(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】消化管手術を受けた患者のMACCEの診断方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
G01N33/53 D ZNA
(21)【出願番号】P 2021549091
(86)(22)【出願日】2020-02-21
(86)【国際出願番号】 EP2020054620
(87)【国際公開番号】W WO2020169799
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2021-11-22
(32)【優先日】2019-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2019-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508093584
【氏名又は名称】ベー.エル.アー.ハー.エム.エス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(73)【特許権者】
【識別番号】521361774
【氏名又は名称】リンシェーピング ユニバーシティ ホスピタル
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】ウィルソン ダライアス
(72)【発明者】
【氏名】チュー ミシェレ
(72)【発明者】
【氏名】アンデション ヘンリク
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-503329(JP,A)
【文献】特開2016-191712(JP,A)
【文献】国際公開第2018/141840(WO,A1)
【文献】特表2011-522267(JP,A)
【文献】E.Mauermann et al.,Incremental Value of Preoperative Copeptin for Predicting Myocardial Injury after Non-Cardiac Surgery (MINS),Universitatsspital Basel,2016年,P1
【文献】A Large, International, Prospective Cohort Study Establishing Diagnostic Criteria, Characteristics, Predicts, Predictors, and 30-day,Anesthesiology,2014年,Vol.120, No.3,564-578
【文献】Reitze N. Rodseth et al.,Postoperative B-type Natriuretic Peptide for Prediction of Major Cardiac Events in Patients Undergoing Noncardiac Surgery,Anesthesiology,2013年08月,Vol.119, No.2,P270-283
【文献】Reitze N. Rodseth et al.,The Prognostic Value of Pre-Operative and Post-Operative B-Type Natriuretic Peptides in Patients Undergoing Noncardiac Surgery,Journal of the American College of Cardiology,Vol.63, No.2,2014年,170-180
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48 -33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
消化管手術を受けた患者における感染症と組み合わせた主要な心血管または脳血管有害事象(MACCE)の予後、リスク評価、および診断のうちの少なくとも1つのための方法であって、
i)前記患者に由来する体液の試料を提供するステップと、
ii)前記試料において、コペプチン、トロポニン、および脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)からなる群から選択されたバイオマーカーのレベルを決定するステップと、
iii)前記患者の少なくとも1つの追加のパラメータを決定するステップであって、前記追加のパラメータが前記患者の臨床パラメータである前記ステップと、
iv)ステップii)で決定された前記バイオマーカーレベルとステップiii)で決定された前記追加のパラメータとを組み合わせて併用評価にするステップと、
v)前記併用評価を、前記患者における感染症と組み合わせたMACCEの予後、リスク評価、および診断のうちの少なくとも1つと相関させるステップと、を含む、方法。
【請求項2】
前記方法が、前記患者を、MACCEおよび感染症の両方を発症する可能性が高い群と、MACCEおよび感染症の両方を発症する可能性が低い別の群とに分類する、前記患者のリスク分類のための方法である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記臨床パラメータが、年齢、異常なECG、術中低血圧、術中頻脈、術中徐脈、高脂血症、喫煙状態、貧血、機能的能力(MET)、赤血球輸血、不整脈、洞以外の律動、前記消化管手術の期間と手術の大きさ、患者の病歴、および肝疾患からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記バイオマーカーのうちの少なくとも1つのレベルが、前記バイオマーカーの前駆体、前記バイオマーカーの前駆体断片、および前記バイオマーカーの断片のうちの少なくとも1つのレベルを決定することにより決定される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記トロポニンのレベルを決定することが、サブユニット心臓トロポニンT(cTnT)レベルを決定することを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記BNPのレベルを決定することが、前駆体断片NT-proBNPのレベルを決定することを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記患者が少なくとも50歳である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記患者が、鎮痛剤または疼痛治療で治療される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記患者が、前記消化管手術を受けた後で少なくとも1日入院した、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記消化管手術が、腹腔鏡下手術および観血手術のうちの一方であり、
-胃手術、
-小腸手術、
-大腸手術、
-生殖器系手術、
-腎臓手術、
-膀胱手術、
-胆嚢手術、および
-消化管嚢胞の手術、からなる群から選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記患者に心血管系の共存症がない、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記患者は、前記患者に除外条件がある場合に除外され、前記除外条件は、臓器移植、外傷性損傷、内分泌疾患、内分泌手術、血管疾患、血管手術、血管内疾患、血管内手術、急性冠症候群(ACS)、心不全、非代償性鬱血性心不全、大動脈弁狭窄症、左室駆出率(LVEF)の低下、および循環性ショックからなる群から選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記試料が、前記消化管手術前24時間以内、前記消化管手術後24時間以内、前記消化管手術後1日目、前記消化管手術後2日目、または前記消化管手術後3日目に、前記患者から採取されたものである、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記方法が、前記患者からの2~5個の試料を提供することを含み、前記試料が、前記消化管手術の前および/または後の異なる時間に採取され、ステップii)、iv)、およびv)が、すべての前記試料に対して実行される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記2~5個の試料が採取される前記異なる時間が、前記消化管手術前24時間以内、前記消化管手術後24時間以内、前記消化管手術後1日目、前記消化管手術後2日目、および前記消化管手術後3日目からなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記異なる時間に採取された試料中の前記バイオマーカーのレベルを決定し、次に比較し、前記異なる時間でのバイオマーカーのレベルの差を組み合わせて、前記併用評価にする、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
特定の閾値を超えると決定されたバイオマーカーレベルが、前記患者のMACCEを示すものである、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記特定の閾値が、
-コペプチンの場合、25pmol/L、75pmol/L、125pmol/L、175pmol/L、又は225pmol/L、
-cTnTの場合、15ng/L、20ng/L、25ng/L、30ng/L、35ng/L、45ng/L、または65ng/L、
-NT-proBNPの場合、500ng/L、900ng/L、1300ng/L、1700ng/L、2100ng/Lまたは2800ng/L、
からなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記方法が、前記併用評価を、前記消化管手術後30日以内および12か月以内のうちの少なくとも一方の患者におけるMACCEのリスクと相関させることを含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記予後が、前記消化管手術後30日以内および12か月以内のうちの少なくとも一方の死亡のリスクを含む、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項21】
前記MACCEが、非心臓手術後心筋障害(MINS)であり、前記方法が、消化管手術を受けた患者におけるMINSの診断のための方法である、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
特定の閾値を超えると決定されたバイオマーカーレベルが、前記患者のMINSを示すものである、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記特定の閾値が、
-コペプチンの場合、25pmol/L、50pmol/L、75pmol/L、125pmol/L、175pmol/L、又は225pmol/L、
-cTnTの場合、10ng/L、20ng/L、30ng/L、40ng/L、50ng/Lまたは60ng/L、
-NT-proBNPの場合、250ng/L、500ng/L、750ng/L、1250ng/L、1500ng/L、1750ng/L、又は2250ng/L、
からなる群から選択される、請求項
22に記載の方法。
【請求項24】
前記異なる時間に取得された決定されたバイオマーカーレベルが、異なる閾値を使用して評価される、請求項14~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記異なる時間に取得された決定されたバイオマーカーレベルが、異なって重み付けされる、請求項14~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記異なる時間に採取された2つの試料間のバイオマーカーレベルにおける相対変化を組み合わせて前記併用評価にする、請求項14~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記試料中の少なくとも2つのバイオマーカーのレベル間の割合を決定し、前記割合を組み合わせて前記併用評価にし、前記割合を決定するための前記バイオマーカーが、コペプチン/トロポニン、コペプチン/BNP、およびBNP/トロポニンから選択される、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
ステップiv)が、前記決定されたバイオマーカーのための参照データを提供することと、
-前記バイオマーカーのうちの少なくとも1つの前記決定されたレベル、
-異なる時間に取得された前記バイオマーカーのうちの少なくとも1つのレベルにおける差異、
-異なる時間に取得された2つの試料中で決定された前記バイオマーカーのうちの1つのレベルにおける相対変化、
-同時に取得されたまたは異なる時間に取得された少なくとも2つのバイオマーカーのレベル間の割合、および
-異なる時間に取得された少なくとも2つの試料中で決定された少なくとも2つのバイオマーカーの前記割合の前記相対変化、からなる群から選択される、少なくとも1つの値を提供すること、とを含み、
前記値が前記参照データと比較され、決定された前記値および前記参照データの差異が計算され、前記計算された差異が、スコアの形式で表される、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
少なくとも2つの異なるスコアが決定され、前記併用評価が、前記患者におけるMACCEの存在または非存在を示す前記少なくとも2つの異なるスコアから決定された組み合わされたスコアを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記参照データが、消化管手術を受けた患者、ならびにMACCEまたはMINSを有したおよび/または有しなかった患者に関するものである、請求項28又は29に記載の方法。
【請求項31】
前記感染症が、真菌、細菌、またはウイルス感染症からなる群から選択される、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記感染症が、血液感染症、呼吸器感染症、尿路感染症、皮膚感染症、または腹腔感染症からなる群から選択される、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記感染症が、血流感染症、敗血症、重症敗血症、および/または敗血症性ショックからなる群から選択される、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
キットであって、
患者に由来する体液の試料中の、バイオマーカーであるコペプチン、トロポニン、および脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)のうちの少なくとも1つのレベルを決定するための少なくとも1つの検出試薬と、
消化管手術を受けた患者からの参照データと、
を含み、前記参照データが、コペプチン、トロポニン、およびBNPレベルのうちの少なくとも1つに対応する参照レベルを含み、前記参照データが、コンピュータ可読媒体に記憶され、かつ/またはコペプチン、トロポニン、およびBNPのうちの少なくとも1つの前記決定されたレベルを前記参照データと比較するように構成されたコンピュータ実行可能コードの形態で用いられる、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法を実行するためのキット。
【請求項35】
前記少なくとも1つの検出試薬が、前記患者に由来する体液の試料中の、バイオマーカーであるコペプチン、トロポニン、および脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)のうちの少なくとも1つのレベルを決定するための試薬を含み、前記参照データが、消化管手術を受けた患者の前記バイオマーカーに対応するデータを含む、請求項34に記載のキット。
【請求項36】
コンピュータ実行可能コードを実行する手段を含むコンピュータであって、前記コンピュータ実行可能コードが、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法のステップiv)および/またはv)を実行するように構成される、コンピュータ。
【請求項37】
前記コンピュータが、アッセイシステムに接続され、前記アッセイシステムが、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法のステップii)を実行するように構成される、請求項36に記載のコンピュータ。
【請求項38】
コンピュータ命令のセットを記憶したコンピュータ可読媒体であって、前記コンピュータ命令のセットが、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法のステップiv)および/またはv)を実行するために1つ以上のプロセッサによって実行可能な命令をさらに含む、コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消化管の大手術を受けた患者における主要な心血管または脳血管有害事象(MACCE)の予後および診断のための方法に関する。本発明はまた、該方法を実行するためのキットに関する。
【背景技術】
【0002】
世界的に見て、45歳以上の2億人を超える成人が毎年非心臓大手術を受ける[Alonso-Coello et al.,Polskie Archiwum Medycyny Wewnetrznej.118(11),pp.616-618]。このうち、何百万もの人が30日以内に合併症で死亡し[Botto et al.,Anesthesiology,120(3),pp.564-578.doi:10.1097/ALN.0000000000000113]、かなりの割合の患者が、手術後の最初の1年間に主要な心臓合併症を患う[Ekeloef et al.,British Journal of Anaesthesia,117(5),pp.559-568.doi:10.1093/bja/aew321]。術後死亡の主な原因は、細胞損傷および制御不能な細胞死を引き起こす心筋の虚血傷害による心臓合併症である[Botto et al.,Anesthesiology,120(3),pp.564-578.doi:10.1097/ALN.0000000000000113、Sessler and Khanna;Intensive Care Med(2018)44:811-822,https://doi.org/10.1007/s00134-018-5224-7、Landesberg et al.,Circulation,119(22),pp.2936-2944.doi:10.1161/CIRCULATIONAHA.108.828228]。死亡数に加えて、術後心臓傷害は、かなりの数の術後合併症を引き起こすことで、回復および入院を長引かせ、その結果、患者の苦痛および医療費が増加する[Devereaux and Sessler,New England journal of medicine,p.2258,2015]。
【0003】
MACCEは、深刻な周術期の罹患率および死亡率の最も一般的な原因であり、研究対象の集団に応じて、発生率は1~7%の範囲である。MACCEを発症した患者の10%は入院中に死亡する。MACCEのいくつかの独立した術前および術中のリスク因子、例えば、冠状動脈疾患、慢性鬱血性心不全、術中低血圧、および輸血が特定されている。これらにより、患者をMACCEのリスクに従って層別化することができる可能性があることが示唆されている。しかしながら、現在のリスク層別化システムは、感度および特異性が限定される。よって、より良い予測モデルおよびリスク層別化スコアを特定するには、さらなる研究が必要である[Sabate et al.,British Journal of Anaesthesia,p.879,2011]。
【0004】
周術期心筋梗塞(PMI)は一般的な心血管合併症であり、転帰不良と関連付けられる。PMI患者の12%は30日以内に死亡し、大部分の死亡は48時間以内に生じる[Hanson et al.,Catheterization and Cardiovascular Interventions,82(4),pp.622-628.doi:10.1002/ccd.24626]。しかしながら、虚血性心筋傷害患者の58.2%は、これらの心臓傷害が独立して30日の死亡率と関連付けられるにもかかわらず、心筋梗塞(MI)の普遍的な定義を満たさない[Botto et al.,Anesthesiology,120(3),pp.564-578.doi:10.1097/ALN.0000000000000113、Noordzij et al.,British Journal of Anaesthesia,114(6),pp.909-918.doi:10.1093/bja/aev027,2015]。
【0005】
MIの第3の普遍的な定義は、長期の虚血によって引き起こされる心筋の壊死であり、死亡および障害の一般的な原因である。この定義は、European Society of Cardiology、American College of Cardiology Foundation、American Heart Association、およびWorld Heart Federationによって制定された。2つの異なる機序がMIを引き起こしてもよく、そのどちらも非心臓手術後に見られる。I型MIは、急性冠症候群(ACS)によって引き起こされる。1つまたは複数の冠状血管における不安定なアテローム性動脈硬化プラークの破裂、潰瘍形成、びらん、または剥離、それに続く管腔内血栓症により、心筋血流が減少する。II型MIは、心筋の酸素供給と需要との間の長期的な不均衡によって引き起こされ、心不整脈、貧血、呼吸不全、低血圧、高血圧などの状態の結果として、または高レベルの内因性または外因性の循環コルチゾールおよびカテコールアミンによる直接的な毒性作用によって生じてもよい[Landesberg et al.,Circulation,119(22),pp.2936-2944.doi:10.1161/CIRCULATIONAHA.108.828228、Thygesen et al.,Circulation,126(16),p.2020.doi:10.1161/CIR.0b013e31826e1058]。
【0006】
MIの診断基準は、虚血症状または虚血心電図(ECG)所見のいずれかを伴う疑わしい心筋虚血の背景における参照範囲の上限レベルを3倍超える、心臓バイオマーカーであるトロポニンの新たな上昇からなる。虚血に起因する心筋細胞の壊死には、例えば、虚血領域への側副循環、虚血に対する筋細胞の感受性、以前の心筋壊死、ならびに冠状動脈のサイズおよび閉塞における個人差に応じて、少なくとも2~4時間が必要とされる。これらの変動は、虚血のECG兆候にも影響を与え得るため、ECGは、利用可能な場合は常に以前のECGと比較する必要がある。急性または進行中のECG異常により、臨床医は梗塞の場所および危険にさらされている心筋の量を特定できるようになり得る。心筋虚血の最初期の症状は、典型的には、T波およびSTセグメントの変化である。複数のリード/心筋領域が関与するより深刻なシフトまたは逆転は、より重度の心筋虚血およびより悪化した予後と関連付けられる。虚血パターンは他の状態、例えば急性心膜炎のST逸脱、左脚ブロック(LBBB)、左心室肥大(LVH)、ならびに例えば、心臓のアミロイドーシス、急性肺性心、および高カリウム血症における異常なQ波によって引き起こされ得るため、ECG自体では心筋虚血および梗塞を診断するには不十分であることが多い[Thygesen et al.,Circulation,126(16),p.2020.doi:10.1161/CIR.0b013e31826e1058]。
【0007】
MIの虚血症状には、胸部、上肢、下顎痛、呼吸困難などの非特異的症状のさまざまな組み合わせが含まれる。多くの場合、症状は20分以上続き、びまん性で、局所的でも、位置的でも、運動の影響を受けるものでもない。MI患者は無症候性である可能性もあり、これは、女性、高齢者、糖尿病患者、術後および重症患者において最も一般的である[Thygesen et al.,Circulation,126(16),p.2020.doi:10.1161/CIR.0b013e31826e1058]。ほとんどの術後心筋傷害は、非心臓手術後48時間以内に発生する。この期間中の症状の欠如について考えられる説明は、患者が、通常、症状を隠蔽する鎮痛薬を服用しているということである。これは、PMIの65%が無症候性である理由を部分的に説明していると考えられている[Devereaux and Sessler,New England journal of medicine,p.2258,2015、Devereaux et al.,JAMA,317(16),pp.1642-1651.doi:10.1001/jama.2017.4360,2017]。
【0008】
非心臓手術(MINS)後の心筋傷害は、手術患者の8%で発生する虚血による予後に関連する心筋傷害である[Botto et al.,Anesthesiology,120(3),pp.564-578.doi:10.1097/ALN.0000000000000113]。MINSを患う患者の10%は30日以内に死亡し、MINS患者は1年死亡率および1年超死亡率がより高く、非致死性心停止、鬱血性心不全、および脳卒中の発生率もより高い[Botto et al.,Anesthesiology,120(3),pp.564-578.doi:10.1097/ALN.0000000000000113、Mauermann et al.,Current Opinion in Anaesthesiology,29(3),pp.403-412.doi:10.1097/ACO.0000000000000336]。さらに、局所心筋傷害は心筋を気絶させ、拡張機能障害および心拍出量の低下をもたらし、その結果、末梢血液供給の低下、組織の治癒障害、および創傷感染のリスクの増加をもたらし得る[Noordzij et al.,British Journal of Anaesthesia,114(6),pp.909-918.doi:10.1093/bja/aev027,2015]。
【0009】
MINSの診断基準は、虚血症状の有無にかかわらず、心筋虚血が原因である(非虚血性病因の証拠なし)と判断された術後のトロポニン上昇である。MINSには、虚血以外の病因、例えば敗血症または肺塞栓症から生じる周術期心筋障害は含まれない。MINSの術後閾値は、トロポニンアッセイの種類に左右される。第5世代のcTnTの場合、閾値は20ng/L超であり、ベースラインから少なくとも5ng/Lまたは65ng/L超増加する[Sessler and Khanna;Intensive Care Med(2018)44:811-822,https://doi.org/10.1007/s00134-018-5224-7]。MINSの基準は、可逆性心筋傷害から壊死まで、MIよりも広い範囲の心筋傷害を対象とする。このより広範な概念は、心筋傷害のいくつかの兆候を含み、MINSを外科患者にとってより適切な用語にし、非心臓手術後に見られる心筋損傷の程度を過小評価するリスクを低下させる[Mauermann et al.,Current Opinion in Anaesthesiology,29(3),pp.403-412.doi:10.1097/ACO.0000000000000336]。
【0010】
MINSの93.6%は手術後3日以内に発生し、MINS患者は軽度のトロポニン上昇を有し、多くの場合、虚血性の特徴を欠く[Noordzij et al.,British Journal of Anaesthesia,114(6),pp.909-918.doi:10.1093/bja/aev027,2015]。MINSを患う患者の84%は虚血性症状を経験せず、34.9%のみがECGで虚血の兆候を示す[Botto et al.,Anesthesiology,120(3),pp.564-578.doi:10.1097/ALN.0000000000000113]。これらの発見により、周術期心筋傷害の信頼できる診断は、ほとんどの場合、継続的な術後トロポニン測定によってのみ可能であることが示される。別様には、MINSの93.1%およびPMIの68%が検出されない可能性があると報告されている[Devereaux et al.,JAMA,317(16),pp.1642-1651.doi:10.1001/jama.2017.4360,2017]。
【0011】
MINSの機序は不明なままであるが、PMIの背後にある機序と類似していることが示唆されている[Mauermann et al.,Current Opinion in Anaesthesiology,29(3),pp.403-412.doi:10.1097/ACO.0000000000000336]。MINSに対抗するためにいくつかの試験が実施されているが、心筋傷害を安全かつ効率的に防止する方法は未だ知られていない[Sessler and Khanna;Intensive Care Med(2018)44:811-822,https://doi.org/10.1007/s00134-018-5224-7]。一例として、周術期および術後にベータ遮断薬を投与する大規模無作為化試験であるPOISE研究により、主要な心血管事象の発生を30%減少させることができたが、同時に重篤な低血圧、脳卒中、および死亡の発生率を増加させた[Devereaux et al.,Lancet,371(9627),pp.1839-1847.doi:10.1016/S0140-6736(08)60601-7]。
