(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20241003BHJP
B08B 3/02 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H01L21/304 643B
B08B3/02 C
(21)【出願番号】P 2023085404
(22)【出願日】2023-05-24
(62)【分割の表示】P 2021181652の分割
【原出願日】2021-11-08
【審査請求日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】P 2020219159
(32)【優先日】2020-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002428
【氏名又は名称】芝浦メカトロニクス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】加藤 智也
(72)【発明者】
【氏名】西部 幸伸
(72)【発明者】
【氏名】宮迫 久顕
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-053694(JP,A)
【文献】特開2002-113430(JP,A)
【文献】特開2001-093961(JP,A)
【文献】特開2015-099919(JP,A)
【文献】特開2009-033040(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B08B 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理室内において、処理される表面を上向きにして搬送装置により搬送される基板に、前記搬送装置の上方に配置されたノズルから高圧処理流体を吐出させて前記基板の表面を処理する基板処理装置であって、
前記搬送装置の下方において前記基板の搬送方向における前記ノズルと対向する領域を含む所定範囲を仕切るとともに、前記所定範囲内に上方から流入する前記ノズルからの高圧処理流体の流れに引き込まれるように発生する気流の、前記搬送装置の上方に向けた巻き上がりを妨げる流体囲い込み部材を有し、
前記流体囲い込み部材は、
前記所定範囲を前記搬送方向において仕切る一対の返し板と、
前記一対の返し板のそれぞれの上端部分に形成され、内側に突出する返し部と、
前記搬送方向に直交する方向において前記一対の返し板と同等の長さを有し、一対の返し板のうちの前記基板の搬送方向における上流側の返し板からその上流側に延びる横板部と、
前記搬送方向に直交する方向において前記一対の返し板と同等の長さを有し、一対の返し板のうちの前記基板の搬送方向における下流側の返し板からその下流側に延びる横板部と、を有し、
前記一対の返し板は、それぞれの下方部分に、前記気流を前記上流側に延びる横板部側および前記下流側に延びる横板部側へと向かわせることが可能な空間を有する基板処理装置。
【請求項2】
処理室内において、処理される表面を上向きにして搬送装置により搬送される基板に、前記搬送装置の上方に配置されたノズルから高圧処理流体を吐出させて前記基板の表面を処理する基板処理装置であって、
前記ノズルの先端と前記基板の表面との間の空間を含む前記基板の搬送方向における所定範囲を仕切って、前記ノズルから吐出する高圧処理流体の流れへの気体の引き込みを妨げる気体引き込み阻害部材を有し、
前記気体引き込み阻害部材は、
前記所定範囲を仕切る2つのカバー板
と、前記2つのカバー板の下端部のそれぞれから前記所定範囲の内方に突出し、所定間隔をもって対向する2つの対向板部と、を有し、
前記2つのカバー板は、前記ノズルから吐出される前記高圧流体の吐出幅程度の隙間をもって対向する基板処理装置。
【請求項3】
処理室内において、処理される表面を上向きにして搬送装置により搬送される基板に、前記搬送装置の上方に配置されたノズルから高圧処理流体を吐出させて前記基板の表面を処理する基板処理装置であって、
前記ノズルの先端と前記基板の表面との間の空間を含む前記基板の搬送方向における所定範囲を仕切って、前記ノズルから吐出する高圧処理流体の流れへの気体の引き込みを妨げる気体引き込み阻害部材を有し、
前記気体引き込み阻害部材は、
前記所定範囲を仕切る2つのカバー板と、前記2つのカバー板のそれぞれの内面に設けられ、前記ノズルからの前記高圧処理流体の吐出方向に向かって徐々に張り出すように傾斜する傾斜部材と、を有し、
前記2つのカバー板は、前記ノズルから吐出される前記高圧流体の吐出幅程度の隙間をもって対向する基板処理装置。
【請求項4】
前記ノズルの先端と前記基板の表面との間の空間の前記基板の搬送方向における所定空間を仕切って、前記ノズルから吐出する高圧処理流体の流れへの気体の引き込みを妨げる気体引き込み阻害部材を有する、請求項1記載の基板処理装置。
【請求項5】
処理室内において、処理される表面を上向きにして搬送装置により搬送される基板に、前記搬送装置の上方に配置されたノズルから高圧処理流体を吐出させて前記基板の表面を処理する基板処理装置であって、
前記ノズルよりも前記基板の搬送方向の下流側に配置され、前記ノズルから前記基板の表面に向けて吐出される前記高圧処理流体の流れに引き込まれように発生する気流の前記下流側への流れを妨げる仕切り板と、
