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特許7565316プーリ構造体、滑り軸受、及び、滑り軸受の製造方法
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  • 特許-プーリ構造体、滑り軸受、及び、滑り軸受の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】プーリ構造体、滑り軸受、及び、滑り軸受の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16H 55/36 20060101AFI20241003BHJP
   F16C 17/02 20060101ALI20241003BHJP
   F16C 33/20 20060101ALI20241003BHJP
   F16C 19/06 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
F16H55/36 H
F16C17/02 Z
F16C33/20 A
F16C19/06
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022094632
(22)【出願日】2022-06-10
(65)【公開番号】P2023004910
(43)【公開日】2023-01-17
【審査請求日】2023-12-07
(31)【優先権主張番号】P 2021105186
(32)【優先日】2021-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006068
【氏名又は名称】三ツ星ベルト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】飯尾 成央
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-003064(JP,A)
【文献】特開2020-190331(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 55/36
F16C 17/02
F16C 33/20
F16C 19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルトが巻き掛けられ、前記ベルトから付与されるトルクによって回転軸を中心に回転する筒状の外回転体と、
前記外回転体の径方向内側に設けられ、前記回転軸を中心として、前記外回転体に対して相対回転可能な内回転体と、
前記回転軸に沿った軸方向の一端側及び他端側のそれぞれにおいて前記外回転体と前記内回転体との間に介在し、前記外回転体と前記内回転体とを相対回転可能に連結する一対の軸受と、を備え、
前記一対の軸受のうち、一方の軸受は、熱可塑性樹脂からなり有端環状に形成された滑り軸受であり、他方の軸受は転がり軸受であるプーリ構造体であって、
前記滑り軸受は、周方向の一方の端部から他方の端部に向かう方向が、前記外回転体及び前記内回転体の回転方向と同じ方向となる向きで、前記プーリ構造体に組み付けられており、
前記滑り軸受の厚みの基準寸法が、前記周方向の前記一方の端部から前記他方の端部に向かうほど徐々に大きくなっており、
前記滑り軸受の周方向の前記他方の端部における厚みが、当該部分における厚みの基準寸法に等しく、且つ、前記滑り軸受の周方向の前記一方の端部における厚みをT1mmとしてT1mmより大きく[T1+0.07]mm以下の範囲内にあることを特徴とするプーリ構造体。
【請求項2】
前記滑り軸受は、厚みの基準寸法が1.4mm以上1.5mm以下の範囲内にある、請求項1に記載のプーリ構造体。
【請求項3】
前記滑り軸受は、拡径された状態で、自身の自己弾性復元力によって内周面が前記内回転体に密着しており、
前記滑り軸受の外周面の曲率半径が、前記周方向の前記一方の端部から前記他方の端部に向かうほど徐々に大きくなっており、
前記滑り軸受の前記内周面の曲率半径が、前記周方向の全周にわたって一定である、請求項1又は2に記載のプーリ構造体。
【請求項4】
ベルトが巻き掛けられ、前記ベルトから付与されるトルクによって回転軸を中心に回転する筒状の外回転体と、
前記外回転体の径方向内側に設けられ、前記回転軸を中心として、前記外回転体に対して相対回転可能な内回転体と、
前記回転軸に沿った軸方向の一端側及び他端側のそれぞれにおいて前記外回転体と前記内回転体との間に介在し、前記外回転体と前記内回転体とを相対回転可能に連結する一対の軸受と、を備え、
前記一対の軸受のうち、一方の軸受は、熱可塑性樹脂からなり有端環状に形成された滑り軸受であり、他方の軸受は転がり軸受であるプーリ構造体において、
周方向の一方の端部から他方の端部に向かう方向が、前記外回転体及び前記内回転体の回転方向と同じ方向となる向きで、前記プーリ構造体に組み付けられる前記滑り軸受であって、
厚みの基準寸法が、前記周方向の前記一方の端部から前記他方の端部に向かうほど徐々に大きくなっており、
周方向の前記他方の端部における厚みが、当該他方の端部における厚みの基準寸法に等しく、且つ、周方向の前記一方の端部における厚みをT1mmとして、T1mmより大きく[T1+0.07]mm以下の範囲内にあることを特徴とする滑り軸受。
【請求項5】
ベルトが巻き掛けられ、前記ベルトから付与されるトルクによって、回転軸を中心に回転する筒状の外回転体と、
前記外回転体の径方向内側に設けられ、前記回転軸を中心として、前記外回転体に対して相対回転可能な内回転体と、
前記回転軸に沿った軸方向の一端側及び他端側のそれぞれにおいて前記外回転体と前記内回転体との間に介在し、前記外回転体と前記内回転体とを相対回転可能に連結する一対の軸受と、を備え、
前記一対の軸受のうち、一方の軸受が有端環状に形成された滑り軸受であり、他方の軸受が転がり軸受であるプーリ構造体において、
周方向の一方の端部から周方向の他方の端部に向かう方向が、前記外回転体及び前記内回転体の回転方向と同じとなる向きで、前記プーリ構造体に組み付けられる前記滑り軸受の製造方法であって、
有端環状のキャビティと、前記キャビティに接続されたゲートとを有する金型を用いて熱可塑性樹脂を射出成形することによって前記滑り軸受を作製し、
前記金型は、
前記キャビティの周方向の一方の端部に近い側に前記ゲートが接続され、
前記キャビティは、
前記周方向の前記一方の端部から他方の端部に向かうほど径方向の幅が徐々に大きくなり、且つ、前記滑り軸受の周方向の前記他方の端部における厚みが、当該部分における厚みの基準寸法に等しく、前記滑り軸受の周方向の他方の端部の厚みが、前記一方の端部の厚みをT1mmとして、T1mmより大きく[T1+0.07]mm以下の範囲内となるように形成されていることを特徴とする滑り軸受の製造方法。
【請求項6】
前記キャビティは、前記滑り軸受の厚みの基準寸法が1.4mm以上1.5mm以下の範囲内となるように形成されている、請求項5に記載の滑り軸受の製造方法。
【請求項7】
拡径された状態で、自身の自己弾性復元力によって内周面が前記内回転体に密着する前記滑り軸受の製造方法であって、
前記キャビティの径方向の外側の壁面の曲率半径が、前記周方向の前記一方の端部から前記他方の端部に向かうほど徐々に大きくなっており、
前記キャビティの径方向の内側の壁面の曲率半径が、周方向の全周にわたって一定である、請求項5又は6に記載の滑り軸受の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プーリ構造体、プーリ構造体を構成する滑り軸受、及び、滑り軸受の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のプーリ構造体は、外回転体と、内回転体と、一対の軸受とを備えている。外回転体は、ベルトが巻き掛けられ、前記ベルトから付与されるトルクによって、所定の回転軸を中心に回転する筒状の部材である。内回転体は、外回転体の径方向内側に設けられ、上記回転軸を中心として、外回転体に対して相対回転可能となっている。一対の軸受は、上記回転軸に沿った軸方向の一端側及び他端側のそれぞれにおいて外回転体と内回転体との間に配置され、外回転体と内回転体とを相対回転可能に連結する。また、上記一対の軸受のうち一方の軸受が滑り軸受となっており、他方の軸受が転がり軸受となっている。
【0003】
ここで、特許文献1に記載されているようなプーリ構造体では、滑り軸受として、有端環状に形成された滑り軸受が用いられることがある。ここで、有端環状とは、環状であるが、周方向の両端がつがなっていない略C字状のことである。また、低摩擦摺動性や耐摩耗性の観点から、滑り軸受を、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂等の硬質の熱可塑性樹脂からなるものとすることがある。この場合、例えば、有端環状のキャビティを有する金型を備えた射出成形機を用いて、熱可塑化(加熱溶融)された樹脂組成物をキャビティ内に射出充填した後、樹脂組成物を冷却固化させる射出成形法によって滑り軸受を製造することが考えられる。このような射出成形法で滑り軸受を製造する場合には、1回の射出操作によって、複数の滑り軸受を一度に製造することができる。
【0004】
上述したように、射出成形法によって、有端環状の滑り軸受を製造する場合には、熱可塑化(加熱溶融)された樹脂組成物を、有端環状のキャビティ内へ射出充填される際に、キャビティの周方向両端部(樹脂流れ方向末端部)における充填圧力(内部圧力)が、キャビティ内部の周方向両端部以外の部分における充填圧力(内部圧力)よりも、若干高くなる。そのため、滑り軸受の周方向の両端部は、周方向の両端部以外の部分よりも、成形収縮が若干小さくなる(厳密には、周方向の端に向かうほど、成形収縮が小さくなる)。その結果、キャビティの径方向の幅(滑り軸受の厚みに対応する長さ)が、キャビティの周方向の位置によらず一定であると、作製される滑り軸受の周方向の両端部の厚みが、周方向の両端部以外の部分の厚みよりも若干大きくなる。
