(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】金型および樹脂製容器の製造装置
(51)【国際特許分類】
B29C 49/64 20060101AFI20241003BHJP
B29C 49/06 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B29C49/64
B29C49/06
(21)【出願番号】P 2022570045
(86)(22)【出願日】2021-12-15
(86)【国際出願番号】 JP2021046352
(87)【国際公開番号】W WO2022131307
(87)【国際公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-08-08
(31)【優先権主張番号】P 2020207555
(32)【優先日】2020-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227032
【氏名又は名称】日精エー・エス・ビー機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100116001
【氏名又は名称】森 俊秀
(72)【発明者】
【氏名】竹花 大三郎
(72)【発明者】
【氏名】市橋 侑大
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/204040(WO,A1)
【文献】特開平06-344427(JP,A)
【文献】国際公開第2020/066749(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/101010(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/337218(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/051065(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 49/64
B29C 49/06
B29C 49/48
B29B 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリフォームを収容するキャビティ型から延びる軸部を受け、前記軸部の延長方向と交差する平面において前記キャビティ型の保持される位置を調整する位置調整機構を備えた金型であって、
前記位置調整機構は、
前記軸部を受ける直線状のカム穴が形成された第1部材と、
前記軸部の延長方向において前記第1部材と重なって配置され、前記平面に沿って前記第1部材に対して回動する第2部材と、を備え、
前記第2部材は、前記平面方向において前記カム穴に交差し、前記カム穴とともに前記軸部を位置決めする長穴を有し、
前記第2部材の回動により、前記カム穴と前記長穴の交差する位置が前記カム穴の長手方向に沿って移動する
金型。
【請求項2】
前記第2部材は、前記カム穴の中心からずれた位置を回転軸として回動する
請求項1に記載の金型。
【請求項3】
前記第1部材および前記第2部材の一方は、前記平面方向において部材の中心から偏心した円柱状の凸部を有し、
前記第1部材および前記第2部材の他方は、前記凸部を回動可能に受ける有底筒状の凹部を有し、
前記凸部と前記凹部を前記回転軸として前記第2部材が回動する
請求項2に記載の金型。
【請求項4】
前記第1部材および前記第2部材の一方は、前記
凹部の
内周に弾性変形可能な係止片を有し、
前記第1部材および前記第2部材の他方は、前記
凸部の
外周に前記係止片を受ける受け部を周方向の複数箇所に有し、
前記係止片が前記受け部に係止されることで、前記第1部材に対する前記第2部材の回動位置が位置決めされる
請求項3に記載の金型。
【請求項5】
前記キャビティ型は、射出成形時の保有熱を有する前記プリフォームの温度を調整する温度調整金型であり、
前記軸部の位置調整により、前記プリフォームに対する前記温度調整金型の距離を調整する
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の金型。
【請求項6】
樹脂製のプリフォームを射出成形する射出成形部と、
射出成形時の保有熱を有する前記プリフォームの温度を調整する温度調整部と、
前記プリフォームを温度調整後の状態でブロー成形し、樹脂製容器を製造するブロー成形部と、を備え、
前記温度調整部は、請求項5に記載の金型を有する
ブロー成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型および樹脂製容器の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から樹脂製容器の製造方法の一つとして、ホットパリソン式のブロー成形方法が知られている。ホットパリソン式のブロー成形方法は、プリフォームの射出成形時の保有熱を利用して樹脂製容器をブロー成形する方法であり、コールドパリソン式と比較して多様かつ美的外観に優れた樹脂製容器を製造できる点で有利である。
【0003】