前記ノズルに対向した前記搬送装置の下方の前記基板の搬送方向における所定範囲を仕切るとともに、前記所定範囲内に上方から流入する前記ノズルからの高圧処理流体の流れに引き込まれるように発生する気流の前記搬送装置の上方に向けた巻き上がり妨げる流体囲い込み部材と、
前記ノズルの先端と前記基板の表面との間の空間の前記基板の搬送方向における所定範囲を仕切って、前記ノズルから吐出する高圧処理流体の流れへの気体の引き込みを妨げる、2つのカバー板と、を有し、
前記仕切り板の下端縁と前記基板の表面との間の隙間Gaと、前記仕切り板の上端縁と前記処理室の天井部との間の隙間Gbと、前記ノズルの先端と前記基板の表面との間の隙間Gcと、前記各カバー板と前記基板の表面との間の隙間Gdとの関係は、
Gc>Gd>Ga>Gb
である、基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送ローラや搬送ベルトなどの搬送装置にて搬送される基板を処理する基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、液晶表示装置の製造工程において、基板の表面に対して、処理液(たとえば純水)をノズルヘッドから供給し、基板の表面を処理する基板洗浄装置(基板処理装置)が知られている。この基板洗浄装置では、処理される表面を上向きとして搬送装置にて搬送される基板の表面に対向してノズルヘッドが配置されている。ノズルヘッドからは、高圧の洗浄液(高圧処理流体)が吐出され、その高圧の洗浄液によって、搬送される基板の表面が洗浄される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ノズルヘッドから吐出する処理流体の高圧化を図ると、基板の特に、先端部や後端部が搬送面から浮き上がってしまう現象が発生した。特に、薄型(例えば、厚さ0.5mm程度)の基板(ガラス基板、液晶基板等)では、浮き上がり量が大きく、その基板がノズルヘッドや処理室の搬出口に衝突したり、搬送中にバタつく等したりして、処理対象の基板が破損するおそれがある。また、基板が浮き上がることによって、ノズルヘッドが有するノズルと基板との距離が変化するため、基板に処理液を均一に供給することができず、処理が不十分となるおそれがある。そのため、処理液体の十分な高圧化を図ることができなかった。
【0005】
本発明は、搬送される基板を効率よく処理することのできる基板処理装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る基板処理装置の一態様は、処理室内において、処理される表面を上向きにして搬送装置により搬送される基板に、前記搬送装置の上方に配置されたノズルから高圧処理流体を吐出させて前記基板の表面を処理する基板処理装置であって、
前記搬送装置の下方において前記基板の搬送方向における前記ノズルと対向する領域を含む所定範囲を仕切るとともに、前記所定範囲内に上方から流入する前記ノズルからの高圧処理流体の流れに引き込まれるように発生する気流の、前記搬送装置の上方に向けた巻き上がりを妨げる流体囲い込み部材を有し、
前記流体囲い込み部材は、
前記所定範囲を前記搬送方向において仕切る一対の返し板と、
前記一対の返し板のそれぞれの上端部分に形成され、内側に突出する返し部と、
前記搬送方向に直交する方向において前記一対の返し板と同等の長さを有し、一対の返し板のうちの前記基板の搬送方向における上流側の返し板からその上流側に延びる横板部と、
前記搬送方向に直交する方向において前記一対の返し板と同等の長さを有し、一対の返し板のうちの前記基板の搬送方向における下流側の返し板からその下流側に延びる横板部と、を有し、
前記一対の返し板は、それぞれの下方部分に、前記気流を前記上流側に延びる横板部側および前記下流側に延びる横板部側へと向かわせることが可能な空間を有する。
【0007】
また、本発明に係る基板処理装置の一態様は、処理室内において、処理される表面を上向きにして搬送装置により搬送される基板に、前記搬送装置の上方に配置されたノズルから高圧処理流体を吐出させて前記基板の表面を処理する基板処理装置であって、前記ノズルの先端と前記基板の表面との間の空間を含む前記基板の搬送方向における所定範囲を仕切って、前記ノズルから吐出する高圧処理流体の流れへの気体の引き込みを妨げる気体引き込み阻害部材を有し、前記気体引き込み阻害部材は、前記所定範囲を仕切る2つのカバー板と、前記2つのカバー板の下端部のそれぞれから前記所定範囲の内方に突出し、所定間隔をもって対向する2つの対向板部と、を有し、前記2つのカバー板は、前記ノズルから吐出される前記高圧流体の吐出幅程度の隙間をもって対向する。
また、本発明に係る基板処理装置の一態様は、処理室内において、処理される表面を上向きにして搬送装置により搬送される基板に、前記搬送装置の上方に配置されたノズルから高圧処理流体を吐出させて前記基板の表面を処理する基板処理装置であって、前記ノズルの先端と前記基板の表面との間の空間を含む前記基板の搬送方向における所定範囲を仕切って、前記ノズルから吐出する高圧処理流体の流れへの気体の引き込みを妨げる気体引き込み阻害部材を有し、前記気体引き込み阻害部材は、前記所定範囲を仕切る2つのカバー板と、前記2つのカバー板のそれぞれの内面に設けられ、前記ノズルからの前記高圧処理流体の吐出方向に向かって徐々に張り出すように傾斜する傾斜部材と、を有し、前記2つのカバー板は、前記ノズルから吐出される前記高圧流体の吐出幅程度の隙間をもって対向する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、搬送装置によって搬送される基板が搬送面から浮き上がる原理(その1)を説明するための図である。
