(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】蓄電システム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/02 20160101AFI20241004BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20241004BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
H02J7/02 H
H01M10/44 P
H01M10/48 P
(21)【出願番号】P 2021522284
(86)(22)【出願日】2020-05-21
(86)【国際出願番号】 JP2020020069
(87)【国際公開番号】W WO2020241439
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2023-03-01
(31)【優先権主張番号】P 2019101917
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】影山 洋一
(72)【発明者】
【氏名】東出 貴司
(72)【発明者】
【氏名】愛宕 克則
(72)【発明者】
【氏名】竹中 一雄
(72)【発明者】
【氏名】平城 久雄
(72)【発明者】
【氏名】薛 侑吾
(72)【発明者】
【氏名】西中 大貴
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 司
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-129439(JP,A)
【文献】特開2015-080334(JP,A)
【文献】国際公開第2014/122869(WO,A1)
【文献】特開2009-071936(JP,A)
【文献】国際公開第2020/044168(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/057724(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/02
H01M 10/44
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直列に接続されて両端をそれぞれ有する複数のキャパシタ素子と、
前記複数のキャパシタ素子に接続された複数の抵抗と、
前記複数のキャパシタ素子と前記複数の抵抗とに接続された複数のスイッチ素子と、
を有する蓄電体と、
前記蓄電体に充電電流を供給するように構成されている充電回路と、
前記蓄電体に接続された制御部と、
を備え、
前記複数のキャパシタ素子のぞれぞれのキャパシタ素子の両端のうちの一方は前記複数の抵抗のうちの対応する1つの抵抗の一端と接続されており、
前記ぞれぞれのキャパシタ素子の前記両端のうちの他方は前記複数のスイッチ素子のうちの対応する1つのスイッチ素子の一端と接続されており、
前記対応する1つの抵抗の他端は前記対応する1つのスイッチ素子の他端と接続されており、
前記対応する1つのスイッチ素子は、前記対応する1つのスイッチ素子の前記一端が前記他端に接続された接続状態と、前記対応する1つのスイッチ素子の前記一端が前記他端から遮断された遮断状態とに選択的に切り替えられるように構成されており、
前記制御部は、前記充電回路が前記蓄電体へ前記充電電流を供給しているとき、
前記それぞれのキャパシタ素子の前記両端の間の蓄電電圧を、前記それぞれのキャパシタ素子が充電されるにつれて上昇する基準電圧と比較し、
前記それぞれのキャパシタ素子の前記蓄電電圧と前記基準電圧との差が所定の第1電圧差値以下である場合には、前記対応する1つのスイッチ素子を前記遮断状態にし、
前記それぞれのキャパシタ素子の前記蓄電電圧と前記基準電圧との前記差が前記所定の第1電圧差値よりも大きい場合には、前記対応する1つのスイッチ素子を前記接続状態にし、その後、前記それぞれのキャパシタ素子の前記蓄電電圧と前記基準電圧との前記差が所定の第2電圧差値よりも小さくなると前記対応する1つのスイッチ素子を前記接続状態から前記遮断状態へ切り替える、
ように構成されて
おり、
前記制御部は、前記基準電圧が所定の第1上限電圧よりも高くなると、前記充電回路から前記蓄電体への前記充電電流の供給を停止させ、
前記複数のキャパシタ素子の或るキャパシタ素子の両端のうちの一方は前記複数の抵抗のうちの或る抵抗の一端と接続されており、
前記或るキャパシタ素子の前記両端のうちの他方は前記複数のスイッチ素子のうちの或るスイッチ素子の一端と接続されており、
前記或る抵抗の他端は前記或るスイッチ素子の他端と接続されており、
前記或るスイッチ素子は、前記或るスイッチ素子の前記一端が前記他端に接続された接続状態と、前記或るスイッチ素子の前記一端が前記他端から遮断された遮断状態とに選択的に切り替えられるように構成されており、
前記制御部は、
前記充電回路が前記蓄電体へ前記充電電流を供給しているとき、前記或るキャパシタ素子の前記両端の間の蓄電電圧が前記所定の第1上限電圧よりも高い所定の第2上限電圧に達すると、前記充電回路から前記蓄電体への前記充電電流の供給を停止させ、かつ、前記或るスイッチ素子を前記接続状態とし、
その後、前記或るキャパシタ素子の前記蓄電電圧が前記所定の第1上限電圧よりも低くなると前記或るスイッチ素子を前記接続状態から前記遮断状態へと切り替え、かつ、前記充電回路から前記蓄電体への前記充電電流の供給を開始させる、
ように構成されている、蓄電システム。
【請求項2】
互いに直列に接続されて両端をそれぞれ有する複数のキャパシタ素子と、
前記複数のキャパシタ素子に接続された複数の抵抗と、
前記複数のキャパシタ素子と前記複数の抵抗とに接続された複数のスイッチ素子と、
を有する蓄電体と、
前記蓄電体に充電電流を供給するように構成されている充電回路と、
前記蓄電体に接続された制御部と、
を備え、
前記複数のキャパシタ素子のぞれぞれのキャパシタ素子の両端のうちの一方は前記複数の抵抗のうちの対応する1つの抵抗の一端と接続されており、
前記ぞれぞれのキャパシタ素子の前記両端のうちの他方は前記複数のスイッチ素子のうちの対応する1つのスイッチ素子の一端と接続されており、
前記対応する1つの抵抗の他端は前記対応する1つのスイッチ素子の他端と接続されており、
前記対応する1つのスイッチ素子は、前記対応する1つのスイッチ素子の前記一端が前記他端に接続された接続状態と、前記対応する1つのスイッチ素子の前記一端が前記他端から遮断された遮断状態とに選択的に切り替えられるように構成されており、
前記制御部は、前記充電回路が前記蓄電体へ前記充電電流を供給しているとき、
前記それぞれのキャパシタ素子の前記両端の間の蓄電電圧を、前記それぞれのキャパシタ素子が充電されるにつれて上昇する基準電圧と比較し、
前記それぞれのキャパシタ素子の前記蓄電電圧と前記基準電圧との差が所定の第1電圧差値以下である場合には、前記対応する1つのスイッチ素子を前記遮断状態にし、
前記それぞれのキャパシタ素子の前記蓄電電圧と前記基準電圧との前記差が前記所定の第1電圧差値よりも大きい場合には、前記対応する1つのスイッチ素子を前記接続状態にし、その後、前記それぞれのキャパシタ素子の前記蓄電電圧と前記基準電圧との前記差が所定の第2電圧差値よりも小さくなると前記対応する1つのスイッチ素子を前記接続状態から前記遮断状態へ切り替える、
ように構成されており、
前記制御部は、前記基準電圧が所定の第1上限電圧よりも高くなると、前記充電回路から前記蓄電体への前記充電電流の供給を停止させ、
