(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】エーテル化の方法
(51)【国際特許分類】
C07C 41/06 20060101AFI20241003BHJP
C07C 43/13 20060101ALI20241003BHJP
B01J 29/70 20060101ALI20241003BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20241003BHJP
【FI】
C07C41/06
C07C43/13 B
B01J29/70 Z
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2022516741
(86)(22)【出願日】2020-09-23
(86)【国際出願番号】 US2020052100
(87)【国際公開番号】W WO2021067079
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2023-09-08
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100144417
【氏名又は名称】堂垣 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147212
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】リー、ウェンシェン
(72)【発明者】
【氏名】ミラー、ディーン
(72)【発明者】
【氏名】キング、ステファン ダブリュー.
【審査官】高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-300994(JP,A)
【文献】特開平10-168016(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0240086(US,A1)
【文献】米国特許第04219678(US,A)
【文献】特開昭51-057688(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 41/06
C07C 43/13
B01J 29/70
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エーテル化の方法であって、前記方法が、
ゼオライト触媒をリンで修飾して、0.05:1~1.5:1のリン対アルミニウムの原子比、および0.05~6重量パーセントのリン負荷を有するリン修飾ゼオライト触媒を提供することであって、重量パーセントが、前記リン修飾ゼオライト触媒の総重量に基づく、提供することと、
前記リン修飾ゼオライト触媒をオレフィンおよびアルコールと接触させてモノアルキルエーテルを生成することと、を含
み、
前記ゼオライト触媒はゼオライトベータ触媒であり、前記アルコールは(ポリ)アルキレングリコールである、方法。
【請求項2】
前記修飾前の前記ゼオライト触媒のテンプレートを還元することを含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記ゼオライト触媒
のテンプレート
を還元することが、前記ゼオライト触媒をか焼することを含む、請求項
2に記載の方法。
【請求項4】
前記オレフィンが、6~30個の炭素原子を含む、請求項1~
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記オレフィンが、C
12-C
14オレフィンである、請求項1~
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記アルコールが、モノエチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセロール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~
5のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、エーテル化の方法を対象とし、より具体的には、実施形態は、ゼオライト触媒をリンで修飾してリン修飾ゼオライト触媒を提供することと、リン修飾ゼオライト触媒をオレフィンおよびアルコールと接触させてモノアルキルエーテルを生成することと、を含む、エーテル化の方法を対象とする。
【背景技術】
【0002】
