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特許7565352電力測定のためのクロストークキャンセル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】電力測定のためのクロストークキャンセル
(51)【国際特許分類】
   H02J 13/00 20060101AFI20241003BHJP
   G01R 22/06 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H02J13/00 301A
G01R22/06 130Z
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022525498
(86)(22)【出願日】2020-10-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-18
(86)【国際出願番号】 US2020057674
(87)【国際公開番号】W WO2021086921
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2023-09-29
(31)【優先権主張番号】16/671,422
(32)【優先日】2019-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513113895
【氏名又は名称】ランディス・ギア イノベーションズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】LANDIS+GYR INNOVATIONS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 英隆
(72)【発明者】
【氏名】ボビック,デイビッド
【審査官】山口 大
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-509491(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0172192(US,A1)
【文献】特開2015-219235(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2022/0190705(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 13/00
G01R 22/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配電網に接続された装置であって、
上記配電網の少なくとも1つの位相における電圧及び電流を測定するように構成された測定回路と、
コンピュータ可読命令を実行するように構成されたプロセッサと、
上記測定回路のクロストーク効果を低減するクロストークキャンセル関数を格納し、さらに、上記プロセッサによって実行されたとき、上記プロセッサに下記のステップを含む動作を実行させる上記コンピュータ可読命令を格納するように構成されたメモリとを備え、
上記動作は、
上記測定回路から、大きさ及び位相をそれぞれ含む電圧値及び電流値を少なくとも含む測定ポイントを取得することと、
上記クロストークキャンセル関数が上記電圧値及び上記電流値の大きさ及び位相の両方に適用されるように上記クロストークキャンセル関数を上記測定ポイントに適用することで、上記測定ポイントを変換し、変換された測定ポイントを取得することと、
少なくとも上記変換された測定ポイントに基づいて、少なくとも上記配電網の特性を決定することと、
上記配電網の特性を遠隔装置に送信させることとを含む、
装置。
【請求項2】
上記配電網は3つの位相を有し、
上記測定ポイントは、上記3つの位相のそれぞれについて、電圧値及び電流値を含む、
請求項1記載の装置。
【請求項3】
上記3つの位相のそれぞれに係る上記電圧値及び上記電流値のそれぞれは、各値の大きさ及び位相によって決定される、
請求項2記載の装置。
【請求項4】
上記クロストークキャンセル関数は、クロストークキャンセル行列Zを含み、
上記クロストークキャンセル関数を上記測定ポイントに適用することは、次式
【数1】
によって実行され、
【数2】
は上記測定ポイントであり、
【数3】
は上記測定ポイントの電圧値であり、
【数4】
は上記測定ポイントの電流値であり、
【数5】
は上記変換された測定ポイントであり、
【数6】
は上記変換された測定ポイントの電圧値であり、
【数7】
は上記変換された測定ポイントの電流値であり、
Tijは、上記クロストークキャンセル行列Zの(i,j)番目の要素である、
請求項1記載の装置。
【請求項5】
上記クロストークキャンセル関数は、複数のソースポイントと、上記複数のソースポイントに対応する複数の測定ポイントとに基づいて決定される、
請求項1記載の装置。
【請求項6】
上記クロストークキャンセル関数は、上記複数の測定ポイントを上記複数のソースポイントに変換するクロストークキャンセル行列として決定される、
請求項5記載の装置。
【請求項7】
上記複数のソースポイントのそれぞれは、電圧値及び電流値の特定の組み合わせを含み、
上記複数のソースポイントの電圧値は、同じ2乗平均根(RMS)の大きさと、複数の位相とを有し、
上記複数のソースポイントの電流値は、同じRMSの大きさと、複数の位相とを有する、
請求項5記載の装置。
【請求項8】
上記複数のソースポイントは、上記配電網からは独立した基準電源装置によって提供される、
請求項5記載の装置。
【請求項9】
上記配電網の特性は、平均電力消費量、合計電力消費量、電力サージ、又は負荷変動のうちの1つを含む、
請求項1記載の装置。
【請求項10】
配電網の測定データにおけるクロストークを低減する方法であって、上記方法は、
上記配電網に接続されたメーターによって、上記配電網の少なくとも1つの位相における電圧値及び電流値であって、各値の大きさ及び位相によってそれぞれ決定される電圧値及び電流値を少なくとも含む測定ポイントを取得することと、
上記メーターによって、クロストークキャンセル関数が上記メーターのクロストーク効果を低減するように、かつ、上記クロストークキャンセル関数が上記電圧値及び上記電流値の大きさ及び位相の両方に適用されるように、上記クロストークキャンセル関数を上記測定ポイントに適用することで、上記測定ポイントを変換し、変換された測定ポイントを取得することと、
上記メーターによって、少なくとも上記変換された測定ポイントに基づいて、上記配電網の少なくとも1つの特性を決定することと、