前記複数のキャパシタ素子の或るキャパシタ素子の両端のうちの一方は前記複数の抵抗のうちの或る抵抗の一端と接続されており、
前記或るキャパシタ素子の前記両端のうちの他方は前記複数のスイッチ素子のうちの或るスイッチ素子の一端と接続されており、
前記或る抵抗の他端は前記或るスイッチ素子の他端と接続されており、
前記或るスイッチ素子は、前記或るスイッチ素子の前記一端が前記他端に接続された接続状態と、前記或るスイッチ素子の前記一端が前記他端から遮断された遮断状態とに選択的に切り替えられるように構成されており、
前記制御部は、
前記充電回路が前記蓄電体へ前記充電電流を供給しているとき、前記或るキャパシタ素子の前記両端の間の蓄電電圧が前記所定の第1上限電圧よりも高い所定の第2上限電圧に達すると、前記充電回路から前記蓄電体への前記充電電流の供給を停止させ、かつ、前記或るスイッチ素子を前記接続状態とし、
その後、前記或るキャパシタ素子の前記蓄電電圧が前記基準電圧よりも低くなると前記或るスイッチ素子を前記接続状態から前記遮断状態へと切り替え、かつ、前記充電回路から前記蓄電体への前記充電電流の供給を開始させる、
ように構成されている、蓄電システム。
【請求項3】
前記所定の第1電圧差値は前記所定の第2電圧差値よりも大きい、請求項1
または2に記載の蓄電システム。
【請求項4】
前記所定の第1電圧差値は前記基準電圧が上昇するに伴って小さくなる、請求項
3に記載の蓄電システム。
【請求項5】
前記基準電圧は前記複数のキャパシタ素子の両端の間の蓄電電圧に応じて決まる、請求項1から
4のいずれか一項に記載の蓄電システム。
【請求項6】
前記基準電圧は、前記複数のキャパシタ素子の前記両端の間の前記蓄電電圧うち最も低い値である、請求項
5に記載の蓄電システム。
【請求項7】
前記基準電圧は、前記複数のキャパシタ素子の前記両端の間の前記蓄電電圧の平均値である、請求項
5に記載の蓄電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器に使用される蓄電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
図7は特許文献1に開示されている従来の蓄電装置1の回路ブロック図であり、蓄電装置1は、直列に接続された複数のキャパシタ素子2と、キャパシタ素子2を充電するための充電回路3とを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本発明のある態様に係る蓄電装置は、蓄電体と、蓄電体に充電電流を供給するように構成されている充電回路と、蓄電体に接続された制御部とを備える。蓄電体は、互いに直列に接続されて両端をそれぞれ有する複数のキャパシタ素子と、複数のキャパシタ素子に接続された複数の抵抗と、複数のキャパシタ素子と複数の抵抗とに接続された複数のスイッチ素子とを有する。複数のキャパシタ素子のぞれぞれのキャパシタ素子の両端のうちの一方は複数の抵抗のうちの対応する1つの抵抗の一端と接続されている。ぞれぞれのキャパシタ素子の両端のうちの他方は複数のスイッチ素子のうちの対応する1つのスイッチ素子の一端と接続されている。対応する1つの抵抗の他端は対応する1つのスイッチ素子の他端と接続されている。対応する1つのスイッチ素子は、対応する1つのスイッチ素子の一端が他端に接続された接続状態と、対応する1つのスイッチ素子の一端が他端から遮断された遮断状態とに選択的に切り替えられるように構成されている。制御部は、充電回路が蓄電体へ充電電流を供給しているとき、以下の動作を行う。制御部は、それぞれのキャパシタ素子の蓄電電圧と基準電圧との差が所定の第1電圧差値以下である場合には、対応する1つのスイッチ素子を遮断状態にする。基準電圧は、それぞれのキャパシタ素子が充電されるにつれて上昇する。制御部は、それぞれのキャパシタ素子の蓄電電圧と基準電圧との差が所定の第1電圧差値よりも大きい場合には、対応する1つのスイッチ素子を接続状態にし、その後、それぞれのキャパシタ素子の蓄電電圧と基準電圧との差が所定の第2電圧差値よりも小さくなると対応する1つのスイッチ素子を接続状態から遮断状態へ切り替える。制御部は、基準電圧が所定の第1上限電圧よりも高くなると、充電回路から蓄電体への充電電流の供給を停止させる。複数のキャパシタ素子の或るキャパシタ素子の両端のうちの一方は複数の抵抗のうちの或る抵抗の一端と接続されている。上記或るキャパシタ素子の両端のうちの他方は複数のスイッチ素子のうちの或るスイッチ素子の一端と接続されている。上記或る抵抗の他端は上記或るスイッチ素子の他端と接続されている。上記或るスイッチ素子は、上記或るスイッチ素子の一端が他端に接続された接続状態と、上記或るスイッチ素子の一端が他端から遮断された遮断状態とに選択的に切り替えられるように構成されている。
上記態様に係る蓄電装置では、制御部は、充電回路が蓄電体へ充電電流を供給しているとき、上記或るキャパシタ素子の両端の間の蓄電電圧が所定の第1上限電圧よりも高い所定の第2上限電圧に達すると、充電回路から蓄電体への充電電流の供給を停止させ、かつ、上記或るスイッチ素子を接続状態とし、その後、上記或るキャパシタ素子の蓄電電圧が所定の第1上限電圧よりも低くなると上記或るスイッチ素子を接続状態から遮断状態へと切り替え、かつ、充電回路から蓄電体への充電電流の供給を開始させる。
本発明の他の態様に係る蓄電装置では、前記制御部は、前記充電回路が前記蓄電体へ前記充電電流を供給しているとき、上記或るキャパシタ素子の前記両端の間の蓄電電圧が前記所定の第1上限電圧よりも高い所定の第2上限電圧に達すると、前記充電回路から前記蓄電体への前記充電電流の供給を停止させ、かつ、上記或るスイッチ素子を前記接続状態とし、その後、上記或るキャパシタ素子の前記蓄電電圧が前記基準電圧よりも低くなると前記或るスイッチ素子を前記接続状態から前記遮断状態へと切り替え、かつ、前記充電回路から前記蓄電体への前記充電電流の供給を開始させる。
【0005】
この蓄電システムは小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は実施の形態における蓄電システムの回路ブロック図である。
【
図2】
図2は実施の形態における蓄電システムを搭載した車両の構成を示す回路ブロック図である。
【
図3】
図3は実施の形態における蓄電システムの蓄電電圧と充電時間とを示す図である。
【
図4】
図4は実施の形態における蓄電システムの蓄電電圧と充電時間とを示す図である。
【
図5】
図5は実施の形態における蓄電システムの蓄電電圧と充電時間とを示す図である。
【
図6】
図6は実施の形態における蓄電システムを搭載した他の車両の回路ブロック図である。
【
図7】
図7は従来の蓄電装置の回路ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1は実施の形態における蓄電システム11の回路ブロック図である。蓄電システム11は、互いに直列に接続された複数の蓄電部12を有する蓄電体13と、蓄電体13への充電電流の供給あるいは遮断を行う充電回路14と、蓄電部12に接続された制御部15とを含む。
【0008】
蓄電体13の両端である端部13A、13Bには、充電回路14から直流電圧を供給される。個々の蓄電部12は、キャパシタ素子16とキャパシタ素子16に並列に接続された電圧調整回路17とを有する。電圧調整回路17は、互いに直列に接続された抵抗18とスイッチ素子19とよりなる直列体を有する。
【0009】
