(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】ソリッドステートLIDARシステム用のプロジェクタ
(51)【国際特許分類】
G01S 7/481 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
G01S7/481 A
G01S7/481 Z
(21)【出願番号】P 2022514247
(86)(22)【出願日】2020-09-02
(86)【国際出願番号】 EP2020074511
(87)【国際公開番号】W WO2021043851
(87)【国際公開日】2021-03-11
【審査請求日】2023-08-30
(32)【優先日】2019-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2020-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516011213
【氏名又は名称】ゼノマティクス・ナムローゼ・フエンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】XENOMATIX NV
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パエセン,リク
(72)【発明者】
【氏名】ゴーエンス,フィリップ
【審査官】▲高▼場 正光
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-065165(JP,A)
【文献】特表2018-531374(JP,A)
【文献】特開平01-271718(JP,A)
【文献】特表2016-534346(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0038941(US,A1)
【文献】国際公開第2018/215232(WO,A1)
【文献】特表2019-516101(JP,A)
【文献】国際公開第2015/042331(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0025993(US,A1)
【文献】米国特許第09273846(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48 - G01S 7/51
G01S 17/00 - G01S 17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
離散スポットパターン(150)でシーン(99)を照明するためのプロジェクタ(100)であって、
・発散する第1のレーザビーム(10)を放射するように動作することができる複数の個別のソリッドステートレーザ光源(111)を備えるレーザアレイ(110)と、
・主光軸(Z)に沿って延びており、前記第1のレーザビーム(10)の各々を受光し、各々の第1のレーザビームについて、光線の少なくとも一部分が隣接する第1のレーザビームの光線と重なり合うまで前記第1のレーザビーム(10)の各々が発散することを可能にするように構成され、内壁の少なくとも一部分がレーザ光を反射するための反射壁(170)であるか、または内壁の少なくとも一部分がミラー(141)を備えている混合チャンバ(140)と、
・i)前記混合チャンバ(140)を出る前記第1のレーザビーム(10)の前記重なり合う光線を受光し、
ii)各々が複数の第1のレーザビームから由来する光線を備える複数
の第2のレーザビーム(20)を生成するように構成され、
複数のマイクロレンズ(ML[i])を備える第1のマイクロレンズアレイ(121)を備えており、各々のマイクロレンズ(ML[i])は、前記複数の第2のレーザビームのうちの1つの前記第2のレーザビーム(20)を生成するように構成されている整形光学系(120)と、
・前記第2のレーザビーム(20)を受光し、前記第2のレーザビームを前記シーン(99)に向かって投影するように構成されたプロジェクタレンズシステム(130)とを備え、
前記投影された第2のレーザビームは、前記離散スポットパターン(150)を形成し
て、
前記整形光学系(120)は、前記整形光学系によって形成される第2のレーザビームの数が前記レーザアレイ(110)によって放射される第1のレーザビームの数よりも少なくなるように構成される、プロジェクタ(100)。
【請求項2】
前記混合チャンバ(140)は、使用時の前記プロジェクタの動作を検査するように構成された検査開口部(180)を備える、請求項1に記載のプロジェクタ。
【請求項3】
前記複数の個別のソリッドステートレーザ光源は、複数のタイル(T
i)へとグループ化され、前記タイルは、タイルの一次元または二次元アレイを形成するように配置され、各々のタイル(T
i)に、前記複数の個別のソリッドステートレーザ光源のうちの或る数(ST
i)のソリッドステートレーザ光源が関連付けられている、請求項1
または請求項
2に記載のプロジェクタ(100)。
【請求項4】
前記タイル(T
i)の各々は、ソリッドステートレーザ光源の一次元または二次元サブアレイを形成している、請求項
3に記載のプロジェクタ。
【請求項5】
前記主光軸(Z)に沿って測定される前記混合チャンバの長さ(H)が、前記第1のレーザビームが前記混合チャンバを通って伝播した後に、各々のタイルについて、その光線の少なくとも一部が隣接するタイルの光線と重なり合うように定められている、請求項
3または
4に記載のプロジェクタ。
【請求項6】
前記タイルは、長方形の形状を有し、前記タイルは、タイル間距離が前記レーザアレイ(110)の全体にわたって同じであるように、規則的なパターンを形成するように配置されている、請求項
3~5のいずれか1項に記載のプロジェクタ(100)。
【請求項7】
前記混合チャンバの前記長さは、
【数1】
であるように選択され、
Hは、前記混合チャンバの前記長さであり、Δは、2つの隣接するタイルの中心間の距離であり、θは、前記ソリッドステートレーザ光源のビーム発散角度であり、Lは、
長方形のタイルの辺の長さである、請求項
5に記載のプロジェクタ(100)。
【請求項8】
前記第1のマイクロレンズアレイに入射する配光の均質性を高めるために、タイル間領域の照明を増加させるように構成されたビームエキスパンダ(148)をさらに備える、請求項
3~7のいずれか1項に記載のプロジェクタ。
【請求項9】
前記第1のマイクロレンズアレイ(121)は、前記第1のマイクロレンズアレイの各々のマイクロレンズ(ML[i])が、平面(FP)または曲面(CFP)上に位置する焦点(RFP[i])を備えるように構成され、前記平面(FP)または前記曲面(CFP)は、前記第1のマイクロレンズアレイ(ML[i])と前記プロジェクタレンズシステム(130)との間に位置する、請求項1~請求項
8のいずれか1項に記載のプロジェクタ(100)。
【請求項10】
前記第1のマイクロレンズアレイ(121)は、各々のマイクロレンズ(ML[i])が曲面(CFP)上に位置する焦点(RFP[i])を備えるように構成され、前記曲面(CFP)は、前記プロジェクタレンズシステム(130)の湾曲した焦点面に対応する、請求項1~請求項
9のいずれか1項に記載のプロジェクタ(100)。
【請求項11】
前記マイクロレンズ(ML[i])の各々は、前記主光軸(Z)に平行な光軸(Z
i)を備える、請求項
9または
10に記載のプロジェクタ(100)。
【請求項12】
前記マイクロレンズ(ML[i])の少なくとも一部は、前記主光軸(Z)に平行でない光軸(Z
i)を備える、請求項
9または
10に記載のプロジェクタ(100)。
【請求項13】
前記第1のマイクロレンズアレイ(121)は、前記第1のマイクロレンズアレイ(121)の各々のマイクロレンズが、前記レーザアレイ(110)の複数のソリッドステートレーザ光源の光路内にあるように配置される、請求項1~請求項
12のいずれか1項に記載のプロジェクタ。
【請求項14】
前記第1のマイクロレンズアレイ(121)は、第1の数のマイクロレンズを備え、前記レーザアレイ(110)は、第2の数の個別のソリッドステートレーザ光源を備え、前記第1の数は、前記第2の数以下である、請求項1~請求項
13のいずれか1項に記載のプロジェクタ。
【請求項15】
前記ソリッドステートレーザ光源(111)によって放射された前記第1のレーザビームの発散角度を減少させるように構成された第2のマイクロレンズアレイ(122)をさらに備え
る、請求項1~請求項
14のいずれか1項に記載のプロジェクタ(100)。
【請求項16】
前記混合チャンバ内の前記第1のレーザビームの重なり合いを増加させるように構成されたディフューザ(145)および/またはサーキュレータ(146)をさらに備える、請求項1~請求項
15のいずれか1項に記載のプロジェクタ。
【請求項17】
前記混合チャンバ内の前記第1のレーザビームの重なり合いを増加させるように構成されたディフューザ(145)をさらに備え、前記ディフューザ(145)は、前記第2のマイクロレンズアレイ(122)と前記第1のマイクロレンズアレイ(121)との間に配置される、請求項
15に記載のプロジェクタ。
【請求項18】
ディフューザ(145)およびサーキュレータ(146)をさらに備え、前記サーキュレータ(146)は、前記第2のマイクロレンズアレイ(122)と前記ディフューザ(145)との間に配置される、請求項
15に記載のプロジェクタ。
【請求項19】
前記レーザアレイ(110)は、いくつかのVCSELチップで構成され、各々のVCSELチップは、複数のレーザエミッタを備え、各々のレーザエミッタは、前記個別のソリッドステートレーザ光源のうちの1つに相当
する、請求項
15に記載のプロジェクタ。
【請求項20】
前記第1のレーザビームの波長の広がりを低減するように構成されたブラッグ体積格子(147)をさらに備える、請求項1~請求項
19のいずれか1項に記載のプロジェクタ。
【請求項21】
前記レーザアレイの各々のレーザ光源は、放射面(X-Y)内に位置する発光面(111a)を有し、前記第1のレーザビーム(10)は、前記放射面(X-Y)に垂直な前記主光軸(Z)に平行な方向に伝播する、請求項1~請求項
20のいずれか1項に記載のプロジェクタ(100)。
【請求項22】
前記混合チャンバ(140)は、三次元中空体を形成する周囲の側面(140a)を備える、請求項1~請求項
21のいずれか1項に記載のプロジェクタ。
【請求項23】
前記レーザアレイ(110)は、一次元または二次元レーザアレイ(110)である、請求項1~請求項
22のいずれか1項に記載のプロジェクタ(100)。
【請求項24】
前記レーザアレイ(110)
の前記ソリッドステートレーザ光源の各々は、半導体レーザ、好ましくは垂直共振器型面発光レーザである、請求項1~請求項
23のいずれか1項に記載のプロジェクタ(100)。
【請求項25】
前記レーザアレイ(110)は、フロントエンドVCSELアレイである、請求項1~請求項
24のいずれか1項に記載のプロジェクタ(100)。
【請求項26】
前記レーザアレイ(110)は、バックエンドVCSELアレイであり、前記バックエンドVCSELアレイは、前記バックエンドVCSELアレイの基板(70)を通ってレーザ光を放射するように構成された複数の垂直共振器型面発光レーザを備える、請求項1~
24のいずれか1項に記載のプロジェクタ(100)。
【請求項27】
前記レーザアレイ(110)は、前記第2のマイクロレンズアレイ(122)を備えるバックエンドVCSELアレイであり、前記第2のマイクロレンズアレイは、前記
バックエンドVCSELアレイ
の垂直共振器型面発光レーザの各々の発散角度θ
VCSELを減少させるように構成されたマイクロレンズ(ML
VCSEL[i])を備え
る、請求項
15に記載のプロジェクタ(100)。
【請求項28】
前記整形光学系(120)は、前記重なり合う光線を再び集光するようにさらに構成されている、請求項1~請求項
27のいずれか1項に記載のプロジェクタ。
【請求項29】
前記複数の個別のソリッドステートレーザ光源(111)は、発散するパルス状の第1のレーザビーム(10)を同時に放射するように動作可能であり、
前記パルス状の第1のレーザビームの各々は、時間パルス幅(PW)を有する第1のパルスの時間的シーケンスを備え、
前記整形光学系(120)は、i)前記混合チャンバ(140)を出る前記パルス状の第1のレーザビーム(10)の前記重なり合う光線を受光し、ii)複数の個別のパルス状の第2のレーザビーム(20)を生成するように構成され、各々の第2のレーザビームは、複数の第1のレーザビームから由来する光線を備え、前記パルス状の第2のレーザビームの各々は、前記時間パルス幅(PW)を有する第2のパルスの時間的シーケンスを備え、
前記プロジェクタレンズシステム(130)は、前記パルス状の第2のレーザビーム(20)を受光し、前記パルス状の第2のレーザビームを前記シーン(99)に向かって投影するように構成され、前記投影されたパルス状の第2のレーザビームは、前記離散スポットパターン(150)を形成する、請求項1~請求項
28のいずれか1項に記載のプロジェクタ(100)。
【請求項30】
シーン(99)の1つ以上の物体までの距離を決定するためのソリッドステートLIDARシステム(1)であって、
・前記シーン(99)を離散スポットパターンで照明するための請求項1~請求項
29のいずれか1項に記載のプロジェクタ(100)と、
・前記シーンの前記1つ以上の物体によって反射された前記離散スポットパターンを表す反射レーザ光のスポットを検出するように構成されたマルチピクセル検出器を備える受光装置(300)と、
・前記シーンの前記照明に同期して前記反射レーザ光を検出および蓄積するように前記プロジェクタ(100)および前記受光装置(300)を制御するためのコントローラ(200)と、
・前記蓄積された反射レーザ光に基づいて前記シーンの1つ以上の物体までの距離を計算するように構成された処理手段(400)とを備えるソリッドステートLIDARシステム。
【請求項31】
シーン(99)の1つ以上の物体までの距離を決定するためのソリッドステートLIDARシステムであって、
・前記シーン(99)を離散スポットパターンで照明するための請求項
29に記載のプロジェクタ(100)と、
・前記シーンの前記1つ以上の物体によって反射された前記離散スポットパターンを表す反射レーザ光のスポットを検出するように構成されたマルチピクセル検出器を備えており、前記マルチピクセル検出器は、連続する検出時間ウインドウにおいて反射レーザ光を検出するように構成された距離ゲーティングマルチピクセル検出器である、受光装置(300)と、
・前記シーンの前記照明に同期して前記反射レーザ光を検出および蓄積するように前記プロジェクタ(100)および前記受光装置(300)を制御するためのコントローラ(200)と、
・前記蓄積された反射レーザ光に基づいて前記シーンの1つ以上の物体までの距離を計算するように構成された処理手段(400)とを備えるソリッドステートLIDARシステム。
【請求項32】
