(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】組織を処置するための装置および方法
(51)【国際特許分類】
A61B 17/32 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
A61B17/32 510
(21)【出願番号】P 2021553150
(86)(22)【出願日】2020-03-09
(86)【国際出願番号】 EP2020056276
(87)【国際公開番号】W WO2020182775
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2023-03-02
(32)【優先日】2019-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520513082
【氏名又は名称】ボソニック・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】BOSONIC AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー,イェルク
(72)【発明者】
【氏名】シュベリー,アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】ソッタス,ロイク
(72)【発明者】
【氏名】ノイハウス,ドミニク
【審査官】宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-519434(JP,A)
【文献】実公平5-29696(JP,Y2)
【文献】米国特許出願公開第2016/0128769(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波外科器具用のソノトロード(1)であって、
長手軸(15)に沿って延びるステム(21)と、機械的振動を使用して組織についてアブレーションプロセスを実行するように構成されたキャップ(22)とを備えており、前記キャップは、前記ステムよりも半径方向にさらに突出する少なくとも1つの一部分(16)を備え、前記少なくとも1つの一部分は、少なくとも1つの鋭いリム(23)を備え、前記キャップ(22)のうちの前記ステムの遠位端と前記一部分の前記鋭いリムとの間に配置された表面(25、26)が、凹面(26)であり、かつ/または90度以下の前記ステムに対する開き角度(42)で延びており、前記キャップの質量中心(43)が前記長手軸上にあり、
前記キャップ(22)は、凸面(24)を備え、該凸面は、柔らかくかつ/または滑らかな表面を提供
し、
当該ソノトロードは、
・テーパ領域(12)を有するステム(21)、
・前記鋭いリム(23)を備え、キャップのうちの機械的安定性が下げられた領域(37)を介してキャップの本体(50)に接続された少なくとも1つの領域を備えるキャップ(22)、
・前記ステム(21)を介してキャップに結合する機械的振動によって励起され得る少なくとも1つの振動モードを備えるように設計されたキャップ(22)
のうちの少なくとも1つを備える、ソノトロード(1)。
【請求項2】
前記キャップ(22)は、当該ソノトロードが
・前記キャップ(22)の始まりに隣接する領域における前記ステム(21)の直径(dS)が、前記キャップの関連の直径(dC)の半分以下であること、
・前記長手軸(15)に対して垂直であり、かつ前記ステムのうちの前記キャップ(22)の始まりに隣接する領域に位置する前記ステム(21)の断面の完全に内側に配置することができる最大の可能な円の直径が、前記長手軸に対して垂直であり、かつ前記キャップの横方向の延在が最大である位置に位置する前記キャップの断面において前記キャップを囲むことができる最小の可能な円の直径の半分以下であること、
・長手方向における前記キャップの最大の延在(dL)が、前記ステムよりも半径方向にさらに突出している部分(16)の半径方向の最大の延在(dR)の半分以下であること、
・前記キャップ(22)の長手方向の延在が、前記長手軸(15)からの距離に依存し、前記長手軸(15)と前記鋭いリム(23)との間に最小値を含むこと
のうちの少なくとも1つを備えることにより、前記ステム(21)を介して前記キャップに結合する機械的振動によって励起され得る少なくとも1つの振動モードを備えるように設計されている、請求項1に記載のソノトロード(1)。
【請求項3】
前記キャップ(22)は、前記ステム(21)よりも半径方向にさらに突出している少なくとも2つの一部分(16)を備える、請求項1または2に記載のソノトロード(1)。
【請求項4】
前記鋭いリム(23)は、
・前記キャップ(22)は、遠位側を向いた凸面(24)を備え、前記鋭いリムは、該凸面から、凹状であり、あるいは90度以下の前記ステムに対する開き角度で延びている表面(25、26)への移行部によって形成されていること、
・平坦、凹状、または凸状の第1の表面から該第1の表面とは異なる向きの平坦、凹状、または凸状の第2の表面への移行部、および
・凸状、平坦、または凹状の表面の突出部
のうちの少なくとも1つによって形成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のソノトロード(1)。
【請求項5】
前記鋭いリム(23)は、前記キャップ(22)の最も半径方向外側の部分に配置されている、請求項1~4のいずれか一項に記載のソノトロード(1)。
【請求項6】
前記鋭いリム(23)は、一セグメント(17)だけに配置されている、請求項1~5のいずれか一項に記載のソノトロード(1)。
【請求項7】
前記鋭いリム(23)は、複数のリム要素(29)によって形成されている、請求項1~6のいずれか一項に記載のソノトロード(1)。
【請求項8】
当該ソノトロードは、近位-遠位方向に沿ってオフセットされた少なくとも2つの鋭いリム(23.1、23.2)を備える、請求項1~7のいずれか一項に記載のソノトロード(1)。
【請求項9】
当該ソノトロードは、機械的振動の所定の周波数の波長の半分または機械的振動の所定の周波数の波長の半分の倍数に対応する長さを有するステム(21)と、スリーブ(30)とを備え、前記スリーブが前記ステムを前記スリーブの外側から遮蔽するやり方で前記ステムの周囲に配置され、あるいは配置されるように構成されることにより、最小侵襲手術に合わせて構成されている、請求項1~
8のいずれか一項に記載のソノトロード(1)。
【請求項10】
前記ソノトロード(1)の表面(18、24、25、26)が、凸状のマイクロ構造を有する、請求項1~
9のいずれか一項に記載のソノトロード(1)。
【請求項11】
前記ソノトロード(1)の表面(18、24、25、26)が、1~40μ
mの平均粗さRaを有する、請求項1~1
0のいずれか一項に記載のソノトロード(1)。
【請求項12】
当該ソノトロードは、スリーブ(30)を備え、該スリーブは、前記ステムを前記スリーブの外側から遮蔽し、前記鋭いリム(23)を少なくとも横方向に露出させるやり方で、前記ステムを横方向において囲むように配置され、あるいは配置されるように構成されている、請求項1~1
1のいずれか一項に記載のソノトロード(1)。
【請求項13】
当該ソノトロードは、処置位置への流体の供給ならびに/あるいは処置位置からの流体および/またはデブリの除去のためのチャネル(46、47)を備える、請求項1~1
2のいずれか一項に記載のソノトロード(1)。
【請求項14】
組織のアブレーションのための超音波外科器具であって、
・超音波トランスデューサ(3)を収容するハンドピースと、
・前記
超音波トランスデューサ(3)に機械的に結合した請求項1~1
3のいずれか一項に記載のソノトロード(1)と
を備える超音波外科器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療技術の分野に属し、組織についてこすり取り、掻き取り、拡孔、および/または切断などのアブレーションプロセスを実行するための装置に関する。本発明は、とくには、超音波外科器具における使用に適したソノトロードに関する。組織は、ソノトロードの具体的な構成に応じて、硬組織または軟組織であってよい。
【背景技術】
【0002】
超音波外科器具全般、および一端(通常は、近位端)において結合した超音波振動を作用の位置(通常は、組織に接触している遠位端)へと伝達する要素を提供するために、多数の問題に対処する必要がある。以下では、そのような要素を、ソノトロードと呼ぶ。とくには組織と接触しているときの振動挙動、とくにはソノトロードの長手軸に対して半径方向を向いた力が加わるときの機械的安定性、処置位置の限定および/または制御性、空間的条件がさまざまであり、さらには/あるいは制限されている事例への適用性、前方移動、後方移動、および/または横移動の最中にアブレーションが可能であること、こすり取り、掻き取り、拡孔、および/または切断が可能であること、処置位置からデブリを運び去ること、ならびに冷却が、多数の問題のうちの一部である。
【0003】
超音波外科器具は、長年にわたって、軟組織のアブレーション、とくには切断に使用されている。最近の開発は、硬組織、とくには骨組織の処置のための超音波外科器具の効率的な使用に注力している。
【0004】
こすり取り、掻き取り、拡孔、および/または切断などのアブレーションプロセスによって骨組織を処置するための超音波外科装置は、通常は、そのプロセスのために骨組織に押し付けられ、超音波振動を行うヘッドを備える。これらの器具によるアブレーションプロセスは、基本的には、骨組織の局所的粉砕に基づく。
【0005】
骨組織のアブレーションのための超音波外科器具用の市販のソノトロードは、2つのカテゴリに大別することができる。第1のカテゴリは、まず第1に骨組織を切断するように構成されたソノトロードに関する。第1のカテゴリのソノトロードは、通常は、ブレード状部分を有する。第2のカテゴリは、骨組織の表面を成形するように構成されたソノトロードに関する。第2のカテゴリのソノトロードは、通常は、ソノトロードおよび超音波外科器具の長手軸に対してクランク状に折れ曲がったヘッドを有する。第2のカテゴリのソノトロードの下位カテゴリは、スパイクまたはエッジなどのアブレーションに適した複数の構造を備える遠位端を有し、これらに構造は、ソノトロードの遠位端の全体を巡って均一に分布している。
【0006】
超音波外科器具の製品系列BoneScapel(登録商標)(Misonix社)の骨切りブレードおよびStryker社のBone tipのナイフが、第1のカテゴリのソノトロードの例である。BoneScapel(登録商標)シェーバーならびにStryker社のbone tipのSpetzlerおよびPaynerが、第2のカテゴリのソノトロードの例である。
【0007】
第1のカテゴリのソノトロード、すなわち例えば骨切りプロセスにおいて骨組織を切断するためのソノトロードは、一方では、きわめて緻密で丈夫な皮質骨組織を(さまざまなアクセス状況ゆえに)さまざまな角度で切断するように装備される必要がある。他方で、切断装置は、例えば海綿様骨組織へと深く切り込むことができなければならない。これが、そのようなソノトロードがブレード状であり、ブレードの長さが通常は10mm~25mmの間であり、ブレードの幅が通常は5mm~10mmの間であり、ブレードの厚さが通常は0.5mm~1mmの間である理由である。ブレードが2つの平坦面と周状の側壁とによって構成されると考えられる場合、切断は、通常は、ブレードの側壁に沿って行われる。いくつかの実施形態において、平坦面は、骨組織をこすり取るための構造を備える。
【0008】
ブレード状部分を有する切断および随意によるこすり取りのためのヘッドを備える先行技術の器具の利点は、或る程度制限された処置領域に適用できることである。これらの器具の主な欠点は、ブレード状部分の機械的な力または共振によって生じる変形および/または横方向の撓みを被り易いことである。この変形しやすさは、例えば、ヘッドと骨組織との間に加えることができる押し付け力を制限する。
【0009】
第2のカテゴリのソノトロード、すなわち骨組織の表面を成形するためのソノトロードは、処置対象の骨組織への明確に定められた接触面を提供するように装備される。接触面は、2つの方向(軸方向および横方向)に著しく広がり、数mm2の最小表面積を有する。接触面は、アブレーション構造を備え、通常はソノトロードの残りの部分に対してクランク状に折れ曲がったソノトロード部分の一部であることによって、ソノトロードの残りの部分から突出する。この種のソノトロードは、横方向共振の励起、それらの作動方向に関する制限、処置位置からのデブリの輸送、および冷却の点で、不利である。
【0010】
第2のカテゴリのソノトロードのこれらの欠点のいくつかは、アブレーション構造をソノトロードの遠位端の全体を巡って均一に分布させること(上述の下位カテゴリ)によって解決され得る。しかしながら、これは、例えば処置すべきではない組織を傷つけてしまう危険性ゆえに、作用の位置の限定および制御の難しさ、ならびに空間的条件がさまざまであり、かつ/または制限されている事例における適用性などのさらなる欠点を引き起こす。
【0011】