上記メーターによって、上記配電網の特性を遠隔装置に送信させることとを含む、
方法。
【請求項11】
上記クロストークキャンセル関数は、クロストークキャンセル行列Zを含み、
上記クロストークキャンセル関数を上記測定ポイントに適用することは、次式
【数8】
によって実行され、
【数9】
は上記測定ポイントであり、
【数10】
は上記測定ポイントの電圧値であり、
【数11】
は上記測定ポイントの電流値であり、
【数12】
は上記変換された測定ポイントであり、
【数13】
は上記変換された測定ポイントの電圧値であり、
【数14】
Tijは、上記クロストークキャンセル行列Zの(i,j)番目の要素である、
請求項10記載の方法。
【請求項12】
上記クロストークキャンセル関数は、複数のソースポイントと、上記複数のソースポイントに対応する複数の測定ポイントとに基づいて決定される、
請求項10記載の方法。
【請求項13】
上記クロストークキャンセル関数は、上記複数の測定ポイントを上記複数のソースポイントに変換するクロストークキャンセル行列として決定される、
請求項12記載の方法。
【請求項14】
上記複数のソースポイントは、上記配電網からは独立した基準電源装置によって提供される、
請求項12記載の方法。
【請求項15】
上記複数のソースポイントのそれぞれは、電圧値及び電流値の特定の組み合わせを含み、
上記複数のソースポイントの電圧値は、同じ2乗平均根(RMS)の大きさと、複数の位相とを有し、
上記複数のソースポイントの電流値は、同じRMSの大きさと、複数の位相とを有する、
請求項12記載の方法。
【請求項16】
配電網のメーターであって、
上記メーターは計測モジュール及び通信モジュールを備え、
上記計測モジュールは、
配電網に係る測定ポイントであって、上記配電網の少なくとも1つの位相における電圧値及び電流値を少なくとも含む測定ポイントを取得し、
クロストークキャンセル関数が上記計測モジュールのクロストーク効果を低減するように、かつ、上記クロストークキャンセル関数が上記電圧値及び上記電流値の大きさ及び位相の両方に適用されるように、上記クロストークキャンセル関数を上記測定ポイントに適用することで、上記測定ポイントを変換し、変換された測定ポイントを取得し、
少なくとも上記変換された測定ポイントに基づいて、上記配電網の少なくとも1つの特性を決定するように構成され、
上記通信モジュールは、上記配電網の少なくとも1つの特性を、メッシュネットワークを介して遠隔装置に送信するように構成された、
メーター。
【請求項17】
上記クロストークキャンセル関数は、クロストークキャンセル行列Zを含み、
上記クロストークキャンセル関数を上記測定ポイントに適用することは、次式
【数15】
によって実行され、
【数16】
は上記測定ポイントであり、
【数17】
は上記測定ポイントの電圧値であり、
【数18】
は上記測定ポイントの電流値であり、
【数19】
は上記変換された測定ポイントであり、
【数20】
は上記変換された測定ポイントの電圧値であり、
【数21】
は上記変換された測定ポイントの電流値であり、
Tijは、上記クロストークキャンセル行列Zの(i,j)番目の要素である、
請求項16記載のメーター。
【請求項18】
上記クロストークキャンセル関数は、複数のソースポイントと、上記複数のソースポイントに対応する複数の測定ポイントとに基づいて決定される、
請求項16記載のメーター。
【請求項19】
上記クロストークキャンセル関数は、上記複数の測定ポイントを上記複数のソースポイントに変換するクロストークキャンセル行列として決定される、
請求項18記載のメーター。
【請求項20】
上記複数のソースポイントは、上記配電網からは独立した基準電源装置によって提供される、
請求項18記載のメーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、配電網のための電力測定に関する。より詳しくは、本開示は、配電網の測定データからチャネルクロストークを低減又は除去することにより、電力測定の測定精度を改善することに関する。
【背景技術】
【0002】
電力グリッドのような配電網において、配電網のエンドポイントに取り付けられた電力メーターは、典型的には、所定の時間期間内のエンドポイントにおける電力消費量、エンドポイントにおいて測定された電気信号のピーク電圧などのような、配電網に関連付けられた様々な特性を測定するように構成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
電力測定の測定精度に影響する主要な成分は、チャネルクロストークである。チャネルクロストークは、送信システムの1つの回路又はチャネルにおいて送信された信号が、他の回路又はチャネルにおいて望ましくない影響を生じる現象である。クロストークは、通常、ある回路、回路部分、又はチャネルから他の回路、回路部分、又はチャネルへの望ましくない容量性、誘導性、又は導電性の結合によって引き起こされる。チャネルクロストークが適切に取り扱われなければ、電力メーターによって測定される様々な特性は不正確になり、したがって役に立たなくされるであろう。
【0004】
本開示は、電力測定のためのクロストークキャンセルを行うための装置及び処理の態様及び実施例を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
電力測定のためのクロストークキャンセルを行うための装置及び処理の態様及び実施例を開示する。例えば、配電網に接続された装置は、配電網の少なくとも1つの位相における電圧及び電流を測定するように構成された測定回路と、コンピュータ可読命令を実行するように構成されたプロセッサと、測定回路のクロストーク効果を低減するクロストークキャンセル関数を格納し、さらに、コンピュータ可読命令を格納するように構成されたメモリとを含む。コンピュータ可読命令がプロセッサによって実行される場合、本処理は、測定回路から測定ポイントを取得することを含む動作を実行する。測定ポイントは、大きさ及び位相をそれぞれ含む電圧値及び電流値を少なくとも含む。本動作は、クロストークキャンセル関数を測定ポイントに適用することで、測定ポイントを変換し、変換された測定ポイントを取得することをさらに含む。クロストークキャンセル関数は、電圧値及び電流値の大きさ及び位相の両方に適用される。本動作はまた、少なくとも変換された測定ポイントに基づいて、少なくとも配電網の特性を決定することと、配電網の特性を遠隔装置に送信させることとを含む。
【0006】
