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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】診断装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/18 20060101AFI20241003BHJP
   A61B 5/16 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
A61B5/18
A61B5/16 130
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023519103
(86)(22)【出願日】2022-03-30
(86)【国際出願番号】 JP2022016062
(87)【国際公開番号】W WO2023188130
(87)【国際公開日】2023-10-05
【審査請求日】2023-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 秀樹
【審査官】鳥井 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-002891(JP,A)
【文献】特開2016-091056(JP,A)
【文献】特開2018-135002(JP,A)
【文献】特表2019-525185(JP,A)
【文献】特開2007-315535(JP,A)
【文献】特開昭47-040985(JP,A)
【文献】特開2011-018240(JP,A)
【文献】特開2015-141536(JP,A)
【文献】米国特許第10977882(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00- 5/398
G08G 1/00- 1/16
G08B 21/00-21/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の外部の環境を認識する認識部と、
前記車両の走行についてのドライバの運転操作を受け付ける運転操作部における運転操作タイミングに基づいて、前記認識部により認識された認識対象に対するドライバの反応時間を検出し、前記反応時間に基づいて前記ドライバの健康状態を診断する診断部と、
前記ドライバの生体情報を検出する検出部と
を備え、
前記診断部は、
前記生体情報に基づいて前記ドライバが眠気を感じているかどうかを推定し、
前記ドライバが眠気を感じていると推定した場合には、前記健康状態が悪いと診断せず、
前記ドライバが眠気を感じていないと推定した場合には、前記反応時間に基づいて前記ドライバの健康状態を診断する
診断装置。
【請求項2】
前記診断部は、複数の前記運転操作タイミングに対応する複数の前記反応時間に基づいて前記健康状態を診断する
請求項1に記載の診断装置。
【請求項3】
前記診断部は、前記ドライバの前記反応時間を蓄積するメモリを有し、蓄積された前記反応時間に基づいてしきい値を生成し、前記反応時間を前記しきい値と比較することにより前記健康状態を診断する
請求項1に記載の診断装置。
【請求項4】
前記ドライバに情報を通知する通知部をさらに備え、
前記診断部は、前記反応時間をしきい値と比較することにより前記健康状態を診断し、
前記通知部は、前記反応時間が前記しきい値よりも長い場合に、前記ドライバに前記診断部の比較結果に応じた情報を通知する
請求項1に記載の診断装置。
【請求項5】
前記通知部は、前記診断部が前記ドライバが眠気を感じていると推定した場合には、前記ドライバに、眠気を感じている旨の情報を通知する
請求項4に記載の診断装置。
【請求項6】
外部装置との間で通信を行う通信部をさらに備え、
前記診断部は、前記反応時間をしきい値と比較することにより前記健康状態を診断し、
前記通信部は、前記反応時間が前記しきい値よりも長い場合に、前記外部装置に対して、前記診断部の比較結果に応じた情報を送信する
請求項1に記載の診断装置。
【請求項7】
前記診断部は、前記反応時間に加え、前記生体情報の検出結果にも基づいて前記健康状態を診断する
請求項1に記載の診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、運転者の健康状態を診断する診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両では、乗員の健康管理支援を行う技術が開発されている。例えば、特許文献1には、乗員の心拍数や血圧などの生体情報を検出し、その検出結果に基づいて乗員へアドバイスを行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-234009号公報
【発明の概要】
【0004】
車両では、ドライバの健康状態を診断することができることが望まれており、健康状態の診断精度の向上が期待されている。
【0005】
ドライバの健康状態を診断することができる診断装置を提供することが望ましい。
【0006】