制御部15は、個々の蓄電部12のキャパシタ素子16の両端間の蓄電電圧を検出する。制御部15は、複数の蓄電部12すべての蓄電電圧を、充電が進むにつれて上昇する基準電圧と比較する。さらに制御部15は、個々の蓄電部12の蓄電電圧と基準電圧との差を求める。さらに制御部15は、蓄電電圧と基準電圧との差が所定の電圧差値Vz1よりも大きくなると蓄電部12のスイッチ素子19を初期状態の遮断状態から接続状態へと切り替える。その後、スイッチ素子19が接続状態とされている蓄電部12の蓄電電圧と基準電圧との差が所定の電圧差値Vz2よりも小さくなるとスイッチ素子19を接続状態から遮断状態へと切り替える。
【0010】
以上の構成および動作により、複数の蓄電部12のうち特定の蓄電部12の蓄電電圧が他の蓄電部12に比して突出して上昇し、蓄電電圧と基準電圧との差が大きくなると、電圧が上昇した特定の蓄電部12におけるスイッチ素子19を接続状態として、キャパシタ素子16の電荷を抵抗18へ放電する。あるいは、特定の蓄電部12におけるスイッチ素子19を接続状態として、充電回路14から蓄電部12へと流れる充電電流を抵抗18とスイッチ素子19とよりなる直列体へと分流する。
【0011】
これにより充電によって蓄電電圧が比較のうえで基準電圧よりも大幅に上昇した蓄電部12には流れる充電電流が抑制される。このため一時的に蓄電電圧の上昇が鈍化させられた状態となる。あるいは、一時的に蓄電電圧は上昇しない状態となる。そして、必要に応じて改めて充電電流が抑制される前の電流が供給されて充電が継続されることが可能であり、蓄電部12を過剰に上昇しない適切な電圧で充電できる。
【0012】
したがって、キャパシタ素子16の定格電圧と蓄電電圧との間に過剰な余裕を設定する必要はなくなる。この結果として、直列に接続される蓄電部12の数量を増やすことなく適切な数量で、蓄電部12の劣化を抑制しつつ蓄電体13に所望の電圧を充電することができ、蓄電システム11の小型化が可能となる。
【0013】
図7に示す従来の蓄電装置1では、充電回路3が複数のキャパシタ素子2の両端の電圧を例えば10Vに充電するとき、個々のキャパシタ素子2の特性が完全に一致すれば個々のキャパシタ素子2はそれぞれ2.5Vに充電される。通常、個々のキャパシタ素子2が有する内部抵抗値は異なるため、個々のキャパシタ素子2が充電される電圧にも差が現れる。ここで仮に個々のキャパシタ素子2の定格電圧が2.5Vであるとすれば、個々の内部抵抗値の差に起因して定格電圧以上の2.7Vなどに充電されるキャパシタ素子2が存在する場合がある。そして、定格電圧以上の充電が繰り返し実施されることによって、定格電圧以上の電圧に充電されるキャパシタ素子2の劣化が他のキャパシタ素子2に比べて早く進行し、蓄電装置1全体としての蓄電性能も早期に劣化してしまう恐れがある。
【0014】
そのため、従来の蓄電装置1では、直列に接続された複数のキャパシタ素子2の両端の電圧を維持しつつ、個々のキャパシタ素子2にかかる蓄電電圧をキャパシタ素子2の定格電圧より低く設定することによって、複数のキャパシタ素子2の数を多くする。これにより、個々のキャパシタ素子2の蓄電性能および蓄電装置1全体としての蓄電性能の劣化を抑制することはできる。
【0015】
しかしながらこの結果、個々のキャパシタ素子2の蓄電電圧が低くなることで、所定電圧を得るため直列に接続するキャパシタ素子2の数が増えて蓄電装置1が大型化する場合がある。
【0016】
対して、実施の形態における蓄電システム11は、前述のように小型化が可能となる。
【0017】
図2は蓄電システム11を搭載した車両20の回路ブロック図である。蓄電システム11は車両20の車体21に搭載されている。
【0018】
充電回路14は、車両蓄電池22から蓄電体13への電力供給経路に設けられている。言い換えると、充電回路14は車両蓄電池22から蓄電体13への充電経路に設けられている。
【0019】
スイッチ素子19には好ましくは半導体スイッチが用いられ、バイポーラトランジスタや、FET(電界効果型トランジスタ)などのモノポーラトランジスタが用いられる。
【0020】
キャパシタ素子16は、好ましくは、例えば電気二重層キャパシタやリチウムイオンキャパシタなどが用いられる。これらのキャパシタは内部抵抗値が低く、短時間に大きな電流を出力できるので、蓄電システム11は様々な車両負荷26を駆動させるための電力を供給することが可能となる。
【0021】
スイッチ素子19の制御端子19cは制御部15に接続されている。制御部15は車両20の車体21に設けられた車両起動スイッチ23から発信される起動信号S1によって起動される。車両起動スイッチ23は車両20の起動に連動するスイッチであってもよい。起動信号S1は車両20の搭乗者が車両起動スイッチ23を操作することによって信号発生装置24から発信される。
【0022】
蓄電システム11は、蓄電体13と、蓄電体13に充電電流を供給するように構成されている充電回路14と、蓄電体13に接続された制御部15とを備える。蓄電体13は、互いに直列に接続されて両端をそれぞれ有する複数のキャパシタ素子16(16a~16d)と、複数のキャパシタ素子16(16a~16d)に接続された複数の抵抗18と、複数のキャパシタ素子16(16a~16d)と複数の抵抗18とに接続された複数のスイッチ素子19とを有する。複数のキャパシタ素子16(16a~16d)のぞれぞれのキャパシタ素子16(16a~16d)の両端のうちの一方は複数の抵抗18のうちの対応する1つの抵抗18の一端と接続されている。ぞれぞれのキャパシタ素子16(16a~16d)の両端のうちの他方は複数のスイッチ素子19のうちの対応する1つのスイッチ素子19の一端と接続されている。上記対応する1つの抵抗18の他端は上記対応する1つのスイッチ素子19の他端と接続されている。上記対応する1つのスイッチ素子19は、上記対応する1つのスイッチ素子19の一端が他端に接続された接続状態と、上記対応する1つのスイッチ素子19の一端が他端から遮断された遮断状態とに選択的に切り替えられるように構成されている。
【0023】
先ず、第1ステップとして以下の制御や動作が行われる。制御部15は車体21に設けられた車両起動スイッチ23から発信される起動信号S1を受信することによって起動する。車両起動スイッチ23は車両20の起動に連動するスイッチであってもよい。起動信号S1は車両20の搭乗者が車両起動スイッチ23を操作することによって発信される。
【0024】
制御部15は個々の蓄電部12のキャパシタ素子16の両端の蓄電電圧を検出する。制御部15はさらに蓄電体13の端部13A、13Bの電位差を検出してもよい。
【0025】
制御部15は起動信号S1を受信すると、キャパシタ素子16の両端の蓄電電圧を検出する。車両20が起動する前は、蓄電体13および蓄電部12に蓄えられた電圧はキャパシタ素子16の劣化進行を抑制するために所定の電圧以下の初期電圧となっている。言い換えると、車両20が起動していないとき、キャパシタ素子16は低い電圧で充電された状態となっている。制御部15は起動信号S1を受信すると、充電回路14を動作させる。そして蓄電部12に電力が供給される。
【0026】
充電回路14が起動するタイミングと、蓄電部12の電圧が検出されるタイミングとは、何れかが先であっても、同時であってもよい。制御部15は蓄電部12の蓄電電圧に対応して充電回路14を動作させることが通常時の動作であるため、充電回路14の起動よりも蓄電部12の電圧検出が先に行われることが望ましい。
【0027】
このとき、蓄電部12では初期状態として、スイッチ素子19は遮断状態となっている。また、キャパシタ素子16の初期電圧Vintは先にのべたように長時間の放置状態でも劣化が進行しにくい、満蓄電電圧あるいは定格電圧の、20%や30%程度の低い電圧に設定されている。
【0028】
