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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】曲げ加工機、及び曲げ加工方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 5/02 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
B21D5/02 K
B21D5/02 R
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022125542
(22)【出願日】2022-08-05
(65)【公開番号】P2023025688
(43)【公開日】2023-02-22
【審査請求日】2024-02-14
(31)【優先権主張番号】P 2021130572
(32)【優先日】2021-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】松本 哲典
(72)【発明者】
【氏名】松本 健慈
(72)【発明者】
【氏名】大島 凌
【審査官】飯田 義久
(56)【参考文献】
【文献】特開平4-367321(JP,A)
【文献】特開2014-4623(JP,A)
【文献】特開2012-143804(JP,A)
【文献】特開昭50-158558(JP,A)
【文献】特開2020-78830(JP,A)
【文献】特開2013-180340(JP,A)
【文献】特開2005-230881(JP,A)
【文献】特開平10-128450(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1金型が左右方向に沿って取り付けられる可動テーブルと、前記可動テーブルに対して上下方向に対向して配置されて、第2金型が左右方向に沿って取り付けられる固定テーブルとを備え、
前記可動テーブルを上下方向に移動させて前記第1金型と前記第2金型との間でワークを加圧することにより、前記ワークの曲げ加工を行う曲げ加工機において、
前記可動テーブルを上下方向に移動させるとともに、前記可動テーブルの左右の傾きである傾斜状態を調整自在な昇降機構と、
前記固定テーブルの一部を湾曲させるクラウニング機構と、
前記昇降機構と、前記クラウニング機構とを制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記可動テーブルの傾斜状態を設定するとともに、前記可動テーブルの傾斜状態に沿うように前記固定テーブルの湾曲状態を設定して、前記第1金型及び前記第2金型の左右方向の全域を用いて前記ワークを加圧する加圧範囲よりも限定された加圧範囲を加圧する部分曲げを行い、
前記制御装置は、
前記可動テーブルの傾斜状態と前記固定テーブルの湾曲状態との組み合わせを切り替えて、前記限定された加圧範囲を遷移させながら前記部分曲げを繰り返すことで、左右方向の全域に亘って前記ワークを加圧する全域曲げを行う
曲げ加工機。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記全域曲げを複数回繰り返して、目標曲げ角度まで前記ワークを段階的に折り曲げる
請求項1記載の曲げ加工機。
【請求項3】
前記昇降機構は、前記可動テーブルが前記固定テーブルから所定距離だけ離れた上死点から、前記可動テーブルが前記固定テーブルに対して最も接近する下死点までの範囲で前記可動テーブルを移動可能であり、
前記制御装置は、
前記部分曲げを行う場合、前記可動テーブルが前記下死点に到達するよりも前に、前記可動テーブルの傾斜状態を設定する
請求項1又は2記載の曲げ加工機。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記部分曲げを行った後、前記ワークのスプリングバックによって前記第1金型と前記ワークとが接触している範囲内において前記可動テーブルを前記上死点側へと移動させ、その後に前記可動テーブルの傾斜状態と前記固定テーブルの湾曲状態との組み合わせを切り替える
請求項3記載の曲げ加工機。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記限定された加圧範囲で前記ワークを加圧したときの傾斜状態を維持したままで、前記可動テーブルを前記上死点側へと移動させる
請求項4記載の曲げ加工機。
【請求項6】
前記制御装置は、
前記可動テーブルが、前記可動テーブルの左側が前記可動テーブルの右側よりも前記固定テーブルに近くづくような傾斜状態である場合、前記固定テーブルの左側を上方に湾曲させる
請求項1又は2記載の曲げ加工機。
【請求項7】
前記制御装置は、
前記可動テーブルが、前記可動テーブルの右側が前記可動テーブルの左側よりも前記固定テーブルに近くづくような傾斜状態である場合、前記固定テーブルの右側を上方に湾曲させる
請求項1又は2記載の曲げ加工機。
【請求項8】
前記制御装置は、
前記可動テーブルが、前記可動テーブルの左右が水平となるような傾斜状態である場合、前記固定テーブルの中央を上方に湾曲させる
請求項1又は2記載の曲げ加工機。
【請求項9】
前記昇降機構は、前記可動テーブルの左右端部に設けられて互いに独立して制御可能な左右の昇降ユニットから構成され、
前記クラウニング機構は、前記固定テーブルの左右方向の中心位置を基準に左右対称に設けられて互いに独立して制御可能な左右のクラウニングユニットから構成されている
請求項1又は2記載の曲げ加工機。
【請求項10】
前記ワークを左側、中央、右側の3つの加圧範囲に分けて加圧する場合、
前記制御装置は、各加圧範囲の境界に位置する4つの角度測定点で得られる曲げ角度に基づいて、左右の昇降ユニットの出力及び左右のクラウニングユニットの出力を補正する
請求項9記載の曲げ加工機。
【請求項11】
第1金型が左右方向に沿って取り付けられる可動テーブルと、前記可動テーブルに対して上下方向に対向して配置されて、第2金型が左右方向に沿って取り付けられる固定テーブルとを備え、
前記可動テーブルを上下方向に移動させて前記第1金型と前記第2金型との間でワークを加圧することにより、前記ワークの曲げ加工を行う曲げ加工機において、
前記可動テーブルを上下方向に移動させる昇降機構と、
前記固定テーブルの左右の傾きである傾斜状態を調整自在な傾斜機構と、
前記可動テーブルの一部を湾曲させるクラウニング機構と、
前記昇降機構と、前記傾斜機構と、前記クラウニング機構とを制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記固定テーブルの傾斜状態を設定するとともに、前記固定テーブルの傾斜状態に沿うように前記可動テーブルの湾曲状態を設定して、前記第1金型及び前記第2金型の左右方向の全域を用いて前記ワークを加圧するときの加圧範囲よりも限定された加圧範囲を加圧する部分曲げを行い、
前記制御装置は、
前記固定テーブルの傾斜状態と前記可動テーブルの湾曲状態との組み合わせを切り替えて、前記限定された加圧範囲を遷移させながら前記部分曲げを繰り返すことで、左右方向の全域に亘って前記ワークを加圧する全域曲げを行う
曲げ加工機。
【請求項12】
