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特許7565329剛性を調整するための手段が設けられた計時器用発振器機構用のヒゲゼンマイ
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  • 特許-剛性を調整するための手段が設けられた計時器用発振器機構用のヒゲゼンマイ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】剛性を調整するための手段が設けられた計時器用発振器機構用のヒゲゼンマイ
(51)【国際特許分類】
   G04B 17/06 20060101AFI20241003BHJP
   F16F 1/10 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G04B17/06 Z
F16F1/10
【請求項の数】 13
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022185412
(22)【出願日】2022-11-21
(65)【公開番号】P2023080029
(43)【公開日】2023-06-08
【審査請求日】2022-11-21
(31)【優先権主張番号】21211101.7
(32)【優先日】2021-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507276380
【氏名又は名称】オメガ・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】イバン・エルナンデス
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト・フロジオ
【審査官】藤澤 和浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-152604(JP,A)
【文献】特表2018-514786(JP,A)
【文献】特開2014-182152(JP,A)
【文献】特表2006-525504(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 17/00-18/08
F16F 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計時器用発振器機構用のヒゲゼンマイであって、前記ヒゲゼンマイ(1、10、20)は、複数の巻きに従って巻かれた可撓性ストリップ(2)を備え、前記ストリップ(2)が所定の剛性を有し、前記ヒゲゼンマイ(1、10、20)が、その剛性を調整するための調整手段を有する、ヒゲゼンマイにおいて、前記調整手段が、前記ストリップ(2)に直列に配置された単一の細長い可撓性要素(5)を有し、前記細長い可撓性要素(5)が、前記ストリップ(2)に追加的な剛性を追加するように、前記ストリップ(2)の一方の端部(4、9)を固定された支持部(11、14)に接続しており、前記細長い可撓性要素(5)が、前記ストリップ(2)の剛性よりも大きな剛性を有し、前記調整手段が、前記細長い可撓性要素(5)に少なくとも2つの異なる応力を加えるためのプレストレス手段(6)を有し、第1の応力が、前記細長い可撓性要素(5)の略長手方向に向けられた引張/圧縮力FLによって提供され、第2の応力が、前記細長い可撓性要素(5)の長手方向に対して略直交する方向に向けられた力FT、またはトルクM、または曲げモーメントのいずれかによって提供され、プレストレスレベルに応じて前記細長い可撓性要素(5)の剛性を変化させるようになっており、前記可撓性要素(5)が、前記ヒゲゼンマイ(1)の半径方向に配置されていることを特徴とする、ヒゲゼンマイ。
【請求項2】
前記プレストレス手段(6)が、前記細長い可撓性要素(5)に第3の応力を加えるように構成されており、前記第3の応力が、それぞれ前記第2の応力に対して、または前記細長い可撓性要素(5)の長手方向に対して略直交する方向に向けられた力FTによって、またはトルクM、または曲げモーメントによって提供されることを特徴とする、請求項1に記載のヒゲゼンマイ。