本開示の一実施の形態に係る診断装置は、認識部と、診断部と、検出部とを備えている。認識部は、車両の外部の環境を認識するものである。診断部は、車両の走行についてのドライバの運転操作を受け付ける運転操作部における運転操作タイミングに基づいて、認識部により認識された認識対象に対するドライバの反応時間を検出し、反応時間に基づいてドライバの健康状態を診断するものである。検出部は、ドライバの生体情報を検出するものである。上記診断部は、生体情報に基づいてドライバが眠気を感じているかどうかを推定し、ドライバが眠気を感じていると推定した場合には、健康状態が悪いと診断せず、ドライバが眠気を感じていないと推定した場合には、反応時間に基づいてドライバの健康状態を診断する。
【0007】
本開示の一実施の形態に係る診断装置によれば、ドライバの健康状態を診断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の一実施の形態に係る診断装置を備えた車両の一構成例を表すブロック図である。
図2図1に示した診断装置の一動作例を表す説明図である。
図3図1に示した診断装置の他の一動作例を表す説明図である。
図4図1に示した診断装置の一動作例を表すフローチャートである。
図5】変形例に係る診断装置を備えた車両の一構成例を表すブロック図である。
図6図5に示した診断処理部の一動作例を表す説明図である。
図7】他の変形例に係る診断装置を備えた車両の一構成例を表すブロック図である。
図8】他の変形例に係る診断装置を備えた車両の一構成例を表すブロック図である。
図9】他の変形例に係る診断装置を備えた車両の一構成例を表すブロック図である。
図10】他の変形例に係る診断装置を備えた車両の一構成例を表すブロック図である。
図11】他の変形例に係る診断装置の一動作例を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
<実施の形態>
[構成例]
図1は、一実施の形態に係る診断装置を備えた車両9の一構成例を表すものである。車両9は、運転操作部10と、走行制御部15と、走行機構部16と、診断装置20とを備えている。
【0011】
運転操作部10は、ドライバによる運転操作を受け付けるように構成される。運転操作部10は、ステアリングホイール11と、アクセルペダル12と、ブレーキペダル13と、シフトレバー14とを有している。ステアリングホイール11は、ドライバによる操舵操作を受け付けるように構成される。アクセルペダル12は、ドライバによる加速操作を受け付けるように構成される。ブレーキペダル13は、ドライバによる制動操作を受け付けるように構成される。シフトレバー14は、ドライバによるトランスミッション機構に対する変速操作を受け付けるように構成される。なお、運転操作部10は、この他、例えば、ウインカーレバーや、パーキングブレーキペダルなども有する。
【0012】
走行制御部15は、運転操作部10が受け付けたドライバの運転操作に基づいて、走行機構部16の動作を制御することにより、車両9の走行を制御するように構成される。走行制御部15は、例えば、1または複数のECU(Electronic Control Unit)を用いて構成される。また、走行制御部15は、運転操作部10が受け付けた運転操作についての情報を診断装置20に供給するようになっている。
【0013】
走行機構部16は、例えばエンジン、トランスミッション機構、操舵機構、制動機構、車輪などを備え、走行制御部15からの指示に基づいて動作するように構成される。車両9は、この走行機構部16が動作することにより、運転操作部10が受け付けたドライバの運転操作に応じて走行するようになっている。
【0014】
診断装置20は、車両9のドライバの健康状態を診断するように構成される。診断装置20は、車外環境認識部21と、診断部30と、通知部25と、通信部28とを有している。
【0015】
車外環境認識部21は、例えば車両9が走行している走行路や、車両9の前方を走行している先行車両など、車両9の周囲の環境を認識するように構成される。車外環境認識部21は、撮像部22と、レーダ23と、認識処理部24とを有している。撮像部22は、イメージセンサを用いて構成され、例えば車両9の前方を所定のフレームレートで撮像するように構成される。撮像部22は、1つのイメージセンサを有していてもよいし、1組のイメージセンサを含むいわゆるステレオカメラを有していてもよい。レーダ23は、車両9から、車両9の前方の被写体までの距離を検出するように構成される。認識処理部24は、撮像部22の撮像画像、およびレーダ23の検出結果に基づいて、車両9の周囲の環境を認識する認識処理を行うように構成される。そして、認識処理部24は、認識した車外環境についての情報を診断部30に供給するようになっている。
【0016】
診断部30は、認識処理部24から供給された車外環境についての情報、および走行制御部15から供給されたドライバの運転操作についての情報に基づいて、車両9のドライバの健康状態を診断するように構成される。診断部30は、例えば、1または複数のプロセッサ、1または複数のメモリなどを用いて構成される。診断部30は、反応時間検出部31と、診断処理部32とを有している。
【0017】
反応時間検出部31は、車外環境認識部21により認識された認識対象に対するドライバの反応時間を検出するように構成される。具体的には、反応時間検出部31は、認識処理部24から供給された車外環境についての情報、および走行制御部15から供給されたドライバの運転操作についての情報に基づいて、車外環境認識部21により認識された認識対象に対するドライバの反応時間を検出するようになっている。
【0018】
