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特許7565443伝導性信号試験における高周波(RF)信号プローブ不整合に起因したパワー損失について補償するシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】伝導性信号試験における高周波(RF)信号プローブ不整合に起因したパワー損失について補償するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 17/11 20150101AFI20241003BHJP
   H04B 17/21 20150101ALI20241003BHJP
【FI】
H04B17/11
H04B17/21
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023523291
(86)(22)【出願日】2022-06-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-13
(86)【国際出願番号】 US2022033726
(87)【国際公開番号】W WO2022271518
(87)【国際公開日】2022-12-29
【審査請求日】2023-04-24
(31)【優先権主張番号】17/352,553
(32)【優先日】2021-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507308186
【氏名又は名称】ライトポイント・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】LitePoint Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】カオ、 チェン
(72)【発明者】
【氏名】オルガード、 クリスチャン ヴォルフ
(72)【発明者】
【氏名】ワン、 レイ
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-528759(JP,A)
【文献】特表2008-543221(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0103907(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0224343(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 17/11
H04B 17/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検装置(DUT)の伝導性RF信号試験において使用される高周波(RF)信号プローブのパワー損失を補償するシステムを含む装置であって、
1以上の送出RF信号を生成することと1以上の到来RF信号を時間ドメイン処理することとによって1以上のトランシーバ制御信号に応答するRFベクトル信号トランシーバと、
前記1以上の送出RF信号をDUTへ及び前記1以上の到来RF信号をDUTから伝達するRF信号プローブと、
前記1以上の送出RF信号及び前記1以上の到来RF信号を伝達するために、第1信号経路端部を介して前記RFベクトル信号トランシーバに接続され及び第2信号経路端部を介して前記RF信号プローブに接続され、並びに第1信号経路端部及び第2信号経路端部それぞれを介して前記RFベクトル信号トランシーバと前記RF信号プローブとの間に接続される伝導性RF信号経路と、
前記RFベクトル信号トランシーバと通信するように結合される1以上のプロセッサと、
前記1以上のプロセッサに結合され、複数のコンピュータ可読命令を収容する非一時的コンピュータ可読媒体を有する1以上のメモリ装置と
を含み、
前記複数のコンピュータ可読命令は、前記1以上のプロセッサによって実行されると、前記1以上のプロセッサに前記1以上のトランシーバ制御信号を提供させ、
前記1以上の送出RF信号単一周波数トーンを有する反復的な複数の相互に別個のRF信号周波数を有し、
前記1以上の到来RF信号は、前記RF信号プローブからの複数の反射RF信号を有し、
前記複数の反射RF信号は、前記1以上の送出RF信号の少なくとも一部分に関係付けられ、
前記1以上の到来RF信号を時間ドメイン処理することは、
前記複数の反射RF信号の複数の計測信号の大きさを演算することと、