以上が第1ステップであり、次に第2ステップとして以下の制御や動作が行われる。第2ステップでは、蓄電部12に対する充電が実施される。制御部15が充電回路14を動作させることによって、蓄電部12それぞれへ電力が供給される。制御部15が充電回路14を動作させ始めた時点付近では、先にも述べたすべての蓄電部12におけるスイッチ素子19は初期状態である遮断状態が継続している。それぞれの蓄電部12に流れる充電電流は、それぞれのキャパシタ素子16に全てが流れる。言い換えると、このとき、キャパシタ素子16に並列に接続されている電圧調整回路17には電流は流れない。
【0029】
図3は実施の形態における蓄電システム11の蓄電部12の蓄電電圧Vcと充電時間とを示す特性図である。それぞれの蓄電部12には電力が供給されることで、それぞれの蓄電部12の両端すなわちキャパシタ素子16の両端161、162の間の電圧である蓄電電圧Vcは時間が進むにつれて上昇する。互いに直列に接続された複数の蓄電部12には実質的に同じ特性を有したキャパシタ素子16、抵抗18、スイッチ素子19が用いられている。
【0030】
ここで、
図3に示す蓄電電圧Vcは、複数の蓄電部12のうちの任意の一つの両端の間の電圧であり、例えば
図2で4つの蓄電部12a~12dまでのうち、蓄電電圧Vcは蓄電部12aの両端の間の蓄電電圧Vcaである。これは言い換えると、複数のキャパシタ素子16a~16dのうち、蓄電電圧Vcの曲線はキャパシタ素子16aの両端の間の蓄電電圧Vcaである。
【0031】
蓄電電圧Vcは、充電の時間が長くなるにつれて上昇するが、蓄電電圧Vcは充電が行われている際に常時において制御部15で検出される。あるいは、蓄電電圧Vcは充電が行われている際に所定の時間ごとに間欠的に制御部15で検出される。
図3は蓄電部12aの蓄電電圧Vc
である蓄電電圧Vcaを示すが、蓄電部12b(キャパシタ素子16b)の両端の間の蓄電電圧Vcbと、蓄電部12c(キャパシタ素子16c)の両端の間の蓄電電圧Vccと、蓄電部12d(キャパシタ素子16d)の両端の間の蓄電電圧Vcdとは
図3に示す蓄電電圧Vca(Vc)と同様に変化する。
【0032】
蓄電部12a~12d(キャパシタ素子16a~16d)の両端の間の蓄電電圧Vca~Vcdは同時に検出されることが好ましい。あるいは、蓄電部12a~12dの蓄電電圧Vca~Vcdは互いに異なるタイミングで検出されてもよい。例えば、制御部15は、蓄電部12aの蓄電電圧Vcaを検出した後に蓄電部12bの蓄電電圧Vcbを検出す、その後に蓄電部12cの蓄電電圧Vccを検出し、さらにその後に蓄電部12dの蓄電電圧Vcdを検出する。その後、また、蓄電部12aの蓄電電圧Vcaを検出するように、蓄電部12a~12d(キャパシタ素子16a~16d)の両端の間の蓄電電圧Vca~Vcdは順に繰り返し検出することにより、制御部15の動作の負担は軽減される。
【0033】
制御部15は上記の例えば蓄電部12aの蓄電電圧Vc(Vca)を基準電圧Vrと比較する。基準電圧Vrは蓄電体13すなわち蓄電部12a~12d(キャパシタ素子16a~16d)の充電の時間が進むにつれて上昇する。基準電圧Vrは、好ましくは、キャパシタ素子16が有する代表的な特性に基づいて予め制御部15で記憶されたうえで設定されている。基準電圧Vrは複数のキャパシタ素子16のうちの定電流充電時における蓄電電圧上昇率の下限値が用いられてもよい。
【0034】
具体的には、基準電圧Vrは、複数のキャパシタ素子16の許容特性値において最も蓄電電圧が上昇しにくいキャパシタ素子16の蓄電電圧を用いることができる。例えば、本実施例での充電回路14が定電流の充電電流Icで蓄電体13へ電力を供給して蓄電部12のキャパシタ素子16を充電する場合、キャパシタ素子16が有する特性の下限値の特性に相当する、最も単位時間当たりの蓄電電圧の上昇率が小さい値の軌跡が、基準電圧Vrの軌跡として用いられるとよい。このとき、蓄電体13に用いられる複数のキャパシタ素子16における蓄電電圧Vcの上昇率における平均値Vavを
図3に示す。
【0035】
このため、基準電圧Vrよりも蓄電電圧Vcの上昇率は大きくなり、充電の時間が進むにつれて蓄電電圧Vcと基準電圧Vrとの差であり蓄電電圧Vcから基準電圧Vrを差し引いて得られる差Vd(=Vc-Vr)は充電時間の経過と共に大きくなる。ここで、タイミングT1での蓄電電圧Vcの値Vc1と基準電圧Vrの値Vr1との差Vd1(=Vc1-Vr1)が電圧差値Vz1よりも大きくなったことを制御部15が検出すると、制御部15は蓄電部12aにおける電圧調整回路17のスイッチ素子19を初期状態である遮断状態から接続状態へと切り替える。
【0036】
言い換えると、制御部15は、蓄電電圧Vcの値Vc1と基準電圧Vrの値Vr1との差Vd1が電圧差値Vz1よりも大きくなった蓄電部12aにおけるスイッチ素子19の制御端子19cへ、スイッチ素子19を接続状態とするための信号を送る。あるいは、制御部15は、蓄電部12aにおけるスイッチ素子19の制御端子19cへ、遮断状態を維持するための信号の送信を止める。
【0037】
ここでタイミングT1以降に再びスイッチ素子19が遮断されるタイミングT2までの期間PT12で、蓄電部12aではキャパシタ素子16が抵抗18と並列に接続される。期間PT12では、充電電流が抵抗18に分流するためにキャパシタ素子16に流れる充電電流が小さくなる、あるいは、充電回路14による蓄電部12aのキャパシタ素子16への充電と、蓄電部12aのキャパシタ素子16から抵抗18への放電とが並行して進行する。
【0038】
このため、期間PT12では、スイッチ素子19が接続状態となった蓄電部12aの蓄電電圧Vcは上昇しにくくなる。言い換えると、基準電圧Vrの上昇率よりも小さな蓄電電圧Vcの上昇率となるように、蓄電部12aにおける抵抗18の値が設定される。
【0039】
そして、蓄電電圧Vcと基準電圧Vrとの差であり蓄電電圧Vcから基準電圧Vrを差し引いて得られる差Vd(=Vc-Vr)が電圧差値Vz2よりも小さくなったことをタイミングT2で制御部15が検出すると、制御部15は蓄電部12aにおける電圧調整回路17のスイッチ素子19を接続状態から遮断状態へと切り替える。ここで電圧差値Vz2は負の値であってもよい。
【0040】
電圧差値Vz2が負の値として設定される場合においては、スイッチ素子19が接続状態から遮断状態へと切り替えられるのは、蓄電電圧Vcが基準電圧Vrよりも低くなり蓄電電圧Vcから基準電圧Vrを差し引いた差Vd(Vc-Vr)が負の値となって電圧差値Vz2よりも小さくなったときである。いいかえると、蓄電電圧Vcから基準電圧Vrを差し引いて得られる差Vdと電圧差値Vz2とがともに負の値であり、タイミングT2以前では差Vdの絶対値が電圧差値Vz2の絶対値以下であり、タイミングT2において差Vdの絶対値が電圧差値Vz2の絶対値よりも大きくなる。
【0041】
制御部15は、蓄電電圧Vcと基準電圧Vrとの差Vdが電圧差値Vz2よりも小さくなるタイミングT2で、スイッチ素子19を遮断状態にする。
図3においてタイミングT2での蓄電電圧Vcの値は値Vc2であり、基準電圧Vrの値が値Vr2である。制御部15は、蓄電部12aにおけるスイッチ素子19の制御端子19cへ、スイッチ素子19の接続状態を維持するための信号の送信を止める。あるいは、制御部15は、蓄電部12aにおけるスイッチ素子19の制御端子19cへ、スイッチ素子19を遮断状態とするための信号を送る。そして、タイミングT2の後、蓄電電圧Vcは再び基準電圧Vrよりも高い上昇率で上昇する。
【0042】
