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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】締め付けトルクの検査治具
(51)【国際特許分類】
   G01L 5/24 20060101AFI20241003BHJP
   F16B 2/06 20060101ALI20241003BHJP
   F16B 31/00 20060101ALI20241003BHJP
   B25B 23/14 20060101ALN20241003BHJP
【FI】
G01L5/24
F16B2/06 A
F16B31/00 Z
B25B23/14 610N
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023171568
(22)【出願日】2023-10-02
【審査請求日】2023-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】503144098
【氏名又は名称】日野リトラックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137523
【弁理士】
【氏名又は名称】出口 智也
(74)【代理人】
【識別番号】100152205
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 昌司
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 明彦
【審査官】藤澤 和浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-118278(JP,A)
【文献】特開2014-185738(JP,A)
【文献】特開2005-081498(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 5/24
F16B 2/06
F16B 31/00
B25B 23/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランプ部の締め付けトルクを検査するための検査治具であって、
前記クランプ部は、
第1の挟み部と、
前記第1の挟み部に対向する第2の挟み部と、
前記第1の挟み部および前記第2の挟み部に挟まれた弾性部と、
前記弾性部および前記第2の挟み部に挿通されたボルトと、
前記ボルトに螺合するナットと、を有し、
前記検査治具は、
第1の延在部と、
前記第1の延在部とともに、所定のトルク下限検査間隔を形成する第2の延在部と、を備え、
前記トルク下限検査間隔は、前記クランプ部の前記第2の挟み部の幅よりも大きく、かつ、前記ボルトの締め付けトルクが許容範囲の下限値であるときの前記弾性部の幅よりも小さい、検査治具。
【請求項2】
前記第1の延在部および前記第2の延在部は、その先端部において、互いの内縁間の距離が前記トルク下限検査間隔に等しい、請求項1に記載の検査治具。
【請求項3】
前記第1の延在部および前記第2の延在部は、互いに平行な棒部材である、請求項2に記載の検査治具。
【請求項4】
第3の延在部と、
前記第3の延在部とともに、所定のトルク上限検査間隔を形成する第4の延在部と、をさらに備え、
前記トルク上限検査間隔は、前記トルク下限検査間隔よりも大きく、かつ、前記ボルトの締め付けトルクが許容範囲の上限値であるときの前記弾性部の幅よりも小さい、請求項1に記載の検査治具。
【請求項5】
前記第3の延在部は前記第1の延在部の先端部に接続し、前記第4の延在部は前記第2の延在部の先端部に接続する、請求項4に記載の検査治具。
【請求項6】
前記第3の延在部および前記第4の延在部は、互いの内縁間の距離が前記トルク上限検査間隔に等しい平行な棒部材である、請求項5に記載の検査治具。
【請求項7】
前記第1の延在部と前記第2の延在部を接続する接続部をさらに備え、
前記第3の延在部は、前記接続部を挟んで前記第1の延在部の反対側に設けられ、前記第4の延在部は、前記接続部を挟んで前記第2の延在部の反対側に設けられる、請求項4に記載の検査治具。
【請求項8】
前記第3の延在部および前記第4の延在部は、その先端部において、互いの内縁間の距離が前記トルク上限検査間隔に等しい、請求項7に記載の検査治具。
【請求項9】
前記第3の延在部および前記第4の延在部は、互いに平行な棒部材である、請求項8に記載の検査治具。
【請求項10】
前記第1の延在部と前記第2の延在部を接続する接続部と、