射出成形後のプリフォームは、例えば射出成形金型の芯ずれなどによって周方向で温度のむら(偏温)を有する。この種の偏温の解消や容器の賦形に適した温度分布を付与する目的で、射出成形後のプリフォームを温度調整金型に収容してブロー成形前に温度調整を行うことが提案されている(例えば特許文献1など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のプリフォームの温度調整を適切に行うためには、プリフォームの表面と温度調整金型の内面とが適正な距離で相対するように温度調整金型の位置を調整する必要がある。この調整作業は成形調整時等に頻繁に行われるが、作業者にとって非常に煩雑である。
【0006】
そこで、本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、プリフォームに対するキャビティ型の適切な位置調整を作業性よく実現できる金型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、プリフォームを収容するキャビティ型から延びる軸部を受け、軸部の延長方向と交差する平面においてキャビティ型の保持される位置を調整する位置調整機構を備えた金型である。位置調整機構は、軸部を受ける直線状のカム穴が形成された第1部材と、軸部の延長方向において第1部材と重なって配置され、平面に沿って第1部材に対して回動する第2部材と、を備える。第2部材は、平面方向においてカム穴に交差し、カム穴とともに軸部を位置決めする長穴を有する。また、第2部材の回動により、カム穴と長穴の交差する位置がカム穴の長手方向に沿って移動する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、プリフォームに対するキャビティ型の適切な位置調整を作業性よく実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態のブロー成形装置の構成を模式的に示す図である。
【
図4】固定板、可動板および下段型の位置関係を示す斜視図である。
【
図5】(a)は可動板の平面図であり、(b)は固定板の平面図である。
【
図6】(a)は、固定板に可動板を重ね合わせた状態の平面図であり、(b)は、
図6(a)から可動板を回動させた状態を示す図である。
【
図7】ブロー成形方法の工程を示すフローチャートである。
【
図8】(a)は第2実施形態の可動板の平面図であり、(b)は第2実施形態の固定板の平面図である。
【
図9】第2実施形態での可動板と固定板の回動状態を示す図である。
【
図10】
図9に対応する中段型とプリフォームの位置関係を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
実施形態では説明を分かり易くするため、本発明の主要部以外の構造や要素については、簡略化または省略して説明する。また、図面において、同じ要素には同じ符号を付す。なお、図面に示す各要素の形状、寸法などは模式的に示したもので、実際の形状、寸法などを示すものではない。
【0011】
<<第1実施形態>>
<ブロー成形装置の説明>
まず、
図1を参照して樹脂製容器(以下、単に容器と称する)を製造するためのブロー成形装置20について説明する。
図1は、ブロー成形装置20の構成を模式的に示すブロック図である。第1実施形態のブロー成形装置20は、プリフォーム10を室温まで冷却せずに射出成形時の保有熱(内部熱量)を活用してブロー成形するホットパリソン方式(1ステージ方式とも称する)の装置である。
【0012】
ブロー成形装置20は、射出成形部21と、温度調整部22と、ブロー成形部23と、取り出し部24と、搬送機構26とを備える。射出成形部21、温度調整部22、ブロー成形部23および取り出し部24は、搬送機構26を中心として所定角度(例えば90度)ずつ回転した位置に配置されている。ブロー成形装置20は、後述するネック型27を少なくとも1列以上備える。また、ブロー成形装置20はネック型を複数列(例えば2列や3列)備える場合は、各部の金型(後述する温度調整部22のキャビティ型31)も同じ列数で構成される。
【0013】
(搬送機構26)
搬送機構26は、
図1の紙面垂直方向の軸を中心として回転するように移動する移送板(不図示)を備える。移送板には、プリフォーム10または
容器の首部を保持するネック型27(
図1では不図示)が、所定角度ごとにそれぞれ1以上配置されている。搬送機構26は、移送板を90度分ずつ移動させることで、ネック型27で首部が保持されたプリフォーム10(または容器)を、射出成形部21、温度調整部22、ブロー成形部23、取り出し部24の順に搬送する。なお、搬送機構26は、昇降機構(縦方向の型開閉機構)やネック型27の型開き機構をさらに備え、移送板を昇降させる動作や、射出成形部21等における型閉じや型開き(離型)に係る動作も行う。なお、移送板は、各成形ステーションのネック型を全て保持する一つの円板形状の部材であってもよく、成形ステーション毎にネック型を保持した扇形状の部材が集合した構成であっても構わない。
【0014】
(射出成形部21)
射出成形部21は、それぞれ図示を省略する射出キャビティ型、射出コア型を備え、プリフォーム10を製造する。射出成形部21には、プリフォーム10の原材料である樹脂材料を供給する射出装置25が接続されている。
