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特許7565437光治療装置、光治療装置の作動方法および光治療プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】光治療装置、光治療装置の作動方法および光治療プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/06 20060101AFI20241003BHJP
   A61N 5/067 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
A61N5/06 Z
A61N5/067
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023516890
(86)(22)【出願日】2021-04-27
(86)【国際出願番号】 JP2021016734
(87)【国際公開番号】W WO2022230040
(87)【国際公開日】2022-11-03
【審査請求日】2023-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村山 和章
【審査官】白川 敬寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-024283(JP,A)
【文献】特表2008-526326(JP,A)
【文献】特開2012-115406(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0270092(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/06
A61N 5/067
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤を反応させる治療光を出射する治療光出射部と、
可視光域の一部の波長帯域の光からなる狭帯域光を出射する狭帯域光出射部と、
前記薬剤を励起する励起光を出射する励起光出射部と、
前記治療光の照射位置に照射された前記狭帯域光によって得られる狭帯域光画像を取得する狭帯域光画像取得部と、
前記治療光の照射位置に照射された前記励起光によって得られる蛍光画像を取得する蛍光画像取得部と、
前記治療光の照射前後の前記狭帯域光画像の時間的な変化を算出する画像変化算出部と、
前記狭帯域光画像と前記蛍光画像とを重ね合わせた重ね合わせ画像、および、前記狭帯域光画像の時間的な変化を視覚的に表現した画像を生成する表示画像生成部と、
を備える光治療装置。
【請求項2】
前記画像変化算出部は、治療光の照射前後の前記蛍光画像における蛍光強度の時間的な変化を算出する、
請求項1に記載の光治療装置。
【請求項3】
前記表示画像生成部は、前記狭帯域光画像および前記蛍光画像を、それぞれに対して設定された明るさまたは透過率で重ね合わせることによって前記重ね合わせ画像を生成する、
請求項1に記載の光治療装置。
【請求項4】
前記画像変化算出部は、前記狭帯域光画像を複数の領域に分割し、該分割したそれぞれの領域における画像の変化量を算出する、
請求項1に記載の光治療装置。
【請求項5】
前記表示画像生成部は、前記治療光の照射前の前記重ね合わせ画像と、前記治療光の照射後の前記重ね合わせ画像とを並べた表示画像を生成する、
請求項1に記載の光治療装置。
【請求項6】
前記画像変化算出部が算出した画像の変化に基づいて、前記治療光の出力を推定する推定部、
をさらに備える請求項1に記載の光治療装置。
【請求項7】
前記画像変化算出部が算出した画像の変化に基づいて、前記治療光の照射時間を推定する推定部、
をさらに備える請求項1に記載の光治療装置。
【請求項8】
治療光出射部が、薬剤を反応させる治療光をを出射する治療光出射ステップと
狭帯域光画像取得部が、薬剤を反応させる治療光の照射位置に照射された、可視光域の一部の波長帯域の光からなる狭帯域光によって得られる狭帯域光画像を取得する狭帯域光画像取得ステップと、
蛍光画像取得部が、前記治療光の照射位置に照射された、前記薬剤を励起する励起光によって得られる蛍光画像を取得する蛍光画像取得ステップと、
画像変化算出部が、前記治療光の照射前後の前記狭帯域光画像の時間的な変化を算出する画像変化算出ステップと、
表示画像生成部が、前記狭帯域光画像と前記蛍光画像とを重ね合わせた重ね合わせ画像、および、前記狭帯域光画像の時間的な変化を視覚的に表現した画像を生成する表示画像生成ステップと、
を含む光治療装置の作動方法。
【請求項9】
薬剤を反応させる治療光を、治療部位に照射して治療効果を確認するため情報を生成する光治療装置に、
薬剤を反応させる治療光の照射位置に照射された、可視光域の一部の波長帯域の光からなる狭帯域光によって得られる狭帯域光画像を取得する狭帯域光画像取得ステップと、
前記治療光の照射位置に照射された、前記薬剤を励起する励起光によって得られる蛍光画像を取得する蛍光画像取得ステップと、
前記治療光の照射前後の前記狭帯域光画像の時間的な変化を算出する画像変化算出ステップと、
前記狭帯域光画像と前記蛍光画像とを重ね合わせた重ね合わせ画像、および、前記狭帯域光画像の時間的な変化を視覚的に表現した画像を生成する表示画像生成ステップと、
を実行させる光治療プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光治療装置、光治療方法および光治療プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、抗体薬剤を癌細胞のタンパク質に特異的に結合させ、治療光である近赤外光の照射によって抗体薬剤を活性化させて癌細胞を破壊することによって癌の治療を行う光免疫療法(Photoimmunotherapy:PIT)の研究が進められている(例えば、特許文献1を参照)。近赤外光が照射された抗体薬剤は、光エネルギーを吸収して分子振動し、発熱する。この熱によって、癌細胞が破壊される。この際、抗体薬剤は、励起されることによって蛍光を発する。この蛍光の強度は、治療効果の指標として用いられる。
【0003】
ここで、治療効果には、以下の三つの作用があると考えられている。
1.癌細胞への直接傷害作用
2.血流変化に起因する間接傷害作用
3.免疫活性化に起因する間接障害作用
また、癌が拡大すると、毛細血管が増え粘膜表面が込み入った模様に変わることが知られている。上記2の血流変化に起因する間接傷害作用によって、治療光照射部位周辺では、粘膜表層の毛細血管と粘膜微細模様とが変化する。そのため、粘膜表層の毛細血管および粘膜微細模様の変化は、治療効果を確認するのに重要な指標となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-71654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1は、蛍光の減少量で治療効果を評価しているため、治療効果を適切に評価できない場合があった。一般に、蛍光試薬は時間経過とともに光強度が減衰するため、光強度の減衰が、治療に起因するものか、または薬剤の経時変化に起因するものかを判断することが難しい。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、適切に治療効果を確認することができる光治療装置、光治療方法および光治療プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる光治療装置は、薬剤を反応させる治療光を出射する治療光出射部と、可視光域の一部の波長帯域の光からなる狭帯域光を出射する狭帯域光出射部と、前記薬剤を励起する励起光を出射する励起光出射部と、前記治療光の照射位置に照射された前記狭帯域光によって得られる狭帯域光画像を取得する狭帯域光画像取得部と、前記治療光の照射位置に照射された前記励起光によって得られる蛍光画像を取得する蛍光画像取得部と、前記狭帯域光画像と前記蛍光画像とを重ね合わせた重ね合わせ画像を生成する表示画像生成部と、を備える。