【0005】
一方で、特許文献1に記載されているようなプーリ構造体では、滑り軸受は、例えば、若干拡径された状態で、内周面が内回転体に密着した状態となる。この場合、外回転体と内回転体とが相対回転するときには、主に、滑り軸受と外回転体とが摺動し、滑り軸受と外回転体との間には基準寸法が0.1mm程度の隙間(以下「摺動隙間」とする)ができる。そして、プーリ構造体の外回転体にベルトが掛けられると、外回転体のベルトから力が加えられる部分が、滑り軸受に向けて押し付けられる。そのため、外回転体のベルトから力が加えられる部分において、摺動隙間が狭くなってほぼ0となる。このとき、外回転体の回転軸に対して、外回転体のベルトから力が加えられる部分と反対側のベルトから力が加えられていない部分における摺動隙間が広がる(例えば0.2mm程度となる)。
【0006】
この場合において、上述したように、有端環状の滑り軸受の周方向の両端部の径が、周方向の両端部以外の部分の径よりも大きくなっていると、つまり、有端環状の滑り軸受が周方向の両端部において局所的に厚みが大きくなっていると、滑り軸受の周方向の両端部が外回転体のベルトから力が加えられる部分と対向する位置に到達する毎に(周期的に)、滑り軸受が、外回転体と内回転体との隙間を広げるように、外回転体に対して径方向の外側に力を加える。さらに、滑り軸受の周方向の両端部が、外回転体のベルトから力が加えられる部分と対向する位置から、外回転体のベルトから力が加えられていない部分と対向する位置に移動する毎に、外回転体が、ベルトからの外力によって瞬間的に径方向の内側に移動し、滑り軸受及び内回転体に衝突する。これらのことから、外回転体と内回転体とが相対回転するときに、外回転体が振動し、異音が発生する虞がある。
【0007】
そこで、特許文献2に記載のプーリ構造体では、滑り軸受の周方向の両端部の厚みを、滑り軸受の厚みの基準寸法(例えば2.0mm)よりも小さくしている。これにより、特許文献2に記載のプーリ構造体では、外回転体と内回転体とが相対回転するときに、上述したような外回転体の振動による異音の発生を抑えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2014-114947号公報
【文献】特開2020-003064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここで、厚みの基準寸法が2.0mm程度の滑り軸受では、特許文献2に記載されているように、周方向の位置によらず厚みが基準寸法となるように滑り軸受を形成したときに、周方向の両端部の厚みが、周方向の両端部以外の部分の厚みよりも若干大きくなる。
【0010】
一方で、部品の小型化、コストダウン等の理由から、滑り軸受の厚みの基準寸法を2.0mm程度よりも薄くする(例えば1.4~1.5mm程度とする)ことが要求されることがある。
【0011】
この場合は、射出成形法によって、熱可塑化(加熱溶融)された樹脂組成物(溶融樹脂)を、有端環状のキャビティ内へ射出充填する際に、薄肉成形となり、溶融樹脂のキャビティへの流入口(ゲート)から離れるほど溶融樹脂の充填性(流動性)が悪くなる。そのため、特許文献2に記載されているのとは異なり、キャビティの周方向の両端部における充填圧力(内部圧力)が、共に両端部以外の部分における充填圧力(内部圧力)よりも若干高くはならず、キャビティの周方向の一方の端部(溶融樹脂のキャビティへの流入口(ゲート)が設けられる端部)における充填圧力(内部圧力)が、当該一方の端部以外の部分における充填圧力(内部圧力)よりも、若干高くなる。そのため、滑り軸受の周方向の一方の端部は、周方向の一方の端部以外の部分よりも、成形収縮が若干小さくなる。厳密には、滑り軸受の周方向の一方の端部では、周方向の先端に向かうほど、成形収縮が小さくなる。そのため、キャビティの径方向の幅(滑り軸受の厚みに対応する長さ)を、キャビティの周方向の位置によらず一定とすると、作製された滑り軸受において、周方向の一方の端部の厚みが、周方向の一方の端部以外の部分の厚みよりも若干大きくなる。そして、このような場合でも、外回転体と内回転体とが相対回転するときの、外回転体の振動による異音の発生を抑制することが要求される。
【0012】
本発明の目的は、滑り軸受の周方向の一方の端部における厚みが、当該部分における厚みの基準寸法よりも大きくなっていても、滑り軸受から加えられる力によって外回転体又は内回転体が振動して異音が発生してしまうことを抑えることが可能なプーリ構造体、プーリ構造体を構成する滑り軸受、及び、プーリ構造体を構成する滑り軸受の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の態様に係るプーリ構造体は、ベルトが巻き掛けられ、前記ベルトから付与されるトルクによって回転軸を中心に回転する筒状の外回転体と、前記外回転体の径方向内側に設けられ、前記回転軸を中心として、前記外回転体に対して相対回転可能な内回転体と、前記回転軸に沿った軸方向の一端側及び他端側のそれぞれにおいて前記外回転体と前記内回転体との間に介在し、前記外回転体と前記内回転体とを相対回転可能に連結する一対の軸受と、を備え、前記一対の軸受のうち、一方の軸受は、熱可塑性樹脂からなり有端環状に形成された滑り軸受であり、他方の軸受は転がり軸受であるプーリ構造体であって、前記滑り軸受は、周方向の一方の端部から他方の端部に向かう方向が、前記外回転体及び前記内回転体の回転方向と同じ方向となる向きで、前記プーリ構造体に組み付けられており、前記滑り軸受の厚みの基準寸法が、前記周方向の前記一方の端部から前記他方の端部に向かうほど徐々に大きくなっており、前記滑り軸受の周方向の前記他方の端部における厚みが、当該部分における厚みの基準寸法に等しく、且つ、前記滑り軸受の周方向の前記一方の端部における厚みをT1mmとしてT1mm以上[T1+0.07]mm以下の範囲内にある。
【0014】
本構成によれば、滑り軸受の周方向の一方の端部から他方の端部に向かうほど、厚みの基準寸法が徐々に大きくなっており、滑り軸受の周方向の一方の端部から他方の端部に向かう方向と、外回転体及び内回転体の回転方向とが同じ方向である。これにより、滑り軸受が、周方向の他方の端部(厚みの最も大きい部分)において外回転体のベルトから力が加えられる部分と対向する位置から移動するときに、外回転体と内回転体のベルトから力を加えられる部分の隙間が、滑り軸受の厚みの変化に沿って緩やかに小さくなり、外回転体のベルトから力を加えられている部分が径方向の内側に緩やかに移動する。これにより、外回転体が径方向に急激に移動することによる振動が抑えられ、当該振動による異音の発生を抑えることができる。
【0015】
さらに、滑り軸受が、周方向の一方の端部(厚みの最も小さい部分)において外回転体のベルトから力が加えられる部分と対向する位置から、周方向の他方の端部(厚みの最も大きい部分)において外回転体のベルトから力が加えられる部分と対向する位置に移動する毎に、外回転体と内回転体のベルトから力が加えられている部分の隙間が広げられ、外回転体が径方向の外側に移動する。そこで、本発明では、滑り軸受を、周方向の一方の端部の厚みがT1mmであるのに対して、周方向の他方の端部の厚みT2mmがT1mm以上[T1+0.07]mm以下となるようにしている。これにより、外回転体が上記のように径方向の外側に移動するときの移動量が0.07mm以下となる。その結果、後述するように、外回転体が上記のように径方向の外側に移動するときの外回転体の振動を抑えて、当該振動による異音の発生を抑えることができる。なお、滑り軸受の厚みの基準寸法とは、滑り軸受の厚みの設計基準寸法のことを指している。
【0016】
本発明の第2の態様に係るプーリ構造体は、第1の態様に係るプーリ構造体において、前記滑り軸受は、厚みの基準寸法が1.4mm以上1.5mm以下の範囲内にある。
【0017】
本構成によれば、滑り軸受の厚みの基準寸法を、1.4mm以上1.5mm以下の範囲内として作製すれば、上記のような外回転体の振動による異音の発生を抑えることのできるプーリ構造体を構成する滑り軸受を確実に作製することができる。
【0018】
本発明の第3の態様に係るプーリ構造体は、第1又は第2の態様に係るプーリ構造体において、前記滑り軸受は、拡径された状態で、自身の自己弾性復元力によって内周面が前記内回転体に密着しており、前記滑り軸受の外周面の曲率半径が、前記周方向の前記一方の端部から前記他方の端部に向かうほど徐々に大きくなっており、前記滑り軸受の前記内周面の曲率半径が、前記周方向の全周にわたって一定である。
【0019】
本構成では、滑り軸受の外周面を周方向の一方の端部から他方の端部に向かうほど徐々に曲率半径が大きくなるものとし、滑り軸受の内周面を周方向の位置によらず曲率半径が一定となるようにすることで、周方向の一方の端部から他方の端部向かうほど厚みが徐々に大きくなる滑り軸受とすることができる。また、滑り軸受の内周面と内回転体との密着性を高くすることができる。
【0020】
