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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】スキップフロア用壁パネル
(51)【国際特許分類】
   E04B 2/56 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
E04B2/56 605J
E04B2/56 603Z
E04B2/56 605E
E04B2/56 632H
E04B2/56 633A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023137941
(22)【出願日】2023-08-28
【審査請求日】2024-03-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】307042385
【氏名又は名称】ミサワホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(72)【発明者】
【氏名】大津 正博
【審査官】菅原 奈津子
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-042023(JP,A)
【文献】特開平08-302896(JP,A)
【文献】特開平05-287822(JP,A)
【文献】特開平10-280552(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/00- 1/61
E04B 2/56- 2/70
E04C 2/00- 2/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下階側の床用構造材と、上階側の床用構造材と、の間に設けられたスキップフロア用壁パネルであって、
框材によって形成された枠体と、
前記枠体の両面に貼設された面材と、を備えており、
前記面材には、下側工具用開口と、当該下側工具用開口よりも上方に位置する上側工具用開口と、が設けられており、
前記框材には、前記枠体の上辺部を形成する上框材と、前記枠体の下辺部を形成する下框材と、が含まれており、
前記枠体における一方の面には、前記上框材と前記下框材とに架け渡された一枚の前記面材が貼設されており、
前記枠体における他方の面には、前記上框材と前記下框材とに架け渡された一枚の前記面材が貼設されていることを特徴とするスキップフロア用壁パネル。
【請求項2】
下階側の床用構造材と、上階側の床用構造材と、の間に設けられたスキップフロア用壁パネルであって、
框材によって形成された枠体と、
前記枠体の両面に貼設された面材と、を備えており、
前記面材には、下側工具用開口と、当該下側工具用開口よりも上方に位置する上側工具用開口と、が設けられており、
前記下側工具用開口は、前記枠体の両面に貼設された前記面材のうち、当該枠体における一方の面に貼設された第一面材に設けられており、
前記上側工具用開口は、前記枠体の両面に貼設された前記面材のうち、当該枠体における他方の面に貼設された第二面材に設けられていることを特徴とするスキップフロア用壁パネル。
【請求項3】
請求項2に記載のスキップフロア用壁パネルにおいて、
前記第一面材は、前記第二面材よりも、前記下階側の床用構造材に近い位置に設けられていることを特徴とするスキップフロア用壁パネル。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のスキップフロア用壁パネルにおいて、
前記下側工具用開口と前記上側工具用開口とは、前記面材に対して垂直な方向から見た場合に、重なっていないことを特徴とするスキップフロア用壁パネル。
【請求項5】
下階側の床用構造材と、上階側の床用構造材と、の間に設けられたスキップフロア用壁パネルであって、
框材によって形成された枠体と、
前記枠体の両面に貼設された面材と、を備えており、
前記面材には、下側工具用開口と、当該下側工具用開口よりも上方に位置する上側工具用開口と、が設けられており、
第一通しボルトによって、前記下階側の床用構造材を挟んで当該スキップフロア用壁パネルの下方に配置された第一構造材に連結されるとともに、
第二通しボルトによって、前記上階側の床用構造材を挟んで当該スキップフロア用壁パネルの上方に配置された第二構造材に連結されることを特徴とするスキップフロア用壁パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スキップフロア用壁パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、連続する部屋空間の床面間に高低差を設けて壁パネル及び床パネルにより形成されるスキップフロア用の壁パネルが知られている。