国際公開第2013/057179号パンフレットが、骨組織を切断するための外科器具用のソノトロードを開示している。ソノトロードのヘッドは、ブレード状であり、長手方向に延びる切断装置として機能する。ソノトロードのヘッドを貫いて横方向に延びる複数の穿孔を有する。穿孔は、長円形の形状を有し、長手方向に対して30°~80°の角度にあることで、ソノトロードヘッドは弾性を獲得し、超音波振動を被ると、ソノトロードヘッドによって定められる平面内でピッチング運動を行う。それにもかかわらず、国際公開第2013/057179号パンフレットによれば、押し付け力を加えるために充分な剛性が維持される。ソノトロードのヘッドの切断面は、分解された骨材料の除去を補助するくぼみをさらに備える。
【0012】
米国特許出願公開第2015/0005771号明細書が、軟骨および骨などの組織を切断するためのソノトロードを記載している。ソノトロードは、平坦なブレード本体を有し、ブレード本体は、2つの側面および浅い凹部を有する。これらのソノトロードは、凹部に連絡することによって凹部への液体の流れを可能にする出口を備えるシャンクを有する。ブレードは、ブレード本体の側面間に延在し、凹部からブレードの反対側への液体の流れを可能にする貫通孔をさらに有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
米国特許出願公開第2012/0004729号明細書が、長手方向のブレードを備える切断器具を記載しており、ブレードは、ブレードを貫いて延びる開口部の周囲のリムによって作られた刃先を有している。切断は、振動ではなく、回転によって行われる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明の概要
本発明の目的は、超音波外科器具用のさらなるソノトロードを開発することである。とくには、本発明の目的は、技術水準のソノトロードよりも良好なやり方で複数の要件を満たす超音波外科装置用のソノトロードを提供することである。
【0015】
本発明のさらなる目的は、関連の超音波外科器具を提供することである。
本発明の目的は、硬組織または軟組織のアブレーションに適した超音波外科器具のための改善されたソノトロードを提供することである。
【0016】
本発明のさらなる目的は、機械的振動を用いた骨のアブレーション、とくには骨のこすり取りに適した超音波外科器具のための改善されたソノトロード、ならびに前方および/または後方への骨のこすり取り、骨の掻き取り、とりわけ後方への掻き取り、および骨の拡孔、とりわけ前方への拡孔のうちの少なくとも1つのための超音波外科器具、ならびに改善されたソノトロードを含む超音波外科器具、ならびに骨のアブレーションのための関連の方法、およびこれらのソノトロードを製造するための方法を提供することである。
【0017】
ソノトロードを、皮質骨、例えば骨棘のような変性疾患、硬化性骨変化、および骨腫瘍の過程で生じる制御されずに成長する骨をアブレーションするために使用することができる。
【0018】
ソノトロードを、例えば、骨内の腫瘍組織および感染部位の創面切除にも使用することができる。
【0019】
改善されたソノトロードによって達成されるべき1つの目標は、皮質骨のより良好なアブレーション、とりわけこすり取り、掻き取り、および/または拡孔の性能である。皮質骨は、高密度かつコンパクトである。これにより、骨のアブレーション中に生じる熱の低減が想定される。また、アブレーションの位置の制御性を向上させることができると好ましいと考えられる。
【0020】
本発明のさらに別の目的は、機械的振動を使用したアブレーションによる軟組織の処置に適した超音波外科器具のための改善されたソノトロード、ならびに軟組織を前方および/または後方の少なくとも一方に擦過するための超音波外科器具、ならびに改善されたソノトロードを備える超音波外科器具、および軟組織のアブレーションのための関連の方法、ならびにこれらのソノトロードを製造するための方法を提供することである。
【0021】
創傷処置、創面切除、および軟組織の擦過(掻き取り)が、改良されたソノトロード、関連の超音波外科器具、および関連の方法によって実施され得る処置の例である。
【0022】
ソノトロードの改善は、本発明に従って改善されたソノトロードを、切開外科手術だけでなく最小侵襲外科手術(MIS)においても使用できるようなやり方である。
【0023】
本明細書において使用されるとき、「近位」という用語は、超音波外科器具のハウジングへの取り付け点またはその器具のユーザに最も近いことを指す。本明細書において使用されるとき、「遠位」という用語は、超音波外科器具のハウジングへの取り付け点またはその器具のユーザから離れて位置することを指す。したがって、遠位端および近位端は、反対向きの端部である。
【0024】
本明細書において使用されるとき、「鋭いリム」という用語は、組織をアブレーションするように構成されたリム、エッジ、突出部、などの構造を指す。これは、或る程度「鋭い」という構造的特徴だけでなく、ソノトロードにおける「鋭いリム」の特定の配置も意味する。すなわち、鋭いリムは、ソノトロードおよび超音波外科器具のそれぞれの適切な使用の最中に組織と接触するように配置される。
【0025】
「長手軸」という用語は、本明細書において、中央長手軸に使用される。
「アブレーション」という用語は、骨、靭帯、および腫瘍組織の表面などの組織表面だけでなく、組織置換材料およびインプラントの「こすり取り」、「掻き取り」、「成形」、「トリミング」、「形成」、などを含む。
【0026】
「ソノトロード」という用語は、機械的振動(機械的な揺れ)の使用によって、組織を処置し、とくには組織を機械的に処置するためのツールについて使用される。ソノトロードは、ツールの近位端に結合した機械的振動をツールの遠位端、すなわち作業ヘッド(本発明によるソノトロードの呼び方が使用される場合には、「キャップ」)へと伝達し、機械的振動によって運ばれるエネルギーをヘッドから組織へと伝達するように構成される。通常は、ソノトロードを共振によって励起することができ、すなわちソノトロードが共振によって励起される機械的振動の周波数が存在する。
【0027】
「凹」および「凸」という用語は、本明細書において、これらの用語の限定的な意味において「凹状」または「凸状」である表面および形状(すなわち、凹面上の2点間の任意の直線が、凹面を定めている本体の外側を通り、凸面上の2点間の任意の直線が、凸面を定めている本体の内側を通る)についてだけでなく、直線部分も含み得る表面および形状にも使用される。
【0028】
本発明の第1の態様は、超音波外科器具用のソノトロードに関する。ソノトロードは、長手軸と、長手軸に沿って延びるステムと、キャップとを備える。
【0029】
ステムは、遠位結合要素とキャップとの間に配置されたソノトロードの任意の部分を含み得る。
【0030】
ステムは可撓性であってよい。
ステムは、一定の直径を有することができ、あるいは上述のテーパ(平坦化)領域など、長手軸に沿って変化する直径を有することができる。
【0031】
キャップは、とくには少なくとも1つの鋭いリムを備えることによって、機械的な揺れ(機械的振動)を使用して組織についてアブレーションプロセスを実行するように構成される。組織は、硬組織、とくには骨、または軟組織であってよい。一実施形態において、組織は骨組織である。
【0032】
鋭いリムは、組織に接触させることができ、長手軸に沿った機械的振動がソノトロードに加えられたときに表面を「こすり取る」ように、キャップ上に配置される。換言すると、キャップは、ステムよりも半径方向(長手軸に対して半径方向)にさらに突出する少なくとも1つの一部分を備え、この少なくとも1つの部分は、少なくとも1つの鋭いリムを備える。
【0033】
キャップは、ステムの遠位端と、前記一部分の鋭いリムとの間に配置された表面をさらに備える。換言すると、キャップは、ステムの遠位端におけるキャップの始まりから鋭いリムまで延びる表面、とくには近位面を含む。
【0034】
キャップの前記表面は、凹面であり、さらには/あるいはステムに対して90度以下の開き角度で延びる。ステムに対する90度以下の開き角度は、表面が長手軸の方向に表面法線を有すること、または表面がステムの遠位端における始まりから近位側に向かって延びていることを意味する。
【0035】
最後に、キャップは、長手軸上に質量中心を有するように設計される。
上記の特徴を有するソノトロードは、少なくとも、凹面である近位面またはステムに対して90度以下の開き角度で延びている近位面、ならびに/あるいは長手軸上に質量中心を有するキャップにおいて、技術水準のソノトロード、とくには第1および第2のカテゴリのソノトロードから区別される。
【0036】
これらの特徴は、例えば以下のさまざまな利点を生じさせる。
・長手軸上に質量中心を有するキャップは、長手軸に沿った機械的振動(機械的な揺れ)が加えられるときの横モードの励起を低減する。換言すると、ソノトロードの動作時に使用される軸方向の振動モードの励起が、より効率的になり、望ましくない横方向のサイドモードの励起が抑制される。これは、軸方向の作業モードがより安定になり、本発明によるソノトロードを備える超音波外科器具が、より効率的で操作しやすいことを意味する。
【0037】
・近位面の形状および結果として生じるキャップの全体形状は、キャップが一種のシャベルをもたらすがゆえに、近位側へのデブリの輸送を単純化する。シャベルは、鋭いリムに直接隣接して配置される。これは、ソノトロードが後方移動、すなわち近位側への移動にて動作する場合にとくに有利である。
【0038】
近位面が近位側へとより湾曲し、あるいは近位側により強く向けられるほど、輸送の利点はより顕著になる。
【0039】
・近位面の形状および結果として生じるキャップの全体形状は、とくには以下で開示されるように張り出し部を形成する場合および/または以下で開示されるようにキャップの振動モードを支持するように設計される場合に、長手軸に沿ったステムを介してキャップに結合する振動によって励起され得るキャップの振動モードの存在を助ける。とくに、キャップの最も半径方向外側の部分、すなわち鋭いリムにおいて最大の振幅を有する振動モードの存在を助ける。これは、鋭いリムが、ソノトロードを長手軸に沿って前後運動を行うトランスデューサに結合させることによって引き起こされる長手軸に沿ったキャップの振動に重畳する振動を行うことができることを意味する。
【0040】
長手軸に沿ったキャップの振動に重畳する鋭いリムの振動は、長手軸に平行な振動軸を有すること、または半径方向の成分を有することによって、組織のアブレーションを改善することができる。
【0041】
一実施形態において、キャップは、ステムよりも半径方向にさらに突出している各部分(以下では、突出部分)に関して鏡面対称であることによって、長手軸上に質量中心を備える。換言すると、キャップは、各々の突出部分について仮想の鏡面を備え、キャップは、この仮想の鏡面に関して鏡面対称である。
【0042】
キャップは、長手軸に関してn回の回転対称性を有することができ、nは整数であるが1ではない。
【0043】
上記の利点がさらに顕著である実施形態において、ステムの遠位端と突出部分の鋭いリムとの間に配置されたキャップの表面は、突出部分が張り出し部を備える程度まで近位方向に湾曲した凹面である。
【0044】
換言すると、この表面は、半径方向において長手軸のより近くに位置する隣接領域と比べてより近位側に配置された一領域を含む。
【0045】
一実施形態において、より近位側に配置されたこの領域は、突出部分の最も半径方向外側の領域である。とくには、鋭いリム(または、場合によっては最も近位側の鋭いリム)が、張り出し部の最も近位側の部分である。
【0046】
さらに換言すると、ステムの遠位端と突出部分の鋭いリムとの間に配置されたキャップの表面は、突出部分が半径方向に対してアンダーカットを含む程度まで近位方向に湾曲した凹面である。
【0047】
一実施形態において、キャップは、ステムを介してキャップに結合する機械的振動、とくには長手軸に沿った機械的振動によって励起され得る少なくとも1つの振動モードを備えるように設計される。キャップの少なくとも1つの振動モードは、通常は、長手軸に沿ったソノトロードの振動モードに加えられる。しかしながら、キャップの少なくとも1つの振動モードは、ソノトロードの前記振動モードによって励起され得る。
【0048】
換言すると、キャップは、ソノトロードの振動モードに重畳するキャップの振動モードを支持するように設計される。
【0049】
超音波外科器具において、ソノトロードの振動モードは、ソノトロードが結合したトランスデューサによって引き起こされる。
【0050】
例えば、ソノトロードを、ステムを介してキャップに結合する機械的振動によって励起され得る少なくとも1つの振動モードを備えるキャップを有するために、以下の設計規則のうちの少なくとも1つに従って設計することができる。
【0051】
・キャップの始まりに隣接する領域におけるステムの直径が、キャップの関連の直径の半分以下である。換言すると、ステムの前記直径dSとキャップの前記直径dCとの間の比が、0.5以下であり、dS/dC≦0.5である。
【0052】
関連の直径は、ステムの直径が測定される半径方向軸に平行な半径方向軸に沿った直径である。
