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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】電子制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/16 20060101AFI20241003BHJP
   H02G 3/14 20060101ALI20241003BHJP
   H05K 5/03 20060101ALI20241003BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H02G3/16
H02G3/14
H05K5/03 H
B60R16/02 610Z
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022558923
(86)(22)【出願日】2021-09-22
(86)【国際出願番号】 JP2021034805
(87)【国際公開番号】W WO2022091652
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2023-02-20
(31)【優先権主張番号】P 2020181011
(32)【優先日】2020-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】秋葉 諒
(72)【発明者】
【氏名】河合 義夫
【審査官】鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-129182(JP,A)
【文献】特開2017-017096(JP,A)
【文献】国際公開第2017/038316(WO,A1)
【文献】特開2012-200061(JP,A)
【文献】特開2009-064895(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/16
H02G 3/14
H05K 5/00-5/06
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御対象である車載機器に固定される電子制御装置であって、
前記車載機器に取り付けるベースと、
前記ベースに固定されたケースと、
前記ケースに保持された回路基板と、
前記回路基板に実装された電子部品と
を含んだユニットであり、
前記ケース及び前記ベースの少なくとも一方が樹脂製であり、
前記ケースと前記ベースとが複数の固定ネジで固定され、かつ
前記複数の固定ネジから離反して配置された接着剤で前記ケースと前記ベースとが固定されており、
前記複数の固定ネジで囲われた領域には長手方向と短手方向があり、前記接着剤が、前記複数の固定ネジで囲われた領域の長手方向の中央部に配置されている
ことを特徴とする電子制御装置。
【請求項2】
請求項1の電子制御装置において、前記接着剤が、平面視で前記複数の固定ネジで囲われた領域に配置されていることを特徴とする電子制御装置。
【請求項3】
請求項1の電子制御装置において、
前記ベースが、前記複数の固定ネジで囲われた領域に、前記ケースに対し間隙を介して対向した座面を備えており、
前記座面と前記ケースとの間に介在する間隙に、前記接着剤が充填されている
ことを特徴とする電子制御装置。
【請求項4】
請求項1の電子制御装置において
記接着剤が、前記短手方向に線状に延びている
ことを特徴とする電子制御装置。
【請求項5】
請求項4の電子制御装置において、前記接着剤が、前記長手方向に見て波型になるように構成されていることを特徴とする電子制御装置。
【請求項6】
請求項1の電子制御装置において、前記接着剤のヤング率が1MPa以上であることを特徴とする電子制御装置。
【請求項7】
請求項1の電子制御装置において、
前記電子部品が、QFNパッケージを含んで構成されており、
前記接着剤が、平面視で前記QFNパッケージに重ならないように配置されている
ことを特徴とする電子制御装置。
【請求項8】
請求項4の電子制御装置において、前記接着剤は、前記長手方向に複数並べて配置されていることを特徴とする電子制御装置。
【請求項9】
請求項の電子制御装置において、
複数の前記接着剤と前記回路基板との距離が異なり、
前記電子部品が、BGAパッケージを含んで構成されており、
平面視で前記BGAパッケージと重なる接着剤が、他の接着剤よりも前記回路基板から離れている
ことを特徴とする電子制御装置。
【請求項10】
請求項1の電子制御装置において
記接着剤が、前記短手方向に複数並べて配置されている
ことを特徴とする電子制御装置。
【請求項11】
請求項10の電子制御装置において、
前記ベース及び前記ケースの一方が樹脂製部品で他方が金属製部品であり、
前記複数の固定ネジで囲われた領域の短手方向の内側に位置する接着剤が、前記短手方向の外側に位置する接着剤よりも前記樹脂製部品の側に位置している
ことを特徴とする電子制御装置。
【請求項12】
請求項10の電子制御装置において、前記接着剤が、前記長手方向に見て波型になるように構成されていることを特徴とする電子制御装置。
【請求項13】
請求項1の電子制御装置において、
前記回路基板が、前記ケースに対して複数の基板ネジで固定されており、
前記接着剤が、平面視で前記複数の基板ネジで囲われた領域に重ならないように配置されている
ことを特徴とする電子制御装置。
【請求項14】
請求項1の電子制御装置において、前記固定ネジが3本のみであることを特徴とする電子制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速機やエンジン等の車載機器に固定して取り付ける電子制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
変速機やエンジン、ブレーキ、モータ等といった車載機器を制御する電子制御装置は、電子部品の基板が一般に金属製(合金製)のケースで保持されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6636363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、車両に搭載する電子制御装置はますます増加傾向にあり、車載用の電子制御装置は、接続する車載機器との接続ケーブルを極力短くする観点で車載機器との一体化(機電一体化)が進んでいる。具体的には、エンジンと電子制御装置の一体化、変速機と電子制御装置の一体化等である。但し、変速機等の車載機器の動作中の表面温度は130-140℃程度に達し得る。こうした高温の車載機器と電子制御装置を一体化した構成では、電子制御装置に含まれる電子部品への車載機器からの伝熱が大きく、電子制御装置を作動させると電子部品が耐熱温度を超えて昇温する恐れがある。そこで、電子制御装置の部品のうち電子部品の基板を支持するケースの材質を樹脂に変更し、車載機器から電子部品への伝熱を抑えることが考えられる。