【
図2】
図2は、搬送装置によって搬送される基板が搬送面から浮き上がる原理(その2)を説明するための図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1の実施形態に係る基板処理装置を示す側面図である。
【
図4】
図4は、
図3における仕切り板の作用を説明する模式図である。
【
図5】
図5は、
図3における仕切り板の作用を説明する模式図である。
【
図6】
図6は、
図3における仕切り板の作用を説明する模式図である。
【
図7】
図7は、本発明の第2の実施形態に係る基板処理装置を示す側面図である。
【
図8】
図8は、本発明の第3の実施形態に係る基板処理装置を示す平面図である。
【
図9】
図9は、
図8における気体引き込み阻害部材の構造を示す側面図である。
【
図10】
図10は、気体引き込み阻害部材の第1の変形例を示す側面図である。
【
図11】
図11は、気体引き込み阻害部材の第2の変形例を示す側面図である。
【
図12】
図12は、気体引き込み阻害部材の第3の変形例を示す側面図である。
【
図13】
図13は、本発明の第4の実施形態に係る基板処理装置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態について説明する前に、例えばノズルヘッドが有するスプレーノズルから高圧の処理流体が基板に吹き付けられると、その基板が、搬送面から浮き上がってしまう原因について考察する。
【0011】
図1及び
図2に示すように、基板処理装置が有する処理室100内では、基板W(ガラス基板、液晶基板等)を下方から支持する複数のローラ21を有する搬送装置20によって、基板Wが搬入口101から搬出口102に向けて水平状態で搬送される。このように搬送される基板Wの上方を向く表面に対向して、ノズルヘッド10が配置されている。
【0012】
このような基板処理装置において、まず第1の原因について、
図1を参照して説明する。ノズルヘッド10からは、太い黒塗り矢印で示すように高圧の洗浄液(処理流体)が基板Wの表面に向けて吐出される。洗浄液が吐出されると、洗浄液の流れに引き込まれるようにして、太い白抜き矢印で示されるように、吐出された洗浄液の周囲に気流が生じる。この気流は、基板Wに遮られ、基板Wの表面に沿って極めて高速に流れる。この高速な気流によって、基板Wの表面間近の上側部分がベルヌーイの定理に従って負圧状態になる。その結果、基板Wに対して上方向の力Fが作用し、この上方向の力Fによって、搬送される基板Wのノズルヘッド10の直下位置を通過した先端部分(
図1の破線楕円部分参照)が浮き上がり得る。
【0013】
次に、第2の原因について、
図2を参照して説明する。基板Wの後端がノズルヘッド10の直下位置を通過すると、ノズルヘッド10から吐出する高圧の洗浄液は、太い黒塗り矢印で示されるように、隣接するローラ21間の隙間を通って高速で搬送装置20が形成する搬送面よりも下方に流れる。この場合においても前述と同様に、洗浄液の流れにより、その周囲の気体(空気)を引き込み、吐出された洗浄液の周囲に気流が生じる(太い白抜き矢印)。この気流が、処理室100内の底部付近に到達した後に跳ね返るようにして巻き上がり、上向きの気流が発生する。この上向きの気流によって、ノズルヘッド10の直下位置を通過した基板Wの後端部分が浮き上がり得る。
【0014】
前述した基板Wの浮き上がりの原因を考慮し、その基板Wの浮き上がりを防止、もしくは抑制することで、基板を効率よく処理することのできる、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
【0015】
本発明の第1の実施形態に係る基板処理装置は、
図3に示すように構成される。この基板処理装置1は、
図1に基づいて説明した原因により発生し得る基板Wの浮き上がりを防止、もしくは抑制するための構成(後述する仕切り板12)を有することを特徴としている。
【0016】
図3において、基板処理装置1は、処理室100を有する。処理室100は、基板Wが搬送される方向Dtにおいて、搬入口101が形成される側壁と搬出口102が形成される側壁とを有し、かつ、上下方向において、天井部103と底部104とを有する密閉空間とされる。処理室100内には、搬入口101から搬出口102まで延びる搬送装置20が設けられている。搬送装置20は、基板Wの搬送方向Dtに直交して水平面に平行な方向(
図3の紙面に直交する方向:以下、「搬送方向と直交する方向」という)に延びる軸(不図示)と、この軸に装着された複数のローラ21とを有する。この不図示の軸と複数のローラ21のセットが複数組、搬送方向Dtに所定間隔で配列された構造となっている。各ローラ21の上面が、基板の搬送面を形成する。搬入口101から投入される処理対象の基板W(例えば、厚さ0.5mm、一辺3mの矩形状)は、搬送装置20の各ローラ21に支持されつつ搬出口102に向けて搬送される。
【0017】
処理室100内には、洗浄液(処理流体の一例)により基板Wの高圧洗浄を行う洗浄処理部110と、リンス液(純水)により基板Wのリンス処理を行うリンス処理部120とを備えている。処理室100内において、洗浄処理部110がリンス処理部120より基板Wの搬送方向Dtの上流側に位置している。
【0018】