前記距離ゲーティングマルチピクセル検出器は、少なくとも2つの連続する検出時間ウインドウにおいて反射レーザ光を検出するように構成され、前記処理手段(400)は、前記2つの連続する検出時間ウインドウにおいて検出されたレーザ光に基づいて前記物体までの前記距離を計算するように構成されている、請求項
31に記載のソリッドステートLIDARシステム。
【請求項33】
前記コントローラ(200)は、前記複数の個別のソリッドステートレーザ光源の各々が前記第1のパルスを
F
P≦1/(TOF
max+PW)であるようなパルス周波数(F
P)で放射するように、前記レーザアレイ(110)を制御するように構成され、F
Pは、前記パルス周波数であり、PWは、前記時間パルス幅であり、TOF
maxは、決定すべき所定の最大距離(D
max)における最大飛行時間である、請求項
31または
32に記載のソリッドステートLIDARシステム。
【請求項34】
前記マルチピクセル検出器は、直接飛行時間マルチピクセル検出器であり、前記処理手段は、直接飛行時間方式によって前記物体までの前記距離を計算するように構成されている、請求項
30に記載のソリッドステートLIDARシステム。
【請求項35】
請求項
30~34のいずれか1項に記載のソリッドステートLIDARシステムを備える車両であって、
前記ソリッドステートLIDARシステムは、前記車両の周囲の領域の少なくとも一部をカバーする視野を有し、前記領域の前記少なくとも一部は、前記シーンに相当する、車両。
【請求項36】
請求項1~
29のいずれか1項に記載のプロジェクタ(100)のテレメトリシステム用への使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の分野
本開示は、レーザビームおよび飛行時間(TOF)に基づく検知システムを使用してシーンまでの距離を決定するためのLIDAR(光検出および測距(Light Detection And Ranging))システムに関する。より詳細には、本開示は、離散スポットパターンでシーンを照明するためのLIDARプロジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
背景
LIDARシステムは、レーザ光でシーンを照明し、一般的にはレーザ光を放出したレーザ源の近くに配置された検出器において反射レーザ光を検出することによって、シーンまでの距離を測定する。
【0003】
一般に、LIDARシステムは、2つの主要な構成要素、すなわちレーザ光でシーンを照明するように構成されたプロジェクタ、および反射レーザ光を検出するための検出システムを備える。いくつかのLIDARシステムは、グローバル照明とも呼ばれる均質かつ平坦なレーザ光パターンでシーンを照明するプロジェクタを利用し、検出システムは、グローバル照明に続く反射光に基づいて距離情報を決定するように相応に構成される。しかしながら、本開示は、プロジェクタがレーザ光の離散スポットパターンでシーンを照明し、検出システムがスポットパターン照明に続く反射レーザ光に基づいて距離情報を決定するように構成されるLIDARシステムに関する。
【0004】
大多数の既知のLIDARシステムは、直接TOF(DToF)検出方法を利用する。これらのシステムは、ナノ秒パルスの体制で動作する強力なパルスレーザと、パルスレーザビームを走査する機械的な走査システムと、パルス検出器とを備える。この形式のシステムは、現時点において、カリフォルニア州Morgan HillのVelodyne LIDARなどのベンダーから入手可能である。技術水準のシステムの一例として、Velodyne HDL-64 Eが、毎秒5~15回転で機械的に回転する構造において、64個の高出力レーザおよび64個のアバランシェダイオード検出器を使用している。
【0005】
これらのDToFシステムは、高い空間精度で距離を測定することが知られている。しかしながら、これらのシステムは、いくつかの欠点も有する。例えば、これらのシステムは、きわめて高い出力レベルを有するレーザを必要とし、そのような出力レベルは、現時点において利用可能な半導体レーザでは達成できず、現時点において利用可能な半導体レーザの出力レベルよりも数桁高い。さらに、走査の目的のために機械的に回転する要素を使用していることで、この形式のシステムの小型化、信頼性、およびコスト削減に関する期待はさらに制限される。
【0006】
LIDARシステムのコンパクトさが、LIDARシステムが例えば自動車のフロントガラスまたはフロントバンパに組み合わせられる自動車分野の用途において重要な要素である。実際、LIDARシステムは、自動運転または運転者支援システムの開発における重要な要素である。この文脈において、LIDARシステムは、車両の環境内の他の車両または物体などの障害物を検出するために使用される。
【0007】
国際公開第2017/068199号に、ソリッドステート技術に基づくプロジェクタおよび検出システムをコンパクトなハウジング内に配置することを可能にするソリッドステートLIDARシステムが提案されている。このシステムは、DToF技術とは異なる距離ゲーティング検出技術に基づく。国際公開第2017/068199号に開示されたこのシステムは、各々のスポットがレーザ光のパルスの時間的シーケンスを含んでいる離散スポットパターンでシーンを照明するためのプロジェクタを備える。レーザ光は、VCSELとしても知られる半導体ベースのレーザであるソリッドステートレーザのアレイとして、小型で低出力のレーザシステムを形成するソリッドステートレーザによってもたらされる。レーザビームの各々は、レーザ光のパルスの時間的シーケンスを含むパルスレーザビームである。CMOSベースの距離ゲーティング検出器が、シーンによって反射させられた離散スポットパターンを表す反射レーザ光のスポットを検出するために使用される。さらに、検出器は、シーンの照明と同期して反射レーザ光を蓄積するための制御手段を備える。処理手段が、最終的に、蓄積された反射レーザ光に基づいてシーンまでの距離を計算することを可能にする。
【0008】
国際公開第2017/068199号に記載のとおりの離散スポットパターン照明に基づくLIDARシステムのためのソリッドステートプロジェクタの開発は、困難である。実際、異なる個々のレーザ光源が使用されるとき、これらに限られるわけではないが強度、ビームの広がり、角度放射照度、波長、パルス形状、および熱挙動のばらつきなど、個々のレーザ光源の特性のばらつきが存在する。これにより、時間および空間の両方において均質でないスポットパターンがシーンに投影されることになる。これらの要素はすべて、例えば距離決定の精度および/または正確度ならびにカバーすることができる距離レンジなど、LIDARシステムの全体的な性能に影響を及ぼす。
【0009】
したがって、離散スポットパターンを生成するためのLIDARプロジェクタを改善する余地が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
概要
本開示の目的は、離散スポットパターンでシーンを照明するための堅牢で信頼性があり、コンパクトで費用効果の高いプロジェクタを提供することであり、プロジェクタは、例えば自動車用途などの特定の用途に必要とされる許容可能な空間精度で距離を決定するためのソリッドステートLIDARシステムの一部としての使用が想定される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示は、添付の独立請求項に定義される。従属請求項は、有利な実施形態を定義する。
【0012】
本開示の一態様によれば、離散スポットパターンでシーンを照明するためのプロジェクタが提供される。
【0013】
本開示によるそのようなプロジェクタは、一次元または二次元レーザアレイなどのレーザアレイと、混合チャンバと、整形光学系と、プロジェクタレンズシステムとを備える。
【0014】
レーザアレイは、発散する第1のレーザビームを放射するように動作することができる複数の個別のソリッドステートレーザ光源を備える。
【0015】
混合チャンバは、プロジェクタの主光軸Zに沿って延びており、第1のレーザビームの各々を受光し、各々の第1のレーザビームについて、光線の少なくとも一部が隣接する第1のレーザビームの光線と重なり合うまで発散することを可能にするように構成される。
【0016】
混合チャンバを、中空体と理解すべきであり、混合チャンバの周囲の側面が三次元中空体を形成している。周囲の側面は、混合チャンバの壁である。
【0017】
整形光学系は、混合チャンバを出る第1のレーザビームの重なり合う光線を受光し、好ましくは重なり合う光線を再び集光し、各々が複数の第1のレーザビームから由来する光線を備える複数の個別の第2のレーザビームを生成するように構成される。
【0018】
プロジェクタレンズシステムは、第2のレーザビームを受光し、第2のレーザビームをシーンに向かって投影するように構成され、投影された第2のレーザビームは、離散スポットパターンを形成する。
【0019】
本開示によるプロジェクタによれば、以下でさらに詳細に説明されるように、先行技術の装置における多数の既存の欠点が同時に解決され、性能が改善される。
【0020】
好都合なことに、第1のレーザビームの混合は、整形光学系に入射する均質なパワーフィールドをもたらし、これは、第2のレーザビームによって形成されるより均一なスポットパターンをさらにもたらし、これは、例えば本プロジェクタを使用してシーンを照明するLIDARシステムの正確度を高める。
【0021】
さらに、この混合は、時間領域および空間領域においてシーンに投影されるパルス形状およびその光学特性の再現性を改善する。
【0022】
好都合なことに、第1のレーザビームのレーザ光を混合することによって、例えばVCSELレーザ源のアレイなどのソリッドステートレーザ光源に関する品質制約を低減することができる。実際、複数のレーザ源が混合されるため、第1のレーザビーム、すなわち単一のレーザエミッタが故障しても、第2のレーザビームの全体的な光強度および光分布への影響は小さい。これは、製造歩留まり、したがってVCSELアレイのコストを改善し、LIDARシステムの堅牢性も改善する。
【0023】
好都合なことに、小型のVCSELチップを、レーザアレイを形成するVCSELチップの一次元または二次元アレイとして配置することができる。各々のVCSELチップは、複数のレーザエミッタを備える。このようにして、より小型のVCSELチップを使用することによって、大きなチップを構築する生産性の問題が解決され、生産コストが削減される。
【0024】
好都合なことに、複数の第1のレーザビームの光強度を束ねて第2のレーザビームを形成することにより、第2のレーザビームの数が初期の第1のレーザビームの数よりも少なくなるように第2のレーザビームを形成することによって、第2のレーザビームの強度および輝度を高めることができる。これにより、検出の信頼性およびシステムのレンジが向上する。レーザビームの強度および輝度は、それぞれ、例えばワットで表されるスポットの表面積当たりの光パワー、および立体角当たりの光パワー、すなわち放射照度によって定義される。
【0025】
好都合なことに、整形光学系を、第2のレーザビームのスポットサイズを調節するために調整することができる。例えば、大きな直径のスポットサイズを、道路を照明するために前方方向に使用することができる一方で、より小さな直径のスポットを、周囲を照明するために使用することができる。
【0026】
好都合なことに、本開示によるプロジェクタを、例えば自動車用途に必要とされる高い空間精度を維持しつつ、反射レーザ光を検出するための距離ゲーティング検出技術を使用するLIDARシステムの一部とすることができる。実際、混合チャンバおよび整形光学系を設けることにより、種々の第1のレーザビームのコヒーレント光が混合され、得られる第2のレーザビームは、実質的に非コヒーレントなレーザ光を備える。結果として、距離ゲーティングに基づく先行技術のLIDARシステムを使用した場合に本発明の発明者によって観察された空間精度の低下につながる支配的なスペックルの問題が、大幅に低減される。
【0027】
実施形態において、混合チャンバの内壁の少なくとも一部分は、レーザ光を反射するための反射壁である。
【0028】
実施形態において、個別のソリッドステートレーザ光源レーザによって生成されるレーザ光は、800nm~1600nmの波長を有する。
【0029】
実施形態において、混合チャンバの長さHは、第1のレーザビームが混合チャンバを通って伝播した後に、各々の第1のレーザビームの光線の20%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは60%以上が、隣接する第1のレーザビームからの光線と重なり合うように決定される。
【0030】
いくつかの実施形態においては、混合チャンバを通って伝播した後に、各々の第1のレーザビームの光線の100%が、隣接する第1のレーザビームの光線と重なり合う。
【0031】
実施形態において、各々のレーザ光源は、15°以下の発散角度の第1のレーザビームを放射するように構成される。
【0032】
実施形態において、ソリッドステートレーザ光源は、タイルにグループ化される。次いで、タイルは、例えばタイルの一次元または二次元アレイを形成する。各々のタイルは、いくつかのソリッドステートレーザ光源、すなわちエミッタを備える。タイルを、例えばソリッドステート光源の一次元または二次元サブアレイなど、ソリッドステート光源のサブアレイと理解することができる。したがって、実施形態において、主光軸に沿って測定される混合チャンバの長さは、第1のレーザビームが混合チャンバを通って伝播した後に、各々のタイルについて、その光線の少なくとも一部が隣接するタイルの光線と重なり合うようにさらに定められる。実施形態において、タイルは、複数のレーザエミッタを備えるVCSELチップであり、各々のレーザエミッタをソリッドステートレーザ光源と理解すべきである。
【0033】
実施形態において、各々のタイルの光線の20%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは60%以上が、隣接するタイルの光線と重なり合う。いくつかの他の実施形態においては、各々のタイルのレーザ光の100%が、隣接するタイルの光線と重なり合う。
【0034】
好都合なことに、より安価な市販のVCSELタイルを、第1のレーザビームを生成するための一次レーザ光源として使用することができる。
【0035】
好都合なことに、一次レーザ源としてVCSELタイルを使用する場合、タイルを直列に接続することができ、必要な駆動電流が少なくなり、したがって必要な放熱が少なくなる。これも、システムのコストを削減し、システムの堅牢性および熱管理を改善する。
【0036】
実施形態において、混合チャンバの内壁の少なくとも一部分は、ミラーを備える。好都合なことに、レーザアレイの周辺の光源によって放射された光が、ミラーに衝突し、反射によって混合チャンバ内に戻ることができる。ミラーは、主光軸に垂直な平面において均質な光分布を得ることに寄与する。
【0037】
実施形態において、整形光学系は、複数のマイクロレンズを備えるマイクロレンズアレイを備え、各々のマイクロレンズは、第2のレーザビームのうちの1つを生成するように構成される。