モノアルキルエーテルは、例えば、溶媒、界面活性剤、および化学中間体などの多くの用途に有用である。当業界では、モノアルキルエーテルを製造するために利用され得る新規かつ改善された材料および/または方法を開発することに引き続き焦点が当てられている。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、エーテル化の方法を提供し、方法が、ゼオライト触媒をリンで修飾して、0.05:1~1.5:1のリン対アルミニウムの原子比、およびリン修飾ゼオライト触媒の総重量に基づいて0.05~6重量パーセントのリン負荷を有するリン修飾ゼオライト触媒を提供することと、リン修飾ゼオライト触媒をオレフィンおよびアルコールと接触させて、モノアルキルエーテルを生成することと、を含む。
【0004】
本開示の上記概要は、開示された各実施形態または本開示のすべての実装形態を説明することを意図するものではない。より具体的に示す本明細書は、例示的な実施形態を例示するものである。本出願全体にわたるいくつかの場所では、例のリストを通じて指針が提供され、これらの例は、様々な組み合わせで使用することができる。どの場合も、列挙されたリストは、代表的なグループとしてのみ機能し、排他的なリストとして解釈されるべきではない。
【発明を実施するための形態】
【0005】
エーテル化の方法が本明細書に開示されている。方法は、ゼオライト触媒をリンで修飾して、リン修飾ゼオライト触媒を提供することと、リン修飾ゼオライト触媒をオレフィンおよびアルコールと接触させてモノアルキルエーテルを生成することと、を含む。
【0006】
有利には、本明細書に開示されるエーテル化の方法は、本明細書でさらに論じられるリン修飾ゼオライト触媒を利用しないエーテル化と比較して、改善された、すなわち、より高いモノアルキルエーテル収率を提供することができる。改善されたモノアルキルエーテル収率は、化学中間体を提供するなどの、多くの用途に望ましい場合がある。一例として、モノアルキルエーテルは、エトキシル化プロセスによる界面活性剤製造において、より高いモノアルキルエーテル収率を望ましいものにする化学中間体として利用され得る。
【0007】
加えて、本明細書に開示されるエーテル化の方法は、本明細書でさらに論じられるリン修飾ゼオライト触媒を利用しないエーテル化と比較して、改善された、すなわち、より高いモノアルキルエーテル生成速度を提供することができる。改善されたモノアルキルエーテル生成速度は、例えば、低減された生成時間および/または関連するコストで所望の生成物を提供する多くの用途に望ましい場合がある。
【0008】
ゼオライト触媒は、結晶性メタロシリケート、例えばアルミノシリケートであり、例えば、TがSi、AlまたはP(または四面体ユニットの組み合わせ)であり得るTO4の四面体ユニットを繰り返すことから構成される。これらのユニットは一緒に連結して、規則的な結晶内空洞および/または分子寸法のチャネル、例えばミクロ細孔を有する骨格を形成する。
【0009】
本開示の実施形態は、ゼオライト触媒が合成ゼオライト触媒であることを提供する。合成ゼオライト触媒は、例えば、アルカリおよびテンプレートの存在下でのシリカ-アルミナゲルの結晶化の既知のプロセスによって製造することができる。例としては、国際ゼオライト協会の構造委員会による命名法に従ってIUPACコードを使用して記載されるゼオライトベータ触媒(BEA)、リンデタイプA(LTA)、リンデタイプXおよびY(AlリッチおよびSiリッチFAU)、シリカライト-1、ZSM-5(MFI)、リンデタイプB(ゼオライトP)、リンデタイプF(EDI)、リンデタイプL(LTL)、リンデタイプW(MER)、ならびにSSZ-32(MTT)が挙げられる。国際ゼオライト協会の構造委員会によって描写された結晶構造を説明するIUPACコードは、特に明記されていない限り、本文書の優先日時点の最新の表記を意味する。
【0010】
1つ以上の実施形態は、ゼオライト触媒、ゼオライトベータ(BEA)触媒を提供する。1つ以上の実施形態は、ゼオライト触媒が、多くのブレンステッド酸部位、すなわち、プロトンを供与する部位を含むことを提供する。
【0011】
ゼオライト触媒は、中性子放射化分析を使用して測定した場合、5:1~1500:1のSiO2/Al2O3モル比を有し得る。5:1~1500:1のすべての個々の値および部分範囲が含まれ、例えば、ゼオライト触媒は、下限5:1、10:1、15:1または20:1~上限1500:1、750:1、300:1または100:1のSiO2/Al2O3モル比を有し得る。
【0012】
ゼオライト触媒は、5~12オングストロームの平均細孔径を有し得る。5~12オングストロームのすべての個々の値および部分範囲が含まれ、例えば、ゼオライト触媒は、下限5または7オングストローム~上限11または12オングストロームの平均細孔径を有し得る。
【0013】
ゼオライト触媒は、130~1000m2/gの表面積を有し得る。130~1000m2/gのすべての個々の値および部分範囲が含まれ、例えば、ゼオライト触媒は、下限130、150、175、300、400または500m2/g~上限1000、900または800m2/gの表面積を有し得る。表面積は、ASTM D4365-19に従って測定する。