【0015】
射出成形部21においては、上記の射出キャビティ型、射出コア型と、搬送機構26のネック型27とを型閉じしてプリフォーム形状の型空間を形成する。そして、このようなプリフォーム形状の型空間内に射出装置25から樹脂材料を流し込むことで、射出成形部21でプリフォーム10が製造される。
ここで、プリフォーム10の全体形状は、一端側が開口され、他端側の底部14が閉塞された有底円筒形状である。プリフォーム10の開口側の端部には、首部12が形成されている。
【0016】
また、容器およびプリフォーム10の材料は、熱可塑性の合成樹脂であり、容器の用途に応じて適宜選択できる。具体的な材料の種類としては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PCTA(ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート)、Tritan(トライタン(登録商標):イーストマンケミカル社製のコポリエステル)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PC(ポリカーボネート)、PES(ポリエーテルスルホン)、PPSU(ポリフェニルスルホン)、PS(ポリスチレン)、COP/COC(環状オレフィン系ポリマー)、PMMA(ポリメタクリル酸メチル:アクリル)、PLA(ポリ乳酸)、ナイロンなどが挙げられる。
【0017】
なお、射出成形部21の型開きをしたときにも、搬送機構26のネック型27は開放されずにそのままプリフォーム10を保持して搬送する。射出成形部21で同時に成形されるプリフォーム10の数(すなわち、ブロー成形装置20で同時に成形できる容器の数)は、適宜設定できる。
【0018】
(温度調整部22)
温度調整部22は、射出成形部21で製造されたプリフォーム10の均温化や偏温除去を行い、プリフォーム10の温度をブロー成形に適した温度(例えば約90℃~105℃)かつ賦形される容器形状に適した温度分布を備えるように調整する。また、温度調整部22は、射出成形後の高温状態のプリフォーム10を冷却する機能を担ってもよい。
【0019】
図2は、温度調整部22の構成例を示す図である。温度調整部22は、プリフォーム10を収容可能なキャビティ型(温調ポット)31を有している。キャビティ型31は、射出成形部21で製造されたプリフォーム10の外形と略同じ形状の温度調整用の空間を有する。なお、特に限定するものではないが、温度調整部22は、プリフォーム10の内部に挿入される金型部材(温度調整ロッド)をさらに備えていてもよい。なお、キャビティ型31のプリフォームを収容する温度調整用の空間は、必要に応じ、水平方向の断面形状が、真円形や楕円形または多角形であっても構わない。
【0020】
第1実施形態のキャビティ型31は、プリフォーム10の軸方向に1段以上で構成されている。キャビティ型31は、好ましくは、プリフォーム10の軸方向に多段に分割されており、例えば、3分割され、上段型32、中段型33および下段型34を含む。上段型32は、プリフォーム10の首部12近傍の外面に臨む金型である。中段型33は、プリフォーム10の胴部13の外面に臨む金型である。下段型34は、プリフォーム10の底部14の外面に臨む金型である。上段型32の底面と中段型33の上面は第1のインロー35で係合し、中段型33の底面と下段型34の上面は第2のインロー36で係合する。また、下段型34の底面中央には、上下方向(プリフォーム10の軸方向)に沿って底部側に突出する円柱状の軸部34aが形成されている。
【0021】
キャビティ型31の上段型32、中段型33および下段型34には、バンドヒータなどの加熱部材(不図示)がそれぞれ取り付けられている。そのため、上段型32、中段型33および下段型34の温度は、それぞれ加熱部材により所定の温度に保たれる。また、上段型32、中段型33および下段型34の加熱部材の温度を変化させることで、プリフォーム10の軸方向の温度分布を変化させることもできる。なお、キャビティ型31を構成する段数は、プリフォーム10の胴部13の長さに応じ、1段から10段程度まで適宜変更してもよい。
【0022】
キャビティ型31は、上部支持板37と下部支持板38に両側から挟み込まれて固定される。
上部支持板37は、ネック型27に対応する形状の開口部37aを有し、上段型32の上面側に配置される。また、上部支持板37は、上下方向に延びる複数の固定ボルト(固定部材)39によって下部支持板38に連結される。なお、ネック型27がキャビティ型31に対して下降した状態では、上部支持板37の開口部37aにネック型27が配置され、ネック型27に保持されたプリフォーム10がキャビティ型31に収容される。
【0023】
下部支持板38は、ブロー成形装置20の下部基盤(不図示)に固定される。下部支持板38の上面には、キャビティ型31の位置を調整するための位置調整機構40が設けられている。そして、下部支持板38は、位置調整機構40を介して下段型34の軸部34aを保持する。
【0024】
次に、温度調整部22の位置調整機構40について説明する。
位置調整機構40は、上下方向と直交する下部支持板38の平面上において、キャビティ型31の保持される位置を一次元方向(または水平方向)に調整する機能を担う。位置調整機構40は、