【0008】
また、本発明にかかる光治療装置は、上記発明において、前記治療光の照射前後の前記狭帯域光画像の時間的な変化を算出する画像変化算出部、をさらに備える。
【0009】
また、本発明にかかる光治療装置は、上記発明において、前記画像変化算出部は、治療光の照射前後の前記蛍光画像における蛍光強度の時間的な変化を算出する。
【0010】
また、本発明にかかる光治療装置は、上記発明において、前記表示画像生成部は、前記狭帯域光画像および前記蛍光画像を、それぞれに対して設定された明るさまたは透過率で重ね合わせることによって前記重ね合わせ画像を生成する。
【0011】
また、本発明にかかる光治療装置は、上記発明において、前記画像変化算出部は、前記狭帯域光画像を複数の領域に分割し、該分割したそれぞれの領域における画像の変化量を算出する。
【0012】
また、本発明にかかる光治療装置は、上記発明において、前記表示画像生成部は、前記治療光の照射前の重ね合わせ画像と、前記治療光の照射後の重ね合わせ画像とを並べた表示画像を生成する。
【0013】
また、本発明にかかる光治療装置は、上記発明において、前記画像変化算出部が算出した画像の変化に基づいて、前記治療光の出力を推定する推定部、をさらに備える。
【0014】
また、本発明にかかる光治療装置は、上記発明において、前記画像変化算出部が算出した画像の変化に基づいて、前記治療光の照射時間を推定する推定部、をさらに備える。
【0015】
また、本発明にかかる光治療方法は、薬剤を反応させる治療光を、治療部位に照射して治療効果を確認するための光治療方法であって、薬剤を反応させる治療光の照射位置に照射された、可視光域の一部の波長帯域の光からなる狭帯域光によって得られる狭帯域光画像を取得する狭帯域光画像取得ステップと、前記治療光の照射位置に照射された、前記薬剤を励起する励起光によって得られる蛍光画像を取得する蛍光画像取得ステップと、前記狭帯域光画像と前記蛍光画像とを重ね合わせた重ね合わせ画像を生成する表示画像生成ステップと、を含む。
【0016】
また、本発明にかかる光治療プログラムは、薬剤を反応させる治療光を、治療部位に照射して治療効果を確認するため情報を生成する光治療装置に、薬剤を反応させる治療光の照射位置に照射された、可視光域の一部の波長帯域の光からなる狭帯域光によって得られる狭帯域光画像を取得する狭帯域光画像取得ステップと、前記治療光の照射位置に照射された、前記薬剤を励起する励起光によって得られる蛍光画像を取得する蛍光画像取得ステップと、前記狭帯域光画像と前記蛍光画像とを重ね合わせた重ね合わせ画像を生成する表示画像生成ステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、適切に治療効果を確認することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の実施の形態1にかかる内視鏡システムの概略構成を示す図である。
図2図2は、本発明の実施の形態1にかかる内視鏡システムの概略構成を示すブロック図である。
図3図3は、本発明の実施の形態1にかかる内視鏡の先端構成を説明する図である。
図4図4は、狭帯域光として用いる光の波長帯域の一例について説明するための図である。
図5図5は、本発明の実施の形態1にかかる内視鏡を用いた治療の流れの一例を示す図である。
図6図6は、本発明の実施の形態1にかかる処理装置の処理の一例を示すフローチャートである。
図7図7は、正常な状態の組織について説明する図である。
図8A図8Aは、癌細胞を含む状態の組織について説明する図(その1)である。
図8B図8Bは、癌細胞を含む状態の組織について説明する図(その2)である。
図8C図8Cは、癌細胞を含む状態の組織について説明する図(その3)である。
図9図9は、治療前と治療後との組織の状態について説明する図である。
図10図10は、表示画面の一例を示す図である。
図11図11は、本発明の実施の形態2にかかる内視鏡システムの概略構成を示すブロック図である。
図12図12は、本発明の実施の形態2にかかる処理装置の処理の一例を示すフローチャートである。
図13A図13Aは、治療前と治療後との組織の状態について、構造を抽出した図(その1)である。
図13B図13Bは、治療前と治療後との組織の状態について、構造を抽出した図(その2)である。
図14図14は、表示画面の一例を示す図である。
図15図15は、本発明の実施の形態3にかかる治療効果の判定処理について説明するための図である。
図16図16は、本発明の実施の形態4にかかる内視鏡システムの概略構成を示すブロック図である。
図17A図17Aは、本発明の実施の形態5にかかる推定処理について説明するための図(その1)である。
図17B図17Bは、本発明の実施の形態5にかかる推定処理について説明するための図(その2)である。
図18A図18Aは、本発明の実施の形態6にかかる推定処理について説明するための図(その1)である。
図18B図18Bは、本発明の実施の形態6にかかる推定処理について説明するための図(その2)である。
図19図19は、本発明の実施の形態7にかかる内視鏡システムの概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施の形態」という)を説明する。実施の形態では、本発明に係る光治療装置を含むシステムの一例として、患者等の被検体内の画像を撮像して表示する医療用の内視鏡システムについて説明する。また、この実施の形態によって、この発明が限定されるものではない。さらに、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付して説明する。
【0020】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る内視鏡システムの概略構成を示す図である。図2は、本実施の形態1に係る内視鏡システムの概略構成を示すブロック図である。図3は、本実施の形態1にかかる内視鏡の先端構成を説明する図である。
【0021】
図1および図2に示す内視鏡システム1は、被検体内に先端部を挿入することによって被検体の体内画像を撮像する内視鏡2と、内視鏡2の先端から出射する照明光を発生する光源装置3と、内視鏡2が撮像した撮像信号に所定の信号処理を施すとともに、内視鏡システム1全体の動作を統括的に制御する処理装置4と、処理装置4の信号処理によって生成された体内画像を表示する表示装置5と、処置具装置6とを備える。
【0022】
内視鏡2は、可撓性を有する細長形状をなす挿入部21と、挿入部21の基端側に接続され、各種の操作信号の入力を受け付ける操作部22と、操作部22から挿入部21が延びる方向と異なる方向に延び、光源装置3および処理装置4に接続する各種ケーブルを内蔵するユニバーサルコード23と、を備える。
【0023】
挿入部21は、光を受光して光電変換することによって信号を生成する画素が2次元状に配列された撮像素子244を内蔵した先端部24と、複数の湾曲駒によって構成された湾曲自在な湾曲部25と、湾曲部25の基端側に接続され、可撓性を有する長尺状の可撓管部26と、を有する。挿入部21は、被検体の体腔内に挿入され、外光の届かない位置にある生体組織などの被写体を撮像素子244によって撮像する。
【0024】
操作部22は、湾曲部25を上下方向および左右方向に湾曲させる湾曲ノブ221と、被検体の体腔内に治療光照射装置、生検鉗子、電気メスおよび検査プローブ等の処置具を挿入する処置具挿入部222と、処理装置4に加えて、送気手段、送水手段、画面表示制御等の周辺機器の操作指示信号を入力する操作入力部である複数のスイッチ223と、を有する。処置具挿入部222から挿入される処置具は、先端部24の処置具チャンネル(図示せず)を経由して開口部から表出する(図3参照)。
【0025】