【0014】
前述のように、ゼオライト触媒は、有機テンプレートとも称されることがあるテンプレートを利用するプロセスによって製造することができる。テンプレートは、テンプレート剤および/または構造指向剤(SDA)とも称されることがある。例えば、ゼオライト触媒の骨格の分子形状および/またはパターンを誘導する、例えば指向するために、ゼオライト触媒を製造するための反応混合物にテンプレートを加えることができる。ゼオライト触媒製造プロセスが完了すると、ゼオライト触媒は、テンプレート、例えば、ゼオライト触媒のミクロ細孔に位置するテンプレートを含む。テンプレートは、ゼオライト触媒の形成に利用される。1つ以上の実施形態は、テンプレートがアンモニウムイオンを含むことを提供する。テンプレートを含むゼオライト触媒は、既知のプロセスによって製造することができる。テンプレートを含むゼオライト触媒は、商業的に入手することができる。好適な市販のメタロシリケート触媒の例としては、Conshohocken,PAのZEOLYST INTERNATIONAL(商標)からのCP814E、CP814C、CP811C-300、CBV712、CBV720、CBV760、CBV2314、CBV10Aが挙げられる。
【0015】
ゼオライト触媒を製造するために利用され得る様々なテンプレートが知られている。テンプレートの例としては、とりわけ、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、N,N,N-トリメチル-1-アダマンテ-アンモニウムヒドロキシド、ヘキサメチレンイミン、およびジベンジルメチルアンモニウムが挙げられる。
【0016】
本開示の実施形態は、ゼオライト触媒をリンで修飾して、リン修飾ゼオライト触媒を提供することを提供する。リン修飾、例えばリン酸塩処理(phosphatation)は、含浸を含み得る。含浸は、初期湿潤含浸または湿潤含浸と称される場合がある。ゼオライト触媒をリンで修飾することは、既知の条件、例えば、既知のリン含浸条件を利用することができ、既知の装置および既知の成分を利用することができる。例えば、ゼオライト触媒は、リン化合物を含む水溶液と接触させることができる。リン化合物の例としては、限定されないが、リン酸、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸ナトリウム、リン酸二ナトリウム、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0017】
ゼオライト触媒をリンで修飾することは、ゼオライト触媒をリン化合物を含む溶液と接触させることを含み得る。溶液としては、水を挙げることができる。異なる用途では、様々な量のリン化合物および/または水が利用され得る。
【0018】
ゼオライト触媒は、5℃~90℃の温度のリン化合物を含む水溶液と接触させることができる。5℃~90℃のすべての個々の値および部分範囲が含まれ、例えば、ゼオライト触媒は、下限5、10、または15℃~上限90、85、または80℃の温度のリン化合物を含む水溶液と接触させることができる。異なる用途のゼオライト触媒は、様々な時間の間、リン化合物を含む水溶液と接触させることができる。
【0019】
本開示の実施形態は、リン修飾ゼオライト触媒が、0.05:1~1.5:1のリン対アルミニウムの原子比を有することを提供する。0.05:1~1.5:1のすべての個々の値および部分範囲が含まれ、例えば、リン修飾ゼオライト触媒は、下限0.05:1、0.075:1、0.10:1または~上限1.5:1、1.3:1、または1.2:1のリン対アルミニウムの原子比を有し得る。リン対アルミニウムの原子比は、既知のプロセスによって決定される。リン対アルミニウムの原子比は、リン修飾ゼオライト触媒を製造するために利用される成分に基づいて計算される。例えば、例えばゼオライト触媒の構造に基づくゼオライト触媒の既知量のリンおよびアルミニウム、ならびにリン修飾ゼオライト触媒を製造するために利用される既知量のリンを利用して、リン修飾ゼオライト触媒のリン対アルミニウムの原子比は計算される。
【0020】
本開示の実施形態は、リン修飾ゼオライト触媒は、リン修飾ゼオライト触媒の総重量に基づいて0.05~6重量パーセントのリン負荷、例えば、本明細書で論じられるリン修飾を介して提供されるリンを有することを提供する。0.05~6重量パーセントのすべての個々の値および部分範囲が含まれ、例えば、リン修飾ゼオライト触媒は、リン修飾ゼオライト触媒の総重量に基づいて、下限0.05、1.0または2.0重量パーセント~上限6、5.5、または4.5重量パーセントのリン負荷を有し得る。リン負荷は、既知のプロセスによって決定され得る。例えば、リン負荷、例えば、公称リン負荷は、リン修飾ゼオライト触媒を製造するために利用される成分に基づいて計算され得る。
【0021】
