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特許7565384CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質をコードするリコンビナントラブドウイルス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質をコードするリコンビナントラブドウイルス
(51)【国際特許分類】
   C12N 7/01 20060101AFI20241003BHJP
   C12N 15/47 20060101ALI20241003BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20241003BHJP
   C12N 15/40 20060101ALI20241003BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20241003BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20241003BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241003BHJP
   A61K 35/766 20150101ALI20241003BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20241003BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241003BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20241003BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20241003BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241003BHJP
   A61K 31/4709 20060101ALI20241003BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALI20241003BHJP
   A61K 31/4725 20060101ALI20241003BHJP
   A61K 31/444 20060101ALI20241003BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20241003BHJP
   A61K 38/17 20060101ALN20241003BHJP
【FI】
C12N7/01 ZNA
C12N15/47
C12N15/12
C12N15/40
C07K19/00
C07K16/28
C12N5/10
A61K35/766
A61K48/00
A61P35/00
A61P35/04
A61K45/00
A61K39/395 U
A61K31/4709
A61K31/5377
A61K31/4725
A61K31/444
A61K31/506
A61K38/17
【請求項の数】 32
(21)【出願番号】P 2022574112
(86)(22)【出願日】2021-06-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-29
(86)【国際出願番号】 EP2021064728
(87)【国際公開番号】W WO2021245111
(87)【国際公開日】2021-12-09
【審査請求日】2023-01-30
(31)【優先権主張番号】20178032.7
(32)【優先日】2020-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503385923
【氏名又は名称】ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】エルブ,クラウス
(72)【発明者】
【氏名】アールマン,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルマン,グイド
【審査官】松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108728488(CN,A)
【文献】特表2020-511143(JP,A)
【文献】特表2019-515019(JP,A)
【文献】国際公開第2020/047087(WO,A1)
【文献】特表2019-506438(JP,A)
【文献】特表2011-507523(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00- 7/08
C07K 1/00- 19/00
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
そのゲノム中で少なくとも1種のCD80細胞外ドメインFc融合タンパク質をコードするリコンビナント水疱性口内炎ウイルスであって、
CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質は、CD80の細胞外ドメインを含み、IgGのFcドメインを更に含み、そして、(i)配列番号:4を含むCD80細胞外ドメインFc融合タンパク質、(ii)シグナルペプチド配列を更に含む(i)に記載のCD80細胞外ドメインFc融合タンパク質、及び(iii)配列番号:3を含むCD80細胞外ドメインFc融合タンパク質を含む群から選択され、
リコンビナント水疱性口内炎ウイルスの糖タンパク質Gをコードする遺伝子が、リンパ球脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)の糖タンパク質GPをコードする遺伝子により置き換えられており、かつ/又は、糖タンパク質Gは、LCMVの糖タンパク質GPにより置き換えられている、
リコンビナント水疱性口内炎ウイルス
【請求項2】
記ゲノムが、配列番号:3を含むCD80細胞外ドメインFc融合タンパク質をコードする、請求項記載のリコンビナント水疱性口内炎ウイルス。
【請求項3】
そのゲノム中で少なくとも水疱性口内炎ウイルスの核タンパク質(N)、大型タンパク質(L)、リンタンパク質(P)、マトリックスタンパク質(M)、糖タンパク質(G)及び少なくとも1種のCD80細胞外ドメインFc融合タンパク質をコードする、請求項1記載のリコンビナント水疱性口内炎ウイルスであって、
CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質は、CD80の細胞外ドメインを含み、IgGのFcドメインを更に含み、そして、(i)配列番号:4を含むCD80細胞外ドメインFc融合タンパク質、(ii)シグナルペプチド配列を更に含む(i)に記載のCD80細胞外ドメインFc融合タンパク質、及び(iii)配列番号:3を含むCD80細胞外ドメインFc融合タンパク質を含む群から選択され、
リコンビナント水疱性口内炎ウイルスの糖タンパク質Gをコードする遺伝子が、リンパ球脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)の糖タンパク質GPをコードする遺伝子により置き換えられており、かつ/又は、糖タンパク質Gは、LCMVの糖タンパク質GPにより置き換えられている、
リコンビナント水疱性口内炎ウイルス。
【請求項4】
核タンパク質(N)が、配列番号:7に記載されたアミノ酸配列、又は配列番号:7と90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一の機能的変異体を含む、請求項記載のリコンビナント水疱性口内炎ウイルス。
【請求項5】
リンタンパク質(P)が、配列番号:8に記載されたアミノ酸配列、又は配列番号:8と90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一の機能的変異体を含む、請求項又は記載のリコンビナント水疱性口内炎ウイルス。
【請求項6】
大型タンパク質(L)が、配列番号:9に記載されたアミノ酸配列、又は配列番号:9と90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一の機能的変異体を含む、請求項のいずれか一項記載のリコンビナント水疱性口内炎ウイルス。
【請求項7】
マトリックスタンパク質(M)が、配列番号:10に記載されたアミノ酸配列、又は配列番号:10と90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一の機能的変異体を含む、請求項のいずれか一項記載のリコンビナント水疱性口内炎ウイルス。
【請求項8】
- 核タンパク質(N)が、配列番号:7に記載されたアミノ酸配列、又は配列番号:7と90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一の機能的変異体を含み、
- リンタンパク質(P)が、配列番号:8に記載されたアミノ酸配列、又は配列番号:8と90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一の機能的変異体を含み、
- 大型タンパク質(L)が、配列番号:9に記載されたアミノ酸配列、又は配列番号:9と90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一の機能的変異体を含み、
- マトリックスタンパク質(M)が、配列番号:10に記載されたアミノ酸配列、又は配列番号:10と90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一の機能的変異体を含む、
請求項のいずれか一項記載のリコンビナント水疱性口内炎ウイルス。
【請求項9】
複製可能である、請求項のいずれか一項記載のリコンビナント水疱性口内炎ウイルス
【請求項10】
のゲノム中で水疱性口内炎ウイルスの核タンパク質(N)、大型タンパク質(L)、リンタンパク質(P)、マトリックスタンパク質(M)、糖タンパク質(G)及び少なくとも1種のCD80細胞外ドメインFc融合タンパク質をコードする、請求項1記載のリコンビナント水疱性口内炎ウイルスであって、
CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質は、
CD80の細胞外ドメインを含み、IgGのFcドメインを更に含み、そして、
i)配列番号:4を含むCD80細胞外ドメインFc融合タンパク質、
i)シグナルペプチド配列を更に含む(i)に記載のCD80細胞外ドメインFc融合タンパク質及び
ii)配列番号:3を含むCD80細胞外ドメインFc融合タンパク質
を含む群から選択され、
水疱性口内炎ウイルスの糖タンパク質Gをコードする遺伝子は、リンパ球脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)の糖タンパク質GPをコードする遺伝子により置き換えられており、かつ/又は、糖タンパク質Gは、LCMVの糖タンパク質GPにより置き換えられており、
- 核タンパク質(N)は、配列番号:7に記載されたアミノ酸、又は配列番号:7と90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一の機能的変異体を含み、
- リンタンパク質(P)は、配列番号:8に記載されたアミノ酸、又は配列番号:8と90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一の機能的変異体を含み、
- 大型タンパク質(L)は、配列番号:9に記載されたアミノ酸、又は配列番号:9と90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一の機能的変異体を含み、
- マトリックスタンパク質(M)は、配列番号:10に記載されたアミノ酸、又は配列番号:10と90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一の機能的変異体を含む、
リコンビナント水疱性口内炎ウイルス。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項記載のリコンビナント水疱性口内炎ウイルスを含む、医薬組成物。
【請求項12】
医薬として使用するための、請求項1~10のいずれか一項記載のリコンビナント水疱性口内炎ウイルス又は請求項11記載の医薬組成物。
【請求項13】
ンの処置に使用するための、請求項1~10のいずれか一項記載のリコンビナント水疱性口内炎ウイルス又は請求項11記載の医薬組成物。
【請求項14】
ガンが、固形ガンである、請求項13記載のリコンビナント水疱性口内炎ウイルス又は医薬組成物。
【請求項15】
固形ガンが、脳ガン、子宮内膜ガン、膣ガン、肛門ガン、中咽頭扁平上皮ガン、胃ガン、胃食道接合部腺ガン、食道ガン、肝細胞ガン、膵臓腺ガン、胆管ガン、膀胱尿路上皮ガン、転移性メラノーマ、前立腺ガン、乳ガン、卵巣ガン、頭頸部扁平上皮ガン(HNSCC)、神経膠芽腫、非小細胞肺ガン、脳腫瘍、小細胞肺ガン、生殖器腫瘍、卵巣腫瘍、精巣腫瘍、内分泌腫瘍、胃腸腫瘍、膵臓腫瘍、肝臓腫瘍、腎臓腫瘍、結腸腫瘍、結腸直腸腫瘍、膀胱腫瘍、前立腺腫瘍、皮膚腫瘍、メラノーマ、呼吸器腫瘍、肺腫瘍、乳房腫瘍、頭頸部腫瘍、頭頸部扁平上皮ガン(HNSCC)及び骨腫瘍を含むリストから選択される、請求項14記載のリコンビナント水疱性口内炎ウイルス又は医薬組成物。
【請求項16】
リコンビナント水疱性口内炎ウイルス又は医薬組成物が、腫瘍内又は静脈内に投与されるべきものである、請求項1215のいずれか一項記載のリコンビナント水疱性口内炎ウイルス又は医薬組成物。
【請求項17】
リコンビナント水疱性口内炎ウイルス又は医薬組成物が、少なくとも1回腫瘍内に投与され、その後、静脈内に投与されるべきものである、請求項1216のいずれか一項記載のリコンビナント水疱性口内炎ウイルス又は医薬組成物。
【請求項18】
後続の静脈内投与が、最初の腫瘍内投与後1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、30日又は31日で与えられる、請求項17記載のリコンビナント水疱性口内炎ウイルス又は医薬組成物。
【請求項19】
請求項1~10のいずれか一項記載のリコンビナント水疱性口内炎ウイルスを含み、PD-1経路阻害剤又はSMAC模倣物を更に含む、組成物。
【請求項20】
PD-1経路阻害剤が、PD-1又はPD-L1に対するアンタゴニスト抗体である、請求項19記載の組成物。
【請求項21】
SMAC模倣物が、化合物1~26:
【表1】





及びこれらの化合物の薬学的に許容され得る塩
からなる群より選択される、請求項19記載の組成物。
【請求項22】
PD-1経路阻害剤が、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、ピジリズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、PDR-001、PD1-1、PD1-2、PD1-3、PD1-4及びPD1-5からなる群より選択されるアンタゴニストである、請求項19記載の組成物。
【請求項23】
a)請求項1~18のいずれか一項で定義されたリコンビナント水疱性口内炎ウイルス又は医薬組成物と、
b)請求項1922のいずれか一項で定義されたPD-1経路阻害剤又はSMAC模倣物と
を含む、パーツキット。
【請求項24】
PD-1経路阻害剤又はSMAC模倣物と組み合わせた、請求項1215のいずれか一項記載のリコンビナント水疱性口内炎ウイルス又は医薬組成物。
【請求項25】
リコンビナント水疱性口内炎ウイルス又は医薬組成物が、PD-1経路阻害剤又はSMAC模倣物と同時に、連続的に又は交互に投与される、請求項24記載のリコンビナント水疱性口内炎ウイルス又は医薬組成物。
【請求項26】
SMAC模倣物が、請求項21記載の化合物1~26及びこれらの化合物の薬学的に許容され得る塩からなる群より選択される、請求項24又は25記載のリコンビナント水疱性口内炎ウイルス又は医薬組成物。
【請求項27】
PD-1経路阻害剤が、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、ピジリズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、PDR-001、PD1-1、PD1-2、PD1-3、PD1-4及びPD1-5からなる群より選択される、請求項24又は25記載のリコンビナント水疱性口内炎ウイルス又は医薬組成物。
【請求項28】
リコンビナント水疱性口内炎ウイルス又は医薬組成物が、PD-1経路阻害剤又はSMAC模倣物とは異なる投与経路を介して投与される、請求項2426のいずれか一項記載のリコンビナント水疱性口内炎ウイルス又は医薬組成物。
【請求項29】
リコンビナント水疱性口内炎ウイルス又は医薬組成物が、少なくとも1回腫瘍内に投与され、PD-1経路阻害剤又はSMAC模倣物が、静脈内に投与される、請求項2426のいずれか一項記載のリコンビナント水疱性口内炎ウイルス又は医薬組成物。
【請求項30】
求項1~10のいずれか一項記載のリコンビナント水疱性口内炎ウイルスを産生する、ウイルス産生細胞。
【請求項31】
ロ細胞、HEK細胞、HEK293細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)又はベビーハムスター腎臓(BHK)細胞である、請求項30記載のウイルス産生細胞。
【請求項32】
そのRNAゲノム中で少なくとも1種のCD80細胞外ドメインFc融合タンパク質をコードするリコンビナント水疱性口内炎ウイルスであって、
CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質は、CD80の細胞外ドメインを含み、IgGのFcドメインを更に含み、
リコンビナント水疱性口内炎ウイルスのRNAゲノムは、配列番号:24と同一又は90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一のコード配列を含むか又はそれからなる、
リコンビナント水疱性口内炎ウイルス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、腫瘍溶解性ウイルスの分野に関し、特に、そのゲノム中でCD80細胞外ドメインFc融合タンパク質をコードするリコンビナントラブドウイルスに関する。本発明は、更に、ガンの処置におけるリコンビナントラブドウイルスの使用、また、このようなウイルスを製造するための方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
腫瘍溶解性ウイルスは、ガン細胞において選択的に複製し、ガン細胞を殺傷し、腫瘍内に拡散可能な新興クラスの生物学的製剤である。腫瘍溶解性ウイルスの治療可能性を増大させるように更に改善する努力により、いわゆる武装化ウイルスの開発がもたらされた。武装化ウイルスは、腫瘍処置におけるそれらの有効性を改善するために、そのゲノム中で腫瘍抗原又は免疫モデュラトリー導入遺伝子をコードする。
【0003】
多くの場合、腫瘍中のT細胞は不足しており、そのため、「免疫砂漠」-免疫系のT細胞が腫瘍に浸透して、制御不能に増殖する細胞を殺傷することができないか又は浸透しない腫瘍微小環境-として公知になったものが存在する。免疫監視を回避するために、腫瘍は、骨髄由来のサプレッサー細胞をリクルートし又はTGFβを含む因子を分泌することにより免疫サプレッション微小環境を作り出し、これは、細胞外マトリックス遺伝子の発現を誘引し、腫瘍へのT細胞浸潤を促進するのに必要なケモカイン及びサイトカインの発現をサプレッションする二重の役割を果たすと仮定されてきた(Pickup M, Novitskiy S, Moses HL. The roles of TGFbeta in the tumour microenvironment. Nat Rev Cancer 2013;13:788-99)。更に、研究から、免疫サプレッション微小環境に対応する遺伝子の高い発現を示す腫瘍は、卵巣ガン及び結腸直腸ガンを含む多くのタイプのガンにわたって不良なアウトカムに関連することが見出された(Calon A, Lonardo E, Berenguer-Llergo A, Espinet E, Hernando-Momblona X, Iglesias M, et al. Stromal gene expression defines poor-prognosis subtypes in colorectal cancer. Nat Genet 2015;47:320-9;Ryner L, Guan Y, Firestein R, Xiao Y, Choi Y, Rabe C, et al. Upregulation of periostin and reactive stroma is associated with primary chemoresistance and predicts clinical outcomes in epithelial ovarian cancer. Clin Cancer Res 2015;21:2941-51;Tothill RW, Tinker AV, George J, Brown R, Fox SB, Lade S, et al. Novel molecular subtypes of serous and endometrioid ovarian cancer have been linked to clinical outcome. Clin Cancer Res 2008;14:5198-208)。適応免疫応答の特徴は、特異性及び記憶である。細胞応答は、T細胞により媒介される。T細胞は、抗原提示細胞(APC)上の主要組織適合複合体(MHC)分子との複合体状にあるペプチド抗原を認識する細胞表面T細胞レセプター(TCR)を発現する。しかしながら、同族TCRとMHC-ペプチド複合体単独との相互作用(シグナル1)は、最適なT細胞活性化を誘発しない。シグナル1に加えて、それらの同族リガンドへの正及び負の共刺激レセプターの結合は、T細胞活性化をモデュレーションする。この複雑なシグナル伝達ネットワークは、一方では、最適なT細胞活性化を提供するが、他方では、生理学的条件下でのT細胞の異常な活性化が防止される。CD28(シグナル2)は、T細胞上の主な正の共刺激レセプターである。シグナル2(B7.1(CD80)又はB7.2(CD86)とのCD28の相互作用)が、例えば、TAA提示腫瘍細胞上で欠如している場合、TAA特異的T細胞との慢性相互作用は、後者を非応答性(アネルギー性)にする:T細胞は、TCRがTAAと相互作用する場合でさえも、シグナルに対して不応性になる。この状況は、ガン患者において、特に、進行した疾患の慢性状況において説明されている。一方、強力なT細胞共刺激により、後期転移ガン患者においてTAA特異的T細胞が再活性化される場合がある。
【0004】
1つの近年のアプローチから、そのゲノム中でカーゴとしてIFN-βタンパク質をコードする腫瘍溶解性ウイルスが予見される。更なるアプローチにおいて、腫瘍抗原MAGE-A3の発現が、臨床において探索されている。適切かつ有効なカーゴを特定するのに加えて、ウイルス骨格からの更なるカーゴの発現は、常に、抗腫瘍効力だけでなく、抗ウイルス免疫も増強するであろうリスクを有する。カーゴは、治療用カーゴの発現により得られる利益が腫瘍溶解能の喪失により打ち消される程度まで、ウイルスの腫瘍溶解能を制限しないように注意しなければならない。このため、当技術分野において、有効なガン処置に使用することができる、更に改善された武装化腫瘍溶解性ウイルスが必要とされている。当技術分野において、免疫サプレッション腫瘍微小環境へのT細胞及び/又は樹状細胞の浸潤を選択的に改善することが、更に必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明の概要
本発明は、そのゲノム中でCD80細胞外ドメインFc融合タンパク質又はその機能的変異体、好ましくは、ヒトCD80細胞外ドメインをコードするリコンビナントラブドウイルス、例えば、水疱性口内炎ウイルスを提供することにより、上記必要性に対処する。
【0006】
また、特定の態様に関する任意の実施態様をその特定の態様に関する別の実施態様と組み合わせることもでき、複数の層においても、その特定の態様に対する幾つかの実施態様を含む組み合わせであることができると理解されたい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様では、本発明は、そのゲノム中で少なくとも1種のCD80細胞外ドメインFc融合タンパク質又はその機能的変異体をコードするリコンビナントラブドウイルスであって、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質は、CD80の細胞外ドメインを含み、IgGのFcドメインを更に含む、リコンビナントラブドウイルスに関する。
【0008】