【請求項3】
前記細長い可撓性要素(5)が、単一の可撓性ブレード(13)であることを特徴とする、請求項1に記載のヒゲゼンマイ。
【請求項4】
前記プレストレス手段(6)が、前記ストリップ(2)の前記端部(4、9)に結合されたレバー(8)を有することを特徴とする、請求項1に記載のヒゲゼンマイ。
【請求項5】
前記レバー(8)が、可撓性であることを特徴とする、請求項に記載のヒゲゼンマイ。
【請求項6】
前記レバー(8)が、湾曲しており、巻かれた前記ストリップ(2)を少なくとも部分的に包囲していることを特徴とする、請求項又はに記載のヒゲゼンマイ。
【請求項7】
前記レバー(8)が、自由端部(12)を備え、前記自由端部(12)を、前記端部(4)に前記応力を加えるために前記自由端部(12)の移動によって作動させることができることを特徴とする、請求項に記載のヒゲゼンマイ。
【請求項8】
計時器用発振器機構用のヒゲゼンマイであって、前記ヒゲゼンマイ(1、10、20)は、複数の巻きに従って巻かれた可撓性ストリップ(2)を備え、前記ストリップ(2)が所定の剛性を有し、前記ヒゲゼンマイ(1、10、20)が、その剛性を調整するための調整手段を有する、ヒゲゼンマイにおいて、前記調整手段が、前記ストリップ(2)に直列に配置された単一の細長い可撓性要素(5)を有し、前記細長い可撓性要素(5)が、前記ストリップ(2)に追加的な剛性を追加するように、前記ストリップ(2)の一方の端部(4、9)を固定された支持部(11、14)に接続しており、前記細長い可撓性要素(5)が、前記ストリップ(2)の剛性よりも大きな剛性を有し、前記調整手段が、前記細長い可撓性要素(5)に少なくとも2つの異なる応力を加えるためのプレストレス手段(6)を有し、第1の応力が、前記細長い可撓性要素(5)の略長手方向に向けられた引張/圧縮力FLによって提供され、第2の応力が、前記細長い可撓性要素(5)の長手方向に対して略直交する方向に向けられた力FT、またはトルクM、または曲げモーメントのいずれかによって提供され、プレストレスレベルに応じて前記細長い可撓性要素(5)の剛性を変化させるようになっており、
前記プレストレス手段(6)が、力を加えるための2つの手段を有し、力を加えるための各手段に、前記端部(4)に前記長手方向の力FLまたは前記直交方向の力FTを加えるために前記端部(4)に結合されたばね(17、18)が設けられていることを特徴とするヒゲゼンマイ。
【請求項9】
前記ストリップ(2)の前記端部(4、9)が、アタッチメント(9)を備え、前記プレストレス手段(6)および前記細長い可撓性要素(5)が、前記アタッチメント(9)に結合されていることを特徴とする、請求項1に記載のヒゲゼンマイ。
【請求項10】
前記応力を前記プレストレス手段(6)によって連続的に調整することができることを特徴とする、請求項1に記載のヒゲゼンマイ。
【請求項11】
前記可撓性要素(5)が、前記ストリップ(2)の一方の外側の端部(4)に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載のヒゲゼンマイ。
【請求項12】
計時器用発振器機構用のヒゲゼンマイであって、前記ヒゲゼンマイ(1、10、20)は、複数の巻きに従って巻かれた可撓性ストリップ(2)を備え、前記ストリップ(2)が所定の剛性を有し、前記ヒゲゼンマイ(1、10、20)が、その剛性を調整するための調整手段を有する、ヒゲゼンマイにおいて、前記調整手段が、前記ストリップ(2)に直列に配置された単一の細長い可撓性要素(5)を有し、前記細長い可撓性要素(5)が、前記ストリップ(2)に追加的な剛性を追加するように、前記ストリップ(2)の一方の端部(4、9)を固定された支持部(11、14)に接続しており、前記細長い可撓性要素(5)が、前記ストリップ(2)の剛性よりも大きな剛性を有し、前記調整手段が、前記細長い可撓性要素(5)に少なくとも2つの異なる応力を加えるためのプレストレス手段(6)を有し、第1の応力が、前記細長い可撓性要素(5)の略長手方向に向けられた引張/圧縮力FLによって提供され、第2の応力が、前記細長い可撓性要素(5)の長手方向に対して略直交する方向に向けられた力FT、またはトルクM、または曲げモーメントのいずれかによって提供され、プレストレスレベルに応じて前記細長い可撓性要素(5)の剛性を変化させるようになっており、
