(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】栄養サプリメント
(51)【国際特許分類】
A23L 33/10 20160101AFI20241003BHJP
A61K 35/60 20060101ALI20241003BHJP
A61K 31/202 20060101ALI20241003BHJP
A61K 33/04 20060101ALI20241003BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20241003BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241003BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20241003BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241003BHJP
A23L 33/115 20160101ALI20241003BHJP
A23L 33/16 20160101ALI20241003BHJP
【FI】
A23L33/10
A61K35/60
A61K31/202
A61K33/04
A61K45/00
A61P35/00
A61P37/02
A61P43/00 121
A23L33/115
A23L33/16
(21)【出願番号】P 2021558818
(86)(22)【出願日】2020-03-31
(86)【国際出願番号】 US2020026000
(87)【国際公開番号】W WO2020205885
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-01-31
(32)【優先日】2019-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519118496
【氏名又は名称】シャー,ホウン・サイモン
【氏名又は名称原語表記】HSIA, HOUN SIMON
【住所又は居所原語表記】14791 MYFORD ROAD, TUSTIN, CALIFORNIA 92780, UNITED STATES OF AMERICA
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】シャー,ホウン・サイモン
【審査官】田名部 拓也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/231943(WO,A2)
【文献】中国特許出願公開第101843605(CN,A)
【文献】国際公開第2017/197140(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/083282(WO,A1)
【文献】特表2008-513521(JP,A)
【文献】特表2012-528793(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104146248(CN,A)
【文献】国際公開第2018/231937(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 33/00 - 33/29
A61K 31/00 - 33/44
A61P 1/00 - 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞における免疫チェックポイントまたは免疫療法関連タンパク質の発現を低減するための、セレン酵母および魚油を含む栄養サプリメントであって、前記免疫チェックポイントまたは前記免疫療法関連タンパク質が、p-HSP27、p-p38、ABCG2、CD133、p-MET、COX-2、HDAC1、p-H2X、CTLA4、CD28、CD86、C31、およびSTAT3からなる群より選択される、栄養サプリメント。
【請求項2】
投与後に、
血清含有量で、少なくとも200ng/mLのセレン酵母の濃度を提供する、請求項1に記載の栄養サプリメント。
【請求項3】
投与後に、
血清含有量で、少なくとも75μMの魚油の濃度を提供する、請求項1に記載の栄養サプリメント。
【請求項4】
前記魚油が、DHAおよびEPA
を2:3の重量比で含む、請求項1に記載の栄養サプリメント。
【請求項5】
前記細胞が癌細胞である、請求項1に記載の栄養サプリメント。
【請求項6】
前記癌細胞が幹細胞の特徴を有する、請求項5に記載の栄養サプリメント。
【請求項7】
前記癌細胞が化学療法薬に抵抗性である、請求項5に記載の栄養サプリメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年9月3日に出願された米国仮特許出願第62/895,421号および2019年4月1日に出願された米国仮特許出願第62/827,429号の利益を主張する。これらおよび他のすべての参照される外的事項は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。参照により組み込まれる参考文献における用語の定義または使用が本明細書に提供される用語の該定義と矛盾するかまたは反する場合、本明細書に提供される用語の該定義が支配的であると見なされる。
【0002】
(技術分野)
本発明の分野は、栄養サプリメント、特に癌の治療に使用される免疫療法への栄養サプリメントの適用である。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
背景の説明は、本発明を理解するのに有用であり得る情報を含む。本明細書で提供される該情報のいずれかが先行技術である、または本件請求発明に関連していること、あるいは具体的または暗黙的に参照されている刊行物が先行技術であることを認めるものではない。
【0004】
癌を治療するための免疫療法的アプローチは、患者自身の免疫系の要素を利用して該疾患を治療するものである。そのような免疫療法は、該患者から回収され再投与の前に処理された抗体、サイトカイン、および/または細胞の投与を含み得る。免疫療法で利用される抗体は、通常、体の補体系を活性化するため、または免疫系に対して細胞を識別するために、腫瘍細胞によって発現される細胞表面マーカーに向けられる。あるいは、そのような抗体は、細胞表面受容体に向けられ、癌細胞によるT細胞活性のダウンレギュレーションを妨害することができる。この目的で使用される抗体としては、アレムツズマブ(CD52に向けられ、補体を活性化するモノクローナル抗体)、アテゾリズマブ(PD-L1に向けられ、T細胞の不活性化を妨げるモノクローナル抗体)、およびイピリムマブ(CTLA4に向けられたモノクローナル抗体であり、T細胞バランスを細胞毒性にシフトする)が挙げられる。残念ながら、これらの治療用抗体の使用は、自己免疫疾患の発症、感染率の増加、神経障害などの望ましくない副作用を伴う。
【0005】
サイトカインを利用する免疫療法は、それ自体が免疫応答を低下させるサイトカインを産生する可能性がある腫瘍細胞に対する免疫応答を誘発することを目的としている。免疫療法に使用されるサイトカインとしては、IFNα(有毛細胞白血病、AIDS関連カポジ肉腫、濾胞性リンパ腫、慢性骨髄性白血病、および黒色腫の治療に使用)、IFNβ、およびインターロイキン2(悪性黒色腫および腎細胞癌の治療に使用)が挙げられる。これらのサイトカインは免疫系にさまざまな影響を与えることが知られているが、それらが癌を攻撃する正確なメカニズムは明らかではない。残念ながら、これらのサイトカインの投与はインフルエンザ様症状を伴う。
【0006】
細胞を利用する免疫療法は、患者からの細胞の除去、培養中の細胞の活性化および拡大、ならびに活性化された細胞の患者への返還を含む。例えば、プロベンジは前立腺癌の治療に使用され、白血球アフェレーシスによって血液から抗原提示樹状細胞を除去し、GM-CSFの要素と前立腺酸ホスファターゼから作られた融合タンパク質とインキュベートし、再注入される。結果として生じる免疫系への癌特異的抗原の改善された提示は、免疫応答を改善することを目的としている。別のアプローチでは、CAR-T免疫療法はT細胞を除去し、それらを遺伝子改変して、標的癌細胞を特異的に認識するキメラ受容体を発現させる。これらの改変されたT細胞は患者に戻され、そこでそれらは癌細胞を選択的に標的とすることが期待される。残念ながら、そのようなアプローチは費用と時間がかかり、インフルエンザのような症状を引き起こす可能性があり、さまざまな結果を生み出している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、癌を治療するための簡単で忍容性の高い免疫療法的アプローチが依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の概要)
本発明の主題は、免疫チェックポイントタンパク質、免疫療法標的、血管新生に関連するタンパク質、および/または化学療法に抵抗性であり得る癌細胞における転移に関連するタンパク質の発現を調節する栄養サプリメントが提供される組成物および方法を提供する。このような癌細胞は、組織培養中にまたは腫瘍として存在する可能性がある。このような栄養サプリメントは、化学療法薬および/または放射線療法と組み合わせて使用することができる。
【0009】
本発明の概念の一実施形態は、抗腫瘍性免疫機能に関連する生物学的マーカーの発現を改変するのに充分な量のセレンおよび魚油(例えば、表1に示される)を含む栄養サプリメントを投与することによって、癌(薬剤抵抗性であり得る)を有する個体に免疫療法を提供する方法である。栄養サプリメントは、化学療法を用いない、および/または放射線療法を用いないで提供される。幾つかの実施形態において、栄養サプリメントは、放射線療法と組み合わせて提供され、それにより、生物学的マーカーの発現を改変する際の相乗的効果を提供する。適切な生物学的マーカーとしては、AXL、HSP90、p-mTOR、PDL-1、EGFR、HDAC1、p-H2X、p-Akt、pSmad、mTOR、p-PTEN、p-STAT3、CXCR4、およびSTAT3が挙げられる。幾つかの実施形態において、PD-1、CTLA4、FOXP3、CD8、PTEN、および/またはp-P53について発現が増加する。幾つかの実施形態において、CD8の発現に対するCD4の発現の比率は減少する。幾つかの実施形態において、個体の脾臓におけるCD3+T細胞、CD3+CD4+T細胞、またはCD4+CD8+T細胞の割合が増加する。本発明の概念の幾つかの実施形態において、栄養サプリメントによって提供される免疫療法は、CD24、CD29、CD31、VEGF、およびMMP-9などの腫瘍細胞における幹細胞特徴または転移能に関連する生物学的マーカーの発現を低下させる。
