(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】消火組成物
(51)【国際特許分類】
A62D 1/00 20060101AFI20241003BHJP
A62C 13/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
A62D1/00
A62C13/00
(21)【出願番号】P 2021546485
(86)(22)【出願日】2019-10-11
(86)【国際出願番号】 GB2019052893
(87)【国際公開番号】W WO2020084277
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2022-09-29
(32)【優先日】2018-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】522339709
【氏名又は名称】ファイアエックスオー・シーオーティーエム・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Firexo COTM Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122297
【氏名又は名称】西下 正石
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド・ブライス
【審査官】太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107648786(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107715363(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108245819(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0037417(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第106975193(CN,A)
【文献】英国特許出願公開第02561610(GB,A)
【文献】国際公開第2006/006829(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62D 1/00
A62C 13/00
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)35.0~75.0重量%以下の量の水;
(b)25.0重量%以上の量の消火塩、ここで、前記消火塩がリン酸塩及び硫酸塩を含み、前記リン酸塩が20.0~50.0重量%の量であり、前記硫酸塩が5.0~10重量%の量である;並びに
(c)被膜形成剤、ここで、前記被膜形成剤が0.05~5.0重量%の量である;
を含
み、
前記被膜形成剤が部分的にフッ素化された界面活性剤を含む、消火組成物。
【請求項2】
前記リン酸塩がリン酸一アンモニウムである、請求項
1に記載の消火組成物。
【請求項3】
前記リン酸塩が30.0~42.5重量%の量である、請求項1
又は2に記載の消火組成物。
【請求項4】
前記硫酸塩が硫酸アンモニウムである、請求項1~
3いずれか一項に記載の消火組成物。
【請求項5】
前記硫酸塩が5.5~8重量%の量である、請求項
4に記載の消火組成物。
【請求項6】
アルコールを含む、請求項1~
5のいずれか一項に記載の消火組成物。
【請求項7】
前記アルコールが0.01~0.75重量%の量である、請求項
6に記載の消火組成物。
【請求項8】
保存剤を含む、請求項1~
7のいずれか一項に記載の消火組成物。
【請求項9】
非イオン性界面活性剤を含む、請求項1~
8のいずれか一項に記載の消火組成物。
【請求項10】
前記非イオン性界面活性剤が0.005~0.05重量%の量である、請求項
9に記載の消
火組成物。
【請求項11】
発泡剤を含む、請求項1~
10のいずれか一項に記載の消火組成物。
【請求項12】
前記発泡剤がアルキル硫酸塩である、請求項
11に記載の消
火組成物。
【請求項13】
粉末又は泡である、請求項1~
12のいずれか一項に記載の消火組成物。
【請求項14】
容器を含む消火器であって、前記容器が請求項1~
13のいずれか一項に記載の消火組成物を含む消火器。
【請求項15】
前記容器が、推進剤を含む加圧されたキャニスターである、請求項
14に記載の消火器。
【請求項16】
請求項1~
13のいずれか一項に定義された消火組成物を与えることを含む、火災を消火する方法。
【請求項17】
前記火災が、固体燃焼性物質の燃焼及び/又は可燃性液体の燃焼によって引き起こされる、請求項