【0005】
一方、車載機器に電子制御装置を取り付けると、車載機器の機械振動が電子制御装置に直接的に伝わる。電子制御装置のケースを金属に比べて材料体力が低い樹脂に変更する場合、耐振性の観点では車載機器のボディに対してケースを十分な本数のネジで固定する必要がある。
【0006】
しかしケースの製作誤差を完全に排除することは難しく、製作誤差のある樹脂製のケースは多くの箇所でねじ止めすると変形する。これによりケースに固定されている回路基板に歪みが発生し、回路基板とこれに搭載された電子部品とを接続するはんだ付け部分に負荷がかかり、はんだ付け部分の寿命が低下する。はんだ付け部分にかかる負荷を抑える観点から、電子制御装置のケースのねじ止め箇所を増やすことも難しいのが実情である。
【0007】
本発明の目的は、耐振性と電子部品のはんだ付け部分の寿命とを両立することができる電子制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、制御対象である車載機器に固定される電子制御装置であって、前記車載機器に取り付けるベースと、前記ベースに固定されたケースと、前記ケースに保持された回路基板と、前記回路基板に実装された電子部品とを含んだユニットであり、前記ケース及び前記ベースの少なくとも一方が樹脂製であり、前記ケースと前記ベースとが複数の固定ネジで固定され、かつ前記複数の固定ネジから離反して配置された接着剤で前記ケースと前記ベースとが固定されており、前記複数の固定ネジで囲われた領域には長手方向と短手方向があり、前記接着剤が、前記複数の固定ネジで囲われた領域の長手方向の中央部に配置されている電子制御装置を提供する。

【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電子制御装置の耐振性と電子部品のはんだ付け部分の寿命とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る電子制御装置を取り付けた車載機器を模式的に表す斜視図
図2図1に示した車載機器のボディにおける電子制御装置の取り付け部分を切り取ってボディの内側から仰ぎ見て表した斜視分解図
図3】本発明の第1実施形態に係る電子制御装置の斜視図
図4】本発明の第1実施形態に係る電子制御装置の分解斜視図
図5】本発明の第1実施形態に係る電子制御装置の平面図
図6図5中のVI-VI線による電子制御装置の断面図
図7】本発明の第2実施形態に係る電子制御装置の分解斜視図であって第1実施形態の図4に対応する図
図8】本発明の第2実施形態に係る電子制御装置に備わったベースの平面図
図9】本発明の第3実施形態に係る電子制御装置に用いる接着剤のヤング率と耐振性及びはんだ寿命との関係を表すグラフ
図10】本発明の第4実施形態に係る電子制御装置の断面図であって第1実施形態の図6に対応する図
図11】本発明の第5実施形態に係る電子制御装置の分解斜視図であって第1実施形態の図4に対応する図
図12】本発明の第6実施形態に係る電子制御装置の分解斜視図であって第1実施形態の図4に対応する図
図13】本発明の第6実施形態に係る電子制御装置の断面図であって第1実施形態の図6に対応する図
図14】本発明の第7実施形態に係る電子制御装置の分解斜視図であって第1実施形態の図4に対応する図
図15】本発明の第8実施形態に係る電子制御装置の分解斜視図であって第1実施形態の図4に対応する図
図16】本発明の第8実施形態に係る電子制御装置の平面図であって第1実施形態の図5に対応する図
図17図16中のXVII-XVII線による電子制御装置の断面図
図18】本発明の第9実施形態に係る電子制御装置の分解斜視図であって第1実施形態の図4に対応する図
図19】本発明の第9実施形態に係る電子制御装置の平面図であって第1実施形態の図5に対応する図
図20図19中のXX-XX線による電子制御装置の断面図
図21】本発明の第10実施形態に係る電子制御装置の分解斜視図であって第1実施形態の図4に対応する図
図22】本発明の第10実施形態に係る電子制御装置の断面図であって第9実施形態の図20に対応する図
図23】本発明の第11実施形態に係る電子制御装置の分解斜視図であって第1実施形態の図4に対応する図
図24】本発明の第11実施形態に係る電子制御装置の断面図であって第1実施形態の図6に対応する図
図25】本発明の第12実施形態に係る電子制御装置の分解斜視図であって第1実施形態の図4に対応する図
図26】比較例に係る電子制御装置の分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本願明細書で例示する各実施形態に係る電子制御装置は、例えば、センサからの信号や他の制御装置からの入力信号を基に、制御対象である車載機器のアクチュエータ(例えば電磁弁)に指令信号を出力するデバイスである。各実施形態に係る電子制御装置は、制御対象である車載機器のボディに固定して取り付けられる。車載機器は、乗用車その他の車両に搭載される機器であり、例えば変速機やエンジン、ブレーキ、モータ等である。以下に図面を用いて本発明の各実施形態を説明する。各実施形態において、同一の又は対応する要素には同符号を用い、重複する説明を適宜省略する。
【0012】
(第1実施形態)
-車載機器-
図1は本発明に係る電子制御装置を取り付けた車載機器を模式的に表す斜視図である。同図に示した車載機器100は例えば変速機であり、エンジン等の原動機の動力をトルクや回転数、回転方向を変えて活軸へと伝達する。この車載機器100は、歯車や軸等からなる機構部(不図示)と、機構部を収容する外郭であるボディ101とを含んで構成されている。ボディ101には、機構部を潤滑する潤滑油のタンクが内蔵されている。車載機器100のボディ101には、電子制御装置1が固定して取り付けられている。この例において、電子制御装置1は、例えばTCU(Transmission Control Unit)である。このように車載機器100と電子制御装置1が1つのユニットを構成し、機電一体化がなされている。車載機器100及び電子制御装置1は、例えば車両のエンジンルーム(不図示)の内部に配置されている。
