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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】カテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/00 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
A61M25/00 506
A61M25/00 620
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2022551129
(86)(22)【出願日】2021-03-26
(86)【国際出願番号】 JP2021012982
(87)【国際公開番号】W WO2022064742
(87)【国際公開日】2022-03-31
【審査請求日】2023-11-15
(31)【優先権主張番号】P 2020158363
(32)【優先日】2020-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141829
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 牧人
(72)【発明者】
【氏名】島田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】北村 晃大
【審査官】佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-539962(JP,A)
【文献】特開2017-93868(JP,A)
【文献】特開昭62-281962(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内層および外層を有し、内部に線材により形成された補強体が埋設され、先端から基端へ貫通する内腔が形成されたシャフトと、前記シャフトの基端に取り付けられたハブと、を有するカテーテルであって、
前記シャフトは、前記補強体の最基端よりも基端側に少なくとも前記外層により形成されるシャフト基端部を有し、
前記シャフト基端部は、外周面に凹形状であって周方向へ延在する窪み部を有し、
前記シャフト基端部の内周面は、前記ハブの内周面と平滑に連続し、
前記ハブは、前記窪み部と密着する突出部を有し、
前記窪み部の少なくとも一部は、前記内層の最基端よりも基端側に配置されることを特徴とするカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、外科的侵襲が非常に低いという理由から、カテーテルを用いた血管等の管腔内の治療が盛んに行われている。カテーテルは、通常、先端から基端まで連通する内腔を有するシャフトと、シャフトの基端に配置されるハブとを有している。ハブは、シリンジなどと接続するために、内腔に連通する通路が形成される。
【0003】
ハブにシャフトの基端を固定する方法として、インサート成形、接着剤による接着などが知られている。例えば特許文献1には、ハブをインサート成形により形成する方法が記載されている。インサート成形では、シャフトを、芯金とともに金型に配置し、ハブの材料を金型内に射出して、シャフトに連続するようにハブを形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-93868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インサート成形では、専用の金型を必要とし、接着剤を使用すると保護具や換気装置が必要となるためコストが大きくなる場合がある。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、内腔をデバイスが滑らかに通過でき、かつシャフトがハブから抜けることを効果的に抑制できるカテーテルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明に係るカテーテルは、内層および外層を有し、内部に線材により形成された補強体が埋設され、先端から基端へ貫通する内腔が形成されたシャフトと、前記シャフトの基端に取り付けられたハブと、を有するカテーテルであって、前記シャフトは、前記補強体の最基端よりも基端側に少なくとも前記外層により形成されるシャフト基端部を有し、前記シャフト基端部は、外周面に凹形状であって周方向へ延在する窪み部を有し、前記シャフト基端部の内周面は、前記ハブの内周面と平滑に連続し、前記ハブは、前記窪み部と密着する突出部を有し、前記窪み部の少なくとも一部は、前記内層の最基端よりも基端側に配置される
【発明の効果】
【0008】
