(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】特に溶融金属用の冶金容器の耐火物ライニングの状態を決定するための方法
(51)【国際特許分類】
F27D 1/00 20060101AFI20241003BHJP
F27D 21/00 20060101ALI20241003BHJP
B22D 46/00 20060101ALI20241003BHJP
B22D 41/02 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
F27D1/00 V
F27D21/00 Q
B22D46/00
B22D41/02 A
B22D41/02 B
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023123181
(22)【出願日】2023-07-28
(62)【分割の表示】P 2021072326の分割
【原出願日】2014-03-07
【審査請求日】2023-07-28
(32)【優先日】2013-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】314016535
【氏名又は名称】リフラクトリー・インテレクチュアル・プロパティー・ゲーエムベーハー・ウント・コンパニ・カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ラマー,グレゴール
(72)【発明者】
【氏名】ヤンドル,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ツェトル,カール-ミヒャエル
【審査官】黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】特開昭52-58003(JP,A)
【文献】特表2005-526948(JP,A)
【文献】特開平7-12541(JP,A)
【文献】特開2010-156471(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 1/00
F27D 21/00
B22D 46/00
B22D 41/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融金属を含む容器(10)の耐火物ライニング(12)の状態を決定するための方法であって、
前記方法は、
各前記容器(10)の以下の測定又は決定されたデータ:
-
前記容器(10)を構成するブロックの材料、前記ブロックの材料の特性、
前記容器(10)の新品のライニングの壁厚;
-溶融金属の量、温度、前記溶融金属若しくはスラグの成分
、湯出し時間、温度プロファイル、処理時間;
-少なくとも摩耗度が最大である地点における、前記容器(10)を使用した後の前記ライニングの壁厚;
を全て収集して保存すること、並びに
収集し保存した各前記容器(10)の前記測定又は決定されたデータ
全てから
、前記ライニング(12)の全体的な摩耗を、計算及び後続の分析によって評価すること、を特徴とし、
前記測定又は決定されたデータ
全てから、
ランダムな特徴選択
を用いて
反復計算
が行われ、
前記計算
及び後続の分析により、
前記耐火物ライニング(12)の最大使用期間、壁の厚さ、材料
及び保守データ
を最適化でき、
前記耐火物ライニング12を補修して又は補修せずに更に使用することに関して、決定
が行われる
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記測定又は決定されたデータは、記録された後に妥当性に関して検査され、1つ以上の値の不足又は異常が存在する場合、前記データはそれぞれ補正又は削除されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記測定又は決定されたデータは個別に検査された後、集合として有効なデータのセットとして保存されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
選択されていない他のデータは、統計的目的又は後のデータ記録のために使用されることを特徴とする、請求項
1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記ライニング(12)の前記壁厚は、多数回の湯出しの後に測定され、
前記測定に基づいて、前記容器を補修して又は補修せずに更に使用することに関して決定
が行われることを特徴とする、請求項1~