さらに、タイミングT2以降で改めて蓄電電圧Vcの値Vc3と基準電圧Vrの値Vr3との差Vd(=Vc3-Vr3)が電圧差値Vz3よりも大きくなったことを制御部15が検出すると、制御部15は蓄電部12aにおける電圧調整回路17のスイッチ素子19を遮断状態から接続状態へと切り替える。そして、蓄電電圧Vcの値Vc4と基準電圧Vrの値Vr4との差Vd4(=Vc4-Vr4)が電圧差値Vz4よりも小さくなったことをタイミングT4で制御部15が検出すると、制御部15は蓄電部12aにおける電圧調整回路17のスイッチ素子19を接続状態から遮断状態へと切り替える。ここまでが、蓄電電圧Vcと基準電圧Vrとを近似させる第2ステップである。
【0043】
以上の動作によって、複数の蓄電部12のうち特定の蓄電部12の電圧が他の蓄電部12の電圧に対し突出して異なった値とならず、すべての蓄電部12の電圧が近似した値となったうえで充電が進行する。また、基準電圧Vrはキャパシタ素子16の充電速度が遅い値として比較対象に用いられる。このため、蓄電電圧Vcは過充電状態となりにくい。あるいは、蓄電電圧Vcが仮に過充電状態となっても、その状態は極めて短時間に抑制されることとなる。
【0044】
これにより、個々の蓄電部12に過剰な電圧を印加させずに充電は継続されることが可能となり、蓄電部12に対して適切な電圧での充電が可能となる。この結果として、キャパシタ素子16における定格電圧と蓄電電圧との間に過剰な余裕を設定する必要はなくなる。したがって、直列に接続される蓄電部12の数量を増やすことなく適切な数量で、蓄電部12の劣化を抑制しつつ蓄電体13の充電が可能となる。この結果として、蓄電システム11の小型化が可能となる。
【0045】
以上のように、蓄電電圧Vcと基準電圧Vrとは近い値を常に維持しつつ、蓄電部12の充電が進行することが望ましい。したがって、電圧差値Vz1は正の値の小さな値として設定することが望ましい。しかしながら蓄電システム11の動作が安定するためには、電圧差値Vz1は電圧差値Vz2よりも大きな値であることが望ましい。これにより、蓄電電圧Vcの値が基準電圧Vrから離れ過ぎることを抑制しつつ、蓄電電圧Vcと基準電圧Vrとは適切な範囲内で蓄電部12のキャパシタ素子16は充電される。
【0046】
ここで、タイミングT2における差Vd2(=Vc2-Vr2)と比較される電圧差値Vz2は負の値であってもよい。その場合、タイミングT1における差Vd1(=Vc1-Vr1)と比較される電圧差値Vz1は小さな正の値とすることが好ましい。これにより、蓄電電圧Vcと基準電圧Vrとは近似した値を維持することができ、蓄電システム11は安定した動作が可能である。
【0047】
また、先に述べた基準電圧Vrは、キャパシタ素子16の特性の範囲内で生じ得る下限値である。基準電圧Vrは例えば、複数の蓄電部12のうちで最も低い値に設定されてもよい。
【0048】
具体的には、タイミングT1よりも前のタイミングT0で制御部15は全ての蓄電部12の電圧を検出する。タイミングT0では同時に全ての蓄電部12の蓄電電圧Vcが検出されることが望ましい。タイミングT0で検出された全ての蓄電部12の蓄電電圧Vcを制御部15が基準電圧Vrと比較する。ここで仮に蓄電部12aの蓄電電圧Vcaが複数の蓄電部12の蓄電電圧Vcのうち最も低い場合には、基準電圧VrはタイミングT0以降で検出される蓄電部12aの蓄電電圧Vcaに設定される。
【0049】
基準電圧Vrが蓄電部12aの蓄電電圧Vcaに設定される期間は、上記のようにタイミングT0から、車両起動スイッチ23がオンからオフへと切り替えられて車両20が起動停止するまでである。そして、車両20が次回に改めて起動されたときには、改めて車両20が起動した後のタイミングT0で検出された複数の蓄電部12の蓄電電圧Vcうちで最も低い値を基準電圧Vrに設定してもよい。
【0050】
この場合、先にも述べたようにすべての蓄電部12の蓄電電圧Vcに相当するすべてのキャパシタ素子16の初期電圧Vintは、制御部15が起動信号S1を受信した時点、あるいは起動信号S1を受信した時点からタイミングT0までの期間に、実質的に同一の値にすることが望ましい。制御部15が起動信号S1を受信した時点で、制御部15が充電回路14と電圧調整回路17とを動作させることによって全ての複数のキャパシタ素子16の初期電圧Vintを一致させられてよい。あるいは、制御部15が後に説明する放電回路と電圧調整回路17とを動作させることによって全ての複数のキャパシタ素子16の初期電圧Vintが一致させられてもよい。
【0051】
以上の動作によって、特定の蓄電部12の蓄電電圧Vcが他の蓄電部12の蓄電電圧Vcに対し突出して異なった値とならず、すべての蓄電部12の蓄電電圧Vcが互いに近似した値となったうえでキャパシタ素子16の充電が進行する。また、基準電圧Vrとして充電速度が最も遅いキャパシタ素子16の蓄電電圧Vcが他の蓄電部12の蓄電電圧Vcと比較される。このため、蓄電電圧Vcはキャパシタ素子16を過充電状態とさせにくい。あるいは、蓄電電圧Vcが仮にキャパシタ素子16を過充電状態にさせても、その状態は極めて短時間に抑制されることとなり、キャパシタ素子16の劣化進行は抑制される。
【0052】
特に比較の基準となる基準電圧Vrは、蓄電システム11に配置されているキャパシタ素子16の蓄電電圧Vcの値そのものに基づいて設定される。これにより、キャパシタ素子16の蓄電電圧Vcに基準電圧Vrに対して過剰な余裕を設定する必要はなくなる。この結果として、直列に接続された蓄電部12の数量を増やすことなく適切な数量で、蓄電部12の劣化を抑制しつつ蓄電体13に所望の電圧を充電することができ、蓄電システム11の小型化が可能となる。
【0053】
またあるいは、基準電圧Vrは、すべての蓄電部12の蓄電電圧Vcの平均値Vavに設定されていてもよい。制御部15は蓄電部12の蓄電電圧Vcの検出の都度、演算によって蓄電電圧Vcの平均値Vavを求める。この場合、基準電圧Vrは個々の蓄電部12の蓄電電圧Vcの変動に応じて細かく変動する。
【0054】
これにより、個々の蓄電部12の蓄電電圧Vcを基準電圧Vrに近似させやすくなるとともに、電圧調整回路17のスイッチ素子19が接続状態となる期間を短縮することができる。この結果として、抵抗18で生じる電力損失が抑制される。
【0055】
先に説明した第2ステップで、蓄電電圧Vcの値と基準電圧Vrとの差Vdを所定の電圧差値Vzと制御部15が比較するにあたって、電圧差値Vzは基準電圧Vrが上昇することに伴って小さくしてもよい。言い換えると、タイミングT1での差Vd1と比較される電圧差値Vz1は、蓄電部12の充電状態が進行して蓄電電圧Vcが上昇しているタイミングT3で差Vd3と比較される電圧差値Vz3よりも大きくすることが望ましい。
【0056】
これにより、蓄電部12の蓄電電圧Vcが満充電状態に接近していても、特定の蓄電部12が満蓄電電圧に達する頻度を抑制でき、満蓄電電圧に達した期間を短縮することができる。この結果、蓄電部12の劣化を抑制しつつ蓄電体13の充電が可能となる。ただし、電圧差値Vz1、Vz3は互いに同じであってもよい。
【0057】
このように、制御部15は、充電回路14が蓄電体へ充電電流Icを供給しているとき、以下の動作を行う。制御部15は、それぞれのキャパシタ素子16の両端の間の蓄電電圧Vcを、それぞれのキャパシタ素子16が充電されるにつれて上昇する基準電圧Vrと比較する。制御部15は、それぞれのキャパシタ素子16の蓄電電圧Vcと基準電圧Vrとの差Vdが所定の第1電圧差値Vz1以下である場合には、上記対応する1つのスイッチ素子19を遮断状態にする。制御部15は、それぞれのキャパシタ素子16の蓄電電圧Vcと基準電圧Vrとの差Vdが所定の電圧差値Vz1よりも大きい場合には、上記対応する1つのスイッチ素子19を接続状態にし、その後、それぞれのキャパシタ素子16の蓄電電圧Vcと基準電圧Vrとの差Vdが所定の電圧差値Vz2よりも小さくなると上記対応する1つのスイッチ素子19を接続状態から遮断状態へ切り替える。
【0058】