診断処理部32は、反応時間検出部31が検出した反応時間に基づいて、車両9のドライバの健康状態を診断するように構成される。具体的には、診断処理部32は、反応時間としきい値とを比較し、その比較結果に基づいてドライバの健康状態を診断するようになっている。
【0019】
通知部25は、診断処理部32の処理結果に応じた情報を、ドライバや同乗者に情報を通知するように構成される。通知部25は、表示部26と、音声出力部27とを有している。表示部26は、診断処理部32の処理結果に応じた情報を表示するように構成される。例えば液晶表示パネルや有機EL(Electro Luminescence)表示パネルを用いて構成される。音声出力部27は、スピーカやアンプなどを含み、音声や、警告音などにより、診断処理部32の処理結果に応じた情報を通知するように構成される。表示部26および音声出力部27は、車両9のインスツルメントパネルに含まれる表示部および音声出力部であってもよいし、ナビゲーション装置に含まれる表示部および音声出力部であってもよいし、診断装置20専用の表示部および音声出力部であってもよい。
【0020】
通信部28は、診断処理部32の処理結果に応じた情報を、車両9の外部の装置に送信するように構成される。通信部28は、例えば、無線LAN(Local Area Network)を用いて通信を行うようにしてもよいし、LTE(Long Term Evolution)、5Gなどの携帯電話通信を用いて通信を行うようにしてもよい。通信部28は、例えば診断処理部32の処理結果に応じた情報を、医療機関のコンピュータや、ドライバの家族のコンピュータやスマートフォンなどに送信するようになっている。
【0021】
ここで、車外環境認識部21は、本開示における「認識部」の一具体例に対応する。診断部30は、本開示における「診断部」の一具体例に対応する。通知部25は、本開示における「通知部」の一具体例に対応する。通信部28は、本開示における「通信部」の一具体例に対応する。
【0022】
[動作および作用]
続いて、本実施の形態の診断装置20の動作および作用について説明する。
【0023】
(全体動作概要)
まず、図1を参照して、車両9の動作を説明する。運転操作部10は、ドライバによる運転操作を受け付ける。走行制御部15は、運転操作部10が受け付けたドライバの運転操作に基づいて、走行機構部16の動作を制御することにより、車両9の走行を制御する。走行機構部16は、走行制御部15からの指示に基づいて動作する。車両9は、この走行機構部16が動作することにより、運転操作部10が受け付けたドライバの運転操作に応じて走行する。
【0024】
診断装置20において、車外環境認識部21は、例えば車両9が走行している走行路や、車両9の前方を走行している先行車両など、車両9の周囲の環境を認識する。診断部30の反応時間検出部31は、車外環境認識部21により認識された認識対象に対するドライバの反応時間を検出する。診断処理部32は、反応時間検出部31が検出した反応時間に基づいて、車両9のドライバの健康状態を診断する。通知部25は、診断処理部32の処理結果に応じた情報を、ドライバや同乗者に情報を通知する。通信部28は、診断処理部32の処理結果に応じたデータを、車両9の外部の装置に送信する。
【0025】
(詳細動作)
以下に、診断装置20における反応時間の検出について、いくつか例を挙げて詳細に説明する。
【0026】
図2は、反応時間を検出する動作の一例を表すものである。車両9の走行路において、車両9の前方には、左に曲がるカーブ100がある。車両9の撮像部22は、車両9の前方を撮像し、レーダ23は、車両9から、車両9の前方の被写体までの距離を検出する。認識処理部24は、撮像部22の撮像画像およびレーダ23の検出結果に基づいて、このカーブ100を認識し、車両9の前方にカーブ100がある旨の情報を、車両9からカーブ100までの距離についての情報とともに、診断部30に供給する。診断部30の反応時間検出部31は、例えば、車両9が、カーブ100から所定の距離だけ手前の地点に到達したタイミングt1を基準タイミングとし、このタイミングt1から、ドライバがステアリングホイール11を操作し始めるタイミングまでの反応時間を検出する。
【0027】
カーブでは、ドライバはとっさの判断が必要である。例えば、ドライバが、カーブ100を早めに認識し、カーブ100に対して早めのタイミングt2でステアリングホイール11を操作し始めた場合には、車両9は、走行路における車線内を、余裕をもって走行することができる。一方、ドライバがカーブ100を認識するタイミングが遅れ、ドライバが、カーブ100に対して遅めのタイミングt3でステアリングホイール11を操作し始めた場合には、車両9は、例えば車線から車体の一部をはみ出させつつ走行し得る。
【0028】
反応時間検出部31は、この例では、基準タイミングであるタイミングt1から、ドライバがステアリングホイール11を操作し始めたタイミングt2,t3までの時間を、ドライバの反応時間として検出する。診断処理部32は、例えば、この反応時間と、所定のしきい値とを比較し、その比較結果に基づいてドライバの健康状態を診断する。例えば、ドライバの反応時間が所定のしきい値よりも長い場合には、診断処理部32は、ドライバの健康状態が悪い可能性があると判断する。
【0029】