【0053】
好ましくは、前記直径の比は、少なくとも1つの放射状の角度範囲(方向)について有効である。例えば、放射状の角度範囲は、45、60、90、120、135、160、および180度よりも大きくてよい。
【0054】
キャップは、前記比が満たされる複数の放射状の角度範囲を含むことができる。
前記比を、あらゆる半径方向において満たすことができ、これは、放射状の角度範囲が360度であることを意味する。
【0055】
原則として、有意な振動モードを備えるキャップを有する確率は、比が0.5よりも小さく、例えば0.4、1/3、0.3、0.25、0.2、または0.1よりも小さい場合に高くなる。これは、前記比が0.5より大きいが1より小さく、dS/dC<1である有意な振動モードを備えるキャップを設計することが原理的に可能であることも意味する。
【0056】
・長手軸に対して垂直であり、かつステムのうちのキャップの始まりに隣接する領域に位置するステムの断面の完全に内側に配置することができる最大の可能な円の直径が、長手軸に対して垂直であり、かつキャップの横方向の延在が最大である位置に位置する断面においてキャップを囲むことができる最小の可能な円の直径の半分以下である。
【0057】
やはり、有意な振動モードを備えるキャップを有する確率は、前記比が0.5よりも小さく、例えば0.4、1/3、0.3、0.25、0.2、または0.1よりも小さい場合に高くなる。これは、前記比が0.5より大きいが1より小さい有意な振動モードを備えるキャップを設計することが原理的に可能であることも意味する。
【0058】
一実施形態において、長手軸に垂直な断面、およびステムのうちのキャップの始まりに隣接する領域におけるステムの内接円は、長手軸に垂直な断面、およびキャップの横方向の延在が最大である位置におけるキャップの外側円の直径の半分以下の直径を有する。
【0059】
内接円の直径と外側円の直径との間の比を、上記の比とすることができる。
・長手方向におけるキャップの最大の延在dLが、ステムよりも半径方向にさらに突出している部分の最大の延在dRの半分以下であり、dL/dR≦0.5である。
【0060】
換言すると、キャップの長手方向の最大の延在とキャップの半径方向の最大の延在との間の比は、0.5以下であり、例えば0.4、1/3、0.3、0.25、0.2、または0.1以下である。
【0061】
・キャップの長手方向の延在は、長手軸からの距離に依存し、長手方向の延在は、長手軸と鋭いリムとの間に最小値を含む。
【0062】
キャップは、キャップの長手方向の延在が長手軸と鋭いリムとの間に最小値を含む場合に、ソノトロードの振動モードに重畳する振動モードを含む放射状部分を備えることができる。これは、とくには、放射状部分が限られた放射状の角度範囲(方向)に制限されている場合に当てはまる。
【0063】
後述のようなセグメントを備えるキャップの実施形態は、セグメントの長手方向の延在が最小である放射状に配置された放射状部分を備えることができ、限られた放射状の角度範囲に限定されたキャップの例である。
【0064】
一実施形態において、キャップは、鋭いリムを備え、キャップのうちの機械的安定性が下げられた領域を介してキャップの本体に接続された少なくとも1つの領域を備える。
【0065】
機械的安定性の低下は、機械的安定性が下げられた領域がキャップの本体に加えられる機械的振動によって弾性的に変形できるような機械的安定性の低下であり得る。キャップの本体の機械的振動は、通常は、ソノトロードの長手方向振動の一部である。
【0066】
機械的安定性が下げられた領域は、弾性要素を備えることができ、あるいは弾性要素であってよい。
【0067】
鋭いリムを備え、キャップのうちの機械的安定性が下げられた領域を介してキャップの本体に接続された領域を、ソノトロード全体によって定められる振動子に加えられ、さらに随意によりキャップ全体(振動モードを支持することができる場合)によって定められる振動子に加えられ、さらに随意によりキャップの本体(振動モードを支持することができる場合)によって定められる振動子に加えられる振動子とみなすことができる。換言すると、前記領域を別個の振動子と理解することができる。
【0068】
一実施形態において、ソノトロードは、キャップの最大の振動励起のために設計される。
【0069】
これは、トランスデューサへの結合のための結合要素を備えるソノトロードによって行うことができる。結合は、トランスデューサへの直接結合であり得る。しかしながら、結合は、通常は、中間ソノトロード、すなわちトランスデューサと本発明によるソノトロードとの間に配置されるソノトロードを介した間接結合である。
【0070】
結合要素は、通常は、ソノトロードの遠位端に配置される。結合要素は、機械的振動、とくには超音波振動をトランスデューサまたは中間ソノトロードからソノトロードへと伝達することができる機械的な堅固な接続に適した任意の種類の結合要素であってよい。例えば、結合要素は、ねじ山、バヨネット接続の要素、またはクランプ機構の要素を含むことができる。
【0071】
ソノトロードは、キャップの最大の振動励起のために設計されることなく結合要素を有することができる。
【0072】
ソノトロードを、機械的振動の予め設定された周波数、すなわち予め設定された動作周波数に合わせて最適化すること、および結合要素とキャップとの間の距離dを予め設定された周波数の波長λの本質的に半分、または予め設定された周波数の波長の半分の倍数にし、すなわちd=n*λ/2(ここで、nは整数)にすることによって、キャップの最大の振動励起のために設計することができる。
【0073】
距離dは、結合素子、とりわけトランスデューサと接触するように設計されたソノトロードの表面と、キャップの質量中心またはキャップの始まりとの間の距離であってよい。
【0074】
一実施形態では、キャップは凸面を備える。
凸面を、キャップの全体形状がマッシュルームの帽子に類似するように設計することができる。これは、キャップが、上記開示の任意の実施形態における凹面を備え、あるいはステムに対して90度以下の開き角度で延びる表面を備える実施形態に、とくに当てはまり得る。
【0075】
一実施形態において、凸面はマッシュルームの帽子として形成されてよい。
凸面は、キャップの遠位面に柔らかく、かつ/または滑らかな表面をもたらすように構成されてよい。
【0076】
処置位置に近い組織の損傷を回避することがソノトロードの主な目的である場合、キャップの凸面、またはより一般的には凸形状は、そのようなソノトロードの特徴的な特徴であり得る。この場合、キャップの質量中心の位置ならびにステムの遠位端と鋭いリムとの間に配置された表面の形状および/または向きなどの上記開示のソノトロードの他の特徴は、存在しなくてもよい。
【0077】
換言すると、本発明は、二次的な態様の一種として、超音波外科器具用のソノトロードであって、近位ヘッドおよび遠位端ピースを有しており、遠位端ピースは、ステム、および機械的振動を使用して組織、とくには骨をアブレーションするためのキャップとして装備されているソノトロードにさらに関する。換言すると、遠位端ピースは、ステム、および機械的振動を使用して組織をアブレーションするためのキャップを備える。ソノトロードは、凸状の形状および少なくとも1つの鋭いリムを備え、凸状の形状は、遠位端ピースの片側に柔らかく、かつ/または滑らかな表面をもたらすように構成されているキャップによって、処置位置の近くの組織の損傷を回避するように構成される。
【0078】
換言すると、柔らかく、かつ/または滑らかな表面は、少なくとも1つの方向においてソノトロードによるアブレーションおよび/またはさらなる有害な影響を防止するように構成される。
【0079】
いくつかの実施形態において、組織の損傷を回避するためのソノトロードは、単独または組み合わせて、本発明の主要な態様によるソノトロードに関して開示された特徴のいずれかを備えることができる。とくに、キャップは、長手軸上に位置する質量中心を備えることができ、ステムの遠位端と鋭いリムとの間に配置された表面の形状および/または向きが、上記開示のとおりであってよい。
【0080】
柔らかく、かつ/または滑らかな表面は、損傷の回避のためにソノトロードにとって不可欠であるが、本発明の主要な態様によるソノトロードは、凸面を備えることができる。しかしながら、凸面は、こすり取りのための構造を備えてもよい。この構造を、凸面の表面粗さによって与えることができ、あるいは凸面上に配置された複数の鋭い要素によって与えることができる。
【0081】
半径方向にさらに突出する部分を、以下のように定義することができ、すなわちステムが、長手軸に対する半径方向に、長手軸から最大距離まで延び、前記部分は、この最大距離よりも大きい長手軸に対する半径方向の延在を有する。
【0082】
いくつかの実施形態において、前記部分は、或る放射状の角度範囲にわたって、前記最大距離よりも大きい半径方向の延在を有する。これは、前記部分が、或る範囲の放射状の方向にわたって、前記最大距離よりもさらに半径方向に延びていることを意味する。しかしながら、前記最大距離が位置する放射状の方向は、必ずしも前記或る範囲の放射状の方向に含まれなくてもよい。
【0083】
放射状の角度範囲は、10度より大きくてよく、とくには20度より大きく、例えば45、60、90、120、135、160、および180度より大きくてよい。とくには、放射状の角度範囲は、ソノトロードが、半径方向の延在が前記最大距離よりも大きい部分がこの放射状の角度範囲にわたっているキャップを備えるがゆえに、ブレード状でなく、あるいはブレード状部分を含まないような放射状の角度範囲である。
【0084】
キャップは、ステムよりも半径方向にさらに突出する部分、すなわち或る放射状の角度範囲にわたって半径方向の延在が前記最大距離、すなわちステムの最大の半径方向の延在よりも大きい部分を、少なくとも2つ、例えば2つ、3つ、または4つ含むことができる。
【0085】
キャップのうちのステムよりもさらに半径方向に延在する部分は、あらゆる半径方向においてステムよりも延在することができる。換言すると、ステムよりもさらに半径方向に延在する部分の放射状の角度範囲が、360度であってよい。
【0086】
任意の実施形態において、キャップのうちのステムよりもさらに半径方向に延在する部分は、ソノトロードの使用中に組織と接触するように装備された接触部位を含むことができ、接触部位は、鋭いリムを含むことができる。
【0087】
任意の実施形態において、キャップのうちのステムよりもさらに半径方向に延在する部分は、鋭いリムを備えることができる。
【0088】
一実施形態において、鋭いリムは、下記のうちの少なくとも1つによって形成される。・キャップは凸面を備え、凸面は遠位側を向いており、鋭いリムは、凸面から凹状である表面またはステムに対して90度以下の開き角度で延びる表面への移行部によって形成される。
【0089】
・平坦、凹状、または凸状である第1の表面から、第1の表面とは異なる方向を向いた平坦、凹状、または凸状である第2の表面への移行部。
【0090】
平坦な表面、または場合によっては平坦な表面のうちの1つは、とくには半径方向の端部においてステムに対して90度以下の開き角度で延びる表面であってよい。
【0091】
凹状の表面、または場合によっては凹状の表面のうちの1つは、とくには半径方向の端部においてステムの遠位端と鋭いリムとの間に配置された凹状の表面であってよい。
【0092】
凸状の表面、または場合によっては凸状の表面のうちの1つは、とくには半径方向の端部において遠位側を向いた凸状の表面であってよい。
【0093】
・凸状の表面、ステムの遠位端と鋭いリムとの間に配置された凹状の表面、またはステムに対して90度以下の開き角度で延びる表面の1つ以上の突出部、とくには前記表面の半径方向の端部に配置された1つ以上の突出部。
【0094】
例えば、キャップは、遠位側を向いた凸状の表面と近位側を向いた凹状の表面とを備えることによってマッシュルーム状であってよい。次いで、鋭いリムを、遠位側を向いた凸状の表面から近位側を向いた凹状の表面への移行部によって形成することができる。
【0095】
キャップの具体的な実現とは無関係に、鋭いリム(または場合によっては、複数の鋭いリム)を、キャップのうちのステムよりもさらに半径方向に突出する部分に配置することができる。
【0096】
一実施形態において、キャップの具体的な実現とは無関係に、鋭いリム(複数可)を、キャップ、例えばマッシュルーム状のキャップの半径方向最も外側の部分に配置することができる。換言すると、リムは、キャップのうちのキャップの他のすべての部分よりも長手軸までの距離が大きい部分に配置され、あるいはそのような部分によって形成され、長手軸までの距離は、半径方向に沿って(長手軸に対して半径方向に)測定される。
【0097】
キャップの具体的な実現とは無関係に、鋭いリム(複数可)は、長手軸を中心とする回転に関して回転対称であってよい。例えば、鋭いリムは、長手軸上に中心を有する円の形状を有することができる。
【0098】
一実施形態において、キャップの具体的な実現とは無関係に、鋭いリムは、複数の(すなわち、少なくとも2つの)リム要素によって形成されてよい。
【0099】