本発明の第4の態様に係る滑り軸受は、ベルトが巻き掛けられ、前記ベルトから付与されるトルクによって回転軸を中心に回転する筒状の外回転体と、前記外回転体の径方向内側に設けられ、前記回転軸を中心として、前記外回転体に対して相対回転可能な内回転体と、前記回転軸に沿った軸方向の一端側及び他端側のそれぞれにおいて前記外回転体と前記内回転体との間に介在し、前記外回転体と前記内回転体とを相対回転可能に連結する一対の軸受と、を備え、前記一対の軸受のうち、一方の軸受は、熱可塑性樹脂からなり有端環状に形成された滑り軸受であり、他方の軸受は転がり軸受であるプーリ構造体において、周方向の一方の端部から他方の端部に向かう方向が、前記外回転体及び前記内回転体の回転方向と同じ方向となる向きで、前記プーリ構造体に組み付けられる前記滑り軸受であって、厚みの基準寸法が、前記周方向の前記一方の端部から前記他方の端部に向かうほど徐々に大きくなっており、周方向の前記他方の端部における厚みが、当該他方の端部における厚みの基準寸法に等しく、且つ、周方向の前記一方の端部における厚みをT1mmとして、T1mm以上[T1+0.07]mm以下の範囲内にある。
【0021】
本構成では、滑り軸受の周方向の一方の端部から他方の端部に向かうほど、厚みの基準寸法が徐々に大きくなっている。したがって、本構成の滑り軸受を、滑り軸受の周方向の一方の端部から他方の端部に向かう方向と、外回転体及び内回転体の回転方向とが同じ方向になる向きで組み付けてプーリ構造体を形成することにより、滑り軸受が、厚みの周方向の他方の端部(厚みの最も大きい)において外回転体のベルトから力が加えられる部分と対向する位置から移動するときに、外回転体と内回転体との間の隙間が、滑り軸受の厚みの変化に沿って緩やかに小さくなり、外回転体のベルトから力を加えられている部分が径方向の内側に緩やかに移動する。これにより、外回転体が径方向に急激に移動することによる振動が抑えられ、当該振動による異音の発生を抑えることができる。
【0022】
さらに、滑り軸受が、周方向の一方の端部(厚みの最も小さい部分)において外回転体のベルトから力が加えられる部分と対向する位置から、周方向の他方の端部(厚みの最も大きい部分)において外回転体のベルトから力が加えられる部分と対向する位置に移動する毎に、外回転体と内回転体との間の隙間が滑り軸受によって広げられ、外回転体のベルトから力を加えられている部分が径方向の外側に移動する。本発明では、滑り軸受を、周方向の一方の端部の厚みがT1mmであるのに対して、周方向の他方の端部の厚みT2mmがT1mm以上[T1+0.07]mm以下となるようにしている。これにより、本発明の滑り軸受を、周方向の一方の端部から他方の端部に向かう方向と、外回転体及び内回転体の回転方向とが同じ方向になる向きで組み付けてプーリ構造体を形成することにより、外回転体が上記のように径方向の外側に移動するときの移動量が0.07mm以下となる。その結果、後述するように、外回転体が上記のように径方向の外側に移動するときの外回転体の振動を抑え、その結果、当該振動による異音の発生を抑えることができる。
【0023】
第5の態様に係る滑り軸受の製造方法は、ベルトが巻き掛けられ、前記ベルトから付与されるトルクによって、回転軸を中心に回転する筒状の外回転体と、前記外回転体の径方向内側に設けられ、前記回転軸を中心として、前記外回転体に対して相対回転可能な内回転体と、前記回転軸に沿った軸方向の一端側及び他端側のそれぞれにおいて前記外回転体と前記内回転体との間に介在し、前記外回転体と前記内回転体とを相対回転可能に連結する一対の軸受と、を備え、前記一対の軸受のうち、一方の軸受が有端環状に形成された滑り軸受であり、他方の軸受が転がり軸受であるプーリ構造体において、周方向の一方の端部から周方向の他方の端部に向かう方向が、前記外回転体及び前記内回転体の回転方向と同じとなる向きで、前記プーリ構造体に組み付けられる前記滑り軸受の製造方法であって、有端環状のキャビティと、前記キャビティに接続されたゲートとを有する金型を用いて熱可塑性樹脂を射出成形することによって前記滑り軸受を作製し、前記金型は、前記キャビティの周方向の一方の端部に近い側に前記ゲートが接続され、前記キャビティは、前記周方向の前記一方の端部から他方の端部に向かうほど径方向の幅が徐々に大きくなり、且つ、前記滑り軸受の周方向の前記他方の端部における厚みが、当該部分における厚みの基準寸法に等しく、前記滑り軸受の周方向の他方の端部の厚みが、前記一方の端部の厚みをT1mmとして、T1mm以上[T1+0.07]mm以下の範囲内となるように形成されている。
【0024】
本構成によると、滑り軸受の周方向の一方の端部から他方の端部に向かうほど、厚みの基準寸法が徐々に大きくなるプーリ構造体を作製することができる。これにより、作製した滑り軸受を用いてプーリ構造体を形成し、滑り軸受の周方向の一方の端部から他方の端部に向かう方向と、外回転体及び内回転体の回転方向とが同じ方向になるようにすることにより、滑り軸受が、周方向の他方の端部(厚みの最も大きい部分)において外回転体のベルトから力が加えられる部分と対向する位置から移動するときに、外回転体と内回転体のベルトから力を加えられる部分の隙間が、滑り軸受の厚みの変化に沿って緩やかに小さくなり、外回転体のベルトから力を加えられている部分が径方向の内側に緩やかに移動する。これにより、外回転体が径方向に急激に移動することによる振動が抑えられ、当該振動による異音の発生を抑えることができる。
【0025】
さらに、プーリ構造体では、滑り軸受が、周方向の一方の端部(厚みの最も小さい部分)において外回転体のベルトから力が加えられる部分と対向する位置から、周方向の他方の端部(厚みの最も大きい部分)において外回転体のベルトから力が加えられる部分と対向する位置に移動する毎に、外回転体と内回転体のベルトから力が加えられている部分の隙間が広げられ、外回転体が径方向の外側に移動する。そこで、本発明では、滑り軸受を、周方向の一方の端部の厚みがT1mmであるのに対して、周方向の他方の端部の厚みT2mmがT1mm以上[T1+0.07]mm以下となるようにしている。これにより、本発明の滑り軸受を用いてプーリ構造体を形成し、滑り軸受の周方向の一方の端部から他方の端部に向かう方向と、外回転体及び内回転体の回転方向とが同じ方向になるようにすることにより、外回転体が上記のように径方向の外側に移動するときの移動量が0.07mm以下となる。その結果、後述するように、外回転体が上記のように径方向の外側に移動するときの外回転体の振動を抑え、その結果、当該振動による異音の発生を抑えることができる。
【0026】
第6の態様に係る滑り軸受の製造方法は、第5の態様に係る滑り軸受の製造方法において、前記キャビティは、前記滑り軸受の厚みの基準寸法が1.4mm以上1.5mm以下の範囲内となるように形成されている。
【0027】
本構成によれば、滑り軸受の厚みの基準寸法を、1.4mm以上1.5mm以下の範囲内として作製すれば、上記のような外回転体の振動による異音の発生を抑えることのできるプーリ構造体を構成する滑り軸受を確実に作製することができる。
【0028】
第7の態様に係る滑り軸受の製造方法は、第5又は第6の態様に係る滑り軸受の製造方法において、拡径された状態で、自身の自己弾性復元力によって内周面が前記内回転体に密着する前記滑り軸受の製造方法であって、前記キャビティの径方向の外側の壁面の曲率半径が、前記周方向の前記一方の端部から前記他方の端部に向かうほど徐々に大きくなっており、前記キャビティの径方向の内側の壁面の曲率半径が、周方向の全周にわたって一定である。
【0029】
本構成によれば、上記のようなキャビティを有する金型を用いて滑り軸受を作製することにより、滑り軸受の外周面の曲率が周方向の一方の端部から他方の端部に向かうほど徐々に大きくなり、滑り軸受の内周面の曲率半径が周方向の位置によらず一定の滑り軸受を作製することができる。また、この滑り軸受は、周方向の一方の端部から他方の端部向かうほど厚みの基準寸法が徐々に大きくなる滑り軸受となる。また、この滑り軸受を用いてプーリ構造体を形成すれば、滑り軸受の内周面と内回転体との密着性を高くすることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、滑り軸受の周方向の一方の端部における厚みが、当該部分における厚みの基準寸法よりも大きくなっていても、滑り軸受から加えられる力によって外回転体又は内回転体が振動して異音が発生してしまうことを抑えることが可できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、本発明の実施形態に係るプーリ構造体を示す、プーリ構造体の回転軸を通り且つ当該回転軸と平行な方向に沿った断面図である。
図2図2は、図1のII-II線に沿った断面図である。
図3図3は、図2のIII部拡大図である。
図4図4は、滑り軸受を製造するための射出成形金型の2つのキャビティの中心を通る平面での断面図である。
図5図5(a)は、図4のVA-VA線断面図であり、図5(b)は図5(a)のVB部の拡大図である。
図6図6(a)は射出成形金型に合成樹脂材料を充填した状態を示す図であり、図6(b)はピンゲートを滑り軸受から切り離した状態を示す図である。
図7図7はキャビティから滑り軸受を抜き出した状態を示す図である。
図8図8(a)は実施例1~4及び比較例1~4に係る滑り軸受の作成に使用するキャビティを示す図であり、図8(b)は比較例5及び参考例に係る滑り軸受の作成に使用するキャビティを示す図である。
図9図9はアイドル試験機の概略構成図である。
図10図10は、本発明の他の実施形態に係るプーリ構造体を示す、プーリ構造体の回転軸を通り且つ当該回転軸と平行な方向に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
<プーリ構造体の構造>
図1に示す、本発明の実施形態に係るプーリ構造体1は、例えば、自動車の補機駆動システムにおいて、オルタネータの駆動軸Sに取り付けられる。補機駆動システムは、エンジンのクランク軸に取り付けられた駆動プーリと、オルタネータ等の補機を駆動する従動プーリ及びプーリ構造体1と、これらプーリ及びプーリ構造体1に巻回されたベルトBとを含む。クランク軸の回転がベルトBを介して従動プーリ及びプーリ構造体1に伝達されることで、オルタネータ等の補機が駆動される。クランク軸の回転速度がエンジンの燃焼に応じて変動するのに伴い、ベルトBの走行速度も変動する。
