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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】受信装置、および、受信装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 19/34 20100101AFI20241003BHJP
   G01S 19/37 20100101ALI20241003BHJP
【FI】
G01S19/34
G01S19/37
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022522525
(86)(22)【出願日】2021-02-22
(86)【国際出願番号】 JP2021006572
(87)【国際公開番号】W WO2021229886
(87)【国際公開日】2021-11-18
【審査請求日】2024-01-10
(31)【優先権主張番号】P 2020083382
(32)【優先日】2020-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112955
【弁理士】
【氏名又は名称】丸島 敏一
(72)【発明者】
【氏名】二見 哲宏
(72)【発明者】
【氏名】柴田 信雄
(72)【発明者】
【氏名】田中 勝之
(72)【発明者】
【氏名】鷹觜 和邦
(72)【発明者】
【氏名】高岡 勝美
(72)【発明者】
【氏名】長野 健史
(72)【発明者】
【氏名】大杉 明弘
【審査官】▲高▼場 正光
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0212211(US,A1)
【文献】米国特許第06125135(US,A)
【文献】特開2020-012679(JP,A)
【文献】特開平10-073649(JP,A)
【文献】特表2016-519280(JP,A)
【文献】特開2010-088086(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 19/00 - G01S 19/55
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の中間周波数信号より周波数の高い高周波数信号を前記中間周波数信号に変換して出力するマスタ側受信回路と、
前記中間周波数信号に基づいて所定の衛星からの信号を復号してマスタ側観測値として出力するマスタ側衛星処理ユニットと、
前記中間周波数信号に基づいて所定の衛星からの信号を復号してスレーブ側観測値として出力するスレーブ側衛星処理ユニットと、
所定条件が満たされた場合には前記マスタ側受信回路および前記マスタ側衛星処理ユニットのいずれかの電源を遮断するマスタ側電源制御部と、
前記マスタ側観測値および前記スレーブ側観測値の少なくとも一方に基づいて位置情報を生成する測位部と
を具備し、
前記マスタ側衛星処理ユニットは、所定の周波数帯域に対応するマスタ側ベースバンド信号を復号し、
前記スレーブ側衛星処理ユニットは、前記周波数帯域と異なる周波数帯域に対応するスレーブ側ベースバンド信号を復号し、
前記中間周波数信号を前記マスタ側ベースバンド信号に変換するとともに前記中間周波数信号に基づいてマスタ側制御信号を生成するマスタ側デジタルフロントエンドと、
前記中間周波数信号を前記スレーブ側ベースバンド信号に変換するとともに前記中間周波数信号に基づいてスレーブ側制御信号を生成するスレーブ側デジタルフロントエンドと、
前記マスタ側制御信号と前記スレーブ側制御信号とのいずれかを選択して制御信号として出力するセレクタと
をさらに具備し、
前記マスタ側受信回路は、
前記高周波数信号を前記中間周波数信号に変換する混合器と、
前記制御信号に従って前記中間周波数信号に対する利得を制御する自動利得制御器と
を備える
受信装置。
【請求項2】
前記高周波数信号を前記中間周波数信号に変換して前記スレーブ側衛星処理ユニットに出力するスレーブ側受信回路と、
前記所定条件が満たされた場合には前記スレーブ側受信回路に電源を投入するスレーブ側電源制御部と
をさらに具備し、
前記マスタ側電源制御部は、前記所定条件が満たされた場合には前記マスタ側受信回路の電源を制御して前記中間周波数信号の出力を停止させ、
前記マスタ側受信回路は、前記スレーブ側受信回路を介して前記中間周波数信号を前記スレーブ側衛星処理ユニットに出力する
請求項1記載の受信装置。
【請求項3】
前記マスタ側受信回路は、デジタルの前記中間周波数信号を前記マスタ側衛星処理ユニットおよび前記スレーブ側衛星処理ユニットに出力する
請求項2記載の受信装置。
【請求項4】
前記マスタ側受信回路は、アナログの前記中間周波数信号を前記スレーブ側受信回路に出力する
請求項2記載の受信装置。
【請求項5】
前記マスタ側受信回路は、所定のクロック信号を前記スレーブ側受信回路にさらに送信し、
前記マスタ側受信回路および前記スレーブ側受信回路は、前記クロック信号に同期して前記中間周波数信号に対するAD(Analog to Digital)変換処理をさらに行う
請求項2記載の受信装置。
【請求項6】
前記マスタ側衛星処理ユニットは、前記高周波数信号を搬送波として伝送されたL1信号およびL5信号の少なくとも一方を復号し、
前記スレーブ側衛星処理ユニットは、前記高周波数信号を搬送波として伝送されたL2信号およびL6信号のいずれかを復号する
請求項記載の受信装置。
【請求項7】
前記マスタ側衛星処理ユニットは、前記高周波数信号を搬送波として伝送されたL1信号、L2信号およびL5信号の少なくとも一方を復号し、
前記スレーブ側衛星処理ユニットは、前記高周波数信号を搬送波として伝送されたL6信号を復号する
請求項記載の受信装置。
【請求項8】
前記マスタ側受信回路、前記マスタ側衛星処理ユニットおよび前記マスタ側電源制御部は、所定のマスタ側チップに設けられ、
前記スレーブ側衛星処理ユニットは、所定のスレーブ側チップに設けられる
請求項1記載の受信装置。
【請求項9】
前記測位部は、前記マスタ側チップに設けられる
請求項記載の受信装置。
【請求項10】
前記測位部は、前記マスタ側チップおよび前記スレーブ側チップの外部に設けられる
請求項記載の受信装置。
【請求項11】
マスタ側受信回路が、所定の中間周波数信号より周波数の高い高周波数信号を前記中間周波数信号に変換してマスタ側衛星処理ユニットおよびスレーブ側衛星処理ユニットに出力するマスタ側受信手順と、
前記マスタ側衛星処理ユニットが、前記中間周波数信号に基づいて所定の衛星からの信号を復号してマスタ側観測値として出力するマスタ側衛星処理手順と、
前記スレーブ側衛星処理ユニットが、前記中間周波数信号に基づいて所定の衛星からの信号を復号してスレーブ側観測値として出力するスレーブ側衛星処理手順と、
所定条件が満たされた場合には前記マスタ側受信回路および前記マスタ側衛星処理ユニットのいずれかの電源を遮断するマスタ側電源制御手順と、
前記マスタ側観測値および前記スレーブ側観測値の少なくとも一方に基づいて位置情報を生成する測位手順と
を具備し、
前記マスタ側衛星処理手順において、所定の周波数帯域に対応するマスタ側ベースバンド信号を復号し、
前記スレーブ側衛星処理手順において、前記周波数帯域と異なる周波数帯域に対応するスレーブ側ベースバンド信号を復号し、
マスタ側デジタルフロントエンドが、前記中間周波数信号を前記マスタ側ベースバンド信号に変換するとともに前記中間周波数信号に基づいてマスタ側制御信号を生成するマスタ側制御信号生成手順と、
スレーブ側デジタルフロントエンドが、前記中間周波数信号を前記スレーブ側ベースバンド信号に変換するとともに前記中間周波数信号に基づいてスレーブ側制御信号を生成するスレーブ側制御信号生成手順と、
セレクタが、前記マスタ側制御信号と前記スレーブ側制御信号とのいずれかを選択して制御信号として出力する選択手順と
をさらに具備し、
前記マスタ側受信手順は、
混合器が、前記高周波数信号を前記中間周波数信号に変換する混合手順と、
自動利得制御器が、前記制御信号に従って前記中間周波数信号に対する利得を制御する自動利得制御手順と
を備える
受信装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、受信装置に関する。詳しくは、現在位置を測定する受信装置、および、受信装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、米国のGPS(Global Positioning System)に代表されるGNSS(Global Navigation Satellite System)が、現在位置を測定する目的で、カーナビゲーション装置やスマートフォンなどにおいて広く利用されている。また、近年、GNSSの近代化が進み、従来のL1帯に加えて、L2帯やL5帯、L6帯における新しいGNSS規格に対応した衛星が次々と打ち上げられている。これまで、2周波以上の信号を用いた高精度測位は測量や農業機械など、一部業界への導入に限定されていたが、今後は民生機器に対しても広く普及していくことが期待される。GNSSのうちQZSS(Quasi-Zenith Satellite System)においても、L2、L5、L6帯の信号(L2C、L5、L6)が配信されている(例えば、非特許文献1および非特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】"Quasi-Zenith Satellite System Interface Specification Satellite Positioning, Navigation and Timing Service (IS-QZSS-PNT-003)" ,[online]、内閣府及び準天頂衛星システムサービス株式会社、インターネット(https://qzss.go.jp/en/technical/download/pdf/ps-is-qzss/is-qzss-pnt-003.pdf?t=1588762566266)
【文献】"Quasi-Zenith Satellite System Interface Specification Centimeter Level Augmentation Service (IS-QZSS-L6-001)" ,[online]、内閣府及び準天頂衛星システムサービス株式会社、インターネット(https://qzss.go.jp/en/technical/download/pdf/ps-is-qzss/is-qzss-l6-001.pdf?t=1588762736567)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の従来技術では、L1帯の測位用信号とL2、L5帯の測位用信号を組み合わせて測位演算に用いることにより、測位精度の向上や測位にかかる時間の短縮化を図っている。また、更にL6帯のセンチメータ級測位補強情報を用いることにより、センチメータ級の高精度な測位を実現することも可能となる。但し、複数の周波数帯における複数のGNSS規格に対応するためには、その分だけRF(Radio Frequency)回路やデジタル信号処理回路の増設が必要となり、ハードウェアコストや消費電力の増大を招くという懸念がある。また、上述のシステムでは、受信回路が1系統しかないため、その受信回路が故障した際に受信を継続することができなくなる。このため、過酷な環境下でシステムを運用する際に、故障耐性などの性能が不足することがある。一方、故障耐性などを向上させるために受信回路を冗長化してしまうと、消費電力が増大するおそれがある。このように、上述のシステムでは、消費電力の増大を抑制しつつ、性能を向上させることが困難である。
【0005】
本技術はこのような状況に鑑みて生み出されたものであり、衛星からの信号を受信する受信装置において、消費電力の増大を抑制しつつ、性能を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本技術は、上述の問題点を解消するためになされたものであり、その第1の側面は、所定の中間周波数信号より周波数の高い高周波数信号を前記中間周波数信号に変換して出力するマスタ側受信回路と、前記中間周波数信号に基づいて所定の衛星からの信号を復号してマスタ側観測値として出力するマスタ側衛星処理ユニットと、前記中間周波数信号に基づいて所定の衛星からの信号を復号してスレーブ側観測値として出力するスレーブ側衛星処理ユニットと、所定条件が満たされた場合には上記マスタ側受信回路および上記マスタ側衛星処理ユニットのいずれかの電源を遮断するマスタ側電源制御部と、上記マスタ側観測値および上記スレーブ側観測値の少なくとも一方に基づいて位置情報を生成する測位部とを具備する受信装置である。これにより、消費電力、性能のバランスが最適化されるという作用をもたらす。
【0007】
また、この第1の側面において、上記高周波数信号を上記中間周波数信号に変換して上記スレーブ側衛星処理ユニットに出力するスレーブ側受信回路と、上記所定条件が満たされた場合には上記スレーブ側受信回路に電源を投入するスレーブ側電源制御部とをさらに具備し、上記マスタ側電源制御部は、上記所定条件が満たされた場合には上記マスタ側受信回路の電源を制御して上記中間周波数信号の出力を停止させ、上記マスタ側受信回路は、上記スレーブ側受信回路を介して上記中間周波数信号を上記スレーブ側衛星処理ユニットに出力してもよい。これにより、スレーブ側受信回路の電源が遮断され、消費電力が削減されるという作用をもたらす。