【0010】
本発明の概念の別の実施形態は、癌の治療を受ける個体から免疫細胞を単離し、単離された免疫細胞を、免疫細胞の活性化に関連するタンパク質の発現を調節して活性化された免疫細胞を生成するのに有効な量のセレンおよび魚油を含む活性化製剤と接触させ、該活性化された免疫細胞を該個体に戻すことによって、免疫細胞を活性化して抗腫瘍活性を増強する方法である。適切な製剤および/またはその要素を表1に示す。本発明の概念の幾つかの実施形態では、活性化免疫細胞はクローン的に拡大して、個体に戻される活性化免疫細胞の集団を生成する。幾つかの実施形態において、免疫細胞は、活性化製剤と接触する前にクローン的に拡大される。幾つかの実施形態において、免疫細胞および/または活性化された免疫細胞は、個体に戻る前に遺伝子改変される。幾つかの実施形態において、個体は、免疫細胞を単離する前に照射される。
【0011】
本発明の概念の別の実施形態は、セレンおよび魚油を含むサプリメント(表1に示されるサプリメントなど)を投与することによって、細胞における免疫チェックポイントまたは免疫療法関連タンパク質の発現を調節する方法である。サプリメントは、少なくとも200ng/mLのセレンの濃度を提供するように投与することができる。サプリメントは、少なくとも75μMの魚油の濃度を提供するために投与することができる。適切な魚油には、DHAとEPAとを約2:3の重量比で含む魚油が含まれる。細胞は、幹細胞の特徴を有することができる、および/または化学療法薬に抵抗性があることができる癌細胞であり得る。幾つかの実施形態では、この方法は、化学療法薬を投与すること、および/または細胞に放射線療法を投与することを含む。そのような実施形態では、サプリメントは、放射線療法の開始前に投与することができる。
【0012】
例えば免疫チェックポイントまたは免疫療法関連タンパク質が、PD-L1、p-HSP27、ビメンチン、p-mTOR、p-p38、β-カテニン、ABCG2、CD133、N-カドヘリン、p-MET、COX-2、GRP78、CD24、CD29、EGFR、HDAC1、p-H2X、p-Akt、MMP-9、CTLA4、CD28、CD86、C31、および/またはSTAT3である場合、該調節は発現の低下であり得る。該免疫チェックポイントまたは免疫療法関連タンパク質が、PD-1、p-AMPKα、E-カドヘリン、CHOP、FOXP3、Nkp46、CD8、IL2、および/またはPTENからなる群より選択される場合、該調節は発現の増加であり得る。
【0013】
本発明の概念の別の実施形態は、セレンおよび魚油を含む栄養サプリメント(表1に示されるサプリメントなど)を動物に投与し、化学療法を動物に投与することによって、癌を有する動物の循環腫瘍細胞を減少させる方法である。サプリメントは、少なくとも200ng/mLのセレンの濃度を提供するように投与することができる。サプリメントは、少なくとも75μMの魚油の濃度を提供するように投与することができ、好ましくは、DHAとEPAとの約2:3の重量比を有する。
【0014】
本発明の概念の別の実施形態は、細胞における免疫チェックポイントまたは免疫療法関連タンパク質の発現を調節するためのセレンおよび魚油を含むサプリメントの使用である。サプリメントは、投与後に細胞に少なくとも200ng/mLのセレン濃度を提供することができる。サプリメントは、投与後に少なくとも75pMの魚油の濃度を細胞に提供することができる。魚油は、好ましくは、約2:3の重量比でDHAおよびEPAを含む。細胞は、幹細胞の特徴を有する癌細胞および/または化学療法薬に抵抗性のある癌細胞などの癌細胞であり得る。幾つかの実施形態では、サプリメントは、化学療法薬と組み合わせて、および/または放射線療法と組み合わせて使用される。そのような実施形態では、サプリメントは、放射線療法の開始前に使用することができる。
【0015】
前記免疫チェックポイントまたは免疫療法関連タンパク質が、PD-L1、p-HSP27、ビメンチン、p-mTOR、p-p38、D-カテム、ABCG2、CD133、N-カドヘリン、p-MET、COX-2、GRP78、CD24、CD29、EGFR、HDAC1、p-H2X、p-Akt、MMP-9、CTLA4、CD28、CD86、C31、および/またはSTAT3である場合などに、前記調節は発現の低下となり得る。該免疫チェックポイントまたは免疫療法関連タンパク質が、PD-1、p-AMPKα、E-カドヘリン、CHOP、FOXP3、Nkp46、CD8、および/またはPTENである場合などに、該調節は発現の増加となり得る。
【0016】
本発明の概念の別の実施形態は、癌を有する動物の循環腫瘍細胞を減少させるための化学療法と組み合わせたセレンおよび魚油を含む栄養サプリメントの使用である。栄養サプリメントは、投与後に少なくとも200ng/mLのセレン濃度を提供する。栄養サプリメントは、投与後に少なくとも75μMの魚油の濃度を提供することができる。好ましい実施形態では、魚油は、約2:3の重量比でDHAおよびEPAを含む。
【0017】
本発明の主題の様々な目的、特徴、態様および利点は、好ましい実施形態の以下の詳細な説明、ならびに同様の数字が同様の構成要素を表す添付の図面からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】セレンおよび魚油を含む栄養サプリメントによる24時間の治療によるイレッサ抵抗性肺癌細胞のAxl発現の減少。
【
図4】イレッサ感受性およびイレッサ抵抗性肺癌細胞株におけるAxlおよびHSP90の発現。
【
図5A】セレンおよび魚油を含む栄養サプリメントによる72時間の治療による、イレッサ抵抗性肺癌細胞におけるAxlおよびHSP90発現の低下。イレッサ単独では明らかな効果はないが、併用療法では相乗的効果が明らかである。
【
図5B】セレンと魚油を組み合わせて使用することにより、A549ヒト肺癌スフィア細胞で誘導される熱ショックタンパク質発現の負の調節。
【
図5C】化学療法薬に抵抗性のある細胞におけるABCG2、CD133、およびCD44の過剰発現。
【
図5D】1μMイレッサの存在および不存在下において、セレンと魚油とを組み合わせて使用することによる、化学療法抵抗性のヒト肺癌細胞において誘発されるp-p38、p-HP27、-カテニン、ABCG2、CD1333、N-カドヘリン、およびE-カドヘリンの発現の調節。
【
図5E】0.1μMイレッサの存在および不存在下において、セレンと魚油とを組み合わせて使用することによる、化学療法抵抗性のヒト肺癌細胞において誘発されるp-MET、-カテニン、COX-2、GRP78、p-p38、p-AMPK、およびCHOP発現の調節。
【
図6A】セレンおよび魚油を含む栄養サプリメントが72時間後の薬剤抵抗性HCC827GR細胞のリン酸化mTOR(p-mTOR)に及ぼす効果。
【
図6B】セレンと魚油を組み合わせて使用することにより化学療法抵抗性のヒト肺癌細胞に誘導されるPD-L1発現の負の調節。
【
図7A】セレンおよび魚油を含む栄養サプリメントで72時間処理することによる、ヒト肺癌細胞におけるPD-L1発現の減少。
【
図7B】A549スフィア細胞におけるPD-L1発現に対する魚油とセレンへの72時間の曝露の効果。
【
図7C】セレンおよび魚油での処理後の幹細胞様スフィア細胞におけるPDL-1およびPD-1発現のセレンおよび魚油の効果(化学療法薬との同時処理ありおよび無し)。
【
図8A】セレンおよび魚油を含む栄養サプリメントを使用したトリプルネガティブ乳癌の動物腫瘍モデルにおけるPD-L1発現の調節。化学療法薬と組み合わせて使用した場合の相乗的効果は明らかである。
【
図8B】原発性(腫瘍)および転移性(乳房)部位におけるPD-L1およびPD-1発現の調節は、セレンおよび魚油を含む栄養サプリメントを使用したトリプルネガティブ乳癌の動物腫瘍モデルである。化学療法薬と組み合わせて使用した場合の相乗的効果は明らかである。
【
図9A】さまざまな量のセレンおよび魚油の補給を使用する動物モデルにおいて化学療法剤を使用する併用療法による免疫療法標的タンパク質の調節の評価のための典型的なプロトコル。
【
図9B】原発性乳癌組織におけるPD-1、PD-L1、CTLA4、およびFOXP3の発現に対するセレンおよび魚油を含むさまざまな用量の栄養サプリメントの効果のインビボ研究。
【
図9C】動物腫瘍モデルにおいてアバスチンまたはタキソールと組み合わせてさまざまな量のセレンおよび魚油を使用した腫瘍CD24発現の調節。
【
図9D】動物腫瘍モデルにおいてアバスチンまたはタキソールと組み合わせてさまざまなレベルのセレンおよび魚油を使用した腫瘍CD29発現の調節。
【
図9E】動物腫瘍モデルにおいてアバスチンまたはタキソールと組み合わせてさまざまなレベルのセレンおよび魚油を使用した腫瘍EGFR発現の調節。
【
図9F】動物腫瘍モデルにおいてアバスチンまたはタキソールと組み合わせてさまざまなレベルのセレンおよび魚油を使用した腫瘍p-mTOR発現の調節。
【
図9G】動物腫瘍モデルにおいてタキソールと組み合わせてさまざまなレベルのセレンおよび魚油を使用した腫瘍HDAC1およびp-H2X発現の調節。
【
図9H】動物腫瘍モデルにおいてアバスチンまたはタキソールと組み合わせてさまざまなレベルのセレンおよび魚油を使用した腫瘍p-Akt発現の調節。
【
図9I】セレンと魚油を組み合わせて使用することにより、A549ヒト肺癌スフィア細胞に誘導されるビメンチン発現の負の調節。
【
図9J】セレンと魚油を組み合わせて使用することにより、A549ヒト肺癌スフィア細胞で誘導されるp-AMPKα発現の正の調節およびp-mTOR発現の負の調節。
【
図10A】魚油とセレンを含む栄養サプリメントと組み合わせた抗体ベースの抗腫瘍免疫療法の研究デザイン。
【
図10B】H2抗PD-1抗体、魚油とセレンを含む栄養サプリメント、および該抗体とサプリメントの組み合わせが、担癌マウスの脾臓に見られるCD3+T細胞の割合に及ぼす効果。
【
図10C】H2抗PD-1抗体、魚油とセレンを含む栄養サプリメント、および該抗体とサプリメントの組み合わせが、担癌マウスの脾臓に見られるCD3+/CD4+T細胞の割合に及ぼす効果。
【
