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特許7565451イオンベースの放射線治療で使用するための放射線変調器アセンブリ及び放射線送出装置並びにイオンベースの放射線治療のための計画方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】イオンベースの放射線治療で使用するための放射線変調器アセンブリ及び放射線送出装置並びにイオンベースの放射線治療のための計画方法
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/10 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
A61N5/10 H
A61N5/10 P
A61N5/10 J
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023541932
(86)(22)【出願日】2022-02-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-14
(86)【国際出願番号】 EP2022052589
(87)【国際公開番号】W WO2022167528
(87)【国際公開日】2022-08-11
【審査請求日】2023-09-05
(31)【優先権主張番号】21155682.4
(32)【優先日】2021-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522454806
【氏名又は名称】レイサーチ ラボラトリーズ エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】トラネウス,エリック
【審査官】北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-097683(JP,A)
【文献】特開2016-105844(JP,A)
【文献】特表2015-530194(JP,A)
【文献】特許第3751440(JP,B2)
【文献】特開2000-176028(JP,A)
【文献】特表2003-534066(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変調ホイール(15)及び前記変調ホイール(15)のアップストリームに配置された偏向デバイス(11)を備える放射線変調アセンブリ(10)を備える放射線送出装置(20;30)であって、前記変調ホイールは、円形又は楕円形の外周を画定し、前記外周周辺に変動する厚みを有する、リムとして形成され、前記変調ホイール(15)は、放射線源(13)から患者へと進行するビームが前記変調ホイールの前記リムと交差する様式で配置され、前記変調ホイールは、前記ビームが前記外周周辺の変動位置において前記リムと交差する様式で回転するように配置される、放射線送出装置であり、
前記放射線送出装置は更に、治療中に患者を保持するように配置された支持体(23;31)を備え、
前記変動する厚みは、360度にわたって最大厚みから最小厚みへと連続的に減少する厚みを含む、
放射線送出装置。
【請求項2】
変調ホイール(15)及び前記変調ホイール(15)のアップストリームに配置された偏向デバイス(11)を備える放射線変調アセンブリ(10)を備える放射線送出装置(20;30)であって、前記変調ホイールは、円形又は楕円形の外周を画定し、前記外周周辺に変動する厚みを有する、リムとして形成され、前記変調ホイール(15)は、放射線源(13)から患者へと進行するビームが前記変調ホイールの前記リムと交差する様式で配置され、前記変調ホイールは、前記ビームが前記外周周辺の変動位置において前記リムと交差する様式で回転するように配置される、放射線送出装置であり、
前記放射線送出装置は更に、治療中に患者を保持するように配置された支持体(23;31)を備え、
前記変動する厚みは、最小厚みから180度離れた位置における最大厚みへと両方の方向に連続的に増加する厚みを含む、
放射線送出装置。
【請求項3】
前記偏向デバイス(11)は、前記偏向デバイス(11)により偏向されたビームが前記変調ホイール(15)の前記リムと交差するように、少なくとも1つの次元で前記ビームを偏向させるように配置される、請求項1又は2に記載の放射線送出装置。
【請求項4】
前記変調ホイール(15)は、前記偏向デバイス(11)を通過した後のビームが前記リムと1回交差する様式で、前記偏向デバイス(11)に対して傾斜した配向で配置される、請求項1~3のいずれか一項に記載の放射線送出装置。
【請求項5】
前記偏向デバイス(11)によって偏向され、前記変調ホイール(15)を通過するような方向で、ビームを提供するように配置された放射線源(13)を更に備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の放射線送出装置。
