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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】家具
(51)【国際特許分類】
   A47B 13/08 20060101AFI20241003BHJP
   A47C 7/62 20060101ALI20241003BHJP
   A47B 11/00 20060101ALI20241003BHJP
   A47B 13/00 20060101ALI20241003BHJP
   A47B 17/04 20060101ALI20241003BHJP
   A47B 96/04 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
A47B13/08 A
A47C7/62 B
A47B11/00 Z
A47B13/00 B
A47B17/04
A47B96/04 B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022033169
(22)【出願日】2022-03-04
(62)【分割の表示】P 2017187109の分割
【原出願日】2017-09-27
(65)【公開番号】P2022081574
(43)【公開日】2022-05-31
【審査請求日】2022-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000139780
【氏名又は名称】株式会社イトーキ
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【弁理士】
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】守田 圭
(72)【発明者】
【氏名】今 健一
(72)【発明者】
【氏名】山中 彬弘
(72)【発明者】
【氏名】前川 尚幸
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-131574(JP,A)
【文献】特開2017-064292(JP,A)
【文献】特表2018-512332(JP,A)
【文献】Steelcase,Brody [on line],2016年01月12日,[令和5年1月27日検索], https://web.archive.org/web/20160112204119/http://www.steelcase.com/asia-ja/products/lounge-seating/brody/
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 13/08
A47C 7/62
A47B 11/00
A47B 13/00
A47B 17/04
A47B 96/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
座部と背もたれ部とを有する椅子部と、
前記椅子部の左右側方及び後方を囲うパネルと、を備えた家具であって、
前記椅子部の後方を囲う前記パネルの部分は、上下分離可能な下側バックパネルと上側バックパネルを備え、前記上側バックパネルの上下方向中途部が側面視で折れ曲がって、前記上側バックパネルの上部が上端部側ほど前方に位置する傾斜姿勢であ
前記椅子部の側方を囲う前記パネルの部分は、左右側方から見て前記椅子部の全体を覆うとともに、上下分離可能な下側サイドパネルと上側サイドパネルを備え、
前記上側サイドパネルの前縁部は左右側方から見て前記下側サイドパネルの前縁部の上向き延長線上に設けられている、
家具。
【請求項2】
着座者が正面を向いて作業し得るテーブル部と、
前記テーブル部の前部に設け、板状携帯機器を傾斜した起立姿勢で自立保持する板状携帯機器支持部と、を備える、
請求項1に記載の家具。
【請求項3】
前記テーブル部の前縁部は、左右側方から見て前記パネルよりも前側に配設される、
請求項2に記載の家具。
【請求項4】
前記板状携帯機器支持部は、左右側方から見て前記パネルよりも前側に配設される、