リム要素を、凹部、とくには長手軸に向かって半径方向に延びる凹部によって分離させることができる。
【0100】
リム要素を、長手軸を中心とする回転に関して回転対称であるように配置することができる。これは、長手軸を中心とするキャップの360°/n(nは整数)の回転が、キャップの対称変換であることを意味する。リム要素の数はn個であってよい。しかしながら、例えば異なる種類のリム要素を備え、異なるリム要素を設定された順序で配置することによって、リム要素の数がnとは異なる実施形態を想定することができる。
【0101】
あるいは、鋭いリムまたはリム要素を、鋭いリムが長手軸に関して回転対称ではないように配置することができる。
【0102】
しかしながら、キャップの全体形状は、少なくとも本発明の主要な態様によるソノトロードに関する限り、キャップの質量中心が長手軸上にあるという要件が満たされるように選択されなければならない。これは、リムの数、種類、および配置を相応に選択することによって行うことができ、あるいは均等化重量を使用することによって行うことができる。
【0103】
一実施形態においては、鋭いリムまたはリム要素を、一セグメントのみに配置することができる。これは、鋭いリムまたはリム要素を、限られた放射状の方向の範囲(限られた放射状の角度範囲)内にのみ配置できることを意味する。例えば、鋭いリムまたはリム要素の配置を、ソノトロードの使用中にアブレーションをもたらすように構成されたソノトロードの領域に限ることができる。
【0104】
やはり、キャップの全体形状は、少なくとも本発明の主要な態様によるソノトロードに関する限り、キャップの質量中心が長手軸上にあるという要件が満たされるように選択されなければならない。
【0105】
リムまたはリム要素を、接触部位を限定するように配置することができる。
リムまたはリム要素を、用途に固有のやり方で配置することができる。例えば、リムまたはリム要素を、特定の骨または骨の特定の部分を処置し、あるいは骨または骨内の特定の切断を処置または確立するように構成することができる。これに加え、あるいはこれに代えて、リムまたはリム要素を、例えば接触部位を限定し、かつ/または鋭いリムを接触部位内に限定することによって、処置領域を局所化し、すなわち処置領域の制御性を改善するように配置することができる。
【0106】
例えば、リムまたはリム要素を、ソノトロードおよび/または超音波外科器具を長手軸を中心にして回転させることなく、特定の骨、骨の特定の部分、あるいは骨または骨内の特定の切断を処置するように構成することができる。
【0107】
例えば、リムまたはリム要素を、本質的に平坦な骨表面に沿った処置、小さい幅を有する明確に画定された凹部の確立、または小さい骨の切断、などのために、90度未満の放射状の角度範囲内に配置することができる。放射状の角度範囲は、1~90度の間で曲がった骨表面に沿った処置のために90~180度の間であってよく、放射状の角度範囲は、1度に近い曲がりが存在する場合、好ましくは90度に近く、放射状の角度範囲は、90度に近い曲がりが存在する場合、好ましくは180度に近い。さらに、例えば、(より小さい放射状の角度範囲によって確立される幅と比較して)より大きい幅を有する凹部を確立させ、あるいは(より小さい放射状の角度範囲によって切断することができる骨と比較して)より大きい(とくには、より広い)骨を切断するために、90~180度の角度範囲を使用することができる。結果として、リムまたはリム要素を、例えば、90度を超えて湾曲した骨表面、さらに大きな凹部、またはさらに大きな(より広い)骨の切断のために、180度を超える放射状の角度範囲内に配置することができる。換言すると、放射状の角度範囲を、例えば、処置される骨の形状、確立させるべき凹部の形態、および/または切断される骨の寸法に適合させることができる。
【0108】
リムまたはリム要素を、複数のセグメント、すなわち少なくとも2つの放射状の角度範囲に配置することができ、2つの範囲は、リムまたはリム要素を含まない領域によって隔てられる。
【0109】
例えば、セグメントは、凹部、とりわけ長手軸に向かって半径方向に延びる凹部によって隔てられてよく、さらには/あるいは組織をアブレーションするようには構成されていないセグメントによって隔てられてよい。
【0110】
キャップの周面を、鋭いリムまたはリム要素の所望の位置に適合させることができる。
周面を、前記最大距離よりも大きい半径方向の延在を有する部分と、前記最大距離よりも小さい半径方向の延在を有する部分とによって形成することができる。周面は、鋭いリムまたはリム要素と同じ対称性を有することができる。
【0111】
一実施形態において、ソノトロードは、上述の鋭いリムの任意の実施形態による少なくとも2つの鋭いリムを備え、これら少なくとも2つの鋭いリムは、近位-遠位方向に沿ってオフセットされる。換言すると、少なくとも2つの鋭いリムは、ソノトロードの長手方向に沿ってオフセットされる。
【0112】
例えば、少なくとも2つの鋭いリムを、鋭いリムが長手軸に平行な法線を有する鏡面に関して鏡面対称に配置されるように配置することができる。
【0113】
少なくとも2つの鋭いリムのこのような配置は、ステムの長手方向の振動によって励起可能であり、少なくとも2つの鋭いリムの領域において最大振幅を有する少なくとも1つの振動モードを、キャップが備える場合、および/または少なくとも2つの鋭いリムを備え、キャップのうちの機械的安定性が低い領域を介してキャップの本体に接続された少なくとも1つの領域を、キャップが備え、したがって鋭いリムを備える領域が自身の(「自立」)振動挙動を備える場合に、とくに有利である。これらの場合、キャップ(場合によっては、少なくとも2つの鋭いリムを備える領域)は、ステムの長手方向の振動によって励起可能であり、少なくとも2つの鋭いリムが主に近位-遠位の方向に振動する振動モードを備えることができる。
【0114】
少なくとも2つの鋭いリムを、半径方向(長手軸に対して半径方向)にオフセットさせることができる。
【0115】
例えば、キャップの周面は、本質的に半径方向(長手軸に対して半径方向)に一致する表面法線を有する表面を含むことができる。前記表面は、長手軸を囲む仮想の表面の一部分であってよく、この仮想の表面上の各点は長手軸から同じ距離を有する。前記表面は、長手軸を囲む表面であってよく、この表面上の各点は、長手軸から同じ距離を有する。
【0116】
次いで、前記表面から、遠位方向に向かう成分を少なくとも含む表面法線を有するキャップの表面への移行部が、第1の鋭いリムを形成することができ、前記表面から、近位方向に向かう成分を少なくとも含む表面法線を有するキャップの表面への移行部が、第2の鋭いリムを形成することができる。
【0117】
これに代え、あるいはこれに加えて、キャップは、長手軸からの軸方向距離がキャップの隣接する表面の半径方向距離よりも大きく、または小さくなっている少なくとも1つの段部を備えることができる。キャップの隣接する表面を、例えば、凸面、平坦面、凹面、または別の段部によって形成することができる。
【0118】
例えば、キャップは、遠位-近位の方向に沿って、凸面に対して長手軸からのキャップの周面の距離を増加させる第1の段部と、第1の段部に対してキャップの周面の前記距離を増加させる少なくとも1つのさらなる段部と、最も近位側の段部から近位側を向いたキャップの表面への移行部とを含むことができる。
【0119】
上述の任意の実施形態における半径方向に本質的に一致する表面法線を有しかつ鋸歯状である周面を備えるキャップを有するソノトロードが、少なくとも2つの鋭いリムを備えるソノトロードの別の例である。
【0120】
言うまでもないが、鋭いリムのさまざまな実現を任意のやり方で組み合わせて、少なくとも2つの鋭いリムを有するソノトロードを設計することができる。
【0121】
少なくとも2つの鋭いリムを有するソノトロードは、鋭いリムのうちの少なくとも1つが、使用時にソノトロードが遠位方向に移動するときにアブレーションをもたらすように構成され、鋭いリムのうちの少なくとも1つが、ソノトロードが近位方向に移動するときにアブレーションをもたらすように構成されている場合に、ソノトロードの使用時にソノトロードが遠位方向に移動するとき、およびソノトロードの使用時にソノトロードが近位方向に移動するときにアブレーションをもたらすという利点を有する。
【0122】
したがって、本発明は、開示された任意の実施形態によるソノトロードであって、上記開示の任意の実施形態に従って実現することができる少なくとも2つの鋭いリムをさらに有し、鋭いリムのうちの少なくとも1つが、使用時にソノトロードが遠位方向に移動するときにアブレーションをもたらすように構成され、鋭いリムのうちの少なくとも1つが、ソノトロードが近位方向に移動するときにアブレーションをもたらすように構成されているソノトロードに関する。
【0123】
さらに、複数の鋭いリムは、脊椎骨、寛骨、肩甲骨、および多くの他の骨または骨の領域の場合のように、とくには処置すべき組織、例えば骨が湾曲している場合へと、ソノトロードの適用可能性を拡張する。
【0124】
本発明の発明者は、破片またはデブリ(処置された硬組織または軟組織のデブリ)の除去を、頷き運動(nodding motion)を行うソノトロードによっても促進できることを観察することができた。その場合、ソノトロードは、デブリを除去するシャベルの様式で作用する。したがって、一実施形態において、ソノトロードは、振動の支配的なx振幅、すなわち長手軸に沿った支配的な振動に、有意なz振幅、すなわち半径方向の振動を加える設計を有する。これは、組織が押す動きによってアブレーションされるだけでなく、押す動きに対して本質的に垂直な運動によってもアブレーションされることをさらに引き起こす。これは、アブレーション性能をさらに高め、組織、とくに皮質骨などの骨のアブレーションの改善を可能にする。
【0125】
一実施形態において、頷き運動は、上述のソノトロードの振動モードに重畳する振動モードを含む半径部分の頷き運動である。換言すると、頷き運動は、キャップの少なくとも1つの下位部分の頷き運動である。
【0126】
以下の記述または実装は、本明細書に記載のすべての態様および実施形態に関する。
一実施形態において、ステムの直径は、遠位方向に減少することができる。換言すると、ステムは、遠位方向にテーパ状である少なくとも1つの領域を含むことができる。
【0127】
テーパ領域は、ブースト効果を有することができ、すなわち機械的振動の振幅および強度を増大させることが観察されている。
【0128】
ソノトロードは、結合要素のステムへの移行のためのテーパ領域をさらに含むことができる。
【0129】
一実施形態において、ソノトロードはスリーブを備え、スリーブは、ステムをスリーブの外側から遮蔽し、鋭いリムを少なくとも横方向に露出させるやり方で、ステムの周囲に配置され、あるいは配置されるように構成される。
【0130】
とくには、スリーブを、ステム、とりわけキャップに隣接する部分を除くステム全体を、横方向において取り囲むように設計することができる。
【0131】
一実施形態において、ソノトロードは、処置位置への流体の供給ならびに/あるいは処置位置からの流体および/またはデブリの除去のための手段を備える。
【0132】
流体は、冷却液および/または潅注液であってよい。
供給のための手段は、ソノトロード内に配置されたチャネルであってよい。
【0133】
本発明による任意の実施形態におけるソノトロードは、例えば、以下の寸法を有することができる。
【0134】
・キャップは、2~15mmの間の直径を有することができ、内視鏡用途については例えば2~6、3~5、または3~4mmの間、「観血」用途については例えば4~10または5~8mmの間の直径を有することができる。
【0135】
・ステムは、1~10mmの間の直径を有することができ、内視鏡用途については例えば1~6、1~3、または1~2mmの間、「観血」用途については例えば2~8または3~6mmの間の直径を有することができる。
【0136】
・ステムよりも半径方向にさらに突出する部分は、少なくとも0.5mmだけさらに突出することができる。例えば、0.5~4mm、例えば0.5~2または0.5~1mm(内視鏡用途)あるいは1~2mm(「観血」用途)だけさらに突出することができる。
【0137】
とくには、用途とは無関係に、ステムの寸法は、ステムよりも半径方向にさらに突出する部分が少なくとも0.5mmだけさらに突出するように選択される。
【0138】
・キャップの長手方向の延在は、1~5mmの間であってよい。
・ステムおよびソノトロード全体の長手方向の延在を、上記開示のキャップの最大の振動励起の要件を満たすように選択することができる。
【0139】
正確な寸法は、「内視鏡」用途および「観血」用途について提示した例示的な数によって示されるように、用途に固有である。
【0140】