ユニバーサルコード23は、ライトガイド241と、一または複数の信号線をまとめた集合ケーブル245と、を少なくとも内蔵している。ユニバーサルコード23は、操作部22に接続する側と反対側の端部において分岐している。ユニバーサルコード23の分岐端部には、光源装置3に着脱自在なコネクタ231と、処理装置4に着脱自在なコネクタ232とが設けられる。コネクタ231は、端部からライトガイド241の一部が延出している。ユニバーサルコード23は、光源装置3から出射された照明光を、コネクタ231(ライトガイド241)、操作部22および可撓管部26を経て先端部24に伝播する。また、ユニバーサルコード23は、先端部24に設けられた撮像素子244が撮像した画像信号を、コネクタ232を経由して、処理装置4に伝送する。集合ケーブル245は、撮像信号を伝送するための信号線や、撮像素子244を駆動するための駆動信号を伝送するための信号線、内視鏡2(撮像素子244)に関する固有情報などを含む情報を送受信するための信号線を含む。なお、本実施の形態では、信号線を用いて電気信号を伝送するものとして説明するが、光信号を伝送するものであってもよいし、無線通信によって内視鏡2と処理装置4との間で信号を伝送するものであってもよい。
【0026】
先端部24は、グラスファイバ等を用いて構成されて光源装置3が発光した光の導光路をなすライトガイド241と、ライトガイド241の先端に設けられた照明レンズ242と、集光用の光学系243と、光学系243の結像位置に設けられ、光学系243が集光した光を受光して電気信号に光電変換して所定の信号処理を施す撮像素子244とを有する。
【0027】
光学系243は、一または複数のレンズを用いて構成される。光学系243は、撮像素子244の受光面上に観察像を結像させる。なお、光学系243は、画角を変化させる光学ズーム機能および焦点を変化させるフォーカス機能を有してもよい。
【0028】
撮像素子244は、光学系243からの光を光電変換して電気信号(画像信号)を生成する。撮像素子244は、光量に応じた電荷を蓄積するフォトダイオードや、フォトダイオードから転送される電荷を電圧レベルに変換するコンデンサなどをそれぞれ有する複数の画素がマトリックス状に配列されてなる。撮像素子244は、各画素が光学系243を経て入射する光を光電変換して電気信号を生成し、複数の画素のうち読み出し対象として任意に設定された画素が生成した電気信号を順次読み出して、画像信号として出力する。撮像素子244は、例えばCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサや、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサを用いて実現される。
【0029】
なお、内視鏡2は、撮像素子244が各種動作を実行するための実行プログラムおよび制御プログラムや、内視鏡2の識別情報を含むデータを記憶するメモリを有する(図示せず)。識別情報には、内視鏡2の固有情報(ID)、年式、スペック情報、および伝送方式等が含まれる。また、メモリは、撮像素子244が生成した画像データ等を一時的に記憶してもよい。
【0030】
光源装置3の構成について説明する。光源装置3は、光源部31と、照明制御部32と、光源ドライバ33とを備える。光源部31は、照明制御部32の制御のもと、被写体(被検体)に対して、照明光を順次切り替えて出射する。
【0031】
光源部31は、光源や、一または複数のレンズ等を用いて構成され、光源の駆動によって光(照明光)を出射する。光源部31が発生した光は、ライトガイド241を経由して先端部24の先端から被写体に向けて出射される。光源部31は、白色光源311と、狭帯域光源312と、励起光源313とを有する。各光源部、ライトガイド241および照明レンズ242によって、出射部を構成する。例えば、狭帯域光源312、ライトガイド241および照明レンズ242によって、狭帯域光出射部を構成する。
【0032】
白色光源311は、可視光域の波長帯域を有する光(白色光)を出射する。白色光源311は、LED光源や、レーザー光源、キセノンランプ、ハロゲンランプなどのいずれかの光源を用いて実現される。
【0033】
狭帯域光源312は、可視光域の波長帯域の一部の波長または波長帯域からなる光(狭帯域光)を出射する。図4は、狭帯域光として用いる光の波長帯域の一例について説明するための図である。狭帯域光としては、例えば、390nm以上445nm以下の波長帯域の光LB、530nm以上550nm以下の波長帯域の光LGのいずれか、または組み合わせてなる光である。狭帯域光として、例えばNBI(Narrow Band Imaging)観察に用いる光LBおよび光LGからなる光が挙げられる。本実施の形態では、狭帯域光として、光LBおよび光LGからなる光を用いる例について説明する。このほか、490nm以上590nm以下の波長帯域の光や、590nm以上620nm以下の波長帯域の光、および620nm以上780nm以下の波長帯域の光のいずれか、または一部を組み合わせてなる光とすることができる。狭帯域光源312は、LED光源や、レーザー光源などを用いて実現される。
なお、PITの抗体薬剤を励起させる場合、例えば690nmを中心波長とする近赤外光(例えば図4に示す660nm以上710nm以下の波長帯域の光LP)が用いられる。
【0034】
ここで、390nm以上445nm以下の波長帯域の光を照射し、その散乱光や戻り光を取得することによって、粘膜表層の血管を高いコントラストで描出することができる。また、530nm以上550nm以下の波長帯域、590nm以上620nm以下の波長帯域、または620nm以上780nm以下の波長帯域の光を照射し、その散乱光や戻り光を取得することによって、粘膜表層において、比較的深部の血管を高いコントラストで描出することができる。
【0035】
励起光源313は、励起対象(例えばPITであれば抗体薬剤)を励起させるための励起光を出射する。励起光源313は、LED光源や、レーザー光源などの光源を用いて実現される。PITの抗体薬剤を励起させる場合、例えば近赤外光LPが用いられる。
【0036】
照明制御部32は、処理装置4からの制御信号(調光信号)に基づいて、光源部31に供給する電力量を制御するとともに、発光させる光源や、光源の駆動タイミングを制御する。
【0037】
光源ドライバ33は、照明制御部32の制御のもと、発光対象の光源に対して電流を供給することによって、光源部31に光を出射させる。
【0038】
処理装置4の構成について説明する。処理装置4は、画像処理部41と、同期信号生成部42と、入力部43と、制御部44と、記憶部45と、を備える。
【0039】
画像処理部41は、内視鏡2から、撮像素子244が撮像した各色の照明光の画像データを受信する。画像処理部41は、内視鏡2からアナログの画像データを受信した場合はA/D変換を行ってデジタルの撮像信号を生成する。また、画像処理部41は、内視鏡2から光信号として画像データを受信した場合は光電変換を行ってデジタルの画像データを生成する。
【0040】
画像処理部41は、内視鏡2から受信した画像データに対して所定の画像処理を施して画像を生成して表示装置5へ出力したり、画像に基づいて判定した強化領域を設定したり、蛍光強度の時間変化を算出したりする。画像処理部41は、白色光画像生成部411と、狭帯域光画像生成部412と、蛍光画像生成部413と、表示画像生成部414とを有する。
【0041】
白色光画像生成部411は、白色光によって形成される像に基づく白色光画像を生成する。
【0042】
狭帯域光画像生成部412は、狭帯域光によって形成される像に基づく狭帯域光画像を生成する。
ここで、光学系243、撮像素子244および画像生成部によって、画像取得部が構成される。例えば、狭帯域光の照明によって形成される像を取得する場合、光学系243、撮像素子244および狭帯域光画像生成部412は狭帯域光画像取得部を構成する。
【0043】
蛍光画像生成部413は、蛍光によって形成される像に基づく蛍光画像を生成する。
【0044】
表示画像生成部414は、表示装置5に表示する画像を生成する。画像は、白色光や狭帯域光に基づく画像や、狭帯域光画像と蛍光画像とを重ね合わせた画像がある。
【0045】
