(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】力率補正用搬送波周波数制御方法、制御装置及び空気調和機
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
H02M3/155 H
H02M3/155 W
(21)【出願番号】P 2023523118
(86)(22)【出願日】2021-10-28
(86)【国際出願番号】 CN2021127087
(87)【国際公開番号】W WO2022134848
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-04-14
(31)【優先権主張番号】202011551456.9
(32)【優先日】2020-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】517344192
【氏名又は名称】広東美的制冷設備有限公司
【氏名又は名称原語表記】GD MIDEA AIR-CONDITIONING EQUIPMENT CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Lingang Road,Beijiao,Shunde,Foshan,Guangdong,China
(73)【特許権者】
【識別番号】512237419
【氏名又は名称】美的集団股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】MIDEA GROUP CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】B26-28F, Midea Headquarter Building, No.6 Midea Avenue, Beijiao, Shunde, Foshan, Guangdong 528311 China
(74)【代理人】
【識別番号】100112656
【氏名又は名称】宮田 英毅
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】霍兆鏡
(72)【発明者】
【氏名】畢然
(72)【発明者】
【氏名】黄招彬
(72)【発明者】
【氏名】唐勁添
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-282958(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0188407(US,A1)
【文献】特開2012-191775(JP,A)
【文献】特開2002-291260(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03121525(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0056730(US,A1)
【文献】特開平10-327576(JP,A)
【文献】特開2013-150530(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00 - 3/44
H02M 7/00 - 7/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
力率補正回路に適用される力率補正用搬送波周波数制御方法であって、
前記
力率補正回路の入力電圧を取得するステップと、
前記入力電圧が設定電圧よりも高い場合、前記入力電圧の低下に追従して前記
力率補正回路の搬送波周波数を低下させるように制御するステップと、
前記入力電圧が前記設定電圧よりも低い場合
、前記入力電圧の低下に追従して前記搬送波周波数を上昇させるように制御するステップと、を含む力率補正用搬送波周波数制御方法。
【請求項2】
前記入力電圧の低下に追従して前記搬送波周波数を上昇させるように制御する前記ステップは、
前記設定電圧と前記入力電圧との比を第1比とするステップと、
前記搬送波周波数を第1比のn乗だけ上昇させるように制御するステップと、を含み、nは1よりも大きい請求項1に記載の力率補正用搬送波周波数制御方法。
【請求項3】
前記搬送波周波数を前記第1比のn乗だけ上昇させた周波数値が最大周波数閾値よりも大きい場合、前記搬送波周波数を前記最大周波数閾値に設定する請求項2に記載の力率補正用搬送波周波数制御方法。
【請求項4】