【0012】
加えて、手術後の感染症の発症は、主要な術後合併症のうちの1つであり、疼痛、創傷治癒不良、抗生物質を含むさらなる治療の必要性、長期入院、および医療費の増加を引き起こす。術後感染症は、外科的処置の失敗、敗血症、臓器不全、場合によっては最終的には死を含む深刻な問題を引き起こし得る。術後感染症は、手術から30日以内に発生する任意の感染症として定義されてもよく、手術自体に関連しても、術後経過に関連してもよい。術後感染症の発生率は大きく異なり得、実行される手順の種類および感染症の発症に関する患者固有の危険因子に左右される。術後感染症には、例えば、創傷自体、または体腔内のより深い感染症、または全身感染症が伴い得るが、肺感染症(例えば、肺炎)またはカテーテル関連尿路感染症などのより遠位の感染症も含まれてもよい。
【0013】
手術部位感染症(SSI)としても知られる術後創傷感染症は、多くの患者の回復経過を複雑にする。Centers for Disease Control and Prevention(CDC)によって定義されているように、これらの感染症は、典型的には、手術が行われた体の部位または一部で手術から30日以内に発生する。SSIは、皮膚および皮下組織に限定される場合は表在/切開として、筋膜および筋肉が関与する場合は深部切開として、または体腔が関与する場合には臓器空間(例えば、消化管手術後の腹腔;Horan et al.,Am J Infect Control.;36(5):309-332,2008)として分類されてもよい。深部組織および臓器空間のSSIは、表在性SSIよりも頻繁ではないが、表在性SSIと比較した場合、罹患率/死亡率、再入院率、長引く入院期間、および病院関連コスト全体の増加と関連付けられる。SSIの大部分は複雑ではないが、他のSSIは重症でより困難であってもよく、大規模な外科的デブリードマン、複数回の再手術が必要となることが多く、生死に関わり得る。
【0014】
術後感染症は、手術部位での感染症に加えて、いくつかの要因で生じ得る。術後肺炎、および気道感染症は、例えば、概して、大手術後に発生する生理学的および免疫学的な障害の兆候と見なされる。術後肺感染症は、咳、痰、息切れ、胸痛、38℃を超える体温、1分あたり100回を超える脈拍数と関連付けられる。最大半数の人が手術後に無症候性の胸部徴候を有し、最大4分の1が症候性疾患を発症し得る。大手術における術後肺合併症の発生率は、1%未満~23%の範囲である。いくつかの研究により、肺合併症が心臓合併症よりも一般的であることが示されており、術後呼吸不全は術後に一般的な合併症である(Miskovic at al.,British Journal of Anaesthesia,118(3):317-34,2017)。
【0015】
手術部位感染症の診断は困難であり得、これは、徴候および症状が非特異的であることが多く、臨床シナリオによっては感度が不足し得るためである。しかしながら、抗生物質治療などの適切な治療を開始するには、術後感染症の早期診断が非常に重要である。
【0016】
特に重篤な術後感染症は、血液感染症または敗血症に関連する。診断および予防措置における著しい改善にもかかわらず、敗血症の発生率は、入院患者において急速に拡大し続けており(Martin et al.2003)、死亡率は、疾患重症度レベル、使用する臓器機能障害の定義、および国固有の発生率によって、10%~54%の範囲である(Kaukonen et al.2014., Vincent et al.2006)。いずれの術後疾患についても、特に敗血症について、診断検査および治療戦略に関する迅速で信頼性の高い決定を行うためには、全体的な病態生理学的宿主応答の観点から、感染負荷と疾患重症度との両方を早期かつ正確に評価することが非常に重要である。
【0017】
以前の研究により、患者の術後転帰を予測する際のバイオマーカーの使用が調査された。例えば、アルギニンバソプレッシン(AVP)およびコペプチンの発現と、非心臓手術後の患者におけるショックを伴うおよび伴わない全身性炎症応答症候群(SIRS)の重症度との相関関係を示すことができた[Jochberger et al.,SHOCK,Vol.31,No.2,pp.132-138,2009]。コペプチンは、心臓手術後のSIRS患者でさらに高く上昇する[Jochberger et al.,J Clin Endocrinol Metab 91:4381-4386,2006]。別の研究では、コペプチンが炎症性腸疾患(IBD)の患者で増加し、腸切除を受けたIBD患者でさらに増加することが示された[Ohlsson and Melander,Drug Target Insights 2015:9,21-27 DOI:10.4137/DTI.S26589]。一般的なストレスバイオマーカーとしてのコペプチンは、外科的外傷に応答して上昇することが知られているが、低侵襲性手術技法と従来の手術技法との間で差異は見られなかった[Netto et al.,Acta Chirurgica Belgica,DOI:10.1080/00015458.2018.1482698,2018]。術前のコペプチンおよびNT-proBNPのレベルは、血管大手術を受ける患者のリスク層別化を改善するために調査されており、バイオマーカーレベルの増加がこの患者群の転帰を予測するものであることを示している[Jarai et al.,Am J Cardiol 2011;108:1188-1195,2011]。しかしながら、別の研究では、慢性腎臓病(CKD)の重症期に血管手術を受ける患者を評価すると、主要な心臓有害事象に対するコペプチンの予測の質が失われたことが示された[Schrimpf et al.,PLoS ONE 10(4):e0123093.DOI:10.1371/journal.pone.0123093,2015]。要約すると、術後患者の健康の転帰に対するバイオマーカーの可能性のある予測的価値についての指摘はあったものの、患者の状況の客観的な評価を可能にする明確な方法はない。したがって、回復および入院を長引かせ、死亡率を増加させる術後合併症を減少させるために、腹部手術、特に消化管手術を受ける患者における、可能性のあるMACCEおよびMINSならびに術後感染症の迅速で早期の評価を可能にする方法が必要とされる。
【発明の概要】
【0018】
したがって、本発明の主な目的は、主要な消化管手術を受ける患者において、MACCEおよび/またはMINSおよび/または術後感染症の迅速で信頼性の高い診断、予後、および除外を可能にする方法およびキットを提供することにある。さらなる目的は以下の説明から明らかになる。
【0019】
本目的は、独立請求項に従う方法およびキットによって達成される。好ましい実施形態は、それぞれの従属請求項に記載されている。
【0020】
具体的には、本発明は、消化管大手術を受けた患者における主要な心血管または脳血管有害事象(MACCE)の予後、リスク評価、および診断のうちの少なくとも1つのための方法に関し、本方法は、
i)患者に由来する体液の試料を提供するステップと、
ii)試料において、コペプチン、トロポニン、および脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)からなる群から選択されたバイオマーカーのレベルを決定するステップと、
iii)患者の少なくとも1つの追加のパラメータを決定するステップと、
iv)ステップii)で決定されたバイオマーカーレベルとステップiii)で決定された追加のパラメータとを組み合わせて併用評価にするステップと、
v)併用評価を、患者におけるMACCEの予後、リスク評価、および診断のうちの少なくとも1つと相関させるステップと、を含む。
【0021】
特に、本発明は、消化管手術を受けた患者における主要な心血管または脳血管有害事象(MACCE)の診断のための方法に関し、ステップv)は、併用評価を該患者におけるMACCEの有無と相関させることに関する。本発明はインビトロ法に関することを強調する。本発明は、ヒトまたは動物の身体には実施されないが、これらの身体から分離され、完全にインビトロで実施される。このため、患者試料を提供するステップは、ヒトまたは動物の身体のいずれに対しても実施することを意図していないが、例えば、試料を冷蔵庫から取り出すことなどによる、試料を用いたインビトロアッセイを提供することに関する。ヒトまたは動物の身体からの実際の試料抽出は、本発明の方法の一部ではない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】MACCEを発症した患者と発症しなかった患者とに分けた、異なるサンプリング時での患者集団における、バイオマーカーであるコペプチン(COPまたはCOPAVPと印す)、cTnT(使用される高感度アッセイについてhsTnTと印す、下記参照)、NT-proBNP、MR-proADM、CT-proET-1、およびPCTの決定されたレベルを示す。
【
図2】MACCEを発症した患者と発症しなかった患者とに分けた、異なるサンプリング時での患者集団における、バイオマーカーであるコペプチン(COPまたはCOPAVPと印す)、cTnT(使用される高感度アッセイについてhsTnTと印す、下記参照)、NT-proBNP、MR-proADM、CT-proET-1、およびPCTの決定されたレベルを示す。
【
図3】MACCEを発症した患者と発症しなかった患者とに分けた、異なるサンプリング時での患者集団における、バイオマーカーであるコペプチン(COPまたはCOPAVPと印す)、cTnT(使用される高感度アッセイについてhsTnTと印す、下記参照)、NT-proBNP、MR-proADM、CT-proET-1、およびPCTの決定されたレベルを示す。
【
図4】MACCEを発症した患者と発症しなかった患者とに分けた、異なるサンプリング時での患者集団における、バイオマーカーであるコペプチン(COPまたはCOPAVPと印す)、cTnT(使用される高感度アッセイについてhsTnTと印す、下記参照)、NT-proBNP、MR-proADM、CT-proET-1、およびPCTの決定されたレベルを示す。
【
図5】MACCEを発症した患者と発症しなかった患者とに分けた、異なるサンプリング時での患者集団における、バイオマーカーであるコペプチン(COPまたはCOPAVPと印す)、cTnT(使用される高感度アッセイについてhsTnTと印す、下記参照)、NT-proBNP、MR-proADM、CT-proET-1、およびPCTの決定されたレベルを示す。
【
図6】MACCEを発症した患者と発症しなかった患者とに分けた、異なるサンプリング時での患者集団における、バイオマーカーであるコペプチン(COPまたはCOPAVPと印す)、cTnT(使用される高感度アッセイについてhsTnTと印す、下記参照)、NT-proBNP、MR-proADM、CT-proET-1、およびPCTの決定されたレベルを示す。
【
図7】
図1~6と同様に、バイオマーカーの決定されたレベルを示し、患者集団は、MINSを発症した患者と発症しなかった患者とに分けられる。
【
図8】
図1~6と同様に、バイオマーカーの決定されたレベルを示し、患者集団は、MINSを発症した患者と発症しなかった患者とに分けられる。
【
図9】
図1~6と同様に、バイオマーカーの決定されたレベルを示し、患者集団は、MINSを発症した患者と発症しなかった患者とに分けられる。
【
図10】
図1~6と同様に、バイオマーカーの決定されたレベルを示し、患者集団は、MINSを発症した患者と発症しなかった患者とに分けられる。
【
図11】
図1~6と同様に、バイオマーカーの決定されたレベルを示し、患者集団は、MINSを発症した患者と発症しなかった患者とに分けられる。
【
図12】
図1~6と同様に、バイオマーカーの決定されたレベルを示し、患者集団は、MINSを発症した患者と発症しなかった患者とに分けられる。
【
図13】
図1~6と同様に、バイオマーカーの決定されたレベルを示し、患者集団は、MACCEに加えて感染症を発症した患者と発症しなかった患者とに分けられる。
【
図14】
図1~6と同様に、バイオマーカーの決定されたレベルを示し、患者集団は、MACCEに加えて感染症を発症した患者と発症しなかった患者とに分けられる。
【
図15】
図1~6と同様に、バイオマーカーの決定されたレベルを示し、患者集団は、MACCEに加えて感染症を発症した患者と発症しなかった患者とに分けられる。
【
図16】
図1~6と同様に、バイオマーカーの決定されたレベルを示し、患者集団は、MACCEに加えて感染症を発症した患者と発症しなかった患者とに分けられる。
【
図17】
図1~6と同様に、バイオマーカーの決定されたレベルを示し、患者集団は、MACCEに加えて感染症を発症した患者と発症しなかった患者とに分けられる。
【
図18】
図1~6と同様に、バイオマーカーの決定されたレベルを示し、患者集団は、MACCEに加えて感染症を発症した患者と発症しなかった患者とに分けられる。
【
図19】MR-proADM、PCT、およびCT-proET-1の決定されたレベルを示し、患者集団は、感染症を発症した患者と発症しなかった患者とに分けられる。
【
図20】MR-proADM、PCT、およびCT-proET-1の決定されたレベルを示し、患者集団は、感染症を発症した患者と発症しなかった患者とに分けられる。
【
図21】MR-proADM、PCT、およびCT-proET-1の決定されたレベルを示し、患者集団は、感染症を発症した患者と発症しなかった患者とに分けられる。
【
図22】MR-proADM、PCT、およびCT-proET-1の決定されたレベルを示し、患者集団は、血液感染症を発症した患者と発症しなかった患者とに分けられる。MACCEと感染症との異なる組み合わせ間で区別した、異なる時点でのMR-proADM、PCT、およびCT-proET-1の決定されたレベルを示す。
【
図23】MR-proADM、PCT、およびCT-proET-1の決定されたレベルを示し、患者集団は、血液感染症を発症した患者と発症しなかった患者とに分けられる。MACCEと感染症との異なる組み合わせ間で区別した、異なる時点でのMR-proADM、PCT、およびCT-proET-1の決定されたレベルを示す。
【
図24】MR-proADM、PCT、およびCT-proET-1の決定されたレベルを示し、患者集団は、血液感染症を発症した患者と発症しなかった患者とに分けられる。MACCEと感染症との異なる組み合わせ間で区別した、異なる時点でのMR-proADM、PCT、およびCT-proET-1の決定されたレベルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
特定のバイオマーカーであるコペプチン、トロポニン、およびBNPにより、消化管手術を受けた患者がMACCEを有するか否かの迅速で早期の診断が可能になることが分かった。さらに、特定のバイオマーカーが、手術前にMACCEのリスクがある患者を特定することにより、重要な予後情報を提供できることが分かった。これらのバイオマーカーのうちの少なくとも1つのレベルと少なくとも1つの追加パラメータとの組み合わせにより、結果が改善し、その結果、得られる評価が各バイオマーカー単独の評価よりも優れていることが示された。本発明は臨床診断の分野に関係するが、バイオマーカーレベルの決定は、患者から取得された試料で行われるため、患者の身体では実施されない。
【0024】
好ましい実施形態では、本方法は、消化管手術を受けた患者における感染症と組み合わせた主要な心血管または脳血管有害事象(MACCE)の予後、リスク評価、および診断のうちの少なくとも1つのための方法であり、好ましくは、患者を、MACCEおよび感染症の両方を発症する可能性が高い群と、MACCEおよび感染症の両方を発症する可能性が低い別の群とに分類する、患者のリスク分類のための方法である。本明細書に記載のバイオマーカーの測定に基づいて、患者が術後にMINSまたはMACCEなどの心血管または脳血管事象、ならびに血液感染症などの感染症に罹患するかどうかについての正確で信頼性の高い結論を導くことができることはまったく予期せぬことである。本明細書に記載の特定の背景におけるコペプチン、トロポニン、および/またはBNPのこの予後判断能力は、新規かつ驚くべきものであり、手術を取り巻く有害事象の検出、予測、および管理の改善を可能にする。これらの可能性のある有害事象の併用評価も、臨床的関連性が特に高い。感染症を治療するための措置または投薬は心血管または脳血管事象に不利であり、逆もまた同様であり得るため、最適な治療指針は、そのような評価に多く左右され得る。両方の有害事象の診断または予後を提供することにより、臨床担当者は可能な限り最良の治療アプローチを選択し得る。例えば、MACCE、PMI、またはMINSを予測または診断する場合、バイパス手術または血管形成術などのその後の臨床手順により、可能性のある感染症を悪化させるリスクが高まる。抗生物質療法などの早期の先行的抗感染症療法は、全体的な前向きの患者転帰に非常に重要であり得る。
【0025】
本明細書で使用される場合、本発明の範囲内の「感染」は、病原性または病原性である可能性がある薬剤/病原体、生命体および/または微生物による、通常は無菌の組織または体液への侵入によって引き起こされる病理学的プロセスを意味し、好ましくは細菌、ウイルス、真菌、および/または寄生虫による感染(複数可)に関する。したがって、感染症は、細菌感染症、ウイルス感染症、および/または真菌感染症であり得る。感染症は、局所感染症または全身感染症であり得る。本発明の目的では、ウイルス感染は、微生物による感染と見なしてもよい。
【0026】
さらに、感染症を患っている対象は、同時に2つ以上の感染源を患っている場合がある。例えば、感染を患っている対象は、細菌感染およびウイルス感染、ウイルス感染および真菌感染、細菌感染および真菌感染、ならびに細菌感染、真菌感染、およびウイルス感染を患っているか、あるいは潜在的な重複感染、例えば1つ以上のウイルス感染および/または1つ以上の真菌感染に加えて1つ以上の細菌感染を含む、本明細書に列挙されている感染のうちの1つ以上を含む混合感染を患っている場合がある。
【0027】
本明細書で使用される場合、「感染性疾患」は、細菌および/またはウイルスおよび/または真菌感染症に関連する全ての疾患または障害を含む。
【0028】
一実施形態では、検出または試験される感染は、Bordetella pertussisなどのBordetella、Borrelia burgdorferiなどのBorrelia、Brucella abortus、Brucella canis、Brucella melitensisまたはBrucella suisなどのBrucella、Campylobacter jejuni、などのCampylobacter、Chlamydia pneumonia、Chlamydia trachomatis、Chlamydophila psittaciなどのChlamydiaおよびChlamydophila、Clostridium botulinum、Clostridium difficile、Clostridium perfringens、Clostridium tetaniなどのClostridium、Corynebacterium diphtheriaなどのCorynebacterium、Enterococcus faecalis、Enterococcus faeciumなどのEnterococcus、Escherichia coliなどのEscherichia、Francisella tularensisなどのFrancisella、Haemophilus influenzaなどのHaemophilus、Helicobacter pyloriなどのHelicobacter、Legionella pneumophilaなどのLegionella、Leptospira interrogansなどのLeptospira、Listeria monocytogenesなどのListeria、Mycobacterium leprae、Mycobacterium tuberculosis、Mycobacterium ulceransなどのMycobacterium、Mycoplasma pneumoniaなどのMycoplasma、Neisseria gonorrhoeae、Neisseria meningitidesなどのNeisseria、Pseudomonas aeruginosaなどのPseudomonas、Rickettsia rickettsiaなどのRickettsia、Salmonella typhi、Salmonella typhimuriumなどのSalmonella、Shigella sonneiなどのShigella、Staphylococcus aureus、Staphylococcus epidermidis、Staphylococcus saprophyticusなどのStaphylococcus、Streptococcus agalactiae、Streptococcus pneumonia、Streptococcus pyogenesなどのStreptococcus、Treponema pallidumなどのTreponema、Vibrio choleraなどのVibrio、Yersinia pestis、Yersinia enterocoliticaまたはYersinia pseudotuberculosisなどのYersiniaの種から選択されてもよい。
【0029】
病原性真菌は、ヒトまたは他の生命体に疾患を引き起こす真菌である。Candida種は、免疫不全の宿主(例えば、移植患者、AIDS患者、癌患者)で日和見感染を引き起こすことで最も知られている重要なヒト病原体である。感染は治療が困難であり、非常に深刻になり得、全身感染のうちの30~40%が死に至る。Aspergillosisは、可能性のある別の真菌病原体である。Aspergillusは、マイコトキシンの生成を通じて、アレルギー反応の誘導を通じて、および局所または全身感染を介しての3つの主要な方式で疾患を引き起こし得る。後者の2つの分類では、宿主の免疫状態は、重要である。最も一般的な病原種は、Aspergillus fumigatusおよびAspergillus flavusである。Aspergillus flavusは、毒素および発癌性物質の両方であるアフラトキシンを生成し、食物を汚染する可能性があり得る。Aspergillus fumigatusおよびAspergillus clavatusは、疾患を引き起こし得る。Cryptococcus neoformansは、ヒトに疾患を引き起こし得る。Cryptococcus neoformansは、ヒトおよび動物の主要な病原体である。Cryptococcus laurentiiおよびCryptococcus albidusは、免疫力が低下したヒト患者に中度から重度の疾患を時折引き起こすことが知られている。Cryptococcus gattiiは、アフリカ大陸およびオーストラリア大陸の熱帯地域の風土病であり、疾患を引き起こし得る。Histoplasma capsulatumは、ヒト、イヌ、およびネコにヒストプラスマ症を引き起こし得る。Pneumocystis jirovecii(またはPneumocystis carinii)は、未熟児、高齢者、およびAIDS患者など、免疫系が低下した人々に一種の肺炎を引き起こし得る。Stachybotrys chartarumまたは「黒カビ」は、呼吸器の損傷および重症の頭痛を引き起こし得る。
【0030】
一実施形態では、検出または試験される感染は、Acinetobacter baumannii、Klebsiella pneumoniae、Acinetobacter lwoffii、Listeria monocytogenes、Aeromonas caviae、Morganella morganii、Aeromonas hydrophila、Neisseria gonorrhoeae、Aspergillus flavus、Neisseria meningitidis、Aspergillus nidulans、Pasteurella multocida、Aspergillus niger、Pasteurella pneumotropica、Aspergillus terreus、Propionibacterium acnes、Bacillus anthracis、Proteus mirabillis、Bacillus cereus、Providencia rettgeri、Bacillus subtilis、Pseudomonas aeruginosa、Bacteroides fragilis、Salmonella choleraesuis、Brucella melitensis、Serratia liquefaciens、Burkholderia cepacia、Serratia marcescens、Candida albicans、Staphylococcus aureus、Candida dubliniensis、Staphylococcus epidermidis、Candida glabrata、Staphylococcus haemolyticus、Candida krusei、Staphylococcus hominis、Candida parapsilosis、Staphylococcus saccharolyticus、Candida tropicalis、Staphylococcus warneri、Capnocytophaga canimorsus、Stenotrophomonas maltophilia、Citrobacter braakii、Streptococcus agalactiae、Citrobacter freundii、Streptococcus anginosus、Clostridium perfringens、Streptococcus bovis、Corynebacterium jeikeium、Streptococcus constellatus、Enterobacter aerogenes、Streptococcus dysgalactiae、Enterobacter cloacae、Streptococcus mutans、Enterobacter sakazakii、Streptococcus pneumoniae、Enterococcus faecalis、Streptococcus pyogenes、Enterococcus faecium、Streptococcus salivarius、Escherichia coli、Streptococcus sanguinis、Shigella sp.、Streptococcus suis、Gemella haemolysans、Vibrio vulnificus、Gemella morbillorum、Yersinia enterocolitica、Haemophilus influenzae、Yersinia pestis、Kingella kingae、Yersinia pseudotuberculosis、およびKlebsiella oxytocaから選択されてもよい。
【0031】
本明細書で使用される場合、「血液感染症」という用語は、全身性血流感染症、敗血症、重症敗血症、および/または敗血症性ショックを含んでもよい。
【0032】
本発明の文脈における「敗血症」は、感染に対する全身性反応を指す。あるいは、敗血症は、SIRSと確認された感染プロセスまたは感染との組み合わせとして見られてもよい。敗血症は、感染症および全身性炎症反応の両方の存在によって定義される臨床症候群として特徴付けられてもよい(Levy et al.,Crit Care Med.;31(4):1250-6,2003)。本明細書で使用される「敗血症」という用語は、敗血症、重症敗血症、敗血症性ショックを含むがこれらに限定されない。
【0033】
本明細書で使用される「敗血症」という用語は、敗血症、重症敗血症、敗血症性ショックを含むがこれらに限定されない。重症敗血症は、臓器機能障害、低灌流異常、または敗血症誘発性低血圧関連する敗血症を指す。低灌流異常には、乳酸アシドーシス、乏尿症、および精神状態の急激な変化が含まれる。敗血症誘発性低血圧は、低血圧の他の原因(例えば、心原性ショック)が存在しない場合の、約90mm Hg未満の収縮期血圧の存在またはベースラインから約40mm Hg以上のその低減によって定義される。敗血症性ショックは、低灌流異常または臓器機能不全の存在とともに、適切な輸液蘇生法にもかかわらず持続する敗血症誘発性低血圧を伴う重症敗血症として定義される(Bone et al.,CHEST 101(6):1644-55,1992)。
【0034】
あるいは、敗血症という用語は、感染に対する調節機能障害の宿主の応答によって引き起こされる、生命を脅かす臓器の機能障害として定義されてもよい。臨床的操作主義では、臓器機能障害は、好ましくは連続的臓器不全評価(SOFA)スコアの2ポイント以上の増加によって表すことができ、10%超の院内死亡率に関連している。敗血症性ショックは、敗血症のサブセットとして定義されてもよく、特に重度の循環器、細胞、および代謝の異常は、敗血症単独よりも高い死亡リスクに関連している。敗血症性ショックの患者は、血液量減少が存在しない場合の、65mm Hg以上の平均動脈圧および2mmol/L超(>18mg/dL)の血清乳酸レベルを維持するための昇圧剤の必要性によって臨床的に識別することができる。
【0035】
本明細書で使用される「敗血症」という用語は、敗血症の発症における全ての可能な段階に関する。
【0036】
「敗血症」という用語には、SEPSIS-2の定義に基づく重症敗血症または敗血症性ショックも含まれる(Bone et al.,2009)。「敗血症」という用語には、SEPSIS-3の定義内に入る対象も含まれる(Singer et al.,JAMA;315(8):801-810,2016)。本明細書で使用される「敗血症」という用語は、敗血症の発症における全ての可能な段階に関する。