【0013】
図2は車載機器100のボディ101における電子制御装置1の取り付け部分を切り取ってボディ101の内側から仰ぎ見て表した斜視分解図である。図2に示すように、車載機器100のボディ101における電子制御装置1の取り付け部分には開口102が形成されてあり、車載機器100のアクチュエータ(不図示)から延びるケーブルの先端のコネクタ103が開口102に臨んでいる。開口102の形状に特別な制限はないが、同図の例において開口102は矩形状に形成してある。開口102を介して車載機器100のボディ101からコネクタ103を引き出して電子制御装置1のコネクタ41(後述)に接続し、開口102を塞ぐようにしてボディ101に電子制御装置1が装着される。車載機器100のボディ101に対し、電子制御装置1は複数の取付ネジ(不図示)で固定して取り付けられる。電子制御装置1はボディ101の開口102を塞ぐカバーを兼ねる。コネクタ41,103を介して電子制御装置1と車載機器100のアクチュエータとが電気的に接続し、両者の間で電気信号が伝達される。電子制御装置1と車載機器100を一体化することで、電子制御装置1と車載機器100とを接続するケーブルの長さが抑えられている。車載機器100から電子制御装置1との接続ケーブルが出ないので、車載機器100と電子制御装置1を接続するケーブルを車両の内部で引き回す必要がない。
【0014】
-電子制御装置-
図3は本発明の第1実施形態に係る電子制御装置の斜視図、図4はその分解斜視図、図5は平面図、図6図5中のVI-VI線による電子制御装置の断面図である。これらの図に示した電子制御装置1は、制御対象である車載機器100(図1)に固定されるユニットであり、ベース10、ケース20、回路基板30、電子部品40、及び接着剤50を含んで構成されている。
【0015】
・ベース
ベース10は、電子制御装置1の基部構造体であり、車載機器100のボディ101に複数の取り付けネジ(不図示)で固定して取り付けられる。ベース10とボディ101との間には例えばゴムパッキン(不図示)が介在し、ベース10とボディ101との間の防水性や気密性が高められている。第1-第12実施形態においてベース10は金属製であることとするが、樹脂製としても良い。
【0016】
図4に示したように、ベース10には、プレート11、ネジ台座12-16、コネクタ孔17、及び接着台座18が備わっている。プレート11はベース10の本体であり、車載機器100のボディ101の開口102(図2)を塞ぐカバーを兼ねる。このプレート11には、車載機器100のボディ101に電子制御装置1を取り付ける上記の取り付けネジ(不図示)を通す貫通孔(不図示)が縁部の適宜の場所に複数設けられている。ネジ台座12-16は、ケース20の形状に応じたレイアウトでプレート11から複数(本例では5つ)上向きに突出している。ネジ台座12-16は、それぞれ上端面をケース20の着座する平滑な座面とし、図4に示したように各々座面にネジ穴H1を備えている。ネジ穴H1には、固定ネジS1がねじ込まれる。
【0017】
これらネジ台座12-16のネジ穴H1或いは固定ネジS1で囲われた領域A(図5)は、電子制御装置1と車載機器100の形状や取り合いの都合上、平面視で(図4のZ軸方向下向きに見て)X軸方向及びY軸方向の寸法が異なっている。つまり、領域Aには、長手方向(図4のX軸方向)と短手方向(同Y軸方向)がある。また、固定ネジS1(後述)のピッチも不等間隔であり、長手方向におけるネジ穴H1又は固定ネジS1の最大ピッチX1は、短手方向におけるネジ穴H1又は固定ネジS1の最大ピッチY1よりも大きい(X1>Y1)。本実施形態において、領域Aは、ネジ台座12-16の各ネジ穴H1(固定ネジS1)を頂点とする五角形の領域である(図5)。
【0018】
また、ベース10は、複数の固定ネジS1で囲われた領域(すなわち上記領域A)に、ケース20に対し間隙を介して対向した座面19を備えている。具体的には、先に触れた接着台座18が、平面視で領域Aの中に位置しており、プレート11の側からケース20に向かって突出している。この接着台座18のケース20との対向端面(この例ではZ軸方向の上側を向いた上面)が座面19であり、座面19とケース20との間に僅かな間隙が確保されるように接着台座18のZ軸方向の寸法が設定されている。本実施形態において、1つの電子制御装置1について接着台座18及び座面19は各1つのみである。
【0019】
なお、コネクタ孔17は、コネクタ41(後述)を通す開口であり、平面視でこの領域Aに収まるようにレイアウトされている。本実施形態において、コネクタ孔17は、X軸方向において接着台座18の座面19を挟んで電子部品40と反対側(図6中の右側)に位置している。コネクタ41とコネクタ孔17との間にはシール部材P1(図6)が介在し、コネクタ41とコネクタ孔17との間の防水性や気密性が高められている。シール部材P1は、例えばゴムパッキンである。
【0020】
・ケース
ケース20は、回路基板30や電子部品40を収める部品であり、ベース10に固定されている。ケース20とベース10とは、複数(本実施形態では5本)の固定ネジS1で固定されている。第1-第12実施形態においてケース20は樹脂製であることとするが、ベース10を樹脂製とする場合にはケース20を金属製とする場合もある。
【0021】
図4に示したように、ケース20には、本体21、ブラケット22-26、及びコネクタ孔27が備わっている。ケース20の本体21は、回路基板30や電子部品40を収容し保持する薄い皿状の部材である。ブラケット22-26はネジ台座12-16に対応してケース20の本体21の外周部に突出して設けられている。ブラケット22-26のインサートカラーに固定ネジS1を挿し込んでネジ台座12-16のネジ穴H1にねじ込むことで、ケース20がベース10に固定される。
【0022】
ケース20の本体21には、回路基板30を固定する基板固定用のネジである基板ネジS2をねじ込むネジ穴H2が、複数(本例では4つ)備わっている。基板ネジS2をねじ込むネジ穴H2は平面視で電子部品40を囲むように配置されており、基板ネジS2で囲われた領域B(各基板ネジS2を頂点とする四角形の領域)に、平面視で電子部品40が収まるレイアウトになっている。
【0023】
コネクタ孔27は、コネクタ41(後述)を通す開口であり、平面視で上記領域Aに収まる一方で領域Bからは外れており、領域Bに対してはX軸方向(図6中の右側)にずれて位置している。このコネクタ孔27はベース10のコネクタ孔17と平面視で重なる。コネクタ41とコネクタ孔27との間にはシール部材P2が介在し、コネクタ41とコネクタ孔27との間の防水性や気密性が高められている。シール部材P2は、例えば接着剤である。
