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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】ナノワイヤのガルバニック成長
(51)【国際特許分類】
   C25D 1/04 20060101AFI20241003BHJP
   B22F 1/054 20220101ALI20241003BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20241003BHJP
   B22F 9/24 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C25D1/04
B22F1/054
B22F1/00 M
B22F1/00 R
B22F1/00 K
B22F1/00 L
B22F9/24 B
B22F9/24 C
B22F9/24 E
B22F9/24 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022556497
(86)(22)【出願日】2021-03-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-27
(86)【国際出願番号】 EP2021055803
(87)【国際公開番号】W WO2021185619
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2022-11-11
(31)【優先権主張番号】102020107514.6
(32)【優先日】2020-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】519323089
【氏名又は名称】ナノワイヤード ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】NanoWired GmbH
【住所又は居所原語表記】Emanuel-Merck-Strasse 99, 64579 Gernsheim, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビヨレム,オラフ
(72)【発明者】
【氏名】ダッシンガー,フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】ケドナウ,セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ルステイエ,ファラフ
【審査官】黒木 花菜子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/162682(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/162681(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第01884578(EP,A1)
【文献】ARIANNA GAMBIRASI,DIRECT ELECTRODEPOSITION OF METAL NANOWIRES ON ELECTRODE SURFACE,ELECTROCHIMICA ACTA,ELSEVIER,2011年07月13日,VOL:56, NR:24,PAGE(S):8582 - 8588,http://dx.doi.org/10.1016/j.electacta.2011.07.045
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 1/04
B22F 1/054
B22F 1/00
B22F 9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面部(15)に多数のナノワイヤ(14)を設ける方法であって、
a)電解質分配器(1)を用意することと、
b)多数の連続的な孔(17)を有するホイル(16)を用意することと、
c)前記表面部(15)と前記電解質分配器(1)の出口側部(4)との間に、前記ホイル(16)を配置し、スポンジ(13)が一方では前記ホイル(16)に当てられ、他方では前記電解質分配器(1)の前記出口側部(4)に当てられることと、
d)前記電解質分配器(1)に液体電解質を導入し、これにより、前記液体電解質が、前記電解質分配器(1)の前記出口側部(4)にある前記ホイル(16)の上に堆積されるようにすることと、
e)前記液体電解質と前記表面部(15)との間に電圧を印加し、これにより、前記液体電解質から、前記表面部(15)の上に前記ホイル(16)の前記孔(17)の中で前記ナノワイヤ(14)を成長させることと
