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特許7565344水素富化圧縮天然ガスおよびカーボンナノチューブの同時製造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】水素富化圧縮天然ガスおよびカーボンナノチューブの同時製造
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/164 20170101AFI20241003BHJP
   B01J 8/26 20060101ALI20241003BHJP
   C01B 3/30 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C01B32/164
B01J8/26
C01B3/30
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2022516022
(86)(22)【出願日】2021-08-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-25
(86)【国際出願番号】 IB2021057088
(87)【国際公開番号】W WO2022049427
(87)【国際公開日】2022-03-10
【審査請求日】2022-04-18
(31)【優先権主張番号】202041038358
(32)【優先日】2020-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】519421190
【氏名又は名称】ヒンドゥスタン ペトロリアム コーポレーション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ミーサラ,ラバンヤ
(72)【発明者】
【氏名】クマール,プラモド
【審査官】青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-521146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B
B01J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素富化圧縮天然ガス(H-CNG)およびカーボンナノチューブ(CNT)を同時製造するためのプロセスであって、前記プロセスが、
a.触媒が充填された第1の流動床反応器(FBR)内で反応サイクルを実施することであって、前記反応サイクルが、
i.水素ガスを含む第1のガスを使用して前記触媒を活性化させることであって、ここで、前記触媒が活性金属触媒を含むこと、
ii.前記第1のガスの通過を停止した後に炭化水素供給ガスを前記FBRに通過させること、
iii.クラッキング反応を前記FBR内で所定の時間にわたって進め、前記触媒上に堆積されたCNTを含む使用済み触媒と、H-CNGおよび同伴された使用済み触媒を含む生成物ガスとを得ること、
iv.前記生成物ガスを連続的に除去し、前記使用済み触媒を所定の時間間隔で前記FBRから除去すること、
v.前記生成物ガスをサイクロンに通過させて、前記同伴された使用済み触媒を分離し、分離された生成物ガスを得て、前記同伴された使用済み触媒を、前記FBRから除去された前記使用済み触媒と混合すること、
vi.CNTを前記使用済み触媒から分離して、生成物CNTを得ること、
vii.熱回収ユニット内で流体流と熱を交換することによって、熱を前記分離された生成物ガスから回収して、回収された生成物ガスおよび加熱された流体流を得ること、
viii.前記触媒を前記FBRに充填する前に、前記加熱された流体流を、前記触媒を調製するための活性金属触媒と触媒担体とを含む触媒反応器に通過させ、前記回収された生成物ガスの少なくとも一部を前記第1のガスとして前記FBRに通過させて、ステップ(i)で前記触媒を活性化させること、ならびに
ix.前記FBR内での前記反応を停止し、残りの使用済み触媒および生成物ガスを除去することと
b.前記第1のFBR内での前記反応サイクルが開始した後に、第2のFBRに前記触媒を充填し、ステップ(i~ix)を含む前記反応サイクルを第1の所定の時間で前記第2のFBR内で実施することであって、ここで、前記第2のFBRが、前記第1のFBR内での前記反応サイクルが停止された後に、第2の所定の間にわたって運転可能なままであることと、
c.前記第2のFBR内での前記反応サイクルが開始した後に、前記第1のFBRに前記触媒を充填し、ステップ(i~ix)を含む前記反応サイクルを第3の所定の時間で前記第1のFBR内で実施することであって、ここで、前記第1のFBRが、前記第2のFBR内での前記反応サイクルが停止された後に、第4の所定の間にわたって運転可能なままであることと、
d.H-CNGおよびCNTを連続的に同時製造するためにステップ(a~c)を繰り返すことと、を含む、プロセス。
【請求項2】
前記炭化水素供給ガスを前記第1のFBRまたは前記第2のFBRに送る前に前記炭化水素供給ガスと熱を交換することによって、熱を前記使用済み触媒から回収することを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
触媒活性化後に得られた減損した第1のガスを、前記第1のFBRまたは前記第2のFBRに送られた炭化水素ガス供給物と混合することを含み、前記減損した第1のガスは水素ガスの減損である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記クラッキング反応が、300~800℃で20~50時間にわたって進む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
生成物CNTの分離後に、前記使用済み触媒を再生し、前記第1のFBRまたは前記第2のFBRの充填のために新鮮な触媒と混合する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