第1金型が左右方向に沿って取り付けられる可動テーブルと、前記可動テーブルに対して上下方向に対向して配置されて、第2金型が左右方向に沿って取り付けられる固定テーブルとを備える曲げ加工機が、前記可動テーブルを上下方向に移動させて前記第1金型と前記第2金型との間でワークを加圧することにより、前記ワークの曲げ加工を行う曲げ加工方法において、
前記可動テーブルの傾斜状態を設定し、
前記可動テーブルの傾斜状態に沿うように前記固定テーブルの湾曲状態を設定し、
前記第1金型及び前記第2金型の左右方向の全域を用いて前記ワークを加圧するときの加圧範囲よりも限定された加圧範囲を加圧する部分曲げを行い、
前記可動テーブルの傾斜状態と前記固定テーブルの湾曲状態との組み合わせを切り替えて、前記限定された加圧範囲を遷移させながら前記部分曲げを繰り返すことで、左右方向の全域に亘って前記ワークを加圧する全域曲げを行う
曲げ加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曲げ加工機、及び曲げ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上部テーブルを下部テーブルに対して相対的に移動させて上型と下型との間でワークを加圧することにより、板状のワークに曲げ加工を行う曲げ加工機が知られている。曲げ加工を行う場合、上型と下型とに挟まれたワークを介して、上部テーブルと下部テーブルとに加圧反力が作用する。この加圧反力によって上部テーブルと下部テーブルとに撓み変形が発生することで、ワークの通り精度が低下する。ここで、通り精度とは、ワークの曲げ線に沿う方向におけるワークの曲げ角度の精度をいう。
【0003】
例えば特許文献1には、上部テーブルを昇降させる左右の昇降機構の他に、下部テーブルの中央に下部テーブルの撓みを補正するクラウニング機構を有する曲げ加工機が提案されている。この曲げ加工機によれば、クラウニング機構によって下部テーブルの中央部を上側に向けて凸形状に湾曲させて下部テーブルの撓みを相殺することで、ワークの通り精度を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平5-329549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、テーブルの全域に亘るような長い曲げ線を有するワークへの曲げ加工など、曲げ加工の態様によっては、ワークの左右方向の全域に亘って十分な通り精度が得られないことがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の曲げ加工機は、第1金型が左右方向に沿って取り付けられる可動テーブルと、可動テーブルに対して上下方向に対向して配置されて、第2金型が左右方向に沿って取り付けられる固定テーブルとを備え、可動テーブルを上下方向に移動させて第1金型と第2金型との間でワークを加圧することにより、ワークの曲げ加工を行う曲げ加工機であって、可動テーブルを上下方向に移動させるとともに、可動テーブルの左右の傾きである傾斜状態を調整自在な昇降機構と、固定テーブルの一部を湾曲させるクラウニング機構と、昇降機構とクラウニング機構とを制御する制御装置と、備え、制御装置は、可動テーブルの傾斜状態を設定するとともに、可動テーブルの傾斜状態に沿うように固定テーブルの湾曲状態を設定して、第1金型及び第2金型の左右方向の全域を用いてワークを加圧する加圧範囲よりも限定された加圧範囲を加圧する部分曲げを行う。また、制御装置は、可動テーブルの傾斜状態と固定テーブルの湾曲状態との組み合わせを切り替えて、限定された加圧範囲を遷移させながら部分曲げを繰り返すことで、左右方向の全域に亘ってワークを加圧する全域曲げを行う。
【0007】
この構成によれば、ワークの曲げ線の全域を一度に加圧せず、限定された加圧範囲について加圧を行っている。このとき、加圧範囲に応じて、可動テーブルを傾斜させ、且つ、この傾斜状態に沿うように固定テーブルを湾曲させることで、その加圧範囲におけるテーブルの撓みを抑制することができる。加圧範囲におけるテーブルの撓みが抑制されるので、加圧時における、第1金型の先端部と第2金型の先端部との間の距離を一定に保つことができる。その結果、金型で加圧された加圧範囲の全域における曲げ角度を揃えることができる。加えて、部分曲げを繰り返して加圧範囲を遷移させることで、左右方向の全域に亘ってワークを加圧することができる。このとき、部分曲げを行った個々の加圧範囲では曲げ角度が保証されているので、全域曲げにより、ワークの左右方向の全域における曲げ角度を揃えることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、ワークの左右方向の全域に亘って十分な通り精度を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態に係る曲げ加工機の構成を模式的に示す説明図である。
図2図2は、曲げ加工機による曲げ加工動作の第1工程を示す説明図である。
図3図3は、曲げ加工機による曲げ加工動作の第2工程を示す説明図である。
図4図4は、曲げ加工機による曲げ加工動作の第3工程を示す説明図である。
図5図5は、曲げ加工機による曲げ加工動作の第4工程を示す説明図である。
図6図6は、曲げ加工機による曲げ加工動作の第5工程を示す説明図である。
図7図7は、曲げ加工機による曲げ加工動作の第6工程を示す説明図である。
図8図8は、曲げ加工機による曲げ加工動作の第7工程を示す説明図である。
図9図9は、曲げ加工機による曲げ加工動作の第8工程を示す説明図である。
図10図10は、曲げ加工機による曲げ加工動作の第9工程を示す説明図である。
図11図11は、曲げ加工機による曲げ加工動作の第10工程を示す説明図である。
図12図12は、曲げ加工機による曲げ加工動作の第11工程を示す説明図である。
図13図13は、ワークにおける角度測定点を示す説明図である。
図14図14は、角度測定結果を入力する入力画面を示す図である。
図15図15は、加工対象となるワークの一例を示す説明図である。
図16図16は、左右交互にワークを加圧する動作を示す説明図である。
図17図17は、左右交互にワークを加圧する動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照し、本実施形態に係る曲げ加工機、及び曲げ加工方法について説明する。
【0011】
図1は、本実施形態に係る曲げ加工機の構成を模式的に示す説明図である。以下の説明では、曲げ加工機を定義するために、左右方向X、前後方向Y、及び上下方向Zを用いる。左右方向X及び前後方向Yは、水平方向において直交する2つの方向に対応し、上下方向Zは鉛直方向に対応する。ただし、これらの方向は、本実施形態において曲げ加工機を説明するために、便宜的に用いられるに過ぎない。
【0012】
本実施形態に係る曲げ加工機1は、上型8(第1金型の一例)が左右方向Xに沿って取り付けられる上部テーブル7(可動テーブルの一例)と、上部テーブル7に対して上下方向Zに対向して配置されて、下型6が左右方向Xに沿って取り付けられる下部テーブル5(固定テーブルの一例)とを備える。曲げ加工機1は、上部テーブル7を上下方向Zに移動させて上型8と下型6との間でワークを加圧することにより、ワークの曲げ加工を行う。