【0008】
また、この第1の側面において、上記マスタ側受信回路は、デジタルの上記中間周波数信号を上記マスタ側衛星処理ユニットおよび上記スレーブ側衛星処理ユニットに出力してもよい。これにより、スレーブ側のAD(Analog to Digital)変換が不要になるという作用をもたらす。
【0009】
また、この第1の側面において、上記マスタ側受信回路は、アナログの上記中間周波数信号を上記スレーブ側受信回路に出力してもよい。これにより、インターフェースの配線数や端子数が削減されるという作用をもたらす。
【0010】
また、この第1の側面において、上記マスタ側受信回路は、所定のクロック信号を上記スレーブ側受信回路にさらに送信し、上記マスタ側受信回路および上記スレーブ側受信回路は、上記クロック信号に同期して上記中間周波数信号に対するAD変換処理をさらに行ってもよい。これにより、スレーブ側のクロック生成が不要になるという作用をもたらす。
【0011】
また、この第1の側面において、上記スレーブ側受信回路は、上記中間周波数信号を上記マスタ側受信回路にさらに出力してもよい。これにより、スレーブ側の中間周波数信号がスレーブ側でも用いられるという作用をもたらす。
【0012】
また、この第1の側面において、上記マスタ側衛星処理ユニットおよび上記スレーブ側衛星処理ユニットは、上記高周波数信号を搬送波として伝送されたL1信号およびL5信号の少なくとも一方を復号してもよい。これにより、2波長が測位に用いられるという作用をもたらす。
【0013】
また、この第1の側面において、上記マスタ側衛星処理ユニットは、上記高周波数信号を搬送波として伝送されたL1信号およびL5信号の少なくとも一方を復号し、上記スレーブ側衛星処理ユニットは、上記高周波数信号を搬送波として伝送されたL1信号、L5信号およびL2信号のうち少なくとも1つの復号を行ってもよい。これにより、3波長が測位に用いられるという作用をもたらす。
【0014】
また、この第1の側面において、上記マスタ側衛星処理ユニットは、所定の周波数帯域に対応するマスタ側ベースバンド信号を復号し、上記スレーブ側衛星処理ユニットは、上記周波数帯域と異なる周波数帯域に対応するスレーブ側ベースバンド信号を復号してもよい。これにより、L2信号やL6信号への対応が可能になるという作用をもたらす。
【0015】
また、この第1の側面において、上記中間周波数信号を上記マスタ側ベースバンド信号に変換するとともに上記中間周波数信号に基づいてマスタ側制御信号を生成するマスタ側デジタルフロントエンドと、上記中間周波数信号を上記スレーブ側ベースバンド信号に変換するとともに上記中間周波数信号に基づいてスレーブ側制御信号を生成するスレーブ側デジタルフロントエンドと、上記マスタ側制御信号と上記スレーブ側制御信号とのいずれかを選択して制御信号として出力するセレクタとをさらに具備し、上記マスタ側受信回路は、上記高周波数信号を上記中間周波数信号に変換する混合器と、上記制御信号に従って上記中間周波数信号に対する利得を制御する自動利得制御器とを備えてもよい。これにより、自動利得制御回路がマスタまたはスレーブにより制御されるという作用をもたらす。
【0016】
また、この第1の側面において、上記マスタ側衛星処理ユニットは、上記高周波数信号を搬送波として伝送されたL1信号およびL5信号の少なくとも一方を復号し、上記スレーブ側衛星処理ユニットは、上記高周波数信号を搬送波として伝送されたL2信号およびL6信号のいずれかを復号してもよい。これにより、L2信号やL6信号への対応が可能になるという作用をもたらす。
【0017】
また、この第1の側面において、上記マスタ側衛星処理ユニットは、上記高周波数信号を搬送波として伝送されたL1信号、L2信号およびL5信号の少なくとも一方を復号し、上記スレーブ側衛星処理ユニットは、上記高周波数信号を搬送波として伝送されたL6信号を復号してもよい。これにより、3波長が測位に用いられるという作用をもたらす。
【0018】
また、この第1の側面において、上記マスタ側受信回路、上記マスタ側衛星処理ユニットおよび上記マスタ側電源制御部は、所定のマスタ側チップに設けられ、上記スレーブ側衛星処理ユニット部は、所定のスレーブ側チップに設けられてもよい。これにより、チップ間で中間周波数信号がやりとりされるという作用をもたらす。
【0019】
また、この第1の側面において、上記測位部は、上記マスタ側チップに設けられてもよい。これにより、チップ内で測位が行われるという作用をもたらす。
【0020】
また、この第1の側面において、上記測位部は、上記マスタ側チップおよび上記スレーブ側チップの外部に設けられてもよい。これにより、チップ外で測位が行われるという作用をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本技術の第1の実施の形態における受信装置の一構成例を示すブロック図である。
図2】本技術の第1の実施の形態におけるGNSSチップの一構成例を示すブロック図である。
図3】本技術の第1の実施の形態におけるマスタ側RF回路の一構成例を示すブロック図である。
図4】本技術の第1の実施の形態におけるスレーブ側RF回路の一構成例を示すブロック図である。
図5】本技術の第1の実施の形態におけるマスタ側デジタル信号処理部の一構成例を示すブロック図である。
図6】本技術の第1の実施の形態におけるスレーブ側デジタル信号処理部の一構成例を示すブロック図である。
図7】本技術の第1の実施の形態におけるマスタからスレーブへ切り替わった際の受信装置の状態の一例を示す図である。
図8】本技術の第1の実施の形態における複数のアンテナを設けた場合の受信装置の一構成例を示す図である。
図9】本技術の第1の実施の形態における受信装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図10】本技術の第1の実施の形態の変形例におけるスレーブ側RF回路の一構成例を示すブロック図である。
図11】本技術の第1の実施の形態の変形例におけるスレーブ側デジタル信号処理部の一構成例を示すブロック図である。
図12】本技術の第1の実施の形態の変形例におけるL2帯を受信する際のスレーブ側RF回路の状態の一例を示す図である。
図13】本技術の第1の実施の形態の変形例におけるL2帯を受信する際のスレーブ側デジタル信号処理部の状態の一例を示す図である。
図14】本技術の第2の実施の形態におけるGNSSチップの一構成例を示すブロック図である。
図15】本技術の第2の実施の形態におけるマスタ側RF回路および切替部の一構成例を示すブロック図である。
図16】本技術の第2の実施の形態におけるスレーブ側RF回路および切替部の一構成例を示すブロック図である。
図17】本技術の第3の実施の形態におけるGNSSチップの一構成例を示すブロック図である。
図18】本技術の第3の実施の形態におけるマスタ側RF回路の一構成例を示すブロック図である。
図19】本技術の第3の実施の形態におけるスレーブ側RF回路の一構成例を示すブロック図である。
図20】本技術の第4の実施の形態におけるGNSSチップの一構成例を示すブロック図である。
図21】本技術の第4の実施の形態におけるマスタ側RF回路の一構成例を示すブロック図である。
図22】本技術の第4の実施の形態におけるスレーブ側RF回路の一構成例を示すブロック図である。
図23】本技術の第4の実施の形態におけるスレーブ側デジタル信号処理部の一構成例を示すブロック図である。
図24】本技術の第5の実施の形態におけるGNSSチップの一構成例を示すブロック図である。
図25】本技術の第5の実施の形態におけるマスタ側RF回路の一構成例を示すブロック図である。
図26】本技術の第5の実施の形態におけるマスタ側デジタル信号処理部の一構成例を示すブロック図である。
図27】本技術の第5の実施の形態におけるスレーブ側デジタル信号処理部の一構成例を示すブロック図である。
図28】本技術の第6の実施の形態におけるマスタ側RF回路の一構成例を示すブロック図である。
図29】本技術の第6の実施の形態におけるマスタ側デジタル信号処理部の一構成例を示すブロック図である。
図30】本技術の第6の実施の形態におけるスレーブ側デジタル信号処理部の一構成例を示すブロック図である。
図31】本技術の第7の実施の形態における受信装置の一構成例を示すブロック図である。
図32】本技術の第7の実施の形態におけるマスタ側デジタル信号処理部の一構成例を示すブロック図である。
図33】本開示に係る技術が適用され得るIoTシステム9000の概略的な構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本技術を実施するための形態(以下、実施の形態と称する)について説明する。説明は以下の順序により行う。
1.第1の実施の形態(マスタがスレーブにIF信号を出力する例)
2.第2の実施の形態(マスタがスレーブにデジタルのIF信号を出力する例)
3.第3の実施の形態(マスタがスレーブにIF信号およびクロック信号を出力する例)
4.第4の実施の形態(マスタ、スレーブ間でIF信号を送受信する例)
5.第5の実施の形態(マスタがスレーブにマスタ側と異なる帯域のIF信号を出力する例)
6.第6の実施の形態(マスタがスレーブにIF信号を出力し、3つの周波数帯域を用いる例)
7.第7の実施の形態(マスタがスレーブにIF信号を出力し、チップ外で測位する例)
8.移動体への応用例
【0023】
<1.第1の実施の形態>
[測位システムの構成例]
図1は、本技術の第1の実施の形態における測位システムの一構成例を示す全体図である。この測位システムは、衛星からの信号を用いて現在位置を取得するためのシステムであり、衛星100と受信装置200とを備える。
【0024】
受信装置200は、衛星100からの信号を受信し、その受信装置200の現在位置を取得するものである。この受信装置200は、アンテナ201と、弾性表面波フィルタ210と、水晶発振器220と、GNSSチップ230および240とを備える。
【0025】
アンテナ201は、衛星100から送信された高周波数(RF:Radio Frequency)信号をRFINとして受信するものである。このRF信号RFINは弾性表面波フィルタ210を介してGNSSチップ230および240の両方に供給される。
【0026】
弾性表面波フィルタ210は、アンテナからのRF信号RFINのうち、所定の周波数帯域を透過するものである。例えば、GPSやQZSSにおける所定の周波数帯域(例えば、L1帯およびL5帯)が透過される。ここで、L1帯は、中心周波数を1575.42メガヘルツ(MHz)とする所定の帯域幅(±12.0メガヘルツなど)の周波数帯域である。L5帯は、中心周波数を1176.45メガヘルツ(MHz)とする所定の帯域幅(±12.45メガヘルツなど)の周波数帯域である。L1帯の搬送波を変調して衛星100が送信した信号は、L1信号と呼ばれ、L5帯の搬送波を変調して衛星100が送信した信号は、L5信号と呼ばれる。
【0027】
水晶発振器220は、水晶の持つ圧電現象を利用して、一定の周波数のクロック信号CLKTCXOを生成するものである。この水晶発振器220は、生成したクロック信号CLKTCXOをGNSSチップ230および240に供給する。
【0028】
GNSSチップ230は、弾性表面波フィルタ210からのRF信号RFINとGNSSチップ240からの衛星観測値とに基づいて位置情報、時刻情報および速度情報の少なくとも1つを生成するものである。ここで、位置情報は、受信装置200の現在位置を示す情報であり、時刻情報は、現在時刻を示す情報である。位置情報の生成には、4つ以上の衛星100からの信号が必要となる。また、速度情報は、受信装置200の移動速度を示す情報である。GNSSチップ230は、位置情報、時刻情報および速度情報の全てを生成してもよいし、それらの一部(位置情報のみなど)を生成してもよい。また、GNSSチップ230は、RF信号を中間周波数(IF:Intermediate Frequency)信号に変換し、そのIF信号をGNSSチップ240に出力する。
【0029】
GNSSチップ240は、GNSSチップ230からのIF信号に基づいて衛星観測値を求めるものである。ここで、衛星観測値は、衛星100などの衛星からの信号を復号して得られた情報であり、航法データや補正データなどが挙げられる。GNSSチップ240は、衛星観測値をGNSSチップ230に供給する。
【0030】
また、GNSSチップ230は、GNSSチップ240に同期制御信号を供給し、GNSSチップ240をGNSSチップ230と同期して動作させる。このため、受信装置200において、GNSSチップ230はスレーブを制御するマスタとして機能し、GNSSチップ240は、スレーブとして機能する。
【0031】
また、受信装置200にスレーブ側のGNSSチップ240を1枚のみ設けているが、スレーブ側のチップは1枚に限定されず、必要に応じて2枚以上を設けることができる。
【0032】
[GNSSチップの構成例]
図2は、本技術の第1の実施の形態におけるGNSSチップ230および240の一構成例を示すブロック図である。
【0033】
GNSSチップ230は、マスタ側インターフェース制御部231と、マスタ側電源制御部232と、マスタ側RF回路300と、マスタ側デジタル信号処理部400と、シリアルインターフェース233および234とを備える。なお、GNSSチップ230は、特許請求の範囲に記載のマスタ側チップの一例である。
【0034】