【0033】
図1図2に示すように、プーリ構造体1は、外回転体2と、内回転体3と、ねじりコイルばね4(以下、単に「ばね4」という)と、エンドキャップ5と、滑り軸受6及び転がり軸受7からなる一対の軸受6、7とを含む。
【0034】
外回転体2及び内回転体3は、共に略円筒状であり、同一の回転軸A(プーリ構造体1の回転軸であり、以下、単に「回転軸A」という)を有する。回転軸Aは、図1の左右方向(軸方向)に沿って延在する。また、以下では、図1の右側を軸方向の一端側、図1の左側を軸方向の他端側という。
【0035】
外回転体2の外周面に、ベルトBが巻回される。
【0036】
内回転体3は、外回転体2の内側に設けられ、外回転体2に対して相対回転可能である。内回転体3は、オルタネータの駆動軸Sが嵌合される筒本体3aと、筒本体3aの他端の外側に配置された外筒部3bと、筒本体3aの他端と外筒部3bの他端とを連結する円環板部3cとを有する。駆動軸Sは、筒本体3aの内周面のネジ溝に螺合される。
【0037】
ばね4は、外回転体2と内回転体3との間に配置されている。具体的には、ばね4は、外回転体2の内周面及び内回転体3の外筒部3bの内周面と、内回転体3の筒本体3aの外周面と、内回転体3の円環板部3cとによって画定された、転がり軸受7よりも他端側にある空間Uに収容されている。ばね4は、断面が正方形状の線材(例えば、ばね用オイルテンパー線(JISG3560:1994に準拠)等)で構成されており、左巻き(ばね4の他端から一端に向かって反時計回り)である。
【0038】
空間Uには、グリース等の潤滑剤が封入されている。潤滑剤は、プーリ構造体1の組み付け時に、ペースト状の塊の状態で、空間Uに投入される。投入量は、例えば0.2g程度である。プーリ構造体1を動作させると、空間Uの温度上昇やせん断発熱(摩擦熱)によって、潤滑剤の粘度が下がり、潤滑剤が空間U全体に拡散する。
【0039】
エンドキャップ5は、外回転体2及び内回転体3の他端に配置されている。
【0040】
一対の軸受6、7は、一端側及び他端側のそれぞれにおいて、外回転体2及び内回転体3の間に介在している。具体的には、外回転体2の他端側の内周面と内回転体3の外筒部3bの外周面との間の筒状隙間Q(図3参照)に、滑り軸受6が介在している。外回転体2の一端側の内周面と内回転体3の筒本体3aの一端側の外周面との間に、転がり軸受7が介在している。一対の軸受6、7によって、外回転体2及び内回転体3が相対回転可能に連結されている。外回転体2及び内回転体3は、他端から一端に向かう方向から見て時計回り(図2の矢印方向。以下、「正方向」という)に回転する。
【0041】
滑り軸受6は、有端環状の部材であり、滑り軸受6の周方向の両端部の間に隙間が存在している。滑り軸受6は、ロックウェルRスケール(JIS K7202-2:2001に準拠)が80~130である硬質の熱可塑性樹脂で形成されている。具体的には、滑り軸受6は、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエステル(ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート等)、フッ素樹脂、ポリフェニレンスルフィド、ポリサルホン、非晶ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン類、液晶ポリマー、ポリアミドイミド、熱可塑性ポリイミド類、シンジオ型ポリスチレン、オレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、スチレン系樹脂(ABS樹脂、ポリスチレン等)、ポリ塩化ビニル、塩化ビニリデン系樹脂、メタクリル樹脂、ポリビニルアルコール、スチレン系ブロックコポリマー樹脂などによって形成されている。ただし、低摩擦摺動性や耐摩耗性等の観点から、滑り軸受6は、これらの材料のうち、ポリアセタール樹脂及びポリアミド樹脂で形成されたものとすることがより好ましい。また、滑り軸受6のロックウェルRスケールによる硬さは、85~125程度がより好ましい。
【0042】
また、滑り軸受6は、1種の樹脂組成物によって形成された1層のものであってもよいし、2種以上の樹脂組成物によって形成される2層以上のものでもよい。ただし、製造コストの観点から、滑り軸受6は1種の樹脂組成物によって形成された1層のものとすることがより好ましい。
【0043】
滑り軸受6は、若干拡径された状態で内回転体3の外筒部3bの外周面に装着されており、滑り軸受6の内周面6aは、自己弾性復元力によって外筒部3bの外周面に密着している。外筒部3bの外周面における滑り軸受6の両側には、滑り軸受6の抜けを防止する突起が設けられている。滑り軸受6は、当該突起の間で、微小に軸方向に移動可能である。
【0044】
滑り軸受6の外周面6bと外回転体2の内周面との間には、例えば0.1mm程度の摺動隙間Pが存在する。摺動隙間Pに空間Uに封入された潤滑剤が入り込むことで、滑り軸受6の摩擦面(滑り軸受6における外回転体2との接触面)の摩耗が抑制される。なお、潤滑剤がこの隙間から他端側に漏れ出すことはほとんどない。
【0045】
また、滑り軸受6の外周面6bの曲率半径Roは、周方向の上記一方の端部から上記他方の端部に向かうほど徐々に大きくなっている。一方、滑り軸受6の内周面6aの曲率半径Riは、周方向の全周にわたってほぼ一定である。これにより、滑り軸受6は、周方向の上記一方の端部から上記他方の端部に向かうほど、厚み(径方向の長さ)が徐々に大きくなっている。また、滑り軸受6は、外回転体2及び内回転体3の回転方向と、滑り軸受6の周方向の一方の端部から他方の端部に向かう方向とが同じ方向となる向きで、プーリ構造体1に組み付けられている。
【0046】
また、滑り軸受6の厚みは、周方向の一方の端部以外の部分において基準寸法と等しくなっている。ここで、滑り軸受6の厚みの基準寸法とは、滑り軸受6の厚みの設計基準寸法のことを指しており、1.4mm以上1.5mm以下である。また、滑り軸受6の周方向の一方の端部における厚みは、基準寸法よりも大きくなっている。これにより、滑り軸受6では、周方向の一方の端部において、厚みが局所的に大きくなっている。ここで、「厚みが局所的に大きくなっている」というのは、隣接する部分に対する厚みの変化の割合が、他の部分よりも大きいことを意味している。また、滑り軸受6では、周方向の他方の端部における厚みT2mmが、基準寸法と等しく、且つ、滑り軸受6の周方向の上記一方の端部における厚みをT1mmとして、T1mm以上[T1+0.07]mm以下の範囲内にある。
【0047】
転がり軸受7は、接触シール式の密閉形玉軸受であって、外回転体2の内周面に固定された外輪7aと、内回転体3の筒本体3aの外周面に固定された内輪7bと、外輪7aと内輪7bとの間に転動自在に配置された複数の玉(転動体)7cと、複数の玉7cの軸方向両側に配置された環状の接触シール部材7dとを有する。転がり軸受7の内部にグリース等の潤滑剤(例えば、空間Uに封入された潤滑剤と同じ潤滑剤)が封入されることで、転がり軸受7の摩擦面(玉7cにおける外輪7a及び/又は内輪7bとの接触面)の摩耗が抑制される。
【0048】
外回転体2の内径は、他端から一端に向かって2段階で小さくなっている。最も小さい内径部分における外回転体2の内周面を圧接面2a、2番目に小さい内径部分における外回転体2の内周面を環状面2bという。圧接面2aにおける外回転体2の内径は、内回転体3の外筒部3bの内径よりも小さい。環状面2bにおける外回転体2の内径は、内回転体3の外筒部3bの内径と同じか、それよりも大きい。
【0049】
内回転体3の筒本体3aは、他端側において外径が大きくなっている。この部分における内回転体3の筒本体3aの外周面を接触面3axという。
【0050】
ばね4は、一端側で外回転体2に接触する一端側領域4aと、他端側で内回転体3に接触する他端側領域4bと、一端側領域4a及び他端側領域4bの間において外回転体2及び内回転体3のいずれにも接触しない中領域4cとを有する。一端側領域4a及び他端側領域4bは、それぞれ、ばね4の一端及び他端から半周以上(回転軸回りに180°以上)に亘った領域をいう。また、他端側領域4bのうち、ばね4の他端から回転軸回りに90°離れた位置付近を第2領域4b2、第2領域4b2よりも他端側の部分を第1領域4b1、残りの部分を第3領域4b3という(図2参照)。
【0051】
ばね4は、外力を受けていない状態において、全長に亘って径が一定であり、このときのばね4の外径は、環状面2bにおける外回転体2の内径よりも小さく、圧接面2aにおける外回転体2の内径よりも大きい。ばね4は、一端側領域4aが縮径された状態で、空間Uに収容されている。
【0052】
ばね4は、プーリ構造体1に外力が付与されていない状態(即ち、プーリ構造体1が停止した状態)において、軸方向に圧縮されている。このとき、ばね4の一端側領域4aの外周面はばね4の拡径方向の自己弾性復元力によって圧接面2aに押し付けられ、ばね4の他端側領域4bは若干拡径された状態で接触面3axと接触している。つまり、ばね4の他端側領域4bの内周面は、ばね4の縮径方向の自己弾性復元力によって、接触面3axに押し付けられている。
【0053】
図2に示すように、内回転体3の他端部分には、ばね4の他端面4bxと対向する当接面3dが形成されている。また、外筒部3bの内周面には、外筒部3bの径方向内側に突出して他端側領域4bの外周面と対向する突起3eが設けられている。突起3eは、第2領域4b2と対向している。
【0054】