もう1つの実施例では、配電網の測定データにおけるクロストークを低減する方法は、配電網に接続されたメーターによって、測定ポイントを取得することを含む。測定ポイントは、配電網の少なくとも1つの位相における電圧値及び電流値を少なくとも含む。電圧値及び電流値のそれぞれは、各値の大きさ及び位相によって決定される。本方法は、メーターによって、クロストークキャンセル関数を測定ポイントに適用することで、測定ポイントを変換し、変換された測定ポイントを取得することをさらに含む。クロストークキャンセル関数は、メーターのクロストーク効果を低減し、電圧値及び電流値の大きさ及び位相の両方に適用される。本方法はさらに、メーターによって、少なくとも変換された測定ポイントに基づいて、配電網の少なくとも1つの特性を決定することと、メーターによって、配電網の特性を遠隔装置に送信させることとを含む。
【0007】
追加の実施例では、配電網のメーターは、配電網に係る測定ポイントを取得するように構成された計測モジュールを含む。測定ポイントは、配電網の少なくとも1つの位相における電圧値及び電流値を少なくとも含む。計測モジュールは、クロストークキャンセル関数を測定ポイントに適用することで、測定ポイントを変換し、変換された測定ポイントを取得するようにさらに構成される。クロストークキャンセル関数は、計測モジュールのクロストーク効果を低減し、電圧値及び電流値の大きさ及び位相の両方に適用される。計測モジュールは、少なくとも変換された測定ポイントに基づいて、配電網の少なくとも1つの特性を決定するようにさらに構成される。配電網のメーターは、配電網の少なくとも1つの特性を、メッシュネットワークを介して遠隔装置に送信するように構成された通信モジュールをさらに含む。
【0008】
これらの例示的な態様及び特徴は、ここで説明する主題を限定又は定義するためではなく、本願において説明する概念についての理解を支援する実施例を提供するために言及される。ここに説明する主題の他の態様、利点、及び特徴は、本願全体に目を通すことにより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示のある実施例に係る、配電網における電力測定のクロストークキャンセルを行うための例示的な動作環境を示すブロック図である。
図2】本願で提示する技術の態様を実装するのに適したメーターの例を示すブロック図である。
図3】本開示のある実施例に係る、メーターのためのクロストークキャンセル関数を生成するシステムの例を示すブロック図である。
図4】本開示のある実施例に係る、メーターのためのクロストークキャンセル関数を生成する処理の例を示す図である。
図5】本開示のある実施例に係る、メーターにおいてクロストークキャンセルを実行する処理の例を示す図である。
図6】本願で提示される技術の態様を実装するのに適した計算装置の例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示のこれら及び他の特徴、態様、及び利点は、以下の詳細な説明が添付の図面を参照して読まれるとき、さらに理解される。
【0011】
配電網における電力測定に係るクロストークキャンセルのためのシステム及び方法が提供される。メーターは、配電網に関連付けられた様々な地理的位置に展開され、それらの各場所における電力消費量のような特性を測定するように構成される。配電網の様々な特性を測定するために、メーターは、配電網によって提供される電源の各位相における電気信号の電圧及び電流を測定する測定回路を有して構成される。メーターはまた、例えばメーターのメモリに格納された、クロストークキャンセル関数へのアクセスを有する。
【0012】
メーターの測定回路が、電圧及び電流の測定値を含む測定ポイントを取得する場合、メーターは、クロストークキャンセル関数を測定ポイントに適用し、変換された測定ポイントを生成する。いくつかの実施例では、クロストークキャンセル関数は、測定ポイントにおける電圧値又は電流値の大きさ及び位相の両方に適用される。測定ポイントと比較すると、変換された測定ポイントは、より少ないチャネルクロストークを含み、従って、電気信号の電圧及び電流の値をより正確に反映する。
【0013】
いくつかの実施例では、メーターに係るクロストークキャンセル関数は、メーターの較正処理の間に生成される。基準電源は、一組のソースポイントに従って電気信号をメーターに提供するように構成される。一組のソースポイントは、電圧値及び電流値に係る大きさ及び位相の異なる組み合わせを含む。一組のソースポイントに対応する一組の測定ポイントは、メーターによって、その測定回路を用いて取得される。理想的状態、すなわち、チャネルクロストーク又は他の歪みが存在しない場合、一組の測定ポイントは、一組のソースポイントと同一になるはずである。しかしながら、チャネルクロストークを含む様々な歪みに起因して、測定ポイントは、それらの対応するソースポイントとは異なる。したがって、測定ポイントをソースポイントにマッピング又は変換できるように、測定ポイント及びソースポイントに基づいてクロストークキャンセル関数が取得されうる。例えば、クロストークキャンセル関数は、クロストークキャンセル行列によって表される線形関数として決定されてもよい。クロストークキャンセル行列に一組の測定ポイントを乗算することで、一組のソースポイントの近似を生成してもよい。
【0014】
決定されたクロストークキャンセル関数を適用した後で、変換された測定ポイントは、配電網の様々な特性を導出又は計算するために利用される。次いで、これらの特性は、メーターによって、配電網の特性データの収集を担当するヘッドエンドシステム又は他のシステム又はノードに送信される。
【0015】
本開示において説明する技術は、各測定ポイントに含まれるチャネルクロストークを低減又は除去することで、配電網内のメーターにおいて取得される測定データの精度を向上させる。クロストークキャンセルのために大きさのみが考慮される従来のアプローチと比較して、本願で説明する技術は、測定ポイントの大きさ及び位相の両方を組み込むことで、測定データの精度を改善する。生成されるクロストークキャンセル関数は、測定回路のクロストーク動力学に一致させるように電圧及び電流値をスケーリング及び回転させることができ、これにより、チャネルクロストークの影響は低減又は除去される。その結果、電力消費量、ピーク電圧、及びその他のような、測定ポイントに基づいて計算される配電網の任意の特性は、適切なクロストークキャンセルなしで計算される場合よりも高い精度を有する。配電網のユーザに対する請求書発行、配電網に関連付けられた問題の診断、配電網の性能分析、などのような、配電網の様々な態様の精度も改善されうる。
【0016】
