(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】アイウェアデバイス及び方法
(51)【国際特許分類】
G02B 27/02 20060101AFI20241003BHJP
G02B 5/18 20060101ALI20241003BHJP
G02C 11/00 20060101ALI20241003BHJP
G02C 9/00 20060101ALI20241003BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02B5/18
G02C11/00
G02C9/00
G02B5/30
(21)【出願番号】P 2022568918
(86)(22)【出願日】2020-05-12
(86)【国際出願番号】 US2020032430
(87)【国際公開番号】W WO2021230856
(87)【国際公開日】2021-11-18
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】502208397
【氏名又は名称】グーグル エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Google LLC
【住所又は居所原語表記】1600 Amphitheatre Parkway 94043 Mountain View, CA U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カクマクシ,オザン
(72)【発明者】
【氏名】マルティネス,オスカー・アルバート
(72)【発明者】
【氏名】チン,イ
【審査官】弓指 洋平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/185510(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0318706(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0074340(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/081252(US,A1)
【文献】米国特許第9335548(US,B1)
【文献】国際公開第2020/075702(WO,A1)
【文献】特表2023-507055(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/00-30/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アイウェアデバイスであって、
世界側表面および眼側表面を有するライトガイドと、
前記ライトガイドに向けて光を放出するよう配向されたディスプレイと、
前記ディスプレイと前記ライトガイドとの間の光
路上に位置決めされた第1の偏光グレーティングを含むビームステアリング素子とを備え、前記第1の偏光グレーティングは、前記ディスプレイによって放出される光を、異なる偏光を有する複数の次数に回折するよう構成され、前記複数の次数
の各々は、
複数のアイボックス
のうちの1つに選択的に伝達され、
前記ビームステアリング素子は、前記複数の次数のうちの1つを選択的に透過させることによって、光を前記複数のアイボックスのうちの1つに伝達するように構成され、前記アイウェアデバイスはさらに、
前記ライトガイド、前記ディスプレイ、および前記第1の偏光グレーティングを支持するフレームを備える、アイウェアデバイス。
【請求項2】
前記
複数の次数は、右円偏光
された光と左円偏光
された光とを含む、請求項1に記載のアイウェアデバイス。
【請求項3】
前記右円偏光
された光は前記第1の偏光グレーティングの+1次に対応し、前記左円偏光
された光は前記第1の偏光グレーティングの-1次に対応する、請求項2に記載のアイウェアデバイス。
【請求項4】
前記第1の偏光グレーティングは、
前記右円偏光された光に対しては正のオフセット角だけ、
前記左円偏光された光に対しては負のオフセット角だけ、
前記光を回折する、請求項
2または請求項
3に記載のアイウェアデバイス。
【請求項5】
前記ビームステアリング素子
は偏光依存フィルタを含み、前記偏光依存フィルタは、第1の状態において
前記右円偏光された光を濾波し、第2の状態において
前記左円偏光された光を濾波
し、前記第1の状態は前記複数のアイボックスのうちの第1のアイボックスに関連付けられており、前記第2の状態は前記複数のアイボックスのうちの第2のアイボックスに関連付けられている、請求項
2から請求項
4のいずれかに記載のアイウェアデバイス。
【請求項6】
前記第1の偏光グレーティングは、実質的に色消しの液晶偏光グレーティングである、請求項1から請求項5のいずれかに記載のアイウェアデバイス。
【請求項7】
前記ライトガイドの前記眼側表面に近接して位置決めされる第2の偏光グレーティングをさらに備え、前記第2の偏光グレーティングは、前記ディスプレイによって放出される
前記光を、異なる視野FOVに選択的に伝達するよう構成される、請求項1から請求項6のいずれかに記載のアイウェアデバイス。
【請求項8】
前記第2の偏光グレーティングは、前記異なるFOVを表すコンテンツを時間多重化して、前記アイウェアデバイスを装着しているユーザによって知覚されるとおりの、より大きい有効FOVを与えるよう構成される、請求項7に記載のアイウェアデバイス。
【請求項9】
前記第2の偏光グレーティングは、前記異なるFOVを表す前記コンテンツを時間多重化するために偏光間で切替える切替可能な偏光グレーティングを含む、請求項8に記載のアイウェアデバイス。
【請求項10】
方法であって、
世界側表面および眼側表面を有するライトガイドを備えるアイウェアデバイスにおいて、ディスプレイから、第1の偏光グレーティング
を備えるビームステアリング素子に向け、光を放出すること
を含み、
前記第1の偏光グレーティングは前記ディスプレイと前記ライトガイドとの間の光路上に位置決めされており、
前記第1の偏光グレーティング
によって、前記光を、異なる偏光を有する複数の次数に回折することと、
前記
ビームステアリング素子を介して、前
記複数の次数のうちの1つを前記ライトガイドの
前記眼側表面を介して複数のアイボックスのうちの1つに選択的に伝達することとを含む、方法。
【請求項11】
前記複数の次数
は、右円偏光された光と左円偏光された光とを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記右円偏光
された光は前記第1の偏光グレーティングの+1次に対応し、前記左円偏光
された光は前記第1の偏光グレーティングの-1次に対応する
、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記光を回折することは、
前記右円偏光された光に対しては正のオフセット角だけ、および
前記左円偏光された光に対しては負のオフセット角だけ、前記光を回折することを含む、請求項
11または請求項1
2に記載の方法。
【請求項14】
前
記複数の次数のうちの1つを選択的に伝達することは、偏光依存フィルタにおいて、第1の状態において前記右円偏光された光を濾波し、第2の状態において前記左円偏光された光を濾波することを含む、請求項