を含む方法。
【請求項2】
表面部(15)に多数のナノワイヤ(14)を設ける装置(12)であって、
電解質分配器(1)を備え、
前記電解質分配器(1)は、
前記電解質分配器(1)の出口側部(4)における多数の出口(3)と、
少なくとも1つの入口(2a、2b)と
を有し、
該装置(12)は、
前記電解質分配器(1)の前記出口側部(4)に接したスポンジ(13)と、
多数の連続的な孔(17)を有するホイル(16)と、
液体電解質と前記表面部(15)との間に電圧を印加する電極(10)と
をさらに備え、
前記ホイル(16)は、前記電解質分配器(1)によって前記液体電解質を前記ホイル(16)の上に堆積させ得るように、前記スポンジ(13)に当てられており、
前記電極(10)が前記液体電解質と前記表面部(15)との間に電圧を印加することによって、前記ホイル(16)が前記表面部(15)に当てられているときに、前記液体電解質から、前記表面部(15)の上に前記ホイル(16)の前記孔(17)の中で前記ナノワイヤ(14)を成長させることができる、
装置(12)。
【請求項3】
請求項2に記載の装置であって、
前記電解質分配器(1)は、少なくとも2つの入口(2a、2b)を有し、
前記入口(2a、2b)はそれぞれ、前記出口(3)のグループ(5a、5b)のそれぞれに接続されており、
前記出口(3)の前記グループ(5a、5b)は互いに異なる、
装置。
【請求項4】
請求項2に記載の装置(12)であって、
前記電解質分配器(1)の前記出口側部(4)は、平らになっている、
装置(12)。
【請求項5】
請求項3に記載の装置(12)であって、
前記装置(12)は、前記出口(3)の前記グループ(5a、5b)のそれぞれに対する分配部(7a、7b)を有する分配要素(6)を備え、
前記入口(2a、2b)はそれぞれ、対応する前記分配部(7a、7b)を介して、前記出口(3)の対応する前記グループ(5a、5b)に接続されている、
装置(12)。
【請求項6】
請求項5に記載の装置(12)であって、
前記装置(12)は、前分配要素(8)を有し、
前記入口(2a、2b)はそれぞれ、前記前分配要素(8)を介して、前記分配要素(6)の対応する前記分配部(7a、7b)に接続されている、
装置(12)。
【請求項7】
請求項2~6のいずれか一項に記載の装置(12)であって、
前記電解質分配器(1)の前記出口(3)は、前記電解質分配器(1)のカバー(9)に形成されている、
装置(12)。
【請求項8】
請求項2~7のいずれか一項に記載の装置(12)であって、
前記電解質分配器(1)の前記出口側部(4)は、電極(10)の形態で構成されている、
装置(12)。
【請求項9】
請求項2~8のいずれか一項に記載の装置(12)であって、
前記装置(12)は、前記電解質分配器(1)の動きを前記出口側部(4)に対して垂直に案内するための案内デバイス(11)を備える、
装置(12)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノワイヤのガルバニック成長に関する。特に本発明は、表面部の上に多数のナノワイヤを設ける方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノワイヤを生成することが可能な方法及び装置が知られている。例えば、ガルバニックプロセスにより、又は、薄膜技術から知られている方法にを用いて、ナノワイヤを得ることができる。公知の方法の多くは、複雑な機械を必要とするのが一般的であり、特に、実験室及びクリーンルーム内でしか使用されない(使用できない)。特に、公知の方法のほとんどは工業用には適さない。
【0003】
また、公知の装置及び方法の多くは、得られる各ナノワイヤが特性の点でばらつきが大きく、特に品質に関してばらつきが大きいという欠点を有する。一般的に、異なる成長プロセスから得られたナノワイヤは、同一又は同じ機械や出発材料や作り方を用いたとしても、部分的に非常に異なっている。しばしばナノワイヤの品質は、特に対応する装置のユーザ又は対応する方法のユーザの技能や、環境的な影響や、単なる偶然に依存する。これらは全て、ナノワイヤが光学顕微鏡でも可視化できないことがある構造体であるということから、さらに悪化する。そのため、前述の特性(及び特にそのばらつき)をそもそも検出できるようにするために、手間のかかる試験が必要となることがある。
【0004】