特許文献1に記載のスキップフロア用壁パネルは、下部パネルに半割材を介して上部パネルを接着剤により一体化接合してなる木製のものである。また、このスキップフロア用壁パネルにおいては、下部パネル及び上部パネルに設けた工具用開口部から工具を入れて、下部パネルの上部芯材と上部パネルの下部芯材との間を貫通する通しボルトの上下端に組み付けたナットをそれぞれ締め込むことが可能となっている。そして、このスキップフロア用壁パネルのうち、上部パネルが、段差の立ち上がり部分に配置されている。以下では、上部パネルを、スキップフロア用壁パネルと呼ぶ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-42023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スキップフロア用壁パネルは、下端部が他の構造材にボルトによって連結(固定)されるとともに、上端部が他の構造材にボルトによって連結(固定)される場合がある。
特許文献1のスキップフロア用壁パネルは、下端部が、当該スキップフロア用壁パネルの下方に位置する下部パネル(他の構造材)に、通しボルトによって連結されている。しかしながら、特許文献1のスキップフロア用壁パネルにおいては、上端部は、他の構造材にボルトによって連結(固定)されていない。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その課題は、スキップフロア用壁パネルの下端部をボルトによって他の構造材に固定する固定作業と、スキップフロア用壁パネルの上端部をボルトによって他の構造材に固定する固定作業と、の両方を容易に行うことができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、例えば図1図3に示すように、下階側の床用構造材(床パネル10b)と、上階側の床用構造材(床パネル10c)と、の間に設けられたスキップフロア用壁パネル20であって、
框材2によって形成された枠体と、
前記枠体の両面に貼設された面材3と、を備えており、
前記面材3には、下側工具用開口21と、当該下側工具用開口21よりも上方に位置する上側工具用開口22と、が設けられており、
前記框材2には、前記枠体の上辺部を形成する上框材と、前記枠体の下辺部を形成する下框材と、が含まれており、
前記枠体における一方の面には、前記上框材と前記下框材とに架け渡された一枚の前記面材3(第一面材3a)が貼設されており、
前記枠体における他方の面には、前記上框材と前記下框材とに架け渡された一枚の前記面材3(第二面材3b)が貼設されていることを特徴とする。
【0006】
請求項1に記載の発明によれば、下側工具用開口21から工具を差し入れることが可能であるので、スキップフロア用壁パネル20の下端部をボルトによって他の構造材に固定する固定作業を、容易に行うことができる。
さらに、下側工具用開口21よりも上方に位置する上側工具用開口22から工具を差し入れることが可能であるので、スキップフロア用壁パネル20の上端部をボルトによって他の構造材に固定する固定作業を、容易に行うことができる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、例えば図1~図3に示すように、下階側の床用構造材(床パネル10b)と、上階側の床用構造材(床パネル10c)と、の間に設けられたスキップフロア用壁パネル20であって、
框材2によって形成された枠体と、
前記枠体の両面に貼設された面材3と、を備えており、
前記面材3には、下側工具用開口21と、当該下側工具用開口21よりも上方に位置する上側工具用開口22と、が設けられており、
前記下側工具用開口21は、前記枠体の両面に貼設された前記面材3のうち、当該枠体における一方の面に貼設された第一面材3aに設けられており、
前記上側工具用開口22は、前記枠体の両面に貼設された前記面材3のうち、当該枠体における他方の面に貼設された第二面材3bに設けられていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明によれば、下側工具用開口21から工具を差し入れることが可能であるので、スキップフロア用壁パネル20の下端部をボルトによって他の構造材に固定する固定作業を、容易に行うことができる。
さらに、下側工具用開口21よりも上方に位置する上側工具用開口22から工具を差し入れることが可能であるので、スキップフロア用壁パネル20の上端部をボルトによって他の構造材に固定する固定作業を、容易に行うことができる。
また、下側工具用開口21と上側工具用開口22とが、異なる面材3に設けられているので、同一の面材3に設けられている場合に比べて、スキップフロア用壁パネル20の構造的強度を高めることができる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、例えば図2に示すように、請求項2に記載のスキップフロア用壁パネル20において、