【0038】
実施形態において、第1のマイクロレンズアレイは、各々のマイクロレンズが平面または曲面上に位置する焦点を備えるように構成され、平面または曲面は、第1のマイクロレンズアレイとプロジェクタレンズシステムとの間に位置する。
【0039】
さらなる実施形態において、第1のマイクロレンズアレイの各々のマイクロレンズは、曲面上に位置する焦点を備え、この曲面は、プロジェクタレンズシステムの曲面焦点面に対応する。好都合なことに、プロジェクタレンズシステムは、プロジェクタレンズシステムの光学収差の補正、より正確にはペッツバールフィールド曲率の補正のための追加のレンズを必要としない。
【0040】
実施形態において、第1のマイクロレンズアレイの各々のマイクロレンズは、曲面上に位置する後方焦点を備え、この曲面は、プロジェクタレンズシステムの曲面前方焦点面に対応する。
【0041】
いくつかの実施形態において、第1のマイクロレンズアレイのマイクロレンズの各々は、プロジェクタの主光軸と平行な光軸を備える。
【0042】
好ましい実施形態において、第1のマイクロレンズアレイのマイクロレンズの少なくとも一部は、プロジェクタの主光軸に平行ではない光軸を備える。好都合なことに、プロジェクタレンズシステムのサイズを縮小することができる。例えば、プロジェクタレンズシステムの直径を縮小することができる。
【0043】
実施形態において、レーザアレイの各々のレーザ光源は、放射面X-Y内に位置する発光面を有し、第1のレーザビームは、前記放射面X-Yに垂直な主光軸Zに平行な方向に伝播する。
【0044】
実施形態において、本開示によるプロジェクタは、ソリッドステートレーザ光源によって放射された第1のレーザビームの発散角度を減少させるように構成された第2のマイクロレンズアレイをさらに備え、好ましくは、第2のマイクロレンズアレイは、レーザアレイと第1のマイクロレンズアレイとの間に配置される。
【0045】
好ましい実施形態において、第1のマイクロレンズアレイ内のマイクロレンズの数は、レーザアレイのソリッドステートレーザ光源の数よりも少ない。一般に、第1のマイクロレンズアレイのマイクロレンズの数は、離散スポットパターンにもたらす必要があるスポットの数の関数として選択される。
【0046】
レーザアレイが複数のVCSELチップによって形成され、プロジェクタが第2のマイクロレンズアレイを備えるいくつかの実施形態において、第2のマイクロレンズアレイ内のマイクロレンズの数は、レーザアレイのエミッタの総数以下である。レーザアレイのエミッタの総数は、レーザアレイの各々のVCSELチップ内のすべてのエミッタの合計である。
【0047】
他の実施形態において、プロジェクタは、ディフューザ、サーキュレータ、ブラッグ体積格子、およびビームエキスパンダのうちのいずれか、またはこれらの任意の組合せをさらに備える。
【0048】
好都合なことに、とくにはビームエキスパンダを備えるプロジェクタの実施形態において、タイル間に不可避的に存在する継ぎ目の有害な影響に悩むことなく、タイルベースのアレイを使用することが可能である。実際、ビームエキスパンダは、第1のマイクロレンズアレイに入射する配光の均質性を高めるために、タイル間領域の照明を増加させるように構成される。
【0049】
本開示のさらなる態様によれば、シーンの1つ以上の物体までの距離を決定するためのソリッドステートLIDARシステムが提供される。
【0050】
そのようなソリッドステートLIDARシステムは、上述のプロジェクタの他に、例えば距離ゲーティング式または直接飛行時間式の検出器などのシーンの1つ以上の物体によって反射された離散スポットパターンを表す反射レーザ光のスポットを検出するように構成されたマルチピクセル検出器を備える受光装置と、シーンの照明に同期して反射レーザ光を検出および蓄積するようにプロジェクタおよび受光装置を制御するためのコントローラと、蓄積された反射レーザ光に基づいてシーンの1つ以上の物体までの距離を計算するように構成された処理手段とを備える。
【0051】
距離ゲーティング検出技術に基づくいくつかの実施形態において、ソリッドステートLIDARシステムは、少なくとも2つの連続する検出時間ウインドウにおいて反射レーザ光を検出するように構成され、処理手段は、2つの連続する検出時間ウインドウにおいて検出されたレーザ光に基づいて物体までの距離を計算するように構成される。
【0052】
距離ゲーティング検出技術に基づく実施形態において、ソリッドステートLIDARシステムのコントローラは、複数の個別のソリッドステートレーザ光源の各々が第1のパルスをFP≦1/(TOFmax+PW)であるようなパルス周波数で放射するように、レーザアレイを制御するように構成され、FPは、パルス周波数であり、PWは、時間パルス幅であり、TOFmaxは、決定すべき物体までの所定の最大距離Dmaxにおける最大飛行時間である。この最大距離を、LIDARシステムの最大動作レンジと解釈することができる。この最大動作レンジは、例えば50~500メートルの値であってよい。
【0053】
いくつかの実施形態において、タイル間のタイル間間隔ΔTは、0.3ミリメートル以上であり、タイルの各々について、タイルのソリッドステートレーザ光源間の間隔(ΔVCSEL)は、0.1ミリメートル以下である。
【0054】
実施形態において、処理手段は、プロセッサまたはマイクロプロセッサを備える。
実施形態において、プロジェクタのプロジェクタレンズシステムは、対物レンズなどのプロジェクタレンズを備える。
【0055】
実施形態において、1つ以上の光学レーザ光反射要素が、第1のレーザビームの移動経路を延長するために混合チャンバの内側に配置される。好都合なことに、第1のレーザビームの充分な混合を維持しながら、混合チャンバの長さを短くすることができる。
【0056】
図面の簡単な説明
本開示のこれらの態様およびさらなる態様が、例として、添付の図面を参照して、さらに詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【
図1】本開示によるLIDARシステムを概略的に示している。
【
図2】シーンに投影された離散スポットパターンを概略的に示している。
【
図3】パルスレーザビームを形成するパルスの時間的シーケンスを概略的に示している。
【
図4】いくつかのフレームの繰り返しを概略的に示している。
【
図5】本開示の実施形態によるプロジェクタの断面図を概略的に示している。
【
図6】VCSELタイルの幾何学的形状を概略的に示している。
【
図7】第1のレーザビームを混合して第2のレーザビームを形成するための本開示による概念を概略的に示している。
【
図8】本開示の実施形態によるプロジェクタの断面図を概略的に示しており、プロジェクタは、VCSELタイルレーザアレイを備えている。
【
図9】焦点が曲面上に位置するマイクロレンズアレイを備える本開示の一実施形態によるプロジェクタの一部分の断面図を概略的に示している。
【
図10】焦点が曲面上に位置するマイクロレンズアレイを備える本開示のさらなる実施形態によるプロジェクタの一部分の断面図を概略的に示している。
【
図11】各々のマイクロレンズがプロジェクタの主光軸に平行な光軸を有するマイクロレンズアレイを備えるプロジェクタの断面図を概略的に示している。
【
図12】前部放射型VCSELレーザアレイを備えるプロジェクタの一部分を概略的に示している。
【
図13】後部放射型VCSELレーザアレイを概略的に示している。
【
図14a】本開示によるプロジェクタの種々の実施形態の断面を概略的に示している。
【
図14b】本開示によるプロジェクタの種々の実施形態の断面を概略的に示している。
【
図14c】本開示によるプロジェクタの種々の実施形態の断面を概略的に示している。
【
図14d】本開示によるプロジェクタの種々の実施形態の断面を概略的に示している。
【
図14e】本開示によるプロジェクタの種々の実施形態の断面を概略的に示している。
【
図14f】本開示によるプロジェクタの種々の実施形態の断面を概略的に示している。
【
図14g】本開示によるプロジェクタの種々の実施形態の断面を概略的に示している。
【
図14h】本開示によるプロジェクタの種々の実施形態の断面を概略的に示している。
【
図15a】
図14bに示した第2のマイクロレンズアレイの光学的効果を概略的に示している。
【
図15b】
図14bに示した第2のマイクロレンズアレイの光学的効果を概略的に示している。
【
図16a】
図14fに示したビームエキスパンダについて可能な実装形態を概略的に示している。
【
図16b】
図14fに示したビームエキスパンダについて可能な実装形態を概略的に示している。
【
図17a】混合チャンバの2つの実施形態を概略的に示している。
【
図17b】混合チャンバの2つの実施形態を概略的に示している。
【
図18】サーキュレータの一実施形態を概略的に示している。
【
図19】ディフューザの動作原理を概略的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0058】
図面の図は、一定の縮尺で描かれているわけではなく、比例にて描かれているわけでもない。一般に、図中で、同一の構成要素は同一の参照番号によって指し示されている。
【0059】
実施形態の詳細な説明
本開示を、特定の実施形態に関して説明するが、それらは本開示の例示にすぎず、限定として解釈されるべきではない。本開示が、具体的に図示および/または説明される内容によって限定されず、本開示の全体的な教示に照らして、代案または変更された実施形態を開発できることを、当業者であれば理解できるであろう。説明される図面は、あくまでも概略的なものにすぎず、限定をもたらすものではない。
【0060】
動詞「備える」ならびにそれぞれの活用形の使用は、そこで述べられた要素以外の要素の存在を排除しない。要素に先行する品詞「a」、「a」、または「前記」の使用は、そのような要素が複数存在することを排除しない。
【0061】
さらに、本明細書および特許請求の範囲における第1、第2、などの用語は、同様の要素間の区別の目的で使用され、必ずしも時間的、空間的、ランキング的、または何らかの他のやり方での順序を表すために使用されているわけではない。そのように使用される用語が、適切な状況下で交換可能であり、本明細書に記載される開示の実施形態は、本明細書において説明または例示される順序以外の他の順序で動作できることを、理解すべきである。
【0062】
本明細書の全体を通して、「一実施形態」または「実施形態」への言及は、それらの実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、または特性が、本開示の1つ以上の実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書の全体のさまざまな箇所における「一実施形態において」または「実施形態において」という語句の出現は、必ずしもすべてが同じ実施形態を指しているわけではないが、そうであってもよい。さらに、本開示から当業者にとって明らかであるとおり、特定の特徴、構造、または特性を、1つ以上の実施形態において、任意の適切なやり方で組み合わせることが可能である。
【0063】
本開示の一態様によれば、離散スポットパターンでシーンを照明するためのプロジェクタが提供される。そのようなプロジェクタを、例えば、シーンまでの距離を決定するためのソリッドステートLIDARシステムで使用することができる。本開示によるプロジェクタの種々の実施形態の断面図が、
図5、
図8~
図11、および
図14a~
図14hに示されている。これらの種々の実施形態を、以下でさらに説明する。
【0064】
LIDARシステムで使用される場合、本発明のプロジェクタの実施形態は、LIDARシステムの正確度および精度の改善という利点を提供する。本明細書においてLIDARシステムに関して使用される場合、「正確度」という用語は、距離測定値の平均と実際の距離との間の差を指し、より高い正確度は、より小さい差に対応し、「精度」という用語は、平均の周りの距離測定値の広がり(標準偏差または同等の尺度によって表される)を指し、より高い精度は、より小さい広がりに対応する。
【0065】
一般性を失うことなく、本開示のプロジェクタは、LIDARシステムへの適用に関連して以下で説明される。LIDARシステムは、例えば、直接飛行時間(DToF)の原理、または距離ゲーティング、または任意の他の距離決定方法に基づいて動作することができる。当業者であれば、本開示のプロジェクタシステムを、これらに限られるわけではないが変位に基づく測距システムなど、他の計測およびテレメトリシステムにおいても使用できることを、理解できるであろう。本開示のプロジェクタシステムは、非テレメトリ用途においても使用可能である。
【0066】
ソリッドステートLIDARシステム、全般
LIDARシステムは、シーンをレーザ光で照明し、反射レーザ光を検出器で測定することによって、シーンの1つ以上の物体までの距離を測定する任意のシステムと理解されなければならない。しかしながら、本開示は、LIDARシステムの特定の分類、すなわち半導体技術を利用するいわゆる「ソリッドステート」LIDARシステムに取り組む。ソリッドステートLIDARシステムは、レーザ光を生成するためのソリッドステート技術、および反射レーザ光を検出するための検出器の両方を使用するシステムと理解されなければならない。例えば、実施形態において、レーザ光はVCSEL型半導体レーザによって生成され、検出器はCMOSベースの半導体ピクセル検出器である。
【0067】
シーンは、例えば自動車のフロントガラスまたはバンパーに取り付けられたLIDAR装置によって観察される領域などの領域として理解されるべきである。LIDAR装置の視野に応じて、シーンは、広い領域またはより狭い領域をカバーすることができる。自動車用途における視野は、例えば、30°×10°、120°×20°、または任意の他の視野である。シーンは、例えば、LIDAR装置からさまざまな距離に位置する種々の物体、または少数の物体、またはただ1つの物体を含むことができる。LIDARシステムは、シーンの距離マッピングを実行することによって、物体までのさまざまな距離またはシーンの各部分までの距離を特定することを目的とする。
【0068】
LIDARシステムの種類に応じて、LIDARシステムによって使用されるレーザ光は、連続波、パルス波、または振幅変調波であってよい。
【0069】
本開示によるソリッドステートLIDARシステム1の実施形態の例が、
図1に概略的に示されている。シーン99までの距離を決定するためのそのようなシステム1は、各スポットがレーザ光のパルスの時間的シーケンスを含んでいる離散スポットパターン150でシーン99を照明するためのプロジェクタ100と、例えば距離ゲーティングマルチピクセル検出器または直接飛行時間ベースのマルチピクセル検出器などのシーンの物体によって反射された離散スポットパターンを表す反射レーザ光のスポットを検出するように構成されたマルチピクセル検出器を備える受光装置300とを備える。反射レーザ光は、反射離散スポットパターン350を形成し、