特に前述の品質の差のために、公知の方法及び装置では、比較的大きな表面部をナノワイヤの成長によって覆うことができないことがしばしばある。そのため、覆われた比較的大きな表面部の異なる領域同士の間で、ナノワイヤの特性が異なることが起こり得る。このことは多くの用途にとって不利となり得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
このことから、本発明の目的は、先行技術に関連して考察された技術的な問題を解決するか又は少なくとも軽減することである。特に、特に大きい領域上に且つ特に確実に、多数のナノワイヤを設けられる方法及び装置を提供することが意図されている。
【0006】
前記の目的は、独立請求項の特徴によって達成される。従属請求項はそれぞれ、有利な構成を示している。請求項において個々に詳述する特徴は、技術的に有意な任意の態様で互いに組み合わせ可能であり、本発明の更なる変形例を詳述している本明細書の説明的な技術内容によって補完されうる。
【0007】
本発明によると、表面部の上に多数のナノワイヤを設ける方法が提供される。本方法は、
a)電解質分配器を用意することと、
b)多数の連続的な孔を有するホイルを用意することと、
c)表面部と電解質分配器の出口側部との間に、ホイルを配置することと、
d)電解質分配器に液体電解質を導入し、これにより、電解質分配器の出口側部にあるホイルの上に液体電解質が堆積されるようにすることと、
e)液体電解質と表面部との間に電圧を印加し、これにより、液体電解質から、表面部の上にホイルの孔の中でナノワイヤを成長させることとを含む。
【0008】
ステップa)~c)は、好ましくは、ステップd)及びe)の前に行われる。ステップa)及びb)は、任意の所望の順序で順次行われてもよく、又は、同時に行われてもよい。特に、ステップc)と同時に行われてもよい。ステップd)及びe)は、任意の所望の順序で順次行われてもよく、又は、同時に行われてもよい。
【0009】
本方法により、ナノワイヤを生成できる。本明細書におけるナノワイヤとは、数ナノメートルから数マイクロメートルの範囲のサイズをワイヤ状の任意の材料体を意味するものと理解されるべきである。ナノワイヤは、例えば円形状、楕円形状、多角形状の底面を有してもよい。特に、ナノワイヤは六角形状の底面を有してもよい。全てのナノワイヤは、同じ材料から形成されることが好ましい。
【0010】
ナノワイヤは、100nm[ナノメートル]~100μm[マイクロメートル]の範囲の長さ、特に500nm~30μmの範囲の長さを有することが好ましい。さらに、ナノワイヤは、10nm~10μmの範囲の直径、特に30nm~2μmの範囲の直径を有することが好ましい。本明細書における「直径」という表現は円形の底面に関するものであり、これから逸脱する底面の場合には、同様の直径の定義を用いるものとする。使用される全てのナノワイヤが同じ長さ及び同じ直径を有することが特に好ましい。
【0011】
本方法は、様々な種類のナノワイヤ材料に使用可能である。ナノワイヤの材料としては、導電性材料が好ましく、特に、銅、銀、金、ニッケル、スズ、白金等の金属が好ましい。しかし、金属酸化物等の非導電性材料も好ましい。
【0012】
上にナノワイヤを成長させるための表面部は、導電性に構成されていることが好ましい。そうではなくて表面部が非導電性の本体(基板等)の一部である場合は、金属被覆等によって導電性を実現してもよい。例えば、非導電性の基板を金属の薄膜で被覆することが可能である。金属被覆によって、特に電極層を生成することが可能である。表面部又は電極層又はその両方の材料によっては、好適には、表面部と電極層との間に接着層を提供してもよく、この接着層は表面部と電極層との接着を促進する。
【0013】
表面部は導電性であるため、ナノワイヤのガルバニック成長用の電極として使用できる。基板には、特に、シリコン基板を使用することができる。表面部は、特に、導電性の構造体を備えた本体の表面部とすることができる。この本体には、特に、シリコンチップ又はいわゆるプリント回路基板(PCB:printed circuit board)使用することができる。
【0014】
本方法によって、表面部の上に、ホイルの孔の中で、ナノワイヤをガルバニック成長させることができる。このために電解質が使用される。もし電解質がホイルの上に特に均一な態様で広がっていれば、ナノワイヤを特に広い範囲に且つ特に信頼性の高い態様で設けることができる。本方法においては、ステップa)で提供される電解質分配器によって、ホイルの上に特に均一な電解質の分布を実現することができる。
【0015】
