(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】温度測定システム
(51)【国際特許分類】
G01J 5/53 20220101AFI20241004BHJP
G01J 5/48 20220101ALI20241004BHJP
【FI】
G01J5/53 101
G01J5/48 E
(21)【出願番号】P 2021533908
(86)(22)【出願日】2020-07-03
(86)【国際出願番号】 JP2020026124
(87)【国際公開番号】W WO2021014929
(87)【国際公開日】2021-01-28
【審査請求日】2023-04-17
(31)【優先権主張番号】P 2019136081
(32)【優先日】2019-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 昌満
(72)【発明者】
【氏名】中村 有作
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-203193(JP,A)
【文献】特開2018-179956(JP,A)
【文献】国際公開第2019/058993(WO,A1)
【文献】特開2011-158433(JP,A)
【文献】特開2002-132341(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 5/00-5/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マーカー部が形成され所定の放射率を有する温度被測定部を有する温度測定用シートが貼付された対象物の表面温度を測定する温度測定システムであって、
前記対象物の表面温度を取得して温度分布画像を生成するサーマルカメラと、
前記温度分布画像に基づいて、前記温度被測定部および前記マーカー部の位置を特定し、前記マーカー部の形状およびみかけの大きさを取得する位置特定部と、
前記マーカー部の形状およびみかけの大きさに基づいて、前記サーマルカメラと前記対象物との距離を算出する距離算出部と、
前記放射率と前記距離とに基づいて前記対象物の温度情報を算出する温度情報算出部と、
を備える、
温度測定システム。
【請求項2】
前記マーカー部は、前記温度測定用シートに関する情報を示すコード部を含み、
前記位置特定部は、さらに前記コード部の位置を特定する、
請求項
1に記載の温度測定システム。
【請求項3】
さらに、
前記対象物を撮像し、前記対象物の可視画像を生成する可視カメラ、
を備え、
前記位置特定部は、さらに前記可視画像に基づいて前記コード部の位置を特定する、
請求項
2に記載の温度測定システム。
【請求項4】
さらに、
前記コード部の情報を取得するコード読取部、
を備える、
請求項
2または
3に記載の温度測定システム。
【請求項5】
前記温度測定用シートは、任意の情報を示す情報表示部をさらに有し、
前記温度測定システムは、さらに、
前記対象物と、前記温度情報、前記コード部が示す前記情報、および前記情報表示部が示す前記任意の情報のうち少なくとも1つとを関連付ける情報管理部、
を備える、
請求項
2から
4のいずれか1項に記載の温度測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、温度測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
赤外線放射温度計を用いて対象物の温度を測定し、得られた温度情報に基づいて温度分布画像を生成するサーマルカメラが知られている。サーマルカメラを用いて、設備等の温度情報を管理することが求められている。特許文献1には、例えば黒体等で形成される既知の輻射率を有する測定マークを、予め測定対象物の表面に設ける方法が記載されている。この場合、輻射率が既知の測定マークの温度を、サーマルカメラにより高精度に測定できるため、測定マークの温度情報に基づいて輻射率が未知の領域の温度を推定することができる。
【0003】
また、特許文献2には、基盤と複数の平面板とが異なる温度であり、熱が相互に移動しないよう加工されたカメラ校正用ボードが記載されている。この場合、カメラ校正用ボードに温度の異なる領域が形成されるため、サーマルカメラで撮像した際に、カメラ校正用ボードを高精度に抽出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-203193号公報
【文献】国際公開第2017/056473号
【発明の概要】
【0005】
特許文献1に記載された測定マークでは、サーマルカメラにより取得した画像から測定マークの位置を高精度に検出することが困難である。
【0006】
また、特許文献2に記載されたカメラ校正用ボードでは、基盤と平面版とで温度差を作り出してサーマルカメラ画像上で特徴点を表示する方法である。しかし、温度差を作り出すために基盤を加熱しなければならず、基盤と平面版の温度差を長時間維持することは困難である。
【0007】
そこで、本開示では、サーマルカメラにより取得した画像から、温度測定用シートの位置を高精度に検出できる温度測定システムを提供することを課題とする。
【0009】