図1に概略的に示されている。反射離散スポットパターン350は、シーンの物体によって反射された離散スポットパターン150に対応し、距離ゲーティングマルチピクセル検出器において複数の検出スポットとして観察される。
【0070】
図1において、投影スポットパターンおよび反射スポットパターンが、途切れた線として概略的に表されているが、これらが説明の目的のためのものにすぎず、これらの途切れた線はパルスの実際のタイミングを表すものではないことに、留意されたい。実際には、実施において、以下で説明されるように、パルスシーケンスのパルスが放射される場合、シーケンスの次のパルスは、一般に、先のパルスがおそらくは物体の反射後に検出器において検出された後でのみ放射される。
【0071】
シーン99を照明している離散スポットパターン150の一例が、
図2にさらに示されている。
図2における円は、離散スポットパターン150のスポットを概略的に示している。離散スポットを、
図2に示されるように、互いに分離されたスポットと解釈すべきである。スポットパターンは、規則的なパターンまたは不規則なパターンであってよい。スポットパターンのスポットの数は、実施形態ごとにさまざまであってよいが、例えば10000個~100000個の間の範囲である。いくつかの実施形態において、スポットの数は、はるかに少なくてもよく、わずかに4個であってもよい。上述したように、各スポットは、典型的にはパルスレーザビームによってもたらされるレーザ光のパルスシーケンスを含む。
【0072】
本開示によるLIDARシステムの離散スポットを形成するレーザビームによって生成されるレーザ光の波長は、典型的には800nm~1600nmの間である。
【0073】
距離ゲーティングマルチピクセル検出器が使用される実施形態において、そのような距離ゲーティングマルチピクセル検出器は、複数のピクセルを含む検出器と解釈されるべきであり、検出器は、少なくとも2つの連続する検出時間ウインドウにおいてレーザ光を検出および蓄積するように構成される。
【0074】
距離ゲーティングマルチピクセル検出器の一例が、国際公開第2017/068199号に記載されている。そのような検出器は、直接TOF技術とは異なる距離ゲーティング技術に基づく。距離ゲーティング技術において、反射レーザ光は、少なくとも2つの連続する時間ウインドウにおいて時間の関数として検出され、時間ウインドウは、離散スポットパターンを形成する放射レーザパルスのパルス幅に基本的に等しい。第1の時間ウインドウは、一般に、パルスの放射に対応する時間期間に実質的に重複する。少なくとも2つの時間ウインドウにおいて特定された強度に基づいて、シーンまでの距離を決定することができる。
【0075】
ソリッドステートLIDARシステム1は、
図1に概略的に示されるように、シーンの照明に同期して反射レーザ光を検出および蓄積するように受光装置300およびプロジェクタ100を制御するためのコントローラ200をさらに備える。さらに、LIDARシステム1は、蓄積された反射レーザ光に基づいてシーンの物体までの距離を計算するように構成された処理手段400を備える。実施形態において、コントローラ200は、従来からのクロック回路または発振器を含むことができる同期手段を備える。処理手段400は、一般に、検出された反射レーザ光に基づいて物体までの距離を計算するための当技術分野で公知のアルゴリズムを備えるプロセッサまたはコンピュータを備える。
【0076】
他の実施形態において、ソリッドステートLIDARシステムは、シーンまでの距離を決定するために飛行時間技術を使用していないが、代わりに、例えば国際公開第2015/004213号に開示されているように変位技術が使用される。これらの種類の変位ベースのLIDARシステムは、マルチピクセル検出器と、所定のスポット位置を参照してマルチピクセル検出器で検出された検出スポットの変位を判定することによって、物体までの距離などの物体の特性を決定するように構成された処理手段とを備える。以下でさらに詳細に説明されるように、本開示によるプロジェクタは、飛行時間ベースのLIDARシステムまたは変位ベースのLIDARシステムの両方に使用することが可能である。
【0077】
実施形態において、本開示によるソリッドステートLIDARシステムは、少なくともプロジェクタ100および受光装置300を囲むハウジングを備える。他の実施形態において、本開示によるソリッドステートLIDARシステムは、プロジェクタ100、受光装置300、およびコントローラ200を囲み、好ましくは処理手段400も備えるハウジングを備える。
【0078】
実施形態において、受光装置300は、レーザ光の反射パターンを距離ゲーティングマルチピクセル検出器に投影するための対物レンズを備える。好ましい実施形態において、受光装置300は、例えば昼光を除去するための狭帯域フィルタをさらに備える。
【0079】
上述したように、物体までの距離を決定するために、複数のフレームが、平均物体距離を決定するために考慮される。したがって、離散スポットパターンによるシーンの照明が、複数の距離、すなわち単一フレーム距離測定値が得られるように、複数回繰り返され、複数の単一フレーム測定値の平均値を得ることを可能にする。フレームを、一般的には投影されるレーザビームにおけるパルスのパルス周波数F
Pよりもはるかに低いフレームレートF
Fで繰り返すことができる。
図4に、フレーム60の繰り返しの一例が概略的に示されており、フレームレートF
Fが示されている。この例には、3つのフレームの繰り返しが示されており、実際には、平均距離値を決定するためのフレームの繰り返し回数は、一般には、はるかに多い。
図4に概略的に示されるように、各々のパルス列50に続いて、露出値を読み出して取得データを処理するために、処理時間65が必要である。到達可能なフレームレートF
Fは、典型的にはHzの範囲内であり、実施形態において、フレームレートは、例えば5Hz~50Hzである。フレームレートは、一般に、CMOS検出器の速度によって制限され、さらには、一般に、眼の安全規制によって制限される。
【0080】
離散スポットパターンを生成するためのプロジェクタ、全般
本開示によるソリッドステートLIDARシステム1のためのプロジェクタ100の一実施形態が、
図14aに概略的に示され、
図5にさらに詳細に示されている。プロジェクタ100は、例えば一次元または二次元レーザアレイ110などのレーザアレイ110と、混合チャンバ140と、整形光学系120と、プロジェクタレンズシステム130とを備える。
【0081】
混合チャンバを、中空三次元体と理解すべきである。
図5において、点線の輪郭が混合チャンバ140を示しており、混合チャンバの周壁が参照番号140aで示されている。混合チャンバ140の実施形態の例が、
図17aおよび
図17bに示され、以下でさらに説明される。追加の構成要素を含む本開示によるプロジェクタの他の実施形態が、
図14b~
図14hに示され、以下でさらに説明される。
【0082】
レーザアレイ110は、複数の個別のソリッドステートレーザ光源111を備える。実施形態において、ソリッドステートレーザ光源111は、例えばVCSEL半導体レーザなどの半導体レーザである。
【0083】
図5に示される実施形態において、ソリッドステートレーザ源は、典型的には、アレイの放射面X-Yに位置する発光面111aを有する。レーザアレイ110は、各々のレーザ光源がプロジェクタの主光軸Zに平行な方向に発散する第1のレーザビーム10を同時に放出するように動作可能である。
図5に示されるこの例示的な実施形態において、プロジェクタの主光軸Zは、放射面X-Yに対して垂直である。このようにして、主光軸に平行な方向に伝搬する複数の平行な第1のレーザビームが得られる。
【0084】
他の実施形態において、各々のソリッドステートレーザ光源の発光面は、必ずしもプロジェクタの主光軸Zに対して垂直ではない。実施形態において、レーザアレイは、例えば、おおむね湾曲した基板表面に形成されてもよく、これにより、個々のレーザビームのそれぞれの方向は、互いに厳密に平行ではなく、平均光軸からさまざまな程度に逸脱する。
【0085】
実施形態において、第1のレーザビームは、連続波レーザビームである。他の実施形態において、第1のレーザビームはパルス状であり、ソリッドステートレーザ源によって放射されたパルス状の第1のレーザビームの各々は、時間パルス幅PWを有する第1のパルスの時間的シーケンスを含む。
【0086】
混合チャンバ140は、主光軸Zに沿って延びており、各々の第1のレーザビームの光線の少なくとも一部分が隣接する第1のレーザビームの光線と重なるまで、主光軸Zに平行な方向に第1のレーザビーム10の各々を受け入れて伝搬させることができるように構成されている。実際、ソリッドステートレーザ源によって放射された第1のレーザビームは、例えば5°~15°の間の発散角度を有する発散ビームであるため、第1のビームは、混合チャンバ内で所与の距離にわたって伝播した後に、重なり始める。重なりを、空間的な重なりと理解すべきである。
【0087】
実施形態において、第1のレーザビームの発散角度は、25°以下である。
上述のように混合チャンバを使用し、レーザビームの光線が隣接するレーザビームからの光線と重なることを可能にすることにより、各々の個別のレーザ源のコヒーレントレーザ光が、複数の他のレーザ源からのコヒーレントレーザ光と混合される。このように、第1のレーザビームの混合は、整形光学系120に入射する光のコヒーレンスの低下をもたらし、プロジェクタレンズシステム130によって放射されるスポットパターンを形成する第2のレーザビームのコヒーレンスを低下させる。
【0088】
混合チャンバは、主光軸Zに沿って測定される長さHを有する。混合チャンバの長さが長いほど、各々のレーザビームの光線は、他のレーザビームからの光線とより多く混合される。
【0089】
実施形態において、混合チャンバの長さHは、第1のレーザビームが混合チャンバを通って伝播した後に、各々の第1のレーザビームのレーザ光の20%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは60%以上が、隣接する第1のレーザビームと重なるように決定される。他の実施形態においては、混合チャンバを通って伝播した後に、各々の第1のレーザビームのレーザ光の100%が、隣接する第1のレーザビームと重なる。
【0090】
当業者であれば、一様なスポットパターンを生成するための均質なパワーフィールドを生成するために必要な混合の量に従って、混合チャンバの長さHを定めるであろう。同時に、空間精度へのスペックルの影響を最小限に抑えるために、レーザ光のコヒーレンスは充分に低減されている。長さHを決定するとき、LIDARシステムをコンパクトに保つ必要性も考慮される。当業者であれば、例えば反復プロセスに従い、充分な量の混合が達成されるように長さHを変更することによって、必要とされるレーザ光の重なりの量を決定することができる。混合チャンバの最適な長さHを決定する方法について、他の例が、以下でさらにより詳細に説明される。
【0091】
整形光学系120は、混合チャンバ140とプロジェクタレンズシステム130との間に位置する。整形光学系は、混合チャンバ140を出る第1のレーザビーム10の重なり合う光線を受け取り、重なり合う光線を再び集束させて複数の個別の第2のレーザビーム20を形成するように構成される。これらの第2のレーザビーム20は、離散スポットパターン150を形成する。離散レーザビームを、空間的に分離されたビームと理解すべきである。
【0092】
第1のレーザビームがパルス状のレーザビームである実施形態においては、第2のレーザビームもパルス状のレーザビームであり、パルス状の第2のレーザビームの各々は、時間パルス幅PWを有する第2のパルスの時間的シーケンスを含む。実際、第2のレーザビームは、混合チャンバも整形光学系もレーザビームの時間パルス幅を変更しないため、第1のパルスレーザビームと同じ時間パルス幅PWを依然として有する。また、第2のパルス状のレーザビームの周波数は、第1のパルス状のレーザビームの周波数と同じである。
【0093】
実際、混合チャンバは、混合チャンバの長さに対応する所与の距離に沿って第1のレーザビームを発散させることだけを可能にする。
【0094】
しかしながら、実施形態において、整形光学系120は、整形光学系によって形成される第2のレーザビームの数が第1のレーザビームの数よりも少ない場合、第1のビームの強度と比較して第2のビームの強度を変化させる可能性がある。
【0095】
いくつかの他の実施形態において、整形光学系は、第1のレーザビームよりも低い強度を有する第2のレーザビームを生成する。
【0096】
図3が、パルス状の第1および第2のレーザビームを有する実施形態に関する。
図3には、パルス状の第2のレーザビームを形成するパルス11の時間的シーケンスの一例が、概略的に示されている。このようなパルスの時間的シーケンスは、パルス列50とも呼ばれる。この説明のための例には、5つのパルスのみが示されているが、実際には、パルス列内のパルスの数は、一般的には、はるかに多い。例えば、いくつかの実施形態において、パルス列内のパルスの数は、50~500個の間の範囲である。これらのパルスは、典型的には、ブロックパルスである。パルス11の時間パルス幅PW、およびパルス周波数F
Pの逆数であるパルス周期P
Pが、
図3に示されている。シーケンス内のパルスの数は、例えば眼の安全上の理由で制限される可能性があるパルス当たりの振幅などのさまざまな要因に依存することができ、かつ/または、パルスの数を、反射レーザ光を検出するための充分な信号対雑音比が得られるように定めることができる。
【0097】
実施形態において、ソリッドステートLIDARシステム1のコントローラ200は、複数の個別のソリッドステートレーザ光源の各々がFP≦1/(TOFmax+PW)であるようなパルス周波数FPで第1のパルスを放射するように、レーザアレイ110を制御するように構成され、PWは、上記で定義した時間パルス幅であり、TOFmaxは、決定される必要がある所定の最大距離Dmaxの最大飛行時間である。この最大距離Dmaxを、ソリッドステートLIDARシステムの最大動作レンジと理解することができ、これが、シーン内の物体の検出および距離の決定が依然として可能な最大距離を定める。この最大距離Dmaxは、例えば50~500メートルの間の値であってよい。FPを上記で定義した最大パルス周波数以下となるように定めることで、所与のパルスが放射されるときに、時間的シーケンスの次のパルスが、最大距離Dmaxに位置する物体によって反射された先行のパルスが距離ゲーティングマルチピクセル検出器において検出されたときにのみ放射されることが保証される。これにより、エイリアシングとして知られる問題が回避される。
【0098】
実施形態において、パルス列50のパルス周波数F
Pは、
図3に示されるように、典型的にはkHzの範囲であり、例えば10kHz~500kHzの間である。
【0099】
上述したように、プロジェクタ100は、プロジェクタレンズシステム130をさらに備える。プロジェクタレンズシステム130は、離散スポットパターンを形成する第2のレーザビームを受光し、第2のレーザビームによって形成されたこの照明パターン150をシーン99に向けて投影するように構成された1つ以上の光学レンズを備える光学系である。