電解質分配器は、好ましくは、少なくとも1つの入口と、出口側部における多数の出口とを有する。このために、電解質分配器は、少なくとも1つの入口から出口へ液体電解質を分配することが意図されており、そのように構成されている。電解質分配器が多数の出口を有しているため、出口側部に亘って特に均一な態様で電解質を分布させることができる。多数の出口とは、少なくとも3つの出口を意味することが理解される。電解質分配器は、好ましくは、100個~1000個の出口を有する。出口はそれぞれ、好ましくは、0.1~2mmの範囲の直径を有する。
【0016】
出口は、電解質分配器の出口側部に配置されている。電解質分配器の1つ又は複数の入口は、好ましくは、電解質分配器の入口側部に配置されており、この入口側部は出口側部の反対側にある。出口は、好ましくは、出口側部に対して垂直に構成されている。これは、出口を通る電解質の流れの方向が出口側部に対して垂直であることを意味する。これにより、電解質が出口側部の上に特に均一な態様で堆積することができる。
【0017】
出口は、好ましくは、出口側部に規則的なパターンで配置されている。これにより、電解質は出口側部の上に均一な態様で堆積することができる。例えば、出口を格子状に配置することができ、格子の全ての行が同じ範囲を有するか、又は、格子の全ての列が同じ範囲を有するか、又は、格子の全ての行が格子の全ての列と同じ範囲を有するか、又は、これらを組み合わせた状態であることが好ましい。例えば、電解質分配器は、20行及び20列に配置された400の出口を有することができる。
【0018】
ステップb)において、多数の連続的な孔を有するホイルが提供される。
【0019】
ホイルは、好ましくは、プラスチック材料で形成されており、特にポリマー材料で形成されている。特に、ホイルが滑らないようなやり方でホイルを表面部に取り付けることが好ましい。ホイルが滑ると、成長するナノワイヤの品質を低下させかねない。
【0020】
孔がホイルの中を通って延在していることにより、ホイルの上側からホイルの下側に続く流路が孔によって形成される態様が実現することが好ましい。特に、孔が円筒形状であることが好ましい。しかし、孔が湾曲した輪郭を有する流路として形成されていてもよい。孔は、例えば円形状、楕円形状、多角形状の底面を有してもよい。特に、孔は六角形状の底面を有してもよい。孔は、均一に設計されていることが好ましい(つまり、孔は、サイズ、形状、配置、及び間隔の少なくとも1つに関して隣接する孔と異なっていないことが好ましい)。
【0021】
ステップc)においてナノワイヤが成長した場合、孔にはガルバニック堆積した材料が(特に完全に)充填されていることが好ましい。このようにして、ナノワイヤは、孔のサイズ、形状、及び配置のものとなる。このようにホイル又はその中の孔を選択することによって、成長させるナノワイヤの特性が決まる、又は、成長させるナノワイヤの特性に影響を与えることができる。したがって、ホイルは「テンプレート」、「テンプレートホイル」、又は「パターン」とも呼ばれることがある。
【0022】
ステップc)において、表面部と電解質分配器との間に、好ましくは、ホイルが表面部に接するように、ホイルが配置される。好ましくは、電解質分配器によって液体電解質をホイルの上に堆積させ得るように、ホイルが電解質分配器に当てられている。例えば、ホイルを一方では表面部に当て、他方では電解質分配器の出口側部に当てることができる。電解質を通す1つ又は複数の中間層を、ホイルと電解質分配器の出口側部との間に配置することも可能である。例えば、スポンジを一方ではホイルに当て、他方では電解質分配器の出口側部に当てることができる。
【0023】
ステップd)において、好ましくは、液体電解質が、電解質分配器の1つ又は複数の入口の少なくとも1つに導入される。これにより、液体電解質は出口で排出され、そうしてホイルの上に堆積される。
【0024】
ステップe)において、液体電解質と表面部との間に電圧が印加されることによって、液体電解質から、表面部の上にホイルの孔の中でナノワイヤが成長する。電圧は、好ましくは、電極と表面部との間に印加される。電極は、好ましくは、電極から表面部への連続的な伝導経路が電解質によって生成されるように、電解質に接触する。これにより、表面部の上にナノワイヤをガルバニック成長させることができる。
【0025】
ナノワイヤの材料が銅である場合は、本方法は、室温で実行されることが好ましい。印加される電圧は、好ましくは、0.01V~2V[ボルト]の間であり、特に0.2Vである。銅で構成されるナノワイヤに対する電解質として好ましいのは、特にCuSO[硫酸銅]と、HSO[硫酸]と、HO[水]とで構成された混合物である。これらの条件下で、例えば銅で構成された直径100nm[ナノメートル]及び長さ10μm[マイクロメートル]のナノワイヤを得るために、好ましくは、20分の成長期間にわたって1.5mA/cm[ミリアンペア毎平方センチメートル](直流)の電流密度が使用される。例えば、銅で構成された直径1μm[マイクロメートル]及び長さ10μm[マイクロメートル]のナノワイヤを得るために、好ましくは、40分の成長期間にわたって0.5~2mA/cm2[ミリアンペア毎平方センチメートル](直流)の電流密度が使用される。