【0013】
曲げ加工機1は、上部テーブル7を上下方向Zに移動させるとともに、上部テーブル7の左右の傾きである傾斜状態を調整自在な油圧シリンダ9L、9R(昇降機構の一例)と、下部テーブル5の一部を湾曲させる偏心軸ユニット19L、19R(クラウニング機構の一例)と、油圧シリンダ9L、9Rと偏心軸ユニット19L、19Rとを制御する制御装置30と、を備えている。制御装置30は、上部テーブル7の傾斜状態を設定するとともに、上部テーブル7の傾斜状態に沿うように下部テーブル5の湾曲状態を設定して、上型8及び下型6の左右方向Xの全域を用いてワークを加圧するときの加圧範囲よりも限定された加圧範囲を加圧する部分曲げを行う。制御装置30は、上部テーブル7の傾斜状態と下部テーブル5の湾曲状態との組み合わせを切り替えて、限定された加圧範囲を遷移させながら部分曲げを繰り返すことで、左右方向Xの全域に亘ってワークWを加圧する全域曲げを行う。
【0014】
以下、曲げ加工機1の詳細な構成を説明する。曲げ加工機1は、例えば板金といった板状のワークに対して曲げ加工を行う加工機である。曲げ加工機1は、例えばプレスブレーキであり、パンチなどの上型8と、ダイなどの下型6との協働によりワークに対して曲げ加工を行う。
【0015】
曲げ加工機1は、下部テーブル5と、上部テーブル7と、左右の油圧シリンダ9L、9Rと、左右の偏心軸ユニット19L、19Rと、制御装置30とを備えている。
【0016】
曲げ加工機1は、左右方向Xに離隔して設けられた左右のサイドフレーム3L、3Rを有している。上部テーブル7は、左右方向Xに延在しており、サイドフレーム3L、3Rの前側上部に支持されている。上部テーブル7は、上下方向Zに移動可能に構成されている。下部テーブル5は、左右方向Xに延在しており、サイドフレーム3L、3Rの前側下部に支持されている。
【0017】
上部テーブル7の下側には、上型8を着脱可能に保持する上型ホルダが設けられている。上型ホルダには、上型8の基部を挿入するためのホルダ溝が左右方向Xに沿って形成されている。上型ホルダは、上型8を上部テーブル7に対して固定するクランプ機構を有している。
【0018】
下部テーブル5の上側には、下型6を着脱可能に保持する下型ホルダが設けられている。下型ホルダには、下型6の基部を挿入するためのホルダ溝が左右方向Xに沿って形成されている。下型ホルダは、下型6を下部テーブル5に対して固定するクランプ機構を有している。
【0019】
左右の油圧シリンダ9L、9Rは、サイドフレーム3L、3Rの左右の上部にそれぞれ設けられている。左右の油圧シリンダ9L、9Rは、上部テーブル7を上下方向Zへ移動させる昇降機構として機能する。左右の油圧シリンダ9L、9Rは、それぞれ独立して制御することが可能である。左右の油圧シリンダ9L、9Rを独立して制御することで、上部テーブル7の左右の傾きである傾斜状態を調整することができる。なお、昇降機構は、左右に配置した油圧シリンダ9L、9Rを用いる構成に限らず、左右に配置した電動モータなどで構成してもよい。
【0020】
上部テーブル7の傾斜状態には、左下がりの傾斜状態、及び右下がりの傾斜状態が含まれる。左下がりの傾斜状態は、上部テーブル7の左側がその右側よりも下部テーブル5に近くづくような傾斜状態、本実施形態では、上部テーブル7の左側がその右側よりも下方に傾斜した傾斜状態をいう。一方、右下がりの傾斜状態は、上部テーブル7の右側がその左側よりも下部テーブル5に近くづくような傾斜状態、本実施形態では、上部テーブル7の右側がその左側よりも下方に傾斜した傾斜状態をいう。なお、左下がりの傾斜状態とは、上部テーブル7の左側がその右側よりも下方に傾斜していればよく、水平に対する上部テーブル7の傾斜度合い(角度)は、上部テーブル7の可動範囲の中で任意に設定できるものとする。このことは、右下がりの傾斜状態であっても同様である。
【0021】
また、上部テーブル7の傾斜状態には、左右のいずれか一方に傾斜している状態のみならず、上部テーブル7の基本姿勢も含まれる。上部テーブル7の基本姿勢とは、上部テーブル7の左側の高さとその右側の高さが同じで、上部テーブル7が左右水平となっている状態をいう。
【0022】
下部テーブル5の前側及び後側には前板11及び後板13がそれぞれ設けられている。前板11及び後板13は、前後方向Yに貫通した左右の枢軸15L、15Rを介して、下部テーブル5に対して一体的に取り付けられている。
【0023】
下部テーブル5の左右方向Xの中心位置を基準とする左右の対称位置には、前板11、下部テーブル5及び後板13を前後方向Yに貫通する、左右の貫通穴17L、17Rが設けられている。左右の貫通穴17L、17Rの内部には、左右の偏心軸ユニット19L、19Rが設けられている。左側の偏心軸ユニット19Lは、左右方向Xで見たときに、左側の油圧シリンダ9Lよりも下部テーブル5の中心位置に近い位置に配置される。同様に、右側の偏心軸ユニット19Rは、左右方向Xで見たときに、右側の油圧シリンダ9Rよりも下部テーブル5の中心位置に近い位置に配置される。
【0024】
偏心軸ユニット19L、19Rは、前板11及び後板13に固定されている。偏心軸ユニット19L、19Rは、偏心軸を回転させることで、前板11及び後板13に対して下部テーブル5を上方向に押圧することができる。偏心軸ユニット19L、19Rは、下部テーブル5を上方向に押圧することで、下部テーブル5の一部を上方向へ凸状に湾曲させるクラウニング機構として機能する。なお、クラウニング機構は、左右に配置した偏心軸ユニット19L、19Rを用いる構成に限らず、左右に配置した油圧シリンダなどで構成してもよい。
【0025】
左右の偏心軸ユニット19L、19Rは、独立して制御することができる。左右の偏心軸ユニット19L、19Rを独立して制御することで、下部テーブル5の湾曲状態を調整することができる。湾曲状態の調整には、左側、中央、右側といった下部テーブル5を湾曲させる位置、湾曲の形状、湾曲の程度などを調整することが含まれる。すなわち、左右の偏心軸ユニット19L、19Rを独立制御することで、下部テーブル5の湾曲形状を左右対称の形状としたり、左右非対称の形状としたりすることができる。
【0026】
制御装置30は、例えば数値制御装置(NC(Numerical Control:数値制御)装置)などのコンピュータである。コンピュータは、CPU(Central Processing Unit:中央処理装置)などのハードウェアプロセッサと、メモリと、各種のインターフェースとを主体に構成されている。メモリ、各種のインターフェースは、バスを介してハードウェアプロセッサに接続されている。コンピュータには、所定のコンピュータプログラムがインストールされている。ハードウェアプロセッサがコンピュータプログラムを実行することにより、コンピュータは、制御装置30が備える機能を実行する。
【0027】
制御装置30は、曲げ加工機1の動作を制御する。具体的には、制御装置30は、左右の油圧シリンダ9L、9Rと、左右の偏心軸ユニット19L、19Rとを制御する。制御装置30は、左右の油圧シリンダ9L、9R及び左右の偏心軸ユニット19L、19Rを制御することで、上部テーブル7の上下方向Zの移動、上部テーブル7の傾斜状態、下部テーブル5の湾曲状態を制御することができる。
