(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】アートワークの管理方法、コンピュータ、及び、プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/0601 20230101AFI20241003BHJP
H04L 9/32 20060101ALI20241003BHJP
G06Q 30/018 20230101ALI20241003BHJP
【FI】
G06Q30/0601
H04L9/32 100D
G06Q30/018
(21)【出願番号】P 2022524395
(86)(22)【出願日】2021-05-11
(86)【国際出願番号】 JP2021017839
(87)【国際公開番号】W WO2021235268
(87)【国際公開日】2021-11-25
【審査請求日】2024-04-16
(31)【優先権主張番号】P 2020088630
(32)【優先日】2020-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000139403
【氏名又は名称】株式会社ワコム
(74)【代理人】
【識別番号】110004277
【氏名又は名称】弁理士法人そらおと
(74)【代理人】
【識別番号】100130982
【氏名又は名称】黒瀬 泰之
(72)【発明者】
【氏名】ラチェザール サコフ ドドフ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ルートヴィヒ
【審査官】樋口 龍弥
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第19/004118(WO,A1)
【文献】特開2020-052670(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0122258(US,A1)
【文献】無断転載を見つけ出し代わりに使用料を請求してくれる! ノーリスク・ハイリターン!? COPYTRAC,ラジオライフ,日本,KK三才ブックス,2019年03月25日,第40巻 第8号,p.82-85
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
H04L 9/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上のコンピュータによって実行されるアートワークの管理方法であって、
前記1以上のコンピュータに含まれる第1のコンピュータが、WEBサイトに含まれるアートワークを検出する検出ステップと、
前記第1のコンピュータが、前記検出ステップにおいて検出した前記アートワークの購入を示す購入トランザクションがブロックチェーンネットワークに記録されているか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにより記録されていないと判定された場合に、前記第1のコンピュータが、前記アートワークの不正使用を発見したことを示す報告を送信する送信ステップと、
を含むアートワークの管理方法。
【請求項2】
前記アートワークは所定形式の識別情報を含み、
前記検出ステップは、前記WEBサイトに含まれるアートワークのうち前記所定形式の識別情報を含むアートワークを検出する、
請求項1に記載のアートワークの管理方法。
【請求項3】
前記購入トランザクションは前記所定形式の識別情報を含み、
前記判定ステップは、前記検出ステップにおいて検出された前記アートワークに含まれる前記所定形式の識別情報を含む購入トランザクションが前記ブロックチェーンネットワーク内に記録されているか否かを判定する、
請求項2に記載のアートワークの管理方法。
【請求項4】
前記送信ステップは、前記アートワークに埋め込まれた前記所定形式の識別情報を含む報告トランザクションが前記ブロックチェーンネットワーク内に記録されていない場合に、前記報告を前記ブロックチェーンネットワークに対して送信する、
請求項2又は3のいずれか一項に記載のアートワークの管理方法。
【請求項5】
前記第1のコンピュータが、前記報告を送信した後、前記1以上のコンピュータに含まれる第2のコンピュータから送信される前記報告の対価である報酬を受信する受信ステップ、
をさらに含む請求項4に記載のアートワークの管理方法。
【請求項6】
前記1以上のコンピュータに含まれる第2のコンピュータが、複数のアートワークのそれぞれを構成する1以上のストロークデータに含まれる1以上の値を学習させることで生成される機械学習モデルに対し、前記アートワークを構成する1以上のストロークデータに含まれる前記1以上の値を入力することにより、アーティストによるアートワーク製作の特徴を示す第1のアーティスト特徴量を取得する取得ステップと、
前記第2のコンピュータが、アートワークの真贋判定依頼を受信した場合に、真贋判定対象のアートワークを構成する1以上のストロークデータに含まれる前記1以上の値を前記機械学習モデルに入力することにより得られる第2のアーティスト特徴量と、前記第1のアーティスト特徴量とを比較することにより、前記真贋判定対象のアートワークの真贋を判定する判定ステップと、
をさらに含む請求項1に記載のアートワークの管理方法。
【請求項7】
前記1以上の値は、運筆スピードの平均値及び分散、筆圧値の平均値及び分散、ペン角度データの平均値及び分散、タッチ状態とホバー状態の時間的な配分のうちの少なくとも1つを含む、
請求項6に記載のアートワークの管理方法。
【請求項8】
前記1以上のコンピュータに含まれる第2のコンピュータが、アートワークを構成する1以上のストロークデータから、該アートワークの特徴を示す複数の値からなる第1のアートワーク特徴量を取得する取得ステップと、
前記第2のコンピュータが、アートワークの真贋判定依頼を受信した場合に、真贋判定対象のアートワークを構成する1以上のストロークデータに含まれる前記真贋判定対象のアートワークの特徴を示す複数の値からなる第2のアートワーク特徴量と、前記第1のアートワーク特徴量とを比較することにより、前記真贋判定対象のアートワークの真贋を判定する判定ステップと、
をさらに含む請求項1に記載のアートワークの管理方法。
【請求項9】
前記第2のコンピュータが、前記第1のアートワーク特徴量を示すウォーターマークを前記アートワークに埋め込む埋込ステップ、
をさらに含む請求項8に記載のアートワークの管理方法。
【請求項10】
前記複数の値は、ペンタッチが実行されたときのペンの位置をそれぞれ示す一連のペンタッチ座標と、ペンアップが実行されたときのペンの位置をそれぞれ示す一連のペンアップ座標とを含む、
請求項8又は9に記載のアートワークの管理方法。
【請求項11】
WEBサイトに含まれるアートワークを検出する検出部と、
前記検出部により検出された前記アートワークの購入を示す購入トランザクションがブロックチェーンネットワークに記録されているか否かを判定する判定部と、
前記判定部により記録されていないと判定された場合に、前記アートワークの不正使用を発見したことを示す報告を送信する送信部と、
を含むコンピュータ。
【請求項12】
前記アートワークは所定形式の識別情報を含み、
前記検出部は、前記WEBサイトに含まれるアートワークのうち前記所定形式の識別情報を含むアートワークを検出する、
請求項11に記載のコンピュータ。
【請求項13】
前記購入トランザクションは前記所定形式の識別情報を含み、
前記判定部は、前記検出部により検出された前記アートワークに含まれる前記所定形式の識別情報を含む購入トランザクションが前記ブロックチェーンネットワークに記録されているか否かを判定する、
請求項12に記載のコンピュータ。
【請求項14】
前記送信部は、前記アートワークに埋め込まれた前記所定形式の識別情報を含む報告トランザクションが前記ブロックチェーンネットワークに記録されていない場合に、前記報告を前記ブロックチェーンネットワークに対して送信する、
請求項12又は13に記載のコンピュータ。
【請求項15】
前記報告を送信した後、他のコンピュータから送信される前記報告の対価である報酬を受信する受信部を有する、
請求項11に記載のコンピュータ。
【請求項16】
複数のアートワークのそれぞれを構成する1以上のストロークデータに含まれる1以上の値を学習させることで生成される機械学習モデルに対し、前記アートワークを構成する1以上のストロークデータに含まれる前記1以上の値を入力することにより、アーティストによるアートワーク製作の特徴を示す第1のアーティスト特徴量を取得する取得部と、
アートワークの真贋判定依頼を受信した場合に、真贋判定対象のアートワークを構成する1以上のストロークデータに含まれる前記1以上の値を前記機械学習モデルに入力することにより得られる第2のアーティスト特徴量と、前記第1のアーティスト特徴量とを比較することにより、前記真贋判定対象のアートワークの真贋を判定する判定部と、
を含むコンピュータ。
【請求項17】
前記1以上の値は、運筆スピードの平均値及び分散、筆圧値の平均値及び分散、ペン角度データの平均値及び分散、タッチ状態とホバー状態の時間的な配分のうちの少なくとも1つを含む、
請求項16に記載のコンピュータ。
【請求項18】
アートワークを構成する1以上のストロークデータから、該アートワークの特徴を示す複数の値からなる第1のアートワーク特徴量を取得する取得部と、
アートワークの真贋判定依頼を受信した場合に、真贋判定対象のアートワークを構成する1以上のストロークデータに含まれる前記真贋判定対象のアートワークの特徴を示す複数の値からなる第2のアートワーク特徴量と、前記第1のアートワーク特徴量とを比較することにより、前記真贋判定対象のアートワークの真贋を判定する判定部と、
を含むコンピュータ。
【請求項19】
前記第1のアートワーク特徴量を示すウォーターマークを前記アートワークに埋め込むウォーターマーク埋め込み処理部、
をさらに含む請求項18に記載のコンピュータ。
【請求項20】
前記複数の値は、ペンタッチが実行されたときのペンの位置をそれぞれ示す一連のペンタッチ座標と、ペンアップが実行されたときのペンの位置をそれぞれ示す一連のペンアップ座標とを含む、
請求項18又は19に記載のコンピュータ。
【請求項21】
コンピュータに、
WEBサイトに含まれるアートワークを検出する検出ステップと、
前記検出ステップにおいて検出した前記アートワークの購入を示す購入トランザクションがブロックチェーンネットワークに記録されているか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにより記録されていないと判定された場合に、前記アートワークの不正使用を発見したことを示す報告を送信する送信ステップと、
を実行させるためのプログラム。
【請求項22】
前記アートワークは所定形式の識別情報を含み、
前記検出ステップは、前記WEBサイトに含まれるアートワークのうち前記所定形式の識別情報を含むアートワークを検出する、
請求項21に記載のプログラム。
【請求項23】
前記購入トランザクションは前記所定形式の識別情報を含み、
前記判定ステップは、前記検出ステップにおいて検出された前記アートワークに含まれる前記所定形式の識別情報を含む購入トランザクションが前記ブロックチェーンネットワーク内に記録されているか否かを判定する、
請求項22に記載のプログラム。
【請求項24】