請求項3に記載の家具。
【請求項5】
前記テーブル部は、水平回動可能である、
請求項2~4のいずれか一項に記載の家具。
【請求項6】
前記テーブル部の回動軸は、左右側方から見て前記パネルと重なる位置に配設される、
請求項5に記載の家具。
【請求項7】
前記テーブル部の上面は、前方側の縁部が手前側の縁部に対して高い位置に配置される、
請求項2~6のいずれか一項に記載の家具。
【請求項8】
前記椅子部の側方に設けた物置台として利用可能な固定天板部を備え、
前記固定天板部の下方には前記座部側に開口する物品収容空間が形成されている、
請求項1~7のいずれか一項に記載の家具
【請求項9】
前記物品収容空間に電源コンセントを配置可能に構成している、
請求項8に記載の家具
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、座部を備えた家具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、作業ツールとしてのノートパソコンやタブレット端末などの携帯機器の小型化が進み、外出先で仕事や学習などの作業する機会が増えている。また、携帯機器は持ち運び自在であるため、オフィスにおいて特定の席を持たずに、好きな席で仕事をするフリーアドレス方式が普及しつつある。
【0003】
このような作業環境の変化から、外出先やオフィスでの作業場所としてテーブル付き椅子が提案されている(例えば特許文献1,2を参照。)。また、特許文献2には、作業に集中できる環境やリラックスできる環境を作るべく、座部の左右側方及び後方をパネルで囲んだセミクローズドタイプのテーブル付き椅子が開示されている。また、携帯機器を使用する作業場所として、ソファと組み合わせて使用されるサイドテーブルを用いることも可能である(例えば特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-215980号公報
【文献】特開2017-131572号公報
【文献】特開2004-174087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
【0006】
本願発明は、座部を備えた家具において、遮蔽性の向上を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明は、座部と背もたれ部とを有する椅子部と、前記椅子部の左右側方及び後方を囲うパネルと、を備えた家具であって、前記椅子部の後方を囲う前記パネルの部分は、上下分離可能な下側バックパネルと上側バックパネルを備え、前記上側バックパネルの上下方向中途部が側面視で折れ曲がって、前記上側バックパネルの上部が上端部側ほど前方に位置する傾斜姿勢であり、前記椅子部の側方を囲う前記パネルの部分は、左右側方から見て前記椅子部の全体を覆うとともに、上下分離可能な下側サイドパネルと上側サイドパネルを備え、前記上側サイドパネルの前縁部は左右側方から見て前記下側サイドパネルの前縁部の上向き延長線上に設けられているものである。
【0008】
本願発明において、着座者が正面を向いて作業し得るテーブル部と、前記テーブル部の前部に設け、板状携帯機器を傾斜した起立姿勢で自立保持する板状携帯機器支持部と、を備えるようにしてもよい。
【0009】
さらに、前記テーブル部の前縁部は、左右側方から見て前記パネルよりも前側に配設されるようにしてもよい。
【0010】
さらに、前記板状携帯機器支持部は、左右側方から見て前記パネルよりも前側に配設されるようにしてもよい。
【0011】
また、前記テーブル部は、水平回動可能であるようにしてもよい。
【0012】
さらに、前記テーブル部の回動軸は、左右側方から見て前記パネルと重なる位置に配設されるようにしてもよい。
【0013】
また、前記テーブル部の上面は、前方側の縁部が手前側の縁部に対して高い位置に配置されるようにしてもよい。
【0014】
本願発明において、前記椅子部の側方に設けた物置台として利用可能な固定天板部を備え、前記固定天板部の下方には前記座部側に開口する物品収容空間が形成されているようにしてもよい。
【0015】