第1の態様に関する一実施態様では、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質又はその機能的変異体は、(i)IgG1のFcドメインに融合したCD80細胞外ドメインを含む、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質、(ii)IgG1のFcドメインに融合したCD80細胞外ドメインを含む、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質であって、CD80細胞外ドメインが配列番号:1を含むか若しくはこれからなるか又は配列番号:1と少なくとも80%の同一性を有する、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質、(iii)IgG1のFcドメインに融合したCD80細胞外ドメインを含む、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質であって、Fcドメインが配列番号:2を含むか若しくはこれからなるか又は配列番号:2と少なくとも80%の同一性を有する、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質、(iv)IgG1のFcドメインに融合したCD80細胞外ドメインを含む、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質であって、CD80細胞外ドメインが配列番号:1を含むか若しくはこれからなるか又は配列番号:1と少なくとも80%の同一性を有し、Fcドメインが配列番号:2を含むか若しくはこれからなるか又は配列番号:2と少なくとも80%の同一性を有する、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質、(v)IgG1のFcドメインに融合したCD80細胞外ドメインを含む、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質であって、CD80細胞外ドメインが配列番号:4のアミノ酸1~207からなるか又は配列番号:4のアミノ酸1~207と少なくとも80%の同一性を有し、Fcドメインが配列番号:4のアミノ酸208~433からなるか又は配列番号:4のアミノ酸208~433と少なくとも80%の同一性を有する、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質、(vi)シグナルペプチド配列を更に含む、(i)~(v)のいずれかに記載のCD80細胞外ドメインFc融合タンパク質、及び(vii)配列番号:3を含むか又は配列番号:3と少なくとも80%の同一性を有する、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質、を含む群から選択される。
【0009】
第1の態様に関する一実施態様では、リコンビナントラブドウイルスは、ベシクロウイルスである。
【0010】
第1の態様に関する一実施態様では、ベシクロウイルスは、水疱性口内炎アラゴアウイルス(VSAV)、カラハスウイルス(CJSV)、シャンジプラウイルス(CHPV)、コカルウイルス(COCV)、水疱性口内炎インディアナウイルス(VSIV)、イスファハンウイルス(ISFV)、マラバウイルス(MARAV)、水疱性口内炎ニュージャージーウイルス(VSNJV)又はピリウイルス(PIRYV)、好ましくは、水疱性口内炎インディアナウイルス(VSIV)又は好ましくは、水疱性口内炎ニュージャージーウイルス(VSNJV)を含む群から選択される。
【0011】
第1の態様に関する一実施態様では、リコンビナントラブドウイルスは、複製可能である。
【0012】
第1の態様に関する一実施態様では、CD80細胞外ドメインは、ヒトCD80細胞外ドメインである。
【0013】
第1の態様に関する一実施態様では、リコンビナントラブドウイルスは、糖タンパク質Gをコードする機能的遺伝子を欠いており、かつ/若しくは、機能的糖タンパク質Gを欠いている、又は、糖タンパク質Gをコードする遺伝子は、別のウイルスの糖タンパク質GPをコードする遺伝子により置き換えられており、かつ/若しくは、糖タンパク質Gは、別のウイルスの糖タンパク質GPにより置き換えられている、又は、糖タンパク質Gをコードする遺伝子は、アレナウイルスの糖タンパク質GPをコードする遺伝子により置き換えられており、かつ/若しくは、糖タンパク質Gは、アレナウイルスの糖タンパク質GPにより置き換えられている。更に好ましい実施態様では、糖タンパク質Gをコードする遺伝子は、ダンデノングウイルス若しくはモペイアウイルスの糖タンパク質GPをコードする遺伝子により置き換えられており、かつ/又は、糖タンパク質Gは、ダンデノングウイルス若しくはモペイアウイルスの糖タンパク質GPにより置き換えられている。糖タンパク質Gをコードする遺伝子が、リンパ球脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)の糖タンパク質GPをコードする遺伝子により置き換えられており、かつ/又は、糖タンパク質Gが、LCMVの糖タンパク質GPにより置き換えられているのが更により好ましい。
【0014】
第1の態様に関する好ましい実施態様では、本発明は、そのゲノム中で少なくとも1種のCD80細胞外ドメインFc融合タンパク質又はその機能的変異体をコードするリコンビナント水疱性口内炎ウイルスであって、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質がCD80の細胞外ドメインを含み、IgGのFcドメインを更に含む、リコンビナント水疱性口内炎ウイルスを提供する。関連する実施態様では、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質は、(i)IgG1のFcドメインに融合したCD80細胞外ドメインを含む、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質、(ii)IgG1のFcドメインに融合したCD80細胞外ドメインを含む、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質であって、CD80細胞外ドメインが配列番号:1を含むか若しくはこれからなるか又は配列番号:1と少なくとも80%の同一性を有する、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質、(iii)IgG1のFcドメインに融合したCD80細胞外ドメインを含む、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質であって、Fcドメインが配列番号:2を含むか若しくはこれからなるか又は配列番号:2と少なくとも80%の同一性を有する、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質、(iv)IgG1のFcドメインに融合したCD80細胞外ドメインを含む、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質であって、CD80細胞外ドメインが配列番号:1を含むか若しくはこれからなるか又は配列番号:1と少なくとも80%の同一性を有し、Fcドメインが配列番号:2を含むか若しくはこれからなるか又は配列番号:2と少なくとも80%の同一性を有する、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質、(v)IgG1のFcドメインに融合したCD80細胞外ドメインを含む、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質であって、CD80細胞外ドメインが配列番号:4のアミノ酸1~207からなるか又は配列番号:4のアミノ酸1~207と少なくとも80%の同一性を有し、Fcドメインが配列番号:4のアミノ酸208~433からなるか又は配列番号:4のアミノ酸208~433と少なくとも80%の同一性を有する、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質、(vi)シグナルペプチド配列を更に含む、(i)~(v)のいずれかに記載のCD80細胞外ドメインFc融合タンパク質、又は(vii)配列番号:3を含むか又は配列番号:3と少なくとも80%の同一性を有する、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質、を含む群から選択され、ここで、リコンビナント水疱性口内炎ウイルスの糖タンパク質Gをコードする遺伝子は、リンパ球脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)の糖タンパク質GPをコードする遺伝子により置き換えられており、かつ/又は、糖タンパク質Gは、LCMVの糖タンパク質GPにより置き換えられている。
【0015】
第2の態様では、本発明は、そのゲノム中で少なくとも水疱性口内炎ウイルスの核タンパク質(N)、大型タンパク質(L)、リンタンパク質(P)、マトリックスタンパク質(M)、糖タンパク質(G)及び少なくとも1種のCD80細胞外ドメインFc融合タンパク質又はその機能的変異体をコードするリコンビナント水疱性口内炎ウイルスであって、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質は、CD80の細胞外ドメインを含み、IgGのFcドメインを更に含む、リコンビナント水疱性口内炎ウイルスに関する。
【0016】
第2の態様に関する一実施態様では、核タンパク質(N)は、配列番号:7に記載されたアミノ酸配列、又は配列番号:7と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一の機能的変異体を含む。
【0017】
第2の態様に関する一実施態様では、リンタンパク質(P)は、配列番号:8に記載されたアミノ酸配列、又は配列番号:8と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一の機能的変異体を含む。
【0018】
第2の態様に関する一実施態様では、大型タンパク質(L)は、配列番号:9に記載されたアミノ酸配列、又は配列番号:9と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一の機能的変異体を含む。
【0019】
第2の態様に関する一実施態様では、マトリックスタンパク質(M)は、配列番号:10に記載されたアミノ酸配列、又は配列番号:10と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一の機能的変異体を含む。
【0020】
第2の態様に関する好ましい実施態様では、核タンパク質(N)は、配列番号:7に記載されたアミノ酸配列、又は配列番号:7と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一の機能的変異体を含み、リンタンパク質(P)は、配列番号:8に記載されたアミノ酸配列、又は配列番号:8と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一の機能的変異体を含み、大型タンパク質(L)は、配列番号:9に記載されたアミノ酸配列、又は配列番号:9と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一の機能的変異体を含み、マトリックスタンパク質(M)は、配列番号:10に記載されたアミノ酸配列、又は配列番号:10と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一の機能的変異体を含む。
【0021】
第2の態様に関する一実施態様では、リコンビナント水疱性口内炎ウイルスは、複製可能である。
【0022】
第2の態様に関する一実施態様では、リコンビナント水疱性口内炎ウイルスは、糖タンパク質Gをコードする機能的遺伝子を欠いており、かつ/若しくは、機能的糖タンパク質Gを欠いている、又は、糖タンパク質Gをコードする遺伝子は、別のウイルスの糖タンパク質GPをコードする遺伝子により置き換えられており、かつ/若しくは、糖タンパク質Gは、別のウイルスの糖タンパク質GPにより置き換えられている、又は、糖タンパク質Gをコードする遺伝子は、リンパ球脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)の糖タンパク質GPをコードする遺伝子により置き換えられており、かつ/若しくは、糖タンパク質Gは、LCMVの糖タンパク質GPにより置き換えられている。
【0023】
第2の態様に関する一実施態様では、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質は、(i)IgG1のFcドメインに融合したCD80細胞外ドメインを含む、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質、(ii)IgG1のFcドメインに融合したCD80細胞外ドメインを含む、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質であって、CD80細胞外ドメインが配列番号:1を含むか若しくはこれからなるか又は配列番号:1と少なくとも80%の同一性を有する、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質、(iii)IgG1のFcドメインに融合したCD80細胞外ドメインを含む、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質であって、Fcドメインが配列番号:2を含むか若しくはこれからなるか又は配列番号:2と少なくとも80%の同一性を有する、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質、(iv)IgG1のFcドメインに融合したCD80細胞外ドメインを含む、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質であって、CD80細胞外ドメインが配列番号:1を含むか若しくはこれからなるか又は配列番号:1と少なくとも80%の同一性を有し、Fcドメインが配列番号:2を含むか若しくはこれからなるか又は配列番号:2と少なくとも80%の同一性を有する、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質、(v)IgG1のFcドメインに融合したCD80細胞外ドメインを含む、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質であって、CD80細胞外ドメインが配列番号:4のアミノ酸1~207からなるか又は配列番号:4のアミノ酸1~207と少なくとも80%の同一性を有し、Fcドメインが配列番号:4のアミノ酸208~433からなるか又は配列番号:4のアミノ酸208~433と少なくとも80%の同一性を有する、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質、(vi)シグナルペプチド配列を更に含む、(i)~(v)のいずれかに記載のCD80細胞外ドメインFc融合タンパク質、又は(vii)配列番号:3を含むか又は配列番号:3と少なくとも80%の同一性を有する、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質、を含む群から選択される。
【0024】
第2の態様に関する好ましい実施態様では、本発明は、そのゲノム中で水疱性口内炎ウイルスの核タンパク質(N)、大型タンパク質(L)、リンタンパク質(P)、マトリックスタンパク質(M)、糖タンパク質(G)及び少なくとも1種のCD80細胞外ドメインFc融合タンパク質又はその機能的変異体をコードするリコンビナント水疱性口内炎ウイルスであって、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質は、CD80の細胞外ドメインを含み、IgGのFcドメインを更に含み、(i)IgG1のFcドメインに融合したCD80細胞外ドメインを含む、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質、(ii)IgG1のFcドメインに融合したCD80細胞外ドメインを含む、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質であって、CD80細胞外ドメインが配列番号:1を含むか若しくはこれからなるか又は配列番号:1と少なくとも80%の同一性を有する、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質、(iii)IgG1のFcドメインに融合したCD80細胞外ドメインを含む、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質であって、Fcドメインが配列番号:2を含むか若しくはこれからなるか又は配列番号:2と少なくとも80%の同一性を有する、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質、(iv)IgG1のFcドメインに融合したCD80細胞外ドメインを含む、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質であって、CD80細胞外ドメインが配列番号:1を含むか若しくはこれからなるか又は配列番号:1と少なくとも80%の同一性を有し、Fcドメインが配列番号:2を含むか若しくはこれからなるか又は配列番号:2と少なくとも80%の同一性を有する、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質、(v)IgG1のFcドメインに融合したCD80細胞外ドメインを含む、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質であって、CD80細胞外ドメインが配列番号:4のアミノ酸1~207からなるか又は配列番号:4のアミノ酸1~207と少なくとも80%の同一性を有し、Fcドメインが配列番号:4のアミノ酸208~433からなるか又は配列番号:4のアミノ酸208~433と少なくとも80%の同一性を有する、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質、(vi)シグナルペプチド配列を更に含む、(i)~(v)のいずれかに記載のCD80細胞外ドメインFc融合タンパク質、又は(vii)配列番号:3を含むか又は配列番号:3と少なくとも80%の同一性を有する、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質を含む群から選択され、ここで、水疱性口内炎ウイルスの糖タンパク質Gをコードする遺伝子は、リンパ球脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)の糖タンパク質GPをコードする遺伝子により置き換えられており、かつ/又は、糖タンパク質Gは、LCMVの糖タンパク質GPにより置き換えられており、ここで、核タンパク質(N)は、配列番号:7に記載されたアミノ酸、又は配列番号:7と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一の機能的変異体を含み、リンタンパク質(P)は、配列番号:8に記載されたアミノ酸、又は配列番号:8と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一の機能的変異体を含み、大型タンパク質(L)は、配列番号:9に記載されたアミノ酸、又は配列番号:9と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一の機能的変異体を含み、マトリックスタンパク質(M)は、配列番号:10に記載されたアミノ酸、又は配列番号:10と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一の機能的変異体を含む。
【0025】
第3の態様では、本発明は、第1の態様のリコンビナントラブドウイルス若しくはその実施態様のいずれか又は第2の態様のリコンビナント水疱性口内炎ウイルス若しくはその実施態様のいずれかを含むことを特徴とする、医薬組成物を提供する。
【0026】
第4の態様では、本発明は、医薬として使用するための、第1の態様のリコンビナントラブドウイルス若しくはその実施態様のいずれか又は第2の態様のリコンビナント水疱性口内炎ウイルス若しくはその実施態様のいずれか又は第3の態様の医薬組成物若しくはその実施態様のいずれかを提供する。
【0027】
第4の態様に関する一実施態様では、本発明は、ガン、好ましくは、固形ガンの処置に使用するための、リコンビナントラブドウイルス、リコンビナント水疱性口内炎ウイルス又は医薬組成物を提供する。好ましい実施態様では、固形ガンは、生殖器腫瘍、卵巣腫瘍、膵臓腫瘍、精巣腫瘍、内分泌腫瘍、胃腸腫瘍、肝臓腫瘍、腎臓腫瘍、結腸腫瘍、結腸直腸腫瘍、膀胱腫瘍、前立腺腫瘍、皮膚腫瘍、メラノーマ、呼吸器腫瘍、肺腫瘍、乳房腫瘍、頭頸部腫瘍、頭頸部扁平上皮ガン(HNSCC)及び骨腫瘍を含むリストから選択される。
【0028】
第4の態様に関する一実施態様では、リコンビナントラブドウイルス、リコンビナント水疱性口内炎ウイルス又は医薬組成物は、腫瘍内又は静脈内に投与されるべきものである。別の関連する実施態様では、リコンビナントラブドウイルス、リコンビナント水疱性口内炎ウイルス又は医薬組成物は、少なくとも1回腫瘍内に投与され、その後、静脈内に投与されるべきものである。更に関連する実施態様では、リコンビナントラブドウイルス、リコンビナント水疱性口内炎ウイルス又は医薬組成物後続の静脈内投与は、最初の腫瘍内投与後1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、30日又は31日で与えられる。
【0029】
第5の態様では、本発明は、第1の態様のリコンビナントラブドウイルス若しくはその実施態様のいずれか又は第2の態様のリコンビナント水疱性口内炎ウイルス若しくはその実施態様のいずれかを含み、阻害剤を更に含み、ここで、該阻害剤がPD-1経路阻害剤又はSMAC模倣物である、組成物を提供する。
【0030】
第5の態様に関する一実施態様では、PD-1経路阻害剤は、PD-1又はPD-L1に対するアンタゴニスト抗体である。更に関連する実施態様では、SMAC模倣物は、表2からの化合物1~26又はこれらの化合物のうちの1つの薬学的に許容され得る塩のいずれかからなる群より選択される。別の関連する実施態様では、PD-1経路阻害剤は、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、ピジリズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、PDR-001、PD1-1、PD1-2、PD1-3、PD1-4及びPD1-5(表1に示す)からなる群より選択されるアンタゴニストである。最も好ましい実施態様では、PD-1経路阻害剤は、BI-754091である。
【0031】
第6の態様では、本発明は、第1~第3の態様のいずれかで定義されたリコンビナントラブドウイルス、リコンビナント水疱性口内炎ウイルス若しくは医薬組成物又はそれらの実施態様のいずれかと、第5の態様に関する実施態様のいずれかで定義されたPD-1経路阻害剤又はSMAC模倣物と、を含む、パーツキットを提供する。
【0032】
第7の態様では、本発明は、a)第1の態様のリコンビナントラブドウイルス若しくはその実施態様のいずれか又は第2の態様のリコンビナント水疱性口内炎ウイルス若しくはその実施態様のいずれか又は第3の態様の医薬組成物若しくはその実施態様のいずれかと、b)PD-1経路阻害剤又はSMAC模倣物とを含む、併用処置を提供する。第7の態様に関する一実施態様では、(a)と(b)とを同時に、連続的に又は交互に投与することができる。関連する実施態様では、a)とb)とは、異なる投与経路を介して投与される。更に関連する実施態様では、a)は、腫瘍内に投与され、b)は、静脈内に投与される。
【0033】
第7の態様に関する一実施態様では、PD-1経路阻害剤は、PD-1又はPD-L1に対するアンタゴニスト抗体である。関連する実施態様では、PD-1経路阻害剤は、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、ピジリズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、PDR-001、PD1-1、PD1-2、PD1-3、PD1-4及びPD1-5(表1を参照のこと)からなる群より選択される。更に関連する実施態様では、SMAC模倣物は、表2の化合物1~26又はこれらの化合物のうちの1つの薬学的に許容され得る塩のいずれか1つからなる群より選択される。
【0034】
第8の態様では、本発明は、第1の態様のリコンビナントラブドウイルス若しくはその実施態様のいずれか又は第2の態様のリコンビナント水疱性口内炎ウイルス若しくはその実施態様のいずれかを製造することを特徴とする、ウイルス産生細胞を提供する。
【0035】
第8の態様に関する一実施態様では、ウイルス産生細胞は、ベロ細胞、HEK細胞、HEK293細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)又はベビーハムスター腎臓(BHK)細胞である。
【0036】
第9の態様では、本発明は、細胞培養物中でリコンビナントラブドウイルスを製造する方法であって、
(i)ホスト細胞をリコンビナントラブドウイルス、好ましくは、水疱性口内炎ウイルスに感染させ、
(ii)リコンビナントラブドウイルスの複製を可能にする条件下で、ホスト細胞を培養し、