なお、この例では、認識処理部24は、撮像部22の撮像画像に基づいて、車両9の前方のカーブ100を認識したが、これに限定されるものではない。例えば、車外環境認識部が、地図データ、およびGNSS(Global Navigation Satellite System)受信機により得られた車両位置データに基づいて車両9の位置を検出するナビゲーション装置を有する場合には、この地図データを用いてカーブ100を認識してもよい。この場合でも、反応時間検出部31は、ドライバの反応時間を検出することができ、診断処理部32は、この反応時間に基づいてドライバの健康状態を診断することができる。
【0030】
図3は、反応時間を検出する動作の他の一例を表すものであり、撮像部22の撮像画像PICの一例を示している。車両9の走行路において、車両9の前方に、先行車両8が走行している。車両9の撮像部22は、車両9の前方を撮像することによりこのような撮像画像PICを生成し、レーダ23は、車両9から、車両9の前方の被写体までの距離を検出する。認識処理部24は、この撮像画像PICおよびレーダ23の検出結果に基づいて、この先行車両8を認識し、車両9の前方に先行車両8が走行している旨の情報を、車両9から先行車両8までの距離についての情報とともに、診断部30に供給する。また、認識処理部24は、先行車両8のブレーキランプ8L,8Rが点灯しているか消灯しているかどうかも検出し、その検出結果についての情報も、診断部30に供給する。診断部30の反応時間検出部31は、例えば、車両9から先行車両8までの距離が所定の距離以内である場合において、先行車両8のブレーキランプ8L,8Rが点灯したときに、その点灯タイミングを基準タイミングとし、この点灯タイミングから、ドライバがブレーキペダル13を踏み始めるタイミングまでの反応時間を検出する。
【0031】
車両9と先行車両8との間の間距離が短い場合において、先行車両8が減速した場合には、ドライバはとっさの判断が必要である。例えば、ドライバが、先行車両8のブレーキランプ8L,8Rが点灯した直後にブレーキペダル13を踏み始めた場合には、車両9は、先行車両8との間の車間距離をある程度保つことができる。一方、ドライバが先行車両8のブレーキランプ8L,8Rの点灯を認識するタイミングが遅れ、ドライバが、遅めのタイミングでブレーキペダル13を踏み始めた場合には、車両9が先行車両8に接近しすぎることもあり得る。
【0032】
反応時間検出部31は、この例では、基準タイミングであるブレーキランプ8L,8Rの点灯タイミングから、ドライバがブレーキペダル13を踏み始めたタイミングまでの時間を、ドライバの反応時間として検出する。診断処理部32は、例えば、この反応時間と、所定のしきい値とを比較し、その比較結果に基づいてドライバの健康状態を診断する。例えば、ドライバの反応時間が所定のしきい値よりも長い場合には、診断処理部32は、ドライバの健康状態が悪い可能性があると判断する。
【0033】
この例では、反応時間検出部31は、車両9の前方のカーブに対するステアリング操作の反応時間(図2の例)や、先行車両の減速に対する制動操作の反応時間(図3の例)を検出したが、これに限定されるものではない。例えば、反応時間検出部31は、路地など、ドライバから視認できない場所から、人や自転車などが急に出てきた場合における反応時間を検出してもよい。反応時間検出部31は、ドライバのとっさの判断が必要される運転操作についての反応時間であれば、どのような反応時間を検出してもよい。
【0034】
このように、診断部30では、反応時間検出部31は、車外環境認識部21により認識された認識対象に対するドライバの反応時間を検出し、診断処理部32は、反応時間検出部31が検出した反応時間に基づいて、車両9のドライバの健康状態を診断する。すなわち、健康状態が悪い場合には、ドライバはとっさの判断ができない可能性がありえる。例えば、ドライバに軽い脳血管障害のような疾病がある場合には、ドライバはとっさの判断ができない可能性があり、反応時間が長くなる。このような疾病は、心拍数や血圧などの通常の生体情報に基づいて診断することは難しい場合もあり得るが、反応の遅れにより診断しやすいこともあり得る。よって、診断処理部32は、このような反応時間に基づいて、ドライバの健康状態を判断する。
【0035】
図4は、診断装置20の一動作例を表すものである。
【0036】
まず、診断部30は、認識処理部24から供給された車外環境についての情報に基づいて、反応時間検出のトリガを検出したかどうかを確認する(ステップS101)。具体的には、図2の例では、診断部30は、車両9の前方にカーブ100があり、車両9が、そのカーブ100から所定の距離だけ手前の地点に到達したかどうかを確認する。また、図3の例では、診断部30は、車両9の前方に先行車両8が走行しており、先行車両8のブレーキランプ8L,8Rが点灯したかどうかを確認する。反応時間検出のトリガを検出していない場合(ステップS101において“N”)には、診断部30は、反応時間検出のトリガを検出するまで、このステップS101を繰り返す。
【0037】
ステップS101において、反応時間検出のトリガを検出した場合(ステップS101において“Y”)には、診断部30の反応時間検出部31は、反応時間検出のトリガを検出したタイミングを、基準タイミングとして設定する(ステップS102)。
【0038】
