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  • 特許-バリスタおよびその製造方法 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】バリスタおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01C 7/10 20060101AFI20241004BHJP
   H01C 17/00 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
H01C7/10
H01C17/00 100
H01C17/00 300
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021501585
(86)(22)【出願日】2019-12-02
(86)【国際出願番号】 JP2019047079
(87)【国際公開番号】W WO2020170545
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2022-11-09
(31)【優先権主張番号】P 2019029962
(32)【優先日】2019-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】東 佳子
(72)【発明者】
【氏名】古賀 英一
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-222451(JP,A)
【文献】特開平10-172809(JP,A)
【文献】実開昭62-124835(JP,U)
【文献】特開2018-098413(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 7/10
H01C 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上のセラミック層と、
磁性金属を含み、前記1つ以上のセラミック層と交互に積層された複数の内部電極と、
を有して、互いに反対側の第一の面と第二の面とを有する有効層と、
前記有効層の前記第一面に積層方向に積層された第一の無効層と、
前記有効層の前記第二の面に前記積層方向と反対の方向に積層された第二の無効層と、を備え、前記第二の無効層の厚さは前記第一の無効層の厚さの1.1倍以上、6倍以下である、焼結体を得るステップと、
前記焼結体の端面に設けられて前記複数の内部電極のうちの1つと電気的に接続された外部電極を形成するステップと、
前記積層方向を所定方向にするように前記焼結体を位置させるステップと、
めっき液中で前記外部電極にめっきを行うステップと、
を含み、
前記焼結体を位置させる前記ステップは、前記めっき液に前記焼結体を入れた状態で前記焼結体に磁界を印加することにより、前記積層方向を前記所定方向にするステップを含む、バリスタの製造方法。
【請求項2】
前記積層方向を前記所定方向にする前記ステップは、前記めっきを行うステップの後に行われる、請求項に記載のバリスタの製造方法。
【請求項3】
前記焼結体を得る前記ステップは、
多結晶体組織を有するセラミックの原料粉を得るステップと、
前記原料粉と有機溶剤とを含むスラリーを準備するステップと、
フィルム上に前記スラリーを塗布して複数のグリーンシートを得るステップと、
前記複数のグリーンシートと、前記複数の内部電極となる電極ペーストよりなる複数の電極ペーストとを積層することで積層体を得るステップと、
前記積層体を焼成することで前記焼結体を得るステップと、
を含む、請求項に記載のバリスタの製造方法。
【請求項4】
前記外部電極を形成する前記ステップは、
前記焼結体に金属ペーストを塗布するステップと、
前記塗布された金属ペーストに熱処理を行うステップと、
を含む、請求項に記載のバリスタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サージや静電気から半導体素子等を保護するバリスタに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の回路内における、例えば半導体ICにサージや静電気等の異常電圧が印加されると、電子機器が誤作動または破壊されてしまうことがある。このような異常電圧から電子機器を保護する電子部品としてバリスタがあげられる。従来のバリスタは特許文献1および特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008―218749号公報