(iii)リコンビナントラブドウイルスを細胞培養物から収集し、
(iv)場合により、ウイルス収集物を酵素、好ましくは、ベンゾナーゼで処理し、
(v)カチオン交換モノリス膜吸着材又は樹脂にロードすることにより、ウイルス収集物を捕捉し、続けて、溶出し、
(vi)工程(v)の溶出液をサイズ排除、多峰性サイズ排除/イオン交換又は接線流ろ過に供することにより、ラブドウイルスを洗練し、
(vii)洗練されたラブドウイルスを限外ろ過/透析ろ過により、バッファー交換し、
(viii)ラブドウイルスを無菌ろ過する、方法を提供する。
【0037】
第9の態様に関する一実施態様では、ホスト細胞は、HEK293細胞である。
【0038】
第9の態様に関する一実施態様では、ホスト細胞が、懸濁液中で培養される。
【0039】
第9の態様に関する一実施態様では、リコンビナントラブドウイルスが、医薬組成物に製剤化される。好ましい実施態様では、第1の態様のリコンビナントラブドウイルス若しくはその実施態様のいずれか又は第2の態様のリコンビナント水疱性口内炎ウイルス若しくはその実施態様のいずれかが、医薬組成物に製剤化される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1図1:抗原提示細胞(APC)とT細胞との間の免疫学的シナプス及び成分の摸試気図。CD80は、T細胞活性化中の重要な共刺激分子である。効率的なT細胞刺激には、免疫学的シナプス内で2つの収束分子シグナルが必要である。シグナル1:抗原特異的(TCR:MHC/ペプチド)及びシグナル2:抗原非依存性(CD28:CD80)。
図2図2:CD80細胞外ドメイン(ECD)Fc融合タンパク質(二価)のカートン。融合タンパク質は、ウイルス感染後にトランスダクションされた腫瘍細胞中で発現される。2つのCD80細胞外ドメインFc融合単量体同士は、各単量体中のシステイン残基間に形成されるジスルフィド結合により共有結合し、それにより、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質二量体を形成する。
図3図3A図3B:親ウイルスVSV-GPに対するVSV-GP-CD80-Fcの複製(A)及び生存率(B)を比較した。HEK293F細胞をVSV-GP又はVSV-GP-CD80-Fcのいずれかに感染させた。Y軸は、% 細胞生存率又は1ml当たりのゲノムコピー数を示す。細胞生存率及び複製の両方を感染後48時間までモニターした(x軸:感染後の時間)。
図4図4:VSV-GP又はVSV-GP-CD80-Fcに、それぞれ1の多重感染度(MOI 1)で感染させたHEK293細胞からの組織培養上清中のELISAによる可溶性CD80-Fc検出。CD80-Fc発現(y軸 μg/ml)を感染後の異なる時点で48時間まで(x軸)測定した。
図5A図5A図5B:CT26.CL25-IFNARKO腫瘍モデル(i.v.)を使用して親ウイルスVSV-GPと比較した、VSV-GP-CD80-Fcで処置されたマウスのin vivoでの有効性(A)及び体重経過(B)。(A)マウスを0日目及び3日目に、2×10 TCID50の低ウイルス用量で処置した。X軸は、時間(日)を示し、y軸は、生存したマウスの割合を示す。
図5B】(B)図6Aに示されたのと同じ処置マウスの体重経過を示す。X軸は、時間(日)を示し、y軸は、体重(g)を示す。
図6図6A図6C:B16-F1-OVA腫瘍モデル(i.t.)を使用して、0日目及び3日目に10 TCID50のVSV-GP(B)のウイルス用量、同じウイルス用量のVSV-GP-CD80-Fc(C)又はPBS(A)で処置されたマウスにおける、親ウイルスVSV-GPと比較したVSV-GP-CD80-Fcのin vivoでの有効性。X軸は、処置後の日数(日)を示し、y軸は、腫瘍体積(cm3)を示す。
図7図7A図7B:EMT-6腫瘍モデル(i.t.)を使用して、0日目及び3日目に2×10TCID50の低ウイルス用量で処置されたマウス(B)における、親ウイルスVSV-GP(A)と比較したVSV-GP-CD80-Fcのin vivoでの有効性。X軸は、置後の日数(日)を示し、y軸は、腫瘍体積(cm3)を示す。点線は、媒体で処置されたマウスを表わし、実線は、ウイルスで処置されたマウスを表わす。
図8図8:感染後3日目及び7日目にqPCRを使用したウイルスゲノムコピー定量化により決定された、処置マウスから収集された感染CT26.CL25-IFNARKO腫瘍内のVSV-GP-CD80-Fc複製。マウスをPBS又は10TCID50のVSV-GP-CD80-Fcのいずれかで処置し、腫瘍当たりのウイルスゲノムコピー数(y軸)を3日後又は7日間後のぞれぞれで決定した。
図9図9:処置マウスから収集された対照、VSV-GP又はVSV-GP-CD80-Fc感染LLC-IFNARKO腫瘍におけるVSV-GP Nタンパク質及びCD80-Fc転写物のNanoStringベースの測定。マウスを対照として使用するか又は10TCID50のVSV-GP若しくはVSV-GP-CD80-Fcで処置するかのいずれかをし、ウイルスNタンパク質又はCD80-Fcの相対発現(y軸)を3日間後に決定した。
図10図10:処置マウスから収集された対照、VSV-GP又はVSV-GP-CD80-Fc感染LLC-IFNARKO腫瘍におけるVSV-GP Nタンパク質及びCD80-Fcカーゴ(タンパク質)のIHCベースの検出。マウスを図9におけるように処置し、IHCを、処置後3日目に標準的なプロトコールを使用して行った。
図11A図11A図11C:腫瘍におけるCD80-Fc作用様式(MoA)を示すカートン。効率的なT細胞共刺激を提供する成熟した活性化DCを伴う炎症性腫瘍(A)。
図11B】DCを欠きかつ/又は未成熟寛容原性DCサブセットが優勢な非炎症性腫瘍(B)。
図11C】DC又は未成熟寛容原性DCサブセットの非存在により、不良なT細胞免疫、クローン性アネルギー、T細胞機能不全及び細胞死がもたらされる。強力なT細胞共刺激の欠如を補償することにより非炎症性腫瘍を炎症性腫瘍に変換するCD80-Fc(C)。
図12図12:リコンビナントCD80-FcによるT細胞共刺激を評価するために、ヒト混合白血球培養物(2名の遺伝的に異なる個体由来のT細胞及び未成熟樹状細胞を共培養し、同種異系T細胞刺激をもたらす)を使用した。この目的で、培養物を、IFNγ分泌を読み取りとして使用して、漸増量のリコンビナントCD80-Fcタンパク質で刺激した。
図13A図13A図13D:ヒト混合白血球培養物(2名の遺伝的に異なる個体由来のT細胞及び単球を共培養する)を、IFNγ分泌を読み取りとして使用して、FcγR遮断剤を添加して又は添加せずに(かつヒト血清の非存在下で)、コンビナントCD80-Fcタンパク質(10μg/ml)で刺激した。種々の部分図(A~D)に、異なるドナーペアを示す。
図13B】種々の部分図(A~D)に、異なるドナーペアを示す。
図13C】種々の部分図(A~D)に、異なるドナーペアを示す。
図13D】種々の部分図(A~D)に、異なるドナーペアを示す。
図14図14A図14F:ヒトPBMC培養物を、低用量の抗CD3の有無及び漸増濃度のリコンビナントCD80-Fcタンパク質(F(ab)2(A、D)、Fc=IgG4(B、E)又はFc=IgG1(C、F))により刺激し、読み取りとしてIFNγ(A~C)又はIL2(D~F)分泌を測定した。読み取りを上清の標準的なELISAにより検出した。
図15図15:感染後7日目の対照又はVSV-GP感染LLC1-IFNARKO腫瘍におけるFcγRのNanoStringベースの測定。マウスを未処置のまま又は10 TCID50のVSV-GPのウイルス用量で感染させるかのいずれかをした。X軸は、異なるFcγR(1、2b、3又は4)についての測定値を示し、Y軸は、7日後の相対発現を示す。
図16-1】図16A図16C:VSV-GP-mCD80-Fc対VSV-GPによる腫瘍特異的T細胞誘引の改善を、ELISPOT及び四量体染色を使用して、CT26.CL25-IFNARKO腫瘍保有マウスにおいて決定した。gp70特異的α-腫瘍-T細胞は、VSV-GP-mCD80-Fc対VSV-GP処置マウスの脾臓において増加する。白の記号は、i.v.処置を表わす。黒の記号は、i.v./i.t.処置を表わす。(A)ELISPOTによる脾臓からの又は(B)Dextramerによる血液からのgp70特異的T細胞の検出。
図16-2】(C)実験概要。
図17図17:発光に基づく読み出し:共培養Jurkat PD-1レポーター細胞及びCHO-K1-α-CD3/-PDL1。抗PDL1抗体アベルマブとは対照的に、CD80-Fcは、Jurkatレポーター細胞系統のPD1:PDL1媒介性サプレッションを妨げることができない。
図18図18A図18B:レポーター細胞アッセイ:THP-1-PDL1細胞(FcγRを発現する)と共培養されたJurkat-PD1(ルシフェラーゼレポーター細胞)。T細胞活性化をこの系においてCD33×CD3 BiTE(10nM)により誘発する。(A)示された濃度での示された試薬(抗PD1=ペンブロリズマブ;抗Dig=アイソタイプ対照及びリコンビナントCD80-Fc)による処理。(B)抗PD1(10nM)及び漸増濃度のリコンビナントCD80-Fcにより、個々の化合物の活性を超えてJurkatT細胞活性化が改善される。
図19図19A図19C:CT26.CL25-IFNARKO腫瘍モデル(i.v.)を使用して、VSV-GP-muCD80-Fc、親ウイルスVSV-GP及びリコンビナントマウスCD80-Fcで処置されたマウスのin vivoでの有効性(A)、腫瘍成長曲線(B)及び体重変化(C)。(A)マウスを0日目及び3日目に1×10TCID50のウイルス用量と、0日目、3日目及び6日目に1mg/kg リコンビナントマウスCD80-Fcとのぞれぞれで処置した。x軸は、時間(日)を示し、y軸は、生存したマウスの割合を示す。(B)図19Aにおけるのと同じ処置マウスの経時的な平均腫瘍体積を示す。x軸は、時間(処置開始後の日数)を示し、y軸は、腫瘍体積(mm3)を示す。データは、群の大きさの70%に達する(70% LOCF)まで、最後の観察が繰り越された群の平均を示す。(C)図19Aにおけるのと同じ処置マウスの体重変化を示す。x軸は、時間(治療開始後の日数)を示し、y軸は、処置開始時の初期体重と比較した体重変化(%)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
発明の詳細な説明
下記詳細な説明では、本発明の完全な理解を提供するために、多数の具体的な詳細が記載される。ただし、主題の技術をこれらの具体的な詳細のうちの幾つかがなくても実施することができることは、当業者には明らかであろう。他の例では、本発明を不明瞭にしないように、周知の構造及び技術は詳細に示されていない。見出しは、読解を助けるために単に便宜上含まれており、本発明を特定の態様又は実施態様に限定すると理解されるべきではない。
【0042】
ラブドウイルス
ラブドウイルス科は、約10~16kbのネガティブセンス一本鎖RNAゲノムを有する18属及び134種を含む(Walke et al., ICTV Virus Taxonomy Profile: Rhabdoviridae, Journal of General Virology, 99:447-448 (2018))。
【0043】
ラブドウイルス科のメンバーの特徴的な特徴は、下記の1つ以上を含む。マトリックス層及び脂質エンベロープにより取り囲まれた螺旋ヌクレオカプシドから構成される、長さ100~430nm及び直径45~100nmの弾丸形状又は桿状粒子である。ここで、一部のラブドウイルスは、非エンベロープ繊維状ウイルスを有する。10.8~16.1kbのネガティブセンスの一本鎖RNAは、ほとんどがセグメント化されていない。構造タンパク質である核タンパク質(N)、大型タンパク質(L)、リンタンパク質(P)、マトリックスタンパク質(M)及び糖タンパク質(G)をコードする少なくとも5つの遺伝子をコードするゲノム。
【0044】
本明細書で使用する場合、ラブドウイルスは、アルメンドラウイルス(almendravirus)、キュリオウイルス(curiovirus)、サイトラブドウイルス、ジコールハウイルス(dichorhavirus)、エフェメロウイルス、ハパウイルス(Hapavirus)、レダンテウイルス(ledantevirus)、リッサウイルス、ノビラドウイルス、ヌクレオラブドウイルス、ペラブドウイルス(perhabdovirus)、シグマウイルス、スプリビウイルス、スリプウイルス(sripuvirus)、チブロウイルス、ツパウイルス(tupavirus)、バリコサウイルス又はベシクロウイルスの属に属する場合がある。
【0045】
本明細書で言及された属の中で、ラブドウイルスは、列記された種のいずれかに属する場合がある。アルメンドラウイルスの属は、アルボレタムアルメンドラウイルス、バルサアルメンドラウイルス、クーツベイ(Coot Bay)アルメンドラウイルス、プエルトアルメンドラスアルメンドラウイルス、リオチコアルメンドラウイルスを含む。キュリオウイルスの属は、クイリノポリスキュリオウイルス、イリリキュリオウイルス、イタカイウナスキュリオウイルス、ロシャンボーキュリオウイルスを含む。サイトラブドウイルスの属は、アルファルファ萎縮サイトラブドウイルス、オオムギ黄変萎縮モザイクサイトラブドウイルス、ブロッコリー壊死性黄変サイトラブドウイルス、コロカシアボボーン病(bobone disease)関連サイトラブドウイルス、Festuca葉条斑サイトラブドウイルス、レタス壊死性黄変サイトラブドウイルス、レタス黄変斑サイトラブドウイルス、北地ムギモザイクサイトラブドウイルス、ノゲシサイトラブドウイルス1、イチゴクリンクルサイトラブドウイルス、アメリカコムギ縞モザイクサイトラブドウイルスを含む。ジコールハウイルスの属は、コーヒーリングスポットジコールハウイルス、ラン壊疽斑紋ジコールハウイルスを含む。エフェメロウイルスの属は、アドレードリバーエフェメロウイルス、ベリーマエフェメロウイルス、ウシ流行熱エフェメロウイルス、キンベリーエフェメロウイルス、クールピニャエフェメロウイルス、コトンカンエフェメロウイルス、オボジアンエフェメロウイルス、ヤタエフェメロウイルスを含む。ハパウイルスの属は、フランダースハパウイルス、グレイロッジハパウイルス、ハートパークハパウイルス、ジョインジャカカハパウイルス、カメセハパウイルス、ラジョヤハパウイルス、ランドジアハパウイルス、マニトバハパウイルス、マルコハパウイルス、モスケイロハパウイルス、モスリルハパウイルス、Ngainganハパウイルス、オルドリバーハパウイルス、パリークリークハパウイルス、ウォンガベルハパウイルスを含む。レダンテウイルスの属は、バウアーダンテウイルス、フィキリニレダンテウイルス、フクオカレダンテウイルス、Kanyawaraレダンテウイルス、カーンキャニオンレダンテウイルス、Keuralibaレダンテウイルス、コレンテレダンテウイルス、クマシレダンテウイルス、ルダンテクレダンテウイルス、マウントエルゴンバットレダンテウイルス、ニシムロレダンテウイルス、Nkolbissonレダンテウイルス、オイタレダンテウイルス、ウハンレダンテウイルス、ヨンジアレダンテウイルスを含む。リッサウイルスの属は、アラバンリッサウイルス、オーストラリアバットリッサウイルス、Bokelohバットリッサウイルス、Duvenhageリッサウイルス、ヨーロッパバット1リッサウイルス、ヨーロッパバット2リッサウイルス、ガンノルワバットリッサウイルス、イコマリッサウイルス、イルクートリッサウイルス、ホジェンドリッサウイルス、ラゴスバットリッサウイルス、リエイダバットリッサウイルス、モコラリッサウイルス、狂犬病リッサウイルス、シモニバットリッサウイルス、ウエストカフカスバットリッサウイルスを含む。ノビラブドウイルスの属は、ヒラメノビラブドウイルス、魚ノビラブドウイルス、サケノビラブドウイルス、ライギョノビラブドウイルスを含む。ヌクレオラブドウイルスの属は、ダツラ葉脈黄変ヌクレオラブドウイルス、ナス斑萎縮ヌクレオラブドウイルス、トウモロコシ条斑ヌクレオラブドウイルス、イラントウモロコシモザイクヌクレオラブドウイルス、トウモロコシモザイクヌクレオラブドウイルス、ジャガイモ黄変萎縮ヌクレオラブドウイルス、コメ黄変萎縮ヌクレオラブドウイルス、ノゲシ網状黄変ヌクレオラブドウイルス、ケシアザミ葉脈黄変ヌクレオラブドウイルス、タロイモ葉脈白化ヌクレオラブドウイルスを含む。ペラブドウイルスの属は、ウナギペラブドウイルス、パーチペラブドウイルス、マスペラブドウイルスを含む。シグマウイルスの属は、Drosophila affinisシグマウイルス、Drosophila ananassaeシグマウイルス、Drosophila immigransシグマウイルス、Drosophila melanogasterシグマウイルス、Drosophila obscuraシグマウイルス、Drosophila tristisシグマウイルス、Muscina stabulansシグマウイルスを含む。スプリビウイルスの属は、コイスプリビウイルス、パイク幼魚スプリビウイルスを含む。スリプウイルスの属は、アルンピバースリプウイルス、チャコスリプウイルス、Niakhaスリプウイルス、セナマドレイラスリプウイルス、Sripurスリプウイルスを含む。チブロウイルスの属は、中央コンゴチブロウイルス、ベアトリスヒルチブロウイルス、沿岸平地チブロウイルス、Ekpoma1チブロウイルス、Ekpoma2チブロウイルス、スウィートウォーターブランチチブロウイルス、チブローガーガンチブロウイルスを含む。ツパウイルスの属は、ダラムツパウイルス、クラマスツパウイルス、ツパイツパウイルスを含む。バリコサウイルスの属は、レタスビッグべイン関連バリコサウイルスを含む。ベシクロウイルスの属は、アラゴアスベシクロウイルス、アメリカバットベシクロウイルス、カラジャスベシクロウイルス、カンディプーラベシクロウイルス、球菌ベシクロウイルス、インディアナベシクロウイルス、イスファハンベシクロウイルス、Juronaベシクロウイルス、マルパイススプリングベシクロウイルス、マラバベシクロウイルス、モートンベシクロウイルス、ニュージャージーベシクロウイルス、ペリネットベシクロウイルス、ピリベシクロウイルス、ラーディベシクロウイルス、Yug Bogdanovacベシクロウイルス又はムサウイルスを含む。
【0046】
好ましくは、本発明のリコンビナントラブドウイルスは、腫瘍溶解性ラブドウイルスである。この点において、腫瘍溶解性は、当技術分野において公知のその通常の意味を有し、ガン細胞に感染し、ガン細胞を溶解する(分解する)が、正常細胞には感染しない(何ら著しく広がらない)ラブドウイルスの能力を指す。好ましくは、腫瘍溶解性ラブドウイルスは、ガン細胞内で複製可能である。腫瘍溶解活性を当業者に公知の種々のアッセイ系において試験することができる(例示的なin vitroアッセイが、Muik et al., Cancer Res., 74(13), 3567-78, 2014に記載されている)。腫瘍溶解性ラブドウイルスは、特定のタイプのガン細胞のみに感染し、これを溶解することができると理解されたい。また、腫瘍溶解性作用は、ガン細胞のタイプに応じて変化する場合もある。
【0047】
好ましい実施態様では、ラブドウイルスは、ベシクロウイルスの属に属する。ベシクロウイルス種は、主に、ゲノムの系統発生分析と組み合わせた血清学的手段により定義されている。生物学的特徴、例えば、ホストの範囲及び伝播のメカニズムも、この属内のウイルス種を区別するのに使用される。このように、ベシクロウイルスの属は、完全なL配列から推測される最尤樹により十分に支持される、別個の単系統群を形成する。
【0048】
ベシクロウイルス属内の異なる種に割り当てられたウイルスは、下記特徴のうちの1つ以上を有する場合がある。A)Lにおける20%の最小アミノ酸配列多様性;B)Nにおける10%の最小アミノ酸配列多様性;C)Gにおける15%の最小アミノ酸配列多様性;D)血清学的試験において区別することができること及びE)ホスト及び/又は節足動物ベクターにおける差異により証明されるように、異なる生態学的ニッチを占めること。
【0049】
水疱性口内炎ウイルス(VSV)、特に、VSV-GP(LCMVのGPによりリコンビナントである)が好ましい。VSV-GPの有利な特性は、下記のうちの1つ以上を含む:非常に強力で速い殺傷性を有すること(8時間以内);腫瘍溶解性ウイルス;全身への適用可能;向神経性/神経毒性が低いこと;溶解的に再現すること及び免疫原性細胞の死を誘引すること;インターフェロン(IFN)応答のために健康なヒト細胞において複製しないこと;自然免疫の強力な活性化;免疫モデュラトリーカーゴ及び抗原のための約3kbの空き;リンパ球脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)由来のアレナウイルス糖タンパク質によりリコンビナントであること;野生型VSV(VSV-G)と比較して、神経毒性の低下並びに中和抗体応答及び補体破壊に対する感受性が低いという点で好ましい安全性特徴;抗ウイルス自然免疫応答(例えば、I型IFNシグナル伝達)を開始し、応答する能力を失った腫瘍細胞において特異的に複製すること;「健康な細胞」では複製できず、そのため、正常な組織から速やかに排除されること;腫瘍細胞におけるウイルス複製により免疫原性細胞死が誘引され、腫瘍関連抗原が放出され、局所炎症が引き起こされ、抗腫瘍免疫が誘引されること。
【0050】
本発明は、そのゲノム中で少なくとも水疱性口内炎ウイルスの核タンパク質(N)、大型タンパク質(L)、リンタンパク質(P)、マトリックスタンパク質(M)、糖タンパク質(G)及び少なくとも1種のCD80細胞外ドメインFc融合タンパク質又はその機能的変異体(好ましくは、ヒトCD80細胞外ドメインを含む)をコードするリコンビナント水疱性口内炎ウイルスにより更に具体化される。
【0051】
好ましい実施態様では、リコンビナント水疱性口内炎ウイルスは、そのゲノム中で少なくとも、配列番号:7に記載されたアミノ酸配列又は配列番号:7と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一の機能的変異体を含む水疱性口内炎ウイルスの核タンパク質(N)、配列番号:8に記載されたアミノ酸配列又は配列番号:8と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一の機能的変異体を含むリンタンパク質(P)、配列番号:9に記載されたアミノ酸配列又は配列番号:9と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一の機能的変異体を含む大型タンパク質(L)及び配列番号:10に記載されたアミノ酸配列又は配列番号:10と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一の機能的変異体を含むマトリックスタンパク質(M)をコードする。
【0052】
水疱性口内炎ウイルスの核タンパク質(N)、大型タンパク質(L)、リンタンパク質(P)、マトリックスタンパク質(M)又は糖タンパク質(G)の配列に対する修飾を、これらのタンパク質の基本的な機能を失うことなく行うことができることが当業者により理解される。本明細書で使用する場合、このような機能的変異体は、それらの基本的な機能又は活性の全部又は一部を保持する。タンパク質Lは、例えば、ポリメラーゼであり、ウイルスの転写及び複製中に必須の機能を有する。その機能的変異体は、この能力の少なくとも一部を保持しなければならない。基本的な機能性又は活性の保持についての良好な指標は、依然として複製可能でありかつ腫瘍細胞に感染可能であるこれらの機能的変異体を含むウイルスの産生の成功である。ウイルスの産生並びに腫瘍細胞への感染及び腫瘍細胞における複製についての試験を当業者に公知の種々のアッセイ系において試験することができる(例示的なin vitroアッセイが、Muik et al., Cancer Res., 74(13), 3567-78, 2014に記載されている)。
【0053】
好ましい実施態様では、リコンビナント水疱性口内炎ウイルスは、そのゲノム中で少なくとも水疱性口内炎ウイルスの核タンパク質(N)、大型タンパク質(L)、リンタンパク質(P)、マトリックスタンパク質(M)、糖タンパク質(G)及び少なくとも1種のCD80細胞外ドメインFc融合タンパク質又はその機能的変異体をコードし、ここで、大型タンパク質(L)は、配列番号:9の80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0054】
好ましい実施態様では、リコンビナント水疱性口内炎ウイルスは、そのゲノム中で少なくとも水疱性口内炎ウイルスの核タンパク質(N)、大型タンパク質(L)、リンタンパク質(P)、マトリックスタンパク質(M)、糖タンパク質(G)及び少なくとも1種のCD80細胞外ドメインFc融合タンパク質又はその機能的変異体をコードし、ここで、核タンパク質(N)は、配列番号:7の90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0055】
更に好ましい実施態様では、リコンビナント水疱性口内炎ウイルスは、そのゲノム中で少なくとも水疱性口内炎ウイルスの核タンパク質(N)、大型タンパク質(L)、リンタンパク質(P)、マトリックスタンパク質(M)、糖タンパク質(G)及び少なくとも1種のCD80細胞外ドメインFc融合タンパク質又はその機能的変異体をコードし、ここで、大型タンパク質(L)は、配列番号:9の80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、核タンパク質(N)は、配列番号:7の90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0056】