GNSSチップ240は、スレーブ側インターフェース制御部241と、スレーブ側電源制御部242と、スレーブ側RF回路500と、スレーブ側デジタル信号処理部600と、シリアルインターフェース243とを備える。なお、GNSSチップ240は、特許請求の範囲に記載のスレーブ側チップの一例である。
【0035】
マスタ側インターフェース制御部231は、マスタ側RF回路300内のセレクタを制御するものである。セレクタの切り替え先については、後述する。
【0036】
マスタ側電源制御部232は、マスタ側RF回路300およびマスタ側デジタル信号処理部400の電源を制御するものである。
【0037】
マスタ側RF回路300は、水晶発振器220からのクロック信号CLKTCXOに同期して動作し、弾性表面波フィルタ210からのRF信号をアナログのIF信号AIFに変換するものである。このマスタ側RF回路300は、IF信号AIFをスレーブ側RF回路500に出力する。GNSSチップ230には、このIF信号AIFを出力するための端子が設けられている。
【0038】
また、マスタ側RF回路300は、IF信号AIFに対して、AD変換処理を行い、デジタルのIF信号DIFを生成してマスタ側デジタル信号処理部400に出力する。
【0039】
さらにマスタ側RF回路300は、マスタ側デジタル信号処理部400が動作するためのクロック信号CLKDSPをクロック信号CLKTCXOから生成し、マスタ側デジタル信号処理部400に出力する。
【0040】
マスタ側デジタル信号処理部400は、クロック信号CLKDSPに同期して動作し、デジタルのIF信号DIFを処理して位置情報などを生成するものである。このマスタ側デジタル信号処理部400は、IF信号DIFをベースバンド信号に変換し、そのベースバンド信号に基づいて衛星観測値(航法データなど)を取得する。また、マスタ側デジタル信号処理部400は、シリアルインターフェース234を介してスレーブ側の衛星観測値を取得し、マスタ側およびスレーブ側のそれぞれの衛星観測値を用いて位置情報等を生成する。そして、マスタ側デジタル信号処理部400は、シリアルインターフェース233を介して位置情報等をGNSSチップ230の外部に出力する。
【0041】
スレーブ側インターフェース制御部241は、スレーブ側RF回路500内のセレクタを制御するものである。セレクタの切り替え先については、後述する。
【0042】
スレーブ側電源制御部242は、スレーブ側RF回路500およびスレーブ側デジタル信号処理部600の電源を制御するものである。
【0043】
スレーブ側RF回路500は、水晶発振器220からのクロック信号CLKTCXOに同期して動作し、弾性表面波フィルタ210からのRF信号をアナログのIF信号AIFに変換するものである。
【0044】
また、スレーブ側RF回路500は、マスタ側またはスレーブ側のIF信号AIFに対してAD変換処理を行い、デジタルのIF信号DIFを生成してスレーブ側デジタル信号処理部600に出力する。
【0045】
さらにスレーブ側RF回路500は、スレーブ側デジタル信号処理部600が動作するためのクロック信号CLKDSPをクロック信号CLKTCXOから生成し、スレーブ側デジタル信号処理部600に出力する。
【0046】
スレーブ側デジタル信号処理部600は、クロック信号CLKDSPに同期して動作し、デジタルのIF信号DIFを処理して衛星観測値を生成するものである。このスレーブ側デジタル信号処理部600は、シリアルインターフェース243を介してスレーブ側の衛星観測値をGNSSチップ230に出力する。
【0047】
なお、マスタ側やスレーブ側のデジタル信号処理部の機能を、FPGA(Field-Programmable Gate Array)またはDSP(Digital Signal Processor)により実現することもできる。また、マスタ側やスレーブ側におけるプロセッサやメモリ等の共通する回路をマスタ、スレーブの外部に設けて、マスタ、スレーブ間で共有してもよい。後述する他の実施形態においても同様である。
【0048】
[RF回路の構成例]
図3は、本技術の第1の実施の形態におけるマスタ側RF回路300の一構成例を示すブロック図である。このマスタ側RF回路300は、ローノイズアンプ311および321と、ローカル位相同期回路312および322と、混合器313および323と、ローパスフィルタ314および324と、自動利得制御回路315および325とを備える。また、マスタ側RF回路300は、位相同期回路330と、切替部340と、ADC(Analog to Digital Converter)351および352とをさらに備える。切替部340内には、セレクタ341および342が配置される。
【0049】
ローノイズアンプ311は、弾性表面波フィルタ210からのRF信号RFINを増幅するものである。このローノイズアンプ311は、増幅したRF信号RFINを混合器313に供給する。
【0050】
ローカル位相同期回路312は、L1帯に応じたローカル周波数のローカル信号LOL1を、クロック信号CLKTCXOから生成するものである。このローカル位相同期回路312は、ローカル信号LOL1を混合器313に供給する。
【0051】
混合器313は、ローノイズアンプ311からのRF信号RFINとローカル信号LOL1を混合して、RF信号より周波数の低いアナログのIF信号AIFL1を生成するものである。この混合器313は、IF信号AIFL1をローパスフィルタ314に供給する。
【0052】
ローパスフィルタ314は、IF信号AIFL1において所定の遮断周波数以下の周波 数成分を通過させて、自動利得制御回路315に供給するものである。
【0053】
自動利得制御回路315は、入力されたIF信号AIFL1のレベルに応じて、その信号に対する利得を制御するものである。この自動利得制御回路315は、一定のレベルのIF信号AIFL1をGNSSチップ240およびセレクタ341に出力する。
【0054】
セレクタ341は、2つの入力端子と1つの出力端子を有する。2つの入力端子の一方は自動利得制御回路315に接続され、出力端子はADC351に接続される。また、セレクタ341は、マスタ側インターフェース制御部231の制御に従って入力先を切り替える。
【0055】
位相同期回路330は、クロック信号CLKDSPと、ADC351および352が動作するためのクロック信号CLKADCとをクロック信号CLKTCXOから生成するものである。この位相同期回路330は、クロック信号CLKDSPをマスタ側デジタル信号処理部400に供給し、クロック信号CLKADCをADC351および352に供給する。
【0056】
ADC351は、セレクタ341からのIF信号AIFL1に対するAD変換処理をクロック信号CLKADCに同期して行うものである。ADC351は、処理後のデジタルのIF信号をDIFL1としてマスタ側デジタル信号処理部400に出力する。
【0057】
ローノイズアンプ321は、RF信号RFINを増幅するものである。このローノイズアンプ321は、増幅したRF信号RFINを混合器323に供給する。
【0058】
ローカル位相同期回路322は、L5帯に応じたローカル周波数のローカル信号LOL5を、クロック信号CLKTCXOから生成するものである。このローカル位相同期回路312は、ローカル信号LOL5を混合器323に供給する。
【0059】
混合器323は、ローノイズアンプ321からのRF信号RFINとローカル信号LOL5を混合して、RF信号より周波数の低いアナログのIF信号AIFL5を生成するものである。この混合器323は、IF信号AIFL5をローパスフィルタ324に供給する。
【0060】
ローパスフィルタ324は、IF信号AIFL5において所定の遮断周波数以下の周波 数成分を通過させて、自動利得制御回路325に供給するものである。
【0061】
自動利得制御回路325は、入力されたIF信号AIFL5のレベルに応じて、その信号に対する利得を制御するものである。この自動利得制御回路325は、一定のレベルのIF信号AIFL5をGNSSチップ240およびセレクタ342に出力する。
【0062】
セレクタ342は、2つの入力端子と1つの出力端子を有する。2つの入力端子の一方は自動利得制御回路325に接続され、出力端子はADC352に接続される。また、セレクタ342は、マスタ側インターフェース制御部231の制御に従って入力先を切り替える。
【0063】
ADC352は、セレクタ342からのIF信号AIFL5に対するAD変換処理をクロック信号CLKADCに同期して行うものである。ADC352は、処理後のデジタルのIF信号をDIFL5としてマスタ側デジタル信号処理部400に出力する。
【0064】
ここで、マスタ側インターフェース制御部231は、初期状態においてセレクタ341および342の両方の入力先を自動利得制御回路315および325にする。また、マスタ側電源制御部232は、初期状態において、マスタ側RF回路300の全電源を投入する。
【0065】
そして、所定条件が満たされた場合にマスタ側インターフェース制御部231は、セレクタ341および342の両方の入力先を切り替える。これにより、自動利得制御回路315および325とADC351および352との間の経路は、開状態となる。また、マスタ側電源制御部232は、所定条件が満たされた場合に、マスタ側RF回路300の電源を遮断する。所定条件として、例えば、マスタ側RF回路300の故障が考えられる。
【0066】
図4は、本技術の第1の実施の形態におけるスレーブ側RF回路500の一構成例を示すブロック図である。このスレーブ側RF回路500は、ローノイズアンプ511および521と、ローカル位相同期回路512および522と、混合器513および523と、ローパスフィルタ514および524と、自動利得制御回路515および525とを備える。また、スレーブ側RF回路500は、位相同期回路530と、切替部540と、ADC551および552とをさらに備える。切替部540内には、セレクタ541および542が配置される。
【0067】
スレーブ側RF回路500内の各回路の構成は、マスタ側RF回路300内の同名の回路と同様である。ただし、セレクタ541の2つの入力端子の一方には、GNSSチップ230(マスタ)からのIF信号AIFL1が入力され、他方は自動利得制御回路515に接続される。セレクタ542の2つの入力端子の一方には、マスタからのIF信号AIFL5が入力され、他方は自動利得制御回路525に接続される。
【0068】
また、スレーブ側インターフェース制御部241は、初期状態においてセレクタ541および542の両方の入力先をマスタ側にする。また、スレーブ側電源制御部242は、初期状態において、スレーブ側RF回路500内の位相同期回路530、切替部540、ADC551およびADC552以外の回路の電源を遮断する。同図において、灰色の回路は、電源が遮断された回路である。以降の図面においても同様である。
【0069】
そして、所定条件が満たされた場合にスレーブ側インターフェース制御部241は、セレクタ541および542の両方の入力先を切り替える。また、スレーブ側電源制御部242は、所定条件が満たされた場合に、スレーブ側RF回路500内の全回路の電源を投入する。所定条件として、例えば、マスタ側RF回路300の故障が考えられる。
【0070】
[デジタル信号処理部の構成例]
図5は、本技術の第1の実施の形態におけるマスタ側デジタル信号処理部400の一構成例を示すブロック図である。このマスタ側デジタル信号処理部400は、L1デジタルフロントエンド410と、所定数のL1衛星処理ユニット420とを備える。さらに、マスタ側デジタル信号処理部400は、L5デジタルフロントエンド430と、所定数のL5衛星処理ユニット440と、測位エンジン450とを備える。L1衛星処理ユニット420のそれぞれには、所定の衛星が捕捉対象として割り当てられている。同様に、L5衛星処理ユニット440のそれぞれにも、所定の衛星が捕捉対象として割り当てられている。L1衛星処理ユニット420およびL5衛星処理ユニット440は、それぞれN(Nは、整数)個ずつ設けられる。
【0071】
L1デジタルフロントエンド410は、ダウンコンバータやデジタルフィルタを用いて、IF信号DIFL1を、L1帯に対応するベースバンド信号に変換するものである。L1デジタルフロントエンド410は、ベースバンド信号をL1衛星処理ユニット420のそれぞれに供給する。
【0072】
L1衛星処理ユニット420は、L1帯に対応するベースバンド信号に基づいて、割り当てられた衛星を捕捉および追尾し、その衛星からのL1信号を復号するものである。このL1衛星処理ユニット420は、復号に得られた衛星観測値(航法データなど)を測位エンジン450に出力する。L1衛星処理ユニット420のそれぞれは、衛星捕捉部421および衛星追尾部422を備える。
【0073】
衛星捕捉部421は、割り当てられた衛星を捕捉するものである。この衛星捕捉部421は、例えば、割り当てられた衛星の識別情報(C/Aコード)と、入力されたベースバンド信号との排他的論理和を相関器に入力し、相関値を取得する。衛星捕捉部421は、捕捉結果として、相関値が最大となる搬送波周波数オフセットおよびコード位相を衛星追尾部422に出力する。なお、衛星捕捉部421は、SN(Signal to Noise)比を高くするために、一定時間、相関値を積分し、その積分値が最大となる搬送波周波数オフセット等を出力することもできる。
【0074】