【文献】特開平4-325413号公報
【発明の概要】
【0004】
バリスタは、互いに反対側の第一と第二の面を有する有効層と、有効層の第一面に積層された第一の無効層と、有効層の第二の面に積層された第二の無効層と、外部電極とを備える。有効層は、電圧非直線性特性を示す複数の結晶粒子で構成された多結晶体組織を有するセラミック層と、セラミック層と交互に積層された複数の内部電極とを有する。第二の無効層の厚さは第一の無効層の厚さの1.1倍以上、6倍以下である。
【0005】
このバリスタは、小型であり良好なサージ耐性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1A図1Aは、実施の形態におけるバリスタの断面図である。
図1B図1Bは、実施の形態におけるバリスタの斜視図である。
図2図2は、実施の形態におけるバリスタの拡大断面図である。
図3図3は、実施の形態におけるバリスタの無効層の厚さと耐電流の関係を示すグラフである。
図4図4は、実施の形態におけるバリスタの他の無効層の厚さと耐電流の関係を示すグラフである。
図5図5は実施の形態におけるバリスタの2つの無効層の厚さの比と耐電流の関係を示すグラフである。
図6図6は実施の形態におけるバリスタの製造方法を示すフロー図である。
図7図7は実施の形態におけるバリスタの製造装置の断面図である。
図8図8は実施の形態におけるバリスタの製造装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下で説明する実施の形態は、いずれも一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。なお、以下では、全ての図を通じて同一または相当する要素には同じ符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0008】
図1A図1Bはそれぞれ、実施の形態におけるバリスタ100の断面図と斜視図である。図1Aは、図1Bに示すバリスタ100の線1A-1Aにおける断面を示す。バリスタ100は、互いに反対側の面110c、210cを有する有効層10cと、有効層10cの面110cに積層方向D100に積層された無効層10aと、有効層10cの面210cに積層方向D100の反対の方向D101に積層された無効層10bと、外部電極13、14とを備える。有効層10cは、セラミック層10dと、セラミック層10dに当接している内部電極11と、セラミック層10dに当接しセラミック層10dを介して内部電極11と対向している内部電極12を有する。セラミック層10dと内部電極11、12とは交互に重なり、有効層10cを形成している。無効層10aはセラミック層10dと同じ材料からなり、内部電極11に当接する。無効層10bはセラミック層10dと同じ材料からなり、内部電極12に当接する。セラミック層10dと無効層10bと無効層10aとは一体に構成されて素体10を形成する。内部電極11は、素体10に埋設され、素体10の端面110に露出して外部電極13と電気的に接続されている一端を有する。内部電極12は、内部電極11に対向し素体10に埋設され、素体10の端面110とは反対側の端面210に露出して外部電極14と電気的に接続されている一端を有する。素体10と内部電極11、12は焼結体25を構成する。
【0009】
図1Aに示すように、バリスタ100は、面1100すなわち無効層10aが基板201の実装面200に対向するように実装面200に実装されるように構成されている。バリスタ100が基板201の実装面200に実装されている状態で、無効層10bは無効層10aを基準にして実装面200の反対側に位置する。
【0010】
実施の形態におけるバリスタ100は、車載用途など、高エネルギーのサージに対する耐性を向上させる用途で用いられる。高エネルギーのサージによる破壊は、熱損傷によるものであり、放熱性の向上が耐性改善には必要である。以下に実施の形態におけるバリスタ100の実施例について説明する。本実施例の素子は、実装面に対向する無効層10aを薄くし、異常電圧の印加時に発熱する有効層10cから基板201への放熱性を向上させる。また、実装面200とは反対側の無効層10bを厚くし、ヒートシンクとして機能させることにより、さらに放熱性を向上させる。