【0037】
少なくとも1つの追加のパラメータは、少なくとも1つの追加のバイオマーカーのレベルおよび患者の臨床パラメータからなる群から選択され得る。1つ超の追加のパラメータを併用評価で使用するとき、追加のパラメータは、同じカテゴリーのものであっても異なるカテゴリーのものであってもよい。例えば、2つの追加のパラメータの場合、追加のパラメータは、両方とも追加のバイオマーカーのレベルであっても、2つの臨床パラメータであっても、追加のバイオマーカーのレベルおよび臨床パラメータであってもよい。追加のバイオマーカーレベルは、バイオマーカーレベルを決定するために該ステップで使用されていない、ステップii)で言及した残りの2つのバイオマーカーのうちの一方のレベルであり得る。例えば、ステップii)で決定されたバイオマーカーレベルがコペプチンのレベルである場合、追加のパラメータはトロポニンまたはBNPのレベルであってもよい。
【0038】
より一般的に言えば、少なくとも1つの追加のパラメータを決定することは、好ましくは、少なくとも1つの追加のバイオマーカーのレベルを決定することを含み、これらのバイオマーカーは、コペプチン、トロポニン、BNP、中間領域プロアドレノメデュリン(MR-proADM)、C末端プロエンドセリン-1(CT-proET-1)、プロカルシトニン(PCT)、MR-proANP(中間領域のプロ心房性ナトリウム利尿ペプチド)、クレアチニンキナーゼ、クレアチンキナーゼ-MB、ミオグロビン、乳酸塩、およびCRP(C反応性タンパク質)からなる群から選択される。
【0039】
好ましい実施形態では、コペプチン、トロポニン、および脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)の3つすべてのバイオマーカーのレベルが決定され、以下のステップiv)およびv)で使用される。任意選択で、MR-proADM、CT-proET-1、およびPCTのうちの少なくとも1つを追加で決定し、組み合わせて併用評価にすることができる。
【0040】
バソプレッシンの164アミノ酸前駆体ペプチド(プレプロバソプレッシン)の配列は、配列番号1に付与されている。プロバソプレッシンは、プレプロバソプレッシンの配列のアミノ酸残基19~164に関係する。プロバソプレッシンのアミノ酸配列は、配列番号2に付与されている。プロバソプレッシンは、成熟バソプレッシン、ニューロフィジンII、およびC末端プロバソプレッシン(CT-proAVPまたはコペプチン)に切断される。コペプチンは、プレプロバソプレッシンのアミノ酸残基126~164に関係する。コペプチンのアミノ酸配列は、配列番号3に提供されている。ニューロフィジンIIは、プレプロバソプレッシンのアミノ酸残基32~124を含み、その配列は、配列番号4に示されている。
【0041】
トロポニンは、アクチンおよびミオシンのフィラメントの滑りにより収縮を促進する、筋肉に見られるタンパク質である。これは、C、I、およびTの3つのサブユニットで構成される。トロポニンTのアイソフォームであるcTnTは、心筋細胞にのみ見られ、その心筋特異性および臨床感度の高さを理由に、最も重要な心臓バイオマーカーである。しかしながら、トロポニンレベルは、典型的には、手術後にはその増加が遅延するため、術後患者におけるMACCEおよびMINSの早期診断に対するそれらの有用性は典型的には限られているとみなされてきた。サブユニットCの配列は、配列番号7に付与されている。サブユニットIの配列は、配列番号6に付与されている。サブユニットTの配列は、配列番号5に付与されている。
【0042】
脳性ナトリウム利尿ペプチド(プレプロBNP)の134アミノ酸前駆体ペプチドの配列は、配列番号8に付与されている。プロBNPは、プレプロBNPのアミノ酸残基27~134に関係する。プロBNPの配列は、配列番号9に示されている。プロBNPは、N末端プロBNP(NT-pro-BNP)と成熟BNPとに切断される。NT-pro-BNPは、アミノ酸残基27~102を含み、その配列は、配列番号10に示されている。配列番号11は、プレプロBNPペプチドのアミノ酸残基103~134を含むBNPの配列を示す。
【0043】
本発明の意味での臨床パラメータは、概して、患者の健康および/または身体状態を示す任意のパラメータを意味する。臨床パラメータは、好ましくは、心臓または脳血管の状態または事象の重要なパラメータから選択される。好ましくは、臨床パラメータは、年齢、異常なECG(特に病理学的Q波)、LBBB(左脚ブロックの出現)、ST上昇(V1、V2、V3で2mm以上、または他のリードで1mm以上)、ST下降(1mm以上のSTセグメントの下降の出現)、T波反転(少なくとも2つの連続するリードでの1mm以上のT波の対称な反転)、術中低血圧、術中頻脈、術中徐脈、高脂血症、喫煙状態、貧血、機能的能力(MET)、赤血球輸血、不整脈、洞以外の律動、前記消化管手術の期間と手術の大きさ、患者の病歴(特に心臓および脳血管事象に関するもの)、および肝疾患からなる群から選択される。本発明はまた、本明細書に、単独で、または任意の数の他のパラメータとの任意の組み合わせで言及されるパラメータのいずれかを含む。
【0044】
MACCE、およびこの用語が当技術分野でどの条件を含むかの独自で明示的かつ排他的な定義はないため、本明細書で使用されるMACCEは、以下の条件の群から選択される少なくとも1つの条件の発生として定義される:
-致命的ではない心停止(基本的または高度な心肺蘇生法のいずれかの部分を必要とする心臓リズムの欠如または無秩序なリズムの存在)、
-急性心筋梗塞(トロポニンレベルの増加および段階的な減少、または次のうちの少なくとも1つを伴う心筋壊死のマーカーとしてのクレアチンキナーゼアイソザイムの場合、減少:虚血症状、ECGの異常なQ波、STセグメントの上昇もしくは下降、冠状動脈介入(例えば、冠動脈形成術)、またはトロポニン上昇について代替になる説明が確認されていない患者における手術後のそのピーク時に検出された上昇したトロポニンレベルの変則的な減少)、
-鬱血性心不全(呼吸困難または疲労の新たな院内徴候または症状、起座呼吸、発作性夜間呼吸困難、頸静脈圧の上昇、身体検査での肺ラ音、心臓肥大または肺血管の充血)、
-新たな心不整脈(心房粗動、心房細動、または第2度または第3度房室伝導ブロックのECGによる証拠)、
-狭心症(労作または感情によって引き起こされ、休息またはニトログリセリンによって軽減される鈍いびまん性胸骨下胸部不快感)、
-脳卒中(持続性の残存する運動、感覚、または認知機能障害を伴うまたは伴わない、少なくとも30分間続く塞栓性、血栓性、または出血性事象;神経学的症状が24時間超継続する場合、人は脳卒中と診断され、24時間未満継続する場合、事象は一過性脳虚血発作として定義される)、
-一過性脳虚血発作(持続性の残存する運動、感覚、または認知機能障害を伴うまたは伴わない、少なくとも30分間続く塞栓性、血栓性、または出血性事象;神経学的症状が24時間超継続する場合、人は脳卒中と診断され、24時間未満継続する場合、事象は一過性脳虚血発作として定義される)、
-非心臓手術後の心筋傷害(MINS;虚血症状の有無にかかわらず、心筋虚血が原因である(非虚血性病因の証拠なし)と判断された術後のトロポニン上昇)。
したがって、上に記載されていない他の条件、例えば、循環性ショックは、本明細書で使用されるMACCEとはみなされず、明示的に除外される。
【0045】
本発明の文脈における「診断」は、対象における疾患もしくは臨床状態またはその非存在の認識および早期発見に関し、また鑑別診断および除外を含んでもよい。これに関しての早期は、診断のための可能な限り早い時点を意味するように意図される。これには、疾患に関係する症状のある患者およびない患者が含まれる。診断は、当技術分野で既知のさらなる臨床パラメータ、スコア、または医療手順の追加を伴うまたは伴わないバイオマーカーの測定によって実現される。ここでも、本発明はインビトロ診断に関する。診断は、患者の試料に対して実施されるが、ヒトまたは動物の身体に対しては実施されない。
【0046】
本発明において、「リスク評価」という用語は、ある特定の有害事象を経験する確率を個人に割り当てることを示す。これにより、個人は、好ましくは、ある特定のリスクカテゴリーに当てられてもよく、ここで、カテゴリーは、例えば、高リスク対低リスク、またはリスクカテゴリー1、2、3などといった数値に基づくリスクカテゴリーを含む。本発明において、「リスク層別化」という用語は、対象を自身のさらなる予後に従って異なるリスク群に分けることに関する。リスク評価は、予防的および/または治療的措置を適用するための層別化にも関する。
【0047】
本発明において、「予後」という用語は、対象(例えば、患者)の病状がどのように進行するかについての予測を示す。これにはまた、該対象についての回復の見込みまたは有害な転帰の見込み(例えば、感染症または死亡を伴うまたは伴わないMACCEの発生)の推定が含まれてもよい。
【0048】
本明細書で使用される「試料」という用語は、患者などの関心対象の診断、予後、または評価の目的で得られた体液の試料を指す。好ましい試験試料には、血液、血清、血漿、脳脊髄液、尿、唾液、痰、および胸水が含まれる。加えて、当業者であれば、いくつかの試験試料が、分画または精製手順、例えば、全血の血清または血漿成分への分離の後で、より容易に分析され得ることを理解するであろう。
【0049】
このため、本発明の好ましい実施形態では、試料は、血液試料、血清試料、血漿試料、脳脊髄液試料、唾液試料、および尿試料、または前述の試料のうちのいずれかの抽出物を含む群から選択される。好ましくは、試料は、血液試料、最も好ましくは、血清試料または血漿試料である。
【0050】
本発明の文脈における「レベル」という用語は、患者の試料から取得されたマーカーペプチドの濃度(好ましくは、重量/体積またはモル量/体積として表される)に関する。
【0051】
本明細書で使用される「患者」という用語は、医療を受けている、または疾患のために医療を受けるべきである生きているヒトまたは非ヒト生物を指す。これには、病変の兆候について調査されている定義された病気のない人、具体的には、好ましくは感染症と組み合わされた、可能性のあるMACCEまたはMINSについて調査されている人が含まれる。このため、本明細書に記載の方法およびアッセイは、ヒトおよび獣医学の両方の疾患に適用可能である。具体的には、本発明の方法で評価された患者は、好ましくは、待機的消化管手術を受ける。患者はまた、高血圧、糖尿病、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、メタボリックシンドローム、肥満(少なくとも30のBMI(肥満度指数))、非心血管性慢性疾患、疼痛、発熱、感染症、敗血症、またはSIRS(全身性炎症反応症候群)のような他の共存症を患い得る。
【0052】
併用評価を提供するために本明細書で使用される「組み合わせる」という用語は、指標値を測定または計算された結果に割り当てること、および異なる結果からの値を組み合わせて併用評価にすることを指す。これは、ある特定の数のパラメータを選択すること、および数学的アルゴリズム(例えば、偏差または割合)を使用してこれらのパラメータを指定された群に配列することを含んでもよい。例えば、測定されたバイオマーカーレベルは、所定の閾値より上または下にあり得、当業者であれば、参照データと比較したバイオマーカー値の増加が疾患または状態の存在を示すものとみなされるか否かを評価することによって、これを指標値に置き換えることができる。異なる閾値は、異なる指標強度を提供してもよい。同じことが、計算結果、例えば、割合の増減、異なるバイオマーカーレベル間の割合などにも当てはまる。したがって、「併用評価」という用語は、本発明によって提供されるすべての測定結果または計算結果の全体の指標値に関し、この指標値は、その後、患者の状態に相関させることができる。
【0053】
併用評価に関して本明細書で使用される「相関させる」という用語は、すべての測定結果または計算結果の指標値の全体(併用評価)を、所与の状態を患うことが分かっている患者またはそのリスクがあることが分かっている患者のそれらの値と比較することを指す。患者試料における評価は、特定の診断と関連付けられることが分かっている値と比較され得る。試料の評価は、診断と相関させたと言われ、これはつまり、当業者であれば、この評価を使用して、患者が特定の種類の疾患を患うことを決定し、相応に応答できるということである。あるいは、評価は、良好な転帰(例えば、疾患の非存在など)と関連付けられることが分かっている評価と比較することができる。好ましい実施形態では、マーカーレベルのパネルおよびそれらの組み合わせた指標値は、大域的確率または特定の転帰と相関付けられる。
【0054】
本発明では、本発明の方法が実施される患者のすべてが消化管手術を受ける。本発明の方法の目的は、これらの患者がMACCE、好ましくは感染症と組み合わせたMACCEを有するか、またはそのリスクがあるかどうかを決定することである。したがって、本発明の方法のステップiv)の相関は、好ましくは、消化管手術を受けた患者、ならびにMACCEまたはMINS、好ましくは感染症と組み合わせたMACCEまたはMINSを有したおよび/または有しなかった患者に関する参照データを提供することを含む。次に、患者の併用評価をこの参照データと比較して、患者がMACCEまたはMINS、好ましくは感染症と組み合わせたMACCEまたはMINSを有するか、またはそのリスクがあるかどうかを決定する。消化管手術も受けた患者からなる参照群は、例えば、健康な患者の参照群よりも、本発明により好適である。
【0055】
本発明の方法の性能をさらに増加させるために、好ましい実施形態では、試料中の少なくとも1つの追加のバイオマーカーのレベルを決定し、追加のバイオマーカーは、コペプチン、トロポニン、BNP、中間領域プロアドレノメデュリン(MR-proADM)、C末端プロエンドセリン-1(CT-proET-1)、プロカルシトニン(PCT)、MR-proANP(中間領域のプロ心房性ナトリウム利尿ペプチド)、クレアチニンキナーゼ、クレアチンキナーゼ-MB、ミオグロビン、乳酸塩、およびCRP(C反応性タンパク質)からなる群から選択される。少なくとも1つの追加のバイオマーカーのレベルを組み合わせて併用評価にする。特に好ましい実施形態では、バイオマーカーであるコペプチン、トロポニン、BNP、MR-proADM、CT-proET-1、およびPCTのうちのすべてのレベルを決定し、組み合わせて併用評価にする。バイオマーカーの組み合わせを用いることにより、本方法の診断性能が増加し、本方法が単一のバイオマーカーの変動の影響を受けにくくなる。
【0056】
153アミノ酸のプレプロANPの配列は、配列番号21に示されている。N末端シグナルペプチド(25個のアミノ酸)および2つのC末端アミノ酸が切断されると、proANP(配列番号22)が放出される。「プロ心房性ナトリウム利尿ペプチド」または「proANP」は、126個のアミノ酸を含むプロホルモンを指す。本明細書で使用されるとき、126個のアミノ酸を含むプロホルモン(proANP)のC末端セクションの28個のアミノ酸(99~126)を含むペプチドは、実ホルモンANPと称される。ANPがそのプロホルモンproANPから放出されると、98個のアミノ酸からなるproANPの残りのより大きな部分ペプチドであるN末端proANP(NT-proANP;proANP(1~98);配列番号23として示される)の等モル量が循環に放出される。NT-proANPは大幅に優れた半減期および安定性を備えているため、NT-proANPは、診断、経過観察、および治療管理のための検査パラメータとして使用することができる。例えば、Lothar Thomas(Editor),Labor und Diagnose,5th expanded ed.,第2章の節2.14,Kardiale Diagnostik,116~118頁、およびWO2008/135571を参照されたい。proANPのレベルは、好ましくは、対象の血漿または血清中で測定される。
【0057】
ナトリウム利尿ペプチドファミリーのメンバーである「心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)」は、利尿およびナトリウム利尿、ならびに動脈血圧(BP)の低下を含むいくつかの生理学的パラメータを調節する。これは、主に心臓の心房で産生され、循環中のナトリウム利尿ペプチドの98%を構成する(Vesely DL.Life 2002;53:153-159)。ANPは、その前駆体であるプロホルモンの切断に由来し、プロホルモンは、成熟ペプチドよりも循環中で大幅により安定である。中間領域proANP(MR-proANP)と呼ばれる前駆体ホルモンの中間領域断片(NT-proANPのアミノ酸53~90;配列番号24)は、以前の免疫アッセイで使用されるproANPのNまたはC末端のエピトープとは異なり、エキソプロテアーゼによる分解に対して比較的耐性があり得る(Morgenthaler NG et al.Clin Chem 2004;50:234-236;Gerszten RE et al.2008.Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol)。本態性高血圧症の成人では、MR-proANPの血漿レベルが高いほど、収縮期血圧(SBP)が高くなり、動脈硬化が大きくなり、高血圧の重症度が高くなることを以前に指摘した(未発表データ)。これらの発見に基づいて、血漿MR-proANPが高血圧症の成人における標的臓器損傷の測定に関連している可能性があると仮定した。
【0058】
本明細書で使用されるとき、「乳酸塩」は、血中で測定された乳酸塩濃度を指す。通常、乳酸塩濃度は、毎日またはさらにより頻繁に評価される。血中の乳酸濃度は、乳酸オキシダーゼ分光光度法によって決定することができる。臨床用途に関して、乳酸塩は、罹患率および死亡率のリスクが高い患者を特定できることが当該技術分野で周知である(Broder G,Weil MH.Excess lactate:An index of reversibility of shock in human patients.Science 1964;143:1457-59、Manikis P,Jankowski S,Zhang H,Kahn RJ,Vincent JL.Correlation of serial blood lactate levels to organ failure and mortality after trauma.Am J Emerg Med 1995;13,6:619-22)。
【0059】
「ミオグロビン」は、153個のアミノ酸(配列番号26)の一本鎖球状タンパク質であり、中央にヘム(鉄含有ポルフィリン)補欠分子族を含有し、その周りに残りのアポタンパク質が折り畳まれる。その配列は、配列番号25に示されている。ミオグロビンは、筋肉傷害に対する感受性マーカーであるため、胸痛のある患者の心臓発作に対する可能性のあるマーカーとなる(Weber et al.2005.Clinical Biochemistry 38:1027-30)。CK-MBと心臓トロポニンTであるcTnTとは、ECG、および急性心筋梗塞(AMI)を診断するための臨床徴候と組み合わせて使用される。心臓トロポニンは、T(cTcT)、I(cTcI)、およびCの3つのサブユニットからなるタンパク質複合体であり、そのうちTおよびIは、熱筋組織にのみ存在し、診断目的のマーカーとして使用される(Rottbauer W et al.,Eur Heart J 1996;17:3-8)。
【0060】
「クレアチンキナーゼ」は、酵素であり、B-(脳型)またはM-(筋肉型)サブユニットを有し得る異なるアイソフォームによって表される。クレアチンキナーゼは、組織型に基づいて別個の発現パターンを有することができるアイソフォームであるCK-MM、CK-MB、およびCK-BBで構成される(Schlattner U,Tokarska-Schlattner M,Wallimann T(February 2006).「Mitochondrial creatine kinase in human health and disease」.Biochimica et Biophysica Acta.1762(2):164-80)。この酵素は、アデノシン三リン酸(ATP)代謝において機能的な役割を果たしているため、筋肉、網膜、脳、心臓、または腎臓など、ATPの需要が高い臓器に存在する。クレアチンキナーゼの血中レベルを検出して、例えば、心筋梗塞、筋ジストロフィー、または急性腎傷害のような関連疾患における組織損傷を検出する。(Wallimann T,Wyss M,Brdiczka D,Nicolay K,Eppenberger HM(January 1992).「Intracellular compartmentation,structure and function of creatine kinase isoenzymes in tissues with high and fluctuating energy demands:the『phosphocreatine circuit』for cellular energy homeostasis」.The Biochemical Journal.281(Pt 1)(1):21-40、Moghadam-Kia S,Oddis CV,Aggarwal R(January 2016).「Approach to asymptomatic creatine kinase elevation」.Cleveland Clinic Journal of Medicine.83(1):37-42)。
【0061】
「C反応性タンパク質(CRP)」は、炎症状態の間に生理学的に誘導される急性期タンパク質である(Thompson D,Pepys MB,Wood SP(1999).「The physiological structure of human C-reactive protein and its complex with phosphocholine」.Structure.7(2):169-77)。CRPの配列は、配列番号27に付与されている。CRPは、マクロファージの食作用を促進することによる補体系の一部である。さらに、CRPは、感染症に対する自然免疫応答を活性化することもできる(Bray C,Bell LN,Liang H,Haykal R,Kaiksow F,Mazza JJ,Yale SH(December 2016).「Erythrocyte Sedimentation Rate and C-reactive Protein Measurements and Their Relevance in Clinical Medicine」).Wisconsin Medical Journal(WMJ).115(6):317-21.)。CRPは、炎症に対するマーカーとして既知であり、広く使用されている。健康な成人では、CRPの通常濃度は、0.8mg/L~3.0mg/Lの間で変化し、まれではあるが10mg/Lまでになる。病理学的レベルは、軽度の炎症およびウイルス感染症(10~40mg/L)、活動性炎症、細菌感染症(40~200mg/L)、重度の細菌感染症および熱傷(200mg/L超)と定義され得る(Chew KS(April 2012).「What’s new in Emergencies Trauma and Shock?C-reactive protein as a potential clinical biomarker for influenza infection:More questions than answers」. Journal of Emergencies,Trauma,and Shock.5(2):115-7.)。
【0062】
アドレノメデュリンの前駆体ペプチド(プレプロアドレノメデュリン)のアミノ酸配列は、配列番号12に付与されている。プロアドレノメデュリンは、プレプロアドレノメデュリンの配列のアミノ酸残基22~185に関係する。プロアドレノメデュリン(proADM)のアミノ酸配列は、配列番号13に付与されている。MR-プロアドレノメデュリン(MR-proADM)は、pre-proADMのアミノ酸残基45~92に関係する。MR-proADMのアミノ酸配列は、配列番号14に提供されている。
【0063】
エンドセリン-1の212アミノ酸前駆体ペプチド(プレプロエンドセリン-1)の配列は、配列番号15に付与されている。pro-ET-1は、pre-pro-ET-1の配列のアミノ酸残基18~212に関係する。pro-ET-1のアミノ酸配列は、配列番号16に付与されている。pro-ET-1は、成熟ET-1、big-ET-1、およびC末端proET-1(CT-proET-1)に切断される。ET-1は、pre-pro-ET-1のアミノ酸残基53~73に関係する。ET-1のアミノ酸配列は、配列番号17に示されている。CT-proET-1は、pre-pro-ET-1のアミノ酸残基168~212に関係する。CT-proET-1のアミノ酸配列は、配列番号18に提供されている。big-ET-1は、pre-pro-ET-1のアミノ酸残基53~90を含み、その配列は、配列番号19に示されている。
【0064】
プロカルシトニンは、カルシトニンおよびカタカルシンの前駆体である。PCT1-116のアミノ酸配列は配列番号20に付与されている。
【0065】
概して、言及されるバイオマーカーのレベルは、バイオマーカー自体を直接決定することによって測定することができる。しかしながら、好ましい実施形態では、バイオマーカーのうちの少なくとも1つのレベルは、前駆体、前駆体断片、およびバイオマーカーの断片のうちの少なくとも1つのレベルを決定することによって決定される。言い換えれば、バイオマーカーのレベルは、前駆体、前駆体断片、またはバイオマーカーの断片のレベルを決定することによって間接的に決定される。利点は、これらの間接ペプチド標的が、多くの場合、患者の体液またはアッセイ環境のいずれかでより容易に測定されるか、またはより安定しているという事実にある。関心のバイオマーカーに対する間接ペプチド標的の割合が分かっているので、関心のバイオマーカーのレベルを決定するために間接ペプチド標的のレベルを容易に使用することができる。
【0066】
タンパク質および他のペプチドの文脈で本明細書に記載されるように、「断片」という用語は、より大きなタンパク質またはペプチドから誘導可能であり、したがってより大きなタンパク質またはペプチドの部分配列を含む、より小さなタンパク質またはペプチドを指す。該断片は、そのペプチド結合のうちの1つ以上の鹸化によって、より大きなタンパク質またはペプチドから誘導可能である。バイオマーカーの「断片」は、好ましくは、長さが少なくとも6アミノ酸、最も好ましくは、長さが少なくとも12アミノ酸残基の断片に関する。そのような断片は、好ましくは、免疫学的アッセイにより検出可能である。
【0067】
例えば、好ましい実施形態では、トロポニンのレベルを決定することは、サブユニット心臓トロポニンT(cTnT)、好ましくはcTnTのアイソフォーム6(配列番号5)、またはcTnTのアイソフォーム6と少なくとも75%のアミノ酸配列同一性を有する相同ペプチドのレベルを決定することを含む。より好ましくは、cTnTのアイソフォーム6とのアミノ酸配列同一性は、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%である。心臓トロポニンTは、組織損傷によって心筋から放出されるため、MIのバイオマーカーとして使用される。cTnTにはいくつかのアイソフォームがあり、本発明はそれらのうちのいずれにも限定されないが、アイソフォーム6が好ましい。しかしながら、他のアイソフォームのいずれも、本発明において使用することができる。
【0068】
別の好ましい実施形態では、BNPのレベルを決定することは、前駆体断片NT-proBNP(配列番号10)のレベルを決定することを含む。
【0069】
術後合併症のリスクは患者の年齢とともに増加するため、本発明の方法は少なくとも50歳である患者に対して実施することが好ましい。本方法が実施される患者集団を制限することで、カットオフ値を、標的集団によく見られるバイオマーカーレベルに対して具体的に選択することが可能になる。少なくとも50歳の患者を評価することにより、本発明の方法をこの群の生理学的パラメータに合わせて調整することができる。
【0070】
本発明は、消化管手術後の深刻な合併症の診断を対象とする。したがって、重大な外科的処置後は重大な合併症がより顕著になるため、患者は消化管手術を受けた後、少なくとも1日は入院することが好ましい。入院期間は、外科的処置の重大度を反映し、したがって合併症の一般的なリスクを反映する。本発明はまた、鎮痛剤または疼痛治療により治療されている患者の試料に対して実施することができる。この患者の群を本方法の対象にすることにより、本発明の診断は、最も必要としている可能性がある患者を対象にするようになる。
【0071】
適格な消化管手術手順は、腹腔鏡下または観血(従来型)のいずれかであり得る。具体的には、消化管手術は、
-胃手術、
-小腸手術、特に十二指腸手術、
-大腸手術、特に直腸手術、
-生殖器系手術、特に子宮摘出術または卵管卵巣摘出術、
-腎臓手術、特に腎摘出術、
-膀胱手術、特に膀胱摘出術、
-胆嚢手術、特に胆嚢摘出術、および
-消化管嚢胞の手術、からなる群から選択される。
【0072】
本発明の方法は、消化管手術に起因する、好ましくは感染症と組み合わされたMACCEの診断を対象とするので、患者には心血管系共存症がないことが好ましい。そのような共存症はまた、本明細書に記載されるバイオマーカーの非生理学的レベルにつながることが多いため、消化管手術の結果として新たに獲得されたMACCEとして覆い隠すまたは誤解され得る。したがって、本方法の診断的価値は、MACCEとして誤解され得る既存の状態のない患者においてより高い。