洗浄処理部110には、搬送方向と直交する方向に配列される複数のノズルヘッド10が、搬送装置20によって搬送される基板Wの上方を向く表面に対向するように配置されている。これら複数のノズルヘッド10は、処理室100内において搬送方向と直交する方向に延びるチャンネル材11に所定間隔をもって固定されている。各ノズルヘッド10は、洗浄液の供給源(図示略)に配管を通して結合している。供給源から高圧の洗浄液が供給されることにより、ノズルヘッド10が有するノズル10aから下方に向けて(
図3では鉛直方向に)高圧(例えば、7MPa~15MPaの範囲内に設定される)の洗浄液(高圧処理流体)が吐出される(
図3の太い黒塗り矢印参照)。また、搬送方向と直交する方向に配列される複数のノズルヘッド10は、搬送装置20を構成する1本の軸と、その軸に支持されるローラ21と、に対向するように調整して配置される。
【0019】
また、洗浄処理部110内には、仕切り板12が設けられ、この仕切り板12により、基板Wの搬送方向Dtにおいて、仕切り板12よりも上流側の空間Aと、下流側の空間Bとが形成される。仕切り板12は、基板Wの搬送方向Dtにおける、ノズルヘッド10より下流側の所定位置にて垂直方向に延びるように設けられ、搬送方向と直交する方向においては、少なくとも全てのノズルヘッド10に対向する長さ(全てのノズルヘッド10分の長さ、あるいはそれ以上の長さ)とされる。この仕切り板12の下端縁と搬送装置20によって搬送される基板Wとの間に所定の隙間Gaが形成され、また、仕切り板12の上側縁と処理室100の天井部103との間に所定の隙間Gbが形成される。隙間Gaは、ノズル10aから吐出された洗浄液によって基板Wの表面に形成された膜厚よりは若干大きく形成され、ノズルヘッド10が有するノズル10aの先端と基板Wの表面との隙間(例えば、40~60mm)よりは小さく形成される(隙間Gaは例えば10mm以上)。隙間Gbは、隙間Gaより小さく(例えば5~10mm)形成される。なお、隙間GaとGbの調整装置を設けてもよい。例えば仕切り板12を上下にスライド調整できるように、ブラケットに支持するようにしてもよい。あるいは、仕切り板12を高さ方向中央部で2部材に分割し、各部材が上下にスライド調整できるように、ブラケットに支持することで、隙間GaとGbとが個別に調整できるように構成してもよい。
【0020】
このように構成された基板処理装置1で、基板Wの浮き上がりが防止、もしくは抑制されることについて考察する。
【0021】
最適な、仕切り板12の配置位置、そして隙間GaやGbは、ノズル10aの先端と基板Wの表面との隙間、ノズル10aから吐出される洗浄液の吐出圧、吐出速度などを要因として、また次のことも考慮して、実験などで求めることができる。なお、ノズルヘッド10を基板Wの表面に限りなく近づければ、吐出される洗浄液に触れる気体が少なくなり、巻き込まれる周囲の気体が少なくなるので、基板Wの浮き上がりが起きなくなると考えられる。しかしながら、ノズルヘッド10を基板Wに近づけすぎると、ノズル10aから吐出された高圧の洗浄液によって、基板上のパターン等に損傷を生じてしまう危険性がある。一方、ノズルヘッド10を基板Wから遠ざけすぎると、必要とする圧力の洗浄液を基板にWに供給できず、効率の良い洗浄処理が困難となる。
【0022】
隙間Gaは、すでに述べたように、基板Wの表面に形成される洗浄液膜の膜厚よりは若干大きくし、ノズル10aから吐出された洗浄液の流れが、仕切り板12によって阻止されないようにすることが好ましい。本実施形態では、洗浄液の吐出により引き込まれて気流となった気流層の厚さの、例えば75%程度を遮断する(妨げる)隙間としている。隙間Gaをこれより広くしてしまうと、従来との差がなくなる(つまり、
図1、
図2に示す基板Wの浮き上がりが発生する)。
【0023】
隙間Gbに関して、
図4は隙間Gbを設けなかった場合、
図5は隙間Gbが広すぎる場合、そして
図6は隙間Gbが好ましい大きさである場合の模式図である。
図4では、隙間Gaの存在で気流の通過は制限されるものの、空間Bにおいて渦流となり、この流れが基板Wの浮き上がりの原因になってしまう。
図5でも、隙間Gaを通過した気流は空間Bにおいて渦流となり、その流れの途中で隙間Gbを通過し、仕切り板12を取り囲むような大きな渦流に変化し、この流れが基板Wの浮き上がりの原因になってしまう。これに対し
図6でも、仕切り板12の存在で(隙間Gaが小さいことにより)気流の通過が制限される。さらに、隙間Gaを通過した気流は、空間Bにて、基板Wの上方で渦流とはなる。しかしながら、隙間Gbの大きさが適度に形成されていることにより、仕切り板12の、ノズル10aに対向する側の面を上昇する気流が隙間Gbに強い吸引力を発生さる。この吸引力により、空間Bにて渦流を形成する元となる気体の一部が隙間Gbを介して空間Bから空間Aに移動させられるようになる。このため、
図6において、基板Wの上方で渦流が発生したとしても、基板Wの浮き上がりに影響がない程度に抑えることができ、これにより、基板Wの浮き上がりの原因になる気流を抑えることができるものと考えられる。
【0024】
なお、仕切り板12は、搬送方向Dtにおいて、ノズルヘッド10よりも下流側であって基板Wの浮き上がりが生じ得る位置よりも上流側に設けられる。基板Wの浮き上がりが生じ得る位置は、予め実験等で求めることができる。例えば、
図1、2に示す構成で基板Wの浮き上がりが生じ得る位置を求める。
【0025】