【0028】
このような構成の曲げ加工機1では、下部テーブル5に装着した下型6上に板状のワークが位置決めされる。制御装置30は、上部テーブル7を下部テーブル5に向かって下降させる。これにより、上型8と下型6との間でワークが加圧され、上型8と下型6との協働によってワークが所望の目標曲げ角度で折り曲げられる。
【0029】
本実施形態の特徴の一つとして、制御装置30は、上部テーブル7の傾斜状態を設定するとともに、上部テーブル7の傾斜状態に沿うように下部テーブル5の湾曲状態を設定する。そして、制御装置30は、上型8及び下型6の左右方向Xの全域を用いてワークを加圧するときの加圧範囲よりも限定された加圧範囲を加圧する部分曲げを行う。
【0030】
また、制御装置30は、上部テーブル7の傾斜状態と下部テーブル5の湾曲状態との組み合わせを切り替えて、限定された加圧範囲を遷移させながら部分曲げを繰り返すことで左右方向Xの全域に亘ってワークWを加圧する全域曲げを行う。そして、制御装置30は、全域曲げを複数回繰り返して、目標曲げ角度に到達するまでワークを段階的に折り曲げる。
【0031】
以下、本実施形態に係る曲げ加工方法、すなわち、曲げ加工機1による曲げ加工動作を説明する。
【0032】
図2は、曲げ加工機による曲げ加工動作の第1工程を示す説明図である。曲げ加工動作の開始時、上部テーブル7は上死点Htに位置しており、その傾斜状態は左右水平に設定されている。左右の油圧シリンダ9L、9Rは、上死点Htから下死点Hbまでの範囲で上部テーブル7を上下方向Zに沿って移動することができる。上死点Htは、上部テーブル7が下部テーブル5から所定距離だけ離れた点であり、下死点Hbは、上部テーブル7が下部テーブル5に対して最も接近する点である。
【0033】
図2に示すように、制御装置30は、水平な傾斜状態を維持したまま上部テーブル7を下方へと移動させる。
【0034】
図3は、曲げ加工機による曲げ加工動作の第2工程を示す説明図である。制御装置30は、上部テーブル7が基準位置H1へと到達すると、上部テーブル7を左下りの傾斜状態へと設定する。上部テーブル7を左下りの傾斜状態へと切り替える手法としては、例えば、左側の油圧シリンダ9Lを下降させて、右側の油圧シリンダ9Rを上昇させるといった如くである。
【0035】
基準位置H1は、上部テーブル7が下死点Hbへと到達するよりも前に、上部テーブル7の傾斜状態を設定するとの観点から、下死点Hbよりも上側となる位置に設定されている。基準位置H1としては、(1)上部テーブル7の下降速度を切り替える速度切替位置、(2)上型8の先端部がワークWに突き当たる位置(いわゆる、ピンチングポイント)、(3)上型8と下型6との間でワークWが加圧されて、ワークWの曲げ角度が所定の参照角度へと到達する位置、などが挙げられる。ここで、参照角度は、ワークWが所定量だけ曲げられたことを判断するための角度であり、目標曲げ角度よりも大きな角度をとして設定されている。
【0036】
図4は、曲げ加工機による曲げ加工動作の第3工程を示す説明図である。制御装置30は、左下がりの傾斜状態を維持したまま上部テーブル7を下降させ、上部テーブル7と下部テーブル5との間でワークWを加圧する。上部テーブル7は左下りの傾斜状態に設定されているため、上型8の左側の領域がワークWの左側の領域に対して先当たりする。また、上型8の中央及び右側の領域は、ワークWの中央及び右側の領域に対して離間している。このため、ワークWの左側に位置する限定された加圧範囲(以下「左側の加圧範囲」という)Laのみが局所的に加圧される。この左側の加圧範囲Laは、上型8及び下型6の左右方向Xの全域を用いてワークWを加圧する加圧範囲(ワークWにおける左右方向Xの曲げ範囲)よりも狭い範囲となっている。例えば、左側の加圧範囲Laは、ワークWの左右方向Xの全域の長さ(曲げ線の全長)に対して1/3程度の範囲であるとする。
【0037】
図5は、曲げ加工機による曲げ加工動作の第4工程を示す説明図である。上部テーブル7が左下がりで傾斜しているため、左側の加圧範囲Laのうち、左側の領域が右側の領域よりもきつい曲げ角度となってしまう。そこで、制御装置30は、左側の加圧範囲Laの中で曲げ角度のばらつきをなくすために、上部テーブル7の傾斜状態に沿うように下部テーブル5の湾曲状態を設定する。具体的には、制御装置30は、下部テーブル5の左側が上部テーブル7の左下がりの傾斜状態に沿うように、下部テーブル5の湾曲状態を設定する。例えば、制御装置30は、下部テーブル5の中央よりも左側を上側に向かって凸形状に湾曲させる。しかしながら、下部テーブル5の左側が上部テーブル7の左下がりの傾斜状態に沿うのであれば、これに限らない。制御装置30は、左右の偏心軸ユニット19L、19Rの一方又は両方を制御して、下部テーブル5の湾曲状態を設定する。
【0038】
なお、本実施形態では、制御装置30は、上部テーブル7がワークWを加圧した後に、下部テーブル5の湾曲状態を設定している。しかしながら、制御装置30は、上部テーブル7がワークWを加圧する前に、下部テーブル5の湾曲状態を先行して設定してもよい。ただし、下部テーブル5の湾曲状態を先行して設定する場合には、下部テーブル5の湾曲によってワークWの位置ずれが発生する虞がある。そのため、上部テーブル7がワークWを加圧し、ワークWが固定された状態で、下部テーブル5の湾曲状態を設定することが好ましい。
【0039】
図6は、曲げ加工機による曲げ加工動作の第5工程を示す説明図である。上部テーブル7の下降を継続し、上部テーブル7を下死点Hbまで下降させてしまうと、ワークWの左側のみならず、ワークWの左右方向Xの全域が加圧されてしまう。そのため、制御装置30は、ワークWの左右方向Xの全域が加圧されるよりも前に、すなわち、上部テーブル7が下死点Hbに到達するよりも前に、上部テーブル7を上昇させる。これにより、ワークWに作用している圧力を除圧する。
【0040】
制御装置30は、除圧に併せて、下部テーブル5の湾曲状態を解消し、下部テーブル5の左右方向Xの全域が平坦となるように調整する。
【0041】
除圧に伴い上部テーブル7を上昇させる場合、上部テーブル7を大きく上昇させると、ワークWがずれてしまう虞がある。そのため、制御装置30は、ワークWのスプリングバックが終了する位置を上限として、上部テーブル7を上昇させることが好ましい。このような範囲で上部テーブル7を上昇させることで、ワークWと上型8とが接触している状態を保つことができるので、ワークWの位置ずれを抑制することができる。
【0042】
ここで、ワークWのスプリングバックが終了する位置とは、上部テーブル7を上昇させてワークWに対する圧力を徐々に解放していき、その圧力がほぼ0となる位置のことをいう。スプリングバックが終了する位置は、(1)加工条件から計算される既知情報、(2)左右の油圧シリンダ9L、9Rの圧力値、(3)角度センサ等によって得られたワークWの曲げ角度の計測値、などから判断することができる。
【0043】
また、制御装置30は、上部テーブル7を上昇させる場合、加圧時の上部テーブル7の傾斜状態、すなわち、左下がりの傾斜状態を維持したまま平行に上昇させる。上部テーブル7の傾斜状態を維持したまま平行に上昇させることで、左側の加圧範囲Laに作用している荷重を均等に解放することができる。そのため、左側の加圧範囲Laにおける通り精度を向上させることができる。