白色光画像生成部411、狭帯域光画像生成部412、蛍光画像生成部413および表示画像生成部414は、所定の画像処理を施すことによって画像を生成する。ここで、所定の画像処理とは、同時化処理、階調補正処理および色補正処理等である。同時化処理は、RGBの各色成分の画像データを同時化する処理である。階調補正処理は、画像データに対して階調の補正を行う処理である。色補正処理は、画像データに対して色調補正を行う処理である。なお、白色光画像生成部411、狭帯域光画像生成部412、蛍光画像生成部413および表示画像生成部414は、画像の明るさに応じてゲイン調整してもよい。
【0046】
画像処理部41は、CPU(Central Processing Unit)等の汎用プロセッサや、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の機能を実行する各種演算回路等の専用プロセッサを用いて構成される。なお、画像処理部41は、R画像データ、G画像データおよびB画像データを保持するフレームメモリを有する構成としてもよい。
【0047】
同期信号生成部42は、処理装置4の動作の基準となるクロック信号(同期信号)を生成するとともに、生成した同期信号を光源装置3や、画像処理部41、制御部44、内視鏡2へ出力する。ここで、同期信号生成部42が生成する同期信号は、水平同期信号と垂直同期信号とを含む。
このため、光源装置3、画像処理部41、制御部44、内視鏡2は、生成された同期信号によって、互いに同期をとって動作する。
【0048】
入力部43は、キーボード、マウス、スイッチ、タッチパネルを用いて実現され、内視鏡システム1の動作を指示する動作指示信号等の各種信号の入力を受け付ける。なお、入力部43は、操作部22に設けられたスイッチや、外部のタブレット型のコンピュータなどの可搬型端末を含んでもよい。
【0049】
制御部44は、撮像素子244および光源装置3を含む各構成部の駆動制御、および各構成部に対する情報の入出力制御などを行う。制御部44は、記憶部45に記憶されている撮像制御のための制御情報データ(例えば、読み出しタイミングなど)を参照し、集合ケーブル245に含まれる所定の信号線を経由して駆動信号として撮像素子244へ送信したり、白色光の照明によって得られる画像を観察する通常観察モードと、狭帯域光の照明によって得られる画像を観察する狭帯域光観察モードと、励起対象の蛍光強度を算出する蛍光観察モードとを切り替えたりする。制御部44は、CPU等の汎用プロセッサやASIC等の特定の機能を実行する各種演算回路等の専用プロセッサを用いて構成される。
【0050】
記憶部45は、内視鏡システム1を動作させるための各種プログラム、および内視鏡システム1の動作に必要な各種パラメータ等を含むデータを記憶する。また、記憶部45は、処理装置4の識別情報を記憶する。ここで、識別情報には、処理装置4の固有情報(ID)、年式およびスペック情報等が含まれる。
【0051】
また、記憶部45は、処理装置4の画像取得処理方法を実行するための画像取得処理プログラムを含む各種プログラムを記憶する。各種プログラムは、ハードディスク、フラッシュメモリ、CD-ROM、DVD-ROM、フレキシブルディスク等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して広く流通させることも可能である。なお、上述した各種プログラムは、通信ネットワークを経由してダウンロードすることによって取得することも可能である。ここでいう通信ネットワークは、例えば既存の公衆回線網、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)などによって実現されるものであり、有線、無線を問わない。
【0052】
以上の構成を有する記憶部45は、各種プログラム等が予めインストールされたROM(Read Only Memory)、および各処理の演算パラメータやデータ等を記憶するRAMやハードディスク等を用いて実現される。
【0053】
表示装置5は、映像ケーブルを経由して処理装置4(画像処理部41)から受信した画像信号に対応する表示画像を表示する。表示装置5は、液晶または有機EL(Electro Luminescence)等のモニタを用いて構成される。
【0054】
処置具装置6は、処置具操作部61と、処置具操作部61から延びる可撓性の処置具62とを有する。PITに使用される処置具62は、治療のための光(以下、治療光という)を出射する治療光出射部である。処置具操作部61は、処置具62の治療光の出射を制御する。処置具操作部61は、操作入力部611を有する。操作入力部611は、例えば、スイッチ等によって構成される。処置具操作部61は、操作入力部611への入力(例えばスイッチの押下)によって、処置具62に治療光を出射させる。なお、処置具装置6において、治療光を発する光源は、処置具62に設けられてもよいし、処置具操作部61に設けられてもよい。光源は、半導体レーザーや、LED等を用いて実現される。治療光は、例えばPITの場合、680nm以上の波長帯域の光であり、例えば690nmを中心波長とする光である(例えば図4に示す光LP)。
ここで、処置具62が備える照明光学系は、治療光の照射範囲を変更できる構成としてもよい。例えば、処置具操作部61の制御のもと、焦点距離を変更可能な光学系や、DMD(Digital Micromirror Device)等によって構成され、被写体に照射する光のスポット径や、照射範囲の形状を変更することができる。
【0055】
続いて、内視鏡2を用いた治療の流れについて、図5を参照して説明する。図5は、本発明の実施の形態1にかかる内視鏡を用いた治療の流れの一例を示す図である。図5は、PITの実施の一例を示す図であり、胃STに挿入部21を挿入して治療を行う。
【0056】
まず、術者は、胃ST内に挿入部21を挿入する(図5の(a)参照)。この際、術者は、光源装置3に白色光を照射させ、表示装置5が表示する胃ST内の白色光画像を観察しながら治療位置を探索する。ここでは、治療対象として腫瘍B1、B2の治療を行うものとする。この際、治療対象部位である腫瘍B1、B2に対して、抗体薬剤の投与が行われる。抗体薬剤の投与は、内視鏡2を用いて実施してもよいし、他の機器を用いて実施してもよいし、患者に薬剤を飲み込ませてもよい。
術者は、白色光画像を観察して腫瘍B1、B2を含む領域を照射領域として決定する。また、必要に応じて、照射領域に狭帯域光や励起光を照射して、狭帯域光画像や蛍光画像を取得する。
【0057】
術者は、先端部24を腫瘍B1に向け、内視鏡2の先端から処置具62を突出させて腫瘍B1に治療光を照射する(図5の(b)参照)。治療光の照射によって、腫瘍B1に結合した抗体薬剤が反応し、腫瘍B1に対する治療が施される。
【0058】
そして、術者は、先端部24を腫瘍B2に向け、内視鏡2の先端から処置具62を突出させて腫瘍B2に治療光を照射する(図5の(c)参照)。治療光の照射によって、腫瘍B2に結合した抗体薬剤が反応し、腫瘍B2に対する治療が施される。
【0059】
その後、術者は、先端部24を腫瘍B1に向け、内視鏡2の先端から腫瘍B1に狭帯域光や励起光を照射する(図5の(d)参照)。術者は、治療後の狭帯域光画像や蛍光画像を取得することによって腫瘍B1における治療効果を確認する。治療効果の確認は、例えば後述する画像の観察によって、術者が判断する。
【0060】
また、術者は、先端部24を腫瘍B2に向け、内視鏡2の先端から腫瘍B2に狭帯域光を照射する(図5の(e)参照)。術者は、治療後の狭帯域光画像を取得することによって腫瘍B2における治療効果を確認する。
【0061】
術者は、必要に応じて、治療光の追加照射と、治療効果の確認とを繰り返す。
【0062】
続いて、処理装置4における処理について、図6を参照して説明する。図6は、本実施の形態1にかかる処理装置の処理の一例を示すフローチャートである。
【0063】