図10D】H2抗PD-1抗体、魚油とセレンを含む栄養サプリメント、および該抗体とサプリメントの組み合わせが、担癌マウスの脾臓に見られるCD3+/CD4+T細胞の割合に及ぼす効果。
【
図10E】H2抗PD-1抗体、魚油とセレンを含む栄養サプリメント、および該抗体とサプリメントの組み合わせが、担癌マウスの脾臓に見られる樹状細胞の割合に及ぼす効果。
【
図11】タキソールまたはアバスチンと組み合わせた本発明の概念の栄養サプリメントの典型的な投薬スケジュール。
【
図12】さまざまな量のセレンとさまざまな化学療法剤を含む栄養サプリメント製剤で同時処理された担癌マウスの血漿セレン濃度。
【
図13】さまざまな量のセレンとさまざまな化学療法剤を含む栄養サプリメント製剤で同時処理された担癌マウスから得られた腫瘍組織中のセレン濃度。
【
図14】化学療法剤と、魚油とさまざまな量のセレンを含む栄養サプリメントで治療された担癌動物の腫瘍におけるEGFR発現の減少。
【
図15】化学療法剤と、魚油とさまざまな量のセレンを含む栄養サプリメントで治療された担癌動物の腫瘍におけるp-mTORの減少。
【
図16】化学療法剤と、魚油とさまざまな量のセレンを含む栄養サプリメントとで治療された担癌動物の腫瘍におけるヒストンデアセチラーゼ1(HDAC1およびp-H2X)の減少。
【
図17】化学療法剤と、魚油とさまざまな量のセレンを含む栄養サプリメントで治療された担癌動物の腫瘍におけるSer473またはThr308でリン酸化されたp-Aktの減少。
【
図18】化学療法剤と、魚油とさまざまな量のセレンを含む栄養サプリメントで治療された担癌動物の腫瘍の核におけるp-Smadの減少。
【
図19A】乳癌組織におけるCD24およびCD29の発現に対するセレンおよび魚油を含む栄養サプリメントの効果のインビボ研究。
【
図19B】乳癌組織におけるCD24およびCD29の発現に対するセレンおよび魚油を含む栄養サプリメントのさまざまな用量の効果のインビボ研究。
【
図20】転移性脳腫瘍部位におけるVEGF、CD24、CD29、およびMMP-9の発現に対するセレンおよび魚油を含む栄養サプリメントのさまざまな用量の効果のインビボ研究。
【
図21A】ヒト肺癌細胞を移植されたマウスにおける転移組織の相対的なCD31発現レベル。C=対照(移植されていない)、T=治療なしで移植された腫瘍細胞、PTN=移植前にセレンおよび魚油を含む栄養サプリメントで治療された腫瘍移植動物、TN=移植時にセレンおよび魚油を含む栄養サプリメントで治療された腫瘍移植動物、TR=放射線で治療された腫瘍移植動物、PTRN=移植前にセレンおよび魚油を含む栄養サプリメントで治療され、放射線で治療された腫瘍移植動物、TRN=移植時にセレンおよび魚油を含む栄養サプリメントで治療され、放射線で治療された腫瘍移植動物。
【
図21B】ヒト肺癌細胞を移植されたマウスにおける原発腫瘍部位組織の相対的なCD31発現レベル。C=対照(移植されていない)、T=治療なしで移植された腫瘍細胞、PTN=移植前にセレンおよび魚油を含む栄養サプリメントで治療された腫瘍移植動物、TN=移植時にセレンおよび魚油を含む栄養サプリメントで治療された腫瘍移植動物、TR=放射線で治療された腫瘍移植動物、PTRN=移植前にセレンおよび魚油を含む栄養サプリメントで治療され、放射線で治療された腫瘍移植動物、TRN=移植時にセレンおよび魚油を含む栄養サプリメントで治療され、放射線で治療された腫瘍移植動物。
【
図22A】ヒト肺癌細胞を移植されたマウスにおける転移組織の相対的なCD8発現レベル。C=対照(移植されていない)、T=治療なしで移植された腫瘍細胞、PTN=移植前にセレンおよび魚油を含む栄養サプリメントで治療された腫瘍移植動物、TN=移植時にセレンおよび魚油を含む栄養サプリメントで治療された腫瘍移植動物、TR=放射線で治療された腫瘍移植動物、PTRN=移植前にセレンおよび魚油を含む栄養サプリメントで治療され、放射線で治療された腫瘍移植動物、TRN=移植時にセレンおよび魚油を含む栄養サプリメントで治療され、放射線で治療された腫瘍移植動物。
【
図22B】ヒト肺癌細胞を移植されたマウスにおける原発腫瘍部位組織の相対的CD8発現レベル。T=治療なしで移植された腫瘍細胞、PTN=移植前にセレンおよび魚油を含む栄養サプリメントで治療された腫瘍移植動物、TN=移植時にセレンおよび魚油を含む栄養サプリメントで治療された腫瘍移植動物、TR=放射線で治療された腫瘍移植動物、PTRN=移植前にセレンおよび魚油を含む栄養サプリメントで治療され、放射線で治療された腫瘍移植動物、TRN=移植時にセレンおよび魚油を含む栄養サプリメントで治療され、放射線で治療された腫瘍移植動物。
【
図23A】ヒト肺癌細胞を移植されたマウスにおける転移組織の相対的なCD4/CD8発現レベル。C=対照(移植されていない)、T=治療なしで移植された腫瘍細胞、PTN=移植前にセレンおよび魚油を含む栄養サプリメントで治療された腫瘍移植動物、TN=移植時にセレンおよび魚油を含む栄養サプリメントで治療された腫瘍移植動物、TR=放射線で治療された腫瘍移植動物、PTRN=移植前にセレンおよび魚油を含む栄養サプリメントで治療され、放射線で治療された腫瘍移植動物、TRN=移植時にセレンおよび魚油を含む栄養サプリメントで治療され、放射線で治療された腫瘍移植動物。
【
図23B】ヒト肺癌細胞を移植されたマウスにおける原発腫瘍組織の相対的なCD4/CD8発現レベル。T=治療なしで移植された腫瘍細胞、PTN=移植前にセレンおよび魚油を含む栄養サプリメントで治療された腫瘍移植動物、TN=移植時にセレンおよび魚油を含む栄養サプリメントで治療された腫瘍移植動物、TR=放射線で治療された腫瘍移植動物、PTRN=移植前にセレンおよび魚油を含む栄養サプリメントで治療され、放射線で治療された腫瘍移植動物、TRN=移植時にセレンおよび魚油を含む栄養サプリメントで治療され、放射線で治療された腫瘍移植動物。
【
図24A】ヒト肺癌細胞を移植されたマウスにおける転移組織のCTLA4発現レベル。C=対照(移植されていない)、T=治療なしで移植された腫瘍細胞、PTN=移植前にセレンおよび魚油を含む栄養サプリメントで治療された腫瘍移植動物、TN=移植時にセレンおよび魚油を含む栄養サプリメントで治療された腫瘍移植動物、TR=放射線で治療された腫瘍移植動物、PTRN=移植前にセレンおよび魚油を含む栄養サプリメントで治療され、放射線で治療された腫瘍移植動物、TRN=移植時にセレンおよび魚油を含む栄養サプリメントで治療され、放射線で治療された腫瘍移植動物。
【
図24B】ヒト肺癌細胞を移植されたマウスにおける原発腫瘍組織のCTLA4発現レベル。T=治療なしで移植された腫瘍細胞、PTN=移植前にセレンおよび魚油を含む栄養サプリメントで治療された腫瘍移植動物、TN=移植時にセレンおよび魚油を含む栄養サプリメントで治療された腫瘍移植動物、TR=放射線で治療された腫瘍移植動物、PTRN=移植前にセレンおよび魚油を含む栄養サプリメントで治療され、放射線で治療された腫瘍移植動物、TRN=移植時にセレンおよび魚油を含む栄養サプリメントで治療され、放射線で治療された腫瘍移植動物。
【
図25A】乳癌の動物モデルの腫瘍におけるPD-1およびPD-L1の発現。動物は、セレンと魚油(-N)を含む栄養サプリメント、タキソール(-tax)、アドリアマイシン(-adyri)、アバスチン、または化学療法剤と栄養サプリメントの組み合わせで治療された。ヒストグラムは、未処理の腫瘍での発現に対して正規化されている。
【
図25B】乳癌の動物モデルの腫瘍におけるPD-1とPD-L1の発現の比率。動物は、セレンと魚油(-N)を含む栄養サプリメント、タキソール(-tax)、アドリアマイシン(-adyri)、アバスチン、または化学療法剤と栄養サプリメントの組み合わせで治療された。
【
図26】セレンおよび魚油を含むサプリメントのヒト臨床試験。低用量のサプリメント(G1)を投与している被験者を左に、中用量のサプリメント(G2)の場合を中央に、高用量のサプリメント(G3)の場合を右に示す。結果は、研究の一週目から十六週目までの腫瘍細胞PDL-1含有量に対する白血球PD-1含有量の変化として表される。
【
図27】化学療法剤と、低用量(-S)、中用量(-M)、および高用量(-H)で提供されるセレンおよび魚油を含む栄養サプリメントとの併用療法の効果。タキソールで治療された動物被験者からの腫瘍の結果が左側に示され、アバスチンで治療された動物からの腫瘍サンプルから得られた結果が右側に示されている。
【
図28】化学療法剤と、低用量(-S)、中用量(-M)、および高用量(-H)で提供されるセレンおよび魚油を含む栄養サプリメントとの併用療法の効果。タキソールで治療された動物被験者からの腫瘍の結果が左側に示され、アドリアマイシンで治療された動物から得られた腫瘍サンプルから得られた結果が右に示されている。未処理の対照と比較した定量値が、各バンドの下に示されている。
【
図29】腫瘍CXCR4発現に対する、化学療法剤と、低用量(-S)、中用量(-M)、および高用量(-H)で提供されるセレンおよび魚油を含む栄養サプリメントとの併用療法の効果。アバスチンで、およびアバスチンとセレンおよび魚油を含む栄養サプリメントとを組み合わせて治療された動物被験者からの腫瘍の結果が示されている。未処理の対照と比較した定量値が、各バンドの下に示されている。
【
図30】放射線とセレンおよび魚油を含む栄養サプリメントとの併用療法の典型的な研究デザイン。
【
図31A】肺癌の動物モデルの肺組織におけるCD8発現に対する放射線療法とセレンおよび魚油を含む栄養サプリメントによる治療の効果。C=未治療の対照、T=腫瘍細胞を移植、治療なし、PTN=腫瘍細胞を移植、栄養サプリメントによる治療を直ちに開始、TN=腫瘍細胞を移植、栄養サプリメントによる治療を八日目に開始、TR=腫瘍細胞を移植、八、十、および十二日目に放射線療法、PTRN=腫瘍細胞を移植、栄養サプリメントによる治療を八日目に開始、TR=腫瘍細胞を移植、栄養サプリメントによる治療を直ちに開始、八、十、および十二日目に放射線療法、TRN=腫瘍細胞を移植、栄養サプリメントによる治療を八日目に開始、八、十、および十二日目に放射線療法。
【
図31B】肺癌の動物モデルの原発腫瘍移植部位におけるCD8発現に対する放射線療法およびセレンおよび魚油を含む栄養サプリメントによる治療の効果。T=腫瘍細胞を移植、治療なし、PTN=腫瘍細胞を移植、栄養サプリメントによる治療を直ちに開始、TN=腫瘍細胞を移植、栄養サプリメントによる治療を八日目に開始、TR=腫瘍細胞を移植、八、十、および十二日目に放射線療法、PTRN=腫瘍細胞を移植、栄養サプリメントによる治療を八日目に開始、TR=腫瘍細胞を移植、栄養サプリメントによる治療を直ちに開始、八、十、および十二日目に放射線療法、TRN=腫瘍細胞を移植、栄養サプリメントによる治療を八日目に開始、八、十、および十二日目に放射線療法。