次に、診断部30は、走行制御部15から供給されたドライバの運転操作についての情報に基づいて、反応時間検出のトリガに対応するドライバの運転操作を検出したかどうかを確認する(ステップS103)。具体的には、図2の例では、診断部30は、ドライバがステアリングホイール11を操作し始めたかどうかを確認する。また、図3の例では、診断部30は、ドライバがブレーキペダル13を踏み始めたかどうかを確認する。ドライバの操作を検出していない場合(ステップS103において“N”)には、診断部30は、ドライバの運転操作を検出するまでの、このステップS103を繰り返す。
【0039】
ステップS103において、ドライバの運転操作を検出した場合(ステップS103において“Y”)には、診断部30の反応時間検出部31は、反応時間を算出する。具体的には、反応時間検出部31は、ステップS102において設定された基準タイミングから、ステップS103において検出されたドライバの運転操作のタイミングまでの時間を、反応時間として算出する。
【0040】
次に、診断部30の診断処理部32は、ステップS104により算出された反応時間がしきい値よりも長いかどうかを確認する(ステップS105)。反応時間がしきい値よりも長くない場合(ステップS105において“N”)には、この処理は終了する。
【0041】
ステップS105において、反応時間がしきい値よりも長い場合(ステップS105において“Y”)には、診断処理部32は、ドライバの健康状態が悪い可能性があると判断し、通知部25は、ドライバの健康状態が悪い可能性がある旨を、ドライバや同乗者に通知する(ステップS106)。これにより、ドライバは、自分の健康状態を客観的に把握することができる。ドライバは、この通知に基づいて、例えば長時間の運転を避け、あるいは医療機関に行き診察を受ける判断をすることができる。
【0042】
そして、通信部28は、ドライバの健康状態が悪い可能性がある旨の情報を、外部の装置に送信する(ステップS107)。具体的には、通信部28は、ドライバの健康状態が悪い可能性がある旨の情報を、ドライバの家族のコンピュータやスマートフォンなどに送信する。これにより、ドライバの家族は、ドライバの健康状態を把握することができ、ドライバに、長時間の運転を避けるように促し、あるいは、医療機関に行き診察を受けるように促すことができる。また、通信部28は、例えば、ドライバの健康状態が悪い可能性がある旨の情報を、医療機関のコンピュータに送信する。これにより、例えば、医療機関は、ドライバの健康状態を把握することができ、ドライバに、長時間の運転を避けるように促し、あるいは受診を促すことができる。
【0043】
以上で、この処理は終了する。
【0044】
このように、診断装置20では、車両9の外部の環境を認識する車外環境認識部21と、車両9の走行についてのドライバの運転操作を受け付ける運転操作部10における運転操作タイミングに基づいて、車外環境認識部21により認識された認識対象に対するドライバの反応時間を検出し、反応時間に基づいてドライバの健康状態を診断する診断部30とを設けるようにした。これにより、例えば、心拍数や血圧などの通常の生体情報に基づいて診断することは難しい場合でも、ドライバの反応時間に基づいてドライバの健康状態を診断することができる。
【0045】
診断装置20では、ドライバに情報を通知する通知部25を設けるようにした。診断部30は、反応時間をしきい値と比較することにより健康状態を診断し、通知部25は、反応時間がしきい値よりも長い場合に、ドライバに診断部30の比較結果に応じた情報を通知するようにした。これにより、ドライバは、自分の健康状態を客観的に把握することができ、例えば長時間の運転を避け、あるいは医療機関に行き診察を受ける判断をすることができる。
【0046】
診断装置20では、外部装置との間で通信を行う通信部28を設けるようにした。診断部30は、反応時間をしきい値と比較することにより健康状態を診断し、通信部は、反応時間がしきい値よりも長い場合に、外部装置に対して診断部30の診断結果に応じた情報を送信するようにした。これにより、例えば、ドライバの家族や医療機関は、ドライバの健康状態を把握することができ、ドライバに、長時間の運転を避けるように促し、あるいはドライバに受診を促すことができる。
【0047】
[効果]
以上のように本実施の形態では、車両の外部の環境を認識する車外環境認識部と、車両の走行についてのドライバの運転操作を受け付ける運転操作部における運転操作タイミングに基づいて、車外環境認識部により認識された認識対象に対するドライバの反応時間を検出し、反応時間に基づいてドライバの健康状態を診断する診断部とを設けるようにした。これにより、ドライバの健康状態を診断することができる。
【0048】
本実施の形態では、ドライバに情報を通知する通知部を設けるようにした。診断部は、反応時間をしきい値と比較することにより健康状態を診断し、通知部は、反応時間がしきい値よりも長い場合に、ドライバに診断部の比較結果に応じた情報を通知するようにした。これにより、ドライバは、自分の健康状態を客観的に把握することができる。
【0049】
本実施の形態では、外部装置との間で通信を行う通信部を設けるようにした。診断部は、反応時間をしきい値と比較することにより健康状態を診断し、通信部は、反応時間がしきい値よりも長い場合に、外部装置に対して診断部30の診断結果に応じた情報を送信するようにした。これにより、例えば、ドライバの家族や医療機関は、ドライバの健康状態を把握することができる。
【0050】
[変形例1]