まず、術者の操作によって、処置具62から、癌細胞に結合させた抗体薬剤に治療光が照射されて薬剤が反応する(ステップS101:薬剤反応工程)。この薬剤反応工程において、治療光である近赤外光の照射によって抗体薬剤を活性化させて癌細胞を破壊する治療が施される。
【0064】
そして、先端部24から治療位置に狭帯域光を照射して、治療後の狭帯域光画像(第2狭帯域光画像)を取得する(ステップS102:狭帯域光画像取得工程)。制御部44は、光源装置3に狭帯域光を出射させ、内視鏡2に狭帯域光の像を撮像させる。
【0065】
その後、光源装置3に励起光を出射させ、抗体薬剤の蛍光を検出する(ステップS103:蛍光検出工程)。励起光の出射によって、内視鏡2から被写体に励起光が照射され、治療前の抗体薬剤が励起されて蛍光を発する。この際、処理装置4は、第2撮像素子244bが生成した撮像信号(蛍光画像)を取得する。
ここで、ステップS102、S103の順で狭帯域光と励起光とを交互に切り替えて照明することによって、漏れ光等を抑制して取得する画像の画質を向上させることができる。なお、画質を向上させるうえで狭帯域光と励起光とを別々に照射することが好ましいが、ステップS102およびS103を同時に実施してもよい。
【0066】
ここで、NBI観察によって描出される組織の状態について説明する。図7は、正常な状態の組織について説明する図である。癌細胞を含まない正常な状態の場合、微細構造OSが、全体が均一に無構造であり、微小血管(図7では微小血管MVとして破線で図示)は不可視となる。
【0067】
図8A図8Cは、癌細胞を含む状態の組織について説明する図である。図7に示す正常な状態に対し、癌細胞を含む組織は、微細構造OSの表面パターンや血管の状態が、正常な状態と比して異なる。例えば、整った微細構造パターンに対し、血管BVが各微細構造を取り囲む血管パターンを有していたり(図8A参照)、不規則な微細構造パターンに対し、血管BVが各微細構造を取り囲む網目模様の血管パターンを有していたり(図8B参照)、微細構造パターンが不明瞭であり、血管BVの太さが不均一となっていたりする(図8C参照)。
【0068】
さらに、癌細胞のタンパク質に抗体薬剤が結合している状態では、励起光を当てると抗体薬剤が励起され、蛍光を発する(図8A等ではハッチングで図示)。治療が未完了であり、結合したままの抗体薬剤が残っている場合、蛍光は検出される。一方、治療が完了し、抗体薬剤が残っていない場合、蛍光は検出されない。
【0069】
PITでは、例えば、図8Cに示す組織に治療光を照射して、図7に示す正常な状態へ戻す。図9は、治療前と治療後との組織の状態について説明する図である。図9の(a)は治療前のNBI観察によって取得される狭帯域光画像を示す。図9の(b)および(c)は治療後のNBI観察によって段階的に取得される狭帯域光画像を示す。術者は、図9の(a)に示す状態が、組織に治療光を照射して、図9の(c)に示す状態への変移を確認することによって、治療効果、および治療の成否を判断する。この際、図9の(b)に示す状態は、全体が均一に無構造になりつつも、一部において蛍光が検出されており、治療光を追加照射すると判断される。
【0070】
図6に戻り、表示画像生成部414は、表示装置5に表示する画像を生成する(ステップS104:表示画像生成工程)。表示画像生成部414は、ステップS102およびS103において取得した狭帯域光画像と蛍光画像とを重ねた重ね合わせ画像(例えば図9の(b)または(c)に示す画像)を含む表示画像を生成する。
【0071】
制御部44は、ステップS105で生成された表示画像を表示装置5に表示させる(ステップS105:表示工程)。表示装置5に画像を表示することによって、術者に、治療効果を確認させる。術者は、画像を参照して治療効果を確認し、追加で治療光を照射するか否かを判断したり、治療光を照射する部分を判断したりする。術者は、判断結果を、入力部43を操作して入力する。
【0072】
図10は、表示画面の一例を示す図である。表示装置5には、例えば、治療後の狭帯域光画像と蛍光画像とを重ね合わせた重ね合わせ画像を表示する画像表示部W11を有する表示画像W1が表示される。画像表示部W11には、ステップS102において取得された治療後の狭帯域光画像と、ステップS103において取得された治療後の蛍光画像とを重ねた画像が表示される。図10に示す画像では、蛍光(図10におけるハッチング部分)が観察され、抗体薬剤が残存していることが考えられるため、術者は、画像に基づいて追加照射を検討する。
【0073】
制御部44は、入力部43が判断結果の入力を受け付けると、治療光の追加照射を行うか否かを判断する(ステップS106)。制御部44は、入力された判断結果に基づいて治療光の追加照射が不要であると判断した場合(ステップS106:No)、処理を終了する。これに対し、制御部44は、治療光の追加照射を実施すると判断した場合(ステップS106:Yes)、ステップS107に移行する。
追加照射を行う際には、例えば照明光学系において、光の照射範囲の形状を境界領域に合わせる制御を行ったり、術者がスポット径を調整したりして治療光の照射を行う。
【0074】
制御部44は、治療光の追加照射を実施する領域における、照射済みの光量が、許容範囲内であるか否かを判断する(ステップS107)。ここで、許容範囲は、予め設定されている光量であり、少なくとも上限値が設定される。この上限値は、過剰照射によって組織が損傷することを抑制するために設定される値である。制御部44は、例えば、術者等によって指定された対象の領域に対して照射済みの光量(累積光量値)が、上限値を超えているか否かを判断する。照射済みの光量は、例えば術者によって入力された治療光の出力および照射時間に基づいて算出される。
【0075】
制御部44は、照射済みの光量が、許容範囲(上限値)を下回っていると判断した場合(ステップS107:Yes)、ステップS101に戻り、上述した処理を繰り返す。また、制御部44は、照射済みの光量が、許容範囲(上限値)を超えていると判断した場合(ステップS107:No)、ステップS108に移行する。
【0076】
ステップS108において、制御部44は、照射光量が許容範囲を超えている旨のアラートを出力する。このアラートは、表示装置5に文字情報として表示させてもよいし、音や光を発する構成としてもよいし、これらを組み合わせてもよい。制御部44は、表示装置5に表示させた後、処理を終了する。
【0077】
以上説明した実施の形態1では、組織構造が描出される狭帯域光画像と、抗体薬剤の存在の有無を描出する蛍光画像とを重ねた画像を表示装置5に表示させることによって、術者に、治療光の追加照射の要否を判断させる。本実施の形態1によれば、治療後の組織や血管の変化と、抗体薬剤の残存状態との両方向の観点に基づいて、適切に治療効果を確認することができる。
【0078】
また、上述した実施の形態1では、追加照射を実施する際に、当該領域への治療光の累積光量と、許容範囲とを比較し、累積光量が許容範囲を超えている場合に、累積光量が許容範囲を超えている旨のアラートを出力する。本実施の形態1によれば、治療光の過剰照射によって組織が損傷することを抑制できる。
【0079】
なお、上述した実施の形態1において、撮像素子244をマルチバンド(Multi-band)イメージセンサを用いて構成し、互いに異なる複数の波長帯域の光をそれぞれ個別に取得してもよい。例えば、380nm以上440nm以下の波長帯域の光の散乱光や戻り光と、530nm以上550nm以下の波長帯域の光の散乱光や戻り光とを、マルチバンドイメージセンサによって個別に取得し、それぞれの狭帯域光画像を生成することによって、粘膜表層からの深さが異なる血管画像を個別に生成することができ、各深度における血管や組織の像を用いて、一層高精度に画像変化を算出することができる。さらに、狭帯域光と励起光とを同時に照射した場合であっても、狭帯域光画像と、蛍光画像とを別々に取得することができる。
【0080】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について、図11図14を参照して説明する。図11は、本発明の実施の形態2にかかる内視鏡システムの概略構成を示すブロック図である。本実施の形態2にかかる内視鏡システム1Aは、実施の形態1にかかる内視鏡システム1の処理装置4に代えて処理装置4Aを備える。処理装置4A以外の構成は内視鏡システム1と同じであるため、説明を省略する。