本発明の好ましい実施態様では、本発明のリコンビナントラブドウイルスのRNAゲノムは、配列番号:24に示された配列を含むか又はこれからなる。更に、本発明のリコンビナントラブドウイルスのRNAゲノムは、RNAゲノムの核酸が各アミノ酸配列の変更をもたらすことなく、遺伝コードの変性に従って交換されたような配列からなるか又はそのような配列を含むこともできる。更に好ましい実施態様では、本発明のリコンビナントラブドウイルスのRNAゲノムは、配列番号:24と同一又は少なくとも75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一のコード配列を含むか又はこれからなる。
【0057】
本発明のリコンビナントラブドウイルスは、そのゲノム中で更なるカーゴ、例えば、腫瘍抗原、更なるケモカイン、サイトカイン又は他の免疫モデュラトリーエレメントをコードすることができると理解されたい。
【0058】
更なる実施態様では、本発明のリコンビナントラブドウイルスは、そのゲノム中でヨウ化ナトリウム共輸送体タンパク質(NIS)を更にコードする。NISの発現及び例えば、125Iとの共インキュベーションにより、撮像レポーターとしてのNISの使用が可能となる(Carlson et al., Current Gene Therapy, 12, 33-47, 2012)。
【0059】
リコンビナントラブドウイルス
ある種の野生型ラブドウイルス系統、例えば、野生型VSV系統は、神経毒性であると考えられることが公知である。また、感染した個体は、主に糖、タンパク質に対する高い抗体力価で、強力な体液性応答を速やかに開始することが可能であることも報告されている。一般的にはラブドウイルス及び具体的にはVSVの糖タンパク質Gをターゲットとする中和抗体は、ウイルス拡散を制限し、それにより、ウイルス再感染からの個体の防御を媒介することが可能である。しかしながら、ウイルス中和のために、ガン患者へのラブドウイルスの反復適用が制限される。
【0060】
これらの欠点を排除するために、ラブドウイルスの野生型糖タンパク質Gを別のウイルス由来の糖タンパク質により置き換えることができる。この点において、糖タンパク質を置き換えることは、(i)野生型糖タンパク質Gをコードする遺伝子を別のウイルスの糖タンパク質GPをコードする遺伝子により置き換えること及び/又は(ii)野生型糖タンパク質Gを別のウイルスの糖タンパク質GPにより置き換えることを指す。
【0061】
好ましい実施態様では、ラブドウイルスの糖タンパク質Gは、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)の糖タンパク質GP、好ましくは、WE-HPI系統により置き換えられている。更により好ましい実施態様では、ラブドウイルスは、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)の糖タンパク質GP、好ましくは、WE-HPI系統を有する水疱性口内炎ウイルスである。このようなVSVは、例えば、国際公開第2010/040526号に記載されており、VSV-GPと名付けられている。提供される利点は、(i)VSV-G媒介性神経毒性が無くなること及び(ii)抗体によるベクター中和が無くなること(マウスで示されている)である。
【0062】
リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)の糖タンパク質GPは、GP1又はGP2であることができる。本発明は、種々のLCMV系統由来の糖タンパク質を含む。特に、LCMV-GPは、LCMV野生型又はLCMV系統LCMV-WE、LCMV-WE-HPI、LCMV-WE-HPl optに由来することができる。好ましい実施態様では、LCMVの糖タンパク質GPをコードする遺伝子は、配列番号:11に示されるアミノ酸配列又は配列番号:11のアミノ酸配列と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質をコードし、一方、配列番号:11に示されるアミノ酸配列をコードする糖タンパク質GPを含むリコンビナントラブドウイルスの機能的特性は維持される。
【0063】
別の実施態様では、リコンビナントラブドウイルスの糖タンパク質Gは、ダンデノングウイルス(DANDV)又はモペイア(MOPV)ウイルスの糖タンパク質GPにより置き換えられている。より好ましい実施態様では、リコンビナントラブドウイルスは、糖タンパク質Gがダンデノングウイルス(DANDV)又はモペイア(MOPV)ウイルスの糖タンパク質GPにより置き換えられている水疱性口内炎ウイルスである。提供される利点は、(i)VSV-G媒介性神経毒性が無くなること及び(ii)抗体によるベクター中和が無くなること(マウスで示されている)である。
【0064】
ダンデノングウイルス(DANDV)は、旧世界のアレナウイルスである。今日では、糖タンパク質GPを含み、本発明のリコンビナントラブドウイルスに含まれる糖タンパク質GPのドナーとして本発明内で利用することができる、当業者に公知の単一の系統のみが存在する。本発明のリコンビナントラブドウイルスに含まれるDANDVの糖タンパク質GPは、7つ以上のグリコシル化部位、特に、7つのグリコシル化部位を有する。例示的な好ましい糖タンパク質GPは、Genbank番号EU136038でアクセス可能なDANDVに含まれるものである。一実施態様では、DANDVの糖タンパク質GPをコードする遺伝子は、配列番号:12に示されるアミノ酸配列又は配列番号:12のアミノ酸配列と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の配列同一性を有する配列をコードし、一方、配列番号:12に示されるアミノ酸配列をコードする糖タンパク質GPを含むリコンビナントラブドウイルスの機能的特性は維持される。
【0065】
モペイアウイルス(MOPV)は、旧世界のアレナウイルスである。糖タンパク質GPを含み、本発明のリコンビナントラブドウイルスに含まれる糖タンパク質GPのドナーとして本発明内で利用することができる、当業者に公知の複数の系統が存在する。本発明のリコンビナントラブドウイルスに含まれるMOPVの糖タンパク質GPは、7つ以上のグリコシル化部位、特に、7つのグリコシル化部位を有する。例示的な好ましい糖タンパク質GPは、Genbank番号AY772170でアクセス可能なモペイアウイルスに含まれるものである。一実施態様では、MOPVの糖タンパク質GPをコードする遺伝子は、配列番号:13に示されるアミノ酸配列又は配列番号:13のアミノ酸配列と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の配列同一性を有する配列をコードし、一方、配列番号:13に示されるアミノ酸配列をコードする糖タンパク質GPを含むリコンビナントラブドウイルスの機能的特性は維持される。
【0066】
CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質
B7-1としても公知のCD80は、免疫グロブリンスーパーファミリーに属する60kDの一本鎖I型糖タンパク質である。CD80は、活性化/成熟抗原提示細胞、例えば、樹状細胞上で発現される。CD80は、CD28及びCD152(CTLA-4)に結合する。CD86(B7-2)と共に、CD80は、T細胞活性化のレギュレーションにおいて重要な役割を果たす。CD80とCD28との相互作用により、TCR結合の複合体におけるT細胞活性化のための共刺激シグナルが提供される。そのCTLA-4との相互作用(例えば、レギュラトリーT細胞上で発現される)は、CD28よりCD80に対して高い親和性を有し、サプレッションシグナル伝達レセプターとして機能するのではなく、CD80に対するデコイレセプターとして作用し、T細胞から重要な共刺激性CD28シグナルを奪う。
【0067】
過去において、腫瘍溶解性ウイルス、特に、VSV-GPは、腫瘍微小環境における免疫原性細胞死及び自然免疫細胞の刺激と組み合わせて、腫瘍細胞溶解を誘引することができることが提案された。免疫モデュラトリータンパク質を腫瘍溶解性ウイルスのゲノムにコードすることができること及び前記免疫モデュラトリータンパク質の発現が、局所免疫刺激活性によるウイルスの腫瘍溶解効果を支持することができることが更に提案された。
【0068】
ウイルス骨格からの免疫促進分子、例えば、ケモカイン及び/又はサイトカインを発現させる課題の1つは、抗腫瘍免疫の増強が達成されなければならないだけでなく、同時に、免疫促進分子による抗ウイルス免疫応答が回避されるべきであることである。追加の免疫促進分子は、治療用カーゴの発現により得られる潜在的な利益が腫瘍溶解能の喪失により覆される程度まで、ウイルスの腫瘍溶解能を制限しないことに注意しなければならない。
【0069】
本発明者らは、一方で、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質がT細胞レセプター結合との関連で効率的なT細胞共刺激を提供することができ、他方で、早期段階でウイルス複製及び/又は持続を制限するであろうナチュラルキラー細胞(例えば、IL2、IL15、CD137により活性化される)を活性化しないであろうと仮定した。CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質は、抗原特異的T細胞のプライミング及び再活性化において活性であり、強力な共刺激分子である。この刺激は、T細胞共刺激シグナルが多くの場合、腫瘍において過少発現され、これにより、クローン性T細胞アネルギー、エフェクター機能の喪失及びT細胞死がもたらされるために重要である。
【0070】
本発明のリコンビナントラブドウイルスを提供することにより、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質の腫瘍制限複製によって、T細胞共刺激融合タンパク質の局所発現をもたらすことができ、これにより、FcγR依存的な様式でT細胞レセプター結合(例えば、腫瘍細胞認識)との関連でT細胞に活性化シグナルを提供することによって、抗腫瘍T細胞免疫が更に増強される。
【0071】
本発明者らは、驚くべきことに、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質をコードする本発明のリコンビナントラブドウイルスが腫瘍微小環境における免疫原性細胞死及び自然免疫細胞の刺激と組み合わせて、腫瘍細胞溶解を誘引可能であることを見出した。更に、長期生存率は、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質で武装化されたこのようなリコンビナントラブドウイルスで処置された、確立されたマウス腫瘍モデルにおいて観察された。
【0072】
予想外に、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質をコードする本発明のリコンビナントラブドウイルスによる感染により、感染腫瘍内でのFcγR発現の強力な増加がもたらされる。本発明者らは、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質の最適な生体活性がFcγRに強く依存することを示した。
【0073】
理論に拘束されることを望むものではないが、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質をコードする本発明のリコンビナントラブドウイルスにより得られる強力な抗腫瘍効果は、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質のFcγR依存性活性に少なくとも部分的に基づいており、この活性は、本発明のリコンビナントラブドウイルスによる感染後の感染腫瘍におけるFcγRの発現の増加により増強されると考えられる。
【0074】
代替的には、この文脈において、CD86(B7-2)融合タンパク質、すなわち、CD86細胞外ドメインFc融合タンパク質をコードするリコンビナントラブドウイルス、特に、CD86細胞外ドメインFc融合タンパク質をコードするVSV-GPの提供も企図され、ここで、リコンビナント水疱性口内炎ウイルスの糖タンパク質Gをコードする遺伝子は、リンパ球脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)の糖タンパク質GPをコードする遺伝子により置き換えられておりかつ/又は糖タンパク質Gは、LCMVの糖タンパク質GPにより置き換えられている。
【0075】
本明細書で使用する場合、「CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質」は、IgGのFcドメインに融合されるCD80細胞外ドメインを含むか又はそれからなる融合タンパク質又はその機能的変異体を指す。
【0076】
「CD80細胞外ドメイン」は、天然のポリペプチド、例えば、種々のアイソフォーム及びその機能的変異体、好ましくは、ヒトCD80細胞外ドメインを含むか又はそれらからなる。
【0077】
一態様では、そのゲノム中で少なくとも1種のCD80細胞外ドメインFc融合タンパク質又はその機能的変異体をコードするリコンビナントラブドウイルスは、腫瘍環境へのT細胞及び樹状細胞のリクルートを増強可能である。
【0078】
別の態様では、リコンビナントラブドウイルスのゲノムからの少なくとも1種のCD80細胞外ドメインFc融合タンパク質又はその機能的変異体の発現により、非炎症性腫瘍を有する患者のための治療選択肢が提供され、低免疫原性腫瘍に対するT細胞媒介性抗腫瘍T細胞応答を増強するための低い突然変異負荷が提供される。
【0079】
別の態様では、リコンビナントラブドウイルスのゲノムからの少なくとも1種のCD80細胞外ドメインFc融合タンパク質又はその機能的変異体の発現により、(親VSV-GPウイルスの効果を超えて)更なるナチュラルキラー細胞が誘引されず、抗原特異的T細胞が選択的に活性化される。
【0080】
別の態様では、リコンビナントラブドウイルスのゲノムからの少なくとも1種のCD80細胞外ドメインFc融合タンパク質又はその機能的変異体の発現により、スーパーアゴニズムが誘引されない。
【0081】
別の態様では、リコンビナントラブドウイルスのゲノムからの少なくとも1種のCD80細胞外ドメインFc融合タンパク質又はその機能的変異体の発現により、リコンビナントラブドウイルスに対する初期抗ウイルス免疫が増大しない。
【0082】
更に別の態様では、その溶解性に起因する腫瘍における局所発現に加えて、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質は、腫瘍流入リンパ管(例えば、リンパ節)に到達する場合もある。
【0083】
ヒトCD80タンパク質(UniProtKB-33681|CD80_HUMAN Tリンパ球活性化抗原CD80)は、全部で288個のアミノ酸を含むか又はこれからなり、シグナルペプチド、細胞外ドメイン及び膜貫通/トポロジードメインを含有する。
【0084】
【化1】
【0085】
一実施態様では、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質のCD80細胞外ドメインは、配列番号:6のアミノ酸1~242を含むか若しくはこれからなるか又は配列番号:6のアミノ酸1~242と少なくとも70%、72%、74%、76%、78%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有する。
【0086】
別の実施態様では、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質のCD80細胞外ドメインは、下記配列:
【化2】

又は配列番号:1と少なくとも70%、72%、74%、76%、78%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有する配列を含むか又はこれからなる。
【0087】
一実施態様では、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質は、シグナルペプチド配列を含む。別の実施態様では、CD80細胞外ドメインFc融合体は、シグナルペプチド配列を含まない。
【0088】
「シグナルペプチド」又は「シグナルペプチド配列」という用語は、通常、長さが10~30個のアミノ酸であり、新たに合成された分泌ポリペプチド又は膜ポリペプチドのN末端に存在し、ポリペプチドを、細胞の細胞膜(原核生物における原形質膜及び真核生物の小胞体膜)を横切らせ又はその中に方向付けるペプチド配列を説明する。それは、通常、その後除去される。特に、シグナルペプチドは、ポリペプチドを細胞の分泌経路に方向付けることが可能である場合がある。
【0089】
本発明について、他の(すなわち、野生型以外の)シグナルペプチド配列をCD80細胞外ドメインFc融合タンパク質と共に使用することができると理解されたい。このような他のシグナルペプチド配列で、元の野生型シグナルペプチド配列を置き換えることができる。シグナルペプチドは、リボソーム中の新たに合成されたタンパク質をERに、更に、ゴルジ複合体に向かわせ、原形質膜へ又は細胞外へ輸送するペプチドを含む。それらは、一般的には、一連の疎水性アミノ酸を含み、免疫グロブリンリーダー配列及び当業者に公知の他の配列を含む。シグナルペプチドは、特に、小胞体の槽面に位置する特定のプロテアーゼであるシグナルペプチダーゼにより作用され得るペプチドを含む。シグナルペプチドは、当業者に十分理解されており、任意の公知のシグナルペプチドを含むことができる。シグナルペプチドは、タンパク質のN末端に組み込まれ、シグナルペプチダーゼによるCD80細胞外ドメインFc融合タンパク質のプロセシングにより、活性な生物学的形態を生じる。
【0090】
一実施態様では、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質は、野生型CD80シグナルペプチド配列を含む。好ましい実施態様では、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質は、配列番号:6のアミノ酸1~34である野生型ヒトCD80シグナルペプチド配列又は配列番号:6のアミノ酸1~34と少なくとも70%、72%、74%、76%、78%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有する配列を含む。
【0091】
別の実施態様では、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質は、下記配列:
MGWSCIILFLVATATGVHS(配列番号:5)
を有するシグナルペプチド配列又は配列番号:5と少なくとも70%、72%、74%、76%、78%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有するシグナルペプチド配列を含む。
【0092】
関連する実施態様では、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質のCD80細胞外ドメインは、配列番号:1又は配列番号:1と少なくとも70%、72%、74%、76%、78%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有する配列を含むか又はこれからなり、配列番号:5のシグナルペプチド配列又は配列番号:5と少なくとも70%、72%、74%、76%、78%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有するシグナルペプチド配列を更に含む。
【0093】
また、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質は、切断型シグナルペプチド配列を有する融合タンパク質を含むこともできる。この文脈において、切断型は、元のシグナルペプチド配列より短いが、シグナルペプチドとして作用するその機能の少なくとも一部を依然として保持するシグナルペプチド配列を指す。例えば、ヒトCD80シグナルペプチド配列は、配列番号:6のアミノ酸1~34を含むか又はこれからなる。切断型シグナルペプチド配列を有するCD80細胞外ドメインFc融合タンパク質は、配列番号:6のアミノ酸1~34のうちの33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2又は1個を有することができる。更なる例では、シグナルペプチドは、配列番号:5に示される配列を含むか又はこれからなることができる。切断型シグナルペプチド配列を有するCD80細胞外ドメインFc融合タンパク質は、配列番号:5のアミノ酸1~18のうちの18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2又は1個を有することができる。
【0094】
また、切断型シグナルペプチド配列を有するCD80細胞外ドメインFc融合タンパク質は、配列番号:1又は配列番号:1と少なくとも70%、72%、74%、76%、78%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有する配列を含むタンパク質であることもでき、加えて、元のシグナルペプチド配列より短いシグナルペプチド配列であることもできる。再度、例として、シグナルペプチド配列は、配列番号:6のアミノ酸1~34のうちの33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2若しくは1個を有することができ又は更なる例において、シグナルペプチドは、配列番号:5に示される配列を含むか又はこれからなることができる。切断型シグナルペプチド配列を有するCD80細胞外ドメインFc融合タンパク質は、配列番号:5のアミノ酸1~18のうちの18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2又は1個を有することができる。
【0095】
CD80細胞外ドメインは、マウス及びラット由来を含む任意の起源のものであることができる。好ましくは、CD80細胞外ドメインタンパク質は、ヒト起源のものである。
【0096】
IgGのFcドメインは、CD80細胞外ドメインのN末端若しくはC末端部分に又は内部の位置で共有結合的に融合していることができる。一部の実施態様では、IgG分子のFcドメインは、リンカーペプチド、例えば、GSリンカーを介して、CD80細胞外ドメインに融合していることができる。好ましくは、Fcドメインは、CD80細胞外ドメインのC末端部分に融合している。
【0097】
一部の実施態様では、Fcドメインは、野生型配列を有する。他の実施態様では、Fcドメインは、天然又は操作された変異体のいずれかである。一部の実施態様では、Fcドメインは、その野生型配列と比較して、1つ以上の突然変異、置換及び/又は欠失を含む。一部の実施態様では、Fcと1種以上のFcガンマレセプター(FcγRI、FcγRIIA、FcγRIIB、FcγRIIIA、FcγRIIIB)との相互作用が変化したFcドメインが選択される。好ましくは、Fcドメインは、ヒトIgG、例えば、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4に由来する。より好ましくは、Fcドメインは、ヒトIgG1に由来する。
【0098】
好ましい実施態様では、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質のFcドメインは、下記配列:
【化3】

又は配列番号:2と少なくとも70%、72%、74%、76%、78%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有する配列を含むか又はこれからなる。
【0099】
好ましい実施態様では、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質は、下記配列:
【化4】

又は配列番号:4と少なくとも70%、72%、74%、76%、78%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有する配列を含むか又はこれからなる。
【0100】
更に好ましい実施態様では、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質は、IgG1のFcドメインに融合したCD80細胞外ドメインを含むか又はこれからなり、ここで、CD80細胞外ドメインは、配列番号:4のアミノ酸1~207を含むか若しくはこれからなるか又は配列番号:4のアミノ酸1~207と少なくとも70%、72%、74%、76%、78%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有し、Fcドメインは、配列番号:4のアミノ酸208~433を含むか若しくはこれからなるか又は配列番号:4のアミノ酸208~433と少なくとも70%、72%、74%、76%、78%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有する。
【0101】
更に好ましい実施態様では、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質は、下記配列:
【化5】