前記複数の相互に別個のRF信号周波数に対応する前記伝導性RF信号経路の複数の既定の経路損失のうち対応する経路損失によって低減された前記複数の反射RF信号の複数の正味の信号の大きさを演算することと
を有する、装置。
【請求項2】
被検装置(DUT)の伝導性RF信号試験において使用される高周波(RF)信号プローブのパワー損失を補償する方法であって、
1以上の送出RF信号を生成することと1以上の到来RF信号を時間ドメイン処理することとによってRFベクトル信号トランシーバが1以上のトランシーバ制御信号に応答することと、
RF信号プローブを介して前記1以上の送出RF信号をDUTへ及び前記1以上の到来RF信号をDUTから伝達することと、
第1信号経路端部を介して前記RFベクトル信号トランシーバに接続され及び第2信号経路端部を介して前記RF信号プローブに接続され、並びに第1信号経路端部及び第2信号経路端部それぞれを介して前記RFベクトル信号トランシーバと前記RF信号プローブとの間に接続される伝導性RF信号経路を介して、前記1以上の送出RF信号及び前記1以上の到来RF信号を伝達することと、
前記1以上のトランシーバ制御信号を提供するために、複数のコンピュータ可読命令にアクセスして前記複数のコンピュータ可読命令を実行することによって前記RFベクトル信号トランシーバと通信することと
を含み、
前記1以上の送出RF信号は単一周波数トーンを有する反復的な複数の相互に別個のRF信号周波数を有し、
前記1以上の到来RF信号は、前記RF信号プローブからの複数の反射RF信号を有し、
前記複数の反射RF信号は、前記1以上の送出RF信号の少なくとも一部分に関係付けられ、
前記1以上の到来RF信号を時間ドメイン処理することは、
前記複数の反射RF信号の複数の計測信号の大きさを演算することと、
前記複数の相互に別個のRF信号周波数に対応する前記伝導性RF信号経路の複数の既定の経路損失のうち対応する経路損失によって低減された前記複数の反射RF信号の複数の正味の信号の大きさを演算することと
を有する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFデータ信号トランシーバの伝導性信号試験における高周波(RF)信号プローブ不整合のパワー損失について補償することに関し、更に詳しくは、伝導性信号試験の際にこのようなパワー損失について補償することに関する。
【背景技術】
【0002】
現在の電子装置の多くは、接続と通信の両方の目的のために無線信号技術を使用する。無線装置は電磁エネルギーを送信及び受信することから、及び2つ以上の無線装置はその信号周波数とパワースペクトル密度とに起因して互いの動作に干渉する潜在性を有していることから、これらの装置及びその無線信号技術は様々な無線信号技術規格仕様を充足していなければならない。
【0003】
このような無線装置を設計する際に、エンジニアは、このような装置がその含まれている無線信号技術に基づいて規定された規格に基づいた仕様のそれぞれを確実に充足するか又は超えるように、細心の注意を払っている。更には、後にこれらの装置が大量生産される際、これらは製造上の欠陥が不適切な動作を引き起こすことのないように試験されるが、その試験には、含まれる無線信号技術規格に基づいた仕様をそれらが充足することが含まれている。
【0004】
このような無線装置の試験には、通常、被検装置(DUT)の受信サブシステム及び送信サブシステムの試験が伴う。試験システムは、DUT受信サブシステムが適切に動作しているかどうかを判定するために、例えば、異なる周波数、パワーレベル、及び/又は信号変調技法を使用することにより、規定された試験データパケットのシーケンスをDUTに送信する。同様にDUTは、DUT送信サブシステムが適切に動作しているかどうかを判定するために、試験システムによる受信及び処理のために試験データパケット信号を様々な周波数、パワーレベル、及び/又は変調技法において送信する。
【0005】