上記のように構成したカテーテルは、シャフト基端部の内周面が、ハブの内周面と平滑に連続するため、内腔をデバイスが滑らかに通過できる。さらに、シャフト基端部の窪み部にハブの突出部が密着するため、シャフトがハブから抜けることを効果的に抑制できる。
【0009】
前記窪み部の少なくとも一部は、前記内層の最基端よりも基端側に配置される。これにより、窪み部の少なくとも一部は、外層のみで形成される単純な層構造となるため、窪み部を形成することが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係るカテーテルを示す平面図である。
図2】ハブおよびシャフトの基端部を示す断面図である。
図3】ハブの先端部およびシャフトの基端部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上、誇張されて実際の比率とは異なる場合がある。以下の説明において、カテーテルの操作する側を「基端側」、生体内へ挿入される側を「先端側」と称することとする。
【0012】
本発明の実施形態に係るカテーテル10は、図1~3に示すように、長尺な管体であるシャフト20と、シャフト20の基端に固着されたハブ40と、シャフト20の折れ曲がりを抑制するための柔軟な耐キンクプロテクタ70とを備えている。カテーテル10は、ガイドワイヤをサポートするカテーテルの他、ガイディングカテーテル、造影カテーテル、マイクロカテーテルでもよく、あるいは拡張用のルーメンを有するバルーンカテーテルや画像診断カテーテルでもよい。また、カテーテル10は、シャフトの先端からハブまで連通するガイドワイヤルーメンが形成されたオーバーザワイヤー(OTW)型でもよく、シャフトの先端部にのみガイドワイヤルーメンが形成されたラピッドエクスチェンジ(RX)型でもよい。例えば、RX型のバルーンカテーテルのガイドワイヤルーメンは、シャフトの先端からシャフトの軸心方向の途中の開口部まで形成される。RX型のバルーンカテーテルのバルーンを拡張させる流体を流通させる拡張用ルーメンは、バルーンからカテーテルの基端のハブまで連通して形成される。
【0013】
シャフト20は、先端から基端まで連通する内腔21が形成されている。シャフト20は、シャフト外周面22と、シャフト内周面23と、シャフト基端面24とを有している。
【0014】
シャフト外周面22は、管体であるシャフト20の径方向の外側の面であり、シャフト20の先端から基端まで延在する。シャフト外周面22は、シャフト20の基端から先端に向かって所定の位置まで形成されるシャフト基端側外周面25を有している。シャフト基端側外周面25は、ハブ40に囲まれて収容されている。シャフト基端側外周面25は、シャフト20の軸心Xに沿って略均一の外径を有している。シャフト基端側外周面25は、ハブ40に融着されたシャフト融着面26と、シャフト融着面26の先端側に配置されてハブ40から離れているシャフト離間面27とを有している。シャフト離間面27は、ハブ40に融着されずに、ハブ40から隙間を有して離れている。
【0015】
シャフト内周面23は、管体であるシャフト20の径方向の内側の面であり、シャフト20の先端から基端まで延在する。
【0016】
シャフト基端面24は、シャフト20の基端で基端側を向く面であり、シャフト20の軸心Xに対して略垂直に形成される。
【0017】
本実施形態におけるシャフト20は、シャフト内周面23を形成する内層28と、シャフト外周面22を形成する外層29と、シャフト20に埋設される補強体30とを有しているが、これに限られず、補強体30を含まない外層と内層を有する多層樹脂チューブ、単層の樹脂チューブあるいは金属のハイポチューブの外側に樹脂を被覆したものでもよい。
【0018】
外層29の構成材料は、例えば、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂のほか、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー、あるいはこれらの1種以上の混合物あるいは硬度が異なるものの混合物が挙げられる。外層29は、基端から先端に向かって柔軟となるように硬度の異なる材料を配列したものでもよい。
【0019】
内層28の構成材料は、上述した外層29の構成材料と同じ材料であってもよく、あるいは外層29の構成材料と異なる材料であってもよい。内層28の構成材料は、シャフト20内周面の摺動性を高めるために、ポリテトラフルオロエチレン樹脂等のフッ素系樹脂材料であってもよい。
【0020】
補強体30は、シャフト20を補強するものであり、複数の線材31を筒状に編組して形成される。また、補強体30は、1本以上の線材31をらせん状に巻回して形成されてもよい。補強体30における複数の線材31の隙間には、外層29あるいは内層28の材料が入り込んでいる。線材31は、ステンレス鋼、NiTi等の金属で構成される。