前記接続部とともに把持孔を形成する弧状部とを備える、請求項1~9のいずれかに記載の検査治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、締め付けトルクの検査治具に関し、より詳しくは、トラック等の車両のエンジンに固定されたクランプ部の締め付けトルクを検査するための検査治具に関する。
【背景技術】
【0002】
トラックやバス等の車両のエンジンの周囲において、冷却水やオイル等の流体が流れるパイプがクランプ部により支持されている。詳しくは、パイプは貫通孔が設けられた弾性材に挿通され、弾性材は2枚のクランプ板(挟み板)により挟まれ、ボルトとナットの締結力により固定されている。締め付けトルクが小さすぎると、エンジン稼働時にパイプが脱落するおそれがある。一方、締め付けトルクが大きすぎると、パイプにクラックが発生し、内部の流体が漏出するおそれがある。
【0003】
そこで、新品のエンジンまたはリビルトエンジン(再生エンジン)の組み立て工程の後、クランプ部の締め付けトルクをトルク検査機により測定し、許容範囲(適正範囲)内にあることがチェックされる。この締め付けトルクの検査工程について、高効率化および低コスト化が求められている。
【0004】
また、検査対象のクランプ部がエンジンの凹部に配置されていたり、他のパイプ等の部品に囲まれた狭所等にある場合、締め付けトルクをトルク検査機で測定することが困難であり、それに対する対応が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-131925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題の一つは、締め付けトルクの検査工程の高効率化および低コスト化を図ることができる締め付けトルクの検査治具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る検査治具は、
クランプ部の締め付けトルクを検査するための検査治具であって、
前記クランプ部は、
第1の挟み部と、
前記第1の挟み部に対向する第2の挟み部と、
前記第1の挟み部および前記第2の挟み部に挟まれた弾性部と、
前記弾性部および前記第2の挟み部に挿通されたボルトと、
前記ボルトに螺合するナットと、を有し、
前記検査治具は、
第1の延在部と、
前記第1の延在部とともに、所定のトルク下限検査間隔を形成する第2の延在部と、を備え、
前記トルク下限検査間隔は、前記クランプ部の前記第2の挟み部の幅よりも大きく、かつ、前記ボルトの締め付けトルクが許容範囲の下限値であるときの前記弾性部の幅よりも小さい。
【0008】
また、前記検査治具において、
前記第1の延在部および前記第2の延在部は、その先端部において、互いの内縁間の距離が前記トルク下限検査間隔に等しいようにしてもよい。
【0009】
また、前記検査治具において、
前記第1の延在部および前記第2の延在部は、互いに平行な棒部材であるようにしてもよい。
【0010】
また、前記検査治具において、
第3の延在部と、
前記第3の延在部とともに、所定のトルク上限検査間隔を形成する第4の延在部と、をさらに備え、
前記トルク上限検査間隔は、前記トルク下限検査間隔よりも大きく、かつ、前記ボルトの締め付けトルクが許容範囲の上限値であるときの前記弾性部の幅よりも小さいようにしてもよい。
【0011】
また、前記検査治具において、
前記第3の延在部は前記第1の延在部の先端部に接続し、前記第4の延在部は前記第2の延在部の先端部に接続するようにしてもよい。
【0012】
また、前記検査治具において、
前記第3の延在部および前記第4の延在部は、互いの内縁間の距離が前記トルク上限検査間隔に等しい平行な棒部材であるようにしてもよい。
【0013】
また、前記検査治具において、
前記第1の延在部と前記第2の延在部を接続する接続部をさらに備え、
前記第3の延在部は、前記接続部を挟んで前記第1の延在部の反対側に設けられ、前記第4の延在部は、前記接続部を挟んで前記第2の延在部の反対側に設けられるようにしてもよい。
【0014】
また、前記検査治具において、
前記第3の延在部および前記第4の延在部は、その先端部において、互いの内縁間の距離が前記トルク上限検査間隔に等しいようにしてもよい。
【0015】
また、前記検査治具において、
前記第3の延在部および前記第4の延在部は、互いに平行な棒部材であるようにしてもよい。
【0016】
また、前記検査治具において、
前記接続部とともに把持孔を形成する弧状部を備えてもよい。
【0017】
本発明の一態様に係る検査治具は、
クランプ部の締め付けトルクを検査するための検査治具であって、
前記クランプ部は、
第1の挟み部と、
前記第1の挟み部に対向する第2の挟み部と、
前記第1の挟み部および前記第2の挟み部に挟まれた弾性部と、