これらの装置をその製造及び組立の後に試験するために、現時点の無線装置試験システムは、通常、試験信号をそれぞれの被検装置(DUT)に提供しそれぞれのDUTから受け取られた信号を分析する様々なサブシステムを有する試験システムを利用する。いくつかのシステム(しばしば、「テスタ」と呼称される)は、少なくとも、DUTに送信されるソース信号を提供するための(例えば、ベクトル信号生成器又は「VSG」の形態における)試験信号の1つ又は複数のソースと、DUTによって生成された信号を分析するための(例えば、ベクトル信号アナライザ又は「VSA」の形態における)1つ又は複数のレシーバを含む。VSGによる試験信号の生成及びVSAによって実行される信号分析は、異なる周波数範囲、帯域幅、及び信号変調特性を伴う様々な無線信号技術規格の充足について様々な装置を試験するためにそれぞれが使用されることを許容するように、一般に(例えば、内部のプログラミング可能なコントローラ又はパーソナルコンピュータなどの外部のプログラミング可能なコントローラの使用を通じて)プログラミング可能である。
【0006】
試験環境は、(1)伝導性若しくは有線、及び/又は(2)放射性若しくは無線という、RF信号伝達の2つの一般的な形態の1つ又は両方を含むことができる。前者(通常は、外部電磁干渉を防止する遮蔽として機能する接地された導体によって取り囲まれた信号導体を有する同軸ケーブルとして実装されている)のケースにおいて、1つの重要な特性は、伝導性信号経路を通じた信号経路損失の特性である。別の特性は、伝導性信号経路とDUTの伝導性信号コネクタのインピーダンスとの間でDUTに接続しているRF信号プローブによって生成される不整合に起因した信号反射及びパワー損失の特性である。信号経路損失及び/又はプローブ不整合を判定するために使用されている実際の技法は簡単なものではあるが、これらは、例えば、それぞれの試験シーケンスの前に及び/又はその最中に、試験動作の一部分としてRF信号接続の中断及び再構成を必要とする。これは、より長い試験時間及びこのような時間遅延に起因した試験費用の増大のみならず、結果的に、信号接続の潜在的な修理又はやり直しをすることになる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
被検RFデータ信号トランシーバ装置(DUT)の伝導性RF信号試験における高周波(RF)信号プローブ不整合に起因したパワー損失について補償するためのシステム及び方法。複数の試験周波数における、RFベクトル信号トランシーバによるRF試験信号の供給は、RF信号経路の既定の損失に基づいたRF信号プローブとRF DUT接続との間の不整合に起因したパワー損失の分離及びこれについての補償を可能にする。
【0008】
例示のための実施形態によれば、被検装置(DUT)の伝導性RF信号試験において使用される高周波(RF)信号プローブのパワー損失を補償するためのシステムは、1つ又は複数の送出RF信号を生成し1つ又は複数の到来RF信号を時間ドメイン処理することによって1つ又は複数のトランシーバ制御信号に応答するRFベクトル信号トランシーバと、それぞれ、DUTへ及びDUTから1つ又は複数の送出RF信号及び1つ又は複数の到来RF信号を伝達するためのRF信号プローブと、1つ又は複数の送出RF信号及び1つ又は複数の到来RF信号を伝達するために、それぞれ、第1信号経路端部及び第2信号経路端部を介してRFベクトル信号トランシーバ及びRF信号プローブに及びRFベクトル信号トランシーバとRF信号プローブとの間に接続された伝導性RF信号経路と、RFベクトル信号トランシーバと通信するように結合された1つ又は複数のプロセッサと、1つ又は複数のプロセッサに結合され、複数のコンピュータ可読命令を収容する非一時的コンピュータ可読媒体を有する1つ又は複数のメモリ装置と、を含む。コンピュータ可読命令は、1つ又は複数のプロセッサによって実行されると、1つ又は複数のプロセッサに、1つ又は複数の送出RF信号が単一周波数トーンを有する反復的な複数の相互に別個のRF信号周波数を有するように、1つ又は複数の到来RF信号がRF信号プローブからの複数の反射RF信号を有し、複数の反射RF信号は1つ又は複数の送出RF信号の少なくとも一部分に関係付けられ、及び、1つ又は複数の到来RF信号を時間ドメイン処理することが、複数の反射RF信号の複数の計測信号の大きさを演算することと、複数の相互に別個のRF信号周波数に対応する伝導性RF信号経路の複数の既定の経路損失の対応するものによって低減された複数の反射RF信号の複数の正味の信号の大きさを演算することと、を含むように、1つ又は複数のトランシーバ制御信号を提供するようにさせる。
【0009】