本開示の1つ以上の実施形態は、リンによる修飾に続いて、リン修飾ゼオライト触媒をか焼することができることを提供する。リン修飾ゼオライト触媒は、350℃~700℃の温度でか焼され得る。350℃~700℃のすべての個々の値および部分範囲が含まれ、例えば、リン修飾ゼオライト触媒は、下限350℃、400℃、または450℃~上限700℃、650℃、または600℃でか焼され得る。
【0022】
リン修飾ゼオライト触媒は、多くの既知のか焼環境でか焼され得る。例えば、リン修飾ゼオライト触媒は、空気環境でか焼され得る。
【0023】
リン修飾ゼオライト触媒は、か焼され得、すなわち、か焼環境で1時間~24時間、350℃~700℃の温度にさらすことができる。1時間~24時間のすべての個々の値および部分範囲が含まれ、例えば、リン修飾ゼオライト触媒は、下限1時間、3時間、または6時間~上限24時間、18時間、または12時間でか焼され得る。
【0024】
1つ以上の実施形態は、本明細書に開示される方法が、本明細書で論じられるリン修飾の前に、ゼオライト触媒のテンプレートを還元する、例えば除去することを含むことを提供する。本開示の実施形態は、ゼオライト触媒のテンプレートが、か焼によって還元され得ることを提供する。
【0025】
テンプレートを還元するために、ゼオライト触媒は、525℃~750℃の温度でか焼され得る。525℃~750℃のすべての個々の値および部分範囲が含まれ、例えば、ゼオライト触媒を、下限525℃、550℃、または575℃~上限750℃、700℃、または650℃でか焼して、テンプレートを還元することができる。
【0026】
テンプレートを還元するために、ゼオライト触媒は、多くの既知のか焼環境でか焼され得る。例えば、ゼオライト触媒は、空気環境でか焼され得る。
【0027】
テンプレートを還元するために、ゼオライト触媒は、か焼され得、すなわち、か焼環境で1時間~24時間、525℃~750℃の温度にさらすことができる。1時間~24時間のすべての個々の値および部分範囲が含まれ、例えば、ゼオライト触媒は、下限1時間、3時間、または6時間~上限24時間、18時間、または12時間でか焼され得る。
【0028】
本開示の実施形態は、エーテル化の方法に関する。エーテル化とは、エーテルを生成する化学プロセス、例えば化学反応を指す。本明細書に開示される方法は、リン修飾ゼオライト触媒をオレフィンおよびアルコールと接触させて、モノアルキルエーテルを生成することを含む。
【0029】
本明細書で使用される場合、「オレフィン」は、1つ以上の炭素-炭素二重結合を有する炭化水素である化合物を指す。本開示の実施形態は、オレフィンが6~30個の炭素原子を含むことを提供する。6~30個の炭素原子のすべての個々の値および部分範囲が含まれ、例えば、オレフィンは、下限6、8、または10個の炭素原子~上限30、20、または14個の炭素原子を含み得る。
【0030】
オレフィンとしては、アルファ(α)オレフィン、内部二置換オレフィン、または環状構造(例えば、C3-C12シクロアルケン)などのアルケンが挙げられ得る。アルファオレフィンは、オレフィンのα位置に不飽和結合を含む。好適なαオレフィンは、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-イコセン、1-ドコセンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。内部二置換オレフィンは、オレフィンの末端位置にない不飽和結合を含む。内部オレフィンは、2-ブテン、2-ペンテン、2-ヘキセン、3-ヘキセン、2-ヘプテン、3-ヘプテン、2-オクテン、3-オクテン、4-オクテン、2-ノネン、3-ノネン、4-ノネン、2-デセン、3-デセン、4-デセン、5-デセンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。他の例示的なオレフィンは、ブタジエンおよびスチレンを含み得る。
【0031】
好適な市販のオレフィンの例としては、Shell(The Hague,Netherlands)からのNEODENE(商標)6-XHP、NEODENE(商標)8、NEODENE(商標)10、NEODENE(商標)12、NEODENE(商標)14、NEODENE(商標)16、NEODENE(商標)1214、NEODENE(商標)1416、NEODENE(商標)16148が挙げられる。
【0032】