衛星追尾部422は、捕捉された衛星を追尾するものである。この衛星追尾部422は、搬送波周波数オフセット、コード位相を初期値として、搬送波およびコードタイミングへの同期を行い、さらに航法データおよび補正データの物理フレームに対する同期を経て、衛星時刻を再生する。また、衛星追尾部422は、衛星時刻と受信装置の時刻との差分から衛星信号の伝搬時間を推定し、これに光速を乗じることにより衛星100と受信装置200との間の伝搬距離を疑似距離として推定する。また、衛星追尾部422は、捕捉した衛星からの信号を復調し、航法データや補正データを取得する。衛星追尾部422は、これらの疑似距離、航法データや補正データを衛星観測値として測位エンジン450に供給する。
【0075】
L5デジタルフロントエンド430は、IF信号DIFL5を、L5帯に対応するベースバンド信号に変換するものである。L5デジタルフロントエンド430は、ベースバンド信号をL5衛星処理ユニット440のそれぞれに供給する。
【0076】
L5衛星処理ユニット440は、L5帯に対応するベースバンド信号に基づいて、割り当てられた衛星を捕捉および追尾し、その衛星からのL5信号を復号するものである。このL5衛星処理ユニット440は、復号に得られた衛星観測値(航法データなど)を測位エンジン450に出力する。
【0077】
L5衛星処理ユニット440のそれぞれは、衛星捕捉部441および衛星追尾部442を備える。これらの機能は、衛星捕捉部421および衛星追尾部422と同様である。
【0078】
測位エンジン450は、L1衛星処理ユニット420およびL5衛星処理ユニット440からのマスタ側の衛星観測値と、シリアルインターフェース234を介して得られたスレーブ側の衛星観測値とに基づいて位置情報などを生成するものである。測位において、測位エンジン450は、マスタ側の衛星観測値のみを用いてもよいし、マスタ側およびスレーブ側の両方の衛星観測値を用いてもよい。また、測位において、L1帯およびL5帯の両方の衛星観測値が用いられる。
【0079】
また、マスタ側電源制御部232は、初期状態において、マスタ側デジタル信号処理部400内の全回路の電源を投入する。そして、所定条件が満たされた場合(マスタ側RF回路300の故障などの場合)にマスタ側電源制御部232は、L1デジタルフロントエンド410、L1衛星処理ユニット420、L5デジタルフロントエンド430およびL5衛星処理ユニット440のそれぞれの電源を遮断する。
【0080】
なお、マスタ側デジタル信号処理部400は、L1信号およびL5信号の両方を復号しているが、一方(L1信号など)のみを復号することもできる。この場合には、復号しない方に対応するデジタルフロントエンドおよび衛星処理ユニットの電源がマスタ側電源制御部232により遮断される。
【0081】
また、マスタ側デジタル信号処理部400は、GPSやQZSSにおける信号(L1信号やL5信号)を用いて測位しているが、GPS以外のGNSS(ガリレオやグロナスなど)における信号を用いて測位することもできる。
【0082】
図6は、本技術の第1の実施の形態におけるスレーブ側デジタル信号処理部600の一構成例を示すブロック図である。このスレーブ側デジタル信号処理部600は、L1デジタルフロントエンド610と、所定数のL1衛星処理ユニット620と、L5デジタルフロントエンド630と、所定数のL5衛星処理ユニット640とを備える。L1衛星処理ユニット620のそれぞれには、衛星捕捉部621および衛星追尾部622が設けられ、L5衛星処理ユニット640のそれぞれには、衛星捕捉部641および衛星追尾部642が設けられる。スレーブ側デジタル信号処理部600の回路構成は、測位エンジン450が設けられない点以外は、マスタ側デジタル信号処理部400と同様である。
【0083】
スレーブ側のL1衛星処理ユニット620およびL5衛星処理ユニット640は、衛星観測値を取得し、シリアルインターフェース243を介してマスタへ送信する。
【0084】
図7は、本技術の第1の実施の形態におけるマスタからスレーブへ切り替わった際の受信装置の状態の一例を示す図である。
【0085】
前述したように、初期状態においてマスタ側RF回路300は、RF信号RFINを、より周波数の低いIF信号にダウンコンバートする。そして、マスタ側RF回路300は、アナログのIF信号AIFをスレーブ側RF回路500に出力し、そのIF信号AIFをAD変換したIF信号DIFをマスタ側デジタル信号処理部400に出力する。なお、マスタ側RF回路300は、特許請求の範囲に記載のマスタ側受信回路の一例である。
【0086】
また、初期状態において、スレーブ側RF回路500は、マスタからのIF信号AIFをAD変換してスレーブ側デジタル信号処理部600に出力する。言い換えれば、マスタからのIF信号は、スレーブ側RF回路500を介してスレーブ側デジタル信号処理部600に入力される。なお、スレーブ側RF回路500は、特許請求の範囲に記載のスレーブ側受信回路の一例である。
【0087】
また、初期状態において、マスタ側デジタル信号処理部400内のL1デジタルフロントエンド410およびL5デジタルフロントエンド430は、IF信号DIFL1およびDIFL5をベースバンド信号に変換する。L1衛星処理ユニット420およびL5衛星処理ユニット440は、それらのベースバンド信号に基づいて、割り当てられた衛星からの信号を復号し、衛星観測値を取得する。測位エンジン450は、マスタ側およびスレーブ側の少なくとも一方の衛星観測値に基づいて、位置情報などを生成する。なお、測位エンジン450は、特許請求の範囲に記載の測位部の一例である。
【0088】
初期状態において、スレーブ側デジタル信号処理部600内のスレーブ側衛星処理ユニット(不図示)は、IF信号をベースバンド信号に変換する。そして、スレーブ側衛星処理ユニットは、ベースバンド信号に基づいて、マスタ側と異なる衛星からの信号を復号して衛星観測値を取得し、マスタに出力する。
【0089】
上述したように初期状態において、マスタおよびスレーブの両方が衛星を観測するため、それぞれの観測可能な衛星数を同一とすると、受信装置200は、マスタのみの場合と比較して、2倍の個数の衛星を観測することができる。スレーブのGNSSチップ240は、必要に応じて増設することができる。このため、マスタおよびスレーブのチップ数の合計をM(Mは、2以上の整数)とすると、受信装置200は、マスタのみの場合と比較して、M倍の個数の衛星を観測することができる。L1帯およびL5帯の2波長を用い、観測する衛星数をM倍にすることにより、マルチパス耐性を向上させ、高精度単独測位(PPP-RTK:Precise Point Positioning-RTK)における初期化時間を短縮することができる。言い換えれば、受信装置200の性能を向上させることができる。
【0090】
また、スレーブのGNSSチップ240の増設により消費電力の増大が懸念されるが、マスタ側RF回路300がIF信号をスレーブに出力するため、マスタ側RF回路300をマスタおよびスレーブで共有することができる。このため、スレーブ側電源制御部242は、スレーブ側RF回路500内のローノイズアンプや混合器の電源を遮断することができる。これにより、消費電力の増大を抑制することができる。
【0091】
このように、スケーラブルなチップの増設と、RF回路の電源制御とにより、アプリケーション毎に性能や電力のバランスを最適化することができる。
【0092】
そして、所定条件が満たされた場合、例えば、マスタ側RF回路300が故障した場合、マスタ側インターフェース制御部231は、マスタ側RF回路300内のセレクタを切り替える。また、マスタ側電源制御部232は、マスタ側RF回路300の電源を遮断し、マスタ側デジタル信号処理部400内の測位エンジン以外の電源を遮断する。これにより、マスタ側電源制御部232からのIF信号の出力が停止する。
【0093】
また、所定条件が満たされた場合、スレーブ側インターフェース制御部241は、スレーブ側RF回路500内のセレクタを切り替え、スレーブ側電源制御部242は、スレーブ側RF回路500の全回路の電源を投入する。このため、受信装置200は、マスタ側RF回路300が故障しても、スレーブ側RF回路500に切り替えて、測位を継続することができる。これにより、受信装置200の故障耐性が向上し、宇宙空間など、より過酷な環境下での運用が可能となる。言い換えれば、受信装置200の性能が向上する。前述したようにスレーブ側RF回路500への切り替え前は、スレーブ側RF回路500の電源が遮断されているため、RF回路の冗長化による消費電力の増大を抑制することができる。
【0094】
なお、受信装置200では、1つのアンテナ201をマスタおよびスレーブで共用しているが、この構成に限定されない。受信装置200に、複数のアンテナを設けることもできる。
【0095】
図8は、本技術の第1の実施の形態における複数のアンテナを設けた場合の受信装置200の一構成例を示す図である。同図に例示するように、アンテナ202および弾性表面波フィルタ211がさらに追加される。アンテナ201からのRF信号は、弾性表面波フィルタ210を介してマスタ側のGNSSチップ230のみに入力される。一方、アンテナ202からのRF信号は、弾性表面波フィルタ211を介してスレーブ側のGNSSチップ240のみに入力される。
【0096】
同図に例示した構成の場合、マスタからスレーブへ切り替える所定条件として、マスタ側の故障のほか、マスタ側のアンテナ201の受信感度の低下が考えられる。
【0097】
あるいは、図には示さないが、周波数帯毎に独立したアンテナを設ける構成としてもよい。各周波数帯をSAWフィルタで切り出して、妨害耐性を向上させることができる。また、アンテナ信号の分波ロスも無くすことができる。
【0098】
なお、受信装置200内の回路を2系統配置し、系統ごとにアンテナを設け、それぞれの測位結果を用いて受信装置200の向いた方向を検出する方向検出部をさらに配置することもできる。これにより、サテライトコンパスを実現することができる。
【0099】
[受信装置の動作例]
図9は、本技術の第1の実施の形態における受信装置200の動作の一例を示すフローチャートである。この動作は、例えば、受信装置200において、位置情報を用いる所定のアプリケーションが実行されたときに開始される。
【0100】
受信装置200は、現在時刻が測位すべき測位時刻であるか否かを判断する(ステップS901)。現在時刻が測位時刻でない場合(ステップS901:No)、受信装置200は、ステップS901を繰り返す。
【0101】
一方、現在時刻が測位時刻である場合(ステップS901:Yes)、受信装置200は 、GPSの衛星を捕捉し(ステップS902)、それらを追尾する(ステップS903)。また、受信装置200は、衛星観測値を用いて測位演算を行い、位置情報や速度情報を取得する(ステップS904)。
【0102】
そして、受信装置200は、マスタ側RF回路300が故障したか否かを判断する(ステップS905)。マスタ側RF回路300が故障した場合(ステップS905:Yes)、受信装置200は、動作させるRF回路をマスタ側RF回路300からスレーブ側RF回路500に切り替える(ステップS906)。マスタ側RF回路300が故障していない場合(ステップS905:No)、または、ステップS906の後に、受信装置200は、ステップS901以降を繰り返し実行する。
【0103】
このように、本技術の第1の実施の形態では、マスタ側RF回路300がIF信号をマスタ側およびスレーブ側に出力し、スレーブへの切り替え後にマスタ側電源制御部232が、マスタ側RF回路300を遮断する。また、スレーブへの切り替え前は、スレーブ側電源管理部242が、スレーブ側RF回路500の電源を遮断する。これらのRF回路の電源遮断により、RF回路を冗長化して性能(故障耐性など)を向上させた際の消費電力の増大を抑制することができる。
【0104】
[変形例]
上述の第1の実施の形態では、受信装置200がL1帯およびL5帯の信号を用いて測位を行っていたが、これらの2つの周波数帯域のみでは、衛星数や測位精度が不足することもある。この第1の実施の形態の変形例の受信装置200は、L2信号をさらに用いて測位を行う点において第1の実施の形態と異なる。ここで、L2信号は、L2帯の搬送波を変調して衛星が送信した信号である。このL2帯は、中心周波数を1227.60メガヘルツ(MHz)とする所定の帯域幅(±12.0メガヘルツなど)の周波数帯域である。
【0105】
図10は、本技術の第1の実施の形態の変形例におけるスレーブ側RF回路500の一構成例を示すブロック図である。この第1の実施の形態の変形例のスレーブ側RF回路500は、ローカル位相同期回路522の代わりにローカル位相同期回路526を備える点において、第1の実施の形態と異なる。
【0106】
ローカル位相同期回路526は、GPSにおけるL2帯に応じたローカル周波数のローカル信号LOL2と、L5帯に応じたローカル周波数のローカル信号LOL5との一方をクロック信号CLKTCXOから生成するものである。このローカル位相同期回路526は、ローカル信号LOL2およびLOL5の一方を混合器523に供給する。
【0107】
また、第1の実施の形態の変形例のADC552は、デジタルのIF信号DIFL2およびDIFL5の一方をスレーブ側デジタル信号処理部600に出力する。
【0108】
第1の実施の形態の変形例のスレーブ側電源制御部242は、第1の実施の形態と同様に、初期状態において位相同期回路530、切替部540、ADC551およびADC552以外の回路の電源を遮断する。
【0109】
図11は、本技術の第1の実施の形態の変形例におけるスレーブ側デジタル信号処理部600の一構成例を示すブロック図である。この第1の実施の形態の変形例のスレーブ側デジタル信号処理部600は、L2デジタルフロントエンド660と、所定数のL2衛星処理ユニット670とをさらに備える点において第1の実施の形態と異なる。