16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火組成物及び消火組成物を含む消火器に関する。本発明はまた、消火組成物の方法又は使用に関する。本発明はさらに、消火組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
火災は制御不能になると危険であり、重傷を負ったり、命を落としたりする可能性がある。火災を封じ込め、消火するために使用できる様々な消火組成物がある。これらの消火組成物は、火災訓練を受けた専門家が目的に応じて設計された装置を使用すること又は訓練を受けていない個人が、例えば、消火器を使用することによって与えられてもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
消火に利用できる消火組成物のいくつかの欠点は、それらが迅速に消火しないことである。その結果、消火組成物を与えることによって火災を制御できるようになる前に、火災が拡大する可能性がある。火災を消火し、火災により発生する熱を下げ、火災の再発生を防止するために、大量の組成物が必要とされる場合がある。これらの欠点は、所有物にさらなる損害をもたらし、負傷をもたらす可能性がある。
【0004】
いくつかの消火組成物のもう1つの問題は、それらが特定の種類の火災にしか使用できないことである。火災を悪化させる可能性があるため、火災に間違った種類の消火組成物を使用することは危険である。実例として、水は、電気火災又は、油又は油脂の燃焼により引き起こされる火災を消火するために使用すべきではない。場合によっては、火災訓練を受けていない個人が、消火をしようとする際に、間違った種類の消火器を使用することにより、さらなる被害を引き起こしたり、負傷したりしている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
<発明の要約>
本発明は、
75.0重量%以下の量の水;
約15.0重量%以上の量の消火塩;及び
被膜形成剤;
を含む消火組成物を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明者らは、有利な消火組成物を開発した。該組成物は、火災を迅速に消火するために使用することができる。特に他の種類の消火組成物と比較した場合、比較的少量の消火組成物を使用して、火災を消火し得る。本発明の消火組成物は、様々な種類の火災を消火するために使用されてもよい。本発明の消火組成物を複数の異なる火災源がある場合の消火に使用してもよい。本発明の消火組成物を複数の異なる種類の源からの火災を消火するため、又は他の異なる種類の源からの火災を悪化させることなく、1つの源からの火災を消火するために使用してもよい。
【0007】
本発明はまた、容器を含む、消火器を提供する。前記容器は、本発明による消火組成物を含む。
【0008】
本発明はさらに、消火組成物の製造方法に関する。前記方法は、消火組成物が75.0重量%以下の量の水及び15.0重量%以上の量の消火塩を含むように、消火塩と被膜形成剤とを水中において混合することを含む。
【0009】
本発明はまた、火災を消火する方法を提供する。該方法は、火災に、本発明による消火組成物を与えること又は適用することを含む。
【0010】
本発明はまた、消火及び/又は火災の拡大を低減又は防止するための消火組成物の使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<発明の詳細な説明>
本発明の消火組成物は、水を含む。水は消火塩を溶解し、組成物が液体、粉末又は泡のいずれの形態であっても、自由に流動することを確実にする。水はまた、加圧されたキャニスター(cannister)からなどの、組成物の火災への発射を促進し、火災の表面を被覆するための液体媒体を提供する。水消火器のように、水は消火を促進してもよいが、これはその主要な役割ではない。
【0012】
消火組成物は、75重量%以下の量の水を含む。大量の水が存在する場合、消火組成物は、従来の水消火器のように振舞う。水消火器は、電気火災又は、油、油脂又は可燃性金属(例えば、リチウム、カリウム、マグネシウム、チタン又はジルコニウム)による火災の消火には使用できない。本発明の消火組成物は、電化製品の存在下で使用してもよく、例えば、通電による電気火災用消火組成物の使用を規制する安全基準を満たし得る。
【0013】
本明細書で使用される「重量%」といういかなる言及も、文脈が他を示していない限り、消火組成物の重量%に関する。
【0014】
消火組成物は、典型的には、70.0重量%以下、好ましくは70.0重量%未満(例えば、69.0重量%未満)の量の水を含む。より好ましくは、水の量は、65.0重量%以下、例えば60.0重量%以下である。