【請求項6】
前記偏向デバイス(11)は、前記ビームを偏向させるための磁界を作成するように配置されたデバイスを備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の放射線送出装置。
【請求項7】
前記放射線変調アセンブリ(10)は、前記変調ホイール(15)のダウンストリームに開口デバイス(19)を更に備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の放射線送出装置。
【請求項8】
前記偏向デバイス(11)は、単一磁石を備える、請求項1~7のいずれか一項に記載の放射線送出装置。
【請求項9】
前記偏向デバイス(11)は、回転の方向に垂直に、前記ビームを動かすように配置される、請求項1~8のいずれか一項に記載の放射線送出装置。
【請求項10】
前記支持体は、治療中に前記患者(21)が座り得る椅子(23)であり、前記椅子は、治療中に前記ビームが水平面内の異なる角度から前記患者に入るように、第1の軸(a)を中心に回転するように配置される、請求項1~9のいずれか一項に記載の放射線送出装置。
【請求項11】
前記椅子(23)は、治療中に第2の軸(a)を中心に回転するように配置された回転可能ベースプレート(25)上に、前記第2の軸(a)を中心に回転可能に取り付けられ、前記椅子は、前記第1の軸(a)が前記第2の軸(a)から離間されるように取り付けられる、請求項10に記載の放射線送出装置。
【請求項12】
前記椅子(23)は、回転可能に取り付けられ、治療中に第1及び第2の軸に沿って線形に移動するように配置される、請求項10又は11に記載の放射線送出装置。
【請求項13】
前記支持体は寝椅子(31)であり、前記放射線送出装置はガントリーを備え、前記ガントリーは前記放射線源及び前記偏向デバイスを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の放射線送出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[001] 本発明は、イオンベースの放射線治療で使用するためのデバイスに関し、特に、ペンシルビームスキャニングによって線量が送出される方法、及びこうしたデバイスを利用するシステムに関する。本発明は、こうしたシステムで使用するための送出計画を作成する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
[002] ペンシルビームスキャニングにおいて、陽子又は他のイオンのビームがスキャニングパターンで患者に送出される。ビームは、異なる深さのターゲットに到達するための多数のエネルギー層を含み、各層は、ターゲットにわたって横方向に分布した多数のスポットを含む。このようにして、線量は必要に応じてターゲット全体にわたって3次元に分布可能である。エネルギー層内の各スポットの送出は高速であるが、エネルギー層間の変化は比較的遅く、典型的には0.3秒から1秒の間を要する。したがって、いくつかの計画方法は、効率的な計画送出を実行可能にするために、エネルギー層の数を減少させることに焦点を当てている。
【0003】
[003] これは特に、ターゲット体積が、通常はターゲット体積内部に中心点を備えるアークセグメントによって画定される、ある範囲の方向から照射される、アーク治療に適用される。異なる方向の各々からのいくつかのエネルギー層の使用により、送出時間を実際よりも長くすることができる。
【0004】
[004] 送出時間は、FLASH治療における制限因子でもある。FLASH治療は、短い時間間隔の下で高い線量率で線量を送出することを含み、腫瘍性組織の反応は変わらずに、健康な組織に損傷を与えることが少ないという点に関して、有利な効果を有することがわかっている。FLASH治療に必要な短い時間間隔は、エネルギー層の変化を生じさせる遅延がFLASH効果を妨げることを意味する。
【0005】
[005] Vozenin等の、The advantage of FLASH radiotherapy confirmed in mini-pig and cat-cancer patients, HAL Id:hal-01812514,https://hal-univ-rennes1.archives-ouvertes.fr/hal-01812514v2は、以前マウスに見られていた、正常な組織とFLASH治療を受けた腫瘍との間の差分効果が、ブタ及びネコにも見られたことを確認した。米国特許出願第2019/0022411号もFLASH治療に関し、同じ線量に対して副作用が低減されると考えられている。40Gy/s又はそれ以上、多くは500Gy/sを超えるまでの線量率について記載されており、線量の一部を数分の1秒で送出することが可能である。