力率補正回路に適用される力率補正用搬送波周波数制御方法であって、
前記
力率補正回路の入力電流を取得するステップと、
前記入力電流が設定電流よりも高い場合、前記入力電流の低下に追従して前記
力率補正回路の搬送波周波数を低下させるように制御するステップと、
前記入力電流が前記設定電流よりも低い場合
、前記入力電流の低下に追従して前記搬送波周波数を上昇させるように制御するステップと、を含む力率補正用搬送波周波数制御方法。
【請求項5】
前記入力電流の低下に追従して前記搬送波周波数を上昇させるように制御する前記ステップは、
前記設定電流と前記入力電流との比を第2比とするステップと、
前記搬送波周波数を第2比のm乗だけ上昇させるように制御するステップと、を含み、mは1よりも大きい請求項4に記載の力率補正用搬送波周波数制御方法。
【請求項6】
前記搬送波周波数を前記第2比のm乗だけ上昇させた周波数値が最大周波数閾値よりも大きい場合、前記搬送波周波数を前記最大周波数閾値に設定する請求項5に記載の力率補正用搬送波周波数制御方法。
【請求項7】
少なくとも1つのプロセッサと、前記少なくとも1つのプロセッサと通信可能に接続されるメモリとを含む力率補正用搬送波周波数制御装置であって、
前記メモリは、前記少なくとも1つのプロセッサによって実行可能な命令を記憶しており、前記命令は、前記少なくとも1つのプロセッサによって実行されて、請求項1~3のいずれか1項に記載の力率補正用搬送波周波数制御方法、又は請求項4~6のいずれか1項に記載の力率補正用搬送波周波数制御方法を前記少なくとも1つのプロセッサに実行させる力率補正用搬送波周波数制御装置。
【請求項8】
請求項7に記載の力率補正用搬送波周波数制御装置を含む配線基板。
【請求項9】
請求項8に記載の配線基板を含む空気調和機。
【請求項10】
請求項1~3のいずれか1項に記載の力率補正用搬送波周波数制御方法、又は請求項4~6のいずれか1項に記載の力率補正用搬送波周波数制御方法をコンピュータに実行させるためのコンピュータ実行可能な命令を記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2020年12月24日に提出された、出願番号が202011551456.9、名称が「力率補正用搬送波周波数制御方法、制御装置及び空気調和機」である中国特許出願の優先権を主張しており、その全ての内容が引用によって本願に組み込まれている。
【0002】
本発明は、電子回路制御の技術分野に関し、特に力率補正用搬送波周波数制御方法、制御装置及び空気調和機に関する。
【背景技術】
【0003】
従来のデジタルソフトウェア方式による力率補正(PFC:Power Factor Correction)制御技術は、搬送波周波数が入力電圧の大きさに応じて変化し、入力電圧が異なると搬送波周波数値が異なる可変搬送波周波数の制御方式を採用して力率補正を行うことができる。可変搬送波制御方式は高調波をある程度低減させるが、ゼロクロス点では、入力電圧がゼロのときに入力電流がゼロではないというゼロクロスひずみが生じやすい。これは、高調波が増加することに相当し、ゼロクロス点付近での回路の安定性に影響を与える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以下は本明細書で詳細に説明される主題の概要である。本概要は、特許請求の範囲の特許範囲を限定するものではない。
【0005】
本発明の実施例は、力率補正用搬送波周波数制御方法、制御装置及び空気調和機を提供する。力率補正回路の入力電圧又は入力電流が低すぎる場合、搬送波周波数を一定値に維持又は上昇させるように制御することにより、ゼロクロス点における入力電流が入力電圧に追従するようにし、ゼロクロス点における高調波を低減させる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様の実施例は、力率補正用搬送波周波数制御方法を提供する。力率補正用搬送波周波数制御方法は、力率補正PFC回路に適用され、前記PFC回路の入力電圧を取得するステップと、前記入力電圧が設定電圧よりも高い場合、前記入力電圧の低下に追従して前記PFC回路の搬送波周波数を低下させるように制御するステップと、前記入力電圧が前記設定電圧よりも低い場合、前記搬送波周波数を一定値に設定するか、前記入力電圧の低下に追従して前記搬送波周波数を上昇させるように制御するステップとを含む。
【0007】