本開示の実施形態は、アルコールが単一のヒドロキシル基を含み得るか、2つのヒドロキシル基、すなわち、グリコールを含み得るか、または3つのヒドロキシル基を含み得ることを提供する。アルコールは、1炭素以上、または2炭素以上、または3炭素以上、または4炭素以上、または5炭素以上、または6炭素以上、または7炭素以上、または8炭素以上、または9炭素以上を含み得るが、同時に10炭素以下、または9炭素以下、または8炭素以下、または7炭素以下、または6炭素以下、または5炭素以下、または4炭素以下、または3炭素以下、または2炭素以下を含み得る。アルコールは、メタノール、エタノール、モノエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、モノプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンメタンジオール、グリセロールおよびそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。1つ以上の実施形態は、アルコールが、モノエチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセロール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されることを提供する。1つ以上の実施形態は、アルコールが、モノエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、またはトリエチレングリコールなどの(ポリ)アルキレングリコールであることを提供する。(ポリ)アルキレングリコールの例としては、モノエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、モノプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、パラキシレングリコール、グリセロール、および1,4-シクロヘキサンメタンジオールが挙げられる。1つ以上の実施形態は、(ポリ)アルキレングリコールがモノエチレングリコールであることを提供する。
【0033】
本開示の実施形態は、アルコールとオレフィンを、例えば、オレフィンのモル比に対して0.05:1~20:1のモル比のアルコールのモル比で反応させることを提供する。0.05:1~20:1のすべての個々の値および部分範囲が含まれ、例えば、アルコールおよびオレフィンは、オレフィンのモル比に対して下限0.05:1、0.075:1または0.1:1~上限20:1、18:1または15:1のアルコールのモル比で反応させることができる。
【0034】
前述のように、本明細書に開示される方法は、リン修飾ゼオライト触媒をオレフィンおよびアルコールと接触させて、モノアルキルエーテルを生成することを含む。オレフィンおよびアルコールは、既知のエーテル化条件下でリン修飾ゼオライト触媒と接触させることができ、既知の反応装置および既知の反応成分を利用することができる。例えば、オレフィンおよびアルコールは、スラリー反応器、固定床反応器、または流動床反応器でリン修飾ゼオライト触媒と接触させることができる。反応器は、バッチモードまたは連続モードで動作することができる。
【0035】
リン修飾ゼオライト触媒は、例えば、オレフィンの総重量に基づいて、リン修飾ゼオライト触媒が1重量%~50重量%であるような量で利用することができる。1重量%~50重量%のすべての個々の値および部分範囲が含まれ、例えば、(リン修飾ゼオライト触媒は、オレフィンの総重量に基づいて、下限1重量%、3重量%、または5重量%~上限50重量%、40重量%、または30重量%であり得る。
【0036】
オレフィンおよびアルコールは、80℃~200℃の反応温度でリン修飾ゼオライト触媒と接触させることができる。80℃~200℃のすべての個々の値および部分範囲が含まれ、例えば、オレフィンおよびアルコールは、下限80℃、90℃、または100℃~上限200℃、175℃、または150℃でリン修飾ゼオライト触媒と接触させることができる。
【0037】
反応圧力は、用途によって異なる場合がある。例えば、反応圧力は、減圧、大気圧、または高圧であり得る。
【0038】
リン修飾ゼオライト触媒をオレフィンおよびアルコールと接触させることによって、モノアルキルエーテルが生成される。様々なモノアルキルエーテルは、例えば、どのオレフィンが利用されるかを変えることによって、および/またはどのアルコールが利用されるかを変えることによって、異なる用途のために製造され得る。有利には、本明細書に開示されるエーテル化の方法は、本明細書に記載されるリン修飾ゼオライト触媒を利用しないエーテル化と比較して、改善された、すなわち、より高いモノアルキルエーテル収率を提供することができる。
【0039】
加えて、本明細書に開示されるエーテル化の方法は、本明細書に記載されるリン修飾ゼオライト触媒を利用しないエーテル化と比較して、改善された、すなわち、より高いモノアルキルエーテル生成速度を提供することができる。
【実施例】
【0040】
本実施例では、例えば、以下を含む、材料に関する様々な用語および名称を使用する。
【0041】
ゼオライトベータ触媒(CP814E、CAS番号1318-02-1、25:1のSiO2/Al2O3モル比、平均細孔径6.7オングストローム、表面積680m2/g、すべての有機テンプレートは、受領前に商業的供給元によって除去、Zeolyst Internationalから入手)、
