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特許7565439TRPA1阻害剤としてのテトラゾール誘導体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】TRPA1阻害剤としてのテトラゾール誘導体
(51)【国際特許分類】
   C07D 491/048 20060101AFI20241003BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20241003BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20241003BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C07D491/048
A61P11/00
A61P29/00
A61K31/519
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023522545
(86)(22)【出願日】2021-10-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-26
(86)【国際出願番号】 EP2021078295
(87)【国際公開番号】W WO2022079092
(87)【国際公開日】2022-04-21
【審査請求日】2023-04-12
(31)【優先権主張番号】20201708.3
(32)【優先日】2020-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503385923
【氏名又は名称】ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】フレック マルティン トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ビンダー フロリアン パウル クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルヴァチャー イェンス
【審査官】高森 ひとみ
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/060488(WO,A1)
【文献】特表2012-521406(JP,A)
【文献】特表2020-527175(JP,A)
【文献】国際公開第96/040256(WO,A1)
【文献】SCHENKEL, L. B. et al.,Optimization of a Novel Quinazolinone-Based Series of Transient Receptor Potential A1 (TRPA1) Antagonists Demonstrating Potent in Vivo Activity,Journal of Medicinal Chemistry,2016年,Vol.59, No.6,pp.2794-2809,DOI: 10.1021/acs.jmedchem.6b00039
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61P
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)に従う化合物。
【化1】
(I)
(式中、
Aは、

からなる群から選択され、アスタリスクは式(I)へ結合する位置を示し、
1は、H、H3C又はH2N(O)Cであり、
2は、H3C又はH2N(O)Cであり、
但し、
1がH2N(O)Cである場合、R2はH3Cであり、
2がH2N(O)Cである場合、R1はH又はH3Cである)
【請求項2】
1がH3Cであり、R2がH2N(O)Cである、請求項1記載の式(I)の化合物。
【請求項3】
1がH2N(O)Cであり、R2がH3Cである、請求項1記載の式(I)の化合物。
【請求項4】
【化4】
からなる群から選択される、請求項1記載の式(I)の化合物。
【請求項5】
【化5】