さらに、前記物品収容空間に電源コンセントを配置可能に構成しているようにしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本願発明の家具は、遮蔽性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】一実施形態を示す図であり、(A)は平面図、(B)は正面図である。
図2】同実施形態を示す図であり、(A)は左側面図、(B)は右側面図である。
図3】同実施形態を示す図であり、(A)は前方斜視図、(B)は後方斜視図である。
図4】同実施形態の分解斜視図である。
図5】テーブル部、テーブル支持部及び連結部の分解斜視図である。
図6】(A)はテーブル部周辺を示す平面図、(B)は(A)のB-B視断面図である。テーブル支持部及び連結部の分解斜視図である。
図7】テーブル部の後方斜視図である。
図8】同実施形態での凸条部材を示す図であり、(A)は平面図、(B)は底面側から見た斜視図、(C)は側面図である。
図9図8(A)のIX-IX視断面図である。
図10】テーブル部を示す側面図であり、(A)はテーブル部にノートパソコンを載せた状態、(B)はテーブル部に板状携帯機器を載せた状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。この実施形態は、本願発明の家具をテーブル付き椅子に適用したものである。また、本願では、方向を特定するため前後・左右の文言を使用するが、この前後・左右の方向は、座部に普通に腰掛けた人の向きを基準にしている。正面視は、着座した人と相対向した方向から見た状態である。
【0019】
図1~4に示すように、本実施形態の椅子は、座部1と背もたれ部2とを有する椅子部3と、椅子部3を支持する脚フレーム部4と、座部1の右側方で脚フレーム部4上に立設された肘掛け部5と、肘掛け部5に支持されたテーブル部6とを備えている。脚フレーム部4は、左右両側に鉛直姿勢の脚板7,8を備えている。左右の脚板7,8は、手前に向けて間隔が広がるように、平面視ハ字の形態に配置されている。
【0020】
椅子部3及び肘掛け部5の左右側方及び後方を囲うように、左右のサイドパネル9,10及びバックパネル11が鉛直姿勢で設けられている。パネル9,10,11の上端部は、背もたれ部2よりも高い位置に設けられており、ここでは椅子部3への着座者の頭頂部よりも高い位置に設定されている。左右のサイドパネル9,10は、手前に向けて間隔が広がるように、平面視ハ字の形態に配置されている。また、サイドパネル9,10の外側面及び内側面は、例えば不織布で形成され、前後方向に延伸する複数の凸条部が上下方向に配列されて、凹凸状に形成されている。これにより、椅子部3への着座者に対する外部からの遮音性が向上されている。
【0021】
左右のサイドパネル9,10は、脚板7,8の上部と背もたれ部2の側部とに、例えば樹脂製クリップからなる複数の固定部材12で固定されている。バックパネル11は、背もたれ部2の側部と背面とに、ブラケット金具13と係合部材14a及び受け部材14bとを介して固定されている。
【0022】
パネル9,10,11の上部に、ルーフパネル15,16,17が取り付けられている。ルーフパネル15,16,17は、その下部が鉛直姿勢に配置され、その上部が上端部側ほど椅子内側に位置する傾斜姿勢に配置されるように、屈曲している。図1に示すように、ルーフパネル15,16,17の上部は、平面視で椅子部3の周縁部に重なっている。これにより、着座者が感じる篭り感や、上方側からの遮音性及び遮蔽性が向上されている。
【0023】
図4に示すように、左右のルーフパネル15,16は、その下端部の前後2箇所に突出部18及び貫通孔19を備えている。貫通孔19に左右一対の挟持部材20a,20bが突出部18を挟んでビス21で固着される一方で、挟持部材20a,20bがパネル9,10の上端部位を挟持することで、ルーフパネル15,16はパネル9,10の上端部に取り付けられている。バックルーフパネル17は、その下端部の左右2箇所に膨出部22を備えている。ピン部材23の一端側が膨出部22内に挿入される一方、ピン部材23の他端側がバックパネル11の上端面に設けられた係合穴24に挿入されることで、バックルーフパネル17はバックパネル11の上端部に取り付けられている。