上記実施の形態では、診断部30は、所定のしきい値を用いてドライバの健康状態を診断したが、これに限定されるものではない。これに代えて、反応時間検出部31が検出したドライバの反応時間についての情報を蓄積し、蓄積された反応時間についての情報に基づいてしきい値を生成し、このしきい値を用いてドライバの健康状態を診断してもよい。以下に、いくつか例を挙げて本変形例について詳細に説明する。
【0051】
図5は、本変形例に係る診断装置20Aを備えた車両9の一構成例を表すものである。診断装置20Aは、診断部30Aを有している。診断部30Aは、反応時間検出部31と、反応時間蓄積部33Aと、診断処理部32Aとを有している。
【0052】
反応時間蓄積部33Aは、反応時間検出部31が検出した反応時間についての情報を蓄積するように構成される。反応時間蓄積部33Aは、例えば、不揮発性のメモリを用いて構成される。ここで、反応時間蓄積部33Aは、本開示における「メモリ」の一具体例に対応する。
【0053】
診断処理部32Aは、反応時間蓄積部33Aに蓄積された反応時間についての情報に基づいてしきい値を生成し、反応時間検出部31が検出した反応時間とこのしきい値を比較することにより、ドライバの健康状態を診断するように構成される。
【0054】
図6は、反応時間蓄積部33Aに蓄積された反応時間のヒストグラムを表すものである。診断処理部32Aは、このような反応時間の分布についての情報に基づいてしきい値を生成する。具体的には、診断処理部32Aは、例えば、反応時間の分布の平均値Tavgをしきい値としてもよいし、この平均値Tavgよりもやや大きい値をしきい値としてもよい。
【0055】
このように、診断装置20Aでは、診断部30Aは、ドライバの反応時間を蓄積するメモリを有し、蓄積された反応時間に基づいてしきい値を生成し、反応時間をしきい値と比較することによりドライバの健康状態を診断するようにした。これにより、そのドライバの過去の反応時間に基づいてしきい値を生成することができるので、例えば、検出された反応時間が、そのドライバの普段の反応時間と比べて長い場合に、ドライバの健康状態が悪い可能性があると判断することができる。その結果、診断装置20Aでは、健康状態の診断精度を高めることができる。
【0056】
図7は、本変形例に係る他の診断装置20Bを備えた車両9の一構成例を表すものである。診断装置20Bは、ドライバ識別部41Bと、診断部30Bとを有している。
【0057】
ドライバ識別部41Bは、撮像部42と、識別処理部43とを有している。撮像部42は、イメージセンサを用いて構成され、ドライバを撮像するように構成される。識別処理部43は、撮像部42の撮像結果に基づいて、車両9を運転するドライバを識別するように構成される。そして、識別処理部43は、ドライバの識別結果を診断部30Bに供給するようになっている。
【0058】
なお、この例では、ドライバ識別部41Bは、撮像部42の撮像画像に基づいてドライバを識別したが、これに限定されるものではない。これに代えて、例えば、ステアリングホイールなどに指紋センサを設け、その指紋センサの検出結果に基づいてドライバを識別してもよい。
【0059】
診断部30Bは、反応時間検出部31と、反応時間蓄積部33Bと、診断処理部32Bとを有している。
【0060】
反応時間蓄積部33Bは、反応時間検出部31が検出した反応時間についての情報を蓄積するように構成される。反応時間蓄積部33Bは、ドライバ識別部41Bの識別結果に基づいて、複数のドライバのそれぞれについて、反応時間についての情報を個別に蓄積するようになっている。反応時間蓄積部33Bは、例えば、不揮発性のメモリを用いて構成される。
【0061】
診断処理部32Bは、反応時間蓄積部33Bに蓄積された反応時間についての情報のうち、ドライバ識別部41Bが識別したドライバに係る反応時間についての情報に基づいてしきい値を生成し、反応時間検出部31が検出した反応時間とこのしきい値を比較することにより、ドライバの健康状態を診断するように構成される。
【0062】
このように、診断装置20Bでは、ドライバを識別するドライバ識別部41Bを設けるようにした。そして、診断部30Bは、ドライバ識別部41Bの識別結果に基づいて複数のドライバのそれぞれの反応時間を個別に蓄積するメモリを有し、蓄積された反応時間のうちの、ドライバ識別部41Bが識別したドライバについての反応時間に基づいてしきい値を生成し、反応時間をしきい値と比較することによりドライバの健康状態を診断するようにした。これにより、複数のドライバが車両9を運転し得る場合でも、その個人差の影響を抑えることができるので、健康状態の診断精度を高めることができる。
【0063】
また、例えば、図8に示す診断装置20Cのように、より簡易な方法によりドライバを識別してもよい。この診断装置20Cを備えた車両9は、シート位置調整部17Cを有する。シート位置調整部17Cは、ドライバの座席のシート位置を前後方向に調整するように構成される。シート位置調整部17Cは、メモリを有し、例えば、車両9を運転し得る複数のドライバのシート位置をそれぞれ記憶している。すなわち、一般に、シート位置は、ドライバの身体的特徴や好みにより調整される。よって、シート位置調整部17Cは、予め、車両9を運転し得る複数のドライバのシート位置の設定を記憶し、ドライバによる、シート位置の選択操作に基づいて、ドライバの座席を、記憶された位置に移動させる。具体的には、ドライバが第1の設定を選択した場合には、シート位置調整部17Cは、ドライバの座席を、第1の設定が示すシート位置に移動させ、ドライバが第2の設定を選択した場合には、シート位置調整部17Cは、ドライバの座席を、第2の設定が示すシート位置に移動させる。これにより、ドライバは、シート位置を自分の好みの位置にすぐに調節することができる。また、シート位置調整部17Cは、ドライバによる、シート位置の選択操作についての情報を、診断装置20Cに供給するようになっている。