【0006】
[006] 多少異なる手法がグリッド治療であり、高い、例えば15又は20Gyの線量が、1又は数分割でのグリッドの形状で与えられる。言い換えれば、空間的に分割された線量分布が達成される。グリッドは、幾何学的に離間したペンシルビームを用いて、又は、いくつかの幾何学的に離間したビームを通過させることになるスルーホールのパターンを備える開口ブロックを使用することによって、達成され得る。ビーム間の皮膚の影響を受けない部分が損傷した部分の治癒を助けるため、この形式の治療は皮膚への損傷を低減させることがしばらく前から知られていた。グリッド治療は、光子治療、又は、陽子などの荷電粒子と共に使用可能である。陽子の場合、グリッドは、ビームを分割するためのスリット又はホールを有する物理コリメータを使用することによって配置可能である。代替として、コリメートされていないペンシルビームの好適なパターンが適用され得る。
【発明の概要】
【0007】
[007] 本発明の目的は、特にアーク治療で使用するためであるが限定されない、複数のエネルギー層を備えるビームの、患者へのより高速な送出を実行可能にすることである。本発明の実施形態は、アーク治療とグリッド又はFLASH治療との組み合わせに特に好適である。
【0008】
[008] 本発明は、変調ホイールを備える放射線変調アセンブリを備える放射線送出装置に関し、変調ホイールは、円形又は楕円形の外周を画定し、外周周辺に変動する厚みを有する、リムとして形成され、変調ホイールは、放射線源から患者へと進行するビームが変調ホイールのリムと交差する様式で配置され、変調ホイールは、ビームが外周周辺の変動位置においてリムと交差する様式で回転するように配置される。装置は更に、治療中に患者を保持するように配置された支持体を備え、支持体は、治療中に患者が座り得る椅子であり、椅子は、治療中にビームが水平面内の異なる角度から患者に入るように、第1の軸を中心に回転するように配置される。このようにして、ビームエネルギーは、変調ホイールが回転する際に変動する厚みを有する材料をビームが通過する際に変調され、変調されたビームは異なる角度から患者に入る。
【0009】
[009] 放射線変調アセンブリは、変調ホイールのアップストリームに配置された偏向デバイスを更に備え、偏向デバイスは、偏向されたビームが変調ホイールのリムと交差する様式で、少なくとも1つの寸法でビームを偏向させるように配置される。いくつかの実施形態において、偏向デバイスは、ビームを偏向させるように配置された双極子磁石などの磁石を備える。磁石の代わりに、磁界を作成するための別の配置が使用され得る。
【0010】
[010] ビームを曲げるための偏向デバイスの使用により、狭いポールギャップを備える単一磁石のみを使用する扇パターンのスポットの配置を可能にする。これは、非常に軽くコンパクトなデバイスに寄与し、また、スキャンラインに沿って行き来する非常に高速のスポットスキャニングも可能にする。好ましくは、ビームは、患者の身体を横切るビームの相対的な動きに垂直な1つの次元に偏向される。
【0011】
[011] 患者の周辺のビームの相対的な回転と、回転の方向に垂直な成分を有する方向にビームを動かす偏向デバイスとの組み合わせは、単一のペンシルビームが、異なる回転からの患者もカバーしながら、患者のより広いエリアをカバーするために変動する角度で偏向可能であることを意味する。好ましくは、偏向は回転に対して垂直である。典型的には、回転は患者の外周のすべて又は一部をビームにカバーさせ、偏向は患者のより大きな垂直エリアをビームにカバーさせる。
【0012】
[012] これにより、送出を減速させることなく、複数のエネルギー層を伴うARC治療が可能になる。これにより、時間がかかる要因であるエネルギー層の考慮の必要がないため、計画プロセスが簡略化される。
【0013】
[013] これはまた、放射線源が十分に高い線量率で放射線を提供することができる場合、ペンシルビームを用いるARC治療と組み合わされた効率的なFLASH治療も実行可能にする。これは特にリスク臓器において有益である。椅子の角度の離散セットが使用され、リスク臓器内の隣接する椅子の角度間に低い線量ギャップが存在するように離間される場合、効果は強化される。
【0014】
[014] 本発明の実施形態に従ったセットアップは、ARC治療とグリッド治療との組み合わせも実行可能にする。
【0015】
[015] 変調ホイールは、任意の好適な様式で配置され得る。例えば、偏向デバイスに対して傾斜した配向では、偏向デバイスを通過した後のビームがリムと1回交差する様式で配置され得る。偏向デバイスを通過した後のビームがリムと2回交差し、その間にリムの内部を通過する様式でも、配置され得る。
【0016】