【0024】
また、この実施形態の椅子には、座部1の上面左寄り部位に設置されるサイドテーブル25が設けられている。サイドテーブル25は、板状の天板部26と、天板部26の下面に固着されたL型金具27を備えている。L型金具27の部位のうち、天板部26の下面から下方へ向けて突出する鉛直部位27aは、天板部26の左縁部に沿って配置されている。サイドテーブル25は、鉛直部位27aが座部1と左サイドパネル10との隙間に挿入されて、天板部26が座部1の上面に載置されることで、座部1の上に着脱可能に取り付けられる。
【0025】
肘掛け部5は、脚フレーム部4の右縁部前寄り部位の上に載置されている。肘掛け部5は、脚フレーム部4上に載置される略箱型の配線ボックス部28と、配線ボックス部28上に固着される板状のテーブル支持部29を備えている。肘掛け部5は、座部1側に開口する空間36をテーブル支持部29の下方に備えており、スマートフォンやタブレット端末などの携帯機器や、カバン、書類、書物などを収容可能に構成されている。
【0026】
配線ボックス部28は例えば板金製であり、配線ボックス部28には、空間36に露出する電源コンセント37が設けられている。電源コンセント37は、前後方向に並ぶ4つのコンセントと、コンセント38群よりも後方で左右方向に並ぶ2つの給電用USBポートを備えている。配線ボックス部28の上に、例えば繊維板製のテーブル支持部29が固定されている。
【0027】
図5~7にも示すように、テーブル支持部29は、配線ボックス部28の上方を覆う平面視略長方形の固定天板部42と、固定天板部42の前端部左縁部位から左斜め前方向に突設された張出し部43とを備えている。固定天板部42は、肘掛けや物置台として利用可能である。
【0028】
テーブル支持部29の固定天板部42の前寄り部位及び張出し部43の上方に、テーブル部6が配置されている。テーブル部6は、固定天板部42の前寄り部位に連結部47を介して水平回動可能に連結されている。
【0029】
テーブル部6は、例えば繊維板からなる角丸長方形のテーブル板57と、テーブル板57の上面前寄り部位に配置された左右横長の凸条部材58と、テーブル板57の右前角部近傍に配置されたドリンクホルダ59を備えている。テーブル板57の下面の右縁部近傍位置に連結部47が取り付けられており、テーブル板57は左縁部を回動自由端として水平回動する。
【0030】
テーブル板57には、凸条部材58を取り付けるための第1~3の3つの貫通孔60a,60b,60cと、ドリンクホルダ59を取り付けるための貫通孔61が形成されている。凸条部材58は、その下部から下方側へ突出する第1~3の3つの突起部62a,62b,62cが上方側から貫通孔60a,60b,60cに挿通されることで、テーブル板57に取り付けられる。また、ドリンクホルダ59は、有底円筒形で上端部に外向き鍔部を有し、円筒部が上方側から貫通孔61に挿通されて、テーブル板57に取り付けられる。
【0031】
図5に示すように、この実施形態では、連結部47は、ブラケット51とベースプレート54を相対回動可能に保持するスイベルトルクヒンジで構成されている。連結部47は、摩擦力を利用することで、ブラケット51をベースプレート54に対して任意の回転角で停止可能に構成されている。
【0032】
固定天板部42の上面とテーブル板57の下面には、連結部47の取付位置に、凹部が形成されている。ベースプレート54は、3本のビス65でテーブル板57の下面に固定されている。ブラケット51は、固定天板部42に設けられた3箇所のボルト挿通孔66に下方側から挿通される3本のボルト67でテーブル板57に固定されている。
【0033】
図1,2,6に示すように、テーブル板57の上面は水平に配置されている。この実施形態では、テーブル板57は水平回動するので、テーブル板57の上面は常に水平に保たれ、テーブル板57への載置物(例えば携帯機器や、ノートパソコン、書類、書籍、筆記具、時計など)が落下しにくいように構成されている。
【0034】