【0100】
国際公開第2017/068199号に記載されているLIDARシステムなどの先行技術のシステムにおいて、プロジェクタレンズシステムは、複雑でカスタマイズされた高価なレンズシステムである。実際、ペッツバールフィールド曲率として周知のとおり、単一のレンズは一般に平坦な焦点面を有さないため、単純なプロジェクタレンズを使用することはできない。結果として、プロジェクタレンズシステムがスポットパターンをシーンに投影しているとき、スポットパターンのすべてのスポットの焦点が無限遠にあるわけではない。したがって、この非平坦な焦点面を補正するために、補正を適用する必要がある。
【0101】
本開示によるプロジェクタのプロジェクタレンズシステム130は、整形光学系120を、その焦点面が湾曲し、プロジェクタレンズシステム130の湾曲した焦点面と一致するように設計することができるため、国際公開第2017/068199号のプロジェクタシステムと比べて単純化される。このようにして、単純なプロジェクタレンズを使用して、光パターンを投影することができる。実際、整形光学系120が湾曲した焦点面を提供するため、さらなる補正レンズは必要とされない。結果として、主光軸Zに沿ったプロジェクタレンズシステム130の長さが短くなる。したがって、この減少は、混合チャンバの追加に起因するプロジェクタの長さの増加を補償または部分的に補償することができる。実施形態において、以下でさらに説明されるように、X-Y平面に垂直な平面内のプロジェクタレンズのサイズも縮小される。本開示によるプロジェクタレンズシステム130が、先行技術のプロジェクタレンズシステムと比較した場合にどのように単純化されるかを、以下でさらに説明する。
【0102】
実施形態において、混合チャンバの内壁の少なくとも一部分は、
図5および
図8に概略的に示されるとおり、混合チャンバの周囲を越えて延びるレーザ光が反射によって混合チャンバ内に戻されるように、レーザ光を反射するための反射壁170である。
【0103】
実際、光源の発散角度および混合チャンバの長さHに応じて、アレイの周辺部分の光源によって放射された光は、反射壁に衝突し、反射によって混合チャンバ内に戻ることができる。さらに、反射壁は、より詳細にさらに説明されるように、第1のレーザビームの混合後に、主光軸に垂直な平面内で均質な光分布を得るうえで役に立つ。
【0104】
反射壁170を形成するために、当業者であれば、例えば、レーザ光を反射するように滑らかで光沢のある材料を選択することができる。実施形態において、混合チャンバ140の内壁の少なくとも一部分は、レーザ光を反射するためのミラーを備える。
【0105】
いくつかの実施形態において、混合チャンバの反射壁は、拡散反射とは対照的に、鏡面反射のために構成される。
【0106】
本開示によるさらなる実施形態においては、1つ以上の光学レーザ光反射要素が、第1のレーザビームの移動経路を延長するために混合チャンバの内側に配置される。このようにして、第1のレーザビームの充分な混合を維持しながら、混合チャンバの長さHを短くすることができる。
【0107】
マイクロレンズアレイ
実施形態において、整形光学系120は、複数のマイクロレンズML[i]を備える第1のマイクロレンズアレイ121を備える。第1のマイクロレンズアレイ121は、
図14a~
図14hにおいても参照番号121で示されている。例えば、
図7に、第1のマイクロレンズアレイ121の3つのマイクロレンズ、ML[1]、ML[2]、およびML[3]を示す断面図が示されている。各々のマイクロレンズは、固有の光軸を有する。これらの複数のマイクロレンズの各々は、それぞれの第2のレーザビームを形成するように構成される。したがって、マイクロレンズの数が、形成される第2のレーザビームの数、したがって離散スポットパターン内のスポットの数を定める。
【0108】
マイクロレンズアレイは、MLAと略されるが、例えばレンズなどの小型化された個々の光学素子のアレイを包含すると理解され、したがって、個々の光学素子の寸法の大きさの程度は、一般に、マイクロメートルからミリメートルの範囲である。
【0109】
上述したように、離散スポットパターン内のスポットの数は、一般に、10000から100000の範囲である。実施形態において、離散スポットの数は、例えば約20000であり、したがって、これらの実施形態において、第1のマイクロレンズアレイのマイクロレンズの数は、20000である。
【0110】
実施形態において、マイクロレンズの単一素子サイズは、約79マイクロメートルであり、マイクロレンズによって形成される投影スポットは、約15マイクロメートルである。
【0111】
いくつかの実施形態において、第1のマイクロレンズアレイのマイクロレンズの数は、レーザ光源の数に等しいが、他の実施形態においては、第2のビームのパルス強度が第1のビームのパルス強度よりも大きくなるように、第1のマイクロレンズアレイのマイクロレンズの数が、レーザ光源の数よりも少ない。
【0112】
レーザ光源の数が第1のMLAのマイクロレンズの数よりも多い実施形態は、いくつかの利点を有する。実際、シーンへと投影されるビーム当たりの出力が増加するだけでなく、個々のレーザ光源の故障の悪影響も低減される。
【0113】
実施形態において、MLAのマイクロレンズの各々は、六角形の形状を有する。この種のマイクロレンズの構成によれば、約95%の効率に達することができ、すなわち第1のレーザビームから第2のレーザビームへの変換時にレーザ光の5%が失われるにすぎない。
【0114】
マイクロレンズアレイを、当技術分野で知られているフォトリソグラフィプロセスを使用して基板上に形成することができる。そのようなプロセスは、マイクロレンズが例えば30マイクロメートル~100マイクロメートルの直径などのマイクロメートル程度の直径と、30マイクロメートル~100マイクロメートルの範囲内の焦点とを有するマイクロレンズアレイを製造することができる。
【0115】
いくつかの実施形態においては、例えば
図11に示されるように、第1のマイクロレンズアレイ121の個々のマイクロレンズML[i]の光軸Z
iが、主光軸Zに平行である。例えば
図9および
図10に示される他の実施形態において、マイクロレンズML[i]の光軸は、以下でさらに説明されるように、必ずしも主光軸Zに平行ではない。
【0116】
実施形態において、マイクロレンズアレイは、上述の光学的問題、すなわちペッツバールフィールド曲率として知られるとおり、光学レンズの焦点面が平坦ではなく、湾曲しているという事実を補正するようにさらに構成される。実際、プロジェクタレンズシステムが、平面ではなく、湾曲した焦点面を有する場合、結果として、投影されるスポットパターンのすべてのスポットが無限遠に焦点を有するのではなく、スポットの一部のみが焦点の合った状態となる。したがって、すべてのスポットが表面積当たりの最大強度を有するわけではない。一般に、中央のスポットは焦点が合った状態であり、外側のスポットは焦点が合っていない。先行技術のLIDARシステムにおいては、この問題を改善するために、プロジェクタレンズシステムは、対物レンズに加えて、これらの光学収差を補正するための1つ以上の追加の補正レンズを備える。これは、プロジェクタをより高価にし、より大きくし、より複雑にする。
【0117】
実施形態において、
図8に概略的に示されるように、第1のマイクロレンズアレイ121は、各々のマイクロレンズML[i]が、平面FP上に位置する焦点RFP[i]、より正確には後方焦点を備えるように構成され、平面FPは、マイクロレンズアレイ121とプロジェクタレンズシステム130との間に位置する。
【0118】
本開示による他の実施形態において、マイクロレンズアレイは、各々のマイクロレンズが、例えば
図8に示されるような平面ではなく、曲面CFP上に位置する焦点、より正確には後方焦点RFP[i]を備えるように構成される。曲面CFPは、
図9~
図11に示されている。この曲面CFPは、プロジェクタの虚像面に相当する。より詳細には、曲面は、プロジェクタレンズシステムの湾曲した焦点面、より正確には湾曲した前方焦点面に相当する。換言すると、マイクロレンズアレイは、プロジェクタレンズシステムの湾曲した前方焦点面に一致する湾曲した後方焦点面を有する。このようにして、湾曲した焦点面を有するマイクロレンズアレイを設けることにより、プロジェクタ100のプロジェクタレンズシステム130を、プロジェクタレンズのペッツバール曲率を補正するために種々の追加の補正レンズを必要とする例えば国際公開第2017/068199号に開示されているプロジェクタレンズシステムと比較して、大幅に単純化することができる。
【0119】
実施形態において、湾曲した焦点面CFPは、プロジェクタレンズシステム130の湾曲した焦点面に対応する。
【0120】
図11に示される実施形態においては、上述のように、個々のマイクロレンズML[i]の光軸Z
iが、主光軸Zに平行である。
【0121】
他方で、
図9および
図10に示される実施形態においては、マイクロレンズML[i]の少なくとも一部が、主光軸Zに平行でない光軸Z
iを有する。好都合なことに、これらの実施形態に関して、プロジェクタレンズシステム130のサイズ、すなわち主光軸Zに垂直な平面内のサイズを、各々のマイクロレンズの光軸Z
iが主光軸に平行である実施形態と比べて、低減することができる。例えば、プロジェクタレンズシステム130が標準的なプロジェクタレンズによって形成される場合に、プロジェクタレンズの直径を縮小することができる。
【0122】
半導体レーザ光源
実施形態において、レーザアレイ110は、各々のVCSELチップがレーザエミッタのアレイを備えている1つ以上のVCSEL(垂直共振器型面発光レーザ)チップによって形成される。これらのレーザエミッタの各々を、個々のソリッドステート光源と理解すべきである。VCSELエミッタは、発光面111aを形成するVCSELチップの上面から垂直にレーザビームを放射する半導体レーザダイオードの一種である。VCSELエミッタの発光面は、一般に円形であり、例えば10マイクロメートル~25マイクロメートルの範囲の直径など、マイクロメートル範囲の直径を有する。VCSELエミッタのアレイが形成されるとき、個々のVCSELエミッタは、典型的には10マイクロメートル~60マイクロメートルの距離であるVCSEL間間隔だけ離れて位置する。例えば数百~数千個など、複数のVCSELエミッタを組み合わせることにより、一次元または二次元のレーザアレイが形成される。
【0123】
VCSELレーザの発光面から放射されるレーザ光は、一般的には3°~15°の範囲内である半開口角度として定義される発散角度θ
VCSELを有し、すなわちレーザビームの開口角度または全幅は、6°~30°の範囲内である。実際、レーザ光源によって放射されるレーザ光は、シーンを照明する離散スポットを維持するために、可能な限り小さくなければならない。VCSELエミッタの発散角度θ
VCSELは、
図12に概略的に示されており、レーザビームの半開口角度または半幅として示されている。レーザビームの発散角度または幅の値は、一般に1/e
2値として表される。
【0124】
適切な発散角度θVCSELを選択するために、妥協がなされるべきである。一方では、発散角度は、小さいビームスポットを得るために可能な限り小さくなければならず、他方では、発散角度は、混合チャンバの長さHが長くなりすぎないように、小さすぎてはならない。実施形態において、VSCELは、発散角度θVCSELが3°~15°の範囲内にあるように選択される。実施形態において、発散角度θVCSELは10°である。
【0125】
本開示による特定の実施形態において、ソリッドステートレーザ光源は、例えばタイルの一次元または二次元アレイが形成されるように、タイルの形態にグループ化される。タイルを、ソリッドステートレーザ光源のサブアレイと理解することができる。タイルTiを形成する各々のサブアレイは、レーザアレイのソリッドステートレーザ光源の総数STが以下のように表されるように、タイルTiに関連付けられたSTi個のソリッドステートレーザ光源を含み、
【0126】
【0127】
ここで、NTはレーザアレイのタイルの総数である。
そのようなタイルの実装形態の一例は、複数のレーザエミッタを備えるVCSELチップであり、各々のレーザエミッタが、ソリッドステートレーザ光源に対応する。したがって、これらの実施形態において、タイルTiは、一般に、VCSELタイルと呼ばれる。各々のVCSELタイルは、例えば、500~2000個のVCSEL光源を備えることができる。
【0128】
実施形態において、レーザアレイ110を形成するために、複数のVCSELタイルを行および列に並べて、タイルの二次元アレイを形成することができる。例えば、長方形の二次元レーザアレイ110を、N行M列のVCSELタイルで形成することができ、NおよびMは2以上である。タイルのサイズは、一般に、ミリメートルの範囲内である。タイルは、例えば2mm×2mm、または1mm×1mmの寸法を有することができる。これらの種類のVCSELタイルは、市販されている。二次元アレイ110のタイルが、必ずしも同じ形状を有する必要はなく、あるいは同じ量のVCSELソースを有する必要はないことに、留意されたい。
【0129】
タイルによって形成されたVCSELアレイのタイルは、タイル間間隔によって互いに離されている。タイル間間隔は、ミリメートルの範囲内である。実施形態において、タイル間間隔は、0.3ミリメートル以上、好ましくは0.5ミリメートル以上である。
【0130】
各々のタイルに関して、VCSEL間間隔は、0.1ミリメートル以下、好ましくは0.05ミリメートル以下である。
【0131】
実施形態において、VCSEL間間隔は、10マイクロメートル~30マイクロメートルの範囲内である。
【0132】
タイルを備えるVCSELアレイのタイルは、平面上または曲面上に配置されてよい。
タイルが長方形の形状を有し、タイルが規則的なVCSELパターンを形成するように配置されている実施形態において、タイル間距離は、二次元レーザアレイ110の全体において同じである。
【0133】
実施形態において、レーザアレイ110は、
図12に概略的に示されるようなフロントエンドVCSELアレイである。フロントエンドVCSELアレイは、VCSELレーザ光源111によって放射されたレーザ光が基板70を横切ることがないアレイである。
【0134】
図12には、マイクロレンズアレイ121がレーザアレイ110の下流に配置されているプロジェクタの実施形態の一部が示されている。このマイクロレンズアレイ121は、離散スポットパターンを形成するための第2のレーザビームを生成するように構成された上述の第1のマイクロレンズアレイ121に対応する。
【0135】
他の実施形態において、レーザアレイ110は、
図13に概略的に示されるようなバックエンドVCSELアレイである。バックエンドVCSELアレイは、VCSELレーザ光源111によって放射されたレーザ光が基板70を横切るアレイである。好ましい実施形態において、バックエンドVCSELアレイは、VCSELマイクロレンズアレイとも呼ばれる第2のマイクロレンズアレイ122を備え、第2のマイクロレンズアレイ122は、各々のVCSELの発散角度θ