本開示に係る温度測定システムは、マーカー部が形成され所定の放射率を有する温度被測定部を有する温度測定用シートが貼付された対象物の表面温度を測定する温度測定システムであって、
前記対象物の表面温度を取得して温度分布画像を生成するサーマルカメラと、
前記温度分布画像に基づいて、前記温度被測定部および前記マーカー部の位置を特定し、前記マーカー部の形状およびみかけの大きさを取得する位置特定部と、
前記マーカー部の形状およびみかけの大きさに基づいて、前記サーマルカメラと前記対象物との距離を算出する距離算出部と、
前記放射率と前記撮影距離とに基づいて前記対象物の温度情報を算出する温度情報算出部と、を備える。
【0010】
本開示によれば、サーマルカメラにより取得した画像から、温度測定用シートの位置を高精度に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】実施の形態1に係る温度測定用シートを示す平面図である。
【
図1B】実施の形態1に係る別の温度測定用シートを示す平面図である。
【
図1C】実施の形態1に係るさらに別の温度測定用シートを示す平面図である。
【
図2A】実施の形態1に係る温度測定システムのサーマルカメラの瞬時視野角を説明する概略図である。
【
図2B】撮影距離に応じて必要な被測定領域の大きさを示す表である。
【
図3】実施の形態1に係る温度測定システムの構成を示すブロック図である。
【
図4】実施の形態1に係る温度測定システムの動作を示すフローチャートである。
【
図5】実施の形態2に係る温度測定用シートを示す平面図である。
【
図6】実施の形態2に係る温度測定システムの構成を示すブロック図である。
【
図7】実施の形態2に係る温度測定システムの動作を示すフローチャートである。
【
図8】実施の形態3に係る温度測定システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(本開示に至った経緯)
サーマルカメラを使用して、設備等の温度情報を管理するケースが増えている。サーマルカメラにより温度を測定する際には、対象物の放射率(放射率情報)、対象物とサーマルカメラとの距離(距離情報)、大気温度、および湿度等の各種パラメータを設定すると、精度の高い温度情報を取得することができる。上述のパラメータのうち、放射率情報および距離情報が、温度測定結果に大きな影響を与える。このため、サーマルカメラによる温度測定の際には、正確な放射率情報および距離情報を取得することが望ましい。
【0013】
放射率情報は、対象物の材質、酸化または汚れ等の表面状態、および表面形状等の、対象物の状態によって異なるため、対象物ごとに放射率を求めるのは困難な作業である。そこで、特許文献1のように、対象物の表面に放射率が既知である黒体テープ等からなる測定マークを貼付して対象物の温度を測定する方法が知られている。
【0014】
また、放射温度計を用いて黒体テープ等の測定マークを測定する場合、サーマルカメラの画像から測定マークの箇所を目視により推定し、測定マーク上に温度ポインタ等を移動させる。このとき、サーマルカメラの画像から、画像処理技術を用いて測定マークの位置を特定することができると、サーマルカメラを測定マークに向けて撮影するだけで、対象物の温度を自動測定することができる。
【0015】
しかし、サーマルカメラにより取得された画像は温度分布画像であり、測定マークを含む周辺は同一温度であり、差別化が困難であるため、画像処理技術により測定マークの位置を検出することが困難である。
【0016】
そこで、発明者らは、これらの課題を解決するための温度測定用シートおよび温度測定システムを検討し、以下の構成を考案した。
【0017】
本開示の一態様に係る温度測定用シートは、
サーマルカメラにより対象物の表面温度を測定する際に、前記対象物に貼付される温度測定用シートであって、
第1の放射率を有する温度被測定部と、
前記温度被測定部に形成され、前記第1の放射率よりも小さい第2の放射率を有し、前記サーマルカメラと前記対象物との距離を測定するためのマーカー部と、
を備える。
【0018】
この構成によると、サーマルカメラにより取得した画像から、温度測定用シートの位置を高精度に検出することができる。
【0019】
前記マーカー部は、前記温度被測定部の外周に沿った領域の少なくとも一部に形成されていてもよい。
【0020】
この構成によると、一定以上の面積で温度被測定部を設けることができるため、正確な温度測定が可能になる。
【0021】
前記マーカー部は、前記温度測定用シートに関する情報を示すコード部を含んでいてもよい。
【0022】
この構成によると、温度測定用シートに温度被測定部の放射率、またはマーカー部の実際の大きさ等の情報を埋め込むことができ、撮影時にコード部の情報を取得することで、対象物の温度、または対象物との距離等の自動補正を行うことができる。
【0023】
さらに、
可視カメラにより認識可能であり、任意の情報を示す情報表示部と、
を備え、
前記情報表示部は、前記温度被測定部に隣接して形成されていてもよい。
【0024】
この構成によると、解像度の粗いサーマルカメラを使用する場合でも、可視カメラを併用することで、温度測定用シートを高精度に検出することができる。また、マーカー部により多くの情報を埋め込むことが可能である。