本発明の第1態様の実施例に係る力率補正用搬送波周波数制御方法は、少なくとも次のような有益な効果がある。ゼロクロス点付近で入力電圧に対応する搬送波周波数については、この搬送波周波数を一定値に限定するか、又は入力電圧の低下に追従して搬送波周波数を上昇させることにより、ゼロクロス点付近でPFC回路の入力電流が入力電圧に追従しない状況を改善し、PFC回路の電流高調波を低減させ、PFC回路の動作安定性を向上させることができる。
【0008】
いくつかの実施例では、前記第2位相区間は縮退区間である。すなわち、第2位相区間の両端点は同一であり、電圧位相のピーク位相に等しく、搬送波周波数は第2位相区間で1点に収束する。
【0009】
いくつかの実施例では、前記入力電圧の低下に追従して前記搬送波周波数を上昇させるように制御する前記ステップは、前記設定電圧と前記入力電圧との比を第1比とするステップと、前記搬送波周波数を第1比のn乗だけ上昇させるように制御するステップと、を含み、nは1よりも大きい。
【0010】
ゼロクロス点付近では入力電圧が小さいので、入力電圧を第1比の分母とすることにより、入力電圧の低下に追従して搬送波周波数を上昇させることができる。これにより、ゼロクロス点付近での搬送波周波数の過小化現象を回避し、ゼロクロス点付近の電流高調波を確保することができる。
【0011】
いくつかの実施例では、前記搬送波周波数を前記第1比のn乗だけ上昇させた周波数値が最大周波数閾値よりも大きい場合、前記搬送波周波数を前記最大周波数閾値に設定する。ゼロクロス点に近づくと入力電圧が0に近づくので、搬送波周波数が第1比で乗算されて過大になることを回避するために、搬送波周波数の最大値である最大周波数閾値が限定され、最大周波数閾値を超える搬送波周波数はすべて最大周波数閾値に限定され、回路の正常な動作が確保される。
【0012】
本発明の第2態様の実施例は、力率補正用搬送波周波数制御方法を提供する。前記力率補正用搬送波周波数制御方法は、力率補正PFC回路に適用され、前記PFC回路の入力電流を取得するステップと、前記入力電流が前記設定電流よりも高い場合、前記入力電流の低下に追従して前記PFC回路の搬送波周波数を低下させるように制御するステップと、前記入力電流が前記設定電流よりも低い場合、前記搬送波周波数を一定値に設定するか、前記入力電流の低下に追従して前記搬送波周波数を上昇させるように制御するステップと、を含む。
【0013】
本発明の第2態様の実施例に係る力率補正用搬送波周波数制御方法は、少なくとも次のような有益な効果がある。ゼロクロス点付近で入力電流に対応する搬送波周波数については、この搬送波周波数を一定値に限定するか、入力電流の低下に追従して搬送波周波数を上昇させることにより、ゼロクロス点付近でPFC回路の入力電流が入力電圧に追従しない状況を改善し、PFC回路の電流高調波を低減させ、PFC回路の動作安定性を向上させることができる。
【0014】
いくつかの実施例では、前記入力電流の低下に追従して前記搬送波周波数を上昇させるように制御する前記ステップは、前記設定電流と前記入力電流との比を第2比とするステップと、前記搬送波周波数を第2比のm乗だけ上昇させるように制御するステップと、を含み、mは1よりも大きい。
【0015】
ゼロクロス点付近では入力電流が小さいので、入力電流を第2比の分母とすることにより、入力電流の低下に追従して搬送波周波数を上昇させることができる。これにより、ゼロクロス点付近での搬送波周波数の過小化現象を回避し、ゼロクロス点付近の電流高調波を確保することができる。
【0016】
いくつかの実施例では、前記搬送波周波数を前記第2比のm乗だけ上昇させた周波数値が最大周波数閾値よりも大きい場合、前記搬送波周波数を前記最大周波数閾値に設定する。ゼロクロス点に近づくと入力電流が0に近づくので、搬送波周波数が第2比で乗算されて過大になることを回避するために、搬送波周波数の最大値である最大周波数閾値が限定され、最大周波数閾値を超える搬送波周波数はすべて最大周波数閾値に限定され、回路の正常な動作が確保される。
【0017】
本発明の第3態様の実施例は、力率補正用搬送波周波数制御装置を提供する。前記力率補正用搬送波周波数制御装置は、少なくとも1つのプロセッサと、前記少なくとも1つのプロセッサと通信可能に接続されるメモリとを含み。前記メモリは、前記少なくとも1つのプロセッサによって実行可能な命令を記憶しており、前記命令は、前記少なくとも1つのプロセッサによって実行されて、前記の第1態様に記載の力率補正用搬送波周波数制御方法、又は前記の第2態様に記載の力率補正用搬送波周波数制御方法を前記少なくとも1つのプロセッサに実行させる。