11から請求項
13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記第1の偏光グレーティングは、実質的に色消しの液晶偏光グレーティングである、請求項10から請求項14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記ライトガイドの前記眼側表面に近接して位置決めされる第2の偏光グレーティングにおいて、前記ディスプレイによって放出される前記光を、異なる視野FOVに選択的に伝達することをさらに含む、請求項10から請求項15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記光を選択的に伝達することは、前記異なるFOVを表すコンテンツを時間多重化して、前記アイウェアデバイスを装着しているユーザによって知覚されるとおりの、より大きい有効FOVを与えることを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記コンテンツを時間多重化することは、前記異なるFOVに関連付けられる円偏光間で切替えることを含む、請求項17に記載の方法
。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背景
ウェアラブル電子アイウェアデバイスは、表示画像を拡大し、仮想画像をユーザの視野(FOV)に送達する、光学系を含む。このデバイスはまた、ユーザがレンズまたはシースルーアイピースを通して外界を見ることも可能にする。いくつかのウェアラブル電子アイウェアデバイスは、ユーザにコンテンツを表示するために、接眼光学系を組み込む。例えば、従来のアイウェア設計は、従来の眼鏡のような頭部装着可能フレームのテンプルまたはリム領域に配置されたマイクロディスプレイ(「ディスプレイ」)を含む。ディスプレイは、頭部装着可能フレームのレンズ(またはシースルーアイピース)内に配置された湾曲したライトガイドなどの光学素子によってユーザのFOV内に伝達されるコンピュータ生成画像(CGI)などの画像を生成する。したがって、ウェアラブル電子アイウェアデバイスは、拡張現実(AR)を実現するためのハードウェアプラットフォームとしての役割を果たすことができる。拡張現実の、異なるモードは、光学シースルー拡張現実モード、ビデオシースルー拡張現実モード、または不透明(VR)モードを含む。
【0002】
概要
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
電子的に強化されたアイウェアデバイスは、潜在的に複数の実用的およびレジャー用途を有するが、ウェアラブル電子アイウェアデバイスの開発および採用は、既存のアイウェアデバイスを実現するために使用される光学系の品質、コスト、サイズ、重量、厚み、視野、および効率によって課される制約によって制限されてきた。例えば、従来の設計の幾何学的形状および物理的制約は、ディスプレイの低視野(FOV)につながる。さらに、潜在的なユーザの集団は、鼻の幾何学的形状の分布、耳の頂点から耳の頂点までの距離の分布、および瞳孔間距離(すなわち、ユーザの瞳孔の中心間の距離)の分布によって特徴付けられる、広範囲の顔の幾何学的形状を示す。単一のウェアラブル電子アイウェアデバイスでは、ウェアラブルデバイスのすべての物理的および幾何学的制約を満たしながら、すべてのユーザに最適な体験を提供する可能性が低い。例えば、ユーザは、ユーザの瞳孔が、ウェアラブル電子アイウェアデバイスに実現される光学系によって生成される「アイボックス」内に収まる場合にのみ、当該デバイスによって表示される画像の全体を見る。しかしながら、従来のウェアラブル電子アイウェアデバイスは、顔の幾何学的形状の分布全体にわたって瞳孔位置を包含しない、比較的小さいアイボックスを生成する。その結果、すべてのユーザが、ウェアラブル電子アイウェアデバイスによって表示される画像を見ることができるわけではない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
提案された解決策の一局面は、アイウェアデバイスに関し、それは、世界側表面と眼側表面とを有する導波路と、導波路に向けて光を放出するよう配向されるディスプレイと、ディスプレイと導波路との間の光路に沿って配置された第1の偏光グレーティングおよび偏光依存フィルタのうちの少なくとも1つを含むビームステアリング素子とを備え、ビームステアリング素子は、少なくとも2つの異なる状態で動作するよう構成され、少なくとも2つの異なる状態の第1の状態では、光は第1のアイボックスに向けられ、少なくとも2つの異なる状態の第2の状態では、光は、第1のアイボックスとは、その寸法、特にその体積において異なる、第2のアイボックスに向けられる。一実施形態では、第1の偏光グレーティングは、ディスプレイによって放出される光を、異なる偏光を有する複数の次数に回折し、複数の次数を、異なるアイボックスに選択的に伝達するよう構成され、アイボックスは、アイウェアデバイスのユーザの眼の瞳孔のために空間において3次元体積として定義される。一般に、「アイボックス」は、電子アイウェアデバイス内の光導波路から出てくる光についての放射コーンによって生成される。したがって、アイウェアデバイスは、そのビームステアリング素子とともに、異なる幾何学的形状および/または寸法の放射コーンを提供するよう構成されてもよい。本明細書で使用する場合、「アイボックス」という文言は、1つ以上の視認体験基準を満たすために眼の瞳孔がその中に位置決めされる、空間における3次元(3D)体積を指す。視認体験基準の一例は、ユーザが拡大された仮想画像の4つの縁部を見ることである。その場合、アイボックスは、拡大された仮想画像の4つの縁部を見るためにユーザの瞳孔が位置決めされる、空間における3D体積である。いくつかの実施形態では、電子アイウェアデバイスによって生成されるアイボックスの体積および向きは、瞳孔直径、電子アイウェアデバイスによって生成される放射コーンの角度範囲、基準のセット、および基準のための閾値に基づいて評価される。アイウェアデバイスにおいてビームステアリング素子を使用することは、例えば、異なるアイボックスを生成する少なくとも2つの異なる状態でアイウェアデバイスを選択的に動作させることを可能にする。第1の状態では、画像を表す光線は、第1のアイボックスに向けられてもよく、第2の状態では、画像を表す光線は、第2のアイボックスに向けられてもよい。
【0005】
一実施形態では、アイウェアデバイスは、ユーザによって、(例えば、アイウェアデバイスのスイッチ、ボタン、または他のデバイスを使用して、)選択的に第1の状態または第2の状態に置かれてもよく、それによって、生成されたアイボックスを、第1の画像および第2の画像に対応する範囲を通して移動させる。したがって、例えば、切替可能なビームステアリング素子を実現することによって、アイボックスの有効サイズを増大させてもよい。アイボックスのサイズは、ARベースまたはVRベースのデバイスにおける人口カバー率に対処するために使用される測定可能なパラメータであってもよい。多くの状況において、アイボックスのサイズは、アイウェアデバイスを着用した際に何人のユーザが表示画像を見ることができるかを決定する。本明細書で説明される技術を使用して、一般集団において増加した人数に対応する大きなアイボックスを有する、ARおよびVR用途のためのアイウェアデバイスが作成される。したがって、アイボックスの位置または向きは、ビームステアリング素子の使用を通して、ある位置から別の位置にシフト可能であってもよい。例えば、ビームステアリング素子は、光がビームステアリング素子から現れる少なくとも2つの異なるステアリング角度、および少なくとも2つの異なるアイボックス体積に対応する、少なくとも2つの状態間で切替可能であってもよい。