図1は、配電網における電力測定に係るクロストークキャンセルのための例示的な動作環境100を示す。環境100は、配電網におけるメーターによって取得された測定データを伝送するために、配電網に関連付けられたメッシュネットワーク140を含む。メッシュネットワーク140は、様々な地理的位置に展開された複数の電力メーター112A~112H(これらは、本願では、個別に又は集合的に、メーター112と呼ばれることがある)を含む。メーター112は、リソース消費量の特性、又は、ネットワークにおける電力使用量に関連する他の特性のような、配電網の様々な動作特性を測定するように実装されてもよい。例示的な特性は、平均又は合計の電力消費量、電気信号のピーク電圧、電力サージ、及び負荷変動を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施例では、メーター112は、商用及び産業用(commercial & industrial:C&I)のメーター、住宅のメーター、などを含む。
【0017】
メーター112は、収集又は生成されたデータを、メーター測定データ122として、メッシュネットワーク140を介してルートノード114A及び114B(これらは、本願では、個別に又は集合的に、ルートノード114と呼ばれることがある)に送信する。ネットワーク140のルートノード114は、メーター112と通信して所定の動作、例えば、メーター112を管理すること、メーター112から測定データ122を収集すること、また、ヘッドエンドシステム104にデータを転送することを行うように構成されてもよい。ルートノード114もまた、それ自体でデータを測定及び処理するノードとして機能するように構成されてもよい。ルートノード114は、ヘッドエンドシステム104と通信することができるパーソナルエリアネットワーク(personal area network:PAN)コーディネータ、ゲートウェイ、又は他の任意の装置であってもよい。
【0018】
ルートノード114は、生成及び収集されたメーター測定データ122を、インターネット、イントラネット、又は他の任意のデータ通信ネットワークのような他のネットワーク150を介して、最終的にヘッドエンドシステム104に送信する。ヘッドエンドシステム104は、ルートノード114からデータストリーム又はメッセージを受信する中央処理システムとして機能してもよい。ヘッドエンドシステム104、又は、公益事業会社に関連付けられた他のシステムは、請求書発行、性能分析、又はトラブルシューティングのような様々な目的で、収集されたデータを処理又は分析してもよい。
【0019】
図1は特定のネットワークトポロジー(例えばDODAGツリー)を示すが、他のネットワークトポロジーもまた可能である(例えば、リングトポロジー、メッシュトポロジー、スタートポロジーなど)ことが理解されるべきである。さらに、下記の説明は1つのメーター112の態様に焦点を合わせているが、本願において説明する技術は、メーターが配電網に係る測定データを生成するように構成される限り、メーター112及びルートノード114を含む、メッシュネットワークにおける任意のメーターによって適用されてもよい。
【0020】
図2は、本願で提示される技術の態様を実装するのに適したメーターの例を示すブロック図である。メーター112は、ローカル接続を介して接続された通信モジュール202及び計測モジュール204を含む。計測モジュール204の機能は、配電網206の特性を測定及び計算するために必要な機能を含む。計測モジュール204は、プロセッサ224、メモリ222、及び測定回路226を含んでもよい。測定回路226は、電気信号の測定を取り扱い、また、得られた測定値の記録を取り扱ってもよい。計測モジュール204におけるプロセッサ224は、計測モジュール204によって実行される機能を制御する。メモリ222は、測定ポイントに含まれるチャネルクロストークを低減又は除去するために使用されるクロストークキャンセル関数228のような、その機能を実行するためにプロセッサ224によって必要とされるデータを格納する。メモリ222はまた、配電網の様々な特性を計算するためにプロセッサ224によって使用される、生成された変換された測定ポイント230を格納してもよい。計算された様々な特性もまた、メモリ222に格納されてもよい。
【0021】
いくつかの実施例では、測定回路226は、配電網206に接続され、したがって、メーター112における電気信号の電圧及び電流の値を検出及び測定することができる。配電網206が、メーター112の地理的位置における構内設備に三相電力を提供する場合、測定回路226は、これらの三相(すなわち、位相A、B、及びC)に接続され、それらの各電圧値V及び電流値Iを測定してもよい。
【0022】
いくつかの実施例では、測定されたデータは、測定ポイント210を用いて表される。各測定ポイント210は、長さ6の複素ベクトルである。測定ポイント210の最初の3つの要素は、位相A、B、及びCにおけるアナログ波形としてメーター112によってそれぞれ測定されている電圧
【数1】
を表す。測定ポイント210の最後の3つの要素は、位相A、B、及びCにおけるアナログ波形としてメーター112によってそれぞれ測定されている電流
【数2】
を表す。したがって、測定ポイント210
【数3】
は、下記のベクトル形式を用いて表されてもよい。
【0023】
【数4】
【0024】
このベクトルの各要素は、複素数であり、実数成分x及び虚数成分yを含む。すなわち、各要素は下記の形式を有する。
【0025】
【数5】
【0026】
ここで、
【数6】
は成分の大きさであり、
【数7】
は成分の位相であり、i=√(-1)は虚数単位である。
【0027】
測定ポイント
【数8】
については、各要素の実数成分は、対応するアナログ波形から直接的に検出又は測定可能である。いったん測定回路226のA/D変換器によって波形がディジタル化されると、各要素の虚数成分はアルゴリズム的に生成可能である。本願では、都合上、大きさ及び位相の両方を表すために複素記法が使用される。
【0028】
測定回路226によって取得された測定ポイント210は、プロセッサ224にわたされて、クロストークキャンセルを行って変換された測定ポイント230を生成する。クロストークキャンセルを実行するために、プロセッサ224は、例えば計測モジュール204のメモリ222から、クロストークキャンセル関数228にアクセスし、クロストークキャンセル関数228を測定ポイント210に適用する。
【0029】
いくつかの実施例では、クロストークキャンセル関数228は、線形関数であり、クロストークキャンセル行列Zを用いて表される。クロストークキャンセル行列Zは、複素数の要素を有する6x6の複素行列である。
したがって、クロストークキャンセルは、クロストークキャンセル行列Zを測定ポイント
【数9】
に下記のように適用することで実行可能である。