触媒前駆体を前記触媒反応器内で前記触媒担体上に注入しながら、前記加熱された流体流を通過させて、インサイチュで前記触媒担体において前記活性金属触媒を生成することを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記触媒担体が、アルミナ、バイオ炭、Yゼオライト、ZSM-5、ベータゼオライト、MFIゼオライト、モルデナイト、MgO、SiO2、使用済みFCC触媒、またはそれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
前記活性金属触媒が、Pt、Pd、Cu、Zr、Zn、CeO、およびそれらの組み合わせから選択される促進剤を有するNiまたはFe系触媒である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
前記炭化水素供給ガスが、圧縮天然ガスである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
前記圧縮天然ガスが、メタン、エタン、プロパン、ブタン、エチレン、アセチレン、またはそれらの組み合わせである、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記第1のガスが、前記炭化水素供給ガスと混合された水素、またはH-CNGである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項12】
前記CNTを前記使用済み触媒から分離することを、酸分解法、超音波処理もしくは機械的摩砕、またはそれらの組み合わせによって実施する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項13】
熱回収のための前記流体流が、水、蒸気、窒素、炭化水素供給ガス、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載のプロセスによって水素富化圧縮天然ガス(H-CNG)およびカーボンナノチューブ(CNT)を同時製造するための装置であって、前記装置が、
a.炭化水素供給ガスタンクと、
b.少なくとも2つの流動床反応器(FBR)であって、各流動床反応器が、
シェル、
活性金属触媒を保持するために前記シェルの高さに沿って異なる高さでカンチレバーとして配設されたトレイであって、連続するトレイが、前記シェルの径方向に反対の端部に取り付けられており、各トレイが、前記トレイ上に触媒保持体積を形成するために自由端部に堰部を有する、トレイ、
前記活性金属触媒を前記トレイ上に配置することを可能にするために各トレイの上方に設けられた触媒入口、
前記炭化水素供給ガスが前記活性金属触媒の存在下で前記クラッキング反応を受けるように前記反応器に入り、前記H-CNGおよびCNTを製造することを可能にするための、各トレイの下方に設けられたガス分配器、
H-CNGを含む前記生成物ガスが前記反応器から出ることを可能にするために前記シェルの頂部に配設されたガス出口、ならびに
前記反応を停止する際にCNTを含む前記使用済み触媒を前記反応器から除去するための、前記シェルの底部に配設された触媒出口、を備える、流動床反応器(FBR)と、
c.熱を前記生成物ガスから回収し、前記加熱された流体流を生成するための熱回収ユニットと、
d.触媒調製のための、前記触媒担体、活性金属触媒、および前記加熱された流体流を収容するための触媒反応器と、
e.生成物CNTを収集するためのCNT収集器と、を備える、装置。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか一項に記載のプロセスによって水素富化圧縮天然ガス(H-CNG)およびカーボンナノチューブ(CNT)を同時製造するための流動床反応器(FBR)であって、前記反応器が、
シェル、
活性金属触媒を保持するために前記シェルの高さに沿って異なる高さで配設されたトレイであって、前記トレイの直径が前記シェルの直径よりも小さく、そのため、前記トレイの自由端部と前記シェルの内側表面との間に通路が形成されている、トレイ、
前記活性金属触媒を前記トレイ上に配置することを可能にするために前記シェル上に設けられた触媒入口、
化水素供給ガスが前記活性金属触媒の存在下でクラッキング反応を受けるように前記反応器に入り、H-CNGおよびCNTを製造することを可能にするための、前記シェルに取り付けられたガス分配器、
H-CNGを含む生成物ガスが前記反応器から出ることを可能にするために前記シェルの頂部に配設されたガス出口、ならびに
CNTを含む使用済み触媒を前記反応器から除去するための、前記シェルの底部に配設された触媒出口、を備える、流動床反応器(FBR)。
【請求項16】
前記トレイが片方の端部で前記シェルに固定されて、カンチレバーを形成している、請求項15に記載のFBR。
【請求項17】
より高いトレイからの触媒が前記通路を通ってより低いトレイに落下することを可能にし、かつ反応物および生成物ガスが前記通路を通って上昇する直線経路の形成を防ぐために、連続するトレイが、前記シェルの径方向に反対の端部で前記シェルに固定されている、請求項15に記載のFBR。
【請求項18】
各トレイ上に触媒保持体積を形成して各トレイ上に個々の流動床を形成するために、堰部が各前記トレイの自由端部上に配設されている、請求項15に記載のFBR。
【請求項19】
前記堰部の高さは、異なるトレイにおいて異なる、請求項18に記載のFBR。
【請求項20】
反応物および生成物ガスの流れが、前記トレイを通過して、その上に配置されている前記活性金属触媒を流動化させ、クラッキング反応を進めることを可能にするために、前記トレイが、前記トレイの基部に設けられた開口部を備える、請求項15に記載のFBR。
【請求項21】
使用済み触媒を前記トレイから除去することを可能にするさらなる使用済み触媒出口を備える、請求項15に記載のFBR。
【請求項22】
反応器本体を備え、前記トレイ、触媒入口、ガス分配器、ガス出口、および触媒出口を有するシェルが一体型反応器ユニットとして形成されており、前記一体型反応器ユニットが前記反応器本体に取り外し可能に配設されている、請求項15に記載のFBR。
【請求項23】