ばね4の他端側領域4bの内周面が接触面3axと接触している状態において、ばね4の他端側領域4bの外周面と内回転体3の外筒部3bの内周面との間には、隙間が形成されている。また、外回転体2の環状面2bとばね4の外周面との間には、隙間が形成されている。本実施形態では、プーリ構造体1に外力が付与されていない状態において、図2に示すように、ねじりコイルばね4の外周面と突起3eとは、互いに離隔しており、両者の間に隙間が形成されているが、互いに接してもよい。
【0055】
<プーリ構造体の動作>
ここで、プーリ構造体1の動作について説明する。
【0056】
先ず、外回転体2の回転速度が内回転体3の回転速度よりも大きくなった場合(即ち、外回転体2が加速する場合)について説明する。
【0057】
この場合、外回転体2は、内回転体3に対して正方向(図2の矢印方向)に相対回転する。外回転体2の相対回転に伴って、ばね4の一端側領域4aが、圧接面2aと共に移動し、内回転体3に対して相対回転する。これにより、ばね4が拡径方向にねじれる。ばね4の一端側領域4aの圧接面2aに対する圧接力は、ばね4の拡径方向のねじり角度が大きくなるほど増大する。第2領域4b2は、ねじり応力を最も受け易く、ばね4の拡径方向のねじり角度が大きくなると、接触面3axから離れる。このとき、第1領域4b1及び第3領域4b3は、接触面3axに圧接している。第2領域4b2が接触面3axから離れると略同時に、又は、ばね4の拡径方向のねじり角度がさらに大きくなったときに、第2領域4b2の外周面が突起3eに当接する。第2領域4b2の外周面が突起3eに当接することで、他端側領域4bの拡径方向の変形が規制され、ねじり応力がばね4における他端側領域4b以外の部分に分散され、特にばね4の一端側領域4aに作用するねじり応力が増加する。これにより、ばね4の各部に作用するねじり応力の差が低減され、ばね4全体で歪エネルギーを吸収できるため、ばね4の局部的な疲労破壊を防止できる。
【0058】
また、第3領域4b3の接触面3axに対する圧接力は、ばね4の拡径方向のねじり角度が大きくなるほど低下する。第2領域4b2が突起3eに当接すると同時に、又は、ばね4の拡径方向のねじり角度がさらに大きくなったときに、第3領域4b3の接触面3axに対する圧接力が略ゼロとなる。このときのばね4の拡径方向のねじり角度をθ1(例えば、θ1=3°)とする。ばね4の拡径方向のねじり角度がθ1を超えると、第3領域4b3は、拡径方向に変形することで、接触面3axから離れていく。しかし、第3領域4b3と第2領域4b2との境界付近において、ばね4が湾曲(屈曲)することはなく、他端側領域4bは円弧状に維持される。つまり、他端側領域4bは、突起3eに対して摺動し易い形状に維持されている。そのため、ばね4の拡径方向のねじり角度が大きくなって他端側領域4bに作用するねじり応力が増加すると、他端側領域4bは、第2領域4b2の突起3eに対する圧接力及び第1領域4b1の接触面3axに対する圧接力に抗して、突起3e及び接触面3axに対して外回転体2の周方向に摺動する。そして、他端面4bxが当接面3dを押圧することにより、外回転体2と内回転体3との間で確実にトルクを伝達できる。
【0059】
なお、ばね4の拡径方向のねじり角度がθ1以上且つθ2(例えば、θ2=45°)未満の場合、第3領域4b3は、接触面3axから離隔し且つ内回転体3の外筒部3bの内周面に接触しておらず、第2領域4b2は、突起3eに圧接されている。そのため、この場合、ばね4の拡径方向のねじり角度がθ1未満の場合に比べて、ばね4の有効巻数が大きく、ばね定数が小さい。また、ばね4の拡径方向のねじり角度がθ2になると、ばね4の中領域4cの外周面が環状面2bに当接すること、又は、ばね4の拡径方向のねじり角度が限界に達することにより、ばね4のそれ以上の拡径方向の変形が規制され、外回転体2及び内回転体3が一体的に回転する。これにより、ばねの拡径方向の変形による破損を防止できる。
【0060】
次に、外回転体2の回転速度が内回転体3の回転速度よりも小さくなった場合(即ち、外回転体2が減速する場合)について説明する。
【0061】
この場合、外回転体2は、内回転体3に対して逆方向(図2の矢印方向と逆の方向)に相対回転する。外回転体2の相対回転に伴って、ばね4の一端側領域4aが、圧接面2aと共に移動し、内回転体3に対して相対回転する。これにより、ばね4が縮径方向にねじれる。ばね4の縮径方向のねじり角度がθ3(例えば、θ3=10°)未満の場合、一端側領域4aの圧接面2aに対する圧接力は、ねじり角度がゼロの場合に比べて若干低下するものの、一端側領域4aは圧接面2aに圧接している。また、他端側領域4bの接触面3axに対する圧接力は、ねじり角度がゼロの場合に比べて若干増大する。ばね4の縮径方向のねじり角度がθ3以上の場合、一端側領域4aの圧接面2aに対する圧接力は略ゼロとなり、一端側領域4aは圧接面2aに対して外回転体2の周方向に摺動する。したがって、外回転体2と内回転体3との間でトルクは伝達されない。
【0062】
このように、ばね4は、内回転体3が外回転体2に対して正方向に相対回転するとき外回転体2及び内回転体3のそれぞれと係合して外回転体2と内回転体3との間でトルクを伝達する一方、内回転体3が外回転体2に対して逆方向に相対回転するとき外回転体2及び内回転体3の少なくとも一方(本実施形態では、圧接面2a)に対して摺動(本実施形態では、外回転体2の周方向に摺動)して外回転体2と内回転体3との間でトルクを伝達しない。また、プーリ構造体1は、ばね4の拡径又は縮径により外回転体2及び内回転体3の間でトルクを伝達又は遮断するように構成されている。
【0063】
<滑り軸受の製造方法>
次に、プーリ構造体1を構成する滑り軸受6の製造方法について説明する。滑り軸受6は、射出成形機(不図示)及び図4図5に示すような金型(射出成形金型)50を用いて射出成形法によって製造する。金型50は、4つの滑り軸受6を一度に製造することが可能なものである。金型50は、3枚の直方体形状の型板51~53と、支持部材54と、突出し板55と、複数の突出しピン56、スペーサ57とを備えている。
【0064】
型板51の上端部には、4つの滑り軸受6に対応する4つのキャビティ51aが形成されている。4つのキャビティ51aは、互いに直交する第1方向(図5(a)の左右方向)、及び、第2方向(図5(a)の上下方向)に2つずつ並んでいる。キャビティ51aは、有端環状に形成されている。
【0065】
また、キャビティ51aの径方向の内側の内壁面51a1の曲率半径Rjが、全周にわたってほぼ一定である。これに対して、キャビティ51aの径方向の外側の内壁面51a2の曲率半径Rpは、周方向の一方の端部から他方の端部に向かうほど徐々に大きくなっている。これにより、キャビティ51aは、周方向の一方の端部から他方の端部に向かうほど、径方向の幅(滑り軸受6の厚みに対応する長さ)が徐々に大きくなっている。なお、図5(a)の4つのキャビティ51aのうち、図中右下及び左上のキャビティ51aについては、図の時計回り方向の上流側の端部が周方向の一方の端部であり、図の時計回り方向の下流側の端部が周方向の他方の端部である。また、図5(a)の4つのキャビティ51aのうち、図中右上及び左下のキャビティ51aについては、図の時計回り方向の下流側の端部が周方向の一方の端部であり、図の時計回り方向の上流側の端部が周方向の他方の端部である。
【0066】
また、型板51には、各キャビティ51aと上下に重なる部分に、それぞれ、上下方向に延びた複数の挿通孔51bが形成されている。挿通孔51bは、上端がキャビティ51aに開口しており、下端が型板51の下面に開口している。各挿通孔51bには、下方から突出しピン56が挿通されている。
【0067】
型板52は、型板51の上面に配置されている。型板52には、4つのピンゲート52aと、ランナー52bとが形成されている。ピンゲート52aは、型板52の下端部に形成されており、下側(型板53側)に向かうほど径が小さくなる先細り形状となっている。4つのピンゲート52aは、4つのキャビティ51aに対応しており、その下端部が、対応するキャビティ51aの周方向の一方の端部と接続されている。
【0068】
ランナー52bは、型板52の上面の中央部から第1方向の両側に延び、第1方向の両端部において、それぞれ、第2方向の両側に延びている。さらに、ランナー52bは、第2方向に延びた部分の各先端部から下方に延び、ピンゲート52aの上端部と接続されている。
【0069】
型板53は、型板52の上面に配置されている。型板53にはスプルー53aが形成されている。スプルー53aは、型板53の中央部に形成され、型板53を上下方向に貫通し、その下端においてランナー52bの第1方向に延びた部分の中央部と接続されている。また、型板53のスプルー53aが形成された部分の上面には凹部53bが形成されている。凹部53bは、後述するように熱可塑性樹脂を充填する際にノズル59を配置するための部分である。
【0070】
支持部材54は、型板51の下方に配置されている。支持部材54と型板51との間にはスペーサ57が介在しており、これにより、支持部材54と型板51との間に空間Kが形成されている。突出し板55は、空間K内に収容されており、支持部材54により支持されている。突出し板55には複数の突出しピン56が固定されている。また、支持部材54の突出し板55の中央部と上下に重なる部分には、貫通孔54aが形成されている。
【0071】
そして、金型(射出成形金型)50を用いて滑り軸受6を作製するためには、まず、図6(a)に示すように、図示しない可塑化シリンダに接続されたノズル59を、凹部53b上に配置し、可塑化シリンダによって熱可塑化(加熱溶融)された熱可塑性樹脂を、ノズル59からスプルー53aに流し込むことによって、スプルー53a、ランナー52b、ピンゲート52a、キャビティ51aに熱可塑性樹脂を充填する。その後、充填した熱可塑性樹脂を冷却固化させる。