【0006】
いくつかの実施形態では、異なる偏光は、右円偏光または左円偏光を含む。
いくつかの実施形態では、右円偏光は偏光グレーティングの+1次に対応し、左円偏光は偏光グレーティングの-1次に対応する。
【0007】
いくつかの実施形態では、第1の偏光グレーティングは、右円偏光された光に対しては正のオフセット角だけ、左円偏光された光に対しては負のオフセット角だけ、光を回折する。
【0008】
いくつかの実施形態では、第1の偏光グレーティングは、実質的に色消しの液晶偏光グレーティングである。
【0009】
アイウェアデバイスのいくつかの実施形態は、第1の偏光グレーティングから受け取った光を濾波する偏光依存フィルタを含み、偏光依存フィルタは、第1の状態において右円偏光された光を濾波し、第2の状態において左円偏光された光を濾波する。
【0010】
アイウェアデバイスのいくつかの実施形態は、ライトガイドの眼側表面に近接して位置決めされる第2の偏光グレーティングを含み、第2の偏光グレーティングは、ディスプレイによって放出される光を、異なる視野(FOV)に選択的に伝達するよう構成される。
【0011】
いくつかの実施形態では、第2の偏光グレーティングは、異なるFOVを表すコンテンツを時間多重化して、アイウェアデバイスを装着しているユーザによって知覚されるとおりの、より大きい有効FOVを与えるよう構成される。
【0012】
いくつかの実施形態では、第2の偏光グレーティングは、異なるFOVを表すコンテンツを時間多重化するよう、偏光間で切替える、切替可能な偏光グレーティングを含む。
【0013】
提案された解決策の別の局面は、アイウェアデバイスに関し、それは、世界側表面および眼側表面を有する導波路と、導波路に向けて光を放出するよう配向されるディスプレイと、ビームステアリング素子とを備え、ビームステアリング素子は、導波路の眼側表面とアイウェアデバイスのユーザの眼との間の光路に沿って、例えば、導波路の眼側表面に近接して位置決めされる偏光グレーティングを備え、偏光グレーティングは、ディスプレイによって放出される光を、異なる視野FOVに選択的に伝達するよう構成され、アイウェアデバイスはさらに、ビームステアリング素子と、導波路と、ディスプレイと、偏光グレーティングとを支持するフレームを備える。いくつかの実施形態では、本明細書で論じられるように、異なるアイボックス体積のアイボックスを提供するよう、複数の状態の間で切替えられ得る、追加のビームステアリング素子がさらに含まれてもよい。
【0014】
概して、提案される解決策は、特に、アイウェアデバイスに関し、それは、世界側表面および眼側表面を有する導波路と、導波路に向けて光を放出するよう配向されるディスプレイと、少なくとも1つのビームステアリング素子と、導波路、ディスプレイ、および少なくとも1つのビームステアリング素子を支持するフレームとを備え、ビームステアリング素子は、(a)ディスプレイによって放出される光を、異なる偏光を有する複数の次数に回折し、複数の次数を、異なるアイボックスに選択的に伝達するよう、および/または(b)ディスプレイによって放出される光を、異なる視野FOVに選択的に伝達するよう構成される。
【0015】
提案されるアイウェアデバイスの実施形態は、提案される方法の実施形態を実現するよう構成されてもよい。したがって、提案されるアイウェアデバイスの実施形態に関連して本明細書で論じられる特徴は、提案される方法の対応する実施形態にも適用され、逆もまた同様である。
【0016】
幾つかの実施形態では、世界側表面および眼側表面を有するライトガイドを備えるアイウェアデバイスにおいて、ディスプレイから、第1の偏光グレーティングに向けて、光を放出することと、第1の偏光グレーティングから受け取った光を、異なる偏光を有する複数の次数に回折することと、第1の偏光グレーティングを介して、回折された複数の次数のうちの1つをライトガイドの眼側表面を介して複数のアイボックスのうちの1つに選択的に伝達することとを含む、方法が開示される。
【0017】
いくつかの実施形態では、ディスプレイによって放出される光を複数のアイボックスのうちの1つに選択的に伝達することは、右円偏光および左円偏光を有する複数の次数を生成することを含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、右円偏光は偏光グレーティングの+1次に対応し、左円偏光は偏光グレーティングの-1次に対応する。
【0019】
いくつかの実施形態では、ディスプレイによって放出される光を回折することは、右円偏光された光に対しては正のオフセット角だけ、左円偏光された光に対しては負のオフセット角だけ、光を回折することを含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、第1の偏光グレーティングは、実質的に色消しの液晶偏光グレーティングである。
【0021】
いくつかの実施形態では、回折された複数の次数のうちの1つを選択的に伝達することは、偏光依存フィルタにおいて、第1の状態において右円偏光された光を濾波し、第2の状態において左円偏光された光を濾波することを含む。
【0022】
方法のいくつかの実施形態は、ライトガイドの眼側表面に近接して位置決めされた第2の偏光グレーティングにおいて、ディスプレイによって放出される光を、異なる視野(FOV)に選択的に伝達することを含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、光を選択的に伝達することは、異なるFOVを表すコンテンツを時間多重化して、アイウェアデバイスを装着しているユーザによって知覚されるとおりの、より大きい有効FOVを与えることを含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、コンテンツを時間多重化することは、異なるFOVに関連付けられた円偏光間で切替えることを含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、アイウェアデバイスが開示され、それは、世界側表面および眼側表面を有するライトガイドと、ライトガイドに向けて光を放出するよう配向されるディスプレイと、ライトガイドの眼側表面に近接して位置決めされ、ディスプレイによって放出される光を、異なる視野(FOV)に選択的に伝達するよう構成される偏光グレーティングと、ライトガイド、ディスプレイおよび偏光グレーティングを支持するフレームとを備える。
【0026】
いくつかの実施形態では、ビームステアリング素子は、異なるFOVを表すコンテンツを時間多重化して、アイウェアデバイスを装着しているユーザによって知覚されるとおりの、より大きい有効FOVを与えるよう構成される。
【0027】