【0073】
したがって、好ましい実施形態では、患者は、患者に除外条件がある場合に除外され、除外条件は、臓器移植、外傷性損傷、内分泌疾患、内分泌手術、血管疾患、血管手術(例えば、動脈瘤の手術)、血管内疾患、血管内手術、急性冠症候群(ACS)、心不全、非代償性鬱血性心不全、大動脈弁狭窄症、左室駆出率(LVEF)の低下、および循環性ショックからなる群から選択される。除外条件は、患者の最近の過去に存在するかもしくは診断されたかのいずれか、または消化管手術の直後に診断され得る。主な基準は、患者に存在する除外条件が、患者のサンプリング時の本方法によるバイオマーカーのレベルに影響を与えることである。これが事実であり、これらの状況が適時に同定された場合、患者は除外される。このようにして、本発明の診断性能に対する除外条件の有害な影響を防ぐことができる。さもないと、本発明の方法により、除外条件のうちの1つ以上の影響下で、患者におけるMACCEの誤った診断を生じさせ得る。
【0074】
本発明は、消化管手術を受けて、好ましくは感染症と組み合わされたMACCEの迅速な診断を目的とするので、試料は、消化管手術の直前および/もしくは直後の時点に、または手術後最初の3日以内に採取されることが好ましい。具体的には、試料は、消化管手術前24時間以内、消化管手術後24時間以内、消化管手術後1日目、消化管手術後2日目、または消化管手術後3日目に、患者から採取されたものであることが好ましい。消化管手術後に試料を採取することは、言うまでもなく、消化管手術自体がバイオマーカーのレベルに与える影響を監視するのに好適であるが、消化管手術の直前に試料を採取することには、2つの主な用途がある。まず第一に、これは、特定の患者において本明細書に記載されるバイオマーカーのレベルのベースラインを確立するのに役立つ。したがって、後の時点で取得されたバイオマーカーのレベルは、これらのベースラインと比較することができる。第二に、前述の除外条件のうちの1つを有しない患者においてさえ、健康な対照群と比較してより高いレベルの本明細書で言及されるバイオマーカーは、この特定の患者が消化管手術の後に好ましくは感染症と組み合わされたMACCEを発症するリスクの増加を示し得る。したがって、消化管手術前のバイオマーカーのレベルの測定は、本発明の方法の診断的価値を増加させるのに役立ち得る。対照群はまた、消化管手術を受け、好ましくは感染症と組み合わされたMACCEまたはMINSを発症した、または好ましくは発症しなかった患者の群であり得る。
【0075】
本発明の方法により、前述の時点のうちの1つで採取された患者の1つの試料のみが評価される場合であっても、価値のある結果が得られる。しかしながら、本発明の方法の性能は、異なる時点で採取された患者の複数の試料が評価されるときに増大する。したがって、好ましい実施形態では、本方法は、患者からの2~5個の試料を提供することを含み、試料は、消化管手術の前および/または後の異なる時間に採取され、ステップii)、iv)、およびv)は、すべての該試料に対して実行される。最も好ましい実施形態では、5個の試料が、消化管手術の直前および直後の異なる時点で患者から採取される。好ましくは、2~5個の試料が採取されると言われる異なる時間は、消化管手術前24時間以内、消化管手術後24時間以内、消化管手術後1日目、消化管手術後2日目、および消化管手術後3日目からなる群から選択される。5個の試料が採取される実施形態では、それぞれの試料は、これらの時点のうちの1つで採取される。これらの試料におけるバイオマーカーレベルの決定は、順次行うことができ、例えば、各試料は、それを採取した日に測定することができる。あるいは、例えば最後の試料が採取された後、すべての時点からの試料を同時に収集して測定することもできる。異なるバイオマーカーに対して、異なるアッセイまたは1つのマルチマーカー共同アッセイを使用することができる。
【0076】
1つ超の患者試料が提供される本方法の実施形態では、試料中のバイオマーカーのレベルの発達、例えば、試料が採取された時点間のバイオマーカーレベルの増加または減少を使用して、本発明の診断的価値を増加させることができる。例えば、好ましい実施形態では、異なる時間に採取された試料中のバイオマーカーのレベルを決定し、次に比較し、異なる時間でのバイオマーカーのレベルの差を組み合わせて、併用評価にする。異なる時間に採取された試料中のレベルを比較することにより、特定の時間のバイオマーカーレベルを超えて、患者の状態に関する追加情報を取得することができる。すでに述べたように、この追加情報は、試料が採取された期間にわたる特定のバイオマーカーの増加または減少であり得る。しかしながら、バイオマーカーの各々と他のバイオマーカーとの関係をより複雑に評価することで、追加情報を取得することもできる。例えば、概してMACCEの指標であることの、消化管手術後1日目の高レベルのコペプチンの重要性は、患者が2日目および/もしくは3日目に高レベルのトロポニンおよび/もしくはBNPを示す場合に増加するか、またはトロポニンおよび/もしくはBNPのレベルがこれらの時間に増加を示さない場合減少するかのいずれかである。このようにして、異なる時間に採取された試料で測定されたバイオマーカーのレベルは、本発明の方法の診断的価値において相乗効果を生み出し、単なる1つ以上の時点でのバイオマーカーのレベルをはるかに超える(すなわち、1つのサンプリング時間から別のサンプリング時間までである特定の値だけ低下したバイオマーカーレベルの情報は、これらのサンプリング時間単独でのバイオマーカーレベルに関する情報よりも診断的価値が高くなる)。
【0077】
好ましい実施形態では、特定の閾値を超えると決定されたバイオマーカーレベルは、患者における好ましくは感染症と組み合わされたMACCEを示すものである。この特定の閾値の値については、以下で説明するように、いくつかの要因を考慮する必要がある。
【0078】
まず第一に、診断試験および/または予後試験の感度および特異度は、試験の分析的な「品質」だけに左右されるのではなく、異常な結果を構成するものの定義にも左右される。実際には、受信者動作特性曲線(ROC曲線)は、典型的には、「正常」集団(すなわち、見かけは健康であり、本明細書では具体的に、感染症の有無に関わらず、消化管手術を受け、MACCEを発症していない患者)および「疾患」集団(すなわち、糖尿病、インスリン抵抗性、および/またはメタボリックシンドロームを患っている患者;本明細書では具体的に、消化管手術を受け、MACCEおよび可能性として感染症も発症している患者)において変数の値をその相対頻度に対してプロットすることによって計算される。いずれかの特定のマーカーについて、疾患を有する対象および有しない対象についてのマーカーレベルの分布は重複する可能性が高い。そのような条件下では、試験は正常を疾患から100%の精度で完全に区別することはなく、重複の領域により、試験が正常を疾患から区別できない場所が示される。閾値が選択され、それを超えると(または、マーカーが疾患によってどのように変化するかに応じて、それを下回ると)、試験は異常であると見なされ、それを下回ると、試験は正常であると見なされる。ROC曲線の横軸は(1-特異性)を表し、これは偽陽性率とともに増加する。曲線の縦軸は感度を表し、これは真陽性率とともに増加する。このため、選択された特定のカットオフについて、(1-特異性)の値が決定されてもよく、対応する感度が得られてもよい。ROC曲線下面積(AUC)は、測定されたマーカーレベルが疾患または状態の適正な同定を可能にするであろう確率の尺度である。このため、ROC曲線下面積を使用して、試験の有効性を決定することができる。試験結果により必ずしも正確な数が得られない場合でも、ROC曲線を使用することができる。結果をランク付けできる限り、ROC曲線を作成することができる。例えば、「疾患」試料に対する試験の結果は、程度に応じてランク付けされ得る(例えば、1=低い、2=正常、および3=高い)。このランク付けは、「正常な」集団における結果と相関し得、ROC曲線が作成される。これらの方法は、当該技術分野において周知である(例えば、Hanley et al.1982.Radiology 143:29-36を参照されたい)。好ましくは、ROC曲線は、約0.5より大きい、より好ましくは約0.7より大きい、なおより好ましくは約0.8より大きい、さらにより好ましくは約0.85より大きい、最も好ましくは約0.9より大きいAUCをもたらす。この文脈における「約」という用語は、所与の測定値の+/-5%を指す。ある特定の実施形態では、マーカーおよび/またはマーカーパネルは、少なくとも約70%の感度、より好ましくは少なくとも約80%の感度、さらにより好ましくは少なくとも約85%の感度、なおより好ましくは少なくとも約90%の感度、最も好ましくは少なくとも約95%の感度を、少なくとも約70%の特異性、より好ましくは少なくとも約80%の特異性、さらにより好ましくは少なくとも約85%の特異性、なおより好ましくは少なくとも約90%の特異性、最も好ましくは少なくとも約95%の特異性と組み合わせて呈するように選択される。特に好ましい実施形態では、感度および特異性の両方は、少なくとも約75%、より好ましくは少なくとも約80%、さらにより好ましくは少なくとも約85%、なおより好ましくは少なくとも約90%、最も好ましくは少なくとも約95%である。この文脈における「約」という用語は、所与の測定値の+/-5%を指す。
【0079】
したがって、本発明の方法で使用される特定の閾値は、実際の本発明の使用に適合させる必要があることに留意することが重要である。異なる閾値は、本発明の異なる感度および特異性をもたらすことになり、これは、特定の状況を考慮して、本発明を使用する臨床医によって適合されるべきである。このため、「偽陽性」を同定することを代償にして、リスクのある対象の大部分を同定することがより適切であると考えられるかどうか、または中程度にリスクのある数人の対象を逃すことを代償にして、高いリスクのある対象を主に同定することがより適切であると考えられるかどうかに応じて、閾値を適合させてもよい。これらの決定は、本発明を実施する臨床医によって行われなければならず、閾値を修正することにより遂行される。したがって、本明細書で付与される閾値は例示的なものであり、いかようにも本発明を制限するものと理解されるべきではない。
【0080】
考慮すべきもう1つの事項は、異なるアッセイには、これらのアッセイが異なって較正されている場合、異なる閾値が必要とされ得ることである。したがって、上述の閾値は、較正の差異を考慮に入れて、適宜そのような異なって較正されたアッセイに適用されなければならない。較正の差異を定量化する1つの可能性は、両方法を使用して試料中のそれぞれのバイオマーカー(例えば、コペプチン)を測定することによる本発明に使用されるそれぞれのバイオマーカーアッセイ(例えば、Thermo Scientific B・R・A・H・M・S Kryptor Compact plus)を用いた問題のアッセイ(例えば、コペプチンアッセイ)の方法比較分析(相関)である。別の可能性は、この試験が十分な分析感度を有すると仮定して、問題のアッセイを用いて代表的な正規母集団のバイオマーカーレベルの中央値を決定し、文献に記載されているように結果をバイオマーカーレベルの中央値と比較し、この比較によって得られた差異に基づいて較正を再計算することである。
【0081】
全体として、本発明で使用される特定の閾値は、本発明が用いられるときはいつでも、個別に決定しなければならない。例示的な値として、および本発明の好ましい実施形態において、特定の閾値は以下からなる群から選択され、これを超えると、バイオマーカーレベルは患者における好ましくは感染症と組み合わされたMACCEを示す。
-コペプチンの場合、25pmol/L、好ましくは75pmol/L、より好ましくは125pmol/L、さらにより好ましくは175pmol/L、最も好ましくは225pmol/L、
-cTnTの場合、15ng/L、好ましくは20ng/L、より好ましくは25ng/L、さらにより好ましくは30ng/L、最も好ましくは35ng/L、45ng/L、または65ng/L、
-NT-proBNPの場合、500ng/L、好ましくは、900ng/L、より好ましくは1300ng/L、さらにより好ましくは1700ng/L、最も好ましくは2100ng/Lまたは2800ng/L、
-MR-proADMの場合、0.8nmol/Lまたは1.0nmol/L、好ましくは1.25nmol/L、より好ましくは1.5nmol/L、さらにより好ましくは1.75nmol/L、最も好ましくは2.0nmol/Lまたは2.4nmol/L、
-CT-proET-1の場合、80pmol/L、好ましくは90pmol/L、より好ましくは100pmol/L、さらにより好ましくは110pmol/L、最も好ましくは120pmol/L、
-PCTの場合、0.5μg/L、好ましくは1.0μg/L、より好ましくは1.5μg/L、さらにより好ましくは2.0μg/L、最も好ましくは2.5μg/Lまたは3.0μg/L。
別の特定の実施形態では、閾値は、上述の閾値のうちのいずれかのプラスマイナス10%のマージン内にある。このため、コペプチンの閾値は、例えば、22.5pmol/L~27.5pmol/Lの間のどこか(例えば、25pmol/Lプラスマイナス10%の範囲)であり得る。これは、本明細書で付与されるすべての例示的な閾値に適用される。
【0082】
さらなる特定の実施形態では、患者における好ましくは感染症と組み合わされたMACCEのリスクは、消化管手術後30日以内および12か月以内のうちの少なくとも一方の患者における好ましくは感染症と組み合わされたMACCEのリスクに関係する。これらの期間は、臨床的予後において最も重要であることが証明されている。
【0083】
好ましくは感染症と組み合わされたMACCEの単なる発生とは別に、本発明はまた、患者の死亡、具体的には、消化管手術後の好ましくは感染と組み合わされたMACCEの発症による死亡のリスクを評価するために使用されてもよい。したがって、予後は、消化管手術後30日以内および12か月以内うちの少なくとも一方の死亡のリスクを含む。
【0084】
MACCEの重要なサブグループである非心臓手術後心筋傷害(MINS)については、すでに言及した。MINSは、患者の死亡率の増加を含む多数の合併症および長期入院の原因であるため、本発明の好ましい実施形態では、MACCEはMINSであり、本方法は、消化管手術を受けた患者における好ましくは感染症と組み合わされたMINSの診断のための方法である。言い換えれば、本発明の方法は、消化管手術を受けた患者において好ましくは感染症と組み合わされたMINSに関係する特定の診断および/または予後を対象とし得る。MINSは、典型的には、ECGを含む他の臨床試験においていずれの特定の症状も十分に示さないので、MINSを発症する患者は別様には検出されず、したがって治療されない可能性があることを理由に、本発明は高い実用的価値がある。
【0085】
したがって、本発明の好ましい実施形態では、特定の閾値を超えると決定されたバイオマーカーレベルは、患者における好ましくは感染症と組み合わされたMINSを示すものである。言うまでもなく、上述の特定の閾値の定義および決定に関する一般的な注意は、好ましくは感染症と組み合わされたMINSに関連して、この特定の閾値にも適用される。
【0086】
本発明の別の好ましい実施形態では、特定の閾値を超えると決定されたバイオマーカーレベルは、患者における周術期心筋傷害を示すものである。言うまでもなく、上述の特定の閾値の定義および決定に関する一般的な注意は、周術期心筋傷害に関連して、この特定の閾値にも適用される。
【0087】
例示的な値として、および本発明の好ましい実施形態において、特定の閾値は以下からなる群から選択され、これを超えると、バイオマーカーレベルは患者における好ましくは感染症と組み合わされたMINSを示す。
-コペプチンの場合、25pmol/L、好ましくは50pmol/Lまたは75pmol/L、より好ましくは125pmol/L、さらにより好ましくは175pmol/L、最も好ましくは225pmol/L、
-cTnTの場合、10ng/L、好ましくは20ng/L、より好ましくは30ng/L、さらにより好ましくは40ng/L、最も好ましくは50ng/Lまたは60ng/L、
-NT-proBNPの場合、250ng/Lまたは500ng/L、好ましくは750ng/L、より好ましくは1250ng/Lまたは1500ng/L、さらにより好ましくは1750ng/L、最も好ましくは2250ng/L、
-MR-proADMの場合、0.8nmol/Lまたは1.0nmol/L、好ましくは1.25nmol/L、より好ましくは1.5nmol/L、さらにより好ましくは1.75nmol/L、最も好ましくは2.0nmol/L、
-CT-proET-1の場合、65pmol/Lまたは75pmol/Lまたは80pmol/L、好ましくは90pmol/L、より好ましくは100pmol/L、さらにより好ましくは110pmol/L、最も好ましくは120pmol/L、
-PCTの場合、0.2μg/Lまたは0.5μg/L、好ましくは0.75μg/Lまたは0.8μg/L、より好ましくは1.0μg/L、さらにより好ましくは1.25μg/L、最も好ましくは1.5μg/L。
別の特定の実施形態では、閾値は、上述の閾値のうちのいずれかのプラスマイナス10%のマージン内にある。このため、コペプチンの閾値は、例えば、22.5pmol/L~27.5pmol/Lの間のどこか(例えば、25pmol/Lプラスマイナス10%の範囲)であり得る。これは、本明細書で付与されるすべての例示的な閾値に適用される。
【0088】
それを超えるとバイオマーカーのレベルがMACCEおよび/またはMINSを示す特定の閾値を決定する際のもう1つの選択肢は、好ましくは感染と組み合わせて、問題の試料が患者から採取された時点も考慮することである。例えば、特定のバイオマーカー、例えば、コペプチンのレベルは、消化管手術の直後に、MACCEおよび/またはMINSを発症している患者とそのような合併症を発症していない患者との両方で上昇する。しかしながら、この増加は再び素早く下降する。したがって、コペプチンのレベルを評価するときには、他のどの時点と比較しても、消化管手術の最大24時間後に採取した試料に対して、より高い特定の閾値を選択する必要がある。これは、本明細書で言及されるバイオマーカーのいずれに対しても行うことができる。したがって、本発明の好ましい実施形態では、異なる時間に取得された決定されたバイオマーカーレベルは、異なる閾値を使用して評価されることが好ましい。このようにして、感染症を伴うまたは伴わないMACCEおよび/またはMINSを発症していない患者において決定されたバイオマーカーレベルの生理学的ベースラインを検討し、本発明の方法において考慮することができる。
【0089】
本発明の診断的性能の別の増加は、異なる時間に取得された決定されたバイオマーカーレベルが、異なって重み付けされる場合に達成されてもよい。例えば、消化管手術後2日目および/または3日目に採取された試料中のトロポニンレベルの増加は、消化管手術前に採取された試料中のトロポニンレベルの増加よりも重要である。したがって、消化管手術後2日目および/または3日目のレベルの増加には、併用評価においてより大きい診断的重みを与えることができ、これはつまり、これらの特定の時点でのこれらのレベルの増加は、併用評価に対して、他の時点でのより重要でない測定値よりも影響を与えることを意味する。異なる時間に取得されたバイオマーカーレベルに割り当てられた異なる重みは、異なるバイオマーカーにも関係すし得る。例えば、消化管手術後2日目および/または3日目に採取された試料中のトロポニンレベルの増加は、消化管手術後1日目および/または2日目および/または3日目のコペプチンレベルの増加よりも重要であり得る。それぞれの測定の特定の時点での診断的価値に従って決定されたバイオマーカーレベルに重みを付けることにより、本発明の性能を増加させることができる。
【0090】
患者に由来する異なる時点からの複数の試料を提供することにより、これらの試料ならびに患者の診断および/または予後に対するそれらの重要性を、多くの異なる方法で評価することができる。例えば、異なる時間に採取された2つの試料間のバイオマーカーレベルにおける相対変化を組み合わせて前記併用評価にすることができる。相対変化は、例えばパーセンテージとして以前のレベルと比較して表された、特定のバイオマーカーのレベルの減少または増加として測定される。これは、例えば、1つ以上の以前の測定値を考慮してバイオマーカーがどれだけ増加または減少したかによって決定され得る。これらの測定値は連続したものである必要はない。例えば、バイオマーカーのレベルの増加または減少は、消化管手術の前の測定から、第1および/または第2および/または第3および/または第4の術後測定まで決定することができる。このように、特定の時点で採取された試料の各々を、いずれかの他の時点からのいずれかの他の試料と比較することができる。これは、バイオマーカー各々について異なり得る。例えば、本方法は、手術後2日目と3日目とで採取された試料からのBNPの相対変化、および加えて消化管手術後最大24時間で採取された試料と手術後1日目に採取された試料とのコペプチンの相対変化を使用することを含み得る。いずれのそのような組み合わせも可能である。
【0091】
本発明の別の好ましい実施形態では、試料中の少なくとも2つのバイオマーカーのレベル間の割合を決定し、割合を組み合わせて併用評価にし、ここで、割合を決定するためのバイオマーカーは、好ましくは、コペプチン/トロポニン対、コペプチン/BNP対、およびBNP/トロポニン対から選択される。少なくとも2つのバイオマーカーのレベルは、1つの試料由来であっても、異なる試料、具体的には異なる時点で採取された異なる試料のものであってもよい。割合は、バイオマーカーの測定されたレベル間で直接計算することも、バイオマーカーのレベルから導出されたパラメータ、例えばバイオマーカーレベルの相対変化間で計算することもできる。好ましい実施形態では、少なくとも2つのバイオマーカーの相対変化間の割合を決定し、組み合わせて併用評価にする。別の好ましい実施形態では、異なる時間に採取された試料から決定された割合を比較し、好ましくはパーセンテージとして表した、時間の経過に伴う割合の相対変化を得て、その後これも組み合わせて併用評価にする。
【0092】
例えば、本方法は、決定されたバイオマーカー、および特に上記のように決定されたパラメータ、例えば、2つの異なる時点でのバイオマーカーレベル間の差異、バイオマーカーレベルの相対変化、またはバイオマーカーレベルの割合のための参照データを提供することも含む。次に、この参照データを使用して、測定結果を比較し、患者の状態を決定することができる。この好ましい実施形態では、ステップiv)は、決定されたバイオマーカーのための参照データを提供することを含み、
-バイオマーカーのうちの少なくとも1つの決定されたレベル、
-異なる時間に取得されたバイオマーカーのうちの少なくとも1つのレベルにおける差異、
-異なる時間に取得された2つの試料中で決定されたバイオマーカーのうちの1つのレベルにおける相対変化、
-同時に取得されたまたは異なる時間に取得された少なくとも2つのバイオマーカーのレベル間の割合、および
-異なる時間に取得された少なくとも2つの試料中で決定された少なくとも2つのバイオマーカーの割合の相対変化、からなる群から選択される、少なくとも1つの値を、
参照データと比較し、決定した値の差異および参照データを計算し、計算した差異は、好ましくは、スコアの形式で、特に数値として表される。
【0093】
参照データは、追加のパラメータとしての臨床パラメータに関しても提供することが好ましい。参照データは、ここでも、消化管手術も受けた患者からなる参照群から提供されることが好ましいが、健康な患者の参照群からの参照データも基本的には好適である。前に述べたように、患者において決定した臨床パラメータを参照データと比較し、結果を、スコア、特に数値に変換することが好ましい。臨床パラメータはバイオマーカーレベル(複数可)と同じ時(複数可)に決定することができるが、問題の時間枠で臨床パラメータの有意な変化が予想される場合には、1つ超の値を取って初めて道理にかなうであろう。年齢、喫煙習慣、患者の病歴などといった臨床パラメータは、当然一度だけ取得すればよい。ECGなどの他の臨床パラメータは、いくつかの時点で取得してもよい。このようにして得られた値の相対変化は、バイオマーカーレベルについて説明したのと同様の方法で評価し得る。
【0094】
本発明の文脈における「スコア」という用語は、特定の成果、または該患者に存在するある特定の性質もしくは状態(例えば、バイオマーカーのレベルまたは導出されたパラメータ)の程度に基づいて、特に数値として表される格付けを指す。
【0095】
少なくとも2つの異なるスコアを決定し、かつ併用評価が、患者における好ましくは感染症と組み合わされたMACCEの存在または非存在を示す該少なくとも2つの異なるスコアから決定された組み合わされたスコアを含むことがさらに好ましい。言い換えると、本方法は、決定されたパラメータの各々、すなわち、少なくとも1つのバイオマーカーレベルおよび少なくとも1つの追加のパラメータを、中間結果を表すスコアとして表し、その後これらを組み合わせて組合せ評価にし、そこから所望の診断および/または予後を導出することができる。例えば、参照データを値の群に分割し、それらの値は、好ましくは線形に増加または減少する。増加または減少は、参照データを取得した患者の転帰の重症度と好適に合致する。各群は、例えば、数が重症度とともに増加するように、それぞれのスコアに関連付けられる。次に、ステップii)およびiii)に従って患者に対して決定した値を、事前に定義した群に関連付けられた参照値と比較する。その後、適切な群のスコアを、決定したパラメータに帰し、組み合わせたスコアを評価するために使用すると、これが最終的な評価の基礎を形成するようになる。この評価を、ステップii)およびiii)で決定されたパラメータの各々、つまり、少なくとも1つのバイオマーカーのレベルおよび少なくとも1つの追加のパラメータに対して行う。同じようにして、上記の特定の時点でのバイオマーカーレベルまたはそれらの差異またはそれらの相対変化またはそれらの割合を評価し、スコアとして表わすことができ、その後これらを組合せスコアにおいて使用する。
【0096】
これらのスコアおよび組合せスコアは、数値で表すことができるため、参照データに対するそれらの差異の程度に従って等級分けすることもできる。これにより、好ましくは感染症と組み合わされたMACCEまたはMINSを有するまたは発症している患者の診断および/または予後に関係する特定のリスク群に患者を層別化するのに役立ち得る等級分けされた組合せスコアが得られる。そのようなリスク群は、例えば、具体的に上述した時間枠において、好ましくは感染症と組み合わされたMACCEまたはMINSを有するまたは発症するリスクが低いこと、中程度であること、または高いことに関係してもよい。層別化は、再び具体的に上述した時間枠における、死亡のリスクにも関係し得る。記載のスコアは、治療指針のためにも使用することができ、異なるリスク群は、特定の患者に異なる治療アプローチが必要であることを示す。
【0097】
参照データは、健康な対象から得られたデータであり得る。これらの対象は、既知の病変がなく、消化管手術を受けない者であり得る。しかしながら、参照データは、消化管手術を受けた患者、ならびに感染症を伴うまたは伴わないMACCEまたはMINSを有したおよび/または有しなかった患者に関係することが好ましい。上記のように患者から得られたデータを、同様に消化管手術を受けているが感染症を伴うまたは伴わないMACCEまたはMINSを発症していない患者からの参照データと比較することは、特に有意義であり、これが最も好ましい実施形態である理由である。
【0098】
次では、バイオマーカーであるコペプチン、トロポニン、およびBNPのうちの少なくとも1つのレベルを、感染症と組み合わされたMACCEを診断または予測するためのバイオマーカーであるproADM、PCT、およびproET-1、またはその断片(複数可)のうちの少なくとも1つのレベルと併せて決定することに関する実施形態を記載する。
【0099】
ADM/いずれかの感染症:
一実施形態では、少なくとも1つの追加のバイオマーカーのレベルを決定することは、proADMまたはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、閾値を超えるproADMまたはその断片(複数可)のレベルは、感染症の可能性が高いことを示す。
【0100】
一実施形態では、試料は術前に単離され、少なくとも1つのバイオマーカーのレベルを決定することは、proADMまたはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、0.7nmol/L~0.8nmol/Lの間の値の範囲から選択される閾値±20%以上を超えるproADMまたはその断片(複数可)のレベルは、感染症の可能性が高いことを示す。この範囲内のいずれの値も、適切な閾値とみなされ得る。例えば、0.70、0.71、0.72、0.73、0.74、0.75、0.76、0.77、0.78、0.79、0.8nmol/L。
【0101】
一実施形態では、試料は、術後12時間以内、好ましくは6時間以内に単離され、少なくとも1つのバイオマーカーのレベルを決定することは、proADMまたはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、1.0nmol/L~1.2nmol/Lの間の値の範囲から選択される閾値±20%以上を超えるproADMまたはその断片(複数可)のレベルは、感染症の可能性が高いことを示す。この範囲内のいずれの値も、適切な閾値とみなされ得る。例えば、1.0、1.01、1.02、1.03、1.04、1.05、1.06、1.07、1.08、1.09、1.1、1.11、1.12、1.13、1.14、1.15、1.16、1.17、1.18、1.19、1.2nmol/L。