【0024】
・回路基板/電子部品
回路基板30は、ケース20に保持されている。この回路基板30には、電子部品40及びコネクタ41が実装されている。回路基板30に基板ネジS2を挿し込んでケース20のネジ穴H2にねじ込むことで、回路基板30はケース20に固定されている。回路基板30には、電子部品40が実装されている。本実施形態における電子部品40には、QFNパッケージ(Quad flat no lead package)40aやBGA(Ball grid array)パッケージ40bが含まれる。図示していないが、回路基板30に実装される電子部品40には、これらQFNパッケージ40aやBGAパッケージ40bに加え、少なくとも1つの他の電子部品が含まれ得る。前述した通り、電子部品40(QFNパッケージ40a及びBGAパッケージ40bを含む)は、基板ネジS2で囲われた領域Bに平面視で収まるようにレイアウトされており、コネクタ41は、領域Bから外して配置されている。
【0025】
コネクタ41は、車載機器100のアクチュエータ(不図示)から延びるケーブルの先端のコネクタ103(図2)と連結され、回路基板30に形成される電気回路と車載機器100とを電気的に接続する。
【0026】
回路基板30、電子部品40、及びコネクタ41は、金属製のカバー42によりカバーされている。このカバー42は、複数(本例では3本)のカバーネジS3でケース20に取り付けられている。カバー42とケース20との間にはシール部材P3が介在し、カバー42とケース20との間の防水性や気密性が高められている。シール部材P3は、例えば接着剤である。また、カバー42は、熱伝導材43(図4図6)を介して電子部品40と接している。熱伝導材43は、例えばグリスである。熱伝導材43を介して電子部品40の熱が金属製のカバー42に逃げ、カバー42から放熱することによって電子部品40の温度上昇が抑制される構成である。本実施形態では、同様の目的で、回路基板30も熱伝導材43を介してカバー42と部分的に接触している(図20も参照)。
【0027】
・接着剤
接着剤50は、例えばシール部材P2,P3に用いるシール目的の接着剤と異なり、電子制御装置1の耐振性を向上させるための部材である。そのため、接着剤50は、シール部材P2,P3のように開口(コネクタ孔17,27)を囲うような環状の形状にはなっておらず、本実施形態では一定の面積を有する中実の点状に塗布されている。但し、本実施形態において、接着剤50の材料は、シール部材P2,P3に用いる接着剤の材料と同一である。
【0028】
接着剤50は、ベース10の接着台座18の平滑な座面19とケース20の平滑な下面(一部)との間隙g(図6)に充填され、ケース20とベース10とを接着し両者を互いに固定している。本実施形態において、接着剤50は、各固定ネジS1から離反して配置されている。接着剤50は1か所のみに配置されている。具体的には、接着剤50は、平面視で各固定ネジS1により囲われた上記の領域A(図5)に配置されている。特に本実施形態において、接着剤50は、領域Aの長手方向の中央部に配置されている。本実施形態では、領域Aの長手方向の中央部の代表的具体例として、互いの間隔が最大ピッチX1である2本の固定ネジS1のX軸方向の中間位置を図5に示してある。この位置は、間隔が最大ピッチX1の2本の固定ネジS1の位置を節とする回路基板30の振動について、振幅の腹に当たる位置である。また、領域Aの短手方向(Y軸方向)においても、接着剤50は、最大ピッチY1の2本の固定ネジS1の中間位置にレイアウトしてある。この位置は、間隔が最大ピッチY1の2本の固定ネジS1を節とする回路基板30の振動について、振幅の腹に当たる位置である。
【0029】
-比較例-
図26は比較例に係る電子制御装置の分解斜視図であり、図4に対応する図である。同図に示した電子制御装置は、第1実施形態に係る電子制御装置1との対比のために仮想した構成例であり、電子制御装置1から接着台座18(座面19を含む)及び接着剤50を省略したものに相当する。
【0030】
電子制御装置を車載機器100に取り付けると、車載機器100から大きな振動を受ける場合があり、金属製に比べて剛性に劣る樹脂製のケースaの破損を防止するためには、5本の固定ネジsによる固定では耐振性が不足する可能性がある。ケースaを固定する固定ネジsの本数を増やせば、ケースaの十分な耐振性が確保され得る。
【0031】
しかし、ベースbとケースaの製作誤差を考慮すると、ベース10にケース20を置いたときに、5つ全てのブラケットcが各ネジ台座dに均一に着座するようにケースa及びベース10を製作することは容易ではない。固定ネジsの本数を増やすと、それに応じてブラケットc及びネジ台座dの組数が増し、全てのブラケットcが各ネジ台座dに均一に着座するようにケースa及びベースbを製作することは一層困難になる。両者の間に隙間のあるブラケットcとネジ台座dとを固定ネジsで締め込むと樹脂製であるケースaに変形が生じ、これに伴ってケースaに固定された回路基板eにも歪みが生じる。その結果、回路基板eとこれに実装された電子部品fとの間のはんだ付け部分に応力がかかり、車載機器100の作動に伴って繰り返し生じる温度変化により、はんだ付け部分が破損し易くなる。そのため、電子部品fのはんだ付け部分にかかる負荷を考慮すると、固定ネジsの本数を増やすことにもデメリットがある。
【0032】
-効果-
(1)本実施形態によれば、回路基板30を保持するケース20を樹脂製とすることにより、車載機器100から回路基板30への伝熱を抑制し、回路基板30に実装された電子部品40への伝熱を抑制することができる。
【0033】
また、ケース20とベース10とを複数の固定ネジS1で固定すると共に、各固定ネジS1から離反した位置で接着剤50によりケース20とベース10とを追加的に固定している。このように固定ネジS1から距離があって振動し易いケース20の部位をベース10に対して接着剤50で拘束することにより、図26の比較例と同じ本数の固定ネジS1でも、ケース20を効果的に制振して電子制御装置1の耐振性を向上させることができる。
【0034】
加えて、硬化前の接着剤50の厚みは柔軟に変化するので、ケース20とベース10との間の間隙gの寸法(Z軸方向の寸法)にばらつきが生じても、電子制御装置1の組み立て時に間隙gの寸法のばらつきを接着剤50で吸収することができる。接着剤50はケース20とベース10の製作誤差に応じて厚みを変えて間隙gを埋めてから硬化するので、接着剤50でベース10と接着することによりケース20が変形することもなく、静的な状態で電子部品40のはんだ付け部分にかかる負荷も抑えられる。