【0021】
シャフト20は、補強体30の最基端よりも基端側に、補強体30が設けられないシャフト基端部60が形成されている。シャフト基端部60は、外層29により形成される。シャフト基端部60は、先端側の一部に、内層28を有してもよい。すなわち、シャフト基端部60の先端部は、外層29および内層28により形成され、シャフト基端部60の基端部は、外層29により形成される。なお、シャフト基端部60の全体が、内層28および補強体30を有さずに外層29により形成されてもよい。
【0022】
シャフト基端部60は、外周面に、凹形状の窪み部61を有している。窪み部61は、周方向へ360度にわたって延在している。したがって、窪み部61の外径は、シャフト20の窪み部61よりも先端側の部位の外径および基端側の部位の外径よりも小さい。シャフト基端部60の軸心方向の長さLは、特に限定されないが、例えば0.1~5mmが好ましい。また、窪み部61の窪みの深さDは、特に限定されないが、例えば0.01~1mmが好ましい。
【0023】
ハブ40は、先端側に配置されてシャフト20の基端部を収容する筒状の収容部41と、収容部41の基端側に配置されるハブ本体42と、ウイング52と、ねじ切り突起53と、環状突起54とを有している。ハブ40は、収容部41の先端に形成されるハブ40先端開口43から、ハブ本体42の基端に形成されるハブ基端開口44まで連通するハブ内腔45が形成される。ハブ内腔45は、収容部41の内周面である収容面46と、シャフト基端面24と対向する隣接面47と、ハブ本体42の内周面であるハブ通路48とを有する。
【0024】
収容面46は、基端側外周面25のシャフト融着面26と直接的に融着したハブ融着面49と、シャフト離間面27から径方向の外側へ離れて対向するハブ離間面50とを有する。ハブ融着面49は、収容面46の基端から先端方向へ延在している。ハブ融着面49の基端は、隣接面47に接続されている。ハブ融着面49は、窪み部61に対応する位置に、窪み部61へ隙間なく入り込むように突出する突出部57が形成されている。突出部57は、周方向へ360度にわたって延在している。したがって、突出部57の内径は、ハブ融着面49の突出部57よりも先端側の部位の内径および基端側の部位の内径よりも小さい。突出部57が窪み部61に入り込んで融着されることで、ハブ40がシャフト20に対して強固に連結される。窪み部61に入り込んで密着する突出部57は、シャフト20がハブ40から先端方向へ引き抜かれることを抑制できる。ハブ離間面50は、ハブ融着面49の先端から先端方向へ延在している。径方向におけるハブ離間面50とシャフト基端側外周面25の隙間は、先端方向へ向かって広がっている。なお、シャフト基端側外周面25との間に隙間を形成するハブ離間面50は、設けられなくてもよい。
【0025】
隣接面47は、先端側を向く環状の面であり、シャフト20の軸心Xに対して略垂直に形成されている。隣接面47の径方向の外側は、ハブ融着面49に接続される。隣接面47の径方向の内側は、ハブ通路48の先端に接続される。
【0026】
ハブ通路48は、隣接面47から基端方向へ一定の内径を有して形成される先端側ハブ通路55と、先端側ハブ通路55から基端方向へ徐々に増加する内径を有してテーパ状に形成されるテーパ部56とを有している。ハブ通路48は、基端方向へ向かって徐々に増加する内径を有してテーパ状に形成されている。ハブ通路48は、収容面46と同軸であり、さらに内腔21と同軸であることが好ましい。先端側ハブ通路55の内径は、シャフト基端部60の内径と一致する。したがって、先端側ハブ通路55の内周面は、シャフト基端部60の内周面から段差なく一定の内径で連続している。テーパ部56の一部は、シリンジ(図示せず)と連結可能なルアーテーパ部51を有してもよい。ハブ基端開口44から挿入されたガイドワイヤや治療カテーテルは、段差のないハブ内腔45および内腔21を円滑に通って、カテーテル10の先端から突出する。これにより、ガイドワイヤや治療カテーテル10は、病変部などの目的位置へ容易に到達できる。
【0027】
ウイング52は、術者がハブ40を把持して操作しやすいように、ハブ本体42の外周面の対向する2カ所から突出して形成される。ねじ切り突起53は、ハブ本体42の基端側の外周面に形成される。ねじ切り突起53は、ロック型シリンジ等と係合可能である。環状突起54は、収容部41の外周面に360°にわたって形成される突起である。環状突起54は、耐キンクプロテクタ70の内周面に形成される溝に嵌合可能である。
【0028】
ハブ40の構成材料は、射出成型が可能である熱可塑性樹脂であれば特に限定されないが、熱または電磁波を透過しやすいものが好ましく、具体的にはポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられる。