【0026】
本方法によれば、特に、好適なものとして記載されたパラメータを用いると、特に高品質のナノワイヤを得ることができる。これらのナノワイヤは、長さ・直径・構造・密度(すなわち隣接するナノワイヤ間の平均間隔)・材料組成に関して、特に大きい面積にわたって、特に均一に成長することもできる。さらに、本方法は、特にマイクロアセンブリ取り扱い操作を必要としないため、実験室での使用に限定されない。例えば、重イオン衝撃などによって動作する方法は、研究施設に制限される。なぜなら、イオン加速器は固定された大型の設備だからである。
【0027】
本発明のさらなる態様として、表面部の上に多数のナノワイヤを設ける装置が提供される。この装置は、
電解質分配器を備え、
この電解質分配器は
電解質分配器の出口側部における多数の出口と、
少なくとも1つの入口と
を有し、
この装置は、
多数の連続的な孔を有するホイルと、
液体電解質と表面部との間に電圧を印加する電極と
をさらに備え、
ホイルは、電解質分配器によって液体電解質をホイルの上に堆積させ得るように、電解質分配器に当てられており、
電極が液体電解質と表面部との間に電圧を印加することによって、ホイルが表面部に当てられているときに、液体電解質から、表面部の上にホイルの孔の中でナノワイヤを成長させることができる。
【0028】
さらに、本方法の前述の特別な利点及び設計の特徴は、本装置に適用及び転用することができ、その逆も同様である。本方法は、本装置で実行されることが好ましい。本装置は、好ましくは、本方法を実行することを意図しており、そのように構成されている。
【0029】
表面部は、装置の一部ではない。表面部の上にナノワイヤを成長させるために、装置を表面部と接触させることができる。
【0030】
ホイルは、電解質分配器によって液体電解質をホイルの上に堆積させ得るように、電解質分配器に当てられる。このために、電解質分配器の出口側部にホイルを直接当てることができる。電解質を通す中間層を、ホイルと電解質分配器の出口側部との間に配置する場合は、ホイルが中間層に当てられる。例えば電解質分配器が、電解質分配器の出口側部に適用される中間層としてスポンジを有する場合は、ホイルはスポンジに当てられることが好ましく、このようにして電解質分配器に当てられる。
【0031】
好ましくは、電解質分配器によってホイルの上に電解質が堆積されたときに、電極から表面部への連続的な伝導経路が電解質によって生成されるように、電極が配置される。電極は電解質分配器の一部であってもよい。
【0032】
本装置の好ましい実施形態において、電解質分配器は、少なくとも2つの入口を有し、入口はそれぞれ、出口のグループのそれぞれに接続されており、出口のグループは互いに異なる。
【0033】
入口はそれぞれ、出口のグループのそれぞれに接続されており、出口のグループは互いに異なる。
【0034】
出口のグループは少なくとも2つの出口を有し、最多で全ての出口を有する。これらのグループは互いに重複していてもよい。ある出口が、1つのグループ、又は、複数のグループ、又は、全てのグループに属してもよい。電解質がどのグループにも属さない出口も有することもあり得るが、このような出口は電解質分配器の機能と無関係であるため、ここでさらに考慮しない。同一のグループが2つ存在することはできない。入口それぞれに対して、正確に1つのグループが存在しており、グループの数は入口の数に対応する。
【0035】
電解質分配器が入口を2つ、出口を4つ有する場合、例えば、以下のようなグループを設けることが可能である。
第1の例:入口1は、出口1及び2(グループ1)に接続されており、入口2は、出口3及び4(グループ2)に接続されている。
【0036】
第2の例:入口1は、出口1、2、及び3(グループ1)に接続されており、入口2は、出口1、2、及び4(グループ2)に接続されている。
【0037】
第3の例:入口1は、出口1、2、3、及び4(グループ1)に接続されており、入口2は、出口1、2、及び3(グループ2)に接続されている。
【0038】
これらの例は、特にグループの定義を示す役割を果たす。電解質分配器は、好ましくは、4つより多くの出口を有する。
【0039】