又は配列番号:3と少なくとも70%、72%、74%、76%、78%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有する配列を含むか又はこれからなる。
【0102】
本明細書で使用する場合、2つ以上の核酸又はポリペプチド配列の文脈における「同一」又は「% 同一性」という用語は、最大の対応について比較し、アライメントさせた場合、同じであるか又は特定の割合の同じヌクレオチド若しくはアミノ酸残基を有する2つ以上の配列又は部分配列を指す。% 同一性を決定するために、配列を最適な比較目的でアラインメントする(例えば、ギャップを、第2のアミノ酸又は核酸配列との最適なアラインメントのために、第1のアミノ酸又は核酸配列の配列に導入することができる)。ついで、対応するアミノ酸位置又はヌクレオチド位置におけるアミノ酸残基又はヌクレオチドを比較する。第1の配列中の位置が、第2の配列中の対応する位置と同じアミノ酸残基又はヌクレオチドにより占められる場合には、それらの分子は、その位置で同一である。2つの配列間の% 同一性は、配列により共有される同一位置の数の関数である(すなわち、% 同一性=同一位置の数/位置の総数(例えば、重複する位置)×100)。一部の実施態様では、比較される2つの配列は、必要に応じて、ギャップを配列内に導入した後、同じ長さである(例えば、比較される配列を超えて伸長する更なる配列を除く)。
【0103】
2つの配列間の% 同一性又は% 類似性の決定を、数学的アルゴリズムを使用して達成することができる。2つの配列の比較に利用される数学的アルゴリズムの好ましいが非限定的な例は、Karlin and Altschul, 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-5877において修正されたKarlin and Altschul, 1990, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264-2268のアルゴリズムである。このようなアルゴリズムは、Altschul et al., 1990, J. Mol. Biol. 215:403-410のNBLAST及びXBLASTプログラムに組み込まれている。BLASTヌクレオチド検索をNBLASTプログラム、スコア=100、ワード長=12により行って、目的のタンパク質をコードする核酸に相同なヌクレオチド配列を得ることができる。BLASTタンパク質検索をXBLASTプログラム、スコア=50、ワード長=3により行って、目的のタンパク質に相同なアミノ酸配列を得ることができる。比較目的でギャップ付きアラインメントを得るために、ギャップ付きBLASTをAltschul et al., 1997, Nucleic Acids Res. 25:3389-3402に記載されるように利用することができる。代替的には、PSI-Blastを使用して、分子間の遠い関係(Id.)を検出する反復検索を行うことができる。BLAST、ギャップ付きBLAST及びPSI-Blastプログラムを利用する場合、各プログラム(例えば、XBLAST及びNBLAST)のデフォルトパラメータを使用することができる。配列の比較に利用される数学的アルゴリズムの別の好ましい非限定的な例は、Myers and Miller, CABIOS(1989)のアルゴリズムである。このようなアルゴリズムは、GCG配列アラインメントソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている。アミノ酸配列を比較するために、ALIGNプログラムを利用する場合、PAM120重み残基表、ギャップ長ペナルティー12及びギャップペナルティー4を使用することができる。配列分析のための更なるアルゴリズムは、当技術分野において公知であり、Torellis and Robotti, 1994, Comput. Appl. Biosci. 10:3-5に記載されているADVANCE及びADAM並びにPearson and Lipman, 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444-8に記載されているFASTAを含む。FASTA内では、ktupは、検索の感度及び速度を設定する制御オプションである。ktup=2の場合、比較される2つの配列中の類似領域は、アライメントさせた残基のペアを見ることにより見出される。ktup=1の場合、単一のアライメントさせたアミノ酸を調べる。ktupをタンパク質配列については2若しくは1に設定することができ又はDNA配列については1~6に設定することができる。ktupが指定されていない場合のデフォルトは、タンパク質については2であり、DNAについては6である。代替的には、タンパク質配列アラインメントを、Higgins et al., 1996, Methods Enzymol. 266:383-402に記載されているCLUSTAL Wアルゴリズムを使用して行うことができる。
【0104】
CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質の機能的変異体は、前述のCD80細胞外ドメインFc融合タンパク質の生体活性変異体及び生体活性フラグメントを含む。機能的変異体は、CD80細胞外ドメイン、Fcドメインのいずれか及び/又は両方のドメインに変異を有することができる。例として、幾つかのCD80細胞外ドメイン機能的変異体は、国際公開第2017/181152号に記載されている。別の例では、Fcドメインの機能的変異体は、国際公開第17/079117号に記載されており、例えば、L234F、L235E及び/又はP331Sのアミノ酸置換を有するヒトIgG1 Fcドメインを含む。
【0105】
例えば、変異体は、具体的に記載されたCD80細胞外ドメイン又はFcドメインタンパク質の位置に1つ以上の異なるアミノ酸を有することができる。変異体は、このようなCD80細胞外ドメイン又はFcドメインと少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%以上のアミノ酸同一性を共有することができる。フラグメントは、所定の具体的に記載されたCD80細胞外ドメイン又はFcドメインタンパク質と同じアミノ酸を有するが、CD80細胞外ドメイン又はFcドメインタンパク質の特定の部分又は領域を欠いている場合がある。
【0106】
CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質の機能的変異体は、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質の生体活性変異体及びフラグメントのみを含む。本発明について、リコンビナントラブドウイルスのゲノム中でコードされるCD80細胞外ドメインFc融合タンパク質変異体又はCD80細胞外ドメインFc融合タンパク質フラグメントの生体活性は、各細胞又は腫瘍細胞中でのその発現後に決定される。これは、生体活性が、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質変異体又はCD80細胞外ドメインFc融合タンパク質フラグメントをコードするリコンビナントラブドウイルスの文脈において(例えば、トランスウェルアッセイ又はin vitro腫瘍モデルにおいて)決定されることを意味する。好ましくは、生体活性が、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質変異体又はCD80細胞外ドメインFc融合タンパク質フラグメントをコードするベシクロウイルスについて決定される。より好ましくは、生体活性が、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質変異体又はCD80細胞外ドメインFc融合タンパク質フラグメントをコードするVSV-GPについて決定される。
【0107】
生体活性は、下記能力:化学誘引活性、抗腫瘍活性、サイトカイン発現のモデュレーション、例えば、CD8陽性T細胞、CD4陽性T細胞、抗原提示細胞及び腫瘍細胞を含む同系ほ乳類細胞の集団におけるインターフェロン-ガンマ(IFN-ガンマ)ポリペプチドの発現の増加又は形質転換成長因子ベータ(TGFベータ)ポリペプチドの発現の減少のうちの1つ以上を含むことができる。生体活性の試験を例えば、実施例に示されるプロトコールに従って行うことができるが、これに限定されない。本発明の目的で、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質の機能的変異体又はフラグメントは、同じアッセイ及び同じ条件下で試験された場合に、配列番号:3又は4に示される配列(それぞれ、シグナルペプチド配列有り又は無し)を有するCD80細胞外ドメインFc融合タンパク質の活性の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%を示す場合、生体活性である。
【0108】
ラブドウイルスは、その遺伝物質(ゲノム)として、ネガティブセンス一本鎖RNA(ssRNA)を有する。ネガティブセンスssRNAウイルスは、ポジティブセンスRNAを形成するために、RNAポリメラーゼを必要とする。ポジティブセンスRNAは、ウイルスmRNAとして作用する。ウイルスmRNAは、新たなウイルス材料の産生のためにタンパク質に翻訳される。新たに形成されたウイルスでは、より多くのネガティブセンスRNA分子が産生される。
【0109】
典型的なラブドウイルスゲノムは、少なくとも5つの構造タンパク質を3’-N-P-M-G-L-5’の順序でコードする。ゲノムは、構造タンパク質間に更に短い遺伝子間領域又は追加の遺伝子を含有する場合があり、したがって、長さ及び組織が変化する場合がある。
【0110】
本発明によれば、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質遺伝子をラブドウイルスゲノムの任意の位置に導入することができる。挿入部位に応じて、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質遺伝子の転写効率が影響を受ける場合がある。一般的には、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質遺伝子の転写効率は、3’挿入から5’プライム挿入に向かって低下する。CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質遺伝子を下記ゲノム位置:3’-CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質-N-P-M-G-L-5’、3’-CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質-P-M-G-L-5’、3’-N-P-CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質-M-G-L-5’、3’-N-P-M-CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質-G-L-5’、3’-N-P-M-G-CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質-L-5’又は3’-N-P-M-G-L-CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質-5’に挿入することができる。好ましい実施態様では、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質遺伝子は、Gタンパク質とLタンパク質との間に挿入される。
【0111】
腫瘍細胞の感染後、リコンビナントラブドウイルスのゲノム中でコードされるCD80細胞外ドメインFc融合タンパク質遺伝子は、ポジティブセンスRNAに転写され、ついで、腫瘍細胞によりCD80細胞外ドメインFc融合タンパク質に翻訳される。「コードする(encoding)」又は「コードする(coding)」という用語は、定義された配列のヌクレオチド(例えば、RNA分子)又はアミノ酸及びそれから得られる生物学的特性を有する生物学的プロセスにおける他のポリマー及び高分子の合成のためのテンプレートとして働く、核酸中のヌクレオチドの特定の配列の固有の特性を指す。したがって、遺伝子は、所望のタンパク質がmRNAの転写及び後続の翻訳により細胞又は別の生物学的系において産生される場合、タンパク質をコードする。ヌクレオチド配列がmRNA配列と同一であるコード鎖と非コード鎖との両方が、遺伝子の転写のためのテンプレートとして機能することができ、その遺伝子のタンパク質又は他の産物をコードすると称することができる。タンパク質をコードする核酸及びヌクレオチド配列は、イントロンを含む場合がある。
【0112】
CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質遺伝子の転写は、好ましくは、それ自体のプロモーターの制御下になく、ウイルス複製に厳密に結び付けられているだけであり、それにより、ウイルス複製及び拡散の位置(腫瘍)へのCD80細胞外ドメインFc融合タンパク質のターゲット発現が確実となる。このため、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質遺伝子の転写は、追加のエレメント、例えば、プロモーター又は誘引性遺伝子発現エレメントにより制御されない。
【0113】
翻訳されたCD80細胞外ドメインFc融合タンパク質は、典型的には、2つの同一の単量体成熟CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質を含む二量体融合タンパク質として溶液中に存在する。この場合、各単量体CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質は、そのC末端でIgG FcドメインのN末端に融合したCD80細胞外ドメインを含む。2つのCD80細胞外ドメインFc融合単量体同士は、各単量体中のシステイン残基間に形成されるジスルフィド結合により共有結合され、それにより、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質二量体を形成する。
【0114】
コードされたポリペプチドの一次配列を変化させて又は変化させることなく、核酸配列変化させることができると理解されるであろう。タンパク質をコードする核酸は、異なるヌクレオチド配列を有するが、遺伝子コードの縮重のために、タンパク質の同じアミノ酸配列をコードする任意の核酸を含む。CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質、特に、本明細書に開示された任意の具体的なCD80細胞外ドメインFc融合タンパク質の発現をもたらすであろう核酸配列を選択することは、当業者の知識の範囲内である。CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質のアミノ酸配列をコードする核酸分子は、当技術分野において公知の各種の方法により調製される。これらの方法は、天然供給源からの単離又はオリゴヌクレオチド媒介性(又は部位特異的)突然変異誘発、PCR突然変異誘発及び予め調製されたCD80細胞外ドメインFc融合タンパク質のカセット突然変異誘発による調製を含むが、これらに限定されない。
【0115】
医薬組成物
実際の薬学的有効量又は治療用量は、当然、当業者に公知の要因、例えば、患者の年齢及び体重、投与経路並びに疾患の重症度により決まる。いずれの場合も、リコンビナントラブドウイルスは、患者の固有の状態に基づいて、薬学的有効量を送達することが可能となる投与量及び様式で投与されるであろう。
【0116】
一般的には、本明細書で言及された疾患、障害及び状態の治療及び/又は緩和のために、処置される特定の疾患、障害又は状態、使用される本発明の特定のリコンビナントラブドウイルスの有効性、特定の投与経路及び使用される特定の医薬製剤又は組成物に応じて、本発明のリコンビナントラブドウイルスは、一般的には、例えば、週2回、週1回又は月1回の用量で投与されるであろうが、特に、前述のパラメータに応じて相当変動させることができる。このため、場合によっては、上記与えられた最小用量より少なく使用することで十分である場合があり、一方、他の場合では、上限を超えなければならない場合がある。大量に投与する場合、それらを1日にわたって分散される多数のより少ない用量に分割することが推奨される場合がある。
【0117】
治療に使用するために、本発明のリコンビナントラブドウイルスは、動物又はヒトへの投与を容易にするのに適した医薬組成物に製剤化される。典型的な製剤を水溶液又は水性若しくは非水性懸濁液の形態で、リコンビナントウイルスを生理学的に許容され得る担体、賦形剤又は安定剤と混合することにより調製することができる。担体、賦形剤、修飾剤又は安定剤は、利用される用量及び濃度で無毒である。それらは、バッファー系、例えば、ホスファート、シトラート、アセタート並びに他の無機酸又は有機酸及びそれらの塩;アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤;保存剤、例えば、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルアルコール若しくはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えば、メチルパラベン若しくはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール及びm-クレゾール;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン若しくはポリエチレングリコール(PEG);アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン若しくはリシン;グルコース、マンノース、スクロース、トレハロース、デキストリン若しくはデキストランを含む単糖類、二糖類、オリゴ糖類若しくは多糖類及び他の炭水化物;キレート剤、例えば、EDTA;糖アルコール、例えば、マンニトール又はソルビトール;塩形成カウンターイオン、例えば、ナトリウム;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);並びに/又はイオン性若しくは非イオン性界面活性剤、例えば、TWEEN(商標)(ポリソルベート)、PLURONICS(商標)若しくは脂肪酸エステル、脂肪酸エーテル若しくは糖エステルを含む。また、賦形剤は、放出修飾又は吸収修飾機能も有することができる。
【0118】
一実施態様では、本発明のリコンビナントラブドウイルスは、トリス、アルギニン及び場合により、シトラートを含む医薬組成物に製剤化される。トリスは、好ましくは、約1mM~約100mMの濃度で使用される。アルギニンは、好ましくは、約1mM~約100mMの濃度で使用される。シトラートは、最大100mMの濃度で存在することができる。好ましい製剤は、約50mM トリス及び50mM アルギニンを含む。
【0119】
医薬組成物を液体、凍結液体又は凍結乾燥形態として提供することができる。凍結液体を-70℃~-85℃及び約-15℃、-16℃、-17℃、-18℃、-19℃、-20℃、-21℃、-22℃、-23℃、-24℃又は約-25℃の温度を含む約0℃~約-85℃の温度で保存することができる。
【0120】
本発明のリコンビナントラブドウイルス又は医薬組成物は、必要ではないが、場合により、目的の障害を予防し又は治療するのに現在使用されている1種以上の薬剤と共に製剤化される。このような他の薬剤の有効量は、製剤中に存在するリコンビナント抗体の量、障害又は処置の種類及び上記検討された他の要因により決まる。これらは、一般的には、本明細書に記載されたのと同じ投与量及び投与経路で又は本明細書に記載された投与量の約1~99%で又は経験的/臨床的に適切であると決定される任意の投与量及び任意の経路で使用される。
【0121】
疾患の予防又は治療のために、本発明のリコンビナントラブドウイルス又は医薬組成物の適切な投与量(単独で又は1種以上の他の追加の治療剤と組み合わせて使用される場合)は、処置される疾患の種類、リコンビナントラブドウイルスのタイプ、疾患の重症度及び経過、リコンビナントラブドウイルスが予防又は治療目的で投与されるかどうか、以前の治療、患者の臨床歴及びリコンビナントラブドウイルスに対する応答並びに主治医の裁量により決まるであろう。本発明のリコンビナントラブドウイルス又は医薬組成物は、1回又は一連の処置にわたって患者に適切に投与される。
【0122】
疾患の種類及び重症度に応じて、リコンビナントラブドウイルスのTCID50により測定された約10~1013個の感染性粒子が、例えば、1回以上の別々の投与によるか又は持続注入によるかにかかわらず、患者への投与のための最初の候補投与量であることができる。状態に応じて、数日又はそれ以上にわたる反復投与の場合、処置は、一般的には、疾患症状の所望のサプレッションが生じるまで持続されるであろう。リコンビナントラブドウイルスの1つの例示的な投与量は、TCID50により測定された約10~1013個の範囲の感染性粒子であろう。このため、TCID50により測定される約10、10、1010、1011、1012又は1013個の感染性粒子(又はその任意の組み合わせ)の1回以上の用量を患者に投与することができる。このような用量を断続的に、例えば、毎週又は3週間毎に(例えば、患者が、約2~約20回又は例えば、約6回の用量のリコンビナントラブドウイルスを受けるように)投与することができる。初回のより高い負荷用量、続けて、1回以上のより低い用量又はその逆を投与することができる。ただし、他の投与計画が有用である場合がある。この治療の進行は、従来の技術及びアッセイにより容易にモニターされる。
【0123】
本発明のリコンビナントラブドウイルス及びそれを含む組成物の有効性を関与する特定の疾患に応じて、それ自体公知の任意の適切なin vitroアッセイ、細胞ベースのアッセイ、in vivoアッセイ及び/若しくは動物モデル又はそれらの任意の組み合わせを使用して試験することができる。適切なアッセイ及び動物モデルは、当業者には明らかであろうし、例えば、以下の実施例で使用されるアッセイ及び動物モデルを含む。
【0124】
実際の薬学的有効量又は治療用量は、当然、当業者に公知の要因、例えば、患者の年齢及び体重、投与経路及び疾患の重症度により決まる。いずれの場合も、本発明のリコンビナントラブドウイルスは、患者の固有の状態に基づいて薬学的有効量を送達することが可能となる投与量及び様式で投与されるであろう。
【0125】
代替的には、本発明のリコンビナントラブドウイルス又は医薬組成物を処置される領域のサイズ、使用されるウイルス力価、投与経路及び方法の所望の効果に応じて、範囲内の全ての数を含む約50μl~約100mlの容量で送達することができる。
【0126】
腫瘍内投与では、容量は、好ましくは、約100μl、200μl、300μl、400μl、500μl、600μl、700μl、800μl、900μl、1000μl、1100μl、1200μl、1300μl、1400μl、1500μl、1600μl、1700μl、1800μl、1900μl、2000μl、2500μl、3000μl、3500μl、4000μl又は約4500μlの容量を含む約50μl~約5mlである。好ましい実施態様では、容量は、約1000μlである。
【0127】
例えば、リコンビナントラブドウイルスの注入による全身投与では、容量は、当然、より多くてもよい。代替的には、リコンビナントラブドウイルスの濃縮溶液を注入の直前に、より大量の注入溶液で希釈することができる。
【0128】
特に、静脈内投与では、容量は、好ましくは、約2ml、3ml、4ml、5ml、6ml、7ml、8ml、9ml、10ml、11ml、12ml、13ml、14ml、15ml、16ml、17ml、18ml、19ml、20ml、25ml、30ml、35ml、40ml、45ml、50ml、55ml、60ml、70ml、75ml、80ml、85ml、90ml、95ml又は約100mlの容量を含む1ml~100mlである。好ましい実施態様では、容量は、約5ml~15mlであり、より好ましくは、容量は、約6ml、7ml、8ml、9ml、10ml、11ml、12ml、13ml又は約14mlである。
【0129】
好ましくは、同じ製剤が、腫瘍内投与及び静脈内投与に使用される。腫瘍内投与と静脈内投与との間の用量及び/又は容量比は、約1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、1:11、1:12、1:13、1:14、1:15、1:16、1:17、1:18、1:19又は約1:20であることができる。例えば、1:1の用量及び/又は容量比は、同じ用量及び/又は容量が腫瘍内及び静脈内に投与されることを意味し、一方、例えば、約1:20の用量及び/又は容量比は、腫瘍内投与の用量及び/又は容量より20倍高い静脈内投与の用量及び/又は容量を意味する。好ましくは、腫瘍内投与と静脈内投与との間の用量及び/又は容量比は、約1:9である。
【0130】