【0081】
処理装置4Aの構成について説明する。処理装置4Aは、画像処理部41Aと、同期信号生成部42と、入力部43と、制御部44と、記憶部45と、を備える。
【0082】
画像処理部41Aは、白色光画像生成部411と、狭帯域光画像生成部412と、蛍光画像生成部413と、表示画像生成部414と、画像変化算出部415と、を有する。
【0083】
画像変化算出部415は、画像の時間的な変化量を算出する。具体的には、画像変化算出部415は、狭帯域光画像生成部412によって生成された狭帯域光画像であって、異なる時刻に撮像された狭帯域光画像の時間的な変化、および/または蛍光画像生成部413によって生成された蛍光画像であって、異なる時刻に撮像された蛍光画像の時間的な変化を算出する。
【0084】
続いて、処理装置4Aにおける処理について、図12を参照して説明する。図12は、本実施の形態2にかかる処理装置の処理の一例を示すフローチャートである。
【0085】
まず、先端部24から治療位置に狭帯域光を照射して、治療前の狭帯域光画像(第1狭帯域光画像)を取得する(ステップS201:狭帯域光画像取得工程)。ここで、制御部44は、光源装置3に狭帯域光を出射させ、内視鏡2に狭帯域光の像を撮像させる。撮像後、狭帯域光画像生成部412が、狭帯域光画像を生成する。
【0086】
また、先端部24から治療位置に励起光を照射して、治療前の蛍光画像(第1蛍光画像)を取得する(ステップS202:蛍光画像取得工程)。ここで、制御部44は、光源装置3に励起光を出射させ、内視鏡2に、抗体薬剤が発する蛍光の像を撮像させる。撮像後、蛍光画像生成部413が、蛍光画像を生成する。
なお、ステップS201とステップS202とは、処理の順番が逆であってもよい。
【0087】
その後、術者の操作によって、処置具62から、癌細胞に結合させた抗体薬剤に治療光が照射されて薬剤が反応する(ステップS203:薬剤反応工程)。
【0088】
治療光照射後、先端部24から治療位置に狭帯域光を照射して、治療後の狭帯域光画像(第2狭帯域光画像)を取得する(ステップS204:狭帯域光画像取得工程)。制御部44は、ステップS204においても、ステップS101と同様にして、光源装置3に狭帯域光を出射させ、内視鏡2に狭帯域光の像を撮像させる。
【0089】
また、先端部24から治療位置に励起光を照射して、治療後の蛍光画像(第2蛍光画像)を取得する(ステップS205:蛍光画像取得工程)。制御部44は、ステップS204においても、ステップS101と同様にして、光源装置3に狭帯域光を出射させ、内視鏡2に狭帯域光の像を撮像させる。
なお、ステップS204とステップS205とは、処理の順番が逆であってもよい。
【0090】
その後、画像変化算出部415は、治療前後の画像の時間的な変化を算出する(ステップS206:画像変化算出工程)。画像変化算出部415は、治療前後の狭帯域光画像の比較によって、表層の組織パターンの明瞭度、均一性、血管の太さの均一性、視認性等を示す値を画像変化として算出する。なお、画像変化算出部415は、治療前後の蛍光強度の差を画像変化として算出してもよい。
【0091】
この際、画像変化算出部415は、得られた狭帯域光画像のうち、血管構造と、微細構造OSとのいずれかの状態の変化を個別に算出する。変化算出の対象は、設定することができ、血管構造のみ、微細構造のみ、血管構造および微細構造のうちから選択できる。画像変化算出部415は、画像の特徴点を抽出し、その特徴点の位置の変化や、大きさ、分布を比較して変化を算出する。
【0092】
図13Aおよび図13Bは、治療前と治療後との組織の状態について、狭帯域光画像から構造を抽出した図である。図13Aは、血管構造を抽出した場合の画像を示す。図13Bは、微細構造を抽出した場合の画像を示す。画像変化算出部415は、治療前後の狭帯域光画像から、それぞれ、血管BVを抽出して血管のコントラスト値を算出した後、血管BVと、その周囲とのコントラスト比を算出する。その後、画像変化算出部415は、治療前後の狭帯域光画像のコントラスト比の差分を画像変化として算出する(図13A参照)。
【0093】
また、画像変化算出部415は、治療前後の狭帯域光画像から、それぞれ粘膜表層の微細構造OSを抽出して当該微細構造OSの明瞭度を算出する。その後、画像変化算出部415は、治療前後の狭帯域光画像の明瞭度の差分を画像変化として算出する(図10B参照)。この際、狭帯域光画像において、治療後の微細構造は、治療前の微細構造よりも明瞭に描出される。なお、画像変化算出部415は、例えば微細構造OSを抽出して画像間の微細構造OSの一致度を、変化として算出してもよい。
なお、画像変化算出部415は、狭帯域光画像の画像変化と、蛍光画像の画像変化(蛍光強度の変化)とを算出した場合、各画像変化を用いて画像変化を示す一つの値を算出してもよいし、各画像変化をそれぞれ独立した値として算出してもよい。
【0094】
その後、表示画像生成部414が、表示装置5に表示する画像を生成する(ステップS207:表示画像生成工程)。表示画像生成部414は、上述した狭帯域光画像と蛍光画像との重ね合わせ画像、および、算出した画像変化を視覚的に表現した画像を生成する。
【0095】
制御部44は、ステップS207で生成された画像を表示装置5に表示させる(ステップS208:表示工程)。表示装置5に画像を表示することによって、術者に、治療効果を確認させる。術者は、画像を参照して治療効果を確認し、追加で治療光を照射するか否かを判断したり、治療光を照射する部分を判断したりする。術者は、判断結果を、入力部43を操作して入力する。
【0096】
図14は、治療前と治療後との組織の状態を示す画像を表示した表示画面の一例を示す図である。表示装置5には、例えば、治療前の画像を表示する第1画像表示部W21と、治療後の画像を表示する第2画像表示部W22と、治療前後の画像の変化(例えば上述したコントラスト値)を表示する情報表示部W23とを有する表示画像W2が表示される。第1画像表示部W21および第2画像表示部W22に表示される画像は、狭帯域光画像と蛍光画像とを重ね合わせた画像である。この際、第1画像表示部W21および第2画像表示部W22の大きさや、狭帯域光画像および蛍光画像を重ねる際の各画像の透過率は、適宜設定することができる。
【0097】
制御部44は、入力部43が判断結果の入力を受け付けると、治療光の追加照射を行うか否かを判断する(ステップS209)。制御部44は、入力された判断結果に基づいて治療光の追加照射が不要であると判断した場合(ステップS209:No)、処理を終了する。これに対し、制御部44は、治療光の追加照射を実施すると判断した場合(ステップS209:Yes)、ステップS210に移行する。
追加照射を行う際には、例えば照明光学系において、光の照射範囲の形状を境界領域に合わせる制御を行ったり、術者がスポット径を調整したりして治療光の照射を行う。
【0098】
制御部44は、治療光の追加照射を実施する領域における、照射済みの光量が、許容範囲内であるか否かを判断する(ステップS210)。ここで、許容範囲は、予め設定されている光量であり、少なくとも上限値が設定される。この上限値は、過剰照射によって組織が損傷することを抑制するために設定される値である。制御部44は、例えば、術者等によって指定された対象の領域に対して照射済みの光量(累積光量値)が、上限値を超えているか否かを判断する。
【0099】
制御部44は、照射済みの光量が、許容範囲(上限値)を下回っていると判断した場合(ステップS210:Yes)、ステップS203に戻り、上述した処理を繰り返す。この際、新たな薬剤反応工程(ステップS102)の前に取得した狭帯域光画像のうち、最新の狭帯域光画像を、治療前の第1狭帯域光画像とし、薬剤反応工程後に取得した狭帯域光画像を第2狭帯域光画像とする。
【0100】