いくつかの実施形態では、ビームステアリング素子は、異なるFOVを表すコンテンツを時間多重化するよう、偏光間で切替える、切替可能な偏光グレーティングを含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、世界側表面および眼側表面を有する導波路を備えるアイウェアデバイスにおいて、ディスプレイから、第1の偏光グレーティングに向けて、光を放出することを含む方法が提供される。本方法はまた、第1の偏光グレーティングを介して、ディスプレイによって放出される光を、異なる視野FOVに選択的に伝達することを含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、ディスプレイによって放出される光を選択的に伝達することは、異なるFOVを表すコンテンツを時間多重化して、アイウェアデバイスを装着しているユーザによって知覚されるとおりの、より大きい有効FOVを与えることを含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、ディスプレイによって放出される光を選択的に伝達することは、切替可能な偏光グレーティングを使用して、異なるFOVを表すコンテンツを時間多重化するよう、偏光間で切替えることを含む。
【0031】
図面の簡単な説明
本開示は、添付の図面を参照することによって、よりよく理解され、その多数の特徴および利点が当業者に明らかになる。異なる図面における同じ参照符号の使用は、類似または同一の項目を示す。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】頭部幅分布対瞳孔間距離(IPD)分布の散布図である。
【
図2】電子アイウェアデバイスにおいて光学ライトガイドから現れる光について、異なる放射コーンで生成されるアイボックスの2つの比較を示す。
【
図3】いくつかの実施形態による、公称アイレリーフ平面において、拡張されたアイボックスエリアを提供する、電子アイウェアデバイスの設計のブロック図である。
【
図4】いくつかの実施形態による、各ユーザの眼に対してビームステアリング素子およびディスプレイを有する電子アイウェアデバイスの斜視図を示す。
【
図5】いくつかの実施形態による、
図4のアイウェアデバイスのようなアイウェアデバイスの代替実施形態のリムフレーム部分の正面図である。
【
図6】いくつかの実施形態による、ビームステアリング素子を使用して、拡張されたアイボックスを生成する光学系の図である。
【
図7】いくつかの実施形態による色消し偏光グレーティングの図である。
【
図8】いくつかの実施形態による、第1の状態および第2の状態で動作するビームステアリング素子のブロック図である。
【
図9】いくつかの実施形態による、拡張されたアイボックスを生成するために選択的ビームステアリングを実現する光学系の図である。
【
図10】いくつかの実施形態による、ビームステアリング素子を使用して、拡張された知覚される視野(FOV)を生成する光学系の図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
詳細な説明
図1~
図10は、ウェアラブル電子アイウェアデバイスにおいて、異なる寸法、特に異なる体積のアイボックスを生成し、したがって、例えば、ユーザがデバイスを装着しているときに画像を生成するディスプレイとユーザの眼に向けて画像を向ける光学ライトガイドとの間の光路に沿って第1のビームステアリング素子を配置することによって、より大きい(または調整可能な)アイボックスを生成するよう実現される光学撮像システムを開示する。第1のビームステアリング素子のいくつかの実施形態は、アイボックスを生成する回折された光線の複数の次数に応じて異なるオフセットだけアイボックスをシフトさせる切替可能な偏光グレーティングを含む。例えば、偏光グレーティングは回折光の複数の次数を生成し、各次数は関連付けられる円形の左右像を有する。偏光グレーティングは、右円偏光された光に対しては正のオフセット角だけ、左円偏光された光に対しては負のオフセット角だけ、光を回折する。したがって、アイボックスの位置は、偏光グレーティングの+1次および-1次に対応する右円偏光と左円偏光との間で切替えることによって、切替えられ得る。いくつかの実施形態は、切替可能な偏光依存フィルタを使用して、右円偏光と左円偏光との間で切替える。いくつかの実施形態では、光学撮像システムは、湾曲した光学ライトガイドの出力領域に近接して第2のビームステアリング素子を配置することによって、より大きい視野(FOV)を生成する。第2のビームステアリング素子は、ユーザによって知覚されるとおりの、より大きな有効FOVを与えるために、(例えば、異なるFOVを表すフレームをインターレースすることによって、)FOVの異なる部分を表すコンテンツを時間多重化するよう、偏光間で切替える、切替可能な偏光グレーティングを含むことができる。ウェアラブル電子アイウェアデバイスのいくつかの実施形態は、第1のビームステアリング素子、第2のビームステアリング素子、または第1および第2のビームステアリング素子の両方を含む。
【0034】
図1は、耳頂点分布対瞳孔間距離(IPD)分布の散布
図100である。散布
図100の縦軸は、個人の耳頂点間の幅(ミリメートル(mm)単位)を示し、横軸は、個人についてのIPD(ミリメートル単位)を示す。散布
図100の各点は、個人の耳頂点間の幅およびIPDの測定値を表す。各幅の測定値を有する個人の数が分布105に投影され、各IPDの測定値を有する個人の数が分布110に投影される。分布105、110は、平均値(μ)および標準偏差(σ)によって特徴付けられる。例えば、IPD分布110は、以下によって特徴付けられる:
μ
IPD=62mm
σ
IPD=3.9mm
幅分布105は、以下によって特徴付けられる:
μ
EtE=145.6mm
σ
EtE=7.5mm
ここで、EtEは耳間幅を示す。
【0035】
図2は、電子アイウェアデバイスにおいて光学ライトガイドから現れる光について、異なる放射コーンで生成されるアイボックス210、215の2つの比較200、201を示す。本明細書で使用する場合、「アイボックス」という文言は、1つ以上の視認体験基準を満たすために眼の瞳孔がその中に位置決めされる、空間における3次元(3D)体積を指す。視認体験基準の一例は、ユーザが拡大された仮想画像の4つの縁部を見ることができることである。その場合、アイボックスは、拡大された仮想画像の4つの縁部を見るためにユーザの瞳孔が位置決めされる、空間における3D体積である。いくつかの実施形態では、電子アイウェアデバイスによって生成されるアイボックスの体積および向きは、瞳孔直径、電子アイウェアデバイスによって生成される放射コーンの角度範囲、基準のセット、および基準のための閾値に基づいて評価される。
【0036】
アイボックス210は、水平寸法で50°、および垂直寸法で30°の半値全幅(FWHM)を有する放射コーンを用いて生成される。アイボックス210の寸法は、x方向に8.2mm、およびy方向に4.8mmである。アイボックス215は、水平寸法で30°および垂直寸法で50°のFWHMを有する放射コーンを用いて生成される。アイボックス215の寸法は、x方向に6.7mm、およびy方向に4.8mmである。したがって、水平寸法における追加の20°FWHMの改善は、アイボックス210をアイボックス215に対して1.5mm増加させる。図示の実施形態では、光学系の厚みは、アイボックス210、215のサイズをy方向に沿って制限する。