前記第一面材3aは、前記第二面材3bよりも、前記下階側の床用構造材(床パネル10b)に近い位置に設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明によれば、下側工具用開口21が、上側工具用開口22よりも、下階側の床用構造材(床パネル10b)に近い位置に配置されている。したがって、下側工具用開口21を利用して、例えば、下階用の電線や通信線などを配線したり、下階用のスイッチやコンセントなどの配線器具を埋め込んだりすることができるので、配線や配線器具の埋め込みに要する手間を軽減できる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、例えば図3に示すように、請求項1又は2に記載のスキップフロア用壁パネル20において、
前記下側工具用開口21と前記上側工具用開口22とは、前記面材3に対して垂直な方向(前後方向)から見た場合に、重なっていないことを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明によれば、下側工具用開口21と上側工具用開口22とが、面材3に対して垂直な方向(前後方向)から見て重なっていないので、重なっている場合に比べて、スキップフロア用壁パネル20の構造的強度を高めることができる。
【0013】
請求項5に記載の発明は、例えば図1図3に示すように、下階側の床用構造材(床パネル10b)と、上階側の床用構造材(床パネル10c)と、の間に設けられたスキップフロア用壁パネル20であって、
框材2によって形成された枠体と、
前記枠体の両面に貼設された面材3と、を備えており、
前記面材3には、下側工具用開口21と、当該下側工具用開口21よりも上方に位置する上側工具用開口22と、が設けられており、
第一通しボルト51によって、前記下階側の床用構造材(床パネル10b)を挟んで当該スキップフロア用壁パネル20の下方に配置された第一構造材(第一壁パネル30a)に連結されるとともに、
第二通しボルト61によって、前記上階側の床用構造材(床パネル10c)を挟んで当該スキップフロア用壁パネル20の上方に配置された第二構造材(第二壁パネル30c)に連結されることを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の発明によれば、下側工具用開口21から工具を差し入れることが可能であるので、スキップフロア用壁パネル20の下端部をボルトによって他の構造材に固定する固定作業を、容易に行うことができる。
さらに、下側工具用開口21よりも上方に位置する上側工具用開口22から工具を差し入れることが可能であるので、スキップフロア用壁パネル20の上端部をボルトによって他の構造材に固定する固定作業を、容易に行うことができる。
また、第一構造材(第一壁パネル30a)と下階側の床用構造材(床パネル10b)とを貫通する通しボルトによって、スキップフロア用壁パネル20の下端部を固定できるとともに、第二構造材(第二壁パネル30c)と上階側の床用構造材(床パネル10c)とを貫通する通しボルトによって、スキップフロア用壁パネル20の上端部を固定できるので、スキップフロア用壁パネル20の設置状態を強固かつ安定的なものとすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、スキップフロア用壁パネルの下端部をボルトによって他の構造材に固定する固定作業と、スキップフロア用壁パネルの上端部をボルトによって他の構造材に固定する固定作業と、の両方を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】スキップフロアを有する建物を示す縦断面図である。
図2】スキップフロア用壁パネル及びその近傍を示す縦断面図である。
図3】スキップフロア用壁パネルの左端部を示す図であり、(a)は正面図、(b)は正面側から見た斜視図、(c)は背面側から見た斜視図ある。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の技術的範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。なお、以下の実施形態及び図示例における方向(前後方向、上下方向、左右方向)は、あくまでも説明の便宜上設定したものである。
【0018】
《建物》
図1は、スキップフロアを有する建物1の一例を示す縦断面図である。
建物1は、1階と、1.5階と、2階と、が設けられた2階建ての住宅である。
なお、本実施形態の建物1は、2階建てとされているが、これに限られるものではなく、スキップフロアを有するものであればよい。また、スキップフロアの位置も、1.5階(すなわち1階と2階との間)に限られるものではなく、適宜変更可能である。