更なる例示のための実施形態によれば、被検装置(DUT)の伝導性RF信号試験において使用される高周波(RF)信号プローブのパワー損失を補償するための方法は、1つ又は複数の送出RF信号を生成し1つ又は複数の到来RF信号を時間ドメイン処理することにより、RFベクトル信号トランシーバによって1つ又は複数のトランシーバ制御信号に応答することと、それぞれ、DUTへ及びDUTからRF信号プローブを介して1つ又は複数の送出RF信号及び1つ又は複数の到来RF信号を伝達することと、それぞれ、第1信号経路端部及び第2信号経路端部を介して、RFベクトル信号トランシーバとRF信号プローブとに及びRFベクトル信号トランシーバとRF信号プローブとの間に接続された伝導性RF信号経路を介して、1つ又は複数の送出RF信号及び1つ又は複数の到来RF信号を伝達することと、複数のコンピュータ可読命令にアクセスしこれらを実行することにより、RFベクトル信号トランシーバと通信することと、を含む。コンピュータ可読命令の実行は、1つ又は複数の送出RF信号が単一周波数トーンを有する反復的な複数の相互に別個のRF信号周波数を有するように、1つ又は複数の到来RF信号がRF信号プローブからの複数の反射RF信号を有し、複数の反射RF信号は1つ又は複数の送出RF信号の少なくとも一部分に関係付けられ、及び、1つ又は複数の到来RF信号を時間ドメイン処理することが、複数の反射RF信号の複数の計測信号の大きさを演算することと、複数の相互に別個のRF信号周波数に対応する伝導性RF信号経路の複数の既定の経路損失の対応するものによって低減された複数の反射RF信号の複数の正味の信号の大きさを演算することと、を含むように、1つ又は複数のトランシーバ制御信号が提供されるようにする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】伝導性RF信号試験用の一般的な試験環境を描く。
図2】例示のための実施形態による伝導性RF信号用の試験環境を描く。
図3】例示のための実施形態による信号データフィルタの設計及び使用を描く。
図4】従来のOSL技法及び例示のための実施形態による技法を使用した経験的試験データの比較を描く。
図5】例示のための実施形態による伝導性RF信号試験用の試験環境を描く。
図6】従来のRFパワーメータ及び例示のための実施形態によるRFプローブとしてSMA同軸コネクタを使用した経験的試験データの比較を描く。
図7】対応する入射及び反射RF信号の間の時間関係を描く。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下は、本出願において特許請求されている発明の例示のための実施形態に関する添付図面を参照した詳細な説明である。このような説明は、本発明の範囲との関係における限定ではなく、例示となることを意図したものである。このような実施形態は、当業者が本発明を実施することを可能にするように十分詳細に記述されており、及び、その他の実施形態が本発明の精神又は範囲を逸脱することなしにいくつかの変形を伴って実施され得ることを理解されたい。
【0012】
本開示の全体を通じて、文脈に反する旨の明瞭な通知が存在しない場合、記述されている個々の回路要素は、その数が単数又は複数であり得るものと理解されたい。例えば、「回路」及び「回路構成」という用語は、単一コンポーネント又は複数のコンポーネントを含んでいてもよく、これらは、能動的及び/又は受動的であってもよく、記述されている機能を提供するために一緒に(例えば、1つ又は複数の集積回路チップとして)接続されているか又は結合されている。これに加えて、「信号」という用語は、1つ又は複数の電流、1つ又は複数の電圧、又はデータ信号を意味し得る。図面においては、同一の又は関係する要素は、同一又は関係する英字、数字、又は英数指定子を有する。更には、本発明は、(好ましくは、1つ又は複数の集積回路チップの形態を有する)別個の電子回路構成を使用した実装形態に関連して記述されるが、このような回路構成の任意の部分の機能は、この代わりに、処理対象の信号周波数又はデータレートに応じて1つ又は複数の適切にプログラミングされたプロセッサを使用して実装することもできる。更には、図が様々な実施形態の機能ブロックのダイアグラムを示している場合、その機能ブロックは必ずしも、ハードウェア回路構成間の分割を示すものではない。
【0013】