【0110】
L2デジタルフロントエンド660は、IF信号DIFL2を、L2帯に対応するベースバンド信号に変換するものである。L2デジタルフロントエンド660は、ベースバンド信号をL2衛星処理ユニット670のそれぞれに供給する。
【0111】
L2衛星処理ユニット670は、L2帯に対応するベースバンド信号に基づいて、割り当てられた衛星を捕捉および追尾し、その衛星からのL2信号を復号するものである。このL2衛星処理ユニット670は、復号に得られた衛星観測値(航法データなど)を、シリアルインターフェース243を介してマスタに出力する。
【0112】
同図に例示した構成により、スレーブ側の3つの衛星処理ユニットは、L1信号、L2信号およびL5信号のうち、少なくとも1つ以上の復号を行うことができる。
【0113】
第1の実施の形態の変形例のスレーブ側電源制御部242は、初期状態において、L2デジタルフロントエンド660と、L2衛星処理ユニット670のそれぞれとの電源を遮断する。なお、スレーブ側電源制御部242の代わりにクロック制御部を設け、L2デジタルフロントエンド660およびL2衛星処理ユニット670について、電源の遮断ではなく、それらのクロックを停止することもできる。
【0114】
また、第1の実施の形態の変形例のマスタ側の測位エンジン450は、初期状態において、例えば、L1帯およびL5帯の衛星観測値に基づいて測位を行う。
【0115】
図12は、本技術の第1の実施の形態の変形例におけるL2帯を受信する際のスレーブ側RF回路500の状態の一例を示す図である。GPSやQZSSにおいて受信装置200が2波長を受信する場合、L1信号およびL5信号よりも、L1信号およびL2信号の組み合わせの方が観測可能な衛星数が多くなることがある。このため、観測可能な衛星数が所定値に満たない場合などに受信装置200は、受信する信号の組み合わせをL1信号およびL5信号からL1信号およびL2信号に切り替える。また、L1信号、L2信号およびL5信号の3つの周波数帯域を用いることにより、さらに性能を向上させることもできる。このため、受信装置200は、衛星数や測位精度などが不足する際に、L1信号およびL5信号やL1信号およびL2信号の2波長から、L1信号、L2信号およびL5信号の3波長に切り替えることができる。
【0116】
受信する信号をL1信号およびL2信号に切り替える場合、同図に例示するように、スレーブ側電源制御部242は、ローノイズアンプ521、ローカル位相同期回路526、混合器523、ローパスフィルタ524および自動利得制御回路525の電源を投入する。また、ローカル位相同期回路526は、スレーブ側デジタル信号処理部600の制御に従って、ローカル信号LOL2を混合器523に供給する。
【0117】
また、図13に例示するように、スレーブ側電源制御部242は、L2デジタルフロントエンド660およびL2衛星処理ユニット670の電源を投入し、L5デジタルフロントエンド630およびL5衛星処理ユニット640の電源を遮断する。なお、スレーブ側電源制御部242の代わりにクロック制御部を設け、L5デジタルフロントエンド630およびL5衛星処理ユニット640について、電源の遮断ではなく、それらのクロックを停止することもできる。
【0118】
そして、マスタ側の測位エンジン450は、L1帯およびL2帯の衛星観測値に基づいて測位を行う。
【0119】
また、受信する信号をL1信号、L2信号およびL5信号に切り替える場合、マスタ側電源制御部232は、GNSSチップ230内の全回路の電源を投入し、スレーブ側電源制御部242は、GNSSチップ240内の全回路の電源を投入する。そして、マスタ側の測位エンジン450は、L1帯、L2帯およびL5帯の衛星観測値に基づいて測位を行う。
【0120】
ここで、測位エンジンはCPU(Central Processing Unit)によるソフトウェア処理により実現することができる。この場合、例えば、L1帯、L2帯やL5帯等の測位処理を関数として実装しておき、衛星観測の条件に応じて、必要となる関数を組み合わせて使用すればよい。また、周波数帯域の切り替え機能の実装は、ファームウェアのアップデートによる機能拡張で対応することもできる。
【0121】
なお、受信装置200は、初期状態においてL1信号およびL2信号を受信し、その後にL1信号およびL5信号や、L1信号、L2信号およびL5信号の組み合わせに切り替えることもできる。
【0122】
上述したように、スレーブがL1信号、L2信号およびL5信号の復号を行うことにより、L1帯、L2帯およびL5帯の3波長に対応することができる。これにより、L1帯およびL5帯の2波長のみに対応する場合と比較して、観測可能な衛星数などの性能を向上させることができる。
【0123】
また、第1の実施の形態の変形例においても受信装置200は、第1の実施の形態と同様に、マスタ側RF回路300が故障した場合などに、スレーブ側RF回路500への切り替えを行う。
【0124】
なお、第1の実施の形態の変形例の受信装置200は、2波長や3波長を受信しているが、それらのうち1波長(L1帯域など)のみを受信することもできる。この場合には、受信しない信号に対応するデジタルフロントエンドおよび衛星処理ユニットの電源が遮断される。
【0125】
このように、本技術の第1の実施の形態の変形例によれば、スレーブがL1信号、L2信号およびL5信号のうち少なくとも1つの復号を行うため、L1帯およびL5帯のみに対応する場合と比較して性能を向上させることができる。
【0126】
<2.第2の実施の形態>
上述の第1の実施の形態では、マスタがスレーブにアナログのIF信号を送信し、スレーブ側でIF信号のAD変換を行っていたが、この構成では、スレーブ側のADCの電源を遮断することができない。この第2の実施の形態の受信装置200は、マスタがデジタルのIF信号をスレーブに出力する点において第1の実施の形態と異なる。
【0127】
図14は、本技術の第2の実施の形態におけるGNSSチップ230および240の一構成例を示すブロック図である。この第2の実施の形態のマスタ側のGNSSチップ230は、切替部250をさらに備える点において第1の実施の形態と異なる。
【0128】
第2の実施の形態のGNSSチップ230において、マスタ側RF回路300は、デジタルのIF信号DIFを切替部250およびGNSSチップ240(スレーブ)に出力する。
【0129】
また、第2の実施の形態のスレーブ側のGNSSチップ240は、切替部260をさらに備える点において第1の実施の形態と異なる。第2の実施の形態のGNSSチップ240において、マスタ側RF回路300は、デジタルのIF信号DIFを切替部260に出力する。
【0130】
図15は、本技術の第2の実施の形態におけるマスタ側RF回路300および切替部250の一構成例を示すブロック図である。第2の実施の形態のマスタ側RF回路300には、切替部340が設けられない。
【0131】
また、自動利得制御回路315は、ADC351にアナログのIF信号を供給し、自動利得制御回路325は、ADC352にアナログのIF信号を供給する。
【0132】
また、切替部250には、セレクタ251および252が配置される。ADC351は、デジタルのIF信号DIFL1をセレクタ251およびGNSSチップ240に出力する。ADC352は、デジタルのIF信号DIFL5をセレクタ252およびGNSSチップ240に出力する。
【0133】
セレクタ251は、2つの入力端子と1つの出力端子を有する。2つの入力端子の一方はADC351に接続され、出力端子はマスタ側デジタル信号処理部400に接続される。また、セレクタ251は、マスタ側インターフェース制御部231の制御に従って入力先を切り替える。
【0134】
セレクタ252は、2つの入力端子と1つの出力端子を有する。2つの入力端子の一方はADC352に接続され、出力端子はマスタ側デジタル信号処理部400に接続される。また、セレクタ252は、マスタ側インターフェース制御部231の制御に従って入力先を切り替える。
【0135】
IF信号DIFL1のビット数をK(Kは、整数)とすると、切替部250には、K個のセレクタ251が配置される。同様に、IF信号DIFL5のビット数と同じ個数のセレクタ252が設けられる。同図においては、1ビット分のセレクタ251および252のみが記載され、残りは省略されている。
【0136】
なお、パラレルシリアル変換を行うパラレルシリアル変換器をADC351および352と切替部250との間に挿入することもできる。これにより、セレクタ251および252は1つずつで済み、IF信号を出力する端子数を削減することができる。ただし、パラレルシリアル変換を行わない場合と比較して、動作クロックを上げる必要がある。スレーブ側についても同様にパラレルシリアル変換器を挿入することができる。
【0137】
また、マスタは、マスタ側デジタル信号処理部400内のデジタルフロントエンドにおける、ダウンサンプリング後または妨害除去後のデジタル信号をスレーブに出力することもできる。ADC351および352の出力するデジタル信号(DIFL1およびDIFL5)のビット数は、妨害に対するダイナミックレンジのマージン(いわゆるバックオフ)を持たせるために多めにしている。しかし、妨害除去後のデジタル信号であれば、ビット数を削減することができる。また、ダウンサンプリング後の信号であれば、帯域を抑制することができるため、パラレルシリアル変換が容易となる。あるいは、配線に対する自由度が向上する。
【0138】
図16は、本技術の第2の実施の形態におけるスレーブ側RF回路500および切替部260の一構成例を示すブロック図である。第2の実施の形態のスレーブ側RF回路500には、切替部540が設けられない。
【0139】
そして、自動利得制御回路515は、ADC551にアナログのIF信号を供給し、自動利得制御回路525は、ADC552にアナログのIF信号を供給する。
【0140】
また、切替部260には、セレクタ261および262が配置される。ADC551は、デジタルのIF信号DIFL1をセレクタ261に出力する。ADC552は、デジタルのIF信号DIFL5をセレクタ262に出力する。
【0141】
セレクタ261は、2つの入力端子と1つの出力端子を有する。2つの入力端子の一方はADC551に接続され、他方には、マスタからのIF信号DIFL1が入力される。出力端子はスレーブ側デジタル信号処理部600に接続される。また、セレクタ261は、スレーブ側インターフェース制御部241の制御に従って入力先を切り替える。
【0142】
セレクタ262は、2つの入力端子と1つの出力端子を有する。2つの入力端子の一方はADC552に接続され、他方には、マスタからのIF信号DIFL5が入力される。出力端子はスレーブ側デジタル信号処理部600に接続される。また、セレクタ262は、スレーブ側インターフェース制御部241の制御に従って入力先を切り替える。
【0143】
また、スレーブ側電源制御部242は、初期状態において、ADC551および552も含め、位相同期回路530以外の回路の電源を遮断する。また、所定条件が満たされた場合(マスタ側RF回路300が故障した場合など)に、スレーブ側電源制御部242は、スレーブ側RF回路500内の全回路の電源を投入する。
【0144】
図14乃至図16に例示するように、マスタがスレーブにデジタルのIF信号を出力することにより、スレーブは、IF信号のAD変換を行う必要がなくなる。これにより、スレーブ側電源制御部242は、ADC551および552の電源をさらに遮断し、消費電力をさらに削減することができる。
【0145】
なお、第2の実施の形態に、第1の実施の形態の変形例を適用することもできる。
【0146】
このように、本技術の第2の実施の形態によれば、マスタ側のGNSSチップ230が、スレーブにデジタルのIF信号を出力するため、スレーブ側のADC551および552の電源を遮断することができる。これにより、受信装置200の消費電力を削減することができる。
【0147】
<3.第3の実施の形態>
上述の第1の実施の形態では、マスタおよびスレーブのそれぞれが、クロック信号CLKADCおよびCLKDSPを生成していたが、この構成では、スレーブ側の位相同期回路の電源を遮断することができない。この第3の実施の形態の受信装置200は、マスタがスレーブへクロック信号CLKADCおよびCLKDSPをさらに出力する点において第1の実施の形態と異なる。
【0148】
図17は、本技術の第3の実施の形態におけるGNSSチップ230および240の一構成例を示すブロック図である。この第3の実施の形態のマスタ側のGNSSチップ230は、セレクタ235をさらに備える点において第1の実施の形態と異なる。
【0149】
第3の実施の形態のマスタ側RF回路300は、スレーブ側のGNSSチップ240へクロック信号CLKADCおよびCLKDSPをさらに出力する。これらのうちクロック信号CLKDSPは、セレクタ245にも出力される。
【0150】
セレクタ235は、2つの入力端子と1つの出力端子を有する。2つの入力端子の一方はマスタ側RF回路300に接続され、出力端子はマスタ側デジタル信号処理部400に接続される。また、セレクタ235は、マスタ側インターフェース制御部231の制御に従って入力先を切り替える。
【0151】
また、第3のスレーブ側のGNSSチップ240は、セレクタ245をさらに備える点において第1の実施の形態と異なる。
【0152】