【0035】
以上のように、本実施形態に係る電子制御装置1によれば、耐振性と電子部品40のはんだ付け部分の寿命とを両立することができる。また、ケース20の破損を防止できることから、車載機器100との機電一体構造としても電子制御装置1の高い信頼性を確保することができる。
【0036】
本実施形態及び比較例に係る各電子制御装置について耐振性及びはんだ寿命を本願発明者等が解析したところ、接着剤50のない比較例に比べ、本実施形態に係る電子制御装置1においては、はんだ寿命を犠牲にすることなく耐振性の向上が確認された。
【0037】
(2)固定ネジS1の本数が抑えつつ所望の耐振性を確保できるので、耐振性確保のために固定ネジの本数を増やす場合に比べ、固定ネジの本数はもちろんのこと、インサートカラー等の固定ネジに付随して必要になる部品の数も抑えられる。こうして部品点数が抑えられるので、製作容易性が向上することもメリットである。また、固定ネジS1の本数が抑えられるので、組み立て時に要求されるベース10及びケース20の製作精度が緩和される点も製作容易性に関連するメリットに挙げられる。
【0038】
(3)本実施形態において、平面視において各固定ネジS1で囲われた領域Aに接着剤50を配置したことにより、各固定ネジS1と接着剤50とのXY平面状の距離を確保することができる。これにより接着剤50による制振効果を効果的に得ることができる。特に本実施形態においては、領域Aの長手方向の中央部に接着剤50を配置したことにより、接着剤50がない場合にケース20に生じ得る振幅の腹を接着剤50で拘束することができ、効率的に制振効果を得ることができる。本実施形態の場合、接着剤50は領域Aの短手方向においても中央部に位置しているため、短手方向における振動の制振についても同様の効果が得られる。
【0039】
(4)また、車載機器100の開口102を塞ぐカバーを兼ねたベース10を電子制御装置1の構成要素に含むことにより、車載機器の既製の開口カバーに併せてケース20を設計する場合に比べ、ベース10及びケース20の設計自由度が増す。これによりベース10とケース20との接着剤50による拘束部を適正に設定することができることも、電子制御装置1を製造する上での大きなメリットである。
【0040】
(5)電子制御装置1は、ベース10が上記領域Aに座面19を有し、座面19とケース20との間に介在する間隙gに接着剤50が充填された新規構造である。このような新規構造も、ベース10及びケース20の設計自由度が増すことにより、容易に製造することができる。
【0041】
(6)接着剤50をシール部材P2,P3に用いる他の接着剤と共通化することにより、電子制御装置1の部品点数を低減することができ、製作容易性の向上と低廉化に貢献し得る。但し、上記効果(1)を得る上で、接着剤50がシール部材P2,P3に用いる他の接着剤と異なっていても構わない。
【0042】
(第2実施形態)
図7は本発明の第2実施形態に係る電子制御装置の分解斜視図であり、第1実施形態の図4に対応している。図8図7に示した電子制御装置に備わったベースの平面図である。
【0043】
本実施形態が第1実施形態と相違する点は、接着剤50が上記領域Aの短手方向(Y軸方向)に線状に延びている点である。本実施形態においても、各固定ネジS1で囲われた領域Aに長手方向(X軸方向)と短手方向(Y軸方向)がある。接着剤50が領域Aの短手方向に延びる構成であるため、接着台座18も接着剤50の形状に応じて領域Aの短手方向(Y軸方向)に延びている。本実施形態において、接着剤50のY軸方向の寸法は、固定ネジS1のY軸方向の最大ピッチY1の半分かそれよりも少し長い程度であるが、最大ピッチY1より短くすることもできる。接着剤50は領域Aの短手方向に延在するが、同方向において領域Aの中央に位置している(短手方向において接着剤50の中央位置が領域Aの中央位置に合わせてある)。領域Aの長手方向において接着剤50の位置は第1実施形態と同様であり、本実施形態においても、接着剤50は領域Aの長手方向の中央部に位置している。接着剤50が配置されているのは、この1か所のみである。
【0044】
本実施形態の電子制御装置1において、その他の構成は第1実施形態の電子制御装置1と同様である。
【0045】
本実施形態においても、固定ネジS1と別個に接着剤50でベース10に対してケース20を拘束することにより、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0046】
また、仮に接着剤50を省略した場合、図8に示したように、最大ピッチX1,Y1を形成する4本の固定ネジS1で囲われた領域においてX軸方向の中央でY軸方向に帯状に延びる領域A1で、加振時にケース20が最も大きく振れ得る。X軸方向の振幅の腹である。それに対し、X軸方向における両端でY軸方向に帯状に延びる2つの領域A3は振幅の節に近く、ケース20の振れが小さい。領域A1,A3の間の帯状の領域A2では、ケース20の振れの大きさは中間程度である。本実施形態では、最も大きく振れ得る帯状の領域A1に沿って接着剤50が延在しているので、ケース20の領域A1を第1実施形態よりも広い範囲で拘束することができる。本願発明者等の解析によれば、本実施形態では、第1実施形態と比較しても高い耐振性が確認された。
【0047】
なお、同じ線状でも接着剤50を領域Aの長手方向に延ばした場合、第1実施形態に対して顕著な効果の向上は見られず、領域Aの短手方向に接着剤50を延ばす構成の優位性が確認されている。
【0048】
(第3実施形態)
本実施形態が第1実施形態と相違する点は、接着剤50のヤング率が1MPa以上である点である。ここで言うヤング率は、硬化後の接着剤50のヤング率である。その他の構成については、第1実施形態と同様である。
【0049】
図9は本発明の第3実施形態に係る電子制御装置に用いる接着剤のヤング率と耐振性及びはんだ寿命との関係を表すグラフである。耐振性は、一例として、電子制御装置1を加振した場合に電子制御装置1が正常に作動し得る最大の振動加速度Gで評価できる。はんだ寿命は、一例として、車載機器100の作動に伴って電子制御装置1が晒される想定温度変化の繰り返し数Nをパラメータとし、電子制御装置1を車載機器100に装着してから電子部品40のはんだ付け部分が破損するまでの繰り返し数Nで評価できる。
【0050】