図5~7に示すように、張出し部43とテーブル板57の間に前後一対の規制部材82が配置されている。この実施形態では、規制部材82は、張出し部43の上面に形成された規制部材取付け穴83に嵌入される樹脂製のブッシュ82aと、ブッシュ82aの上端に取り付けられる樹脂製のキャップ82bを備えている。規制部材82(キャップ82b)の上端は、テーブル板57の下面に当接又は近接する位置に配置されており、規制部材82は、テーブル板57の下方側への移動を制限する。なお、この実施形態では、キャップ82bの上面は、丸みを帯びた形状を有し、テーブル板57の下面と点接触することで、テーブル板57の回動時の摺動性が損なわれないようにしている。
【0035】
例えば、テーブル板57の上に重たい荷物が載置されたり、使用者がテーブル板57に手をついて体重をかけたりした場合など、テーブル部6に下方側へ向かう荷重が加わったときに、規制部材82は、テーブル板57の下方側への移動を制限と共に、当該荷重に起因する負荷を張出し部43側へ分散する。これにより、連結部47の周辺にかかる負荷が低減されるので、連結部47周辺の破損を防止でき、安全性及び耐久性が向上する。
【0036】
また、図5,6に示すように、テーブル支持部29の張出し部43には、テーブル部6の回動軸(連結部47の回動軸)を中心とする円弧状溝72と幅広円弧状溝73が形成されている。円弧状溝72は、張出し部43の上面側に形成されている。幅広円弧状溝73は、円弧状溝72に沿って張出し部43の下面側に形成されており、かつ円弧状溝72と上下方向で繋がっている。張出し部43上面に配置される前後一対の規制部材82は、円弧状溝72,73を挟んで配置されている。
【0037】
図5に示すように、円弧状溝72,73には、スペーサ管74及びボルト75が挿通される。ボルト75は、ワッシャ76を介してスペーサ管74に挿通され、スペーサ管74と共に円弧状溝72,73に挿通されて、テーブル板57の下面に設けられた雌ねじ穴77に固定される。スペーサ管74、ボルト75及びワッシャ76は、テーブル板57の下面に突設された突出部材78を構成する。
【0038】
張出し部43の下面には、幅広円弧状溝73の形成位置を含む領域に略長方形のカバー収容凹部79が形成されている。カバー収容凹部79に、板状のカバー部材80が2本のビス81で取り付けられる。カバー部材80の下面と張出し部43の下面は、ほぼ面一になっており、着座者の負傷や衣服の損傷が防止されている。
【0039】
幅広円弧状溝73の溝幅は、ワッシャ76の外径よりも大きい寸法に設定されており、幅広円弧状溝73内にボルト75の頭部及びワッシャ76が収容される。一方、円弧状溝72の溝幅は、ワッシャ76の外径よりも小さい寸法に設定されている。
【0040】
例えば着座者の膝や太ももがテーブル板57の下面に当たる等して、テーブル板57に上向きの負荷がかかったときに、ワッシャ76が幅広円弧状溝73の上部に接触して抜け防止部として機能することで、テーブル板57の上方側への変位が規制される。これにより、テーブル板57の回動自由端側が張出し部43に対して大きく持ち上げられる現象が防止され、連結部47と固定天板部42及びテーブル板57との連結箇所や、連結部47の破損を防止できる。
【0041】
このように、この実施形態の椅子は、テーブル板57の下方側への移動を規制する規制部材82と、テーブル板57の上方側への移動を規制する円弧状溝72,73及び突出部材78を備えている。したがって、テーブル板57への上下いずれの方向の荷重に対しても連結部47周辺の破損を防止できる。
【0042】
また、円弧状溝72及び突出部材78は、テーブル板57の回動可能範囲を制限する。この実施形態では、図6(A)に示すように、テーブル板57は、着座者側(背もたれ部2側)の縁部が左右方向とおおむね平行になる後方限界位置(実線参照)と、当該縁部が左右方向と約45°の角度をなす前方限界位置(二点鎖線参照)との間の範囲内で水平回動可能である。なお、テーブル板57の回動可能範囲や前方限界位置は、椅子部3に人が出入りすることが可能な範囲で適宜設定可能である。
【0043】