図2に示すように、下部支持板38に固定された固定板41と、可動板42と、スペーサー49と、押さえ部材44とを備えている。固定板41は第1部材の一例であり、可動板42は第2部材の一例である。
【0025】
固定板41、可動板42、スペーサー49は、例えば、いずれも全体形状が円盤状の部材である。位置調整機構40の組み立て状態においては、下部支持板38の上に、下から順に固定板41、可動板42、スペーサー49が積層されて配置される。固定板41、可動板42およびスペーサー49には、下段型34の軸部34aが挿通される。なお、
図4は、固定板41、可動板42および下段型34の位置関係を示す斜視図である。
図4では、簡単のため、スペーサー49の図示は省略している。
【0026】
押さえ部材44は、
図3に示すように、例えば、半割リング状の2つのブロック部材で構成される。押さえ部材44は、固定板41、可動板42およびスペーサー49を配置する空間を内側に有し、それぞれが下部支持板38にボルト(固定部材)45で固定される。押さえ部材44は、固定板41、可動板42、スペーサー49を外周側から囲んで保持する。また、押さえ部材44は、スペーサー49を介して可動板42を上側から固定板41に押さえつけることで、固定板41に対する可動板42の回転方向の位置を保持する機能を担う。なお、固定板41の位置ずれを抑止するために、固定板41と下部支持板38を位置決めピン等(不図示)を介して固定してもよい。
【0027】
図5(a)は、可動板42の平面図である。可動板42は、円盤状の可動板本体42aと、可動板本体42aの底面側に形成された円柱状の凸部42bを有する。凸部42bは、可動板本体42aの中心に対して偏心した位置に形成されている。また、可動板42には、可動板本体42aおよび凸部42bを貫通する長穴(第1の長穴)42cが形成されている。長穴42cの短手方向の幅Wは、下段型34の軸部34aが通過可能な寸法に設定されている。
【0028】
図5(b)は、固定板41の平面図である。固定板41は、円盤状の固定板本体41aと、固定板本体41aの上面側に形成された有底円筒状の凹部41bを有する。凹部41bは、固定板本体41aの中心に対して偏心した位置に形成されており、上面側に配置される可動板42の凸部42bを回動可能に受ける。凹部41bは、凸部42bと対応する形状であって、凸部42bを軸支できる寸法に設定される。
【0029】
また、固定板41の凹部41bの底面には、下段型34の軸部34aを受けるカム穴(第2の長穴)41cが形成されている。カム穴41cは、固定板本体41aの中心を通って長手方向に直線状に延びる形状である。カム穴41cの短手方向の幅Wは、下段型34の軸部34aが通過可能な寸法に設定されている。また、カム穴41cは、可動板42の長穴42cの位置と部分的に重なるが、カム穴41cの長手方向が長穴42cに対して交差する方向となるように形成されている。
【0030】
図6(a)は、固定板41に可動板42を重ね合わせた状態の平面図である。
図6(b)は、
図6(a)から可動板42を回動させた状態を示す図である。
【0031】
可動板42と固定板41を上下に重ね合わせた状態では、可動板42の凸部42bが固定板41の凹部41bに軸支され、凸部42bと凹部41bを回転軸として可動板42を回動させることができる。あるいは、可動板42の凸部42bが固定板41の凹部41bに嵌め込まれ、凸部42bの外周面を凹部41bの内周面に当接させつつ凸部42bを凹部41bに対し回転させることで可動板42を回動させてもよい。
【0032】
また、固定板41および可動板42を上下方向からみたときには、
図6(a)、(b)に示すように、固定板41のカム穴41cに対して可動板42の長穴42cが交差する配置となる。したがって、下段型34の軸部34aを可動板42と固定板41に挿入すると、カム穴41cの短手方向の内面と、カム穴41cと交差する長穴42cの短手方向の内面とで軸部34aが拘束されて位置決めされる。これにより、可動板42および固定板41によって、キャビティ型31を位置決めして保持できる。
【0033】
また、
図6(a)、(b)に示すように、固定板41に対して可動板42を回動させると、カム穴41cと長穴42cの重なる位置がカム穴41cの長手方向に沿って移動する。つまり、固定板41に対して可動板42を回動させることで、カム穴41cの長手方向において軸部34aの保持される位置を調整できる。これにより、可動板42および固定板41によって、プリフォーム10に臨むキャビティ型31の位置調整(距離調整)が可能になる。つまり、固定板41に対する可動板42の回動角度に応じて、カム穴41cの長手方向の側に軸部34aが挿通できる位置が所定距離移動し、キャビティ型31の移動距離が精度良く定まる(規定される)。さらに、固定板41は、下部支持板38に対して所定角度回動させた状態で固定可能である。よって、ネック型27に支持され自転不能なプリフォーム10に対し、加熱したい周方向の部位とキャビティ型31とを位置合わせすることができる。
【0034】
(ブロー成形部23)
ブロー成形部23は、温度調整部22で温度調整されたプリフォーム10に対して延伸ブロー成形を行い、容器を製造する。