前記ストリップ(2)の前記端部(4、9)が、前記細長い可撓性要素(5)および前記ストリップ(2)よりも剛性であることを特徴とする、ゲゼンマイ。
【請求項13】
請求項1に記載のヒゲゼンマイ(1、10、20)を備えることを特徴とする、発振質量を有する、時計ムーブメント用の回転発振器機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計時器用発振器機構用のヒゲゼンマイであって、ヒゲゼンマイには、前記ヒゲゼンマイの剛性を調整するための手段が設けられている、ヒゲゼンマイに関する。本発明は、このようなヒゲゼンマイが設けられた計時器用発振器機構にも関する。
【背景技術】
【0002】
今日の機械式腕時計のほとんどは、ゼンマイ付きテンプ輪(sprung balance)と、スイス・レバー脱進機とを備えている。ゼンマイ付きテンプ輪は、腕時計の時間基準を構成する。それは、また発振器とも称される。
【0003】
脱進機は、それ自体として、下記の2つの主たる機能を満たしており、すなわち、
- 発振器の前後運動を維持すること、
- これらの前後運動を数えること、である。
【0004】
機械的な発振器を構成するためには、慣性要素と、ガイドと、弾性戻り要素とが必要である。伝統的には、ヒゲゼンマイが、テンプ輪を構成する慣性要素のための弾性戻り要素の役割を果たす。このテンプ輪は、円滑なルビー軸受において回転するピボットによって、回転をガイドされる。
【0005】
ヒゲゼンマイは、全体として、腕時計の精度を向上させるように調整されることが可能でなければならない。この目的のため、ゼンマイの有効な長さを修正するためのインデクスなど、ヒゲゼンマイの剛性を調整するための手段が、用いられる。こうして、腕時計の歩度精度(rate precision)を調整するために、その剛性が修正される。しかし、歩度を調整するための伝統的なインデクスの有効性は限定的なものに留まり、調整を1日当たり数秒または数十秒というオーダーという充分な精度のものとするには、必ずしも有効とは限らない。
【0006】
歩度のより正確な調整のために、テンプ輪のテン輪(felloe)に配設された1つまたは複数のねじを備えた調整手段が、存在する。それらのねじに作用することにより、テンプ輪の慣性が修正され、その歩度が修正されるという効果が生じる。
【0007】
しかしながら、この調整モードは実行するのが容易でなく、それでも発振器の歩度の調整の充分な精度を得ることを可能にしない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、特にヒゲゼンマイの有効剛性を修正することによって時計の歩度を調整するように構成された、有効かつ正確な調整手段が設けられた前記ヒゲゼンマイを提案することによって、前記欠点の全てまたは一部を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的のため、本発明は、特に計時器用発振器機構用のヒゲゼンマイであって、ヒゲゼンマイは、複数の巻きに従って巻かれた可撓性ストリップを備え、ストリップは所定の剛性を有し、ヒゲゼンマイはその剛性を調整するための手段を有する、ヒゲゼンマイに関する。
【0010】
本発明は、調整手段が、ストリップと直列に配置された単一の細長い可撓性要素を有し、細長い可撓性要素が、ストリップに追加的な剛性を追加するように、前記ストリップの一方の端部を固定された支持部に接続しており、調整手段が、細長い可撓性要素に少なくとも2つの異なる応力を加えるためのプレストレス手段を有し、第1の応力が、細長い可撓性要素の実質的に長手方向に向けられた引張/圧縮力によって提供され、第2の応力が、細長い可撓性要素の長手方向に対して実質的に直交する方向に向けられた力、またはトルク、好ましくは曲げモーメントのいずれかによって提供され、プレストレスレベルに応じて細長い可撓性要素の剛性を変化させるようになっているという点で優れている。