前記弾性部および前記第2の挟み部に挿通されたボルトと、
前記ボルトに螺合するナットと、を有し、
前記検査治具は、
第1の延在部と、
前記第1の延在部とともに、所定のトルク上限検査間隔を形成する第2の延在部と、を備え、
前記トルク上限検査間隔は、前記ボルトの締め付けトルクが許容範囲の上限値であるときの前記弾性部の幅よりも小さい。
【0018】
また、前記検査治具において、
前記第1の延在部および前記第2の延在部は、その先端部において、互いの内縁間の距離が前記トルク上限検査間隔に等しいようにしてもよい。
【0019】
また、前記検査治具において、
前記第1の延在部および前記第2の延在部は、互いに平行な棒部材であるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、締め付けトルクの検査工程の高効率化および低コスト化を図ることができる締め付けトルクの検査治具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1の実施形態に係る検査治具を表す図である。
図2】検査対象のクランプ部を表す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA-A線に沿う断面図、(c)は側面図をそれぞれ示す。
図3】第1の実施形態に係る検査治具を用いた検査方法を説明するためのフローチャートである。
図4A】第1の実施形態に係る検査方法を説明するための図である。
図4B】第1の実施形態に係る検査方法を説明するための図である。
図5】第2の実施形態に係る検査治具を表す図である。
図6】第2の実施形態に係る検査治具を用いた検査方法を説明するためのフローチャートである。
図7A】第2の実施形態に係る検査方法を説明するための図である。
図7B】第2の実施形態に係る検査方法を説明するための図である。
図7C】第2の実施形態に係る検査方法を説明するための図である。
図7D】第2の実施形態に係る検査方法を説明するための図である。
図8】第3の実施形態に係る検査治具を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0023】
なお、本明細書において用いる「平行」、「等しい」等の用語や寸法等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈される。
【0024】
(第1の実施形態)
図1を参照して、第1の実施形態に係る検査治具1の構成について説明する。
【0025】
検査治具1は、ボルトの締め付けトルクを検査するためのものであり、本実施形態では、トラック等の車両のエンジンに取り付け金具100を介して固定されたクランプ部50の締め付けトルクを検査するための検査治具として構成されている。
【0026】
検査治具1は、延在部2(第1の延在部)と、延在部2とともに所定のトルク下限検査間隔L1を形成する延在部3(第2の延在部)と、延在部2と延在部3を接続する接続部4と、接続部4とともに把持孔Hを形成する弧状部5とを備えている。把持孔Hが設けられていることにより、検査治具1を扱いやすくなり、エンジン凹所にあるクランプ部の検査を行い易くすることができる。なお、弧状部5の形状は円弧状に限らない。また、接続部4および弧状部5のうちいずれか一方が省略されてもよい。
【0027】
検査治具1の材質は、使用により摩耗せず、十分な剛性を有するものが好ましく、たとえば、ステンレス等の金属である。検査治具1は、たとえば、ステンレス板をレーザー加工(レーザーカット)、プレス加工等することにより製造される。
【0028】
本実施形態では、延在部2および延在部3は、図1に示すように、互いに平行な角棒であり、互いの内面間の距離がトルク下限検査間隔L1に等しい。トルク下限検査間隔L1の詳細については、クランプ部50について説明した後に述べる。
【0029】
延在部2および延在部3の長さは、たとえば3~5cmであるが、検査対象のクランプ部50の配置位置(凹部に配置されている場合は凹部の深さ等)に応じて決められてもよい。
【0030】
なお、延在部2および3は、角棒に限らず、丸棒等の棒部材であってもよい。この場合、延在部2および延在部3の内縁間の距離がトルク下限検査間隔L1に等しくなるように延在部2および延在部3を構成する。
【0031】
また、延在部2および延在部3は、その先端部(図1中の下端部)において、互いの内縁間の距離がトルク下限検査間隔L1になるように構成されていてもよい。たとえば、延在部2と延在部3は正面視で逆八の字形または湾曲形状に構成され、先端間の距離がトルク下限検査間隔L1であるように構成されてもよい。
【0032】