触媒入口が各トレイに隣接してかつその上方に設けられており、ガス分配器が各トレイに隣接してかつその下方に設けられている、請求項15に記載のFBR。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本主題は、一般に、水素富化圧縮天然ガス(H-CNG)の同時製造、特に、H-CNGおよびカーボンナノチューブ(CNT)を同時製造するためのプロセスおよび装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水素富化圧縮天然ガス(H-CNG)は、天然ガスとメタンとの混合物である。H-CNGは、CNGを使用する車両の燃料として使用することができ、CNGに比べていくつかの利点がある。H-CNGは、CNGよりもはるかにクリーンな燃料であり、従来のCNGと比較して、一酸化炭素およびNOxの排出量が相当少なく、燃費もより良好である。H-CNGの使用は、よりクリーンかつ再生可能な燃料を実現するための一歩と考えられている。H-CNGは、一般に、水素をCNGに添加することによって調製され、この水素は、炭化水素の蒸気改質反応またはメタンの熱分解などのプロセスを使用して製造される。しかしながら、H-CNGを生成するこれらのプロセスは高価であり、巨額の運転コストおよび資本コストを必要とする。
【図面の簡単な説明】
【0003】
詳細な説明について、添付の図を参照して説明する。図において、参照番号のいちばん左の桁は、その参照番号が最初に見られる図を示す。可能であれば、同様の特徴および成分を参照するために、図面全体で同じ番号が使用される。
【0004】
図1】本主題の一実施形態に従った、H-CNGおよびCNTを製造する例示的なプロセスの概略図である。
図2】本主題の一実施形態に従った、H-CNGおよびCNTを製造するための例示的な反応器を示す。
図3】本主題の一実施形態に従って製造されたCNTの例示的な熱重量分析結果を示す。
図4】本主題の一実施形態に従って製造されたCNTの例示的なラマンスペクトルを示す。
図5】本主題の一実施形態に従って製造されたCNTの例示的な走査型電子顕微鏡画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本主題は、水素富化圧縮天然ガス(H-CNG)およびカーボンナノチューブ(CNT)の製造に関する。H-CNGは、一定量の水素を含むCNGである。H-CNGは、CNGの代替燃料であり、これは、よりクリーンであり、一酸化炭素およびNOxの生成が相当少なくなる。CNGへの水素の添加は、水素ベースの燃料および水素経済への移行に向けた一歩と考えられている。一般に、添加される水素の量は、15~20%で変化し、これは、エネルギーの4~9%である。
【0006】
H-CNGは、一般に、蒸気および天然ガスの改質によって製造される。この反応によって水素が製造され、これがCNGと混合される。しかしながら、この反応はまた、相当量の二酸化炭素および一酸化炭素を製造し、これらは、分離する必要があり、一般に大気中に放出され、汚染を増加させる。蒸気改質は吸熱平衡反応であり、したがって、順方向に進むためには、800~900℃の高温および相当量のエネルギー入力を必要とする。さらに、使用される混合機器は高価である。これによって、資本コストおよび運転コストが増加する。
【0007】
使用され得る別のプロセスは、触媒の存在下でメタンを分解してメタンおよび水素を製造することである。分解に必要な温度は、500~1200℃である。1つの従来技術の技法では、メタンを炭素および水素に分解する触媒を選択的に加熱するために、マイクロ波照射が使用される。しかしながら、マイクロ波照射を使用するには、マイクロ波を透過する特殊な反応器およびマイクロ波発生器が必要である。これには、さらなる資本投資および運転コストが必要である。
【0008】
さらに、触媒を使用するメタン分解のための従来のすべてのプロセスでは、炭素が触媒上に堆積され、それによって触媒活性が低下する。したがって、触媒は、除去されて再生に送られる必要があり、新鮮な触媒が添加されるべきである。このプロセスでは、触媒の交換中に反応器を停止する必要があり、それによって、H-CNGの連続的な製造が妨げられ、生産性が低下し、運転コストおよび製品コストが増加する。
【0009】
本主題は、H-CNGの従来の製造プロセスのこれらおよび他の欠点を克服し、H-CNGおよびCNTの連続的な同時製造のためのプロセスおよび装置に関する。例示的なプロセスは、触媒が充填された第1の流動床反応器(FBR)内で反応サイクルを実施することを含む。反応サイクルは、水素ガスを含む第1のガスを使用して触媒を活性化させるステップであって、触媒が活性金属触媒を含む、ステップ、第1のガスの通過を停止した後に炭化水素供給ガスをFBRに通過させるステップ、クラッキング反応をFBR内で所定の時間にわたって進め、触媒上に堆積されたCNTを含む使用済み触媒と、H-CNGおよび同伴された使用済み触媒を含む生成物ガスとを得るステップ、生成物ガスを連続的に除去し、使用済み触媒を所定の時間間隔でFBRから除去するステップ、生成物ガスをサイクロンに通過させて、同伴された使用済み触媒を分離し、分離された生成物ガスを得て、同伴された使用済み触媒を、FBRから除去された使用済み触媒と混合するステップ、CNTを使用済み触媒から分離して、生成物CNTを得るステップ、熱回収ユニット内で流体流と熱を交換することによって、熱を分離された生成物ガスから回収して、回収された生成物ガスおよび加熱された流体流を得るステップ、触媒をFBRに充填する前に、加熱された流体流を、触媒を調製するための活性金属触媒と触媒担体とを含む触媒反応器に通過させ、回収された生成物ガスの少なくとも一部を第1のガスとしてFBRに通過させて、ステップ(i)で触媒を活性化させるステップ、ならびにFBR内での反応を停止し、残りの使用済み触媒および生成物ガスを除去するステップ、を含む。さらに、第1のFBR内での反応サイクルが開始した後に、第2のFBRに触媒を充填し、反応サイクルを第1の所定の時間で第2のFBR内で実施する。第2のFBRは、第1のFBR内での反応サイクルが停止された後に、第2の所定の間にわたって運転可能なままである。次いで、第2のFBR内での反応サイクルが開始した後に、第1のFBRに触媒を充填し、反応サイクルを第3の所定の時間で第1のFBR内で実施する。第1のFBRは、第2のFBR内での反応サイクルが停止された後に、第4の所定の間にわたって運転可能なままである。これらのステップを、H-CNGおよびCNTを連続的に同時製造するために繰り返す。