VCSELを小さくするように構成されたマイクロレンズML
VCSEL[i]を備える。そのような第2のマイクロレンズアレイは、例えば、VCSELアレイ110の基板70内にエッチングされる。バックエンドVCSELアレイの使用を可能にするために、基板70はレーザ光に対して透明である必要がある。現時点において利用可能なバックエンドVCSELアレイは、例えば、940ナノメートルのレーザ光に対して透明である。
図13に示されるように、マイクロレンズML
VCSEL[i]を備える第2のマイクロレンズアレイを、第2のマイクロレンズアレイ122の下流に位置する第1のマイクロレンズアレイ121に加えて、プロジェクタの第2のマイクロレンズアレイ122と理解することができる。
【0136】
さらなる実施形態において、VCSELアレイは、マルチスタック型である。
混合チャンバ
上述したように、混合チャンバ140は、レーザアレイ110と整形光学系120との間に延在し、主光軸に沿って測定される長さHを有する。
【0137】
図17aおよび
図17bに、混合チャンバ140の実施形態の2つの例が概略的に示されている。主光軸Zに沿って延びる混合チャンバ140を、三次元中空体と理解すべきである。混合チャンバ140は、混合前のレーザ光を受光するための入口面160aと、混合後のレーザ光を出射するための反対側の出口面160bと、中空体を形成するための周囲の側面140aとを備える。混合チャンバの周囲の側面140aを、混合チャンバの壁と理解すべきである。
【0138】
いくつかの実施形態においては、
図17aに示されるように、混合チャンバ140が直方体の形状を有し、直方体の4つの側壁が、混合チャンバの周囲の側面140aを形成している。
図17bには、錐台の形状を有する混合チャンバ140の一例が示されており、入口面160aが、出口面160bの表面よりも小さい表面を有している。
図17aおよび
図17bにおいて、混合チャンバを形成する周囲の側面140aは、ハッチングされた表面として図示されている。
【0139】
典型的には、レーザアレイ110は、混合チャンバの入口面に配置され、第1のマイクロレンズアレイ121などの整形光学系は、混合チャンバの出口面に配置される。
【0140】
実施形態において、混合チャンバは、レーザアレイを混合チャンバの入口面に機械的に結合させ、かつ/または整形光学系を混合チャンバの出口面に機械的に結合させるように構成される。このようにして、混合チャンバは、レーザアレイおよび/または整形光学系のための支持構造も形成している。
【0141】
実施形態において、混合チャンバは、他の要素を支持するように構成される。
換言すると、混合チャンバ140は、第1のレーザビームを生成するレーザアレイと整形光学系との間の領域を形成している。この領域を、第1のレーザビームが混合しているキャビティと理解することができる。
【0142】
上述したように、本開示によるプロジェクタの実施形態において、混合チャンバ140の内壁の少なくとも一部分、すなわち混合チャンバ140の周囲の側面140aの内側の一部分は、レーザ光を反射するための1つ以上の反射壁170を備える。
【0143】
実施形態において、混合チャンバは、例えば、レーザ光を反射させるうえで好適なプラスチック材料で作られる。
【0144】
他の実施形態においては、周囲の側面140aの内側部分が第1の材料で作られ、周囲の側面の外側部分が、第1の材料とは異なる第2の材料で作られる。したがって、第1の材料は、周囲の側面140aの内側がレーザ光を反射するための反射壁170を形成するように、レーザ光反射材料となるように選択される。
【0145】
混合チャンバの反射性の壁は、均質なスポットパターンをもたらし、換言すると、スポットパターンの周辺のスポットも、スポットパターンの中央部分に位置するスポットと同じ強度を有する。
【0146】
図14aに示されるとおりのいくつかの実施形態において、混合チャンバ140は空であってよく、すなわち発散する第1のビームと干渉するいかなる追加の装置も含まなくてよい。
図14b~
図14fに示される他の実施形態において、混合チャンバ140は、例えば第2のマイクロレンズアレイ122、ディフューザ145、サーキュレータ146、ブラッグ体積格子147、および/またはビームエキスパンダ148などの追加の要素を備えることができる。これらの追加の要素は、典型的には、第1のビームの混合に影響を及ぼすことができる要素である。そのような追加の要素を備えるこれらのさまざまな実施形態が、以下でさらに説明される。これらの追加の要素のうちの1つ以上を備えるこれらの実施形態において、混合チャンバは、追加の要素を支持するように構成され、したがって、これらの追加の要素のための支持構造体も形成する。
【0147】
ミラーキャビティ、すなわち内側反射壁を有する混合チャンバを形成する主な利点は、光が閉じ込められ、VCSELタイルまたはタイルのアレイの側面に典型的に存在する不規則性が存在しないことである。混合チャンバの結果として、投影システムによって生成されるスポットパターンは、スポットパターンの周辺に位置するスポットがスポットパターンの中央領域のスポットと同じ強度を有するように均一である。
【0148】
混合チャンバのさらなる利点は、VCSELアレイを汚染から保護することである。実施形態において、混合チャンバは気密であり、したがって、プロジェクタ内の例えば熱的起源の乱流が回避される。
【0149】
好都合には、実施形態において、混合チャンバ内に配置された構成要素の経年劣化または劣化を回避するために、混合チャンバを不活性ガスで満たすことができる。
【0150】
いくつかの実施形態においては、例えば混合チャンバ
140が図17bに示されるような錐台の形状を有する場合など、反射壁170がVCSELアレイ110の平面に対して垂直でない。したがって、ミラーキャビティの反射壁170を、ビームの発散角度を小さくするように向けることができ、これは、例えば本プロジェクタをシーンを照明するために使用するLIDARシステムのレンジおよび/または精度を向上させる。ミラーキャビティは、プロジェクタの他の構成要素に加えてこの機能を果たすことができ、随意により、以下で説明される第2のMLA 122の使用を置き換えることができる。
【0151】
混合チャンバを、第1のレーザビームのレーザ光が充分に混合されるように、充分に長くする必要がある。一般に、放射面X-Yに平行な混合面PMが、第1のレーザビームの光線が、光が均質に分布する程度まで重なり合う面として定義される。均質な光分布を、混合面PMの全体にわたって光強度が本質的に平坦である分布と理解すべきである。混合チャンバの長さHは、一般に、混合面PMが混合チャンバの端部または整形光学系120の入口に位置するように定められる。整形光学系がマイクロレンズアレイを備える場合、混合面は、マイクロレンズアレイの直前に位置することができる。
【0152】
他方で、混合チャンバ140の長さHは、コンパクトなLIDAR装置を維持するために可能な限り短くなければならない。
図6において、混合面P
Mは、混合チャンバの端部に位置するように示されている。
【0153】
タイルがレーザ源として使用される場合、主光軸Zに沿って測定される混合チャンバの長さHは、第1のレーザビームが混合チャンバを通って伝播した後に、各々のタイルについて、その光線の少なくとも一部が隣接するタイルの光線と重なり合うように定められる。重なり合いを、空間的な重なり合いと理解すべきである。実施形態において、各々のタイルのレーザ光の少なくとも20%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは60%以上が、隣接するタイルの光線と重なり合う。他の実施形態においては、各々のタイルのレーザ光の100%が、隣接するタイルの光線と重なり合う。タイルを使用する場合に混合チャンバの長さについて最適な距離を定めるための手法が、以下に示される。
【0154】
図6に概略的に示されるように、混合チャンバ140の最小長さHを、以下の式で決定することができる。
【0155】
【0156】
ここで、Δは、2つの隣接するタイルの中心間の距離であり、θは、VCSELレーザ源のビーム発散角度であり、Lは、長方形のタイルの辺の長さである。例えば、Δ=2.5mmであり、L=2mmであり、θ=10°である場合、H>=8.5mmである。
図3に、光源がVCSELアレイのタイルである実施形態が示されている。
【0157】
タイルは使用されないが、例えば規則的なマトリクスを形成する複数の個々のVCSELによって光源が形成される他の実施形態においては、上述の式を適用して、混合チャンバ140について必要な最小距離Hを決定することができる。タイルが使用されないこれらの実施形態に関して、距離Δは、この場合には、2つの隣接するVCSELレーザ源の中心間の距離であり、例えば50マイクロメートルであり、Lは、個々のVCSELの円形の発光面の直径であり、例えば15マイクロメートルである。タイルが使用されない場合、第1のレーザビーム間の充分な空間的重なりを有するためにHについて必要な最小距離は、はるかに短い。
【0158】
複数の第1のレーザビームからの光線を含む第2のレーザビーム20の形成が、
図7に概略的に示されている。この例示的な例において、マイクロレンズML[2]は、第1のレーザビーム10a、10b、および10cからの光線の一部を受光する。マイクロレンズML[2]は、焦点距離fを有し、マイクロレンズML[2]を透過した光線を焦点面FPに集光することで、第1のレーザビーム10a、10b、および10cの光線部分からなる第2のレーザビーム20を形成する。マイクロレンズML[2]の焦点面FPにおいて、ビームスポット幅Wおよび発散θ
SPOTを有する合成された第2のレーザビーム20に対応するスポットの像が観察される。
図7に示されるように、焦点面
FPにおける第2のレーザビーム20の幅Wを、以下の式tan(θ
VCSEL)=W/(2 x f)で求めることができ、θ
VCSELは、第1のレーザビーム10a、10b、10cの発散角度である。第2のレーザビーム20の発散角度θ
SPOTを、以下の式tan(θ
SPOT)=((W+P)/(2 x f))で求めることができ、Pは、2つの隣接するマイクロレンズの中心間の距離である。
図7には、複数の第1のレーザビームに基づいて第2のレーザビームを形成する原理の概略図のみが示されており、実際には、第2のレーザビームを形成するための重なり合う第1のレーザビームの数は、通常はもっと多い。
【0159】
図8に、本開示によるプロジェクタ100の実施形態の断面図が示されており、プロジェクタは、複数のVCSELタイルT[i]によって形成されたレーザアレイ110、例えば二次元レーザアレイを備えている。各々のVCSELタイルは、第1のレーザビーム10を生成する複数のVCSELレーザを備える。この例において、異なるタイルT[i]に由来する複数の第1のレーザビーム10が、混合チャンバ140を伝搬するときに混合されている。マイクロレンズアレイ121が、重なり合う光線を受け取り、マイクロレンズアレイの各々のマイクロレンズに共通の焦点面である焦点面FPに再び集束させることによって、第2のレーザビームを最終的に形成する。第2のレーザビームの焦点面FPへの集束が、
図8に概略的に示されている。
【0160】
上述したように、充分に大きいVCSELアレイを得る好ましい方法は、いくつかのVCSELタイルを組み合わせて、より大きなアレイにすることである。より小さいVCSELタイルは、より大きいタイルよりも高い歩留まりを有し、結果として、製造プロセスがより効率的になり、関連のコストが低くなる。そのようなタイルを集めてVCSELアレイにすると、結果として生じるタイル間距離は、一般に、タイル内のVCSEL間距離よりも大きくなる。これらの「継ぎ目」は、プロジェクタの視野FOV内に、あまり照明されないバンドを存在させることになる。VCSELアレイと第1のMLAとの間の距離hを、隣接するタイルのビームが混ざり合い、第1のMLA 110に入射するより均質なパワーフィールドおよびシーンのより均一な照明をもたらすように、選択できることが明らかである。このようにして、投影パターンの均質性を犠牲にすることなく、プロジェクタのコストを低減することができ、かつ/またはそのサイズを大きくすることができる。
【0161】
より小さいタイルおよびより大きいタイル間距離を使用する可能性のさらなる効果は、熱的制約に陥ることなく、タイル当たり、したがってVCSEL当たりの電力供給をより大きくできることである。VCSEL当たりの電力のこの増加は、個々のVCSELによって生成されたビームと比べて、シーンへと投影されるビーム当たりの出力を増加させ、これが、例えば、LIDARシステムの検出器へと反射されて戻るレーザ光の量(すなわち、光子の数)を増加させる。LIDARシステムのレンジおよび/または精度は、測定におけるポアソンノイズに強く依存し、このポアソンノイズは、後方反射光子の量が増加するにつれて減少するため、前記格差および結果としてのビーム当たりの出力の増加は、例えばシーンの照明に本プロジェクタを使用するLIDARシステムのレンジおよび/または精度を向上させる。
【0162】
2つのマイクロレンズアレイを有するプロジェクタ
図14bに示されるとおりの本開示の実施形態において、プロジェクタは、ソリッドステートレーザ光源(111)によって放射される第1のレーザビームの発散角度を減少させるための第2のマイクロレンズアレイ122を備える。第2のマイクロレンズアレイは、一般に、レーザアレイ110と第1のマイクロレンズアレイ121との間に配置される。
【0163】
実施形態において、第2のマイクロレンズアレイは、第1のレーザビームの発散角度を制限し、例えば5°の最大発散角度に制限するように構成される。他方で、混合チャンバの目的は、第1のレーザビームを重なり合わせることであるため、発散角度を所与の最大値に制限することと、すべての第2のレーザビームについて均質な放射照度を有する第2のレーザビームを生成するために、第2のマイクロレンズアレイ上で均質な光分布を得るために必要な混合の量との間で、トレードオフが行われなければならない。
【0164】
2つのマイクロレンズアレイを有するプロジェクタの実施形態は、
図14aに示した第1のマイクロレンズアレイ121のみを備える上述の実施形態のすべての特性を保持する。第2のマイクロレンズアレイ122は、VCSELアレイ110の出射側と第1のマイクロレンズアレイ121との間に位置する。好ましくは、第2のMLA 122は、VCSELアレイ110内のVCSELの数、すなわちレーザエミッタの総数以下の数のマイクロレンズを含む。好ましくは、第2のMLA 122は、VCSELアレイ110内の個々のレーザによって放射されるビームの発散を減少させるように設計される。
【0165】
いくつかの実施形態において、レーザアレイは複数のVCSELチップで構成され、各々のVCSELチップは複数のレーザエミッタを備える。VCSELチップのレーザエミッタを、ソリッドステートレーザ光源と理解すべきであり、VCSELチップは、上述したVCSELタイルの実装形態の一例である。
【0166】