【0072】
続いて、図6(b)に示すように、型板52、53を上方に移動させて型板51から離す。このとき、型板52がピンゲート52aを有するものであるため、ピンゲート52a内の熱可塑性樹脂が、キャビティ51a内の熱可塑性樹脂(滑り軸受6)から切り離される。そして、この後、図7に示すように、貫通孔54aを通るロッドT(射出成形機に備わるエジェクタ機構)で突出し板55を押し上げることによって、複数の突出しピン56を押し上げて、滑り軸受6をキャビティ51aから抜き出す。その後、滑り軸受6を、成形収縮しなくなるまで(例えば室温となるまで)冷却させる。
【0073】
<効果>
ここで、上述したように、厚みの基準寸法が1.4mm~1.5mm程度の滑り軸受6に対応する有端環状のキャビティ51a内に樹脂組成物を射出充填したときには、薄肉成形となるため、キャビティ51aの周方向の一方の端部における充填圧力が、一方の端部以外の部分における充填圧力よりも若干大きくなる。より詳細には、キャビティ51a内の充填圧力(内部圧力)が周方向の一方の端部から他方の端部に向かうほど徐々に小さくなる。そのため、作製される滑り軸受6では、周方向の一方の端部において、周方向の一方の端部以外の部分よりも、成形収縮が若干小さくなる。厳密には、周方向の他方の端部から一方の端部に向かうほど、成形収縮が小さくなる。そのため、本実施形態と異なり、キャビティの径方向の幅(滑り軸受の厚みに対応する長さ)が、キャビティの周方向の位置によらず一定(キャビティの径方向内側及び外側の壁面の径が一定)であると、作製される滑り軸受の周方向の一方の端部の厚みが、周方向の一方の端部以外の部分の厚みよりも、若干大きくなる。
【0074】
一方で、プーリ構造体1の外回転体2にベルトBが掛けられると、外回転体2のベルトBから力が加えられる部分が、滑り軸受6に向けて押し付けられる。そのため、外回転体2のベルトBから力が加えられる部分において、摺動隙間が狭くなってほぼ0となる。このとき、回転軸Aに対して、外回転体2のベルトBから力が加えられる部分と反対側のベルトBから力が加えられていない部分における摺動隙間が広がる(例えば0.2mm程度となる)。
【0075】
これに対して、本実施形態では、滑り軸受6が、周方向の一方の端部から他方の端部に向かう方向が、外回転体2及び内回転体3の回転方向と同じ方向となる向きで、プーリ構造体1に組み付けられている。また、滑り軸受6の厚みが、周方向の一方の端部から他方の端部に向かうほど徐々に大きくなっている。これにより、滑り軸受6が、周方向の他方の端部(厚みの最も大きい部分)において外回転体2のベルトBから力が加えられる部分と対向する位置から移動するときに、外回転体2と内回転体3とのベルトBから力が加えられている部分の隙間が緩やかに小さくなるため、外回転体2のベルトBから力を加えられている部分が径方向の内側に緩やかに移動する。これにより、外回転体2の径方向内側への急激な移動による滑り軸受6及び内回転体3への衝突が生じず、外回転体2の振動による異音の発生を抑えることができる。
【0076】
さらに、本実施形態では、滑り軸受6が、周方向の一方の端部において外回転体2のベルトBから力が加えられる部分と対向する位置から、周方向の他方の端部において外回転体2のベルトBから力が加えられる部分と対向する位置に移動する毎に、滑り軸受6の周方向の一方の端部の厚みT1と周方向の他方の端部の厚みT2との差の分だけ、外回転体3と内回転体2のベルトBから力が加えられている部分の隙間が広げられ、外回転体3が径方向の外側に移動する。このとき、滑り軸受6の周方向の一方の端部の厚みT1と周方向の他方の端部の厚みT2との差が大きいと、外回転体2の径方向外側への移動によって外回転体2が振動して異音が発生する虞がある。
【0077】
そこで、本実施形態では、滑り軸受6を、周方向の一方の端部の厚みがT1mmであるのに対して、周方向の他方の端部の厚みT2mmがT1mm以上[T1+0.07]mm以下となるようにしている。これにより、後述する実施例の結果からわかるように、滑り軸受6が、周方向の一方の端部において外回転体2のベルトBから力が加えられる部分と対向する位置から、周方向の他方の端部において外回転体2のベルトBから力が加えられる部分と対向する位置に移動するときの外回転体3の移動による振動を抑えて、異音の発生を抑えることができる。
【0078】
また、本実施形態では、滑り軸受6の厚みの基準寸法を1.4mm以上1.5mm以下としている。これにより、後述する実施例の結果からわかるように、上記のような外回転体2の振動による異音の発生を抑えることのできる滑り軸受6を確実に作製することができる。
【0079】
また、本実施形態では、滑り軸受6を拡径させた状態で、内壁面6aを内回転体3に密着させている。また、本実施形態では、滑り軸受6の外周面6bの曲率半径Roを、周方向の一方の端部から他方の端部に向かうほど徐々に大きくなるようにし、滑り軸受6の内周面6aの曲率半径Riを周方向の全周にわたって一定としている。また、これに対応して、本実施形態では、キャビティ51aの径方向外側の内壁面の曲率半径Rpを、周方向の一方の端部から他方の端部に向かうほど徐々に大きくなるようにし、キャビティ51aの径方向内側の内壁面の曲率半径Rjを、周方向の全周にわたって一定としている。これにより、滑り軸受6を、周方向の一方の端部から他方の端部に向かうほど徐々に厚みが大きくなるものとすることができる。また、滑り軸受6の内周面6aの内回転体3に対する密着性を高くすることができる。
【実施例
【0080】
次に、本発明の実施例について説明する。
【0081】
実施例1~4、比較例1~5及び参考例に係る滑り軸受は、本実施形態のプーリ構造体1に対応するプーリ構造体を構成する滑り軸受である。表1は、実施例1~4、比較例1~5及び参考例における滑り軸受の厚み、滑り軸受を組み付けてプーリ構造体を形成する条件等を示している。なお、実施例1~4、比較例1~5及び参考例では、滑り軸受の内周面の径を55mmとし、滑り軸受の軸方向の長さを6mmとした。
【表1】
【0082】
表1に示すように、実施例1~4及び比較例1~4に係る滑り軸受は、周方向の両端部以外の部分において、周方向の一方の端部(表1では「一端部」としている)から周方向の他方の端部(表1では「他端部」としている)に向かうほど厚みの基準寸法を徐々に大きくして作製したものであり、周方向の両端部以外の部分において、周方向の一方の端部から他方の端部に向かうほど、徐々に厚みが大きくなっている。
【0083】
また、実施例1~3に係る滑り軸受は、周方向の一方の端部における厚みの基準寸法を1.40mmとし、周方向の他方の端部における厚みの基準寸法を、それぞれ、1.45mm、1.48mm、1.50mmとして作製したものである。そして、このように厚みの基準寸法を設定して作製した実施例1~3に係る滑り軸受は、周方向の一方の端部における厚みT1が1.43mmであり、周方向の他方の端部における厚みT2が、それぞれ、1.45mm、1.48mm、1.50mmであった。
【0084】
また、実施例4及び比較例1に係る滑り軸受は、周方向の一方の端部における厚みの基準寸法を1.55mmとし、周方向の他方の端部における厚みの基準寸法を1.60mmとして作製したものである。そして、このように厚みの基準寸法を設定して作製した実施例4及び比較例1に係る滑り軸受は、周方向の一方の端部における厚みT1が1.58mmであり、周方向の他方の端部の厚みT2が1.63mmであった。また、実施例4に係る滑り軸受は、射出成形によって作製した後、周方向の他方の端部に研磨加工を施すことで、周方向の他方の端部の厚みを1.58~1.61mmとした。
【0085】
また、比較例2に係る滑り軸受は、周方向の一方の端部における厚みの基準寸法を実施例1~3と同じ1.40mmとし、周方向の他方の端部における厚みの基準寸法を1.52mmとして作製したものである。そして、このように厚みの基準寸法を設定して作製した比較例2に係る滑り軸受は、周方向の一方の端部における厚みが実施例1~3とほぼ同じ1.43mmであり、周方向の他方の端部における厚みが1.52mmであった。
【0086】
また、比較例3に係る滑り軸受は、実施例1を同様に、周方向の一方の端部における厚みの基準寸法を1.40mmとし、周方向の他方の端部における厚みの基準寸法を1.45mmとして作製したものである。そして、比較例3に係る滑り軸受も、実施例1と同様、周方向の一方の端部における厚みが1.43mmであり、周方向の他方の端部における厚みが1.45mmであった。
【0087】
比較例4に係る滑り軸受は、周方向の一方の端部における厚みの基準寸法を1.30mmとし、周方向の他方の端部における厚みの基準寸法を1.35mmとして作製したものである。そして、このように厚みの基準寸法を設定して作製した比較例4に係る滑り軸受は、周方向の一方の端部における厚みが1.33mmであり、周方向の他方の端部における厚みが1.35mmであった。
【0088】
比較例5及び参考例に係る滑り軸受は、周方向の位置によらず厚みの基準寸法を1.40mmとして作製したものである。そして、このように厚みの基準寸法を設定して作製した比較例5及び参考例に係る滑り軸受は、周方向の一方の端部における厚みが1.43mmであり、周方向の一方の端部以外の部分における厚みが1.40mmであった。ただし、参考例に係る滑り軸受については、さらに周方向の一方の端部に研磨加工を施すことによって、周方向の一方の端部における厚みを1.38~1.41mmとした。すなわち、参考例に係る滑り軸受では、周方向の位置によらず厚みがほぼ一定となるようにした。
【0089】