【0010】
前述のプロセスによって水素富化圧縮天然ガス(H-CNG)およびカーボンナノチューブ(CNT)を同時製造するための例示的な装置も提供される。この装置は、炭化水素供給ガスタンクと、少なくとも2つの流動床反応器(FBR)と、熱を生成物ガスから回収し、加熱された流体流を生成するための熱回収ユニットと、触媒調製のための、触媒担体、活性金属触媒、および加熱された流体流を収容するための触媒反応器と、生成物CNTを収集するためのCNT収集器と、を含む。各流動床反応器は、シェルと、活性金属触媒を保持するためにシェルの高さに沿って異なる高さでカンチレバーとして配設されたトレイであって、連続するトレイが、シェルの径方向に反対の端部に取り付けられており、各トレイが、トレイ上に触媒保持体積を形成するために自由端部に堰部を有する、トレイと、活性金属触媒をトレイ上に配置することを可能にするために各トレイの上方に設けられた触媒入口と、炭化水素供給ガスが活性金属触媒の存在下でクラッキング反応を受けるように反応器に入り、H-CNGおよびCNTを製造することを可能にするための、各トレイの下方に設けられたガス分配器と、H-CNGを含む生成物ガスが反応器から出ることを可能にするためにシェルの頂部に配設されたガス出口と、反応を停止する際CNTを含む使用済み触媒を反応器から除去するための、シェルの底部に配設された触媒出口と、を備える。
【0011】
本主題はまた、H-CNGおよびCNTを製造するための流動床反応器に関する。反応器は、シェルと、触媒を保持するために反応器の高さに沿って異なる高さで配設された1つ以上のトレイと、を備える。トレイの直径はシェルの直径よりも小さく、そのため、トレイの自由端部とシェルの内側表面との間に通路が形成されている。触媒がトレイに入ることを可能にするために、1つ以上の触媒入口が設けられている。天然ガスが反応器に入ることを可能にするために、1つ以上の入口がシェル上に配設されている。生成物ガスが反応器から出ることを可能にするために、ガス出口がシェルの頂部に配設されている。CNTを反応器から除去するために、CNT出口がシェルの底部に配設されている。一例では、反応器は反応器本体を備え、トレイ、触媒入口、ガス分配器、ガス出口、および触媒出口を有するシェルが一体型反応器ユニットとして形成されている。一体型反応器ユニットは、例えばカートリッジとして、反応器本体に取り外し可能に配設され得る。これによって、反応器内で新しい反応サイクルが実行されるたびに、カートリッジを反応器本体から容易に取り外して新しいカートリッジと交換することができ、それによって、運転が簡素化され、ダウンタイムが短縮される。
【0012】
本主題のプロセスによって、触媒の存在下でのメタンの分解によるH-CNGおよびCNTの同時の連続的な製造が可能になる。触媒が1つの反応器内で活性化されている場合、反応が第2の反応器内で継続することができるため、異なる開始時間を有する第1および第2の反応器などの複数の反応器の使用によって、H-CNGおよびCNTの連続的な製造が可能になる。本プロセスを使用すると、二酸化炭素または一酸化炭素の生成がないため、従来のプロセスよりも環境に優しくなっている。生成物ガス中の水素の量は、反応の温度によって容易に制御することができる。
【0013】
さらに、熱回収システムを使用して熱を回収し、このプロセスに再循環させることができるため、本プロセスは、非常にエネルギー効率が高い。さらなる熱統合のために、触媒調製もこのプロセスにおいて実施することができる。例えば、バイオ炭などの触媒担体材料を、触媒調製プロセス中に蒸気処理することができ、触媒前駆体材料を、蒸気処理されたバイオ炭に注入することができる。あるいは、生成された熱を使用して、活性金属がドープされたバイオ炭を蒸気処理することができる。これによって、触媒調製プロセスと、H-CNGおよびCNTを製造するためのプロセスとが、一体化されたプロセスになる。
【0014】
製造されるCNTは、95%超純粋であり得る。CNTが堆積した使用済み触媒は、その優れた機械的および電気的特性を理由に、精製することなく複合材料として直接使用され得る。あるいは、CNTを、使用済み触媒から分離してもよく、また別々に使用して、その一方で、使用済み触媒を再生および再利用してもよい。
【0015】
本主題の流動床反応器は、長時間、例えば20時間超にわたって運転可能である。一例では、反応器は、45時間以上にわたって運転可能である。流動床反応器は、使用される特定の空間速度に基づいて、バブリングレジーム/高速流動化レジームで運転することができる。長い運転中に、分配器内の炭素の堆積によってさらなる圧力降下が生じ得る。本主題の反応器は、このさらなる圧力降下を防ぐ。反応器内に異なる高さで1つ以上のトレイが存在することによって、触媒をまず第1のトレイに添加し、反応を進行させ、次いで、次のトレイに送ることができる。これによって、一度に大量の炭素が堆積することを防ぎ、反応器内での過度の圧力降下を防ぐ。さらに、各トレイは別々の供給入口を有し得、反応をより良く制御することができる。高さを変えられるトレイ上に堰部が存在することによって、トレイ上での触媒の滞留時間を変化させることができ、これを使用して、反応時間を制御することができる。反応時間および滞留時間を制御することによって、様々な品質のCNTを望み通りに製造することができる。
【0016】
本主題の態様を、添付の図と併せてさらに説明する。この説明および図は、本主題の原理を単に例示しているに過ぎないことに留意されたい。したがって、本主題の原理を具体化する様々な取り決めは、本明細書では明示的に説明または図示されていないが、明細書から案出することができ、その範囲に含まれると理解されるであろう。さらに、本主題の原理、態様、および実装形態、ならびにそれらの特定の実施例を列挙する本明細書のすべての陳述は、それらの等価物を包含することを意図している。