【0019】
建物1は、壁、床、屋根といった建物の構成要素を予め工場にてパネル化しておき、施工現場でこれらのパネル(壁パネル、床パネル、屋根パネル等)を組み立てて構築する木質系のパネル工法で構築される。ただし、これに限られるものではなく、従来の軸組工法、壁式工法、ツーバイフォー工法等で構築されるものでもよい。
パネルとは、建築用木質パネルであり、縦横の框材2が矩形状に組み立てられて矩形枠が構成され、この矩形枠の内部に補助桟材が縦横に組み付けられて枠体が構成され、この枠体の両面もしくは片面に面材3が貼設されたものであり、内部中空な構造となっている。その内部中空部(面材3の裏側)には、通常、グラスウールやロックウールなどの断熱材が装填される。
【0020】
建物1は、床パネルとして、1階の床を構成する床パネル10aと、1.5階の床を構成する床パネル10bと、2階の床を構成する床パネル10cと、を少なくとも備えている。
また、建物1は、壁パネルとして、スキップフロア用壁パネル20と、1階の壁の一部を構成する第一壁パネル30aと、2階の壁の一部を構成する第二壁パネル30cと、を少なくとも備えている。
【0021】
スキップフロア用壁パネル20は、1.5階の床パネル10bと、2階の床パネル10cと、の間に設けられている。すなわち、スキップフロア用壁パネル20は、くだ壁パネルであり、段差の立ち上がり部分に配置されている。
第一壁パネル30aは、1.5階の床パネル10bを挟んで、スキップフロア用壁パネル20の下方に設けられている。
第二壁パネル30cは、2階の床パネル10cを挟んで、スキップフロア用壁パネル20の上方に設けられている。
【0022】
《スキップフロア用壁パネルの構成》
図2は、スキップフロア用壁パネル20及びその近傍の一例を示す縦断面図である。
図3は、スキップフロア用壁パネル20の左端部の一例を示す図であり、(a)は正面図、(b)は正面側から見た斜視図、(c)は背面側から見た斜視図である。
第一壁パネル30aの上には、1.5階の床パネル10bにおける端部(後側の框材2)と、当該端部に固定されている第一横架材41と、が載っている。床パネル10bの端部(後側の框材2)と当該端部に固定されている第一横架材41との上には、スキップフロア用壁パネル20が載っている。スキップフロア用壁パネル20の上には、2階の床パネル10cにおける端部(前側の框材2)と、当該端部に固定されている第二横架材42と、が載っている。床パネル10cの端部(前側の框材2)と当該端部に固定されている第二横架材42との上には、第二壁パネル30cが載っている。
なお、第一横架材41及び第二横架材42は、形状や寸法が、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0023】
床パネル10bの端部(後側の框材2)と当該端部に固定されている第一横架材(胴差)41との境界と、第一壁パネル30aの上端部(上側の框材2)と、スキップフロア用壁パネル20の下端部(下側の框材2)と、にはボルト挿通孔が設けられている。当該ボルト挿通孔には、第一通しボルト(胴差ボルト)51が挿通されている。第一通しボルト51の両端部、具体的には、第一通しボルト51のうちボルト挿通孔から突出している部分には、ナット52が座金53を介して螺合されている。
すなわち、スキップフロア用壁パネル20は、第一通しボルト51によって、床パネル10b及び第一横架材41を介して、第一壁パネル30aに連結(固定)されている。
【0024】
床パネル10cの端部(前側の框材2)と当該端部に固定されている第二横架材(胴差)42との境界と、第二壁パネル30cの下端部(下側の框材2)と、スキップフロア用壁パネル20の上端部(上側の框材2)と、にはボルト挿通孔が設けられている。当該ボルト挿通孔には、第二通しボルト(胴差ボルト)61が挿通されている。第二通しボルト61の両端部、具体的には、第二通しボルト61のうちボルト挿通孔から突出している部分には、ナット62が座金63を介して螺合されている。
すなわち、スキップフロア用壁パネル20は、第二通しボルト61によって、床パネル10c及び第二横架材42を介して、第二壁パネル30cに連結(固定)されている。
なお、スキップフロア用壁パネル20の下端部と第一壁パネル30aとを連結する連結部材(第一通しボルト51、ナット52、座金53)、及びスキップフロア用壁パネル20の上端部と第二壁パネル30cとを連結する連結部材(第二通しボルト61、ナット62、座金63)は、形状や寸法が、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0025】