【
図32A】肺癌の動物モデルにおける肺組織のCD4/CD8比に対する放射線療法およびセレンおよび魚油を含む栄養サプリメントによる治療の効果。C=未治療の対照、T=腫瘍細胞を移植、治療なし、PTN=腫瘍細胞を移植、栄養サプリメントによる治療を直ちに開始、TN=腫瘍細胞を移植、栄養サプリメントによる治療を八日目に開始、TR=腫瘍細胞を移植、八、十、および十二日目に放射線療法、PTRN=腫瘍細胞を移植、栄養サプリメントによる治療を八日目に開始、TR=腫瘍細胞を移植、栄養サプリメントによる治療を直ちに開始、八、十、および十二日目に放射線療法、TRN=腫瘍細胞を移植、栄養サプリメントによる治療を八日目に開始、八、十、および十二日目に放射線療法。
【
図32B】肺癌の動物モデルにおける原発腫瘍移植部位のCD4/CD8比に対する放射線療法およびセレンおよび魚油を含む栄養サプリメントによる治療の効果。T=腫瘍細胞を移植、治療なし、PTN=腫瘍細胞を移植、栄養サプリメントによる治療を直ちに開始、TN=腫瘍細胞を移植、栄養サプリメントによる治療を八日目に開始、TR=腫瘍細胞を移植、八、十、および十二日目に放射線療法、PTRN=腫瘍細胞を移植、栄養サプリメントによる治療を八日目に開始、TR=腫瘍細胞を移植、栄養サプリメントによる治療を直ちに開始、八、十、および十二日目に放射線療法、TRN=腫瘍細胞を移植、栄養サプリメントによる治療を八日目に開始、八、十、および十二日目に放射線療法。
【
図33】肺癌の動物モデルの原発腫瘍移植部位におけるSTAT3発現に対する放射線療法およびセレンおよび魚油を含む栄養サプリメントによる治療の効果。T=腫瘍細胞を移植、治療なし、PTN=腫瘍細胞を移植、栄養サプリメントによる治療を直ちに開始、TN=腫瘍細胞を移植、栄養サプリメントによる治療を八日目に開始、TR=腫瘍細胞を移植、八、十、および十二日目に放射線療法、PTRN=腫瘍細胞を移植、栄養サプリメントによる治療を八日目に開始、TR=腫瘍細胞を移植、栄養サプリメントによる治療を直ちに開始、八、十、および十二日目に放射線療法、TRN=腫瘍細胞を移植、栄養サプリメントによる治療を八日目に開始、八、十、および十二日目に放射線療法。
【
図34】肺癌の動物モデルの原発腫瘍移植部位におけるPTEN発現に対する放射線療法およびセレンおよび魚油を含む栄養サプリメントによる治療の効果。T=腫瘍細胞を移植、治療なし、PTN=腫瘍細胞を移植、栄養サプリメントによる治療を直ちに開始、TN=腫瘍細胞を移植、栄養サプリメントによる治療を八日目に開始、TR=腫瘍細胞を移植、八、十、および十二日目に放射線療法、PTRN=腫瘍細胞を移植、栄養サプリメントによる治療を八日目に開始、TR=腫瘍細胞を移植、栄養サプリメントによる治療を直ちに開始、八、十、および十二日目に放射線療法、TRN=腫瘍細胞を移植、栄養サプリメントによる治療を八日目に開始、八、十、および十二日目に放射線療法。
【
図35A】肺癌の動物モデルの原発腫瘍移植部位におけるCTLA-4発現に対する放射線療法およびセレンおよび魚油を含む栄養サプリメントによる治療の効果。T=腫瘍細胞を移植、治療なし、PTN=腫瘍細胞を移植、栄養サプリメントによる治療を直ちに開始、TN=腫瘍細胞を移植、栄養サプリメントによる治療を八日目に開始、TR=腫瘍細胞を移植、八、十、および十二日目に放射線療法、PTRN=腫瘍細胞を移植、栄養サプリメントによる治療を八日目に開始、TR=腫瘍細胞を移植、栄養サプリメントによる治療を直ちに開始、八、十、および十二日目に放射線療法、TRN=腫瘍細胞を移植、栄養サプリメントによる治療を八日目に開始、八、十、および十二日目に放射線療法。
【
図35B】肺癌の動物モデルにおける肺組織のCTLA-4発現に対する放射線療法およびセレンおよび魚油を含む栄養サプリメントによる治療の効果。C=未治療の対照、T=腫瘍細胞を移植、治療なし、PTN=腫瘍細胞を移植、栄養サプリメントによる治療を直ちに開始、TN=腫瘍細胞を移植、栄養サプリメントによる治療を八日目に開始、TR=腫瘍細胞を移植、八、十、および十二日目に放射線療法、PTRN=腫瘍細胞を移植、栄養サプリメントによる治療を八日目に開始、TR=腫瘍細胞を移植、栄養サプリメントによる治療を直ちに開始、八、十、および十二日目に放射線療法、TRN=腫瘍細胞を移植、栄養サプリメントによる治療を八日目に開始、八、十、および十二日目に放射線療法。
【
図36】タキソールまたはアドリアマイシンのいずれかと組み合わせてセレンおよび魚油を使用したトリプルネガティブ乳癌の動物モデルの腫瘍における免疫チェックポイント、血管新生、および浸潤性関連タンパク質の用量依存的調節の研究結果。
【
図37】タキソールまたはアドリアマイシンのいずれかと組み合わせてセレンおよび魚油を使用したトリプルネガティブ乳癌の動物モデルの腫瘍における免疫チェックポイント、血管新生、および浸潤性関連タンパク質の用量依存的調節の研究結果。
【
図38】タキソールまたはアドリアマイシンのいずれかと組み合わせてセレンおよび魚油を使用したトリプルネガティブ乳癌の動物モデルの腫瘍におけるNkp46の用量依存的調節の研究結果。
【
図39】タキソールまたはアバスチンのいずれかと組み合わせてセレンおよび魚油を使用したトリプルネガティブ乳癌の動物モデルの腫瘍におけるCD28、CD86、およびCD80の用量依存的調節の研究結果。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(詳細な説明)
以下の説明は、本発明を理解するのに有用であり得る情報を含む。本明細書で提供される情報のいずれかが先行技術であるか、または現在請求されている発明に関連していること、または具体的または暗黙的に参照されている刊行物が先行技術であることを認めるものではない。
【0020】
本発明の主題は、従来の免疫療法薬が標的とする細胞表面マーカーの調節によって実証することができる免疫療法効果を提供するように栄養サプリメント(クロムおよび特定の植物由来材料(NutraWell)を含むサプリメントおよび/またはセレン酵母ペプチド複合体および魚油を含むサプリメントなど)が使用される、組成物および方法を提供するものである。幾つかの実施形態では、そのような栄養サプリメントは、放射線および/または化学療法剤などの他の抗腫瘍療法と組み合わせて提供される。幾つかの実施形態において、そのような併用療法は、驚くべきことに、免疫療法の標的として機能する細胞表面マーカーの調節に関して、有意な相乗的効果を提供することができる。
【0021】
開示された技術は、免疫療法に関連する細胞表面マーカーの発現を調節するための新規で忍容性の高いアプローチを提供するだけでなく、現在の抗腫瘍プロトコルの有効性を増強または補完することを含む、多くの有利な技術的効果を提供することを理解されたい。
【0022】
以下の議論は、本発明の主題の多くの例示的な実施形態を提供する。各実施形態は、本発明の要素の単一の組み合わせを表すが、本発明の主題は、開示された要素のすべての可能な組み合わせを含むと見なされる。したがって、一実施形態が要素A、B、およびCを含み、第2の実施形態が要素BおよびDを含む場合、本発明の主題はまた、明示的でなくても、A、B、C、またはDの他の残りの組み合わせを含むと見なされる。
【0023】
幾つかの実施形態では、本発明の特定の実施形態を説明および主張するために使用される、成分の量、濃度、反応条件などの特性を表す数字は、場合によっては「約」という用語によって変更されると理解されるべきである。したがって、幾つかの実施形態では、書面による説明および添付の特許請求の範囲に記載の数値パラメータは、特定の実施形態によって得られることが求められる所望の特性に応じて変化し得る近似値である。幾つかの実施形態では、数値パラメータは、報告された有効桁数に照らして、通常の丸め技法を適用することによって解釈されるべきである。本発明の幾つかの実施形態の広い範囲を示す数値範囲およびパラメータは近似値であるにもかかわらず、特定の例に示される数値は、実行可能な限り正確に報告される。本発明の幾つかの実施形態で提示される数値は、それらのそれぞれの試験測定で見出される標準偏差に必然的に起因する特定の誤差を含み得る。
【0024】
以下に記載する幾つかの発見は、魚油とセレン源の使用に関するものであるが、当該出願者は、表1に示す栄養サプリメントの処方には、魚油とセレン酵母成分(セレン酵母から調製されたペプチドおよび/またはアミノ酸)が組み込まれていることに注目している。魚油とセレン酵母の研究で見られるそのような効果は、この栄養サプリメントの使用、または表1に示す製剤の残りの成分の一つ以上と組み合わせた魚油とセレン酵母を含む製剤に拡張できる。表1に示されるサプリメント製剤は、高レベルの受容性を有し、抗腫瘍性免疫療法に関連する細胞表面マーカーの発現を調節することにおいて予期せぬ有益な効果を有することが見出された最少用量製剤である。以下に示すように、そのような栄養サプリメントはまた、組み合わせて使用される場合、従来の抗腫瘍療法の効果を補完および/または増強することができる。本発明の概念の典型的な栄養サプリメントの処方を以下の表1に示す。
【0025】
【0026】
表1に示される組成物は、抗炎症活性、血糖値の低下、コレステロールの低下、および抗腫瘍活性を含む、様々な生理学的および生化学的効果を有する成分を含む。他の成分は、必要なビタミン、ミネラル、アミノ酸を高レベルで補給する。他の成分(例えば、酵素、レシチン)は、消費されたときに組成物の成分の消化および吸収を助けるのに役立つ。これらの補完的な活性の組み合わせは、個々の成分の単純な相加効果を超える相乗的効果を提供する。表1に示される組成物はまた、嗜好性および受容性を改善するのに役立つ特定の香味料(例えば、黒糖、蜂蜜、バニラフレーバーおよびマスキング剤)を含むことを理解されたい。特定の成分(例えば、蜂蜜、黒糖、牛乳、米タンパク質、カゼイン)は、風味とカロリーエネルギーの両方を提供することができる。本発明者らは、上記の香味料の組み合わせが、有効量の栄養サプリメントの消費へのコンプライアンスを提供するのに効果的であることを見出した。幾つかの実施形態では、そのような香味料は、栄養サプリメントの有効性に悪影響を与えることなく除外することができる。
【0027】