[016] 放射線変調アセンブリは更に、偏向デバイスによって偏向され、変調ホイールを通過するような方向で、静的ビームを提供するように配置された放射線源を備える。代替として、放射線源は、放射線変調アセンブリとは別に配置され得る。
【0017】
[017] 前述の請求項のいずれか一項に記載の放射線変調アセンブリは、更に、変調ホイールのダウンストリームに開口デバイスを備え得る。本開口デバイスは、当分野で既知の任意のタイプの静的又は調整可能な開口デバイスであり得る。
【0018】
[018] 椅子は更に、治療中に第2の軸を中心に回転するように配置された回転可能ベースプレート上に、回転可能に取り付けられ得る。この場合椅子は、第1の軸が水平面内で第2の軸から離間されるように取り付けられる。これにより、患者のより複雑な動きが可能になり、例えば凹形状を含むより複雑なパターンで放射線を送出できるようになる。2本の軸、典型的には2本の直交軸に沿って、椅子を線形に移動させることによっても、同じ効果を達成できる。
【0019】
[019] 代替として、支持体は、患者が従来の方法で横たわることが可能な寝椅子であり得、デバイスはガントリーを備え、ガントリーは放射線源及び偏向デバイスを含む。
【0020】
[020] 本発明の態様は、患者に治療を施すための放射線治療計画を最適化するコンピュータ実装方法にも関し、最適化は、治療計画最適化問題及び前述のような治療装置のモデルを使用して、実行される。治療計画最適化問題は、ターゲット線量カバレッジ、及びリスク臓器を超高線量から保護することについて、目標(目的関数)を定義することによって設定される。加えて、計画の堅固さ、及び、例えばLET及び可変RBEの線量目的についての目標を考慮することができる。送出がFLASH条件又はGRID条件の下である場合、FLASH治療及びGRID治療の効果についての関連性の目的を考慮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明を、例として及び添付の図面を参照しながら下記でより詳細に説明する。
【0022】
図1a】本発明の実施形態に従った変調デバイスを示す図である。
図1b】変調デバイスの一部である変調ホイールの代替形状を示す図である。
図1c】変調デバイスの一部である変調ホイールの代替形状を示す図である。
図2a図1aに従った変調デバイスを含む放射線治療装置の実施形態を開示する。
図2b図1aに従った変調デバイスを含む放射線治療装置の実施形態を開示する。
図3図1aに従った変調デバイスを含む放射線治療装置の実施形態を開示する。
図4a図2a、図2b、及び図3に従った放射線治療装置の異なる実施形態における、ビームと患者との交差を示す図である。
図4b図2a、図2b、及び図3に従った放射線治療装置の異なる実施形態における、ビームと患者との交差を示す図である。
図5図2a、図2b、及び図3のうちのいずれか1つの実施形態に従った装置からの結果であり得る、ビームパターンを示す図である。
図6】本発明の態様に従った方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[021] 図1aは、本発明の実施形態に従った変調アセンブリ10を示す。変調アセンブリは、放射線源13から垂直方向に放出されるビームを偏向させるように配置された偏向デバイス11を含む。偏向デバイス11のダウンストリームには、変調ホイール15が回転可能なように配置される。変調ホイール15は、半径方向に変動する厚みを有する円形又は楕円形のリムとして形成される。放射線源13、偏向デバイス11、変調ホイール15、及び、場合によっては変調デバイスの他の構成要素の機能を制御するための、制御システム17が提供される。制御システム17は、ビーム位置及びビーム電流がホイールの回転に適合することを保証するように配置される。これは、ホイールとビーム電流及び位置、又はそれら2つの組み合わせとの同期化によって、変調ホイール15の回転との同期化において、ビーム電流及びビーム間隔を変調することによって実行され得る。変調デバイス10は、好ましくは、可動部分を保護するためにボックス内に封入される。
【0024】
[022] 回転ホイールの厚みは、ホイールを通過した後に結果として生じるイオンのエネルギーが、ビームの方向でターゲットをカバーするために必要な範囲にわたって延在するように、変動すべきである。厚みにおける変動は、任意の好適な様式で実装され得る。シンプルで好適な様式が図1bに示されており、厚みは360度にわたって最大厚みから最小厚みへと徐々に減少する。代替の実施例が図1cに示されており、厚みは、最小厚みから、最小厚みから180度離れた位置における最大厚みへと、両方の方向に増加する。理解されるように、変動する厚みは、ホイールが望ましいようにビームに影響を与える限り、ランダムな変動を含む任意の好適な様式で構成可能である。当業者であれば理解されるように、正確な厚みは、放出ビームのエネルギー、ターゲットの深さ及び拡張、ホイールの材料、及び他の要因に従って適合される。変調アセンブリ10は、結果として異なるビーム角度を生じさせる、患者に対するビームの回転との組み合わせで使用され得る。これを達成するために、患者は、回転する椅子などの支持体上に座るか、又は、回転ガントリーを備える寝椅子上に乗り得る。これらの両方の実施形態を下記で考察する。