からなる群から選択される、請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項に記載の化合物の塩
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物の薬学的に許容される塩。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載の式(I)の少なくとも1つの化合物又は薬学的に許容されるその塩と、1種又は複数の薬学的に許容される賦形剤とを含む、医薬組成物。
【請求項9】
請求項1~のいずれか1項に記載の式(I)の少なくとも1つの化合物、又は薬学的に許容されるその塩を含む、医薬組成物。
【請求項10】
炎症性気道疾患又は線維性疾患又は咳の処置又は予防のための、請求項又はに記載の医薬組成物。
【請求項11】
特発性肺疾患(IPF)又は咳の処置又は予防のための、請求項又はに記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一過性受容体電位アンキリン1(TRPA1)の阻害剤であり、したがって、TRPA1の阻害によって処置可能な疾患の処置に有用な、ある特定のテトラゾール誘導体を提供する。それを含有する医薬組成物、及び前記化合物を調製するための方法も提供される。
【背景技術】
【0002】
一過性受容体電位チャネル(TRPチャネル)は、多数の哺乳動物細胞型の原形質膜に主に位置する電圧依存性イオンチャネルの群である。群:TRPA、TRPC、TRPM、TRPML、TRPN、TRPP及びTRPVに分類されるおよそ30種の構造的に関係しているTRPチャネルがある。一過性受容体電位アンキリン1としても公知である一過性受容体電位カチオンチャネル、サブファミリーA、メンバー1(TRPA1)は、TRPA遺伝子サブファミリーの唯一のメンバーである。構造的に、TRPAチャネルは、アンキリン指定を表す「A」を生じさせる複数のN末端アンキリン反復(ヒトTRPA1のN末端において約14)によって特徴付けられる(Montell, 2005)。
【0003】
TRPA1は、皮膚及び肺の両方に役立つ後根及び節状神経節における、並びに小腸、結腸、膵臓、骨格筋、心臓、脳、膀胱及びリンパ球における(https://www.proteinatlas.org/)、並びにヒト肺線維芽細胞における感覚ニューロンの原形質膜において、高度に発現される。
【0004】
TRPA1は、疼痛、寒冷及び掻痒等の体性感覚モダリティを生じさせる環境刺激物のためのセンサーとして最も公知である。TRPA1は、若干数の反応性求電子刺激(例えば、アリルイソチオシアネート、活性酸素種)及び非反応性化合物(例えばイシリン)によって活性化され、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、特発性肺線維症(IPF)に関連する咳若しくはウイルス感染後の咳に、又は慢性特発性咳及び感受性患者における咳に関与する(Song and Chang, 2015; Grace and Belvisi, 2011)。TRPA1阻害剤は、TGF-βの咳誘発性上昇を示す研究に基づき、咳と肺傷害との間の関連性を理由として咳が高度に蔓延しているIPFの処置において有用である(Xie et al., 2009; Froese et al., 2016; Tschumperlin et al., 2003; Yamamoto et al., 2002; Ahamed et al., 2008)。TRPA1アンタゴニストは、タバコ煙抽出物(CSE)酸化ストレス、炎症メディエーター放出及び下方調節された抗酸化物質遺伝子発現等の咳トリガーによってトリガーされるカルシウムシグナル伝達を阻害する(Lin et al., 2015; Wang et al., 2019)。TRPA1アンタゴニストは、アトピー性皮膚炎(Oh et al., 2013; Wilson et al., 2013)、接触皮膚炎(Liu et al., 2013)、乾癬関連掻痒(Wilson et al., 2013)及びIL-31依存性掻痒(Cevikbas et al., 2014)の研究において有効である。ヒトTRPA1機能獲得型は、家族性エピソード性疼痛症候群に関連するとされてきた(Kremeyer et al., 2010)。TRPA1アンタゴニストは、片頭痛関連異痛症の行動モデルにおいて有効であった(Edelmayer et al., 2012)。TRPA1は、健康な歯の神経を支配している三叉神経節におけるTRPA1発現と比較した場合、負傷した歯の神経を支配している三叉神経節において選択的に増大する(Haas et al., 2011)。術後疼痛の軽減のためのTRPA1阻害剤に論理的根拠を提供しているイソフルラン(Matta et al., 2008)を含む数種の麻酔薬がTRPA1アゴニストであることが公知である。TRPA1ノックアウトマウス及びTRPA1アンタゴニストで処置した野生型マウスは、抗不安及び抗うつ様表現型を示した(de Moura et al., 2014)。TRPA1阻害剤は、AMPKとTRPA1との間の逆調節の機構的連結を示す研究に基づき、糖尿病性ニューロパチーの処置において利益を有することが期待される(Hiyama et al., 2018; Koivisto and Pertovaara, 2013; Wang et al., 2018)。TRPA1ノックアウトマウスは、野生型マウスと比較して小さい心筋梗塞サイズを呈する(Conklin et al., 2019)。TRPA1ノックアウト及び薬理学的介入は、マウスにおいてTNBS誘発性大腸炎を阻害した(Engel et al., 2011)。マウス脳虚血モデルにおいて、TRPA1ノックアウト及びTRPA1アンタゴニストは、ミエリン損傷を低減させる(Hamilton et al., 2016)。尿酸結晶及び関節の炎症は、痛風の尿酸一ナトリウムマウスモデルにおいてTRPA1ノックアウトマウスで低減される(Moilanen et al., 2015)。ラットにおけるTRPA1欠失は、急性痛風フレアのラットモデルにおいて関節の炎症及び痛覚過敏を寛解させた(Trevisan et al., 2014)。TRPA1の活性化は、変形性関節症の軟骨細胞において炎症応答を誘起する(Nummenmaa et al., 2016)。TRPA1阻害及び遺伝子欠失は、変形性関節症のマウス軟骨細胞及びネズミ軟骨において炎症メディエーターを低減させる(Nummenmaa et al., 2016)。最後に、TRPA1ノックアウトマウスは、MIA惹起性膝腫脹モデルにおいて変形性関節症の四肢への体重負荷における改善を呈した(Horvath et al., 2016)。TRPA1は、ラット(Du et al., 2007)の及び膀胱出口閉塞患者(Du et al., 2008)の膀胱上皮において差次的に発現される。TRPA1受容体変調は、脊髄損傷のラットモデルにおいて膀胱過活動を減衰させ(Andrade et al., 2011)、TRPA1アンタゴニストのくも膜下腔内投与は、排尿反射亢進を持つラットにおいてシクロホスファミド誘発性膀胱炎を減衰させる(Chen et al., 2016)。
【発明の概要】
【0005】
したがって、強力なTRPA1阻害剤を提供することが望ましい。
種々の構造クラスのTRPA1阻害剤が、S. Skerratt, Progress in Medicinal Chemistry, 2017, Volume 56, 81-115において、D. Preti, G. Saponaro, A. Szallasi, Pharm. Pat. Anal. (2015) 4 (2), 75-94において、及びH. Chen, Transient receptor potential ankyrin 1 (TRPA1) antagonists: a patent review (2015-2019), Expert Opin Ther Pat., 2020において総括されている。
国際公開第2017/060488号は、一般化された構造式
【0006】
【化1】
を有する、TRPA1のアンタゴニストである化合物を開示している。
【0007】
その中にテトラゾリル環を担持する実施例28及び29のTRPA1活性は開示されていない。
L. Schenkel, et al., J. Med. Chem. 2016, 59, 2794-2809は、一般化された構造式
【0008】
【化2】
の化合物を含むキナゾリノンベースTRPA1アンタゴニストを開示し、そのうちの化合物31(式中、RはOHである)は、FLIPRアッセイにおいてIC50 58nMのアンタゴニスト性TRPA1活性を有し、ヒト肝ミクロソームにおいて14μL/分/kg未満の固有クリアランスを有するとして開示される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、一過性受容体電位アンキリン1(TRPA1)の阻害剤であり、TRPA1の阻害によって処置可能な状態及び/又は疾患の処置のための医薬としての使用を可能にする適切な薬理学的及び薬物動態特性を保有する、新規テトラゾール誘導体を開示するものである。
本発明の化合物は、増強された効力、高い代謝及び/又は化学的安定性、高い選択性、安全性及び忍容性、増強された溶解度、増強された透過性、望ましい血漿タンパク質結合、増強されたバイオアベイラビリティ、好適な薬物動態プロファイル、並びに安定な塩を形成する可能性等のいくつかの利点を提供し得る。
【0010】
本発明の化合物
本発明は、TRPA1の驚くほど強力な阻害剤であり(アッセイA)、
- ヒト肝ミクロソームにおける改善された安定性(アッセイB)
- ヒト肝細胞における改善された安定性(アッセイC)
によってさらに特徴付けられる、新規テトラゾール誘導体を提供する。本発明の化合物は、それらのフロ[2,3-d]ピリダジノイルコア及び第二級脂肪族アルコールに隣接する置換基が、国際公開第2017/060488号の実施例28及び29とは構造的に異なる。本発明の化合物は、加えて、テトラゾリル環を担持するという点において、L. Schenkel, et al., J. Med. Chem. 2016, 59, 2794-2809の実施例31とは構造的に異なる。これらの構造的差異は、予想外にも、(i)TRPA1の阻害、(ii)ヒト肝ミクロソームにおける安定性、及び(iii)ヒト肝細胞における安定性の好都合な組合せにつながる。
故に、本発明の化合物は、以下のパラメーター:
- TRPA1の阻害剤としての効力
- ヒト肝ミクロソームにおける安定性
- ヒト肝細胞における安定性
の組合せの観点から、先行技術で開示されているものよりも優れている。
【0011】
ヒト肝ミクロソームにおける安定性は、好都合な薬物動態特性を持つ薬物を最初のスクリーニングステップとして選択及び/又は設計する文脈における生体内変換に対する化合物の感受性を指す。多くの薬物のための主要な代謝部位は肝臓である。ヒト肝ミクロソームはシトクロムP450(CYP)を含有し、故に、第I相薬物代謝をインビトロで研究するためのモデルシステムを代表する。ヒト肝ミクロソームにおける増強された安定性は、バイオアベイラビリティの増大及び十分な半減期を含むいくつかの利点に関連し、患者のより低頻度の投薬を可能にすることができる。故に、ヒト肝ミクロソームにおける増強された安定性は、薬物に使用される化合物にとって好都合な特徴である。したがって、本発明の化合物は、TRPA1を阻害することができるのに加えて、好都合なインビボクリアランス及び故にヒトにおける所望の作用持続時間を有するものと期待される。
【0012】
ヒト肝細胞における安定性は、好都合な薬物動態特性を持つ薬物を選択及び/又は設計する文脈における生体内変換に対する化合物の感受性を指す。多くの薬物に関する主要な代謝部位は肝臓である。ヒト肝細胞はシトクロムP450(CYP)及び他の薬物代謝酵素を含有し、故に、薬物代謝をインビトロで研究するためのモデルシステムを代表する(重要なことに、肝ミクロソームアッセイとは対照的に、肝細胞アッセイは、第II相生体内変換及び肝臓特異的輸送体媒介プロセスも網羅し、したがって、薬物代謝研究のためのより完全なシステムを代表する)。ヒト肝細胞における増強された安定性は、増大したバイオアベイラビリティ及び十分な半減期を含むいくつかの利点に関連し、患者のより低頻度の投薬を可能にすることができる。故に、ヒト肝細胞における増強された安定性は、薬物に使用される化合物にとって好都合な特徴である。