前記送信ステップは、前記アートワークに埋め込まれた前記所定形式の識別情報を含む報告トランザクションが前記ブロックチェーンネットワーク内に記録されていない場合に、前記報告を前記ブロックチェーンネットワークに対して送信する、
請求項22又は23のいずれか一項に記載のプログラム。
【請求項25】
前記コンピュータに、前記報告を送信した後、他のコンピュータから送信される前記報告の対価である報酬を受信する受信ステップ、
をさらに実行させるための請求項24に記載のプログラム。
【請求項26】
コンピュータに、
複数のアートワークのそれぞれを構成する1以上のストロークデータに含まれる1以上の値を学習させることで生成される機械学習モデルに対し、前記アートワークを構成する1以上のストロークデータに含まれる前記1以上の値を新たに入力することにより、アーティストによるアートワーク製作の特徴を示す第1のアーティスト特徴量を取得する取得ステップと、
アートワークの真贋判定依頼を受信した場合に、真贋判定対象のアートワークを構成する1以上のストロークデータに含まれる前記1以上の値を前記機械学習モデルに対して新たに入力することにより得られる第2のアーティスト特徴量と、前記第1のアーティスト特徴量とを比較することにより、前記真贋判定対象のアートワークの真贋を判定する判定ステップと、
を実行させるためのプログラム。
【請求項27】
前記1以上の値は、運筆スピードの平均値及び分散、筆圧値の平均値及び分散、ペン角度データの平均値及び分散、タッチ状態とホバー状態の時間的な配分のうちの少なくとも1つを含む、
請求項26に記載のプログラム。
【請求項28】
前記コンピュータに、
アートワークを構成する1以上のストロークデータから、該アートワークの特徴を示す複数の値からなる第1のアートワーク特徴量を取得する取得ステップと、
アートワークの真贋判定依頼を受信した場合に、真贋判定対象のアートワークを構成する1以上のストロークデータに含まれる前記真贋判定対象のアートワークの特徴を示す複数の値からなる第2のアートワーク特徴量と、前記第1のアートワーク特徴量とを比較することにより、前記真贋判定対象のアートワークの真贋を判定する判定ステップと、
をさらに実行させるための請求項26に記載のプログラム。
【請求項29】
前記コンピュータに、
前記第1のアートワーク特徴量を示すウォーターマークを前記アートワークに埋め込む埋込ステップ、
をさらに実行させるための請求項28に記載のプログラム。
【請求項30】
前記複数の値は、ペンタッチが実行されたときのペンの位置をそれぞれ示す一連のペンタッチ座標と、ペンアップが実行されたときのペンの位置をそれぞれ示す一連のペンアップ座標とを含む、
請求項28又は29に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアートワークの管理方法、コンピュータ、及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ブロックチェーンにより契約の正当性を保証するスマートコントラクトを利用して、様々なサービスが生み出されている。例えば特許文献1には、銀行による金銭の貸付のためにスマートコントラクトを利用することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、デジタル画像の再生を制限することにより、デジタル画像の著作者の権益を守ろうとするデジタル著作権管理(DRM:Digital Rights Management)という技術が知られている。この技術を用いれば、タブレット端末で描かれたデジタル絵画などのアートワークについても不法な使用、例えば、無許諾での使用を制限することができるが、一方で、アートワークへのアクセシビリティが損なわれる。そうすると、結果としてアートワークの著作者であるアーティストの権益をも損なうことになるおそれがあるため、改善が必要とされている。
【0005】
したがって、本発明の目的の一つは、アートワークへのアクセシビリティを確保しつつ、アートワークの不法な使用を制限できるアートワークの管理方法、コンピュータ、及び、プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるアートワークの管理方法は、1以上のコンピュータによって実行されるアートワークの管理方法であって、前記1以上のコンピュータに含まれる第1のコンピュータが、WEBサイトに含まれるアートワークを検出する検出ステップと、前記第1のコンピュータが、前記検出ステップにおいて検出した前記アートワークの購入を示す購入トランザクションがブロックチェーンネットワークに記録されているか否かを判定する判定ステップと、前記判定ステップにより記録されていないと判定された場合に、前記第1のコンピュータが、前記アートワークの不正使用を発見したことを示す報告を送信する送信ステップと、を含むアートワークの管理方法である。
【0007】
本発明によるコンピュータは、WEBサイトに含まれるアートワークを検出する検出部と、前記検出部により検出された前記アートワークの購入を示す購入トランザクションがブロックチェーンネットワークに記録されているか否かを判定する判定部と、前記判定部により記録されていないと判定された場合に、前記アートワークの不正使用を発見したことを示す報告を送信する送信部と、を含むコンピュータである。
【0008】
本発明によるプログラムは、コンピュータに、WEBサイトに含まれるアートワークを検出する検出ステップと、前記検出ステップにおいて検出した前記アートワークの購入を示す購入トランザクションがブロックチェーンネットワークに記録されているか否かを判定する判定ステップと、前記判定ステップにより記録されていないと判定された場合に、前記アートワークの不正使用を発見したことを示す報告を送信する送信ステップと、を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、アートワークへのアクセシビリティを確保しつつも、アートワークの不法な使用を抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態によるアートワーク取引・管理システム1の構成を示す図である。
【
図2】プラットフォームポータルサーバ3、アーティスト端末4、及び購入者端末5のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図4】バイオメトリック署名データの構成を示す図である。
【
図5】プラットフォームポータルサーバ3に対するデータの入出力を示す図である。
【
図6】アートワークの出品にかかるプラットフォームポータルサーバ3の機能ブロック図である。
【
図7】アートワークの販売にかかるプラットフォームポータルサーバ3の機能ブロック図である。
【
図8】(a)は、第三者端末6にインストールされるプラグインの機能ブロック図であり、(b)は、第三者端末6に対する報酬の支払いにかかるプラットフォームポータルサーバ3の機能ブロック図である。
【
図9】アートワークの真贋判定にかかるプラットフォームポータルサーバ3の機能ブロック図である。
【
図10】(a)は、アーティストによるアートワーク製作の特徴を示すアーティスト特徴量を説明する図であり、(b)は、アートワークの特徴を示す複数の値からなるアートワーク特徴量を説明する図である。
【
図11】アートワーク特徴量の具体例を示す図である。
【
図12】プラットフォームポータルサーバ3が実行する処理を示す処理フロー図である。
【
図13】
図12のステップS7で実行されるアートワーク出品処理の詳細を示す図である。
【
図14】
図12のステップS8で実行されるアートワーク販売処理の詳細を示す図である。
【
図15】
図12のステップS8で実行されるアートワーク販売処理の詳細を示す図である。
【
図16】
図14のステップS41で実行されるウォーターマーク埋め込み処理の詳細を示す図である。
【
図17】
図16に示したウォーターマーク埋め込み処理により生成した透かし入りアートワークからウォーターマークを読み出すための処理を示す処理フロー図である。
【
図18】第三者端末6のブラウザソフトウェアにインストールされたプラグインによって実行される不正使用監視処理を示す処理フロー図である。
【
図19】
図12のステップS9で実行される報酬支払い処理の詳細を示す図である。
【
図20】
図12のステップS10で実行される真贋判定処理の詳細を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0012】
図1は、本実施の形態によるアートワーク取引・管理システム1の構成を示す図である。同図に示すように、アートワーク取引・管理システム1は、プラットフォームポータルサーバ3と、アーティスト端末4と、購入者端末5と、第三者端末6と、ブロックチェーンネットワーク7と、分散ファイルシステム8と、カタログデータベース9とがネットワーク2を介して相互に接続された構成を有している。また、プラットフォームポータルサーバ3にはセキュアキーストア3a、特徴量データベース3b、及びインセンティブプール3cが接続されている。
【0013】
図2は、プラットフォームポータルサーバ3、アーティスト端末4、購入者端末5、及び第三者端末6のハードウェア構成の一例を示す図である。プラットフォームポータルサーバ3、アーティスト端末4、購入者端末5、及び第三者端末6はそれぞれ、図示した構成を有するコンピュータ100によって構成され得る。
【0014】
図2に示すように、コンピュータ100は、CPU(Central Processing Unit)101、記憶装置102、入力装置103、出力装置104、及び通信装置105を有して構成される。
【0015】
CPU101は、コンピュータ100の各部を制御するとともに、記憶装置102に記憶される各種のプログラムを読み出して実行する装置である。後掲する
図12~
図17、
図19、
図20を参照して説明する各処理は、プラットフォームポータルサーバ3のCPU101が記憶装置102に記憶されるプログラムを実行することによって実現される。また、後掲する
図18を参照して説明する処理は、第三者端末6のCPU101が記憶装置102に記憶されるプログラム(後述するプラグイン)を実行することによって実現される。
【0016】
記憶装置102は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などの主記憶装置と、ハードディスクなどの補助記憶装置とを含み、コンピュータ100のオペレーティングシステムや各種のアプリケーションを実行するための各種のプログラム、及び、これらのプログラムによって利用されるデータを記憶する役割を果たす。プラットフォームポータルサーバ3の記憶装置102にはディープラーニングによる教師なし学習を行う人工知能プログラムが予め記憶されており、プラットフォームポータルサーバ3は、このプログラムを実行することにより機械学習装置としても機能する。
【0017】
入力装置103は、ユーザの入力操作を受け付けてCPU101に供給する装置であり、例えばキーボード、マウス、タッチ検出装置を含んで構成される。このうちタッチ検出装置はタッチセンサ及びタッチコントローラを含む装置であり、ペン入力又はタッチ入力を検出するために使用される。ペン入力は、例えばアクティブ静電方式又は電磁誘導方式によって実現される。タッチ入力は、例えば静電容量方式によって実現される。
【0018】