リコンビナントラブドウイルスの有効濃度は、望ましくは、1ミリリットル当たりに約10~1014ベクターゲノム(vg/ml)の範囲である。感染単位をMcLaughlin et al., J Virol.;62(6):1963-73 (1988)記載されているように測定することができる。好ましくは、濃度は、約1.5×10~約1.5×1013であり、より好ましくは、約1.5×10~約1.5×1011である。一実施態様では、有効濃度は、約1.5×10である。別の実施態様では、有効濃度は、約1.5×1010である。別の実施態様では、有効濃度は、約1.5×1011である。更に別の実施態様では、有効濃度は、約1.5×1012である。別の実施態様では、有効濃度は、約1.5×1013である。別の実施態様では、有効濃度は、約1.5×1014である。望ましくない影響のリスクを低減するために、最も低い有効濃度を使用するのが望ましい場合がある。これらの範囲における更に他の投与量を主治医により、処置される対象、好ましくは、ヒトの身体状態、対象の年齢、特定の種類のガン及びガンが進行性である場合、そのガンが進行している程度を考慮して選択することができる。
【0131】
リコンビナントラブドウイルスの有効ターゲット濃度をTCID50により表現することができる。TCID50は、例えば、Spearman-Karber法を使用することにより決定することができる。望ましくは、範囲は、1×10/ml~1×1014/ml TCID50の有効ターゲット濃度を含む。好ましくは、有効ターゲット濃度は、約1×10~1×1012/ml、より好ましくは、約1×10~1×1011/mlである。一実施態様では、有効ターゲット濃度は、約1×1010/mlである。好ましい実施態様では、ターゲット濃度は、約5×1010/mlである。別の実施態様では、有効ターゲット濃度は、約1.5×1011/mlである。一実施態様では、有効ターゲット濃度は、約1×1012/mlである。別の実施態様では、有効ターゲット濃度は、約1.5×1013/mlである。
【0132】
リコンビナントラブドウイルスの有効ターゲット用量もTCID50により表現することができる。望ましくは、範囲は、1×10~1×1014TCID50のターゲット用量を含む。好ましくは、ターゲット用量は、約1×10~1×1013、より好ましくは、約1×10~1×1012である。一実施態様では、有効濃度は、約1×1010である。好ましい実施態様では、有効濃度は、約1×1011である。一実施態様では、有効濃度は、約1×1012である。別の実施態様では、有効濃度は、約1×1013である。
【0133】
別の態様では、本明細書に記載された障害の治療、予防及び/又は診断に有用な材料を含有する、キット又はパーツキットが提供される。キット又はパーツキットは、容器と、容器上又は容器に付随するラベル又は添付文書とを含む。適切な容器は、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、IV溶液バッグ等を含む。容器を各種の材料、例えば、ガラス又はプラスチックで形成することができる。容器は組成物を、それ自体のみ又は障害を治療し、予防しかつ/又は診断するのに有効な別の組成物と組み合わせて保持し、滅菌アクセスポートを有することができる(例えば、容器は、皮下注射針により穿孔可能な栓を有する静脈内溶液バッグ又はバイアルであることができる)。組成物中の少なくとも1種の活性薬剤は、本発明のリコンビナントラブドウイルス又は医薬組成物である。ラベル又は添付文書は、該組成物が選択される状態を処置するのに使用されることを示す。
【0134】
更に、キット又はパーツキットは、(a)その中に収容された組成物を含む第1の容器であって、該組成物が本発明のリコンビナントラブドウイルス又は医薬組成物を含む第1の容器と、(b)その中に収容された組成物を含む第2の容器であって、該組成物が更なる細胞傷害性剤又は他の治療剤、例えば、PD-1経路阻害剤又はSMAC模倣物を含む第2の容器とを含むことができる。本発明のこの実施態様におけるキット又はパーツキットは、組成物を特定の状態、特に、ガンを処置するのに使用することができることを示す添付文書を更に含むことができる。代替的に又は付加的に、キット又はパーツキットは、薬学的に許容され得るバッファー、例えば、注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル液又はデキストロース溶液を含む第2の(又は第3の)容器を更に含むことができる。他のバッファー、希釈剤、フィルター、針及びシリンジを含む、商業的及び使用者の観点から望ましい他の材料を更に含むことができる。
【0135】
更なる態様では、本発明のリコンビナントラブドウイルスは、リコンビナントラブドウイルスの投与に有用な装置、例えば、シリンジ、注射ペン、マイクロポンプ又は他の装置と組み合わせて使用される。好ましくは、本発明のリコンビナントラブドウイルスは、例えば、リコンビナントラブドウイルスを使用するための説明書を伴う添付文書も含む、パーツキットに含まれる。
【0136】
医療用途
本発明の更なる態様は、医薬に使用するための、そのゲノム中に少なくとも1種のCD80細胞外ドメインFc融合タンパク質又はその機能的変異体をコードするリコンビナントラブドウイルスを提供する。
【0137】
本発明のリコンビナントラブドウイルスにより、腫瘍微小環境において、免疫原性細胞死及び自然免疫細胞の刺激と組み合わせて、腫瘍細胞溶解が効率的に誘引される。したがって、本発明のリコンビナントラブドウイルスは、ガンの治療及び/又は予防に有用である。
【0138】
更なる態様では、本発明のリコンビナントラブドウイルスを、ガンを患う個体に治療上有効量のリコンビナントラブドウイルスを投与し、それにより、ガンの1つ以上の症状を改善することを含む、ガンを治療しかつ/又は予防するための方法において使用することができる。
【0139】
更なる態様では、本発明は、ガンの治療及び/又は予防のための医薬の製造のための、本発明のリコンビナントラブドウイルスの使用を更に提供する。
【0140】
更なる態様では、本発明のリコンビナントラブドウイルスを、胃腸ガン、肺ガン又は頭頸部ガンを患っている個体に治療上有効量のリコンビナントラブドウイルスを投与し、それにより、胃腸ガン、肺ガン又は頭頸部ガンの1つ以上の症状を改善することを含む、胃腸ガン、肺ガン又は頭頸部ガンを治療しかつ/又は予防するための方法において使用することができる。
【0141】
疾患の予防又は治療のために、リコンビナントラブドウイルスの適切な投与量は、上記定義された各種の要因、例えば、処置される疾患の種類、疾患の重症度及び経過、リコンビナントラブドウイルスが予防又は治療目的で投与されるかどうか、以前の治療、患者の臨床歴及びリコンビナントラブドウイルスに対する応答並びに主治医の裁量により決まる。リコンビナントラブドウイルスは、1回又は一連の処置にわたって患者に適切に投与される。
【0142】
一態様では、ガンは、固形ガンである。固形ガンは、脳ガン、子宮内膜ガン、膣ガン、肛門ガン、結腸直腸ガン、中咽頭扁平上皮ガン、胃ガン、胃食道接合部腺ガン、食道ガン、肝細胞ガン、膵臓腺ガン、胆管ガン、膀胱尿路上皮ガン、転移性メラノーマ、前立腺ガン、乳ガン、卵巣ガン、頭頸部扁平上皮ガン(HNSCC)、神経膠芽腫、非小細胞肺ガン、脳腫瘍又は小細胞肺ガンである場合がある。胃腸ガン、肺ガン及び頭頸部ガンの処置が好ましい。
【0143】
リコンビナントラブドウイルスは、経口、非経口、皮下、腫瘍内、静脈内、皮内、腹腔内、肺内及び鼻腔内を含む、任意の適切な手段により投与される。非経口注入は、筋内、静脈内、動脈内、腹腔内又は皮下投与を含む。加えて、リコンビナントラブドウイルスは、パルス注入により適切に投与される。一態様では、投与が短期であるか又は慢性であるかに部分的に依存して、投与は、注射、最も好ましくは、静脈内又は皮下注射により与えられる。
【0144】
本発明の特定のリコンビナントラブドウイルス並びにその特定の薬物動態及び他の特性に応じて、毎日、2日に1回、3日に1回、4日に1回、5日に1回又は6日に1回、毎週、毎月等で投与することができる。投与計画は、長期の週1回の処置を含むことができる。「長期」は、少なくとも2週間、好ましくは、数ヶ月又は数年の期間を意味する。
【0145】
処置スケジュールは、種々の計画を含むことができ、典型的には、1、2、3又は4週間の期間にわたって患者に投与される複数回の用量を必要とし、場合により、1回以上の更なる処置ラウンドを続ける。一態様では、本発明のリコンビナントラブドウイルスは、所定の期間内に最大1、2、3、4、5、又は6回の用量で患者に投与される。好ましくは、第1の処置ラウンドは、3週間以内に終了する。3週間の処置の過程の間、リコンビナントラブドウイルスを下記スキームに記載されるように患者に投与することができる:(i)0日目に1回;(ii)0日目及び3日目に1回;(iii)0日目、3日目及び6日目に1回;(iv)0日目、3日目、6日目及び9日目に1回;(v)0日目及び5日目に1回;(vi)0日目、5日目及び10日目に1回;(vi)0日目、5日目、10日目及び15日目に1回。これらの計画を繰り返すことができ、第1の処置ラウンドのアウトカムに応じて、第2又は第3の処置ラウンドが必要とされる場合がある。第1の処置ラウンドに基づいて計算すると、第2の処置ラウンドは、好ましくは、21日目、42日目及び63日目の更なる処置を含む。好ましい実施態様では、本発明のリコンビナントラブドウイルスは、下記スキームに従って患者に投与される:0日目、3日目、21日目、42日目及び63日目。
【0146】
「サプレッション」という用語は、本明細書において、疾患の1つ以上の特徴を軽減し又は減少させるのを意味するために、「改善」及び「緩和」と同じ文脈で使用される。本発明のリコンビナントラブドウイルス又は医薬組成物は、良好な医療行為と一致する様式で製剤化され、投薬され、投与される。この文脈において考慮すべき要因は、処置される特定の障害、処置される特定のほ乳類、個々の患者の臨床状態、障害の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与スケジュール及び医師に公知の他の要因を含む。投与されるリコンビナントラブドウイルスの「治療上有効量」は、このような考慮事項により決定されうであろうし、ガンの臨床症状を予防し、改善し又は治療するのに必要な最少量、特に、これらの障害に有効な最少量である。
【0147】
別の態様では、本発明のリコンビナントラブドウイルスを複数回及び数回の用量で投与することができる。一態様では、リコンビナントラブドウイルスの第1の用量腫は、瘍内に投与され、リコンビナントラブドウイルスの後続の用量は、静脈内に投与される。更なる態様では、リコンビナントラブドウイルスの第1の用量及び少なくとも1回以上の後続の用量は、腫瘍内に投与され、リコンビナントラブドウイルスの後続の用量は、静脈内に投与される。後続の用量を最初の腫瘍内投与後1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、30日又は31日で投与することができる。
【0148】
別の態様では、リコンビナントラブドウイルスの第1の用量は、静脈内に投与され、リコンビナントラブドウイルスの後続の用量は、腫瘍内に投与される。後続の用量を最初の静脈内投与後1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、30日又は31日で投与することができる。
【0149】
別の態様では、リコンビナントラブドウイルスは、静脈内に投与され、リコンビナントラブドウイルスの後続の用量は、腫瘍内に投与される。
【0150】
別の態様では、リコンビナントラブドウイルスは、各時点で静脈内及び腫瘍内に投与される。
【0151】
上記されたように、本発明のリコンビナントラブドウイルスは、ガン細胞に対する免疫応答を刺激するために多くの有用性を有する。強力な免疫活性化能は、腫瘍微小環境に限定されることが観察された。このため、好ましい態様では、本発明のリコンビナントラブドウイルスを患者に全身投与することができる。全身適用性は、重要な属性である。多くのガンは、高度に転移し、アクセスが困難かつアクセス可能でない腫瘍性病変の処置が可能となるであろうためである。この固有の免疫刺激特性により、本発明のリコンビナントラブドウイルスは、転移性腫瘍の処置に特に有用である。
【0152】
一部の患者は、チェックポイント阻害剤療法に対する抵抗性を発症し、このような患者は、IFN経路に突然変異を蓄積すると見られることが観察された。したがって、一態様では、本発明のリコンビナントラブドウイルス、特に、本発明のリコンビナント水疱性口内炎ウイルスは、チェックポイント阻害剤療法に対する抵抗性を発症した患者の処置に有用である。本発明のリコンビナントラブドウイルス、特に、リコンビナント水疱性口内炎ウイルスの固有の免疫促進特性のために、このような処置された患者は、チェックポイント阻害剤療法の継続に適格となることができる。
【0153】
好ましい実施態様では、本発明のリコンビナントラブドウイルス、特に、本発明のリコンビナント水疱性口内炎ウイルスは、PD-1又はPD-L1阻害剤、例えば、PD-1又はPD-L1に対するアンタゴニスト抗体のいずれかによるチェックポイント阻害剤療法を完了した非小細胞肺ガンを有する患者の処置に有用である。
【0154】
上記医薬製剤又は治療方法のいずれかを、本発明のリコンビナントラブドウイルス又は医薬組成物のいずれか1つを使用して行うことができると理解される。
【0155】
併用
また、本発明は、現在使用されている及び/又は先行技術において公知の処置/方法と比較して、特定の利点を提供する併用処置/方法を提供する。これらの利点は、in vivoでの有効性(例えば、改善された臨床応答、応答の延長、応答速度の向上、応答の持続時間、疾患安定化速度、安定化の持続時間、疾患進行までの時間、無増悪生存(PFS)及び/又は全生存(OS)、抵抗性の発生の遅延等)、安全かつ十分に耐容される投与並びに有害事象の頻度及び重症度の低下を含むことができる。
【0156】
本発明のリコンビナントラブドウイルスを他の薬理学的に活性な成分、例えば、最新技術又は標準治療化合物、例えば、細胞増殖抑制性物質又は細胞傷害性物質、細胞増殖阻害剤、抗血管新生物質、ステロイド、免疫モジュレーター/チェックポイント阻害剤等と組み合わせて使用することができる。本発明のリコンビナントラブドウイルスを放射線療法と組み合わせて使用することもできる。
【0157】
本発明のリコンビナントラブドウイルスと組み合わせて投与することができる細胞増殖抑制性物質及び/又は細胞傷害活性物質は、ホルモン、ホルモン類似体及び抗ホルモン、アロマターゼ阻害剤、LHRHアゴニスト及びアンタゴニスト、成長因子(成長因子、例えば、血小板由来成長因子(PDGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、血管内皮成長因子(VEGF)、上皮成長因子(EGF)、インスリン様成長因子(IGF)、ヒト上皮成長因子(HER、例えば、HER2、HER3、HER4)及び肝細胞成長因子(HGF)等)の阻害剤、例えば、(抗)成長因子抗体、(抗)成長因子レセプター抗体及びチロシンキナーゼ阻害剤、例えば、セツキシマブ、ゲフィチニブ、アファチニブ、ニンテダニブ、イマチニブ、ラパチニブ、ボスチニブ及びトラスツズマブ等;代謝拮抗剤(例えば、抗葉酸剤、例えば、メトトレキサート、ラルチトレキセド、ピリミジン類似体、例えば、5-フルオロウラシル(5-FU)、ゲムシタビン、イリノテカン、ドキソルビシン、TAS-102、カペシタビン及びゲムシタビン、プリン及びアデノシン類似体、例えば、メルカプトプリン、チオグアニン、クラドリビン及びペントスタチン、シタラビン(ara C)、フルダラビン);抗腫瘍抗生物質(例えば、アントラサイクリン);白金誘導体(例えば、シスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチン);アルキル化剤(例えば、エストラムスチン、メロレタミン、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、ダカルバジン、シクロホスファミド、イホスファミド、テモゾロミド、ニトロソウレア、例えば、カルムスチン及びロムスチン、チオテパ等);抗有糸分裂剤(例えば、ビンカアルカロイド、例えば、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン及びビンクリスチン等;並びにタキサン、例えば、パクリタキセル、ドセタキセル);ベバシズマブ、ラムシムマブ及びアフリベルセプトを含む血管新生阻害剤、チューブリン阻害剤;DNA合成阻害剤、PARP阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤(例えば、エピポドフィロトキシン、例えば、エトポシド及びエトポフォス、テニポシド、アムサクリン、トポテカン、イリノテカン、ミトキサントロン等)、セリン/スレオニンキナーゼ阻害剤(例えば、PDK1阻害剤、Raf阻害剤、A-Raf阻害剤、B-Raf阻害剤、C-Raf阻害剤、mTOR阻害剤、mTORC1/2阻害剤、PI3K阻害剤、PI3Kα阻害剤、二重mTOR/PI3K阻害剤、STK33阻害剤、AKT阻害剤、PLK1阻害剤(例えば、ボラセルチブ)、CDK9阻害剤を含むCDK阻害剤、オーロラキナーゼ阻害剤)、チロシンキナーゼ阻害剤(例えば、PTK2/FAK阻害剤)、タンパク質タンパク質相互作用阻害剤、MEK阻害剤、ERK阻害剤、FLT3阻害剤、BRD4阻害剤、IGF-1R阻害剤、Bcl-xL阻害剤、Bcl-2阻害剤、Bcl-2/Bcl-xL阻害剤、ErbBレセプター阻害剤、BCR-ABL阻害剤、ABL阻害剤、Src阻害剤、ラパマイシン類似体(例えば、エベロリムス、テムシロリムス、リダホロリムス、シロリムス)、アンドロゲン合成阻害剤、アンドロゲンレセプター阻害剤、DNMT阻害剤、HDAC阻害剤、ANG1/2阻害剤、CYP17阻害剤、放射線医薬、免疫療法剤、例えば、免疫チェックポイント阻害剤(例えば、CTLA4、PD1、PD-L1、LAG3及びTIM3結合分子/免疫グロブリン、例えば、イピリムマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ)及び種々の化学療法剤、例えば、アミホスチン、アナグレリッド、クロドロナト、フィルグラスチン、インターフェロン、インターフェロンアルファ、ロイコボリン、リツキシマブ、プロカルバジン、レバミソール、メスナ、ミトタン、パミドロナート及びポルフィマー;プロテアソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブ);Smac及びBH3模倣物;mdm2-p53アンタゴニストを含むp53機能性を回復させる薬剤;Wnt/ベータ-カテニンシグナル伝達経路の阻害剤;Flt3L及びFlt3刺激抗体又はリガンド模倣物;SIRPアルファ及びCD47遮断治療剤並びに/又はサイクリン依存性キナーゼ9阻害剤を含むが、これらに限定されない。
【0158】
更に、免疫学的「非炎症性」の「炎症性」腫瘍への潜在的変換、CD80-Fc媒介性T細胞活性化と組み合わせた骨髄/樹状細胞活性化は、T細胞エンゲージャー等の治療法と更に好ましく相互作用する。このため、一実施態様では、本発明のリコンビナントラブドウイルスをT細胞エンゲージャー、例えば、T細胞レセプター刺激を提供するが、共刺激を提供しない二重特異性DLL3/CD3バインダー等との併用処置に使用することができる。更に、潜在的な臨床的併用パートナーは、腫瘍血管系モデュレーション剤を含むこともできる。このため、別の実施態様では、本発明のリコンビナントラブドウイルスを腫瘍血管モデュレーション剤、例えば、二重特異性VEGF/ANG2バインダー等との併用処置に使用することができる。
【0159】
本発明のリコンビナントラブドウイルスをPD-1経路阻害剤又はSMACm/IAPアンタゴニストのいずれかとの併用処置に使用することができる。このような併用処置を物質の非固定の(例えば、自由な)併用として又はパーツキットを含む固定された併用の形態で与えることができる。
【0160】
この文脈において、本発明の意味における「併用」又は「併用された」は、2つ以上の活性剤の混合又は併用により生じる生成物を含み、固定及び非固定の(例えば、自由な)併用(キットを含む)及び使用、例えば、成分又は薬剤の同時(simultaneous)、同時(concurrent)、連続(sequential)、連続(successive)、交互又は別個の使用の両方を含むが、これらに限定されない。「固定された併用」という用語は、活性薬剤が両方とも、単一の実体又は剤型の形態で同時に患者に投与されることを意味する。「非固定の併用」という用語は、活性薬剤が同時に、同時に又は特定の時間制限なしに連続してのいずれかで、別個の実体として患者に投与されることを意味する。ここで、このような投与は、患者の体内の2つの化合物の治療上有効レベルを提供する。後者は、カクテル療法、例えば、3種以上の活性薬剤の投与にも適用される。
【0161】
本発明は、本明細書に記載されたガンの処置、好ましくは、固形ガンの処置に使用するための、PD-1経路阻害剤又はSMACm/IAPアンタゴニストと組み合わせたリコンビナントラブドウイルスを提供する。
【0162】
また、本発明は、本明細書に記載されたガンの治療及び/又は予防、好ましくは、固形ガンの処置のための医薬の製造のための、PD-1経路阻害剤又はSMACm/IAPアンタゴニストと組み合わせたリコンビナントラブドウイルスの使用も提供する。
【0163】
本発明は、ガンを治療しかつ/又は予防するための方法であって、治療上有効量の本発明のリコンビナントラブドウイルスと、PD-1経路阻害剤又はSMACm/IAPアンタゴニストとを、ガンを患っている個体に投与し、それにより、ガンの1つ以上の症状を改善することを含む、方法を更に提供する。本発明のリコンビナントラブドウイルス及びPD-1経路阻害剤又はSMACm/IAPアンタゴニストを同時に、連続的に又は交互に投与することができる。
【0164】
本発明のリコンビナントラブドウイルス及びPD-1経路阻害剤又はSMACm/IAPアンタゴニストを同じ投与経路により又は異なる投与経路を介して投与することができる。好ましくは、PD-1経路阻害剤又はSMACm/IAPアンタゴニストは、静脈内に投与され、本発明のリコンビナントラブドウイルスは、腫瘍内に投与される。別の実施態様では、PD-1経路阻害剤又はSMACm/IAPアンタゴニストは、静脈内に投与し、本発明のリコンビナントラブドウイルスは、少なくとも1回腫瘍内に投与され、リコンビナントラブドウイルスの後続の用量は、静脈内に投与される。後続の用量を最初の腫瘍内投与後1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、30日又は31日で投与することができる。好ましい実施態様では、PD-1経路阻害剤又はSMACm/IAPアンタゴニストは、最初の腫瘍内投与後21日で投与される。
【0165】
(i)SMAC模倣物(SMACm)/IAPアンタゴニスト、
(ii)抗PD-1及び抗PD-L1剤を含む免疫療法剤並びに抗LAG3剤、例えば、ペンブロリズマブ及びニボルマブ及び国際公開第2017/198741号に開示されている抗体
と組み合わせた本発明のリコンビナントラブドウイルスによる処置が特に好ましい。
【0166】
本明細書で提供される組み合わせは、(i)本発明のリコンビナントラブドウイルスと、(iia)PD-1経路阻害剤、好ましくは、PD-1若しくはPD-L1に対するアンタゴニスト抗体又は(iib)SMACm/IAPアンタゴニストとを含む。本明細書に記載されたガンの処置のための、(i)及び(iia)又は(i)及び(iib)を含むこのような組み合わせの使用が更に提供される。
【0167】
別の態様では、(i)本発明のリコンビナントラブドウイルス及び(iia)PD-1経路阻害剤又は(iib)SMACm/IAPアンタゴニストの使用を含む、併用処置が提供される。このような併用処置において、本発明のリコンビナントラブドウイルスをPD-1経路阻害剤又はSMACm/IAPアンタゴニストと同時に、連続的に又は交互に投与することができる。
【0168】
例えば、「同時」投与は、同じ一般的な期間内に、例えば、同じ日に、ただし、必ずしも同時にではなく、活性薬剤を投与することを含む。交互の投与は、ある期間、例えば、数日又は1週間にわたって、1つの薬剤を投与し、続けて、後続の期間、例えば、数日又は1週間にわたって他の薬剤を投与し、ついで、1回以上のサイクルにわたってこのパターンを繰り返すことを含む。連続又は連続投与は、1つ以上の用量を使用する第1の期間(例えば、数日又は1週間にわたる)に1つの薬剤を投与し、続けて、1つ以上の用量を使用する第2の期間(例えば、数日又は1週間にわたる)に他の薬剤を投与することを含む。必ずしも規則的な順序に従う必要がない、処置期間にわたって異なる日に活性薬剤を投与することを含む、重複するスケジュールも利用することができる。例えば、使用される薬剤及び対象の状態に従って、これらの一般的なガイドラインの変形例も利用することができる。
【0169】
連続的な処置スケジュールには、本発明のリコンビナントラブドウイルスの投与、続けて、PD-1経路阻害剤又はSMACm/IAPアンタゴニストの投与を含む。また、連続的な処置スケジュールは、PD-1経路阻害剤又はSMACm/IAPアンタゴニストの投与、続けて、本発明のリコンビナントラブドウイルスの投与も含む。連続的な処置スケジュールは、互いの後1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、30日又は31日での投与を含むことができる。
【0170】
