0.1MPaで操作される。好ましくは、前記気体および液体MEG流出物の分別は、蒸留塔、ストリッピング塔、または精留塔内で行われる。有利には、前記MEG流出物の全部または一部が、前記分別セクションの上流または下流の、予備精製工程において処理されてよく、これにより、例えば、固体(例えば活性炭)への吸着を介して、染料が除去される。
【0140】
MEG流出物(3c)は、有利には、99重量%超のMEG、好ましくは99.5重量%超のMEGを含有する。全部または一部のMEG流出物(3c)が、有利には、重合方法の回収工程g)に由来する精製されたMEG流出物の少なくとも1つのフラクションとの混合物として、工程a)に再循環させられる。
【0141】
軽質不純物を豊富に含む流出物(3a)と重質不純物を豊富に含む流出物(3b)は、有利には、重合方法の回収工程g)に送られる。
【0142】
BHETモノマーを豊富に含む液体流出物(4)は、精製工程c)に供給される。工程c)は、BHETモノマーを豊富に含む液体流出物(4)の分離のためのセクションを1つ以上含み、これにより重質不純物を豊富に含む液体流出物(5)と予備精製されたBHET流出物が与えられる。このセクションは、温度が250°C未満、好ましくは230°C未満、非常に好ましくは200°C未満、圧力が0.001MPa未満、好ましくは0.0001MPa未満、好ましくは0.00005Mpa以下、滞留時間が10分未満、好ましくは5分未満、より好ましくは1分未満で操作される。
【0143】
重質不純物が濃縮された液体流出物(5)は、有利には、オリゴマー、未転化PET、および重質不純物、特に顔料、場合により存在する他のポリマー、および重合触媒を濃縮する。前記工程c)における分離のための操作条件は、再重合によるBHETモノマーの損失を最小限に抑えるように調整される。いくつかのオリゴマーが、予備精製された気体BHET流出物中のモノマーとともに伴出されてもよい。
【0144】
前記予備精製されたBHET流出物の分離は、有利には、流下膜または薄膜蒸発のシステムにおいて、もしくは、流下膜または薄膜の短工程蒸留によって、あるいは、一続きのいくつかの流下膜または薄膜の短工程蒸留および/または蒸発によって行われる。モノマーの蒸発を可能にしながら、250°C未満、好ましくは230°C未満の温度で前記分離を行うことを可能にするためには、非常に低い操作圧力である必要がある。
【0145】
重質不純物(5)に濃縮される前記流出物のフラクションは、有利には、解重合方法のBHET収率を向上させるために、解重合工程a)に再循環させられてよい。
【0146】
前記重質不純物流出物(5)は、有利には、それが再循環させられる前に、少なくとも1つの精製工程、好ましくは、ろ過工程に付され、これにより、顔料および/または他の固体不純物の量が低減させられる。前記重質不純物流出物(5)の全部または一部は、有利には、方法から抜き取られるか、焼却システムまたは顔料回収システムに送られてもよい。
【0147】
MEG流出物(3c)のフラクション、工程g)に由来する精製されたMEG流出物(15)のフラクション、または前記2つの流出物のフラクションの混合物は、有利には、工程c)に由来する重質不純物中に濃縮された流出物(5)と混合されてよく、これにより、前記重質不純物の流出物の粘度が低減し、その流出物の工程a)への輸送、および、任意のろ過工程における、流出物の、場合による処理が促進される。
【0148】
工程c)は、予備精製されたBHET流出物の脱色のためのセクションを1つ以上含み、このセクションは、温度が100°C~250°C、好ましくは110°C~200°C、より好ましくは120°C~180°C、圧力が0.1~1.0MPa、好ましくは0.2~0.8MPa、より好ましくは0.3~0.5Mpaで、吸着剤の存在下に操作されて、精製されたBHET流出物(6)を生じさせる。前記吸着剤は、染料を捕捉することが可能な、当業者に知られた任意の吸着剤であり得、例えば活性炭または粘土であり、有利には活性炭である。
【0149】
予備精製されたBHET流出物は、有利には、工程b)に由来するMEG流出物(3c)のフラクションと、あるいは工程g)に由来する精製されたMEG流出物のフラクションと混合される。
【0150】
解重合方法の工程c)の終わりに得られる精製されたBHET流出物(6)は、有利には、50モル%超、好ましくは60モル%超、より好ましくは70モル%超のMEGを含む。
【0151】