また、制御部44は、照射済みの光量が、許容範囲(上限値)を超えていると判断した場合(ステップS210:No)、ステップS211に移行する。
【0101】
ステップS211において、制御部44は、照射光量が許容範囲を超えている旨のアラートを出力する。このアラートは、表示装置5に文字情報として表示させてもよいし、音や光を発する構成としてもよいし、これらを組み合わせてもよい。制御部44は、表示装置5に表示させた後、処理を終了する。
【0102】
以上説明した実施の形態2では、実施の形態1と同様に、組織構造が描出される狭帯域光画像と、抗体薬剤の存在の有無を描出する蛍光画像とを重ねた画像を表示装置5に表示させることによって、術者に、治療光の追加照射の要否を判断させる。本実施の形態2によれば、治療後の組織や血管の変化と、抗体薬剤の残存状態との両方向の観点に基づいて、適切に治療効果を確認することができる。
【0103】
また、実施の形態2では、狭帯域光画像や蛍光画像を用いて治療前後の画像の変化を算出しその変化を表示することによって、術者に、治療光の追加照射の要否を判断させる。本実施の形態2によれば、治療前後の組織や血管の変化を、組織や血管が描出される狭帯域光画像をもとに治療効果を組織レベルで算出し、視覚的に把握し難い蛍光の変化を変化量として算出するため、治療領域に対する追加照射を適切に判断させることができる。
【0104】
(実施の形態3)
次に、実施の形態3について、図15を参照して説明する。本実施の形態3にかかる内視鏡システムは、実施の形態2にかかる内視鏡システム1Aと同じであるため、説明を省略する。以下、実施の形態2とは異なる処理について説明する。
【0105】
実施の形態3において、画像変化算出部415は、画像を複数の領域に分割し、各領域において画像変化を算出する。図15は、本発明の実施の形態3にかかる治療効果の判定処理について説明するための図である。図15に示す例において、画像変化算出部415は、治療前後の画像をそれぞれ四つに分割し、各領域(領域RA~RD)の画像変化を算出する。図15では、領域RAおよび領域RBの組織が治療によって正常な状態となり、領域RCおよび領域RDの組織が治療後も癌細胞や抗体薬剤を含む状態となっている。術者は、狭帯域画像や画像変化を観察し、各領域について追加照射が必要か否かを判断する。
【0106】
以上説明した実施の形態3では、実施の形態1と同様に、組織構造が描出される狭帯域光画像と、抗体薬剤の存在の有無を描出する蛍光画像とを重ねた画像を表示装置5に表示させることによって、術者に、治療光の追加照射の要否を判断させる。本実施の形態3によれば、治療後の組織や血管の変化と、抗体薬剤の残存状態との両方向の観点に基づいて、適切に治療効果を確認することができる。
【0107】
また、本実施の形態3によれば、狭帯域光を複数の領域に分割し、各領域の画像変化を算出するため、治療が完了している部分への治療光の過剰照射を抑制することができるとともに、治療が完了していない部分への治療光の照射を継続することができる。
【0108】
(実施の形態4)
次に、実施の形態4について、図16図17Aおよび図17Bを参照して説明する。図16は、本発明の実施の形態3にかかる内視鏡システムの概略構成を示すブロック図である。本実施の形態3にかかる内視鏡システム1Bは、実施の形態2にかかる内視鏡システム1Aの処理装置4Aに代えて処理装置4Bを備える。処理装置4B以外の構成は内視鏡システム1と同じであるため、説明を省略する。
【0109】
処理装置4Bの構成について説明する。処理装置4Bは、画像処理部41Bと、同期信号生成部42と、入力部43と、制御部44と、記憶部45と、を備える。
【0110】
画像処理部41Bは、白色光画像生成部411と、狭帯域光画像生成部412と、蛍光画像生成部413と、表示画像生成部414と、画像変化算出部415と、推定部416とを有する。
【0111】
推定部416は、画像変化算出部415が算出した画像変化に基づいて、治療効果を推定する。推定部416は、例えば、治療前後の狭帯域光画像の画像変化として算出されたコントラスト値の差分を算出し、該差分と、予め設定されている閾値とを比較して、治療効果を推定する。推定部416は、差分が閾値よりも小さければ、追加照射が必要であると推定する。これに対し、推定部416は、差分が閾値以上であれば、治療完了であると推定する。この推定処理は、図12のステップS209の処理としてもよいし、ステップS206における変化算出処理の一部として行って、推定結果をステップS208における表示工程で表示するフローとしてもよい。
【0112】
表示画像生成部414は、推定結果をステップS208における表示工程で表示する場合、図14に示す表示画像W2において、情報表示部W23において表示する情報を推定結果に変えた画像を生成する。なお、推定結果と、画像変化の情報との両方を表示する画像としてもよい。
【0113】
以上説明した実施の形態4では、実施の形態1と同様に、組織構造が描出される狭帯域光画像と、抗体薬剤の存在の有無を描出する蛍光画像とを重ねた画像を表示装置5に表示させることによって、術者に、治療光の追加照射の要否を判断させる。本実施の形態4によれば、治療後の組織や血管の変化と、抗体薬剤の残存状態との両方向の観点に基づいて、適切に治療効果を確認することができる。
【0114】
また、本実施の形態4によれば、狭帯域光画像の変化から治療効果を推定する構成としており、その推定結果は、術者が、狭帯域画像や、画像変化の観察から治療効果を判断する際の好適な判断材料となり得る。
【0115】
(実施の形態5)
次に、実施の形態5について、図17A、17Bを参照して説明する。本実施の形態5にかかる内視鏡システムは、実施の形態4にかかる内視鏡システム1Bと同じであるため、説明を省略する。以下、実施の形態4とは異なる処理について説明する。
【0116】
実施の形態5において、画像変化算出部415は、治療前後の狭帯域光画像の変化、または、治療前の狭帯域光画像と、予め取得した正常な組織における狭帯域光画像との画像変化を算出する。
【0117】
推定部416は、画像変化算出部415が算出した画像変化に基づいて、治療光の出力(照射強度)を推定する。図17Aおよび図17Bは、本発明の実施の形態4にかかる推定処理について説明するための図である。推定部416は、画像変化の大きさに基づいて、治療光の強度を推定する。例えば、図17Aの(a)に示す狭帯域画像において、正常な組織との画像変化が大きい場合、推定部416は、治療光の出力を最大値PMAXに設定する(図17Aの(b)参照)。また、図17Bの(a)に示す狭帯域画像において、正常な組織との画像変化が比較的小さい場合、推定部416は、治療光の出力を最大値PMAXよりも小さい値に設定する(図17Bの(b)参照)。この際、画像変化に対して、出力値と対応付いた閾値が予め設定される。この推定処理は、図12のステップS203の薬剤反応工程の前や、ステップS209において追加照射を行うと判断された後(ステップS209:Yes)に実施される。
【0118】
表示画像生成部414は、推定結果を表示する場合、図14に示す表示画像W2において、情報表示部W23に、推定結果として治療光の出力を示す情報を表示させる画像を生成する。なお、推定結果と、画像変化の情報との両方を表示する画像としてもよい。
術者は、狭帯域画像や画像変化を観察するとともに、治療光の推定出力値を参照し、各領域について追加照射が必要か否か、および、治療光の出力(エネルギー)を判断する。
【0119】
以上説明した実施の形態5では、実施の形態1と同様に、組織構造が描出される狭帯域光画像と、抗体薬剤の存在の有無を描出する蛍光画像とを重ねた画像を表示装置5に表示させることによって、術者に、治療光の追加照射の要否を判断させる。本実施の形態5によれば、治療後の組織や血管の変化と、抗体薬剤の残存状態との両方向の観点に基づいて、適切に治療効果を確認することができる。
【0120】
また、本実施の形態5によれば、狭帯域光画像をもとに治療光の出力を推定する構成としており、その推定結果は、術者が、治療光を照射する際の好適な判断材料となり得る。