【0037】
図3は、いくつかの実施形態による、拡張されたアイボックスを提供する電子アイウェアデバイスの設計300のブロック図である。設計300は、本明細書で説明するように、画像を生成するディスプレイと、画像を表す光線の方向を選択的に修正するビームステアリング素子と、画像を表す光線をユーザの眼に向ける光学ライトガイドとを使用して実現される光学系305を含む。図示の実施形態では、光学系305は、異なるアイボックスを生成する2つの状態のうちの1つで選択的に動作する。第1の状態では、光学系305は、画像を表す光線を第1のアイボックス310に向け、第2の状態では、光学系305は、光線を第2のアイボックス315に向ける。したがって、光学系305によって生成される有効なアイボックスは、第1のアイボックス310と第2のアイボックス315との組み合わせに等しい。光学系305は、50°×30°FWHMの放射コーンを生成し、アイボックス310、315のステアリング角はそれぞれ
【0038】
【0039】
である。光学系305のいくつかの実施形態は、3つ以上の異なる(潜在的に重複する)アイボックスを生成する3つ以上の状態で動作する。光学系305はまた、異なるFWHMの放射コーンまたはステアリング角を生成することもできる。
【0040】
図4は、いくつかの実施形態による、各ユーザの眼に対してビームステアリング素子401およびディスプレイ405を有する電子アイウェアデバイス400の斜視図を示す。ビームステアリング素子401は、本明細書で論じるように、いくつかの実施形態では、偏光依存グレーティングおよび切替可能な偏光依存フィルタを含む。デバイス400は、各ユーザの眼について、少なくともフレーム410と、ライトガイドの対402と、ビームステアリング素子401と、ディスプレイ405とを含む。ビームステアリング素子401は、それを通過する光の少なくとも1つの特性を変える偏光グレーティングレンズとも呼ばれる。デバイス400は、ARベースおよびVRベースの視覚を提供する様々なタイプのアイウェアデバイスで使用するための構成要素およびそれらの構成を広く示す。デバイス400は、両眼ARベースの視覚を提供する。ユーザの眼は、明確性を期すため、この図では示されていない。
【0041】
デバイス400は、通常の眼鏡の外観を有し、その中に取り付けられたディスプレイ405からの光の漏洩はほとんどまたはまったくない。図示される実施形態では、ディスプレイ405およびビームステアリング素子401は、デバイス400内のそれぞれのテンプル位置420に位置決めされる。いくつかの実施形態では、ライトガイド402は湾曲しており、他の実施形態では、ライトガイド402は実質的に平面である。フレーム410は、その上側414と底側422との間にライトガイド402を固定する。フレーム410およびライトガイド402は、通常の眼鏡のレンズのような形状に成形される。概して、ライトガイド402は透明であり、観視ためのレンズとして動作する。ライトガイド402は、ユーザの前に位置決めされ、それぞれのディスプレイ405からの光406をユーザの眼に向ける。
【0042】
それぞれのディスプレイ405に対して、各ライトガイド402は、ディスプレイ405からの光406および世界側413から入射する光404が結合されて結果として生じる画像417になり、次いでそれがデバイス400の眼側415でユーザの眼に向けられる結合器として作用する誘電体ミラーコーティングを有する表面を含む。世界側413からの光404は、ライトガイド402を通ってライトガイド402の眼側415に至り、光404は、アイウェアデバイス400の世界側413の観視可視シーンから生じる。
【0043】
図示のように、各ディスプレイ405は、ライトガイド402の縁部425に、それぞれのライトガイド402のテンプル位置420で取り付けられ、各ディスプレイ405は、フレーム410の内側またはそれに近接して位置決めされる。ライトガイド402は、周囲光404が、明確にするためにこの図では別個にラベル付けされていない結合器表面で反射されたディスプレイ光406と結合することを可能にする。フレーム410は、フレーム410のテンプル位置から、フレーム410のそれぞれの側部において、ユーザの耳(図示せず)に向かい、そしてその上を延びる、2つのアーム411を含む。
【0044】
いくつかの実施形態では、デバイス400は、画像データ信号を受信し、ディスプレイ405に提供するための構成要素を含むか、または収容する。画像データ信号は、ディスプレイ光406のためのソース入力である。例えば、一方のアーム411は、画像データ信号を含む無線信号を受信するための無線構成要素を含む。電池、ソーラーパネル、またはデバイス400に局在する他の形態のエネルギーなどの局所エネルギー源によって、電力が提供される。別の例では、コード(図示せず)が、外部ソースから、ディスプレイ405を含む様々な構成要素およびそれらのそれぞれの電子パッケージに電力を供給するための機構としての役割を果たす。電力用のワイヤを有することに加えて、デバイス400内の1つ以上のワイヤは、ディスプレイ405に画像データ信号を送る。ある実施形態では、画像データ信号は、コンピューティングデバイスまたは他のディスプレイ駆動データソース(図示せず)から生じる。
【0045】
ライトガイド402の外側側面におけるディスプレイ405の配置は、ディスプレイ405の配置の一例である。他の実施形態では、ディスプレイ405は、フレーム410の上部に、またはその中に、位置決めされる。各ライトガイド402は、眼側表面424および世界側表面423を含む。ディスプレイ光406は、これらの表面423、424の間において、少なくとも一度、各表面423、424上で反射された後に、ユーザの眼に到達する。
【0046】
特定の実施形態によれば、ライトガイド表面423、424の各々は湾曲しており、少なくとも1つの寸法において球形であり(例えば、それぞれのライトガイド402の焦点に関して、固定された半径に沿って、一様である)、これらの表面423、424の各々は、ゼロ光学パワー(ジオプタ)の光シースルー機能を実現するように、互いと同様であるかまたはほぼ同じサイズの特性寸法(例えば、球状寸法、半径、曲率パラメータのセット)を有する。眼側表面および世界側表面はまた、処方矯正をライトガイドの一部として統合するように設計することもできる。
【0047】
説明の便宜上、世界側表面423を第1の表面とし、眼側表面424を第2の表面とする。表面423、424の各々は、デバイス400において同じまたは異なる物理的構成要素によって提供される。ディスプレイ405およびビームステアリング素子401に隣接するライトガイド402の表面425は、ある実施形態によると、デバイス400の構成要素の特定の構成により、ディスプレイ405およびそこから放出される光406関して、非点収差が、もしあれば、それを補正するように、湾曲されるかまたは自由形状である。ディスプレイ405に隣接するライトガイド402の表面425は、デバイス400の第3の表面であり、デバイス400の眼側415で得られる画像417に対して1つまたは2つの次元で湾曲している。
【0048】