出力装置104は、CPU101の処理結果をユーザに対して出力する装置であり、例えばディスプレイ、スピーカーを含んで構成される。通信装置105は、外部の装置と通信するための装置であり、CPU101の指示にしたがってデータの送受信を行う。プラットフォームポータルサーバ3、アーティスト端末4、購入者端末5、及び第三者端末6の間でのデータの送受信は、それぞれの通信装置105が相互に通信を行うことによって実現される。
【0019】
図1に戻る。アーティスト端末4は、アーティストがアートワークの入力及び出品、並びに、後述するバイオメトリック署名データの入力を行うために使用されるコンピュータである。アートワーク及びバイオメトリック署名データはそれぞれデジタルデータであり、アーティスト端末4の入力装置103に対し、アーティストがペンPを用いてペン入力を行うことによって生成される。アートワークの出品のための具体的な処理については、後述する。
【0020】
アートワークの入力方法について説明すると、アーティスト端末4のタッチ検出装置は、タッチ面の近傍に存在するペンPを検出可能に構成される。タッチ検出装置は、ペンPを検出している間、周期的に、タッチ面内におけるペンPの位置を示す座標データ、ペンPのペン先に加わる圧力を示す筆圧値、ペンPのタッチ面に対する傾きを示すペン角度データを取得し、CPU101に供給する。
【0021】
座標データは、タッチ検出装置により検出されるペンPの位置を示すデータである。ペン入力がアクティブ静電方式によって実現される場合を例に取って詳しく説明すると、まずタッチセンサは、それぞれY方向に延在し、X方向に等間隔で配置された複数のX電極と、それぞれX方向に延在し、Y方向に等間隔で配置された複数のY電極とを含んで構成される。タッチコントローラは、これら複数のX電極及び複数のY電極のそれぞれでペンPが送信したバースト信号を受信することにより、ペンPの位置を示す座標データを取得する。
【0022】
筆圧値は、例えばペンPに内蔵される圧力センサによって検出されるデータである。また、ペン角度データは、例えばペンPに内蔵される傾きセンサによって検出されるデータである。アクティブ静電方式に対応するペンPは、ペアリングしたタッチコントローラに対してデータ信号を送信することができ、このデータ信号により筆圧値及びペン角度データを送信する。
【0023】
図3は、ペン角度データを説明する図である。同図に示すように、ペン角度データは、方位角θ、チルト角φ、及び回転角ψを含んで構成される。このうちチルト角φは、ペンPが送信した信号に基づいてタッチコントローラが検出することとしてもよい。この場合、ペンPは、ペン軸方向に2つの電極が並置された構成を有し、それぞれからバースト信号を送信する。タッチ検出装置は、こうして送信された2つのバースト信号のそれぞれが受信された位置から、チルト角φを検出する。
【0024】
図1に戻り、アーティスト端末4のCPU101は、タッチ検出装置から供給される筆圧値に基づき、ペンPのペン先がタッチ面に接触しているか否かを判定する。そして、ペンPがタッチ状態にある間に取得される一連の座標データ等によってストロークデータを生成し、記憶装置102に格納するとともに、出力装置104を構成するディスプレイに表示する。アートワークは、こうして記憶装置102に格納された一連のストロークデータを含むデジタルインクファイルによって構成される。各ストロークデータは、座標データ、筆圧値、ペン角度データの一連の組み合わせと、個々の組み合わせがタッチ検出装置によって取得された時刻を示すタイムスタンプ情報とを含むデータとなる。
【0025】
図4は、バイオメトリック署名データの構成を示す図である。バイオメトリック署名データは、例えばWILL(Wacom Ink Layer Language)又はFSS(Forensic Signature Stream)に従って生成されるデータであり、同図に示すように、動的署名データ、署名した書類のハッシュ値、コンテキスト情報、及び追加情報と、動的署名データ、署名した書類のハッシュ値、及びコンテキスト情報のハッシュ値、このハッシュ値及び追加情報のハッシュ値、並びに、このハッシュ値の送受信の際に生じ得る誤りを検出するためのチェックサムを含んで構成される。このうち動的署名データは、アートワークと同様、一連のストロークデータを含むデジタルインクファイルによって構成される。
【0026】
署名した書類のハッシュ値は、バイオメトリック署名データを生成するためにアーティストが署名した書類(出品申込書、契約書など)の電子データのハッシュ値である。なお、ハッシュ値は、対象の電子データを所定の一方向ハッシュ関数に入力することによって得られる値である。この点は、後述する他のハッシュ値についても同様である。
【0027】
コンテキスト情報は、署名したアーティストの氏名データ、署名日時、署名の目的、署名のために使用したタッチ検出装置の情報(メーカー名、モデル名など)、署名のために使用したアプリケーションの情報(アプリケーション名、バージョン情報など)、アーティスト端末4のオペレーティングシステムの情報(オペレーティングシステム名、バージョン情報など)、アーティスト端末4のアドレス情報(IPアドレス、MACアドレスなど)などを含む情報である。追加情報は、動的署名データ、署名した書類のハッシュ値、コンテキスト情報の他に、アートワーク取引・管理システム1の管理者が任意で指定できる情報である。
【0028】
図1に戻る。購入者端末5は、購入者がアートワーク(アーティストによって出品されたアートワーク)を購入するために使用されるコンピュータである。この購入のための具体的な処理については、後述する。
【0029】
第三者端末6は、アートワーク取引・管理システム1の管理者から見て第三者のコンピュータであり、アートワークの例えば無許諾な使用といった不法な使用を監視し、無許諾での使用を発見した場合に報告する役割を果たす。監視は、一例としてブラウザソフトウェアにインストールされたプラグインによって実行される。また、第三者端末6は、プラットフォームポータルサーバ3に対し、アートワークの真贋判定を依頼する役割も果たす。この監視及び真贋判定のための具体的な処理についても、後述する。
【0030】
ブロックチェーンネットワーク7は、ピアツーピアによって接続された複数のコンピュータのネットワークであり、スマート・コントラクトのトランザクションをブロックチェーンに記録するように構成される。具体的な例を挙げると、ブロックチェーンネットワーク7はイーサリアムネットワークである。トランザクションのブロックチェーンへの記録は、ブロックチェーンネットワーク7に接続されたいくつかのコンピュータ(以下、「マイナー」と称する)によって実行される。
【0031】
具体的に説明すると、ブロックチェーンを構成する各ブロックは、ブロックヘッダと、トランザクションの具体的な内容を示すデータ(取引データ)とを含んで構成される。このうちブロックヘッダには、取引データのサイズを圧縮してなるデータであるマークルルートと、1つ前のブロックのハッシュ値と、任意の文字列であるナンス値とが含まれる。ブロックチェーンネットワーク7においては、新たなブロックをブロックチェーンに接続するには、そのブロックのハッシュ値が所定の条件(例えば、「000」で始まる値である、という条件)を満たしていなければならないというルールが定められている。そこで、ブロックチェーンにあるブロックを記録しようとするマイナーは、そのブロックのブロックヘッダのハッシュ値が上記所定の条件を満たすこととなるよう、総当たり的にナンス値を見つける作業(マイニング)を行う。この作業の結果として、最も早くナンス値の発見に成功したマイナーがそのブロックをブロックチェーンに連結することによって、トランザクションのブロックチェーンへの記録が完了する。
【0032】
分散ファイルシステム8は、ピアツーピアによって接続された複数のコンピュータのネットワークであり、任意の電子データを格納するように構成される。具体的な例を挙げると、分散ファイルシステム8はIPFS(InterPlanetary File System)である。分散ファイルシステム8内に格納された電子データは、そのハッシュ値によって識別される。すなわち、分散ファイルシステム8においては、格納された電子データのハッシュ値がその電子データのアドレス情報として機能する。本実施の形態では、暗号化されたアートワークを格納するために分散ファイルシステム8が使用される。
【0033】
カタログデータベース9は、1つ又は複数のコンピュータ上に実装されたデータベースである。本実施の形態では、アートワークのカタログ(販売のために必要となる情報)を格納するために使用される。カタログデータベース9は、プラットフォームポータルサーバ3内に実装されることとしてもよい。
【0034】
セキュアキーストア3aは、データの暗号化のために用いる暗号化鍵を格納するためのデータベースであり、プラットフォームポータルサーバ3からのアクセスしか受け付けないように予め設定される。本実施の形態においては、後述する公開鍵1,2、秘密鍵1,2、及びデータ暗号化鍵1,2を格納するためにセキュアキーストア3aが使用される。
【0035】
特徴量データベース3bは、アーティストによるアートワーク製作の特徴を示すアーティスト特徴量と、アートワークの特徴を示す複数の値からなるアートワーク特徴量とを記憶するデータベースである。これらの特徴量の詳細については、後述する。特徴量データベース3bも、プラットフォームポータルサーバ3からのアクセスしか受け付けないように予め設定される。
【0036】
インセンティブプール3cは、アートワークの不法な使用例えば、無許諾での使用の発見報告を送信した第三者端末6に対しインセンティブとして付与するための金銭を格納するためのデータベースである。この金銭は、一例として、ブロックチェーンネットワーク7により実現される仮想通貨(イーサなど)であってもよい。インセンティブプール3cも、プラットフォームポータルサーバ3からのアクセスしか受け付けないように予め設定される。
【0037】
プラットフォームポータルサーバ3は、アートワークの取引装置として機能するコンピュータであり、アーティストによるアートワークの出品を受け付けるとともに、出品されたアートワークの購入を実現する役割を果たす。また、プラットフォームポータルサーバ3は、第三者端末6を通じてアートワークの無許諾での使用を監視するとともに、上述したアーティスト特徴量及びアートワーク特徴量を取得して管理し、管理しているアーティスト特徴量及びアートワーク特徴量を用いてアートワークの真贋を判定する役割も果たす。
【0038】
図5は、プラットフォームポータルサーバ3に対するデータの入出力を示す図である。以下、アートワークの出品を受け付ける段階、アートワークの購入を実現する段階、アートワークの無許諾での使用を監視する段階、アートワークの真贋を判定する段階のそれぞれに注目して説明する。
【0039】
まずアートワークの出品を受け付ける段階では、プラットフォームポータルサーバ3は、アーティスト端末4からアートワークの出品を受け付ける。この出品には、アートワークの本体であるデジタルインクファイルと、販売条件(有料/無料の別、有料の場合の価格等)とが含まれる。なお、価格は、ブロックチェーンネットワーク7により実現される仮想通貨(イーサなど)によって示されてもよい。プラットフォームポータルサーバ3はまた、アーティスト端末4から、上述したバイオメトリック署名データの入力も受け付ける。出品及びバイオメトリック署名データを受信したプラットフォームポータルサーバ3は、出品を示すトランザクション(出品トランザクション)をブロックチェーンネットワーク7に記録する。出品トランザクションの具体的な内容については、後述する。