あるいは、延在部2および延在部3は、最も接近した部分において、互いの内縁間の距離がトルク下限検査間隔L1になるように構成されていてもよい。
【0033】
ここで、図2を参照して、クランプ部50の構成について説明する。
【0034】
クランプ部50は、トラック等の車両のエンジンに取り付け金具100を介して固定されている。
【0035】
クランプ部50は、挟み部51a(第1の挟み部)と、挟み部51aに対向する挟み部51b(第2の挟み部)と、挟み部51aおよび挟み部51bに挟まれた弾性部52と、挟み部51a、弾性部52および挟み部51bに挿通されたボルト53と、ボルト53に螺合するナット54とを備えている。挟み部51a,51bの幅は、たとえば20mmである。
【0036】
本実施形態では、挟み部51aおよび51bは、図2(c)に示すように、側面視で端部が湾曲した形状を有する。このような形状であるため、図2(a)に示すように、締結状態において弾性部52は縦方向にはみ出さず、横方向にはみ出している。
【0037】
なお、挟み部51aおよび51bの形状は、弾性部52を挟持可能な形状であればよく、図示の形状に限られない。たとえば、挟み部51a,51bは側面視で略コの字形でもよいし、あるいは単純な板状であってもよい。
【0038】
また、挟み部51aが取り付け金具100と一体化されたものであってもよい。また、ボルト53は挟み部51aの上面に突設されたものであってよい。この場合、ボルト53は、弾性部52および挟み部51bに挿通される。
【0039】
弾性部52は、シリコンゴム系等の弾性材料からなる。本実施形態では、弾性部52には、冷却水、潤滑油等のオイルなどが流通するパイプ110が挿通される貫通孔が設けられている。図2に示すように、弾性部52には、2本のパイプ110が挿通されている。なお、挿通されるパイプの数は2本に限らず、任意である。
【0040】
弾性部52は、ボルト53とナット54の締結力により、挟み部51aおよび挟み部51bの間に弾性変形した状態で挟持されている。締結力が強くなるにつれて、弾性部52は挟み部51bから大きくはみ出すようになる。
【0041】
なお、弾性部52は、一つの弾性材からなる場合に限らず、複数の弾性材が組み合わされて構成されてもよい。例えば、表面に溝が形成された弾性材を2つ用意し、溝同士が重なるように組み合わせて弾性部52を構成してもよい。
【0042】
前述の検査治具1のトルク下限検査間隔L1は、クランプ部50の挟み部51bの幅Wよりも大きく、かつ、ボルト53の締め付けトルクが許容範囲(トルクの適正範囲)の下限値であるときの弾性部52の幅よりも小さい。締め付けトルクの許容範囲は、たとえば5~10N・mである。また、トルク下限検査間隔L1は、たとえば21mmである。
【0043】
図2に示すように、挟み部51b、弾性部52の「幅」は、挟み部51b、弾性部52の横方向(パイプ110の延在方向)の長さである。本実施形態では、弾性部52が締め付けトルクにより弾性変形して挟み部51bの横方向にのみはみ出すため、トルク下限検査間隔L1は挟み部51bと弾性部52の横方向の長さにより規定される。ただし、「幅」は横方向の長さを示す場合に限られず、縦方向の長さを示してもよい。たとえば、挟み部51bが単純な板状部材であり、弾性部52が挟み部51bの横方向だけでなく縦方向にもはみ出す場合は、挟み部51bと弾性部52の縦方向の長さによりトルク下限検査間隔L1が規定されてもよい。
【0044】
<第1の実施形態の検査方法>
図3のフローチャートを参照しつつ、検査治具1を用いた締め付けトルクの検査方法について説明する。なお、各ステップは、検査者(人)が行ってもよいし、検査ロボットが行ってもよい。
【0045】
ステップS11:検査治具1をクランプ部50に近づける。詳しくは、延在部2と延在部3とでクランプ部50を幅方向(弾性部52のはみ出し方向)に挟むように、検査治具1をクランプ部50に近づける。たとえば、検査者は、把持孔Hに指を掛けた状態で、延在部2および3の先端部をクランプ部50に向けながら、検査治具1をクランプ部50に近づける。
【0046】
ステップS12:検査治具1が弾性部52を挟めないかどうかを判定する。詳しくは、図4Aに示すように、延在部2および延在部3が挟み部51bからはみ出した弾性部52を挟めない場合(S12:Yes)、ステップS13に進む。反対に、図4Bに示すように延在部2および延在部3により弾性部52を挟める場合(S12:No)、ステップS14に進む。
【0047】
ステップS13:クランプ部50の締め付けトルクは許容範囲の下限値以上であると判定する。
【0048】
ステップS14:クランプ部50の締め付けトルクは許容範囲の下限値未満であると判定する。