【0044】
図7は、曲げ加工機による曲げ加工動作の第6工程を示す説明図である。左側の加圧範囲Laへの加圧及び除圧が終了すると、制御装置30は、上部テーブル7を左右水平の傾斜状態へと設定する。左下がりの傾斜状態から左右水平の傾斜状態へと切り替える手法としては、例えば、左側の油圧シリンダ9Lを上昇させて、右側の油圧シリンダ9Rを下降させるといった如くである。
【0045】
図8は、曲げ加工機による曲げ加工動作の第7工程を示す説明図である。制御装置30は、左右水平の傾斜状態を維持したまま上部テーブル7を下降させ、上部テーブル7と下部テーブル5との間でワークWを加圧する。
【0046】
図9は、曲げ加工機による曲げ加工動作の第8工程を示す説明図である。上部テーブル7を単に下降させただけの状態でワークWを加圧すると、ワークWの左右方向Xの全域が加圧されてしまう。そこで、制御装置30は、上部テーブル7の加圧に併せて、ワークWの中央に位置する限定された加圧範囲(以下「中央の加圧範囲」という)Lbが局所的に加圧されるように下部テーブル5の湾曲状態を設定する。具体的には、制御装置30は、下部テーブル5の中央を上側に向かって凸形状に湾曲するように下部テーブル5の湾曲状態を設定する。制御装置30は、左右の偏心軸ユニット19L、19Rの一方又は両方を制御して、下部テーブル5の湾曲状態を設定する。
【0047】
上部テーブル7は左右水平の傾斜状態に設定されているが、下部テーブル5の中央が上方に湾曲している。そのため、上型8の中央の領域が、ワークWの中央の領域に対して先当たりする。また、上型8の左側及び右側の領域は、ワークWの左側及び右側の領域に対して離間している。このため、中央の加圧範囲Lbのみが局所的に加圧される。この中央の加圧範囲Lbは、上型8及び下型6の左右方向Xの全域を用いてワークWを加圧する加圧範囲(ワークWにおける左右方向Xの曲げ範囲)よりも狭い範囲となっている。例えば、限定された加圧範囲Lbは、ワークWの左右方向Xの全域の長さ(曲げ線の全長)に対して1/3程度の範囲であるとする。
【0048】
また、制御装置30は、中央の加圧範囲Lbの中で曲げ角度のばらつきをなくすため、例えば上底が平坦となる台形形状のように、上部テーブル7の傾斜状態と沿うように下部テーブル5の湾曲状態を設定する。
【0049】
図10は、曲げ加工機による曲げ加工動作の第9工程を示す説明図である。上部テーブル7の下降を継続し、上部テーブル7を下死点Hbまで下降させてしまうと、ワークWの中央のみならず、ワークWの左右方向Xの全域が加圧されてしまう。そのため、制御装置30は、ワークWの左右方向Xの全域が加圧されるよりも前に、すなわち、上部テーブル7が下死点Hbに到達するよりも前に、上部テーブル7を上昇させる。これにより、ワークWに作用している圧力を除圧する。上部テーブル7を上昇させて除圧を行う方法は、上述した通りである。
【0050】
制御装置30は、除圧に併せて、下部テーブル5の湾曲状態を解消し、下部テーブル5の左右方向Xの全域が平坦となるように調整する。
【0051】
図11は、曲げ加工機による曲げ加工動作の第10工程を示す説明図である。制御装置30は、上部テーブル7を右下りの傾斜状態へと設定する。上部テーブル7を右下りの傾斜状態へと設定する手法としては、例えば、右側の油圧シリンダ9Rを下降させて、左側の油圧シリンダ9Lを上昇させるといった如くである。
【0052】
図12は、曲げ加工機による曲げ加工動作の第11工程を示す説明図である。制御装置30は、右下がりの傾斜状態を維持したまま上部テーブル7を下降させ、上部テーブル7と下部テーブル5との間でワークWを加圧する。上部テーブル7は右下りの傾斜状態に設定されているため、上型8の右側の領域がワークWの右側の領域に対して先当たりする。また、上型8の左側及び中央の領域は、ワークWの左側及び中央の領域に対して離間している。このため、ワークWの右側に位置する限定された加圧範囲(以下「右側の加圧範囲」という)Lcのみが局所的に加圧される。この右側の加圧範囲Lcは、上型8及び下型6の左右方向Xの全域を用いてワークWを加圧する加圧範囲(ワークWにおける左右方向Xの曲げ範囲)よりも狭い範囲となっている。例えば、右側の加圧範囲Lcは、ワークWの左右方向Xの全域の長さ(曲げ線の全長)に対して1/3程度の範囲であるとする。
【0053】
また、制御装置30は、右側の加圧範囲Lcの中で曲げ角度のばらつきをなくすために、上部テーブル7の傾斜状態に沿うように下部テーブル5の湾曲状態を設定する。具体的には、制御装置30は、限定された加圧範囲Lcに対応する下部テーブル5の右側が上部テーブル7の右下がりの傾斜状態に沿うように、下部テーブル5の湾曲状態を設定する。例えば、制御装置30は、下部テーブル5の中央よりも右側を上側に向かって凸形状に湾曲させる。しかしながら、下部テーブル5の右側が上部テーブル7の右下がりの傾斜状態に沿うのであれば、これに限らない。制御装置30は、左右の偏心軸ユニット19L、19Rの一方又は両方を制御して、下部テーブル5の湾曲状態を設定する。
【0054】
このようにして、制御装置30は、上部テーブル7の傾斜状態と下部テーブル5の湾曲状態との組み合わせを切り替えて、3つの加圧範囲La、Lb、Lcに対して加圧動作(部分曲げ)を繰り返す。これにより、制御装置30は、ワークWの左右方向Xの全域を加圧する全域曲げを行う。
【0055】
制御装置30は、全域曲げを複数回繰り返して、目標曲げ角度に到達するまでワークWを段階的に折り曲げる。そして、ワークWが目標曲げ角度まで折り曲げられると、ワークWに対する曲げ加工を終了する。
【0056】
つぎに、図13及び図14を参照し、各加圧範囲La、Lb、Lcを加圧する際の左右の油圧シリンダ9L、9Rの出力、及び左右の偏心軸ユニット19L、19Rの出力を決定する方法について説明する。図13は、ワークにおける角度測定点を示す説明図である。図14は、角度測定結果を入力する入力画面を示す図である。
【0057】
ここで、左右の油圧シリンダ9L、9Rの出力は、上部テーブル7の押込み量、上部テーブル7の傾斜量に対応する制御パラメータである。上部テーブル7の押込み量とは、ピンチングポイントから、所定の曲げ角度を得るために必要な上部テーブル7の下降量をいう。左右の偏心軸ユニット19L、19Rの出力は、下部テーブル5の湾曲位置、湾曲形状、湾曲の大きさに対応する制御パラメータである。
【0058】
まず、制御装置30は、ワークWの曲げ条件、すなわち板厚、材質、曲げ線の長さなどから、各加圧範囲La、Lb、Lc毎に、左右の油圧シリンダ9L、9Rの出力、及び左右の偏心軸ユニット19L、19Rの出力を暫定的に決定する。
【0059】
作業者は、試し曲げ用のワークWを準備する。制御装置30による制御のもと、加圧範囲La、Lb、Lc毎に、上部テーブル7の傾斜状態と下部テーブル5の湾曲状態との組み合わせを切り替えて、それぞれの加圧範囲La、Lb、Lcに対して加圧動作(部分曲げ)を行う。これにより、ワークWの左右方向Xの全域(曲げ線の全域)を加圧する(全域曲げ)。
【0060】