表1は、前掲の構成要素の最少1日用量を提供する製剤の説明を提供し、これらのそれぞれについて表された範囲は、前掲の範囲内の中間範囲および/またはサブ範囲の開示であると見なされることを理解されたい。例えば、30μg~4,000μgのセレンの範囲は、1日あたり30μg~4,000μのセレンを提供する最少の処方量を示し、この範囲内にあるさまざまなサブ範囲(例えば、500μg~2,000μg、2,000μg~4,000μgなど)を含む処方量を示すことができる。表1に示される組成物は、単一の製剤によって、または併せて構成要素を提供する二つ以上の製剤によって表すことができる。
【0028】
表1は最少製剤(すなわち低用量)を示していること、および本発明の概念の実施形態は、より高い用量または範囲を含む製剤または製剤の使用、例えば、組成物が50%多くの構成成分を含む中用量(すなわち、表1に示されているものの1.5倍)または組成物が100%多くの構成成分を含む高用量(すなわち、表1に示されているものの2倍)を含み得ることも理解されたい。したがって、中用量および高用量の製剤は、そのような乗数が表1に示す最少製剤に適用される製剤を包含する。例えば、最少製剤中の30μg~4,000μgの範囲のセレンは、中用量製剤では1.5倍の乗数によって45μg~6,000μgに、高用量製剤では2倍の乗数によって60μg~8,000μgに変更することができる。これらの中用量および高用量製剤の範囲内の中間範囲は、上記のように開示されていると見なされる。そのような中用量または高用量の組成物は、単一の製剤、または併せて構成要素を提供する二つ以上の製剤によって表すことができる。
【0029】
本発明の概念の幾つかの実施形態において、表1に列挙された成分または構成要素は、より大きな分子、塩、または複合体の一部として提供され得る。例えば、セレン、クロム、および/またはモリブデンなどの金属は、セレン酵母、クロム酵母、およびモリブデン酵母(それぞれ)として、またはそのような酵母製剤の成分として提供することができる。
【0030】
本発明の概念の他の実施形態では、前記栄養サプリメントは、魚油およびセレン酵母調製物、またはそのような酵母に由来する一つまたは複数のセレン含有ペプチドまたはアミノ酸を含むことができる。そのようなセレンペプチドは、セレノシステインおよび/またはセレノメチオニンを含み得る。
【0031】
好ましい実施形態では、本発明の概念の組成物および方法で利用される魚油は、約2:3のDHA対EPAの重量比を有する。本明細書の文脈内では、この文脈での「約」という用語には、公称値からの±10%または±20%の偏差が含まれる。
【0032】
本発明の概念の幾つかの実施形態は、癌を治療するためにセレンおよび魚油を含む栄養サプリメントを使用する組成物および方法であり、他の実施形態は、生細胞中の特定の生物学的マーカーの量を調節する組成物および方法であるが、本発明の概念の他の実施形態は、一つまたは複数の従来の抗癌療法、特に免疫療法と組み合わせたそのようなサプリメントの使用を対象とする、と理解されたい。
【0033】
一部の癌細胞は、イレッサ/エルロチニブなどの一般的に使用される化学療法薬に抵抗性がある。一部の個体では、そのような抵抗性は化学療法治療の過程で発生し、有効性の喪失と腫瘍の進行をもたらす。他の例では、癌は治療前の化学療法薬に抵抗性があり、従来の化学療法が実施されるにつれて腫瘍が進行することを可能にする。
図1は、腫瘍細胞におけるイレッサ/エルロチニブ抵抗性の既知のメカニズムを示している。EGFR(受容体チロシンキナーゼまたはRTK)の変異活性化は、非小細胞肺癌で一般的であり、ERK、Akt、およびRelAの活性化を引き起こし、それが次に癌の進行を促進する。非抵抗性細胞(左パネル)では、イレッサ/エルロチニブがEGFRの活性を遮断し、腫瘍の退縮を引き起こす。抵抗性細胞(右パネル)では、別のRTKであるAxlが過剰産生され、薬剤によって遮断されないERK、Akt、およびRelAの活性化のための代替経路を提供する。このAxlの過剰発現は、ビメンチンの過剰発現に関連しており、内皮間葉転換がイレッサ/エルロチニブ抵抗性の発生に関与している可能性があることを示唆している。
【0034】
HCC827GR細胞株は、イレッサに抵抗性のある肺癌細胞株である。
図2に示すように、これらの細胞は大量のAxlを生成するが、これはイレッサでの処理では減少しない。しかし、驚くべきことに、セレン酵母と魚油を組み合わせて適用すると、イレッサの非存在下または存在下でAxlの発現が劇的に減少し、それによってこれらの抵抗性細胞が薬剤に対して感受性になる。セレン(例えば、セレン酵母として)と魚油の両方を含む栄養サプリメントは、薬剤(例えば、イレッサ)抵抗性細胞でのAxl発現を効果的に減らすことができる。したがって、薬剤抵抗性の状態が不明であるか変化している腫瘍を有する患者は、栄養サプリメントのみ、または化学療法薬と栄養サプリメントの組み合わせのいずれかで治療することができる。
【0035】
図3に示すように、Axlの適切なフォールディングは、熱ショックタンパク質90(HSP90、シャペロニン)に依存する。Axlの不適切なォールディングは分解速度の増加につながるため、HSP90の阻害または発現低下は、Axlの減少をもたらす可能性がある。
図4に示されるように、AxlおよびHSP90の両方の発現が、イレッサ感受性の親HCC827細胞株と比較して、イレッサ抵抗性のHCC827GRにおいて上昇していることは注目に値する。
【0036】
図5Aに示すように、セレンと魚油の両方を含む栄養サプリメントでイレッサ抵抗性HCC827GR細胞を72時間処理すると、AxlとHSP90の両方の発現が減少するが、イレッサのみで処理しても明らかな効果はない。驚くべきことに、イレッサと栄養サプリメントの組み合わせを使用した場合、Axl発現の低下にかなりの相乗的効果が見られる。
【0037】
本発明者らは、魚油およびセレン(または魚油およびセレンを含む栄養サプリメント)での処理が、HSP90以外の熱ショックタンパク質の発現を調節できることを発見した。本発明者らは、セレンおよび魚油での処理が、熱ショックタンパク質、例えば、p-HSP27の発現を調節できることを発見した。このような熱ショックタンパク質は、保護効果をもたらすと考えられており、免疫療法の標的となることがよくある。
図5Bに示されるように、魚油とセレンの組み合わせによる処理は、セレンまたは魚油単独では見られなかったp-HSP27発現の減少において相乗的効果を提供することが見出された。
【0038】
免疫療法は、腫瘍細胞が化学療法薬に抵抗性がある場合に利用可能な治療法である。
図5Cに示すように、薬剤抵抗性ヒト肺癌細胞(HCC827GR)は、感受性のある親細胞株と比較して、CD133、CD44、およびABCG2などの免疫療法標的の過剰発現を示す。
図5Dおよび5Eは、さまざまな濃度の化学療法薬イレッサの存在下および非存在下でのこの抵抗性細胞株(HCC827Gr)における様々な免疫療法標的および他の腫瘍マーカー(すなわち、p-P38、p-HSP27、β-カテニン、ABCG2、CD133、N-カドヘリン、E-カドヘリン、p-MET、COX-2、GRP78、p-AMPKα、およびCHOP)の発現に対する魚油およびセレンでの治療の効果を示している。場合によっては、化学療法薬との併用療法が、特に高濃度の薬で、魚油とセレンの組み合わせの効果を部分的に相殺するように見えることを理解されたい。
【0039】
図6Aの左側のパネルに図示されているように、受容体チロシンキナーゼによるAKTの活性化はまた、リン酸化されたmTORの増加をもたらし、これは次に、腫瘍細胞の成長および薬剤抵抗性腫瘍細胞における増殖の増加をもたらす。本発明者らは、セレンおよび魚油を含む栄養サプリメントの使用が、Axl、HSP90、リン酸化ATK、およびリン酸化mTORの減少をもたらすことを発見した(
図6の右パネルを参照)。
【0040】
PD-1およびPD-L1は、T細胞応答を調節する「チェックポイント」タンパク質であり、癌免疫療法の標的となる。PD-L1は一般に癌細胞で過剰発現し、活性化された細胞傷害性T細胞に存在するPD-1に結合して、それらを阻害する。これらの阻害されたT細胞は癌細胞を攻撃するのに効果がない。免疫療法は、PD-1とPD-L1の間の相互作用を防止または遮断することを目的としている。例えば、免疫療法薬のペムブロリズマブは、PD-1に対するモノクローナル抗体である。これにより、PD-L1の結合が防止され、細胞傷害性T細胞の阻害が遮断される。このようなモノクローナル抗体薬は注射または注入によって投与され、潜在的に免疫原性がある。驚くべきことに、
図7Aに示されるように、本発明者らは、セレンおよび魚油を含む栄養サプリメントが、HCC827ヒト肺癌細胞におけるPD-L1発現を劇的に減少させる可能性があることを発見した。
【0041】
図6Bに示されるように、魚油とセレンの組み合わせは、化学療法抵抗性細胞におけるPD-L1発現を減少させるのに効果的である。驚くべきことに、魚油とセレン酵母の組み合わせによる治療は、そのような化学療法抵抗性の癌細胞におけるPD-L1の発現を減少させるのに非常に効果的であるが、一方、化学療法薬イレッサによる治療は効果がない。
【0042】
本発明者らはまた、魚油とセレンの組み合わせが、癌幹細胞の特徴を有する癌スフィア細胞のPD-L1を調節できることを発見した。
図7Bは、A549ヒト肺癌細胞に由来する幹細胞様スフィア細胞におけるPD-L1発現の例示的なウエスタンブロットを示す。
図7Cは、抗腫瘍性化合物を使用した併用療法の有無にかかわらず、さまざまな量のセレンと魚油を使用した同様の研究の典型的な結果を示している。図示されているように、PD-L1は幹細胞の特徴を持たない親細胞では最小限であるが、スフィア細胞のような幹細胞で顕著に発現している。化学療法薬を単独で使用しても、PD-L1の発現を調節することはできない。セレンと魚油を組み合わせて使用すると、これらの幹細胞のようなスフィア細胞のPD-L1発現レベルが低下し、幹細胞の特徴を示さない親細胞で観察されるレベルよりも低くなる可能性がある。
【0043】
図8Aは、トリプルネガティブ乳癌細胞のマウスへの移植に起因する転移性腫瘍組織(すなわち、移植部位から乳房まで)で発現されるPD-1およびPD-L1に対するセレンおよび魚油を含む栄養サプリメントの効果の研究結果を示す。動物はまた、タキソール、タキソールとサプリメントの組み合わせ、アドリアマイシン、アドリアマイシンとサプリメントの組み合わせ、アバスチン、およびアバスチンとサプリメントの組み合わせで治療された。図示されているように、セレンおよび魚油を含む栄養サプリメントによるインビボ治療は、腫瘍組織におけるPD-1とPD-L1の両方の発現を低下させる。化学療法薬と組み合わせて使用した場合の相乗的効果は明らかである。