図1を参照すると、伝導性RF信号試験用の一般的な試験環境10aは、テスタ12(例えば、VSG及びVSAの組合せ又はベクトルトランシーバ)と、DUT16に接続するための伝導性RF試験信号経路14と、を含む。信号経路14は、RFコネクタ15bを介してテスタ12に対して及び別のRFコネクタ15cを介してDUT16に対して接続された1つ又は複数のRFケーブル及び1つ又は複数のフィクスチャ15aを含むことができる。DUT16を正確に試験するために、信号経路14のRF信号損失は、DUT16によって及びこれから受け取られた信号の正確な計測を可能にするように判定されなければならない。現時点においては、これを実行するための3つの技法が一般的である。
【0014】
1つの方法は、パワーメータが受け取るものとソースからの既知の信号パワーとの間の絶対的なパワー差を計測するための、DUT16の代わりの、パワーメータ(図示されてはいない)に対してRF信号経路14を介して接続されたRF信号ソース(例えば、テスタ12)の使用を含む。但し、これは、ソースとパワーメータとの間の計測される差の高い正確性のみならず、信号経路14を介して信号ソースとパワーメータとを接続するためのDUT試験構成の再構成を必要とする。
【0015】
第2の方法は、更に直接に挿入損失(Sパラメータ用語においてS21としばしば呼称されているもの)を計測するための、それぞれの接続15b、15cにおけるRF信号経路14に対する2つのポートを有するテスタ12の代わりの2ポートベクトルネットワークアナライザ(VNA、図示されてはいない)の使用を含む。従って、これは、例えば、VNAなどの相対的に高価な試験機器のみならず、VNAに接続するためのDUT試験構成の再構成をも必要とする。
【0016】
第3の方法は、RF信号経路14に対する1つの接続15bにおけるテスタ12の使用と、開路接続(OPEN)、短絡回路接続(SHORT)、及び負荷接続(LOAD)のそれぞれごとのリターン損失の計測を可能にするための、その他の接続15cにおいて毎回試験されるRFシステムの適切な特性インピーダンス(例えば、50Ωの抵抗性)を有する端子接続(OPEN、SHORT、及びLOAD)の使用と、を含む。この結果、経路損失を算出するために、すべての3つの計測された結果を使用することができる。これは、リターン損失(SパラメータS11)を計測するためにエミュレートされたベクトルネットワークアナライザ(VNA)として通常のDUT試験構成を事実上使用するという効果を有する。また、現在のVSA/VSGシステムは、同時VSG/VSA動作をサポートし送信された及び受信された信号の適切な処理を実行している場合にこのような計測を実行することができる。この方法はDUT試験構成を維持することを可能にし得るが、依然として、OPEN、SHORT、及びLOAD計測用の特別なコネクタの設計のみならず、これら3つの特別なコネクタ間で切り替えるための3つの動作を必要とする(これは、しばしば、OSL方法と呼称される)。
【0017】
これらの方法の欠点は、本出願において開示されている例示のための実施形態のシステム及び方法を使用することにより、回避することができる。更に詳細に後述するように、ベクトルトランシーバ(例えば、テスタ12)は、RF信号経路14の入力15bに接続され、OPENは出力15cに接続されている。利点として、DUT試験構成を維持することと、更なる又は異なる試験機器に対するニーズを回避し、これにより動作時間及び費用を節約することと、が挙げられる。更には、特別なOPENコネクタは有用であり得るが、必須でなくてもよく、その理由は、その代わりに単にRF信号経路14の出力接続15cを未終端状態にすることにより、OPENとして機能し得るからである。ほとんどの自動化された試験構成において、RF信号プローブは、例えば、DUTなどの負荷に接続されていないなどのように未終端状態にある場合、OPEN接続として機能し得るケーブルの端部において使用することができる。
【0018】
図2を参照すると、例示のための実施形態による伝導性RF信号試験用の試験環境10bは、テスタ12(例えば、ベクトル信号トランシーバ)と、入力RFコネクタ15b及び出力RFコネクタ15cを介してテスタ12に接続された1つ又は複数のRFケーブルと1つ又は複数のフィクスチャ15aとを含む伝導性RF試験信号経路14と、を含む。但し、経路損失について試験する場合は、出力RFコネクタ15cはOPEN接続15cを提供するように未終端状態のままにされ得る。
【0019】