精製されたBHET流出物(6)は、有利には、供給原料調製工程d)に供給される。それは、工程d)において、少なくとも1種のテレフタル酸供給原料(7)、場合による、工程g)に由来するMEG流出物(15)の一部、および、場合によるコモノマー(8)と混合される。
【0152】
供給原料調製工程d)は、好ましくは80°C超、より好ましくは110°C超の温度で行われる。
【0153】
解重合ユニットが、事前に存在する重合ユニットに取り付けられる場合、精製されたBHET流出物(6)に由来するBHETモノマーの量は、有利には、重合方法の工程d)において調製される混合物中のテレフタル酸、BHETを含む芳香族モノマー全量の30モル%未満、好ましくは25モル%未満、好ましくは20モル%未満を表してよく、これにより、解重合ユニットへの投資および重合ユニットに対してなされる改良が最小限に抑えられることにより最適な統合を確実にすることが可能になる。
【0154】
重合方法はまた、少なくともエステル化工程e)と、重縮合工程f)と、MEG流出物の回収および精製のための工程g)とを含む。
【0155】
重合方法は、好ましくは、すでに操作されている方法であり、すなわち、再生処理されるべきPETの解重合のための方法の統合の前から、PTAおよびMEGモノマー、ならびに、場合によるコモノマーの供給原料を用いてすでに操作されている方法である。本発明による方法の前記特定の構成において、解重合方法を統合することにより、製造される最終PETの特性に何ら影響を与えることなく、再生処理されるべきPETを、バージンPETに組み入れることが可能になる。これは、解重合方法を、重合方法の工程d)、e)、およびg)と最適に統合することによって、ならびに、前記解重合方法の性能および低減されたエネルギー消費によって、重合方法の構成への影響およびエネルギー消費を最小限に抑えながら、可能になるものである。
【0156】
エステル化工程e)には、工程d)に由来する混合物(9)が供給される。エステル化反応は、1つ以上の反応器において、温度が150°C~400°C、好ましくは200°C~300°C、圧力が0.05~1MPa、好ましくは0.1~0.3MPa、滞留時間が1~10時間、好ましくは1.5~5時間で操作される反応セクションを含む。
【0157】
エステル化反応により生じた水は、有利には、工程e)内の少なくとも1つの水分離システムによって、好ましくは蒸留によって分離され、これにより水性の流れ(10)が生じる。
【0158】
反応流出物(11)は、次いで重縮合工程f)に供給される。前記工程f)には、有利には、重合触媒と、好ましくは、工程g)に由来する精製されたMEG流出物(15)のフラクションとの混合物としての添加物(14)とが供給される。
【0159】
重縮合工程f)は、ポリエステルの流れ(12)を生じさせるための少なくとも1つの反応セクションと、縮合反応中に放出されるMEG、水、および他の副生成物を含有する少なくとも1種の流出物(13)を分離することを可能にする少なくとも1つの抜き出しとを含む。前記流出物(13)は、有利には、MEG流出物の回収と精製のための工程g)に送られる。
【0160】
重縮合工程f)の反応セクションは、1つ以上の反応器を含み、温度が200°C~400°C、好ましくは250°C~300°C、圧力が0.0001~0.1MPa、好ましくは0.0004~0.01MPa、滞留時間が0.1~5時間、好ましくは0.5~3時間で操作される。
【0161】
MEG流出物の回収および精製のための工程g)は、有利には、重合方法の工程f)に由来する流出物(13)と、解重合方法の工程b)に由来する流出物(3a)および(3b)を回収する。
【0162】
前記工程g)は、1つ以上の分離セクションを含み、好ましくは、MEGよりも軽質な不純物の分離のためのセクションを1つと、MEGよりも重質な不純物の分離のためのセクションを1つ含む。好ましくは、前記MEG流出物の精製は、一連の2つの蒸留塔によって、温度が50°C~250°C、好ましくは70°C~220°C、圧力が0.001~0.2MPa、好ましくは0.01~0.1Mpaで操作される。
【0163】
軽質不純物を豊富に含む流出物(3a)は、有利には、流出物(13)と混合されて、次いで、第1の蒸留塔に送られ、これにより、MEG流出物から、軽質不純物(16)、特に、水を分離することが可能になる。次いでMEG流出物は、有利には、重質不純物を豊富に含む流出物(3b)との混合物として、第2の蒸留塔に送られ、これにより、精製されたMEG流出物(15)と重質不純物の流出物(17)とが回収される。