【0017】
図1は、本主題の一実施形態に従った、H-CNGおよびCNTを製造する例示的なプロセスの概略図である。このプロセスは、触媒ホッパー104から第1の反応器110に触媒を添加することを含む。触媒は、例えばニッケルまたは鉄系触媒を含む金属系触媒と、Pt、Pd、Cu、Zr、ZnおよびCeOなどの促進剤と、を有する、活性金属触媒であり得る。活性金属触媒の使用は、H-CNGに加えて、さらなる生成物としてのCNTの製造に役立つ。触媒は、アルミナまたはバイオ炭などの担体に担持されていてもよい。Yゼオライト、ZSM-5、ベータゼオライト、MFIゼオライト、モルデナイト、MgO、SiO2、使用済みFCC触媒などの異なるタイプのゼオライトなどの他の担体も、他の例で使用することができる。次いで、約500~650℃の触媒活性化温度に達するように反応器が加熱される。水素ガスを含む第1のガスを、触媒活性化のために第1の反応器110に入れることができる。第1のガス中の水素は、触媒を還元し、その後、触媒を炭化水素供給ガスの分解のために活性化させる。一例では、第1のガスは、H-CNGであり得るか、または水素が添加された炭化水素供給ガスであり得る。一例では、活性化は、3~8時間にわたって実施され得る。
【0018】
触媒活性化が完了したら、第1のガスの供給を停止し、供給物114を第1の反応器110に入れることができる。供給物114は、炭化水素供給ガスであり得る。一例では、炭化水素供給ガスは圧縮天然ガスであり、これは、主に、メタン、またはメタン、エタン、プロパン、ブタン、エチレン、アセチレンなどの他の軽質炭化水素、またはナフサ、原油、ディーゼル、清浄化された油などの石油留分、またはそれらの組み合わせであり得る。一例では、触媒活性化中に得られる減損した第1のガスは、供給物114と混合され得る。
【0019】
供給物114を、活性化された触媒の存在下で反応させることができ、供給物114は分解して、クラッキングによって水素およびCNTを製造する。一例では、反応を、約550℃および大気圧で進めることができる。別の例では、反応を、300℃~800℃の温度範囲にわたって進めることができる。一例では、反応を、20~50時間にわたって進めることができる。反応温度は、炭化水素の分解量が制御可能であるように選択される。一例として、反応温度が550℃である場合、メタン分解によって製造される水素の量は、約18~25体積%である。反応温度が高いほど、水素の製造がより多く、反応温度が低いほど、水素の製造がより少ない。したがって、選択される反応温度によって、水素の量を制御することができ、結果として、製造されるCNTの量を制御することができるであろう。
【0020】
反応が第1の反応器110内で進行しているとき、反応が開始した後の第1の所定の時間に、触媒を第2の反応器120に添加して第2の反応器を装填することができる。いくつかの例では、触媒は、第1の反応器110内での反応が開始すると同時に添加され得る。別の例では、触媒は、例えば2~5時間のタイムラグを伴って添加され得る。第2の反応器120内の触媒は、第1の反応器で使用される反応サイクルと同様に、第1のガスを通過させ、500~750℃で5~8時間にわたって活性化させることによって、活性化させることができる。活性化後に、第1のガスの供給を停止し、炭化水素供給ガスを含む供給物114を第2の反応器120に入れることができる。供給物114を、第2の反応器120内で550℃および大気圧で反応させて、H-CNGおよびCNTを製造することができる。一例では、第2の反応器120における反応条件は、第1の反応器110において使用されるものと同様であり得る。別の例では、第2の反応器120における反応条件は、必要に応じて、H-CNGおよびCNT純度の異なる組成物の製造を可能にするために第1の反応器110において使用されるものとは異なり得る。
【0021】
一例では、新鮮な触媒を第2の反応器120に添加した後の第1の所定の時間は、触媒活性化が第1の反応器110内で進むのと同時に反応が第2の反応器120内で進行するような時間であり得る。別の例では、新鮮な触媒を第2の反応器120に添加した後の第1の所定の時間は、H-CNGおよびCNTを製造する反応が第1の反応器110および第2の反応器120の両方で同時に進行するような時間である。さらに、第2の反応器120は、運転可能なままであり得て、すなわち、第2の反応器120内での反応は、第1の反応器110内での反応が停止された後に、第2の所定の時間にわたって継続することができる。
【0022】
同様に、第2の反応器120内での反応サイクルが開始した後に、第1の反応器110に触媒を充填することができ、反応サイクルを第3の所定の時間で第1の反応器110内で実施することができる。第1の反応器は、第2の反応器120内での反応サイクルが停止された後に、第4の所定の間にわたって運転可能なままであり得る。
【0023】
したがって、2つの反応器内での反応は、H-CNGおよびCNTの連続的な製造が得られるように進行し得る。第1の反応器110および第2の反応器120の使用は、触媒活性化、生成物の除去、または新鮮な触媒の添加のために製造を停止することなく、H-CNGおよびCNTの製造を連続的に進めることを可能にする。第1および第2の反応器は、以下で論じられるように、流動床反応器(FBR)であり得る。
【0024】
理解されているように、H-CNGを連続的に製造するために、開始時間をずらして使用される3つ以上の反応器が存在し得る。さらに、反応器は、CNTの所望の純度を達成するために、直列、並列、または直列と並列との組み合わせで使用され得る。CNTの純度は、触媒上に堆積されたCNTの重量によるパーセンテージを指す。
【0025】