図8Bは、トリプルネガティブ乳癌の動物モデルにおける原発腫瘍部位および転移性腫瘍部位の両方におけるPD-1とPD-L1との発現の比率に対するセレンおよび魚油を含む栄養サプリメントの効果の結果を示す。化学療法薬と組み合わせて使用した場合の相乗的効果は明らかである。
【0044】
追加の研究では、セレンおよび魚油を含む栄養サプリメントによる、腫瘍組織におけるPD-1およびPD-L1発現のインビボ調節、および、免疫療法に有用な他の免疫チェックポイントマーカーが用量依存的であることが示されている。幾つかの実施形態において、本発明の概念の栄養サプリメントは、腫瘍の位置に依存するそのような免疫チェックポイントマーカーの発現に対してさまざまな効果を提供し得ることが理解されるべきである。例えば、本発明の概念の栄養サプリメントによる免疫チェックポイントタンパク質の調節は、原発腫瘍部位(例えば、動物モデルにおける移植部位)と転移部位(例えば、動物モデルにおける肺、肝臓、脾臓など)との間で異なり得る。
図9Aは、この現象の動物モデル研究のための典型的な研究デザインを示している。低(NFS)、中(NFM;NFSの1.5倍のSe含有量を含む)、および高(NFH;NFSの二倍のSe含有量を含む)用量のセレンおよび魚油を提供する三つのさまざまなサプリメント製剤を使用した。これらのサプリメント製剤は、化学療法薬(タキソールやアドリアマイシンなど)と組み合わせて提供された。
図9Bは、マウスモデルのトリプルネガティブヒト乳癌原発部位におけるPD-1、PD-L1、CTLA4およびFOXP3の研究の結果を示している。図示されているように、PD-L1は、タキソールとアドリアマイシンが明らかな効果を持たない用量依存的な方法で栄養サプリメントを使用することによって減少する。PD-1、CTLA4、およびFOXP3免疫チェックポイントマーカーの発現は、用量依存的に増加する。
図9Cは、動物腫瘍モデルにおいて、さまざまなレベルのセレンおよび魚油をアバスチンまたはタキソールと組み合わせて使用した、腫瘍CD24発現の調節の用量依存性を示している。
図9Dは、動物腫瘍モデルにおいて、さまざまなレベルのセレンおよび魚油をアバスチンまたはタキソールと組み合わせて使用した、腫瘍CD29発現の調節の用量依存性を示している。
図9Eは、動物腫瘍モデルにおいて、さまざまなレベルのセレンおよび魚油をアバスチンまたはタキソールと組み合わせて使用した、腫瘍EGFR発現の調節の用量依存性を示している。
図9Fは、動物腫瘍モデルにおいて、さまざまなレベルのセレンおよび魚油をアバスチンまたはタキソールと組み合わせて使用した、腫瘍p-mTOR発現の調節の用量依存性を示している。
図9Gは、動物腫瘍モデルにおいてタキソールと組み合わせてさまざまなレベルのセレンおよび魚油を使用した、腫瘍HDAC1およびp-H2X発現の調節の用量依存性を示している。
図9Hは、動物腫瘍モデルにおいて、さまざまなレベルのセレンおよび魚油をアバスチンまたはタキソールと組み合わせて使用した、腫瘍p-Akt発現の調節の用量依存性を示している。
【0045】
細胞内と細胞表面の両方で発現できるビメンチンは、免疫療法の標的となるもう一つのタンパク質である。
図9Iに示すように、魚油とセレンの併用は、処理された細胞のビメンチン発現を減少させる。この効果は、魚油またはセレンのいずれかを単独で使用した場合には見られない。免疫療法のもう一つの標的は、mTORを阻害し、腫瘍細胞およびT細胞の酸化的代謝に関連するp-AMPKαである。
図9Jに示すように、魚油とセレンの組み合わせは、p-AMPKαの増加に相乗的効果をもたらす。これは次に、そのように処理された細胞のp-mTORの減少に関連している。
【0046】
本発明者らは、セレンおよび魚油を含む栄養サプリメントの使用が、少なくとも腫瘍PD-L1発現を減少させることにより、癌化学療法および/または従来の免疫療法を置き換えおよび/または補完できると考えている。そのような栄養サプリメントは、簡便に経口投与され、忍容性が良好であることも理解されるべきである。
【0047】
特定のモノクローナル抗体(またはその誘導体)の使用を伴う免疫療法は、癌治療における使用が増加している。これらの免疫療法の多くは、PD-1とPDL-1の間の相互作用を対象としている。例えば、4H2はPD-1に特異的なキメラマウス抗体である。
図10Aは、そのような抗体ベースの抗腫瘍免疫療法と組み合わせて使用された場合の魚油およびセレンを含む栄養サプリメントの効果を決定するための研究の設計を示す。腫瘍細胞を移植され、
図10Aに示されるように処理されたマウスの脾臓に見られるCD3陽性T細胞の割合を
図10Bに示す。図示されているように、未治療の担癌マウスは、未治療の対照と比較して、CD3+T細胞の数が急激に減少していることを示している。H2抗体による治療では、ほとんどまたはまったく改善が見られなかった。魚油とセレンを含む栄養サプリメントで治療すると、CD3+陽性T細胞の割合に観察可能な改善が見られた。驚いたことに、PD-1特異的抗体と、魚油とセレンを含む栄養サプリメントを組み合わせて使用すると、CD3+T細胞の割合が大幅に改善され、相乗的効果が示された。
【0048】
腫瘍細胞を移植され、
図10Aに示されるように処理されたマウスの脾臓に見られるCD3陽性およびCD4+T細胞の割合を
図10Cに示す。図示されているように、未治療の担癌マウスは、未治療の対照と比較して、CD3+/CD4+T細胞の割合が急激に減少していることを示している。H2抗体による治療は、CD3+/CD4+T細胞の割合をさらに減少させるようである。魚油とセレンを含む栄養サプリメントによる治療は、CD3+/CD4+陽性T細胞の割合にほとんど影響を与えない。驚いたことに、PD-1特異的抗体と、魚油とセレンを含む栄養サプリメントを組み合わせて使用すると、CD3+/CD4+T細胞の割合が改善され、相乗的効果が示された。
【0049】
腫瘍細胞を移植され、
図10Aに示されるように処理されたマウスの脾臓に見られるCD3陽性およびCD8陽性T細胞の割合を
図10Dに示す。図示されているように、未治療の担癌マウスは、未治療の対照と比較して、CD3+/CD8+T細胞の割合が急激に減少していることを示している。H2抗体による治療は、魚油とセレンを含む栄養サプリメントによる治療と同様に、CD3+/CD8+T細胞の割合をわずかに増加させる。驚いたことに、PD-1特異的抗体と、魚油とセレンを含む栄養サプリメントを組み合わせて使用すると、CD3+/CD8+T細胞の割合が劇的に改善され、相乗的効果が示された。
【0050】
腫瘍細胞を移植され、
図10Aに示されるように処理されたマウスの脾臓に見られる樹状細胞の割合を
図10Eに示す。図示されているように、未処理の担癌マウスは、未処理の対照と比較して、樹状細胞の割合が急激に減少していることを示している。H2抗体による治療は、樹状細胞の割合にほとんど影響を与えない。魚油とセレンを含む栄養サプリメントで治療すると、樹状細胞の割合が増加する。これは、PD-1特異的抗体と魚油とセレンを含む栄養サプリメントを組み合わせて使用した場合にも見られる。
【0051】
上記のように、さまざまな量のセレン(Se)を含む栄養サプリメントを提供することができ、化学療法剤とともに提供するか、または化学療法剤と組み合わせて使用することもできる。動物実験で使用される典型的な投薬スケジュールが
図11に示されている。
図12は、担癌マウスにおけるセレンの血清/血漿濃度に対するそのような投薬スケジュールの効果を示している。
図12に示すように、化学療法剤による治療と一緒にセレンおよび魚油を含む栄養サプリメントで担癌マウスを治療すると、血漿セレン濃度が上昇した。特に、血漿セレン濃度は、さまざまなセレン含有量の栄養サプリメントで治療したにもかかわらず、比較的一貫していた。
【0052】
図13は、
図12のように処理された担癌マウスから得られた腫瘍組織のセレン含有量を示す。驚くべきことに、セレンは、魚油とセレンを含む栄養サプリメントの組み合わせで治療され、化学療法剤でも治療された担癌マウスの腫瘍組織において、セレン用量依存的に、捕捉される(sequestered)。これは、セレンの選択的な取り込みおよび/または保持を示しており、簡単な経口投与によって全身的に提供される一方で、腫瘍組織に局所的な効果をもたらす可能性がある。
【0053】
上皮成長因子受容体(EGFR)は腫瘍形成のけん引役であり、肺癌、乳癌、および膠芽腫細胞で(例えば増幅によって)不適切に活性化されることがよくある。増幅は化学療法薬によって加えられる選択的圧力によって駆動されることが示されているため、EGFRは薬剤抵抗性の発生にも関連している。
図14に示すように、EGFR発現は、担癌動物がさまざまな量のセレンおよび魚油を含む栄養サプリメントで治療され、化学療法薬(例えば、タキソールまたはアバスチン)で同時治療されると、用量特異的に腫瘍組織で減少する。驚くべきことに、EGFR発現は、化学療法のみ(例えば、タキソール)によって発現が影響を受けない場合でも、セレン用量依存的に減少する。
【0054】
上記のように、リン酸化mTOR(p-mTOR)は、腫瘍の成長と薬剤抵抗性にも関連している。
図15に示すように、担癌マウスを、魚油とさまざまな量のセレンを含む栄養サプリメントと組み合わせた化学療法剤(例えば、タキソールまたはアバスチンなど)で治療すると、p-mTORの発現をセレン用量依存的に急激に減少させることがわかった。
【0055】
ヒストンアセチルトランスフェラーゼによって媒介されるヒストンアセチル化は、遺伝子発現に影響を与えるエピジェネティックな改変を表している。ヒストンデアセチラーゼの異常な発現は腫瘍の発生と関連しており、遺伝子発現の変化は細胞増殖、細胞周期調節、アポトーシスなどの細胞機能の破壊につながる。したがって、ヒストンデアセチラーゼの阻害が、癌治療の標的として研究されている。
図16に示すように、魚油およびさまざまな量のセレンを含む栄養サプリメントを化学療法剤と組み合わせて使用すると、担癌マウスの腫瘍におけるヒストンデアセチラーゼ発現をセレン用量依存的に減少させることが見出された。
図16はまた、二本鎖DNA切断の存在に関するマーカーであるp-H2Xが、化学療法剤と、魚油およびさまざまな量のセレンを含む栄養サプリメントとの組み合わせで治療された担癌マウスの腫瘍組織で、セレン用量依存的に急激に減少することを示している。
【0056】