【0121】
(実施の形態6)
次に、実施の形態6について、図18A、18Bを参照して説明する。本実施の形態6にかかる内視鏡システムは、実施の形態4にかかる内視鏡システム1Bと同じであるため、説明を省略する。以下、実施の形態4とは異なる処理について説明する。
【0122】
実施の形態6において、画像変化算出部415は、治療前後の狭帯域光画像の変化、または、治療前の狭帯域光画像と、予め取得した正常な組織における狭帯域光画像との画像変化を算出する。
【0123】
推定部416は、画像変化算出部415が算出した画像変化に基づいて、必要な治療光の照射強度を推定する。図18Aおよび図18Bは、本発明の実施の形態5にかかる推定処理について説明するための図である。推定部416は、画像変化の大きさに基づいて、治療光の照射時間を推定する。この際、治療光は、予め設定されている出力であるものとする。例えば、図18Aの(a)に示す狭帯域画像において、正常な組織との画像変化が大きい場合、推定部416は、画像変化の大きさに応じた照射時間、例えば70分を設定する。また、図18Bの(a)に示す狭帯域画像において、正常な組織との画像変化が比較的小さい場合、推定部416は、例えば15分を設定する。この際、画像変化に対して、照射時間と対応付いた閾値が予め設定される。この推定処理は、図12のステップS203の薬剤反応工程の前や、ステップS209において追加照射を行うと判断された後(ステップS209:Yes)に実施される。
【0124】
表示画像生成部414は、推定結果を表示する場合、図14に示す表示画像W2において、情報表示部W23に、推定結果として治療光の照射時間を示す情報を表示させる画像(例えば図18Aの(b)および図18Bの(b)参照)を生成する。なお、推定結果と、画像変化の情報との両方を表示する画像としてもよい。
術者は、狭帯域画像や画像変化を観察するとともに、治療光の推定照射時間を参照し、各領域について追加照射が必要か否か、および、治療光の照射時間を判断する。
【0125】
以上説明した実施の形態6では、実施の形態4と同様に、狭帯域光画像を用いて治療前後の組織の変化を算出しその変化に基づく情報を表示することによって、術者に、治療光の追加照射の要否を判断させる。本実施の形態6によれば、治療前後の組織や血管の変化を、組織や血管が描出される狭帯域光画像をもとに治療効果を組織レベルで算出するため、治療領域に対して適切に光照射を実施することができる。
【0126】
また、本実施の形態6によれば、狭帯域光画像をもとに治療光の照射時間を推定する構成としており、その推定結果は、術者が、治療光を照射する際の好適な判断材料となり得る。
【0127】
なお、本実施の形態6において、実施の形態5と組み合わせて、治療光の出力と、照射時間とを組わせた推定結果を出力する構成としてもよい。
【0128】
また、上述した実施の形態5、6において、推定部416は、治療光の出力や照射時間と対応付いた比較用の狭帯域光画像を予め用意しておき、該比較用の狭帯域光画像の特徴と、処理対象の狭帯域光画像の特徴量とを比較するなどして、治療光の出力や照射時間を推定する構成としてもよい。
【0129】
(実施の形態7)
次に、実施の形態7について、図19を参照して説明する。図19は、本発明の実施の形態7にかかる内視鏡システムの概略構成を示すブロック図である。本実施の形態7にかかる内視鏡システム1Cは、実施の形態4にかかる内視鏡システム1Bと同じ構成を備える。内視鏡システム1Cでは、処理装置4Bが、処置具装置6と電気的に接続し、制御部44によって、処置具62からの治療光の出射制御を行う。
【0130】
処理装置4Bは、PITを実施する場合、図12のフローに従って処理を実行する。この際、治療光の照射を行う際に、制御部44が、治療光の照射範囲や、照射タイミング、照射時間を制御する。具体的には、制御部44は、例えば、術者によって設定された照射範囲に対し、予め設定された照射光量となる光強度(出力値)および照射時間を設定する。制御部44は、操作入力部611のスイッチの押下をトリガとして、治療光の照射制御を開始する。また、追加照射する際、制御部44は、対象の境界領域に応じて、処置具62から出射される治療光の照射範囲の形状を設定し、操作入力部611のスイッチの押下をトリガとして、治療光の照射制御を開始する。
また、本実施の形態7において、制御部44は、図12のフローチャートにしたがって、狭帯域光と治療光とを交互に出射する制御を行う。なお、狭帯域光と治療光を同時に出射してもよい。
【0131】
以上説明した実施の形態7では、実施の形態4と同様に、狭帯域光画像を用いて治療前後の組織の変化を算出しその変化に基づく情報を表示することによって、術者に、治療光の追加照射の要否を判断させる。本実施の形態7によれば、治療前後の組織や血管の変化を、組織や血管が描出される狭帯域光画像をもとに治療効果を組織レベルで算出するため、治療領域に対して適切に光照射を実施することができる。
【0132】
また、本実施の形態7によれば、制御部44によって治療光の照射処理が制御されるため、術者に負担を軽減することができる。
【0133】
以上説明した実施の形態1~7においては、光源装置3が、処理装置4とは別体である例を説明したが、光源装置3および処理装置4を一体化した構成としてもよい。また、実施の形態1~7では、処置具によって治療光を照射する例について説明したが、光源装置3が治療光を出射する構成としてもよい。
【0134】
また、上述した実施の形態1~7において、励起光と治療光とは、同じ波長帯域(中心波長が同じ)であってもよいし、互いに異なる波長帯域(中心波長)であってもよい。なお、励起光を治療光と共通で用いる場合、処置具62または励起光源によって治療光(励起光)を照射すればよく、励起光源および処置具62の一方を有しない構成としてもよい。PITの抗体薬剤を励起させる場合、例えば690nmを中心波長とする近赤外光LPが用いられる。
【0135】
また、上述した実施の形態1~7では、本発明にかかる内視鏡システムが、観察対象が被検体内の生体組織などである軟性の内視鏡2を用いた内視鏡システム1であるものとして説明したが、硬性の内視鏡や、材料の特性を観測する工業用の内視鏡、ファイバースコープ、光学視管などの光学内視鏡の接眼部にカメラヘッドを接続したものを用いた内視鏡システムであっても適用できる。
【0136】
(付記項)
治療対象部位に光治療用の薬剤を投与する工程と、
前記治療対象部位に治療光を照射して、治療対象部位に結合させた薬剤を反応させる工程と、
前記治療対象部位に狭帯域光を照射して、治療後の狭帯域光画像を取得する工程と、
前記治療対象部位に励起光を照射して、治療後の蛍光画像を取得する工程と、
前記狭帯域光画像と前記蛍光画像とを重ね合わせた重ね合わせ画像を生成する工程と、
前記重ね合わせ画像を用いて、治療光の照射を継続するか否かを判断する工程と、
を含む光治療方法。
【産業上の利用可能性】
【0137】
以上のように、本発明にかかる光治療装置、光治療方法および光治療プログラムは、適切に治療効果を確認するのに有用である。
【符号の説明】
【0138】
1、1A~1C 内視鏡システム
2 内視鏡
3 光源装置
4、4A、4B 処理装置
5 表示装置
6 処置具装置
21 挿入部
22 操作部
23 ユニバーサルコード
24 先端部
25 湾曲部
26 可撓管部
31 光源部
32 照明制御部
33 光源ドライバ
41、41A、41B 画像処理部
42 同期信号生成部
43 入力部
44 制御部
45 記憶部
61 処置具操作部
62 処置具
241 ライトガイド
242 照明レンズ
243 光学系
244 撮像素子
311 白色光源
312 狭帯域光源
411 白色光画像生成部
412 狭帯域光画像生成部
413 蛍光画像生成部
414 表示画像生成部
415 画像変化算出部
416 推定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14
図15
図16
図17A
図17B
図18A
図18B
図19