本発明は、式(I)に従う新規化合物
【0013】
【化3】
(I)
(式中、
Aは、非置換であるか又は-CN、ハロゲン、C1-4-アルキル、O-C1-4-アルキル、C1-4-フルオロアルキル、O-C1-4-フルオロアルキル、C3-4-シクロアルキル、O-C3-4-シクロアルキル、C3-4-シクロフルオロアルキル及びO-C3-4-シクロフルオロアルキルからなる基R3の1つ若しくは2つのメンバーで置換されている、フェニル、チオフェニル、ベンゾチオフェニル及びベンゾフラニルからなる群から選択され、
1は、H、H3C又はH2N(O)Cであり、
2は、H3C又はH2N(O)Cであり、
但し、
1がH2N(O)Cである場合、R2はH3Cであり、
2がH2N(O)Cである場合、R1はH又はH3Cである)
を提供する。
本発明の別の実施形態は、
Aが、非置換であるか又は基R3の1つ若しくは2つのメンバーで置換されている、
【0014】
【化4】
からなる群から選択され、
置換基R1及びR2が、先行する実施形態のいずれかでのように定義される、
式(I)の化合物に関する。
【0015】
本発明の別の実施形態は、R3が、Br、Cl、F及びH3Cからなる群から選択され、置換基A、R1及びR2が、先行する実施形態のいずれかのように定義される、式(I)の化合物に関する。
本発明の別の実施形態は、
Aが、
【0016】
【化5-1】
【化5-2】
からなる群から選択され、
置換基R1及びR2が、先行する実施形態のいずれかでのように定義される、
式(I)の化合物に関する。
【0017】
本発明の別の実施形態は、
1がH3Cであり、R2がH2N(O)Cであり、
置換基A及びR3が、先行する実施形態のいずれかでのように定義される、
式(I)の化合物に関する。
【0018】
本発明の別の実施形態は、
1がH2N(O)Cであり、R2がH3Cであり、
置換基A及びR3が、先行する実施形態のいずれかでのように定義される、
式(I)の化合物に関する。
好ましいのは、
【0019】
【化6】
からなる群から選択され、
置換基Aが、先行する実施形態のいずれかでのように定義される、
式(I)の化合物である。
特に好ましいのは、
【0020】
【化7-1】
【化7-2】
【化7-3】
からなる群から選択される式(I)に従う化合物である。
【0021】
使用される用語及び定義
本明細書において具体的に定義されない用語は、本開示及び文脈を踏まえて当業者によって与えられるであろう意味を与えられるべきである。しかしながら、本明細書において使用される場合、それに反する明示がない限り、以下の用語は、指示されている意味を有し、以下の既約を順守する。
【0022】
以下で定義される基、ラジカル又は部分において、炭素原子の数は、多くの場合、基に先行して指定され、例えば、C1-6-アルキルは、1~6個の炭素原子を有するアルキル基又はラジカルを意味する。概して、HO、H2N、(O)S、(O)2S、NC(シアノ)、HOOC、F3C等のような基において、当業者は、基自体の自由原子価から、分子とのラジカル結合点を見ることができる。2つ以上のサブ基を含む複合基について、最後に挙げられているサブ基はラジカル結合点であり、例えば、置換基「アリール-C1-3-アルキル」は、C1-3-アルキル基と結合しているアリール基を意味し、後者はコアと又は置換基が結合している基と結合している。
【0023】
本発明の化合物が化学名の形態で及び式として描写される場合には、何らかの矛盾がある場合、式を優先するものとする。アスタリスクは、サブ式において、定義されている通りのコア分子と接続されている結合を指示するために使用され得る。
置換基の原子の記数は、コアに又は置換基が結合している基に最も近い原子から始める。
例えば、用語「3-カルボキシプロピル基」は、以下の置換基:
【0024】
【化8】
を表し、式中、カルボキシ基は、プロピル基の第3の炭素原子に結合している。用語「1-メチルプロピル-」、「2,2-ジメチルプロピル-」又は「シクロプロピルメチル-」基は、以下の基:
【0025】
【化9】
を表す。アスタリスクは、サブ式において、定義されている通りのコア分子と接続されている結合を指示するために使用され得る。
用語「C1-n-アルキル」(式中、nは、2、3、4又は5から選択される整数である)は、単独で又は別のラジカルと組み合わせてのいずれかで、1~n個のC原子を持つ非環式、飽和、分枝状又は直鎖状炭化水素ラジカルを表示する。例えば、C1-5-アルキルという用語は、ラジカルH3C-、H3C-CH2-、H3C-CH2-CH2-、H3C-CH(CH3)-、H3C-CH2-CH2-CH2-、H3C-CH2-CH(CH3)-、H3C-CH(CH3)-CH2-、H3C-C(CH32-、H3C-CH2-CH2-CH2-CH2-、H3C-CH2-CH2-CH(CH3)-、H3C-CH2-CH(CH3)-CH2-、H3C-CH(CH3)-CH2-CH2-、H3C-CH2-C(CH32-、H3C-C(CH32-CH2-、H3C-CH(CH3)-CH(CH3)-及びH3C-CH2-CH(CH2CH3)-を内包する。
「アルキル」、「アルキレン」又は「シクロアルキル」基に付加される用語「フルオロ」(飽和又は不飽和)は、1個又は複数の水素原子がフッ素原子によって置きかえられている、そのようなアルキル又はシクロアルキル基を意味する。例は、H2FC-、HF2C-及びF3C-を含むがこれらに限定されない。
フェニルという用語は、以下の環
【0026】
【化10】
のラジカルを指す。
チオフェニルという用語は、以下の環
【0027】
【化11】
のラジカルを指す。
ベンゾチオフェニルという用語は、以下の環
【0028】
【化12】
のラジカルを指す。
ベンゾフラニルという用語は、以下の環
【0029】
【化13】
のラジカルを指す。
フロ[2,3-d]ピリダジノイルという用語は、以下の環
【0030】
【化14】
のラジカルを指す。
テトラゾールという用語は、以下の環
【0031】
【化15】
のラジカルを指す。
用語「置換されている」は、本明細書において使用される場合、指定された原子上のいずれか1個又は複数の水素が指示されている群からの選択肢で置きかえられており、但し、指定された原子の通常の原子価を超えず、置換が安定化合物をもたらすことを意味する。
【0032】
具体的に指示がない限り、本明細書及び添付の請求項の全体にわたって、所与の化学式又は名称は、互変異性体並びにすべての立体、光学及び幾何異性体(例えば、鏡像異性体、ジアステレオマー、E/Z異性体等)及びそれらのラセミ体、並びに別個の鏡像異性体の異なる割合での混合物、ジアステレオマーの混合物、又はそのような異性体及び鏡像異性体が存在する場合の前述の形態のいずれかの混合物、並びに、薬学的に許容されるその塩を含む塩、及び、例えば遊離化合物の溶媒和物又は化合物の塩の溶媒和物を含む水和物等のそれらの溶媒和物を包含するものとする。
概して、実質的に純粋な立体異性体は、当業者に公知の合成原理に従って、例えば対応する混合物の分離によって、立体化学的に純粋な出発材料を使用することによって、及び/又は立体選択的合成によって取得され得る。ラセミ形態の分割によって若しくは例えば光学活性出発材料から出発する合成によって、及び/又はキラル試薬を使用することによって等、光学活性形態をどのようにして調製するかは、当技術分野において公知である。
本発明の鏡像異性的に純粋な化合物又は中間体は、不斉合成を介して、例えば、公知の方法によって(例えばクロマトグラフ分離又は結晶化によって)分離され得る適切なジアステレオマー化合物若しくは中間体の調製及びその後の分離によって、並びに/又はキラル出発材料、キラル触媒若しくはキラル補助基等のキラル試薬を使用することによって、調製され得る。
さらに、キラル固定相における対応するラセミ混合物のクロマトグラフ分離によって;又は適切な分割剤を使用するラセミ混合物の分割によって、例えば、光学活性酸若しくは塩基によるラセミ化合物のジアステレオマー塩形成、その後の塩の分割及び塩からの所望の化合物の放出を利用して;又は、光学活性キラル補助試薬による対応するラセミ化合物の誘導体化、その後のジアステレオマー分離及びキラル補助基の除去によって;又は、ラセミ体の速度論的分割によって(例えば酵素的分割によって);好適な条件下での鏡像体結晶の集合体からの鏡像異性選択的結晶化によって;又は、光学活性キラル補助基の存在下での好適な溶媒からの(分別)結晶化によって等、対応するラセミ混合物から鏡像異性的に純粋な化合物をどのようにして調製するかは、当業者には公知である。
【0033】
語句「薬学的に許容される」は、本明細書において、妥当な医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー応答又は他の問題も合併症もなく使用するために好適な、合理的なベネフィット/リスク比に見合った、それらの化合物、材料、組成物及び/又は剤形を指すために用いられる。
本明細書において使用される場合、「薬学的に許容される塩」は、親化合物が酸又は塩基との塩又は錯体を形成する、開示化合物の誘導体を指す。
塩基性部分を含有する親化合物と薬学的に許容される塩を形成する酸の例は、鉱物、又はベンゼンスルホン酸、安息香酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、ゲンチシン酸、臭化水素酸、塩酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、4-メチル-ベンゼンスルホン酸、リン酸、サリチル酸、コハク酸、硫酸及び酒石酸等の有機酸を含む。
酸性部分を含有する親化合物と薬学的に許容される塩を形成するカチオン及び塩基の例は、Na+、K+、Ca2+、Mg2+、NH4 +、L-アルギニン、2,2’-イミノビスエタノール、L-リジン、N-メチル-D-グルカミン又はトリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタンを含む。本発明の薬学的に許容される塩は、塩基性又は酸性部分を含有する親化合物から、従来の化学的方法によって合成され得る。概して、そのような塩は、これらの化合物の遊離酸又は塩基形態を、十分な量の適切な塩基又は酸と、水中又はエーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール若しくはアセトニトリル若しくはそれらの混合物のような有機希釈剤中で反応させることによって、調製され得る。
例えば本発明の化合物を精製する又は単離するために有用である上記で言及したもの以外の酸の塩(例えばトリフルオロ酢酸塩)も、本発明の一部を構成する。
【0034】
生物学的アッセイ
TRPA1活性の評価
アッセイA:TRPA1アッセイ
本発明の化合物の活性は、以下のインビトロTRPA1細胞アッセイを使用して実証され得る。
【0035】
方法:
ヒトTRPA1イオンチャネルを過剰発現しているヒトHEK293細胞株(Perkin Elmer、製品番号AX-004-PCL)を、化合物効能及び効力に関する試験システムとして使用する。化合物活性は、FLIPRテトラシステム(Molecular Devices)においてAITC(アリルイソチオシアネート(Allylisothiocyanat))アゴニズムによって誘発される細胞内カルシウム濃度に対する化合物の効果を測定することによって決定される。
【0036】
細胞培養:
細胞をクライオバイアル中の凍結細胞として入手し、使用するまで-150℃で貯蔵する。細胞を培養培地(10%FCS及び0.4mg/MLジェネテシンを加えたMEM/EBSS培地)中で成長させる。密度が90%集密を超えないことが重要である。継代培養のために、細胞をバーゼン液によってフラスコから剥離させる。アッセイ前日に、細胞を剥離させ、培地(10%FCSを加えたMEM/EBSS培地)で2回洗浄し、20μl/ウェル中20000個の細胞をCorning製のポリD-リジンバイオコート384ウェルプレート(黒色、透明底、カタログ番号356697)に播種する。プレートを、アッセイにおいて使用する前に、37℃/5%CO2で24時間にわたってインキュベートする。