結合器419における表面等の、ライトガイド402の別の(第4の)表面は、ディスプレイ405からユーザの眼に向けて光406の最終反射を提供し、ライトガイド402のこの第4の表面もまた、少なくともいくつかの実施形態では、湾曲され、および自由形状態様で湾曲される。この最終表面は、本明細書では、結合器419または結合器表面と等しく呼ばれる。そこから反射された画像417は、ライトフィールドと呼ばれ、ユーザの眼に提供される。結合器419の他の実施形態では、ライトガイド402の最終反射面は、回転対称非球面形状表面、アナモルフィック非球面形状表面、トロイド形状表面、ゼルニケ多項式形状表面、放射基底関数形状表面、x-y多項式形状表面、または非一様有理Bスプライン形状表面である。
【0049】
動作中、ビームステアリング素子401が第1の状態から第2の状態へ変化すると、画像417は、第2の画像418によって示されるように、第1の位置から第2の位置へシフトされる。第1の画像417と第2の画像418との間のシフトは、図4では実質的に水平方向であるが、他の実施形態では、垂直または垂直と水平との組み合わせである。いくつかの実施形態では、第1の画像417および結合器419の表面上のそれの位置は、第2の画像418の位置と重なるが、明確にするために、別個の異なる位置として示される。ビームステアリング素子401の第1の状態と第2の状態との間において、ビームステアリング素子401がオフであるとき、ディスプレイ405からの画像の図示されない位置が、1つ以上の他の図に示されるように、第1の画像417と第2の画像418との間に投影され、眼に提供される。
【0050】
いくつかの実施形態では、デバイス400のライトガイド402の構成要素のうちの少なくともいくつかは、互いに対するそれらの配置ならびにそれらの組成および形状に起因して、ディスプレイ405から放出される光406に対して光学拡大器として動作する。アイウェアデバイス400等の単なるアイウェアデバイスが説明および図示されているが、本明細書で説明される技術は、眼鏡、ヘルメット、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)デバイス、およびフロントガラス等のあらゆるタイプのシースルーデバイスに適用可能であり、コンピュータ生成されたシーンと実世界のシーンとの光学的な統合を可能にして、複合ビューを形成する。
【0051】
(明確にするために
図1に示されていない、例えば、スイッチ、ボタン、または他のデバイスを使用して)アイウェアデバイス400を選択的に第1の状態または第2の状態にすると、アイボックスは、第1の画像417および第2の画像418に対応する範囲を通って移動する。したがって、例えば、切替可能なビームステアリング素子401を実現することによって、アイボックスの有効サイズが増大される。アイボックスのサイズは、ARまたはVRベースのデバイスにおいて人口カバー率に対処するために使用される測定可能なパラメータである。多くの状況において、アイボックスのサイズは、HMDアイウェアデバイス401を着用した際に何人のユーザが表示画像を見ることができるかを決定する。本明細書で説明される技術を使用して、ARおよびVR用途のためのアイウェアデバイスは、一般集団において、増加した人数に対応するよう、大きなアイボックスとともに作成される。画像417、418を含むアイボックスの位置または向きは、ビームステアリング素子401の使用により、ある位置から別の位置にシフト可能である。概して、アイボックスのサイズは、ディスプレイ405およびその発光素子の解像度、発光素子の色の均一性、像面湾曲、歪曲収差、および瞳孔泳動を含む、特定のデバイスに関連付けられるいくつかの変数およびパラメータの因子である。
【0052】
図5は、いくつかの実施形態による、
図4のアイウェアデバイス400のようなアイウェアデバイス500の代替実施形態のリムフレーム部分510の正面図を示す。デバイス500のためのアームは、明確にするため、図示されていない。デバイス500の寸法は、瞳孔中心526に対して位置決めされた約4mmの瞳孔直径527に基づく。瞳孔直径527は、瞳孔サイズとも呼ばれる。左目および右目(図示せず)用のライトガイド502の各々は、50mm~60mmなど、約53mmのフレーム水平ボックス距離524と、40mm~50mmなど、約44mmのフレーム垂直ボックス距離531とに基づく。ライトガイド502は、約17.5mmのブリッジ長さ525によって分離される。ブリッジ長さ525は、アイウェアデバイス500がユーザによって着用されるとき、概ね、内側位置530で中心に置かれる。フィッティング高さ532は、ライトガイド502の底側522から
瞳孔中心526までの距離であり、底側522から瞳孔中心526まで約23mmである。リムフレーム部分510は、約3.9mmの1つの標準偏差を伴う62mmの瞳孔間距離(IPD)534に基づくなど、約60mm~65mmの範囲のIPD534に基づく。デバイス400、500およびそれらの構成要素は、この測定において62mmのIPD534および2つの標準偏差を有するユーザに対応するようにサイズ決めされる。デバイス400のアーム411等のアームは、デバイス400、500が、約7.5mmの1つの標準偏差および15mmの2つの標準偏差を伴う145.6mm等の約140~150mmの範囲内の耳頂点に適応するように、サイズ決めおよび位置決めされる。
【0053】
アイウェアデバイス500の例示的な寸法に関して、ライトガイド502の特定の実施形態の厚みは、最大約5mm、好ましくは最大約4mm以内である。ディスプレイ505を含む光学素子のパーツは、デバイス500のリムフレーム部分510内に隠された約3.5mmの空間を占める。リムフレーム部分510の上部分は、最大5mmの(上部)リム厚み533を有し、いくつかの実施形態は、3.5mm以下のリム厚み533を有し、ライトガイド502以外の光学構成要素および電子構成要素の両方を含む様々な構成要素を収容する。
【0054】
ディスプレイ505およびビームステアリング素子501を含む電子構成要素を支持して、電子コード512が示され、1つ以上のアイウェアアーム、リムフレーム部分510、もしくはその組み合わせに結合されるか、またはその一部となるであろう。すなわち、図4に示されるようなアイウェアアーム411のうちの1つ以上は、ディスプレイ505およびそれらの支持電子パッケージを含む種々の構成要素に電力を供給し、コンピューティングデバイスまたは他のディスプレイ駆動データ源(図示せず)からディスプレイ505に画像データ信号を提供するように、2つ以上のワイヤを有するコード512を収容する。他の実施形態では、リムフレーム部分510または1つ以上のアームは、信号を無線で受信し、ディスプレイ505に提供するための構成要素を含むか、または収容する。いくつかの実施形態では、電力が、デバイス500に局在するバッテリもしくは他の形態のエネルギーによって、またはデバイス500の外部のソースから提供される。
【0055】
図示される実施形態では、ディスプレイ505は、リムフレーム部分510の上部分のリム厚み533の内側に位置決めされて、約3:1の幅対高さ比の画像を提供する。対応する厚みは、特定のデバイス構成要素を収容するための(リム厚み533内の)リムフレーム部分510の上部のヘッドスペースの約3.5mmである。約8:1の幅対高さの比の画像517、518を生成するディスプレイ505の場合、リム厚み533内のヘッドスペースは、最大約4mmである。アイウェアデバイス500の重量を軽くするために、図示されていないが、いくつかの実施形態は、デバイス500において、ARまたはVRベースの視覚において単眼である(1つのライトガイド502、1つのディスプレイ505、および1つのビームステアリング素子501のみを有する)が、他の実施形態は、2つのライトガイド502に対して、2つのディスプレイ505および2つのビームステアリング素子501を有する。