本発明及びその全ての実施態様の意味の範囲内のPD-1経路阻害剤は、PD-1とそのレセプターとの相互作用を阻害する化合物である。PD-1経路阻害剤は、好ましくは、PD-1レセプターにより媒介されるPD-1経路シグナル伝達を損わせることが可能である。PD-1阻害剤は、PD-1経路シグナル伝達を拮抗可能な、PD-1経路の任意のメンバーに対する任意の阻害剤であることができる。阻害剤は、PD-1経路の任意のメンバーをターゲットとする、好ましくは、PD-1レセプター、PD-L1又はPD-L2に対するアンタゴニスト抗体であることができる。また、PD-1経路阻害剤は、PD-1レセプターのフラグメント又はPD1リガンドの活性を遮断するPD-1レセプターであることができる。
【0171】
PD-1アンタゴニストは、当技術分野において周知であり、例えば、Li et al., Int. J. Mol. Sci. 2016, 17, 1151(参照により本明細書に組み入れられる)にレビューされている。任意のPD-1アンタゴニスト、特に、Li et al.に開示されているような抗体及び本明細書において以下に開示される更なる抗体を本発明に従って使用することができる。好ましくは、本発明のPD-1アンタゴニスト及びその全ての実施態様は、下記抗体:
・ペンブロリズマブ(抗PD-1抗体);
・ニボルマブ(抗PD-1抗体);
・ピジリズマブ(抗PD-1抗体);
・PDR-001(抗PD-1抗体);
・本明細書において以下に開示されるPD1-1、PD1-2、PD1-3、PD1-4及びPD1-5(抗PD-1抗体)
・アテゾリズマブ(抗PD-L1抗体);
・アベルマブ(抗PD-L1抗体);
・デュルバルマブ(抗PD-L1抗体)
からなる群より選択される。
【0172】
例えば、Hamid, O. et al. (2013) New England Journal of Medicine 369(2):134-44に開示されているペンブロリズマブ(以前は、ランブロリズマブとしても公知;商品名Keytruda;MK-3475としても公知)は、PD-1に結合するヒト化IgG4モノクローナル抗体であり、Fc媒介性細胞傷害を防止するように設計されたC228Pでの突然変異を含有する。例えば、ペンブロリズマブは、米国特許第8,354,509号明細書及び国際公開第2009/114335号に開示されている。ペンブロリズマブは、切除不能又は転移性メラノーマを患っている患者及び転移性NSCLCを有する患者の処置のために、FDAにより認可されている。
【0173】
ニボルマブ(CAS登録番号:946414-94-4; BMS-936558又はMDX1106b)は、検出可能な抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を欠き、PD-1を特異的に遮断する完全ヒトIgG4モノクローナル抗体である。ニボルマブは、例えば、米国特許第8,008,449号明細書及び国際公開第2006/121168号に開示されている。ニボルマブは、切除不能又は転移性メラノーマ、転移性NSCLC及び進行性腎細胞ガンを患っている患者の処置のために、FDAにより認可されている。
【0174】
ピジリズマブ(CT-011;Cure Tech)は、PD-1に結合するヒト化IgG1kモノクローナル抗体である。例えば、ピジリズマブは、例えば、国際公開第2009/101611号に開示されている。
【0175】
PDR-001又はPDR001は、PD-L1及びPD-L2のPD-1への結合を遮断する高親和性リガンド遮断ヒト化抗PD-1 IgG4抗体である。PDR-001は、国際公開第2015/112900号及び同第2017/019896号に開示されている。
【0176】
抗体PD1-1~PD1-5は、表1に示される配列により定義される抗体分子である。表中、HCは、(全長)重鎖を示し、LCは、(全長)軽鎖を示す。
【0177】
【表1】

【0178】
具体的には、本明細書において上記された抗PD-1抗体分子は、
(PD1-1:)配列番号:14のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号:15のアミノ酸配列を含む軽鎖;又は
(PD1-2:)配列番号:16のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号:17のアミノ酸配列を含む軽鎖;又は
(PD1-3:)配列番号:18のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号:19のアミノ酸配列を含む軽鎖;又は
(PD1-4:)配列番号:20のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号:21のアミノ酸配列を含む軽鎖;又は
(PD1-5:)配列番号:22のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号:23のアミノ酸配列を含む軽鎖
を有する。
【0179】
アテゾリズマブ(Tecentriq、MPDL3280Aとしても公知)は、PD-L1をターゲットとするファージ由来ヒトIgG1kモノクローナル抗体であり、例えば、Deng et al. mAbs 2016;8:593-603に記載されている。アテゾリズマブは、尿路上皮ガンを患っている患者の処置のために、FDAにより認可されている。
【0180】
アベルマブは、完全ヒト抗PD-L1 IgG1モノクローナル抗体であり、Boyerinas et al. Cancer Immunol. Res. 2015;3:1148-1157に記載されている。
【0181】
デュルバルマブ(MEDI4736)は、PD-L1に高い特異性を有するヒトIgG1kモノクローナル抗体であり、例えば、Stewart et al. Cancer Immunol. Res. 2015;3:1052-1062又はIbrahim et al. Semin. Oncol. 2015;42:474-483に記載されている。
【0182】
Li et al.(上記)に開示されているか又は臨床試験中であることが公知の更なるPD-1アンタゴニスト、例えば、AMP-224、MEDI680(AMP-514)、REGN2810、BMS-936559、JS001-PD-1、SHR-1210、BMS-936559、TSR-042、JNJ-63723283、MEDI4736、MPDL3280A及びMSB0010718Cを上記言及されたアンタゴニストに代えて又は加えて使用することができる。
【0183】
本明細書で使用する場合、INNは、起源抗体と同じか又は実質的に同じアミノ酸配列を有する全ての生体類似抗体を包含することも意味する。生体類似抗体は、米国において42 USC §262サブセクション(k)及び他の管轄における同等の規制の下で認可されたような生体類似抗体を含むが、これらに限定されない。
【0184】
上記列記されたPD-1アンタゴニストは、それらの製造、治療用途及び特性それぞれについて、当技術分野において公知である。
【0185】
一実施態様では、PD-1アンタゴニストは、ペンブロリズマブである。
【0186】
別の実施態様では、PD-1アンタゴニストは、ニボルマブである。
【0187】
別の実施態様では、PD-1アンタゴニストは、ピジリズマブである。
【0188】
別の実施態様では、PD-1アンタゴニストは、アテゾリズマブである。
【0189】
別の実施態様では、PD-1アンタゴニストは、アベルマブである。
【0190】
別の実施態様では、PD-1アンタゴニストは、デュルバルマブである。
【0191】
別の実施態様では、PD-1アンタゴニストは、PDR-001である。
【0192】
別の実施態様では、PD-1アンタゴニストは、PD1-1である。
【0193】
別の実施態様では、PD-1アンタゴニストは、PD1-2である。
【0194】
別の実施態様では、PD-1アンタゴニストは、PD1-3である。
【0195】
別の実施態様では、PD-1アンタゴニストは、PD1-4である。
【0196】
別の実施態様では、PD-1アンタゴニストは、PD1-5である。
【0197】
本発明及びその全ての実施態様の意味の範囲内のSMAC模倣物は、IAPタンパク質に結合し、その分解を誘引する化合物である。好ましくは、本発明及びその全ての実施態様内のSMAC模倣物は、下記(A0):
・国際公開第2013/127729号に(一般的に及び/又は具体的に)開示されているSMAC模倣物(すなわち、化合物)又はその薬学的に許容され得る塩;
・国際公開第2015/025018号に(一般的に及び/又は具体的に)開示されているSMAC模倣物(すなわち、化合物)又はその薬学的に許容され得る塩;
・国際公開第2015/025019号に(一般的に及び/又は具体的に)開示されているSMAC模倣物(すなわち、化合物)又はその薬学的に許容され得る塩;
・国際公開第2016/023858号に(一般的に及び/又は具体的に)開示されているSMAC模倣物(すなわち、化合物)又はその薬学的に許容され得る塩;
・国際公開第2008/0016893号に(一般的に及び/又は具体的に)開示されているSMAC模倣物(すなわち、化合物)又はその薬学的に許容され得る塩;
・LCL161、すなわち、国際公開第2008/016893号(28/29頁;[122])の実施例1における化合物A又はその薬学的に許容され得る塩;
・Debio-1143として公知のSMAC模倣物又はその薬学的に許容され得る塩;
・ビリナパントとして公知のSMAC模倣物又はその医薬的に許容され得る塩;
・ASTX-660として公知のSMAC模倣物又はその薬学的に許容され得る塩;
・CUDC-427として公知のSMAC模倣物又はその薬学的に許容され得る塩
・表2におけるSMAC模倣物1~26のいずれか1つ又はその薬学的に許容され得る塩
からなる群より選択される。
【0198】
【表2】




【0199】
表2における例示的な化合物1~10は、国際公開第2013/127729号に開示されている。表2における例示的な化合物11~26は、国際公開第2016/023858号に開示されている。
【0200】
本明細書で使用する場合、「SMAC模倣物/IAPアンタゴニスト」という用語は、互変異性体、薬学的に許容され得る塩、水和物又は溶媒和物(薬学的に許容され得る塩の水和物又は溶媒和物を含む)の形態にある、上記列記されたSMAC模倣物も含む。また、この用語は、その全ての固体、好ましくは、結晶形態並びにその薬学的に許容され得る塩、水和物及び溶媒和物(薬学的に許容され得る塩の水和物及び溶媒和物を含む)の全ての結晶形態にあるSMAC模倣物も含む。
【0201】
上記列記された全てのSMAC模倣物は、合成及び特性それぞれについて、当技術分野において公知である。上記言及された全ての特許出願は、その全体が参照により組み入れられる。
【0202】
一実施態様では、SMAC模倣物は、LCL161又はその薬学的に許容され得る塩である(A1)。
【0203】
別の実施態様では、SMAC模倣物は、表2中の化合物1又はその薬学的に許容され得る塩である(A2)。
【0204】
別の実施態様では、SMAC模倣物は、表2中の化合物2又はその薬学的に許容され得る塩である(A3)。
【0205】
別の実施態様では、SMAC模倣物は、表2中の化合物3又はその薬学的に許容され得る塩である(A4)。
【0206】
別の実施態様では、SMAC模倣物は、表2中の化合物4又はその薬学的に許容され得る塩である(A5)。
【0207】
別の実施態様では、SMAC模倣物は、表2中の化合物5又はその薬学的に許容され得る塩である(A6)。
【0208】
別の実施態様では、SMAC模倣物は、表2中の化合物6又はその薬学的に許容され得る塩である(A7)。
【0209】
別の実施態様では、SMAC模倣物は、表2中の化合物7又はその薬学的に許容され得る塩である(A8)。
【0210】
別の実施態様では、SMAC模倣物は、表2中の化合物8又はその薬学的に許容され得る塩である(A9)。
【0211】
別の実施態様では、SMAC模倣物は、表2中の化合物9又はその薬学的に許容され得る塩である(A10)。
【0212】
別の実施態様では、SMAC模倣物は、表2中の化合物10又はその薬学的に許容され得る塩である(A11)。
【0213】
別の実施態様では、SMAC模倣物は、表2中の化合物11又はその薬学的に許容され得る塩である(A12)。
【0214】
別の実施態様では、SMAC模倣物は、表2中の化合物12又はその薬学的に許容され得る塩である(A13)。
【0215】
別の実施態様では、SMAC模倣物は、表2中の化合物13又はその薬学的に許容され得る塩である(A14)。
【0216】
別の実施態様では、SMAC模倣物は、表2中の化合物14又はその薬学的に許容され得る塩である(A15)。
【0217】
別の実施態様では、SMAC模倣物は、表2中の化合物15又はその薬学的に許容され得る塩である(A16)。
【0218】
別の実施態様では、SMAC模倣物は、表2中の化合物16又はその薬学的に許容され得る塩である(A17)。
【0219】
別の実施態様では、SMAC模倣物は、表2中の化合物17又はその薬学的に許容され得る塩である(A18)。
【0220】
別の実施態様では、SMAC模倣物は、表2中の化合物18又はその薬学的に許容され得る塩である(A19)。
【0221】
別の実施態様では、SMAC模倣物は、表2中の化合物19又はその薬学的に許容され得る塩である(A20)。
【0222】
別の実施態様では、SMAC模倣物は、表2中の化合物20又はその薬学的に許容され得る塩である(A21)。
【0223】
別の実施態様では、SMAC模倣物は、表2中の化合物21又はその薬学的に許容され得る塩である(A22)。
【0224】
別の実施態様では、SMAC模倣物は、表2中の化合物22又はその薬学的に許容され得る塩である(A23)。
【0225】
別の実施態様では、SMAC模倣物は、表2中の化合物23又はその薬学的に許容され得る塩である(A24)。
【0226】
別の実施態様では、SMAC模倣物は、表2中の化合物24又はその薬学的に許容され得る塩である(A25)。
【0227】
別の実施態様では、SMAC模倣物は、表2中の化合物25又はその薬学的に許容され得る塩である(A26)。
【0228】
別の実施態様では、SMAC模倣物は、表2中の化合物26又はその薬学的に許容され得る塩である(A27)。
【0229】
全ての実施態様(A1)~(A27)は、SMAC模倣物の性質に関して、実施態様(A0)の好ましい実施態様である。
【0230】
併用処置に関する好ましい実施態様では、リコンビナントラブドウイルスは、そのゲノム中で少なくとも1種のCD80細胞外ドメインFc融合タンパク質又はその機能的変異体、好ましくは、(i)IgG1のFcドメインに融合したCD80細胞外ドメインを含むCD80細胞外ドメインFc融合タンパク質、(ii)IgG1のFcドメインに融合したCD80細胞外ドメインを含み、ここで、CD80細胞外ドメインが配列番号:1を含むか若しくはこれからなるか又は配列番号:1と少なくとも80%の同一性を有するCD80細胞外ドメインFc融合タンパク質、(iii)IgG1のFcドメインに融合したCD80細胞外ドメインを含み、ここで、Fcドメインが配列番号:2を含むか若しくはこれからなるか又は配列番号:2と少なくとも80%の同一性を有するCD80細胞外ドメインFc融合タンパク質、(iv)IgG1のFcドメインに融合したCD80細胞外ドメインを含み、ここで、CD80細胞外ドメインが配列番号:1を含むか若しくはこれからなるか又は配列番号:1と少なくとも80%の同一性を有し、Fcドメインが配列番号:2を含むか若しくはこれからなるか又は配列番号:2と少なくとも80%の同一性を有するCD80細胞外ドメインFc融合タンパク質、(v)IgG1のFcドメインに融合したCD80細胞外ドメインを含み、ここで、CD80細胞外ドメインが配列番号:4のアミノ酸1~207からなるか又は配列番号:4のアミノ酸1~207と少なくとも80%の同一性を有し、Fcドメインが配列番号:4のアミノ酸208~433からなるか又は配列番号:4のアミノ酸208~433と少なくとも80%の同一性を有するCD80細胞外ドメインFc融合タンパク質、(vi)シグナルペプチド配列を更に含む(i)~(v)のいずれかに記載のCD80細胞外ドメインFc融合タンパク質又は(vii)配列番号:3を含むか又は配列番号:3と少なくとも80%の同一性を有するCD80細胞外ドメインFc融合タンパク質を含む群から選択されるヒトCD80細胞外ドメインをコードするリコンビナント水疱性口内炎ウイルスであり、ここで、リコンビナント水疱性口内炎ウイルスの糖タンパク質Gをコードする遺伝子は、リンパ球脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)の糖タンパク質GPをコードする遺伝子により置き換えられておりかつ/又は糖タンパク質Gは、LCMVの糖タンパク質GPにより置き換えられている。
【0231】
併用処置に関する更に好ましい実施態様では、リコンビナントラブドウイルスは、そのゲノム中で水疱性口内炎ウイルスの核タンパク質(N)、大型タンパク質(L)、リンタンパク質(P)、マトリックスタンパク質(M)、糖タンパク質(G)及び少なくとも1種のCD80細胞外ドメインFc融合タンパク質又はその機能的変異体、好ましくは、ヒトCD80細胞外ドメインをコードするリコンビナント水疱性口内炎ウイルスであり、ここで、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質又はその機能的変異体は、(i)IgG1のFcドメインに融合したCD80細胞外ドメインを含むCD80細胞外ドメインFc融合タンパク質、(ii)IgG1のFcドメインに融合したCD80細胞外ドメインを含み、ここで、CD80細胞外ドメインが配列番号:1を含むか若しくはこれからなるか又は配列番号:1と少なくとも80%の同一性を有するCD80細胞外ドメインFc融合タンパク質、(iii)IgG1のFcドメインに融合したCD80細胞外ドメインを含み、ここで、Fcドメインが配列番号:2を含むか若しくはこれからなるか又は配列番号:2と少なくとも80%の同一性を有するCD80細胞外ドメインFc融合タンパク質、(iv)IgG1のFcドメインに融合したCD80細胞外ドメインを含み、ここで、CD80細胞外ドメインが配列番号:1を含むか若しくはこれからなるか又は配列番号:1と少なくとも80%の同一性を有し、Fcドメインが配列番号:2を含むか若しくはこれからなるか又は配列番号:2と少なくとも80%の同一性を有するCD80細胞外ドメインFc融合タンパク質、(v)IgG1のFcドメインに融合したCD80細胞外ドメインを含み、ここで、CD80細胞外ドメインが配列番号:4のアミノ酸1~207からなるか又は配列番号:4のアミノ酸1~207と少なくとも80%の同一性を有し、Fcドメインが配列番号:4のアミノ酸208~433からなるか又は配列番号:4のアミノ酸208~433と少なくとも80%の同一性を有するCD80細胞外ドメインFc融合タンパク質、(vi)シグナルペプチド配列を更に含む(i)~(v)のいずれかに記載のCD80細胞外ドメインFc融合タンパク質又は(vii)配列番号:3を含むか又は配列番号:3と少なくとも80%の同一性を有するCD80細胞外ドメインFc融合タンパク質を含む群から選択され、ここで、水疱性口内炎ウイルスの糖タンパク質Gをコードする遺伝子は、リンパ球脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)の糖タンパク質GPをコードする遺伝子により置き換えられておりかつ/又は糖タンパク質Gは、LCMVの糖タンパク質GPにより置き換えられており、ここで、核タンパク質(N)は、配列番号:7に記載されたアミノ酸又は配列番号:7と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一の機能的変異体を含み、リンタンパク質(P)は、配列番号:8に記載されたアミノ酸又は配列番号:8と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一の機能的変異体を含み、大型タンパク質(L)は、配列番号:9に記載されたアミノ酸又は配列番号:9と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一の機能的変異体を含み、マトリックスタンパク質(M)は、配列番号:10に記載されたアミノ酸又は配列番号:10と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一の機能的変異体を含む。
【0232】
併用処置に関するより好ましい実施態様では、リコンビナントラブドウイルスは、そのゲノム中で少なくとも1種のCD80細胞外ドメインFc融合タンパク質又はその機能的変異体、好ましくは、ヒトCD80細胞外ドメインをコードするリコンビナント水疱性口内炎ウイルスであり、ここで、CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質又はその機能的変異体は、配列番号:3を含むか若しくはこれからなるか又は配列番号:3と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有し、ここで、リコンビナント水疱性口内炎ウイルスの糖タンパク質Gをコードする遺伝子は、リンパ球脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)の糖タンパク質GPをコードする遺伝子により置き換えられておりかつ/又は糖タンパク質Gは、LCMVの糖タンパク質GPにより置き換えられている。
【0233】
ウイルス生成、産生及びウイルス産生細胞
また、本発明は、本発明のリコンビナントラブドウイルス又はリコンビナント水疱性口内炎ウイルスを産生することを特徴とする、ウイルス産生細胞を提供する。
【0234】
細胞は、任意の起源のものであることができ、単離された細胞として又は細胞集団に含まれる細胞として存在することができる。リコンビナントラブドウイルス又はリコンビナント水疱性口内炎ウイルスを産生する細胞は、ほ乳類細胞であるのが好ましい。より好ましい実施態様では、本発明のウイルス産生細胞は、ほ乳類細胞が多能性成体前駆細胞(MAPC)、神経幹細胞(NSC)、間葉系幹細胞(MSC)、HeLa細胞、HEK細胞、任意のHEK293細胞(例えば、HEK293F又はHEK293T)、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞若しくはベロ細胞又は骨髄由来腫瘍浸潤細胞(BM-TIC)であることを特徴とする。
【0235】
代替的には、ウイルス産生細胞は、ヒト細胞、サル細胞、マウス細胞又はハムスター細胞であることができる。当業者であれば、所定の細胞がウイルスを産生するかどうか、このため、特定の細胞が本発明の範囲内に入るかどうかを試験する際に使用するのに適した方法を知っている。この点において、本発明の細胞により産生されるウイルスの量は、特に限定されない。好ましいウイルス力価は、更に下流の処理を行うことなく、感染後の所定の培養細胞物の粗上清中に、1×10以上 TCID50/ml又は1×10以上 ゲノムコピー数/mlである。
【0236】
特定の実施態様では、本発明のウイルス産生細胞は、細胞がVSVのタンパク質N、L、P及びMをコードする遺伝子n、l、p及びmからなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子並びにLCMV-GP、ダンデノング-GP又はモペイア-GP糖タンパク質をコードする遺伝子gpの発現のための1つ以上の発現カセットを含むことを特徴とする。
【0237】
本発明の意味におけるウイルス産生細胞は、複製不能なベクターからのリコンビナントラブドウイルスの産生のための古典的なパッケージング細胞及び複製可能なベクターからのリコンビナントラブドウイルスの産生のための産生細胞を含む。パッケージング細胞は、通常、パッケージングされる各ベクターに欠けておりかつ/又はウイルスの産生に必要な必須遺伝子の発現のための1種以上のプラスミドを含む。このような細胞は、所望の目的に適した適切な細胞系統を選択することができる当業者に公知である。
【0238】
本発明のリコンビナントラブドウイルスを当業者に公知の方法に従って産生することができ、(1)細胞にトランスフェクションされたcDNA又は(2)ヘルパー細胞にトランスフェクションされたcDNAの組み合わせ又は(3)感染性若しくは非感染性のリコンビナントラブドウイルスのいずれかを産生するのに必要な残りの成分又は活性をトランスに提供するヘルパー/ミニウイルスに更に感染させた細胞にトランスフェクションされたcDNAの使用を含むが、これらに限定されない。これらの方法のいずれか(例えば、ヘルパー/ミニウイルス、ヘルパー細胞系統又はcDNAトランスフェクションのみ)を使用するのに必要とされる最小成分は、(1)ラブドウイルスのNタンパク質、Pタンパク質及びLタンパク質によるゲノム(又はアンチゲノム)RNAのカプシド形成並びに(2)ゲノム又はアンチゲノム(複製中間体)RNA等価物の複製のためのシス作用シグナルを含有するDNA分子である。
【0239】
複製エレメント又はレプリコンは、ラブドウイルスのリーダー配列及びトレーラー配列を5’端及び3’端に最小限に含むRNAの鎖である。ゲノムの意味では、リーダーは、3’端にあり、トレーラーは、5’端にある。これらの2つの複製シグナル間に配置された任意のRNAが、次に複製されるであろう。リーダー領域及びトレーラー領域は、Nタンパク質によるカプシド形成の目的でかつ転写及び複製を開始するのに必要なポリメラーゼ結合のために、最小のシス作用エレメントを更に含有する必要がある。リコンビナントラブドウイルスを調製するために、G遺伝子を含有するミニウイルスは、リーダー領域、トレーラー領域及びGタンパク質のmRNAを産生するのに適した開始及び終止シグナルを有するG遺伝子も含有するであろう。ミニウイルスが、M遺伝子を更に含む場合、Mタンパク質のmRNAを産生するのに適した開始及び終止シグナルも存在する必要がある。