ブロー成形部23は、容器の形状に対応した一対の割型であるブローキャビティ型と、底型と、延伸ロッドおよびエア導入部材(いずれも不図示)を備える。ブロー成形部23は、プリフォーム10を延伸しながらブロー成形する。これにより、プリフォーム10がブローキャビティ型の形状に賦形されて容器を製造することができる。
【0035】
(取り出し部24)
取り出し部24は、ブロー成形部23で製造された容器の首部をネック型27から開放し、容器をブロー成形装置20の外部へ取り出すように構成されている。
【0036】
<ブロー成形方法の説明>
次に、第1実施形態のブロー成形装置20によるブロー成形方法について説明する。
図7は、ブロー成形方法の工程を示すフローチャートである。第1実施形態では、ブロー成形方法の後述の各工程(S101~S104)が実施される前に、テスト運転の結果に基づいて温度調整部22の金型の位置を調整する偏温調整工程(S100)が行われる。
【0037】
(ステップS100:偏温調整工程)
偏温調整工程(温度調整用キャビティ型の位置調整工程)は、テスト運転で射出成形されたプリフォーム10の温度分布や、あるいはテスト運転でブロー成形された容器の肉厚分布に応じて、温度調整部22のキャビティ型31の位置を調整する工程である。
【0038】
まず、ブロー成形装置20をテスト運転し、調整前におけるプリフォーム10の温度分布の情報または容器の肉厚分布の情報を得る。上記のテスト運転の結果、プリフォーム10の温度分布や容器の肉厚分布が所望の状態とは異なる場合、温度調整部22におけるキャビティ型31の位置が以下のように調整される。以下の説明では、一例として、周方向におけるプリフォーム10の温度分布や容器の肉厚分布の偏りが小さくなるように調整するものとする。
【0039】
例えば、プリフォーム10の胴部13の周方向に温度分布の偏りがある場合、作業者は、上部支持板37、キャビティ型31および押さえ部材44を取り外す。または、押さえ部材44を取り外し、上部支持板37、キャビティ型31、スペーサー49、可動板42および固定板41を位置調整可能な程度に緩める。そして、プリフォーム10の胴部13の偏温等がある周方向の位置が、固定板41のカム穴41cの長軸(長手方向)の延長線上に配置されるように、固定板41を下部支持板38に対し回動させる。
【0040】
次に、作業者は、位置調整機構40の可動板42を回動させて、固定板41のカム穴41c上で軸部34aの保持される位置を調整する。このとき、プリフォーム10の温度の高い部位とキャビティ型31の間隔が離れ(加熱量を減少させ)、プリフォーム10の温度の低い部位とキャビティ型31の間隔が近づくように(加熱量を増加させるように)、位置調整機構40で軸部34aの保持される位置を調整すればよい。これにより、プリフォーム10の周方向においてテスト運転時に温度の高い部位がキャビティ型31で加熱されにくくなり、プリフォーム10の周方向における温度分布の偏りを小さくできる。また、下部支持板38に対し固定板41を所定角度回転させて固定することで、プリフォーム10の加熱したい周方向の部位とキャビティ型31とを確実に位置合わせできる。なお、キャビティ型31とプリフォーム10の位置調整(距離調整)作業は、押さえ部材44のみ取り外して、キャビティ型31の軸部34aを可動板42の長穴42cおよび固定板のカム孔41cに挿通させた状態で可動板42を回動させてキャビティ型31とプリフォームの間隔を調整した後、再度、押さえ部材44で固定する方法で行っても構わない。
【0041】
また、テスト運転で製造された容器の肉厚分布に基づいて偏温調整工程での各種調整を行う場合には、以下のように行えばよい。
【0042】
1ステージ方式のブロー成形において、プリフォーム10の温度の高い部位は大きな保有熱を有し、プリフォーム10が延伸されやすくなる。つまり、容器の肉厚が薄い部位は、プリフォーム10の温度の高い部位に対応する。一方、プリフォーム10の温度の低い部位は、プリフォーム10の温度の高い部位と比べて保有熱が小さくなり、プリフォーム10が延伸されにくくなる。つまり、容器の肉厚が厚い部位は、プリフォーム10の温度の低い部位に対応する。
【0043】
したがって、容器の肉厚分布に基づいて偏温調整工程での各種調整を行う場合、容器の肉厚が薄い部位はプリフォーム10の温度の高い部位とみなし、容器の肉厚が厚い部位はプリフォーム10の温度の低い部位とみなして上記と同様に調整を行えばよい。
上記の偏温調整工程が完了すると、以下に示すブロー成形サイクルの各工程が実行される。
【0044】
(ステップS101:射出成形工程)
ステップS101では、射出成形部21において、射出キャビティ型、射出コア型および搬送機構26のネック型27で形成されたプリフォーム形状の型空間に射出装置25から樹脂を射出し、プリフォーム10が製造される。
【0045】
ステップS101において、プリフォーム10の射出成形が完了すると、射出成形部21が型開きされてプリフォーム10が射出キャビティ型、射出コア型から離型される。次に、搬送機構26の移送板が所定角度分回転するように移動し、ネック型27に保持されたプリフォーム10は温度調整部22に搬送される。
【0046】
(ステップS102:温度調整工程)
続いて、温度調整部22において、プリフォーム10の温度を最終ブローに適した温度に近づけるための温度調整が行われる。
【0047】