4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
転炉である前記容器(10)は、異なる複数の部分(1~10)に分割され、
前記測定又は決定されたデータの全てに基づいて、前記部分
が互いに独立して評価
されることを特徴とする、請求項1~
5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記部分(1~10)は、前記容器(10)の周に亘って、及び前記容器(10)の高さに亘って散在するよう選択される、請求項
6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分による、特に好ましくは溶融金属用容器である冶金容器
の耐火物ライニングの状態を決定するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特に溶融金属用冶金容器の耐火物ライニングの構造のための計算方法が存在しており、
この方法によって決定されたデータ又は経験的値は、数理モデルに変換される。このよう
な数理モデルでは、冶金容器の使用に関する有効な摩耗メカニズムを十分正確に検出又は
考慮できないため、ライニングに関する耐火物構成及びライニングの保守作業を数学的に
決定するための可能性が大いに制限される。即ち、例えば転炉の容器の耐火物ライニング
の使用期間に関する決定は、依然として手動で行わなければならない。
【0003】
例えばアーク炉の冶金容器の壁及び/又は底部領域内の耐火物ライニングの残厚を測定
するための特許文献1による方法では、決定された測定データは、後続の、特定された摩
耗領域の補修のために使用される。ライニングを補修する役割を果たすマニピュレータの
、冶金容器上又は冶金容器内の測定位置に、測定ユニットを取り付け、続いてライニング
の残厚をその壁及び/又は底部領域において測定する。炉における処理の開始時に測定さ
れたライニングの実際の外形と比較することにより、その摩耗が決定され、これに基づい
て耐火物ライニングを補修できる。しかしながらこの方法では、容器ライニングの全体的
な決定は不可能である。
【0004】
特許文献2によると、ライニング表面を非接触で感知するためのスキャナシステムを用
いた、スキャナシステムの位置及び配向の決定、並びに空間的に固定された基準点を検出
することによる、るつぼの位置に対する配置による、冶金るつぼのライニングの壁厚又は
摩耗を決定するための方法が開示されている。ここでは直交基準系が使用され、水平面に
対する2つの軸の傾きを傾きセンサによって測定する。スキャナによって測定されたデー
タは直交座標系に変換でき、従ってるつぼのライニングの各実際の状態の自動測定が可能
となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2003081157号
【文献】国際公開第2007107242号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、これらの公知の計算方法又は測定方法に基づいて、冶金容器の湯出し
口の耐火物ライニングの寿命及びその経過を最適化でき、またこの目的のための手動によ
る決定を削減するか又は殆ど排除する方法を考案することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によると、この目的は請求項1の特徴部分によって達成される。
【0008】
本発明による方法は、各容器の全てのデータを収集してデータ構造内に保存し、全ての
測定及び決定されたデータ又はパラメータから計算モデルを生成し、この計算モデルを用
いてこれらのデータ又はパラメータを計算及び後続の分析によって評価することを提案す
る。
【0009】
本発明による上記方法により、冶金容器に関して、容器の使用後に容器の実際の状態を
特定するための測定を決定できるだけでなく、関連する又は総体的な決定プロセス及びそ
れに続く分析も実施でき、これにより、容器のライニング及び容器に流し込まれ容器内で
処理される溶融物のプロセスシーケンス全体の両方に関して、最適化が達成される。
【0010】
本発明の枠組みにおけるこの方法の更なる有利な詳細は、従属請求項において定義され
る。
【0011】
例示的実施形態、及び本発明の更なる利点を、図面を用いて以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、複数のセクタに細分化された冶金容器の長手方向概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本方法は特に冶金容器に関し、このような容器10が例示的実施形態として、