出口をグループにして配置することによって、電解質を出口側部にゾーン毎に堆積させることが可能になる。どの入口に電解質が導入されたかによって、電解質分配器の出口側部で、前記ゾーンのうちの対応する異なるゾーンに、電解質を堆積させる。したがって、本方法によれば、サイズ又は形状又はその両方が異なる表面部の領域を、ナノワイヤで覆うことができる。例えば、表面部のある領域をナノワイヤで覆うすることが意図されており、その領域が電解質分配器の出口側部よりも小さい場合は、電解質の堆積を電解質分配器の出口側部の対応する小領域に限定することができる。出口をグループに分けることによってこのようなことが可能になる場合は、小領域は、表面部の、ナノワイヤの成長によって覆われるはずの部分に対応することが好ましい。そうでない場合は、好ましくは、電解質は、電解質分配器の出口側部の次に大きい小領域に堆積されるものであり、このとき、この小領域は、表面部の、成長によって覆われるはずの部分全体をカバーする。
【0040】
電解質分配器のこのような構成によって、狙ったところに電解質を堆積させることが可能になる。また、これにより、不要な領域に電解質を堆積させないため、電解質の消費を減らすことができる。しかし、電解質分配器のこのような構成は、ナノワイヤの品質の改善にも寄与することも分かった。特に、電解質分配器のこのような構成により特に均一なナノワイヤが生成可能となることが分かった。これは、ホイルの上に堆積した電解質の量が、生成されるナノワイヤの特性に影響するためである。電解質が表面部の、成長によって覆われるはずの部分よりも大きな領域に与えられた場合、成長によって覆われるはずの表面部のその部分の中央よりも端縁領域において、ナノワイヤ成長に利用できる電解質が多くなる。これにより、端縁領域のナノワイヤが中央のナノワイヤと異なるものになることがある。電解質分配器のこのような構成は、これを防ぐことを可能にする。
【0041】
電解質は、使用される入口それぞれに、個別に供給することができる。このために、各入口は、入口分配器を介して、分離可能に、全体の入口に接続されることが好ましい。入口分配器は、好ましくは、入口にそれぞれに対する弁を有する。よって、電解質は、全体の入口を通じて電解質分配器に導入され、入口分配器を介して開いた弁を有する入口に分配することができる。入口分配器の個々の弁の開閉によって、電解質を堆積させるための出口のグループを1つ又は複数決めることができる。
【0042】
本装置のさらに好ましい実施形態によると、電解質分配器の出口側部は、平らになっている。
【0043】
電解質分配器は、特に、ナノワイヤのガルバニック成長に好適である。ナノワイヤは、好ましくは、平面状の表面部の上に成長する。したがって、電解質分配器の出口側部が平らになっていることが有利である。
【0044】
湾曲した表面部をナノワイヤで覆うことを意図する場合は、表面部と電解質分配器の出口側部との間にスポンジが配置されることが好ましい。スポンジは、表面部の湾曲を補うことができる。
【0045】
本装置のさらに好ましい実施形態によると、電解質分配器は、出口のグループのそれぞれに対する分配部を有する分配要素を有し、入口はそれぞれ、対応する分配部を介して出口の対応するグループに接続されている。
【0046】
分配要素は、分配プレートの形態で構成されていることが好ましい。分配部は、分配要素内部の空洞の形態で構成されていることが好ましい。分配部はそれぞれ、対応する入口に直接的に又は間接的に接続されていることが好ましい。接続部分とそれに対応する入口との間に、入口から分配部に向かって電解質を流すことができるさらなる構成要素が設けられている場合、間接的な接続が存在する。分配部はそれぞれ、対応する出口に直接的に又は間接的に接続されていることが好ましい。分配要素における開口部であって分配要素の周囲と対応する分配部との間に延在する開口部の形態で出口が構成されているように、分配部それぞれが、対応する出口に直接接続されることが好ましい。
【0047】
本装置のさらに好ましい実施形態によると、電解質分配器は前分配要素を有し、入口はそれぞれ、この前分配要素を介して分配要素の対応する分配部に接続されている。
【0048】
本実施形態においては、分配要素は、前分配要素を介して間接的に入口に接続されている。前分配要素によって、電解質を、入口から分配要素の対応する分配部に導くことが可能となる。各入口と各分配部とを直接接続することと比較して、前分配要素により、電解質を出口側部に均一な態様で堆積することができる。これは、電解質を入口から直接入れるよりも前分配要素を介した方が、電解質をより均一な態様で分配部に堆積できるからである。これにより、電解質の流速は、分配要素内でより均一になっている。
【0049】
電解質分配器は、層状の態様で構築されていることが好ましい。第1の層は前分配要素によって形成されており、第2の層は分配要素によって形成されている。
【0050】