図2に示すように、温度調整工程においては、プリフォーム10がキャビティ型31の温度調整用の空間に収容される。なお、キャビティ型31はプリフォーム10の形状に対応しているため、プリフォームの形状は温度調整工程においても所望の形状のまま維持される。
【0048】
温度調整工程では、プリフォーム10がキャビティ型31に臨むことで、プリフォーム10はブロー成形に適した温度以下にならないように温度調整され、さらに射出成形時に生じた偏温も低減される。特に、第1実施形態では、偏温調整工程(S100)においてキャビティ型31の位置が位置調整機構40で適切に調整されるので、プリフォーム10の周方向の偏温を低減することができる。
【0049】
温度調整工程の後、搬送機構26の移送板が所定角度分回転するように移動し、ネック型27に保持された温度調整後のプリフォーム10がブロー成形部23に搬送される。
【0050】
(ステップS103:ブロー成形工程)
続いて、ブロー成形部23において、容器のブロー成形が行われる。
まず、ブローキャビティ型を型閉じしてプリフォーム10を型空間に収容し、エア導入部材(ブローコア)を下降させることで、プリフォーム10の首部にエア導入部材が当接される。そして、延伸ロッド(縦軸延伸部材)を降下させてプリフォーム10の底部を内面から抑えて、必要に応じて縦軸延伸を行いつつ、エア導入部材からブローエアを供給することで、プリフォーム10を横軸延伸する。これにより、プリフォーム10は、ブローキャビティ型の型空間に密着するように膨出して賦形され、容器にブロー成形される。なお、底型は、ブローキャビティ型の型閉じ前はプリフォーム10の底部と接触しない下方の位置で待機し、型閉前または型閉後に成形位置まで素早く上昇する。
【0051】
(ステップS104:容器取り出し工程)
ブロー成形が終了すると、ブローキャビティ型および底型が型開きされる。これにより、ブロー成形部23から容器が移動可能となる。
続いて、搬送機構26の移送板が所定角度回転するように移動し、容器が取り出し部24に搬送される。取り出し部24において、容器の首部がネック型27から開放され、容器がブロー成形装置20の外部へ取り出される。
【0052】
以上で、ブロー成形サイクルの一連の工程が終了する。その後、搬送機構26の移送板を所定角度回転するように移動させることで、上記のS101からS104の各工程が繰り返される。ブロー成形装置20の運転時には、1工程ずつの時間差を有する4組分の容器の製造が並列に実行される。
【0053】
以下、第1実施形態の作用効果を説明する。
第1実施形態のブロー成形装置20は、温度調整部22のキャビティ型31の位置を調整する位置調整機構40を備える。位置調整機構40は、キャビティ型31の軸部34aを受ける直線状のカム穴41cが形成された固定板41と、軸部34aの延長方向において固定板41と重なって配置され、平面に沿って固定板41に対して回動する可動板42と、を備える。可動板42は、平面方向においてカム穴41cに交差し、カム穴41cとともに軸部34aを位置決めする長穴42cを有する。そして、可動板42の回動により、カム穴41cと長穴42cの交差する位置がカム穴41cの長手方向に沿って移動する。
【0054】
一例としてセットスクリューなどを用いて金型の位置調整を行う場合には、キャビティ型31を構成する各段(例えば、上段型32、中段型33および下段型34)を個別に水平方向に位置調整した後に連結(固定)する必要があり、位置の調整作業が煩雑なものとなる。一方で、第1実施形態の位置調整機構40では、固定板41に対して可動板42を回動させることで、キャビティ型31の軸部34aの保持される位置がカム穴41cに沿って移動する。したがって、第1実施形態によれば、プリフォーム10に対するキャビティ型31の適切な位置調整を、可動板42の位置を調整するだけで作業性よく行うことができ、プリフォーム10の周方向の温度調整(加熱度合い)を精度よく実現できる。つまり、固定板41と可動板42とを水平方向にて相対的に回動させるだけで、プリフォーム10の周方向の温度調整を精度よく実施できる。また、第1実施形態によれば、固定板41に対する可動板42の位置をマーキングするなどの手法により、キャビティ型31の調整された位置を容易に復元することもでき、プリフォーム10に対する温度調整条件(加熱条件)の再現性が担保できる。
【0055】
第1実施形態の位置調整機構40は、軸部34aの延長方向(伸張方向)において固定板41と可動板42が重なって配置されるため、位置調整機構40およびキャビティ型31の平面視での投影面積が非常に小さくなる。したがって、第1実施形態では、ブロー成形装置20において複数または複数列のキャビティ型31を並べる場合、相互の間隔を詰めてキャビティ型31を配置することが容易となり、多数個同時成形時のキャビティ型31の省スペース化が実現可能になり、1回のブロー成形サイクルで製造できる容器の取り数が増やしやすくなる。
【0056】
なお、例えば金型の側方にセットスクリューなどの機構を配置する場合には、相互の間隔を詰めて金型を配置することが困難になる。また、複数のセットスクリューを対角に配置することで金型の間隔を詰めて配置することもできるが、上記の構成の場合には金型の位置調整の作業性が大幅に低下してしまう。第1実施形態では上記のような問題がない点で有利である。