そして、実施例1~4及び比較例1~4では、滑り軸受を上記のようなものとしたことにより、周方向の他方の端部において厚みが最大となっている。また、実施例1~4及び比較例2~5では、滑り軸受を上記のようなものとしたことにより、周方向の一方の端部において、厚みが局所的に大きくなっている。一方で、比較例1では、滑り軸受を上記のようなものとしたことにより、周方向の両端部において、厚みが局所的に大きくなっている。また、参考例では、滑り軸受を上記のようなものとしたことにより、厚みが局所的に大きくなった部分がないものなっている。
【0090】
また、実施例1~4、比較例1~5及び参考例では、滑り軸受を、ロックウェルRスケールが114のポリアセタール樹脂(商品名「ベスタールG」(三ツ星ベルト社製))からなるものとした。また、実施例1~4、比較例1~5及び参考例では、図5(a)のような4つのキャビティを有する同じ金型(射出成形金型)を用いて滑り軸受の作製を行った。ただし、これらの滑り軸受の作製に用いた金型では、図5(a)に示す金型とは異なり、型板の4つのキャビティのうち1つのキャビティに対応する部分が入れ駒となっているものを用いた。また、使用した入れ駒は、(1)実施例1及び比較例3に係る滑り軸受を作製するためのキャビティが形成された入れ駒、(2)実施例2に係る滑り軸受を作製するためのキャビティが形成された入れ駒、(3)実施例3に係る滑り軸受を作製するためのキャビティが形成された入れ駒、(4)実施例4及び比較例1に係る滑り軸受を作製するためのキャビティが形成された入れ駒、(5)比較例2に係る滑り軸受を作製するためのキャビティが形成された入れ駒、(6)比較例4に係る滑り軸受を作製するためのキャビティが形成された入れ駒、及び、(7)比較例5及び参考例に係る滑り軸受を作製するためのキャビティが形成された入れ駒の7種類である。
【0091】
そして、これら7種類の入れ駒を用いてそれぞれ形成した、1つキャビティに対応する部分が入れ駒となった金型を用いて4つの滑り軸受を同時に射出成形し、入れ駒に形成されたキャビティから作製された滑り軸受を、評価に使用する滑り軸受とした。
【0092】
ここで、実施例1~4及び比較例1~4に係る滑り軸受の作製に使用するキャビティ51aA(入れ駒に形成されたキャビティ)は、図8(a)に示すように、周方向の一方の端部から他方の端部に向かうほど、径方向の幅が徐々に大きくなるものであった。より詳細には、径方向外側の内壁面の曲率半径が周方向の一方の端部から他方の端部に向かうほど徐々に大きくなり、径方向内側の内壁面の曲率半径が周方向の全周にわたって一定のものであった。なお、図8(a)では、図面をわかりやすくするために、周方向の一方の端部から他方の端部に向かうときの径方向の幅の変化の割合を実際よりも大きく示している。
【0093】
一方、比較例5及び参考例に係る滑り軸受の作製に使用するキャビティ51aB(入れ駒に形成されたキャビティ)は、図8(b)に示すように、径方向の幅が周方向の全周にわたって一定のものであった。より詳細には、径方向外側の内壁面及び径方向内側の内壁面の曲率半径が周方向の全周にわたって一定のものであった。
【0094】
なお、入れ駒でない3つのキャビティから作製される滑り軸受は、実施例1、比較例3に係る滑り軸受となるが、4つのキャビティ間の射出成形条件の微妙な差異による滑り軸受の個体差を極力なくすために、これらのキャビティから作製される滑り軸受については、評価には使用しないこととした。
【0095】
また、射出成形時の樹脂の温度は、可塑化シリンダ後部(ノズルと反対側の部分)において170℃程度、可塑化シリンダ前部(ノズル側の部分)において200℃程度、ノズル部において210℃程度であった。また、金型の温度は70℃程度であった。また、樹脂の射出圧力は90MPa程度であり、樹脂の射出速度は30mm/秒程度であった。また、成形収縮率は約2%であった。
【0096】
また、実施例1~4、比較例1~3,5及び参考例では、上述したような射出成形法によって、各部分の厚みが表1に記載されている厚みとなる滑り軸受が再現性良く作製されること(表1の「外観」が「良好」)を確認したうえで、作製した滑り軸受を用いてプーリ構造体を形成し、後述する異音の発生の評価を行った。このとき、実施例1~4、比較例1,2,5及び参考例では、周方向の一方の端部から他方の端部に向かう方向と、外回転体及び内回転体の回転方向とが同じ方向となる向きで滑り軸受を組付けて、プーリ構造体を形成した(表1の「滑り軸受向き」が「同じ」)。一方、比較例3では、上記とは逆に、周方向の一方の端部から他方の端部に向かう方向と、外回転体及び内回転体の回転方向とが逆方向となる向きで滑り軸受を組み付けて、プーリ構造体を形成した(表1の「滑り軸受向き」が「逆」)。
【0097】
また、実施例1~4、比較例1,2,3,5及び参考例では、筒状隙間を、滑り軸受の厚みの基準寸法の最小値よりも0.2mm大きいものとした。具体的には、実施例1~3、比較例2,3,5及び参考例では、ベルトが掛けられる前の状態での外回転体と内回転体との間の筒状隙間を1.60mmとした。また、実施例4及び比較例1では、上記筒状隙間を1.75mmとした。
【0098】
また、実施例1~4、比較例1~3,5及び参考例では、滑り軸受の周方向の一方の端部におけるベルトが掛けられる前の状態での摺動隙間が0.1mmとなるようにした。そして、滑り軸受の各部分の厚みに応じて、実施例1~4、比較例1~3,5及び参考例では、それぞれ、ベルトが掛けられる前の状態での摺動隙間が、0.075~0.1mm、0.06~0.1mm、0.05~0.1mm、0.07~0.1mm、0.06~0.1mm、0.04~0.1mm、0.075~0.1mm、0.085~0.1mm、0.095~0.1mmであった。
【0099】
なお、比較例4では、表1に示すように厚みの基準寸法を設定して作製した滑り軸受に、ねじり不良が発生した(表1の「外観」が「不良(ねじり)」)。そのため、比較例4については、滑り軸受を用いたプーリ構造体の形成、及び、これを用いた後述する異音の発生の評価を行わなかった。
【0100】
そして、実施例1~4、比較例1~5及び参考例の供試体(プーリ構造体)を用いて図9に示すようなアイドル試験機80を形成し、このアイドル試験機80を作動させて異音の発生の有無の評価を行った。アイドル試験機80は、オルタネータ81と、オルタネータ81の駆動軸Sに取り付けられた供試体(プーリ構造体)1xと、クランクプーリ83と、クランクプーリ83と供試体1xとに巻回されたVリブドベルト84と、クランクプーリ83と同軸に固定されたタイミングプーリ85と、モータ86と、モータ86の駆動軸に連結されたタイミングプーリ87と、タイミングプーリ85,87に巻回されたタイミングベルト88とを含む。また、オルタネータ81、供試体1x、クランクプーリ83及びVリブドベルト84を含む空間を、恒温槽82とし、雰囲気温度を一定に保った。
【0101】
また、上記評価を行ったときには、アイドル試験機80における、クランクプーリ83の回転数が約700rpmであり、オルタネータ81(補機)及び試供体1xの回転数が約1500rpmであった。また、これらの回転数の変動率は10%程度であった。また、オルタネータ81(補機)及び試供体1xの表面温度を約130℃とした(恒温槽82を実車のアイドルリング状態と同じ130℃に保った)。また、実施例、比較例及び参考例では、アイドル試験機80を、約20分間の慣らし運転の後、約3分間運転させて測定を行った。また、このときのベルト張力は300N/本程度であった。
【0102】
実施例1~4、比較例1~5及び参考例について、それぞれ、外回転体の径方向の振動幅、オルタネータ81の振動加速度の最大値、及び、異音の発生の有無の評価を行った。表2はその結果を示している。
【表2】
【0103】
外回転体の径方向の振動幅は、外回転体にベルトが巻き掛けられた状態で、回転軸を中心に滑り軸受が1回転する間の、外回転体の径方向の位置のずれ量のことである。表2で示しているのは、アイドル試験機を作動させない状態で、変位計(ダイヤルゲージ)を用いて測定を行った測定結果である。
【0104】
オルタネータ81の振動加速度については、加速度ピックアップを、オルタネータの外面(径方向内向き)に固定し、測定を行った。このようにしたのは、外回転体が径方向に振動したときには、外回転体の振動がオルタネータ軸を介してプーリ構造体に接続されたオルタネータに伝播することで、オルタネータ本体部を覆うハウジングが共振し、このハウジングがスピーカ代わりとなって異音が発生すると考えられるからである。
【0105】
異音の発生の有無の評価では、聴覚障害のない5名の評価者によって、参考例の場合に発生している音を基準として、それ以外の異音を聞き取ることができたか否かを判定した。具体的には、アイドル試験機を上述したように作動させたときに、オルタネータから後方(プーリ構造体と反対側)に2m離れた位置で、評価者の聴覚によって異音を聞き取ることができたか否かを判定した。
【0106】
そして、5名全員が異音を聞き取れなかった場合に、評価を○とした。また、5名中2名以下(過半数未満)の評価者によって異音が聞き取られた場合には、評価を△とした。また、5名中3名以上(過半数以上)の評価者によって異音が聞き取られた場合には、評価を×とした。なお、この評価では、参考例を基準としているため、参考例については評価結果を示していない。また、表2からわかるように、評価が△となる例はなかった。
【0107】
そして、表2の結果から、実施例1~4では、滑り軸受において、周方向の一方の端部の厚みT1が局所的に大きくなっていても、比較例3、5と比較して、外回転体(オルタネータ)の振動加速度が顕著に小さく、外回転体の振動による異音が発生しにくくなることがわかった。
【0108】