【0049】
上記方法から分かるように、第1の実施形態に係る検査治具1を用いることにより、クランプ部50の締め付けトルクが許容範囲の下限値以上であるか否かを容易かつ迅速に検査することができる。
【0050】
また、検査治具1は、ステンレス板をレーザー加工すること等により製造可能であるため、トルク検査機よりも安価に製造できる。
【0051】
よって、本実施形態の検査治具によれば、締め付けトルクの検査工程の効率化および低コスト化を図ることができる。
【0052】
また、本実施形態の検査治具1によれば、エンジンの凹部や狭所などトルク検査機で検査しづらい場所にあるクランプ部についても、締め付けトルクの検査を容易に行うことができる。
【0053】
(第2の実施形態)
図5を参照して、第2の実施形態に係る検査治具1Aについて説明する。図5において、第1の実施形態で説明した構成要素と同様の機能を有するものについては同じ符号を付している。
【0054】
第1の実施形態では、締め付けトルクが許容範囲の下限値以上であるか否かの検査しか行えないが、第2の実施形態では、許容範囲の上限値以下であるか否かの検査も行うことができる。以下、第1の実施形態との相違点を中心に第2の実施形態について説明する。
【0055】
検査治具1Aは、延在部2、延在部3、接続部4および弧状部5に加えて、延在部2の先端部に接続する延在部6(第3の延在部)と、延在部3の先端部に接続する延在部7(第4の延在部)を備えている。
【0056】
延在部6と延在部7は、所定のトルク上限検査間隔L2を形成する。トルク上限検査間隔L2は、トルク下限検査間隔L1よりも大きく、かつ、ボルト53の締め付けトルクが許容範囲の上限値であるときの弾性部52の幅よりも小さい。たとえば、トルク下限検査間隔L1は21mmであり、トルク上限検査間隔L2は23.5~24mmである。
【0057】
なお、弾性部52の「幅」については、第1の実施形態で説明したように、本実施形態では弾性部52の横方向(パイプ110の延在方向)の長さであるが、挟み部51bの形状等に応じて弾性部52の縦方向の長さであってもよい。
【0058】
本実施形態では、延在部6および延在部7は、その先端部(図5中の下端部)において、互いの内縁間の距離がトルク上限検査間隔L2になるように構成されている。図5に示すように、延在部6および延在部7は、互いに平行な角棒であり、互いの内面間の距離がトルク上限検査間隔L2に等しい。
【0059】
なお、延在部6および7は、角棒に限らず、丸棒等の棒部材であってもよい。この場合、延在部6および延在部7の内縁間の距離がトルク上限検査間隔L2に等しくなるように延在部6および延在部7を構成する。
【0060】
<第2の実施形態の検査方法>
図6のフローチャートを参照しつつ、検査治具1Aを用いた締め付けトルクの検査方法について説明する。なお、各ステップは、検査者(人)が行ってもよいし、検査ロボットが行ってもよい。
【0061】
ステップS21:検査治具1Aをクランプ部50に近づける。詳しくは、延在部6と延在部7とでクランプ部50を幅方向に挟むように、検査治具1Aをクランプ部50に近づける。たとえば、検査者は、把持孔Hに指を掛けた状態で、延在部6および7の先端部をクランプ部50に向けながら、検査治具1Aをクランプ部50に近づける。
【0062】
ステップS22:検査治具1Aが弾性部52を挟めるかどうかを判定する。詳しくは、図7Aに示すように、延在部6および延在部7が挟み部51bからはみ出した弾性部52を挟める場合(S22:Yes)、ステップS23に進む。反対に、図7Bに示すように延在部6および延在部7により弾性部52を挟めない場合(S22:No)、ステップS24に進む。
【0063】
ステップS23:クランプ部50の締め付けトルクは許容範囲の上限値以下であると判定する。
【0064】
ステップS24:クランプ部50の締め付けトルクは許容範囲の上限値を超えると判定する。
【0065】
ステップS25:検査治具1Aをクランプ部50にさらに近づける。詳しくは、延在部2と延在部3とでクランプ部50を幅方向に挟むように、検査治具1Aをクランプ部50に近づける。
【0066】
ステップS26:検査治具1Aが弾性部52を挟めないかどうかを判定する。詳しくは、図7Cに示すように、延在部2および延在部3が挟み部51bからはみ出した弾性部52を挟めない場合(S26:Yes)、ステップS27に進む。反対に、図7Dに示すように延在部2および延在部3により弾性部52を挟める場合(S26:No)、ステップS28に進む。
【0067】
ステップS27:クランプ部50の締め付けトルクは許容範囲の下限値以上である(すなわち、締め付けトルクは許容範囲内である)と判定する。
【0068】