【0037】
化合物調製
試験化合物を100%DMSOに10mMの濃度で溶解し、第1のステップにおいてDMSO中で5mMの濃度に希釈し、続いて、100%DMSO中で連続希釈ステップを行う。希釈倍率及び希釈ステップ数は必要に応じて変動し得る。1:5希釈で典型的には8種の異なる濃度を調製し、HBSS/HEPES緩衝液(Gibco製の1×HEPES、カタログ番号14065、SIGMA製の20mM HEPES、カタログ番号83264、Invitrogen製の0.1%BSA、カタログ番号11926、pH7.4)を用いて、物質のさらなる中間希釈(1:20)を行う。
【0038】
FLIPRアッセイ:
アッセイ日に、細胞をアッセイ緩衝液(puffer)で3回洗浄し、洗浄後に20μLの緩衝液がウェル中に残る。HBSS/HEPES中の10μLのCa6キット(カタログ番号R8191 MolecularDevices)ローディング緩衝液を細胞に添加し、蓋をしてプレートを37℃/5%CO2で120分間にわたってインキュベートする。HBSS/HEPES緩衝液/5%DMSO中の10μLの化合物又は対照を中間希釈プレートからウェルに慎重に添加する。発光(カルシウム流入又は放出を指示する)をFLIPRテトラデバイスで10分間にわたって読み取って、化合物誘発性効果(例えばアゴニズム)をモニターする。最後に、HBSS/HEPES緩衝液/0.05%DMSO(最終濃度10μM)に溶解した10μLのアゴニストAITC50μMをウェルに添加し、続いて、FLIPRテトラデバイスで10分間にわたって追加で読み取る。AITC添加後のシグナル曲線下面積(AUC)を、IC50/阻害%算出に使用する。
【0039】
データ評価及び算出:
各アッセイマイクロタイタープレートは、AITC誘発性発光についての対照としての化合物(100%CTL;高対照)の代わりにビヒクル(1%DMSO)対照を加えたウェル及び発光における非特異的な変化についての対照としてのAITCを用いないビヒクル対照を加えたウェル(0%CTL;低対照)を含有する。
データの分析は、個々のウェルのシグナル曲線下面積の算出によって実施される。この値に基づき、MegaLabソフトウェア(社内開発)を使用して、各物質濃度の測定についての%値を算出する(AUC(試料)-AUC(低))×100/(AUC(高)-AUC(低))。IC50値は、対照%値から、MegaLabソフトウェアを使用して算出される。算出:[y=(a-d)/(1+(x/c)^b)+d]、a=低値、d=高値;x=濃度M;c=IC50M;b=ヒル;y=対照%
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【0043】
ミクロソームクリアランスの評価
アッセイB:ミクロソームクリアランス:
試験化合物の代謝分解は、プールした肝ミクロソームを用いて37℃でアッセイされる。1時点当たり100μlの最終インキュベーション体積は、室温でpH7.6のTRIS緩衝液(0.1M)、塩化マグネシウム(5mM)、ミクロソームタンパク質(1mg/ml)及び1μMの最終濃度の試験化合物を含有する。
37℃での短いプレインキュベーション期間後、ベータ-ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸、還元型(NADPH、1mM)の添加によって反応を開始し、異なる時点(0、5、15、30、60分)後にアリコートを溶媒中に移すことによって終了させる。加えて、NADPH非依存性分解を、NADPHを用いないインキュベーションでモニターし、最終時点において終了させる。NADPH非依存性インキュベーション後の残りの試験化合物[%]はパラメーターc(対照)(代謝安定性)によって反映される。クエンチしたインキュベーションを遠心分離(10000g、5分)によってペレット化する。
【0044】
上清のアリコートを、LC-MS/MSによって親化合物の量についてアッセイする。半減期(t1/2 INVITRO)は、濃度-時間プロファイルの片対数プロットの傾斜によって決定される。
固有クリアランス(CL_INTRINSIC)は、インキュベーション中のタンパク質の量を考慮することによって算出される:
CL_INTRINSIC[μl/分/mgタンパク質]=(Ln2/(半減期[分]×タンパク質含有量[mg/ml]))×1000
CL_INTRINSIC_INVIVO[ml/分/kg]=(CL_INTRINSIC[μL/分/mgタンパク質]×MPPGL[mgタンパク質/g肝臓]×肝因子[g/kg体重])/1000
Qh[%]=CL[ml/分/kg]/肝血流量[ml/分/kg])
肝細胞充実度(Hepatocellularity)、ヒト:120×10e6細胞/g肝臓
肝因子、ヒト:25.7g/kg体重
血流量、ヒト:21ml/(分×kg)
【0045】
【表4】
【0046】
【表5】
【0047】
【表6】
【0048】
肝細胞クリアランスの評価
アッセイC:肝細胞クリアランス
試験化合物の代謝分解を、肝細胞懸濁液でアッセイする。肝細胞(凍結保存したもの)を、5%種血清を含有するダルベッコ変法イーグル培地(3.5μgのグルカゴン/500mL、2.5mgのインスリン/500mL及び3.75mg/500mLのヒドロコルチゾン(hydrocortison)を補充したもの)中でインキュベートする。
インキュベーター(37℃、10%CO2)内で30分間のプレインキュベーション後、5μlの試験化合物溶液(80μM;培地で1:25希釈したDMSOストック溶液中2mMから)を395μlの肝細胞懸濁液中に添加する(種に応じて0.25~500万細胞/mLの範囲内の細胞密度、典型的には100万細胞/mL;試験化合物の最終濃度1μM、最終DMSO濃度0.05%)。
【0049】
細胞を6時間にわたってインキュベートし(インキュベーター、オービタルシェーカー)、試料(25μl)を0、0.5、1、2、4及び6時間で採取する。試料をアセトニトリル中に移し、遠心分離(5分)によってペレット化する。上清を新たな96ディープウェルプレートに移し、窒素下で蒸発させ、再懸濁する。
親化合物の減少をHPLC-MS/MSによって分析する。
CLintは、次の通りに算出される。CL_INTRINSIC=用量/AUC=(C0/CD)/(AUD+clast/k)×1000/60。C0:インキュベーションにおける初期濃度[μM]、CD:生体細胞の細胞密度[10e6細胞/mL]、AUD:データ下面積[μM×時]、clast:最終データ点の濃度[μM]、k:親の減少についての回帰線の傾斜[時-1]。
【0050】
算出されたインビトロ肝固有クリアランスを、固有インビボ肝クリアランスにスケールアップし、肝臓モデル(十分に撹拌されたモデル)の使用によって肝インビボ血中クリアランス(CL)を予測するために使用することができる。
CL_INTRINSIC_INVIVO[ml/分/kg]=(CL_INTRINSIC[μL/分/10e6細胞]×肝細胞充実度[10e6細胞/g肝臓]×肝因子[g/kg体重])/1000
CL[ml/分/kg]=CL_INTRINSIC_INVIVO[ml/分/kg]×肝血流量[ml/分/kg]/(CL_INTRINSIC_INVIVO[ml/分/kg]+肝血流量[ml/分/kg])
Qh[%]=CL[ml/分/kg]/肝血流量[ml/分/kg])
肝細胞充実度、ヒト:120×10e6細胞/g肝臓
肝因子、ヒト:25.7g/kg体重
血流量、ヒト:21ml/(分×kg)
【0051】
【表7】
【0052】
【表8】
【0053】
【表9】
【0054】
透過性の評価
Caco-2細胞(1~2×105細胞/1cm2面積)をフィルターインサート(Costarトランズウェルポリカーボネート又はPETフィルター、0.4μm細孔径)に播種し、10~25日間にわたって培養する(DMEM)。化合物を適切な溶媒に溶解する(DMSOのような、1~20mMストック溶液)。ストック溶液をHTP-4緩衝液(128.13mM NaCl、5.36mM KCl、1mM MgSO4、1.8mM CaCl2、4.17mM NaHCO3、1.19mM Na2HPO4×7H2O、0.41mM NaH2PO4×H2O、15mM HEPES、20mMグルコース、0.25%BSA、pH7.2)で希釈して、輸送溶液(0.1~300μM化合物、最終DMSOは0.5%以下)を調製する。A-B又はB-A透過性(フィルター3連)をそれぞれ測定するために、輸送溶液(TL)を頂端又は側底ドナー側に適用する。HPLC-MS/MS又はシンチレーション計数による濃度測定のために、実験の開始時及び終了時にドナーから及び最大2時間にわたる種々の時間間隔でレシーバー側からも試料を収集する。試料採取したレシーバー体積を新鮮なレシーバー溶液で置きかえる。
【0055】
血漿タンパク質結合の評価
この平衡透析(ED)技術を使用して、試験化合物の血漿タンパク質との近似インビトロ分画結合(approximate in vitro fractional binding)を決定する。Dianormテフロン透析セル(マイクロ0.2)を使用する。各セルは、5kDaの分子量カットオフを持つ極薄半透膜で分離されたドナー及びアクセプターチャンバーからなる。各試験化合物のストック溶液をDMSO中1mMで調製し、1.0μMの最終濃度に希釈する。その後の透析溶液を男性及び女性ドナー由来のプールしたヒト又はラット血漿(NaEDTAを加えたもの)中で調製する。200μLの透析緩衝液(100mMリン酸カリウム、pH7.4)のアリコートを、緩衝液チャンバーに分注する。200μLの試験化合物透析溶液のアリコートを、血漿チャンバーに分注する。インキュベーションを、回転させながら、37℃で2時間にわたって行う。
透析期間の終わりに、透析物を反応チューブに移す。緩衝液画分用のチューブは、0.2mLのACN/水(80/20)を含有している。25μLの血漿透析物のアリコートを、ディープウェルプレートに移し、25μLのACN/水(80/20)、25μLの緩衝液、25μLのキャリブレーション溶液及び25μLの内部標準溶液と混合する。200μLのACNを添加することにより、タンパク質沈殿を行う。50μLの緩衝液透析物のアリコートを、ディープウェルプレートに移し、25μLのブランク血漿、25μLの内部標準溶液及び200μLのACNと混合する。試料を、HPLC-MS/MSシステムで測定し、アナリストソフトウェアで評価する。結合パーセントを、式:結合%=(血漿濃度-緩衝液濃度/血漿30濃度)×100で算出する。
【0056】
溶解度の評価
飽和溶液は、ウェルプレート(フォーマットはロボットによって決まる)中、適切な体積の選択された水性培地(典型的には0.25~1.5mlの範囲内)を、公知の分量の固体薬物物質(典型的には0.5~5.0mgの範囲内)を含有する各ウェルに添加することによって、調製される。ウェルを事前定義された期間(典型的には2~24時間の範囲内)にわたって振とう又は撹拌し、次いで(than)、適切なフィルター膜(典型的には0.45μmの細孔径を持つPTFEフィルター)を使用して濾過する。濾液の最初の数滴を廃棄することによってフィルター吸収を回避する。溶解した薬物物質の量をUVスペクトル法によって決定する。加えて、ガラス電極pHメーターを使用して飽和水溶液のpHを測定する。
【0057】
薬物動態学的特徴の評価
試験化合物は、それぞれの試験種へ静脈内に又は経口的のどちらか一方で投与される。血液試料を、試験化合物の適用後いくつかの時点で採取し、抗凝固剤処置し、遠心分離する。
被検物質-投与された化合物及び/又は代謝産物-の濃度を、血漿試料で定量化する。非コンパートメント方法を使用して、PKパラメーターを算出する。AUC及びCmaxを、1μmol/kgの用量に対して正規化する。
【0058】
インビトロでのヒト肝細胞における代謝の評価