本発明の発明者は、とくには焼結(選択的レーザ焼結など)を使用する付加製造法によって製造されたソノトロードが、いくつかの驚くべき利点を有することを発見した。本発明による超音波外科器具は、通常は、すすぎ液(例えば、水)を手術場へと供給することができるライン(チャネル)を備える。前述の製造方法を使用して生成された表面構造は、その液体による冷却効率を高める。1つの説明は、この表面構造がソノトロードの表面上に適切な液体膜をもたらして維持することであり得る。1つの可能な効果は、焼結プロセスによって生成されたポケットが側面へと開いておらず、静水圧クッションをもたらすことだと思われる。さらに、付加製造法を使用することによってのみ、例えば随意により互いの間の距離を最小限にした隆起構造など、本明細書に記載のソノトロードの有利な特徴のいくつかを製造することが可能である。さらに、付加製造を使用することで、ソノトロードの異なる要素間の移行を適合させることが可能になる。
【0141】
本発明の一実施形態は、例えば本明細書に記載の任意の実施形態によるソノトロードなどのソノトロードであって、ソノトロードの表面、とくには鋭いリムを形成する表面などのソノトロードの動作時に組織に接触するように配置されたソノトロードの表面、および/または凸面などの遠位側を向いた表面が、凸状のマイクロ構造を有しているソノトロードに関する。これらのマイクロ構造は、球または円の外側のように外側に湾曲または丸みを帯びている。本発明の別の実施形態は、例えば本明細書に記載の任意の実施形態によるソノトロードなどのソノトロードであって、ソノトロードの表面、とくには鋭いリムを形成する表面などのソノトロードの動作時に組織に接触するように配置されたソノトロードの表面、および/または凸面などの遠位側を向いた表面が、1~40μmの間、好ましくは5~15または20μmの間の平均粗さRaを有しているソノトロードに関する。これにより、表面テクスチャの成分としての表面粗さは、その理想的な形状からの実際の表面の法線ベクトルの方向の偏差によって定量化される。算術平均粗さRaは、評価長さ内の中心線の周りの偏差から決定されたフィルタ処理された粗さプロファイルの算術平均値であり、最も広く使用されている一次元粗さパラメータである。
【0142】
一般に、ソノトロードの任意の凸状マイクロ構造の最高点と、凸状マイクロ構造の位置におけるソノトロード表面との間の距離が、振動の振幅よりも小さいと好都合であることが示されている。これにより、凸状マイクロ構造の最高点は、半径がマイクロ構造の位置におけるソノトロード表面の仮想の法線と一致する所定の半球の点である。凸状構造上の対応する2点(とくには、各々の凸状構造の最高点)間の平均距離は、20~100μm、好ましくは40~80μmであってよい。
【0143】
焼結プロセスから生じる表面粗さに起因して、キャップ、とくには接触部位と、組織との間に、点接触が存在する。したがって、より高いエネルギー密度が生じる。しかしながら、粒度分布によって生じる凸面部分は、例えばサンドブラストによって作られた粗さ構造よりも安定である。
【0144】
したがって、本発明の一実施形態は、ソノトロードまたはその一部、とりわけキャップまたはその一部が、付加製造法を使用して製造される本明細書で定義されるソノトロードの製造方法に関する。直接金属レーザ焼結(DMLS)は、本発明によるソノトロードの製造のために使用に適したそのような付加製造プロセスである。これにより、ソノトロード、とくには鋭いリムを形成する表面などのソノトロードの動作中に組織と接触するように配置されたソノトロードの表面、および/または凸面などの遠位側を向いた表面は、レーザを使用し、粉末金属材料を選択的に焼結して(加熱して融着させて)層にすることで構築される。続いて、熱処理工程を実行することができる。付加製造に起因して生じるような表面は、平滑化(均一化または研磨)されないことが好ましい。使用される粉末は、40~80μmの平均粒径を有し得る。
【0145】
ソノトロード、とくには鋭いリムを形成する表面などのソノトロードの動作中に組織と接触するように配置されたソノトロードの表面、および/または凸面などの遠位側を向いた表面の製造に適した別の方法は、ショットブラストまたはショットピーニングである。サンドブラストは、あまり適していない。金属粒子の焼結プロセスからもたらされる表面構造は、粗さおよび粒径などのパラメータによって完全に説明することが不可能である。それにもかかわらず、この特定の表面構造は、好都合であることが証明されている。したがって、本発明は、ソノトロードまたは少なくともキャップもしくは接触部位が、直接金属レーザ焼結などの付加製造方法を使用して製造される本発明によるソノトロードに関する。とくには、本発明は、ソノトロード、とくには鋭いリムを形成する表面などのソノトロードの動作中に組織と接触するように配置されたソノトロードの表面、および/または凸面などの遠位側を向いた表面が、直接金属レーザ焼結などの付加製造法を使用して製造される超音波外科器具用のソノトロード、とくには本明細書に記載の任意の実施形態によるソノトロードに関する。他の実施形態は、直接金属レーザ焼結などの付加製造法を使用して製造された本明細書に記載されるように装備または設計されたソノトロードに関する。
【0146】
例えば、ソノトロードの表面またはキャップの表面もしくは接触部位の表面は、5~40μmの間の平均粗さRaを有する。
【0147】
粗さが摩擦を最小にするためだけに使用される場合、1~20μmの間、とくには1~15μmの間の粗さを有することで充分である。本発明によるソノトロードをやすりとして使用すべき場合、粗さは、好ましくは10~100μmの間である。ソノトロードをやすりとして使用する目的は、組織、例えば骨、とくには切断の結果としてのエッジを滑らかにすることである。これは、主に、粗い骨領域が、やすりで平らにされない場合に、周囲の組織に損傷を引き起こす可能性があるため、きわめて有用である。しかしながら、粗さを、やすりおよびこすり取りの特性に関して、さらに攻撃的にすることもできる。例えば、粗さは、例えば100~250の間、100~150の間、または100~120μmの間など、最大500μmであってよい。表面は、対応する表面粗さの代わりに、このサイズの良好に定められた構造を含むことができる。
【0148】
さらに、本発明は、組織のアブレーションのための超音波外科器具であって、超音波トランスデューサを収容するハンドピースと、前記トランスデューサに機械的に結合した本明細書に定められる任意の実施形態によるソノトロードとを備える超音波外科器具に関する。本明細書において使用されるとき、「超音波外科器具」という用語は、超音波トランスデューサを有する外科用器具を指す。本発明のこの超音波外科器具は、超音波トランスデューサに接続された本明細書に記載のソノトロードを備える。超音波トランスデューサは、高周波のAC電圧を対応する機械的振動に変換する圧電素子を備えることができる。一例として、振動の周波数は、15kHz~40kHzの間にあってよい。
【0149】
好ましくは、本発明の超音波外科器具の超音波トランスデューサまたはハウジングとソノトロードとは、(結合要素を介して)互いに結合し、ソノトロードは、近位端から遠位端、すなわちキャップへと可能な限り完全に振動エネルギーを伝達するように設計される。
【0150】
好ましくは、本発明の任意の実施形態によるソノトロードの材料は、例えばステンレス鋼またはチタンなどの金属材料である。ソノトロードまたはソノトロードの少なくともキャップもしくはソノトロードの少なくとも接触部位を、チッ化チタン(TiN)でコーティングすることができる。したがって、本発明は、機械的振動を使用して組織、とりわけ骨をアブレーションするためのステムおよびキャップを有する超音波外科器具用のソノトロード、例えば本明細書に記載の任意の実施形態によるソノトロードに関し、ソノトロードあるいはソノトロードの少なくともキャップまたは接触部位は、チッ化チタンでコーティングされ、好ましくは直接金属レーザ焼結などの付加製造法を使用して製造される。
【0151】
ソノトロードあるいはキャップまたは接触部位の表面上の球状マイクロ構造が、組織のアブレーション中に作用する力によって変形し得ることが示されている。したがって、ソノトロードあるいはキャップまたは接触部位をコーティングして、表面を硬くすることが好ましい。TiNは、硬度、靭性、付着、および不活性の理想的な組み合わせを有し、組織のアブレーション中にブリスター、フレーク、または欠けを生じることがない。
【0152】
別の利点は、TiNコーティングによって生じる表面の長さに沿った熱の最適化された分布である。このようにして、ホットスポットが回避され、外科切断器具の長さに沿った熱の分配または分散が、コーティングが存在しない場合または接触部位のみのコーティングの場合に生じ得る接触部位、とくには鋭いリムにおける熱の集中を妨げる。
【0153】
TiNコーティングを、環境的に安全な物理蒸着(PVD)真空システムによって適用することができる。いくつかのプロセスは、低温アーク蒸着を使用してチッ化チタンコーティングを堆積させるが、高温スパッタリングまたは他の周知のコーティングプロセス(電子ビーム加熱または化学蒸着(CVD))によって適用することも可能である。一般に、高エネルギーの真空環境において純チタンが昇華してチッ素と反応する。TiN膜を、チッ素雰囲気中での反応性成長(例えば、アニーリング)によってTiワークピース上に生成することもできる。
【0154】
TiNコーティングは、好ましくは5μm未満、より好ましくは3μm未満の薄いコーティングとして適用される。薄いチッ化チタンコーティングは、低い摩擦係数を有する硬い外面をキャップに提供する。
【0155】
好ましくは、ソノトロードと振動発生器との間の接続は、解除可能であり、ソノトロードは使い捨てである。
【0156】
本発明による超音波外科器具は、例えばハンドヘルド装置であり、そのハンドル部分が振動発生器を収容し、バッテリまたはハンドピースを制御および電源ユニットに接続する対応するケーブルによって振動発生器に必要なエネルギーが供給される。振動のための好ましい周波数は、超音波範囲、好ましくは15~40kHzまたは20~30kHzの範囲にあり、ステムの遠位端について20~120μmの間、あるいは好ましくは40~100μmの間または60~100μmの間のマイクロメートル範囲の振幅を達成するために充分なエネルギーである。
【0157】
1つまたは複数のセグメントにのみ配置された1つまたは複数の鋭いリムまたはリム要素など、処置領域の制御性および/または延在を改善するための手法が、ソノトロードに関して上記で開示されている。効率を改善し、望ましくない振動の励起を回避するための手法も、上記で開示されている。
【0158】
一実施形態において、超音波外科器具は、ハンドピースに取り付けられ、あるいは取り付けることができるスリーブを備えることができ、スリーブは、スリーブがハンドピースに取り付けられ、ソノトロードが超音波トランスデューサに接続されたときに、ステムを横方向において囲み、鋭いリムを少なくとも横方向に露出させるように設計されている。
【0159】
換言すると、スリーブは、処置領域の制御性および/または延在を改善するように構成されたキャップの任意の実施形態に加え、あるいは代えて、スリーブの内部およびスリーブの内部と外部との間の開口部を定める。この実施形態において、スリーブは、ハンドル部分に取り付けられ、あるいは取り付け可能であり、スリーブがハンドル部分に取り付けられ、ソノトロードが超音波トランスデューサに接続されたときに、任意の実施形態によるステムおよびキャップを、キャップのうちの組織をアブレーションするように構成された限られた部分を除いて、外部から遮蔽するように設計される。
【0160】
スリーブ、とくにはスリーブの1つまたは複数の開口部を、用途に固有のやり方で配置することができる。例えば、1つまたは複数の開口部を、特定の骨または骨の特定の部分を処置し、あるいは骨または骨内の特定の切断を処置または確立するように構成することができる。これに加え、あるいはこれに代えて、1つまたは複数の開口部を、例えば接触部位を限定し、かつ/または鋭いリムを接触部位内に限定することによって、処置領域を局所化し、すなわち処置領域の制御性を改善するように配置することができる。
【0161】
一実施形態において、スリーブは、超音波外科器具を回転させることなく、とくにはハンドル部分を回転させることなく、ソノトロードの長手軸を中心にして回転させることができるように、ハンドル部分に取り付けられ、あるいは取り付け可能である。
【0162】
さらに、超音波外科器具は、設定された方向に対する開口部の向きを示すように構成された向きインジケータを備えることができる。
【0163】
開示される任意の実施形態におけるスリーブは、組織を望ましくない処置から保護するだけではない。ソノトロードに対する組織の影響も低減する。とくには、ソノトロード、例えばステムが組織に接触することによる機械的振動の減衰を防止する。さらに、例えば軟組織によって引き起こされてソノトロードに作用する横力を低減することができる。
【0164】
スリーブは、長いソノトロードに関して、例えばその横方向の延在がキャップの最大の振動励起のために設計されており、すなわち横方向の延在dがd=n*λ/2(λはソノトロードの動作周波数の波長であり、nは整数である)の範囲にあるがゆえに、とくに有利である。
【0165】
またさらに、スリーブは、処置位置への冷却剤および/または潅注流体の供給、ならびに/あるいは例えば吸引による処置位置からのデブリの輸送を支援することができる。
【0166】