【0057】
<<第2実施形態>>
第2実施形態は、第1実施形態の変形例であって、固定板41と可動板42との位置決め部を設けた構成である。第2実施形態の位置決め部は、固定板41側で係止片46aを移動させるプランジャ46と、可動板42側で係止片を受ける受け部としての受け溝43によって構成されている。第2実施形態は、位置調整機構40の固定板41および可動板42の構成が第1実施形態と相違する。そのため、第2実施形態の説明において、第1実施形態と同様の構成には同じ符号を付して重複説明を省略する。
【0058】
図8(a)は、第2実施形態の可動板42の平面図である。第2実施形態の可動板42には、可動板本体42aの下面(底面)側および円柱状の凸部42bに、受け部の一例としてくぼみ状の受け溝43が少なくとも2つ以上、例えば5つ形成されている。受け溝43a-43eは、円柱状の凸部42bの外周に沿って並んで配置され、いずれかの受け溝43a-43eが後述する固定板41側の係止片46aを受ける。また、可動板本体42aの外周には、固定板41との位置合わせの目印に用いられる切り欠き(第1の指標部)47が形成されている。なお、凸部42bおよび長穴42cの構成および機能は第1実施形態と同様である。切り欠き(第1の指標部)47の形状は、
図8(a)のような切り欠き状が好ましいが、可動板本体42aの外周から突出する凸状の形状でもよい。
【0059】
図8(b)は、第2実施形態の固定板41の平面図である。第2実施形態の固定板41には、凹部41bの内周面にプランジャ(係止部材)46が1つ埋め込まれて配置されている。プランジャ46は、不図示のばねによって凹部41bの内側に付勢される例えばボール状の係止片46aを有している。なお、係止片46aはピン状であってもよい。
【0060】
可動板42と固定板41を上下に重ね合わせた状態では、可動板42の凸部42bが固定板41の凹部41bに軸支され、凸部42bと凹部41bを回転軸として可動板42を回動させることができる。あるいは、可動板42の凸部42bが固定板41の凹部41bに嵌め込まれ、凸部42bの外周面を凹部41bの内周面に当接させつつ凸部42bを凹部41bに対し回転させることで可動板42を回動させてもよい。
【0061】
ここで、周方向においてプランジャ46といずれかの受け溝43a-43eの位置が重なると、凹部41bの内側に付勢された係止片46aが凸部42bの受け溝に係止され、固定板41に対して可動板42が位置決めされる。これにより、受け溝43a-43eとプランジャ46が重なる5つの位置で、固定板41に対して可動板42が位置決めされる。なお、可動板42に所定以上の回転方向の力を加えることでプランジャ46のばねが弾性変形で圧縮されて係止片46aは外側に退避し、これにより係止片46aと受け溝43a-43eの係止が容易に解除される。
【0062】
また、固定板41の外周には、可動板42の切り欠き(第1の指標部)47との位置合わせに用いられる少なくとも2つ以上、例えば、5つの切り欠き(第2の指標部)48(48a-48e)が形成されている。切り欠き48aは、係止片46aが受け溝43aに係止されたときに切り欠き47と重なる位置に形成されている。切り欠き48bは、係止片46aが受け溝43bに係止されたときに切り欠き47と重なる位置に形成されている。切り欠き48cは、係止片46aが受け溝43cに係止されたときに切り欠き47と重なる位置に形成されている。切り欠き48dは、係止片46aが受け溝43dに係止されたときに切り欠き47と重なる位置に形成されている。切り欠き48eは、係止片46aが受け溝43eに係止されたときに切り欠き47と重なる位置に形成されている。なお、切り欠き(
第2の指標部)48の形状は、
図8(b)のような切り欠き状が好ましいが、固定板41の外周から突出する凸状の形状でもよい。
【0063】
また、固定板41には、周方向に一定間隔をおいて複数のピン穴41dが開口されている。固定板41のピン穴41dは、下部支持板38を貫通して下側から挿入される位置決めピン(不図示)を受ける。このように、下部支持板38上に配置される固定板41は、位置決めピンにより下部支持板38に位置決めされる。これにより、固定板41のカム穴41cの長軸(長手方向)の延長線上に、プリフォーム10の偏温等がある胴部13の周方向の位置を位置ずれなく精度よく配置させることが可能になる。そして、後述するキャビティ型31のシフトによりその胴部13の温度状態をブロー成形前に適切に調整することが可能になる。
【0064】
図9(a)-(e)は、第2実施形態での可動板42と固定板41の回動状態を示す図であり、
図9(a)から
図9(e)にかけて可動板42を時計回り方向に回動させたときの変化を示している。可動板42を回動させる場合、まずキャビティ型31を取り外し、次に位置調整機構40の押さえ部材44およびスペーサー49を取り外して調整が行われる。または、押さえ部材44を取り外し、上部支持板37、キャビティ型31、スペーサー49、可動板42および固定板41を位置調整可能な程度に緩めてもよい。
【0065】
図9(a)では、係止片46aが受け溝43aに係止され、切り欠き47は切り欠き48aと重なる位置にある。また、固定板41のカム穴41cに対して可動板42の長穴42cが交差する配置となる。したがって、