スキップフロア用壁パネル20は、框材2(及び補助桟材)によって形成された枠体と、当該枠体の両面に貼設された面材3と、により構成される建築用木質パネルである。すなわち、スキップフロア用壁パネル20は、面材3として、枠体における一方の面に貼設された第一面材3aと、枠体における他方の面に貼設された第二面材3bと、を備えている。
スキップフロア用壁パネル20は、例えば、高さ寸法(上下方向の寸法)よりも、幅寸法(左右方向の寸法)の方が長く設定されている。本実施形態のスキップフロア用壁パネル20は、高さ寸法が275mmに設定されているが、これに限られるものではない。
【0026】
第一面材3aは、框材2(及び補助桟材)によって形成された枠体の前面に貼り付けられており、第二面材3bは、当該枠体の後面に貼り付けられている。すなわち、スキップフロア用壁パネル20を構成する一対の面材3のうち、1.5階の床パネル10bに近い位置に設けられている面材3が、第一面材3aであり、2階の床パネル10cに近い位置に設けられている面材3が、第二面材3bである。
【0027】
第一面材3aには、スキップフロア用壁パネル20の厚さ方向(前後方向)に貫通する下側工具用開口21が形成されている。下側工具用開口21は、当該下側工具用開口21から、第一通しボルト51にナット52を締め込むための工具を差し入れて、当該締め込む作業(固定作業)を行うために設けられている。本実施形態の下側工具用開口21は、直径100mmの円形状であるが、下側工具用開口21の形状や寸法はこれに限られるものではない。
第二面材3bには、スキップフロア用壁パネル20の厚さ方向(前後方向)に貫通する上側工具用開口22が形成されている。上側工具用開口22は、当該上側工具用開口22から、第二通しボルト61にナット62を締め込むための工具を差し入れて、当該締め込む作業(固定作業)を行うために設けられている。本実施形態の上側工具用開口22は、直径100mmの円形状であるが、上側工具用開口22の形状や寸法はこれに限られるものではない。
【0028】
図3(a)に示すように、下側工具用開口21と上側工具用開口22とは、貫通方向(前後方向)から見て、互いの中心を結ぶ線が上下方向に対して平行となる位置に配置されている。さらに、下側工具用開口21と上側工具用開口22とは、貫通方向(前後方向)から見て、互いに重ならない位置に配置されている。
なお、下側工具用開口21及び上側工具用開口22の位置関係は、これに限られるものではない。例えば、本実施形態では、貫通方向(前後方向)から見て、下側工具用開口21と上側工具用開口22との離隔寸法が15mmに設定されているが、これに限られるものではない。
【0029】
下側工具用開口21は、上側工具用開口22よりも下方に設けられている。
すなわち、下側工具用開口21は、上側工具用開口22よりも、第一壁パネル30a(1階の壁の一部を構成する壁パネル)に近い位置に設けられている。したがって、ナット52及び座金53を、下側工具用開口21から差し入れて、スキップフロア用壁パネル20と第一壁パネル30aとを連結する第一通しボルト51の上端部に取り付けることが容易であるとともに、当該ナット52を、下側工具用開口21から差し入れた工具によって締め込むことが容易となっている。さらに、下側工具用開口21を利用して、例えば、1.5階用の電線や通信線などを配線したり、1.5階用のスイッチやコンセントなどの配線器具を埋め込んだりすることが可能となっている。したがって、1.5階用の配線を行うための開口や、1.5階用の配線器具の埋め込むための開口を、別途設ける必要がないので、配線や配線器具の埋め込みに要する手間を軽減できる。
【0030】
また、上側工具用開口22は、下側工具用開口21よりも、第二壁パネル30c(2階の壁の一部を構成する壁パネル)に近い位置に設けられている。したがって、ナット62及び座金63を、上側工具用開口22から差し入れて、スキップフロア用壁パネル20と第二壁パネル30cとを連結する第二通しボルト61の下端部に取り付けることが容易であるとともに、当該ナット62を、上側工具用開口22から差し入れた工具によって締め込むことが容易となっている。
【0031】
《スキップフロア用壁パネルの施工方法》
次に、スキップフロア用壁パネル20の施工方法の一例を説明する。
まず、第一壁パネル30aの上に、床パネル10bの端部(後側の框材2)と当該端部に固定されている第一横架材41とを載せる。その際、床パネル10bの端部(後側の框材2)と当該端部に固定されている第一横架材41との境界を貫通している第一通しボルト51が、第一壁パネル30aの上端部(上側の框材2)に設けられているボルト挿通孔を貫通した状態となるように載せる。
次いで、座金53及びナット52を、第一壁パネル30aに設けられている工具用開口(図示省略)から差し入れて第一通しボルト51の下端部に取り付けた後、当該ナット52を、当該工具用開口から差し入れた工具を用いてねじ込む。
【0032】