【0030】
【数10】
【0031】
ここで、
【数11】
は、変換された測定ポイント230である。それは、チャネルクロストークが存在しない場合、配電網206から得られる測定ポイントの推定値である。
【数12】
は、変換された測定ポイント230の電圧値であり、
【数13】
は、変換された測定ポイント230の電流値である。ZTijは、クロストークキャンセル行列Zの(i,j)番目の要素である、クロストークキャンセル行列Zを取得することに関する詳細事項は、図3及び図4に関して下記に提供する。
【0032】
変換された測定ポイント230は、計測モジュール204のメモリ222に格納されてもよい。プロセッサ224は、変換された測定ポイント230に基づいて、メーター112の地理的位置における配電網206の様々な特性、例えば、所定の時間期間内における平均又は合計電力消費量、ピーク電圧、電力サージ、及び負荷変動をさらに計算してもよい。配電網206の計算された特性はまた、メモリ222に格納され、次いで、メーター測定データ122としてヘッドエンドシステム104に送信するために通信モジュール202に送られてもよい。
【0033】
通信モジュール202の機能は、メーター測定データ122を含むメッセージを受信及び送信することを含む。通信モジュール202は、アンテナ及び無線装置のような通信装置212を含んでもよい。代替として、通信装置212は、無線又は有線通信を可能にする任意の装置であってもよい。通信モジュール202はまた、プロセッサ213及びメモリ214を含んでもよい。通信装置212は、ネットワーク140を介してメッセージを受信及び送信するために使用される。プロセッサ213は、通信モジュール202によって実行される機能を制御する。メモリ214は、プロセッサ213によってその機能を実行するために使用されるデータを格納するために利用されてもよい。例えば、メーター測定データ122における特性及び他のデータは、計測モジュール202のメモリ222に加えて、又はそれに代えて、通信モジュール204のメモリ214に格納されてもよい。通信モジュール202及び計測モジュール204は、他のモジュールによって必要とされるデータを提供するために、ローカル接続を通じて互いに通信する。通信モジュール202及び計測モジュール204の両方は、メモリ又はもう1つのタイプのコンピュータ可読媒体に格納されたコンピュータ実行可能な命令を含んでもよく、また、モジュール内の1つ又は複数のプロセッサは、本願において説明した機能を提供する命令を実行してもよい。
【0034】
図3は、本開示のある実施例に係る、メーター112のためのクロストークキャンセル関数228を生成するシステム300の例を示すブロック図である。システム300は、メーター112の測定回路226に接続された基準電源装置302を含む。基準電源装置302は、認識された精度、安定性、及び信頼性を基準電源に提供するように構成される。例えば、基準電源装置302は、RX-33 Xytronic三相エネルギー基準標準装置のような、エネルギー基準標準を満たす電源装置であってもよい。基準電源装置302の例は、インディアナ州ラファイエットのRADIAN RESEARCH Inc.からのRS-933 Syntron自動較正システムと、ワシントン州エヴェレットのFLUKE CORPORATIONからの6105A電力較正標準を含むが、これらに限定されない。
【0035】
基準電源装置302は、出力電圧及び電流の大きさ及び位相を指定する設定内容に従って正確な電気信号を出力するように構成されてもよい。このように、基準電源装置302によってメーター112の測定回路226に提供される電気信号は、基準信号として使用可能である。基準電源装置302の設定内容は、電気信号の電圧及び電流の基準値として使用可能である。これらの基準値を、測定回路226によって測定された対応する電圧及び電流値に対して比較することによって、チャネルクロストークを含む測定値における歪みを決定することができる。したがって、クロストークキャンセル関数228はそのような歪みを低減又は除去するように決定されてもよい。
【0036】
いくつかの実施例では、基準電源装置302は、一組のソースポイント312において指定された値に従って、電気信号をメーター112に提供するように構成される。測定ポイント210と同様に、ソースポイント312の各々は、長さ6の複素ベクトル
【数14】
を用いて表されてもよい。ソースポイント312の最初の3つの要素は、位相A、B、及びCにおけるアナログ波形としてメーター112にそれぞれ提供される基準電気信号の電圧Vs1,Vs2,Vs3を表す。ソースポイント312の最後の3つの要素は、位相A、B、及びCにおけるアナログ波形としてメーター112にそれぞれ提供される基準電気信号の電流Is1,Is2,Is3を表す。したがって、ソースポイント312
【数15】
は次式で表される。
【0037】
【数16】
【0038】
一組のソースポイント312は、電気信号の基準値として働く。
【0039】
ソースポイント312の各々について、メーター112は、メーター112における基準電気信号の電圧及び電流値を測定することで、対応する測定ポイント322を生成する。同様に、測定ポイント322は、次式の複素ベクトルを用いて表される。
【0040】
【数17】
【0041】
ここで、Vm1,Vm2,Vm3は、位相A、B、及びCにおいてメーター112によってそれぞれ測定された基準電気信号の電圧を表し、Im1,Im2,Im3は、位相A、B、及びCにおいてメーター112によってそれぞれ測定された基準電気信号の電流を表す。
【数18】
及び
【数19】
の各要素は、式(1)に示す形式を有する複素数である。
【0042】
いくつかの実施例では、メーター112に係るチャネルクロストークは、ソースポイント
【数20】
をその対応する測定ポイント322
【数21】
にマッピングする一次変換としてモデル化される。数学的には、この一次変換は次式で表すことができる。
【0043】
【数22】
【0044】
ここで、XTijは、クロストーク変換行列Xの(i,j)番目の要素である。このモデルの下では、行列Xの各成分は、
【数23】
の各成分に対して大きさ及び位相の歪みを与え、それらを総和することで
【数24】
の成分を形成する。このように、
【数25】
の各成分は、
【数26】
の成分の関数である。上述したように、
【数27】
は選択可能であり、したがって既知である。
【数28】
はメーター112によって測定され、これもまた既知である。したがって、クロストーク変換行列Xは、
【数29】
及び
【数30】
に基づいて導出又は近似可能である。クロストーク変換行列Xの逆行列がクロストークキャンセル行列Zになる。