所定の電圧差値Vz1は所定の電圧差値Vz2よりも大きい。
【0059】
所定の電圧差値Vz1は基準電圧Vrが上昇するに伴って小さくなってもよい。
【0060】
基準電圧Vrは複数のキャパシタ素子16の両端の間の蓄電電圧Vcに応じて決まる。
【0061】
基準電圧Vrは、複数のキャパシタ素子16の両端の間の蓄電電圧Vcうち最も低い値であってもよい。
【0062】
基準電圧Vrは、複数のキャパシタ素子16の両端の間の蓄電電圧Vcの平均値Vavであてもよい。
【0063】
第3ステップとしては、蓄電部12が概ねキャパシタ素子16の定格電圧に接近したときの蓄電システム11の動作について説明する。ここで定格電圧はキャパシタ素子16の満充電電圧としても構わない。
図4は蓄電システム11のこの動作における蓄電電圧Vcと充電時間との特性を示す図である。
図4において
図3に示す項目と同じ項目には同じ参照符号を付す。第3ステップでは上限電圧Vm1と上限電圧Vm2とが動作に関する基準として用いられる。上限電圧Vm2は上限電圧Vm1よりも高い。上限電圧Vm2は定格電圧と実質的に同じもしくは定格電圧よりも低い値に設定される。
【0064】
制御部15は、基準電圧Vrが上限電圧Vm1よりも高くなると、充電回路14から蓄電体13への充電電流Icの供給を停止させる。あるいは、制御部15は、基準電圧Vrが上限電圧Vm1に達すると、充電回路14から蓄電体13への充電電流Icの供給を停止させる。これにより、すべての蓄電部12における蓄電電圧Vcが、定格電圧よりも低い値で、かつ、近似した値の電圧で充電される。
【0065】
図4において基準電圧VrはタイミングT9で上限電圧Vm1に達する。基準電圧Vrにキャパシタ素子16が有する代表的な特性に基づいて予め設定された値が用いられた場合、あるいは、基準電圧Vrにすべての蓄電部12の蓄電電圧Vcの平均値Vavが用いられた場合、概ねすべての蓄電部12が上限電圧Vm1に近似した蓄電電圧Vcで充電される。
【0066】
特に、基準電圧Vrに複数の蓄電部12のうちで最も低い電圧を有する蓄電部12の電圧が適用された場合、タイミングT9においてすべての蓄電部12が上限電圧Vm1に達した充電状態を達成できる。このため、キャパシタ素子16の特性の劣化を抑制した状態で、かつ、キャパシタ素子16の特性限界に近い充電状態までの充電が可能となる。
【0067】
第3ステップにおいて、基準電圧Vrが上限電圧Vm1に達する過程としては、例えば以下のような過程で蓄電システム11が動作することが好ましい。
【0068】
制御部15は、充電回路14が蓄電体13へ充電電流Icを供給している状態で並行して、基準電圧Vrを上限電圧Vm1と比較する。さらに、制御部15は、充電回路14が蓄電体13へ充電電流Icを供給している状態で並行して、それぞれの蓄電部12の蓄電電圧Vcを上限電圧Vm2と比較する。言い換えると、制御部15は第2ステップを実施しているとき、同時に第3ステップで必要となる判定を実施している。
【0069】
複数の蓄電部12のうち何れか1つの蓄電部12の蓄電電圧Vcが上限電圧Vm2よりも高くなったことを制御部15がタイミングT5で検出すると、制御部15は充電回路14から蓄電体13への充電電流Icの供給を停止させる。あるいは、複数の蓄電部12のうち何れか1つの蓄電部12において蓄電電圧Vcが上限電圧Vm2に達したことを制御部15がタイミングT5で検出すると、制御部15は充電回路14から蓄電体13への充電電流Icの供給を停止させる。ここでは
図3における蓄電部12a~12d(12)のうち蓄電部12aのキャパシタ素子16aの蓄電電圧Vcaが上限電圧Vm2よりも高くなった、あるいは上限電圧Vm2に達した場合の動作を説明する。
【0070】
複数の蓄電部12のうち蓄電部12aの蓄電電圧Vcaが上限電圧Vm2よりも高くなったことを制御部15がタイミングT5で検出すると、前述のように、制御部15は充電回路14から蓄電体13への充電電流Icの供給を停止させる。あるいは、複数の蓄電部12のうち蓄電部12aの蓄電電圧Vcaが上限電圧Vm2に達したことを制御部15がタイミングT5で検出すると、前述のように、制御部15は充電回路14から蓄電体13への充電電流Icの供給を停止させる。さらに、制御部15は蓄電部12aのスイッチ素子19を遮断状態から接続状態へと切り替え、他の蓄電部12b~12dのスイッチ素子19を遮断状態に維持する。タイミングT5では上記のように、充電回路14は蓄電体13への電力の供給を停止する。タイミングT5でスイッチ素子19が接続状態となると、キャパシタ素子16aは抵抗18へ放電する状態となり、蓄電部12aの蓄電電圧Vcaは抵抗18の値に関係なく低下するが、蓄電部12aの蓄電電圧Vcaは抵抗18の値に応じた下降率で低下する。
【0071】
その後、蓄電部12aの蓄電電圧Vcaが下降してタイミングT6で上限電圧Vm1よりも低くなると、制御部15は蓄電部12aのスイッチ素子19を接続状態から遮断状態へと切り替える。あるいは、蓄電部12aの蓄電電圧Vcaが下降してタイミングT6で上限電圧Vm1に達すると、制御部15は蓄電部12aのスイッチ素子19を接続状態から遮断状態へと切り替える。タイミングT5からタイミングT6までの期間PT56では、複数の蓄電部12のうちの蓄電部12a以外の蓄電部12b~12dのキャパシタ素子16b~16dは充電も放電もされない。したがって、期間PT56では基準電圧Vrは概ね変動せずに一定となる。基準電圧Vrにキャパシタ素子16が有する代表的な特性に基づいて予め設定された値が用いられた場合、あるいは、基準電圧Vrに複数の蓄電部12の蓄電電圧Vcのうちで最も低い値が適用された場合、期間PT56では基準電圧Vrは実質的に変動しない。
【0072】
以上の動作により、蓄電部12のキャパシタ素子16は定格電圧や満充電電圧以上に充電されることなく、すべての蓄電部12のキャパシタ素子16の蓄電電圧Vcは互いに近似して満充電電圧に近い値となり満充電状態に近い充電状態とされることが可能となる。そして、キャパシタ素子16の劣化進行は抑制される。
【0073】
制御部15は、タイミングT6で蓄電部12aのスイッチ素子19を接続状態から遮断状態へと切り替え、かつ、充電回路14から蓄電体13への充電電流Icを供給させる。これにより、蓄電部12aを含めたすべての蓄電部12の蓄電電圧Vcおよび基準電圧Vrが再び上昇し始める。
【0074】
その後、タイミングT5の動作と同様に、複数の蓄電部12のうち何れか1つの蓄電部12のキャパシタ素子16の蓄電電圧Vcが上昇してタイミングT7で上限電圧Vm2よりも高くなったことを制御部15が検出すると、制御部15は充電回路14から蓄電体13への充電電流Icの供給を停止させる。あるいは、複数の蓄電部12のうち何れか1つの蓄電部12のキャパシタ素子16の蓄電電圧Vcが上昇してタイミングT7で上限電圧Vm2に達したことを制御部15が検出すると、制御部15は充電回路14から蓄電体13への充電電流Icの供給を遮断させる。一般的にタイミングT5、T7で最も早く上限電圧Vm2に達する蓄電電圧Vcを有するキャパシタ素子16の蓄電部12は同じである。したがって、タイミングT7においても
図3における蓄電電圧Vcは蓄電部12aの蓄電電圧Vcaであるとして、蓄電部12aの蓄電電圧Vcaが上限電圧Vm2よりも高くなった、あるいは上限電圧Vm2に達した場合の動作を説明する。
【0075】