また、隙間Ga、Gbは、仕切り板12に一つ、または複数の長孔を形成することによって設けるようにしても良い。例えば、仕切り板12の天井103側の端部が天井103に接した状態で設けられ、仕切り板12の天井103側の所定部分に隙間Gbとしての長孔を設けるようにしても良い。長孔を設ける位置や数、および長孔のサイズは、先に述べたとおり
図6に示す実施形態と同様の効果を有するよう設定される。
【0026】
図3に戻り、リンス処理部120には、搬送装置20を挟んで、上側に、複数の上側処理液管14が、下側に、複数の下側処理液管15が設けられている。複数の上側処理液管14のそれぞれ、及び複数の下側処理液管15のそれぞれは、搬送方向と直交する方向に延びている。複数の上側処理液管14は、基板Wの搬送方向Dtに所定間隔をもって配列され、複数の下側処理液管15のそれぞれは、複数の上側処理液管14のいずれかに対向するように配列されている。各上側処理液管14には下方に向いて開口する複数のノズル14aが所定の間隔をもって形成され、各下側処理液管15には上方に向いて開口する複数のノズル15aが所定の間隔をもって形成されている。上側処理液管14及び下側処理液管15のそれぞれは、リンス液の供給源(図示略)に配管を通して結合している。供給源からのリンス液が上側処理液管14に供給され、その上側処理液管14の各ノズル14aから下方に向けてリンス液が吐出し、供給源からのリンス液が下側処理液管15に供給され、その下側処理液管15の各ノズル15aから上方に向けてリンス液が吐出する。上側処理液管14の各ノズル14aから吐出するリンス液及び下側処理液管15の各ノズル15aから吐出するリンス液により、搬送装置20によって搬送される基板Wの表面及び裏面の両面が処理(リンス処理)される。
【0027】
上述したような構造の基板処理装置1では、搬入口101から搬入されて搬送装置20によって搬送される基板Wは、洗浄処理部110に進入する。洗浄処理部110では、ノズル10aから吐出する高圧の洗浄液(処理流体)が搬送装置20によって搬送される基板Wの表面に供給され、基板Wの表面の異物が除去(洗浄)される。そして、洗浄処理部110での処理を終えて搬送装置20にて搬送される基板Wは、次のリンス処理部120に進入する。リンス処理部120では、搬送装置20によって搬送される基板Wは、上側処理液管14及び下側処理液管15それぞれの各ノズル14a、15aから吐出するリンス液により、その表面及び裏面の両面が処理されて、搬出口102から搬出され、次の処理工程(例えば、乾燥工程)に移動する。
【0028】
上述した洗浄処理部110での処理では、ノズル10aから吐出する高圧の洗浄液(
図3の太い黒塗り矢印参照)によって周囲の気体が引き込まれ、この引き込まれるように発生した気流が、基板Wの表面に沿って高速に流れる(
図3の太い白抜き矢印参照)。ところが、基板Wの表面を搬送方向Dtの下流側に流れる気流は、その一部が仕切り板12にあたって、仕切り板12の下端と基板Wとの間に存在する隙間Gaによって許容された気流(例えば、気流層の厚さの25%程度)だけが、さらに下流側に流れることになる。つまり、ノズルヘッド10から吐出する高圧の洗浄液によって引き込まれた気体の一部は、仕切り板12の存在により更に下流側に流れるのが妨げられる。これにより、基板の搬送方向における、仕切り板12の配置位置よりも下流側においては、基板Wの表面に沿った気流が少なくなる。しかも、
図6を用いて説明したように、空間Bにて、基板Wの上方で渦流とはなるものの、適度な隙間Gbの存在により、基板Wの浮き上がりに影響がない程度に抑えることができる。これにより、基板Wの表面間近の上側部分に発生する負圧を下げることができる(仕切り板12を設けない場合と比較して、負圧をゼロに近づけることができる)。その結果、基板Wに対して作用する上向きの力(
図1に示すF)が小さくなり、搬送される基板Wのノズルヘッド10の直下位置を通過した部分(先端部分)の浮き上がりを防止、もしくは抑制することができる。
【0029】
上述した本発明の第1の実施形態に係る基板処理装置によれば、基板を効率よく処理することができる。これは、基板Wの、ノズルヘッド10のノズル10aや、搬出口102の周囲の側壁などへの衝突が防止され、または基板Wのバタつきが抑えられることで、基板の破損を防止することができるためである。あるいは、基板の浮き上がりを防止あるいは抑制できることで、基板をより平坦に近い状態で搬送できることから、基板Wに対し処理流体を均一に供給しながら洗浄処理ができ、基板の表面の処理を略均一に行なうことができるためである。
【0030】
次に、本発明の第2の実施形態に係る基板処理装置は、
図7に示すように構成される。この基板処理装置は、
図2に基づいて説明した原因により発生し得る、基板Wの浮き上がりを防止する構成(後述する流体囲い込み部材13)を有することを特徴としている。
【0031】
図7において、この基板処理装置1aは、前述した第1の実施形態(
図3参照)と同様に、処理室100を有し、処理室100内に、洗浄処理部110とリンス処理部120とを備えている。処理室100内には、搬入口101から搬出口102まで延びる搬送装置20が設けられている。リンス処理部120は、第1の実施形態(
図3参照)と同様に、搬送装置20を挟んで、上側に、それぞれ複数のノズル14aが形成された複数の上側処理液管14が、下側に、それぞれ複数のノズル15aが形成された複数の下側処理液管15が設けられている。上側処理液管14の各ノズル14aからはリンス液が下方に向けて吐出し、下側処理液管14の各ノズル15aからはリンス液が上方に向けて吐出する。