図6(A)に示すように、テーブル板57が後方限界位置(実線参照)から前向き回動されると、テーブル板57の右前角部は外向き(右向き)回動する。この実施形態では、前方限界位置(二点鎖線参照)は、テーブル板57の右前角部が右サイドパネル9に接触しない位置に設定されており、右サイドパネル9の損傷や脱落が防止されている。
【0044】
次に、図7~10も参照しながら、凸条部材58の構成及び機能について説明する。凸条部材58は、左右横長の形状を有する。この実施形態では、凸条部材58は、弾力性を有する熱可逆性エラストマーで形成されている。なお、凸条部材58の材料は、熱硬化性エラストマーであってもよいし、例えばプラスチックなどの他の材料であってもよい。
【0045】
凸条部材58の上面85,86は、座部1への着座者側ほど下方に位置するように傾斜している。後方側上面86と水平がなす角度は、前方側上面85と水平がなす角度よりも大きな角度に設定されている。また、凸条部材58は、前方側上面85上に形成された左右横長の頂上凸条部87を備えている。
【0046】
図7~9に示すように、凸条部材58は、板状携帯機器63の縁部を上方側から挿し込み可能な左右横長の溝状部64を備えている。板状携帯機器63は、その一縁部が溝状部64に挿し込まれることで、凸条部材58に起立姿勢で自立保持される。
【0047】
図9に示すように、溝状部64の底面64aは、着座者側ほど上方に位置するように前低後高姿勢に傾斜している。溝状部64の底面には、左右横長の複数の溝内凸状部88が前後方向に配列されている。この実施形態では6本の溝内凸状部88が設けられている。
【0048】
溝状部64の前壁面64bは、着座者側ほど下方に位置するように前高後低姿勢に傾斜している。また、溝状部64の後壁面64cは、鉛直方向におおむね沿って設けられている。つまり、溝状部64は、開口部の前後幅寸法が底面64aの前後幅寸法に比べて大きくなっており、溝状部64に板状携帯機器63の縁部を挿し込みやすく構成されている。
【0049】
図8,9に示すように、凸条部材58の内部は肉抜きされている。溝状部64の溝前側壁部91、溝左側壁部95及び溝右側壁部97は、凸条部材58の前側壁部93、左側壁部96及び右側壁部98とは間隔をあけて配置されている。凸条部材58の後側壁部94は、溝状部64の後側壁部を兼ねている。
【0050】
凸条部材58の内部には、前後方向に沿って設けられた複数の前後方向リブ89と、溝状部64の下方で左右方向に沿って設けられた複数の左右方向リブ90が形成されている。前後方向リブ89は、側方視略L字形で、溝状部64の溝前側壁部91及び溝底壁部92と凸条部材58の前側壁部93及び後側壁部94とを連結している。
【0051】
溝底壁部92には第1~3の突起部62a,62b,62cが下方側へ向かって突設されている。左右方向リブ90は、溝底壁部92に下方側へ向かって突設されて、左右方向で隣り合う前後方向リブ89同士、又は前後方向リブ89と第1~3の突起部62a,62b,62cと連結している。
【0052】
また、突起部62a,62b,62cは、略円筒形であり、その外周面に放射状に突設された複数のリブ92a,92b,92cを備えている。凸条部材58は、テーブル板57の前寄り部位に設けられた第1~3の貫通孔60a,60b,60cに突起部62a,62b,62cが上方側から圧入されることで、テーブル板57上面の前寄り部位に左右横長に取り付けられる。
【0053】
図10(A)に示すように、携帯機器の一例としてのノートパソコン99をテーブル板57上に載置する際に、ノートパソコン99の背面を凸条部材58上に載置することで、テーブル板57上にノートパソコン99のキーボード部99aを前高後低姿勢に傾斜配置できる。これにより、着座者は、ノートパソコン99のキーボードを操作しやすくなり、作業効率が向上すると共に、疲労が軽減される。
【0054】
また、図10(B)に示すように、板状携帯機器63をテーブル板57上に載置する際に、板状携帯機器63の背面を凸条部材58上に載置することで、テーブル板57上に板状携帯機器63を前高後低姿勢に傾斜配置できる。これにより、着座者は、板状携帯機器63の表示画面を真上から覗き込まなくても、比較的楽な姿勢で表示画面内の表示物を認識でき、疲労が軽減される。