【0029】
シャフト20とハブ40を融着する際には、シャフト20の内腔21およびハブ40のハブ内腔45にマンドレル(図示せず)を挿入して、シャフト20のシャフト基端側外周面25およびシャフト基端面24を加熱する。これにより、ハブ融着面49およびシャフト融着面26が融着され、隣接面47およびシャフト基端面24が融着される。シャフト20とハブ40の融着部位は、混ざり合うことで、一体的な構造となってもよい。加熱方法は、特に限定されないが、例えばハブ40を透過し、シャフト20のシャフト基端側外周面25およびシャフト基端面24を透過しない波長の電磁波を照射する方法などが挙げられる。シャフト基端側外周面25およびシャフト基端面24が電磁波を透過しないため、まずシャフト基端側外周面25およびシャフト基端面24が加熱されて融解する。そして、シャフト基端側外周面25の熱が収容部41に伝達して、収容部41のハブ融着面49および隣接面47を融解させる。
【0030】
電磁波とは、熱、マイクロ波、可視光のほか赤外線を含む。赤外線は波長がおよそ0.7μmから2.5μmの近赤外線、波長がおよそ2.5μmから4μmの中赤外線あるいは波長がおよそ4μmから1000μmの遠赤外線であるが、近赤外線、中赤外線または遠赤外線の単独あるいは2種以上含んだものでもよく、可視光あるいはマイクロ波を含んだものでもよい。
【0031】
以上のように、本実施形態に係るカテーテル10は、内層28および外層29を有し、内部に線材31により形成された補強体30が埋設され、先端から基端へ貫通する内腔21が形成されたシャフト20と、シャフト20の基端に取り付けられたハブ40と、を有するカテーテル10であって、シャフト20は、補強体30の最基端よりも基端側に外層29により形成されるシャフト基端部60を有し、シャフト基端部60は、外周面に凹形状であって周方向へ延在する窪み部61を有し、シャフト基端部60の内周面は、ハブ40の内周面と平滑に連続し、ハブ40は、窪み部61と密着する突出部57を有する。
【0032】
上記のように構成したカテーテル10は、シャフト基端部60の内周面が、ハブ40の内周面と平滑に連続するため、内腔をデバイスが滑らかに通過できる。さらに、シャフト基端部60の窪み部61にハブ40の突出部57が密着するため、シャフト20がハブ40から抜けることを効果的に抑制できる。なお、シャフト基端部60の基端側の部位の外径は基端側へ向かって広がっているが、シャフト基端部60の基端側の部位の内径は基端側へ向かって広がっていない。このような構造は、管体の内径および外径を一端側へ向かって広げるフレア加工では形成できない。また、シャフト基端部60の基端側の部位の外径が基端側へ向かって広がる構造は、シャフト基端部60に密着するハブ40の収容部41へ、先端側から挿入できない。このため、シャフト20をハブ40へ単純に挿入するだけでは、突出部57が窪み部61に密着し、かつ内周面の段差を解消した構造を形成できない。また、シャフト基端部60を有するシャフト20を金型に配置してハブ40を射出するインサート成形では、金型が複雑となり樹脂の回り込みが不十分となる可能性がある。特に、カテーテル10の製造においては、外径が小さい細いシャフト20が求められるために細い芯金を使用する必要があるため、芯金も変形する課題が発生しやすい。これに対し、電磁波によりハブ40に挿入されたシャフト20の表面を加熱して融着する方法により、シャフト基端部60の外周面の窪み部61に、ハブ40の突出部57が密着し、かつ内周面に段差のない構造を形成することができる。
【0033】
また、窪み部61の少なくとも一部は、内層28の最基端よりも基端側に配置される。これにより、窪み部61の少なくとも一部は、外層29のみで形成される単純な層構造となるため、窪み部61を形成することが容易となる。あるいは内層28が最基端まで配置してもよい。
【0034】
なお、本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において当業者により種々変更が可能である。例えば、シャフト20の加熱は、電磁誘導を利用して加熱する高周波誘導加熱により行われてもよい。電磁誘導される導電体は、例えば補強体30である。
【0035】
なお、本出願は、2020年9月23日に出願された日本特許出願2020-158363号に基づいており、それらの開示内容は、参照され、全体として、組み入れられている。
【符号の説明】
【0036】
10 カテーテル
20 シャフト
21 内腔
22 シャフト外周面
23 シャフト内周面
25 シャフト基端側外周面
28 内層
29 外層
30 補強体
31 線材
40 ハブ
45 ハブ内腔
57 突出部
60 シャフト基端部
61 窪み部
図1
図2
図3