超音波外科器具のこの実施形態は、開口部によって与えられるよりも大きな処置領域を処置するように構成されたソノトロードとの組み合わせにおいて、とくに有利である。例えば、ソノトロード、より正確にはソノトロードのキャップは、長手軸を連続的に取り囲み、あるいはいくつかの凹部を除いて連続的に取り囲む少なくとも1つの鋭いリムを有することができる。換言すると、鋭いリムは、本質的に長手軸の周りに円を形成することができ、円の中心は長手軸上にある。
【0167】
回転可能なスリーブを有する実施形態は、複雑な骨形状などの複雑な組織形状の処置、および/またはアクセス困難な処置領域に有利である。これにより、超音波外科器具の最小限の操作で処置領域を調整することができ、処置領域が常に良好に定めされ、スリーブが処置されるべきでない組織を保護する。
【0168】
本発明の別の態様は、組織をアブレーションする方法に関する。したがって、本発明は、ソノトロードを使用し、とくには開示された任意の実施形態における本発明によるソノトロードを使用する方法であって、開示された任意の実施形態による超音波外科器具にソノトロードを用意するステップと、組織をアブレーションする(こすり取る、やすりがけする、削る、切断する、)ようにキャップを振動させるステップとを含む方法に関する。
【0169】
本方法は、
・超音波外科器具を押し込みモードおよび/または引っ張りモードで動作させること、
・例えば、鋭いリムの振動振幅が最大で100μmになるように超音波外科器具を動作させることによって、硬組織、とくには骨組織のアブレーションに適したやり方で超音波外科器具を動作させ、あるいは、例えば、鋭いリムの振動振幅が150μm以上になるように超音波外科器具を動作させることによって、軟組織のアブレーションに適したやり方で超音波外科器具を動作させること、
・ソノトロードを回転させずに超音波外科器具のスリーブを回転させること
のうちの少なくとも1つなど、ソノトロードの特徴に直接結び付いた任意のステップをさらに含むことができる。
【0170】
冒頭で述べたように、ソノトロードの改善は、本発明に従って改善されたソノトロードを、切開外科手術だけでなく最小侵襲外科手術(MIS)においても使用できるようなやり方での改善である。
【0171】
一実施形態において、MISに使用されるソノトロード、したがって超音波外科器具は、以下を備える。・長手軸に沿って延びるステムと、機械的振動を使用して組織についてアブレーションプロセスを実行するように構成されたキャップ。キャップは、ステムよりも半径方向にさらに突出する少なくとも1つの一部分を備え、この少なくとも1つの一部分は、少なくとも1つの鋭いリムを備える。キャップは、ステムの遠位端と前記一部分の鋭いリムとの間に配置された表面をさらに備え、この表面は、凹状であり、さらには/あるいはステムに対して90度以下の開き角度で延びる。さらに、キャップは、長手軸上に質量中心を備える。
【0172】
キャップ、ステム、ステムよりも半径方向にさらに突出する部分、鋭いリム、およびステムの遠位端と鋭いリムとの間に配置された表面は、開示された任意の実施形態に従うことができる。
【0173】
キャップの質量中心は、開示された任意の手段によって長手軸上にあってよい。
・予め設定された周波数の波長の本質的に半分または予め設定された周波数の波長の半分の倍数である長さdを有し、したがってd=n*λ/2(nは整数)であるステム。
【0174】
ステムの長さは、直線状または直線化されたソノトロードの結合要素とキャップとの間の距離と考えることができる。ステムの長さは、例えばソノトロードが、長手方向振動の最大振幅がキャップ内、例えばキャップの質量中心にあり、近位側のキャップの始まりには位置しないように設計される場合、n*λ/2から或る程度逸脱し得る。また、結合素子の実現が、ステムをn*λ/2から或る程度逸脱させる可能性がある。
【0175】
ステムは、MISにおいて使用されるように構成されたソノトロードの多くの実施形態において、一定の直径を有する。
【0176】
・ステムをスリーブの外部から遮蔽するようにステムの周りに配置され、あるいは配置されるように構成されたスリーブ。スリーブは、上記開示の任意の実施形態に従うことができる。
【0177】
冒頭で述べたように、本発明によるソノトロードを、硬組織または軟組織のアブレーション用に構成することができる。
【0178】
150μm未満、とくには100μm未満、例えば40~80μmの間の鋭いリムの振動振幅が、硬組織、とくには骨組織のアブレーションに最も効率的であることが観察されている。
【0179】
関連する振動振幅は、とくには、長手軸に平行な軸に沿った振動振幅である。
振動振幅は、通常は、2つの方向転換点の間の距離として測定される。
【0180】
一実施形態において、ソノトロードは、ソノトロードの使用時の鋭いリムの振動振幅が100μm以下であるように構成される。
【0181】
他方で、100μmを超え、とくには150μmまたは200μmを超え、例えば150~300μmの間である鋭いリムの振動振幅が、軟組織のアブレーションに最も効率的であることが観察されている。この範囲の鋭いリムの振動振幅が軟組織のアブレーションに効率的である1つの理由は、軟組織がアブレーションされないように充分に変形することがもはやできないからである。
【0182】
一実施形態において、ソノトロードは、ソノトロードの使用時の鋭いリムの振動振幅が150μm以上であるように構成される。
【0183】
しかしながら、超音波外科器具用のソノトロードの材料は、通常は、フォノン、すなわち材料の伸びだけでは100μmを超える振動振幅を達成することができない材料および設計である。
【0184】
したがって、軟組織をアブレーションするためのソノトロードは、いくつかの実施形態において、鋭いリムの振動振幅を増大させるための手段、とくには上述した任意の手段を備える。
【0185】
とくには、そのようなソノトロードは、上記開示のテーパ領域を有するステム(「ブースト効果」)、上記の任意の実施形態におけるキャップの振動モード、とくにはキャップの最も半径方向外側の部分に最大振幅を有する振動モードの存在を助けるキャップの全体形状、および、とくには鋭いリムを備える領域が「自身の」(「自立」)振動モードを備えるように機械的安定性を低くしたキャップの領域、のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0186】
これとは対照的に、硬組織、とくには骨組織のアブレーションのためのソノトロードは、鋭いリムの振動振幅を増加させるための手段を必要としない。これは、フォノンによって達成できる振動振幅が、硬組織のアブレーションに充分だからである。
【0187】
図面の簡単な説明
本発明による装置および方法の例示的な実施形態は、添付の図面に関連してさらに詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0188】
【
図1】ハウジングの内部に配置されたトランスデューサを備え、ソノトロードをハウジングの先端に有している組織のアブレーションのために超音波外科器具の遠位部を示している。
【
図2】本発明のソノトロードの第1の例示的な実施形態の概略図を示している。
【
図3】本発明のソノトロードの第1の例示的な実施形態の概略図を示している。
【
図4】
図2および
図3によるソノトロードのキャップの詳細図を示している。
【
図5】本発明のソノトロードのさらなる例示的な実施形態の概略図を示している。
【
図6】
図5によるソノトロードのキャップの詳細図を示している。
【
図7】
図5および
図6の例示的な実施形態の一変種の概略図を示している。
【
図8】
図7によるソノトロードのキャップの詳細図を示している。
【
図9】本発明のソノトロードのまたさらなる例示的な実施形態の概略図を示している。
【
図10】
図9による例示的な実施形態の一変種の概略図を示している。
【
図11】
図10によるソノトロードのキャップの詳細図を示している。
【
図12a】スリーブによって部分的に遮蔽されたソノトロードの概略図を示している。
【
図12b】スリーブによって部分的に遮蔽されたソノトロードの断面図を示している。
【
図13】キャップのさらなる例示的な実施形態の概略図を示している。
【
図14】キャップのさらなる例示的な実施形態の概略図を示している。
【
図15】キャップのさらなる例示的な実施形態の概略図を示している。
【
図16】キャップのさらなる例示的な実施形態の概略図を示している。
【
図17】冷却および/または処置位置からのデブリの輸送を促進するための手段を備えるソノトロードの例示的な実施形態の概略図を示している。
【
図18】冷却および/または処置位置からのデブリの輸送を促進するための手段を備えるソノトロードの例示的な実施形態の概略図を示している。
【
図19】本発明の二次的な態様によるソノトロードの例示的な実施形態の概略図を示している。
【
図20】
図19によるソノトロードのキャップの詳細図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0189】
発明を実施するための形態
添付のすべての図において、同じ参照番号は、同じ要素または同じ機能を果たす同様の要素を指し示す。
【0190】
図1が、組織のアブレーションのための超音波外科器具の遠位部を示している。器具は、ハウジング2の内部に配置された圧電スタックなどのトランスデューサ3と、ハウジング2の先端に配置されたソノトロード1とを備える。
【0191】
図2および
図3が、本発明の主要な態様によるソノトロード1の第1の例示的な実施形態の2つの異なる図を示している。
【0192】
ソノトロード1は、結合要素13(図示の実施形態においては、ねじ山13)を有する近位端4と、ステム21と、キャップ22とを有する。キャップ22は、凸形状24と、少なくとも1つの鋭いリム23とを含む。キャップは、骨棘などの望ましくない骨構造などの組織をアブレーションする(掻き取る、こすり取る)ように設計され、そのような目的に適する。図示の実施形態において、鋭いリムを使用して組織を掻き取り、あるいは削り取ることができる一方で、凸形状24の表面(凸面、アーチ形表面)は滑らかであり、組織を保護するように形成される。
【0193】
図4が、
図4および
図5に示したキャップ22の詳細図を示している。
ソノトロード1は、長手軸15に沿って延在する。
【0194】
図2に示される実施形態において、近位端4の平坦化(テーパ)領域12が、近位端4とステム21との間の移行部を形成する。
【0195】
平坦化(テーパ)領域12は、ソノトロードの近位端4の遠位端の直径をステム21の好ましい直径まで減少させる。近位端4の直径は、結合要素13によって決定され、さらには/あるいはソノトロード1の結合面40をもたらすための必要性によって決定され得る。
【0196】
さらなる平坦化(テーパ)領域12が、ステム21内に配置される。このように配置された平坦化(テーパ)領域12は、「ブースタ」として機能することができ、これは、平坦化領域12の近位側の機械的振動の振幅および強度と比較して、平坦化領域12の遠位側の機械的振動の振幅および強度を増加させることができることを意味する。
【0197】
ソノトロードのキャップ22は、長手軸15に対して半径方向にステム21よりもさらに突出する部分16を備える。
【0198】
より正確には、キャップ22は、長手軸15に対する半径方向におけるステム21の最大の延在14と比べ、長手軸15に対する半径方向において長手軸15からより遠くに配置された部分16を備える。この部分16を、キャップ22がステム21の最大の延在14よりもさらに大きく半径方向に延びている長手軸15の範囲によって定めることができ、さらには、この部分16がステム21の最大の延在14よりもさらに大きく半径方向に延びている放射状の角度範囲19によって定めることができ、前記放射状の角度範囲19は、長手軸15の前記範囲内の少なくとも1つの位置において決定される。
【0199】
ステムよりもさらに大きく半径方向に突出している部分16は、鋭いリム23を備える。
【0200】
図2~
図4に示される実施形態のキャップ22は、長手軸に関して回転対称である。これにより、キャップ22の質量中心43が長手軸15上にあることが保証される。
【0201】
図示の実施形態において、キャップは、遠位側を向いた凸面24および近位側を向いた凹面26を有するマッシュルームの帽子のように形成される。ステム21よりもさらに半径方向に突出した部分16は、360度の放射状の角度範囲19に及ぶ。
【0202】
凹面26は、張り出し部35が形成されるように、最も半径方向外側の領域において近位側に湾曲している。
【0203】
キャップ22の鋭いリム23は、遠位側を向いた凸面24と近位側を向いた凹面26との間の移行部によって形成されている。
【0204】
このように形成された鋭いリム23の向きにより、ソノトロード1は、近位側へと移動するときに最も効率的に機能する(「引張モード」)。さらに、鋭いリム23がアブレーションされるべき組織の遠位側に配置され、鋭いリム23とソノトロードのうちの鋭いリム23よりも半径方向にさらに突出している部分との間に配置された組織のみがアブレーションされるため、傷つけてはならない組織を傷つけてしまう可能性が低減される。
【0205】