【0045】
所定形式のX行列及びその逆行列Zを導出するために、適切な一組のソースポイント312及び測定ポイント322が選択されてもよい。
上述したように、ソースポイント
【数31】
は、基準電源装置302によって提供されている電圧及び電流波形のアレイを表すために導入された。
【数32】
の6つの複素要素は、時間に応じて常に変化している。純粋な正弦波の電力供給を仮定すると、
【数33】
は、2乗平均根(root-mean-square:RMS)の電圧及び電流と、これらの要素の各々に関連付けられた位相とを含む、そのパラメータ表示
【数34】
によって特徴付けられてもよい。
【数35】
もまた複素ベクトルであるが、それはもはや時間に応じて変化しない。
【0046】
【数36】
の一例は次式になる。
【0047】
【数37】
【0048】
このソースポイントは、下記の特性を有する、平衡なY構成電源を表す。
【0049】
1)三相A、B、及びCの各々において120ボルト;
2)三相A、B、及びCの各々にいて1アンペア;
3)力率1;
4)位相A及びB間において120度;及び、
5)位相A及びC間において-120度。
【0050】
この例示的なソースポイント
【数38】
は次式によって表されてもよい。
【0051】
【数39】
【0052】
メーター112は、ソースポイント
【数40】
について基準電源装置302によって提供された電気信号を測定し、測定ポイント
【数41】
を生成する。
【0053】
対応する一組の測定ポイント322
【0054】
を収集するために、一組のパラメータ化されたソースポイント312
【数42】
を選択することは、大きさ及び位相が変換
【数43】
に対してどのように影響するかに依存する。単一タップの電圧及び現在のセンサの場合、すべてのソースポイントについて固定されたRMS電圧及び電流を使用可能である。一実施例では、ソースポイント312のRMS電圧は120Vに固定され、RMS電流は1アンペアに固定される。位相が変更されて、N個のパラメータ化されたソースポイント312を生成する。
【0055】
いくつかの実施例では、Nは32になるように選択される。電圧及び電流の位相を変化させることで、32個のパラメータ化されたソースポイントが生成される。対応する32個の測定ポイントが収集されることで、クロストーク変換行列Xが計算される。表1は、32個のパラメータ化されたソースポイントの位相の例を示す。表1において、Aにおける電圧の位相が基準位相として使用され、他の位相はこの基準位相に関して表される。例えば、ソースポイント1について、Aにおける電圧の位相は0°として示される。B及びCにおける電圧の位相は、両方とも、-120°である。A、B、及びCにおける電流の位相は、すべて、-60°である。
【0056】
【表1】
【0057】
N個のパラメータ化されたソースポイントの集合は、まとめて、各列がソースポイントベクトル
【数44】
を表す6xN行列
【数45】
を表す。
対応する測定ポイントの集合は、各列が対応する測定ポイントベクトル
【数46】
を表すもう1つの6xN行列
【数47】
を表す。クロストークキャンセル行列Zを導出するために、計算装置304が使用される。計算装置は、パーソナルコンピュータ(personal computer:「PC」)、デスクトップワークステーション、ラップトップ、スマートフォン、サーバコンピュータ、又は後述するクロストークキャンセル行列Zの計算を実行することができる他の任意の計算装置であってもよい。
【0058】
計算装置304は、まず、行列
【数48】
の逆行列を導出する。Nが6以外の数になりうるので、行列
【数49】
は正方行列ではない可能性がある。それらの場合、行列
【数50】
の擬似逆行列が計算される。行列「D」の擬似逆行列は、DHD=D、HDH=Hになり、かつ、DH及びHDがエルミート行列になるように、「D」の転置行列と同じ次元を有する行列「H」を生成する。いくつかの実施例では、行列Dの擬似逆行列を導出するために、行列Dの特異値分解(singular value decomposition:SVD)を利用可能である。
【0059】
【数51】
の擬似逆行列を、次式により示す。
【0060】
【数52】
【0061】
これはNx6行列である。計算装置304は、クロストークキャンセル行列Zをクロストーク変換行列Xの逆行列として導出し、これは次式により計算可能である。
【0062】
【数53】
【0063】
この実施例では、クロストークキャンセル行列Zは、クロストークキャンセル関数228として使用され、次いで、メーター112に送られる。上述したように、メーター112は、そのメモリ222にクロストークキャンセル行列Zを格納し、図2に関して上述したように式(2)に従ってZを用いてクロストークキャンセルを実行する。
【0064】
上述の説明は、単一タップの電圧及び電流メーターに焦点を合わせているが、他のタイプのメーターに対しても同様にクロストークキャンセル行列を導出できることが理解されるべきである。例えば、いくつかのメーターは、複数の電圧(例えば、120V、240V、及び480V)のための複数のタップと、複数の電流(例えば、1A、10A、20A、及び50A)のための複数のタップとを含んでいてもよい。これらのメーターについて、クロストークキャンセル行列を導出するために、上述した処理が各タップに対して(すなわち、上述した120V及び1Aの単一タップの場合と同じ又は同様の位相変動テーブルを用いて)適用可能である。
【0065】
上述した説明は、クロストークキャンセル行列Zによって表される線形のクロストークキャンセル関数228に焦点を合わせているが、クロストークキャンセル関数228を生成するために他のタイプの線形関数又は非線形関数を利用可能であることがさらに理解されるべきである。クロストークキャンセル関数228は、メーター112に格納され、配電網206によって提供された電気信号の測定中に測定ポイント210に適用されてもよい。
【0066】
図4は、本開示のある実施例に係る、メーター112のためのクロストークキャンセル関数228を生成する処理400の例を示す図である。1つ又は複数の装置(例えば計算装置304)は、適切なプログラムコードを実行することで、図4に示すいくつかの動作を実施する。例示の目的で、処理400について、図面に示す所定の実施例を参照して説明する。しかしながら、他の実施例も可能である。いくつかの実施例では、メーター112の較正処理の間に処理400が実行される。
【0067】
ブロック404において、処理400は、計算装置304が一組のソースポイント312を取得することを含む。一組のソースポイント312は、それらの各パラメータ表示