【0011】
本発明のおかげで、可撓性ブレードなどの細長い可撓性要素の剛性を修正することが可能である。実際、前記のような2つの応力が加えられると、細長い可撓性要素の剛性を変化させることができる。実際、力またはトルクであるかにかかわらず、単一の応力が加えられた場合、細長い可撓性要素の剛性は同じままである。長手方向および直交方向の2つの垂直な力をブレードに加えると、細長い可撓性要素の剛性を変化させる全体的な力が得られる。力およびトルクによっても、剛性が修正される。2つの応力の組合せが、これを達成するために不可欠である。
【0012】
プレストレス手段に作用することによって、荷重の強度のレベルが変調され、その結果、可撓性要素およびストリップを含むアセンブリの剛性の修正を生じる。実際、ストリップと直列に配置された可撓性要素は、ストリップの剛性と組み合わされる追加的な剛性を提供する。したがって、プレストレス手段が可撓性要素に可変の応力を加えると、それらは、細長い可撓性要素に加えられる可変の力にかかわらず、ストリップの剛性を修正することなく、可撓性要素の剛性、ひいてはストリップおよび可撓性要素を含むアセンブリの剛性を修正する。
【0013】
換言すれば、可撓性要素は、ストリップの一方の端部と固定された支持部との間でストリップと直列に配置されている。この可撓性要素は、取付点の剛性を修正し、発振器に追加的な可撓性を提供する。したがって、発振器の有効剛性は、ストリップの剛性と、可撓性要素の剛性とを含む。次いで、ストリップにプレストレスをかけることなく可撓性要素にプレストレスをかけるために、可変の応力が加えられる。可撓性要素にプレストレスをかけることによって、その剛性が変化するのに対し、ストリップの剛性は実質的に不変のままである。可撓性要素の剛性を変化させることによって、発振器の剛性(ストリップの剛性および可撓性要素の剛性)が変化し、それが、結果的に発振器の歩度を修正する。
【0014】
その結果、可撓性要素の剛性の修正は、発振器のアセンブリの剛性を修正し、その結果、歩度を精密に調整し、時間基準の周波数を精密に調整することを可能にする。したがって、剛性を調整するために1つの要素のみが作用されるので、歩度の調整において高い精度が得られる。
【0015】
本発明のある特定の実施形態によれば、プレストレス手段が、細長い可撓性要素に第3の応力を加えるように構成されており、第3の応力が、それぞれ第2の応力に対して、または細長い可撓性要素の長手方向に対して実質的に直交する方向に実質的に向けられた力によって、またはトルク、好ましくは曲げモーメントによって提供される。
【0016】
本発明のある特定の実施形態によれば、長手方向の可撓性要素が、単一の可撓性ブレードである。
【0017】
本発明のある特定の実施形態によれば、可撓性要素が、ヒゲゼンマイの半径方向に配置されている。
【0018】
本発明のある特定の実施形態によれば、可撓性要素が、ヒゲゼンマイに対して接線方向に配置されている。
【0019】
本発明のある特定の実施形態によれば、プレストレス手段が、ストリップの端部に結合されたレバーを有する。
【0020】
本発明のある特定の実施形態によれば、レバーが可撓性である。
【0021】
本発明のある特定の実施形態によれば、レバーが、湾曲しており、巻かれたストリップを少なくとも部分的に包囲している。
【0022】
本発明のある特定の実施形態によれば、レバーが、自由端部を備え、自由端部を、端部に前記応力を加えるために前記自由端部の移動によって作動させることができる。
【0023】
本発明のある特定の実施形態によれば、プレストレス手段が、力を加えるための2つの手段を有し、力を加えるための各手段に、端部に前記長手方向の力または前記直交方向の力を加えるために端部に結合されたばねが設けられている。
【0024】
本発明のある特定の実施形態によれば、ストリップの端部が、アタッチメントを備え、プレストレス手段および細長い可撓性要素が、アタッチメントに結合されている。