複数の蓄電部12のうち蓄電部12aの蓄電電圧Vcaが上限電圧Vm2よりも高くなったことを制御部15がタイミングT7で検出すると、前述のように、制御部15は充電回路14から蓄電体13への充電電流Icの供給を停止させる。あるいは、複数の蓄電部12のうち蓄電部12aの蓄電電圧Vcaが上限電圧Vm2に達したことを制御部15がタイミングT7で検出すると、前述のように、制御部15は充電回路14から蓄電体13への充電電流Icの供給を停止させる。さらに、タイミングT5と同様にタイミングT7でも、制御部15は蓄電部12aのスイッチ素子19を遮断状態から接続状態へと切り替え、他の蓄電部12b~12dのスイッチ素子19を遮断状態に維持する。タイミングT5と同様にタイミングT7では上記のように、充電回路14は蓄電体13への電力供給を行っていない。したがって、タイミングT7で蓄電部12aのスイッチ素子19が接続状態となると、キャパシタ素子16aは抵抗18へ放電する状態となり、蓄電部12aのキャパシタ素子16a蓄電電圧Vcaは抵抗18の値に関係なく低下するが、蓄電部12aの蓄電電圧Vcaは抵抗18の値に応じた下降率で低下する。
【0076】
その後、制御部15は蓄電部12aの蓄電電圧Vcaが下降してタイミングT8で上限電圧Vm1よりも低くなると、蓄電部12aのスイッチ素子19を接続状態から遮断状態へと切り替える。あるいは、制御部15は蓄電部12aの蓄電電圧Vcaが下降してタイミングT8で上限電圧Vm1に達すると、蓄電部12aのスイッチ素子19を接続状態から遮断状態へと切り替れる。
【0077】
タイミングT5からタイミングT6までの期間PT56での蓄電部12aのスイッチ素子19の動作および充電回路14の動作は、タイミングT7からタイミングT8までの期間PT78での蓄電部12aのスイッチ素子19の動作および充電回路14の動作と同じである。ここでは、タイミングT8での基準電圧Vrの値はタイミングT6のそれより高い。言い換えると、タイミングT8での基準電圧Vrの値はタイミングT6のそれに比較して上限電圧Vm1により接近する。
【0078】
さらに、蓄電部12aのキャパシタ素子16aの蓄電電圧Vcaが下降してタイミングT8で上限電圧Vm1よりも低くなると、制御部15は蓄電部12aのスイッチ素子19を接続状態から遮断状態へと切り替え、他の蓄電部12b~12dのスイッチ素子19を遮断状態に維持する。あるいは、蓄電部12aのキャパシタ素子16aの蓄電電圧Vcaが上限電圧Vm1に達すると、制御部15は蓄電部12aのスイッチ素子19を接続状態から遮断状態へと切り替え、他の蓄電部12b~12dのスイッチ素子19を遮断状態に維持する。さらに、制御部15は充電回路14から蓄電体13への充電電流Icを供給させる。これにより、蓄電部12aを含めたすべての蓄電部12(12a~12d)のキャパシタ素子16(16a~16d)の蓄電電圧Vc(Vca~Vcd)と基準電圧Vrとが再び上昇し始める。
【0079】
そして、基準電圧Vrが上昇してタイミングT9で上限電圧Vm1に達する。タイミングT9で、先に述べたように、基準電圧Vrにキャパシタ素子16が有する代表的な特性に基づいて予め設定された値が用いられた場合、あるいは、基準電圧Vrにすべての蓄電部12の蓄電電圧Vcの平均値Vavが用いられた場合、概ねすべての蓄電部12のキャパシタ素子16が上限電圧Vm1に近似した値の蓄電電圧Vcで充電される。
【0080】
特に、基準電圧Vrに複数の蓄電部12のキャパシタ素子16の蓄電電圧Vcのうちで最も低い値が適用された場合、すべての蓄電部12が上限電圧Vm1に達した充電状態を達成できる。このため、キャパシタ素子16の特性の劣化を抑制した状態で、かつ、キャパシタ素子16の特性限界に近い充電状態までの充電が可能となる。
【0081】
上記の説明ではスイッチ素子19の接続と充電回路14の遮断とが行われる上記の動作はタイミングT5~T6の期間PT56とタイミングT7~T8の期間PT78との2回反復されている。この動作が行われる回数は上限電圧Vm1と上限電圧Vm2との設定値などによって変化する。したがって、スイッチ素子19の接続と充電回路14の遮断とが行われる動作は期間PT56の一度で完了しても、あるいは上記のように2度の反復にとどまらず、3度以上反復されてもよい。
【0082】
このように、複数のキャパシタ素子16(16a~16d)の或るキャパシタ素子16aの両端のうちの一方は複数の抵抗18のうちの或る抵抗18の一端と接続されている。或るキャパシタ素子16aの両端のうちの他方は複数のスイッチ素子19のうちの或るスイッチ素子19の一端と接続されている。或る抵抗18の他端は或るスイッチ素子19の他端と接続されている。或るスイッチ素子19は、或るスイッチ素子19の一端が他端に接続された接続状態と、或るスイッチ素子19の一端が他端から遮断された遮断状態とに選択的に切り替えられるように構成されている。制御部15は、充電回路14が蓄電体13へ充電電流Icを供給しているとき、或るキャパシタ素子16aの両端の間の蓄電電圧Vcaが所定の上限電圧Vm1よりも高い所定の上限電圧Vm2に達すると、充電回路14から蓄電体13への充電電流Icの供給を停止させ、かつ、或るスイッチ素子19を接続状態とする。その後、制御部15は、或るキャパシタ素子16aの蓄電電圧Vcaが所定の上限電圧Vm1よりも低くなると或るスイッチ素子19を接続状態から遮断状態へと切り替え、かつ、充電回路14から蓄電体13への充電電流Icの供給を開始させる。
【0083】
以下に第3ステップとして蓄電部12が概ね定格電圧に接近したときの蓄電システム11の別の動作について説明する。
図5は蓄電システム11の子の動作における蓄電電圧Vcと充電時間との特性を示す図である、
図5において
図3と
図4に示す項目と同じ項目には同じ参照符号を付す。蓄電部12のキャパシタ素子16の定格電圧は満充電電圧としてもよい。第3ステップでは上限電圧Vm1と上限電圧Vm2とが動作に関する基準として用いられる。上限電圧Vm2は上限電圧Vm1よりも高い。上限電圧Vm2は定格電圧と実質的に同じもしくは定格電圧よりも低い。
【0084】
制御部15は、基準電圧Vrが上限電圧Vm1よりも高くなると、充電回路14から蓄電体13への充電電流Icの供給を停止させる。あるいは、制御部15は、基準電圧Vrが上限電圧Vm1に達すると、充電回路14から蓄電体13への充電電流Icの供給を停止させる。これにより、すべての蓄電部12のキャパシタ素子16の蓄電電圧Vcが定格電圧よりも低い値で、かつ、近似した値の電圧ですべての蓄電部12のキャパシタ素子16が充電される。
【0085】
図5において基準電圧VrはタイミングT10で上限電圧Vm1に達する。ここで、基準電圧Vrにキャパシタ素子16が有する代表的な特性に基づいて予め設定された値が用いられた場合、あるいは、基準電圧Vrにすべての蓄電部12のキャパシタ素子16の蓄電電圧Vcの平均値Vavが用いられた場合、概ねすべての蓄電部12が上限電圧Vm1に近似した値の蓄電電圧Vcで充電される。
【0086】
特に、基準電圧Vrに複数の蓄電部12のキャパシタ素子16の蓄電電圧Vcのうちで最も低い値が適用された場合、すべての蓄電部12が上限電圧Vm1に達した充電状態を達成できる。このため、キャパシタ素子16の特性の劣化を抑制した状態で、かつ、キャパシタ素子16の特性限界に近い充電状態までの充電が可能となる。
【0087】
第3ステップにおいて、基準電圧Vrが上限電圧Vm1に達する過程としては、例えば以下のような過程で蓄電システム11が動作する。
【0088】
制御部15は、充電回路14が蓄電体13へ充電電流Icを供給している状態で、並行して基準電圧Vrを上限電圧Vm1と比較する。さらに、制御部15は、充電回路14が蓄電体13へ充電電流Icを供給している状態で、並行して蓄電部12の蓄電電圧Vcを上限電圧Vm2と比較する。言い換えると、制御部15は第2ステップを実施しているとき、同時に第3ステップで必要となる判定を実施している。
【0089】