セレクタ245は、2つの入力端子と1つの出力端子を有する。2つの入力端子の一方はスレーブ側RF回路500に接続され、他方にはマスタからのクロック信号CLKDSPが入力される。出力端子はスレーブ側デジタル信号処理部600に接続される。また、セレクタ245は、スレーブ側インターフェース制御部241の制御に従って入力先を切り替える。
【0153】
図18は、本技術の第3の実施の形態におけるマスタ側RF回路300の一構成例を示すブロック図である。この第3の実施の形態のマスタ側RF回路300は、セレクタ360をさらに備える点において第1の実施の形態と異なる。
【0154】
第3の実施の形態の位相同期回路330は、クロック信号CLKDSPをセレクタ235に出力し、クロック信号CLKADCを、セレクタ360とスレーブ側のGNSSチップ240とに出力する。
【0155】
セレクタ360は、2つの入力端子と1つの出力端子を有する。2つの入力端子の一方には位相同期回路330からのクロック信号CLKADCが入力される。出力端子はADC351および352に接続される。また、セレクタ360は、マスタ側インターフェース制御部231の制御に従って入力先を切り替える。
【0156】
図19は、本技術の第3の実施の形態におけるスレーブ側RF回路500の一構成例を示すブロック図である。この第3の実施の形態のスレーブ側RF回路500は、セレクタ560をさらに備える点において第1の実施の形態と異なる。
【0157】
第3の実施の形態の位相同期回路530は、クロック信号CLKDSPをセレクタ245に出力し、クロック信号CLKADCを、セレクタ560に出力する。
【0158】
セレクタ560は、2つの入力端子と1つの出力端子を有する。2つの入力端子の一方には位相同期回路530からのクロック信号CLKADCが入力され、他方にはマスタ側のGNSSチップ230からのクロック信号CLKADCが入力される。出力端子はADC551および552に接続される。また、セレクタ560は、スレーブ側インターフェース制御部241の制御に従って入力先を切り替える。
【0159】
また、スレーブ側電源制御部242は、初期状態において、位相同期回路530も含め、切替部540、ADC551および552以外の回路の電源を遮断する。また、所定条件が満たされた場合(マスタ側RF回路300が故障した場合など)に、スレーブ側電源制御部242は、スレーブ側RF回路500内の全回路の電源を投入する。
【0160】
図17乃至図19に例示するように、マスタがスレーブにクロック信号CLKADCおよびCLKDSPをさらに出力することにより、スレーブ側の位相同期回路530は、それらのクロックを生成する必要がなくなる。これにより、スレーブ側電源制御部242は、位相同期回路530の電源をさらに遮断し、消費電力をさらに削減することができる。
【0161】
なお、第3の実施の形態に、第1の実施の形態の変形例や、第2の実施の形態を適用することもできる。
【0162】
このように、本技術の第3の実施の形態によれば、マスタ側のGNSSチップ230が、スレーブにクロック信号CLKADCおよびCLKDSPをさらに出力するため、スレーブ側の位相同期回路530の電源を遮断することができる。これにより、受信装置200の消費電力を削減することができる。
【0163】
<4.第4の実施の形態>
上述の第1の実施の形態では、マスタ側RF回路300は、マスタ側のIF信号のみをAD変換していたが、この構成では、マスタからスレーブに切り替えた際にスレーブ側のIF信号をマスタ側で用いることができない。この第4の実施の形態の受信装置200は、スレーブもマスタへIF信号を出力し、マスタ側RF回路300が、スレーブ側またはマスタ側のIF信号をAD変換する点において第1の実施の形態と異なる。
【0164】
図20は、本技術の第4の実施の形態におけるGNSSチップ230および240の一構成例を示すブロック図である。この第4の実施の形態のGNSSチップ240は、シリアルインターフェース244をさらに備える点において第1の実施の形態と異なる。また、第4の実施の形態のマスタ側のGNSSチップ230は、所定の条件(マスタの故障など)が満たされた場合に、スレーブへ衛星観測値を出力する。
【0165】
図21は、本技術の第4の実施の形態におけるマスタ側RF回路300の一構成例を示すブロック図である。この第4のマスタ側RF回路300には、スレーブ側のGNSSチップ240からのアナログのIF信号AIFL1およびAIFL5がさらに入力される。
【0166】
また、第4の実施の形態のセレクタ341の2つの入力端子の一方には、スレーブ側のIF信号AIFL1が入力され、他方には、第1の実施の形態と同様に自動利得制御回路315からのIF信号AIFL1が入力される。
【0167】
第4の実施の形態のセレクタ342の2つの入力端子の一方には、スレーブ側のIF信号AIFL5が入力され、他方には、第1の実施の形態と同様に自動利得制御回路325からのIF信号AIFL5が入力される。
【0168】
図22は、本技術の第4の実施の形態におけるスレーブ側RF回路500の一構成例を示すブロック図である。この第4の実施の形態のスレーブ側RF回路500は、自動利得制御回路515および525が、IF信号AIFL1およびAIFL5を、切替部540と、マスタ側のGNSSチップ230との両方に出力する点において第1の実施の形態と異なる。
【0169】
図23は、本技術の第4の実施の形態におけるスレーブ側デジタル信号処理部600の一構成例を示すブロック図である。この第4の実施の形態のスレーブ側デジタル信号処理部600は、測位エンジン650をさらに備える点において第1の実施の形態と異なる。
【0170】
測位エンジン650の機能は、マスタ側の測位エンジン450と同様である。ただし、スレーブ側電源制御部242は、例えば、初期状態において測位エンジン650の電源を遮断する。そして、マスタの故障などの所定条件が満たされた場合にスレーブ側電源制御部242は、測位エンジン650の電源を投入する。このときに、マスタ側の測位エンジン450の電源が遮断され、マスタ側の衛星処理ユニットから衛星観測値がスレーブ側に送信される。スレーブ側の測位エンジン650は、マスタおよびスレーブの衛星観測値を用いて測位し、位置情報などを、シリアルインターフェース244を介して外部に出力する。
【0171】
図20乃至図23に例示したように、スレーブがIF信号をマスタ側RF回路300に出力することにより、マスタからスレーブに切り替えた際に、スレーブ側のIF信号をマスタ側でも用いることができる。これにより、スレーブに切り替えた際に、観測可能な衛星数を切り替え前と同じに維持することができ、性能低下を抑制することができる。また、マスタ側の測位エンジンが故障した際にも、スレーブ側の測位エンジンを用いて測位を継続することができる。これにより、柔軟かつロバストな故障回避を実現することができる。
【0172】
なお、マスタ側電源制御部232やスレーブ側電源制御部242の代わりにクロック制御部を設け、マスタ側やスレーブ側の回路について、電源の遮断ではなく、それらのクロックを停止することもできる。
【0173】
また、第4の実施の形態に、第1の実施の形態の変形例、第2および第3の実施の形態のそれぞれを適用することもできる。
【0174】
このように、本技術の第4の実施の形態によれば、スレーブがIF信号をマスタ側RF回路300に出力することにより、マスタからスレーブに切り替えた際に、スレーブ側のIF信号をマスタ側でも用いることができる。これにより、観測可能な衛星数を維持することができ、切り替えた際の性能の低下を抑制することができる。
【0175】
<5.第5の実施の形態>
上述の第1の実施の形態では、受信装置200がL1信号およびL5信号を受信していたが、この構成では、L2信号やL6信号を用いることができない。この第5の実施の形態における受信装置200は、L2信号およびL6信号にも対応した点において第1の実施の形態と異なる。ここで、L6信号は、L6帯の搬送波を変調して衛星が送信した信号である。このL6帯は、中心周波数を1278.75メガヘルツ(MHz)とする所定の帯域幅の周波数帯域である。
【0176】
図24は、本技術の第5の実施の形態におけるGNSSチップ230および240の一構成例を示すブロック図である。この第5の実施の形態のGNSSチップ240は、スレーブ側RF回路500が設けられず、その代わりに、ADC552が配置される点において第1の実施の形態と異なる。
【0177】
第5の実施の形態のマスタ側RF回路300は、L1信号と、L2信号、L5信号およびL6信号のいずれかとを受信する。また、マスタ側RF回路300は、L2信号およびL6信号のいずれかに対応するローカル信号を用いてRF信号をアナログのIF信号AIFに変換してスレーブ側のADC552に出力する。また、マスタ側RF回路300は、L1信号およびL5信号に対応するローカル信号を用いてRF信号をデジタルのIF信号に変換してマスタ側デジタル信号処理部400に出力する。さらにマスタ側RF回路300は、クロック信号CLKADCをADC552に出力する。
【0178】
ADC552は、マスタ側からのIF信号をAD変換して、スレーブ側デジタル信号処理部600に出力する。
【0179】
なお、同図に例示したようにスレーブ側がRF回路を持たない場合、スレーブそのものをFPGAまたはDSPにより実現することもできる。これにより、スレーブを増設して機能を拡張する際の開発コストを削減することができる。
【0180】
図25は、本技術の第5の実施の形態におけるマスタ側RF回路300の一構成例を示すブロック図である。この第5の実施の形態のマスタ側RF回路300は、ローカル位相同期回路322の代わりにローカル位相同期回路326を備える点において第1の実施の形態と異なる。
【0181】
ローカル位相同期回路326は、マスタ側デジタル信号処理部400の制御に従って、ローカル信号LOL2、LOL5およびLOL6のいずれかをクロック信号CLKTCXOから生成するものである。LOL6は、L6帯に応じたローカル周波数のローカル信号である。このローカル位相同期回路326は、生成したローカル信号を混合器323に供給する。
【0182】
また、第5の実施の形態の位相同期回路330は、クロック信号CLKADCを、ADC351および352とGNSSチップ240とに出力する。
【0183】
また、第5の実施の形態の自動利得制御回路325は、アナログのIF信号をADC352とGNSSチップ240とに出力する。ローカル信号LOL2およびLOL6に対応するIF信号AIFL2およびAIFL6は、スレーブ側のGNSSチップ240で用いられる。また、ローカル信号LOL5に対応するIF信号AIFL5は、マスタ側のADC352によりAD変換される。
【0184】
また、自動利得制御回路325は、マスタ側デジタル信号処理部400からの制御信号CTRLAGCに従って、IF信号に対する利得を制御する。
【0185】
図26は、本技術の第5の実施の形態におけるマスタ側デジタル信号処理部400の一構成例を示すブロック図である。この第5の実施の形態のマスタ側デジタル信号処理部400は、セレクタ451をさらに備える点において第1の実施の形態と異なる。
【0186】
また、第5の実施の形態のL5デジタルフロントエンド430は、ベースバンド信号に基づいて、自動利得制御回路325を制御するためのマスタ側制御信号CTRLAGCmを生成する。具体的には、L5デジタルフロントエンド430は、IF信号AIFL5の平均振幅または平均電力を演算する。そして、L5デジタルフロントエンド430は、演算値が一定値を超えると、ゲインを所定値だけ下げるためのマスタ側制御信号CTRLAGCmを生成する。一方、演算値が一定値を下回ると、L5デジタルフロントエンド430は、ゲインを所定値だけ上げるためのマスタ側制御信号CTRLAGCmを生成してセレクタ451に出力する。
【0187】
セレクタ451は、2つの入力端子と1つの出力端子とを備える。2つの入力端子の一方には、マスタ側制御信号CTRLAGCmが入力され、他方には、シリアルインターフェース234からのスレーブ側制御信号CTRLAGCsが入力される。また、出力端子からは、制御信号CTRLAGCがマスタ側RF回路300へ出力される。セレクタ451は、マスタ側インターフェース制御部231の制御に従って、入力先を切り替える。
【0188】
図27は、本技術の第5の実施の形態におけるスレーブ側デジタル信号処理部600の一構成例を示すブロック図である。この第5の実施の形態のスレーブ側デジタル信号処理部600は、L2/L6デジタルフロントエンド680と、所定数のL2/L6衛星処理ユニット690とを備える。
【0189】
L2/L6デジタルフロントエンド680は、ADC552からのIF信号DIFL2またはDIFL6をベースバンド信号に変換してL2/L6衛星処理ユニットのそれぞれに供給するものである。また、L2/L6デジタルフロントエンド680は、マスタ側と同様の方法によりスレーブ側制御信号CTRLAGCsを生成し、シリアルインターフェース243を介してマスタへ出力する。
【0190】
L2/L6衛星処理ユニット690は、衛星捕捉部691および衛星追尾部692を備える。このL2/L6衛星処理ユニット690は、L2信号およびL6信号の一方を復号し、シリアルインターフェース243を介して、衛星観測値をマスタ側のGNSSチップ230に供給する。
【0191】