試験化合物の代謝経路は、懸濁液中の初代ヒト肝細胞を使用して調査する。凍結保存からの回復後、5%ヒト血清を含有し、3.5μgのグルカゴン/500ml、2.5mgのインスリン/500ml及び3.75mg/500mlのヒドロコルチゾンを補充したダルベッコ変法イーグル培地中で、ヒト肝細胞をインキュベートする。
細胞培養インキュベーター(37℃、10%CO2)内で30分間のプレインキュベーション後、試験化合物溶液を肝細胞懸濁液中に混ぜて、1.0×106~4.0×106細胞/mlの最終細胞密度(初代ヒト肝細胞で観察された化合物の代謝回転率に応じて)、10μMの最終試験化合物濃度及び0.05%の最終DMSO濃度を取得する。
細胞を、水平シェーカー上の細胞培養インキュベーター内で6時間にわたってインキュベートし、代謝回転率に応じて0、0.5、1、2、4又は6時間後にインキュベーションから試料を除去する。試料をアセトニトリルでクエンチし、遠心分離によってペレット化する。上清を96ディープウェルプレートに移し、窒素下で蒸発させ、再懸濁した後、推定代謝産物の同定のために液体クロマトグラフィー-高分解能質量分析による生物分析を行う。
【0059】
フーリエ変換MSnデータに基づき、構造を暫定的に割り当てる。代謝産物は、4%以上の閾値を持つヒト肝細胞インキュベーションにおける親のパーセンテージとして報告される。
【0060】
処置方法
本発明は、線維性疾患、炎症性及び免疫調節障害、呼吸器又は胃腸の疾患又は愁訴、眼科疾患、関節の炎症性疾患並びに鼻咽頭、目及び皮膚の炎症性疾患並びに疼痛及び神経学的障害の処置及び/又は予防を含むがこれらに限定されない、TRPA1活性に関連する又はそれによって変調される疾患及び/又は状態の予防及び/又は処置において有用な、一般式1の化合物に関する。前記障害、疾患及び愁訴は、咳、特発性肺線維症、他の間質性肺疾患及び他の線維性、喘息又はアレルギー性疾患、好酸球性疾患、慢性閉塞性肺疾患、並びに炎症性及び免疫調節障害、例を挙げると、関節リウマチ及びアテローム性動脈硬化症、並びに疼痛及び神経学的障害、例を挙げると、急性疼痛、手術疼痛、慢性疼痛並びにうつ病及び膀胱障害を含む。
【0061】
一般式1の化合物は、以下の予防及び/又は処置に有用である。
(1)咳、例を挙げると、慢性特発性咳又は慢性難治性咳、喘息、COPD、肺がん、ウイルス感染後及び特発性肺線維症に関連する咳、並びに他の間質性肺疾患。
(2)肺線維性疾患、例を挙げると、膠原病、例えば、エリテマトーデス、全身性強皮症、関節リウマチ、多発性筋炎及び皮膚筋炎(dermatomysitis)に関連する肺炎又は間質性肺炎、特発性間質性肺炎、例を挙げると、肺線維症(pulmonary lung fibrosis)(IPF)、非特異性間質性肺炎、呼吸細気管支炎関連間質性肺疾患、剥離性間質性肺炎、特発性器質化(orgainizing)肺炎、急性間質性肺炎及びリンパ球性間質性肺炎、リンパ脈管筋腫症(lymangioleiomyomatosis)、肺胞タンパク症、ランゲルハンス細胞組織球症、胸膜実質線維弾性症、公知の原因の間質性肺疾患、例を挙げると、石綿症、珪肺症、坑夫肺(炭塵)、農夫肺(干し草及びカビ)、ハト飼育者肺(鳥)又は金属粉塵若しくはマイコバクテリア等の他の職業上の空気媒介トリガー(occupational airbourne trigger)等の職業被曝の結果としての、又は、放射線、メトトレキサート、アミオダロン、ニトロフラントイン若しくは化学療法薬等の又は多発血管炎性肉芽腫、チャーグ・ストラウス症候群、サルコイドーシス等の肉芽腫性疾患のための処置の結果としての、間質性肺炎、異なる起源、例えば、誤嚥、有毒ガス、蒸気の吸入によって引き起こされる過敏性肺炎若しくは間質性肺炎、心不全、X線、放射線、化学療法、M.boeck若しくはサルコイドーシス、肉芽腫症、膵嚢胞線維症若しくは嚢胞性線維症又はアルファ-1-アンチトリプシン欠乏症によって引き起こされる、気管支炎又は肺炎又は間質性肺炎。
(3)他の線維性疾患、例を挙げると、肝線維性架橋形成(hepatic bridging fibrosis)、肝硬変、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、心房線維化、心筋線維症、陳旧性心筋梗塞、グリア性瘢痕、動脈壁の硬化、関節線維化、デュピュイトラン拘縮、ケロイド、強皮症/全身性硬化症、縦隔線維症、骨髄線維症、ぺロニー病、腎性全身性線維症、後腹膜線維症、癒着性関節包炎。
【0062】
(4)炎症性、自己免疫性又はアレルギー性疾患及び状態、例を挙げると、アレルギー性又は非アレルギー性鼻炎又は副鼻腔炎、慢性副鼻腔炎又は鼻炎、鼻ポリポーシス、慢性鼻副鼻腔炎、急性鼻副鼻腔炎、喘息、小児喘息、アレルギー性気管支炎、肺胞炎、過反応性気道、アレルギー性結膜炎、気管支拡張症、成人呼吸窮迫症候群、気管支及び肺水腫、気管支炎又は肺炎、好酸球性蜂窩織炎(cellulites)(例えば、ウェルズ症候群)、好酸球性肺炎(例えば、レフラー症候群、慢性好酸性肺炎)、好酸球性筋膜炎(例えば、シュールマン症候群)、遅延型過敏症、非アレルギー性喘息;運動誘発性気管支収縮;慢性閉塞性肺疾患(COPD)、急性気管支炎、慢性気管支炎、咳、肺気腫;全身性アナフィラキシー又は過敏性応答、薬物アレルギー(例えば、ペニシリン、セファロスポリンに対する)、汚染されたトリプトファンの摂取による好酸球増加筋痛症候群、虫刺されアレルギー;自己免疫性疾患、例を挙げると、関節リウマチ、グレーブス病、シェーグレン症候群、乾癬性関節炎、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、重症筋無力症、免疫性血小板減少症(成人ITP、新生児血小板減少症、小児ITP)、免疫性溶血性貧血(自己免疫性及び薬物誘発性)、エバンス症候群(血小板及び赤血球免疫性血球減少症)、新生児のRh疾患、グッドパスチャー症候群(抗GBM病)、セリアック病、自己免疫性心筋症、若年発症性糖尿病;糸球体腎炎、自己免疫性甲状腺炎、ベーチェット病;同種移植拒絶反応又は移植片対宿主病を含む移植拒絶反応(例えば、移植術において);炎症性腸疾患、例を挙げると、クローン病及び潰瘍性大腸炎;脊椎関節症;強皮症;乾癬(T細胞媒介性乾癬を含む)及び炎症性皮膚病、例を挙げると、皮膚炎、湿疹、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、蕁麻疹;血管炎(例えば、壊死性、皮膚性及び過敏性血管炎);結節性紅斑;好酸球性筋炎、好酸球性筋膜炎、皮膚又は臓器の白血球浸潤を伴うがん;眼科疾患、例を挙げると、加齢黄斑変性、糖尿病性網膜症及び糖尿病性黄斑浮腫、角膜炎、好酸球性角膜炎、角結膜炎、春季カタル、瘢痕、前眼部瘢痕、眼瞼炎、眼瞼結膜炎、水疱性障害、瘢痕性類天疱瘡、結膜黒色腫、乳頭結膜炎、ドライアイ、上強膜炎、緑内障、神経膠症、環状肉芽腫、グレーブス眼症、眼内黒色腫、瞼裂斑、増殖性硝子体網膜症、翼状片、強膜炎、ブドウ膜炎、急性痛風フレア、痛風又は変形性関節症。
(5)疼痛、例を挙げると、慢性特発性疼痛症候群、神経因性疼痛、感覚異常、異痛症、片頭痛、歯痛及び術後疼痛。
(6)うつ病、不安、糖尿病性ニューロパチー及び膀胱障害、例を挙げると、膀胱出口閉塞、過活動膀胱、膀胱炎;心筋再潅流傷害又は脳虚血傷害。
【0063】
したがって、本発明は、医薬として使用するための、一般式1の化合物に関する。
さらに、本発明は、TRPA1活性に関連する又はそれによって変調される疾患及び/又は状態の処置及び/又は予防のための、一般式1の化合物の使用に関する。
さらに、本発明は、線維性疾患、炎症性及び免疫調節障害、呼吸器又は胃腸の疾患又は愁訴、眼科疾患、関節の炎症性疾患並びに鼻咽頭、目及び皮膚の炎症性疾患並びに疼痛及び神経学的障害の処置及び/又は予防のための、一般式1の化合物の使用に関する。前記障害、疾患及び愁訴は、咳、特発性肺線維症、他の間質性肺疾患及び他の線維性、喘息又はアレルギー性疾患、好酸球性疾患、慢性閉塞性肺疾患、並びに炎症性及び免疫調節障害、例を挙げると、関節リウマチ及びアテローム性動脈硬化症、並びに疼痛及び神経学的障害、例を挙げると、急性疼痛、手術疼痛、慢性疼痛並びにうつ病及び膀胱障害を含む。
【0064】
さらに、本発明は、以下の処置及び/又は予防のための、一般式1の化合物の使用に関する。
(1)咳、例を挙げると、慢性特発性咳又は慢性難治性咳、喘息、COPD、肺がん、ウイルス感染後及び特発性肺線維症に関連する咳、並びに他の間質性肺疾患。
(2)肺線維性疾患、例を挙げると、膠原病、例えば、エリテマトーデス、全身性強皮症、関節リウマチ、多発性筋炎及び皮膚筋炎に関連する肺炎又は間質性肺炎、特発性間質性肺炎、例を挙げると、肺線維症(IPF)、非特異性間質性肺炎、呼吸細気管支炎関連間質性肺疾患、剥離性間質性肺炎、特発性器質化肺炎、急性間質性肺炎及びリンパ球性間質性肺炎、リンパ脈管筋腫症、肺胞タンパク症、ランゲルハンス細胞組織球症、胸膜実質線維弾性症、公知の原因の間質性肺疾患、例を挙げると、石綿症、珪肺症、坑夫肺(炭塵)、農夫肺(干し草及びカビ)、ハト飼育者肺(鳥)又は金属粉塵若しくはマイコバクテリア等の他の職業上の空気媒介トリガー等の職業被曝の結果としての、又は、放射線、メトトレキサート、アミオダロン、ニトロフラントイン若しくは化学療法薬の又は多発血管炎性肉芽腫、チャーグ・ストラウス症候群、サルコイドーシス等の肉芽腫性疾患のための処置の結果としての、間質性肺炎、異なる起源、例えば、誤嚥、有毒ガス、蒸気の吸入によって引き起こされる過敏性肺炎若しくは間質性肺炎、心不全、X線、放射線、化学療法、M.boeck若しくはサルコイドーシス、肉芽腫症、膵嚢胞線維症若しくは嚢胞性線維症又はアルファ-1-アンチトリプシン欠乏症によって引き起こされる、気管支炎又は肺炎又は間質性肺炎。
(3)他の線維性疾患、例を挙げると、肝線維性架橋形成、肝硬変、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、心房線維化、心筋線維症、陳旧性心筋梗塞、グリア性瘢痕、動脈壁の硬化、関節線維化、デュピュイトラン拘縮、ケロイド、強皮症/全身性硬化症、縦隔線維症、骨髄線維症、ぺロニー病、腎性全身性線維症、後腹膜線維症、癒着性関節包炎。
【0065】
(4)炎症性、自己免疫性又はアレルギー性疾患及び状態、例を挙げると、アレルギー性又は非アレルギー性鼻炎又は副鼻腔炎、慢性副鼻腔炎又は鼻炎、鼻ポリポーシス、慢性鼻副鼻腔炎、急性鼻副鼻腔炎、喘息、小児喘息、アレルギー性気管支炎、肺胞炎、過反応性気道、アレルギー性結膜炎、気管支拡張症、成人呼吸窮迫症候群、気管支及び肺水腫、気管支炎又は肺炎、好酸球性蜂窩織炎(例えば、ウェルズ症候群)、好酸球性肺炎(例えば、レフラー症候群、慢性好酸性肺炎)、好酸球性筋膜炎(例えば、シュールマン症候群)、遅延型過敏症、非アレルギー性喘息;運動誘発性気管支収縮;慢性閉塞性肺疾患(COPD)、急性気管支炎、慢性気管支炎、咳、肺気腫;全身性アナフィラキシー又は過敏性応答、薬物アレルギー(例えば、ペニシリン、セファロスポリンに対する)、汚染されたトリプトファンの摂取による好酸球増加筋痛症候群、虫刺されアレルギー;自己免疫性疾患、例を挙げると、関節リウマチ、グレーブス病、シェーグレン症候群、乾癬性関節炎、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、重症筋無力症、免疫性血小板減少症(成人ITP、新生児血小板減少症、小児ITP)、免疫性溶血性貧血(自己免疫性及び薬物誘発性)、エバンス症候群(血小板及び赤血球免疫性血球減少症)、新生児のRh疾患、グッドパスチャー症候群(抗GBM病)、セリアック病、自己免疫性心筋症、若年発症性糖尿病;糸球体腎炎、自己免疫性甲状腺炎、ベーチェット病;同種移植拒絶反応又は移植片対宿主病を含む移植拒絶反応(例えば、移植術において);炎症性腸疾患、例を挙げると、クローン病及び潰瘍性大腸炎;脊椎関節症;強皮症;乾癬(T細胞媒介性乾癬を含む)及び炎症性皮膚病、例を挙げると、皮膚炎、湿疹、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、蕁麻疹;血管炎(例えば、壊死性、皮膚性及び過敏性血管炎);結節性紅斑;好酸球性筋炎、好酸球性筋膜炎、皮膚又は臓器の白血球浸潤を伴うがん;眼科疾患、例を挙げると、加齢黄斑変性、糖尿病性網膜症及び糖尿病性黄斑浮腫、角膜炎、好酸球性角膜炎、角結膜炎、春季カタル、瘢痕、前眼部瘢痕、眼瞼炎、眼瞼結膜炎、水疱性障害、瘢痕性類天疱瘡、結膜黒色腫、乳頭結膜炎、ドライアイ、上強膜炎、緑内障、神経膠症、環状肉芽腫、グレーブス眼症、眼内黒色腫、瞼裂斑、増殖性硝子体網膜症、翼状片、強膜炎、ブドウ膜炎、急性痛風フレア、痛風又は変形性関節症。