任意選択の初期手順として、使用される1つ又は複数の試験ハードウェア構成についての情報を確立又はその他の方法で判定することができる。例えば、このような情報は、相互接続されたケーブルの数、それぞれのケーブルの長さ、配置されているコネクタの数、などのようなRF信号経路14に関する詳細を含み得る。記述されているように、出力コネクタ15cをDUT16に接続する代わりに、高周波OPENコネクタが接続されるか、或いは、出力コネクタ15cが未接続状態のままにされる(即ち、未終端状態とされる)。
【0020】
(例えば、対応する周波数マージンを有する)計測対象のRF試験信号周波数の範囲は、意図又は予期されるDUT動作に基づいて選択又は定義することができる。ベクトル信号トランシーバテスタは、そのトランスミッタによってRF試験信号周波数のそれぞれごとにベースバンド周波数において単一DCトーンを提供(例えば、生成及び放出)するように及びそのレシーバがRF試験信号周波数のそれぞれごとに対応するリターン信号をキャプチャすることを可能にするように、プログラミング又はその他の方法で制御することができる。キャプチャされたI/Q信号サンプルは、単一複素数を演算するために時間キャプチャにわたって平均化することができる。周波数の定義された範囲の一部分又はすべてにわたって入射信号を送信する及び反射された信号をキャプチャするこれらのステップを反復することにより、そのそれぞれが定義された周波数の個々のものに対応する複素数のアレイの演算が可能になる。計測対象のそれぞれの周波数ごとに経路損失を算出するために、このような複素数のアレイを既知の原理に従って処理することができる。
【0021】
図3を参照すると、この処理20は、その特性25がリターン信号データ21をフィルタリング26するために使用され得るフィルタ24を設計する際に使用される時間又は距離情報23(更に詳細に後述する)を抽出するためにリターン信号データ21が処理22され得るステップを含むことができる。試験されている周波数における絶対的経路損失29を演算28するために、フィルタリングされたリターン信号データ27を平均化することができる。このような処理20は、例えば、(例えば、入射及び/又は反射信号パルスが移動する)距離又は(例えば、入射及び/又は反射信号の)周波数に対応した方法に沿って処理される計測信号データを処理、フィルタリング、及び平均化することにより、同一の目的を事実上果たすように距離ドメイン又は周波数ドメインの観点から構造化又は適用することができる。
【0022】
図4を参照すると、従来のOSL方法及び上述の例示のための実施形態による方法を使用して1GHz未満から5GHz超までの周波数範囲にわたって計測された経路損失の経験的試験結果の線形グラフは、本明細書において記述されている相対的に有利な技法が従来のOSL技法のものに緊密に追随する試験結果を生成する方式を示している。
【0023】
上述のように、従来の経路損失計測及び補償技法は、DUTに接続するRFプローブにおける1つ又は複数の更なる信号損失をわずかに補償することの説明がつかず、これにより、事実上、RFプローブとDUT上のRFコネクタとの間に完全な整合が存在すると仮定される。但し、DUTにRFプローブを正常に接続することは主に機械的動作に依存しており、適切な物理的力の適用によって制御される。従って、複数の接続が実施され除去された後すぐに、関連する表面摩耗の変化及び力の印加により、DUTコネクタとRFプローブとの間の整合の劣化が引き起こされる。これは、上述のように経路損失計測のみによっては検出又は補償されない、信号経路における更なるパワー損失を結果的にもたらす。このようなRFプローブコネクタ不整合によってもたらされるこのような更なるパワー損失は、結果的にDUTの再試験のレートを高める可能性があり、これはDUT接続の更なるインスタンスを必要とし、製造歩留まりの低下につながり得る。
【0024】
図5を参照すると、例示のための実施形態に従って伝導性RF信号試験を実行する際に不整合状態のRFプローブを検出し、これについての補償を可能にするための試験環境40は、テスタ42(例えば、VSG/VSAの組合せ又はベクトル信号トランシーバ)と、DUT16に対する接続を可能にするための伝導性RF試験信号経路44と、を含む。信号経路44は、RFコネクタ45bを介してテスタ42に及びRFプローブ組立体45cを介してDUT16に接続された1つ又は複数のRFケーブルと1つ又は複数のフィクスチャ45aとを含むことができる。DUT16に対する接続は、入力RFプローブコネクタ45cb、RFプローブ45ca、及び出力RFプローブコネクタ45ccを介して完了され、これらはDUT16のRFコネクタ17に接続される。