そして、図13に示すように、各角度測定点M1~M4においてワークWの曲げ角度を測定する。ここで、角度測定点M1は、ワークWの左端の点、すなわち、左側の加圧範囲Laの左端の点である。角度測定点M2は、左側の加圧範囲Laの右端、且つ、中央の加圧範囲Lbの左端の点である。角度測定点M3は、中央の加圧範囲Lbの右端、且つ、左側の加圧範囲Lcの左端の点である。角度測定点M4は、ワークWの右端の点、すなわち、右側の加圧範囲Lcの右端の点である。このように、4つの角度測定点M1~M4は、各加圧範囲La、Lb、Lcの境界に位置している。
【0061】
各角度測定点M1~M4における曲げ角度の測定は、作業者自身が角度センサを利用して手動で行うことができる。また、作業者が操作パネル35(図14参照)に対して所定の操作を行うことで、制御装置30が曲げ加工機1に搭載された角度センサを動作させ、各角度測定点M1~M4における曲げ角度の測定を自動で行ってもよい。
【0062】
作業者自身が手動で曲げ角度を測定した場合、作業者が操作パネルに、各角度測定点M1~M4における曲げ角度の測定値を入力することで、制御装置30はその情報を取得することができる。また、制御装置30が自動で曲げ角度を測定した場合、制御装置30は、角度センサから各角度測定点M1~M4における曲げ角度の測定値を直接取得することができる。
【0063】
このようにして、各角度測定点M1~M4で測定された曲げ角度は制御装置30へと入力される。図14に示すように、制御装置30は、各角度測定点M1~M4における曲げ角度の測定値を、操作パネル35における所定の表示画面36に表示する。この表示画面36には、各角度測定点M1~M4における曲げ角度の測定値を表示するための、4つの表示項目36a~36dが用意されている。
【0064】
制御装置30は、各角度測定点M1~M4で測定された曲げ角度に基づいて、3つの加圧範囲La、Lb、Lc毎に必要な演算を行う。
【0065】
具体的には、制御装置30は、3つの角度測定点M1~M3から得られた曲げ角度を使用して、左側の加圧範囲Laを加圧するときの左右の油圧シリンダ9L、9Rの出力及び左右の偏心軸ユニット19L、19Rの出力を補正する。このとき、制御装置30は、角度測定点M1、M3に基づいて、左右の油圧シリンダ9L、9Rの出力を補正し、角度測定点M2に基づいて、左右の偏心軸ユニット19L、19Rの出力を補正する。
【0066】
同様に、制御装置30は、4つの角度測定点M1~M4から得られた曲げ角度を使用して、中央の加圧範囲Lbを加圧するときの左右の油圧シリンダ9L、9Rの出力及び左右の偏心軸ユニット19L、19Rの出力を補正する。このとき、制御装置30は、角度測定点M1に基づいて、左側の油圧シリンダ9Lの出力を補正し、角度測定点M4に基づいて、右側の油圧シリンダ9Rを補正する。制御装置30は、角度測定点M2に基づいて、左側の偏心軸ユニット19Lの出力を補正し、角度測定点M3に基づいて、右側の偏心軸ユニット19Rの出力を補正する。
【0067】
加えて、制御装置30は、角度測定点M2~M4における3つの曲げ角度を使用して、右側の加圧範囲Lcを加圧するときの左右の油圧シリンダ9L、9Rの出力及び左右の偏心軸ユニット19L、19Rの出力を補正する。このとき、制御装置30は、角度測定点M2、M4に基づいて、左右の油圧シリンダ9L、9Rの出力を補正し、角度測定点M3に基づいて、左右の偏心軸ユニット19L、19Rの出力を補正する。
【0068】
このようにして補正が実施されると、制御装置30は、補正された出力に従って、左右の油圧シリンダ9L、9R及び左右の偏心軸ユニット19L、19Rを制御する。これにより、適切な出力のもとでワークWを加圧することができる。
【0069】
なお、上述の説明では、角度測定に先立ち、試し曲げ用のワークWについて、3つの加圧範囲La、Lb、Lcに対して加圧動作(部分曲げ)を繰り返し、これにより、ワークWの左右方向Xの全域を加圧した(全域曲げ)。しかしながら、上部テーブル7が左右水平の傾斜状態のままでワークWの全域を一度に加圧して、そのときのワークWの曲げ角度を測定してもよい。
【0070】
以上説明したように、本実施形態の曲げ加工機1において、制御装置30は、上部テーブル7の傾斜状態を設定するとともに、上部テーブル7の傾斜状態に沿うように下部テーブル5の湾曲状態を設定して、上型8及び下型6の左右方向Xの全域を用いてワークWを加圧する加圧範囲よりも限定された加圧範囲La、Lb、Lcを加圧する部分曲げを行っている。そして、制御装置30は、上部テーブル7の傾斜状態と下部テーブル5の湾曲状態との組み合わせを切り替えて、限定された加圧範囲La、Lb、Lcを遷移させながら部分曲げを繰り返すことで、左右方向Xの全域に亘ってワークWを加圧する全域曲げを行っている。
【0071】
本実施形態の曲げ加工機1によれば、次に示すような第1の効果を奏する。すなわち、本実施形態の曲げ加工機1によれば、ワークW(ワークWの曲げ線)の全域を一度に加圧せず、限定された加圧範囲La、Lb、Lcについて加圧を行っている。このとき、加圧範囲La、Lb、Lcに応じて、上部テーブル7を傾斜させ、且つ、この傾斜状態に沿うように下部テーブル5を湾曲させることで、その加圧範囲La、Lb、Lcにおけるテーブルの撓みを抑制することができる。加圧範囲La、Lb、Lcにおけるテーブルの撓みが抑制されるので、加圧時における、上型8の下端部と下型6の上端部との間の距離を一定に保つことができる。その結果、上型8と下型6とで加圧された加圧範囲La、Lb、Lcの全域における曲げ角度を揃えることができるので、加圧範囲La、Lb、Lcにおいて通り精度を向上させることができる。
【0072】
例えば、加圧範囲La、Lb、Lc毎に上部テーブル7の傾斜状態を切り替えたとしても、下部テーブル5の湾曲状態が固定されている場合には、上部テーブル7の傾斜状態に対して下部テーブル5の湾曲状態が一致しない場合がある。同様に、加圧範囲La、Lb、Lc毎に下部テーブル5の湾曲状態を切り替えたとしても、上部テーブル7の傾斜状態が固定されている場合には、上部テーブル7の傾斜状態に対して下部テーブル5の湾曲状態が一致しない場合がある。この場合には、上型8の下端部と下型6の上端部との間の距離にばらつきが生じてしまう。したがって、本実施形態で示すように、加圧範囲La、Lb、Lcに応じて、上部テーブルの傾斜状態と、その傾斜状態に沿うような下部テーブル5の湾曲状態とを設定することが肝要となる。
【0073】
また、部分曲げを繰り返して加圧範囲La、Lb、Lcを遷移させることで、左右方向Xの全域に亘ってワークWを加圧することができる。このとき、部分曲げを行った個々の加圧範囲La、Lb、Lcで曲げ角度が保証されているので、全域曲げにより、ワークWの左右方向Xの全域における曲げ角度を揃えることができる。これにより、ワークWの左右方向Xの全域に亘って十分な通り精度を得ることができる。
【0074】