【0102】
一実施形態では、試料は、手術から1日で、術後に単離され、少なくとも1つのバイオマーカーのレベルを決定することは、proADMまたはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、1.3nmol/L~1.5nmol/Lの間の値の範囲から選択される閾値±20%以上を超えるproADMまたはその断片(複数可)のレベルは、感染症の可能性が高いことを示す。この範囲内のいずれの値も、適切な閾値とみなされ得る。例えば、1.3、1.31、1.32、1.33、1.34、1.35、1.36、1.37、1.38、1.39、1.4、1.41、1.42、1.43、1.44、1.45、1.46、1.47、1.48、1.49、1.5nmol/L。
【0103】
一実施形態では、試料は、手術から2日で、術後に単離され、少なくとも1つのバイオマーカーのレベルを決定することは、proADMまたはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、1.3nmol/L~1.5nmol/Lの間の値の範囲から選択される閾値±20%以上を超えるproADMまたはその断片(複数可)のレベルは、感染症の可能性が高いことを示す。この範囲内のいずれの値も、適切な閾値とみなされ得る。例えば、1.3、1.31、1.32、1.33、1.34、1.35、1.36、1.37、1.38、1.39、1.4、1.41、1.42、1.43、1.44、1.45、1.46、1.47、1.48、1.49、1.5nmol/L。
【0104】
一実施形態では、試料は、手術から3日で、術後に単離され、少なくとも1つのバイオマーカーのレベルを決定することは、proADMまたはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、1.1nmol/L~1.5nmol/Lの間の値の範囲から選択される閾値±20%以上を超えるproADMまたはその断片(複数可)のレベルは、感染症の可能性が高いことを示す。この範囲内のいずれの値も、適切な閾値とみなされ得る。例えば、1.1、1.11、1.12、1.13、1.14、1.15、1.16、1.17、1.18、1.19、1.2、1.21、1.22、1.23、1.24、1.25、1.26、1.27、1.28、1.29、1.3、1.31、1.32、1.33、1.34、1.35、1.36、1.37、1.38、1.39、1.4、1.41、1.42、1.43、1.44、1.45、1.46、1.47、1.48、1.49、1.5nmol/L。
【0105】
一実施形態では、試料は術後に単離され、少なくとも1つのバイオマーカーのレベルを決定することは、proADMまたはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、1.1nmol/L~1.5nmol/Lの間の値の範囲から選択される閾値±20%以上を超えるproADMまたはその断片(複数可)のレベルは、感染症の可能性が高いことを示す。この範囲内のいずれの値も、適切な閾値とみなされ得る。例えば、1.1、1.11、1.12、1.13、1.14、1.15、1.16、1.17、1.18、1.19、1.2、1.21、1.22、1.23、1.24、1.25、1.26、1.27、1.28、1.29、1.3、1.31、1.32、1.33、1.34、1.35、1.36、1.37、1.38、1.39、1.4、1.41、1.42、1.43、1.44、1.45、1.46、1.47、1.48、1.49、1.5nmol/L。
【0106】
一実施形態では、試料は、手術から1日、2日、3日、またはそれ以上後で、術後に単離され、少なくとも1つのバイオマーカーのレベルを決定することは、proADMまたはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、1.3nmol/L~1.5nmol/Lの間の値の範囲から選択される閾値±20%以上を超えるproADMまたはその断片(複数可)のレベルは、感染症の可能性が高いことを示す。この範囲内のいずれの値も、適切な閾値とみなされ得る。例えば、1.3、1.31、1.32、1.33、1.34、1.35、1.36、1.37、1.38、1.39、1.4、1.41、1.42、1.43、1.44、1.45、1.46、1.47、1.48、1.49、1.5nmol/L。
【0107】
一実施形態では、第1の試料は、第1の時点、好ましくは手術から1日またはそれ以上後で、術後に患者から単離され、第2の試料は、後続する第2の時点で、術後に患者から単離され、第1の時点と第2の時点との間で、少なくとも12時間、24時間、36時間、48時間、またはそれ以上が経過していることが好ましく、少なくとも1つのバイオマーカーのレベルを決定することは、proADMまたはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、proADMまたはその断片(複数可)のレベルの増加または水平化は、感染症の可能性が高いことを示す。
【0108】
一実施形態では、第1の試料は、第1の時点、好ましくは手術から1日またはそれ以上後で、術後に患者から単離され、第2の試料は、後続する第2の時点で、術後に患者から単離され、第1の時点と第2の時点との間で、少なくとも12時間、24時間、36時間、48時間、またはそれ以上が経過していることが好ましく、少なくとも1つのバイオマーカーのレベルを決定することは、proADMまたはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、0.01nmol/L~0.4nmol/Lの間の値の範囲から選択される閾値±20%以上を超えるproADMまたはその断片(複数可)のレベルの増加は、感染症の可能性が高いことを示す。この範囲内のいずれの値も、第1の時点と第2の時点との間のproADMまたは断片(複数可)の増加について適切な閾値とみなされ得る。例えば、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.2、0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28、0.29、0.3、0.31、0.32、0.33、0.34、0.35、0.36、0.37、0.38、0.39、0.4nmol/L。
【0109】
ADM/血液感染症:
一実施形態では、少なくとも1つの追加のバイオマーカーのレベルを決定することは、proADMまたはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、閾値を超えるproADMまたはその断片(複数可)のレベルは、血液感染症の可能性が高いことを示す。
【0110】
一実施形態では、試料は術前に単離され、少なくとも1つのバイオマーカーのレベルを決定することは、proADMまたはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、0.7nmol/L~0.9nmol/Lの間の値の範囲から選択される閾値±20%以上を超えるproADMまたはその断片(複数可)のレベルは、血液感染症の可能性が高いことを示す。この範囲内のいずれの値も、適切な閾値とみなされ得る。例えば、0.70、0.71、0.72、0.73、0.74、0.75、0.76、0.77、0.78、0.79、0.8、0.81、0.82、0.83、0.84、0.84、0.85、0.86、0.87、0.88.0.89、0.9nmol/L。
【0111】
一実施形態では、試料は、術後12時間以内、好ましくは6時間以内に単離され、少なくとも1つのバイオマーカーのレベルを決定することは、proADMまたはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、1.0nmol/L~1.3nmol/Lの間の値の範囲から選択される閾値±20%以上を超えるproADMまたはその断片(複数可)のレベルは、血液感染症の可能性が高いことを示す。この範囲内のいずれの値も、適切な閾値とみなされ得る。例えば、1.0、1.01、1.02、1.03、1.04、1.05、1.06、1.07、1.08、1.09、1.1、1.11、1.12、1.13、1.14、1.15、1.16、1.17、1.18、1.19、1.2、1.21、1.22、1.23、1.24、1.25、1.26、1.27、1.28、1.29、1.3nmol/L。
【0112】
一実施形態では、試料は、手術から1日で、術後に単離され、少なくとも1つのバイオマーカーのレベルを決定することは、proADMまたはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、1.2nmol/L~1.8nmol/Lの間の値の範囲から選択される閾値±20%以上を超えるproADMまたはその断片(複数可)のレベルは、血液感染症の可能性が高いことを示す。この範囲内のいずれの値も、適切な閾値とみなされ得る。例えば、1.2、1.21、1.22、1.23、1.24、1.25、1.26、1.27、1.28、1.29、1.3、1.31、1.32、1.33、1.34、1.35、1.36、1.37、1.38、1.39、1.4、1.41、1.42、1.43、1.44、1.45、1.46、1.47、1.48、1.49、1.5、1.51、1.52、1.53、1.54、1.55、1.56、1.57、1.58、1.59、1.6、1.61、1.62、1.63、1.64、1.65、1.66、1.67、1.68、1.69、1.7、1.71、1.72、1.73、1.74、1.75、1.76、1.77、1.78、1.79、1.8nmol/L。
【0113】
一実施形態では、試料は、手術から2日で、術後に単離され、少なくとも1つのバイオマーカーのレベルを決定することは、proADMまたはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、1.2nmol/L~1.8nmol/Lの間の値の範囲から選択される閾値±20%以上を超えるproADMまたはその断片(複数可)のレベルは、血液感染症の可能性が高いことを示す。この範囲内のいずれの値も、適切な閾値とみなされ得る。例えば、1.2、1.21、1.22、1.23、1.24、1.25、1.26、1.27、1.28、1.29、1.3、1.31、1.32、1.33、1.34、1.35、1.36、1.37、1.38、1.39、1.4、1.41、1.42、1.43、1.44、1.45、1.46、1.47、1.48、1.49、1.5、1.51、1.52、1.53、1.54、1.55、1.56、1.57、1.58、1.59、1.6、1.61、1.62、1.63、1.64、1.65、1.66、1.67、1.68、1.69、1.7、1.71、1.72、1.73、1.74、1.75、1.76、1.77、1.78、1.79、1.8nmol/L。
【0114】
一実施形態では、試料は、手術から3日で、術後に単離され、少なくとも1つのバイオマーカーのレベルを決定することは、proADMまたはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、1.2nmol/L~1.8nmol/Lの間の値の範囲から選択される閾値±20%以上を超えるproADMまたはその断片(複数可)のレベルは、血液感染症の可能性が高いことを示す。この範囲内のいずれの値も、適切な閾値とみなされ得る。例えば、1.2、1.21、1.22、1.23、1.24、1.25、1.26、1.27、1.28、1.29、1.3、1.31、1.32、1.33、1.34、1.35、1.36、1.37、1.38、1.39、1.4、1.41、1.42、1.43、1.44、1.45、1.46、1.47、1.48、1.49、1.5、1.51、1.52、1.53、1.54、1.55、1.56、1.57、1.58、1.59、1.6、1.61、1.62、1.63、1.64、1.65、1.66、1.67、1.68、1.69、1.7、1.71、1.72、1.73、1.74、1.75、1.76、1.77、1.78、1.79、1.8nmol/L。
【0115】
一実施形態では、試料は術後に単離され、少なくとも1つのバイオマーカーのレベルを決定することは、proADMまたはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、1.1nmol/L~1.5nmol/Lの間の値の範囲から選択される閾値±20%以上を超えるproADMまたはその断片(複数可)のレベルは、血液感染症の可能性が高いことを示す。この範囲内のいずれの値も、適切な閾値とみなされ得る。例えば、1.1、1.11、1.12、1.13、1.14、1.15、1.16、1.17、1.18、1.19、1.2、1.21、1.22、1.23、1.24、1.25、1.26、1.27、1.28、1.29、1.3、1.31、1.32、1.33、1.34、1.35、1.36、1.37、1.38、1.39、1.4、1.41、1.42、1.43、1.44、1.45、1.46、1.47、1.48、1.49、1.5nmol/L。
【0116】
一実施形態では、試料は、手術から1日、2日、3日、またはそれ以上後で、術後に単離され、少なくとも1つのバイオマーカーのレベルを決定することは、proADMまたはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、1.3nmol/L~1.8nmol/Lの間の値の範囲から選択される閾値±20%以上を超えるproADMまたはその断片(複数可)のレベルは、血液感染症の可能性が高いことを示す。この範囲内のいずれの値も、適切な閾値とみなされ得る。例えば、1.3、1.31、1.32、1.33、1.34、1.35、1.36、1.37、1.38、1.39、1.4、1.41、1.42、1.43、1.44、1.45、1.46、1.47、1.48、1.49、1.5、1.5、1.51、1.52、1.53、1.54、1.55、1.56、1.57、1.58、1.59、1.6、1.61、1.62、1.63、1.64、1.65、1.66、1.67、1.68、1.69、1.7、1.71、1.72、1.73、1.74、1.75、1.76、1.77、1.78、1.79、1.8nmol/L。
【0117】
一実施形態では、第1の試料は、第1の時点、好ましくは手術から1日またはそれ以上後で、術後に患者から単離され、第2の試料は、後続する第2の時点で、術後に患者から単離され、第1の時点と第2の時点との間で、少なくとも12時間、24時間、36時間、48時間、またはそれ以上が経過していることが好ましく、少なくとも1つのバイオマーカーのレベルを決定することは、proADMまたはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、proADMまたはその断片(複数可)のレベルの増加または水平化は、血液感染症の可能性が高いことを示す。
【0118】
一実施形態では、第1の試料は、第1の時点、好ましくは手術から1日またはそれ以上後で、術後に患者から単離され、第2の試料は、後続する第2の時点で、術後に患者から単離され、第1の時点と第2の時点との間で、少なくとも12時間、24時間、36時間、48時間、またはそれ以上が経過していることが好ましく、少なくとも1つのバイオマーカーのレベルを決定することは、proADMまたはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、0.01nmol/L~0.4nmol/Lの間の値の範囲から選択される閾値±20%以上を超えるproADMまたはその断片(複数可)のレベルの増加は、血液感染症の可能性が高いことを示す。この範囲内のいずれの値も、第1の時点と第2の時点との間のproADMまたは断片(複数可)の増加について適切な閾値とみなされ得る。例えば、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.2、0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28、0.29、0.3、0.31、0.32、0.33、0.34、0.35、0.36、0.37、0.38、0.39、0.4nmol/L。
【0119】
PCT/いずれかの感染症:
一実施形態では、少なくとも1つの追加のバイオマーカーのレベルを決定することは、PCTまたはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、閾値を超えるPCTまたはその断片(複数可)のレベルは、感染症の可能性が高いことを示す。
【0120】
一実施形態では、試料は、術後12時間以内、好ましくは6時間以内に単離され、少なくとも1つのバイオマーカーのレベルを決定することは、PCTまたはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、0.2μg/L~0.3μg/Lの間の値の範囲から選択される閾値±20%以上を超えるPCTまたはその断片(複数可)のレベルは、感染症の可能性が高いことを示す。この範囲内のいずれの値も、適切な閾値とみなされ得る。例えば、0.1、0.2、0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28、0.29、0.3μg/L。
【0121】
一実施形態では、試料は、手術から1日で、術後に単離され、少なくとも1つのバイオマーカーのレベルを決定することは、PCTまたはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、0.6μg/L~0.9μg/Lの間の値の範囲から選択される閾値±20%以上を超えるPCTまたはその断片(複数可)のレベルは、感染症の可能性が高いことを示す。この範囲内のいずれの値も、適切な閾値とみなされ得る。例えば、0.6、0.61、0.62、0.63、0.64、0.65、0.66、0.67、0.68、0.69、0.7、0.71、0.72、0.73、0.74、0.75、0.76、0.77、0.78、0.79、0.8、0.81、0.82、0.83、0.84、0.85、0.86、0.87、0.88、0.89、0.9μg/L。
【0122】
一実施形態では、試料は、手術から2日で、術後に単離され、少なくとも1つのバイオマーカーのレベルを決定することは、PCTまたはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、0.7μg/L~1.3μg/Lの間の値の範囲から選択される閾値±20%以上を超えるPCTまたはその断片(複数可)のレベルは、感染症の可能性が高いことを示す。この範囲内のいずれの値も、適切な閾値とみなされ得る。例えば、0.7、0.71、0.72、0.73、0.74、0.75、0.76、0.77、0.78、0.79、0.8、0.81、0.82、0.83、0.84、0.85、0.86、0.87、0.88、0.89、0.9、0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、0.97、0.98、0.99、1、1.01、1.02、1.03、1.04、1.05、1.06、1.07、1.08、1.09、1.1、1.11、1.12、1.13、1.14、1.15、1.16、1.17、1.18、1.19、1.2、1.21、1.22、1.23、1.24、1.25、1.26、1.27、1.28、1.29、1.3μg/L。
【0123】
一実施形態では、試料は、手術から3日で、術後に単離され、少なくとも1つのバイオマーカーのレベルを決定することは、PCTまたはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、0.6μg/L~1.3μg/Lの間の値の範囲から選択される閾値±20%以上を超えるPCTまたはその断片(複数可)のレベルは、感染症の可能性が高いことを示す。この範囲内のいずれの値も、適切な閾値とみなされ得る。例えば、0.6、0.61、0.62、0.63、0.64、0.65、0.66、0.67、0.68、0.69、0.7、0.71、0.72、0.73、0.74、0.75、0.76、0.77、0.78、0.79、0.8、0.81、0.82、0.83、0.84、0.85、0.86、0.87、0.88、0.89、0.9、0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、0.97、0.98、0.99、1、1.01、1.02、1.03、1.04、1.05、1.06、1.07、1.08、1.09、1.1、1.11、1.12、1.13、1.14、1.15、1.16、1.17、1.18、1.19、1.2、1.21、1.22、1.23、1.24、1.25、1.26、1.27、1.28、1.29、1.3μg/L。
【0124】
一実施形態では、試料は、手術から1日またはそれ以上後で、術後に単離され、少なくとも1つのバイオマーカーのレベルを決定することは、PCTまたはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、0.6μg/L~1.1μg/Lの間の値の範囲から選択される閾値±20%以上を超えるPCTまたはその断片(複数可)のレベルは、感染症の可能性が高いことを示す。この範囲内のいずれの値も、適切な閾値とみなされ得る。例えば、0.6、0.61、0.62、0.63、0.64、0.65、0.66、0.67、0.68、0.69、0.7、0.71、0.72、0.73、0.74、0.75、0.76、0.77、0.78、0.79、0.8、0.81、0.82、0.83、0.84、0.85、0.86、0.87、0.88、0.89、0.9、0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、0.97、0.98、0.99、1、1.01、1.02、1.03、1.04、1.05、1.06、1.07、1.08、1.09、1.1μg/L。
【0125】
一実施形態では、試料は、手術から2日、3日、またはそれ以上後で、術後に単離され、少なくとも1つのバイオマーカーのレベルを決定することは、PCTまたはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、0.7μg/L~1.3μg/Lの間の値の範囲から選択される閾値±20%以上を超えるPCTまたはその断片(複数可)のレベルは、感染症の可能性が高いことを示す。この範囲内のいずれの値も、適切な閾値とみなされ得る。例えば、0.7、0.71、0.72、0.73、0.74、0.75、0.76、0.77、0.78、0.79、0.8、0.81、0.82、0.83、0.84、0.85、0.86、0.87、0.88、0.89、0.9、0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、0.97、0.98、0.99、1、1.01、1.02、1.03、1.04、1.05、1.06、1.07、1.08、1.09、1.1、1.11、1.12、1.13、1.14、1.15、1.16、1.17、1.18、1.19、1.2、1.21、1.22、1.23、1.24、1.25、1.26、1.27、1.28、1.29、1.3μg/L。
【0126】
一実施形態では、第1の試料は、第1の時点、好ましくは手術から1日またはそれ以上後で、術後に患者から単離され、第2の試料は、後続する第2の時点で、術後に患者から単離され、第1の時点と第2の時点との間で、少なくとも12時間、24時間、36時間、48時間、またはそれ以上が経過していることが好ましく、少なくとも1つのバイオマーカーのレベルを決定することは、PCTまたはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、PCTまたはその断片(複数可)のレベルの増加は、感染症の可能性が高いことを示す。
【0127】
一実施形態では、第1の試料は、第1の時点、好ましくは手術から1日またはそれ以上後で、術後に患者から単離され、第2の試料は、後続する第2の時点で、術後に患者から単離され、第1の時点と第2の時点との間で、少なくとも12時間、24時間、36時間、48時間、またはそれ以上が経過していることが好ましく、少なくとも1つのバイオマーカーのレベルを決定することは、PCTまたはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、0.1μg/L~0.6μg/Lの間の値の範囲から選択される閾値±20%以上を超えるPCTまたはその断片(複数可)のレベルの増加は、感染症の可能性が高いことを示す。この範囲内のいずれの値も、第1の時点と第2の時点との間のPCTまたは断片(複数可)の増加について適切な閾値とみなされ得る。例えば、0.1、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.2、0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28、0.29、0.3、0.31、0.32、0.33、0.34、0.35、0.36、0.37、0.38、0.39、0.4、0.41、0.42、0.43、0.44、0.45、0.46、0.47、0.48、0.49、0.5、0.51、0.52、0.53、0.54、0.55、0.56、0.57、0.58、0.59、0.6μg/L。
【0128】
PCT/血液感染症:
一実施形態では、少なくとも1つの追加のバイオマーカーのレベルを決定することは、PCTまたはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、閾値を超えるPCTまたはその断片(複数可)のレベルは、血液感染症の可能性が高いことを示す。
【0129】
一実施形態では、試料は、術後12時間以内、好ましくは6時間以内に単離され、少なくとも1つのバイオマーカーのレベルを決定することは、PCTまたはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、0.1μg/L~0.3μg/Lの間の値の範囲から選択される閾値±20%以上を超えるPCTまたはその断片(複数可)のレベルは、血液感染症の可能性が高いことを示す。この範囲内のいずれの値も、適切な閾値とみなされ得る。例えば、0.1、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.2、0.2、0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28、0.29、0.3μg/L。
【0130】
一実施形態では、試料は、手術から1日で、術後に単離され、少なくとも1つのバイオマーカーのレベルを決定することは、PCTまたはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、0.6μg/L~1.8μg/Lの間の値の範囲から選択される閾値±20%以上を超えるPCTまたはその断片(複数可)のレベルは、血液感染症の可能性が高いことを示す。この範囲内のいずれの値も、適切な閾値とみなされ得る。例えば、0.6、0.61、0.62、0.63、0.64、0.65、0.66、0.67、0.68、0.69、0.7、0.71、0.72、0.73、0.74、0.75、0.76、0.77、0.78、0.79、0.8、0.81、0.82、0.83、0.84、0.85、0.86、0.87、0.88、0.89、0.9、0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、0.97、0.98、0.99、1、1.01、1.02、1.03、1.04、1.05、1.06、1.07、1.08、1.09、1.1、1.11、1.12、1.13、1.14、1.15、1.16、1.17、1.18、1.19、1.2、1.21、1.22、1.23、1.24、1.25、1.26、1.27、1.28、1.29、1.3、1.31、1.32、1.33、1.34、1.35、1.36、1.37、1.38、1.39、1.4、1.41、1.42、1.43、1.44、1.45、1.46、1.47、1.48、1.49、1.5、1.5、1.51、1.52、1.53、1.54、1.55、1.56、1.57、1.58、1.59、1.6、1.61、1.62、1.63、1.64、1.65、1.66、1.67、1.68、1.69、1.7、1.71、1.72、1.73、1.74、1.75、1.76、1.77、1.78、1.79、1.8μg/L。
【0131】