【0011】
無効層10aの厚さTaと、無効層10bの厚さTbと、厚さTaに対する厚さTbの比Tb/Taと、試料の耐電流を表1に示す。表1において、「*」を記した試料は実施例と異なる比較例である。本開示においては、バリスタ100の非直線性を電圧非直線性抵抗体組成物に1mAの電流を印加したときの外部電極13、14間の電圧値V1mA(バリスタ電圧)として示す。本実施例では、車載用途のICの保護を想定し、V1mA=22Vの素子を用いた。
【0012】
【表1】
【0013】
図2は、図1Aに示すバリスタ100における素体10を示す拡大断面図である。素体10は、主成分として複数の酸化亜鉛粒子10eと酸化物層10fとからなる。酸化物層10fは、ビスマス元素、コバルト元素、マンガン元素、アンチモン元素、ニッケル元素およびゲルマニウム元素を含む。複数の酸化亜鉛粒子10eは、六方晶系からなる結晶構造を有する。酸化物層10fは、複数の酸化亜鉛粒子10e間に介在している。
【0014】
素体10は、複数の酸化亜鉛粒子10eと、複数の酸化亜鉛粒子10e間に介在する酸化物層10fとからなる電圧非直線性抵抗体組成物である。
【0015】
バリスタ100の電圧非直線性について説明する。バリスタは、ある印加電圧値を境に抵抗値が急激に減少する。これによりバリスタは、電圧と電流との間に非直線的な関係を有する。すなわち、バリスタ100は、印加電圧が低電圧値の領域においてはより高い抵抗値を示し、高電圧値の領域においてはより低い抵抗値を示すことが好ましい。
【0016】
本開示のバリスタ100の耐性について詳細に説明する。
【0017】
実装面200に対向する無効層10aの厚さTaの、基板201への放熱性への影響を検討した。図3は、長さL×幅W×厚さT=3.2×2.5×1.6の素子(図1B参照)における、無効層10aの厚さTaが150~750μmのときの耐電流を示す。図3に示す値は、表1に記載の試料番号1~7の試料の試験結果である。実装面200の反対側の無効層10bの厚さTbは500μmに固定した。厚さTaの減少に伴い、耐電流が大きくなり改善していることがわかる。これは、実装面200に対向する無効層10aが薄くなることにより、発熱している有効層10cから実装面200に対向する面1100までの距離が近くなり、基板201に熱がより伝導しやすくなることに起因する。無効層10aの厚さTaが750μmから500μmに小さくなって、無効層10bの厚さTbの無効層10aの厚さTaに対する比Tb/Taが0.67から1.00に増えると、耐電流は0.16Aから0.18Aと12.5%だけ大きくなる。無効層10aの厚さTaが500μmから400μmに小さくなって比Tb/Taが1.00から1.25と増えると、耐電流は0.18Aから0.28Aと55.6%だけ大きくなり、サージに対する耐性が大きく改善されることがわかる。
【0018】
また、素体10の大型化に伴い素体10の内部からの放熱性が低下し、バリスタは熱暴走に至りやすくなる。素体10の上部の放熱性の向上によっても、さらなる耐性の向上が望める。本実施例のバリスタ100の素体10は38W/(m・K)とセラミックスのなかでも高い熱伝導率を有するため、実装面200の反対側の無効層10bの厚さTbを増加させることで、無効層10bにヒートシンクの役割を持たせることができる。図4は同サイズの素体10の実装面200の反対側の無効層10bの厚さTb(100~900μm)と耐電流の関係を示す。実装面200に対向する無効層10aの厚さTaは500μmと一定にした。無効層10aとは逆に、無効層10bの厚さTbが増加すると耐電流が増加する。これは、無効層10bがヒートシンクとして機能し、内部の有効層10cで発生した熱を引き出し、放出していることに起因する。無効層10bの厚さTbが300μmから500μmに大きくなり無効層10bの厚さTbの無効層10aの厚さTaに対する比Tb/Taが0.6から1.00に大きくなると、耐電流は0.15Aから0.18Aと20.0%だけ大きくなる。無効層10bの厚さTbが500μmから550μmに大きくなり比Tb/Taが1.00から1.10に大きくなると、耐電流は0.18Aから0.26Aと44.4%だけ大きくなり、サージに対する耐性が大きく改善することがわかる。図3の結果とも併せ、比Tb/Taが1.1以上で耐性の顕著な向上が認められる。
【0019】