【0015】
消火組成物は、35.0重量%以上、より好ましくは40.0重量%以上、例えば45.0重量%以上、及びさらにより好ましくは50.0重量%以上の量の水を含むことが好ましい。消火塩成分を溶解するのに十分な量の水が含有されるべきである。消火塩成分の溶解は、消火組成物の他の成分によって促進されてもよい。
【0016】
したがって、水の量は、典型的には、35.0~75.0重量%、好ましくは40.0~70.0重量%、例えば45.0~65.0重量%、及びより好ましくは50.0~60.0重量%である。
【0017】
本発明の消火組成物は、消火塩を含む。消火塩は、当技術分野で知られている粉末消火器に使用される種類のものである。消火塩は、燃料を不活性固体で被覆又は覆うために使用され、火災を抑える。火災から熱を奪うこともある。通電による電気火災の場合、消火塩は配線の導電性を抑えることがある。このような塩は、水が、例えば、電気火災又は油、油脂又は可燃性金属に起因する火災を悪化させる可能性があるため、水と組み合わせて使用されない。
【0018】
消火組成物は、15重量%以上の量で消火塩を含む。消火塩の量は、20重量%以上であることが好ましく、より好ましくは25重量%以上、例えば30重量%以上、及びさらにより好ましくは35重量%以上である。誤解を避けると、前記量は、消火塩の総量を指す。火災を消火するのに十分な量の消火塩が組成物中に存在すべきである。
【0019】
一般的に、消火組成物は、60.0重量%以下、例えば55.0重量%以下、好ましくは50.0重量%以下、及びさらにより好ましくは45.0重量%以下の量で消火塩を含む。消火塩が組成物中に多く存在しすぎる場合、消火塩を水に溶かすことが難しいことがある。これは、消火組成物の物理的形状に影響を与え、その液体流動特性を低下させる可能性がある。
【0020】
したがって、消火塩の総量は、典型的には、20.0~60.0重量%、好ましくは25.0~55.0重量%、例えば30.0~50.0重量%、及びさらにより好ましくは35.0~45.0重量%である。
【0021】
典型的には、消火塩はリン酸塩を含む。リン酸塩は、リン酸ナトリウム塩、リン酸アンモニウム塩又はリン酸鉄塩であってもよい。リン酸塩はリン酸アンモニウム塩であることが好ましい。
【0022】
リン酸ナトリウム塩は、リン酸三ナトリウム(Na3PO4)、リン酸水素二ナトリウム(Na2HPO4)、リン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)、二リン酸一ナトリウム(NaH3P2O7)、二リン酸二ナトリウム(Na2H2P2O7)、二リン酸三ナトリウム(Na3HP2O7)、二リン酸四ナトリウム(Na4P2O7)、三リン酸ナトリウム(Na5P3O10)、トリメタリン酸ナトリウム(Na3P3O9)、及びこれらの2種以上の混合物から選択してもよい。
【0023】
リン酸アンモニウム塩は、リン酸二アンモニウム((NH4)2HPO4)、リン酸一アンモニウム(NH6PO4)、ポリリン酸アンモニウム([NH4PO3](OH2))及びこれらの2種以上の混合物から選択してもよい。リン酸アンモニウム塩はリン酸一アンモニウム(NH4H2PO4)であることが好ましい。
【0024】
リン酸鉄塩は、リン酸鉄(II)(Fe3(PO4)2)、リン酸鉄(III)(FePO4)及びこれらの混合物から選択してもよい。リン酸鉄塩はリン酸第二鉄(例えばリン酸鉄(III)(FePO4))であることが好ましい。
【0025】
一般的に、リン酸塩は、典型的には、ポリリン酸塩ではない。この文脈における「ポリリン酸塩」という用語は、酸素原子を共有することによって互いに連結された少なくとも3つの、好ましくは少なくとも4つの四面体PO4(リン酸塩)構造単位から形成される高分子のオキシアニオンの塩を指す。
【0026】
消火塩がリン酸塩を含む場合、典型的には、リン酸塩の量は、20.0~50.0重量%、好ましくは25.0~47.5重量%、例えば27.5~45.0重量%、及びさらにより好ましくは30.0~42.5重量%(例えば、30.0~40.0重量%)である。
【0027】
消火塩は、典型的には硫酸塩を含む。硫酸塩は、硫酸ナトリウム(Na2SO4)又は硫酸アンモニウム((NH4)2SO4)であってもよい。硫酸塩は硫酸アンモニウムであることが好ましい。
【0028】
消火塩が硫酸塩を含む場合、典型的には、硫酸塩の量は、2.5~15.0重量%、好ましくは4.0~12.5重量%、例えば5.0~10.0重量%、及びさらにより好ましくは5.5~8.0重量%(例えば、6.0~7.5重量%)である。
【0029】
消火塩はリン酸塩と硫酸塩との混合物のような、リン酸塩及び硫酸塩を含むことが好ましい。
【0030】