【0040】
アートワークの出品を受け付けたプラットフォームポータルサーバ3は、アートワークに所定形式の識別情報(以下、「画像ID」という)を付与し、この画像IDをアートワーク内に埋め込む。そして、画像IDを埋め込んだアートワークを共通鍵暗号方式の共通鍵に相当するデータ暗号化鍵1により暗号化し、分散ファイルシステム8に格納する。なお、画像IDは、市中に流通するアートワークを互いに識別できる所定形式の情報であればよく、具体的には、ランダムな文字列であってもよいし、アートワークのハッシュ値であってもよい。また、プラットフォームポータルサーバ3は、公開鍵暗号方式における公開鍵及び秘密鍵に相当する公開鍵1及び秘密鍵1のペアを生成し、公開鍵1によってデータ暗号化鍵1を暗号化する。そして、公開鍵1及び秘密鍵1のペアと、暗号化したデータ暗号化鍵1とをセキュアキーストア3aに格納する。なお、アートワークの暗号化を公開鍵1でなくデータ暗号化鍵1によって行うのは、公開鍵暗号方式における公開鍵では、アートワークのようなサイズの大きいデータを暗号化できないためである。
【0041】
プラットフォームポータルサーバ3はさらに、出品されたアートワークのサムネイル、販売条件、及び、ブロックチェーンネットワーク7に記録した出品トランザクションのID(識別情報)をカタログデータベース9に登録するとともに、アーティスト端末4に対し、出品トランザクションのID、及び秘密鍵1を返送する。返送された出品トランザクションのIDは、アーティストがブロックチェーンネットワーク7を参照し、自身の出品内容を確認するために使用される。また、秘密鍵1は、アーティストが自身のアートワークを分散ファイルシステム8から取り出すために使用される。
【0042】
また、プラットフォームポータルサーバ3は、出品されたアートワークを構成する1以上のストロークデータからアーティストによるアートワーク製作の特徴を示す1以上の値を取得し、取得した各値を機械学習モデルに入力することによって、上記アーティスト特徴量を取得する。そして、取得したアーティスト特徴量を、アーティストを特定する情報と対応付けて特徴量データベース3bに格納する。アーティスト特徴量及び機械学習モデルの詳細については、後述する。
【0043】
同様に、プラットフォームポータルサーバ3は、出品されたアートワークを構成する1以上のストロークデータからそのアートワークの特徴を示す複数の値を取得し、アートワーク特徴量として特徴量データベース3bに格納する。アートワーク特徴量の詳細についても、後述する。
【0044】
次に、出品されたアートワークの購入を実現する段階では、プラットフォームポータルサーバ3は、購入者端末5から購入申し込みを受け付ける。この購入申し込みには、購入者を示す購入者情報(ブロックチェーンネットワーク7のアカウント、氏名など)と、購入者が選択したアートワークを示す情報と、代金(例えば、任意の量の仮想通貨を示す情報)とが含まれる。購入申し込みを受け付けたプラットフォームポータルサーバ3は、購入を示すトランザクション(購入トランザクション)をブロックチェーンネットワーク7に記録する。購入トランザクションの具体的な内容については、後述する。
【0045】
購入申し込みを受け付けたプラットフォームポータルサーバ3は、セキュアキーストア3aから秘密鍵1及びデータ暗号化鍵1を取り出すとともに、分散ファイルシステム8からアートワークを取り出す。そして、データ暗号化鍵1を秘密鍵1で復号し、復号したデータ暗号化鍵1によりアートワーク(画像IDが埋め込まれたアートワーク)を復号する。
【0046】
プラットフォームポータルサーバ3はさらに、復号したアートワークにウォーターマークを埋め込むことによって透かし入りアートワークを生成し、データ暗号化鍵2により暗号化したうえで、分散ファイルシステム8に格納する。詳しくは後述するが、このウォーターマークは、購入トランザクションのID(識別情報)に基づいて生成される。
【0047】
プラットフォームポータルサーバ3はまた、公開鍵暗号方式における公開鍵及び秘密鍵に相当する公開鍵2及び秘密鍵2のペアを生成し、公開鍵2によってデータ暗号化鍵2を暗号化する。そして、公開鍵2及び秘密鍵2のペアと、暗号化したデータ暗号化鍵2とをセキュアキーストア3aに格納する。なお、透かし入りアートワークの暗号化を公開鍵2でなくデータ暗号化鍵2によって行うのは、出品時と同様、透かし入りアートワークのサイズが大きいことによる。
【0048】
その後、プラットフォームポータルサーバ3は、購入者端末5に対し、購入トランザクションのID、秘密鍵2、及び、暗号化透かし入りアートワークのハッシュ値を返送する処理を行うとともに、アーティスト端末4に対し、購入トランザクションのID及び売上金を送信する処理を行う。各端末に返送された購入トランザクションのIDは、購入者及びアーティストがブロックチェーンネットワーク7を参照し、購入内容を確認するために使用される。また、秘密鍵2、及び、暗号化透かし入りアートワークのハッシュ値は、購入者が購入したアートワークを分散ファイルシステム8から取り出して復号するために使用される。
【0049】
また、プラットフォームポータルサーバ3は、売上金をアーティスト端末4に送金する際、その一部(例えば1割)を控除し、画像IDと対応付けてインセンティブプール3cに格納する処理を行う。こうしてインセンティブプール3cに格納された金銭(例えば、仮想通貨)は、第三者端末6のユーザに対し、無許諾での使用を発見したことに対する対価を支払うために使用される。なお、無許諾での使用が発見された後、著作権侵害訴訟等を経て損害賠償金が得られた場合には、その全部又は一部についても、仮想通貨の形式でインセンティブプール3cに格納することとしてもよい。
【0050】
次に、アートワークの無許諾での使用を監視する段階では、まずプラットフォームポータルサーバ3は、第三者端末6に対して、ブラウザソフトウェアのプラグイン(アドオン)を配付する。このプラグインは、ブラウザソフトウェア上で動作し、ユーザによってロードされるWEBサイトを監視する機能を有する。また、プラグインには、ブロックチェーンネットワーク7にアクセスするために必要な情報(後述するコントラクトアカウント)が予め書き込まれる。
【0051】
プラグインによる監視は、具体的には、アートワーク取引・管理システム1で管理しているアートワークを検出し、検出したアートワークに対応する購入トランザクションがブロックチェーンネットワーク7内に存在する場合に、アートワークの不正使用を発見したことを示す報告を生成し、生成した報告を示す報告トランザクションをブロックチェーンネットワーク7に記録することによって実行される。この処理のより詳しい内容については、後述する。
【0052】
プラットフォームポータルサーバ3は、新たな報告トランザクションがブロックチェーンネットワーク7に記録されると、その報告トランザクションに対応するアートワークの画像IDと対応付けてインセンティブプール3cに格納されている金銭を取得し、報酬として、報告トランザクションを記録した第三者端末6に対して送信する。こうして送信される金銭は、第三者端末6のユーザに対し、上記プラグインを動作させ続けることについてのインセンティブとして機能する。
【0053】
図6~
図9は、プラットフォームポータルサーバ3又は第三者端末6にインストールされるプラグインの機能ブロック図である。
図6は、アートワークの出品にかかるプラットフォームポータルサーバ3の機能ブロックを示し、
図7は、アートワークの販売にかかるプラットフォームポータルサーバ3の機能ブロックを示し、
図8(a)は、第三者端末6にインストールされるプラグインの機能ブロックを示し、
図8(b)は、第三者端末6に対する報酬の支払いにかかるプラットフォームポータルサーバ3の機能ブロックを示し、
図9は、アートワークの真贋判定にかかるプラットフォームポータルサーバ3の機能ブロックを示している。以下、これらの図を参照しながら、プラットフォームポータルサーバ3の機能ブロックについて詳しく説明する。
【0054】
初めに
図6を参照すると、プラットフォームポータルサーバ3は、アートワークの出品にかかる機能ブロックとして、受信部11と、重複判定部12と、特徴量取得部13と、アートワーク暗号化処理部14と、アートワーク格納処理部15と、鍵ペア生成部16と、トランザクション発行部17と、鍵暗号化処理部18と、カタログ生成部19と、送信部20とを有して構成される。
【0055】
受信部11は、アーティスト端末4からアートワークの出品を受信する。この出品には、上述したように、アートワークの本体と、販売条件を示す情報とが含まれる。
【0056】
重複判定部12は、出品されたアートワークが他のアートワークと重複しているか否か(すなわち、出品されたアートワークがユニークでないか否か)を判定する。この判定は、例えば、プラットフォームポータルサーバ3が過去に分散ファイルシステム8内に格納したアートワークとの比較によって実施してもよいし、インターネット上での検索によって得られる画像との比較によって実施してもよいし、その両方によって実施してもよい。比較の結果、出品されたアートワークと重複する他のアートワークが発見されなかった場合、重複判定部12は重複していないと判定し、受信部11に、上述したバイオメトリック署名データをアーティスト端末4からさらに受信させる。一方、出品されたアートワークと重複する他のアートワークが発見された場合、重複判定部12は重複していると判定し、アーティスト端末4に出品不可を返信する。
【0057】
また、重複判定部12は、重複していないと判定したアートワークに対し一意な識別情報(以下、「画像ID」という)を付与し、アートワーク内に埋め込む処理を行う。この処理は、例えば、アートワークに画像IDをメタデータとして付加することによって行ってもよいし、アートワークの表面に視認可能な状態で斜めに画像IDを配置することにより行ってもよいし、後述するウォーターマーク生成部36と同様の処理により画像IDを示すウォーターマークを生成し、生成したウォーターマークを、後述するウォーターマーク埋め込み処理部37と同様の処理によりアートワーク内に埋め込むことによって行ってもよい。
【0058】
特徴量取得部13は、重複判定部12によって重複していないと判定されたアートワークに基づいて上述したアーティスト特徴量及びアートワーク特徴量を取得し、特徴量データベース3bに格納する処理を行う。以下、この処理について、
図10及び
図11を参照しながら詳しく説明する。
【0059】
図10(a)は、アーティストによるアートワーク製作の特徴(癖)を示すアーティスト特徴量を説明する図であり、
図10(b)は、アートワークの特徴を示す複数の値からなるアートワーク特徴量を説明する図である。
【0060】
初めに
図10(a)を参照すると、プラットフォームポータルサーバ3は、重複判定部12によって重複していないと判定されたアートワークが発生する都度、そのアートワークを構成する1以上のストロークデータからアーティストによるアートワーク製作の特徴を示す1以上の値を取得し、そのアートワークのアーティストを示すアーティスト情報とともに、上述した人工知能プログラムに入力する。人工知能プログラムは、こうして入力されたデータをディープラーニングによって学習し、機械学習モデルを構築する。こうして構築された機械学習モデルは、上記1以上の値が新たに入力されたことに応じて、アーティスト特徴量を出力可能となる。