【0056】
図6は、いくつかの実施形態による、ビームステアリング素子605を使用して、拡張されたアイボックスを生成する光学系600の図である。光学系600は、
図3に示す光学系305のいくつかの実施形態、ならびにそれぞれ
図4および
図5に示すアイウェアデバイス400、500の部分を表す。光学系600は、マイクロディスプレイ610を含み、マイクロディスプレイ610は、画像を生成し、画像において表される光線を、角度フィルタ615に与え、角度フィルタ615は、濾波された光線を、ビームステアリング素子605に提供する。ビームステアリング素子605のいくつかの実施形態は、本明細書で説明するように、液晶偏光グレーティングとして実現される。光学系600はまた、ライトガイド620も含み、それは、ビームステアリング素子605から受け取った光線を、ユーザの眼625の前に位置するライトガイド620内の出口位置に伝達する。図示の実施形態では、ビームステアリング素子605は、ビームステアリング素子605から出る矢印によって示されるように、2つの異なるステアリング角度と、ライトガイド620から眼625の方向に出る矢印によって示されるように、2つの異なるアイボックス体積とに対応する、2つの状態の間で切替可能である。
【0057】
図7は、いくつかの実施形態による色消し偏光グレーティング700の図である。色消し偏光グレーティング700は、
図3に示される光学系305、
図4に示されるビームステアリング素子401、
図5に示されるビームステアリング素子501、および
図6に示されるビームステアリング素子605のいくつかの実施形態を実施するために使用される。例えば、色消し偏光グレーティング700は、切替可能な偏光フィルタ(明確にするために
図7には示されていない)と組み合わされて、切替可能な偏光グレーティングを形成するよう、実現され得る。色消し偏光グレーティング700のいくつかの実施形態は、反対の旋光性を有する2つの反対称キラル円偏光グレーティングを使用して可視波長範囲にわたって約100%の効率で色分離および偏光分離を同時に行う重合可能な液晶で形成される。
【0058】
動作中、色消し偏光グレーティング700は、偏光されない光705を受け、それは、色消し偏光グレーティング700によって回折されて、異なる円偏光を有する出射光710、715を形成する。出射光710は、回折パターンにおいて+1次を表し、右円偏光である。出射光710のステアリング角はθ
+1である。出射光715は、回折パターンにおいて-1次を表し、左円偏光である。出射光715のステアリング角はθ
-1である。出射光710または出射光715のいずれかは、偏光依存フィルタの状態(明確にするために
図7には示されていない)を使用してライトガイド(
図6に示されるライトガイド620など)に選択的に提供される。例えば、偏光依存フィルタは、右円偏光された光710を第1の状態で透過させ、左円偏光された光715を第2の状態で透過させることができる。
【0059】
図8は、いくつかの実施形態による、第1の状態801および第2の状態802で動作するビームステアリング素子800のブロック図である。ビームステアリング素子800は、
図3に示す光学系305、
図4に示すビームステアリング素子401、
図5に示すビームステアリング素子501、および
図6に示すビームステアリング素子605のいくつかの実施形態を実施するために使用される。図示した実施形態では、ビームステアリング素子800は、
図7に示す色消し偏光グレーティング700などの偏光グレーティング805と、偏光依存フィルタ810と、偏光依存フィルタ810の動作状態を、偏光依存フィルタ810が第1の円偏光を濾波する第1の動作状態と、偏光依存フィルタ810が第2の円偏光を濾波する第2の動作状態との間で変化させるための信号を提供するコントローラ815とを含む。
【0060】
ビームステアリング素子800は、偏光されていない光820を受け取るが、いくつかの実施形態では、光820は、少なくとも部分的に偏光されている。偏光グレーティング805は、光820を、直交円偏光、例えば、それぞれ右円偏光および左円偏光を有する
【0061】
【0062】
に回折する。回折光は、矢印825、830によって表され、直交円偏光は、第1の円偏光135および第2の円偏光840として表される。回折光825、830は、偏光依存フィルタ810に入射する。第1の状態801で動作するとき、偏光依存フィルタ810は、第2の円偏光840を有する光830をフィルタ除去し、第1の円偏光835を有する光825のみが透過される。第2の状態802で動作するとき、偏光依存フィルタ810は、第1の円偏光835を有する光825をフィルタ除去し、第2の円偏光840を有する光830のみが透過される。
【0063】
図9は、いくつかの実施形態による、拡張されたアイボックスを生成するために選択的ビームステアリングを実現する光学系の図である。光学系800は、第1の状態901で示されており、これは、公称状態と見なされ、なぜならば、第1の状態901の光学系は、偏光されていない光、すなわち光学系において実現される偏光グレーティングの0次を透過しているからである。第1の状態901では、光学系のディスプレイによって生成された第1の画像911が、ユーザの視野(FOV)内の第1の位置に現れる。第2の状態902で動作するとき、光学系は、第1の円偏光、例えば、光学系において実現される偏光グレーティングによって生成される+1次を選択的に透過する。第2の状態902では、ディスプレイによって生成された第2の画像912が、ユーザのFOVにおいて第1の画像911の位置に対してオフセットされた第2の位置に現れる。第3の状態903で動作するとき、光学系は、第2の円偏光、例えば、光学系において実現される偏光グレーティングによって生成される-1次を選択的に透過する。第3の状態903では、ディスプレイによって生成された第3の画像913が、ユーザのFOVにおいて、第1の画像911の位置に対して、および第2の画像912とは反対方向にオフセットされた第3の位置に現れる。
【0064】
図10は、いくつかの実施形態による、ビームステアリング素子1005を使用して、拡張された知覚される視野(FOV)を生成する光学系1000の図である。光学系1000は、マイクロディスプレイ1010を含み、マイクロディスプレイ1010は、画像を生成し、画像において表される光線を光学要素1015、1020に提供し、光学要素1015、1020は、濾波された光線をライトガイド1025に提供し、ライトガイド1025は、光線を、ビームステアリング素子1005に近接する出口位置に伝達する。ビームステアリング素子1005のいくつかの実施形態は、本明細書で説明するように、液晶偏光グレーティングとして実現される。図示の実施形態では、ビームステアリング素子1005は、2つの異なる切替角度
【0065】
【0066】
に対応する2つの状態間で切替可能である。