【0032】
また、洗浄処理部110には、第1の実施形態(
図3参照)と同様に、チャンネル材11に所定間隔で固定された複数のノズルヘッド10が、搬送装置20によって搬送される基板Wの上方を向いた表面に対向するように配置されている。そして、ノズルヘッド10が有するノズル10aからは高圧の洗浄液が下方に向けて吐出する。
【0033】
更に、洗浄処理部110には、第1の実施形態(
図3参照)において説明した仕切り板12に代えて、流体囲い込み部材13が、チャンネル材11に固定された複数のノズルヘッド10に対向するように搬送装置20の下方に設けられている。流体囲い込み部材13は、複数のノズルヘッド10に対向するローラ21の下方で、基板Wの搬送方向Dtにおける所定範囲を仕切る2つの返し板13a、13bを有している。一方の返し板13aの上端部には、内側に折れ曲がって突出する返し部13cが形成され、他方の返し板13bの上端部にも、内側に折れ曲がって突出する返し部13dが形成されている。2つの返し板13a、13bのうち搬送方向Dtにおける上流側に位置する一方の返し板13aの下端部と返し部13cとの間に横板部13eが形成されている。他方の仕切り板13bの下端部にも横板部13fが形成されている。横板部13eは、返し板13aより搬送方向Dtにおける上流側である搬入口101側に向けて延びる(例えば、水平方向に延びる)ように返し板13aに設けられている。横板部13fは、返し板13bより搬送方向Dtにおける下流側に向けて延びる(例えば、水平方向に延びる)ように返し板13bに設けられている。横板部13eは横板部13fよりも高い位置(搬送装置20に近い位置)で、端部が下側処理液管15に干渉しない位置に設けられている。返し部13c、13dの各頂部と、搬送される基板Wの下面と、の隙間は、5mm~10mm程度とされる。また、ノズルヘッド10に対向するローラ21が、流体囲い込み部材13の2つの返し部13c、13dの間に位置するようになっている。各返し板13a、13bは互いに平行に対向し、少なくともすべてのノズルヘッド10に対向するように(全てのノズルヘッド10分の長さ、あるいはそれ以上の長さを有するように)して搬送方向と直交する方向に延び、それぞれの下方部分は、底部104に略平行な形状であり、処理室100の底部104付近に空間を形成するようになっている。横板部13e、13fは返し板13a、13bと同じく、少なくともすべてのノズルヘッド10に対向するように(全てのノズルヘッド10分の長さ、あるいはそれ以上の長さを有するように)搬送方向と直交する方向に延びるように形成されている。
【0034】
上述した洗浄処理部110(基板処理装置)では、基板Wの後端がノズルヘッド10の直下位置を通過すると、ノズルヘッド10のノズル10aから吐出する高圧の洗浄液は、搬送装置20のローラ21間の隙間を通って流体囲い込み部材13内に高速にて流入する。そして、流体囲い込み部材13内に高速で流入する洗浄液に引き込まれるように、流体囲い込み部材13内に流入する気流が発生する。発生した気流の大半は処理室100の底部に広がるように拡散する。また、底部104から跳ね返されるように流れる気流は、返し板13a、13bの横板部13e、13f、返し部13c、13dによって下方に方向転換させられ、底部104から搬送装置20の上方に向けて巻き上がることが妨げられる(
図7の太い白抜き矢印参照)。このように、流体囲い込み部材13を設けることで、ノズル10aから高圧の洗浄液が吐出されることにより発生する気流が処理室100(洗浄処理部110)内において巻き上がることが妨げられるので、ノズルヘッド10の直下位置を通過した基板Wの後端部分が浮き上がること(
図2参照)を防止、もしくは抑制することができる。
【0035】
なお、
図7に示すように、横板部13eは、一端は返し板13aに、他端は搬入口101が形成される側壁に接するように設けられている。横板部13fは、一端は返し板13bに設けられ、他端はリンス部120側に流体囲い込み部材13の開口を形成するように設けられている。流体囲い込み部材13は、ノズルヘッド10のノズル10aからの洗浄液の吐出によって生じた気流が、処理室100の底部に衝突し、これが跳ね返って搬送装置20側に向かうのを阻止する。ノズル10aからの洗浄液の吐出により生じた気流は、返し板13a、13bに沿うように処理室100の底部へと向かう。処理室100の底部で跳ね返った気流は、一部は横板部13e、一部は横板部13fへと向かう。横板部13eに衝突した気流は処理室100の上方(搬送機構20側)へ向かうことなく、流体囲い込み部材13内にとどめられる。横板部13fに衝突した気流は、一部リンス部120側へ流れ込むものの、その横板部13fはリンス部120側へ強い気流が流れ込むのを妨げる。
【0036】
ここで、前述したとおり、横板部13eは横板部13fよりも高い位置に設けられている。これは、ノズル10aからの洗浄液の吐出により生じた気流は、処理室100の底部に衝突し、横板部13e、13fや、返し部13c、13dによって流体囲い込み部材13内にとどめられることになる。そうすると、流体囲い込み部材13内の気圧は次第に高まることになり、横板部13fのリンス部120側端部からリンス部120に流れ込む気流の量が増えることになる。これによって、搬送装置20により搬送される基板Wがバタつくことがある。横板部13eが高い位置に設けられていることによって、流体囲い込み部材13内の気圧が著しく高くなるのを防ぐことができる。