【0025】
本発明のある特定の実施形態によれば、長手方向および直交方向の力、および選択的にトルクをプレストレス手段によって連続的に調整することができる。
【0026】
本発明のある特定の実施形態によれば、可撓性要素が、ストリップの外側端部に配置されている。
【0027】
本発明のある特定の実施形態によれば、ストリップの端部が、細長い可撓性要素およびストリップよりも剛性である。
【0028】
本発明のある特定の実施形態によれば、細長い可撓性要素が、ストリップの外側端部に配置されている。
【0029】
本発明のある特定の実施形態によれば、細長い可撓性要素が、可撓性ネックを備える。
【0030】
本発明は、発振動質量およびこのようなヒゲゼンマイを含む、特に時計ムーブメント用の、回転発振器機構にも関する。
【0031】
本発明の目的、利点および特徴は、添付の図面を参照して、非限定的な例としてのみ与えられた複数の実施形態を読むことによって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の第1の実施形態によるヒゲゼンマイの上面図を概略的に示す。
図2】本発明の第2の実施形態によるヒゲゼンマイの上面図を概略的に示す。
図3】本発明の第1の実施形態による、アタッチメントおよびアタッチメントに加えられる応力の拡大された上面図を概略的に示す。
図4】本発明の第3の実施形態によるヒゲゼンマイの上面図を概略的に示す。
図5】本発明の第2および第3の実施形態による細長い可撓性要素の上面図を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1および図2はそれぞれ、特に計時器用発振器機構用の、ヒゲゼンマイ1、10、20の異なる実施形態の概略図を示す。ここで、ヒゲゼンマイは実質的に同じ平面において延在している。ヒゲゼンマイ1、10、20は、複数の巻きに従って巻かれた可撓性ストリップ2を備え、ストリップ2は所定の剛性を有する。ヒゲゼンマイ1、10、20は、その剛性を調整するための手段5を有する。例えば、図示されない時計ムーブメントのプレートにヒゲゼンマイ1、10、20が取り付けられるときに調整手段を特に作動させることができる。
【0034】
本発明によれば、調整手段は、ストリップ2と直列に配置された、長手方向に延びる可撓性要素5を有し、可撓性要素5は、前記ストリップ2の一方の端部4を、固定された支持部11、14に接続している。換言すれば、ストリップ2は、この可撓性要素5のみによって、固定された支持部11、14に接続されている。
【0035】
可撓性要素5は、ストリップ2の端部4のうちの一方と一体である。以下に説明される実施形態は、ストリップ2の外側の端部4と一体の可撓性要素5を備える。ストリップ2の内側の端部9は、発振器1の発振質量の支持部3に組み付けられるようになっている。
【0036】
可撓性要素5は、ストリップ2の剛性に対して追加的な剛性を追加する。可撓性要素5は、好ましくは、ストリップ2の剛性よりも大きな剛性を有する。この場合の可撓性要素5は、ストリップ2の延長部に配置されている。好ましくは、調整手段5およびストリップ2は一体であり、またはさらには同じ材料から形成されている。
【0037】
さらに、この場合、ストリップ2の端部は、アタッチメント9を形成するように垂直に湾曲させられており、アタッチメント9は、好ましくは実質的に剛性である、すなわち少なくともストリップ2および/または細長い可撓性要素5よりも剛性である。
【0038】
好ましくは、長手方向の可撓性要素5は、固定された支持部11、14にアタッチメント9を接続する単一の可撓性ブレード13、15である。
【0039】
第1の実施形態では、単一の可撓性ブレード13は、アタッチメント9の延長部に配置されている。単一の可撓性ブレード13は、ストリップ2に対して垂直な方向に配置されている。
【0040】
したがって、単一の可撓性ブレード13は、ヒゲゼンマイ1のロッキング位置において、好ましくはヒゲゼンマイ1の中心を通過する、半径方向に配置されている。
【0041】