リン酸化Akt(p-Akt)は、乳癌や胃癌などの一部の癌の予後不良のマーカーと見なされている。
図17に示すように、担癌マウスを、魚油とセレンをさまざまな量で含む栄養サプリメントで化学療法剤と組み合わせて治療すると、p-AktThr308とp-AktSer473の両方が腫瘍組織で減少する。該観察された減少は、セレンの用量に依存する。
【0057】
Smadファミリーのタンパク質は、腫瘍の発生と転移の両方に関与するTGF-βシグナル伝達経路の一部である。癌細胞の核におけるp-Smad2のレベルの上昇は、予後不良と関連している。
図18に示すように、化学療法剤と組み合わせて、魚油とさまざまな量のセレンを含む栄養サプリメントで担癌マウスを治療すると、腫瘍細胞の核内のp-Smad2/3含有量が劇的に減少した。減少の程度はセレンの用量に依存する。
【0058】
癌細胞は幹細胞のような特徴を持っている可能性があり、その存在は化学療法薬に対する抵抗性を転移および/または発達させる能力を示している可能性がある。CD24およびCD29は、幹細胞の特徴の程度を決定するために一般的に使用されるマーカーである。
図19Aは、トリプルネガティブ乳癌細胞をマウスに注射することによって生成された原発腫瘍部位におけるCD24およびCD29発現のセレンおよび魚油を含む栄養サプリメントの効果のインビボ研究の結果を示す。マウスはまた、タキソール、タキソールとサプリメントの組み合わせ、アドリアマイシン、アドリアマイシンとサプリメントの組み合わせ、アバスチン、およびアバスチンと栄養サプリメントの組み合わせで治療された。
図19Bは、セレンおよび魚油を含む栄養サプリメントの使用による腫瘍C24およびCD29発現の調節が用量依存的であることを示している。
図9のように、低、中、高用量のセレンを含む栄養サプリメントを、アバスチンまたはタキソールのいずれかと組み合わせて提供した。図示されているように、セレンおよび魚油を含む栄養サプリメントは、従来の化学療法剤がほとんど効果がない場合でも、原発腫瘍部位でのCD24とCD29の発現を(用量依存的に)大幅に減らすことができる。これは、腫瘍細胞における幹細胞様の特徴の程度の低下、およびその後の転移および/または薬剤抵抗性の発生傾向の低下を示している。
【0059】
図20は、転移能力に関連するマーカー、特に、転移脳腫瘍部位から得られたサンプル中のCD24、CD29、MMP-9、およびVEGFに対して、セレンおよび魚油を含むさまざまな量の栄養サプリメント(タキソールと組み合わせて提供される)を使用した結果を示す。タキソール単独では明らかな効果はなかったが、セレンおよび魚油を含む栄養サプリメントを使用すると、転移に関連するVEGF、CD24、CD29、およびMMP-9マーカーの発現が用量依存的に減少した。
【0060】
CD31は、腫瘍細胞の幹細胞特徴を示すもう一つのマーカーであり、転移する傾向に関連している。
図21Aおよび21Bは、マウスに移植された肺癌細胞の転移性および原発性腫瘍部位におけるCD31発現レベルのインビトロ研究の結果を示す。動物は栄養サプリメントで前処理されていたか、移植時に治療を開始した。
図21Aおよび21Bに示されるように、セレンおよび魚油を含む栄養サプリメントは、転移組織と原発腫瘍組織の両方でCD31の発現を低下させるのに効果的であり、前処理は従来の放射線療法と同様の効果をもたらす(ただし、付随する副作用はない)。
【0061】
CD8陽性T細胞は、癌免疫療法のもう一つの潜在的な標的である。腫瘍におけるそのような腫瘍浸潤T細胞の存在は、癌患者の全生存と相関している。
図22Aおよび22Bは、マウスに移植された肺癌細胞の転移性および原発性腫瘍部位におけるCD8発現レベルのインビトロ研究の結果を示す。動物は栄養サプリメントで前処理されたか、移植時に治療を開始した。
図22Aと22Bに示されるように、セレンおよび魚油を含む栄養サプリメントは、転移組織と原発腫瘍組織の両方でCD8陽性T細胞の浸潤を増加させるのに効果的であり、前処理は従来の放射線療法と同様の効果をもたらす(ただし、付随する副作用はない)。驚くべきことに、栄養サプリメントによる前処理を放射線療法と組み合わせると、有意な相乗的効果が見られる。
【0062】
発癌前の老化細胞に対して活性であるCD4陽性T細胞は、癌免疫療法のもう一つの標的である。このようなCD4陽性T細胞はCD8陽性T細胞と協調して作用し、老化細胞がさらなる変異を蓄積して老化から発癌に移行すると、CD8陽性T細胞が活性化される。そのため、CD4陽性T細胞とCD8陽性T細胞の間の正常なバランスが望ましい。CD4とCD8の発現の比率は、影響を受けた組織におけるこれらのT細胞の相対的な集団の尺度を提供する。
図23Aおよび23Bは、マウスに移植されたヒト肺癌細胞の転移性および原発性腫瘍部位におけるCD8発現レベルと比較したCD4発現のインビトロ研究の結果を示す。動物は栄養サプリメントで前処理されたか、移植時に治療を開始した。
図23Aおよび23Bに示されるように、セレンおよび魚油を含む栄養サプリメントは、転移組織と原発腫瘍組織の両方でCD4/CD8比を低下させるのに効果的であり、前処理は従来の放射線療法と同様の効果を提供する(ただし、付随する副作用はない)。驚いたことに、栄養サプリメントによる治療(特に前処理)は、従来の放射線療法よりも効果的であった。
【0063】
CTLA4は、免疫応答をダウンレギュレートするもう一つの免疫チェックポイントタンパク質であり、癌免疫療法の潜在的な標的である。例えば、イピリムマブは、癌免疫療法で使用されるCTLA4に対する治療用抗体である。残念ながら、イピリムマブの使用は深刻な自己免疫効果をもたらす可能性がある。
図24Aおよび24Bは、マウスに移植されたヒト肺癌細胞の転移性および原発性腫瘍部位におけるCTLA4発現レベルのインビトロ研究の結果を示す。動物は栄養サプリメントで前処理されたか、移植時に治療を開始した。
図24Aおよび24Bに示されるように、セレンおよび魚油を含む栄養サプリメントは、転移組織と原発腫瘍組織の両方でCTLA4発現を増加させるのに効果的であり、前処理は従来の放射線療法と同様の効果をもたらす(ただし、付随する副作用はない)。
【0064】
本発明の概念の幾つかの実施形態では、セレンおよび魚油を含む栄養サプリメントを使用して、PD-1および/またはPDL-1の発現を改変または調節することができる。
図25Aは、セレンおよび魚油および一般的に使用される化学療法剤を含む栄養サプリメントで治療された場合の、乳癌モデルの動物モデルにおけるPD-1およびPDL-1発現の治療の結果を示す。
図25Bは、これらの腫瘍におけるPD-1とPD-L1の発現の比率を示している。図示されているように、セレンおよび魚油を含む栄養サプリメントによる治療は、腫瘍におけるPD-L1発現を減少させる。この減少は、化学療法剤による治療で観察されたPD-L1の減少を少なくとも補完する。逆に、PD-1の発現は、セレンおよび魚油を含む栄養サプリメントで処理することによって増加する。PD-1とPD-L1の発現の比率は、未治療の腫瘍では低いが、セレンおよび魚油を含むサプリメントで治療すると劇的に増加することは明らかである。化学療法剤による治療は、PD-1:PD-L1比に比較的小さな影響を及ぼしたが、これは栄養サプリメントとの併用療法によって強化された。
【0065】
腫瘍細胞のPDL-1含有量に対する白血球のPD1含有量の比率の変化率に対するセレンおよび魚油を含む栄養サプリメントの効果も、ヒト臨床試験で研究されている。
図26は、患者が低用量サプリメント(G1)、中用量サプリメント(G2;G1のSe含有量の1.5倍を有する)、または高用量サプリメント(G3;GlのSe含有量の2倍を含む)を摂取したそのような試験の結果を示す。白血球のPD1含有量と腫瘍細胞のPDL-1含有量は、治療の一週目と十六週目に測定された。図示されているように、癌患者にセレンおよび魚油を含む栄養サプリメントを提供すると、白血球PD1/腫瘍PDL-1比を増加させることができ、用量依存的に増加する。
【0066】
原発腫瘍部位からの転移に関連する循環腫瘍細胞(CTC)の数に対するセレンおよび魚油を含む栄養サプリメントの効果を特徴づけるためにも、ヒト臨床試験が実施された。患者は、栄養サプリメントの量が異なる三つの群に分けられ、循環腫瘍細胞の数、血清セレン含有量、血清EPA含有量、および血清DHA含有量が特徴づけられた。結果を表2に示す。
【0067】
【0068】
群1(G1)の患者は、セレンおよび魚油を含む低用量の栄養サプリメントを摂取し、群2(G2)の患者は中用量のサプリメントを摂取し、群3(G3)の患者は高用量のサプリメントを摂取した。
【0069】
表2に示すように、セレンおよび魚油を含む栄養サプリメントを最高用量で投与された患者は、循環腫瘍細胞の減少率が最も高く、セレン、EPA、およびDHAの血清濃度も最も高かった。したがって、癌患者にセレンおよび魚油を含むサプリメントを提供すると、循環腫瘍細胞が減少し、その結果、腫瘍転移が減少する可能性がある。
【0070】
本発明者らはまた、セレンおよび魚油を含むサプリメントが、乳癌の動物モデルにおいてNK細胞活性を増強し得ることを発見した。
図27は、化学療法薬(すなわち、タキソールおよびアバスチン)と組み合わせて、低用量、中用量、および高用量で提供されるそのようなサプリメントの研究の結果を示している。図示されているように、腫瘍抑制因子PTENの発現は、タキソールによって誘発される増加よりも用量依存的に増加する。p-PTENの発現は、タキソールまたはアバスチンのいずれかによって誘発される減少よりも用量依存的に減少する。p-STAT3の発現は、タキソールまたはアバスチンのいずれかによって誘発される減少よりも用量依存的に同様に減少し、セレンおよび魚油を含む栄養サプリメントの高用量ではほとんど検出できないレベルまで減少する。未治療の動物対象では低いかほとんど検出されないホスホ-P53の発現は、タキソールまたはアバスチンのいずれかによって生成される効果よりも用量依存的に増加する。
【0071】
同様の研究が行われ、T細胞および免疫チェックポイントマーカーが、ヒト疾患の動物モデルにおけるトリプルネガティブ乳癌腫瘍から採取されたサンプルで特徴付けられた。結果を
図28に示す。図示されているように、免疫チェックポイントタンパク質PD-1の発現は、タキソールまたはアドリアマイシンでの治療によってわずかに増加し、これは、セレンおよび魚油を含む栄養サプリメントでの治療によって用量依存的に増強される。本発明者らは、これは、少なくとも部分的には、活性の増強による、腫瘍組織のより広範なT細胞浸潤によるものであると考えている。逆に、免疫チェックポイントタンパク質PD-L1の発現は、化学療法剤による治療の影響を本質的に受けず、セレンおよび魚油を含む栄養サプリメントとの併用療法によって劇的に用量依存的に減少する。CTLA4とFOXP3の両方の発現は、化学療法剤による治療によって増加し、その効果は、栄養サプリメントとの併用療法によって用量依存的に増強される。