【0064】
診断装置20Cは、ドライバ識別部41Cと、診断部30Bとを有している。ドライバ識別部41Cは、シート位置調整部17Cから供給されたドライバの選択操作についての情報に基づいて、ドライバを識別するように構成される。すなわち、シート位置は、ドライバの身体的特徴や好みにより調整されるので、ドライバにより異なることが多い。よって、ドライバ識別部41Cは、シート位置の選択操作に基づいて、ドライバを間接的に識別する。そして、識別処理部43は、ドライバの識別結果を診断部30Bに供給する。
【0065】
なお、この例では、ドライバ識別部41Cは、ドライバによるシート位置の選択操作に基づいてドライバを間接的に識別したが、これに限定されるものではない。例えば、車両9の鍵が、電波により車両9と通信可能ないわゆるスマートキーである場合には、ドライバ識別部41Cは、そのスマートキーの識別子に基づいて、ドライバを間接的に識別することができる。
【0066】
これにより、診断装置20Cでは、複数のドライバが車両9を運転し得る場合でも、その個人差の影響を抑えることができるので、健康状態の診断精度を高めることができる。
【0067】
[変形例2]
上記実施の形態では、ドライバの反応時間に基づいてドライバの健康状態を診断したが、これに限定されるものではない。これに代えて、例えば、図9に示す診断装置20Dのように、ドライバの反応時間に加え、さらにドライバの生体情報にも基づいて、ドライバの健康状態を診断してもよい。この診断装置20Dは、生体情報検出部51Dと、診断部30Dとを有している。
【0068】
生体情報検出部51Dは、ドライバの生体情報を検出するように構成される。生体情報検出部51Dは、心拍数センサ52と、血圧センサ53と、呼吸数センサ54とを有している。心拍数センサ52は、ドライバの例えば1分間における心拍数を検出するように構成される。血圧センサ53は、ドライバの血圧を検出するように構成される。呼吸数センサ54は、ドライバの例えば1分間における呼吸数を検出するように構成される。なお、これに限定されるものではなく、生体情報検出部51Dは、例えば体温や脳波など、ドライバの様々な生体情報を検出してもよい。ここで、生体情報検出部51Dは、本開示における「検出部」の一具体例に対応する。
【0069】
診断部30Dは、診断処理部32Dを有している。診断処理部32Dは、反応時間検出部31が検出した反応時間、および生体情報検出部51Dが検出した生体情報に基づいて、車両9のドライバの健康状態を診断するように構成される。具体的には、診断処理部32は、ドライバの反応時間がしきい値より大きく、かつ、例えば心拍数、血圧、呼吸数などの生体情報のうちの少なくともいずれか1つの値が所定の範囲の範囲外である場合に、ドライバの健康状態が悪い可能性があると判断するようになっている。
【0070】
これにより、診断装置20Dでは、反応時間検出部31が検出した反応時間、および生体情報検出部51Dが検出した生体情報に基づいて、ドライバの健康状態が診断されるので、診断精度を高めることができる。
【0071】
[変形例3]
上記実施の形態では、診断処理部32は、ドライバの反応時間がしきい値より長い場合に、ドライバの健康状態が悪い可能性があると判断したが、これに限定されるものではない。これに代えて、例えば、図10に示す診断装置20Eのように、ドライバの反応時間がしきい値より大きく、かつドライバの眠気レベルが低い場合に、ドライバの健康状態が悪い可能性があると判断してもよい。この診断装置20Eは、生体情報検出部51Eと、診断部30Eとを有している。
【0072】
生体情報検出部51Eは、ドライバの生体情報を検出するように構成される。生体情報検出部51Eは、心拍数センサ52と、血圧センサ53と、呼吸数センサ54とを有している。なお、これに限定されるものではなく、生体情報検出部51Eは、例えば体温や脳波など、ドライバの様々な生体情報を検出してもよい。ここで、生体情報検出部51Eは、本開示における「検出部」の一具体例に対応する。
【0073】
診断部30Eは、眠気検出部34Eと、診断処理部32Eとを有している。眠気検出部34Eは、生体情報検出部51Eが検出した生体情報に基づいて、ドライバの眠気を検出するように構成される。具体的には、眠気検出部34Eは、生体情報検出部51Eが検出した生体情報に基づいて、眠気があるほど高い値を示す眠気レベルを推定するようになっている。
【0074】
診断処理部32Eは、反応時間検出部31が検出した反応時間、および眠気検出部34Eが推定した眠気レベルに基づいて、車両9のドライバの健康状態を診断するように構成される。具体的には、診断処理部32Eは、ドライバの反応時間がしきい値より大きく、かつ、眠気レベルが所定のレベルよりも低い場合に、ドライバの健康状態が悪い可能性があると判断するようになっている。
【0075】