本願発明者等が接着剤50のヤング率をパラメータとして耐振性及びはんだ寿命を解析したところ、接着剤50のヤング率の上昇に伴って耐振性が向上した。しかし、ヤング率が1MPa以上になると、接着剤50のヤング率の上昇に伴う耐振性の向上率が鈍化する結果となった。
【0051】
はんだ寿命については、接着剤50のヤング率が変化しても目立った変化はなく、ヤング率を1MPa以上にしても第1実施形態と同等のはんだ寿命が確保できることが確認された。
【0052】
以上のことから、接着剤50のヤング率を1MPa以上に設定することで、本構造においてはんだ寿命を犠牲にすることなく電子制御装置1の耐振動性能を効果的に引き出し、高水準の耐振性とはんだ寿命を両立させることができる。
【0053】
なお、本実施形態では、第1実施形態の構成において接着剤50のヤング率を1MPa以上とする例を説明したが、第2実施形態や後述する各実施形態においても接着剤50のヤング率を1MPa以上とすることは有効である。
【0054】
(第4実施形態)
図10は本発明の第4実施形態に係る電子制御装置の断面図であり、第1実施形態の図6に対応している。
【0055】
本実施形態が第1実施形態と相違する点は、平面視で、電子部品40のうち少なくともQFNパッケージ40aと重ならないように接着剤50が配置されている点である。つまり、QFNパッケージ40aの全部と接着剤50の全部がZ軸方向に重ならない構成であり、QFNパッケージ40aの上下領域Raに対して接着剤50のレイアウトが完全にXY平面方向にずれている。
【0056】
本実施形態の場合、ベース10とケース20とが接着剤50を介して繋がっているため、ベース10からの伝熱により接着剤50が膨張しケース20に負荷がかかることも考えられる。この場合、電子部品であっても例えばQFP(Quad Flat Package)の場合、ケース20及び回路基板30を介してはんだ付け部分に負荷がかかっても、その外周部に出たリード線で多少なりとも変形を吸収し得る。それに対し、QFNパッケージ40aは表面に電極パッドを設けた構造であってリード線が出ていないため、QFP等と比較して変形の許容代が小さく、そのはんだ付け部分は負荷に弱い。
【0057】
そこで、本実施形態では、QFNパッケージ40aの全部と接着剤50の全部がZ軸方向に重ならないようにし、接着剤50からQFNパッケージ40aに至るまでのケース20及び回路基板30上の距離を確保してある。これにより接着剤50が膨張してもケース20及び回路基板30を介してQFNパッケージ40aに伝わる変形が抑えられ、QFNパッケージ40aを効果的に保護することができる。
【0058】
なお、第2実施形態、第3実施形態、及び後述する各実施形態においても接着剤50とQFNパッケージ40aとの位置をずらす構成は有効である。反対に第1実施形態でも接着剤50とQFNパッケージ40aとの位置が本実施形態と同様にずれているが、前述した本質的効果(1)を得る限りにおいて、第1実施形態では接着剤50の一部又は全部をQFNパッケージ40aと上下に重ねても良い。
【0059】
(第5実施形態)
図11は本発明の第5実施形態に係る電子制御装置の分解斜視図であり、第1実施形態の図4に対応している。
【0060】
本実施形態が第2実施形態と相違する点は、接着剤50が領域A(図5)の長手方向に複数並べて配置されている点である。図11ではY軸方向に線状に延びる2つの接着剤50A,50BをX軸方向に並べて配置した構成を例示しているが、3つ以上の接着剤を並べた構成としても良い。例えば、図11の接着剤50A,50Bのいずれかの位置又は接着剤50A,50Bの間の位置が、第2実施形態(図7)の接着剤50の位置に相当する。
【0061】
本実施形態の電子制御装置1において、その他の構成は第2実施形態の電子制御装置1と同様である。
【0062】
本実施形態によれば、接着剤50を複数にしたことによって第2実施形態と比較してもベース10に対するケース20の拘束力が増し、電子制御装置1の耐振性がより向上する。
【0063】
なお、本実施形態では、第2実施形態の構成において接着剤50を領域Aの長手方向に複数設けた例を説明したが、第1実施形態、第3実施形態、第4実施形態、及び後述する各実施形態においても接着剤50を領域Aの長手方向に複数設けることは有効である。
【0064】
(第6実施形態)
図12は本発明の第6実施形態に係る電子制御装置の分解斜視図であり、第1実施形態の図4に対応している。図13は本発明の第6実施形態に係る電子制御装置の断面図であり、第1実施形態の図6に対応している。
【0065】
本実施形態では、領域Aの長手方向に複数並べられた接着剤50A,50Bと回路基板30との距離が異なっている。接着剤50A,50Bのうち、BGAパッケージ40bと平面視で重なる接着剤(この例ではBGAパッケージ40bの上下領域Rbにある接着剤50A)が、他の接着剤(この例では接着剤50B)よりも回路基板30から離してある。本実施形態においては、図12に示したように接着台座18が階段状になっており、接着剤50A,50Bの配置が段違いになっている。接着剤50AはBGAパッケージ40bと平面視で重なっており、この接着剤50Aと回路基板30との距離iが、接着剤50Bと回路基板30との距離jよりも遠くなっている。
【0066】
その他の構成について、本実施形の電子制御装置1は第5実施形態(図11)の電子制御装置1と同様である。
【0067】
BGAパッケージ40bの端子は底面に格子状に並ぶ半球状のものであるため、QFNパッケージ40aほどではないものの、QFP等と比較して変形の許容代が小さく、そのはんだ付け部分は負荷に弱い。
【0068】
そこで、本実施形態では、BGAパッケージ40bと上下に重なる接着剤50aを他の接着剤50bよりも回路基板30から離し、接着剤50からBGAパッケージ40bに至るまでのケース20及び回路基板30上の距離を確保してある。これにより接着剤50が膨張してもケース20及び回路基板30を介してBGAパッケージ40bに伝わる変形が抑えられ、BGAパッケージ40bを効果的に保護することができる。
【0069】
なお、本実施形態のように接着剤50A,50Bが領域Aの短手方向に延在する構成でなく、例えば第1実施形態や第3実施形態のように接着剤50A,50Bの形状を点状にした構成とすることもできる。本実施形態は第4実施形態(図10)とも好適に組み合わせられる。また、接着剤50を領域Aの長手方向に段違いに複数設け、回路基板30から遠い方の接着剤50にBGAパッケージ40bを重ねる構成は、後述する各実施形態に適用しても有効である。
【0070】