【0164】
軽質および重質不純物の生成を最小限に抑える解重合方法を行い、有利には、前記解重合方法の工程b)において事前の分別を行うことにより、重合方法の当初の構成への影響を最小限に抑えながら、重合方法の工程g)の分離塔への供給が可能になる。
【0165】
実施例
【0166】
実施例1-比較例
PET重合方法におけるバージンPETの製造
5.5t/時間のテレフタル酸(PTA)を、機械的攪拌ーを備えた混合容器に導入し、110°Cで、2.5t/時間のモノエチレングリコール(MEG)の流れと混合した。この流れは、貯蔵タンクに由来する2.13t/時間のMEGと、MEGの精製のためのセクションに由来する再循環させられた0.37t/時間のMEGとを含んでいた。
【0167】
導入されたPTAおよびMEGの量は、PTA/MEGモル比が1.23に相当していた。
【0168】
110°Cでの、固体体積の、ペースト(固体+液体)の全体積に対する比として定義される、体積による固形分は、60.7体積%であった。得られた混合物は、粘性を有するペーストを形成していた。
【0169】
得られた混合物を、その後に、適切なポンプを用いて、260°C、5バール(すなわち、0.5MPa)、滞留時間が1.25時間で操作される第1のエステル化反応器に移した。
【0170】
71重量%の水と29重量%のMEGとを含む1.4t/時間の蒸気流出物を抜き出して、還流塔に送った。これにより、エステル化反応によって生じた水とMEGとを分離した。MEGを、その後に、反応器に戻した。第1の反応器において、得られたPTAの転化率は、85%であった。
【0171】
第1の反応器からの液体流出物を、その後に、260°C、2バール(すなわち、0.2MPa)、滞留時間が1.25時間で操作される第2のエステル化反応器に送った。40重量%の水と60重量%のMEGとを含む140kg/時間の蒸気流出物を、第2の反応器から抜き出して、還流塔に送った。第2の反応器の出口での、PTAの転化率は、92%を達成した。
【0172】
第2のエステル化反応器からの液体流出物を、275°C、33ミリバール(すなわち、0.033MPa)、滞留時間が0.5時間で操作される第3の反応器に送った。これにより、PTAの転化率を95.8%にして、重縮合を開始することが可能になった。第3の反応器の入口で、重合触媒として、220重量ppmの割合の三酸化アンチモンを加えた。70重量%のMEG、16.5重量%の水、5.5重量%のアセトアルデヒド、2.5重量%のジエチレングリコール、および5.5重量%のオリゴマーを含む蒸気流出物を、第3の反応器から抜き出して、一部を凝縮し、次いで、MEGの精製のためのセクションに送った。
【0173】
第3の反応器からの液体流出物を、275°C、66ミリバール(すなわち、0.0066MPa)、滞留時間が0.5で操作される第4の反応器(重縮合反応器)に送った。組成が、60重量%のMEG、25重量%の水、6重量%のアセトアルデヒド、3重量%のジエチレングリコール、および6重量%のオリゴマーである蒸気流出物を、第4の反応器から抜き出して、一部を凝縮し、次いで、MEGの精製のためのセクションに送った。
【0174】
第4の反応器からの液体流出物を、280°C、1.3ミリバール(すなわち、0.000013MPa)、滞留時間が1時間で操作される最終反応器(重縮合反応器)に送った。組成が、57重量%のMEGおよび43重量%の水である蒸気流出物を、抜き出し、一部を凝縮し、次いで、MEGの精製のためのセクションに送った。
【0175】
MEGの精製のためのセクションは、塔頂において145°C、200ミリバール(すなわち、0.02MPa)で操作される、25個のプレートを備えた第1の蒸留塔を含んでいた。これにより、ジエチレングリコールを分離することが可能であった。第1の蒸留塔からの塔底生成物を、塔頂において100°C、1バール(すなわち、0.1MPa)で操作される、17個のプレートを備えた第2の蒸留塔に送った。これにより、軽質成分(水、およびアセトアルデヒド等)を分離することが可能であった。これら2つの蒸留の終わりに回収されるMEGは、純度99.8%超を示した。このMEGを、その後に、混合容器に再循環させた。
【0176】
6.25t/時間のPETを製造した。PET製造の一次エネルギー消費総量は、5.8MMkcal/時間であった。
【0177】
脱色されかつ顔料が除かれた固体BHETの製造、およびPET重合方法における少なくとも1つのフラクションの組み入れ