【0061】
人工知能プログラムに入力する1以上の値は、典型的には、
図10(a)に示すように、運筆スピードの平均値及び分散、筆圧値の平均値及び分散、ペン角度データの平均値及び分散、並びに、タッチ状態とホバー状態の時間的な配分によって構成される。ただし、これらの値のうちの一部のみ、又は、他の値を使用してもよいことは勿論である。
【0062】
プラットフォームポータルサーバ3は、重複判定部12によって重複していないと判定されたアートワークを構成する1以上のストロークデータから上記1以上の値を取得し、人工知能プログラムによって構築された機械学習モデルに入力する。これにより、機械学習モデルからアーティスト特徴量が出力される。プラットフォームポータルサーバ3は、こうして取得したアーティスト特徴量を、対応するアーティスト情報に対応付けて特徴量データベース3bに格納する。特徴量データベース3b内に同一のアーティストについてのアーティスト特徴量が既に格納されている場合には、新たに取得したアーティスト特徴量によって、格納されているアーティスト特徴量を更新する。
【0063】
次に
図10(b)を参照すると、プラットフォームポータルサーバ3は、重複判定部12によって重複していないと判定されたアートワークを構成する1以上のストロークデータから、該アートワークの特徴を示す複数の値からなるアートワーク特徴量を取得する。複数の値には、ペンタッチが実行されたときのペンの位置をそれぞれ示す一連のペンタッチ座標と、ペンアップが実行されたときのペンの位置をそれぞれ示す一連のペンアップ座標とが含まれる。プラットフォームポータルサーバ3は、こうして取得したアートワーク特徴量を、対応するアートワークに対応付けて特徴量データベース3bに格納する。
【0064】
以下の表1に示すデータは、アートワーク特徴量を構成する複数の値の一例である。このデータにおいては、各行先頭の「d」がペンタッチを示し、「u」がペンアップを示している。また、「d」又は「u」の後の2つの座標がそれぞれX座標及びY座標を示している。
【0065】
【0066】
図11は、アートワーク特徴量をマッピングした例を示す図である。同図では、座標ごとに、グレースケールの濃度により、ペンタッチ又はペンアップが発生した回数を表している。このように、アートワーク特徴量をマッピングしたものは、アートワークの特徴を示すノイズ画像となる。このノイズ画像自体をアートワーク特徴量として用いることとしてもよい。
【0067】
図6に戻る。アートワーク暗号化処理部14は、重複判定部12が重複していないと判定した場合に、アートワークの暗号化を行う。具体的に説明すると、アートワーク暗号化処理部14はまず、共通鍵暗号方式における共通鍵に相当するデータ暗号化鍵1を生成する。そして、生成したデータ暗号化鍵1を用いて、アートワークの暗号化を実行する。
【0068】
アートワーク格納処理部15は、アートワーク暗号化処理部14によって暗号化されたアートワークを、重複判定部12によって付与された画像IDと対応付けて分散ファイルシステム8に格納する処理を行うとともに、そのハッシュ値を取得する。
【0069】
鍵ペア生成部16は、公開鍵暗号方式における公開鍵及び秘密鍵に相当する公開鍵1及び秘密鍵1のペアを生成する。
【0070】
トランザクション発行部17は、重複判定部12によって付与された画像IDと、アートワーク格納処理部15によって取得された暗号化アートワークのハッシュ値と、受信部11によって受信されたバイオメトリック署名データと、鍵ペア生成部16によって生成された公開鍵1とを含む出品トランザクションを生成し、ブロックチェーンネットワーク7のコントラクトアカウント(後述)に対して発行する。この後、ブロックチェーンネットワーク7に接続されたいずれかのマイナーにより、出品トランザクションのブロックチェーンへの記録が完了する。
【0071】
鍵暗号化処理部18は、鍵ペア生成部16によって生成された公開鍵1を用いてデータ暗号化鍵1を暗号化し、公開鍵1及び秘密鍵1のペアとともに、トランザクション発行部17によって発行された出品トランザクションのIDに対応付けて、セキュアキーストア3aに格納する。
【0072】
カタログ生成部19は、出品されたアートワークのサムネイルを生成し、販売条件及び出品トランザクションのIDとともに、カタログデータベース9に登録する。このようにして出品されたアートワークがカタログデータベース9に登録されることにより、購入者は、カタログデータベース9を参照し、購入したいアートワークを選択することが可能になる。
【0073】
送信部20は、トランザクション発行部17によって発行された出品トランザクションのIDと、鍵ペア生成部16によって生成された秘密鍵1とをアーティスト端末4に返送する。これによりアーティストは、ブロックチェーンネットワーク7上で出品トランザクションを確認することが可能になるとともに、分散ファイルシステム8に格納された暗号化アートワークを取得して復号することにより、元のアートワークを確認することが可能になる。
【0074】
アーティストによる元のアートワークの確認について、より詳しく説明する。アーティストは、アーティスト端末4を用いて、出品トランザクションのIDと、秘密鍵1とをプラットフォームポータルサーバ3に送信する。プラットフォームポータルサーバ3は、アーティスト端末4から受信した出品トランザクションのIDに基づいてブロックチェーンネットワーク7を参照することにより、暗号化アートワークのハッシュ値を取得する。そして、取得したハッシュ値を用いて分散ファイルシステム8にアクセスし、暗号化アートワークを読み出す。プラットフォームポータルサーバ3はまた、アーティスト端末4から受信した出品トランザクションのIDに基づいてセキュアキーストア3aから暗号化データ暗号化鍵1を読み出し、アーティスト端末4から受信した秘密鍵1により復号する。最後にプラットフォームポータルサーバ3は、復号したデータ暗号化鍵1を用いて暗号化アートワークを復号することによってアートワークを取得し、アーティスト端末4に返信する。こうしてアーティストは、アートワークを確認することができる。
【0075】
次に
図7を参照すると、プラットフォームポータルサーバ3は、アートワークの販売にかかる機能ブロックとして、受信部30と、購入可否判定部31と、鍵復号処理部32と、アートワーク復号処理部33と、鍵ペア生成部34と、トランザクション発行部35と、ウォーターマーク生成部36と、ウォーターマーク埋め込み処理部37と、アートワーク暗号化処理部38と、アートワーク格納処理部39と、鍵暗号化処理部40と、送信部41とを有して構成される。
【0076】
受信部30は、購入者端末5からアートワークの購入意思を示す購入申し込みを受信する。この購入申し込みには、上述したように、購入者情報と、購入者が選択したアートワークを示す情報と、代金とが含まれる。
【0077】
購入可否判定部31は、購入申し込みの成立可否を判定する。具体的に説明すると、購入可否判定部31はまず、対応するアートワークの販売条件及び出品トランザクションのIDをカタログデータベース9から読み出す。そして、読み出した販売条件を購入申し込みの内容と比較し、その結果に基づいて購入申し込みの成立可否を判定する。一例を挙げると、販売条件としてアートワークの価格が1イーサであることが規定されていた場合、購入申し込みに1イーサが含まれていれば、購入可否判定部31は、購入申し込みが成立したと判定する。一方、購入申し込みに1イーサが含まれていなければ、購入可否判定部31は、購入申し込みが成立しないと判定する。後者の場合、購入可否判定部31は、購入者端末5に購入不可を返信する。
【0078】
鍵復号処理部32は、出品トランザクションのIDに基づいて、秘密鍵1及び暗号化データ暗号化鍵1をセキュアキーストア3aから読み出す。そして、読み出した秘密鍵1を用いて、読み出した暗号化データ暗号化鍵1を復号する。
【0079】
アートワーク復号処理部33は、出品トランザクションのIDに基づいてブロックチェーンネットワーク7を参照することにより、アートワークの画像ID、又は、暗号化されたアートワークのハッシュ値を取得する。そして、取得した画像ID又はハッシュ値に基づいて、分散ファイルシステム8から暗号化アートワークを読み出し、鍵復号処理部32により復号されたデータ暗号化鍵1を用いて復号する。
【0080】
鍵ペア生成部34は、公開鍵暗号方式における公開鍵及び秘密鍵に相当する公開鍵2及び秘密鍵2のペアを生成する。
【0081】
トランザクション発行部35は、購入申し込みに含まれていた購入者情報と、購入可否判定部31がカタログデータベース9から読み出した出品トランザクションのIDと、アートワークの画像IDと、アートワークの購入額を示す金額と、鍵ペア生成部34によって生成された公開鍵2とを含む購入トランザクションを生成し、ブロックチェーンネットワーク7のコントラクトアカウント(後述)に対して発行する。この後、ブロックチェーンネットワーク7に接続されたいずれかのマイナーにより、購入トランザクションのブロックチェーンへの記録が完了する。
【0082】
ウォーターマーク生成部36は、トランザクション発行部35によって発行された購入トランザクションのIDに基づいて、ウォーターマークを生成する。こうして生成されるウォーターマークは、例えば、購入トランザクションのIDを示すQRコード(登録商標)である。ウォーターマーク埋め込み処理部37は、アートワーク復号処理部33により復号されたアートワークにウォーターマークを埋め込むことにより、透かし入りアートワークを生成する処理を行う。この処理の詳細については、後ほど
図16を参照して詳しく説明する。
【0083】
アートワーク暗号化処理部38は、共通鍵暗号方式における共通鍵に相当するデータ暗号化鍵2を生成し、生成したデータ暗号化鍵2を用いて透かし入りアートワークを暗号化する。アートワーク格納処理部39は、アートワーク暗号化処理部38によって暗号化された透かし入りアートワークを分散ファイルシステム8に格納する処理を行うとともに、そのハッシュ値を取得する。
【0084】
鍵暗号化処理部40は、鍵ペア生成部34によって生成された公開鍵2を用いてデータ暗号化鍵2を暗号化し、トランザクション発行部35によって発行された購入トランザクションのIDに対応付けて、セキュアキーストア3aに格納する。
【0085】
送信部41は、購入トランザクションのIDと、アートワーク格納処理部39により取得されたハッシュ値と、鍵ペア生成部34によって生成された秘密鍵2とを購入者端末5に返送するとともに、購入トランザクションのIDと、売上金の一部(例えば9割)とをアーティスト端末4に送信する。売上金の残部(例えば1割)については、インセンティブプール3cに蓄積する。これにより購入者及びアーティストは、ブロックチェーンネットワーク7上で購入トランザクションを確認することが可能になる。また、購入者は、分散ファイルシステム8に格納された暗号化透かし入りアートワークを取得して復号することにより、購入したアートワークを透かし入りの状態で入手することが可能になる。さらに、第三者端末6に対して、アートワークの無許諾での使用を発見したことに対する報酬を与えることが可能になる。
【0086】