一実施形態では、試料は、手術から2日で、術後に単離され、少なくとも1つのバイオマーカーのレベルを決定することは、PCTまたはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、0.7μg/L~2.3μg/Lの間の値の範囲から選択される閾値±20%以上を超えるPCTまたはその断片(複数可)のレベルは、血液感染症の可能性が高いことを示す。この範囲内のいずれの値も、適切な閾値とみなされ得る。例えば、0.7、0.71、0.72、0.73、0.74、0.75、0.76、0.77、0.78、0.79、0.8、0.81、0.82、0.83、0.84、0.85、0.86、0.87、0.88、0.89、0.9、0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、0.97、0.98、0.99、1、1.01、1.02、1.03、1.04、1.05、1.06、1.07、1.08、1.09、1.1、1.11、1.12、1.13、1.14、1.15、1.16、1.17、1.18、1.19、1.2、1.21、1.22、1.23、1.24、1.25、1.26、1.27、1.28、1.29、1.3、1.31、1.32、1.33、1.34、1.35、1.36、1.37、1.38、1.39、1.4、1.41、1.42、1.43、1.44、1.45、1.46、1.47、1.48、1.49、1.5、1.5、1.51、1.52、1.53、1.54、1.55、1.56、1.57、1.58、1.59、1.6、1.61、1.62、1.63、1.64、1.65、1.66、1.67、1.68、1.69、1.7、1.71、1.72、1.73、1.74、1.75、1.76、1.77、1.78、1.79、1.8、1.81、1.82、1.83、1.84、1.85、1.86、1.87、1.88、1.89、1.9、1.91、1.92、1.93、1.94、1.95、1.96、1.97、1.98、1.99、2、2.01、2.02、2.03、2.04、2.05、2.06、2.07、2.08、2.09、2.1、2.11、2.12、2.13、2.14、2.15、2.16、2.17、2.18、2.19、2.2、2.21、2.22、2.23、2.24、2.25、2.26、2.27、2.28、2.29、2.3μg/L。
【0132】
一実施形態では、試料は、手術から3日で、術後に単離され、少なくとも1つのバイオマーカーのレベルを決定することは、PCTまたはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、0.7μg/L~2.3μg/Lの間の値の範囲から選択される閾値±20%以上を超えるPCTまたはその断片(複数可)のレベルは、血液感染症の可能性が高いことを示す。この範囲内のいずれの値も、適切な閾値とみなされ得る。例えば、0.7、0.71、0.72、0.73、0.74、0.75、0.76、0.77、0.78、0.79、0.8、0.81、0.82、0.83、0.84、0.85、0.86、0.87、0.88、0.89、0.9、0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、0.97、0.98、0.99、1、1.01、1.02、1.03、1.04、1.05、1.06、1.07、1.08、1.09、1.1、1.11、1.12、1.13、1.14、1.15、1.16、1.17、1.18、1.19、1.2、1.21、1.22、1.23、1.24、1.25、1.26、1.27、1.28、1.29、1.3、1.31、1.32、1.33、1.34、1.35、1.36、1.37、1.38、1.39、1.4、1.41、1.42、1.43、1.44、1.45、1.46、1.47、1.48、1.49、1.5、1.5、1.51、1.52、1.53、1.54、1.55、1.56、1.57、1.58、1.59、1.6、1.61、1.62、1.63、1.64、1.65、1.66、1.67、1.68、1.69、1.7、1.71、1.72、1.73、1.74、1.75、1.76、1.77、1.78、1.79、1.8、1.8、1.81、1.82、1.83、1.84、1.85、1.86、1.87、1.88、1.89、1.9、1.91、1.92、1.93、1.94、1.95、1.96、1.97、1.98、1.99、2、2.01、2.02、2.03、2.04、2.05、2.06、2.07、2.08、2.09、2.1、2.11、2.12、2.13、2.14、2.15、2.16、2.17、2.18、2.19、2.2、2.21、2.22、2.23、2.24、2.25、2.26、2.27、2.28、2.29、2.3μg/L。
【0133】
一実施形態では、試料は、手術から1日またはそれ以上後で、術後に単離され、少なくとも1つのバイオマーカーのレベルを決定することは、PCTまたはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、0.7μg/L~1.8μg/Lの間の値の範囲から選択される閾値±20%以上を超えるPCTまたはその断片(複数可)のレベルは、血液感染症の可能性が高いことを示す。この範囲内のいずれの値も、適切な閾値とみなされ得る。例えば、0.6、0.61、0.62、0.63、0.64、0.65、0.66、0.67、0.68、0.69、0.7、0.71、0.72、0.73、0.74、0.75、0.76、0.77、0.78、0.79、0.8、0.81、0.82、0.83、0.84、0.85、0.86、0.87、0.88、0.89、0.9、0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、0.97、0.98、0.99、1、1.01、1.02、1.03、1.04、1.05、1.06、1.07、1.08、1.09、1.1、1.11、1.12、1.13、1.14、1.15、1.16、1.17、1.18、1.19、1.2、1.21、1.22、1.23、1.24、1.25、1.26、1.27、1.28、1.29、1.3、1.31、1.32、1.33、1.34、1.35、1.36、1.37、1.38、1.39、1.4、1.41、1.42、1.43、1.44、1.45、1.46、1.47、1.48、1.49、1.5、1.5、1.51、1.52、1.53、1.54、1.55、1.56、1.57、1.58、1.59、1.6、1.61、1.62、1.63、1.64、1.65、1.66、1.67、1.68、1.69、1.7、1.71、1.72、1.73、1.74、1.75、1.76、1.77、1.78、1.79、1.8μg/L。
【0134】
一実施形態では、試料は、手術から2日、3日、またはそれ以上後で、術後に単離され、少なくとも1つのバイオマーカーのレベルを決定することは、PCTまたはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、1μg/L~2.3μg/Lの間の値の範囲から選択される閾値±20%以上を超えるPCTまたはその断片(複数可)のレベルは、血液感染症の可能性が高いことを示す。この範囲内のいずれの値も、適切な閾値とみなされ得る。例えば、1、1.01、1.02、1.03、1.04、1.05、1.06、1.07、1.08、1.09、1.1、1.11、1.12、1.13、1.14、1.15、1.16、1.17、1.18、1.19、1.2、1.21、1.22、1.23、1.24、1.25、1.26、1.27、1.28、1.29、1.3、1.31、1.32、1.33、1.34、1.35、1.36、1.37、1.38、1.39、1.4、1.41、1.42、1.43、1.44、1.45、1.46、1.47、1.48、1.49、1.5、1.5、1.51、1.52、1.53、1.54、1.55、1.56、1.57、1.58、1.59、1.6、1.61、1.62、1.63、1.64、1.65、1.66、1.67、1.68、1.69、1.7、1.71、1.72、1.73、1.74、1.75、1.76、1.77、1.78、1.79、1.8、1.81、1.82、1.83、1.84、1.85、1.86、1.87、1.88、1.89、1.9、1.91、1.92、1.93、1.94、1.95、1.96、1.97、1.98、1.99、2、2.01、2.02、2.03、2.04、2.05、2.06、2.07、2.08、2.09、2.1、2.11、2.12、2.13、2.14、2.15、2.16、2.17、2.18、2.19、2.2、2.21、2.22、2.23、2.24、2.25、2.26、2.27、2.28、2.29、2.3μg/L。
【0135】
一実施形態では、第1の試料は、第1の時点、好ましくは手術から1日またはそれ以上後で、術後に患者から単離され、第2の試料は、後続する第2の時点で、術後に患者から単離され、第1の時点と第2の時点との間で、少なくとも12時間、24時間、36時間、48時間、またはそれ以上が経過していることが好ましく、少なくとも1つのバイオマーカーのレベルを決定することは、PCTまたはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、PCTまたはその断片(複数可)のレベルの増加は、血液感染症の可能性が高いことを示す。
【0136】
一実施形態では、第1の試料は、第1の時点、好ましくは手術から1日またはそれ以上後で、術後に患者から単離され、第2の試料は、後続する第2の時点で、術後に患者から単離され、第1の時点と第2の時点との間で、少なくとも12時間、24時間、36時間、48時間、またはそれ以上が経過していることが好ましく、少なくとも1つのバイオマーカーのレベルを決定することは、PCTまたはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、0.1μg/L~1μg/Lの間の値の範囲から選択される閾値±20%以上を超えるPCTまたはその断片(複数可)のレベルの増加は、血液感染症の可能性が高いことを示す。この範囲内のいずれの値も、第1の時点と第2の時点との間のPCTまたは断片(複数可)の増加について適切な閾値とみなされ得る。例えば、0.1、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.2、0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28、0.29、0.3、0.31、0.32、0.33、0.34、0.35、0.36、0.37、0.38、0.39、0.4、0.41、0.42、0.43、0.44、0.45、0.46、0.47、0.48、0.49、0.5、0.51、0.52、0.53、0.54、0.55、0.56、0.57、0.58、0.59、0.6、0.61、0.62、0.63、0.64、0.65、0.66、0.67、0.68、0.69、0.7、0.71、0.72、0.73、0.74、0.75、0.76、0.77、0.78、0.79、0.8、0.81、0.82、0.83、0.84、0.85、0.86、0.87、0.88、0.89、0.9、0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、0.97、0.98、0.99、1μg/L。
【0137】
proET-1/いずれかの感染症:
一実施形態では、少なくとも1つの追加のバイオマーカーのレベルを決定することは、proET-1またはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、閾値を超えるproET-1またはその断片(複数可)のレベルは、感染症の可能性が高いことを示す。
【0138】
一実施形態では、試料は、手術から2日で、術後に単離され、少なくとも1つのバイオマーカーのレベルを決定することは、proET-1またはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、85pmol/L~95pmol/Lの間の値の範囲から選択される閾値±20%以上を超えるproET-1またはその断片(複数可)のレベルは、感染症の可能性が高いことを示す。この範囲内のいずれの値も、適切な閾値とみなされ得る。例えば、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95pmol/L。
【0139】
一実施形態では、試料は、手術から3日で、術後に単離され、少なくとも1つのバイオマーカーのレベルを決定することは、proET-1またはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、80pmol/L~95pmol/Lの間の値の範囲から選択される閾値±20%以上を超えるproET-1またはその断片(複数可)のレベルは、感染症の可能性が高いことを示す。この範囲内のいずれの値も、適切な閾値とみなされ得る。例えば、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95pmol/L。
【0140】
一実施形態では、試料は、手術から2日、3日、またはそれ以上後で、術後に単離され、少なくとも1つのバイオマーカーのレベルを決定することは、proET-1またはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、80pmol/L~95pmol/Lの間の値の範囲から選択される閾値±20%以上を超えるproET-1またはその断片(複数可)のレベルは、感染症の可能性が高いことを示す。この範囲内のいずれの値も、適切な閾値とみなされ得る。例えば、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95pmol/L。
【0141】
proET-1/血液感染症:
一実施形態では、少なくとも1つの追加のバイオマーカーのレベルを決定することは、proET-1またはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、閾値を超えるproET-1またはその断片(複数可)のレベルは、血液感染症の可能性が高いことを示す。
【0142】
一実施形態では、試料は、手術から2日で、術後に単離され、少なくとも1つのバイオマーカーのレベルを決定することは、proET-1またはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、85pmol/L~105pmol/Lの間の値の範囲から選択される閾値±20%以上を超えるproET-1またはその断片(複数可)のレベルは、血液感染症の可能性が高いことを示す。この範囲内のいずれの値も、適切な閾値とみなされ得る。例えば、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105pmol/L。
【0143】
一実施形態では、試料は、手術から3日で、術後に単離され、少なくとも1つのバイオマーカーのレベルを決定することは、proET-1またはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、80pmol/L~110pmol/Lの間の値の範囲から選択される閾値±20%以上を超えるproET-1またはその断片(複数可)のレベルは、血液感染症の可能性が高いことを示す。この範囲内のいずれの値も、適切な閾値とみなされ得る。例えば、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110pmol/L。
【0144】
一実施形態では、試料は、手術から2日、3日、またはそれ以上後で、術後に単離され、少なくとも1つのバイオマーカーのレベルを決定することは、proET-1またはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、80pmol/L~110pmol/Lの間の値の範囲から選択される閾値±20%以上を超えるproET-1またはその断片(複数可)のレベルは、血液感染症の可能性が高いことを示す。この範囲内のいずれの値も、適切な閾値とみなされ得る。例えば、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110pmol/L。
【0145】
ADM/感染症およびMACCE/MINS:
一実施形態では、少なくとも1つの追加のバイオマーカーのレベルを決定することは、proADMまたはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、閾値を超えるproADMまたはその断片(複数可)のレベルは、感染症、好ましくは血液感染症、ならびに心血管または脳血管有害事象、好ましくはMACCEおよび/またはMINSの可能性が高いことを示す。
【0146】
一実施形態では、試料は術前に単離され、少なくとも1つのバイオマーカーのレベルを決定することは、proADMまたはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、0.7nmol/L~0.9nmol/Lの間の値の範囲から選択される閾値±20%以上を超えるproADMまたはその断片(複数可)のレベルは、感染症、好ましくは血液感染症、ならびに心血管または脳血管有害事象、好ましくはMACCEおよび/またはMINSの可能性が高いことを示す。この範囲内のいずれの値も、適切な閾値とみなされ得る。例えば、0.70、0.71、0.72、0.73、0.74、0.75、0.76、0.77、0.78、0.79、0.8、0.81、0.82、0.83、0.84、0.85、0.86、0.87、0.88、0.89、0.9nmol/L。
【0147】
一実施形態では、試料は、術後12時間以内、好ましくは6時間以内に単離され、少なくとも1つのバイオマーカーのレベルを決定することは、proADMまたはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、1.0nmol/L~1.6nmol/Lの間の値の範囲から選択される閾値±20%以上を超えるproADMまたはその断片(複数可)のレベルは、感染症、好ましくは血液感染症、ならびに心血管または脳血管有害事象、好ましくはMACCEおよび/またはMINSの可能性が高いことを示す。この範囲内のいずれの値も、適切な閾値とみなされ得る。例えば、1、1.01、1.02、1.03、1.04、1.05、1.06、1.07、1.08、1.09、1.1、1.11、1.12、1.13、1.14、1.15、1.16、1.17、1.18、1.19、1.2、1.21、1.22、1.23、1.24、1.25、1.26、1.27、1.28、1.29、1.3、1.31、1.32、1.33、1.34、1.35、1.36、1.37、1.38、1.39、1.4、1.41、1.42、1.43、1.44、1.45、1.46、1.47、1.48、1.49、1.5、1.51、1.52、1.53、1.54、1.55、1.56、1.57、1.58、1.59、1.6nmol/L。
【0148】
一実施形態では、試料は、手術から1日で、術後に単離され、少なくとも1つのバイオマーカーのレベルを決定することは、proADMまたはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、1.3nmol/L~2.2nmol/Lの間の値の範囲から選択される閾値±20%以上を超えるproADMまたはその断片(複数可)のレベルは、感染症、好ましくは血液感染症、ならびに心血管または脳血管有害事象、好ましくはMACCEおよび/またはMINSの可能性が高いことを示す。この範囲内のいずれの値も、適切な閾値とみなされ得る。例えば、1.3、1.31、1.32、1.33、1.34、1.35、1.36、1.37、1.38、1.39、1.4、1.41、1.42、1.43、1.44、1.45、1.46、1.47、1.48、1.49、1.5、1.51、1.52、1.53、1.54、1.55、1.56、1.57、1.58、1.59、1.6、1.61、1.62、1.63、1.64、1.65、1.66、1.67、1.68、1.69、1.7、1.71、1.72、1.73、1.74、1.75、1.76、1.77、1.78、1.79、1.8、1.81、1.82、1.83、1.84、1.85、1.86、1.87、1.88、1.89、1.9、1.91、1.92、1.93、1.94、1.95、1.96、1.97、1.98、1.99、2、2.01、2.02、2.03、2.04、2.05、2.06、2.07、2.08、2.09、2.1、2.11、2.12、2.13、2.14、2.15、2.16、2.17、2.18、2.19、2.2nmol/L。
【0149】
一実施形態では、試料は、手術から2日で、術後に単離され、少なくとも1つのバイオマーカーのレベルを決定することは、proADMまたはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、1.3nmol/L~2.3nmol/Lの間の値の範囲から選択される閾値±20%以上を超えるproADMまたはその断片(複数可)のレベルは、感染症、好ましくは血液感染症、ならびに心血管または脳血管有害事象、好ましくはMACCEおよび/またはMINSの可能性が高いことを示す。この範囲内のいずれの値も、適切な閾値とみなされ得る。例えば、1.3、1.31、1.32、1.33、1.34、1.35、1.36、1.37、1.38、1.39、1.4、1.41、1.42、1.43、1.44、1.45、1.46、1.47、1.48、1.49、1.5、1.51、1.52、1.53、1.54、1.55、1.56、1.57、1.58、1.59、1.6、1.61、1.62、1.63、1.64、1.65、1.66、1.67、1.68、1.69、1.7、1.71、1.72、1.73、1.74、1.75、1.76、1.77、1.78、1.79、1.8、1.81、1.82、1.83、1.84、1.85、1.86、1.87、1.88、1.89、1.9、1.91、1.92、1.93、1.94、1.95、1.96、1.97、1.98、1.99、2、2.01、2.02、2.03、2.04、2.05、2.06、2.07、2.08、2.09、2.1、2.11、2.12、2.13、2.14、2.15、2.16、2.17、2.18、2.19、2.2、2.21、2.22、2.23、2.24、2.25、2.26、2.27、2.28、2.29、2.3nmol/L。
【0150】
一実施形態では、試料は、手術から3日で、術後に単離され、少なくとも1つのバイオマーカーのレベルを決定することは、proADMまたはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、1.3nmol/L~2.3nmol/Lの間の値の範囲から選択される閾値±20%以上を超えるproADMまたはその断片(複数可)のレベルは、感染症、好ましくは血液感染症、ならびに心血管または脳血管有害事象、好ましくはMACCEおよび/またはMINSの可能性が高いことを示す。この範囲内のいずれの値も、適切な閾値とみなされ得る。例えば、1.3、1.31、1.32、1.33、1.34、1.35、1.36、1.37、1.38、1.39、1.4、1.41、1.42、1.43、1.44、1.45、1.46、1.47、1.48、1.49、1.5、1.51、1.52、1.53、1.54、1.55、1.56、1.57、1.58、1.59、1.6、1.61、1.62、1.63、1.64、1.65、1.66、1.67、1.68、1.69、1.7、1.71、1.72、1.73、1.74、1.75、1.76、1.77、1.78、1.79、1.8、1.81、1.82、1.83、1.84、1.85、1.86、1.87、1.88、1.89、1.9、1.91、1.92、1.93、1.94、1.95、1.96、1.97、1.98、1.99、2、2.01、2.02、2.03、2.04、2.05、2.06、2.07、2.08、2.09、2.1、2.11、2.12、2.13、2.14、2.15、2.16、2.17、2.18、2.19、2.2、2.21、2.22、2.23、2.24、2.25、2.26、2.27、2.28、2.29、2.3nmol/L。
【0151】
一実施形態では、試料は術後に単離され、少なくとも1つのバイオマーカーのレベルを決定することは、proADMまたはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、1.3nmol/L~2nmol/Lの間の値の範囲から選択される閾値±20%以上を超えるproADMまたはその断片(複数可)のレベルは、感染症、好ましくは血液感染症、ならびに心血管または脳血管有害事象、好ましくはMACCEおよび/またはMINSの可能性が高いことを示す。この範囲内のいずれの値も、適切な閾値とみなされ得る。例えば、1.3、1.31、1.32、1.33、1.34、1.35、1.36、1.37、1.38、1.39、1.4、1.41、1.42、1.43、1.44、1.45、1.46、1.47、1.48、1.49、1.5、1.51、1.52、1.53、1.54、1.55、1.56、1.57、1.58、1.59、1.6、1.61、1.62、1.63、1.64、1.65、1.66、1.67、1.68、1.69、1.7、1.71、1.72、1.73、1.74、1.75、1.76、1.77、1.78、1.79、1.8、1.81、1.82、1.83、1.84、1.85、1.86、1.87、1.88、1.89、1.9、1.91、1.92、1.93、1.94、1.95、1.96、1.97、1.98、1.99、2nmol/L。
【0152】
一実施形態では、試料は、手術から3日で、術後に単離され、少なくとも1つのバイオマーカーのレベルを決定することは、proADMまたはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、1.3nmol/L~2.3nmol/Lの間の値の範囲から選択される閾値±20%以上を超えるproADMまたはその断片(複数可)のレベルは、感染症、好ましくは血液感染症、ならびに心血管または脳血管有害事象、好ましくはMACCEおよび/またはMINSの可能性が高いことを示す。この範囲内のいずれの値も、適切な閾値とみなされ得る。例えば、1.3、1.31、1.32、1.33、1.34、1.35、1.36、1.37、1.38、1.39、1.4、1.41、1.42、1.43、1.44、1.45、1.46、1.47、1.48、1.49、1.5、1.51、1.52、1.53、1.54、1.55、1.56、1.57、1.58、1.59、1.6、1.61、1.62、1.63、1.64、1.65、1.66、1.67、1.68、1.69、1.7、1.71、1.72、1.73、1.74、1.75、1.76、1.77、1.78、1.79、1.8、1.81、1.82、1.83、1.84、1.85、1.86、1.87、1.88、1.89、1.9、1.91、1.92、1.93、1.94、1.95、1.96、1.97、1.98、1.99、2、2.01、2.02、2.03、2.04、2.05、2.06、2.07、2.08、2.09、2.1、2.11、2.12、2.13、2.14、2.15、2.16、2.17、2.18、2.19、2.2、2.21、2.22、2.23、2.24、2.25、2.26、2.27、2.28、2.29、2.3nmol/L。
【0153】
一実施形態では、第1の試料は、第1の時点、好ましくは手術から1日またはそれ以上後で、術後に患者から単離され、第2の試料は、後続する第2の時点で、術後に患者から単離され、第1の時点と第2の時点との間で、少なくとも12時間、24時間、36時間、48時間、またはそれ以上が経過していることが好ましく、少なくとも1つのバイオマーカーのレベルを決定することは、proADMまたはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、proADMまたはその断片(複数可)のレベルの増加は、感染症、好ましくは血液感染症、ならびに心血管または脳血管有害事象、好ましくはMACCEおよび/またはMINSの可能性が高いことを示す。
【0154】
一実施形態では、第1の試料は、第1の時点、好ましくは手術から1日またはそれ以上後で、術後に患者から単離され、第2の試料は、後続する第2の時点で、術後に患者から単離され、第1の時点と第2の時点との間で、少なくとも12時間、24時間、36時間、48時間、またはそれ以上が経過していることが好ましく、少なくとも1つのバイオマーカーのレベルを決定することは、proADMまたはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、0.01nmol/L~1nmol/Lの間の値の範囲から選択される閾値±20%以上を超えるproADMまたはその断片(複数可)のレベルの増加は、感染症、好ましくは血液感染症、ならびに心血管または脳血管有害事象、好ましくはMACCEおよび/またはMINSの可能性が高いことを示す。この範囲内のいずれの値も、第1の時点と第2の時点との間のproADMまたは断片(複数可)の増加について適切な閾値とみなされ得る。例えば、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.2、0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28、0.29、0.3、0.31、0.32、0.33、0.34、0.35、0.36、0.37、0.38、0.39、0.4、0.41、0.42、0.43、0.44、0.45、0.46、0.47、0.48、0.49、0.5、0.51、0.52、0.53、0.54、0.55、0.56、0.57、0.58 0.59、0.6、0.61、0.62、0.63、0.64、0.65、0.66、0.67、0.68、0.69、0.7、0.71、0.72、0.73、0.74、0.75、0.76、0.77、0.78、0.79、0.8、0.81、0.82、0.83、0.84、0.85、0.86、0.87、0.88、0.89、0.9、0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、0.97、0.98、0.99、1nmol/L。
【0155】
PCT/感染症およびMACCE/MINS:
一実施形態では、少なくとも1つの追加のバイオマーカーのレベルを決定することは、PCTまたはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、閾値を超えるPCTまたはその断片(複数可)のレベルは、感染症、好ましくは血液感染症、ならびに心血管または脳血管有害事象、好ましくはMACCEおよび/またはMINSの可能性が高いことを示す。