【0055】
図7~10に示すように、凸条部材58の上面85,86は、着座者側ほど下方に位置するように前高後低姿勢に傾斜しているので、図10に示すように、凸条部材58の上面側の前寄り部位(この実施形態では頂上凸条部87)で、ノートパソコン99や板状携帯機器63の背面が支持される。これにより、テーブル板57上でノートパソコン99や板状携帯機器63をなるべく前方側に配置できるので、テーブル板57上面における着座者の手前側のスペースを大きくできる(図10(A),(B)の二点鎖線参照)など、利便性が向上する。
【0056】
なお、凸条部材58において頂上凸条部87が形成されていない変形例においては、凸条部材58の上面85,86、特に後方側上面86が着座者側ほど下方に位置するように傾斜しているので、携帯機器の背面は、凸条部材58の上面側の前寄り部位(例えば前方側上面85)で支持される。このように、頂上凸条部87が形成されていない構成でも、凸条部材58の上面側の前寄り部位で携帯機器の背面を支持でき、テーブル板57上面における着座者の手前側のスペースを大きくできるなど、利便性が向上する。
【0057】
また、凸条部材58は、テーブル板57の上面に突設されているので、異物が衝突する可能性があるが、この実施形態では凸条部材58がエラストマーで形成されているので、異物の衝突等による凸条部材58の破損を低減できる。
【0058】
また、凸条部材58は、前高後低姿勢の上面85,86のうち前方側の部位(この実施形態では前方側上面85の上)に形成された左右横長の頂上凸条部87を備えている。凸条部材58上に載置されるノートパソコン99や板状携帯機器63などの携帯機器の背面は頂上凸条部87に接触する。そして、頂上凸条部87はエラストマーで形成されているので、頂上凸条部87と携帯機器との接触部に生じる摩擦力でテーブル板57上での携帯機器の移動が阻まれ、意図しない携帯機器の移動や落下等を防止できる。
【0059】
なお、この実施形態では、凸条部材58全体がエラストマーで形成されているが、凸条部材58の構成部位のうち少なくとも頂上凸条部87がエラストマーで形成されているようにすれば、頂上凸条部87に携帯機器の背面を接触させることで、意図しない携帯機器の移動や落下等を防止できる。また、凸条部材58において頂上凸条部87が形成されていない変形例においても、凸条部材58がエラストマーで形成されていれば、凸条部材58の前方側上面85と携帯機器の背面との接触部に生じる摩擦力で携帯機器を保持しやすくなる。
【0060】
また、図7,9に示すように、凸条部材58は、板状携帯機器63の縁部を上方側から挿し込み可能な左右横長の溝状部64を備えているので、板状携帯機器63を起立姿勢で自立保持できる。これにより、着座者は、背もたれ部2にもたれた状態で板状携帯機器63の表示画面を視認したり、板状携帯機器63の表示画面を見ながらテーブル板57で作業したりでき、利便性が向上する。なお、図7,9に示すように、板状携帯機器63が前高後低姿勢の起立姿勢で凸条部材58に保持される場合、板状携帯機器63の背面は、溝状部64の前壁面64bの上端部64dに当接及び支持される。
【0061】
また、図9に示すように、溝状部64の底面64aは、着座者側ほど上方に位置するように傾斜しているので、前高後低姿勢で起立している板状携帯機器63の縁部が溝状部64内において着座者側(後方側)へ移動しにくくなっている。これにより、着座者は、板状携帯機器63を凸条部材58に前高後低姿勢で自立保持させるに当たって、好みの任意の角度で板状携帯機器63を自立させやすくなり、利便性が向上する。
【0062】
また、溝状部64の底面64aに、左右横長の複数の溝内凸状部88が前後方向に配列されているので、溝状部64内において板状携帯機器63の縁部が前後方向で移動しにくくなっている。これにより、着座者は、板状携帯機器63を凸条部材58に自立保持させるに当たって、好みの任意の角度で板状携帯機器63を自立させやすくなり、利便性が向上する。