図24乃至図27に例示した構成により、受信装置200は、L1信号およびL2信号と、L1信号およびL5信号と、L1信号およびL6信号とのいずれかの組み合わせを受信し、それらを用いて測位することができる。これにより、L1帯およびL5帯に対応しつつ、追加したL2帯やL6帯を用いる規格にも柔軟に対応することができる。また、受信装置200は、新しい周波数帯(L2帯やL6帯等)のIF信号のダイナミックレンジを最適化することができる。なお、マスタ側RF回路300のローカル位相同期回路326で生成できる周波数帯を、L5帯を含む任意の周波数としつつ、スレーブ側のデジタル信号処理部600を今後、将来的に導入される新たなGNSS規格に対応するものとすれば、任意の周波数帯における新規格にも柔軟に対応することもできる。
【0192】
L1信号およびL2信号を受信する場合、セレクタ451は、スレーブ側制御信号CTRLAGCsを選択して、自動利得制御回路325に供給する。マスタ側RF回路300は、ローカル信号LOL1およびLOL2を生成し、デジタルのIF信号DIFL1とアナログのIF信号AIFL2とを生成する。マスタ側電源制御部232は、マスタ側デジタル信号処理部400内のL5デジタルフロントエンド430およびL5衛星処理ユニット440の電源を遮断し、それら以外の電源を投入する。スレーブ側電源制御部242は、スレーブ側デジタル信号処理部600の電源を投入する。
【0193】
また、L1信号およびL5信号を受信する場合、セレクタ451は、マスタ側制御信号CTRLAGCmを選択して、自動利得制御回路325に供給する。マスタ側RF回路300は、ローカル信号LOL1およびLOL5を生成し、デジタルのIF信号DIFL1およびDIFL5を生成する。マスタ側電源制御部232は、マスタ側デジタル信号処理部400の電源を投入する。スレーブ側電源制御部242は、スレーブ側デジタル信号処理部600の電源を遮断する。
【0194】
また、L1信号およびL6信号を受信する場合、セレクタ451は、スレーブ側制御信号CTRLAGCsを選択して、自動利得制御回路325に供給する。マスタ側RF回路300は、ローカル信号LOL1およびLOL6を生成し、デジタルのIF信号DIFL1とアナログのIF信号AIFL6とを生成する。マスタ側電源制御部232は、マスタ側デジタル信号処理部400内のL5デジタルフロントエンド430およびL5衛星処理ユニット440の電源を遮断し、それら以外の電源を投入する。スレーブ側電源制御部242は、スレーブ側デジタル信号処理部600の電源を投入する。
【0195】
例えば、初期状態においては、受信装置200は、L1信号およびL5信号を受信し、所定条件が満たされた場合に、L1信号およびL2信号、または、L1信号およびL6信号の組み合わせに切り替える。所定条件としては、例えば、観測可能な衛星数が所定値以下である場合や、測位精度が目標値未満である場合などが想定される。
【0196】
なお、マスタ側電源制御部232やスレーブ側電源制御部242の代わりにクロック制御部を設け、マスタ側やスレーブ側の回路について、電源の遮断ではなく、それらのクロックを停止することもできる。
【0197】
また、受信装置200は、L1信号およびL2信号などの2つの周波数帯域の信号を復号しているが、それらの一方(L1信号など)のみを復号することもできる。この場合には、復号しない方に対応するデジタルフロントエンドおよび衛星処理ユニットの電源が遮断される。
【0198】
このように、本技術の第5の実施の形態によれば、マスタがL1およびL5信号を復号し、スレーブがL2信号またはL6信号を復号するため、L1帯およびL5帯に対応しつつ、L2帯やL6帯にも柔軟に対応することができる。
【0199】
<6.第6の実施の形態>
上述の第5の実施の形態では、受信装置200は、L1帯およびL2帯などの2つの周波数帯域を用いて測位していたが、この構成では、性能が不足することがある。この第6の実施の形態の受信装置200は、3つの周波数帯域を用いる点において第5の実施の形態と異なる。
【0200】
図28は、本技術の第6の実施の形態におけるマスタ側RF回路300の一構成例を示すブロック図である。この第6の実施の形態のマスタ側RF回路300は、ローノイズアンプ371、ローカル位相同期回路372、混合器373、ローパスフィルタ374、自動利得制御回路375およびADC353をさらに備える。また、第6の実施の形態のマスタ側RF回路300は、ローカル位相同期回路326の代わりに、ローカル信号LOL5を生成するローカル位相同期回路322を備える。
【0201】
ローノイズアンプ371は、RF信号RFINを増幅するものである。このローノイズアンプ371は、増幅したRF信号RFINを混合器373に供給する。
【0202】
ローカル位相同期回路372は、マスタ側デジタル信号処理部400の制御に従って、ローカル信号LOL2およびLOL6のいずれかをクロック信号CLKTCXOから生成するものである。このローカル位相同期回路372は、生成したローカル信号を混合器373に供給する。
【0203】
混合器373は、ローノイズアンプ371からのRF信号RFINとローカル信号(LOL2またはLOL6)を混合して、RF信号より周波数の低いアナログのIF信号AIFL2またはAIFL6を生成するものである。この混合器373は、そのIF信号をローパスフィルタ374に供給する。
【0204】
ローパスフィルタ374は、IF信号において所定の遮断周波数以下の周波数成分を通過させて、自動利得制御回路375に供給するものである。
【0205】
自動利得制御回路375は、入力されたIF信号(AIFL2またはAIFL6)のレベルに応じて、その信号に対する利得を制御するものである。この自動利得制御回路315は、一定のレベルのIF信号をGNSSチップ240およびADC353に出力する。IF信号AIFL2は、マスタ側で用いられ、IF信号AIFL6は、スレーブ側で用いられる。
【0206】
また、自動利得制御回路375は、マスタ側デジタル信号処理部400からの制御信号CTRLAGCsに従って、IF信号に対する利得を制御する。
【0207】
ADC353は、IF信号をAD変換してマスタ側デジタル信号処理部400に出力するものである。
【0208】
図29は、本技術の第6の実施の形態におけるマスタ側デジタル信号処理部400の一構成例を示すブロック図である。この第6の実施の形態のマスタ側デジタル信号処理部400は、L2デジタルフロントエンド460と、所定数のL2衛星処理ユニット470とをさらに備える点において第5の実施の形態と異なる。
【0209】
L2デジタルフロントエンド460は、IF信号DIFL2を、L2帯に対応するベースバンド信号に変換するものである。L2デジタルフロントエンド460は、ベースバンド信号をL2衛星処理ユニット470のそれぞれに供給する。また、L2デジタルフロントエンド460は、ベースバンド信号に基づいてマスタ側制御信号CTRLAGCmを生成し、セレクタ451に供給する。
【0210】
L2衛星処理ユニット470は、L2帯に対応するベースバンド信号に基づいて、割り当てられた衛星を捕捉および追尾し、その衛星からのL2信号を復号するものである。このL2衛星処理ユニット470は、復号に得られた衛星観測値(航法データなど)を測位エンジン450に出力する。
【0211】
第6の実施の形態の測位エンジン450は、L1衛星処理ユニット420、L5衛星処理ユニット440およびL2衛星処理ユニット470からの衛星観測値と、スレーブからのL6信号の衛星観測値とに基づいて位置情報等を生成する。
【0212】
図30は、本技術の第6の実施の形態におけるスレーブ側デジタル信号処理部600の一構成例を示すブロック図である。この第6の実施の形態のスレーブ側デジタル信号処理部600は、L6デジタルフロントエンド681と、所定数のL6衛星処理ユニット695とを備える。
【0213】
L6デジタルフロントエンド681は、ADC552からのIF信号DIFL6をベースバンド信号に変換してL6衛星処理ユニット695のそれぞれに供給するものである。また、L6デジタルフロントエンド681は、マスタ側と同様の方法によりスレーブ側制御信号CTRLAGCsを生成し、シリアルインターフェース243を介してマスタへ出力する。
【0214】
L6衛星処理ユニット695は、衛星捕捉部691および衛星追尾部692を備える。このL6衛星処理ユニット695は、L2信号を復号し、シリアルインターフェース243を介して、衛星観測値をマスタ側のGNSSチップ230に供給する。
【0215】
なお、スレーブ側デジタル信号処理部600は、L6信号を復号しているが、この構成に限定されず、L1、L2、L5およびL6信号以外の信号を復号することもできる。
【0216】
図28乃至図30に例示した構成により、受信装置200は、L1信号、L5信号およびL2信号と、L1信号、L5信号およびL6信号とのいずれかの組み合わせを受信し、それらを用いて測位することができる。
【0217】
L1信号、L5信号およびL2信号を受信する場合、セレクタ451は、マスタ側制御信号CTRLAGCmを選択して、自動利得制御回路375に供給する。マスタ側電源制御部232は、マスタ側デジタル信号処理部400内の全回路の電源を投入する。スレーブ側電源制御部242は、スレーブ側デジタル信号処理部600の電源を遮断する。
【0218】
L1信号、L5信号およびL6信号を受信する場合、セレクタ451は、スレーブ側制御信号CTRLAGCsを選択して、自動利得制御回路375に供給する。マスタ側電源制御部232は、マスタ側デジタル信号処理部400内のL2デジタルフロントエンド460およびL2衛星処理ユニット470の電源を遮断し、それら以外の電源を投入する。スレーブ側電源制御部242は、スレーブ側デジタル信号処理部600の電源を投入する。
【0219】
L1信号、L5信号およびL2信号の組み合わせから、L1信号、L5信号およびL6信号の組み合わせへの切り替えは、衛星数や測位精度などに関する所定条件が満たされた場合に実行される。
【0220】
なお、受信装置200は、L1信号、L5信号およびL2信号などの3つの周波数帯域の信号を復号しているが、それらのうち2つ(L1信号およびL5信号など)や、それらのうち1つ(L1信号など)のみを復号することもできる。この場合には、復号しない信号に対応するデジタルフロントエンドおよび衛星処理ユニットの電源が遮断される。
【0221】
また、受信装置200は、3つの周波数帯域の信号を用いているが、4つ以上の周波数帯域の信号を用いることもできる。この場合には、マスタまたはスレーブに対応する回路(デジタルフロントエンドや衛星処理ユニット)を追加すればよい。
【0222】
上述したように、受信装置200が3つの周波数帯域の信号を用いて測位することにより、2つの周波数帯域のみを用いる場合と比較して、測位精度などの性能を向上させることができる。
【0223】
このように、本技術の第6の実施の形態によれば、受信装置200が3つの周波数帯域の信号(L1信号、L5信号およびL2信号など)を用いて測位するため、2つの周波数帯域のみを用いる場合と比較して性能を向上させることができる。
【0224】
<7.第7の実施の形態>
上述の第1の実施の形態では、受信装置200においてGNSSチップ230内に測位エンジンを配置していたが、この構成では、GNSSチップ230の回路規模の削減が困難である。この第7の実施の形態の受信装置200は、GNSSチップ230の外部に測位エンジンを配置した点において第1の実施の形態と異なる。
【0225】
図31は、本技術の第7の実施の形態における受信装置200の一構成例を示すブロック図である。この第7の実施の形態の受信装置200は、ホストCPU270をさらに備える点において第1の実施の形態と異なる。
【0226】
ホストCPU270は、測位エンジンと同様の機能を有する。このホストCPU270は、クロック信号CLKDSPおよびマスタ側の衛星観測値をGNSSチップ230から受け取り、スレーブ側の衛星観測値をGNSSチップ240から受け取る。
【0227】
また、ホストCPU270は、衛星処理ユニットを制御するための衛星制御信号と同期制御信号とを生成してGNSSチップ230および240に供給する。なお、ホストCPU270は、特許請求の範囲に記載の測位部の一例である。
【0228】
図32は、本技術の第7の実施の形態におけるマスタ側デジタル信号処理部400の一構成例を示すブロック図である。この第7の実施の形態のマスタ側デジタル信号処理部400は、測位エンジン450が配置されない点において第1の実施の形態と異なる。また、第7の実施の形態のL1衛星処理ユニット420およびL5衛星処理ユニット440は、衛星観測値をホストCPU270に出力する。
【0229】
図31および図32に例示したように、GNSSチップ230の外部に測位エンジンを配置することにより、ユーザーまたは顧客主体で、アプリケーション毎にコスト、性能や電力のバランスを最適化することができる。
【0230】
また、GNSSチップ230の回路規模を削減することができる。さらに、GNSSチップ230および240のそれぞれの回路を同一にして、それらのチップの製造を容易にすることができる。
【0231】
なお、第7の実施の形態に、第1の実施の形態の変形例や、第2乃至第6の実施の形態のそれぞれを適用することができる。
【0232】
このように、本技術の第7の実施の形態では、GNSSチップ230の外部に測位を行うホストCPU270を配置したため、GNSSチップ230内に測位エンジンを配置する必要がなくなる。これにより、GNSSチップ230の回路規模を削減することができる。
【0233】
<8.応用例>