【数54】
によって表されてもよい。いくつかの実施例では、取得されたソースポイント312の個数は、少なくとも32個である。一組のソースポイント312は、6xN行列
【数55】
を形成する。ブロック406において、処理400は、計算装置304が、メーター112から、一組のソースポイント312に対応する一組の測定ポイント322を取得することを含む。測定ポイント322は、メーター112の測定回路226によって生成され、6xN行列
【数56】
を形成する。
【0068】
ブロック408において、処理400は、一組のソースポイント312及び対応する一組の測定ポイント322に基づいてクロストークキャンセル関数228を計算することを含む。いくつかの実施例では、メーター112に係るチャネルクロストークは、ソースポイント
【数57】
をその対応する測定ポイント
【数58】
にマッピングする一次変換、例えば、
【数59】
としてモデル化される。これらの実施例では、クロストークキャンセル関数228は、6x6のクロストークキャンセル行列Zによって表される線形関数として計算可能である。図3に関して上で詳述したように、クロストークキャンセル行列Zは、クロストーク変換行列Xの逆行列として計算可能であり、これは次式により計算可能である。
【0069】
【数60】
【0070】
他のタイプのクロストークキャンセル関数228も生成可能である。ブロック410において、計算装置304は、配電網206の測定中に使用するために、生成されたクロストークキャンセル関数228をメーター112に送る。
【0071】
図5は、本開示のある実施例に係る、メーター112においてクロストークキャンセルを実行する処理500の例を示す図である。1つ又は複数の装置(例えば測定モジュール204)は、適切なプログラムコードを実行することで、図5に示すいくつかの動作を実施する。例示の目的で、処理500について、図面に示す所定の実施例を参照して説明する。しかしながら、他の実施例も可能である。
【0072】
処理500はブロック502において開始し、ここで、メーター112は、配電網206の電気信号を測定することで測定ポイント210を取得する。各測定ポイント210は、複素ベクトル
【数61】
によって表されてもよい。ブロック504において、メーター112は、クロストークキャンセル関数228を測定ポイント210に適用する。いくつかの実施例では、クロストークキャンセル関数228は、クロストークキャンセル行列Zによって表される。図2に関して上で詳述したように、クロストークキャンセル関数228を適用することは、式(2)に示すように、各測定ポイント210の複素ベクトル
【数62】
をクロストークキャンセル行列Zにお乗算することを含んでもよい。クロストークキャンセル関数228の出力は、変換された測定ポイント230
【数63】
である。変換された測定ポイント230は、各測定ポイント210が利用可能になるごとに生成されてもよい。代替又は追加として、変換された測定ポイント230は、バッチ処理で、例えば、少なくともK個の測定のポイント210が利用可能になったときに、生成される。Kは、1より大きい任意の整数であってもよい。
【0073】
ブロック506において、メーター112は、変換された測定ポイント230に基づいて配電網206の様々な特性を計算する。図2に関して上で詳述したように、配電網206の特性は、平均又は合計の電力消費量、ピーク電圧、電力サージ、負荷変動などを含んでもよい。ブロック508において、メーター112は、計算された特性を、他のデータとともに、メーター測定データ122として、メッシュネットワーク140を介してヘッドエンドシステム104に送信する。
【0074】
上述した説明は三相電源に焦点を合わせているが、クロストークキャンセルは二相電源にも同様に適用可能であることが理解されるべきである。
二相電源の場合、ソースポイント
【数64】
又は
【数65】
及び測定ポイント
【数66】
【数67】
【数68】
又は
【数69】
の各々は、4要素のベクトルになる。クロストーク変換行列X及びクロストークキャンセル行列Zの各々は、4x4行列になる。上述した手順は、ソースポイント及び測定ポイントに基づいてクロストークキャンセル行列Zを導出するために同様に適用可能である。変換された測定ポイントは、クロストークキャンセル関数を、測定中にメーターによって取得された測定ポイントに適用することで取得可能である。
【0075】
所定の実施形態を実装する計算システムの例.
本願において説明する動作を実行するために、任意の適切な計算システム、又は計算システムのグループを使用してもよい。例えば、図6は、計算システム600の例を示す。計算システム600の実施例を計算装置304に使用してもよい。
【0076】
図示した計算装置600の実施例は、1つ又は複数のメモリ装置604に通信可能に接続されたプロセッサ602を含む。プロセッサ602は、メモリ装置604に格納されたコンピュータ実行可能なプログラムコードを実行するか、メモリ装置604に格納された情報にアクセスするか、又はそれらの両方を行う。プロセッサ602の例は、マイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(application-specific integrated circuit:「ASIC」)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(field-programmable gate array:「FPGA」)、又は他の任意の適切な処理装置を含む。プロセッサ602は、単一の処理装置を含む、任意個数の処理装置を含んでもよい。
【0077】
メモリ装置604は、プログラムコード614(例えば、クロストークキャンセル関数228を導出するために使用されるコード)、プログラムデータ616(例えば、生成されたクロストークキャンセル関数228)、又はこれらの両方を格納するための、任意の適切な非一時的なコンピュータ可読媒体を含む。コンピュータ可読媒体は、コンピュータ可読命令又は他のプログラムコードをプロセッサに提供することができる、任意の電子的、光学的、磁気的、他の記憶装置を含んでもよい。コンピュータ可読媒体の非限定的な例は、磁気ディスク、メモリチップ、ROM、RAM、ASIC、光記憶装置、磁気テープ又は他の磁気記憶装置、又は処理装置が命令を読み出すことができる他の任意の媒体を含む。これらの命令は、例えば、C、C++、C#、Visual Basic、Java(登録商標)、Python(登録商標)、Perl、JavaScript(登録商標)、及びActionScriptを含む、任意の適切なコンピュータプログラミング言語で書かれたコードからコンパイラ又はインタプリタによって生成されたプロセッサ固有の命令を含んでもよい。