次いで、床パネル10bの端部(後側の框材2)と当該端部に固定されている第一横架材41との上に、スキップフロア用壁パネル20を載せる。その際、第一壁パネル30aの上端部(上側の框材2)と、床パネル10bの端部(後側の框材2)と当該端部に固定されている第一横架材41との境界と、を貫通している第一通しボルト51が、スキップフロア用壁パネル20の下端部(下側の框材2)に設けられているボルト挿通孔を貫通した状態となるように載せる。また、その際、スキップフロア用壁パネル20の第一面材3aが、前側(1.5階側)が向いた状態となるように載せる。
次いで、座金53及びナット52を、下側工具用開口21から差し入れて第一通しボルト51の上端部に取り付けた後、当該ナット52を、下側工具用開口21から差し入れた工具を用いてねじ込む。
これにより、スキップフロア用壁パネル20の下端部が、第一壁パネル30aに連結(固定)される。
【0033】
次いで、スキップフロア用壁パネル20の上に、床パネル10cの端部(前側の框材2)と当該端部に固定されている第二横架材42とを載せる。その際、床パネル10cの端部(前側の框材2)と当該端部に固定されている第二横架材42との境界を貫通している第二通しボルト61が、スキップフロア用壁パネル20の上端部(上側の框材2)に設けられているボルト挿通孔を貫通した状態となるように載せる。
次いで、座金63及びナット62を、上側工具用開口22から差し入れて第二通しボルト61の下端部に取り付けた後、当該ナット62を、上側工具用開口22から差し入れた工具を用いてねじ込む。
【0034】
次いで、床パネル10cの端部(前側の框材2)と当該端部に固定されている第二横架材42との上に、第二壁パネル30cを載せる。その際、スキップフロア用壁パネル20の上端部(上側の框材2)と、床パネル10cの端部(前側の框材2)と当該端部に固定されている第二横架材42との境界と、を貫通している第二通しボルト61が、第二壁パネル30cの下端部(下側の框材2)に設けられているボルト挿通孔を貫通した状態となるように載せる。
次いで、座金63及びナット62を、第二壁パネル30cに設けられている工具用開口(図示省略)から差し入れて第二通しボルト61の上端部に取り付けた後、当該ナット62を、当該工具用開口から差し入れた工具を用いてねじ込む。
これにより、スキップフロア用壁パネル20の上端部が、第二壁パネル30cに連結(固定)される。
【0035】
《効果》
本実施形態によれば、以下のような優れた効果を奏する。
本実施形態のスキップフロア用壁パネル20は、下階側の床用構造材(床パネル10b)と、上階側の床用構造材(床パネル10c)と、の間に設けられており、框材2によって形成された枠体と、当該枠体の両面に貼設された面材3と、を備えており、面材3には、下側工具用開口21と、当該下側工具用開口21よりも上方に位置する上側工具用開口22と、が設けられている。
これにより、下側工具用開口21から工具を差し入れることが可能となるので、スキップフロア用壁パネル20の下端部をボルト(第一通しボルト51)によって他の構造材(第一壁パネル30a)に固定する固定作業(ナット52をねじ込む締付作業)を、容易に行うことができる。
さらに、下側工具用開口21よりも上方に位置する上側工具用開口22から工具を差し入れることが可能となるので、スキップフロア用壁パネル20の上端部をボルト(第二通しボルト61)によって他の構造材(第二壁パネル30c)に固定する固定作業(ナット62をねじ込む締付作業)を、容易に行うことができる。
【0036】
また、本実施形態のスキップフロア用壁パネル20は、下側工具用開口21が、框材2によって形成された枠体の両面に貼設された面材3のうち、当該枠体における一方の面に貼設された第一面材3aに設けられており、上側工具用開口22が、框材2によって形成された枠体の両面に貼設された面材3のうち、当該枠体における他方の面に貼設された第二面材3bに設けられている(図2図3参照)。
したがって、下側工具用開口21と上側工具用開口22とが、異なる面材3に設けられているので、同一の面材3に設けられている場合に比べて、スキップフロア用壁パネル20の構造的強度を高めることができる。
【0037】
なお、スキップフロア用壁パネル20が十分な強度を有する等の条件を満たせば、下側工具用開口21と上側工具用開口22とを同一の面材3に設けてもよい。
また、本実施形態では、スキップフロア用壁パネル20の左端部に、下側工具用開口21を設けているが、これに限られるものではない。例えば、スキップフロア用壁パネル20の右端部に、下側工具用開口21を設けてもよいし、スキップフロア用壁パネル20の中央部に、下側工具用開口21を設けてもよい。また、一のスキップフロア用壁パネル20に、複数の下側工具用開口21を設けてもよい。すなわち、下側工具用開口21の位置や個数は、第一構造材(第一壁パネル30a)に設けたボルト挿通孔の位置や個数に合わせて適宜変更可能である。