購入者によるアートワークの入手について、より詳しく説明する。購入者は、購入者端末5を用いて、暗号化透かし入りアートワークのハッシュ値と、購入トランザクションのIDと、秘密鍵2とをプラットフォームポータルサーバ3に送信する。プラットフォームポータルサーバ3は、購入者端末5から受信したハッシュ値を用いて分散ファイルシステム8にアクセスし、暗号化透かし入りアートワークを読み出す。プラットフォームポータルサーバ3はまた、購入者端末5から受信した購入トランザクションのIDに基づいてセキュアキーストア3aから暗号化データ暗号化鍵2を読み出し、購入者端末5から受信した秘密鍵2により復号する。最後にプラットフォームポータルサーバ3は、復号したデータ暗号化鍵2を用いて暗号化透かし入りアートワークを復号することによって透かし入りアートワークを取得し、購入者端末5に返信する。こうして購入者は、透かし入りアートワークを入手することができる。
【0087】
次に
図8(a)を参照すると、第三者端末6は、ブラウザソフトウェアにインストールされたプラグインにより実現される機能ブロックとして、画像抽出部50と、アートワーク検出部51と、購入履歴判定部52と、報告有無判定部53と、報告部54とを有して構成される。
【0088】
画像抽出部50は、ブラウザソフトウェアによってロードされたWEBサイトから画像を抽出する。具体的には、ソースコード内を走査して画像ファイルのパスを取得し、そのパスから画像ファイルをダウンロードする。画像ファイルは、例えば、jpgファイル、pngファイル、又は、gifファイルである。
【0089】
アートワーク検出部51は、画像抽出部50によって抽出された画像から画像IDの抽出を試みることによって、アートワーク取引・管理システム1によって管理されているアートワークを検出する。すなわち、アートワーク取引・管理システム1によって管理されている画像であれば、上述した処理により画像IDが埋め込まれているはずであるので、ここで画像IDを抽出できなかったということは、その画像がアートワーク取引・管理システム1によって管理されている画像でないことを意味する。逆に、画像IDを抽出できたということは、その画像がアートワーク取引・管理システム1によって管理されている画像であることを意味する。そこで、アートワーク検出部51は、画像IDを抽出することができた画像をアートワークとして検出し、抽出した画像IDとともに購入履歴判定部52に供給する。
【0090】
購入履歴判定部52は、アートワーク検出部51によって検出されたアートワークに対応する購入トランザクションがブロックチェーンネットワーク7内に存在するか否かを判定する。この判定は、具体的には、アートワーク検出部51によって抽出された画像IDを含む購入トランザクションがあるか否かを判定することによって行われる。対応する購入トランザクションがブロックチェーンネットワーク7内に存在しないアートワークは、購入されていないのであるから、WEBサイトに使われるはずがない。そうであるにも関わらずWEBサイトで使われているということは、無許諾で使用されているということを意味する。そこで購入履歴判定部52は、対応する購入トランザクションがブロックチェーンネットワーク7内に存在しないと判定したアートワークについて、報告の対象とすることを決定し、画像IDとともに報告有無判定部53に通知する。
【0091】
報告有無判定部53は、購入履歴判定部52から通知された画像IDを含む報告トランザクションがブロックチェーンネットワーク7内に存在するか否かを判定する。そのような報告トランザクションがブロックチェーンネットワーク7内に存在する場合、他の第三者端末6が先に無許諾使用を発見し、報告したことを意味する。したがって報告有無判定部53は、新たに報告することはせずに処理を終了する。一方、そのような報告トランザクションがブロックチェーンネットワーク7内に存在しなければ、報告有無判定部53は、画像IDを報告部54に出力する。
【0092】
報告部54は、報告有無判定部53から入力された画像IDについて、アートワークの不正使用を発見したことを示す報告を生成し、生成した報告を示す報告トランザクションをブロックチェーンネットワーク7に対して発行する。この後、ブロックチェーンネットワーク7に接続されたいずれかのマイナーにより、報告トランザクションのブロックチェーンへの記録が完了する。報告トランザクションには、画像IDと、第三者端末6を示す情報とが含まれる。第三者端末6を示す情報は、後にプラットフォームポータルサーバ3が報告に対する報酬を支払う際、その支払い先となる。
【0093】
次に
図8(b)を参照すると、プラットフォームポータルサーバ3は、第三者端末6に対する報酬の支払いにかかる機能ブロックとして、報告取得部60と、報酬額決定部61と、送信部62とを有して構成される。
【0094】
報告取得部60は、ブロックチェーンネットワーク7から新たに発行された報告トランザクションを取得する。この取得は、報告取得部60が周期的にブロックチェーンネットワーク7を確認することによって行えばよい。
【0095】
報酬額決定部61は、報告取得部60によって取得された報告トランザクションに対する報酬額を決定する。典型的な例では、報酬額決定部61は、当該アートワークの価格のうちアーティストに還元される金額を減じた額に等しい金額を報酬額として決定する。例えば、アートワークの価格が1イーサであり、アーティストに還元される金額がその9割、すなわち0.9イーサであれば、0.1イーサを報酬額として決定する。
【0096】
送信部62は、報酬額決定部61が決定した報酬額分の仮想通貨を第三者端末6に対して送信する。これにより、報酬の支払いが完了する。
【0097】
次に
図9を参照すると、プラットフォームポータルサーバ3は、アートワークの真贋判定にかかる機能ブロックとして、受信部70と、特徴量取得部71と、特徴量読出部72と、真贋判定部73と、送信部74とを有して構成される。
【0098】
受信部70は、第三者端末6から真贋判定依頼を受信する。真贋判定依頼には、第三者端末6が第三者のWEBサイト等で発見したアートワーク(以下、「判定対象アートワーク」という)と、判定対象アートワークのアーティストとしてそのWEBサイトに記載されていた情報(アーティスト情報)と、アートワーク取引・管理システム1で管理している複数のアートワークの1つであるアートワーク(以下、「比較対象アートワーク」という)を特定する情報とを含む。なお、比較対象アートワークを特定する情報は、アートワーク取引・管理システム1で管理している複数のアートワークの1つを特定できる情報であればどのような情報であってもよいが、例えば画像IDである。判定対象アートワークは、
図8(a)のアートワーク検出部51で検出されるアートワークとは異なり、画像IDを含まないものも対象となる。
【0099】
特徴量取得部71は、判定対象アートワークに基づいて、上述したアーティスト特徴量及びアートワーク特徴量を取得する。具体的には、判定対象アートワークを構成する1以上のストロークデータから上述した1以上の値(例えば、運筆スピードの平均値及び分散、筆圧値の平均値及び分散、ペン角度データの平均値及び分散、並びに、タッチ状態とホバー状態の時間的な配分)を取得し、上述した機械学習モデルに入力する。これにより、機械学習モデルからアーティスト特徴量が出力される。また、判定対象アートワークを構成する1以上のストロークデータから該判定対象アートワークの特徴を示す複数の値(例えば、ペンタッチが実行されたときのペンの位置をそれぞれ示す一連のペンタッチ座標と、ペンアップが実行されたときのペンの位置をそれぞれ示す一連のペンアップ座標)を取得することにより、アートワーク特徴量を取得する。
【0100】
特徴量読出部72は、特徴量データベース3bから、アーティスト情報により示されるアーティストに対応付けて記憶されるアーティスト特徴量と、比較対象アートワークに対応付けて記憶されるアートワーク特徴量とを読み出す。
【0101】
真贋判定部73は、特徴量取得部71により取得されたアーティスト特徴量及びアートワーク特徴量と、特徴量読出部72により読み出されたアーティスト特徴量及びアートワーク特徴量とを比較し、その結果に基づいて、判定対象アートワークの真贋を判定する。具体的には、所定の演算によりアーティスト特徴量及びアートワーク特徴量それぞれの尤度を算出し、算出した2つの尤度がともに所定値以上である場合に判定対象アートワークは本物であると判定し、算出した2つの尤度のいずれかが所定値未満である場合に判定対象アートワークは偽物であると判定する。
【0102】
送信部74は、真贋判定部73による判定の結果を第三者端末6に返送する。これにより第三者端末6のユーザは、判定対象アートワークが本物であるか偽物であるかを知ることが可能になる。
【0103】
図12~
図17、
図19、
図20は、プラットフォームポータルサーバ3が実行する処理を示す処理フロー図である。また、
図18は、第三者端末6が実行する処理を示す処理フロー図である。以下、これらの図を参照しながら、プラットフォームポータルサーバ3が実行する処理について、さらに詳しく説明する。
【0104】
初めに
図12を参照すると、プラットフォームポータルサーバ3はまず、ブロックチェーンネットワーク7にアートワークの出品や購入を記録できるようにするため、ブロックチェーンネットワーク7のアカウント(コントラクトアカウント)を生成する処理を行う。具体的には、コントラクトのコードを含むトランザクションをブロックチェーンネットワーク7に送信し(ステップS1)、その結果として生成されたコントラクトアカウントのアドレスを取得する(ステップS2)。
【0105】
その後、プラットフォームポータルサーバ3は、アーティスト端末4からアートワークの出品を受信したか否かを判定する処理(ステップS3)と、購入者端末5からアートワークの購入申し込みを受信したか否かを判定する処理(ステップS4)と、ブロックチェーンネットワーク7に不正使用発見報告が記録されたか否かを確認する処理(ステップS5)と、第三者端末6からアートワークの真贋判定依頼を受信したか否かを判定する処理(ステップS6)とを繰り返し実行する。
【0106】
ステップS3においてアートワークの出品を受信したと判定した場合、プラットフォームポータルサーバ3は、アートワーク出品処理を実行する(ステップS7)。ステップS4においてアートワークの購入申し込みを受信したと判定した場合、プラットフォームポータルサーバ3は、アートワーク販売処理を実行する(ステップS8)。ステップS5において不正使用発見報告が記録されたと判定した場合、プラットフォームポータルサーバ3は、報酬支払い処理を実行する(ステップS9)。ステップS6においてアートワークの真贋判定依頼を受信したと判定した場合、プラットフォームポータルサーバ3は、真贋判定処理を実行する(ステップS10)。
【0107】
図13は、
図12のステップS7で実行されるアートワーク出品処理の詳細を示す図である。同図に示すように、アートワーク出品処理を開始したプラットフォームポータルサーバ3は、アートワーク本体及び販売条件を含むアートワークの出品を取得する(ステップS11)。そして、アップロードされたアートワークを、既知のワークと比較する(ステップS12)。この比較の詳細については、上述したとおりである。
【0108】