第1の反応器110または第2の反応器120のいずれかにおいて反応が進行すると、CNGと混合された水素、すなわちH-CNGを含む生成物ガス118を、第1の反応器110または第2の反応器120の頂部から連続的に収集することができる。生成物ガス118をサイクロン122または他のフィルタに通過させて、これらを同伴された使用済み触媒から分離し、分離された生成物ガスを得ることができる。一例では、H-CNGを含む生成物ガスの連続的な除去を可能にするために、スライドバルブが反応器110および120またはサイクロン122の下流に設けられ得る。スライドバルブを運転するのに必要な十分なヘッドを構築するために、スタンドパイプが設けられ得る。図では、単一のサイクロンが両方の反応器に共通して示されているが、別の実装形態では、各反応器が個別にサイクロンに接続され得る。
【0026】
触媒からの分離後に、流体流142を使用して、分離された生成物ガスを熱交換器130などの熱回収ユニットに通過させることができる。分離された生成物ガスはまた、未反応の炭化水素を含み得て、これは、さらに分離され、スリップ流134として第1の反応器110および第2の反応器120にフィードバックされ得る。分離は、例えば、純粋な水素を得るためにスリップ流134をPSAに通過させることによる圧力スイング吸着(PSA)を行うことで達成され得る。一例では、このようにして得られた純粋な水素は、第1のガスと混合され、触媒活性化に使用され得る。また、このプロセスへのホットスリップ流134の返送を可能にすることによって、熱回収が提供され、反応の熱要件が低減される。さらに、熱は、流体流142を使用して熱交換器130で回収され得る。一例では、流体流142は、水、蒸気、窒素、炭化水素供給ガス、またはそれらの組み合わせを含み得る。熱交換器130の通過後に、加熱された流体流146は、触媒反応器150内での触媒調製などの他のプロセスに使用され得るか、または第1の反応器110もしくは第2の反応器内での反応のための供給物流との熱交換のために再循環され得る。
【0027】
一例では、第1または第2の反応器に触媒を充填する前に、加熱された流体流を、触媒を調製するための活性金属触媒と触媒担体とを有する触媒反応器150に通過させることができる。例えば、炭素およびバイオマスを含む入口流154は、触媒反応器150に供給され得る。熱交換器130からの加熱された流体流146を、触媒反応器150に入れることができ、それによって、入口流154の加熱が可能になり、したがって、触媒調製反応に必要な熱が低減される。例えば活性炭およびバイオ炭を有する調製された触媒は、出口流158として触媒反応器150の底部から除去され得て、反応器150内に活性金属をドープする用意が行われ得る。反応器150は、蒸気、不活性ガス、または活性金属塩を触媒調製のために反応器に入れることを可能にするための入口を有し得る。次いで、調製された触媒は、触媒を第1および第2の反応器110、120に充填するために使用され得る。
【0028】
熱交換器130を通過して流体流142を加熱した後の生成物ガスは、回収された生成物ガスと呼ばれ得る。回収された生成物ガスの少なくとも一部は、触媒を活性化させるために、第1のガスとともに第1および第2の反応器に通過させてもよく、それによって、触媒活性化の熱要件が低減される。
【0029】
このプロセスにおける複数のステップでのこの熱の再循環または再利用によって、本主題のプロセスは、非常にエネルギー効率が高くなり、エネルギー関連の運転コストが削減される。
【0030】
反応中に形成されたCNTは、使用済み触媒上に堆積され、反応器110、120の底部に落下し、一例では、流れ138として反応器底部から収集され得る。CNTが堆積している使用済み触媒もまた、サイクロン122の底部から収集され得る。いくつかの例では、使用済み触媒流138は、所望のCNTの純度に応じて、所定の期間で反応器から除去され得る。一例では、対向する高速ジェットを反応器110および120内に提供して、CNTを使用済み触媒から分離することができる。分離されたCNTは、反応器110および120の底部から収集され得るか、またはサイクロン122を形成し得る。
【0031】
一例では、サイクロンまたは反応器の底部から回収された使用済み触媒は高温であるため、使用済み触媒は、第2の熱回収システム162に通過させられ得る。第2の熱回収システム162は、炭化水素供給ガス流166を第1の反応器110または第2の反応器120に供給物として送る前に、炭化水素供給ガス流166を加熱することによって、熱を使用済み触媒から回収することができる。第2の熱回収システム162を通過した後に、使用済み触媒は、使用済み触媒収集器170内に収集され得て、CNTの回収および再生などのさらなる処理のために送られ得る。一例では、CNTは、酸分解法、超音波処理もしくは機械的摩砕、またはそれらの組み合わせによって、使用済み触媒から分離され得る。
【0032】
反応が必要な期間にわたって反応器内で実行された後に、反応は停止され得て、残りの使用済み触媒および生成物ガスは除去され得て、反応器は次のサイクルのために再装填され得る。例えば、生成物ガス118、CNT、および使用済み触媒を除去した後に、新鮮な触媒が第1の反応器110に添加され、先のプロセスステップが繰り返されて、H-CNGおよびCNTが製造され得る。同様に、生成物ガス118、CNT、および使用済み触媒を除去した後に、新鮮な触媒が第2の反応器120に添加され、先のプロセスステップが繰り返され得る。2つの反応器が示されているが、H-CNGおよびCNTを製造するために任意の数の反応器が使用され得る。
【0033】
一例では、本主題のプロセスは、図1のスキーマに示されるような装置100を使用して実施され得る。装置100は、第1の反応器110および第2の反応器120に触媒を提供するための触媒ホッパー104を備える。一例では、異なる触媒ホッパーが各反応器に設けられ得る。天然ガスを反応させてH-CNGおよびCNTを製造するために、2つ以上の流動床反応器、例えば、第1の反応器110および第2の反応器120が存在し得る。サイクロン122は、生成物ガス118を分離するために配設され得る。装置100は、CNTを収集するための収集器と、熱を回収するための第1の熱回収ユニット130および熱回収ユニット162と、をさらに備え得る。
【0034】