図1に断
面図で示されている。この例では、この容器10は、鋼の製造に関して公知である転炉で
ある。この容器10は基本的には、金属ハウジング15、耐火物ライニング12、ガス供
給源(詳述せず)に連結できるガスシンク17、18からなる。
【0014】
作業中にこの容器10に流し込まれる溶融金属は、例えばブローイングプロセス(更に
詳細には説明しない)によって、冶金的に処理される。製鋼所では一般に、多数のこのよ
うな転炉10を同時に使用し、データは、これら転炉それぞれに関して記録される。
【0015】
言うまでもないことであるが、本方法は、例えば電気炉、溶鉱炉、製鋼取鍋、例えばア
ルミニウム溶融炉のための容器、銅アノード炉等の非鉄金属の分野における容器といった
様々な冶金容器に使用できる。
【0016】
本方法はまた、本方法を同様に異なるコンテナに使用できることを特徴とする。従って
例えば、全ての転炉の耐火物ライニング及び動作中の取鍋を決定でき、ここで同一の溶融
物はまず転炉内で処理され、続いて製鋼取鍋に流し込まれる。
【0017】
まず、複数の群に細分化された容器10に関する全てのデータが収集され、データ構造
内に保存される。
【0018】
金属製ハウジング15内に埋入された容器ライニング12の1つの群としての摩耗を測
定するために、最初に、通常は異なる複数のブロック14、16又は壁厚を備える新品の
耐火物ライニングに対して上記測定を実行する。またこの測定は、ブロック14、16の
寸法を測定することにより、又は事前に特定されているブロック14、16の寸法が分か
っていることにより、実行できる。これに加えて、使用されるブロック14、16の、及
び使用されるいずれの注入材料の、材料及び材料特性を記録する。
【0019】
製造データとして特定される更なる群に関して、溶融物の量、温度、溶融物若しくはス
ラグの成分及びその厚さ、湯出し時間、温度プロファイル、処理時間及び/又は溶融物に
対する特定の添加物等の冶金学的パラメータ等の記録を、各容器10の使用期間中に行う
。容器の種類に応じて、上記の製造データのうちの一部のみ又は全てが記録される。
【0020】
更に、容器10の使用後、ライニング12の壁厚の測定を、少なくとも摩耗が最大であ
る地点、例えば容器が満杯である場合にスラグが接触する地点において、ただし好ましく
はライニング12全体について行う。ある特定の数の湯出し口に関してライニング12の
壁厚を測定すれば、ここでは十分である。
【0021】
続いて、溶融金属をるつぼに流し込む又は溶融金属をるつぼから流し出す様式等といっ
た他のプロセスパラメータを決定できる。
【0022】
本発明によると、計算モデルは、測定及び決定されたデータの少なくとも一部から生成
され、この計算モデルを用いて、これらのデータ又はパラメータを計算及び後続の分析に
よって評価する。
【0023】
本発明に従って生成されるこの計算モデルを用いて、耐火物ライニング12の最大使用
期間、壁厚、材料及び/若しくは保守データ、又は反対に、溶融物の処理に関するプロセ
スシーケンスを最適化できる。これらの分析から時として、ライニング12を補修して又
は補修せずに更に使用することに関して、決定を下すことができる。ライニング12の使
用期間、及び壁厚、材料選択といった定義すべき他の値の、手動による経験的判断がもは
や必要でなくなるか、又はその程度が限定される。
【0024】
有利には、例えば転炉等の冶金容器10は、異なる複数の部分1~10に細分化され、
部分1、2、8は容器上部、部分3、7、9は容器側部、部分4、5、6は容器基部に割
り当てられる。
【0025】
部分1~10は、計算モデルを用いて、個別に又は互いに独立して評価される。これの
利点は、これに従って容器基部、側壁又は容器上部におけるライニングの異なる負荷を考
慮できることである。
【0026】
計算モデルの生成前又は生成中、データは記録された後に妥当性に関して検査され、1
つ以上の値の不足又は異常が存在する場合、データはそれぞれ補正又は削除される。デー
タは好ましくは個別に検査された後、集合として有効なデータのセットとして保存される
。
【0027】
有利には、反復計算又は分析のために、測定若しくは決定されたデータ又はパラメータ
から少数を選択する。これは経験的値に応じて又は計算方法によって行われる。反復計算
又は分析のための測定若しくは決定されたデータ又はパラメータのこの選択は、アルゴリ
ズム、例えばランダムな特徴選択を用いて行われる。
【0028】
決定されたもののそれ以上利用されていないその他のデータは、統計的目的又は製造誤