本開示に係る技術は、いわゆる「物のインターネット」であるIoT(Internet of things)と呼ばれる技術へ応用可能である。IoTとは、「物」であるIoTデバイス9100が、他のIoTデバイス9003、インターネット、クラウド9005などに接続され、情報交換することにより相互に制御する仕組みである。IoTは、農業、家、自動車、製造、流通、エネルギー、など様々な産業に利用できる。
【0234】
図33は、本開示に係る技術が適用され得るIoTシステム9000の概略的な構成の一例を示す図である。
【0235】
IoTデバイス9001には、温度センサー、湿度センサー、照度センサー、加速度センサー、距離センサー、画像センサー、ガスセンサー、人感センサーなどの各種センサーなどが含まれる。また、IoTデバイス9001には、スマートフォン、携帯電話、ウェアラブル端末、ゲーム機器などの端末を含めてもよい。IoTデバイス9001は、AC電源、DC電源、電池、非接触給電、いわゆるエナジーハーベストなどにより給電される。IoTデバイス9001は、有線、無線、近接無線通信などにより通信することができる。通信方式は3G/LTE、WiFi、IEEE802.15.4、Bluetooth、Zigbee(登録商標)、Z-Waveなどが好適に用いられる。IoTデバイス9001は、これらの通信手段の複数を切り替えて通信してもよい。
【0236】
IoTデバイス9001は、1対1、星状、ツリー状、メッシュ状のネットワークを形成してもよい。IoTデバイス9001は、直接に、またはゲートウエイ9002を通して、外部のクラウド9005に接続してもよい。IoTデバイス9001には、IPv4、IPv6、6LoWPANなどによって、アドレスが付与される。IoTデバイス9001から収集されたデータは、他のIoTデバイス9003、サーバ9004、クラウド9005などに送信される。IoTデバイス9001からデータを送信するタイミングや頻度は好適に調整され、データを圧縮して送信してもよい。このようなデータはそのまま利用してもよく、統計解析、機械学習、データマイニング、クラスタ分析、判別分析、組み合わせ分析、時系列分析など様々な手段でデータをコンピュータ9008で分析してもよい。このようなデータを利用することにより、コントロール、警告、監視、可視化、自動化、最適化、など様々なサービスを提供することができる。
【0237】
本開示に係る技術は、家に関するデバイス、サービスにも応用可能である。家におけるIoTデバイス9001には、洗濯機、乾燥機、ドライヤ、電子レンジ、食洗機、冷蔵庫、オーブン、炊飯器、調理器具、ガス器具、火災報知器、サーモスタット、エアコン、テレビ、レコーダ、オーディオ、照明機器、温水器、給湯器、掃除機、扇風機、空気清浄器、セキュリティカメラ、錠、扉・シャッター開閉装置、スプリンクラー、トイレ、温度計、体重計、血圧計などが含まれる。さらにIoTデバイス9001には、太陽電池、燃料電池、蓄電池、ガスメータ、電力メータ、分電盤を含んでもよい。
【0238】
家におけるIoTデバイス9001の通信方式は、低消費電力タイプの通信方式が望ましい。また、IoTデバイス9001は屋内ではWiFi、屋外では3G/LTEにより通信するようにしてもよい。クラウド9005上にIoTデバイス制御用の外部サーバ9006を設置し、IoTデバイス9001を制御してもよい。IoTデバイス9001は、家庭機器の状況、温度、湿度、電力使用量、家屋内外の人・動物の存否などのデータを送信する。家庭機器から送信されたデータは、クラウド9005を通じて、外部サーバ9006に蓄積される。このようなデータに基づき、新たなサービスが提供される。このようなIoTデバイス9001は、音声認識技術を利用することにより、音声によりコントロールすることができる。
【0239】
また各種家庭機器からテレビに情報を直接送付することにより、各種家庭機器の状態を可視化することができる。さらには、各種センサーが居住者の有無を判断し、データを空調機、照明などに送付することで、それらの電源をオン・オフすることができる。さらには、各種家庭機器に供えられたディスプレイにインターネットを通じて広告を表示することができる。
【0240】
以上、本開示に係る技術が適用され得るIoTシステム9000の一例について説明した。本開示に係る技術は、以上説明した構成のうち、IoTデバイス9001に好適に適用され得る。具体的には、図3の受信装置200をIoTデバイス9001に適用することができる。IoTデバイス9001に本開示に係る技術を適用することにより、IoTデバイスの消費電力を抑制しつつ、その性能を向上させ、システムの有用性や利便性を向上させることができる。
【0241】
なお、上述の実施の形態は本技術を具現化するための一例を示したものであり、実施の形態における事項と、特許請求の範囲における発明特定事項とはそれぞれ対応関係を有する。同様に、特許請求の範囲における発明特定事項と、これと同一名称を付した本技術の実施の形態における事項とはそれぞれ対応関係を有する。ただし、本技術は実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において実施の形態に種々の変形を施すことにより具現化することができる。
【0242】
また、上述の実施の形態において説明した処理手順は、これら一連の手順を有する方法として捉えてもよく、また、これら一連の手順をコンピュータに実行させるためのプログラム乃至そのプログラムを記憶する記録媒体として捉えてもよい。この記録媒体として、例えば、CD(Compact Disc)、MD(MiniDisc)、DVD(Digital Versatile Disc)、メモリカード、ブルーレイディスク(Blu-ray(登録商標)Disc)等を用いることができる。
【0243】
なお、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって、限定されるものではなく、また、他の効果があってもよい。
【0244】
なお、本技術は以下のような構成もとることができる。
(1)所定の中間周波数信号より周波数の高い高周波数信号を前記中間周波数信号に変換して出力するマスタ側受信回路と、
前記中間周波数信号に基づいて所定の衛星からの信号を復号してマスタ側観測値として出力するマスタ側衛星処理ユニットと、
前記中間周波数信号に基づいて所定の衛星からの信号を復号してスレーブ側観測値として出力するスレーブ側衛星処理ユニットと、
所定条件が満たされた場合には前記マスタ側衛星処理ユニットの電源を遮断するマスタ側電源制御部と、
前記マスタ側観測値および前記スレーブ側観測値の少なくとも一方に基づいて位置情報を生成する測位部と
を具備する受信装置。
(2)前記高周波数信号を前記中間周波数信号に変換して前記スレーブ側衛星処理ユニットに出力するスレーブ側受信回路と、
前記所定条件が満たされた場合には前記スレーブ側受信回路に電源を投入するスレーブ側電源制御部と
をさらに具備し、
前記マスタ側電源制御部は、前記所定条件が満たされた場合には前記マスタ側受信回路の電源を制御して前記中間周波数信号の出力を停止させ、
前記マスタ側受信回路は、前記スレーブ側受信回路を介して前記中間周波数信号を前記スレーブ側衛星処理ユニットに出力する
前記(1)記載の受信装置。
(3)前記マスタ側受信回路は、デジタルの前記中間周波数信号を前記マスタ側衛星処理ユニットおよび前記スレーブ側衛星処理ユニットに出力する
前記(2)記載の受信装置。
(4)前記マスタ側受信回路は、アナログの前記中間周波数信号を前記スレーブ側受信回路に出力する
前記(2)記載の受信装置。
(5)前記マスタ側受信回路は、所定のクロック信号を前記スレーブ側受信回路にさらに送信し、
前記マスタ側受信回路および前記スレーブ側受信回路は、前記クロック信号に同期して前記中間周波数信号に対するAD(Analog to Digital)変換処理をさらに行う
前記(2)から(4)のいずれかに記載の受信装置。
(6)前記スレーブ側受信回路は、前記中間周波数信号を前記マスタ側受信回路にさらに出力する
前記(2)から(5)のいずれかに記載の受信装置。
(7)前記マスタ側衛星処理ユニットおよび前記スレーブ側衛星処理ユニットは、前記高周波数信号を搬送波として伝送されたL1信号およびL5信号の少なくとも一方を復号する
前記(2)から(6)のいずれかに記載の受信装置。
(8)前記マスタ側衛星処理ユニットは、前記高周波数信号を搬送波として伝送されたL1信号およびL5信号の少なくとも一方を復号し、
前記スレーブ側衛星処理ユニットは、前記高周波数信号を搬送波として伝送されたL1信号、L5信号およびL2信号のうち少なくとも1つの復号を行う
前記(2)から(6)のいずれかに記載の受信装置。
(9)前記マスタ側衛星処理ユニットは、所定の周波数帯域に対応するマスタ側ベースバンド信号を復号し、
前記スレーブ側衛星処理ユニットは、前記周波数帯域と異なる周波数帯域に対応するスレーブ側ベースバンド信号を復号する
前記(1)記載の受信装置。
(10)前記中間周波数信号を前記マスタ側ベースバンド信号に変換するとともに前記中間周波数信号に基づいてマスタ側制御信号を生成するマスタ側デジタルフロントエンドと、
前記中間周波数信号を前記スレーブ側ベースバンド信号に変換するとともに前記中間周波数信号に基づいてスレーブ側制御信号を生成するスレーブ側デジタルフロントエンドと、
前記マスタ側制御信号と前記スレーブ側制御信号とのいずれかを選択して制御信号として出力するセレクタと
をさらに具備し、
前記マスタ側受信回路は、
前記高周波数信号を前記中間周波数信号に変換する混合器と、
前記制御信号に従って前記中間周波数信号に対する利得を制御する自動利得制御器と
を備える
前記(9)記載の受信装置。
(11)前記マスタ側衛星処理ユニットは、前記高周波数信号を搬送波として伝送されたL1信号およびL5信号の少なくとも一方を復号し、
前記スレーブ側衛星処理ユニットは、前記高周波数信号を搬送波として伝送されたL2信号およびL6信号のいずれかを復号する
前記(9)または(10)記載の受信装置。
(12)前記マスタ側衛星処理ユニットは、前記高周波数信号を搬送波として伝送されたL1信号、L2信号およびL5信号の少なくとも一方を復号し、
前記スレーブ側衛星処理ユニットは、前記高周波数信号を搬送波として伝送されたL6信号を復号する
前記(9)または(10)記載の受信装置。
(13)前記マスタ側受信回路、前記マスタ側衛星処理ユニットおよび前記マスタ側電源制御部は、所定のマスタ側チップに設けられ、
前記スレーブ側衛星処理ユニット部は、所定のスレーブ側チップに設けられる
前記(1)から(12)のいずれかに記載の受信装置。
(14)前記測位部は、前記マスタ側チップに設けられる
前記(13)記載の受信装置。
(15)前記測位部は、前記マスタ側チップおよび前記スレーブ側チップの外部に設けられる
前記(13)記載の受信装置。
(16)所定の中間周波数信号より周波数の高い高周波数信号を前記中間周波数信号に変換して前記マスタ側衛星処理ユニットおよび前記スレーブ側衛星処理ユニットに出力するマスタ側受信手順と、
マスタ側衛星処理ユニットが、前記中間周波数信号に基づいて所定の衛星からの信号を復号してマスタ側観測値として出力するマスタ側衛星処理手順と、
スレーブ側衛星処理ユニットが、前記中間周波数信号に基づいて所定の衛星からの信号を復号してスレーブ側観測値として出力するスレーブ側デジタル信号処理手順と、
所定条件が満たされた場合には前記マスタ側衛星処理ユニットの電源を遮断するマスタ側電源制御手順と、
前記マスタ側観測値および前記スレーブ側観測値の少なくとも一方に基づいて位置情報を生成する測位手順と
を具備する受信装置の制御方法。
【符号の説明】
【0245】
100 衛星
200 受信装置
201、202 アンテナ
210、211 弾性表面波フィルタ
220 水晶発振器
230、240 GNSSチップ
231 マスタ側インターフェース制御部
232 マスタ側電源制御部
233、234、243、244 シリアルインターフェース
235、245、251、252、261、262、341、342、360、451、541、542、560 セレクタ
241 スレーブ側インターフェース制御部
242 スレーブ側電源制御部
250、260、340、540 切替部
270 ホストCPU
300 マスタ側RF回路
311、321、371、511、521 ローノイズアンプ
312、322、326、372、512、522、526 ローカル位相同期回路
313、323、373、513、523 混合器
314、324、374、514、524 ローパスフィルタ
315、325、375、515、525 自動利得制御回路
330、530 位相同期回路
351~353、551、552 ADC
400 マスタ側デジタル信号処理部
410、610 L1デジタルフロントエンド
420、620 L1衛星処理ユニット
421、441、621、641、691 衛星捕捉部
422、442、622、642、692 衛星追尾部
430、630 L5デジタルフロントエンド
440、640 L5衛星処理ユニット
450、650 測位エンジン
460、660 L2デジタルフロントエンド
470、670 L2衛星処理ユニット
500 スレーブ側RF回路
600 スレーブ側デジタル信号処理部
680 L2/L6デジタルフロントエンド
681 L6デジタルフロントエンド
690 L2/L6衛星処理ユニット
695 L6衛星処理ユニット
9001 IoTデバイス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33