また、本実施形態では、スキップフロア用壁パネル20の左端部に、上側工具用開口22を設けているが、これに限られるものではない。例えば、スキップフロア用壁パネル20の右端部に、上側工具用開口22を設けてもよいし、スキップフロア用壁パネル20の中央部に、上側工具用開口22を設けてもよい。また、一のスキップフロア用壁パネル20に、複数の上側工具用開口22を設けてもよい。すなわち、上側工具用開口22の位置や個数は、第二構造材(第二壁パネル30c)に設けたボルト挿通孔の位置や個数に合わせて適宜変更可能である。
【0038】
また、本実施形態のスキップフロア用壁パネル20は、第一面材3aが、第二面材3bよりも、下階側の床用構造材(床パネル10b)に近い位置に設けられている(図2参照)。
すなわち、下側工具用開口21が、上側工具用開口22よりも、下階側の床用構造材(床パネル10b)に近い位置に配置されている。したがって、下側工具用開口21を利用して、例えば、1.5階用(下階用)の電線や通信線などを配線したり、1.5階用(下階用)のスイッチやコンセントなどの配線器具を埋め込んだりすることができるので、配線や配線器具の埋め込みに要する手間を軽減できる。
【0039】
また、本実施形態のスキップフロア用壁パネル20は、下側工具用開口21と上側工具用開口22とが、面材3に対して垂直な方向(前後方向)から見た場合に、重なっていない(図3(a)参照)。
したがって、下側工具用開口21と上側工具用開口22とが、面材3に対して垂直な方向(前後方向)から見て重なっていないので、重なっている場合に比べて、スキップフロア用壁パネル20の構造的強度を高めることができる。
なお、スキップフロア用壁パネル20が十分な強度を有する等の条件を満たせば、下側工具用開口21と上側工具用開口22とは、面材3に対して垂直な方向(前後方向)から見て重なっていてもよい。
【0040】
また、本実施形態のスキップフロア用壁パネル20は、第一通しボルト51によって、下階側の床用構造材(床パネル10b)を挟んで当該スキップフロア用壁パネル20の下方に配置された第一構造材(第一壁パネル30a)に連結されるとともに、第二通しボルト61によって、上階側の床用構造材(床パネル10c)を挟んで当該スキップフロア用壁パネル20の上方に配置された第二構造材(第二壁パネル30c)に連結される。
したがって、第一構造材(第一壁パネル30a)と下階側の床用構造材(床パネル10b)とを貫通する通しボルトによって、スキップフロア用壁パネル20の下端部を固定できるとともに、第二構造材(第二壁パネル30c)と上階側の床用構造材(床パネル10c)とを貫通する通しボルトによって、スキップフロア用壁パネル20の上端部を固定できるので、スキップフロア用壁パネル20の設置状態を強固かつ安定的なものとすることができる。
なお、第一構造材は、壁パネルに限られるものではない。例えば、スキップフロア用壁パネル20が、1階の床パネル(下階側の床用構造材)と、1.5階の床パネル(上階側の床用構造材)と、の間に設けられたものである場合、第一構造材は、建物1の基礎等であってもよい。
また、第二構造材は、壁パネルに限られるものではない。
【0041】
また、近年、二酸化炭素の排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルの推進による脱炭素社会の実現や、SDGs(Sustainable Development Goals)の目標達成が求められており、建築業界においても、建物を二酸化炭素排出量の少ない木造とする取り組みが進められている。本実施形態の建物1は、木質系のパネル工法で構築されているので、カーボンニュートラルの推進による脱炭素社会の実現や、SDGsの目標達成に貢献できる。
【符号の説明】
【0042】
2 框材
3 面材
3a 第一面材
3b 第二面材
10b 床パネル(下階側の床用構造材)
10c 床パネル(上階側の床用構造材)
20 スキップフロア用壁パネル
21 下側工具用開口
22 上側工具用開口
30a 第一壁パネル(第一構造材)
30c 第二壁パネル(第二構造材)
51 第一通しボルト
61 第二通しボルト
【要約】
【課題】スキップフロア用壁パネルの下端部をボルトによって他の構造材に固定する固定作業と、スキップフロア用壁パネルの上端部をボルトによって他の構造材に固定する固定作業と、の両方を容易に行うことができるようにする。
【解決手段】下階側の床用構造材(床パネル10b)と、上階側の床用構造材(床パネル10c)と、の間に設けられたスキップフロア用壁パネル20であって、框材2によって形成された枠体と、前記枠体の両面に貼設された面材3と、を備えており、面材3には、下側工具用開口21と、当該下側工具用開口21よりも上方に位置する上側工具用開口22と、が設けられている。
【選択図】図2
図1
図2
図3