本装置のさらに好ましい実施形態によると、電解質分配器の出口は、電解質分配器のカバーに形成されている。
【0051】
電解質分配器は、層状の態様で構築されていることが好ましい。第1の層は前分配要素によって形成されており、第2の層は分配要素によって形成されており、第3の層はカバーによって形成されている。分配要素は、一方では前分配要素に接し、他方ではカバーに接する。
【0052】
出口は、カバーに形成されている。分配要素は、好ましくは、出口に対応するように設計され及び配置された多数の孔を有する。そのため、電解質は、この孔によって分配要素の外に出ることができ、対応する出口によってカバーを通過することができる。
【0053】
出口側部の材料は、ナノワイヤの成長に対する影響を有し得る。使用する電解質又は成長させるナノワイヤの材料又はその両方によっては、出口側部に別の材料を用いたほうが結果として有利になることがある。分配要素に比べて、カバーはより簡易に交換可能である。そのため、このカバーにより、電解質分配器を特に柔軟な態様で使用することができる。摩耗や汚染の場合も、分配要素よりも簡易に、カバーを交換可能である。
【0054】
本装置のさらに好ましい実施形態によると、電解質分配器の出口側部は、電極の形態で構成されている。
【0055】
この実施形態においては、電解質分配器を、ナノワイヤのガルバニック成長のために特に良好に使用することができる。つまり、ナノワイヤの成長によって覆われる表面部と出口側部との間に電圧を印加することができる。電極はこれ以上は必要ないため、構築費用が減少する。
【0056】
特にこの実施形態においては、各出口を、電解質分配器のカバーに形成することが好ましい。このカバーは、好ましくは、金属上に形成されており、電極として使用することができる。ナノワイヤのガルバニック成長の際に、カバーの上に堆積を形成することができる。カバーを洗浄するために、カバーは分配要素から取り外すことができる。さらに、カバーは、例えば分配要素等に比べて、より簡易に交換可能である。電極の材料はナノワイヤの成長に対する影響を有し得るため、このことは有利である。
【0057】
本装置のさらに好ましい実施形態によると、電解質分配器は、電解質分配器の動きを出口側部に対して垂直に案内するための案内デバイスを有する。
【0058】
この実施形態においては、電解質分配器を、ナノワイヤのガルバニック成長のために特に良好に使用することができる。このように、ナノワイヤの成長によって覆われる本体を電解質分配器の下に配置することができ、ナノワイヤの成長によって覆われる本体の表面部にホイルを当てることができ、案内デバイスによって案内される電解質分配器をホイルに当てることができる。
【0059】
案内デバイスは、好ましくは、ハウジング等に配置された相手方部分と互いに作用するように設計されており、このハウジングの内部で電解質分配器を使用することができる。ハウジングは、電解質分配器の一部ではない。例として、案内デバイスは1つ又は複数の案内バーで構成されていてもよく、その案内バーは、相手方部分である対応するレセプタクルに案内されることができる。
【0060】
本装置のさらに好ましい実施形態によると、電解質分配器は、電解質分配器の出口側部に接したスポンジを有する。
【0061】
スポンジは、その第1の側部において、電解質分配器の出口側部から電解質を吸収することができ、第1の側部の反対側の第2の側部において、特にナノワイヤのガルバニック成長用のホイルの上にこの電解質を再び堆積させることができる。スポンジによって、電解質の堆積をさらに均一にできる。
【0062】
本発明及び技術分野は、図面に基づいて以下により詳細に説明する。図面には、特に好ましい例示的実施形態を示す。しかし、本発明はそれに制限されない。特に、図面、特に図示されるサイズ比は、模式的なものにすぎないことに留意すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0063】
図1】本発明による装置用の電解質分配器を示す断面図である。
図2】本発明による装置であって、図1の電解質分配器を備え、表面部の上に多数のナノワイヤを設ける装置を示す断面図である。
図3】本発明による方法であって、図1の電解質分配器を備える図2の装置を用いて、表面部の上に多数のナノワイヤを設ける方法を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
図1は、2つの入口2a、2bと、多数の出口3とを有する電解質分配器1を示す。出口3は、電解質分配器1の出口側部4に配置される。出口側部4は平らになっている。
【0065】