【0018】
本発明の第3態様に係る搬送波周波数制御装置は、少なくとも次のような有益な効果がある。搬送波周波数制御装置により上記の搬送波周波数制御方法を実施することにより、ゼロクロス点付近で入力電圧/入力電流に対応する搬送波周波数については、この搬送波周波数を一定値に限定するか、入力電圧/入力電流の低下に追従して搬送波周波数を上昇させることにより、ゼロクロス点付近でPFC回路の入力電流が入力電圧に追従しない状況を改善し、PFC回路の電流高調波を低減させ、PFC回路の動作安定性を向上させることができる。
【0019】
本発明の第4態様の実施例は、前記第3態様に記載の搬送波周波数制御装置を含む配線基板を提供する。
【0020】
本発明の第4態様に係る配線基板は、少なくとも次のような有益な効果がある。上記の搬送波周波数制御装置を配線基板上に集積することにより、配線基板に上記の搬送波周波数制御装置の機能を持たせる。ゼロクロス点付近で入力電圧/入力電流に対応する搬送波周波数については、この搬送波周波数を一定値に限定するか、入力電圧/入力電流の低下に追従して搬送波周波数を上昇させることにより、ゼロクロス点付近でPFC回路の入力電流が入力電圧に追従しない状況を改善し、PFC回路の電流高調波を低減させ、PFC回路の動作安定性を向上させることができる。
【0021】
本発明の第5態様の実施例は、前記第4態様に記載の配線基板を含む空気調和機を提供する。
【0022】
本発明の第4態様の実施例に係る空気調和機は、少なくとも次のような有益な効果がある。上記の配線基板を空気調和機に設置して空気調和機を制御することにより、空気調和機のPFC回路のゼロクロス点でのリップル電流を制御することができる。すなわち、ゼロクロス点付近で入力電圧/入力電流に対応する搬送波周波数については、この搬送波周波数を一定値に限定するか、入力電圧/入力電流の低下に追従して搬送波周波数を上昇させることにより、ゼロクロス点付近でPFC回路の入力電流が入力電圧に追従しない状況を改善し、PFC回路の電流高調波を低減させ、PFC回路の動作安定性を向上させることができる。
【0023】
本発明の第5態様の実施例は、前記第1態様に記載の力率補正回路の制御方法をコンピュータに実行させるためのコンピュータ実行可能な命令を記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を提供する。
【0024】
本発明の他の特徴及び利点は、後の明細書で説明され、本明細書から部分的に明らかになるか、又は本発明を実施することによって理解される。本発明の目的及び他の利点は、明細書、特許請求の範囲、及び図面において特に指摘された構造によって達成され得る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施例による力率補正回路の一例の回路図である。
【
図2】本発明の実施例による力率補正回路の他の回路図である。
【
図3】本発明の実施例による搬送波周波数制御方法のフローチャートである。
【
図4】本発明の実施例による、入力電圧の低下に追従して搬送波周波数を上昇させるフローチャートである。
【
図5】本発明の実施例による搬送波周波数制御方法のフローチャートである。
【
図6】本発明の実施例による、入力電流の低下に追従して搬送波周波数を上昇させるフローチャートである。
【
図7】本発明の制御装置のモジュール接続関係の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の目的、技術案及び利点をより明確に理解するために、以下では、図面及び実施例を参照して、本発明をさらに詳細に説明する。なお、ここで記載される特定実施例は、本発明を説明するためにのみ使用され、本発明を限定するものではない。
【0027】
本発明の実施例は、力率補正用搬送波周波数制御方法、搬送波周波数制御装置及び空気調和機を提供し、設定電圧又は設定電流に応じて搬送波周波数の制御区間を分割する。設定電圧又は設定電流よりも高い場合、PFC回路の搬送波周波数を可変搬送波周波数の方式で制御し、搬送波周波数を入力電圧又は入力電流に正の相関で変化させる。設定電圧又は設定電流よりも低い場合、搬送波周波数を一定値に設定するか、入力電圧又は入力電流に負の相関で変化させることにより、ゼロクロス点付近の電流高調波を改善し、PFC回路の動作安定性を向上させる。