【0066】
(5)疼痛、例を挙げると、慢性特発性疼痛症候群、神経因性疼痛、感覚異常、異痛症、片頭痛、歯痛及び術後疼痛。
(6)うつ病、不安、糖尿病性ニューロパチー及び膀胱障害、例を挙げると、膀胱出口閉塞、過活動膀胱、膀胱炎;心筋再潅流傷害又は脳虚血傷害。
【0067】
さらなる態様では、本発明は、上記で言及した疾患及び状態の処置及び/又は予防において使用するための、一般式1の化合物に関する。
さらなる態様では、本発明は、上記で言及した疾患及び状態の処置及び/又は予防のための医薬の調製のための、一般式1の化合物の使用に関する。
本発明のさらなる態様では、本発明は、上記で言及した疾患及び状態の処置又は予防のための方法であって、有効量の一般式1の化合物のヒトへの投与を含む方法に関する。
【0068】
併用療法
本発明の化合物を、1種又は複数、好ましくは1種の追加の治療剤とさらに組み合わせてよい。一実施形態によれば、追加の治療剤は、以上で記述した疾患又は状態の、特に、線維性疾患、炎症性及び免疫調節障害、呼吸器又は胃腸の疾患又は愁訴、関節の若しくは鼻咽頭、目及び皮膚の炎症性疾患、又は、例えば、咳、特発性肺線維症、他の間質性肺疾患、喘息又はアレルギー性疾患、好酸球性疾患、慢性閉塞性肺疾患、アトピー性皮膚炎等の状態、並びに、自己免疫性病理、例を挙げると、関節リウマチ及びアテローム性動脈硬化症に関連する処置において有用な治療剤、或いは、眼科疾患、疼痛及びうつ病の処置に有用な治療剤の群から選択される。
【0069】
そのような組合せに好適な追加の治療剤は、特に、例えば、言及した適応症の1つに関して1種若しくは複数の活性物質の治療効果を強化する及び/又は1種若しくは複数の活性物質の投薬量を低減させることを可能にするものを含む。
したがって、本発明の化合物を、抗線維化剤、鎮咳剤、抗炎症剤、抗アトピー性皮膚炎剤、鎮痛薬、抗けいれん薬、抗不安薬、鎮静薬、骨格筋弛緩薬又は抗うつ薬からなる群から選択される1種又は複数の追加の治療剤と組み合わせてよい。
【0070】
抗線維化剤は、例えば、ニンテダニブ、ピルフェニドン、ホスホジエステラーゼ-IV(PDE4)阻害剤、例を挙げると、ロフルミラスト、オートタキシン阻害剤、例を挙げると、GLPG-1690又はBBT-877;結合組織成長因子(CTGF)遮断抗体、例を挙げると、パムレブルマブ;B細胞活性化因子受容体(BAFF-R)遮断抗体、例を挙げると、ラナルマブ(Lanalumab);アルファ-V/ベータ-6遮断阻害剤、例を挙げると、BG-00011/STX-100、組換えペントラキシン-2(PTX-2)、例を挙げると、PRM-151;c-Jun N末端キナーゼ(JNK)阻害剤、例を挙げると、CC-90001;ガレクチン-3阻害剤、例を挙げると、TD-139;Gタンパク質共役受容体84(GPR84)阻害剤、例を挙げると、GLPG-1205;Gタンパク質共役受容体84/Gタンパク質共役受容体40二重阻害剤、例を挙げると、PBI-4050;Rho関連コイルドコイル含有タンパク質キナーゼ2(ROCK2)阻害剤、例を挙げると、KD-025;熱ショックタンパク質47(HSP47)低分子干渉RNA、例を挙げると、BMS-986263/ND-L02-s0201;Wnt経路阻害剤、例を挙げると、SM-04646;LD4/PDE3/4阻害剤、例を挙げると、タイペルカスト;ヒスチジルtRNA合成酵素(HARS)の組換え免疫調節ドメイン、例を挙げると、ATYR-1923;プロスタグランジンシンターゼ阻害剤、例を挙げると、ZL-2102/SAR-191801;15-ヒドロキシ-エイコサペンタエン酸(15-HEPE、例えばDS-102);リシルオキシダーゼ様2(LOXL2)阻害剤、例を挙げると、PAT-1251、PXS-5382/PXS-5338;ホスホイノシチド3-キナーゼ(PI3K)/哺乳類ラパマイシン標的(mTOR)二重阻害剤、例を挙げると、HEC-68498;カルパイン阻害剤、例を挙げると、BLD-2660;分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼキナーゼキナーゼ(MAP3K19)阻害剤、例を挙げると、MG-S-2525;キチナーゼ阻害剤、例を挙げると、OATD-01;分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ2(MAPKAPK2)阻害剤、例を挙げると、MMI-0100;形質転換成長因子ベータ1(TGF-ベータ1)低分子干渉RNA、例を挙げると、TRK250/BNC-1021;又はリゾホスファチジン酸受容体アンタゴニスト、例を挙げると、BMS-986278である。
【0071】
鎮咳剤は、例えば、プリン受容体3(P2X3)受容体アンタゴニスト、例を挙げると、ゲーファピキサント、S-600918、BAY-1817080又はBLU-5937;ニューロキニン1(NK-1)受容体アンタゴニスト、例を挙げると、オルベピタント、アプレピタント;ニコチン性アセチルコリン受容体アルファ7サブユニット刺激剤、例を挙げると、ATA-101/ブラダニクリン;コデイン、ガバペンチン、プレガバリン(pregablin)又はアジスロマイシンである。
【0072】
抗炎症剤は、例えば、コルチコステロイド、例を挙げると、プレドニゾロン又はデキサメタゾン;シクロオキシゲナーゼ-2(COX2)阻害剤、例を挙げると、セレコキシブ、ロフェコキシブ、パレコキシブ、バルデコキシブ、デラコキシブ、エトリコキシブ又はルミラコキシブ;プロスタグランジンE2アンタゴニスト;ロイコトリエンB4アンタゴニスト;ロイコトリエンD4アンタゴニスト、例を挙げると、モンテルカスト(monteleukast);5-リポキシゲナーゼ阻害剤;或いは他の非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDs)、例を挙げると、アスピリン、ジクロフェナク、ジフルニサール、エトドラク、イブプロフェン又はインドメタシンである。
【0073】
抗アトピー性皮膚炎剤は、例えば、シクロスポリン、メトトレキサート、ミコフェノール酸モフェチル、アザチオプリン、ホスホジエステラーゼ阻害剤(例えば、アプレミラスト、クリサボロール)、ヤヌス関連キナーゼ(JAK)阻害剤(例えば、トファシチニブ)、IL-4/IL-13(例えば、デュピルマブ)、IL-13(例えば、レブリキズマブ、トラロキヌマブ)及びIL-31(ネモリズマブ)に対する中和抗体である。
鎮痛薬は、例えば、オピオイド型のもの、例を挙げると、モルヒネ、オキシモルヒネ、レボパノール、オキシコドン(oxycodon)、プロポキシフェン、ナルメフェン、フェンタニル、ヒドロコドン(hydrocondon)、ヒドロモルフォン、メリピジン、メタドン、ナロルフィン、ナロキソン、ナルトレキソン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、ナルブフィン、ペンタゾシン;又は非オピオイド型のもの、例を挙げると、アセトフェナミンである。
【0074】
抗うつ薬は、例えば、三環系抗うつ薬、例を挙げると、アミトリプチリン、クロミプラミン、デスプラミン(despramine)、ドキセピン、デシプラミン、イミプラミン、ノルトリプチリン;選択的セロトニン再取り込み阻害剤抗うつ薬(SSRIs)、例を挙げると、フルオキセチン、パロキセチン、セルトラリン、シタロプラム、エスシタロプラム;ノルエピネフリン再取り込み阻害剤抗うつ薬(SNRIs)、例を挙げると、マプロチリン、ロフェプラミン、ミルタザピン、オキサプロチリン、フェゾラミン、トモキセチン、ミアンセリン、ブプロピオン(buproprion)、ヒドロキシブプロピオン(hydroxybuproprion)、ノミフェンシン、ビロキサジン;二重セロトニン-ノルエピネフリン再取り込み阻害剤抗うつ薬(SNRIs)、例を挙げると、デュロキセチン、ベンラファキシン、デスベンラファキシン、レボミルナシプラン;非定型抗うつ薬、例を挙げると、トラゾドン、ミルタザピン、ボルチオキセチン、ビラゾドン、ブプロピオン;又はモノアミン酸化酵素阻害剤抗うつ薬(MAOIs)、例を挙げると、トラニルシプロミン、フェネルジン若しくはイソカルボキサジドである。
【0075】
抗不安薬は、例えば、ベンゾジアゼピン、例を挙げると、アルプラゾラム、ブロマゼパム、クロルジアゼポキシド、クロナゼパム、クロラゼペート、ジアゼパム、フルラゼパム、ロラゼパム、オキサゼパム、テマゼパム、トリアゾラム若しくはトフィソパムであるか;又は、それらは、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬、例を挙げると、エスゾピクロン、ザレプロン、ゾルピデム若しくはゾピクロンであるか;又は、それらは、カルバメート、例えば、メプロバメート、カリソプロドール、チバメート若しくはロルバマートであるか;又は、それらは、抗ヒスタミン薬、例を挙げると、ヒドロキシジン、クロルフェニラミン若しくはジフェンヒドラミンである。
【0076】
鎮静薬は、例えば、バルビツール系鎮静薬、例を挙げると、アモバルビタール、アプロバルビタール、ブタバルビタール、ブタルビタール(butabital)、メフォバルビタール、メタルビタール、メトヘキシタール、ペントバルビタール、セコバルビタール、タルブタール、チアミラール若しくはチオペンタールであるか;又は、それらは、非バルビツール系鎮静薬、例を挙げると、グルテチミド、メプロバメート、メタカロン若しくはジクロアルフェナゾンである。
骨格筋弛緩薬は、例えば、バクロフェン、メプロバメート、カリソプロドール、シクロベンザプリン、メタキサロン、メトカルバモール、チザニジン、クロルゾキサゾン又はオルフェナドリンである。
【0077】
他の好適な組合せパートナーは、ドネペジル等のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤の阻害剤;オンダンセトロン等の5-HT-3アンタゴニスト(anatgonists);代謝型グルタミン酸受容体アンタゴニスト;メキシレチン若しくはフェニトイン等の抗不整脈薬;又はNMDA受容体アンタゴニストである。
さらなる好適な組合せパートナーは、失禁薬、例えば、抗コリン薬、例を挙げると、オキシブチニン、トルテロジン、ダリフェナシン、フェソテロジン、ソリフェナシン若しくはトロピウムであるか;又は、それらは、ミラベグロン等の膀胱筋弛緩薬であるか;又は、それらは、アルファ遮断薬、例を挙げると、タムスロシン、アルフゾシン、シロドシン、ドキサゾシン若しくはテラゾシンである。
【0078】
上記で言及した組合せパートナーの投薬量は、通例、通常推奨される最低用量の1/5から通常推奨される用量の1/1までである。
したがって、別の態様では、本発明は、TRPA1によって影響され得る又はそれによって媒介される疾患又は状態、特に、上記又は以下で記述される通りの疾患又は状態の処置のための、上記又は以下で記述される1種又は複数の追加の治療剤と組み合わせた、本発明に従う化合物の使用に関する。
さらなる態様では、本発明は、患者においてTRPA1の阻害によって影響を及ぼされ得る疾患又は状態を処置するための方法であって、そのような処置を必要とする患者に、治療有効量の式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩を、治療有効量の1種又は複数の追加の治療剤と組み合わせて投与するステップを含む方法に関する。
さらなる態様では、本発明は、それを必要とする患者においてTRPA1の阻害によって影響を及ぼされ得る疾患又は状態の処置ための、1種又は複数の追加の治療剤と組み合わせた、式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩の使用に関する。
【0079】