【0037】
上述した第2の実施形態に係る発明によれば、ノズル10aからの高圧の洗浄液によって洗浄処理がなされる基板Wは、その後端部分の浮き上がりを防止、もしくは抑制され、安定した姿勢で搬送装置20によって搬送される。このため、前述の本発明の第1の実施形態と同様に、基板Wの、ノズル10aや、搬出口102の周囲の側壁などへの衝突が防止され、また、基板Wのバタつきを抑制できることから、基板の破損を防止することができる。また、基板Wの浮き上がりを防止あるいは抑制できることで、基板Wをより平坦に近い状態で搬送できることから、基板Wに対し処理流体を均一に供給しながら洗浄処理ができる。これらの理由から、基板Wを効率よく処理することができる。
【0038】
次に、本発明の第3の実施形態に係る基板処理装置について
図8及び
図9を用いて説明する。この基板処理装置は、前述した仕切り板12(
図3参照)や流体囲い込み部材13(
図7参照)に代えて、ノズル10aから高速に吐出する洗浄液の流れに空気が引き込まれることを妨げるための構成(後述する気体引き込み阻害部材16)を有することを特徴とする。
【0039】
本発明の第3の実施形態に係る基板処理装置は、前述した各実施形態(
図3、
図7参照)と同様に、処理室100を有し、処理室100内に、洗浄処理部110とリンス処理部120とを備えている。処理室100内には、搬入口101から搬出口102まで延びる搬送装置20が設けられている。そして、洗浄処理部110には、チャンネル材11に固定された複数のノズルヘッド10が設けられ、また、リンス処理部120には、搬送装置20の上側に、それぞれ複数のノズル14aが形成された複数の上側処理液管14が設けられると共に、搬送装置20の下側に、それぞれ複数のノズル15aが形成された複数の下側処理液管15が設けられている。
【0040】
上述した構成の基板処理装置における洗浄処理部110には、
図8、
図9に示すように、気体引き込み阻害部材16が設けられている。なお、
図8では、図面の簡略化のため、チャンネル材11、上側処理液管14、下側処理液管15の記載を省略している。この気体引き込み阻害部材16は、それぞれ搬送方向と直交する方向(
図9の紙面に直交する方向)に延びる板状の2つのカバー板16a、16bを備えている。これら2つのカバー板16a、16bは、少なくとも全てのノズルヘッド10に対向する長さとされ、搬送方向と直交する方向に並ぶ複数のノズルヘッド10が固定されたチャンネル材11に、そのチャンネル材11を搬送方向Dtに平行な方向において挟むように、固定されている。これら2つのカバー板16a、16bによって、各ノズルヘッド10の先端と搬送装置20にて搬送される基板Wの表面との間の空間を含む、搬送方向Dtにおける所定範囲が仕切られる。また、
図9に示すように、2つのカバー板16a、16bの下端部は、ノズルヘッド10のノズル10a(吐出口)よりも下方まで延びるように設けられている。なお本実施形態では、ノズル10aと基板の表面との隙間が例えば40mm~60mmに対し、カバー板16a、16bの下端部と基板Wの表面との隙間は、25mm~35mm程度に設定される。
【0041】
このような洗浄処理部110(基板処理装置)では、ノズル10aから吐出する高圧の洗浄液が吐出される際に、洗浄液の高速な流れに周囲の気体(
図9における破線矢印参照)が引き込まれることが妨げられる。つまり、気流が生じる原因となるノズル10aから吐出される高圧洗浄液の周囲の気体の引き込みを防止、もしくは軽減することになる。これにより、洗浄液の高速な流れに引き込まれるように発生する気流を遮断することができ、気流の発生を抑えることができる。
【0042】
従って、基板Wが搬送装置20にて搬送される過程で、ノズルヘッド10の直下位置を通過した基板Wの先端部分の浮き上がり(
図1参照)、そして、ノズルヘッド10の直下位置を通過した基板Wの後端部分の浮き上がり(
図2参照)、のそれぞれを抑えることができる。これにより、上述の本発明の第1の実施形態、第2の実施形態と同様に、基板を効率よく処理することができる。
【0043】
前述した気体引き込み阻害部材16は、カバー板16a、16bと、ノズルヘッド10との距離ができるだけ少なくなるように設けることが望ましい。ノズルヘッド10とカバー板16a、16bとの間の空間が広ければ広いほど、この空間に存在する気体がノズルヘッド10のノズル10aからの洗浄液の吐出の勢いで引き込まれやすくなり、気流が生じやすくなる。また、ノズルヘッド10とカバー板16a、16bとの間が広いと、カバー16a、16bと、基板Wの表面との隙間から新たに気体が入り込みやすくなり、この気体が洗浄液の吐出の勢いに引き込まれることになる。したがって、カバー板16a、16bの設けられる位置は、ノズル10aから吐出する高圧状洗浄液の吐出幅程度とすることが望ましい。カバー板16a、16bと、ノズルヘッド10との間の空間に新たに気体が流入してノズル10aからの洗浄液の吐出により発生する気体の引き込みを防止する例として、
図10~
図12のそれぞれに示すように構成することもできる。
【0044】