【0025】
更に詳細に後述するように、例示のための実施形態によれば、リターン信号を計測してRFプローブ不整合によって生成される反射信号を推定し、次いでこのような反射を更なる信号経路パワー損失として解釈することにより、伝導性RF信号試験におけるRFプローブ不整合のパワー損失についての補償を提供することができる。利点には、DUT試験構成が維持されることが挙げられ、その理由は、DUTがその望ましい試験構成にある状態のまま、任意の更なるパワー損失が計測され得るからである。テスタによって完全な制御が保持され得るが、その理由は、DUT制御アクションが不要であるからである。このような更なるパワー損失についての補償は、試験構成内へのそれぞれのDUTの挿入の後に提供され、これにより、DUT高周波試験の精度を向上させることができる。
【0026】
このプロセスは、まず、DUTをRFプローブに接続することによって実行することができる。これは、計測の実行を要する特定の周波数を定義することによって先行されてもよく、これによって後続されてもよく、又はこれと同時に実行されてもよい。ベクトルトランシーバテスタは、ベースバンド信号周波数において単一DCトーンを送信し得る一方で、このような入射信号送信の任意の結果的に得られる反射をテスタのレシーバによってキャプチャすることができる。単一複素数を提供するために、キャプチャされたI/Qサンプルの時間に伴う平均を演算することができる。このような入射信号の送信、反射信号のキャプチャ、及び平均の演算は、周波数の定義された範囲にわたって反復することができる。最終的に、RFプローブ不整合によってもたらされる反射信号を判定するために、演算された複素数を処理することができる。
【0027】
このRFプローブ不整合によってもたらされる反射信号を判定するための演算された複素数の処理は、上述の従来のOSL方法に伴って予め判定されたRF信号経路損失データとの関連において実行することができる。これは、オリジナルの試験構成のRF信号経路の影響の除去を許容するとともに、RFプローブ不整合によってもたらされ補償される反射信号に帰される、任意の1つ又は複数の残留損失が伴う。或いは、この代わりに、このような処理は、OPEN(例えば、未終端状態にある)RF信号経路端子接続が整合問題によってもたらされるRFプローブからの反射信号を抽出するためにベクトルトランシーバテスタと共に使用されている上述の技法を使用することによって判定されたRF信号経路損失データとの関連において実行することもできる。反射信号が既定の閾値を超過したか又はその他の方法で横断した場合には、このような問題が修正されるか又はその他の方法で解決されることを可能にするように、試験を中止することができる。さもなければ、DUT高周波試験が継続している最中に、追加されたパワー損失についての補償をテスタによって適用することもできる。
【0028】
図6を参照すると、従来のパワーメータ方法及び上述の例示のための実施形態による方法を使用する1GHz未満からほぼ6GHzまでの周波数範囲にわたるRFプローブ反射に起因した計測経路損失の経験的試験結果の線形グラフは、本明細書において記述されている有利な技法が従来のパワーメータ技法のものに緊密に追随する試験結果を生成する方式を示している。
【0029】
図7を参照すると、上述のように、これらの動作は、時間又は距離ドメインの観点から実行することができる。ここで描かれているように、当業者には容易に理解されるように、時間及び距離ドメインにおける処理の相関関係については、反射された信号パルスが入射試験パルスの送信に後続して移動しなければならない距離に関係していることが既知である時間遅延ΔTの後に反射信号パルスがテスタのレシーバによってキャプチャされることになるという事実の観点から、相対的に容易に理解することができる。
【0030】
本発明の動作の構造及び方法の様々なその他の変更及び代替物については、本発明の範囲及び精神を逸脱することなしに当業者に明らかとなろう。本発明は、特定の好適な実施形態との関連において記述されているが、特許請求されている本発明はこのような特定の実施形態に不当に限定されてはならないことを理解されたい。添付の請求項が本発明の範囲を定義しており、これにより、これらの請求項及びその均等物の範囲内の構造及び方法がカバーされているものと解釈されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7