【0078】
計算装置600は、本願において説明する動作のうちの1つ又は複数を実行するようにプロセッサ602を構成するプログラムコード614を実行する。プログラムコード614の例は、様々な実施形態において、クロストークキャンセル行列Zのようなクロストークキャンセル関数228を生成するために使用されるプログラムコード、又は、本願において説明する1つ又は複数の動作を実行する他の適切なアプリケーションを含む。プログラムコードは、メモリ装置604又は任意の適切なコンピュータ可読媒体に常駐してもよく、プロセッサ602又は他の任意の適切なプロセッサによって実行されてもよい。
【0079】
いくつかの実施形態では、1つ又は複数のメモリ装置604は、本願において説明する1つ又は複数のデータ集合を含むプログラムデータ616を格納する。これらのデータ集合の例は、ソースポイント312、測定ポイント322、クロストークキャンセル関数228、などを含む。いくつかの実施形態では、データ集合、モデル、及び関数のうちの1つ又は複数は、同じメモリ装置(例えば、メモリ装置604のうちの1つ)に格納される。追加又は代替の実施形態では、本願において説明するプログラム、データ集合、モデル、及び関数のうちの1つ又は複数は、データネットワークを介してアクセス可能な異なるメモリ装置604に格納される。計算システム600には、1つ又は複数のバス606も含まれる。バス606は、各1つの計算システム600の1つ又は複数の構成要素を通信可能に接続する。
【0080】
いくつかの実施形態では、計算システム600は、ネットワークインターフェース装置610も含む。ネットワークインターフェース装置610は、1つ又は複数のデータネットワークへの有線又は無線データ接続を確立するのに適した任意の装置、又は装置のグループを含む。ネットワークインターフェース装置610の非限定的な例は、イーサネット(登録商標)ネットワークアダプタ、モデム、などを含む。計算システム600は、ネットワークインターフェース装置610を用いて、データネットワークを介して1つ又は複数の他の計算装置(例えば、ヘッドエンドシステム104)を通信することができる。
【0081】
計算システム600はまた、入力装置620、プレゼンテーション装置1618、又は他の入力又は出力装置のような、多数の外部又は内部装置を含んでもよい。例えば、計算システム600は、1つ又は複数の入力/出力(input/output:「I/O」)インターフェース608に示される。I/Oインターフェース608は、入力装置から入力を受信すること又は出力装置に出力を提供することが可能である。入力装置620は、プロセッサ602の動作を制御するか影響を与える視覚的、聴覚的、又は他の適切な入力を受けることに適した任意の装置、又は装置のグループを含んでもよい。入力装置620の非限定的な例は、タッチスクリーン、マウス、キーボード、マイクロホン、別個のモバイル計算装置などを含む。プレゼンテーション装置618は、視覚的、聴覚的、他の適切な知覚出力を提供することに適した任意の装置、又は装置のグループを含んでもよい。プレゼンテーション装置618の非限定的な例は、タッチスクリーン、モニタ、スピーカ、別個のモバイル計算装置などを含む。
【0082】
図6は、計算装置にとってローカルであるように入力装置620及びプレゼンテーション装置618を示すが、他の実施例も可能である。例えば、いくつかの実施形態では、入力装置620及びプレゼンテーション装置618のうちの1つ又は複数は、1つ又は複数のデータネットワークを用いて、ネットワークインターフェース装置610を介して計算システム600と通信する遠隔のクライアント計算装置を含んでもよい。
【0083】
全体考察.
特許請求の範囲に記載された主題についての詳細な理解を提供するために、本明細書において多数の特定の詳細事項を述べている。しかしながら、当業者は、特許請求の範囲に記載された主題がこれらの特定の詳細事項なしで実施されてもよいことを理解するであろう。他の例では、特許請求の範囲に記載された主題を不明瞭にしないように、通常の技術を有する者によって知られるであろう方法、装置、又はシステムについては詳述していない。
【0084】
本願において説明した特徴は、任意の特定のハードウェアアーキテクチャ又は構成に限定されない。計算装置は、1つ又は複数の入力を条件とした結果を提供する構成要素からなる任意の適切な装置を含んでもよい。適切な計算装置は、格納されたソフトウェア(すなわち、コンピュータシステムのメモリ上に格納されたコンピュータ可読命令)にアクセスする多目的のマイクロプロセッサに基づくコンピュータシステムを含み、このソフトウェアは、汎用の計算装置から本願の主題の1つ又は複数の態様を実装する特別な計算装置になるように計算システムをプログラミング又は構成する。計算装置のプログラミング又は構成に使用されるソフトウェアにおいて、本願に含まれる開示内容を実装するために、任意の適切なプログラミング、スクリプティング、他のタイプの言語、又は言語の組み合わせが使用されてもよい。
【0085】
本願において開示した方法の態様は、そのような計算装置の動作において実行されてもよい。上述の実施例において提示したブロックの順序は変更されてもよく、例えば、ブロックが並べかえられてもよく、組み合わされてもよく、及び/又はサブブロックに分割されてもよい。所定の複数のブロック又は複数の処理を並列に実行してもよい。
【0086】
本願における「~ように適応化される」又は「~ように構成される」の使用は、追加のタスク又はステップを実行するように適応化又は構成された装置を除外しない、オープンかつ包括的な用語を意図している。さらに、「~に基づく」の使用は、記載された1つ又は複数の条件又は値「に基づく」処理、ステップ、計算、又は他の動作が、実際に、記載したものを越える追加の条件又は値に基づいてもよいという点で、オープンかつ包括的であることを意図している。本願に含まれた見出し、リスト、及び番号は、説明の簡単化のみを目的とし、限定を意図していない。
【0087】
本願の主題をその特定の態様に関して詳述したが、当業者は、上述したことを理解することにより、そのような態様の変更、変形、及び等価物を容易に作成しうることが認識されるであろう。従って、本開示が限定ではなく例示の目的で提示され、当業者に容易に明らかになるように、本願の主題に係るそのような変更、変形、及び/又は追加を含むことを除外しないことは理解されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6