また別の態様では、本発明は、患者においてTRPA1活性によって媒介される疾患又は状態の処置のための方法であって、そのような処置を必要とする患者、好ましくはヒトに、治療有効量の本発明の化合物を、治療有効量の上記又は以下で記述される1種又は複数の追加の治療剤と組み合わせて投与するステップを含む方法に関する。
追加の治療剤と組み合わせた本発明に従う化合物の使用は、同時に又は時間差で起こり得る。
本発明に従う化合物及び1種又は複数の追加の治療剤は、1個の製剤、例えば、錠剤若しくはカプセル剤中に両方が一緒に、又は2個の同一の若しくは異なる製剤中に、例えばいわゆるキットオブパーツとして別個に存在し得る。
その結果として、別の態様では、本発明は、本発明に従う化合物と上記又は以下で記述される1種又は複数の追加の治療剤とを含み、1種又は複数の不活性担体及び/又は希釈剤と一緒に含んでもよい、医薬組成物に関する。
また別の態様では、本発明は、咳測定デバイスにおける、本発明に従う化合物の使用に関する。
本発明の他の特色及び利点は、例として本発明の原理を例証する以下のより詳細な例から明らかとなるであろう。
【0080】
調製
本発明に従う化合物及びそれらの中間体は、当業者に公知の及び有機合成の文献において記述されている合成方法を使用して取得され得る。好ましくは、化合物は、以下でさらに十分に説明する、特に実験の項において記述される通りの調製方法に類似の方式で取得される。一部の場合には、反応ステップを行う順序は変動し得る。当業者に公知であるがここでは詳細に記述されていない反応方法の変形形態を使用してもよい。
【0081】
本発明に従う化合物を調製するための一般的なプロセスは、以下のスキームを研究している当業者に明らかとなるであろう。出発材料又は中間体におけるあらゆる官能基を、従来の保護基を使用して保護してよい。これらの保護基は、反応シーケンス内の好適な段階で、当業者によく知られている方法を使用して再度切断されてよい。
【0082】
本発明に従う化合物は、以下で記述される合成方法によって調製され、ここで、一般式の置換基は、本明細書において先に記した意味を有する。これらの方法は、その主題及び特許請求されている化合物の範囲をこれらの例に制限することなく、本発明の例証として意図されている。出発化合物の調製が記述されていない場合、それらは商業的に入手可能であるか、又は公知の化合物若しくは本明細書において記述されている方法と同様に調製され得る。文献において記述されている物質は、公開された合成方法に従って調製される。略語は実施例の項において定義される通りである。
スキーム1:
【0083】
【化16】
スキーム1では、クロロメチルテトラゾールを、塩基(例えばK2CO3)の存在下、脱離基「LG」(例えばCl又はBr)アルファを担持する適切なエタノン誘導体でカルボニル基にN-アルキル化して、2個の位置異性体の混合物を得る。望ましくない位置異性体(示されていない)は、適切な勾配を使用するクロマトグラフィーによって除去され得る。得られたケトン(A)を、遷移金属錯体(例えばRu又はIrの)をキラルリガンド(例えば([(1S,2S)-2-アミノ-1,2-ジフェニルエチル](4-トルエンスルホニル)アミド)及びギ酸トリエチルアミン錯体等の水素源と組みわせて使用する適切な触媒システムを使用することにより鏡像異性選択的方式で還元して、アルコール(B)を得ることができる。最終化合物(F)は、K2CO3等の塩基の存在下、6-メチル-4-オキソ-3H,4H-フロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボン酸(C)の中間体(B)によるアルキル化、並びに塩基の存在下、HATU等のカップリング試薬及び炭酸アンモニウム等のアンモニア源によるカルボン酸(D)のその後のアミド化によって、合成され得る。代替として、最終化合物(F)は、CDI及びアンモニア等のカップリング試薬による(C)のアミド化並びに中間体(B)によるアミド(E)のその後のアルキル化を介して、合成され得る。
スキーム2:
【0084】
【化17】
スキーム2では、最終化合物(K)の合成が記述される。カリウムtert-ブトキシド等の塩基の存在下、グリコール酸エチルによる1-(4,6-ジクロロピリミジン-5-イル)エタン-1-オンの求核芳香族置換により中間体(G)を得、これをその後、ナトリウムエトキシド及びカリウムtertブトキシド等の塩基で処理することで、中間体(H)が得られ得る。例えば、アセトニトリル中ヨウ化ナトリウム及び塩化トリメチルシリルによる(H)のピリミドンの脱保護によりエステル(I)を得、これを、塩化カルシウム等のルイス酸の存在下、アンモニアと反応させてアミド(J)とすることができる。最後に、炭酸カリウム等の塩基の存在下、中間体(B)によるアミド(J)のアルキル化により、最終化合物(K)を得る。
【実施例
【0085】
調製
本発明に従う化合物及びそれらの中間体は、当業者に公知であり、有機合成の文献において記述されている合成方法を使用して、例えば、“Comprehensive Organic Transformations”, 2nd Edition, Richard C. Larock, John Wiley & Sons, 2010及び“March’s Advanced Organic Chemistry”, 7th Edition, Michael B. Smith, John Wiley & Sons, 2013において記述されている方法を使用して取得され得る。好ましくは、化合物は、以下でさらに十分に説明する、特に実験の項において記述される通りの調製方法と同様に取得される。一部の場合には、反応スキームを行う際に採用されるシーケンスは、変動し得る。当業者に公知であるがここでは詳細に記述されていないこれらの反応の変形形態を使用してもよい。本発明に従う化合物を調製するための一般的なプロセスは、この後のスキームを研究している当業者に明らかとなるであろう。出発化合物は、市販されているか、又は文献において若しくは本明細書において記述されている方法によって調製され得るか、又は類似の若しくは同様の様式で調製され得る。反応が行われる前に、出発化合物中のあらゆる対応する官能基を、従来の保護基を使用して保護してよい。これらの保護基は、反応シーケンス内の好適な段階で、当業者によく知られており、文献において記述されている、例えば“Protecting Groups”, 3rd Edition, Philip J. Kocienski, Thieme, 2005及び“Protective Groups in Organic Synthesis”, 4th Edition, Peter G. M. Wuts, Theodora W. Greene, John Wiley & Sons, 2006において記述されている方法を使用して、再度切断されてよい。用語「周囲温度」及び「室温」は、交換可能に使用され、約20℃、例えば19~24℃の間の温度を指定する。
【0086】
略語:
【表10】
【0087】
中間体の調製
中間体I
中間体I.1(一般的手順)
2-[5-(クロロメチル)-2H-1,2,3,4-テトラゾール-2-イル]-1-(4-クロロフェニル)エタン-1-オン
【0088】
【化18】
15mLのDMA中の1.00g(8.44mmol)の5-(クロロメチル)-2H-1,2,3,4-テトラゾール及び2.17g(9.28mmol)の4-クロロフェナシルブロミドに、1.63g(11.8mmol)のK2CO3を室温で撹拌しながら添加する。反応混合物を室温で30分間にわたって撹拌し、その後、濾過する。濾液を水及び飽和NaCl水溶液で希釈し、EtOAcで3回抽出する。合わせた有機相を水で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、活性炭で濾過し、溶媒を減圧下で除去する。残留物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;CH/EtOAc、80/20~50/50勾配)によって精製して、生成物を得る。
108Cl24O (M=271.1g/mol)
ESI-MS: 271[M+H]+
t(HPLC): 1.01分(方法B)
【0089】
以下の化合物は、中間体I.1について記述したものに類似の手順を使用し、適切な出発材料を使用して調製される。当業者には分かるように、これらの類似例は一般的反応条件における変動を伴い得る。
【0090】
【表11-1】
【表11-2】
【0091】
中間体II
中間体II.1(一般的手順)
(1R)-2-[5-(クロロメチル)-2H-1,2,3,4-テトラゾール-2-イル]-1-(4-クロロフェニル)エタン-1-オール
【0092】
【化19】
1.30g(4.80mmol)の1-(4-クロロフェニル)-2-[5-(クロロメチル)-2H-1,2,3,4-テトラゾール-2-イル)エタン-1-オン(中間体I.1)を20mLのACNに不活性雰囲気下で溶解する。12mg(0.02mmol)のクロロ([(1S,2S)-2-アミノ-1,2-ジフェニルエチル](4-トルエンスルホニル)アミド)(メシチレン)ルテニウム(II)(CAS 174813-81-1)を添加し、続いて、0.72mL(1.73mmol)のギ酸トリエチルアミン錯体(5:2)を滴下添加する。室温で3時間にわたって撹拌した後、溶媒を減圧下で除去する。残りの粗混合物に水を添加し、この混合物をEtOAcで抽出する。有機層を合わせ、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、活性炭で処理し、濾過し、溶媒を減圧下で除去して、中間体II.1を得る。
1010Cl24O (M=273.1g/mol)
ESI-MS: 273[M+H]+
t(HPLC): 0.96分(方法B)
【0093】
以下の化合物は、中間体II.1について記述したものに類似の手順を使用し、適切な出発材料を使用して調製される。当業者には分かるように、これらの類似例は一般的反応条件における変動を伴い得る。
【0094】
【表12】
【0095】
中間体III
中間体III.1
1-(7-フルオロ-1-ベンゾフラン-2-イル)エタン-1-オン
【0096】
【化20】
60mLのアセトン中の6.00g(42.8mmol)の3-フルオロ-2-ヒドロキシベンズアルデヒドの撹拌溶液を0℃に冷却し、その後、9.47g(68.5mmol)の炭酸カリウムで処理する。0℃で10分間にわたって撹拌した後、5.12mL(64.2mmol)のクロロアセトンを滴下添加し、反応混合物を90℃で1時間にわたって撹拌する。反応混合物を室温に冷却し、減圧下で濃縮する。粗残留物をEtOAc/水で抽出し、有機相を減圧下で濃縮して、中間体III.1を得る。
107FO2 (M=178.2g/mol)
ESI-MS: 179[M+H]+
t(HPLC): 0.50分(方法A)
以下の化合物は、中間体III.1と同様に調製される。当業者には分かるように、この類似例は、一般的反応条件における変動を伴い得る。
【0097】
【表13】
【0098】
中間体IV
中間体IV.1
2-ブロモ-1-(7-フルオロ-1-ベンゾフラン-2-イル)エタン-1-オン
【0099】
【化21】
66mLのTHF中の5.47g(30.7mmol)の1-(7-フルオロ-1-ベンゾフラン-2-イル)エタン-1-オン(中間体III.1)に、3.3mLのMeOH及び32mLのTHF中の14.81g(30.7mmol)のテトラブチルアンモニウムトリブロミドの溶液を、室温で撹拌しながら滴下添加する。反応混合物を室温で2時間にわたって撹拌し、減圧下で濃縮し、残留物をEtOAc/水で抽出する。有機層を減圧下で濃縮し、粗材料をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;ヘキサン/EtOAc、勾配)によって精製する。
106BrFO2 (M=257.1g/mol)
ESI-MS: 257/259[M+H]+
t(HPLC): 0.58分(方法A)
以下の化合物は、中間体IV.1と同様に調製される。当業者には分かるように、この類似例は、一般的反応条件における変動を伴い得る。
【0100】
【表14】