【0028】
以下、本発明の実施例について、図面を参照してさらに説明する。
【0029】
本発明の実施例は、力率補正PFC回路に適用される力率補正回路の制御方法を提供する。該PFC回路の回路構成は、
図1に示すように、順次接続された直流入力端子、昇圧モジュール、フィルタリングモジュール、及びコントローラを含む。直流入力端子の直流電圧は、交流入力を整流したものであり、この直流電圧はPFC回路の入力電圧Uinである。入力電圧Uinに対応する直流電流は、現在のPFC回路の入力電流Iinである。直流入力端子は、昇圧モジュールに接続される。昇圧モジュールは、boost昇圧に使用され、インダクタデバイスとスイッチングデバイスを含む。インダクタデバイスは、直流入力端子の正極に直列に接続される。スイッチングデバイスは、一端にインダクタデバイスが接続され、他端に直流入力端子の負極が接続される。スイッチングデバイスの被制御端子は、コントローラのイネーブルピンに接続される。フィルタリングモジュールは、スイッチングデバイスに並列に接続される。負荷(
図1に図示せず)は、フィルタリングモジュールの両端子に並列に接続され、負荷に入力される直流電圧は、現在のPFC回路の出力電圧Uoである。コントローラは、スイッチングデバイスのオンオフを制御することで昇圧出力を実現し、PFC制御プロセスを実現できることが分かる。
【0030】
なお、上記のPFC回路は、インダクタデバイスとスイッチングデバイスとの接続部に正極が接続され、フィルタリングモジュールの一端に負極が接続されたダイオードをさらに含んでもよい。一方、フィルタリングモジュールは、キャパシタデバイス又は他のフィルタ回路によって実装されてもよいが、説明の便宜上、
図1では、フィルタ回路は単一のキャパシタのみで表されている。
【0031】
上記のPFC回路の昇圧モジュールは別の回路構成を採用してもよい。
図2に示すように、昇圧モジュールは、それぞれ直列に接続されたインダクタデバイスとスイッチングデバイスを含む、並列に接続された3つに分割されてもよい。3つのインダクタデバイスは、それぞれ、一端が直流入力端子の正極に接続され、他端がスイッチングデバイスを介して直流入力端子の負極に接続される。3つのスイッチングデバイスの被制御端子はすべてコントローラのイネーブルピンに接続される。昇圧モジュールの3つのブランチは、インダクタデバイスとスイッチングデバイスとの接続部に正極が接続され、フィルタリングモジュールの一端に負極が接続されたダイオードをさらに含んでもよい。
図2のこのような形態の回路もPFC制御を実現することができる。
【0032】
なお、上記の2つのPFC回路は、本発明の実施例の搬送波周波数制御方法を実現可能な一部の回路形態を例示的に説明しているに過ぎず、上記のPFC回路に基づいてなされた様々な変形、最適化、拡張などはすべて本発明の実施例の制御方法を実現可能である。過度の列挙を避けるため、ここではこれ以上言及しない。
【0033】
上記のPFC回路に基づいて、
図3に示すように、制御方法は、ステップS100とステップS200とステップS300を含むが、これに限定されない。
【0034】
ステップS100:PFC回路の入力電圧Uinを取得する。
【0035】
ステップS200:入力電圧Uinが設定電圧よりも高い場合、入力電圧Uinの低下に追従してPFC回路の搬送波周波数を低下させるように制御する。
【0036】
ステップS300:入力電圧Uinが設定電圧よりも低い場合、搬送波周波数を一定値に設定するか、入力電圧Uinの低下に追従して搬送波周波数を上昇させるように制御する。
【0037】
PFC回路の入力電圧Uinは、交流商用電源を整流したものであり、入力電圧は周期的に変化する。PFC回路の入力電流Iinが入力電圧Uinに追従して変化することを確保するために、通常は可変搬送波周波数の制御方式を採用して制御する。可変搬送波周波数の制御方式では、搬送波周波数は入力電圧Uinの上昇に追従して上昇し、また、入力電圧Uinの低下に追従して低下する。しかし、入力電圧Uinのゼロクロス点付近では、入力電圧Uinが0に近づくとともに搬送波周波数も0に近づくため、ゼロクロス点付近で入力電流が入力電圧に追従できない。これは、電流高調波が発生することに相当し、PFC回路の安定性に影響を与えることになる。
【0038】