一例では、装置100は、炭化水素供給ガスタンクと、少なくとも2つの流動床反応器(FBR)と、熱を生成物ガスから回収し、加熱された流体流を生成するための熱回収ユニットと、触媒調製のための、触媒担体、活性金属触媒、および加熱された流体流を収容するための触媒反応器と、生成物CNTを収集するためのCNT収集器と、を含み得る。各流動床反応器は、シェルと、活性金属触媒を保持するためにシェルの高さに沿って異なる高さでカンチレバーとして配設されたトレイであって、連続するトレイが、シェルの径方向に反対の端部に取り付けられており、各トレイが、トレイ上に触媒保持体積を形成するために自由端部に堰部を有する、トレイと、活性金属触媒をトレイ上に配置することを可能にするために各トレイの上方に設けられた触媒入口と、炭化水素供給ガスが活性金属触媒の存在下でクラッキング反応を受けるように反応器に入り、H-CNGおよびCNTを製造することを可能にするための、各トレイの下方に設けられたガス分配器と、H-CNGを含む生成物ガスが反応器から出ることを可能にするためにシェルの頂部に配設されたガス出口と、反応を停止する際にCNTを含む使用済み触媒を反応器から除去するための、シェルの底部に配設された触媒出口と、を備え得る。例示的な流動床反応器の構成は、図2を参照して以下でさらに説明される。
【0035】
図2は、本主題の実施形態に従った、H-CNGおよびCNTを製造するための例示的な流動床反応器を示す。例示的な反応器200は、第1の反応器110もしくは第2の反応器120、またはその両方として使用され得る。一例では、反応器200はシェル204を備える。シェルは円筒形であり得る。反応器200は流動床反応器であり得る。1つ以上のトレイ210(210a、210b…)は、活性金属触媒を保持するために、反応器200の高さに沿って異なる高さで配設され得る。トレイ210の直径は、シェル204の直径よりも小さい。トレイ210は、片方の端部でシェル204に固定され得て、他方の端部で自由となっており、トレイの端部とシェルとの間に空間が設けられている。したがって、トレイ210はカンチレバーを形成する。これによって、1つ以上のトレイ210の自由端部とシェル204の内側表面との間に通路を形成することが可能になる。さらに、より高いトレイからの触媒が通路を通ってより低いトレイに落下することを可能にし、かつ反応物および生成物ガスが通路を通って上昇する直線経路の形成を防ぐために、連続するトレイが、シェル204の径方向に反対の端部でシェル204に固定され得る。トレイ210は、任意の金属から作製され得て、開口部を有する中実体であり得る。別の例では、トレイ210は、メッシュ状の構造を有し得て、それ自体が触媒として機能することができるステンレス鋼のような活性金属から作製され得る。
【0036】
反応器200は、触媒をトレイ210上に配置することを可能にするために、シェル204上に配設された1つ以上の触媒入口220をさらに備える。触媒は、触媒入口220に接続され得る触媒ホッパー230を介して分配され得る。一例では、1つの触媒入口220が存在し得て、触媒があるトレイから別のトレイにオーバーフローするときに、触媒がこの触媒入口220を介してすべてのトレイ210に分配され得る。別の例では、各トレイは、触媒が各トレイに堆積されることを可能にするために、別個の触媒入口220を有し得る。各トレイ210に別個の触媒入口220を使用することによって、各トレイに分配される触媒の量を制御する際のより大きな柔軟性が可能になる。さらに、別個の入口を用いることで、各トレイ210を、他のトレイ210とは独立して触媒で満たすことができ、反応器200の運転における柔軟性が可能になる。各トレイは、トレイを通過して、その上に配置されている活性金属触媒を流動化させ、クラッキング反応を進めることを可能にする反応物および生成物ガスの流れを伴う流動床反応器として機能することができる。トレイ底部は、ガスがトレイ210を通って流れることを可能にするための開口部を有し得る。開口部のサイズは、ガスは流れることができるが触媒は通過できないように選択されている。例えば、開口部のサイズは40μm未満であり得る。
【0037】
トレイ210は、各トレイ上に触媒保持体積を形成して各トレイ上に個々の流動床を形成するために、トレイ210の自由端部上に配設された堰部240を備える。堰部240の高さは、以下に説明されるように、トレイ210上の触媒の体積およびトレイ210上の触媒の滞留時間を決定する。一例では、すべてのトレイ210は、同じ高さの堰部240を有し得る。別の例では、堰部240の高さは、異なるトレイ210において異なり得る。この場合、異なる量の触媒が、異なるトレイ210上に分配され得て、各トレイ上に堆積したCNTが、異なる時間で除去され得る。
【0038】
運転中、一例では、第1のトレイ210aの所与の堰部高さについて、特定の時間の反応の後に、炭素が触媒上に堆積されるため、触媒が膨張する。触媒粒子のサイズは2倍になり、密度は2倍減少し得る。したがって、触媒は、もはや第1のトレイ210aに含むことができず、第2のトレイ210bに落下する。反応は、第2のトレイ210b上の触媒を使用して進むことができ、滞留時間は、第2のトレイ210b上の堰部240の高さによって決定される。流動床反応器では、反応が、長時間、例えば18~20時間にわたって連続的に実行されると、触媒の凝集が生じる場合がある。異なる堰部高さを有するトレイ210が存在すると、単一の反応器内で触媒上においてCNTをずらして堆積させることが可能になり、それによって、触媒の凝集が防がれ、より長い実行時間が可能になるため、有利である。反応が単一段階で実施される場合、単一の重量毎時空間速度(WHSV)からの得られるすべての炭素が大量に触媒上に堆積され、粒子の成長を理由に急速な凝集が生じるであろう。触媒上に炭素が繰り返し堆積されると、CNTの品質が低下する。
【0039】
トレイ210の存在はまた、単一の反応器内で異なる反応時間を可能にする。トレイ210を備える各段階は、その個別の供給入口を有するため、流量を変えると、供給物の異なる変換量がもたらされ得る。変換量が異なると、CNTの異なる品質および形態が生じる。各トレイ210における触媒の反応時間は、例えば、一定時間後にトレイ210から触媒を除去するか、またはトレイ210へのガス供給を停止することによって、独立して制御可能であるため、異なる品質のCNTを必要に応じて単一の反応器から得ることができる。様々な例では、蒸気または不活性ガスを入れてCNTを使用済み触媒から分離することを可能にするために、各段階またはトレイ210上にノズルが設けられ得る。