中間体V
6-メチル-4-オキソ-3H,4H-フロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド
【0101】
【化22】
60mLのTHF中の2.90g(14.94mmol)の6-メチル-4-オキソ-3H,4H-フロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボン酸(CAS:852399-94-1、European Journal of Medicinal Chemistry, 2018, vol. 144, p. 330-348)及び2.66g(16.43mmol)のCDIを、室温で18時間にわたって撹拌する。その後、THF中の90mLのNH3(0.5mol/L)を添加し、撹拌を室温で3時間にわたって続ける。反応混合物を減圧下で濃縮し、NaHCO3の水溶液(100mLの水+40mLの飽和NaHCO3水溶液)に注ぎ、得られた沈殿物を濾過除去し、乾燥させて、中間体Vを得る。
8733 (M=193.2g/mol)
ESI-MS: 194[M+H]+
t(HPLC): 0.61分(方法B)
中間体VI
エチル2-[(5-アセチル-6-クロロピリミジン-4-イル)オキシ]アセテート
【0102】
【化23】
5.0mLのTHF中の111μL(1.15mmol)のグリコール酸エチルの撹拌溶液に、カリウムtert-ブトキシド(1.26mL、1.0mol/L)を0℃でゆっくりと添加する。0℃で35分間にわたって撹拌した後、200mg(1.05mmol)の1-(4,6-ジクロロピリミジン-5-イル)エタン-1-オンを添加し、撹拌を0℃で2時間にわたって及び室温で3時間にわたって続ける。反応混合物を減圧下で濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル;ヘキサン/EtOAc、勾配)によって精製する。
1011ClN24 (M=258.66g/mol)
ESI-MS: 259[M+H]+
t(HPLC): 1.05分(方法B)
中間体VII
エチル4-エトキシ-5-メチルフロ[2,3-d]ピリミジン-6-カルボキシレート
【0103】
【化24】
THF中の2.23g(8.62mmol)の中間体VIの撹拌溶液に、エタノール中ナトリウムエタノレートの溶液(2.95mL、21%)を-12℃でゆっくりと添加する。反応混合物を0℃で90分間にわたって撹拌し、THF中カリウムtert-ブトキシドの溶液(4.31mL、1.0mol/L)を添加し、撹拌を室温で終夜続ける。追加のTHF中カリウムtert-ブトキシド(1.0mL、1.0mol/L)を添加し、撹拌を室温で3時間にわたって続ける。反応混合物を酢酸で酸性化し、減圧下で濃縮する。反応混合物を水/EtOAcで抽出し、有機抽出物をMgSO4で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮する。逆相HPLC(ACN/H2O勾配、0.1%TFA)を介する精製により、中間体VIIが得られる。
121424 (M=250.25g/mol)
ESI-MS: 251[M+H]+
t(HPLC): 0.63分(方法A)
【0104】
中間体VIII
エチル5-メチル-4-オキソ-3H,4H-フロ[2,3-d]ピリミジン-6-カルボキシレート
【0105】
【化25】
2mLのACN中の50mg(0.20mmol)の中間体VIIの撹拌溶液に、90mg(0.60mmol)のヨウ化ナトリウムを添加し、混合物を室温で3分間にわたって撹拌する。その後、76μL(0.60mmol)の塩化トリメチルシリルを添加し、反応容器を密閉し、室温での撹拌を2時間にわたって続ける。反応物を10mLの水でクエンチし、室温で5分間にわたって撹拌する。沈殿物を濾過除去し、水で洗浄し、減圧下、50℃で乾燥させて、中間体VIIIを得る。
101024 (M=222.20g/mol)
ESI-MS: 223[M+H]+
t(HPLC): 0.78分(方法B)
中間体IX
5-メチル-4-オキソ-3H,4H-フロ[2,3-d]ピリミジン-6-カルボキサミド
【0106】
【化26】
128mLのMeOH中アンモニア(7mol/L)中の800mg(3.60mmol)の中間体VIII及び400mg(3.60mmol)のCaCl2の混合物を、密閉容器内、50℃で36時間にわたって撹拌する。反応混合物を減圧下で濃縮し、50mLの水中で撹拌し、得られた沈殿物を濾過除去し、水で洗浄し、減圧下、60℃で乾燥させて、中間体IXを得る。
8733 (M=193.16g/mol)
ESI-MS: 194[M+H]+
t(HPLC):0.50分(方法H)
中間体X
中間体X.1
【0107】
【化27】
2mLのDMA中の、120mg(0.47mmol)の6-メチル-4-オキソ-3H,4H-フロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボン酸(CAS:852399-94-1)、92mg(0.47mmol)の(1R)-2-[5-(クロロメチル)-2H-1,2,3,4-テトラゾール-2-イル]-1-(4-メチルフェニル)エタン-1-オール(中間体II.9)及び98mg(0.71mmol)のK2CO3の混合物を、室温で終夜撹拌する。その後、98mg(0.71mmol)のK2CO3を添加し、混合物を、60℃で2時間にわたって及び80℃で5時間にわたって撹拌する。反応混合物を室温に冷却し、逆相HPLC(ACN/H2O勾配、0.1%TFA)によって精製して、所望生成物を得る。
191865 (M=410.38g/mol)
ESI-MS: 411[M+H]+
t(HPLC):0.90分(方法H)
以下の化合物は、中間体X.1について記述したものに類似の手順を使用し、適切な出発材料を使用して調製される。当業者には分かるように、これらの類似例は一般的反応条件における変動を伴い得る。
【0108】
【表15】
【0109】
最終化合物の調製
実施例1(一般的手順A)
3-({2-[(2R)-2-ヒドロキシ-2-(4-メチルフェニル)エチル]-2H-1,2,3,4-テトラゾール-5-イル}メチル)-6-メチル-4-オキソ-3H,4H-フロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド
【0110】
【化28】
25mLのDMA中の、1.50g(7.77mmol)の6-メチル-4-オキソ-3H,4H-フロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド、中間体V、3.22g(23.30mmol)のK2CO3及び1.96g(7.77mmol)の(1R)-2-[5-(クロロメチル)-2H-1,2,3,4-テトラゾール-2-イル]-1-(4-メチルフェニル)エタン-1-オール(中間体II.9)の混合物を、室温で終夜撹拌する。反応混合物を氷水に注ぎ、EtOAcで3回抽出する。合わせた有機層をMgSO4と共に撹拌し、濾過し、減圧下で濃縮し、逆相HPLC(ACN/H2O勾配、0.3%TFA)によって精製して、所望生成物を得る。
191974 (M=409.4g/mol)
ESI-MS: 410[M+H]+
t(HPLC):0.73分(方法B)
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm: 2.25 (s, 3 H), 2.72 (s, 3 H), 4.74 (d, J=6.6 Hz, 2 H), 5.02 - 5.08 (m, 1 H), 5.58 (s, 2 H), 5.74 (s, 1 H), 7.10 (d, J=8.0 Hz, 2 H), 7.21 (d, J=8.0 Hz, 2 H), 7.55 (br d, J=1.3 Hz, 1 H), 8.74 (s, 1 H), 9.16 - 9.22 (m, 1 H)
【0111】
以下の化合物は、実施例1一般的手順Aについて記述したものに類似の手順を使用し、適切な出発材料を使用して調製される。当業者には分かるように、これらの類似例は一般的反応条件における変動を伴い得る。
【0112】
【表16-1】
【表16-2】
上記の表において記述されている化合物についての分析データ:
【0113】
【表17-1】
【表17-2】
【0114】
最終化合物の調製
(実施例1)
(一般的手順B)
3-({2-[(2R)-2-ヒドロキシ-2-(4-メチルフェニル)エチル]-2H-1,2,3,4-テトラゾール-5-イル}メチル)-6-メチル-4-オキソ-3H,4H-フロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボキサミド
【0115】
【化29】
2.0mLのDMF中の35mg(0.09mmol)の3-({2-[(2R)-2-ヒドロキシ-2-(4-メチルフェニル)エチル]-2H-1,2,3,4-テトラゾール-5-イル}メチル)-6-メチル-4-オキソ-3H,4H-フロ[2,3-d]ピリミジン-5-カルボン酸、中間体X.1に、32mg(0.09mmol)のHATU及び73μL(0.43mmol)のDIPEAを、室温で撹拌しながら添加する。5分後、82mg(0.85mmol)の炭酸アンモニウムを添加し、混合物を室温で終夜撹拌する。混合物を逆相HPLC(ACN/H2O勾配、0.1%NH3)によって精製して、所望生成物を得る。
以下の化合物は、実施例1一般的手順Bについて記述したものに類似の手順を使用し、適切な出発材料を使用して調製される。当業者には分かるように、これらの類似例は一般的反応条件における変動を伴い得る。
【0116】
【表18】

上記の表において記述されている化合物についての分析データ:
【0117】
【表19】

分析HPLC方法
方法A
【0118】
【表20】

方法B
【0119】
【表21】

方法C
【0120】
【表22】

方法D
【0121】
【表23】

方法E
【0122】
【表24】

方法F
【0123】
【表25】

方法G
【0124】
【表26】

方法H
【表27】

方法I
【0125】
【表28】

方法J
【0126】
【表29】

方法K
【0127】
【表30】