ゼロクロス点付近の電流高調波を改善するために、本発明の実施例では、搬送波周波数の制御区間を分割する。入力電圧Uinが低い区間、すなわち設定電圧Uxよりも低い場合、搬送波周波数を一定値に調整するか、搬送波周波数を低下ではなく上昇するように制御する。一方、入力電圧Uinが設定電圧Uxよりも高い場合、従来の可変搬送波周波数の方式で搬送波周波数の制御を行う。ここで、設定電圧Ux(0よりも高い値)は、PFC回路の実際の性能に応じて設定され得る。
【0039】
【0040】
以下、上記のPFC回路、ステップS100~ステップS300、及び可変搬送波周波数の計算式に基づいて、本発明の制御方法の考え方を2つの具体的な制御方法で説明する。
【0041】
例1:入力電圧Uinに応じた搬送波周波数制御
搬送波周波数fの値は、可変搬送波周波数の計算式に従って変化する。
入力電圧Uinが設定電圧Uxよりも低い場合、PFC回路のコントローラは、搬送波周波数fが低下しないように一定の周波数値を出力する。このときのPFC回路の実際のリップル電流値ΔIは入力電圧Uinの低下に追従して低下する。これにより、ゼロクロス点付近の電流高調波を低減させ、入力電流Iinが入力電圧Uinに追従して変化することを実現し、ゼロクロス点付近で入力電流Iinが歪むという問題を回避する。
【0042】
【0043】
ステップS310:設定電圧Uxと入力電圧Uinとの比を第1比とする。
【0044】
ステップS320:搬送波周波数を第1比のn乗だけ上昇させるように制御し、nが1よりも大きい。
【0045】
ここで、第1比は、設定電圧Uxと入力電圧Uinとの比である。ゼロクロス点付近では、入力電圧Uinの値がゼロに近づくため、実際の搬送波周波数f´が過大となることを回避するために、最大周波数閾値を設定してもよい。算出した実際の搬送波周波数f´が最大周波数閾値よりも大きい場合、実際の搬送波周波数f´をそのまま最大周波数閾値とする。これにより、コントローラやスイッチングデバイスの制御速度が実際の搬送波周波数に合わないことを回避する。
【0046】
例2においても、ゼロクロス点付近の搬送波周波数を変化させることで電流高調波を低減させ、ゼロクロス点付近で入力電流Iinが歪むという問題を回避する。
【0047】
本発明の実施例はまた、上記の力率補正PFC回路に適用される力率補正回路の制御方法を提供する。PFC回路では入力電圧Uinと入力電流Iinとが正の相関にあるので、実際には取得した入力電流Iinに基づいて上記のステップS100~S300を実現することも可能である。すなわち、
図5に示すように、本発明の実施例に係る搬送波周波数制御方法は、ステップS400とステップS500とステップS600を含む。
【0048】
ステップS400:PFC回路の入力電流Iinを取得する。
【0049】
ステップS500:入力電流Iinが設定電流Ixよりも高い場合、入力電流Iinの低下に追従してPFC回路の搬送波周波数を低下させるように制御する。
【0050】
ステップS600:入力電流Iinが設定電流Ixよりも低い場合、搬送波周波数を一定値に設定するか、入力電流Iinの低下に追従して搬送波周波数を上昇させるように制御する。
【0051】
入力電流Iinと入力電圧Uinとは正の相関にあるので、ステップS400~ステップS600は、それぞれステップS100~ステップS300と同様である。同様に、ゼロクロス点付近の電流高調波を改善するために、本発明の実施例では、搬送波周波数の制御区間を分割する。入力電流Iinが低い区間、すなわち設定電流Ixよりも低い場合、搬送波周波数を一定値に調整するか、又は搬送波周波数を低下ではなく上昇するように制御する。一方、入力電流Iinが設定電流Ixよりも高い場合、従来の可変搬送波周波数の方式で搬送波周波数の制御を行う。
【0052】
なお、設定電流Ixは、PFC回路の実際の性能に応じた値(0よりも高い値)に設定してもよいし、PFC回路のリップル電流ΔIに応じた値に設定してもよい。PFC回路における入力電圧Uinと入力電流Iinとは正の相関にあるので、本発明の実施例における可変搬送波周波数の計算式は、前の実施例における可変搬送波周波数の計算式と同じである。
【0053】
以下、上記のPFC回路、ステップS400~S600、及び可変搬送波周波数の計算式に基づいて、本発明の制御方法の考え方を2つの具体的な制御方法で説明する。
【0054】
例3:入力電流Iinに応じた搬送波周波数制御
搬送波周波数fの値は、可変搬送波周波数の計算式に従って変化する。