ビームステアリング素子1005がない場合(または、ビームステアリング素子1005における偏光グレーティングの0次において)、ライトガイド1025から現れる光は公称FOV1030をカバーする。しかしながら、切替角度
【0067】
【0068】
に対応する状態間での切替は、例えば、切替が充分に高い周波数で生じる場合、ユーザによって知覚される有効FOVを拡張する。いくつかの実施形態では、ディスプレイ1010は、異なるFOVからのシーンの使用を表すインターレースされたフレームを生成し、フレームは、切替角度
【0069】
【0070】
に対応する状態間の切替と協調させられる。インターレースされたフレームは、切替角度+αによって示される方向に光を回折するビームステアリング素子1005の第1の状態と、切替角度-αによって示される方向に光を回折するビームステアリング素子1005の第2の状態との間の時間多重化によって生成される。時間多重化されたインターレースされたフレームによって生成される結果として得られる有効FOV1035は、公称FOV1030に2αの追加の開き角を加えたものに等しい。
図10には示されていないが、光学系1000のいくつかの実施形態はまた、本明細書で論じられるように、光学要素1015、1020間に配置され、複数の状態の間で切替えられて、拡張されたアイボックス体積を提供する、追加のビームステアリング素子(
図8に示されるビームステアリング素子800など)を含む。
【0071】
概して、上記で説明されるように、実施形態は、コンピュータ生成光と現実世界光とを統合し、複合ビューまたは複合画像をユーザの眼に対して形成する、眼鏡、ヘルメット、およびフロントガラス等のシースルーHMDデバイスに関する。従来の幾何学的形状および設計を改善するために、特定の実施形態によると、ディスプレイは、従来の眼鏡と同様の態様でフレームによってユーザの眼の前で適所に保持されるライトガイドの上部または側部のいずれかに配置される。
【0072】
本明細書で説明するHMDデバイスで使用される技術は、様々なタイプのディスプレイとともに使用するために適用可能である。たとえば、本技術は、有機発光ディスプレイ(OLED)、アクティブマトリックスOLED(AMOLED)ディスプレイ、シリコン上液晶(LCOS)ディスプレイ、発光ダイオード(LED)ディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、およびTFT(薄膜トランジスタ)LCDディスプレイで使用可能である。本明細書におけるライトガイドへの言及は、光がユーザの眼に向けられる前にライトガイド表面間の実質的な内部反射または全内部反射(TIR)に従って光を反射する1つ以上の構成要素を含む。説明される実施形態は、VRベースのデバイスまたはARベースのデバイスにおいてライトガイドを特定の構成要素と組み合わせ、周囲光がディスプレイ光と組み合わされて、複合画像がユーザの眼に提供される。
【0073】
いくつかの実施形態では、上述の技術のいくつかの局面は、電子ディスプレイを駆動し、コンテンツを提供し、偏光グレーティングを動作させるなどのためにソフトウェアを実行する処理システムの1つ以上のプロセッサを使用することによって実現される。ソフトウェアは、非一時的コンピュータ可読記憶媒体に記憶されるかまたはそうでなければ有形に具現化された実行可能命令の1つ以上のセットを備える。ソフトウェアは、命令と、1つ以上のプロセッサによって実行されると1つ以上のプロセッサを操作して上記で説明した技術の1つ以上の局面を実行する特定のデータとを含む。非一時的コンピュータ可読記憶媒体は、例えば、磁気または光ディスク記憶装置、フラッシュメモリなどのソリッドステート記憶装置、キャッシュ、ランダムアクセスメモリ(RAM)または他の不揮発性メモリ装置などを含むことができる。非一時的コンピュータ可読記憶媒体上に記憶された実行可能命令は、ソースコード、アセンブリ言語コード、オブジェクトコード、または1つ以上のプロセッサによって解釈されるかもしくは実行可能である他の命令フォーマットであってもよい。
【0074】
コンピュータ可読記憶媒体は、命令および/またはデータをコンピュータシステムに提供するために使用中にコンピュータシステムによってアクセス可能な任意の記憶媒体または記憶媒体の組合せを含んでもよい。そのような記憶媒体は、光学媒体(例えば、コンパクトディスク(CD)、デジタル多用途ディスク(DVD)、ブルーレイディスク)、磁気媒体(例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、磁気テープ、もしくは磁気ハードドライブ)、揮発性メモリ(例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)もしくはキャッシュ)、不揮発性メモリ(例えば、読み出し専用メモリ(ROM)もしくはフラッシュメモリ)、または微小電気機械システム(MEMS)ベースの記憶媒体を含んでもよいが、それらに限定されない。コンピュータ可読記憶媒体は、コンピューティングシステムに埋め込まれてもよく(例えば、システムRAMもしくはROM)、コンピューティングシステムに固定的に取り付けられてもよく(例えば、磁気ハードドライブ)、コンピューティングシステムに取り外し可能に取り付けられてもよく(例えば、光ディスクもしくはユニバーサルシリアルバス(USB)ベースのフラッシュメモリ)、または有線もしくは無線ネットワークを介してコンピュータシステムに結合されてもよい(例えば、ネットワークアクセス可能ストレージ(NAS))。
【0075】
全般的な説明において上述されたアクティビティまたは要素のすべてが必要とされるわけではなく、特定のアクティビティまたはデバイスの一部は必要とされないことがあり、1つ以上のさらなるアクティビティが、説明されたものに加えて実行されてもよいか、または1つ以上のさらなる要素が含まれてもよいことに留意されたい。さらに、アクティビティが列挙される順序は、必ずしもそれらが実行される順序ではない。また、概念は、特定の実施形態を参照して説明されている。しかしながら、当業者は、以下の特許請求の範囲に記載される本開示の範囲から逸脱することなく、様々な修正および変更を行うことができることを理解する。したがって、明細書および図面は、限定的な意味ではなく例示的な意味で見なされるべきであり、すべてのそのような修正は、本開示の範囲内に含まれることが意図される。
【0076】
利益、他の利点、および問題に対する解決策は、特定の実施形態に関して上述されている。しかしながら、利益、利点、問題に対する解決策、および任意の利益、利点、もしくは解決策を生じさせ得るかまたはより顕著にさせ得る任意の特徴は、いずれかまたはすべての請求項の重要な、必要な、または本質的な特徴として解釈されるべきではない。さらに、上記で開示される実施形態は例証にすぎず、なぜならば、開示される主題は、本明細書の教示の利益を有する当業者に明らかである、異なるが等価な態様で、修正および実践されてもよいからである。以下の特許請求の範囲に記載されるもの以外の、本明細書に示される構造または設計の詳細への限定は意図されない。したがって、上記で開示された実施形態は、変更または修正されてもよく、すべてのそのような変形は、開示された主題の範囲内であると見なされることは、明らかである。したがって、本明細書で求められる保護は、以下の特許請求の範囲に記載されるとおりである。