プラットフォームポータルサーバ3は、ステップS12で実行した比較の結果に基づき、アートワークがユニークであるか否かを判定する(ステップS13)。その結果、ユニークでないと判定した場合、プラットフォームポータルサーバ3は、アーティスト端末4に出品不可を返し、アートワーク出品処理を終了する(ステップS14)。一方、ユニークであると判定した場合、プラットフォームポータルサーバ3は、アーティスト端末4からバイオメトリック署名データを受信する(ステップS15)。具体的な例では、アーティスト端末4のディスプレイ上に署名を促す画面を表示し、アーティストに上述した動的署名データを入力させる。アーティスト端末4は、こうして入力された動的署名データに
図4を参照して説明した各情報を追加することによってバイオメトリック署名データを生成し、プラットフォームポータルサーバ3に対して送信する。
【0109】
次にプラットフォームポータルサーバ3は、上述した処理によってアーティスト特徴量及びアートワーク特徴量を取得して特徴量データベース3bに格納した後(ステップS16)、公開鍵1及び秘密鍵1のペアを生成する(ステップS17)。また、データ暗号化鍵1を生成し、公開鍵1を用いて暗号化する(ステップS18)。
【0110】
続いてプラットフォームポータルサーバ3は、データ暗号化鍵1を用いてアートワークを暗号化し(ステップS19)、暗号化されたアートワークを分散ファイルシステム8に格納する(ステップS20)。その後、プラットフォームポータルサーバ3は、
図12のステップS1,S2で生成したコントラクトアカウントに対して、暗号化アートワークのハッシュ値、バイオメトリック署名データ、及び公開鍵1を含む出品トランザクションを発行する(ステップS21)。
【0111】
ステップS20を実行したプラットフォームポータルサーバ3は、発行した出品トランザクションのIDに対応付けて、公開鍵1及び秘密鍵1のペアと、ステップS17で暗号化したデータ暗号化鍵1とをセキュアキーストア3aに格納する(ステップS22)。そして、出品トランザクションのID、及び秘密鍵1をアーティスト端末4に返送する(ステップS23)とともに、アートワークのサムネイル、販売条件、出品トランザクションのIDを対応付けてカタログデータベース9に登録し(ステップS24)、アートワーク出品処理を終了する。
【0112】
図14及び
図15は、
図12のステップS8で実行されるアートワーク販売処理の詳細を示す図である。同図に示すように、アートワーク販売処理を開始したプラットフォームポータルサーバ3は、カタログデータベース9におけるアートワークの選択結果と、購入者情報及び代金とを含む購入申し込みを取得する(ステップS30)。そして、販売条件及び出品トランザクションのIDをカタログデータベース9から読み出し(ステップS31)、購入申し込みが成立するか否かを判定する(ステップS32)。この判定の詳細については、上述したとおりである。
【0113】
ステップS32において購入不成立と判定した場合、プラットフォームポータルサーバ3は、購入者端末5に購入不可を返し、アートワーク販売処理を終了する(ステップS33)。一方、購入成立と判定した場合、プラットフォームポータルサーバ3はまず、出品トランザクションのIDに基づいてセキュアキーストア3aから秘密鍵1及び暗号化データ暗号化鍵1を読み出し(ステップS34)、読み出した秘密鍵1を用いて、読み出した暗号化データ暗号化鍵1を復号する(ステップS35)。
【0114】
次にプラットフォームポータルサーバ3は、ブロックチェーンネットワーク7において出品トランザクションを参照することにより、暗号化アートワークのハッシュ値を取得する(ステップS36)。そして、取得したハッシュ値に基づいて分散ファイルシステム8から暗号化アートワークを読み出し、ステップS35で取得したデータ暗号化鍵1により復号する(ステップS37)。
【0115】
次にプラットフォームポータルサーバ3は、公開鍵2及び秘密鍵2のペアを生成する(ステップS38)。そして、
図12のステップS1,S2で生成したコントラクトアカウントに対して、購入者情報、出品トランザクションのID、金額、及び公開鍵2を含む購入トランザクションを発行する(ステップS39)。
【0116】
次いでプラットフォームポータルサーバ3は、購入トランザクションのIDからウォーターマークを生成し(ステップS40)、生成したウォーターマークをアートワークに埋め込むためのウォーターマーク埋め込み処理を実行する(ステップS41)。
【0117】
図16は、
図14のステップS41で実行されるウォーターマーク埋め込み処理の詳細を示す図である。なお、以下では、ウォーターマークはQRコード(登録商標)であるとして説明を続ける。また、
図16には、一例として特異値分解(SVD:Singular Value Decomposition)を利用するアプローチ(SVD Based Approach)による場合を示しているが、他のアプローチによってウォーターマーク埋め込み処理を行ってもよい。そのようなアプローチの例としては、離散的コサイン変換(DCT:Discrete Cosine Transform)を利用するアプローチ(Optimal DCT-Psychovisual Threshold)、YCbCr色空間での符号化を用いるアプローチ(YCbCr Colour Space Encoding Approach)、多重解像度解析を用いるアプローチ(Multi-resolution Wavelet Decomposition)などが挙げられる。
【0118】
図16に示すように、プラットフォームポータルサーバ3はまず、ウォーターマークであるn×nビットのQRコード(登録商標)W=(w
1,w
2,・・・,w
n×n)を取得する(ステップS50)。w
1,w
2,・・・,w
n×nはそれぞれ、0又は1のいずれかの値である。
【0119】
次にプラットフォームポータルサーバ3は、所定のロバストネスファクターσを取得する(ステップS51)。ロバストネスファクターσは、大きいほど埋め込まれたQRコード(登録商標)の復元可能性を上昇させる一方で、大きいほど透かし入りアートワークの画質を低下させる値である。したがって、QRコード(登録商標)の復元可能性と透かし入りアートワークの画質を考慮して、予め最適なσの値を決めておくことが好ましい。
【0120】
続いてプラットフォームポータルサーバ3は、m×mビットのアートワークを、色チャネル別(例えば、RGBカラーモデルの赤(Red)、緑(GReen)、青(Blue))の3つの画像I1,I2,I3に分離する(ステップS52)。そして、画像I1,I2,I3のうち最もエントロピーの高い画像(すなわち、最も均質で変化の少ない画像)を選択する(ステップS53)。ここでは、画像I1のエントロピーが最も高く、ステップS53で画像I1が選択されたとして説明を続ける。
【0121】
画像I1を選択したプラットフォームポータルサーバ3は、画像I1を、オーバーラップしない各4×4ビットのブロックB(j)に分割する(ステップS54)。ただし、1≦j≦(m/4)×(m/4)である。
【0122】
次にプラットフォームポータルサーバ3は、所定の種(シード)を用いて、重複しないn×n個の擬似乱数の列P=(p1,p2,・・・,pn×n)を発生する(ステップS55)。ただし、1≦pk≦(m/4)×(m/4)である。そしてプラットフォームポータルサーバ3は、1以上n×n以下である整数kのそれぞれについて、ステップS57~S60の処理を実行する(ステップS56)。
【0123】
ステップS57~S60の処理について具体的に説明すると、プラットフォームポータルサーバ3はまず、pk番目のブロックB(pk)を選択する(ステップS57)。次にプラットフォームポータルサーバ3は、選択したブロックB(pk)を特異値分解することによって得られる4×4の対角行列S(pk)=diag(s1,s2,s3,s4)を取得する(ステップS58)。なお、この特異値分解は、B(pk)=U(pk)S(pk)V(pk)Tにより表される。ただし、U(pk)及びV(pk)はそれぞれ、4×4のユニタリ行列である。
【0124】
そして、ロバストネスファクターσ及びビットwkを用いてこの対角行列S(pk)を操作することにより、4×4の対角行列S'(pk)=diag(s1,s2+σ×wk,s2,s3×0.1)を導出する(ステップS59)。そして、導出したS'(pk)を用いて特異値分解の逆処理を行うことにより、WB(pk)を生成する(ステップS60)。具体的には、WB(pk)=U(pk)S'(pk)V(pk)Tの計算を行うことににより、WB(pk)を生成する。
【0125】
ステップS57~S60の処理がすべて完了したら、プラットフォームポータルサーバ3は、生成されたn×n個のWB(j)と、ステップS57で選択されなかった(m/4)×(m/4)-n×n個のブロックB(j)とを用いて、画像I1'を生成する(ステップS61)。具体的には、画像I1を構成する(m/4)×(m/4)個のブロックB(j)のうち、n×n個のブロックB(p1)~B(pn×n)をそれぞれWB(p1)~WB(pn×n)で置き換えることにより、画像I1'を生成する。
【0126】
最後に、プラットフォームポータルサーバ3は、画像I1'と、画像I2,I3とを用いて透かし入りアートワークを生成する(ステップS62)。具体的には、画像I1',I2,I3を合成することにより、透かし入りアートワークを生成する。
【0127】
図14に戻る。ウォーターマーク埋め込み処理を終えたプラットフォームポータルサーバ3は、データ暗号化鍵2を生成し、公開鍵2を用いて暗号化する(ステップS42)。そして、
図15に示すように、購入トランザクションのIDに対応付けて、公開鍵2及び秘密鍵2のペアと、暗号化されたデータ暗号化鍵2とをセキュアキーストア3aに格納する(ステップS43)。
【0128】
次にプラットフォームポータルサーバ3は、データ暗号化鍵2を用いて透かし入りアートワークを暗号化し(ステップS44)、暗号化された透かし入りアートワークを分散ファイルシステム8に格納する(ステップS45)。その後、プラットフォームポータルサーバ3は、暗号化透かし入りアートワークのハッシュ値、購入トランザクションのID、及び秘密鍵2を購入者端末5に返送する(ステップS46)とともに、購入トランザクションのID、及び売上金の一部をアーティスト端末4に返送する(ステップS47)。そしてさらに、売上金の残部をインセンティブプール3cに格納し(ステップS48)、アートワーク販売処理を終了する。
【0129】
ここで、透かし入りアートワークからウォーターマークを読み出すためのウォーターマーク読み出し処理について、
図17を参照しながら説明する。
図17には
図16に示したウォーターマーク埋め込み処理により生成した透かし入りアートワークからウォーターマークを読み出すための処理を示しているが、他の種類のウォーターマーク読み出し処理により透かし入りアートワークを生成した場合には、その処理に応じた読み出し処理が必要となることは言うまでもない。また、以下ではプラットフォームポータルサーバ3がウォーターマーク読み出し処理を行うこととして説明するが、他のコンピュータでウォーターマーク読み出し処理を行ってもよい。
【0130】
プラットフォームポータルサーバ3はまず、所定のロバストネスファクターσを取得する(ステップS71)。このロバストネスファクターσは、
図16のステップS51で取得したロバストネスファクターσと同じ値であることが好ましい。
【0131】
続いてプラットフォームポータルサーバ3は、m×mビットの透かし入りアートワークを、色チャネル別の3つの画像I1,I2,I3に分離する(ステップS71)。そして、画像I1,I2,I3のうち最もエントロピーの高い画像を選択する(ステップS72)。ステップS71,S72の処理は、