【0240】
リコンビナントラブドウイルスゲノム内に含まれる任意の遺伝子について、その遺伝子は、それらの遺伝子の発現及びタンパク質産物の産生を可能にするであろう適切な転写開始及び終止シグナルに隣接するであろう(Schnell et al., Journal of Virology, p.2318-2323, 1996)。「非感染性」リコンビナントラブドウイルスを産生するために、リコンビナントラブドウイルスは、最小レプリコンエレメント並びにN、P及びLタンパク質を有する必要があり、M遺伝子を含有する必要がある。これにより、細胞から発芽するが、非感染性粒子であるウイルス粒子が産生される。「感染性」粒子を産生するために、ウイルス粒子は、例えば、付着タンパク質又はレセプターリガンドの使用により、ウイルス粒子の結合及び融合を媒介することができるタンパク質を更に含む必要がある。ラブドウイルスのネイティブなレセプターリガンドは、Gタンパク質である。
【0241】
リコンビナントラブドウイルスのアセンブリを可能にするであろう任意の細胞を使用することができる。感染性ウイルス粒子を調製するための1つの方法は、T7 RNAポリメラーゼ又は他の適切なバクテリオファージポリメラーゼ、例えば、T3若しくはSP6ポリメラーゼをコードするプラスミドに適切な細胞系統を感染させることを含む。ついで、細胞をG、N、P、L及びMラブドウイルスタンパク質をコードする遺伝子を含有する個々のcDNAでトランスフェクションすることができる。これらのcDNAにより、リコンビナントラブドウイルス粒子を構築するためのタンパク質が提供されるであろう。細胞を当技術分野において公知の任意の方法によりトランスフェクションすることができる。
【0242】
また、ラブドウイルスゲノムRNA等価物を含有する「ポリシストロン性cDNA」も細胞系統にトランスフェクションされる。感染性リコンビナントラブドウイルス粒子が、感染細胞において溶解性であることが意図される場合には、N、P、M及びLタンパク質をコードする遺伝子は、任意の異種核酸セグメントと同様に存在する必要がある。感染性のリコンビナントラブドウイルス粒子が、溶解性であることが意図されない場合には、Mタンパク質をコードする遺伝子は、ポリシストロン性DNAに含まれない。「ポリシストロン性cDNA」は、N、P及びLタンパク質をコードする遺伝子を含有する少なくとも転写単位を含むcDNAを意味する。また、リコンビナントラブドウイルスのポリシストロン性DNAは、タンパク質変異体若しくはそのポリペプチドフラグメント又は治療用核酸若しくはタンパク質をコードする遺伝子を含有することもできる。代替的には、最初に産生されたウイルス粒子と最初に会合する任意のタンパク質又はそのフラグメントをトランスで供給することができる。
【0243】
CD80細胞外ドメインFc融合タンパク質をコードする遺伝子を含むポリシストロン性cDNAも企図される。企図されるポリシストロン性cDNAは、タンパク質変異体をコードする遺伝子、レポーターをコードする遺伝子、治療用核酸及び/又はN-P-L遺伝子若しくはN-P-L-M遺伝子のいずれかを含有することができる。リコンビナントラブドウイルスを生成する第1の工程は、cDNAからのゲノム又はアンチゲノム等価物であるRNAの発現である。ついで、そのRNAは、Nタンパク質によりパッケージングされ、ついで、P/Lタンパク質により複製される。このようにして産生されたリコンビナントウイルスを回収することができる。Gタンパク質が、リコンビナントRNAゲノムに存在しない場合には、それは、典型的には、トランスで供給される。G及びMタンパク質の両方が存在しない場合には、両方ともトランスで供給される。「非感染性ラブドウイルス」粒子を調製するために、細胞にトランスフェクションされたポリシストロン性cDNAがラブドウイルスのN、P及びL遺伝子のみを含有するであろうことを除いて、手順は、上記と同じであることができる。非感染性ラブドウイルス粒子のポリシストロン性cDNAは、タンパク質をコードする遺伝子を更に含有することができる。
【0244】
トランスフェクションされた細胞は、通常、所望の温度、通常、約37度で少なくとも24時間インキュベーションされる。非感染性ウイルス粒子については、上清を回収し、ウイルス粒子を単離する。感染性ウイルス粒子については、ウイルスを含有する上清を回収し、新鮮な細胞に移す。新鮮な細胞を約48時間インキュベーションし、上清を回収する。
【0245】
本発明の他の特徴及び利点は、以下のより詳細な実施例から明らかになるであろう。実施例は、本発明の原理を例として例示する。
【実施例
【0246】
実施例1
VSV-GP-huCD80-Fc(IgG1)の生成-ウイルスレスキュー
腫瘍溶解性ウイルスVSV-GPのゲノムを、CD80-Fc遺伝子をコードするように操作して、ウイルス複製中に腫瘍部位でCD80-Fc融合タンパク質を局所的に発現させた。複製可能なVSV-GP-CD80-Fcウイルス変異体を、VSV-GP及びヒトCD80-Fcの完全なウイルスゲノムのためのcDNAを含有する細菌プラスミドから、逆遺伝学(目的の遺伝子(GOI)のクローニング、ウイルスレスキュー及び反復プラーク精製)により生成した。pVSV-GP-CD80-Fcプラスミドは、T7プロモーターの制御下でVSVインディアナ血清型の完全なcDNAゲノムを含有するプラスミドpVSV-XN1(Schnell et al.)に基づいた。pVSV-GP-CD80-Fc変異体を生成するために、VSV Gエンベロープタンパク質のための全配列をリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV、WE-HPI系統)由来のGPエンベロープタンパク質のコドン最適化配列により置換した。更に、CD80-Fc遺伝子をコードする合成核酸をGibsonアセンブリにより、糖タンパク質GPとウイルスポリメラーゼLとの間に挿入した。ウイルス感染との関連でのCD80-Fc遺伝子の転写は、CD80-Fcオープンリーディングフレームの3’端での追加のVSV開始シグナル配列及び5’端での追加の停止シグナル配列により確実となる。
【0247】
感染性ウイルスを標準的なトランスフェクション法(例えば、CaPO沈殿、リポソームDNA送達)によるHEK293T又は任意の他のVSV許容性細胞系統のトランスフェクションにより、プラスミドcDNAから回収(又はレスキュー)した。簡潔に、HEK293T細胞を、VSVタンパク質N、P及びL並びにコドン最適化T7-ポリメラーゼをコードするpSF-CAG-ampベースの発現プラスミドでトランスフェクションした。更に、VSV-GP、VSV-GP-CD80-Fc又はその変異体のウイルスゲノムcDNAをコードするプラスミドを同時トランスフェクションした。レスキュープロセスの第1の工程において、T7ポリメラーゼにより、プラスミドコード化ウイルスcDNAからウイルスRNAゲノムが転写される。第2の工程において、同時トランスフェクションされたプラスミドから外因的に発現されるVSV-L及びPタンパク質により、ウイルスRNAゲノムが更に増幅される。ウイルスRNAゲノムをVSV-Nタンパク質により同時転写的にカプセル化する。更に、P/Lポリメラーゼ複合体により、ウイルス遺伝子産物であるN、P、M、GP及びL並びに挿入されたCD80-Fc変異体の完全なセットの転写が可能となる。続けて、ウイルスRNAゲノムを、リボ核タンパク質、マトリックスタンパク質及びウイルスエンベロープGPを含有する感染性VSV粒子中にパッケージングする。ウイルス粒子は、発芽により細胞から放出される。
【0248】
レスキューされたウイルスを、許容細胞系統、例えば、HEK293T等で最初に継代した。数ラウンドのプラーク精製を標準的な方法により、ウイルスシードストックの生成前に行った。簡潔に、HEK293T細胞をレスキューされたプレシードの系列10倍希釈物に感染させた。約2時間後、細胞単層を2回洗浄し、0.8% 低融点アガロースを含有する培地で覆った。感染後24時間~48時間で、プラークを採取し、ウイルスを追加ラウンドのプラーク精製に使用するか又はウイルスシードストックを生成した。
【0249】
実施例2
ウイルス適応度の検証-TCID50/細胞殺傷
図3A図3B
懸濁培地(Freestyle(商標)293発現培地(ThermoFisher Scientific))中で増殖させたHEK293F細胞を低MOI(0.0005)のVSV-GP又はVSV-GP-CD80-Fcのいずれかに感染させた。感染の日に、細胞は60~70%コンフルエントを有した。1つのウェルを計数し(CountessTM細胞カウンター、Invitrogen)、その後、他のウェルをウイルス構築物VSV-GP(GP)又はVSV-GP-CD80-Fcのうちの一方の0.005 MOIに感染させた。培養上清(総容量3mL)を回収し、サンプルをウイルス複製及び細胞殺傷について、感染後8時間、16時間、24時間、32時間、40時間及び48時間で分析した。ウイルス複製を、示された時点での培養物の上清中のqPCRによるウイルスゲノムの検出を使用して評価した(図3A)。ウイルス誘引性細胞殺傷を、示された時点での培養サンプル中の生存細胞を計数することにより評価した(図3B)。両方のウイルスは、同じように挙動する。これは、ヒトCD80-Fc導入遺伝子の追加は、ウイルス適応度に影響を及ぼさないことを示す。
【0250】
実施例3
カーゴ発現-ELISA
図4
VSV-GP-CD80-Fc感染HEK293細胞からの上清を、ELISAを使用して、ウイルス感染後の種々の時点で分析した。感染したほ乳類細胞によるウイルス性にコードされるCD80-Fc融合タンパク質の発現を、HEK293細胞を親ウイルスVSV-GP又はCD80-Fcをコードする新たなウイルスVSV-GP-CD80-Fc(両方ともMOI1)に感染させることにより確認した。組織培養上清中のELISAにより測定されたCD80-Fc導入遺伝子の発現は、細胞の感染後24、31及び48時間で容易に検出可能であった。
【0251】
実施例4
VSV-GP-huCD80-Fc(in vivo)-CT26.CL25-IFNARKO腫瘍モデル(カーゴ高発現)
図5A図5B
インターフェロンアルファレセプター(IFNAR)を欠くように操作されたCT26.CL25-IFARKO腫瘍モデルを使用して、ヒト患者の状況をより良く反映し、マウス系におけるウイルス複製及びカーゴ発現の改善を可能にするために、親ウイルスVSV-GP及びCD80-Fcをコードする新たなウイルスVSV-GP-CD80-Fcを引き続きに比較した。この目的で、2種のウイルスを、確立された腫瘍を有するマウスにおいて、0日目及び3日目に、2×10TCID50の用量で静脈内(i.v.)に投与した(生存グラフ)。パネル(A)に示されたように、親ウイルスVSV-GPでは、この低ウイルス用量で腫瘍保有動物の明らかに改善された生存が実証されなかった。一方、カーゴ武装化された新たなウイルスであるVSV-GP-CD80-Fcによる処置により、対照動物及びVSV-GP処置動物と比較して、顕著な生存利益がもたらされた。更に、CD80-Fcをコードするウイルスによる処置では、対照動物及びVSV-GP処置動物と比較して、体重減少は増加しなかった(B)。これは、この新規なウイルスの安全性を主張している。
【0252】
実施例5
VSV-GP-huCD80-Fc(in vivo)-B16-F1-OVA及びEMT-6腫瘍モデル(カーゴ低発現)
図6A図6C及び図7A図7B
【0253】
最小限のウイルス複製、したがって、カーゴ(CD80-Fc)発現のみが可能な低許容腫瘍モデルB16-F1-OVA(図6A図6C)及びEMT-6(図7A図7B)を、0日目及び3日目に、親ウイルスVSV-GP又はCD80-Fcをコードする新たなウイルスVSV-GP-CD80-Fcの2回の腫瘍内(i.t.)注射で処置した。十分に確立された腫瘍を有するマウスのみを注射に使用した。B16-F1-OVA腫瘍モデルをVSV-GP-CD80-Fcで処置すると、対照及びVSV-GPと比較して、腫瘍増殖遅延が改善された。EMT-6腫瘍モデルにおいて、VSV-GP-CD80-Fcで処置すると、対照(処置動物の0%)及びVSV-GP(処置動物の8%)処置マウスと比較して、腫瘍排除率が改善された(処置動物の33%)。これらの結果は、低レベルのウイルス複製及びカーゴ発現を有する腫瘍においてさえも、親ウイルスVSV-GPを上回るカーゴ武装化された新規なウイルスであるVSV-GP-CD80-Fcのプラス面の可能性を主張している。これは、ウイルスの複製能力に密接に関連する。
【0254】
実施例6
in vivoでのウイルスの持続性及び複製並びにカーゴ発現
図8図10
確立されたCT26.CL25-IFNARKO(インターフェロンアルファレセプターを欠失したCT26.CL25腫瘍細胞)腫瘍を有するBalb/cマウスを対照として使用し又は1×10TCID50のVSV-GP-CD80-Fcの単回i.v.注射により処置した。処置後3日及び7日で、腫瘍を切除した。全RNAを抽出し、VSV n遺伝子に特異的なqPCRプライマーを使用して分析した(図8)。確立されたLLC1-IFNARKO(インターフェロンアルファレセプターを欠失したLLC1腫瘍細胞)腫瘍を有するC57BL/6マウスを対照として使用し又は1×10TCID50のVSV-GP若しくはVSV-GP-CD80-Fcの単回i.v.注射により処置した。処置後3日で、腫瘍を切除し、RNAを製造業者の指示に従って、ウイルスとカーゴ特異的プローブ(スパイクイン)とを組み合わせて、NanoString製の「Pan Cancer Immune Profiling Panel」を使用して分析した(図9)。まとめると、結果から、処置された動物におけるVSV-GP-CD80-Fcの活発な複製及び腫瘍におけるカーゴのmRNA発現が示される。ピーク複製は、3日目頃に観察された。また、ウイルスは、7日目まで持続する。確立されたLLC1-IFNARKO腫瘍を有するC57BL/6マウスを対照として使用し又は1×10TCID50のVSV-GP若しくはVSV-GP-CD80-Fcの単回i.v.注射により処置した。処置後3日で、腫瘍を切除し、ホルマリン固定し、パラフィン包埋した。薄切片を、VSV-Nタンパク質又はヒトCD80タンパク質に対する特異的抗体で染色した(図10)。Nタンパク質染色は、VSV-GP及びVSV-GP-CD80-Fcの両方について同様であったが、ヒトCD80は、後者についてのみ特異的に検出された。
【0255】
実施例7
CD80-Fcにより、ヒト混合白血球培養においてT細胞共刺激が提供される。FcγR遮断により、Fcの必須の役割であるT細胞活性化が低下する。
【0256】
図12及び図13A図13D
ヒト混合白血球培養物(2つの遺伝的に異なる個体から選択された白血球集団を共培養し、同種異系T細胞刺激をもたらす)を使用して、リコンビナントCD80-FcのT細胞共刺激能(図12及び図13)及びT細胞共刺激に対する野生型ヒトIgG1 Fcの寄与(図13)を評価した。この目的で、図12の培養物を、IFNγを読み出しとして使用して、漸増量のリコンビナントCD80-Fcで刺激した。IFNγ分泌は、培養物へのCD80-Fcの添加により、そのT細胞共刺激能を検証する用量依存的様式で強力に改善された。これらのデータに基づいて、CD80-Fc融合タンパク質ヒト混合白血球培養物におけるFcの寄与を解明することを目的として、再度、FcγR遮断の追加の有無において(ヒト血清の非存在下で)、IFNγを読み出しとして使用して、リコンビナントCD80-Fcタンパク質(10μg/ml)で刺激した(図13)。種々の部分図(A~D)に、種々のドナーペアを示す。CD80-Fc媒介性T細胞刺激は、FcγR遮断の追加により強力に減少した。これは、FcγR相互作用及びFcγR媒介性クラスタリングがCD80-Fcの活性に重要であることを示す。
【0257】
実施例8
CD3活性化PBMC(F(ab)2及びIgG4)におけるCD80-FcによるT細胞活性化のFcγR依存性
図14A図14F
ヒトPBMC培養物を、低用量の抗CD3(クローンOKT3;10ng/ml)の有無及び漸増濃度のリコンビナントCD80-Fcタンパク質で、IFNγ(図14A図14C)又はIL2(図14D図14F)を読み出しとして使用して刺激した。これらの読み出しを標準的なELISAにより検出した。リコンビナントCD80-FcのT細胞共刺激能及びT細胞共刺激に対する野生型ヒトIgG1 Fcの寄与を確認し、Fc選択を検証するために、下記リコンビナントCD80-Fc変異体を引き続き比較した:CD80-Fc(野生型ヒトIgG1 Fcを有するウイルスカーゴのリコンビナントバージョン、図14C及び図14F);CD80 FAB(CD80-FcのF(ab)変異体、Fcを欠いているが二価性を保持している、図14A及び図14D)及びCD80 IgG4(CD80-Fcと同様であるが、ヒトIgG4 Fcを有する、図14B及び図14E)。CD80-Fc自体は、PBMCを顕著には刺激しないが、CD80-Fcと刺激性抗CD3抗体との併用により、IFNγ及びIL2分泌により証明されるように、T細胞刺激の用量依存的増加がもたらされた(図14C及び図14F)。反対に、CD80-FcのFc欠損F(ab)変異体は活性ではなく、単独でも又は抗CD3刺激との組み合わせでも、T細胞刺激の改善がもたらされなかった(図14A及び図14D)。IgG4ベースのCD80融合体(図14B及び図14E)は、T細胞共刺激能を示したが、新規なウイルスVSV-GP-CD80-Fcに操作されたウイルスカーゴに類似するIgG1ベースのCD80融合体構築物(図14B及び図14F)よりはるかに低い程度であった。これらの結果から、再度、CD80-FcのFcγR依存性及びヒトIgG1 Fcの選択が確認される。更に、同時TCR刺激を伴わないCD80-Fc活性の欠如は、その好ましい安全性プロファイルを主張している。
【0258】
実施例9
VSV-GPにより、CD80-Fc MoAを支持する感染腫瘍内のFcγRの局所的増加が誘引される。
【0259】
図15
T細胞共刺激に対するウイルスCD80-FcカーゴのFcγR依存性を考慮して、腫瘍におけるFcγR発現に対するVSV-GP感染の影響を調査した。この目的で、対照又はVSV-GP感染LLC1-IFNARKO腫瘍におけるFcγR発現のNanoStringベースの測定を感染後7日で行った。マウスを未処置のままにするか又は10 TCID50のVSV-GPのウイルス用量で感染させた。X軸は、異なるFcγR(1、2b、3又は4)についての測定値を示し、Y軸は、相対発現を示す。データから明らかに実証されているように、VSV-GP感染腫瘍は、予想外に、4つ全ての分析されたFcγRについて発現の強力なアップレギュレーションを示す。これらのデータから、腫瘍溶解性ウイルスVSV-GP及びFcγR依存性の、ウイルス性にコードされるカーゴCD80-Fcの好ましい治療的相互作用のための機構的基礎が提供され、感染腫瘍内でのウイルス媒介性FcγRアップレギュレーションを形成する利益がもたらされる。
【0260】
実施例10
VSV-GP-CD80-Fcにより、親ウイルスVSV-GPと比較して、優れた腫瘍特異的T細胞免疫が誘引される。
【0261】
図16A図16C
腫瘍抗原特異的T細胞免疫に対するウイルス性にコードされるCD80-Fcカーゴの影響を、親ウイルスVSV-GP又は新たなウイルスVSV-GP-CD80-Fcのいずれかにより処置されたCT26.CL25-IFNARKO腫瘍モデルを使用して解明した。Gp70/腫瘍特異的T細胞を図16Cに示されるように処置されたマウスの脾臓及び血液において、それぞれELISPOT(図16A)及びFACSベースのDextramer染色(図16B)により検出した。VSV-GP-CD80-Fc群対VSV-GP群における腫瘍抗原特異的T細胞の頻度の顕著な増加から、新規なカーゴ武装化ウイルス対親ウイルスのプラス面の可能性が示され、更に、新規な腫瘍溶解性ウイルスVSV-GP-CD80-Fcの改善された抗腫瘍活性のための免疫学的/機構的基礎が提供される。
【0262】
実施例11
CD80-Fcは、PD-L1と相互作用しない。
【0263】
図17
CD80は、プログラム細胞死1リガンド1(PD-L1)と直接相互作用することが可能であり、それにより、活性化T細胞上のPD-L1とそのレセプターであるプログラム細胞死1(PD-1)との阻害相互作用を遮断することができると主張されている。VSV-GP-CD80-FcでコードされるCD80-Fc融合タンパク質が、PD-L1と直接相互作用するかどうかを決定するために、ヒトPD-L1で安定にトランスフェクションされたCHO-K1細胞について、結合研究を行った。PD-L1特異的抗体であるアベルマブを陽性対照として使用した。アベルマブは、CHO-K1-PD-L1細胞の表面上のPD-L1に容易に結合したが、リコンビナントCD80-Fcタンパク質は、試験した全ての用量レベルでPD-L1に結合しなかった。したがって、CD80-Fcは、PD-L1に直接結合しないと結論付けられた。
【0264】
実施例12
α-PD-1及びCD80-Fcにより、相加的にT細胞刺激が改善される。
【0265】
図18A図18B
抗体媒介性PD-1阻害と組み合わせたCD80-Fc媒介性T細胞共刺激が、単独療法処置に対して更なる利益を提供することが可能であるかどうかという疑問に対処するために、T細胞レポーター系を利用した。この場合、安定してPD-1を発現するJurkat T細胞は、生化学的に検出可能であるルシフェラーゼ活性をアップレギュレーションすることにより、T細胞レセプター(TCR)刺激に応答する。ここでは、Jurkat-PD-1レポーター細胞をFcγR陽性THP1-PD-L1細胞(FcγR陰性CHO-K1細胞とは対照的に)と共培養し、PD-L1を安定に発現させた。PD-L1とPD-1との相互作用により、ガン患者において観察されるT細胞阻害に匹敵する、Jurkat T細胞活性化の阻害がもたらされる。TCR刺激は、THP1細胞上のCD33とJurkat T細胞上のCD3とを連結する二重特異性BiTE分子の添加により達成される。図18Aから分かるように、PD-1遮断抗体ペンブロリズマブは、阻害性PD-1:PD-L1相互作用を遮断することにより、CD3×CD33 BiTE媒介性T細胞刺激を用量依存的に回復させることが可能である。同時にかつ全く予想外なことに、CD80-Fc自体が、阻害性PD-1:PD-L1相互作用にもかかわらず、用量依存的にT細胞共刺激を提供し、Jurkat T細胞活性化を改善することが可能である。ジギトニン(Dig)特異的抗体をアイソタイプ対照として使用した。図18Bにおいて、固定された抗PD-1濃度(10nM、飽和状態)を、漸増濃度のリコンビナントCD80-Fcと組み合わせた。抗PD-1抗体の上にCD80-Fcを添加すると、優れたT細胞活性化がもたらされる。これは、これらの補完的な作用様式により駆動される、これらの異なる治療様式の好ましい相互作用の明確な証拠を提供する。
【0266】
実施例13
VSV-GP-muCD80-Fc(in vivo)-CT26.CL25-IFNARKO腫瘍モデル(カーゴ高発現)
図19A図19C
再度、CT26.CL25-IFNARKO腫瘍モデルを使用して、この研究では、リコンビナントマウスCD80Fc、VSV-GP又はVSV-GP-muCD80Fcのin vivo有効性を比較する。この目的で、樹立された腫瘍を有するマウスを0日目及び3日目に、1×10TCID50のウイルス用量並びに0日目、3日目及び6日目に、1mg/kg リコンビナントマウスCD80-Fcそれぞれでi.v.処置した。
【0267】
図19のパネル(A)に示されたように、生存曲線から、VSV-GP-muCD80Fc処置群において治療アウトカムの改善が示された。リコンビナントCD80Fcタンパク質又はVSV-GPを上回る有意な生存利益を1×10TCID50のVSV-GP-muCD80Fc(Log-rank(Mantel-Cox)検定;P値0.0394)により示すことができた。
【0268】
図19(B)に示された平均腫瘍サイズを単一腫瘍増殖曲線にまとめる。これは、VSV-GP-muCD80Fc(用量1×10TCID50)による処置後の強力な腫瘍増殖抑制を反映している。これは、VSV-GP及び1mg/kg リコンビナントCD80Fcタンパク質をはるかに上回った。
【0269】
体重の減少が、両方のウイルスの最初の注射後に観察された(図19のパネル(C))が、直ちに回復が起こり、物質のその後の注射により影響されず、親ウイルス(VSV-GP)とmuCD80-Fcをコードするウイルス(VSV-GP-muCD80Fc)との間で著しく異なることはなかった。
【0270】
まとめると、この研究では、特に、リコンビナントマウスCD80Fc又はVSV-GPのin vivo効果を、VSV-GP-muCD80Fcと比較した。ウイルス骨格にmuCD80Fcを導入することにより、腫瘍増殖及び全生存に対する相乗効果が達成されることが示された。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図12
図13A
図13B
図13C
図13D
図14
図15
図16-1】
図16-2】
図17
図18
図19
【配列表】
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