レーザアレイ110がいくつかのVCSELチップから構成され、各々のVCSELチップが複数のレーザエミッタを備える実施形態において、第2のマイクロレンズアレイ122内のマイクロレンズの数は、レーザアレイのエミッタの総数以下である。エミッタの総数は、レーザアレイの各々のVCSELチップ内のすべてのエミッタの合計である。
【0167】
第2のMLAのマイクロレンズがそれぞれのVCSELの光軸に整列し、これらの光軸は厳密に平面のVCSELアレイの場合には平行であってよいいくつかの実施形態において、第2のMLA 122は、ビームを折ることなく、VCSELアレイによって放射されるビームの発散を減少させる。これが
図15aに概略的に示されている。結果として得られるレーザビームの発散の減少は、第1のMLA 121に入射する第1のビームの放射照度を増加させ、したがってプロジェクタレンズ
システム130が受光する第2のビームの放射照度も増加する。結果として、プロジェクタによってシーンへと投影されるビームの角度放射照度が低減され、これは、例えば本プロジェクタを使用してシーンを照明するLIDARシステムのレンジおよび/または精度を向上させる。
【0168】
実施形態において、第2のMLA 122と第1のMLA 121との間の距離を変化させることができ、そのような距離の変化は、第1のMLA 121に到達する前にレーザビーム間で発生する混合の量に影響を及ぼす。
【0169】
第2のMLAのマイクロレンズが個々のVCSELのそれぞれの光軸に完全には整列していない代替の実施形態において、第2のMLA 122は、VCSELアレイ110によって放射されるビームの発散を減少させつつ、ビームを折ることもできる。換言すると、ディフューザ効果が存在し、第1のビームの角度混合を増加させる。これが
図15bに概略的に示されている。このディフューザ効果は、ビームの混合を増加させ、したがって第1のMLA 121に入射するフィールドの均質性を向上させる。これは、シーンへと投影されるスポットパターンをより均質にすることができ、かつ/またはスポットパターンの均質性に悪影響を及ぼすことなく、第1のMLA 121とVCSELアレイ110との間の距離を短縮することを可能にする。不完全な整列の場合、第2のMLA 122の存在は、例えば、本プロジェクタを使用するLIDARシステムの正確度および精度/レンジの両方を向上させることができる。
【0170】
上述したように、レーザアレイ110が
図13に概略的に示されるとおりのバックエンドVCSELアレイである実施形態に関して、そのような第2のマイクロレンズアレイ122は、例えば、VCSELアレイ110の基板70内にエッチングされ、VCSELの各々の発散角度θ
VCSELを低減するように構成される。
【0171】
いくつかの実施形態においては、レーザビームの発散角度を低減するために第2のMLAを使用する代わりに、レーザビームの発散角度を低減するために1つ以上のプリズムが使用される。
【0172】
ディフューザを有するプロジェクタ
本開示によるソリッドステートプロジェクタのさらなる例が、
図14cに概略的に示されている。明確にするために、一般性を失うことなく、図示のこの実施形態は、
図14bに示した実施形態のすべての特性を保持し、第1のMLA 121と第2のMLA 122との間に別個のディフューザ145をさらに備える。これを、第2のMLA 120を欠く実施形態を排除すると解釈すべきではない。
【0173】
図14cに示されるように、ディフューザ145は混合チャンバ140内に含まれ、好ましくは、これらの実施形態において、混合チャンバ140はディフューザ145を支持するように構成される。
【0174】
第2のMLA 122を備えるいくつかの実施形態において、ディフューザ145を第2のMLA 122のより近くに配置することができるが、
図14cに概略的に示される他の実施形態においては、ディフューザ145を第2のMLA 122からさらに離して配置することができる。
【0175】
いくつかの実施形態において、ディフューザは第2のMLA 122に取り付けられる。実施形態において、ディフューザまたはディフューザ機能は、第2のMLA 122の一体の一部分とされる。
【0176】
ディフューザは、VCSEL源からもたらされる光を均一に分配するために対物レンズによる回折および屈折によって光を散乱させる光学部品である。これは、角度および/または位置とは無関係の放射輝度を有するように光を均質化し、したがって第1のMLAに入射する光は、より均一な特性であり、第1のMLAの後に均質なスポットパターンを生じる。
【0177】
ディフューザは、典型的には、対象の波長において異なる光学屈折率を有する2つの材料の間のパターン化表面から作られる。好ましくは、屈折率の対比が大きく、容易に製造可能であり、例えば容易に成型可能な材料が使用される。例えば、これらに限られるわけではないが、以下の材料の組合せを使用することができる:ガラス/空気、プラスチック/空気、AlGaAs/空気、エポキシ/空気、モールド内の硬化液晶、エポキシ/エポキシ、プラスチック/プラスチック。実施形態において、例えば、ガラス/液体の組合せなどのコロイド懸濁液が使用される。
【0178】
その動作原理は、異なる光学材料の縁部における屈折および回折特性に基づく拡散光に基づく。この界面は、典型的には、固定パターンを回避するように非周期的であり、したがって拡散は半ランダムであり、好ましくは偏光に依存せず、充分である。
【0179】
図19に、第2のMLA 122からもたらされるレーザ光がディフューザ145を横切っている実施形態が示されており、ディフューザを横切ることによって生じるレーザ光の混合が概略的に示されている。
【0180】
ディフューザ145は、角度ビーム混合を増加させ、第1のMLA 121に入射するフィールドをより均質にする。したがって、ディフューザは、プロジェクタによって投影されるスポットパターンの均質性に悪影響を及ぼすことなく、第1のMLA 121と第2のMLA 122との間の距離を縮小する可能性をもたらすことができる。しかしながら、角度ビーム混合の増加は、プロジェクタの角度放射照度の減少につながる。
【0181】
個々のVCSELによって放射される波長には小さなばらつきが存在するため、ディフューザ145は、ビームの角度混合だけでなく、波長混合も提供する。波長混合は、投影されるスポットパターンの波長スペクトルを増加させ、したがってコヒーレンスを減少させる。コヒーレンスのこの減少は、投影におけるスペックルパターンの存在を減少させ、したがって、例えば本プロジェクタを使用してシーンを照明するLIDARシステムの正確度を高める。しかしながら、広い波長スペクトルは、LIDARの検出器側に狭帯域フィルタが必要になるため、そのようなLIDAR機器のレンジおよび/または精度に有害な影響を及ぼす。
【0182】
投影されるスポットパターンの角度放射照度、投影されるスポットパターンの均質性、投影されるスポットパターンの波長スペクトル、および光学スタックの厚さの間のバランスを達成するために、ディフューザを、第1のMLA 121、第2のMLA 122(存在する場合)、およびVCSELアレイ110のVCSELの特性に従って調整する必要があることを、当業者であれば理解できるであろう。
【0183】
サーキュレータを有するプロジェクタ
本開示によるプロジェクタのさらなる実施形態が、
図14dに示されている。明確にするために、一般性を失うことなく、図示のこの実施形態は、
図14cの実施形態のすべての特性を保持し、光学サーキュレータ146をさらに備える。これを、第2のMLA 122および/またはディフューザ145を欠く実施形態を排除すると解釈すべきではない。
【0184】
いくつかの実施形態において、上述のようなディフューザ145での混合は充分ではなく、別の光学素子、すなわちサーキュレータ146が、好ましくは上述のディフューザと組み合わせて使用される。
【0185】
図14dに示されるように、サーキュレータ146は混合チャンバ140内に含まれ、好ましくは、サーキュレータを備える実施形態において、混合チャンバ140はサーキュレータ146を支持するように構成される。
【0186】
サーキュレータ146は、空間ビーム混合を提供する目的を有する。好ましくは、サーキュレータは、VCSELアレイ110とディフューザ145との間に配置され、あるいは第2のMLA 122を備える実施形態に関して、第2のMLA 122とディフューザ145との間に配置される。この位置において、ビーム角度は、通常は、ディフューザ145と第1のMLA 121との間におけるビーム角度よりも小さい。これは、より大きな空間的混合をもたらすことができ、同じ効率をより薄いサーキュレータを使用して得ることを可能にする。もたらされる空間的混合は、第1のMLA 121に入射するフィールドをより均質にし、したがってシーンへと投影されるスポットパターンをより均質にし、これは、例えば本プロジェクタを使用してシーンを照明するLIDARシステムの正確度を高める。ディフューザおよびサーキュレータを使用して混合を強化した結果として、得られるレーザ光は、スペックルノイズがさらに低減されるようにさらに非コヒーレントである。
【0187】
サーキュレータは、例えば一種の半透明/半反射要素によって、好ましくは90°だけ部分的に回折/屈曲させ、入射vcsel光線を部分的に通過させる原理によって、VCSEL光線の空間的混合を増加させる。サーキュレータは、その動作原理により、vcsel光線を入射場所から次のより離れた場所へと部分的に伝搬させ、そこでそれはサーキュレータを部分的に出る。これは、vcselビームの空間的混合をさらに増加させ、したがってMLA1に入射する光の均質性を改善する。
【0188】
サーキュレータは、典型的には、例えばプラスチックまたはガラスから作られ、光路に含まれるいくつかの半反射/半透明ミラー構成要素を有する。透過光と反射光との間の所定の分配が存在する。その動作原理は、入射光線を部分的に反射し、部分的に通過させることに基づく。反射の種類は、材料の選択に依存し、例えば、フラストレーション全内部反射、2つの光学媒体に起因する部分反射、金属反射、偏光ビームスプリッタに依存する。通過および反射の割合は、光線の光路に配置される反射構成要素の透明度によって決定される。
【0189】
下部層および上部層を、使用の波長スペクトルに関する反射防止コーティングでコーティングすることが好ましく、有利でもある。
【0190】
図18に、サーキュレータ146の実施形態の例が示されている。図示のサーキュレータ146は、透明ミラー146a、すなわち一定量まで透明なミラーを備える。例えば50%の透明など、例えば20%~80%の間の透明である。
図18においては、4つの透明ミラー146aが概略的に示されており、点線の斜線で描かれている。入射レーザ光は、一部が透明ミラーを通過し、一部が入射レーザ光に対して垂直な方向に反射される。第1の透明ミラーによって反射されたレーザ光は、隣接する透明ミラーによって少なくとも一部が再び反射され、したがって再び元の入射レーザ光として向けられる。このようにして、レーザ光が空間的に混合される。
図18において、入射レーザ光、反射レーザ光、および透過レーザ光は、黒矢印で概略的に示されている。
【0191】
ブラッグ体積格子を有するプロジェクタ
本開示によるプロジェクタのさらなる実施形態が、
図14eに示されている。明確にするために、一般性を失うことなく、図示のこの実施形態は、
図14dの実施形態のすべての特性を保持し、ブラッグ体積格子147をさらに備える。これを、第2のMLA 122および/またはディフューザ145および/またはサーキュレータ
146を欠く実施形態を排除すると解釈すべきではない。
【0192】
ブラッグ体積格子は、第1のレーザビームの波長分散を低減するように構成されたデバイスである。
【0193】
好ましくは、ブラッグ体積格子147は、VCSELアレイ110とディフューザ145との間に配置される。ブラッグ体積格子147は、例えばガラス製である。
【0194】
ブラッグ体積格子147は、自己結像とも呼ばれるが、VCSELアレイ110に出射光の一部を回折によって戻すことで、光注入同期の現象によってVCSEL波長の固定を生じさせる。典型的には、VCSELアレイ内の個々のVCSELによって放射される波長の分散は、2~3nmである。ブラッグ体積格子147を追加することにより、この分散を、典型的には0.2~0.3nmへと一桁減少させることができる。
【0195】
好ましくは、ブラッグ体積格子は、光出力の損失をもたらさないように設計され、VCSELの全出力が、より小さい波長スペクトルにて放射されるはずである。
【0196】
波長の分散の低減は、例えば本プロジェクタを使用してシーンを照明するLIDARシステムの検出器において、より狭い帯域のフィルタの使用を可能にし、したがって検出器の信号対雑音比を向上させ、結果としてこのLIDARシステムのレンジおよび/または精度を向上させる。出射ビームのより狭い帯域幅について考えられる副作用は、プロジェクタによるスペックルの発生の増加である。
【0197】
ブラッグ体積格子147は、個々のVCSELによって放射されるビームの波長を、VCSELの温度およびVCSELを通過する電流にあまり依存しないようにする。結果として、ビームパルスの最中の動的な波長シフトが低減される。この低減は、例えば本プロジェクタを使用してシーンを照明するLIDARシステムの検出器において、より狭い帯域のフィルタの使用を可能にし、したがって、このLIDARシステムのレンジおよび/または精度を向上させる。
【0198】
好ましくは、ブラッグ体積格子147は、LIDARシステムの検出器側の狭帯域フィルタの波長ブルーシフトとマッチするようにVCSELアレイの波長を空間的に掃引することができるように設計される。あるいは、このマッチングを、VCSELタイルを波長の関数としてソートし、狭帯域フィルタとのマッチングのためにVCSELアレイ内の正しい位置に配置することによって、実行することができる。
【0199】
好ましくは、ブラッグ体積格子147は、出射ビームの発散を低減する。そのような発散の低減は、プロジェクタシステムの角度放射照度を増加させ、これは、例えば本プロジェクタを使用してシーンを照明するLIDARシステムのレンジおよび/または精度を向上させる。この発散の低減について生じ得る副作用は、第1のMLA 121に入射するビーム間の角度混合の減少、およびプロジェクタによって投影されるスポットパターンの均質性の対応する減少である。
【0200】
図14eに示されるように、ブラッグ体積格子147は混合チャンバ140内に含まれ、好ましくは、これらの実施形態において、混合チャンバ140はブラッグ体積格子147を支持するように構成される。
【0201】
ビームエキスパンダを有するプロジェクタ
ビームエキスパンダ148を備える本開示によるプロジェクタのさらなる実施形態が、
図14fに示されている。ビームエキスパンダ148は、第1のマイクロレンズアレイに入射する配光の均質性を高めるように構成されたデバイスである。ビームエキスパンダ148の使用は、上述したように、レーザアレイ110が複数のサブアレイを形成するタイルで構成される場合に、とくに有用である。さらなる実装の詳細を含むビームエキスパンダ148の詳細な実施形態が、
図16aおよび
図16bに示されている。