(第7実施形態)
図14は本発明の第7実施形態に係る電子制御装置の分解斜視図であって第1実施形態の図4に対応している。
【0071】
本実施形態が第1実施形態と相違する点は、接着剤50が領域A(図5)の短手方向に複数並べて配置されている点である。本実施形態においては、図14に示したように接着台座18が領域Aの短手方向に複数(3つ)配置してあり、全ての接着台座18の座面19はケース20から等距離にある。各接着台座18の座面19に点状の接着剤が塗布されている。図14では点状の3つの接着剤50a-50cをY軸方向に並べて配置した構成を例示しているが、2つ又は4つ以上の接着剤を並べた構成としても良い。例えば、図14の中央の接着剤50bの位置が、第1実施形態(図4)の接着剤50の位置に相当する。
【0072】
本実施形態の電子制御装置1において、その他の構成は第1実施形態の電子制御装置1と同様である。
【0073】
本実施形態によれば、領域Aの短手方向に接着剤50を複数個所配置したことで、解析の結果、第2実施形態と同程度の耐振性及びはんだ寿命が確認された。また、第2実施形態に比べて接着剤50の存在範囲がY軸方向に間欠的であるため、第2実施形態に比べて接着剤50の膨張がケース20に与える影響も抑えられる。
【0074】
(第8実施形態)
図15は本発明の第8実施形態に係る電子制御装置の分解斜視図であり、第1実施形態の図4に対応している。図16は本発明の第8実施形態に係る電子制御装置の平面図であり、第1実施形態の図5に対応している。図17図16中のXVII-XVII線による電子制御装置の断面図である。
【0075】
本実施形態は、接着剤50を領域Aの短手方向に複数配置した第7実施形態のような構成が前提となる。本実施形態は、ベース10及びケース20の一方(この例ではケース20)が樹脂製部品で、他方(この例ではベース10)が金属製部品である。領域Aの短手方向(Y軸方向)の内側に位置する接着剤(中央の接着剤50b)が、短手方向の外側に位置する接着剤(両端の接着剤50a,50c)よりも樹脂製部品の側(Z軸方向の上側)に位置している。本実施形態においては、図15に示したように接着台座18が領域Aの短手方向に複数(3つ)配置してある。図17に示したように、中央の接着台座18の座面19は両端の接着台座18の座面19よりも寸法rだけZ軸方向の上側に位置しており、中央の接着剤50bは両端の接着剤50a,50cよりも寸法rだけ回路基板30に近い。接着剤50bは、領域Aの長手方向において固定ネジS1の最大ピッチX1の中央に位置すると同時に、領域Aの短手方向において固定ネジS1の最大ピッチY1の中央に位置している。
【0076】
その他の構成について、本実施形の電子制御装置1は第5実施形態(図11)の電子制御装置1と同様である。
【0077】
ケース20には主に領域Aの長手方向に振動の節と腹が並ぶ振動が生じるが、領域Aの短手方向に振動の節と腹が並ぶ振動も複合的に生じ得る。後者の振動は、短手方向における固定ネジS1の最大ピッチY1の中央で最大(振幅の腹)になる。本実施形態では、この位置でベース10とケース20とが接着剤50bにより接着されている。
【0078】
接着剤50a-50cの各接着箇所における金属と樹脂がY軸方向に占める割合を比較すると、ベース10の材料である金属が占める割合は、接着剤50bによる中央の接着箇所が、他の接着剤50a,50cによる接着箇所よりも大きい(図17)。言い換えれば、ケース20の材料である樹脂が占める割合は、接着剤50a,50cによる両端の接着箇所が、接着剤50bによる接着箇所よりも大きい。この構成により、振幅の大きなケース20の短手方向の中央部については、支持構造物に占める金属の割合を大きくして剛的に拘束することができる。その一方で、振幅の小さな短手方向の外側部分については、接着剤50a,50cの膨張により生じる応力の回路基板30への伝達を柔軟な樹脂で抑制できる。これにより、電子制御装置1の耐振性とはんだ寿命のバランスをより良好なものとすることができる。
【0079】
本願発明者等が解析したところ、接着剤50a-50cによる3つの接着箇所の全てにおいて金属材料の占める割合を一様に増やした場合、耐振性は向上するがはんだ寿命が低下する結果となった。反対に3つの接着箇所の全てにおいて樹脂材料の占める割合を一様に増やした場合、はんだ寿命が延びるが耐振性が低下する結果となった。また、図17の例と反対に、中央の接着箇所において樹脂材料の占める割合を相対的に増やし、両端の接着箇所において金属材料の占める割合を相対的に増やした場合、耐振性及びはんだ寿命の双方で効果が減少する結果となった。これらのことから、短手方向の振動に着目した場合、本実施形態のように、中央の接着箇所において金属材料の占める割合が相対的に大きく、両端の接着箇所において樹脂材料の占める割合が相対的に大きな構成が好ましいと言える。
【0080】
(第9実施形態)
図18は本発明の第9実施形態に係る電子制御装置の分解斜視図であり、第1実施形態の図4に対応している。図19は本発明の第9実施形態に係る電子制御装置の平面図であり、第1実施形態の図5に対応している。図20図19中のXX-XX線による電子制御装置の断面図である。
【0081】
本実施形態は、接着剤50を領域Aの短手方向に線状に延ばした第2実施形態のような構成が前提となる。本実施形態が第2実施形態と相違する点は、領域Aの長手方向に見て(図20の断面で見て)接着剤50が波型になるように構成されている点である。本実施形態の場合、接着台座18の座面19が、領域Aの短手方向の一方側に向かって上向きに傾斜した平滑な傾斜面と下向きに傾斜した平滑な傾斜面とを領域Aの短手方向に交互に繋げたような形状をしている。上向きの各傾斜面と下向きの各傾斜面の面積は同程度で、上向きの傾斜面の総面積と下向きの傾斜面の総面積が同程度であることが望ましい。図20に示したように、領域Aの長手方向から見ると、座面19は折れ線状の波型をしている。ケース20における座面19との対向面も、座面19に対応して波型に形成されている。これにより、領域Aの短手方向に線状に延びる接着剤50も、座面19とケース20との間に介在して波型に形成される。
【0082】
なお、領域Aの長手方向から見て曲線的な波型となるように座面19を形成しても良い。
【0083】
その他の構成について、本実施形の電子制御装置1は第2実施形態(図7)の電子制御装置1と同様である。
【0084】