【0178】
50重量%の不透明PETと50重量%の着色PETとからなる、再生処理されるべき、粉砕されて洗浄されたPET供給原料に由来する4t/時間のフレークを、250°Cで押出機内で溶解させて、11.4t/時間のエチレングリコール(MEG)と混合した。得られた混合物を、攪拌式反応器内に注入し、4時間の滞留時間にわたり、220°C、圧力4バール(すなわち、0.4MPa)に維持した。反応器の出口において、反応流出物は、66重量%のMEG、27.4重量%のBHET、1.7重量%のジエチレングリコール(DEG)、0.2重量%の水、4.7重量%のオリゴマー、顔料、および他の重質化合物を含んでいた。
【0179】
反応流出物中に存在するエチレングリコールを、200°C~124°Cの範囲の温度、0.1Mpa~0.00025Mpaの圧力での、一続きの5つの容器内における蒸発により分離した。この蒸発工程の終わりに、97重量%のMEG、2.5重量%のDEG、0.2重量%の水、および0.2重量%のBHETからなる10.95t/時間のMEGの流れと、5.17t/時間のBHETを豊富に含む液体流れとを回収した。MEGの流れを、25個のプレートを備え、かつ塔頂において、145°C、200ミリバール(すなわち、0.02Mpa)で操作される、第1の蒸留塔に送り、これによりDEGおよび重質生成物を分離し、次いで17個のプレートを備え、かつ塔頂において、100°C、1バール(すなわち、0.1MPa)で操作される、第2の蒸留塔に送り、これにより、水を分離して、精製されたMEG流出物を回収した。このMEG流出物を、その後に、補足された新鮮なMEGとの混合物として、解重合反応器に再循環させた。BHETを豊富に含む液体流れは、87.1重量%のBHET、0.2重量%のMEG、0.1重量%のDEG、12.6重量%のオリゴマー、顔料、および他の重質化合物を含んでいた。
【0180】
BHETを豊富に含む液体流れを、その後に、温度が205°C、圧力が0.2ミリバール(すなわち、0.00002MPa)の短工程蒸留に注入した。流量が4.46t/時間の予備精製された液体BHET流出物を、短工程蒸留において蒸気を115°Cにまで冷却することによって回収した。それは、99.8重量%のBHET、0.1重量%のMEG、および0.1重量%のDEGを含んでいた。93重量%のオリゴマー、顔料、および他の重質化合物と、7重量%のBHETとを含む重質残渣も、短工程蒸留の出口において流量0.7t/時間で回収した。
【0181】
予備精製されたBHETの液体流れを、0.5MPaにまで圧縮して、150°Cに加熱し、次いで、重量の5%に等しい吸着容量を有する活性炭の固定床に供給した。この工程の終わりに、脱色されかつ顔料が除かれたBHETの液体流れを、回収した。次いで、それを冷却し、40°Cで凝固させた。
【0182】
解重合の一次エネルギー消費総量は、BHET1トン当たり、1.25MMkcalであった。
【0183】
総じて6.25t/時間のPETを製造することを目的として、脱色されかつ顔料が除かれた固体BHETのフラクションを、上記の重合方法と同様の、PETの重合方法のモノマーの混合物を調製するための工程に再注入した。このPETの重合方法は、上記の重合方法と同一であった。解重合工程と重合工程とは、完全に独立しており、統合されていない。
【0184】
以下の表1に、PTAおよびMEGモノマーの量、組み入れられた固体BHETモノマーの量、110°Cで得られた供給原料の混合物中の固形分、ジオール単位数のテレフタル酸単位数に対する比、および一次エネルギー消費総量を報告する。これらは、上記の解重合方法に由来するBHETの組み入れを考慮に入れた、6.25t/時間のPETを製造するために、ジオール単位のテレフタル酸単位に対する2つの比(1.23および1.1)について示されたものである。表に示す結果は、異なるMEGの導入量について、計算された結果であり、1モルのBHETは、混合物中、1モルのPTAと2モルのMEGを置き換えるものとみなされ、実験点に設定された溶解性データと熱力学的データとを統合したプロセスシミュレーションに基づくものである。
【0185】
【表1】
【0186】
実施例2-本発明に合致
【0187】
解重合と重合の方法を統合した、再生処理されるべきPETを組み入れるPETの製造
【0188】