次に、実装面200に対向する無効層10aの厚さTaに対する実装面200の反対側の無効層10bの厚さTbの比Tb/Taと耐電流の関係を説明する。図5は、比Tb/Taと耐電流の関係を示す。また、表1に無効層10aの厚さTaと無効層10bの厚さTbの組合せと、各組合せにおける耐電流を示す。比Tb/Taの増加に伴い、耐電流が増加することがわかる。すなわち、実装面200に対向する無効層10aの厚さTaが小さく、反対側の無効層10bの厚さTbが大きいと高い耐電流を実現することが示されている。また、無効層10bの厚さTbが無効層10aの厚さTaの6倍を超える場合、有効層10cが無効層10aに過度に近く、素体10の焼成時の収縮が無効層10aで局所的に大きくなり、素体10の変形や、クラックが生じやすくなるため、好ましくない。なお、無効層10aの厚さTaはバリスタ100の面2100での短絡を防止するため、複数の内部電極11、12のうちの互いに隣り合う内部電極に当接して挟まれたセラミック層10dの厚さTd(図1A参照)よりも大きくすることが好ましい。無効層10bの厚さTbを無効層10aの厚さTaの2倍以上にすると、有効層10cの位置が中央部より無効層10aへと偏る。内部電極11、12の密度は素体10より大きいので、この偏りによりバリスタ100の重心100gが、面1100側に近くなる。すなわち、重心100gから面2100への距離よりも、重心100gから面1100への距離の方が小さくなる。これにより、製造プロセスにおいて、無効層10a、10bの方向を容易にそろえることができ、より好ましい。
【0020】
次に、バリスタ100の製造方法について説明する。
【0021】
図6は、バリスタ100の製造工程を示す製造フロー図である。
【0022】
まず、素体10の出発原料として、酸化亜鉛粉末、酸化ビスマス粉末、酸化コバルト粉末、酸化マンガン粉末、酸化アンチモン粉末、酸化ニッケル粉末および酸化ゲルマニウム粉末を準備する。
【0023】
出発原料の配合比は、酸化亜鉛粉末を96.54mol%、酸化ビスマス粉末を1.00mol%、酸化コバルト粉末を1.06mol%、酸化マンガン粉末を0.30mol%、酸化アンチモン粉末を0.50mol%、酸化ニッケル粉末を0.50mol%および酸化ゲルマニウム粉末を0.10mol%である。これらの粉末と、有機バインダとを含むスラリーを準備する(ステップS1)。
【0024】
次に、複数のグリーンシートを得るステップについて詳細に説明する。
【0025】
図7は、複数のグリーンシートを得るステップを模式的に示す装置の断面図である。
【0026】
上述のスラリー20を180μmの幅LAを有する隙間からポリエチレンテレフタレート(PET)からなるフィルム21上に塗布して乾燥させることで複数のグリーンシートを得る(ステップS2)。
【0027】
次に、所定の枚数のグリーンシートに銀とパラジウムの合金粉末を含む電極ペーストを所定の形状に印刷し、これらのグリーンシートを所定数だけ複数のグリーンシートの面方向と直角の積層方向D100(図1A参照)に積層して積層体を得る(ステップS3)。このとき、無効層10bの厚さTbと無効層10aの厚さTaが、複数のグリーンシートのうち電極ペーストを印刷していないグリーンシートを積層する枚数により、所定の値となるように厚さTaを調整する。
【0028】
次に、この積層体を、積層方向D100と方向D101に沿って55MPaで加圧する(ステップS4)。この加圧力は、30MPa以上100MPa以下の範囲が好ましい。積層体を30MPa以上の圧力で加圧することで、グリーンシートの密着性が高まり、構造欠陥の無い素子が得られる。積層体を100MPa以下で加圧することで、積層体の内部における電極ペーストの形状を保持し続けることができる。また、無効層10aおよび無効層10bの材質が有効層10cと異なる場合、温間等方圧プレスにより等方に加圧すると、クラックなどの構造欠陥や素子の変形を防止する効果が得られ、より好ましい。そして、得られた積層体を各素子サイズに切断し、チップの積層体25a(図1A参照)を作製した。
【0029】
次に、積層体25aチップを850℃で焼成することで、素体10(電圧非直線性抵抗体組成物)と、内部電極11および内部電極12とからなる焼結体25(図1A参照)を得る(ステップS5)。この焼成により、出発原料である複数の酸化亜鉛粉末が、図2に示す複数の酸化亜鉛粒子10eとなり、複数の酸化亜鉛粒子10eの間に酸化物層10fが介在する電圧非直線性抵抗体を得ることができる。