ステップS28:クランプ部50の締め付けトルクは許容範囲の下限値未満であると判定する。
【0069】
上記方法から分かるように、第2の実施形態に係る検査治具1Aを用いることにより、クランプ部50の締め付けトルクが許容範囲の下限値以上であるか否かに加えて、締め付けトルクが許容範囲の上限値以下であるか否かについても容易に検査することができる。
【0070】
(第3の実施形態)
図8を参照して、第3の実施形態に係る検査治具1Bの構成について説明する。第3の実施形態と第2の実施形態との相違点は、延在部6および延在部7が接続部4を挟んで延在部2および延在部3の反対側に設けられている点である。以下、相違点を中心に第3の実施形態について説明する。
【0071】
検査治具1Bは、第2の実施形態と同様に、延在部2、延在部3、接続部4、延在部6および延在部7を備えている。相違点として、本実施形態では、延在部6は、延在部2の先端部に接続しておらず、接続部4を挟んで延在部2の反対側に設けられている。同様に、延在部7は、延在部3の先端部に接続しておらず、接続部4を挟んで延在部3の反対側に設けられている。
【0072】
第2の実施形態と同様に、延在部2および延在部3はトルク下限検査間隔L1を形成し、延在部6および延在部7はトルク上限検査間隔L2を形成する。
【0073】
検査治具1Bを用いた検査方法は、第2の実施形態で説明した検査方法とほぼ同じである。ただし、第2の実施形態ではステップS25において検査治具1Aをクランプ部50にさらに近づけたのに対し、本実施形態では、検査治具1Bをクランプ部50からいったん離し、延在部2および延在部3の先端部がクランプ部50を向くように検査治具1Bを反転させた後、検査治具1Bをクランプ部50に近づける。
【0074】
なお、本実施形態の場合、先に延在部2および延在部3をクランプ部50に近づけ、ステップS26~S28の判定を行い、その後、延在部6および延在部7をクランプ部50に近づけ、ステップS22~S24の判定を行うようにしてもよい。
【0075】
第3の実施形態に係る検査治具1Bによれば、取り付け金具100の高さが低く、検査治具1Aでは延在部6および7がエンジン表面に当接してしまい、延在部2および3による検査ができないという事態を回避することができる。
【0076】
上記の記載に基づいて、当業者であれば、本発明の追加の効果や種々の変形を想到できるかもしれないが、本発明の態様は、上述した実施形態に限定されるものではない。特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【0077】
たとえば、締め付けトルクが許容範囲の上限値を超えるかどうかのみを検査する用途の場合、第3の実施形態に係る検査治具から延在部2および3を削除してもよい。
【0078】
また、上記検査治具の実施形態において、延在部2および3は棒状部材で構成されていたが、トルク下限検査間隔を形成可能であれば、これに限らない。たとえば、直方体状の金属ブロックの表面に、開口幅がトルク下限検査間隔L1に等しい凹部を形成してもよい。この場合、当該凹部の内壁が延在部2および3を構成する。さらに、当該凹部の底面に、開口幅がトルク上限検査間隔L2に等しい別の凹部を形成してもよい。この場合、当該別の凹部の内壁が延在部6および7を構成する。
【0079】
また、上記実施形態では、車両のエンジンに固定されたクランプ部を検査対象としたが、検査対象のクランプ部はこれに限定されない。
【符号の説明】
【0080】
1,1A 検査治具
2,3,6,7 延在部
4 接続部
5 弧状部
50 クランプ部
51a,51b 挟み部
52 弾性部
53 ボルト
54 ナット
100 取り付け金具
110 パイプ
H 把持孔
【要約】
【課題】締め付けトルクの検査工程の高効率化および低コスト化を図ることができる締め付けトルクの検査治具を提供する。
【解決手段】実施形態の検査治具1は、クランプ部50の締め付けトルクを検査するための検査治具であって、クランプ部50は、挟み部51aと、挟み部51aに対向する挟み部51bと、挟み部51aおよび挟み部51bに挟まれた弾性部52と、弾性部52および挟み部51bに挿通されたボルト53と、ボルト53に螺合するナット54とを有し、検査治具1は、延在部2と、延在部2とともに、所定のトルク下限検査間隔L1を形成する延在部3と、延在部2と延在部3を接続する接続部4とを備え、トルク下限検査間隔L1は、クランプ部50の挟み部51bの幅Wよりも大きく、かつ、ボルト53の締め付けトルクが許容範囲の下限値であるときの弾性部52の幅よりも小さい。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8