【0025】
[023] ホイールは、偏向デバイスによって偏向されたビームがホイールのリムを1回通過するように、傾いた(tilt)又は傾斜した(slant)位置でビーム内に配置される。そのように、ビームは、ホイールが回転するにつれて経時的に、ホイールの各回転位置において厚みの影響を受ける。ビームは、ホイールの内側から外側へと、又は外側から内側へと、リムを通過するように配置され得る。
【0026】
[024] 代替として、変調ホイール15は、ビームが、第1の位置において外側からホイールの内部を通り、その後第2の位置において内側から外側へと通過するように、位置決め可能である。この場合、第1及び第2の位置の両方におけるリムの総厚みは、ビームのエネルギーに影響を与える。ホイールの回転は、ビーム角度の変化よりもかなり高速、例えば毎秒10回転である。
【0027】
[025] 放射線源は、所望の治療を施すための任意の好適な放射線源、典型的には200MeVのエネルギーを有する水平の静的ペンシルビームとすることができる。ビームは、偏向デバイスを用いて一方向に偏向される。いくつかの実施形態の場合、偏向は垂直方向である。
【0028】
[026] 偏向デバイスは、ビームがターゲットの高さをカバーするのに必要なエリアにわたり、患者の輪郭にわたって垂直経路に沿って動くように、ビームを偏向させるように配置された、双極子磁石などの、少なくとも一方向にビームを偏向させるのに好適な任意のデバイスであり得る。
【0029】
[027] 前述の構成要素に加えて、変調デバイスは、変調ホイールのダウンストリームに位置決めされた開口デバイス19を備え得る。この開口デバイス19は、任意の好適な静的又は動的開口デバイスであり得、ターゲットにおいて均一に近い線量を可能にしながら、リスク臓器において線量のギャップ対谷の比率(gap to valley ratio)を増幅させる働きをし得る、リスク臓器のより大きな部分にわたって線量が広がるのを防ぐ働きをする。
【0030】
[028] 図2aは、図1a、図1b、及び図1cに関連して論じたような変調デバイス10を含む、放射線治療システム20の一実施形態を開示する。この実施形態において、治療される患者21は、矢印25によって示されるように、独自の軸aを中心に回転可能な様式で取り付けられた椅子23に座る。こうした回転椅子は当分野で既知である。典型的な回転速度は毎分1回転である。このように、変調ホイールの回転は椅子の回転よりもかなり速いため、ビームは患者の回転の間何度もエネルギーレベルの範囲全体にわたって変調されることになる。患者の遅い回転と組み合わされたビームのこの変調は、従来、エネルギーレベルの変化によって生じる遅延なしにARC計画を患者に送出できることを意味する。放射線源の観点からすれば、アーク治療は、単一の垂直線に沿った1つの均一ビームとして送出可能である。上記で説明したように、偏向デバイスは、ビームが垂直方向に患者の身体の一部をカバーするように、ビームを垂直方向に偏向させる。
【0031】
[029] 図2bは、椅子23がベースプレート27上に取り付けられる、図2aの実施形態の発展を示す。椅子23とベースプレート27との相対的な動きを示すために、上方から見たときの、椅子を備えるデバイスの部分のみが示されている。図2bに示されるデバイスにおいて、椅子23は、図2aのようにその軸aを中心に回転可能なように取り付けられる。加えて椅子23は、地面29に取り付けられたベースプレート27上に、ベースプレート27が、椅子の軸aに関して水平方向に移動されるベース軸aを中心に回転可能な様式で、取り付けられる。ベース軸aは、好ましくはベースプレートに関して偏心もしている。このようにして、椅子及びベースプレートの同時回転は、患者の回転中にアイソセンタ位置を変化させることができるため、患者21の内部により複雑なパターンの放射線を生成可能である。これは特に図2bに示されるような凹形状の治療に有利である。
【0032】
[030] 図2a及び図2bのセットアップについて可能な寸法は、例えば椅子の回転軸aから測定した場合、例えば放射線源から患者まで3メートルであり得、偏向デバイスは患者から2.5メートルに位置決めされ得る。ビームの偏向は、ビームが患者の表面の高さ10cmをカバーできるように選択され得る。理解されるように、これらの寸法は単なる提案であり、寸法は任意の好適な様式で選択され得る。
【0033】