さらに、ソノトロード1の動作中に鋭いリム23が発生させる力ベクトルが、アブレーションされるべき組織へと向けられる。
【0206】
ソノトロード1のこの設計は、より鋭いリム23をさらに可能にし、処置位置からのデブリの輸送を改善する。
【0207】
凸面24は、例えばソノトロードの動作中またはソノトロードの挿入時に、処置されてはならない組織を傷つけてしまうことがないように、柔らかく、かつ/または滑らかであってよい。
【0208】
あるいは、凸面24は、組織をこすり取るために適した構造を備えることができる。例えば、凸面24を、高さが100~120μmの間の構造によって覆うことができる。換言すると、
図2~
図4に示されるソノトロード1のキャップを、遠位側へと移動するときにも例えば研削などのアブレーションをもたらすように構成することができる(「押し込みモード」)。
【0209】
図2~
図4によるキャップ22は、ステム21を介してキャップに結合する長手方向の機械的振動によって励起され得る自立振動モードを支持するように設計されている。このような振動モードを支持するために好ましいキャップ22の全体形状に加えて、キャップ22の始まりに隣接する領域におけるステムの直径d
Sとキャップの直径d
Cとの比、ならびに長手方向におけるキャップの最大の延在d
Lとステムよりも半径方向にさらに突出している部分16の最大の延在d
Rとの比を、振動モードを支持するキャップ22のために最適化することができる。
【0210】
図5~
図8が、本発明によるソノトロード1のさらなる例示的な実施形態を示しており、
図6は、
図5のソノトロード1のキャップ22の詳細図であり、
図8は、
図7のソノトロード1のキャップ22の詳細図である。
【0211】
図2~
図4に示した実施形態とは対照的に、鋭いリム23は、
図5~
図8の実施形態においては、或る範囲の半径方向(角度)に限定されている。換言すると、キャップ22は、周面の一セグメント17にのみ鋭いリム23を備える周面を有する。鋭いリム23を備える周面または周面の少なくともセグメント17は、処置および非処置の所望の位置に適合する。
【0212】
図5~
図8に示される実施形態において、鋭いリム23を備えるセグメント17の周面は、このセグメント17内のさらなる凹部28を含む。これは、例えば処置位置からのデブリの輸送を改善することができる。
【0213】
換言すると、キャップ22の鋭いリム23は、周面のうちの鋭いリム23が限定されるセグメント17内に配置されたリム要素29によって形成される。
【0214】
隣接する2つのリム要素29が、凹部28によって互いに離されている。
図5~
図8に示されるリム要素29は、ステム21の最大の延在14よりも長手軸からさらに遠くに配置された部分16のさらなる一部分である。
【0215】
リム要素29は、キャップ22の中央領域(コア)によって励起される個々の(自立)振動子として作用することができる。換言すると、各々のリム要素29は、固有の振動モードを示すことができる。これは、軸方向(近位-遠位)の振幅の増加、したがってソノトロードのアブレーション性能の改善を可能にする。
【0216】
図5~
図8による実施形態のキャップ22は、第1の鋭いリム23.1および第2の鋭いリム23.2をさらに有し、第2の鋭いリム23.2は、第1の鋭いリム23.1に対してより近位側に配置されている。
【0217】
図5~
図8に示される実施形態において、第1および第2の鋭いリムは、マッシュルーム状の形状のキャップ22の遠位側を向いた凸面24と近位側を向いた表面との間の移行部によって形成され、この移行部は、直接的な移行部ではなく、半径方向(長手軸に対して半径方向)に本質的に一致する表面法線を有する表面18を介した移行部である。図示の実施形態において、半径方向に本質的に一致する表面法線を有する前記表面18は、長手軸を取り囲む仮想の表面の一部分によって本質的に形成され、この仮想の表面上の各点は、長手軸から同じ距離を有する。
【0218】
これにより、第1の鋭いリム23.1は、遠位側を向いた凸面24と本質的に半径方向に沿った表面法線を有している前記表面18との間の移行部によって形成され、第2の鋭いリム23.2は、本質的に半径方向に沿った表面法線を有している表面18とマッシュルーム状の形状のキャップ22の近位側を向いた表面との間の移行部によって形成される。
【0219】
図5および
図6の実施形態において、マッシュルーム状の形状のキャップ22の近位側を向いた表面は、少なくとも前記移行部の領域に本質的に平坦な(平面の)表面25を形成する。平坦な表面25は、ステム21に対して90度の開き角度42で延びる。
【0220】
図7および
図8の実施形態において、マッシュルーム状の形状のキャップ22の近位側を向いた表面は、少なくとも前記移行部の領域に凹面26を形成する。これは、第2の鋭いリム23.2の鋭さを改善することができ、処置位置からのデブリの輸送を改善することができる。また、上述のように、ソノトロード1の動作時に鋭いリム23.2が発生させる力ベクトルに関しても有利であり得る。
【0221】
とくに、より鋭いリムおよびより好ましい力ベクトルの利点は、鋭いリム(
図7および
図8の実施形態における第2の鋭いリム23.2)が半径方向に延びる表面(
図14に示されるような凹面26または凸面24)の張り出し部35によって形成される場合に、より顕著である。
【0222】
キャップ22の質量中心43が長手軸15上に位置するという要件を満たすために、キャップは、キャップが長手軸15の周りにn回の回転対称性を含むように配置された少なくとも2つのセクションを含むことができ、nは整数であるが1ではなく、さらには/あるいはキャップ22は、例えば
図15および
図16に示されるような均等化重量(均等化質量)41を含むことができる。
【0223】
図7および
図8の実施形態において、凹面26の凹面度は中程度にすぎない。しかしながら、この凹面度は、はるかに顕著であってよい。
【0224】
より顕著な凹面度が、
図13の実施形態に例示的に示されており、凹面度は、キャップ22の半径方向端部の全体が張り出し部35であり、鋭いリム23だけではないような凹面度である。さらに、凹面26の凹面度は、凸面24の凸面度よりも顕著である。これは、キャップの長手方向の延在(長手方向の延在d
L)が、長手軸15からの距離rに依存し、長手軸と鋭いリム23の位置との間に最小値を含むことを意味する。
【0225】
長手方向のキャップ22の延在の最小値の領域は、機械的安定性が低い領域37と考えることができる。
【0226】
キャップが
図13に従って設計されている場合、キャップ22の最も半径方向外側の部分が、キャップ22の中央領域(コア)によって励起される個々の(自立)振動子として作用することができる。換言すると、キャップ22の最も半径方向外側の部分は、固有の振動モードを示すことができ、この振動モードは、半径方向の移動成分も有する。これにより、ハンマリング効果の発生によってアブレーションをさらに改善することができる。しかしながら、キャップ22が長手軸15に関してn回の回転対称性を含み、nが整数であるが1でなく、とくには偶数である場合や、またはキャップ22が長手軸の周りで回転対称である(すなわち、任意の角度による回転がキャップをそれ自体に移動させる)場合、最も半径方向外側の部分の半径方向の振動は、ソノトロード1全体の横振動モードの有意な励起を伴わない。これらの対称性の考慮事項は、キャップの質量中心43が長手軸上にあることも意味する。
【0227】
長手方向の延在が最小であるがゆえに個々の(自立)振動子として作用することができる最も半径方向外側の部分は、通常は、半径方向および長手方向のかなりの方向を含む振動運動を伴う振動モードを有する。したがって、最も半径方向外側の部分の振動モードは、ハンマリング効果および軸方向(近位側-遠位側)の振幅の増大の両方をもたらす。ハンマリング効果と軸方向の振幅の増大との組み合わせは、ソノトロードのアブレーション効率を著しく向上させる。
【0228】
図9が、本発明によるソノトロード1のさらなる例示的な実施形態を示している。この実施形態は、複数(すなわち、少なくとも2つ)の鋭いリム23を備え、鋭いリムは、遠位-近位の方向に沿ってお互いに対してオフセットされている。遠位-近位の方向は、通常は、ソノトロード1の長手軸15に平行に延びる。
【0229】
図9に示される実施形態において、複数の鋭いリム23は、キャップ22の最も半径方向外側の部分に配置された一連の段部20によって形成される。図示の実施形態において、キャップ22は、遠位側を向いた凸面24を備え、段部20は、凸面24の近位側に配置されている。各々の段部は、本質的に半径方向に沿って向けられた表面から本質的に遠位-近位の方向に沿って向けられた表面への移行部を含むことによって、鋭いリム23を形成する。
【0230】
段部20は、さらに長手軸15からの距離がオフセットされている。
図9に示される実施形態において、オフセットは、或る段部20によって形成された鋭いリム23が、遠位側の隣接する段部20およびこの遠位側の隣接する段部20の鋭いリム23と比べて、長手軸15からより遠いようなオフセットである。これにより、複数の鋭いリム23は、ソノトロード1の遠位方向への移動、すなわち押し込み移動でのアブレーションに貢献する。
【0231】
あるいは、オフセットは、或る段部20によって形成された鋭いリム23が、近位側の隣接する段部20およびこの近位側の隣接する段部20の鋭いリムと比べて、長手軸15からより遠いようなオフセットであってよい。これにより、複数の鋭いリム23は、ソノトロード1の近位方向への移動、すなわち引っ張り移動でのアブレーションに貢献する。
【0232】
あるいは、段部は、鋸歯状表面を形成することができる。この実施形態においては、2つの突出する段部が、凹部によって隔てられる。これにより、各々の突出する段部が、遠位-近位方向に沿ってオフセットされた2つの鋭いリムを形成する。これにより、複数の鋭いリム23のうちの一方の半分が、ソノトロード1の遠位方向への移動、すなわち押し込み移動においてアブレーションに貢献し、複数の鋭いリム23のうちの他方の半分が、ソノトロード1の近位方向への移動、すなわち引っ張り移動においてアブレーションに貢献する。
【0233】
キャップ22は、段部によって形成された鋭いリムに加えて、1つ以上のさらなる鋭いリムを有することができる。例えば、遠位側を向いた表面、とくには上述の任意の実施形態における凸面24(存在する場合)から段部20への移行部、ならびに/あるいは段部20から上述の任意の実施形態における凹面26または上述の任意の実施形態における平坦な表面25などの近位側を向いた表面への移行部が、さらなる鋭いリムを形成することができる。
【0234】
いくつかの実施形態において、一連の段部20を複数の鋭いリム(23)をもたらすように形成された他の要素によって置き換えることを、想定することができる。例えば、段部を、ピラミッド、交差突出部、および/または表面粗さなどのアブレーション構造で置き換えることができる。表面粗さを、例えば、上述の付加製造法、または選択的レーザ溶融(SLM)によってもたらすことができる。
【0235】
図10および
図11が、本発明によるソノトロード1のさらに別の例示的な実施形態を示している。
図11は、
図12のソノトロード1のキャップ22の詳細図である。
図10および
図11に示される実施形態は、鋸歯状表面を形成する段部20を備える実施形態と同様である。
【0236】
図10および
図11の実施形態において、鋸歯状表面34は、鋭いリム23を形成するテーパ構造によって形成され、複数のテーパ構造は、遠位-近位の方向に沿って配置されている。
【0237】
例えば、キャップ22は、表面、とりわけステム21の最大の延在14よりも長手軸15からさらに遠くに配置された部分16の表面を含むことができ、この表面は、本質的に半径方向と一致する表面法線を有するが、鋸歯状表面34が形成されるように突出部および凹部を有する。図示の実施形態において、本質的に半径方向と一致する表面法線を有する表面は、長手軸を取り囲む表面であり、この表面上の各点は、この表面が鋸歯状でないとすれば、長手軸から同じ距離を有する。
【0238】
やはり、キャップは、鋸歯状表面34によって形成された鋭いリムに加えて、1つ以上のさらなる鋭いリムを有することができる。例えば、例えば上述の任意の実施形態における凸面24(存在する場合)などの遠位側を向いた表面から鋸歯状表面34への移行部、ならびに/あるいは鋸歯状表面34から上述の任意の実施形態における凹面26または上述の任意の実施形態における平坦な表面25などの近位側を向いた表面への移行部が、さらなる鋭いリムを形成することができる。
【0239】
図2~
図4および
図9~
図11に関して開示された任意の実施形態のキャップ22を、例えば
図5~
図8に関して開示したように、処置および非処置の位置を定めるように形成することができる。
【0240】
処置および非処置の位置を定めるように構成されたキャップ22に加え、あるいは代えて、
図12aおよび
図12bに例示的に示されるようなスリーブ30を設けることができる。
図12aは、スリーブ30を備えるソノトロード1の外観の概略図を示している。
図12bは、