【0042】
ゼオライトベータ触媒(CP806EL、CAS番号1318-02-1、25:1のSiO2/Al2O3モル比、平均細孔径オングストローム、表面積177m2/g、得られた有機テンプレートを含む、Zeolyst Internationalから入手)。
【0043】
実施例1を以下のように実施した。ゼオライトベータ触媒(CP806EL)を550℃の空気環境で12時間か焼して、ゼオライトベータ触媒からテンプレートを除去した。次いで、か焼によってテンプレートを除去したゼオライトベータ触媒を、以下のようにリンで修飾した。ゼオライトベータ触媒(50グラム)およびリン酸水溶液(2.2グラムのリン酸、120グラムの脱イオン水)を、室温でおよそ10分間絶えず撹拌しながら容器に加えて、リン修飾ゼオライト触媒を得た。リン修飾ゼオライト触媒を80℃のボックスオーブン内で1時間乾燥させ、次いで550℃の空気環境で8時間か焼した。リン修飾ゼオライト触媒は、リン修飾ゼオライト触媒の総重量に基づいて1.4重量パーセントの公称リン含有量、および0.38:1のリン/アルミニウム原子比を有すると計算された。
【0044】
エーテル化を以下のように実施した。リン修飾ゼオライト触媒(0.75グラム)を、希土類磁気撹拌棒(部品番号:VP 772FN-13-13-150、V&P Scientific,Inc.)を備えるバイアル反応器(40mL)に加え、1-ドデセン(6.2グラム)およびモノエチレングリコール(6.7グラム)をバイアル反応器に加え、バイアル反応器の内容物を135℃まで加熱し、エーテル化のために3時間撹拌した。次いで、バイアル反応器の内容物をガスクロマトグラフィーによって分析した。ガスクロマトグラフィーサンプルを、バイアル反応器の内容物(100μL)を10mLの内部標準溶液(1Lの酢酸エチルに溶解した1mLのヘキサデカン)に加えることによって調製し、次いで、Agilent GC(7890)を使用してオフラインで分析した。分析のために、ジオキサン、1-ドデセン(1-C12)およびその異性体(C12)、2-ドデカノール、ジエチレングリコール、モノアルキルエーテルおよびそれらの異性体、ならびにジアルキルエーテルおよびその異性体は、関心のある種の重量パーセントが得られるように、生成物の定量化のために含まれていた。
【0045】
モノアルキルエーテルの生成速度(グラム/時間/ゼオライトベータ触媒のグラム)は、以下のように決定した:[C12転化の正味変化量×1-C12負荷のg×ME選択性/168.32×230.39/触媒のg/時間での反応時間]。
【0046】
ドデセン由来の種は、モノエーテル、ジエーテル、および2-ドデカノールであった。
【0047】
ドデセン由来の種の総量=モノエーテルモル+2×ジエーテルモル+2-ドデカノール。
【0048】
ドデセンの総量、これは、1-ドデセンおよびすべての非1-ドデセン、他のC12異性体を含む。
【0049】
ドデシル-モノエーテル(ME)選択性(%)を、[MEの総量]/[C12由来の種の総量]×100%として決定した。
【0050】
ドデシル-ジエーテル(DE)選択性(%)は、2×[DEの総量/[C12由来の種の総量]×100%として決定した。
【0051】
オレフィン転化率(%)を、[C12由来の種の総量]/[C12由来の種の総量+ドデセンの総量]×100%として決定した。
【0052】
ドデシルモノエーテル(ME)収率(%)を、C12転化率×ドデシル-モノエーテル選択性として決定した。
【0053】
結果を表1に報告する。
【0054】
実施例2は、リン酸水溶液が4.0グラムのリン酸および120グラムの脱イオン水を含むように変更して、実施例1と同じように実施した。
【0055】
実施例3は、リン酸水溶液が6.5グラムのリン酸および120グラムの脱イオン水を含むように変更して、実施例1と同じように実施した。
【0056】
比較例Aは、テンプレートがか焼によって除去された23グラムゼオライトベータ触媒を利用し、リン酸水溶液が、6.8グラムのリン酸および4.9グラムの脱イオン水を含むように変更して、実施例1と同じように実施した。
【0057】
比較例Bは、実施例1と同じように実施し、ゼオライトベータ触媒がリンで修飾されていない、すなわち、リン酸水溶液を利用しないように変更。
【表1】
【0058】
表1のデータは、実施例1~3の各々が、比較例AおよびBの各々と比較して、改善された、すなわち、より高いモノアルキルエーテル収率を有したことを示している。
【0059】
表1のデータは、実施例1~3の各々が、比較例AおよびBの各々と比較して、改善された、すなわち、より高いモノアルキルエーテル生成速度を有したことを示している。
【0060】