図10に示す気体引き込み阻害部材16(第1の変形例)は、2つの仕切り板16a、16bの下端部のそれぞれから、当該2つのカバー板16a、16bが仕切る所定範囲(空間)の内方に突出し、所定間隔をもって対向する2つの対向板部16c、16dを備えている。2つの対向板部16c、16dは、各カバー板16a、16bの長手方向の全長に亘って設けられる。2つの対向板部16c、16dの間隔は、ノズル10aから吐出する高圧状洗浄液の吐出幅程度に設定される。このような気体引き込み阻害部材16によれば、ノズル10aから吐出される圧縮処理流体の供給は何ら邪魔することなく、周囲の気体の引き込みをより軽減することができるようになる。よって、基板Wの浮き上がりを更に抑えることができるようになる。
【0045】
図11に示す気体引き込み阻害部材16(第2の変形例)は、2つのカバー板16a、16bの内面に設けられ、ノズル10aからの高圧洗浄液の吐出方向に向かって徐々に張り出すように傾斜する傾斜部16e、16f(傾斜部材)を備えている。2つの傾斜部16e、16fは、各カバー板16a、16bの長手方向の全長に亘って設けられる。傾斜部16e、16fの下端部での隙間は、ノズル10aから吐出する高圧洗浄液の吐出幅程度に設定される。このような気体引き込み阻害部材16においても、
図10に示した対向板部16c、16dと同様な効果が得られる。
【0046】
気体引き込み阻害部材16を構成する2つのカバー板16a、16bは、
図12に示すように、チャンネル材11の内側に配置して、2つのカバー板16a、16bの間隔をノズル10aから吐出する高圧洗浄液の吐出幅程度に設定することができる(第3の変形例)。このような気体引き込み阻害部材16によれば、
図10に示した対向板部16c、16dや
図11に示した傾斜部16e、16fを設けなくとも、同等な効果を得ることができる。
【0047】
上記した第3の実施形態に係る発明によれば、ノズル10aから吐出する高圧の洗浄液が吐出される際に、洗浄液の高速な流れに周囲の気体が引き込まれること自体が防止あるいは軽減される。これにより、基板の浮き上がりを防止、もしくは抑制することができ、基板を効率よく処理することができる。
【0048】
前述した各実施形態では、仕切り板12(第1の実施形態:
図3参照)、流体囲い込み部材13(第2の実施形態:
図4参照)、及び気体引き込み阻害部材16(第3の実施形態:
図8~
図12参照)は、洗浄処理部110に、個別に設けられるものであった。しかし、これに限定されず、仕切り板12、流体囲い込み部材13及び気体引き込み阻害部材16のうちの任意の2つまたはそれら3つを組み合わせて洗浄処理部110(基板処理装置)に適用することができる。それら組み合わせにより、搬送される基板Wの浮き上がりを更に確実に防止することができる。
【0049】
図13は、
図3で説明した第1の実施形態に、第2の実施形態の流体囲い込み部材13(
図7参照)と、第3の実施形態の気体引き込み阻害部材16(
図9参照)とを組み合わせた例である。それぞれの機能は各実施形態で述べたとおりであるので省略する。
本実施形態では、ノズルからの吐出圧が7MPa~15MPaで、隙間Gaは10mm以上、隙間Gbは5mm~10mm、ノズル10aの先端と基板Wの表面との隙間Gcを40mm~60mm、カバー板16a、16bの下端部と基板Wの表面との隙間Gdは、25mm~35mmとした。つまり、Gc>Gd>Ga>Gbとなるように調整したところ、搬送される基板Wの浮き上がりを確実に防止、もしくは抑制することができた。
【0050】
前述した各実施の形態では、処理流体として洗浄液が用いられるものであったが、これに限定されず、処理流体は、基板Wの処理に必要な、どのような液体、気体、気体及び液体の混合体のいずれであってもよい。
【0051】
前述した基板処理装置は、基板Wの表面の洗浄処理を行う基板洗浄装置(洗浄処理部110)であったが、ノズルヘッドから吐出する高圧処理流体によって基板を処理するものであれば、特に限定されない。
【0052】
また、実施形態では、搬送装置をローラで構成したが、ベルト搬送でもよい。特に第2の実施形態をベルト搬送で実施するには、気体透過性のベルトを使用したり、あるいは、基板における、搬送方向と直交する方向の両端を別々の搬送ベルトで支持しながら搬送するように構成してもよい。また、基板を水平状態で搬送するものであったが、水平方向に対して傾斜(例えば10度程度)を有して搬送するようにしてもよい。
【0053】
また、各実施形態においては、複数のノズルヘッド10を一列配置としたが、搬送方向と直交する方向に複数列設けるものでもよい。
【0054】
なお、例えば
図3において、ノズル10aから吐出された洗浄液の流れに引き込まれて基板Wの搬送方向Dtの上流側に向かう気流は、搬入口101から処理室100の外部に逃げるので基板Wの搬送にはほとんど影響がない。従って、搬入口のような排出口がない場合、仕切り板12をノズル10aに対して上流側にも配置するようにしてもよい。また、処理室100内に排気装置を設けてもよい。
【0055】
以上、本発明のいくつかの実施形態及び各部の変形例を説明したが、この実施形態や各部の変形例は、一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上述したこれら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明に含まれる。
【符号の説明】
【0056】
1、1a 基板処理装置
10 ノズルヘッド
11 チャンネル材
12 仕切り板
13 流体囲い込部材
14 上側処理液管
15 下側処理液管
16 気体引き込み阻害部材
20 搬送装置
21 ローラ
100 処理室
101 搬入口
102 搬出口
103 天井部
104 底部