一般に、消火塩又は消火組成物は、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)、炭酸水素カリウム(KHCO3)及び炭酸水素アンモニウム(NH4HCO3)から選択される炭酸水素(例えば、HCO3
-)塩のような、炭酸水素塩を含有しない。本発明の消火組成物は、優れた性能を提供するために有効成分として炭酸水素塩(例えば消火塩)を含有する必要がない。
【0031】
また、消火組成物は、被膜形成剤を含む。被膜形成剤は、液体又は燃えている物体の表面上にフィルム又はコーティングを形成することができる。このフィルム又はコーティングは、火災の冷却及び消火を促進する。被膜形成剤は、組成物の表面張力を低下させる。
【0032】
被膜形成剤はフッ素系界面活性剤を含んでもよいし、フッ素系界面活性剤からなるものでもよい。フッ素系界面活性剤は、典型的には、1つ以上のフッ素原子を有する有機フッ素化合物であり、界面活性剤である。界面活性剤は、典型的には、疎水性基(例えば尾部)及び親水性基(例えば頭部)を含む。フッ素系界面活性剤は、水成膜泡(AFFF)消火器に使用される種類のものであってもよい。
【0033】
消火組成物は、典型的には、0.05~5.0重量%、例えば0.10~5.0重量%の量で被膜形成剤を含有する。消火組成物は、0.50~5.0重量%、特に0.75~5.0重量%、例えば1.0~5.0重量%の量で被膜形成剤を含有することが好ましい。さらにより好ましくは、消火組成物は、0.75~2.5重量%、例えば1.0~2.5重量%の量で被膜形成剤を含有する。
【0034】
フッ素系界面活性剤は、酸又はその塩であってよく、ここで、酸は、パーフルオロオクタン酸(PFOA)、パーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)、パーフルオロヘキサン酸(PFHA)、パーフルオロヘキサンスルホン酸(PFHxS)、パーフルオロノナン酸(PFNA)、パーフルオロノナンスルホン酸、パーフルオロデカン酸(PFDA)及びパーフルオロデカンスルホン酸から選択される。フッ素系界面活性剤は、パーフルオロヘキサン酸(PFHA)、パーフルオロヘキサンスルホン酸(PFHxS)、パーフルオロノナン酸(PFNA)、パーフルオロノナンスルホン酸、パーフルオロデカン酸(PFDA)、パーフルオロデカンスルホン酸又はその塩であることが好ましい。より好ましくは、フッ素系界面活性剤は、パーフルオロヘキサン酸(PFHA)又はパーフルオロヘキサンスルホン酸(PFHxS)である。
【0035】
パーフルオロオクチル部分を含む界面活性剤は、環境的に難分解性であることが示され、動物の肝臓に蓄積し得る。いくつかの国における規制は、消火組成物におけるこのような界面活性剤の使用を制限又は差し止めている。
【0036】
一般に、フッ素系界面活性剤は、部分的にフッ素化された界面活性剤であってもよい。フッ素系界面活性剤は、部分的にフッ素化された界面活性剤であることが好ましい。部分的にフッ素化された界面活性剤は、例えば、頭部又は尾部(例えば、界面活性剤を形成する有機鎖)の全ての位置にフッ素置換基を有してはいない。
【0037】
フッ素系界面活性剤は、C6のフルオロ界面活性剤であることが好ましい場合がある。
【0038】
一般に、フッ素系界面活性剤は、ベタイン界面活性剤又はアミンオキシド界面活性剤であってもよい。
【0039】
フッ素系界面活性剤は、典型的には、0.1重量%の量を使用した場合、25℃において、35mN/m以下、好ましくは25mN/m以下、より好ましくは20mN/m以下の表面張力を有する水又は水溶液を提供する。例えば、フッ素系界面活性剤は、0.1重量%の量を使用した場合、25℃において、15~20mN/mの表面張力を有する水又は水溶液を提供してもよい。表面張力は、表面張力測定器及びウィルヘルミー(Wilhelmy)プレート法の使用などの、従来の方法を使用して測定することができる。
【0040】
フッ素系界面活性剤は、20℃において、1.01~1.25g/mL、好ましくは1.02~1.20g/mL、より好ましくは1.03~1.15g/mL(例えば、1.07~1.10g/mL)の密度を有していてもよい。
【0041】
消火組成物は、アルコール又はポリエーテル、好ましくはアルコールをさらに含んでもよい。アルコール又はポリエーテルは、消火塩を水に溶解させることを促進してもよく、及び/又は泡の形成又は安定化を促進してもよい。
【0042】
消火組成物がポリエーテルを含む場合、ポリエーテルの量は、典型的には、0.01~0.25重量%、好ましくは0.05~0.20重量%、より好ましくは0.10~0.15重量%である。
【0043】