加えて、本実施形態の曲げ加工機1によれば、次に示すような第2の効果をさらに奏する。まず、左右水平の傾斜状態のまま上部テーブル7を下降させて、上型8及び下型6の左右方向Xの全域を用いてワークWを加圧する曲げ方法を考える。この曲げ方法の場合、上部テーブル7から曲げ荷重を受けることで、ワークWの左右方向Xの全域が加圧される。図4に示す左側の加圧範囲Laに対応する領域には、上部テーブル7から作用する荷重のうち、1/3程度の荷重が作用する。これに対して、本実施形態に示すように、左側の加圧範囲Laのみを局所的に加圧した場合には、上部テーブル7から作用する荷重は、左側の加圧範囲Laに対して集中的に作用する。したがって、左側の加圧範囲Laに限定して加圧を行うことで、ワークWの左右方向Xの全域を加圧するときに必要な曲げ荷重よりも小さい曲げ荷重であっても、ワークWに対しては同等の圧力を作用させることができる。すなわち、曲げ加工機1は、左側の加圧範囲Laに対して加圧を行うことで、ワークWの左右方向Xの全域を加圧するときに必要な曲げ荷重よりも小さい曲げ荷重で曲げ加工を行うことができる。
【0075】
同様に、図9に示すように、曲げ加工機1は、中央の加圧範囲Lbに限定して加圧を行うことで、ワークWの左右方向Xの全域を加圧するときに必要な曲げ荷重よりも小さい曲げ荷重で曲げ加工を行うことができる。さらに、図12に示すように、曲げ加工機1は、右側の加圧範囲Lcに限定して加圧を行うことで、ワークWの左右方向Xの全域を加圧するときに必要な曲げ荷重よりも小さい曲げ荷重で曲げ加工を行うことができる。
【0076】
このように、上部テーブル7の傾斜状態と下部テーブル5の湾曲状態とを利用することで、限定された加圧範囲に対して局所的に加圧を行うことができる。この場合、上部テーブル7から作用する曲げ荷重は、限定された加圧範囲La、Lb、Lcに対して集中的に作用する。限定された加圧範囲La、Lb、Lcに対して加圧を行うことで、ワークWの左右方向Xの全域を加圧するときに必要な曲げ荷重よりも小さい曲げ荷重であっても、加圧範囲には同等の圧力(応力)が作用する。すなわち、限定された加圧範囲La、Lb、Lcに対して加圧を行うことで、曲げ加工機1は、ワークWの左右方向Xの全域を加圧するときに必要な曲げ荷重よりも小さい曲げ荷重で曲げ加工を行うことができる。このため、加圧能力の高い曲げ加工機1を用いることなく、ワークWに対して所望の曲げ加工を行うことができる。
【0077】
また、上述したように、上部テーブル7の傾斜状態と下部テーブル5の湾曲状態との組み合わせを切り替えることで、限定された加圧範囲La、Lb、Lcを遷移させることができる。これにより、加圧能力の高い曲げ加工機1を用いることなく、ワークWにおける左右方向Xの全域を適切に加圧することができる。
【0078】
本実施形態の曲げ加工機1において、制御装置30は、全域曲げを複数回繰り返して、目標曲げ角度までワークWを段階的に折り曲げている。
【0079】
この構成によれば、ワークWを段階的に折り曲げることで、ワークWの曲げ角度を段階的に目標曲げ角度へと近づけることができる。これにより、より確実に通り精度の向上を図ることができる。加えて、小さな曲げ荷重であってもワークWを段階的に折り曲げることで、目標曲げ角度までワークWを折り曲げることができる。これにより、加圧能力の高い曲げ加工機1を用いることなく、ワークWを所望の目標曲げ角度へと折り曲げることができる。
【0080】
本実施形態の曲げ加工機1において、左右の油圧シリンダ9L、9Rは、上死点Htから下死点Hbまでの範囲で上部テーブル7を移動させることができる。制御装置30は、部分曲げを行う場合、上部テーブル7が下死点Hbに到達する前に、上部テーブル7の傾斜状態を設定する。
【0081】
ワークWの左右方向Xの全域が加圧された場合には、曲げ荷重がワークWの全域に分散してしまうので、曲げに必要な圧力をワークWに作用させることができない。この点、本実施形態の構成によれば、上部テーブル7が下死点Hbに到達する前に、上部テーブル7の傾斜状態を傾斜させているので、ワークWの左右方向Xの全域が一度に加圧されてしまうという事態を抑制することができる。個々の加圧範囲La、Lb、Lc毎に、ワークWを加圧することができるので、それぞれの加圧範囲La、Lb、Lcで通り精度を向上させることができる。加えて、加圧能力の高い曲げ加工機1を用いることなく、それぞれの加圧範囲La、Lb、Lcで、所望の曲げ加工を行うことができる。
【0082】
本実施形態の曲げ加工機1において、制御装置30は、ワークWを加圧した後、ワークWのスプリングバックによって上型8とワークWとが接触している範囲で上部テーブル7を上死点Ht側へと移動させた後、上部テーブル7の傾斜状態と下部テーブル5の湾曲状態との組み合わせを切り替えている。
【0083】
この構成によれば、除圧に際して上部テーブル7が上昇したとしても、上型8がワークWと接触している範囲でしか上部テーブル7は上昇しない。よって、上部テーブル7の傾斜状態と固定テーブルの湾曲状態との組み合わせを切り替える時に、上型8がワークWを押さえることで、ワークWの位置ずれを抑制することができる。これにより、ワークWの曲げを精度よく行うことができる。個々の加圧範囲La、Lb、Lcで通り精度を向上させることができる。
【0084】
本実施形態の曲げ加工機1において、制御装置30は、ワークWを加圧したときの傾斜状態を維持したまま上部テーブル7を、上死点Ht側へと移動させている。
【0085】
この構成によれば、上部テーブル7の傾斜状態を維持したまま移動させているので、加圧範囲に作用している荷重を均等に解放することができる。これにより、個々の加圧範囲La、Lb、LcにおけるワークWの通り精度を向上させることができる。
【0086】
本実施形態の曲げ加工機1において、制御装置30は、上部テーブル7の左側が右側よりも下部テーブル5に近くづくような傾斜状態である場合、下部テーブル5の左側を上方に湾曲させている。
【0087】
この構成によれば、ワークWの左側の領域を通り精度よく加圧することができる。
【0088】
本実施形態の曲げ加工機1において、制御装置30は、上部テーブル7の右側が左側よりも下部テーブル5に近くづくような傾斜状態である場合、下部テーブル5の右側を上方に湾曲させている。
【0089】
この構成によれば、ワークWの右側の領域を通り精度よく加圧することができる。
【0090】
本実施形態の曲げ加工機1において、制御装置30は、上部テーブル7の左右が水平となるような傾斜状態である場合、下部テーブル5の中央を上方に湾曲させている。
【0091】
この構成によれば、ワークWの中央の領域を通り精度よく加圧することができる。
【0092】
本実施形態において、昇降機構は、前記可動テーブルの左右端部に設けられて互いに独立して制御可能な左右の油圧シリンダ(昇降ユニットの一例)9L、9Rから構成される。クラウニング機構は、下部テーブル5の左右方向Xの中心位置を基準に左右対称に設けられて互いに独立して制御可能な左右の偏心軸ユニット(クラウニングユニットの一例)19L、19Rから構成されている。
【0093】
この構成によれば、左右の偏心軸ユニット19L、19Rを独立制御することで、下部テーブル5の湾曲形状を左右対称の形状としたり、左右非対称の形状としたりすることができる。これにより、上部テーブル7の傾斜状態に沿うように、下部テーブル5の湾曲状態を適切に制御することができる。
【0094】
また、本実施形態において、制御装置30は、左側、中央、右側の加圧範囲La、Lb、Lcの境界に位置する4つの角度測定点M1~M4で得られる曲げ角度に基づいて、左右の油圧シリンダ9L、9Rの出力及び左右の偏心軸ユニット19L、19Rの出力を補正する。