【0040】
反応器200は、ガスを反応器200に入れることを可能にするために、シェル204上に配設された1つ以上のガス分配器250を備える。一例では、ガス分配器250は、反応器200の底部に配設され得る。別の例では、ガス分配器250は、各トレイ210が独立したガス分配器250を有し得るように、実質的に各トレイ210の近くに配設され得る。各トレイ210に独立したガス分配器250が存在することによって、ガスを各トレイ210に独立して入れることを可能にする柔軟性が可能になる。ガス分配器250は、触媒活性化のためのH-CNGと、H-CNGおよびCNTを製造する反応のための天然ガスと、を供給するために使用され得る。
【0041】
反応器200は、反応器200の頂部の部分にサイクロン260をさらに備え得る。生成物ガスは、サイクロン260を通過することができ、そこで、これらは触媒から分離される。生成物ガスは、シェル204の頂部に配設されたガス出口270から除去され得て、さらに、図1に示されるように、分離のために外部サイクロンに送られ得る。CNTを反応器200から除去するために、CNT出口280がシェル204の底部に配設され得る。CNTは、CNT収集器284に収集され得る。反応が完了したら、反応器200を空にして、トレイ210上または収集器284の収集域の外側などの他の場所に堆積されたCNTを収集することができる。
【0042】
一例では、触媒入口は、各トレイに隣接してかつその上方に設けられており、ガス分配器は、各トレイに隣接してかつその下方に設けられている。さらに、各トレイについて、個々のさらなる使用済み触媒出口をシェル204に設けて、トレイからの使用済み触媒の除去を可能にすることができる。
【0043】
一例では、反応器は反応器本体(図示せず)を備え、トレイ、触媒入口、ガス分配器、ガス出口、および触媒出口を有するシェルが一体型反応器ユニットとして形成されている。一体型反応器ユニットは、例えばカートリッジとして、反応器本体に取り外し可能に配設され得る。これによって、反応器内で新しい反応サイクルを実行するたびに、カートリッジを反応器本体から容易に取り外して新しいカートリッジと交換することが可能になり、それによって、運転が簡素化され、ダウンタイムが短縮される。
【実施例
【0044】
ここでは、開示は、開示の働きを説明することを意図している、本開示の範囲に関する制限を暗示すると限定的に解釈されることを意図してはいない、実施例を用いて説明する。別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野における当業者に一般に理解されるものと同一の意味を有する。本明細書に記載されているものと類似または同等の方法および材料を、開示されている方法および組成物の実践において使用することができるが、例示的な方法、デバイス、および材料は、本明細書に記載されている。そのような方法および条件が適用可能であるため、本開示は、特定の方法、および記載されている実験条件に限定されることはないと理解されたい。
【0045】
第1のステップでは、触媒をホッパーに充填し、そこから、触媒15gを流動床反応器(FBR)に移した。反応手順の前提条件として、反応器を550℃に加熱し、15SLPH(標準リットル毎時)のNガスでフラッシュした。次いで、充填された触媒を、水素富化天然ガス/純粋な水素雰囲気下にて、550~580℃で、3~5時間にわたって還元/活性化した。これに続いて、フロー制御されたパイプ天然ガス(供給ガス)をFBR内の触媒床に通過させ、550℃で20時間超にわたって反応を進めた。天然ガスへの触媒反応から製造された水素ガスによって、生成物流としての水素富化天然ガス(H-CNG)と、炭およびカーボンナノチューブを含む使用済み触媒とが得られた。反応の別の副産物は、反応器の底部に堆積された多層CNT(MWCNT)であった。H-CNG生成物流を、サイクロン/ホットフィルタに通過させ、さらなる用途のために収集し、その一方で、ホットフィルタから回収された熱を触媒の活性化に利用した。反応がFBRで完了したら、真空または高速のいずれかを使用して使用済み触媒を空にして、これを使用済み触媒排出容器にサイクロンで送った。この使用済み触媒を、TGA、SEM、およびラマン分析を使用して分析した。様々な時間間隔で、水素炎イオン化検出器(FID)と熱伝導度検出器(TCD)とを備えたGCで生成物ガスサンプルを収集および分析した。差圧トランスミッタ(DPT)の読取値を連続的に監視して、触媒へのCNTの堆積によって高い圧力降下が生じたとき、反応を停止した。これによって、ガス分配器の詰まりがさらに生じる。したがって、いくつかの場合では触媒が活性であり得るが、高い圧降下によって反応が終了した。商業規模の反応器では、これは、実験室規模の焼結または金網分配器の代わりにリングスパージャーの種類のガス分配器を使用して回避することができる。
【0046】
図3は、本主題の実施形態に従って製造されたCNTの例示的な熱重量分析結果を示す。得られた曲線は、カーボンナノチューブ材料に典型的なものであり、曲線のディップは、約400℃から始まる。曲線の分析は、得られたカーボンナノチューブが92%超純粋であることを示す。
【0047】
図4は、本主題の一実施形態に従って製造されたCNTの例示的なラマンスペクトルを示す。炭素材料のラマンスペクトルにおけるDバンドとGバンドとの比率は、炭素材料の品質を示す。ここで得られた比率I/Iは、1.83である。他の例では、この比率は、0.5~2.5である。
【0048】
図5は、本主題の実施形態に従った、CNTの例示的な走査型電子顕微鏡画像を示す。この画像は、約25nm~66nmの直径を有するCNTの形成を示す。別の例では、CNTの直径は、60~120nmであり得る。
【0049】
本主題は、構造的特徴に特有の言葉で説明されているが、特定の特徴およびプロセスは、特許請求されている主題を実装するための例示的な実施形態として開示されていると理解されたい。

図1
図2
図3
図4
図5