本実施形態の場合、接着剤50の膨張に伴って座面19の法線方向に作用する応力は、座面19の傾斜によりY軸方向成分とZ軸方向成分を持つ。Y軸方向成分は、上向きの傾斜面で生じた応力と下向きの傾斜面で生じた応力とでベクトルが逆になるため打ち消し合う。そのため、接着剤50の膨張によりケース20に伝わる応力は、Z軸方向成分のみとなってY軸方向成分の分だけ減少する。こうしてケース20に伝わる応力を抑制することで、本実施形態によれば耐振性及びはんだ寿命の更なる改善が期待できる。解析でも、耐振性及びはんだ寿命の双方でより良好な結果が確認された。
【0085】
(第10実施形態)
図21は本発明の第10実施形態に係る電子制御装置の分解斜視図であり、第1実施形態の図4に対応している。図22は本発明の第10実施形態に係る電子制御装置の断面図であり、第9実施形態の図20に対応している。
【0086】
本実施形態の形態において、接着剤50(接着剤50m,50n)は、第7実施形態(図14)のように領域A(図5)の短手方向に複数並べて配置されている。これら接着剤50m,50nは、領域Aの長手方向に見て(図22の断面で見て)第9実施形態(図20)のように波型になるように構成されている。換言すれば、本実施形態は、第9実施形態の接着剤50を領域Aの短手方向に間欠的に間引きした構成に相当する。但し、上り傾斜面と下り傾斜面は、同程度存在する必要がある。この点を除いて本実施形態は第9実施形態と同様である。
【0087】
本実施形態においても第9実施形態と同様の効果が得られる。また、接着剤50の体積が相対的に少ないことから、接着剤50の膨張により発生する応力そのものが第9実施形態に比べて抑制され得る。
【0088】
(第11実施形態)
図23は本発明の第11実施形態に係る電子制御装置の分解斜視図であり、第1実施形態の図4に対応している。図24は本発明の第11実施形態に係る電子制御装置の断面図であり、第1実施形態の図6に対応している。
【0089】
第1実施形態で説明した通り、回路基板30はケース20に対して複数(例では4本)の基板ネジS2で固定されている。本実施形態において、接着剤50は、これら基板ネジS2で囲われた領域Bに平面視で重ならないように配置されている。接着剤50は、領域Bとコネクタ41との間に位置し、領域Bからは全部がX軸方向(つまり領域Aの長手方向)に外れている。
【0090】
これにより接着剤50が膨張しても、これにより発生する応力がケース20及び回路基板30を介して領域Bに配置した電子部品40に伝わることを抑制でき、電子部品40を効果的に保護することができる。
【0091】
なお、第2-第10実施形態や後述する実施形態においても接着剤50と領域Bとの位置をずらす構成は有効である。反対に第1実施形態でも接着剤50と領域Bとの位置が本実施形態と同様にずれているが、前述した本質的効果(1)を得る限りにおいて、第1実施形態では接着剤50の一部又は全部を領域Bと上下に重ねても良い。
【0092】
(第12実施形態)
図25は本発明の第12実施形態に係る電子制御装置の分解斜視図であり、第1実施形態の図4に対応している。
【0093】
本実施形態が第2実施形態と相違する点は、ベース10に対してケース20を固定する固定ネジS1が3本のみである点である。従って、本実施形態では、ベース10のネジ台座15,16とケース20のブラケット25,26が省略してある。本実施形態では、第1実施形態のネジ台座15,16に対応する2本の固定ネジS1が省略されたことにより、領域Aの長手方向における固定ネジS1の最大ピッチX1は第2実施形態よりも広がっており、最大ピッチX1は例えば150mm以上である。本実施形態において、その他の構成は第2実施形態と同様である。
【0094】
接着剤50によるケース20の拘束が加わることにより、所要の耐振性を確保する上で、本実施形態のような3本の固定ネジS1によるケース20の固定構造を実現することができる。一般に樹脂製のケースは、所要の耐振性を確保する観点でネジピッチを150mmよりも小さくすることが望ましく、固定ネジS1を3本にすることが難しいのが実情であった。
【0095】
それに対し、本実施形態では固定ネジS1を3本のみに制限しても所要の耐振性が確保できる。平面は3点で定義されるため、固定ネジS1によるケース20の締結部を3か所に制限することで、ベース10やケース20に製作誤差があっても、固定ネジS1を締め込む際のケース20の歪はほとんど発生しない。これにより電子部品40のはんだ付け部分に作用する応力の発生要因に対処することができ、はんだ寿命を向上させる点でより有利となる。
【0096】
また、固定ネジS1の削減に伴い、ベース10のネジ台座、ケース20のブラケットやインサートカラーも削減でき、ベース10やケース20の形状の簡素化、部品点数の削減等のメリットも生じる。加えて、固定ネジS1が減った分、電子制御装置1の組み立ての際にネジの締結に要する工数も低減できる。
【0097】
なお、本実施形態では第2実施形態の構成を前提として固定ネジS1を5本から3本に変更した場合を例に挙げて説明したが、第1、第3-第11実施形態においても同じ要領で3本のみの固定ネジS1によりケース20を固定する構造に変更することができる。
【0098】
(変形例)
以上、各実施形態において適宜説明した通り、第1-第12実施形態の各特徴は適宜選択して複数組み合わせることができる。また、ベース10が金属製、ケース20が樹脂製である場合を説明したが、ベース10を樹脂製でケース20を金属製とした構成や、ベース10及びケース20の双方を樹脂製とした構成も考えられる。車載機器100を変速機とした場合を例に挙げたが、エンジン、ブレーキ、モータ等といった車載機器に固定して取り付ける電子制御装置にも各実施形態の構成は適用可能である。
【0099】
また、領域Aの長手方向(X軸方向)や短手方向(Y軸方向)について振幅の腹となる位置に接着剤50を配置することを説明したが、領域Aの対角線方向の振幅の腹の位置に接着剤50を配置することもできる。
【符号の説明】
【0100】
1…電子制御装置、10…ベース、19…座面、20…ケース、30…回路基板、40…電子部品、40a…QFNパッケージ(電子部品)、40b…BGAパッケージ(電子部品)、50,50a-50c,50A,50B…接着剤、100…車載機器、A…複数の固定ネジで囲われた領域、B…複数の基板ネジで囲われた領域、g…座面とケースとの間に介在する間隙、i,j…接着剤と回路基板との距離、S1…固定ネジ、S2…基板ネジ、X…長手方向、Y…短手方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
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