【0095】
例えば、ワークWの左、中央、右の3点で角度測定を行い、油圧シリンダ9L、9Rの出力補正と、左右の偏心軸ユニット19L、19Rの出力補正とを行うことを考える。左側の加圧範囲Laを対象として補正を行う場合には、左右の油圧シリンダ9L、9Rの出力は、左側と中央の2点に基づいて補正され、左右の偏心軸ユニット19L、19Rの出力は、中央の1点に基づいて補正される。この場合、油圧シリンダ9L、9Rの出力補正と、左右の偏心軸ユニット19L、19Rの出力補正とで、同一の点(中央の点)で得られた曲げ角度を利用することなる。そのため、どちらの出力でどの程度補正を行うのかを切りわけることが難しく、複数の解が発生してしまうことがある。
【0096】
この点、本実施形態の構成によれば、左右の油圧シリンダ9L、9Rの出力補正と、左右の偏心軸ユニット19L、19Rの出力補正とで、異なる角度測定点M1~M4で得られた曲げ角度を利用することができる。例えば、左側の加圧範囲Laを対象として補正を行う場合、左右の油圧シリンダ9L、9Rの出力は、角度測定点M1、M3に基づいて補正され、左右の偏心軸ユニット19L、19Rの出力は、角度測定点M1、M3とも異なる角度測定点M2に基づいて補正されるといった如くである。このように、油圧シリンダ9L、9Rの出力補正と、左右の偏心軸ユニット19L、19Rの出力補正とに異なる角度測定点を割り当てることが出来るので、出力の補正値が一意に定まる。したがって、適切な補正を行うことができる。
【0097】
なお、上述した実施形態では、可動テーブルに相当する上部テーブル7と、固定テーブルに相当する下部テーブル5を備える曲げ加工機1を例示した。しかしながら、曲げ加工機は、可動テーブルに相当する下部テーブル、固定テーブルに相当する上部テーブルを備える構成であってもよい。
【0098】
また、上述した実施形態では、曲げ加工機は、上下方向Zに移動する可動テーブルを傾斜させ、固定テーブルを湾曲させる構成となっている。しかしながら、曲げ加工機は、上下方向Zに移動する可動テーブルを湾曲させ、固定テーブルを傾斜させる構成であってもよい。
【0099】
また、本実施形態に係る曲げ加工方法は、可動テーブルの傾斜状態を設定し、可動テーブルの傾斜状態に沿うように固定テーブルの湾曲状態を設定し、第1金型及び第2金型の左右方向Xの全域を用いてワークWを加圧する加圧範囲よりも限定された加圧範囲でワークを加圧する部分曲げを行い、可動テーブルの傾斜状態と固定テーブルの湾曲状態との組み合わせを切り替えて、限定された加圧範囲を遷移させながら部分曲げを繰り返すことで、左右方向の全域に亘ってワークを加圧する全域曲げを行う。
【0100】
このように、本実施形態に示す曲げ加工機1の他、曲げ加工機1を用いてワークWの曲げ加工を行う曲げ加工方法も本発明の一部として機能する。そして、この曲げ加工方法も、上述した曲げ加工機1と同様の効果を奏する。
【0101】
なお、本実施形態では、ワークWの左側、中央、右側の順番で加圧範囲を遷移させている。しかしながら、加圧範囲を遷移させる方法は、(1)ワークWの左側、右側、中央の順番、(2)ワークWの右側、中央、左側の順番、(3)ワークWの右側、左側、中央の順番(4)ワークWの中央、左側、中央の順番、(5)ワークWの中央、右側、左側の順番のいずれであってもよい。
【0102】
また、本実施形態では、ワークWの左側、中央、右側からなる3つの加圧範囲に対して部分曲げを行っている。しかしながら、部分曲げは、上型8及び下型6の左右方向Xの全域を用いてワークWを加圧する加圧範囲よりも限定された加圧範囲において行われればよい。例えば、ワークWの左半分、右半分からなる2つの加圧範囲に対して部分曲げを行ってもよい。また、ワークWの左側、中央、右側の各領域をさらに細分化し、細分化されたそれぞれの加圧範囲で部分曲げを行ってもよい。
【0103】
図15は、加工対象となるワークの一例を示す説明図である。上述した実施形態において、加工対象となるワークは、左右方向に連続した一つの曲げ線を備えるワークWである。しかしながら、加工対象となるワークは、切欠き部Cが設けられることで、曲げ線Ba、Bcが左右に偏在するようなワークW1であってもよい。
【0104】
図16及び図17は、左右交互にワークを加圧する動作を示す説明図である。このようなワークW1であっても、その曲げ加工動作は、各曲げ線Ba、Bcに対応する加圧範囲La1、Lc1毎に、上述した手法と同様に行われる。すなわち、制御装置30は、上部テーブル7を左下がりの傾斜状態に制御するとともに、上部テーブル7の左下がりの傾斜状態に沿うように下部テーブル5の左側の湾曲状態を制御する。この状態で、曲げ線Baに対応する加圧範囲La1を加圧する。同様に、制御装置30は、上部テーブル7を右下がりの傾斜状態に制御するとともに、上部テーブル7の右下がりの傾斜状態に沿うように下部テーブル5の右側の湾曲状態を制御する。この状態で、曲げ線Bcに対応する加圧範囲Lc1を加圧する。
【0105】
このような左右に偏在する曲げ線Ba、Bcを備えるワークW1にあっては、左右水平の傾斜状態のまま上部テーブル7を下降させると、切欠き部Cにおいて、上部テーブル7と下部テーブル5とに加圧反力が作用しない。上部テーブル7と下部テーブル5とに不均一な加圧反力が作用することで、上部テーブル7と下部テーブル5とに不要な撓みが発生し、それぞれの曲げ線Ba、Bcにおいて通り精度が確保できない。この点、本実施形態によれば、いずれの加圧範囲La1、Lc1であっても、その加圧範囲La1、Lc1において曲げ角度のばらつきを抑制することができる。その結果、個々の加圧範囲La1、Lc1において通り精度を向上させることができる。これにより、ワークWにおける左右方向Xの全域、すなわち左右に偏在する曲げ線の全域において十分な通り精度を得ることができる。
【0106】
また、本実施形態では、除圧を行う際に、傾斜状態を維持したままで可動テーブルを上下方向Zに移動させている。しかしながら、制御装置30は、ある加圧範囲に対する加圧動作が終了したら、可動テーブルを上昇させることなく、そのまま次の加圧範囲に対応する傾斜状態に可動テーブルを切り替えてもよい。
【0107】
本実施形態では、クラウニング機構として、金型が取り付けられるテーブルの一部を湾曲させる機構を例示した。しかしながら、テーブル自体を湾曲させるのではなく、テーブルに取り付けられる金型などであらかじめ湾曲形状を形成してもよい。本明細書で、テーブルそのものを湾曲させる手法以外にも、テーブルに付帯する物を利用して、テーブルを湾曲させるのと同様の効果を得ることができる構成も、クラウニング機構として解釈するものとする。
【0108】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0109】
1 曲げ加工機
3L、3R サイドフレーム
5 下部テーブル
6 下型
7 上部テーブル
8 上型
9R、9L 油圧シリンダ
11 前板
13 後板
15L、15R 枢軸
17L、17R 貫通穴
19L、19R 偏心軸ユニット
図1
図2
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