消火組成物がアルコールを含む場合、アルコールの量は、典型的には、0.01~0.75重量%、好ましくは0.05~0.65重量%、例えば0.15~0.55重量%、より好ましくは0.30~0.45重量%である。
【0044】
ポリエーテルは、エチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル、トリエチレングリコールモノアルキルエーテル及びこれらの2種以上の組み合わせから選択してもよい。
【0045】
アルコールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、1-ブトキシエトキシ-2-プロパノール、2-(2-ブトキシエトキシ)-エタノール、グリセリン、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール及びこれらの2種以上の組み合わせから選択してもよい。アルコールはヘキシレングリコール及び/又は2-(2-ブトキシエトキシ)-エタノールであることが好ましい。
【0046】
消火組成物が2-(2-ブトキシエトキシ)-エタノールを含む場合、2-(2-ブトキシエトキシ)-エタノールの量は、典型的には、0.10~0.50重量%、好ましくは0.15~0.40重量%、より好ましくは0.20~0.30重量%である。2-(2-ブトキシエトキシ)-エタノールは、消火組成物の保存を促進してもよい。
【0047】
消火組成物がヘキシレングリコールを含む場合、ヘキシレングリコールの量は、典型的には、0.01~0.25重量%、好ましくは0.05~0.20重量%、より好ましくは0.10~0.15重量%である。
【0048】
消火組成物は、保存剤を含んでもよい。保存剤は殺生物剤(例えば防カビ剤又は抗菌剤)であってもよい。
【0049】
保存剤は、5-クロロ-2-メチル-2H-イソチアゾール-3-オン、2-メチル-2H-イソチアゾール-3-オン、4-クロロ-2-[(5-クロロ-2-ヒドロキシフェニル)メチル]フェノール及びこれらの2種以上の組み合わせから選択してもよい。保存剤は、5-クロロ-2-メチル-2H-イソチアゾール-3-オン及び/又は2-メチル-2H-イソチアゾール-3-オンであることが好ましい。
【0050】
典型的には、保存剤の量(すなわち総量)は、0.05~0.60重量%、好ましくは0.10~0.50重量%、より好ましくは0.30~0.40重量%である。
【0051】
消火組成物は、非イオン性界面活性剤をさらに含んでもよい。非イオン性界面活性剤は、好ましくはアルキルポリグリコシドである。非イオン性界面活性剤は、発泡体の形成を促し、及び/又は形成されたいずれかの発泡体を安定させるために、組成物に含有されてもよい。誤解を避けると、非イオン界面活性剤はフッ素系界面活性剤とは異なる(すなわち異なる化合物である)。
【0052】
消火組成物が非イオン性界面活性剤を含む場合、非イオン性界面活性剤の量は、典型的には、0.005~0.05重量%、好ましくは0.01~0.03重量%である。
【0053】
消火組成物は、発泡剤をさらに含んでもよい。発泡剤は、好ましくは、アルキル硫酸ナトリウム塩などのアルキル硫酸塩である。
【0054】
消火組成物がアルキル硫酸塩などの発泡剤を含む場合、発泡剤の量は、典型的には、0.005~0.05重量%、好ましくは0.01~0.03重量%である。
【0055】
消火組成物は液体であってもよい。液体は発泡性組成物であってもよい。
【0056】
典型的には、消火組成物は(例えば、20℃における水を参照にして)1.05~1.30、例えば1.10~1.25の比重を有する。
【0057】
消火組成物は粉末又は泡であってもよい。
【0058】
本発明はまた、容器を含む消火器に関する。容器は消火組成物を含む。
【0059】
容器は加圧されたキャニスターでもあってもよい。加圧されたキャニスターは、消火組成物を与える又は適用するための噴出口を有してもよい。
【0060】
加圧されたキャニスターは、二酸化炭素又は窒素、好ましくは窒素などの推進剤を含んでもよい。
【0061】
容器が携帯可能な場合、消火器は手持ちの消火器であってもよい。
【0062】
容器は、火災を防ぐための道路車両のタンク又は火災防ぐための航空機の貨物倉のような乗り物の一部であってもよい。消火器は、消火器ボール又はボンベ(bomb)であってもよい。
【0063】
本発明はまた、消火組成物の製造方法を提供する。消火組成物は、従来の方法を用いて調製することができる。
【0064】
前記方法は、水に消火塩を(例えば、混合物を形成するために)添加し、次いでこの混合物に被膜形成剤を添加することを含んでもよい。あるいは、前記方法は、水に被膜形成剤を添加し、次いでこの混合物に消火塩を添加することを含んでもよい。
【0065】