図16のステップS52,S53と同じ処理である。ここでも、画像I1のエントロピーが最も高く、ステップS72で画像I1が選択されたとして説明を続ける。
【0132】
画像I1を選択したプラットフォームポータルサーバ3は、画像I1を、オーバーラップしない各4×4ビットのブロックB(j)に分割する(ステップS73)。ただし、1≦j≦(m/4)×(m/4)である。この処理も、
図16のステップS54と同じ処理である。
【0133】
次にプラットフォームポータルサーバ3は、所定の種(シード)を用いて、重複しないn×n個の擬似乱数の列P=(p
1,p
2,・・・,p
n×n)を発生する(ステップS74)。ただし、1≦p
k≦(m/4)×(m/4)である。ステップS74で用いる所定の種は、
図16のステップS55で用いた種と同じである必要がある。種が分からなければQRコード(登録商標)を読み出すことはできないので、種は一種の共通鍵としても機能する。
【0134】
続いてプラットフォームポータルサーバ3は、1以上n×n以下である整数kのそれぞれについて、ステップS76~S79の処理を実行する(ステップS75)。
【0135】
ステップS76~S79の処理について具体的に説明すると、プラットフォームポータルサーバ3はまず、p
k番目のブロックB(p
k)を選択する(ステップS76)。次にプラットフォームポータルサーバ3は、選択したブロックB(p
k)を特異値分解することによって得られる4×4の対角行列S'(p
k)=diag(s
1,s
2',s
3',s
4')を取得する(ステップS77)。この特異値分解は、
図16のステップS58と同様、B(p
k)=U(p
k)S'(p
k)V(p
k)
Tにより表される。
【0136】
次にプラットフォームポータルサーバ3は、s2'-s3'を導出する(ステップS78)。こうして導出される値は、
図16のステップS59で説明した対角行列S'(p
k)の導出方法から明らかなように、σ×w
kに等しい。そこでプラットフォームポータルサーバ3は、導出した値がσ/2以上である(σ×w
k≧σ/2)ならばw
kに1を代入し、さもなければw
kに0を代入する(ステップS79)。これにより、k番目のw
kが読み出されたことになる。
【0137】
ステップS76~S79の処理がすべて完了したら、プラットフォームポータルサーバ3は、読み出したn×n個のwkに基づき、n×nビットのQRコード(登録商標)W=(w1,w2,・・・,wn×n)を取得する(ステップS80)。これにより、ウォーターマークであるQRコード(登録商標)Wの読み出しが完了する。
【0138】
図18は、
図12のステップS9で実行される報酬支払い処理の前提として、第三者端末6のブラウザソフトウェアにインストールされたプラグインによって実行される不正使用監視処理の詳細を示す図である。同図に示すように、プラグインはまず、WEBサイトがロードされたか否かを判定し(ステップS90)、ロードされたと判定した場合に、ロードされたWEBサイトから画像を抽出する(ステップS91)。そして、抽出した画像の中に未確認の画像(すなわち、後述するステップS93~S101の処理の対象となったことがないもの)があるか否かを判定する(ステップS92)。ステップS90でロードされていないと判定した場合、及び、ステップS92で未確認の画像がないと判定した場合、プラグインはステップS90に戻って処理を繰り返す。
【0139】
ステップS92で未確認の画像があると判定したプラグインは、1以上の未確認の画像のそれぞれについて、ステップS94~S101の処理を実行する(ステップS93)。
【0140】
具体的に説明すると、プラグインはまず、画像から画像IDを抽出する(ステップS94)。ここで画像IDを抽出できなければ、プラグインは次の画像に処理を移す。一方、画像IDを抽出できた場合、プラグインは、ブロックチェーンネットワーク7を参照し、抽出した画像IDを含む購入契約(購入トランザクション)の有無を確認する(ステップS96)。そして、確認の結果に基づき、抽出した画像IDを含む購入契約があるか否かを判定する(ステップS97)。
【0141】
ステップS97で購入契約があると判定したプラグインは、次の画像に処理を移す。一方、ステップS97で購入契約がないと判定したプラグインは、まずサイト表示をブロックする(ステップS98)。このブロックは、例えば、ブラウザソフトウェアの画面全体を覆う警告表示を表示することによって行えばよい。
【0142】
続いてプラグインは、ブロックチェーンネットワーク7を参照し、ステップS94で抽出した画像IDに対応する不正使用報告(報告トランザクション)の有無を確認する(ステップS99)。そして、確認の結果に基づき、ステップS94で抽出した画像IDを含む不正使用報告があるか否かを判定する(ステップS100)。
【0143】
ステップS100で不正使用報告があると判定したプラグインは、新たな報告をすることなく、次の画像に処理を移す。一方、ステップS100で不正使用報告がないと判定したプラグインは、
図12のステップS1,S2で生成されたコントラクトアカウントに対して、画像ID、該当WEBサイトのアドレス及び内容、不正使用を発見した日付を含む報告トランザクションを発行し(ステップS101)、次の画像に処理を移す。1以上の未確認の画像のすべてについて以上の処理が終了した後、プラグインはステップS90に戻って処理を続ける。これにより、第三者端末6においてブラウザソフトウェアが立ち上がっている間、プラグインはアートワークの不正使用を監視し続けることになる。
【0144】
図19は、
図12のステップS9で実行される報酬支払い処理の詳細を示す図である。同図に示すように、報酬支払い処理を開始したプラットフォームポータルサーバ3は、新たに記録された報告トランザクションをブロックチェーンネットワーク7から取り出して参照することにより、第三者端末6及び画像IDを特定する(ステップS110)。
【0145】
次にプラットフォームポータルサーバ3は、特定した画像IDに対応する仮想通貨をインセンティブプール3cから引き出す(ステップS111)。ここで引き出す仮想通貨の金額の算定方法については、上述したとおりである。最後に、プラットフォームポータルサーバ3は、ステップS110で特定した第三者端末に対して、ステップS111で引き出した仮想通貨を送信し(ステップS112)、報酬支払い処理を終了する。
【0146】
図20は、
図12のステップS10で実行される真贋判定処理の詳細を示す図である。同図に示すように、真贋判定処理を開始したプラットフォームポータルサーバ3はまず、真贋判定依頼から判定対象アートワーク、アーティスト情報、及び、比較対象アートワークを特定する情報を取得する(ステップS120)。これらの情報の内容については、上述したとおりである。
【0147】
次にプラットフォームポータルサーバ3は、判定対象アートワークについて上述したアーティスト特徴量及びアートワーク特徴量を取得し(ステップS121)、さらに、アーティスト情報に対応するアーティスト特徴量を特徴量データベース3bから読み出す(ステップS122)とともに、比較対象アートワークに対応するアートワーク特徴量を特徴量データベース3bから読み出す(ステップS123)。
【0148】
その後、プラットフォームポータルサーバ3は、アーティスト特徴量及びアートワーク特徴量のそれぞれを比較することにより判定対象アートワークの真贋を判定し(ステップS124)、判定の結果を第三者端末6にリターンして(ステップS125)真贋判定処理を終了する。
【0149】
以上説明したように、本実施の形態によるアートワーク取引・管理システム1によれば、第三者端末6のブラウザソフトウェアのプラグインが自動的に、WEBサイト上でのアートワークの不正使用を発見し報告するので、アートワークへのアクセシビリティを確保しつつも、アートワークの無許諾での再生(使用)を抑制することが可能になる。
【0150】
また、報告を生成した第三者端末6に対して報酬を与えることができるので、第三者端末6の持ち主に対し、本発明のプラグインを動作させ続けることについてのインセンティブを与えることが可能になる。
【0151】
また、第三者端末6は、同一画像IDについての報告トランザクションが既に存在するか否かを確認してから報告トランザクションを発行するようにしているので、報告トランザクションの大量発生を防止することができる。
【0152】
また、出品されたアートワークについて、アーティスト特徴量及びアートワーク特徴量を取得し、特徴量データベースに格納するようにしているので、後に、市場に流通しているアートワークの真贋を判別することが可能になる。
【0153】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明が、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施され得ることは勿論である。
【0154】
例えば、アーティストのフィンガープリントを示すメタデータとして、アートワークにアーティスト特徴量を付加することとしてもよい。この付加は、例えば、
図6に示した特徴量取得部13により実行すればよい。
【0155】
また、上記実施の形態では、購入トランザクションのIDに基づいてウォーターマークを生成する例を説明したが、アーティスト特徴量又はアートワーク特徴量に基づいてウォーターマークを生成し、購入トランザクションのIDに基づくウォーターマークに代え、又は、購入トランザクションのIDに基づくウォーターマークとともに、購入者端末5に対して送信するアートワークに埋め込むこととしてもよい。なお、アーティスト特徴量又はアートワーク特徴量に基づくウォーターマークの生成は、例えば、
図7に示したウォーターマーク生成部36により実行すればよい。また、生成したウォーターマークの埋め込みは、例えば、
図7に示したウォーターマーク埋め込み処理部37により実行すればよい。
【符号の説明】
【0156】
1 アートワーク取引・管理システム
2 ネットワーク
3 プラットフォームポータルサーバ
3a セキュアキーストア
3b 特徴量データベース
3c インセンティブプール
4 アーティスト端末
5 購入者端末
6 第三者端末
7 ブロックチェーンネットワーク
8 分散ファイルシステム
9 カタログデータベース
11,30,70 受信部
12 重複判定部
13 特徴量取得部
14 アートワーク暗号化処理部
15 アートワーク格納処理部
16 鍵ペア生成部
17 トランザクション発行部
18 鍵暗号化処理部
19 カタログ生成部
20,41,62,74 送信部
31 購入可否判定部
32 鍵復号処理部
33 アートワーク復号処理部
34 鍵ペア生成部
35 トランザクション発行部
36 ウォーターマーク生成部
37 ウォーターマーク埋め込み処理部
38 アートワーク暗号化処理部
39 アートワーク格納処理部
40 鍵暗号化処理部
50 画像抽出部
51 アートワーク検出部
52 購入履歴判定部
53 報告有無判定部
54 報告部
60 報告取得部
61 報酬額決定部
71 特徴量取得部
72 特徴量読出部
73 真贋判定部
100 コンピュータ
101 CPU
102 記憶装置
103 入力装置
104 出力装置
105 通信装置
P ペン
θ 方位角
σ ロバストネスファクター
φ チルト角
ψ 回転角