制御部15は、タイミングT5で複数の蓄電部12のうち何れか1つの蓄電部12のキャパシタ素子16の蓄電電圧Vcが上限電圧Vm2よりも高くなったことを検出すると、制御部15は充電回路14から蓄電体13への充電電流Icの供給を停止させる。あるいは、複数の蓄電部12のうち何れか1つの蓄電部12の「キャパシタ素子16の蓄電電圧Vcが上限電圧Vm2に達したことを制御部15が検出すると、制御部15は充電回路14から蓄電体13への充電電流Icの供給を停止させる。ここでは
図3における蓄電電圧Vcは蓄電部12aの蓄電電圧Vcaであるとして、蓄電部12aの蓄電電圧VcaがタイミングT5で上限電圧Vm2よりも高くなった、あるいは上限電圧Vm2に達した場合の動作を以下に説明する。
【0090】
複数の蓄電部12のうち蓄電部12aのキャパシタ素子16aの蓄電電圧Vcaが上限電圧Vm2に達したことを制御部15がタイミングT5で検出すると、制御部15は充電回路14から蓄電体13への充電電流Icの供給を停止させる。さらに、制御部15は蓄電部12aのスイッチ素子19を遮断状態から接続状態へと切り替え、他の蓄電部12b~12dのスイッチ素子19を遮断状態に維持する。タイミングT5では上記のように、充電回路14は蓄電体13へ電力供給を停止する。したがって、タイミングT5で蓄電部12aのスイッチ素子19が接続状態となると、キャパシタ素子16aは抵抗18へ放電する状態となり、蓄電部12aの蓄電電圧Vcは抵抗18の値に関係なく低下するが、抵抗18の値に応じた下降率で低下する。
【0091】
その後、蓄電部12aの蓄電電圧Vcaが下降してタイミングT6で基準電圧Vrよりも低くなると、制御部15は蓄電部12aのスイッチ素子19を接続状態から遮断状態へと切り替える。あるいは、蓄電部12aの蓄電電圧Vcaが下降してタイミングT6で基準電圧Vrに達すると、制御部15はスイッチ素子19を接続状態から遮断状態へと切り替え、他の蓄電部12b~12dのスイッチ素子19を遮断状態に維持する。タイミングT5からタイミングT6までの期間PT56では、複数の蓄電部12のうち蓄電部12a以外の蓄電部12b~12dのキャパシタ素子16b~16dは充電も放電もされない。したがって、期間PT56では、基準電圧Vrは概ね変動せず一定となる。基準電圧Vrにキャパシタ素子16が有する代表的な特性に基づいて予め設定された値が用いられた場合、あるいは、基準電圧Vrに複数の蓄電部12の蓄電電圧Vcのうちでもっとも低い値が適用された場合、期間PT56では基準電圧Vrは実質的に変動しない。
【0092】
さらに、制御部15はタイミングT6で蓄電部12aのスイッチ素子19を接続状態から遮断状態へと切り替えて他の蓄電部12b~12dのスイッチ素子19を遮断状態に維持し、かつ、制御部15は充電回路14から蓄電体13への充電電流Icを供給させる。これにより、蓄電部12aを含めたすべての蓄電部12a~12d(12)のキャパシタ素子16a~16d(16)の蓄電電圧Vca~Vcd(Vc)と基準電圧Vrとが上昇し始める。そして、蓄電部12aの蓄電電圧Vcもしくは基準電圧Vrが上昇してタイミングT10で上限電圧Vm1に達すると、制御部15は充電回路14から蓄電体13への充電電流Icの供給を停止させ、蓄電体13への充電が完了する。
【0093】
制御部15は充電回路14から蓄電体13への充電電流Icの供給を停止させるタイミングT10は、基準電圧Vrが上限電圧Vm1に達するタイミングが好ましい。通常、蓄電部12aの蓄電電圧Vcよりも基準電圧Vrが低い。したがって、基準電圧Vrが上限電圧Vm1に達したタイミングでは、蓄電部12aの蓄電電圧Vcは既に上限電圧Vm1に達している。
【0094】
あるいは、蓄電部12aの蓄電電圧Vcと基準電圧Vrとの双方が上昇してタイミングT10で上限電圧Vm1に達すると、制御部15は充電回路14から蓄電体13への充電電流Icの供給を停止させ、蓄電体13への充電が完了する。
【0095】
以上の動作により、蓄電部12のキャパシタ素子16は定格電圧や満蓄電電圧以上に充電されることなく、すべての蓄電部12のキャパシタ素子16の蓄電電圧Vcが互いに近似しかつ、満充電電圧に近い値となってキャパシタ素子16が充電されることが可能となる。これにより、キャパシタ素子16の劣化進行は抑制される。
【0096】
このように。制御部15は、充電回路14が蓄電体13へ充電電流Icを供給しているとき、或るキャパシタ素子16aの両端の間の蓄電電圧Vcaが所定の上限電圧Vm1よりも高い所定の上限電圧Vm2に達すると、充電回路14から蓄電体13への充電電流Icの供給を停止させ、かつ、或るスイッチ素子19を接続状態とする。その後、制御部15は、或るキャパシタ素子16aの蓄電電圧Vcaが基準電圧Vrよりも低くなると或るスイッチ素子19を接続状態から遮断状態へと切り替え、かつ、充電回路14から蓄電体13への充電電流Icの供給を開始させる。
【0097】
図6は実施の形態における蓄電システム11を搭載した車両20の回路ブロック図である。蓄電システム11は、さらに放電回路25を有し、放電回路25を経由して蓄電体13に蓄えた電力を車両負荷26へ放電する。蓄電システム11は、例えば車両蓄電池22が破損した緊急時などにおいて、放電回路25を用いて車両負荷26へ一時的にかつ大きな電流密度の電力を供給する。
【0098】
蓄電体13は制御部15に対しても制御部15が駆動可能となる電力を供給する。そして、放電回路25が緊急時などにおいて車両負荷26へ電力を供給するときには、蓄電部12や蓄電体13に残存する電力に関係なく、蓄電システム11は電力を概ね使い果たす動作を行う。ここで、放電回路25を特に昇圧コンバータとして動作させるためには、蓄電体13に所定の電圧値以上の残存電圧が存在しないと、例え制御部15が動作可能な状態であっても、昇圧動作はできない。
【0099】
このため、車両20の駆動が完全に停止した状態から再度起動した際に蓄電システム11は早急に動作が可能となるように、車両20の起動が停止した時やその後に、電圧維持回路27が動作して蓄電体13に所定の電力を残したうえで放電を行う。ここで蓄電体13に残す電力あるいは電圧は、蓄電体13を構成する蓄電部12のキャパシタ素子16の劣化が進行しにくい先にも述べた初期電圧や初期電圧以下の値である。しかしながら、残された電圧が初期電圧や初期電圧以下の値であっても、長期間にわたって初期電圧が存在することでのキャパシタ素子16の劣化は完全に回避することは容易ではない。
【0100】
ここで、蓄電システム11ではすべての蓄電部12の蓄電電圧Vcが互いに近似した値となったうえで長期間の放置状態とされる場合であっても維持される。したがって、低い電圧で長期間の放置で生じる特性の劣化も、すべてのキャパシタ素子16において互いに近似した状態で進行する。言い換えると、一部のキャパシタ素子16の劣化が突出して進行することによっておこる蓄電システム11としての充放電能力の急激な低下が抑制される。この結果、蓄電システム11は、車両蓄電池22が破損した緊急時などにおいて、放電回路25を用いて車両負荷26へ一時的にかつ大きな電流密度の電力を供給するときにも、適切な放電動作が可能となる。
【0101】
以上の実施例では単一の制御部15がすべてに対する制御を担った形態となっているが、制御部15の機能が複数の制御回路に分散して配置されていてもよく、複数の制御回路が制御部15として総称されてもよい。
【符号の説明】
【0102】
11 蓄電システム
12,12a~12d 蓄電部
13 蓄電体
14 充電回路
15 制御部
16,16a~16d キャパシタ素子
17 電圧調整回路
18 抵抗
19 スイッチ素子
20 車両
21 車体
22 車両蓄電池
23 車両起動スイッチ
24 信号発生装置
25 放電回路
26 車両負荷
27 電圧維持回路