【0030】
次に、素体10の端面210、220に、銀とパラジウムの合金粉末を含む電極ペーストを塗布し、800℃で熱処理することで、外部電極13、14をそれぞれ形成する。なお、外部電極13および外部電極14は、めっき法により形成しても良い。また、外部電極13および外部電極14として、電極ペーストを焼成して形成される外部電極と、めっき法により形成される外部電極とを組み合わせても良い。
【0031】
本実施例では、バリスタ100の試料のV1mAが22V(±2V)となるように素体10の厚さを設計し、焼成後の材料定数が同じになるよう、焼成条件を決定した。耐性については、バリスタ100の試料をはんだで基板201に実装し、直流電圧を印加した時の耐電流すなわち熱暴走が開始する電流を測定し、評価を行った。
【0032】
無効層10aが実装面200に対向するようにバリスタ100を実装するためには、あらかじめ、無効層10a、10bの上下の位置関係を所定の関係にそろえておく必要がある。例えば、積層方向D100を所定方向Dvである鉛直方向とすることで、実装機に装着するキャリアテープにバリスタ100を入れるときに、バリスタ100の向きを揃える工程を要さずに無効層10a、10bの位置関係を所定の関係にすることができる。無効層10aが無効層10bよりも薄いことにより、バリスタ100の重心100gが無効層10aに向かって偏る。すなわち、重心100gが面2100によりも面1100に近くなる。
【0033】
図8はバリスタ100の製造装置300の模式図である。製造装置300は、液302を収容する貯留槽301を備える。前述のように、外部電極13、14にめっきを施す際には、バリスタ100をめっき液である液302に入れる。この際に無効層10a、10bの上下関係が不揃いになっても、液302中において自重で重心100gに近い面1100すなわち無効層10aが下方に位置するので、無効層10a、10bの上下関係を所定の関係にすること、すなわち積層方向D100を所定方向Dvに一致させることができる。この構成は量産ラインに適する。実施の形態において所定方向Dvは鉛直方向である。積層方向D100を所定方向Dvにする工程は、めっきを行う工程の後に行ってもよい。
【0034】
製造装置300は、貯留槽301に設けられた磁石303をさらに備えてもよい。内部電極11、12がNiなど、磁性を持つ金属を含む場合は、バリスタ100に磁石303が近づくことで、実装面200と対向するように構成された薄い無効層10aが磁石303に引き寄せられる。したがって、無効層10a、10bの上下関係を所定の関係にすることが可能である。また、磁石303に限らず、液302中のバリスタ100に磁界M3を印加する工程を追加することも可能である。この工程は量産工程への導入も容易であることから、本実施例のバリスタ100は量産に適している。
【0035】
液302はめっき液に限らず、他の液でも上記工程の実施は可能であるので、めっきを行っていないバリスタ100についても上記工程を適用できる。
【0036】
また、磁界M3の印加は、液302中のみならず、気体中でも振動を加えるなどしながら行うことで、無効層10a、10bの上下関係を所定の関係にすることが可能である。
【0037】
無効層10bの厚さTbを無効層10aの厚さTaの2倍以上にすることで、有効層10cの位置が中央部より無効層10aの方へ偏ることにより重心100gの位置も偏るので、製造プロセスにおいて、積層方向D100をそろえることが容易になり、より好ましい。
【0038】
酸化亜鉛バリスタは酸化亜鉛にビスマス元素、プラセオジウム元素などの添加物を添加し、焼結させたセラミックス多結晶体である。エネルギー量の大きなサージからの保護を目的とする場合、素子を大型化し内部電極の面積を拡大することでは、この目的に見込まれる効果が得られなかった。従来のバリスタでは大電流領域での良好なサージ耐性は実現することが困難である。
【0039】
実施の形態におけるバリスタ100は、前述のように、小型であり良好なサージ耐性を有する。
【符号の説明】
【0040】
10 素体
10a 無効層(第一の無効層)
10b 無効層(第二の無効層)
10c 有効層
10d セラミック層
11 内部電極
12 内部電極
13 外部電極
14 外部電極
100 バリスタ
302 液
303 磁石
M3 磁界
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8