[031] 座った患者の固定ビーム線を用いる治療には多くの利点がある。装置は従来の寝椅子及びガントリー装置よりもシンプル且つ安価である。同時に、特に頭部及び胸部の治療の場合、場合によってはより良い結果を提供し得る。多くの場合、患者は寝椅子に横たわっているときよりも座っているときの方が動きが少なく、これは実際の計画からの逸脱が少ないことを意味する。
【0034】
[032] 図3は、図1a、図1b、及び図1cに関して論じたような変調アセンブリを含む、放射線治療システム30の代替実施形態を開示する。本実施形態では、寝椅子31及び陽子ガントリー33を備える従来のセットアップが使用され、患者21が寝椅子に横たわっている間に、ガントリー33は従来の様式で寝椅子31の周辺を回転するように配置される。しかしながら本実施形態では、ガントリー33は、陽子放射線源と、図1aから図1cに関して開示するような変調アセンブリ10とを備える。実線矢印34は、ガントリーを介する1本の陽子ビームの経路を示す。ガントリー内に通常みられるスキャニング磁石が偏向デバイス11として使用され得るか、又は、別の磁石が提供され得る。このようにして、ガントリー33内の放射線源13は、一定のエネルギーを有する1つのビームを放射し得、エネルギーは、図2aに関して論じたのと同様に、変調ホイール15によって変調され得、相違点は、患者21を中心とするビームの相対的回転が、入来ビームに対する患者の回転の代わりに、患者を中心とするガントリー33の回転によって達成されることである。
【0035】
[033] 当分野で一般的であるように、ガントリーは、ビームを制御するように配置された制御ユニット35、偏向デバイス11、変調ホイール1、及び、存在する場合は補償器デバイス17によっても、制御される。制御ユニットは、プロセッサ36、並びに少なくとも1つ以上のデータメモリ37及びプログラムメモリ38と、典型的には1つ以上の入力/出力デバイス39とを備える。
【0036】
[034] 図2a、図2b、及び図3に関して説明した3つのセットアップすべてにおいて、ビームは、患者又はガントリーそれぞれの回転中に連続して送出され得るか、又は特定の別々の椅子又はガントリー角度で、送出され得る。後者の場合、特にリスク臓器においてグリッド治療効果を達成するために、角度は近接する椅子角度間に低線量のギャップが存在するように離間され得る。
【0037】
[035] 図4aは、図2a又は図3のセットアップから結果として生じ得る、ビームパターンの一例を示す。上方から見たときの、患者を通る水平スライス41が示される。3つの椅子角度からのビーム43が、リスク臓器47内部のターゲット体積45に向けて送られる。OARの表面付近で、線量割当量を見積もるためのピーク値は増加する。これにより、谷内のOARを保護するグリッド治療効果が提供される。FLASH線量率が使用される場合、陽子が集中すると線量率の増加につながるため、OAR内のFLASH効果はピーク領域内で強化される。
【0038】
[036] 図4bは、図2bのセットアップから結果として生じ得る、ビームパターンの一例を示す。図4aと同様に、上方から見たときの、患者を通る水平スライス41が示される。3つの椅子角度からのビーム43が、リスク臓器47内部のターゲット体積45に向けて送られる。椅子とベースプレートとの組み合わされた回転運動は、リスク臓器内部でカバーされるエリアが、楕円とは異なる形状を有し得ることを意味し、特に凹形状をカバー可能である。
【0039】
[037] 図5は、本発明の一実施形態に従った、いくつかの、図内では10個のビーム角度から放射する、セットアップを使用して患者内に結果として生じる線量の一例を示す。図を見るとわかるように、線量は、前述の線量を提供するためにターゲット内で交差する、いくつかのビーム内で患者に送出される。ターゲットの外側で、ビームは好ましくは交差せず、各ビーム間に、例えばピーク線量の10%~50%の間の線量の、低線量を受け取るか又は線量を受け取らない領域が存在することになる。ビームの数及びそれらの間の距離に応じて、前述のようなグリッド効果が提供され得る。FLASH効果を達成するために、より少ないビーム角度が使用されるべきである。これにより、結果としてターゲット内部にあまり均一ではない線量を生じさせ得る。
【0040】
[038] 図6は、前述のような装置を含む治療計画を生成するために使用され得る方法の、概略フローチャートを示す。入力データS61は予測線量分布を含む。ステップS62では、治療計画についての最適化問題が取得され、最適化問題は、図1に関連して論じたような変調デバイスを含む治療装置のモデルを考慮に入れる。ステップS63では、最適化は、できる限り所望の線量分布に近い線量を生み出す、治療計画S64を出力するために実行される。
図1a
図1b
図1c
図2a
図2b
図3
図4a
図4b
図5
図6