ヒゲゼンマイ1は、さらに、可撓性要素5に少なくとも2つの異なる応力、すなわち、可変である長手方向の引張-圧縮力Fおよび直交方向の力Fを加えるためのプレストレス手段6を有する。長手方向の力Fは可撓性要素5の長手方向に向けられているのに対し、直交方向の力Fは、可撓性要素5の長手方向に対して垂直方向に向けられており、2つの力は、好ましくはヒゲゼンマイ1、10、20の平面に属する。プレストレス手段6は、さらに、可撓性要素5にトルクM、好ましくは曲げモーメントを加えるように構成されている。
【0042】
したがって、特にムーブメントの歩度の精度を高めるために、ヒゲゼンマイ1、10、20の剛性を調整することができる。
【0043】
プレストレス手段6は、好ましくは、可撓性要素5が力の値に従って圧縮力または引張力を受けることを可能にする。したがって、可撓性要素5の剛性が変化させられる。
【0044】
ストリップ2に直接作用することなく、可撓性要素5の剛性を変更するために、可撓性要素5のみが作用される。したがって、剛性を調整するために1つの要素のみが使用されるので、より一層高い精度が得られる。振動の間、ストリップ2の端部4は可動であってよい。
【0045】
加えて、長手方向の力Fおよび直交方向の力Fを、プレストレス手段6によって連続的に調整することができる。換言すれば、F力およびF力は、別々の値に制限されない。したがって、可撓性要素5の剛性を高い精度で調整することができる。
【0046】
この実施形態では、プレストレス手段6は、ストリップ2の外側の端部4に結合されたレバー8を有する。レバー8は、湾曲しており、巻かれたストリップ2の部分を包囲している。レバー8は、ストリップ2の端部4のアタッチメント9に結合された、180°に近い中心における角度の半円または円弧形状を有する。レバー8は、さらに、自由端部12を備え、この自由端部12は、前記応力を加えるために前記自由端部12の移動によって作動させられる。レバー8は、好ましくは、可撓性である。レバー8は、好ましくは、ヒゲゼンマイ1の平面に配置されている。
【0047】
このようなレバー8は、ヒゲゼンマイ1を小さなサイズに維持することを可能にし、寸法は、時計ムーブメントに挿入することができるように制限される。実際に、プレストレス手段6の各部分がストリップ2に近いので、十分に小さな寸法を維持するように、プレストレス手段6は、ストリップ2と両立可能な形状を有する。ヒゲゼンマイ1の幅は、プレストレス手段によってほとんど変更されない。したがって、ヒゲゼンマイ1は、ムーブメントに容易に挿入することができるように十分にコンパクトである。
【0048】
レバー8および長手方向の可撓性要素5は、端部4の湾曲した部分のアタッチメント9に結合されている。
【0049】
図3に示したように、レバー8の作動は、ストリップ2の端部4において、長手方向の可撓性要素5の長手方向軸線に沿って向けられた長手方向の力Fと、直交方向に向けられた直交方向の力Fとを生じる。レバー8の作動は、湾曲した矢印によって示したように、単一のブレード5においてトルクまたは曲げモーメントMをさらに生じる。
【0050】
したがって、プレストレス手段6は、細長い可撓性要素5の長手方向に実質的に向けられた力を加えるように構成されている。プレストレス手段6はまた、ブレードの長手方向に対して直交する方向に実質的に向けられた力を加えるように構成されている。プレストレス手段6はまた、単一の可撓性ブレード13にトルクM、好ましくは力のモーメントを加えるように構成されている。したがって、単一のブレード13の剛性、ひいてはストリップ2および単一の可撓性ブレード13を含むアセンブリの剛性が修正される。
【0051】
長手方向の力Fと、直交方向の力Fと、トルクMとは、レバー8の自由端部12の移動によって変化させられる。自由端部12は、好ましくは、その作動を容易にするために剛性である。したがって、可撓性要素5の剛性、ひいては可撓性要素5およびストリップ2を含むアセンブリの剛性が変化させられる。
【0052】