本発明は、火災を消火する方法を提供する。前記方法は、消火組成物を与えること又は適用することを含む。消火組成物は、本発明の消火組成物の形態に応じて、従来の泡消火器又は粉末消火器と同様に与える又は適用することができる。
【0066】
本発明はまた、消火及び/又は火災の拡大を低減又は防止するための消火組成物の使用に関する。
【0067】
火災を消火するため、又は火災の拡大を低減又は防止するために必要とされる消火組成物の量は、火災の性質及び程度に依存する。本発明の消火組成物は、特に従来の消火組成物と比較した場合、比較的少量の組成物を用いて迅速に消火できる。
【0068】
火災は、クラスA火災、クラスB火災、クラスC火災、クラスD火災、クラスK火災、又はこれらの組合せであってよい。火災は、典型的には、クラスA火災及び/又はクラスB火災である。
【0069】
本明細書で使用される「クラスA火災」という用語は、固体燃焼性物質の燃焼により引き起こされる火災を指す。固体燃焼性物質の例は、木材、紙、木炭、プラスチック及び織物を含有する。
【0070】
本明細書で使用される「クラスB火災」という用語は、可燃性液体の燃焼により引き起こされる火災を指す。可燃性液体の例は、ディーゼル、ガソリン、石油グリース、タール、溶剤又はアルコールを含有する。
【0071】
本明細書で使用される「クラスC火災」という用語は、電気器具などの、電気が通った物体により引き起こされる火災を指す。
【0072】
本明細書で使用される「クラスD火災」という用語は、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、ウラン及びチタンなどの、燃焼性金属により引き起こされる火災を指す。
【0073】
「クラスK火災」という用語は、典型的には台所に見られるような、調理用油又は油脂により引き起こされる火災を指す。
【0074】
上記の分類は米国でも使用されている。(i)電気火災(米国ではクラスC火災)は欧州では分類されていない(電気火災は、以前はクラスE火災として分類されていた)、(ii)欧州におけるクラスCは可燃性気体により引き起こされる火災(米国ではクラスB)を対象とした別の分類である、(iii)調理用油又は油脂により引き起こされる火災(米国ではクラスK)はクラスF火災である、ことを除き、欧州でも同様の分類が使用されている。
【0075】
本明細書で使用される「~を含む」といういかなる言及も、半閉鎖的な用語「本質的に~からなる」及び閉鎖的な用語「~からなる」を包含する。
【実施例】
【0076】
次に、本発明を以下の非限定的な実施例によって説明する。
【0077】
<実施例1>
本実施例において、表1に示される消火組成物(量は重量%で示される)を調製した。
【0078】
ガソリン及びディーゼルの混合物をトレイに入れ、混合物に点火してクラスB火災を発生させた。その後、組成物を使用して、炎を消した。試験した組成物の消火特性を、チャブ(Chubb)TMから入手した、従来の乾式粉末消火器及び従来のAFFF消火器の消火特性と比較した。従来のAFFFと粉末消火器の性能結果は類似していた。表1に示された比較結果は、粉末消火器の場合である。表1から分かるように、組成物A~Dは、従来の乾燥粉末消火器よりも性能が悪かった。しかしながら、組成物1~6は、従来の乾燥粉末より優れていた。
【0079】
<実施例2>
表1の組成物のいくつかは、木製の囲い(crib)の火災に対しても試験された。具体的には、英国のBS5852(囲い5)試験に準拠して、木製の囲いに火を点火して、クラスA火災を発生させた。その後、組成物を使用して、炎を消した。試験した組成物の消火特性を、チャブTMから入手した、従来の乾燥粉末消火器の消火特性と比較した。表1から分かるように、組成物1~6は従来の乾燥粉末よりも優れていた。
【0080】
<実施例3>
本実施例において、表2に示される消火組成物(量は重量%で示される)を調製した。
【0081】
ガソリンとディーゼルの混合物をトレイに入れ、混合物に点火してクラスB火災を発生させた。次いで、組成物を使用して炎を消し、試験した各組成物について、消火に要した時間を記録した。消火から5秒後、燃料トレイの温度も記録した。表2から分かるように、組成物は火を3秒で消した。そのうえ、消火してから5秒後、燃料トレイは34℃まで冷えていた。
【0082】
<実施例4>
表2に示される組成物は、木製の囲いの火災に対して試験された。具体的には、英国のBS5852(囲い5)試験に準拠して、木製の囲いに火を点火して、クラスA火災を発生させた。その後、組成物を使用して、炎を消した。試験した各組成物について、消火に要した時間を記録した。消火から5秒後、木製の囲いの残滓(すなわち、土台の燃え殻)の温度も記録された。表2から分かるように、組成物は火を5秒で消した。そのうえ、消火してから5秒後、土台の燃え殻は64℃まで冷えていた。
【0083】
【0084】