【0156】
一実施形態では、試料は、術後12時間以内、好ましくは6時間以内に単離され、少なくとも1つのバイオマーカーのレベルを決定することは、PCTまたはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、0.1μg/L~0.4μg/Lの間の値の範囲から選択される閾値±20%以上を超えるPCTまたはその断片(複数可)のレベルは、感染症、好ましくは血液感染症、ならびに心血管または脳血管有害事象、好ましくはMACCEおよび/またはMINSの可能性が高いことを示す。この範囲内のいずれの値も、適切な閾値とみなされ得る。例えば、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.2、0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28、0.29、0.3、0.31、0.32、0.33、0.34、0.35、0.36、0.37、0.38、0.39、0.4μg/L。
【0157】
一実施形態では、試料は、手術から1日で、術後に単離され、少なくとも1つのバイオマーカーのレベルを決定することは、PCTまたはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、0.6μg/L~1.8μg/Lの間の値の範囲から選択される閾値±20%以上を超えるPCTまたはその断片(複数可)のレベルは、感染症、好ましくは血液感染症、ならびに心血管または脳血管有害事象、好ましくはMACCEおよび/またはMINSの可能性が高いことを示す。この範囲内のいずれの値も、適切な閾値とみなされ得る。例えば、0.6、0.61、0.62、0.63、0.64、0.65、0.66、0.67、0.68、0.69、0.7、0.71、0.72、0.73、0.74、0.75、0.76、0.77、0.78、0.79、0.8、0.81、0.82、0.83、0.84、0.85、0.86、0.87、0.88、0.89、0.9、0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、0.97、0.98、0.99、1、1.01、1.02、1.03、1.04、1.05、1.06、1.07、1.08、1.09、1.1、1.11、1.12、1.13、1.14、1.15、1.16、1.17、1.18、1.19、1.2、1.21、1.22、1.23、1.24、1.25、1.26、1.27、1.28、1.291.3、1.31、1.32、1.33、1.34、1.35、1.36、1.37、1.38、1.39、1.4、1.41、1.42、1.43、1.44、1.45、1.46、1.47、1.48、1.49、1.5、1.51、1.52、1.53、1.54、1.55、1.56、1.57、1.58、1.59、1.6、1.61、1.62、1.63、1.64、1.65、1.66、1.67、1.68、1.69、1.7、1.71、1.72、1.73、1.74、1.75、1.76、1.77、1.78、1.79、1.8μg/L。
【0158】
一実施形態では、試料は、手術から2日で、術後に単離され、少なくとも1つのバイオマーカーのレベルを決定することは、PCTまたはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、0.6μg/L~3μg/Lの間の値の範囲から選択される閾値±20%以上を超えるPCTまたはその断片(複数可)のレベルは、感染症、好ましくは血液感染症、ならびに心血管または脳血管有害事象、好ましくはMACCEおよび/またはMINSの可能性が高いことを示す。この範囲内のいずれの値も、適切な閾値とみなされ得る。例えば、0.6、0.61、0.62、0.63、0.64、0.65、0.66、0.67、0.68、0.69、0.7、0.71、0.72、0.73、0.74、0.75、0.76、0.77、0.78、0.79、0.8、0.81、0.82、0.83、0.84、0.85、0.86、0.87、0.88、0.89、0.9、0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、0.97、0.98、0.99、1、1.01、1.02、1.03、1.04、1.05、1.06、1.07、1.08、1.09、1.1、1.11、1.12、1.13、1.14、1.15、1.16、1.17、1.18、1.19、1.2、1.21、1.22、1.23、1.24、1.25、1.26、1.27、1.28、1.291.3、1.31、1.32、1.33、1.34、1.35、1.36、1.37、1.38、1.39、1.4、1.41、1.42、1.43、1.44、1.45、1.46、1.47、1.48、1.49、1.5、1.51、1.52、1.53、1.54、1.55、1.56、1.57、1.58、1.59、1.6、1.61、1.62、1.63、1.64、1.65、1.66、1.67、1.68、1.69、1.7、1.71、1.72、1.73、1.74、1.75、1.76、1.77、1.78、1.79、1.8、1.81、1.82、1.83、1.84、1.85、1.86、1.87、1.88、1.89、1.9、1.91、1.92、1.93、1.94、1.95、1.96、1.97、1.98、1.99、2、2.01、2.02、2.03、2.04、2.05、2.06、2.07、2.08、2.09、2.1、2.11、2.12、2.13、2.14、2.15、2.16、2.17、2.18、2.19、2.2、2.21、2.22、2.23、2.24、2.25、2.26、2.27、2.28、2.29、2.3、2.31、2.32、2.33、2.34、2.35、2.36、2.37、2.38、2.39、2.4、2.41、2.42、2.43、2.44、2.45、2.46、2.47、2.48、2.49、2.5、2.51、2.52、2.53、2.54、2.55、2.56、2.57、2.58、2.59、2.6、2.61、2.62、2.63、2.64、2.65、2.66、2.67、2.68、2.69、2.7、2.71、2.72、2.73、2.74、2.75、2.76、2.77、2.78、2.79、2.8、2.81、2.82、2.83、2.84、2.85、2.86、2.87、2.88、2.89、2.9、2.91、2.92、2.93、2.94、2.95、2.96、2.97、2.98、2.99、3μg/L。
【0159】
一実施形態では、試料は、手術から3日で、術後に単離され、少なくとも1つのバイオマーカーのレベルを決定することは、PCTまたはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、0.6μg/L~3μg/Lの間の値の範囲から選択される閾値±20%以上を超えるPCTまたはその断片(複数可)のレベルは、感染症、好ましくは血液感染症、ならびに心血管または脳血管有害事象、好ましくはMACCEおよび/またはMINSの可能性が高いことを示す。この範囲内のいずれの値も、適切な閾値とみなされ得る。例えば、0.6、0.61、0.62、0.63、0.64、0.65、0.66、0.67、0.68、0.69、0.7、0.71、0.72、0.73、0.74、0.75、0.76、0.77、0.78、0.79、0.8、0.81、0.82、0.83、0.84、0.85、0.86、0.87、0.88、0.89、0.9、0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、0.97、0.98、0.99、1、1.01、1.02、1.03、1.04、1.05、1.06、1.07、1.08、1.09、1.1、1.11、1.12、1.13、1.14、1.15、1.16、1.17、1.18、1.19、1.2、1.21、1.22、1.23、1.24、1.25、1.26、1.27、1.28、1.291.3、1.31、1.32、1.33、1.34、1.35、1.36、1.37、1.38、1.39、1.4、1.41、1.42、1.43、1.44、1.45、1.46、1.47、1.48、1.49、1.5、1.51、1.52、1.53、1.54、1.55、1.56、1.57、1.58、1.59、1.6、1.61、1.62、1.63、1.64、1.65、1.66、1.67、1.68、1.69、1.7、1.71、1.72、1.73、1.74、1.75、1.76、1.77、1.78、1.79、1.8、1.81、1.82、1.83、1.84、1.85、1.86、1.87、1.88、1.89、1.9、1.91、1.92、1.93、1.94、1.95、1.96、1.97、1.98、1.99、2、2.01、2.02、2.03、2.04、2.05、2.06、2.07、2.08、2.09、2.1、2.11、2.12、2.13、2.14、2.15、2.16、2.17、2.18、2.19、2.2、2.21、2.22、2.23、2.24、2.25、2.26、2.27、2.28、2.29、2.3、2.31、2.32、2.33、2.34、2.35、2.36、2.37、2.38、2.39、2.4、2.41、2.42、2.43、2.44、2.45、2.46、2.47、2.48、2.49、2.5、2.51、2.52、2.53、2.54、2.55、2.56、2.57、2.58、2.59、2.6、2.61、2.62、2.63、2.64、2.65、2.66、2.67、2.68、2.69、2.7、2.71、2.72、2.73、2.74、2.75、2.76、2.77、2.78、2.79、2.8、2.81、2.82、2.83、2.84、2.85、2.86、2.87、2.88、2.89、2.9、2.91、2.92、2.93、2.94、2.95、2.96、2.97、2.98、2.99、3μg/L。
【0160】
一実施形態では、試料は術後に単離され、少なくとも1つのバイオマーカーのレベルを決定することは、PCTまたはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、0.7μg/L~3μg/Lの間の値の範囲から選択される閾値±20%以上を超えるPCTまたはその断片(複数可)のレベルは、感染症、好ましくは血液感染症、ならびに心血管または脳血管有害事象、好ましくはMACCEおよび/またはMINSの可能性が高いことを示す。この範囲内のいずれの値も、適切な閾値とみなされ得る。例えば、0.7、0.71、0.72、0.73、0.74、0.75、0.76、0.77、0.78、0.79、0.8、0.81、0.82、0.83、0.84、0.85、0.86、0.87、0.88、0.89、0.9、0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、0.97、0.98、0.99、1、1.01、1.02、1.03、1.04、1.05、1.06、1.07、1.08、1.09、1.1、1.11、1.12、1.13、1.14、1.15、1.16、1.17、1.18、1.19、1.2、1.21、1.22、1.23、1.24、1.25、1.26、1.27、1.28、1.291.3、1.31、1.32、1.33、1.34、1.35、1.36、1.37、1.38、1.39、1.4、1.41、1.42、1.43、1.44、1.45、1.46、1.47、1.48、1.49、1.5、1.51、1.52、1.53、1.54、1.55、1.56、1.57、1.58、1.59、1.6、1.61、1.62、1.63、1.64、1.65、1.66、1.67、1.68、1.69、1.7、1.71、1.72、1.73、1.74、1.75、1.76、1.77、1.78、1.79、1.8、1.81、1.82、1.83、1.84、1.85、1.86、1.87、1.88、1.89、1.9、1.91、1.92、1.93、1.94、1.95、1.96、1.97、1.98、1.99、2、2.01、2.02、2.03、2.04、2.05、2.06、2.07、2.08、2.09、2.1、2.11、2.12、2.13、2.14、2.15、2.16、2.17、2.18、2.19、2.2、2.21、2.22、2.23、2.24、2.25、2.26、2.27、2.28、2.29、2.3、2.31、2.32、2.33、2.34、2.35、2.36、2.37、2.38、2.39、2.4、2.41、2.42、2.43、2.44、2.45、2.46、2.47、2.48、2.49、2.5、2.51、2.52、2.53、2.54、2.55、2.56、2.57、2.58、2.59、2.6、2.61、2.62、2.63、2.64、2.65、2.66、2.67、2.68、2.69、2.7、2.71、2.72、2.73、2.74、2.75、2.76、2.77、2.78、2.79、2.8、2.81、2.82、2.83、2.84、2.85、2.86、2.87、2.88、2.89、2.9、2.91、2.92、2.93、2.94、2.95、2.96、2.97、2.98、2.99、3μg/L。
【0161】
一実施形態では、試料は、手術から1日、2日、3日、またはそれ以上後で、術後に単離され、少なくとも1つのバイオマーカーのレベルを決定することは、PCTまたはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、1μg/L~3μg/Lの間の値の範囲から選択される閾値±20%以上を超えるPCTまたはその断片(複数可)のレベルは、感染症、好ましくは血液感染症、ならびに心血管または脳血管有害事象、好ましくはMACCEおよび/またはMINSの可能性が高いことを示す。この範囲内のいずれの値も、適切な閾値とみなされ得る。例えば、1、1.01、1.02、1.03、1.04、1.05、1.06、1.07、1.08、1.09、1.1、1.11、1.12、1.13、1.14、1.15、1.16、1.17、1.18、1.19、1.2、1.21、1.22、1.23、1.24、1.25、1.26、1.27、1.28、1.291.3、1.31、1.32、1.33、1.34、1.35、1.36、1.37、1.38、1.39、1.4、1.41、1.42、1.43、1.44、1.45、1.46、1.47、1.48、1.49、1.5、1.51、1.52、1.53、1.54、1.55、1.56、1.57、1.58、1.59、1.6、1.61、1.62、1.63、1.64、1.65、1.66、1.67、1.68、1.69、1.7、1.71、1.72、1.73、1.74、1.75、1.76、1.77、1.78、1.79、1.8、1.81、1.82、1.83、1.84、1.85、1.86、1.87、1.88、1.89、1.9、1.91、1.92、1.93、1.94、1.95、1.96、1.97、1.98、1.99、2、2.01、2.02、2.03、2.04、2.05、2.06、2.07、2.08、2.09、2.1、2.11、2.12、2.13、2.14、2.15、2.16、2.17、2.18、2.19、2.2、2.21、2.22、2.23、2.24、2.25、2.26、2.27、2.28、2.29、2.3、2.31、2.32、2.33、2.34、2.35、2.36、2.37、2.38、2.39、2.4、2.41、2.42、2.43、2.44、2.45、2.46、2.47、2.48、2.49、2.5、2.51、2.52、2.53、2.54、2.55、2.56、2.57、2.58、2.59、2.6、2.61、2.62、2.63、2.64、2.65、2.66、2.67、2.68、2.69、2.7、2.71、2.72、2.73、2.74、2.75、2.76、2.77、2.78、2.79、2.8、2.81、2.82、2.83、2.84、2.85、2.86、2.87、2.88、2.89、2.9、2.91、2.92、2.93、2.94、2.95、2.96、2.97、2.98、2.99、3μg/L。
【0162】
一実施形態では、第1の試料は、第1の時点、好ましくは手術から1日またはそれ以上後で、術後に患者から単離され、第2の試料は、後続する第2の時点で、術後に患者から単離され、第1の時点と第2の時点との間で、少なくとも12時間、24時間、36時間、48時間、またはそれ以上が経過していることが好ましく、少なくとも1つのバイオマーカーのレベルを決定することは、PCTまたはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、PCTまたはその断片(複数可)のレベルの増加または水平化は、感染症、好ましくは血液感染症、ならびに心血管または脳血管有害事象、好ましくはMACCEおよび/またはMINSの可能性が高いことを示す。
【0163】
一実施形態では、第1の試料は、第1の時点、好ましくは手術から1日またはそれ以上後で、術後に患者から単離され、第2の試料は、後続する第2の時点で、術後に患者から単離され、第1の時点と第2の時点との間で、少なくとも12時間、24時間、36時間、48時間、またはそれ以上が経過していることが好ましく、少なくとも1つのバイオマーカーのレベルを決定することは、PCTまたはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、0.1μg/L~2μg/Lの間の値の範囲から選択される閾値±20%以上を超えるPCTまたはその断片(複数可)のレベルの増加は、感染症、好ましくは血液感染症、ならびに心血管または脳血管有害事象、好ましくはMACCEおよび/またはMINSの可能性が高いことを示す。この範囲内のいずれの値も、第1の時点と第2の時点との間のPCTまたは断片(複数可)の増加について適切な閾値とみなされ得る。例えば、0.1、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.2、0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28、0.29、0.3、0.31、0.32、0.33、0.34、0.35、0.36、0.37、0.38、0.39、0.4、0.41、0.42、0.43、0.44、0.45、0.46、0.47、0.48、0.49、0.5、0.51、0.52、0.53、0.54、0.55、0.56、0.57、0.58 0.59、0.6、0.61、0.62、0.63、0.64、0.65、0.66、0.67、0.68、0.69、0.7、0.71、0.72、0.73、0.74、0.75、0.76、0.77、0.78、0.79、0.8、0.81、0.82、0.83、0.84、0.85、0.86、0.87、0.88、0.89、0.9、0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、0.97、0.98、0.99、1、1.01、1.02、1.03、1.04、1.05、1.06、1.07、1.08、1.09、1.1、1.11、1.12、1.13、1.14、1.15、1.16、1.17、1.18、1.19、1.2、1.21、1.22、1.23、1.24、1.25、1.26、1.27、1.28、1.291.3、1.31、1.32、1.33、1.34、1.35、1.36、1.37、1.38、1.39、1.4、1.41、1.42、1.43、1.44、1.45、1.46、1.47、1.48、1.49、1.5、1.51、1.52、1.53、1.54、1.55、1.56、1.57、1.58、1.59、1.6、1.61、1.62、1.63、1.64、1.65、1.66、1.67、1.68、1.69、1.7、1.71、1.72、1.73、1.74、1.75、1.76、1.77、1.78、1.79、1.8、1.81、1.82、1.83、1.84、1.85、1.86、1.87、1.88、1.89、1.9、1.91、1.92、1.93、1.94、1.95、1.96、1.97、1.98、1.99、2μg/L。
【0164】
proET-1/感染症およびMACCE/MINS:
一実施形態では、少なくとも1つの追加のバイオマーカーのレベルを決定することは、proET-1またはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、閾値を超えるproET-1またはその断片(複数可)のレベルは、感染症、好ましくは血液感染症、ならびに心血管または脳血管有害事象、好ましくはMACCEおよび/またはMINSの可能性が高いことを示す。
【0165】
一実施形態では、試料は術前に単離され、少なくとも1つのバイオマーカーのレベルを決定することは、proET-1またはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、60pmol/L~85pmol/Lの間の値の範囲から選択される閾値±20%以上を超えるproET-1またはその断片(複数可)のレベルは、感染症、好ましくは血液感染症、ならびに心血管または脳血管有害事象、好ましくはMACCEおよび/またはMINSの可能性が高いことを示す。この範囲内のいずれの値も、適切な閾値とみなされ得る。例えば、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85pmol/L。
【0166】
一実施形態では、試料は、術後12時間以内、好ましくは6時間以内に単離され、少なくとも1つのバイオマーカーのレベルを決定することは、proET-1またはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、80pmol/L~110pmol/Lの間の値の範囲から選択される閾値±20%以上を超えるproET-1またはその断片(複数可)のレベルは、感染症、好ましくは血液感染症、ならびに心血管または脳血管有害事象、好ましくはMACCEおよび/またはMINSの可能性が高いことを示す。この範囲内のいずれの値も、適切な閾値とみなされ得る。例えば、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110pmol/L。
【0167】
一実施形態では、試料は、手術から1日で、術後に単離され、少なくとも1つのバイオマーカーのレベルを決定することは、proET-1またはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、80pmol/L~120pmol/Lの間の値の範囲から選択される閾値±20%以上を超えるproET-1またはその断片(複数可)のレベルは、感染症、好ましくは血液感染症、ならびに心血管または脳血管有害事象、好ましくはMACCEおよび/またはMINSの可能性が高いことを示す。この範囲内のいずれの値も、適切な閾値とみなされ得る。例えば、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120pmol/L。
【0168】
一実施形態では、試料は、手術から2日で、術後に単離され、少なくとも1つのバイオマーカーのレベルを決定することは、proET-1またはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、80pmol/L~120pmol/Lの間の値の範囲から選択される閾値±20%以上を超えるproET-1またはその断片(複数可)のレベルは、感染症、好ましくは血液感染症、ならびに心血管または脳血管有害事象、好ましくはMACCEおよび/またはMINSの可能性が高いことを示す。この範囲内のいずれの値も、適切な閾値とみなされ得る。例えば、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120pmol/L。
【0169】
一実施形態では、試料は、手術から3日で、術後に単離され、少なくとも1つのバイオマーカーのレベルを決定することは、proET-1またはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、80pmol/L~120pmol/Lの間の値の範囲から選択される閾値±20%以上を超えるproET-1またはその断片(複数可)のレベルは、感染症、好ましくは血液感染症、ならびに心血管または脳血管有害事象、好ましくはMACCEおよび/またはMINSの可能性が高いことを示す。この範囲内のいずれの値も、適切な閾値とみなされ得る。例えば、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120pmol/L。
【0170】
一実施形態では、試料は術後に単離され、少なくとも1つのバイオマーカーのレベルを決定することは、proET-1またはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、80pmol/L~110pmol/Lの間の値の範囲から選択される閾値±20%以上を超えるproET-1またはその断片(複数可)のレベルは、感染症、好ましくは血液感染症、ならびに心血管または脳血管有害事象、好ましくはMACCEおよび/またはMINSの可能性が高いことを示す。この範囲内のいずれの値も、適切な閾値とみなされ得る。例えば、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110pmol/L。
【0171】
一実施形態では、試料は、手術から1日、2日、3日、またはそれ以上後で、術後に単離され、少なくとも1つのバイオマーカーのレベルを決定することは、proET-1またはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、80pmol/L~120pmol/Lの間の値の範囲から選択される閾値±20%以上を超えるproET-1またはその断片(複数可)のレベルは、感染症、好ましくは血液感染症、ならびに心血管または脳血管有害事象、好ましくはMACCEおよび/またはMINSの可能性が高いことを示す。この範囲内のいずれの値も、適切な閾値とみなされ得る。例えば、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120pmol/L。
【0172】
一実施形態では、第1の試料は、第1の時点、好ましくは手術から1日またはそれ以上後で、術後に患者から単離され、第2の試料は、後続する第2の時点で、術後に患者から単離され、第1の時点と第2の時点との間で、少なくとも12時間、24時間、36時間、48時間、またはそれ以上が経過していることが好ましく、少なくとも1つのバイオマーカーのレベルを決定することは、proET-1またはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、proET-1またはその断片(複数可)のレベルの増加または水平化は、感染症、好ましくは血液感染症、ならびに心血管または脳血管有害事象、好ましくはMACCEおよび/またはMINSの可能性が高いことを示す。
【0173】
一実施形態では、第1の試料は、第1の時点、好ましくは手術から1日またはそれ以上後で、術後に患者から単離され、第2の試料は、後続する第2の時点で、術後に患者から単離され、第1の時点と第2の時点との間で、少なくとも12時間、24時間、36時間、48時間、またはそれ以上が経過していることが好ましく、少なくとも1つのバイオマーカーのレベルを決定することは、proET-1またはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、1pmol/L~40pmol/Lの間の値の範囲から選択される閾値±20%以上を超えるproET-1またはその断片(複数可)のレベルの増加は、感染症、好ましくは血液感染症、ならびに心血管または脳血管有害事象、好ましくはMACCEおよび/またはMINSの可能性が高いことを示す。この範囲内のいずれの値も、第1の時点と第2の時点との間のproET-1または断片(複数可)の増加について適切な閾値とみなされ得る。例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40pmol/L。
【0174】
周術期心筋障害(PMI)である心血管または脳血管事象、および血液感染症などの感染症を診断または予測するために、proET-1、PCT、もしくはproADM、またはその断片(複数可)のレベルを追加のバイオマーカーとして決定することに関する実施形態もある。
【0175】
一実施形態では、少なくとも1つの追加のバイオマーカーのレベルを決定することは、proET-1、PCT、および/もしくはproADM、またはその断片(複数可)のレベルを決定することを含み、閾値を超えるproET-1、PCT、および/もしくはproADM、またはその断片(複数可)のレベルは、心血管または脳血管有害事象、好ましくは周術期心筋障害(PMI)の可能性が高く、感染症、好ましくは血液感染症が存在することを示す。試料は、いくつかの実施形態では、術前または術中に採取されてもよい。
【0176】
本発明はまた、本明細書で説明される方法を実行するためのキットに関する。本発明の方法の特徴、効果、および利点のすべては、本発明のキットにも適用され、逆もまた同様である。したがって、繰り返しを避けるために、前の説明が参照される。具体的には、本発明のキットは、患者に由来する体液の試料中の、バイオマーカーであるコペプチン、トロポニン、および脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)のうちの少なくとも1つのレベルを決定するための少なくとも1つの検出試薬と、コペプチン、トロポニン、およびBNPレベルのうちの少なくとも1つに対応する消化管手術を受けた患者からの参照データ、特に参照レベルと、を含み、該参照データは、好ましくは、コンピュータ可読媒体に記憶され、かつ/またはコペプチン、トロポニン、およびBNPのうちの少なくとも1つの決定されたレベルを該参照データと比較するように構成されたコンピュータ実行可能コードの形態で用いられる。特に好ましくは、検出試薬は、該患者に由来する体液の試料中の、バイオマーカーであるコペプチン、トロポニン、および脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)のレベルを決定するための試薬を含み、参照データは、消化管手術を受けた患者の該バイオマーカーに対応するデータを含む。