【0072】
腫瘍におけるCXCR4の発現は、CXCL12を発現する組織への転移に関連しており、CXCR4阻害化合物は抗腫瘍活性を有することが示されている。
図29に示すように(
図28に記載されているものと同様の乳癌の動物モデルを利用)、アバスチン単独での治療はCXCR4の腫瘍発現にほとんど影響を与えないが、セレンおよび魚油を含む栄養サプリメントを用いる併用療法は、腫瘍組織におけるCXCR4発現を劇的に用量依存的に減少させることになる。
【0073】
同様の研究が肺癌の動物モデルで行われ、栄養サプリメントが放射線療法と組み合わせて使用された。幾つかの実験では、セレンおよび魚油を含むサプリメントによる栄養補給が、放射線療法の繰り返しラウンドの開始前に七日間提供された。他の実施形態では、栄養補給と放射線療法を同時に開始した。典型的な研究が
図30に示されている。
【0074】
CD8は細胞傷害性T細胞に関連しており、CD4/CD8比の上昇は生存率の増加に関連している。
図31Aに示すように、腫瘍を有する動物(T)を対照の未処理動物(C)と比較した場合、肺組織のサンプルではCD8の発現が減少する。セレンと魚油(PT)を含む栄養サプリメントによる前処理と移植後八日目の治療(TN)の両方で、放射線療法(TR)と放射線と栄養サプリメント(TRN)の併用療法と同様にCD8発現が増加する。驚いたことに、栄養サプリメントによる前処理とそれに続く八日目の放射線療法(PTRN)は、CD8発現の増加に相乗的効果をもたらした。
図31Aからの結果は、動物における腫瘍細胞の一次移植部位から肺への転移を表していると理解されたい。
図31Bに示すように、同様の結果が、一次移植部位の腫瘍組織に見られる。
【0075】
上記のように、CD4/CD8比は、腫瘍に向けられたT細胞活性を示していると考えられている。
図32Aに示すように、肺癌の動物モデル(転移部位を表す)の肺組織において、対照の未処理動物(C)のCD4/CD8比は、肺癌細胞を注射された未処理動物(T)に見られる比と比較して低い。上記のプロトコルを使用すると、放射線(TR)のみで治療された動物の肺組織は、CD4/CD8比のわずかな低下を示すが、セレンおよび魚油を含む栄養サプリメントで治療された動物は、CD4/CD8比の著しい低下を示す。これは、栄養サプリメント(PTN、TN)のみで治療された動物、または栄養サプリメントが放射線療法(PTRN、TRN)とともに提供された場合に見られた。放射線療法(PTRN)の開始前にセレンおよび魚油を含む栄養サプリメントで治療すると、肺組織のCD4/CD8比が本質的に対照動物のCD4/CD8比に低下したことは注目に値する。
図32Bは、組織サンプルが一次移植部位で生成された腫瘍から得られた同様の研究の結果を示している。
【0076】
STAT3は癌で上昇することが観察されており、腫瘍細胞に対する免疫系の反応の抑制に関連している。
図33に示すように、肺癌の動物モデル(上記のとおり)では、原発腫瘍組織でのSTAT3の発現は、放射線療法を受けた動物(TR)、セレンおよび魚油を含む栄養サプリメントで治療された動物(PTN、TN)、および放射線療法および栄養サプリメントの両方で治療された動物(PTRN、TRN)において減少する。栄養サプリメントによる治療は、腫瘍のSTAT3発現に関して放射線療法の効果を少なくとも補完し、放射線療法と同じくらい効果的である可能性があることを理解されたい。
【0077】
乳癌の動物モデルを対象とした研究で前述したように、PTEN抑制は腫瘍細胞の特徴である。
図34は、肺癌の動物モデルを使用して実施された研究のデータを示している。ここでは、セレンおよび魚油を含む栄養サプリメントが放射線療法と組み合わせて使用された(上記)。図示されているように、PTEN発現は未治療の動物(T)の腫瘍組織では低く、放射線(TR)のみで治療された動物では中程度に増加している。栄養サプリメントによる治療は、腫瘍組織(PTN、TN、PTRN、TRN)でのPTEN発現を増加させる、特に動物が移植時に該サプリメントで治療された(PTN、PTRN)場合に増加させることがわかった。
【0078】
乳癌の動物モデルを対象とした研究で前述したように、CTLA-4はT細胞活性化の指標と見なされている。(上記のように)肺癌の動物モデルにおける原発腫瘍細胞接種部位から得られた腫瘍細胞におけるCTLA-4発現を特徴付ける研究の結果を
図35Aに示す。図示されているように、未治療の腫瘍(T)からのサンプルは、低レベルのCTLA-4発現を示し、これは放射線療法(TR)で増加する。セレンおよび魚油を含む栄養サプリメントの使用は、腫瘍組織(PTN、TN、PTRN、TRN)でのCTLA-4発現の増加とも関連しており、少なくとも同時放射線療法(PTRN、TRN)を補完する。興味深いことに、移植時の栄養サプリメントによる治療(PTN、PTRN)は、CTLA-4発現の最大の増強を提供する。
図35Bは、肺から得られた組織(すなわち、転移部位)で実施された研究について同様の結果を示している。
【0079】
本出願人は、セレンおよび魚油を含む栄養サプリメントの投与後の特定の組織で見られる遺伝子発現レベルの調節(化学療法薬および/または照射を使用する併用療法なしで)は、腫瘍細胞における発現の変化、周囲組織における発現の変化、免疫系の細胞による腫瘍組織および/または周囲組織の浸潤の結果、および/または免疫系の細胞における発現の変化に起因する可能性があると考えている。本出願人は、栄養サプリメントでの治療に起因する遺伝子発現の変化の多くは、抗腫瘍活性に向けた免疫系の細胞の活性化に見られる変化と一致していることに注目している。
【0080】
本発明の概念の別の実施形態は、腫瘍の免疫チェックポイントタンパク質を調節しながら、腫瘍における侵襲性および/または血管新生を低減するための方法および組成物である。本発明者らは、トリプルネガティブ乳癌の動物モデルにおいて、腫瘍の血管新生および浸潤(免疫チェックポイントタンパク質に加えて)に関連するタンパク質のセレンおよび魚油の用量依存的調節を特定した。結果を
図36~39に示す。
図36は、タキソールまたはアドリアマイシンのいずれかと組み合わせてセレンおよび魚油を使用したトリプルネガティブ乳癌の動物モデルの腫瘍におけるMMP-9、PD-L1およびPD-L2の用量依存的調節を示している。
図37は、タキソールまたはアドリアマイシンのいずれかと組み合わせてセレンおよび魚油を使用したトリプルネガティブ乳癌の動物モデルの腫瘍におけるCTLA4、COX-2、FOXP3、p-Akt s473、およびp-Akt T308の用量依存的調節を示す。
図38は、タキソールまたはアドリアマイシンのいずれかと組み合わせてセレンおよび魚油を使用したトリプルネガティブ乳癌の動物モデルの腫瘍におけるNkp46の用量依存的調節を示している。
図39は、タキソールまたはアバスチンのいずれかと組み合わせてセレンおよび魚油を使用したトリプルネガティブ乳癌の動物モデルの腫瘍におけるCD26、CD80、およびCD86の用量依存的調節を示している。
【0081】
本発明の概念のもう一つの実施形態は、患者の血液から(例えば、白血球泳動によって)単離された血液または免疫細胞(NK細胞など)を、上記の栄養サプリメントの(セレンおよび/または魚油のような)活性成分で処理することにより癌を治療する方法である。このようなエクスビボ治療は、血液または免疫細胞を活性化し、および/または抗腫瘍性免疫機能の改善に関連するマーカーの発現を調節することができる。このようなエクスビボ刺激は、組織培養において単離された免疫細胞の増殖の前、最中、または後に起こり得る。刺激後、活性化/改変された免疫細胞は患者に戻され、対応する非刺激免疫細胞と比較して抗腫瘍活性が増強される。必要に応じて、そのような刺激された細胞は、再移植の前に培養され、それらの数が(例えば、クローン増殖によって)増殖され得る。幾つかの実施形態において、そのような単離された免疫細胞は、セレンおよび魚油を含む栄養サプリメントの活性成分への曝露に加えて、抗腫瘍活性を増強するために他の方法によって(例えば、遺伝子操作によって)改変され得る。
【0082】
本発明の概念の幾つかの実施形態において、免疫細胞のエクスビボ治療は、放射線療法と組み合わされる。幾つかの実施形態では、栄養サプリメントの活性成分を使用するエクスビボ刺激が照射された細胞に向けられるように、放射線療法を免疫細胞の収集の前に個体に適用することができる。他の実施形態では、免疫細胞のエクスビボ刺激は、放射線療法の前に行われ、栄養サプリメントの活性成分で前処理された免疫細胞、またはそのような処理細胞の注入後の患者に照射が適用される。さらに他の実施形態では、患者から収集された免疫細胞は、それらが放射線療法を受けている間、単離され、本発明の概念の栄養サプリメントの活性成分で治療され得る。好ましい実施形態において、そのような放射線療法は、腫瘍細胞を殺すことを意図するものと比較して比較的穏やかであり、放射線療法の一般的な副作用(例えば、免疫抑制、胃腸症状、脱毛、粘液膜損傷、皮膚病変など)を生じさせることなく、免疫細胞においてある程度の活性化、刺激、および/または他の方法で改善された抗腫瘍機能をもたらすのに充分である。
【0083】
本明細書の本発明の概念から逸脱することなく、すでに説明したもの以外のさらに多くの修正が可能であることは当業者には明らかであるはずである。したがって、本発明の主題は、添付の特許請求の範囲の精神を除いて制限されるべきではない。さらに、明細書と特許請求の範囲の両方を解釈する際には、すべての用語は、文脈と一致する可能な限り広い方法で解釈されるべきである。特に、「含む」および「含んでいる」という用語は、要素、コンポーネント、またはステップを非排他的に指すものとして解釈されるべきであり、参照される要素、コンポーネント、またはステップが存在するか、利用されるか、または明示的に参照されていない他の要素、コンポーネント、またはステップと組み合わされてよいことを示す。明細書特許請求の範囲がA、B、C・・・およびNで構成されるグループから選択されたものの少なくとも一つに言及している場合、該文章は、AとN、BとNなどではなく、グループから一つの要素のみを必要とするものとして解釈されるべきである。