これにより、診断装置20Eでは、ドライバの反応時間がしきい値より長い場合であっても、眠気レベルが所定のレベル以上である場合には、眠気が原因であることにより反応時間が大きくなっていると判断する。この場合には、通知部25は、ドライバに対して、健康状態が悪い可能性がある旨を通知せず、通信部28は、ドライバの健康状態が悪い可能性がある旨の情報を、車両9の外部の装置に送信しない。通知部25は、ドライバに対して、眠気レベルが高い旨を通知してもよい。
【0076】
また、診断装置20Eでは、ドライバの反応時間がしきい値より大きく、眠気レベルが所定のレベルより低い場合には、ドライバの健康状態が原因であることにより反応時間が大きくなっていると判断する。この場合には、通知部25は、ドライバに対して、健康状態が悪い可能性がある旨を通知し、通信部28は、ドライバの健康状態が悪い可能性がある旨の情報を、車両9の外部の装置に送信する。
【0077】
これにより、診断装置20Eでは、生体情報検出部51Eが検出した生体情報に基づいてドライバが眠気を感じているかどうかを推定し、反応時間がしきい値よりも長く、かつドライバが眠気を感じていない場合に、健康状態が悪いと診断するようにした。これにより、反応時間が長い場合に、その原因が眠気であるか、健康状態であるかを区別することができるので、診断精度を高めることができる。
【0078】
[変形例4]
上記実施の形態では、通知部25および通信部28の両方を設けたが、これに限定されるものではなく。これに代えて、通知部25および通信部28のうちの一方のみを設けてもよい。
【0079】
[変形例5]
上記実施の形態では、図4に示したように、診断処理部32は、ステップS105において、反応時間がしきい値よりも長いかどうかを確認し、反応時間がしきい値よりも長い場合に、ドライバの健康状態が悪い可能性があると判断したが、これに限定されるものではない。これに代えて、例えば図11に示すように、診断処理部32は、反応時間がしきい値よりも長いことが所定回数繰り返された場合に、ドライバの健康状態が悪い可能性があると判断してもよい。
【0080】
この例では、診断部30の診断処理部32は、ステップS104により算出された反応時間がしきい値よりも長いかどうかを確認する(ステップS105)。ステップS105において、反応時間がしきい値よりも長い場合(ステップS105において“Y”)には、診断処理部32は、カウント値CNTをインクリメントする(ステップS115)。そして、診断処理部32は、このカウント値CNTが所定値CNTth以上であるかどうかを確認する(ステップS116)。カウント値CNTが所定値CNTthより小さい場合(ステップS116において“N”)には、この処理は終了する。カウント値CNTが所定値CNTth以上である場合(ステップS116において“Y”)には、通知部25は、ドライバの健康状態が悪い可能性がある旨を、ドライバや同乗者に通知し(ステップS106)、通信部28は、ドライバの健康状態が悪い可能性がある旨の情報を、外部の装置に送信する(ステップS107)。なお、カウント値CNTは、例えば、車両9を起動する度にリセットされる。
【0081】
これにより、診断装置20では、反応時間がしきい値よりも長いことが所定回数繰り返された場合に、通知部25や通信部28が動作することができる。よって、例えば、ドライバがよそ見をして、1回だけ、ドライバの反応時間がしきい値よりも長かった場合には、通知部25や通信部28は動作しないので、通知や通信が過剰に行われることを抑制することができ、利便性を高めることができる。
【0082】
この例では、診断処理部32は、反応時間がしきい値よりも長いことが所定回数繰り返された場合に、ドライバの健康状態が悪い可能性があると判断したが、これに限定されるものではなく、これに代えて、診断処理部32は、例えば、反応時間がしきい値よりも長いことが連続して所定回数繰り返された場合に、ドライバの健康状態が悪い可能性があると判断してもよい。すなわち、診断部30は、ステップS101において反応時間検出のトリガを検出する度に、反応時間がしきい値よりも長いかどうかを確認するが、反応時間がしきい値よりも長いことが連続して所定回数繰り返された場合に、通知部25や通信部28が動作するようにしてもよい。例えば、ドライバの健康状態が悪い場合には、反応時間がしきい値よりも長いことが連続して繰り返される可能性が高い。よって、反応時間がしきい値よりも長いことが連続して所定回数繰り返された場合に、ドライバの健康状態が悪い可能性があると判断することにより、ドライバの健康状態の診断精度を高めることができる。
【0083】
[その他の変形例]
また、これらの変形例のうちの2以上を組み合わせてもよい
【0084】
以上、実施の形態および変形例を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態等には限定されず、種々の変形が可能である。
【0085】
例えば、上記実施の形態では、反応時間としきい値とを比較することによりドライバの健康状態を診断したが、これに限定されるものではない。これに代えて、例えば、機械学習の技術を用いて、反応時間に基づいてドライバの健康状態を診断してもよい。具体的には、診断処理部は、例えば、反応時間を入力とし、ドライバの健康状態を出力する学習済みモデルを用いて、ドライバの健康状態を診断することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11