第1の入口2aは、出口3の第1のグループ5aに接続されている。第2の入口2bは、出口3の第2のグループ5bに接続されている。グループ5a、5bは互いに異なる。
【0066】
電解質分配器1は、分配要素6と、前分配要素8とを有する。分配要素6は、出口3のグループ5a、5bのぞれぞれに対する分配部7a、7bを有する。入口2a、2bは、分配要素6の対応する分配部7a、7bに、前分配要素8を介して接続されており、且つ、分配要素6の分配部7a、7bを介して、出口3の対応するグループ5a、5bに接続されている。
【0067】
図1の断面図において、第2の分配部7bは、一部が第1の分配部7aの右側に示され且つ一部がその左側に示されている。これは断面図であるためである。第2の分配部7bの図に示した2つの部分は、この断面の外で互いに繋がっている。前分配要素8も同様である。第2の入口2bから、電解質は、矢印で示すように、一方では第2の分配部7bの左手部分に入り、他方では第2の分配部7bの右手部分に入ることができる。
【0068】
出口は、電解質分配器1のカバー9に形成されている。カバー9は、電極10の形態で構成されており、その結果として出口側部4は電極10の形態で構成されている。
【0069】
さらに、電解質分配器1は、案内デバイス11を備え、この案内デバイス11は、電解質分配器1の動きを出口側部4に対して垂直に案内する。
【0070】
図2は、表面部15の上に多数のナノワイヤ14を設ける装置12を示す。表面部15を有する本体19が示されている。本体19及び表面部15のいずれも、装置12の一部ではない。
【0071】
装置12は電解質分配器1を備え、この電解質分配器1は図1に示すように構成されており、且つ、スポンジ13をさらに有する。このスポンジ13は、電解質分配器1の出口側部4に接している。図2において、電解質分配器1は、簡略化された形態で示されている。電解質分配器1の一部をなしている、出口側部4の電極10、案内デバイス11、及び、スポンジ13のみが示されている。
【0072】
さらに、装置12は、多数の連続的な孔17を有するホイル16を備える。ホイル16は、電解質分配器1によって液体電解質をホイル16の上に堆積させ得るように、電解質分配器1に当てられる。このために、提示した実施形態において、ホイル16は、電解質分配器1のスポンジ13に当てられる。
【0073】
電極10は、液体電解質と表面部15との間に電圧を印加するのに適しており、これにより、液体電解質から、表面部15の上にホイル16の孔17の中でナノワイヤ14を成長させることができる。電圧は、電流電圧源18によって印加することができる。
【0074】
案内デバイス11によって、電解質分配器1を出口側部4に対して垂直に案内するように動かすことができる。電解質分配器1の上に示されているのは各レセプタクル23であり、案内デバイス11は、このレセプタクル23と互いに作用する。電解質分配器1は、バネ22により、所定の圧力でホイル16に押し付けることができる。
【0075】
表面部15全体が覆われないように、ナノワイヤ14の成長を局所的に限定することができる。このために、表面部15に構造化層20が設けることができ、この構造化層20上では、ナノワイヤは成長できない。その結果、ナノワイヤ14の成長を、構造化層20の開口部21に限ることができる。開口部21は、リソグラフィ等によって得ることができる。
【0076】
図3は、表面部15の上に多数のナノワイヤ14を設ける方法の流れ図を示す。図1及び図2の参照符号を用いて、本方法を説明する。本方法は、
a)図1の電解質分配器1を用意することと、
b)多数の連続的な孔17を有するホイル16を用意することと、
c)表面部15と電解質分配器1の出口側部4との間に、ホイル16を配置することと、
d)電解質分配器1の入口2a、2bのうち少なくとも1つに液体電解質を導入し、これにより、液体電解質が、電解質分配器1を介してホイル16の上に堆積されるようにすることと、
e)液体電解質と表面部15との間に電圧を印加し、これにより、液体電解質から、表面部15の上にホイル16の孔17の中でナノワイヤ14を成長させることと
を含む。
【0077】
本方法は、特に図2の装置によって実行することができる。
【符号の説明】
【0078】
1 電解質分配器
2a 第1の入口
2b 第2の入口
3 出口
4 出口側部
5a 第1のグループ
5b 第2のグループ
6 分配要素
7a 第1の分配部
7b 第2の分配部
8 前分配要素
9 カバー
10 電極
11 案内デバイス
12 装置
13 スポンジ
14 ナノワイヤ
15 表面部
16 ホイル
17 孔
18 電流電圧源
19 本体
20 構造化層
21 開口部
22 バネ
23 レセプタクル
図1
図2
図3