【0177】
検出試薬は、例えば、捕捉分子を含み得る。これらは、例えば、Thermo Scientific B・R・A・H・M・S Kryptor Compact plusなどのアッセイシステムで使用するように設計され得る。キットの好ましい実施形態では、検出試薬は、該患者に由来する体液の試料中の、バイオマーカーである中央領域プロアドレノメデュリン(MR-proADM)、C末端プロエンドセリン-1(CT-proET-1)、およびプロカルシトニン(PCT)のうちの少なくとも1つのレベルを決定するための試薬も含み、参照データは、消化管手術を受けた患者の該少なくとも1つのバイオマーカーに対応するデータを含む。
【0178】
本明細書では、「捕捉分子」という用語は、試料からの標的分子または目的の分子、すなわち分析物(例えば、バイオマーカー)に結合するために使用されてもよい分子を含む。したがって、捕捉分子は、空間的にも、表面電荷、疎水性、親水性、ルイス供与体および/または受容体の存在または非存在などの表面の特徴に関しても適切に成形され、標的分子または目的の分子に特異的に結合する必要がある。これにより、結合は、例えば、イオン、ファンデルワールス力、パイ-パイ、シグマ-パイ、疎水性もしくは水素結合相互作用、または前述の相互作用のうちの2つ以上の組み合わせ、または捕捉分子と標的分子もしくは目的の分子との間の共有的相互作用によって媒介されてもよい。本発明の文脈において、捕捉分子は、例えば、核酸分子、炭水化物分子、PNA分子、タンパク質、ペプチド、および糖タンパク質からなる群から選択されてもよい。捕捉分子には、例えば、抗体、アプタマー、DARピン(Designed Ankyrin Repeat Protein)が含まれる。アフィマーなどが含まれる。
【0179】
本明細書で使用される「抗体」という用語は、別途示されない限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗血清、濃縮または精製ポリクローナル抗体、組換え抗体などの抗体分子と、様々な抗体由来分子、特に機能的誘導体との両方を指すように広範囲に使用される。そのような抗体由来分子は、少なくとも1つの可変領域(重鎖可変領域または軽鎖可変領域のいずれか)、ならびに個々の抗体軽鎖、個々の抗体重鎖、抗体鎖と他の分子との間のキメラ融合、および同様のものを含む。本発明による機能的免疫グロブリン断片は、Fv、scFv、ジスルフィド結合Fv、Fab、およびF(ab’)2であってもよい。「抗体」という用語には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、好ましくはIgG1抗体、キメラモノクローナル抗体、ヒト化抗体、遺伝子操作されたモノクローナル抗体も包含される。機能的誘導体は、類似の機能性/結合能力を有する抗体/抗血清の化学的および/または生化学的に修飾された変異体である。
【0180】
本発明のキットで提供される参照データは、好ましくは、患者を、消化管手術後にMACCEまたはMINSを有する/有しない、および発症する/発症しないという対のうちの少なくとも1つの間で区別するように設計される。したがって、参照データは、好ましくは、上記のように特定の時点で患者から採取された試料中で決定されたバイオマーカーレベルと比較されるように設計される。本発明のキットを使用することにより、臨床医は、MACCEまたはMINSを有するおよび/または発症するリスクを考慮して、消化管手術を受ける患者の迅速かつ容易な診断および/または予後を得ることができる。
【0181】
本発明はまた、コンピュータ実行可能コードを実行するコンピュータを包含し、コンピュータ実行可能コードは、本発明の方法のステップiv)および/またはv)を実行するように構成される。例えば、コンピュータ実行可能コードは、入力データ、例えば、決定されたバイオマーカーレベルから併用評価を作成するように設計される。好ましい実施形態では、コードを実行するコンピュータはまた、アッセイシステムに接続され、アッセイシステムは、本発明の方法のステップii)および任意選択でステップiii)を実行するように構成される。アッセイシステムは、例えば、Thermo Scientific B・R・A・H・M・S Kryptor Compact plusであり得る。このようにして、アッセイシステムは、ステップiv)および/またはv)を実行するための入力データをコンピュータに提供することができる。コンピュータには、前述の参照データを提供することもできる。最適には、ユーザはステップi)を実行するだけでよく、アッセイシステムを有するコンピュータが残りの方法を実行し、結果として得られる診断および/もしくは予後、または少なくとも、成され得る診断および/もしくは予後の基準となるスコア(複数可)をユーザに提示する。
【0182】
最後に、本発明は、少なくとも1つのコンピュータ可読媒体に記憶されたコンピュータ命令のセットを含むコンピュータプログラム製品にも関し、該コンピュータ命令のセットは、本発明の方法のステップiv)および/またはv)を実行するために1つ以上のプロセッサによって実行可能な命令をさらに含む。コンピュータ可読媒体は、USBスティック、外部または内部ハードディスク、ディスケット、テープ記憶装置、外部形態端末、例えば、携帯電話、タブレット、または同様のものなど、いずれの種類のコンピュータ記憶手段であってもよい。
【実施例】
【0183】
スウェーデンのいくつかの病院で多施設前向きコホート研究を実施した。対象を、2017年4月から2018年10月まで引き続いて募集した。Surgical Outcome Risk Tool、SORT[Protopapa et al.,British Journal of Surgery,101(13),pp.1774-1783.doi:10.1002/bjs.9638,2014]により主要または主要/複雑と格付けされた待機的腹部手術を受ける年齢50歳以上の患者を適格とした。また、手順は全身麻酔下で行われる必要があり、かつ少なくとも1泊の入院が求められる。適格患者は、術前評価クリニックで患者リストを毎日スクリーニングすることにより特定した。患者は、参加に同意する前に、試験の目的、方法、期待される利益、可能性のある危険性、および何時でも離脱可能であることについて説明を受けた。組み入れの前に、すべての患者から書面によるインフォームドコンセントを得た。参加者は一度しか組み入れることができず、インフォームドコンセントを提出することができなかった場合、または次の種類の腹部手術のうちの1つを受けた場合、除外した:移植、外傷、内分泌、血管、または血管内。組み入れられた患者は、患者の死亡により待機的手術が取り消された場合、または本待機的手術の前に別の非待機的手術が行われた場合、除外した。事前定義した試験評価項目は、30日以内のMACCE(上で定義したとおり)であった。全体的な患者の特徴を表1に付与する。
【表1】
【0184】
5つの試料点を定義した:術前(麻酔前24時間未満)、術後(手術の24時間以内)、および手術後1、2、3日目。これらの時点で、8.5mlのEDTA Vacutainer(登録商標)を使用して、動脈血または静脈血の試料を得た。血液試料を地元の臨床化学研究所に送り、そこで試料を遠心分離させ、血漿を-80℃にてアリコートで凍結し、バイオマーカーの血漿濃度のバッチ分析を行うまで保存した。同時に、ECGを各サンプリング点で各患者から取得した。
【0185】
MACCEの発生を、1、2、および3日目にカルテをとおして、また手術の30日後に電話インタビューを介して、および/または患者の医療記録を閲覧することによって、検討した。MINSの発生率を、分析したcTnT血漿レベルから計算した[Sessler and Khanna;Intensive Care Med(2018)44:811-822、https://doi.org/10.1007/s00134-018-5224-7による]。死亡率を、スウェーデンの人口登録を使用して評価した。すべての試料を得る前に患者が退院、脱落、または死亡した場合、患者がデータ分析に含めないよう求めない限り、患者を除外せず、収集した試料を分析した。
【0186】
Thermo Scientific B・R・A・H・M・S Kryptor Compact plusを製造業者(B・R・A・H・M・S GmbH,Hennigsdorf,Germany)の指示に従って使用して、コペプチン、MR-proADM、CT-proET-1、およびPCTを測定した。Cobas e 602/Cobas e 601/Cobas e 411アッセイを製造業者(Roche Diagnostics,Mannheim,Germany)の指示に従って使用して、心臓トロポニンT(cTnT)およびNT-proBNPを測定した。
【0187】
データ分析は、Graphpad PRISM 8を使用して行った。データ分布は、ダゴスティーノ&パーソン検定を使用して検討した。異なる群間の比較は、フィッシャーの直接確率検定およびクラスカル・ウォリス検定を使用して行った。0.05未満のp値を有意とみなした。
【0188】
患者特徴および臨床特徴を表2に示す。ここでは、ASAは、American Society of Anesthesiologists(ASA)による身体状態分類体系を表す。387人の外科患者を募集し、分析に含めた。MACCEを患っていた患者の43%のみが高リスク患者(ASA III~IV)として分類され、38%のみがMINSを有すると分類されたことは、注目に値する。
【表2】
【0189】
収集したデータはダゴスティーノ-パーソンの正規性検定に合格しなかったため、ノンパラメトリック検定を分析に使用した。クラスカル・ウォリス検定を使用して、測定したバイオマーカーの血漿レベルがMACCEの影響を受けた患者と影響を受けなかった患者との間でどのように異なったかを比較した。
図1~6は、すべてのサンプリング点/時間でのMACCEを有する患者および有しない患者における測定されたバイオマーカーであるコペプチン、cTnT、NT-proBNP、MR-proADM、CT-proET-1、およびPCTの血漿レベルを示す。図中、PreOpは術前サンプリング点を指し、PACU(麻酔後ケアユニット)は術後サンプリング点を指し、POD1は手術後1日のサンプリング点を指し、POD2は手術後2日のサンプリング点を指し、POD3は手術後3日のサンプリング点を指す。
【0190】
図1~6からわかるように、測定したすべてのバイオマーカーのバイオマーカーレベルは、MACCEを患っていない患者の群と比較して、消化管手術から30日以内にMACCEを患った患者の群において増加する。
【0191】
バイオマーカーレベルの変動も、クラスカル・ウォリス検定を使用して、MINSを有する患者と有しない患者とで比較した。
図1~6と同様に、
図7~12は、すべてのサンプリング点/時間でのMINSを有する患者および有しない患者における測定されたバイオマーカーであるコペプチン、cTnT、NT-proBNP、MR-proADM、CT-proET-1、およびPCTの血漿レベルを示す。ここでも、
図7~12からわかるように、測定したすべてのバイオマーカーのバイオマーカーレベルは、MINSを患っていない患者の群と比較して、消化管手術から30日以内にMINSを患った患者の群において増加する。
【0192】
術後の有害事象としての感染症に関しては、105人(27%)の患者が感染症を発症し、そのうち11人が血液感染症を患った。全死亡率は1.3%(死亡5人)であった。表2は、感染症の発生に関する患者特徴を要約する。バイオマーカーレベルを、術前(preOP)、麻酔後ケアユニット(PACU)、ならびに手術後1日(POD1)、2日(POD2)、および3日(POD3)で、すべての患者について決定した。
【表3】
【0193】
図13~18は、追加の感染症を有するまたは有しないMACCE患者のバイオマーカーレベルを示す。手術前のPCTを除いて、バイオマーカーのすべてが、MACCEと感染症との組み合わせを有する患者において有意に高いレベルを示す。バイオマーカーであるトロポニン(
図14)、BNP(
図15)、proADM(
図16)、proET-1(
図17)、およびPCT(
図18)では、バイオマーカーレベルの増加はより後の時点(すなわち、POD2およびPOD3)でさらにより顕著になるが、コペプチン(
図13)は、分析したすべての時点で、感染症を有しない患者と比較して、より一定した増加を示す。したがって、バイオマーカーのすべてが、MACCEのみを有する患者とMACCEおよび感染症の両方を有する患者とを区別するのに好適である。基礎的データを表4に示す。
【表4】
【0194】
表4に付与した値から、当業者であれば、どの試験パラメータ、例えばカットオフ値を本発明の方法に使用すべきかを、容易に推測することができる。その後、これらを、目下の実用途に関して選択することができる。測定したバイオマーカーレベルは、試料が採取された時点に関して便宜上評価されるべきであることも明らかとなる。例えば、術前(PreOP)に採取した試料における、15pmol/L超、好ましくは20pmol/L超、または25pmol/L超のコペプチンレベルは、患者が術後にMACCEと感染症との両方を発症するリスクが高いことを示す。サンプリングの他の時点では、これらの値は変動してもよく、例えば、PACUでは、195pmol/L超、または200pmol/L超、または205pmol/L超、または210pmol/L超、または215pmol/L超、または220pmol/L超、または225pmol/L超、または230pmol/L超、POD1では、30pmol/L超、または35pmol/L超、または40pmol/L超、または45pmol/L超、POD2では、20pmol/L超、または25pmol/L超、または30pmol/L超、または35pmol/L超、POD3では、15pmol/L超、または20pmol/L超、または25pmol/L超であってもよい。言うまでもなく、いずれのバイオマーカーについても、カットオフ値以外の評価値を計算することができ、これにより、測定したバイオマーカーレベルが、感染症を伴わずにおよび/またはまったく症状なくMACCEを有する患者について確立されたバイオマーカーレベルに関連付けられる。例えば、測定したバイオマーカーレベルが、MACCEを有するが感染症を有しない患者のレベルと異なる要因を確立してもよい。
【0195】
hsTnTの場合、PreOPおよび/またはPACUに採取した試料における、8ng/L超、または9ng/L超、または10ng/L超、または11ng/L超、または12ng/L超のレベルは、患者が術後にMACCEと感染症との両方を発症するリスクが高いことを示す。サンプリングの他の時点では、これらの値は変動してもよく、例えば、POD1および/またはPOD2および/またはPOD3では、10ng/L超、または15ng/L超、または20ng/L超、または25ng/L超、または30ng/L超であってもよい。すべての時点に対する大域的カットオフ値は、例えば、所望の感度および特異性、ならびに目下の用途の他の要因に応じて、10ng/L超または15ng/L超で選択され得る。
【0196】
NT-proBNPの場合、PreOPおよび/またはPACUに採取した試料における、260ng/L超、または280ng/L超、または300ng/L超、または320ng/L超のレベルは、患者が術後にMACCEと感染症との両方を発症するリスクが高いことを示す。サンプリングの他の時点では、これらの値は変動してもよく、例えば、POD1および/またはPOD2および/またはPOD3では、500ng/L超、または550ng/L超、または600ng/L超、または650ng/L超、または700ng/L超、または750ng/L超、または800ng/L超、または850ng/L超であってもよい。すべての時点に対する大域的カットオフ値は、例えば、所望の感度および特異性、ならびに目下の用途の他の要因に応じて、300ng/L超または500ng/L超で選択され得る。
【0197】
MR-proADMの場合、PreOPに採取した試料における、0.70nmol/L超、または0.75nmol/L超、または0.80nmol/L超のレベルは、患者が術後にMACCEと感染症との両方を発症するリスクが高いことを示す。サンプリングの他の時点では、これらの値は変動してもよく、例えば、PACUおよび/またはPOD1および/またはPOD2および/またはPOD3では、1.00nmol/L超、または1.10nmol/L超、または1.20nmol/L超、または1.30nmol/L超、または1.40nmol/L超、または1.50nmol/L超、または1.60nmol/L超であってもよい。すべての時点に対する大域的カットオフ値は、例えば、所望の感度および特異性、ならびに目下の用途の他の要因に応じて、0.8nmol/L超または1.5nmol/L超で選択され得る。
【0198】
CT-proET-1の場合、PreOPに採取した試料における、65pmol/L超、または70pmol/L超、または75pmol/L超、または80pmol/L超のレベルは、患者が術後にMACCEと感染症との両方を発症するリスクが高いことを示す。サンプリングの他の時点では、これらの値は変動してもよく、例えば、PACUおよび/またはPOD1および/またはPOD2および/またはPOD3では、85pmol/L超、または90pmol/L超、または95pmol/L超、または100pmol/L超、または105pmol/L超、または110pmol/L超、または115pmol/L超、または120pmol/L超、または125pmol/L超であってもよい。すべての時点に対する大域的カットオフ値は、例えば、所望の感度および特異性、ならびに目下の用途の他の要因に応じて、80pmol/Lまたは100pmol/L超で選択され得る。
【0199】
PCTの場合、PreOPおよび/またはPACUに採取した試料における、0.06μg/L、または0.08μg/L超、または0.10μg/L超、または0.12μg/L超のレベルは、患者が術後にMACCEと感染症との両方を発症するリスクが高いことを示す。サンプリングの他の時点では、これらの値は変動してもよく、例えば、POD1および/またはPOD2および/またはPOD3では、0.8μg/L超、または0.9μg/L超、または1.0μg/L超、または1.1μg/L超、または1.2μg/L超、または1.3μg/L超、または1.4μg/L超、または1.5μg/L超であってもよい。すべての時点に対する大域的カットオフ値は、例えば、所望の感度および特異性、ならびに目下の用途の他の要因に応じて、0.1μg/L超、または1.0μg/L超、または1.5μg/L超で選択され得る。
【0200】
図19~21は、MR-proADM、PCT、およびCT-proET-1についての感染症に関する結果を要約する。すべてのバイオマーカー、特にMR-proADMおよびPCTのレベルは、手術後に感染症を患った患者の群で高かった。この傾向は、preOP、PACU、およびPOD1~3のすべての試料点で明らかである。
【0201】
術後に感染症を発症している患者のMR-proADMのレベルは、PACUの初期の試料点について、また術前であっても軽度に、感染症を有しない患者のレベルと比較して高かった。この差異は、POD1、特にPOD2およびPOD3から、術後により顕著となる(
図19)。いずれの感染症も有しない患者のMR-proADMのレベルは、POD1後、約1.25nmol/LからPOD3の1.2nmol/L未満に低下する。感染症を有する患者では、すべてのPOD1~3でレベルが1.5nmol/L超で堅実に維持される。
【0202】
感染の発生のマーカーとしてのPCTの場合、POD1からPOD3をとおして術後に際立った顕著な違いが見られる(
図20)。感染症を有しない術後患者のPCTのレベルは0.75μg/L前後またはそれを下回ったままであるが、感染症を有する患者のPCTのレベルはPOD1(約1.0μg/L)からPOD2および3の約1.25μg/L超に継続的に上昇する。とりわけ、術前およびPACUの早い段階でも、軽度の差異が明らかである。
【0203】
CT-proET-1の場合、感染症を有する患者と有しない患者との間の差異は、マーカーのPCTおよびMR-proADMの場合よりも顕著ではない。しかしながら、特に手術後2~3日のより遅い試料点では、明らかな差異により信頼性の高い区別が可能になる(
図21)。
【0204】
これらの結果により、特にMR-proADMおよびPCT、多少程度は低いがCT-proET-1も、術後患者における感染症の発生率の信頼性の高い予測または診断を提供するために使用することができ、したがって、コペプチン、トロポニン、およびBNPの測定値と有利に組み合わせることができることが示される。予測または診断は、試料点固有の値と比較することにより、すべての試料点についての、または個々の試料点(例えば、preOP、PACU、POD1-3)での単一の閾値を用いて確立され得る。
【0205】
加えて、いずれかの感染症を有する患者および有しない患者におけるバイオマーカーのレベルの異なる時間的推移により、少なくとも2つの時点で試料を採取し、異なる試料点についての割合または絶対差を分析するときに、さらに信頼性のある予後または診断が可能になる。
【0206】
表5は、血液感染症の発生に関する患者特徴を要約する。バイオマーカーレベルを、術前(preOP)、麻酔後ケアユニット(PACU)、ならびに手術後1日(POD1)、2日(POD2)、および3日(POD3)で、すべての患者について決定した。
【表5】
【0207】
図22~24は、MR-proADM、PCT、およびCT-proET-1についての結果を要約する。すべてのバイオマーカー、特にMR-proADMおよびPCTのレベルは、手術後に血液感染症を患った患者の群で高かった。この傾向は、preOP、PACU、およびPOD1~3のすべての試料点で明らかである。
【0208】
術後に血液感染症を発症している患者のMR-proADMのレベルは、PACUの初期の試料点について、また術前であっても著しく、感染症を有しない患者のレベルと比較して高かった。この差異は、POD1からPOD3へと、術後により顕著となる(
図22)。いずれの感染症も有しない患者のMR-proADMのレベルは、POD1後、約1.3nmol/LからPOD3の1.2nmol/L未満に低下する。血液感染症を有する患者については、すべてのPOD1~3でレベルが約1.75nmol/L超で堅実に維持される。
【0209】
血液感染症の発生に対する感染症の発生と同様に、PCTのレベルの特に顕著な違いが、POD1からPOD3をとおして術後に見られる(
図23)。血液感染症を有しない術後患者のPCTのレベルは0.75μg/L前後またはそれを下回ったままであるが、血液感染症を有する患者のPCTのレベルはPOD1(約2.0μg/L)からPOD2および3の約2.5μg/L超に継続的に上昇する。とりわけ、術前およびPACUの早い段階でも、軽度の差異が明らかである。
【0210】
CT-proET-1の場合、血液感染症を有する患者と有しない患者との間の差異は、マーカーのPCTおよびMR-proADMの場合よりも顕著ではない。しかしながら、特に手術後2~3日のより遅い試料点では、明らかな差異により区別が可能になる。POD2および3で血液感染症を有する患者のCT-proET-1のレベルは100pmol/Lを超えたが、POD2およびPOD3で血液感染症を有しない患者のレベルは約0.75pmol/L前後またはそれを下回った(
図24)。
【0211】
これらの結果により、特にMR-proADMおよびPCT、程度は低いがCT-proET-1も、術後患者における血液感染症の発生率の信頼性の高い予測または診断に役立ち得、したがって、コペプチン、トロポニン、およびBNPの測定値と有利に組み合わせ得ることが示される。予測または診断は、試料点固有の値と比較することにより、すべての試料点についての、または個々の試料点(例えば、preOP、PACU、POD1-3)での単一の閾値を用いて確立され得る。
【0212】
加えて、血液感染症を有する患者および有しない患者におけるバイオマーカーのレベルの異なる時間的推移により、2つ以上の時点で試料を採取し、異なる試料点についての割合または絶対差を分析するときに、さらに信頼性のある予後または診断が可能になる。
【0213】
表6は、感染症およびMACCEの術後の発生に関する患者特徴を要約する。バイオマーカーレベルを、術前(preOP)、麻酔後ケアユニット(PACU)、ならびに手術後1日(POD1)、2日(POD2)、および3日(POD3)で、すべての患者について決定した。
【表6】
【0214】
図25~27は、MR-proADM、PCT、およびCT-proET-1についての結果を要約する。
【0215】
ひときわ、すべてのバイオマーカーのレベルは、感染症とMACCEとの両方を患った患者の群で特に高かった。この傾向は、preOP、PACU、およびPOD1~3のすべての試料点ではっきりと分かった。
【0216】
MR-proADMの場合、感染症およびMACCEを患った患者のレベルは、これらの事象のいずれも患わなかった患者、またはすべての試料点にわたって有害事象のうちの1つのみを患った患者と比較して、はっきりした差異を呈する(
図25)。差異は特に術後に顕著である。感染を発症せず、術後にMACCEを経験しなかった患者は、MR-proADMのレベルがPACUまたはPOD1~3で1nmol/L以下であったが、両方の有害事象を患った患者は、MR-proADMのレベルがPACUでの約1.5nmol/LからPOD3での約2.3nmol/Lへと堅実に増加した。
【0217】
PCTは、感染症とMACCEとの組み合わせた予後または診断のための特に貴重なマーカーであるように見える。これは特に、POD1からPOD3までの術後の試料点に当てはまる(
図26)。感染症を発症し、POD1からPOD3でMACCE事象を患った患者のPCTレベルは、一貫して2μg/Lを超え、POD3ではさらに平均して約3.5μg/Lであった。それどころか、術後にMACCEも感染症も経験しなかった患者については、PCTレベルが0.5μg/L前後またはそれ以下であることが決定された。POD1での4倍超の差異、およびPOD3での7倍超の差異により、PCTをマーカーとして使用する感染症とMACCEとの組み合わせた診断または予測に対する強力な相乗効果が示される。
【0218】
同様に、すべての試料点にわたるCT-proET-1の場合、感染症とMACCEとの両方を術後に患った患者におけるレベルは、これらの有害事象のいずれも経験しなかった患者よりもかなり高かったことが決定された(
図27)。前者の群については、CT-proET-1レベルは約80pmol/Lまたはそれ以下のままであったが、後者の群では、PACUからPOD3までのCT-proET-1の術後レベルは約125pmol/Lまたはそれ以上であった。
【0219】
本データにより、記載したバイオマーカーのうちの1つを使用した感染症およびMACCEの予後および/または診断が、特に高い精度および信頼性で達成され得ることが示される。したがって、これらのバイオマーカーは、コペプチン、トロポニン、およびBNPの測定値と有利に組み合わせることができる。有害事象のうちの1つに対するマーカーの予測可能性からは、このような強力な予測力は予期できるものではなく、このことは、これらの目立った有害事象の診断または予測に関するこれらのバイオマーカーの機能的相乗効果を示す。
【0220】
予測または診断は、試料点固有の値と比較することにより、すべての試料点についての、または個々の試料点(例えば、preOP、PACU、POD1-3)での単一の閾値を用いて確立され得る。
【0221】
加えて、感染症およびMACCEを有する患者および有しない患者におけるバイオマーカーのレベルの異なる時間的推移により、2つの時点以上で試料を採取し、異なる試料点についての割合または絶対差を分析するときに、さらに信頼性のある予後または診断が可能になる。
配列
配列番号1(pre-pro-AVPのアミノ酸配列):
配列番号2(pro-AVPのアミノ酸配列):
配列番号3(CT-pre-proAVPコペプチンのアミノ酸配列):
配列番号4(ニューロフィジンIIのアミノ酸配列):
配列番号5(cTnT(アイソフォーム-6)のアミノ酸配列):
配列番号6(cTnIのアミノ酸配列):
配列番号7(TnCのアミノ酸配列):
配列番号8(pre-pro-BNPのアミノ酸配列):
配列番号9(pro-BNPのアミノ酸配列):
配列番号10(NT-pro-BNPのアミノ酸配列):
配列番号11(BNPのアミノ酸配列):
配列番号12(pre-pro-ADMのアミノ酸配列):
配列番号13(pro-ADMのアミノ酸配列):
配列番号14(MR-pro-ADMのアミノ酸配列):
配列番号15(pre-pro-ET-1のアミノ酸配列):
配列番号16(pro-ET-1のアミノ酸配列):
配列番号17(ET-1のアミノ酸配列):
配列番号18(CT-pro-ET-1のアミノ酸配列):
配列番号19(Big-ET-1のアミノ酸配列):
配列番号20(PCTのアミノ酸配列):
配列番号21(pre-pro-ANPのアミノ酸配列(ホモサピエンス)):
配列番号22(pro-ANPのアミノ酸配列(ホモサピエンス)):
配列番号23(NT-proANPのアミノ酸配列):
配列番号24(MR-proANP=proANPのアミノ酸53~90のアミノ酸配列):
配列番号25(ミオグロビン(ホモサピエンス))
配列番号26(クレアチンキナーゼ(ホモサピエンス))
配列番号27(C反応性タンパク質(ホモサピエンス))
【配列表】