50重量%の不透明PETと50重量%の着色PETとからなる、再生処理されるべきPETの、粉砕されて洗浄された供給原料に由来する1.56t/時間のフレークを、250°Cで押出機の中で溶解させて、4.68t/時間のエチレングリコール(MEG)と混合した。次いで、混合物を、220°C、圧力が4バール(すなわち、0.4MPa)の攪拌式反応器内に注入した。滞留時間を4時間に設定した。反応器の出口において、反応流出物は、66重量%のMEG、27.4重量%のBHET、1.7重量%のDEG、0.2重量%の水、4.7重量%のオリゴマー、顔料、および他の重質化合物を含んでいた。
【0189】
反応流出物中に存在するエチレングリコールを、200°C~124°Cの範囲の温度、0.1Mpa~0.00025Mpaの圧力での、一続きの5つの容器内における蒸発によって分離し、次いで、ストリッピング塔と精留塔に送った。
【0190】
この分離工程の終わりに、MEGを豊富に含む流れ(97重量%のMEGを含む)と、1.76t/時間のBHETを豊富に含む液体流れとを回収した。MEGを豊富に含む流れを、分別した:一部を、エステル化工程より上流の、解重合工程およびモノマー調製工程に直接再循環させ、別の部分を、MEGの精製のためのセクションに送った(以下に説明する)。BHETを豊富に含む液体流れは、87.1重量%のBHET、0.2重量%のMEG、0.1重量%のDEG、12.6重量%のオリゴマー、顔料、および他の重質化合物を含んでいた。
【0191】
BHETを豊富に含む液体流れを、その後に、温度が205°C、圧力が0.2ミリバール(すなわち、0.00002MPa)の短工程蒸留に注入した。1.74t/時間の流量を有する、予備精製されたBHET液体流出物を、短工程蒸留において蒸気を115°Cに冷却することにより回収した。それは、99.8重量%のBHET、0.1重量%のMEG、および0.1重量%のDEGを含んでいた。0.27t/時間の流量を有する重質残渣もまた、短工程蒸留の出口で回収した:それは、93重量%のオリゴマー、顔料、他の重質化合物、ならびに、7重量%のBHETを含んでいた。
【0192】
予備精製されたBHET液体流れを、0.5Mpaにまで圧縮して、150°Cに加熱し、次いで、重量の5%に等しい吸着容量を有する活性炭の固定床に供給した。この工程の終わりに、約150°Cの温度で、脱色されかつ顔料が除かれたBHETの液体流れを得た。この脱色されかつ顔料が除かれたBHETの液体流れを、重合方法のモノマー調製工程に直接送った。
【0193】
脱色されかつ顔料が除かれたBHETの液体流れを、以下のものとともに、機械攪拌を備えた110°Cの混合容器内で混合した:
- 4.36t/時間のテレフタル酸(PTA)、および1.65t/時間のモノエチレングリコール(MEG)(実施例2a)、または
- 4.36t/時間のテレフタル酸(PTA)、および1.39t/時間のモノエチレングリコール(MEG)(実施例2b)。
【0194】
ペーストの形態で得られた混合物を、次いで、実施例1に記載したような、エステル化および重縮合の工程に送った。
【0195】
重縮合セクションからの、MEGを豊富に含む縮合物をMEG精製セクションに送った。MEG精製セクションは、実施例1に記載されたものと同様のものであった。MEG精製セクションの終わりに回収されたMEGは、99.8%超の純度を有していた。
【0196】
表2に、6.25t/時間のPETを製造するための、PTAおよび新鮮なMEGモノマーの量、再生処理されるべきPETモノマーの量、モノマー供給原料を調製する工程の終わりに得られた固形分、前記工程におけるジオール単位数のテレフタル酸単位数に対する比、ならびに、統合された方法のための一次エネルギー消費総量を報告する。表に示す結果は、計算により得られた結果であり、1モルのBHETは、混合物中、1モルのPTAと2モルのMEGを置き換えるものとみなされ、実験点に設定された溶解性データと熱力学的データとを統合したプロセスシミュレーションに基づくものである。
【0197】
【表2】
【0198】
重合供給原料を調製する工程(モノマー調製工程)に導入される、ジオール単位数の、テレフタル酸単位数に対する比を同等にした場合、解重合工程と重合工程とを統合した全体的な方法では、統合されていない解重合方法と重合方法のエネルギー消費総量と比較して、エネルギー消費量が削減されていることは明らかであるようだ:
- ジオール単位/テレフタル酸単位比が1.23である場合:0.48MMkcal/時間(すなわち、約6%)の削減;
- ジオール単位/テレフタル酸単位が1.1である場合:0.51MMkcal/時間(すなわち、約7%)の削減。
図1