【0063】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は他にも様々に具体化できる。例えば、本願発明の椅子は、パネル9,10,11を有するセミクローズドタイプのものに限定されない。すなわち、本願発明の椅子は、座部とテーブル板を備える椅子に適用可能である。
【0064】
また、テーブル板は、上記実施形態では水平回動可能に構成されているが、テーブル板の回動方向は特に限定されず、また、回動不能な固定式のものであってもよい。また、テーブル板の上面は、例えば着座者側から見て前方側の縁部が手前側の縁部に対して高い位置に配置されているなど、水平に対して傾斜していてもよい。
[付記]
特許文献1~3では、テーブル板が水平に設けられているので、テーブル板上にノートパソコンが載置されるとキーボード部分は水平になる。キーボード部分が水平であると、着座者は、後傾姿勢(リラックス姿勢)のままではノートパソコンのキーボードを操作しづらく、特に手首に負担がかかり、疲労度が大きくなると共に作業効率が落ちる。そして、手首が疲れる(作業しにくい)ので、着座者は自然と体を起こして作業する傾向にある。また、テーブル板の上に置かれたタブレット端末の表示画面を見やすくするには、着座者は不自然な姿勢でタブレット端末を真上から覗き込む必要があるので疲労度が大きくなるなど、改善の余地があった。
[付記1]
座部への着座者が着座姿勢で使用するテーブル板を備えた家具であって、前記テーブル板の上面のうち、前記座部への着座者から見て前方側の部位に、左右横長の凸条部材が配置されている椅子。
[付記2]
前記座部と前記テーブル板とが連結されている付記1に記載の家具。このような態様は、例えば、座部と、その座部よりも高い位置に配置されたテーブル板とを備えたテーブル付き椅子で構成される。
なお、上記家具は、座部とテーブル板とが連結されているものに限定されず、例えば、特許文献3のように、座部(椅子)とは分離しているサイドテーブル等、座部への着座者が着座姿勢で使用するテーブル板を備えた家具を含む。
[付記3]
前記凸条部材の上面は、着座者側ほど下方に位置するように傾斜している付記1又は付記2に記載の家具。
[付記4]
前記凸条部材は、その上面のうち前方側の部位に形成された左右横長の頂上凸条部を備え、少なくとも前記頂上凸条部がエラストマーで形成されている付記3に記載の家具。
[付記5]
前記凸条部材は、エラストマーで形成されている付記1から4のいずれか一項に記載の家具。
[付記6]
前記凸条部材は、板状の携帯機器の縁部を上方側から挿し込み可能な左右横長の溝状部を備えている付記1から5のいずれか一項に記載の家具。
[付記7]
前記溝状部の底面は、着座者側ほど上方に位置するように傾斜している付記6に記載の家具。
[付記8]
前記溝状部の底面に、左右横長の複数の凸状部が前後方向に配列されている付記6又は7に記載の家具。
付記1の家具は、テーブル板の上面のうち座部への着座者から見て前方側の部位に、左右横長の凸条部材を備えているので、テーブル板上にノートパソコンやタブレット端末などの携帯機器が載置されるに当たって、当該携帯機器の背面のうち前方側の部位が上記凸条部材上に載置されることで、当該携帯機器を前高後低姿勢に傾斜配置できる。これにより、例えば、当該携帯機器がノートパソコンである場合には、着座者はキーボードを自然な手首の角度で操作しやすくなり、また、後傾姿勢のままでも自然な手首の角度で操作できるなど、作業効率が向上すると共に、疲労が軽減される。また、当該携帯機器がタブレット端末、スマートフォンなどの板状の携帯機器である場合には、着座者は、携帯機器の表示画面を真上から覗き込まなくても、比較的楽な姿勢で表示画面内の表示物を認識でき、疲労が軽減される。このように、付記1の家具は、着座者が携帯機器を使用するときの作業効率向上及び疲労軽減を実現できる。
【符号の説明】
【0065】
1 座部
57 テーブル板
58 凸条部材
63 板状携帯機器
64 溝状部
64a 溝状部の底面
85 前方側上面(傾斜面)
86 後方側上面(傾斜面)
87 頂上凸条部
88 溝内凸状部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10