差等の再構成に関する後の記録のために使用される。
【0029】
本発明の別の利点として、例えば回帰分析である分析を用いた、ある特定の数の湯出し
口に関するライニング12の壁厚の測定から、計算モデルを適合させ、この計算モデルを
用いて、収集され構造化されたデータを考慮して摩耗を計算又はシミュレートできる。こ
の適合された計算モデルは特に、プロセスシーケンスを試験若しくはシミュレートするた
めの、又は特定の変更を加えるための試験にも好適に使用される。
【0030】
本発明は、上述の例示的実施形態によって十分に示されている。言うまでもなく、本発
明を他の変形例によっても実現できる。
【0031】
従って容器10はその側部に、それ自体公知の方法で、少なくとも1つの他の流出用開
口(更に詳細には図示されていない)を備え、これと共に、一列に並んだ多数の耐火物ス
リーブを備える特別な湯出し口が使用される。言うまでもないことであるが、この湯出し
口の状態も測定及び決定され、本発明による計算モデルに含まれる。
【0032】
なお、本発明の具体的な態様は、例えば以下の付記1-11に示すとおりである。
(付記1)
溶融金属を含む容器の耐火物ライニングの状態を決定するための方法であって、
材料、壁厚、設備の種類といった、前記耐火物ライニング(12)のデータが検出又は
測定及び評価される、方法において、
各前記容器(10)の以下の測定又は決定されたデータ:
-ブロックの材料、材料の特性、壁厚及び/又は保守データとしての注入される材料と
いった、前記容器内側ライニング(12)の初期の耐火性構造;
-溶融物の量、温度、前記溶融物若しくはスラグの成分及びその厚さ、処理時間及び/
又は冶金学的パラメータといった、使用中の製造データ;
-少なくとも摩耗度が最大である地点における、前記容器(10)を使用した後の前記
ライニングの壁厚;
-前記溶融金属を前記容器(10)に流し込む又は前記溶融金属を前記容器(10)か
ら流し出す様式といった、付加的なプロセスパラメータ
を全て収集してデータ構造内に保存すること、並びに
計算モデルは、前記測定及び決定されたデータの少なくとも一部から生成され、前記計
算モデルを用いて、前記データ又はパラメータを計算及び後続の分析によって評価するこ
と
を特徴とする、方法。
(付記2)
前記データは、記録された後に妥当性に関して検査され、1つ以上の値の不足又は異常
が存在する場合、前記データはそれぞれ補正又は削除されることを特徴とする、付記1に
記載の方法。
(付記3)
前記データは好ましくは個別に検査された後、集合として有効なデータのセットとして
保存されることを特徴とする、付記1又は2に記載の方法。
(付記4)
反復計算又は分析のために、前記測定若しくは決定されたデータ又はパラメータから少
数を選択し、前記選択は経験的値に応じて又は計算方法によって行われることを特徴とす
る、付記1~3のいずれか1項に記載の方法。
(付記5)
前記反復計算又は分析のための前記測定若しくは決定されたデータ又はパラメータの前
記選択は、アルゴリズム、例えばランダムな特徴選択を用いて行われることを特徴とする
、付記4に記載の方法。
(付記6)
それ以上利用されていない他のデータは、統計的目的又は後のデータ記録のために使用
されることを特徴とする、付記4又は5に記載の方法。
(付記7)
前記ライニング(12)の前記壁厚は、多数回の湯出しの後に測定され、前記計算モデ
ルは前記測定に基づいて、前記容器を補修して又は補修せずに更に使用することに関して
決定を行うことを特徴とする、付記1~6のいずれか1項に記載の方法。
(付記8)
例えば回帰分析である分析を用いた、多数回の湯出しの後の前記ライニング(12)の
前記壁厚の測定から、前記計算モデルを適合させ、前記計算モデルを用いて、収集され構
造化されたデータを考慮して摩耗を計算できることを特徴とする、付記1~7のいずれか
1項に記載の方法。
(付記9)
前記ニューラルネットワークに関する前記モデルは、プロセスシーケンスを前記モデル
から試験又はシミュレートするための、及び前記モデルに基づいて実際の動作中に特定の
変更を加えるための試験に使用されることを特徴とする、付記8に記載の方法。
(付記10)
例えば転炉である前記冶金容器(10)は、異なる複数の部分(1~10)に分割され
、前記計算モデルは、測定及び確認された前記データ又はパラメータの全てに基づいて、
前記部分を互いに独立して評価することを特徴とする、付記1~9のいずれか1項に記載
の方法。
(付記11)
前記部分(1~10)は、前記容器(10)の周に亘って、及び前記容器(10)の高
さに亘って散在するよう選択される、付記10に記載の方法。