実施例4を以下のように実施した。ゼオライトベータ触媒(CP814E)を550℃の空気環境で12時間か焼して、触媒をNH4型からH型に転化させ、次いで、触媒を以下のようにリンで修飾した。ゼオライトベータ触媒(7グラム)およびリン酸水溶液(0.3グラムのリン酸、14グラムの脱イオン水)を容器に加え、室温でおよそ10分間撹拌して、リン修飾ゼオライト触媒を得た。リン修飾ゼオライト触媒を80℃のボックスオーブン内で1時間乾燥させ、次いで550℃の空気環境で5時間か焼した。リン修飾ゼオライト触媒は、リン修飾ゼオライト触媒の総重量に基づいて1.4重量パーセントの公称リン含有量、および0.38:1のリン/アルミニウム原子比を有すると計算された。バイアル反応器の内容物をエーテル化の135℃ではなく125℃に加熱し、エーテル化が3時間であるように変更して、エーテル化を以前論じたように実施し、エーテル化の結果は、以前論じたように決定した。
【0061】
実施例5は、リン酸水溶液が0.58グラムのリン酸および14グラムの脱イオン水を含むように変更して、実施例4のように実施した。
【0062】
比較例Cは、9グラムゼオライトベータ触媒(H型)を利用し、リン酸水溶液が、2.35グラムのリン酸および18グラムの脱イオン水を含むように変更して、実施例4のように実施した。
【0063】
比較例Dは、ゼオライトベータ触媒がリンで修飾されていない、すなわち、リン酸水溶液を利用しないように変更して、実施例4のように実施した。
【0064】
【0065】
表2のデータは、実施例4および5の各々が、比較例CおよびDの各々と比較して、改善された、すなわち、より高いモノアルキルエーテル収率を有したことを示している。
【0066】
表2のデータは、実施例3および4の各々が、比較例CおよびDの各々と比較して、改善された、すなわち、より高いモノアルキルエーテル生成速度を有したことを示している。
【0067】
実施例6は、5グラムのゼオライトベータ触媒(H型)を利用し、リン酸水溶液が0.07グラムのリン酸および10グラムの脱イオン水を含み、エーテル化ではバイアル反応器の内容物を135℃ではなく150℃に加熱し、反応が1時間であるように変更して、実施例4のように実施した。
【0068】
実施例7は、7.5グラムのゼオライトベータ触媒(H型)を利用し、リン酸水溶液が0.03グラムのリン酸および15グラムの脱イオン水を含み、エーテル化ではバイアル反応器の内容物を135℃ではなく150℃に加熱し、反応が1時間であるように変更して、実施例4のように実施した。
【0069】
比較例Eは、5グラムのゼオライトベータ触媒(H型)を利用し、リン酸水溶液が1.0グラムのリン酸および10グラムの脱イオン水を含み、エーテル化ではバイアル反応器の内容物を135℃ではなく150℃に加熱し、反応が1時間であるように変更して、実施例4のように実施した。
【0070】
比較例Fは、ゼオライトベータ触媒がリンで修飾されていない、すなわち、リン酸水溶液を利用せず、エーテル化ではバイアル反応器の内容物を135℃ではなく150℃に加熱し、反応が1時間であるように変更して、実施例4のように実施した。
【0071】
【0072】
表3のデータは、実施例6および7の各々が、比較例EおよびFの各々と比較して、改善された、すなわち、より高いモノアルキルエーテル収率を有したことを示している。
【0073】
表3のデータは、実施例6および7の各々が、比較例EおよびFの各々と比較して、改善された、すなわち、より高いモノアルキルエーテル生成速度を有したことを示している。
(態様)
(態様1)
エーテル化の方法であって、前記方法が、
ゼオライト触媒をリンで修飾して、0.05:1~1.5:1のリン対アルミニウムの原子比、および0.05~6重量パーセントのリン負荷を有するリン修飾ゼオライト触媒を提供することであって、重量パーセントが、前記リン修飾ゼオライト触媒の総重量に基づく、提供することと、
前記リン修飾ゼオライト触媒をオレフィンおよびアルコールと接触させてモノアルキルエーテルを生成することと、を含む、方法。
(態様2)
前記ゼオライト触媒がゼオライトベータ触媒である、態様1に記載の方法。
(態様3)
前記修飾前の前記ゼオライト触媒のテンプレートを還元することを含む、態様1~3のいずれか一項に記載の方法。
(態様4)
前記ゼオライト触媒の還元テンプレートが、前記ゼオライト触媒をか焼することを含む、態様3に記載の方法。
(態様5)
前記オレフィンが、6~30個の炭素原子を含む、態様1~4のいずれか一項に記載の方法。
(態様6)
前記オレフィンが、C
12
-Cオレフィンである、態様1~5のいずれか一項に記載の方法。
(態様7)
前記アルコールが、モノエチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセロール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、態様1~6のいずれか一項に記載の方法。