【0202】
明確にするために、一般性を失うことなく、
図14fに示されるとおりの実施形態は、
図14eの実施形態のすべての特性を保持し、ビームエキスパンダ148をさらに備える。しかしながら、これを、第2のMLA 122および/またはディフューザ145および/またはサーキュレータ146および/またはブラッグ体積格子147を欠く実施形態を排除すると解釈すべきではない。
【0203】
ビームエキスパンダを、とりわけ半透明な構成要素を光路内に配置することによって、レーザ光を空間的に異なる位置に向かって屈曲/回折させる光学素子と理解すべきである。そのような構成要素は、入射レーザ光を部分的に通過させ、90°にわたって部分的に屈曲させて、光学構成要素からの出射のための別の位置へと伝搬させる。
【0204】
ビームエキスパンダの目的は、第1のMLA 121に入射するより均質な光フィールドを作り出すことであり、より具体的には、典型的には2つのタイル間の距離に起因してより低い放射輝度を示すVCSELタイルの相互接続部において平準化された放射輝度を作り出すことを目的とする。
【0205】
ビームエキスパンダは、典型的には、例えばプラスチックおよび/またはガラスから製作され、光路内に配置された半透明半反射構成要素に作用し、あるいは正/負レンズのカスケードによって実現することができる。
【0206】
好ましくは、ビームエキスパンダ148は、VCSELアレイ110と第1のMLA 121との間に配置され、あるいはブラッグ体積格子147が存在する場合には、VCSELアレイ110とブラッグ体積格子147との間に配置される。上述したように、ビームエキスパンダ148は、タイル間領域の照明を増加させ、第1のMLA 121に入射するパワーフィールドをより均質にし、結果としてシーンのより均一な照明をもたらすという目的を有し、これは、例えば本プロジェクタを使用してシーンを照明するLIDARシステムの正確度を高める。このようにして、投影されるパターンの均質性を犠牲にすることなく、VCSELタイルのサイズ、したがってプロジェクタの価格を下げることができ、かつ/またはVCSELタイルの数、したがってプロジェクタのサイズを増やすことができる。
【0207】
一般性を失うことなく、
図16aおよび
図16bの各々は、2つのタイル100a、100bに関するビームエキスパンダの動作の原理を示しており、この原理によって、ビームエキスパンダ148は、本来であればタイル間の継ぎ目の存在に起因して現れる低強度のギャップを埋めるように動作する。これらの原理を、二次元アレイに配置されたタイルを含む任意の数のタイルに適用することができ、その場合、それらは、結果として生じる継ぎ目の格子によって形成される低強度ゾーンを埋めるように動作することを、当業者であれば理解できるであろう。
【0208】
図16aに示される実施形態において、ビームエキスパンダ148は、タイル表面に対して45°の角度で配置された複数の傾斜ミラー148a、148b、148cを備える。タイル100a、100bから生じるレーザ光が参照符号148aおよび148bで示されるミラーに到達すると、レーザ光は45°の角度にわたって反射され、したがって参照符号148cで示されるさらなるミラーに到達するまでタイルに平行に移動する。次いで、このさらなるミラー148cが、45°の角度にわたって光を再び反射させ、したがってレーザ光は再びタイル100a、100bに対して垂直になる。
図16aにおける水平方向の矢印は、参照符号148aおよび148bで示されるミラーにおける反射後のレーザ光を示す。参照符号148cで示されるミラーが、2つのタイルの間の領域に配置されているため、レーザ光は2つのタイルの間の領域にも到達し、したがってタイル間に低強度のギャップは発生しない。
【0209】
他の実施形態において、ビームエキスパンダは、
図16bに示されるように、各々のタイルについて、タイル表面に平行に配置された1対の負レンズL-および正レンズL+を備える。このようにして、レーザ光は最初に負レンズによって広がり、したがってタイル間領域に到達する。その後に、レーザ光は正レンズによって再び集光され、したがってレーザ光は再び主
光軸Zに沿って伝搬する。
【0210】
図14fに示されるように、ビームエキスパンダ148は混合チャンバ140内に含まれ、好ましくは、ビームエキスパンダ148を備えるこれらの実施形態において、混合チャンバ140はビームエキスパンダを支持するように構成される。
【0211】
図14gおよび
図14hに、混合チャンバが反
射壁170を備えるプロジェクタ100のさらなる実施形態が示されている。このようにして、ミラーキャビティが形成される。
図14gおよび
図14hに示される例において、プロジェクタ100は、
図14fに示されるプロジェクタの構成要素を備えているが、他の実施形態において、プロジェクタは、
図14a~
図14fに示されるプロジェクタのいずれかの構成要素またはそれらの任意の組合せを備えることができる。
【0212】
検査孔を有する混合チャンバ
実施形態において、混合チャンバ140、より具体的には周囲の側面140aは、プロジェクタの動作を検査するための検査開口部を備える。
図14hに、混合チャンバの周囲の側面が反射壁170で作られ、検査開口部180が反射壁170を貫通して設けられている実施形態の例が示されている。このようにして、使用中にプロジェクタの動作を監視することができる。好ましくは、これらの検査開口部180は、例えば特定の光学部品の位置または異なる光学部品の間など、さまざまな高さに配置される。一般性を失うことなく、
図14hは、そのような検査開口部180のための3つの可能な位置の例を示している。
【0213】
検査開口部が設けられると、ミラーキャビティ内の一部の光が検査開口部180に向かって伝播し、結果として、プロジェクタシステムによって放射された光を、開口部180を介して光学スタックの異なるレベルにおいて分析することができる。この分析を、例えば、検査開口部に配置された光フォトダイオード190aを使用し、あるいは光学キャビティの外側のPCBに取り付けられたカメラ190bを使用して行なうことができる。
【0214】
検査開口部180は、放出されたビームの品質を動作中に監視するという利点をもたらし、得られた情報を、光学スタック内の個々の構成要素の性能を評価し、誤動作を診断し、保守または部品交換を計画し、あるいは制御システムにフィードバックをもたらすために使用することができる。
【0215】
距離ゲーティング検出技術、全般
上述したように、LIDARシステムのいくつかの実施形態において、反射レーザ光を検出するためのマルチピクセル検出器は、シーンの物体までの距離を決定するために距離ゲーティング検出技術をパルスレーザビームとの組み合わせにおいて適用している。これは、直接飛行時間技術とは異なる技術である。距離ゲーティング技術を、反射レーザ光が時間の関数として検出および蓄積される検出技術と理解すべきである。検出および蓄積は、一般に、時間ウインドウにおいて実行され、距離ゲーティング技術は、少なくとも2つの連続する時間ウインドウを使用する。上述したように、処理手段が、距離ゲーティングマルチピクセル検出器で得られて蓄積された反射レーザ光に基づいて、シーンの1つ以上の物体までの距離を計算する。
【0216】
DToF技術をパルスレーザビームと組み合わせて適用する場合、数ナノ秒のパルス幅が使用され、すなわちパルス幅が、測定されるTOFよりもはるかに短い。他方で、距離ゲーティング技術を適用する場合、使用されるパルス幅ははるかに長く、測定されるTOFにおおむね等しく、あるいは測定されるTOF程度である。例えば、物体が100メートルの距離にある場合、光が行き来するために約666ナノ秒が必要である。より広いパルスの使用は、検出器がより長い時間区間にわたって電荷を蓄積することを可能にする。ソリッドステートレーザビームは従来からのレーザビームよりも出力が低いが、充分なパルスの繰り返しを使用する場合、距離ゲーティング技術を使用して、CMOSベースの検出器で充分な信号対雑音比を得ることができる。
【0217】
距離ゲーティング技術の例が、国際公開第2017/068199号から知られている。距離ゲーティング技術のためのマルチピクセル検出器は、レーザビームのパルスの時間的シーケンスのすべてのパルスについて、第1の所定の時間ウインドウの間にシーンによって反射された第1の光量を表す第1の電荷量と、第2の所定の時間ウインドウの間にシーンによって反射された第2の光量を表す第2の電荷とを蓄積することによって、検出された反射レーザ光の各々のスポットについて露出値を生成するように構成された複数のピクセルを備える。第2の所定の時間ウインドウは、第1の所定の時間ウインドウの後に続いて発生している。シーンの物体までの距離は、第1および第2の電荷量に基づいて計算される。実施形態において、第1の所定の時間ウインドウおよび第2の所定の時間ウインドウは、実質的に等しい持続時間であり、照明パターンを形成するパルスのパルス幅PWに等しい。
【0218】
しかしながら、本開示によるプロジェクタの使用は、特定の距離ゲーティング技術に限定されず、したがって国際公開第2017/068199号に開示されている特定の距離ゲーティング技術に限定されず、実際に、時間の関数として反射レーザ光を検出および蓄積する原理を使用する他の距離ゲーティング技術も適用可能である。
【0219】
距離ゲーティング検出技術、距離の正確度
【0220】
【0221】
本開示は、少なくとも部分的には、周囲光からの背景ノイズ、ピクセルノイズ、または例えばTOF応答時間に起因するノイズなどのノイズ寄与を低減し、あるいはそのようなノイズ寄与から検出信号を補正するための強力な努力にもかかわらず、国際公開第2017/068199号に記載されているようなLIDARシステムで得られる空間精度が、理論的に期待される内容、すなわち例えば99.99%の信頼区間内で実際の距離に等しい平均決定距離の発見に至らないという本発明の発明者の観察に基づく。ポアソンノイズを低減するための充分な多数回の距離測定の実行後でも、測定された平均距離が、期待される空間精度よりもはるかに著しく実際の距離から依然として異なることが観察されている。国際公開第2017/068199号に記載のとおりのソリッドステートLIDARシステムで行われた複数の試験についての本発明の発明者の分析は、既知の系統的ノイズ要素の較正後に、コヒーレントレーザ光の空間的に分離されたパルスを生成するLIDARシステムを距離ゲーティング検出技術と組み合わせて使用する場合の残りの主要なノイズ寄与が、スペックル関連ノイズであるという本発明の発明者の洞察をもたらした。
【0222】
スペックルノイズは、レーザ光を反射する物体との交点において干渉効果によって引き起こされる半ランダムノイズであり、反射レーザ光によって伝搬して、検出器にさらに蓄積され、距離ゲーティング検出器における積算電荷にノイズを付加する。スペックルは、レーザ光の反射を不均一にし、物体の材料構造に依存する。スペックルパターンは、時間の関数としても変化し、したがってスペックルは、パルスレーザビームのパルスをまたいで変化し、パルス幅内でも変化する。反射レーザ光が投影されたパルスの時間的シーケンスに対応する複数の検出時間ウインドウにおいて蓄積される距離ゲーティング技術を適用する場合、スペックルの影響が、或る検出時間ウインドウと他の検出時間ウインドウとで変化する可能性があり、検出時間ウインドウの間に電荷を積分する複数のピクセルまたは電荷ウェルにわたって異なることが観察される。例えば国際公開第2017/068199号に記載されているように、距離ゲーティング技術を適用する場合、パルスのシーケンスにわたる累積カウントは、一般に、第1の時間ウインドウおよび後続の第2の時間ウインドウで検出される。距離を決定するために、第1の時間ウインドウで検出された累積カウントと、第1の時間ウインドウで検出された累積カウントと第2の時間ウインドウで検出された累積カウントとの和との間で、比が決定される。したがって、そのようなカウントの比を求めるときに、スペックルが時間ウインドウごとに変化すると、実際の距離と測定された距離との間に較正不可能な偏差が生じる。したがって、空間精度が悪くなる。
【0223】
支配的なスペックルノイズの寄与は、レーザ光の特性、ならびにレーザ光の離散スポットパターンでシーンを照明し、各々のスポットはコヒーレントレーザ光のパルスのシーケンスによって形成され、これがTOF程度の時間期間にわたって電荷を積分する距離ゲーティング検出器の使用と組み合わせられる組合せの結果であると考えられている。対照的に、DToF LIDARシステムでは、ナノ秒範囲のきわめて短いパルスが使用され、距離ゲーティング技術の場合のような電荷の積分は存在しない。したがって、スペックルノイズは、これらの種類のDToFシステムにおいては主要な問題として観察されない。ソリッドステートLIDARシステムのコンパクトさに鑑み、レーザ光の離散スポットによるパターン照明に基づき、かつ距離ゲーティング技術に基づくそのようなシステムのランダムスペックル問題を解決することは、困難である。
【0224】
【0225】
他の検出技術
本開示によるプロジェクタは、距離ゲーティング技術に基づくLIDARシステムにおける使用に限定されない。本開示によるプロジェクタは、距離決定に適した任意の距離検出技術と共に使用することができる。距離ゲーティング以外の他の例は、直接飛行時間検出技術、または距離情報を推定するために基準位置に対するスポットの変位が決定される変位技術である。
【0226】
検出技術とは無関係に、本開示によるプロジェクタを使用するLIDARシステムの技術的効果および利点は、基礎となる投影システムの特徴に直接関連する。上述したように、プロジェクタは、プロジェクタレンズシステムによって生成される結果として生じる光パターンが均一になり、すなわちスポットパターンの周辺に位置するスポットを含むスポットパターンのすべてのスポットが同じ光強度を有するように、レーザ光を混合する混合チャンバを有する。さらに、プロジェクタは堅牢であり、実際に、光源の混合ゆえに、例えばVCSELチップのエミッタなどの単一の光源が機能していない場合でも、個々のスポットの光強度への影響は無視できる。加えて、レーザアレイを、複数のVCSELチップ、すなわちVCSELタイルで好都合に構成することができ、これは、レーザアレイの製造プロセスおよびコストを容易にする。最後に、混合によってコヒーレントでないレーザ光がもたらされ、したがってスペックルノイズの影響が低減される。
【0227】
本開示によるLIDARシステムは、車両への組み込みに適している。車両に組み込まれたLIDARシステムは、車両を取り囲む領域の少なくとも一部を動作可能にカバーするように配置される。領域の少なくとも一部は、距離決定を必要とするシーンに対応する。カバーされる領域は、LIDAR装置の視野(FOV)に依存し、実施形態において、FOVは、例えば30°×10°または120°×30°または63°×21°またはLIDARシステムに適した任意の他のFOVである。本開示によるLIDARシステムは、自動車用途のLIDARSに限定されず、LIDARSが例えば航空機または衛星に搭載される他の分野にも適用可能である。
【0228】
符号
【0229】
【0230】