図2の第2の実施形態では、長手方向の可撓性要素5は、ヒゲゼンマイ1のロッキング位置において、巻かれたストリップ2に対して接線方向に、レバー8の延長部に配置された単一の可撓性ブレード15を備える。したがって、単一の可撓性ブレード15は、第1の実施形態の単一の可撓性ブレード13に対して実質的に垂直である。単一の可撓性ブレード15は、第1の実施形態の固定された支持部に対して垂直に配置された固定された支持部14にアタッチメント9を結合している。
【0053】
この実施形態のその他の特徴は、第1の実施形態のものと実質的に同じである。長手方向の力Fおよび直交方向の力Fは、第1の実施形態のものに対して垂直な方向に向けられている。しかしながら、これらの力およびトルクMによって生じる効果は、可撓性要素の剛性の変化に関して同じである。
【0054】
図4の実施形態では、プレストレス手段6を除いて、特徴は、図2の第2の実施形態のものと同じである。レバーは、それぞればね17、18および剛体19、21を備える、力を加えるための2つの手段によって置き換えられており、力を加えるための2つの手段は互いに対して垂直に配置されている。2つのばね17、18は、一方ではアタッチメント9に、他方では剛体19、21に結合されている。力を加えるための手段は、巻かれたストリップ2に対して接線方向の、単一の可撓性ブレード15の長手方向軸線に沿って向けられている。力を加えるための第2の手段は、単一の可撓性ブレード15に対して実質的に垂直な軸線に沿って向けられている。剛体19、21は、固定された支持部22、23の間に好ましくはガイドされている。
【0055】
剛体19、21を移動させることによって、可変の長手方向の力Fおよび可変の直交方向の力Fが、各剛体19、21の各移動方向において、アタッチメント9に加えられる。したがって、単一の可撓性ブレード15の剛性は、第2の実施形態と同様に修正される。剛体19、21を移動させることによって、単一の可撓性ブレード15に加えられる力の値が修正される。
【0056】
図面において、ばね17、18は従来のばねであるが、ばねとして作用する実質的に平行な可撓性ブレードの配列によって置き換えられてもよい。
【0057】
図5は、プレストレス手段によって作動させられる、第2および第3の実施形態の単一の可撓性ブレードのような、単一の可撓性ブレード15を示しており、この単一の可撓性ブレード15に対して長手方向の力および直交方向の力が得られる。長手方向の力は単一の可撓性ブレード15の長手方向に向けられているのに対し、直交方向の力は、この長手方向に対して実質的に垂直である。2つの力は、単一の可撓性ブレード15およびアタッチメント9の端部において加えられる。
【0058】
この実施形態では、プレストレス手段6は、ストリップ2の端部4にトルクまたは曲げモーメントを加えず、長手方向の力Fおよび直交方向の力Fのみを加える。
【0059】
本発明は、このようなヒゲゼンマイを備える時計ムーブメントにも関する。ヒゲゼンマイは、テンプ輪のムーブメントを作動させるために特に使用される。
【0060】
当然、本発明は、図面を参照して説明した実施形態に限定されず、発明の範囲から逸脱することなく変化態様が考えられる場合がある。
【0061】
長手方向の要素に関して、ヒゲゼンマイの様々な実施形態において説明された可撓性ブレードは、概して図面の場合のような連続的な可撓性ブレードであるか、または剛性のセクションと、セクションを接続する可撓性ネックとを備えるブレードであってよい。
【0062】
さらに、単一の可撓性ブレードは、ヒゲゼンマイに関して半径方向および直交方向以外の向きにあってもよい。したがって、単一の可撓性ブレードは、半径方向と直交方向との間のあらゆる方向に向けられてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1、10、20 ヒゲゼンマイ
2 可撓性ストリップ
3 支持部
4 端部
5 可撓性要素
6 プレストレス手段
8 レバー
9 アタッチメント
11、14 固定された支持部
12 自由端部
13、15 単一の可撓性ブレード
17、18 ばね
19、21 剛体
22、23 固定された支持部
図1
図2
図3
図4
図5