入力電流Iinが設定電流Ixよりも低い場合、PFC回路のコントローラは、搬送波周波数fが低下しないように一定の周波数値を出力する。このときのPFC回路の実際のリップル電流値ΔIは入力電流Iinの低下に追従して低下する。これにより、ゼロクロス点付近の電流高調波を低減させ、入力電流Iinが入力電流Iinに追従して変化することを実現し、ゼロクロス点付近で入力電流Iinが歪むという問題を回避する。
【0055】
【0056】
ステップS610:設定電流Ixと入力電流Iinとの比を第2比とする。
【0057】
ステップS620:搬送波周波数を第2比のm乗だけ上昇させるように制御し、mが1よりも大きい。
【0058】
ここで、第2比は、設定電流Ixと入力電流Iinとの比である。ゼロクロス点付近では、入力電流Iinの値がゼロに近づくため、実際の搬送波周波数f´´が過大となることを回避するために、同様に最大周波数閾値を設定する。算出した実際の搬送波周波数f´が最大周波数閾値よりも大きい場合、実際の搬送波周波数f´´をそのまま最大周波数閾値とする。これにより、コントローラやスイッチングデバイスの制御速度が実際の搬送波周波数f´´に合わないことを回避する。
【0059】
例4においても、ゼロクロス点付近の搬送波周波数を変化させることで電流高調波を低減させ、ゼロクロス点付近で入力電流Iinが歪むという問題を回避する。
【0060】
上記の4つの例から、本発明の実施例では、ゼロクロス点付近で搬送波周波数を特別に制御することにより、入力電圧Uin又は入力電流Iinの低下に追従して搬送波周波数が低下するのではなく、一定値に設定するか、又は入力電圧Uin又は入力電流Iinの低下に追従して搬送波周波数が上昇するようにする。これによって、ゼロクロス点付近の電流高調波を低減させ、PFC回路の動作安定性を向上させる。
【0061】
本発明の実施例は、さらに力率補正用搬送波周波数制御装置を提供する。力率補正用搬送波周波数制御装置は、少なくとも1つのプロセッサと、少なくとも1つのプロセッサと通信可能に接続されるメモリとを含む。メモリは、少なくとも1つのプロセッサによって実行可能な命令を記憶しており、命令は、少なくとも1つのプロセッサによって実行されて、前述の2つの実施例のいずれかの力率補正用搬送波周波数制御方法を少なくとも1つのプロセッサに実行させる。
【0062】
図7に示すように、制御装置1000の制御プロセッサ1001とメモリ1002とがバスを介して接続されてもよい例を示す。メモリ1002は、非一時的なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体として、非一時的なソフトウェアプログラム及び非一時的なコンピュータ実行可能プログラムを記憶するために使用されてもよい。さらに、メモリ1002は、高速ランダムアクセスメモリを含んでもよく、さらに、少なくとも1つの磁気ディスクメモリ、フラッシュメモリデバイス、又は他の非一時的なソリッドステートメモリデバイスなどの非一時的なメモリを含んでもよい。いくつかの実施形態では、メモリ1002は、制御プロセッサ1001に対してリモートに配置されたメモリを任意に含んでいてもよく、これらのリモートメモリは、ネットワークを介して制御装置1000に接続されていてもよい。上記のネットワークの例には、インターネット、企業イントラネット、ローカルエリアネットワーク、移動通信ネットワーク、及びこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0063】
図7に示された装置構成は、制御装置1000を限定するものではなく、図示されているよりも多くの構成要素を含んでもよく、いくつかの構成要素を組み合わせてもよく、又は異なる構成要素の配置を含んでもよい。
【0064】
本発明の実施例では、搬送波周波数制御装置が上記の搬送波周波数制御方法を実行することにより、ゼロクロス点付近で入力電圧/入力電流に対応する搬送波周波数については、この搬送波周波数を一定値に限定するか、入力電圧/入力電流の低下に追従して搬送波周波数を上昇させることにより、ゼロクロス点付近でPFC回路の入力電流が入力電圧に追従しない状況を改善し、PFC回路の電流高調波を低減させ、PFC回路の動作安定性を向上させることができる。
【0065】
本発明の実施例はまた、上記の搬送波周波数制御装置を含む配線基板を提供する。上記の搬送波周波数制御装置を配線基板上に集積することにより、ゼロクロス点付近で入力電圧/入力電流に対応する搬送波周波数については、この搬送波周波数を一定値に限定するか、入力電圧/入力電流の低下に追従して搬送波周波数を上昇させることにより、ゼロクロス点付近でPFC回路の入力電流が入力電圧に追従しない状況を改善し、PFC回路の電流高調波を低減させ、PFC回路の動作安定性を向上させることができる。