図9(a)の状態において、下段型34の軸部34aを可動板42と固定板41に挿入すると、カム穴41cの短手方向の内面と、カム穴41cと交差する長穴42cの短手方向の内面とで軸部34aが拘束されて位置決めされる。
【0066】
図9(a)から可動板42を時計回りに回動させると、
図9(b)の状態となる。
図9(b)では、係止片46aが受け溝43bに係止され、切り欠き47は切り欠き48bと重なる位置にある。また、
図9(b)では、軸部34aの保持される位置が
図9(a)と比べて図中上側にシフトする。
【0067】
図9(b)から可動板42を時計回りに回動させると、
図9(c)の状態となる。
図9(c)では、係止片46aが受け溝43cに係止され、切り欠き47は切り欠き48cと重なる位置にある。また、
図9(c)では、軸部34aの保持される位置が
図9(b)と比べて図中上側にシフトする。
【0068】
図9(c)から可動板42を時計回りに回動させると、
図9(d)の状態となる。
図9(d)では、係止片46aが受け溝43dに係止され、切り欠き47は切り欠き48dと重なる位置にある。また、
図9(d)では、軸部34aの保持される位置が
図9(c)と比べて図中上側にシフトする。
【0069】
図9(d)から可動板42を時計回りに回動させると、
図9(e)の状態となる。
図9(e)では、係止片46aが受け溝43eに係止され、切り欠き47は切り欠き48eと重なる位置にある。また、
図9(e)では、軸部34aの保持される位置が
図9(d)と比べて図中上側にシフトする。
なお、係止片46aと受け溝43の係止位置を一つ隣に移動させる度、すなわち、切り欠き(第1の指標部)47と切り欠き(第2の指標部)48の重なる位置を一つ隣に移動させる度、軸部34aまたはキャビティ型31がプリフォーム10の胴部13に対して一定距離(例えば、0.3mmや0.5mm)ずつ移動(接近または離間)する。
【0070】
また、
図10(a)-(e)は、中段型33とプリフォーム10の位置関係を示す断面図である。
図10(a)-(e)は、
図9(a)-(e)による軸部34aの位置調整にそれぞれ対応する。
【0071】
図9(a)に対応する
図10(a)では、プリフォーム10は中段型33の中央に同心状に配置されている。これに対し、
図9(b)-(e)に示すように軸部34aの保持される位置が図中上側にシフトすることで、
図10(b)-(e)ではキャビティ型31(中段型33)の位置も図中上側にシフトする。一方で、プリフォーム10の位置は一定であるため、軸部34aの位置調整に伴うキャビティ型31のシフトに伴って、プリフォーム10がキャビティ型31(中段型33)に対して偏心した配置となる。
【0072】
なお、プリフォーム10に対するキャビティ型31の偏心量は、
図10(e)で最も大きく、
図10(d)、
図10(c)、
図10(b)の順に小さくなり、
図10(a)では偏心量がゼロになる。
【0073】
以上のように、第2実施形態によれば、プランジャ46が受け溝43a-43eのいずれかに係止されることで、回動する可動板42が固定板41に対して所定の位置で位置決めされる。これにより、偏温調整工程においてプリフォーム10に対するキャビティ型31の偏心量(すなわち、プリフォーム10の周方向の加熱度合い)を簡易な操作で精度よく調整することができ、かつ偏心量を調整するときの再現性を向上させることができる。また、第2実施形態では、切り欠き47と切り欠き48a-48eの位置合わせによっても、作業者は位置調整機構40の偏心量を確認できるので、偏温調整工程での作業性も向上する。
【0074】
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行ってもよい。
【0075】
上記実施形態のキャビティ型31の構成は一例であって、上記実施形態には限定されない。また、上記実施形態のブロー成形装置20は、例えば複数の射出成形部を備える構成(いわゆる5ステーション型の構成)であってもよい。このとき、射出成形部の間にさらに追加で温度調整部が配置される構成(いわゆる6ステーション型の構成)であってもよい。
【0076】
また、上記実施形態の固定板41および可動板42の構成はあくまで一例であり、例えば、固定板41側に凸部を形成し、可動板42側に凹部を形成してもよい。さらに、可動板42と固定板41は凸部と凹部が相補的に回動可能であれば良く、外形は円盤状でなく多角形状であっても構わない。同様に、押さえ部材44の外径も可動板42と固定板41が保持可能であれば良く、下側に中空領域がある多角形状の半割状の部材であってもよい。
また、プリフォームの胴部の偏温を解消させるだけでなく、プリフォームの胴部の周方向の一部を局所的に加熱させ、偏平容器等を成形するのに利用しても構わない。
【0077】
加えて、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0078】
10…プリフォーム、20…ブロー成形装置、21…射出成形部、22…温度調整部、23…ブロー成形部、31…キャビティ型、34a…軸部、40…位置調整機構、41…固定板、41a…固定板本体、41b…凹部、41c…カム穴、42…可動板、42a…可動板本体、42b…凸部、42c…長穴