図12aによるスリーブ30を備えるソノトロード1の断面図を示している。
【0241】
スリーブ30と組み合わせて
図12aおよび
図12bに示されたソノトロード1は、
図2~
図4によるソノトロードである。しかしながら、本発明の主要な態様または二次的な態様による任意のソノトロードが、
図12aおよび
図12bに例示的に示されるようなスリーブを備えることができる。とくに、これは、ソノトロードが遠位側を向いた凸面24を含む場合に当てはまる。
【0242】
スリーブ30は、ソノトロード1の少なくとも一部分を収容し、ソノトロード1および/または超音波外科器具に取り付けられるように構成される。
【0243】
図示の実施形態において、ソノトロード1のうちで、スリーブ30がソノトロード1に取り付けられたときにスリーブ30内に収容される部分は、ステム21を含む。
【0244】
スリーブ30を、近位端4においてソノトロード1に取り付けることができ、例えば結合要素13の遠位部分においてソノトロード1に取り付けることができる。
【0245】
スリーブ30は、鋭いリム23が作用の部分においてスリーブ30によって覆われないように設計された横開口部31を備える。換言すると、横開口部31は、スリーブ30およびソノトロード1が使用のために超音波外科器具に取り付けられたときに鋭いリム23の一部分が露出するように設計されている。
【0246】
図12aおよび
図12bに例示的に示されるようなスリーブ30は、例えば
図17および
図18に示されるように、処置位置への冷却剤および/または潅注流体の供給ならびに/あるいはデブリの除去のための手段を備えるソノトロード1との組み合わせにおいて、とくに好都合である。
【0247】
図17は、ソノトロード1の遠位側に向かって開いた中央チャネル46を備えることによって、処置位置への冷却剤および/または潅注流体の供給ならびに/あるいはデブリの除去のための手段を備えるソノトロード1の例示的な実施形態を示している。
【0248】
換言すると、ソノトロード1は、液体、とくには冷却剤および/または潅注流体をソノトロード1の遠位側の領域へと供給することができる中央チャネル46を含む。
【0249】
これに加えて、またはこれに代えて、中央チャネル46を使用して、処置位置の周囲の領域から液体およびデブリを吸引することができる。
【0250】
図17に例示的に示されるような中央チャネル46を備えるソノトロード1とスリーブ30との組み合わせは、空間的条件に起因して処置位置の氾濫が生じる医療事例、すなわち最小侵襲手術(MIS)の用途の場合のように処置位置が狭い領域内にある場合に、とくに有利である。
【0251】
図18は、鋭いリム23の近位側、したがって処置位置の近位側に位置する領域へと開口する側方チャネル47を備えることにより、処置位置への冷却剤および/または潅注流体の供給ならびに/あるいはデブリの除去のための手段を備えるソノトロード1の例示的な実施形態を示している。
【0252】
図18の実施形態によるソノトロード1は、2つの側方チャネル47を含む。
換言すると、ソノトロード1は、図示の実施形態においては中央供給チャネル48に接続された2つの後のチャネル47を含み、これらを通って液体、とくには冷却剤および/または潅注流体を、鋭いリム23の近位側の領域に供給することができる。
【0253】
これに加え、あるいはこれに代えて、側方チャネル47を使用して、処置位置の周囲の領域、とくには鋭いリム23と側方チャネル47の開口部49との間の領域から、液体およびデブリを吸引することができる。
【0254】
図18に示される実施形態において、側方チャネル47は、ソノトロード1の近位端4の平坦化(テーパ)領域12に開口している。しかしながら、側方チャネル47は、とくにはソノトロード1がスリーブ30と組み合わせて使用される場合に、ステム21またはキャップ22の任意の場所に開口することができる。
【0255】
とくには側方チャネル47およびスリーブ30を備えるソノトロード1の実施形態において、側方チャネル47の開口部49の向きはあまり重要ではない。
【0256】
例えば、側方チャネル47は、ステム21内に配置されたさらなる平坦化(テーパ)領域12に開口することができる。
【0257】
図18に例示的に示されるような側方チャネル47を含むソノトロード1とスリーブ30との組み合わせは、処置位置の領域における空間的条件が処置位置の氾濫に貢献せず、あるいは充分には貢献しない「開放」の医療事例において、とくに有利である。そのような場合に、スリーブ30は、例えば、もたらされるべき液体を処置位置に向かって、すなわち
図18に示される実施形態においては遠位側へと案内し、あるいは処置位置から吸引されるべき液体/デブリを、側方チャネル47の開口部に向かって案内する。
【0258】
例えば
図17および
図18に示されるように、処置位置への冷却剤および/または潅注流体の供給ならびに/あるいはデブリの除去のための手段は、好ましくは、ソノトロード1の振動挙動がこれらの手段によって変更されるように配置される。
図17の実施形態において、これは、ソノトロードの中心軸15に沿って延びる中央チャネルによって行われる。
図18の実施形態において、これは、ソノトロードが少なくともn回の回転対称性を依然として有するように側方チャネルを配置することによって行われ、nは整数であるが1ではない。
【0259】
図17および
図18に関して開示された冷却および/または除去のための手段は、本発明の主要な態様または二次的な態様によるソノトロード1の任意の実施形態に存在することができる。
【0260】
図13~
図16が、本発明によるキャップ22のさらなる例示的な実施形態の概略図を示している。
【0261】
機械的安定性の低い領域37と、個別の(自立)振動子として機能するキャップ22の最も半径方向外側の部分とを含む
図13の実施形態は、
図7および
図8による実施形態において上述されている。
【0262】
図14の例示的な実施形態によるキャップ22のステム21よりも半径方向にさらに突出した部分16は、この部分16の遠位領域と、第1の鋭いリム23.1とを形成する第1の張り出し部35.1を備えている。この部分16は、この部分16の近位領域と、第2の鋭いリム23.1とを形成する第2の張り出し部35.2をさらに備える。
【0263】
このように設計されたステム21よりも半径方向にさらに突出する部分16は、種々の利点を有する。例えば、
図7および
図8に関して説明したように、リムの鋭さを改善することができ、処置位置からのデブリの輸送を改善することができ、ソノトロード1の動作中に鋭いリムが発生させる力ベクトルが好都合である。
【0264】
さらに、
図14に例示的に示されるようなキャップ22を備えるソノトロードは、押し込みモード(すなわち、ソノトロードが遠位側に移動する)および引っ張りモード(すなわち、ソノトロードが近位側に移動する)でアブレーションを行うことができる。
【0265】
遠位方向に配置された第1の鋭いリム23.1および近位方向に配置された第2の鋭いリム23.2を有するソノトロードのこれらの利点ゆえに、開示されたあらゆる実施形態によるキャップおよびソノトロードが、例えば
図14に例示的に示されるような張り出し部35によって形成されるそのような第1および第2の鋭いリムを有することができる。
【0266】
図15および
図16が、キャップ22の質量中心43が長手軸15上に位置するように配置された均等化重量(均等化質量)41を含むソノトロードの例示的な実施形態を示している。
【0267】
図15による実施形態において、均等化重量41は、キャップ22内に配置され、すなわち均等化重量41がキャップの全体形状に影響を及ぼさない。
【0268】
図15の実施形態の均等化重量41は、残りのキャップ22の密度よりも密度が大きい領域である。この領域は、ステム21よりも半径方向にさらに突出し、キャップの質量中心43を長手軸15から離れるように移動させている部分16を補償するように配置された質量中心45を有する。
【0269】
換言すると、キャップの質量中心43を長手軸15上に位置させないようにするキャップのあらゆる構造的偏差が、全体としての質量中心43が長手軸15上に位置するように関連の均等化重量41によって補償される。
【0270】
図16が、均等化重量(均等化質量)41の考え方の代案の例示的な実施形態を示している。この代案によれば、均等化重量41は、キャップ22の基本形状の外部に配置される。
【0271】
例えば、キャップの質量中心43を長手軸15上に位置させないようにするキャップの構造的偏差、とくには鋭いリム23を含む部分16に対する均等化重量41は、この構造的偏差と同一または同様の形状であるが、キャップ22の反対側に配置された構造的偏差である。
【0272】
いくつかの実施形態において、均等化重量41は、鋭いリム23の有無にかかわらず、ステム21よりも半径方向にさらに突出するさらなる部分16である。
【0273】
図16は、弾性要素38を備える機械的安定性の低い領域37の随意による特徴をさらに示している。弾性要素は、例えば、
図13に関して説明したように、キャップ22のうちの個別の(自立)振動子として機能する部分の振動挙動を改善することができる。これは、開示されたあらゆる個別の(自立型)振動子を、弾性要素38を介してソノトロードの残りの部分に接続できることを意味する。
【0274】
図19が、本発明の二次的な態様によるソノトロード1の例示的な実施形態を示している。
【0275】
図19に示されるソノトロードは、例えば機械的安定性、処置位置の限定および制御可能性、前方移動および後方移動の最中にアブレーションを行うことができること、ならびに横振動モードの励起を少なくとも或る程度は抑制できることなど、骨組織などの組織をアブレーションするためのソノトロードに対するいくつかの重要な要件を満たす。したがって、
図19に示されるソノトロードは、本発明の主要な態様によるソノトロードに存在し、あるいは存在し得る複数の特徴を備える。
【0276】
図19に示されるソノトロード1は、ねじ山13を有する近位端4と、ステム21およびキャップ22を有する遠位端ピース5とを有する。キャップ22は、凸形状24と、少なくとも1つの鋭いリム23とを含む。キャップ22は、骨棘などの望ましくない骨構造などの組織をアブレーションし、あるいは掻き取るように設計され、そのような目的に適する。鋭いリムを使用して組織を掻き取り、あるいは削り取ることができる一方で、凸形状24の表面(凸面、アーチ形表面)は滑らかであり、組織を保護するように形成される。
【0277】
この二次的な態様によるソノトロード1も、長手軸15に沿って延びる。
図示のソノトロード1は、上述のように近位端4とステム21との間の移行部を形成する近位端4の平坦化(テーパ)領域12という随意による特徴を備える。上述のようにステム内に配置されるさらなる平坦化(テーパ)領域12という随意による特徴をさらに含む。
【0278】
図19に開示されるソノトロードにおいて、ステム21の最大の延在14よりも長手軸15からさらに遠くに配置されている部分16は、放射状のかなりの角度範囲19に広がっている。これは、ソノトロードが、長手軸に対する半径方向の延在がこの最大距離よりも大きく、放射状のかなりの角度範囲19に広がっている部分16を備えることを意味する。とくには、放射状の角度範囲19にわたる広がりは、得られるキャップ22がブレード状でない場合に大きい。
【0279】
図19に示される実施形態において、放射状の角度範囲19は、20度よりも大きい。
また、この二次的な態様による実施形態は、ステム21の最大の延在14よりも長手軸15からさらに遠くに配置され(すなわち、ステム21よりも半径方向にさらに突出し)、放射状のかなりの角度範囲19に広がる部分16に配置された少なくとも1つの鋭いリム23または鋭いリムの少なくとも一部分を含む。
【0280】
図19によるキャップ22は、鋭いリム23を有する突出リブ27を備える本質的に平坦な表面25を備える。キャップ22の平坦な表面25と異なる表面部分は、(ステム21の領域を除いて)キャップ22の凸形状(凸面)24を形成する。これらの表面部分は滑らかである。
【0281】
図19によるキャップ22は、塊状であり得る。これは、本質的に平坦な表面25と凸面24とによって定められるキャップ22の内部を、材料で充てんすることができ、とくにはキャップ22の表面を形成する材料で「充てん」できることを意味する。
【0282】
図20が、
図19による塊状のキャップ22を有するキャップ22の詳細図を示している。
【0283】
あるいは、
図19によるキャップ22をスプーンのように形成することができ、これは、内部が充てんされていない凸面24を有することを意味する。リブ27が、この凸面(または、スプーン)内に位置することができ、あるいは凸面24の両縁にまたがることができる。
【0284】
これらのリブは、スプーン状の構造の縁に対して高くされていてよい鋭いリム23を有することができる。
【0285】
ステム21の最大の延在14よりも半径方向に長手軸15からさらに遠く配置された部分16は、
図19および
図20の実施形態においてはキャップ22のスプーン状の形状(充てんされていても、充てんされていなくてもよい)のうちの長手軸15から最も遠い部分を含む。