また、実施例1~4では、滑り軸受において、周方向の一方の端部から他方の端部に向かう方向が、外回転体及び内回転体の回転方向と同じ方向となる向きで組み付けられており、厚みの基準寸法が周方向の一方の端部から他方の端部に向かうほど(外回転体及び内回転体の回転方向に向かって)徐々に大きくなるように形成されている。また、実施例1~4では、周方向の他方の端部における厚みT2が、周方向の他方の端部における厚みの基準寸法に等しく(局所的に厚みが大きくなっておらず)、且つ、周方向の一方の端部の厚みT1以上になるように形成されている。これに対して、比較例3では、滑り軸受において、周方向の一方の端部から他方の端部に向かう方向が外回転体及び内回転体の回転方向と逆になる向きとなっている。また、比較例5では、滑り軸受において厚みの基準寸法が周方向の位置によらず一定である。
【0109】
したがって、実施例1~4と比較例3、5とを比較すれば、(a)滑り軸受において、周方向の一方の端部から他方の端部に向かう方向が、外回転体及び内回転体の回転方向と同じとなる向きで組み付けられており、厚みの基準寸法が周方向の一方の端部から他方の端部に向かうほど(外回転体及び内回転体の回転方向に向かって)徐々に大きくなるように形成されていること、及び、(b)滑り軸受において、周方向の他方の端部における厚みT2が、周方向の他方の端部における厚みの基準寸法に等しく(局所的に厚みが大きくなっておらず)、且つ、周方向の一方の端部の厚みT1以上になるように形成されていることが、上記のような外回転体の振動による異音が発生しにくくなるという結果が得られる要因であることがわかる。
【0110】
また、この結果は、実施例1~4のプーリ構造体においては、外回転体の径方向の振動幅が、比較例3、5のプーリ構造体と同等以上であるにも関わらず、滑り軸受が、周方向の他方の端部において外回転体のベルトから力が加えられる部分と対向する位置から移動したときに、外回転体が径方向の内側に瞬間的に移動することなく、外回転体が滑り軸受の外周面に接触したまま、径方向の内側に緩やかに移動していることを裏付けるものとなる。
【0111】
また、実施例1~4と比較例2及び参考例とを比較することにより、滑り軸受において、周方向の他方の端部における厚みT2と、周方向の一方の端部における厚みT1との差[T2-T1]が大きくなるほど、オルタネータの振動加速度が高くなっていることがわかる。このことから、周方向の他方の端部と周方向の一方の端部との間に生じた、厚みの差[T2-T1]によって生じる段差が大きくなるほど、オルタネータの共振によって異音が発生しやすくなることが確認できた。
【0112】
また、滑り軸受が、周方向の一方の端部において外回転体のベルトから力が加えられる部分と対向する位置から、周方向の他方の端部において外回転体のベルトから力が加えられる部分と対向する位置に移動する毎に(周期的に)、外回転体と内回転体のベルトから力を加えられる部分の隙間が滑り軸受によって広げられて、外回転体が径方向の外側に移動することによる外回転体又は内回転体が振動して異音が発生する。これに対して、実施例1~4の結果から、滑り軸受において、周方向の他方の端部における厚みT2が、T1以上[T1+0.07mm]以下の範囲内、つまり[T2-T1]の大きさが0mm以上0.07mm以下であれば、上記振動による異音の発生を、問題にならない水準に抑えることができることがわかった。
【0113】
特に、実施例1のように、上記[T2-T1]の大きさが、参考例(研磨加工後、滑り軸受において局所的に厚い部分なし)と同程度に小さくなるように滑り軸受が形成されていれば、外回転体又は内回転体の振動による異音の発生を問題にならない水準に確実に抑えることができることがわかった。
【0114】
また、比較例4の結果から、滑り軸受の厚みの基準寸法が1.40mmを下回ると、作製された滑り軸受が単体の自由状態で変形(反りやねじれ等)が生じ易くなり、プーリ構造体を構成する滑り軸受として使用できなくなる虞があることがわかった。
【0115】
なお、周方向の他方の端部のおける局部的に厚い部分に対し施す研磨加工を不要とすることによって製造コストを抑える観点では、滑り軸受における厚みの基準寸法を、実施例4のように1.5mmを上回る範囲を含むようにするよりも、実施例1~3のように1.40mm以上1.50mm以下の範囲内とすることが好ましいことがわかった。
【0116】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲記載の限りにおいて様々な変更が可能である。
【0117】
上述の実施形態では、滑り軸受6の厚みの基準寸法を1.4mm以上1.5mm以下とした。また、滑り軸受6の作製に使用するキャビティを、滑り軸受6の厚みの基準寸法が1.4mm以上1.5mm以下となるようなものとした。しかしながら、これには限られない。作製される滑り軸受において、周方向の一方の端部において厚みが局所的に大きくなり、且つ、周方向の他方の端部の厚みが局所的に大きくならない範囲であれば、滑り軸受6の厚みの基準寸法を1.5mmよりも大きくしてもよい。また、これに対応して、滑り軸受6の作製に使用するキャビティを、滑り軸受6の厚みの基準寸法が1.5mmよりも大きくなるようなものとしてもよい。
【0118】
また、上述の実施形態では、滑り軸受6の外周面6bは、周方向の一方の端部から他方の端部に向かうほど徐々に曲率半径が大きくなっており、滑り軸受6の内周面6aは、周方向の全周にわたって曲率半径が一定であったが、これには限られない。
【0119】
例えば、滑り軸受の外周面の曲率半径が、周方向の全周にわたって一定であり、滑り軸受の内周面の曲率半径が、周方向の一方の端部から他方の端部に向かうほど徐々に小さくなっていてもよい。また、この場合、滑り軸受が縮径された状態で、自身の自己弾性復元力によって外周面が外回転体に密着していてもよい(図10参照)。
【0120】
また、これに対応して、滑り軸受の作製に使用する金型において、キャビティの径方向の外側の内壁面の曲率半径が、周方向の全周にわたって一定であり、キャビティの径方向の内側の内壁面の曲率半径が、周方向の一方の端部から他方の端部に向かうほど徐々に小さくなっていてもよい。
【0121】
あるいは、滑り軸受の外周面の曲率半径が、周方向の一方の端部から他方の端部に向かうほど徐々に大きくなっているとともに、滑り軸受の内周面の曲率半径が、周方向の一方の端部から他方の端部に向かうほど徐々に小さくなっていてもよい。また、これに対応して、滑り軸受の作製に使用する金型において、キャビティの径方向の外側の内壁面の曲率半径が、周方向の一方の端部から他方の端部に向かうほど徐々に大きくなっているとともに、キャビティの径方向の内側の内壁面の曲率半径が、周方向の一方の端部から他方の端部に向かうほど徐々に小さくなっていてもよい。
【0122】
あるいは、滑り軸受の外周面及び内周面の曲率半径が、周方向の一方の端部から他方の端部に向かうほど徐々に大きくなっており、且つ、外周面において内周面よりも、周方向の一方の端部から他方の端部に向かうときの曲率半径の変化の割合が大きくなっていてもよい。また、これに対応して、滑り軸受の作製に使用する金型において、キャビティの径方向の外側及び内側の内壁面の曲率半径が、周方向の一方の端部から他方の端部に向かうほど徐々に大きくなっているとともに、キャビティの径方向の外側の内壁面において内側の内壁面よりも、周方向の一方の端部から他方の端部に向かうときの曲率半径の変化の割合が大きくなっていてもよい。
【0123】
あるいは、滑り軸受の外周面及び内周面の曲率半径が、周方向の一方の端部から他方の端部に向かうほど徐々に小さくなっており、且つ、内周面において外周面よりも、周方向の一方の端部から他方の端部に向かうときの曲率半径の変化の割合が大きくなっていてもよい。また、これに対応して、滑り軸受の作製に使用する金型において、キャビティの径方向の外側及び内側の内壁面の曲率半径が、周方向の一方の端部から他方の端部に向かうほど徐々に小さくなっているとともに、キャビティの径方向の内側の内壁面において外側の内壁面よりも、周方向の一方の端部から他方の端部に向かうときの曲率半径の変化の割合が大きくなっていてもよい。
【0124】
これらの場合でも、滑り軸受の周方向の一方の端部から他方の端部に向かうほど、滑り軸受の厚みの基準寸法が徐々に大きくなる。
【0125】
また、滑り軸受は、拡径された状態で内周面が内回転体に密着している、あるいは、縮径された状態で外周面が外回転体に密着していることにも限られない。滑り軸受は、拡径及び縮径のいずれもされていない状態で、外回転体と内回転体との間に配置されていてもよい。
【0126】
また、上述の実施形態では、滑り軸受6の周方向の両端部の間に隙間があったが、これには限られない。滑り軸受の軸方向の両端部が互いに接触しており、滑り軸受の周方向の両端部の間の隙間がほとんどなくてもよい。
【0127】
また、プーリ構造体において、ねじりコイルばねを含むコイルスプリング式のクラッチとは別の構成のクラッチによって、外回転体と内回転体との間でトルクを伝達又は遮断するように構成されていてもよい。さらには、プーリ構造体は、外回転体と内回転体との間でトルクを伝達又は遮断するクラッチが設けられていないものであってもよい。すなわち、プーリ構造体において、外回転体と内回転体との間で常にトルクが伝達されるようになっていてもよいし、外回転体と内回転体との間で常にトルクが遮断されるようになっていてもよい。
【符号の説明】
【0128】
1 プーリ構造体
2 外回転体
3 内回転体
6a 内周面
6b 外周面
6 滑り軸受
7 転がり軸受
50 射出成形機
51 型板
51a キャビティ
51a1、51a2 内壁面
B ベルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10