【0066】
本発明の実施例はまた、上記の配線基板を含む空気調和機を提供する。上記の配線基板を空気調和機に設置して空気調和機を制御することにより、空気調和機のPFC回路のゼロクロス点でのリップル電流を制御することができる。すなわち、ゼロクロス点付近で入力電圧/入力電流に対応する搬送波周波数については、この搬送波周波数を一定値に限定するか、入力電圧/入力電流の低下に追従して搬送波周波数を上昇させることにより、ゼロクロス点付近でPFC回路の入力電流が入力電圧に追従しない状況を改善し、PFC回路の電流高調波を低減させ、PFC回路の動作安定性を向上させることができる。
【0067】
本発明の実施例の第5態様は、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体を提供する。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、コンピュータ実行可能な命令を記憶した。コンピュータ実行可能な命令は、1つ又は複数の制御プロセッサによって実行されて、例えば、
図7の1つの制御プロセッサ1001によって実行されて、上記の方法実施例における力率補正用搬送波周波数制御方法、例えば、上記の
図3の方法ステップS100~ステップS300、
図4の方法ステップS310~ステップS320、
図5の方法ステップS400~ステップS600、及び
図6の方法ステップS610~ステップS620を上記の1つ又は複数の制御プロセッサに実行させる。
【0068】
上記で説明された装置の実施例は単に概略的なものである。分離された構成要素として説明されたユニットは、物理的に分離されていてもよいし、そうでなくてもよい、すなわち、1つの場所に配置されていてもよいし、複数のネットワークユニットに分散されていてもよい。これらのモジュールの一部又は全部は、実際の必要に応じて、本実施例の目的を達成するために選択されてもよい。
【0069】
上記で開示された方法におけるステップの全部又は一部、システムは、ソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア、及びそれらの適切な組み合わせとして実装されてもよい。物理的コンポーネントの一部又はすべては、中央処理装置、デジタル信号プロセッサ、もしくはマイクロプロセッサなどのプロセッサによって実行されるソフトウェアとして、又はハードウェアとして、又は特定用途向け集積回路などの集積回路として実装されてもよい。このようなソフトウェアは、コンピュータ記憶媒体(又は非一時的な媒体)及び通信媒体(又は一時的な媒体)を含んでもよいコンピュータ読み取り可能な媒体に分散配置されてもよい。当業者に周知のように、コンピュータ記憶媒体という用語は、情報(コンピュータ読み取り可能な命令、データ構造、プログラムモジュール、又は他のデータなど)を記憶するための任意の方法又は技術において実施される、揮発性及び不揮発性の、取り外し可能な、及び取り外し不可能な媒体を含む。コンピュータ記憶媒体は、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリもしくは他のメモリ技術、CD-ROM、デジタル多用途ディスク(DVD)もしくは他の光ディスク記憶装置、磁気カートリッジ、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置もしくは他の磁気記憶装置、又は所望の情報を記憶するために使用することができ、コンピュータによってアクセスすることができる他の任意の媒体を含むが、これらに限定されない。さらに、通信媒体は、通常、コンピュータ読み取り可能な命令、データ構造、プログラムモジュール、又は搬送波もしくは他の送信機構のような変調データ信号中の他のデータを含み、任意の情報配信媒体を含み得ることは当業者には周知である。
【0070】
以上は本発明の好ましい実施例について具体的に説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、当業者は本発明の精神を反しないことを前提に様々な均等な変形又は置換を行うことができ、これら均等な変形又は置換はいずれも本発明の請求項によって限定される範囲内に含まれる。