【0025】
また、本開示の一態様に係る温度測定システムは、
マーカー部が形成され所定の放射率を有する温度被測定部を有する温度測定用シートが貼付された対象物の表面温度を測定する温度測定システムであって、
前記対象物の表面温度を取得して温度分布画像を生成するサーマルカメラと、
前記温度分布画像に基づいて、前記温度被測定部および前記マーカー部の位置を特定し、前記マーカー部の形状およびみかけの大きさを取得する位置特定部と、
前記マーカー部の形状およびみかけの大きさに基づいて、前記サーマルカメラと前記対象物との距離を算出する距離算出部と、
前記放射率と前記距離とに基づいて前記対象物の温度情報を算出する温度情報算出部と、
を備える。
【0026】
この構成によると、サーマルカメラにより取得した画像から、温度測定用シートの位置を高精度に検出することができる。
【0027】
前記マーカー部は、前記温度測定用シートに関する情報を示すコード部を含み、
前記位置特定部は、さらに前記コード部の位置を特定してもよい。
【0028】
この構成によると、温度測定用シートに温度被測定部の放射率、またはマーカー部の実際の大きさ等の情報を埋め込むことができる。
【0029】
さらに、
前記対象物を撮像し、前記対象物の可視画像を生成する可視カメラ、
を備え、
前記位置特定部は、さらに前記可視画像に基づいて前記コード部の位置を特定してもよい。
【0030】
この構成によると、解像度の粗いサーマルカメラを使用する場合でも、可視カメラを併用することで、温度測定用シートを高精度に検出することができる。また、マーカー部により多くの情報を埋め込むことが可能である。
【0031】
さらに、
前記コード部の情報を取得するコード読取部、
を備えていてもよい。
【0032】
この構成によると、撮影時にコード部の情報を取得することで、対象物の温度、または対象物との距離等の自動補正を行うことができる。
【0033】
前記温度測定用シートは、任意の情報を示す情報表示部をさらに有し、
前記温度測定システムは、さらに、
前記対象物と、前記温度情報、前記コード部が示す前記情報、および前記情報表示部が示す前記任意の情報のうち少なくとも1つとを関連付ける情報管理部、
を備えていてもよい。
【0034】
この構成によると、対象物の温度、または対象物との距離等の自動補正が可能になることに加えて、対象物と、対象物を特定する情報とを関連付けて同時に管理することが可能である。
【0035】
(実施の形態1)
以下、本開示を実施するための好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、図面において実質的に同一の部材については、同一の符号を付している。
【0036】
[温度測定用シートの全体構成]
図1A~
図1Cは、実施の形態1に係る温度測定用シートを示す図である。
図2Aは、実施の形態1に係る温度測定システムのサーマルカメラの瞬時視野角を説明する概略図である。
図2Bは、撮影距離に応じて必要な被測定領域の大きさを示す表である。
【0037】
本開示の温度測定用シート1aは、
図1Aに示すように、例えば矩形状のシートであり、サーマルカメラによる温度測定の対象物に貼付して使用される。温度測定用シート1aは、所定の放射率を有する温度被測定部11と、温度被測定部11に形成され、温度被測定部11の放射率よりも小さい放射率を有し、サーマルカメラと対象物との距離を測定するためのマーカー部12とを備える。なお、温度測定用シート1aの形状は矩形型に限らない。
【0038】
<温度被測定部>
温度被測定部11は、放射率が1に近い黒体等により形成されている。本実施の形態では、所定の大きさに形成された黒体テープが使用されている。また、所定の大きさのシートに、スプレー等により黒体塗料を塗布して形成されていてもよい。温度被測定部11は、サーマルカメラにより生成された温度分布画像から温度情報を算出するための領域である、被測定領域11aを有する。
【0039】
被測定領域11aに必要な大きさは、サーマルカメラの瞬時視野角および撮影距離によって異なるが、測定温度の精度を確保するためには、温度分布画像において6画素×6画素以上の面積が確保されているとよい。瞬時視野角とは、サーマルカメラの1画素が温度分布を捉えることのできる最小の視野角であり、サーマルカメラの解像度等により数値が異なる。本実施の形態では、瞬時視野角が6.1mradのサーマルカメラを使用している。瞬時視野角(mrad)の値に対象物との撮影距離(m)を乗算すると、温度分布画像上での1画素の、撮影距離における大きさを求めることができる。例えば、
図2Aに示すように、瞬時視野角が6.1mradのサーマルカメラを使用する場合、撮影距離1mにおいて6.1mm平方の対象物が、温度分布画像において1画素で表される。同様に、撮影距離10mにおいて、61mm平方の対象物が、温度分布画像において1画素で表される。
【0040】
この場合、温度分布画像において6画素×6画素の領域を確保するための、撮影距離に対する被測定領域の大きさの目安は
図2Bの表の通りである。例えば、撮影距離が1mである場合、6画素の大きさが36.6mmとなるため、被測定領域11aの大きさはおよそ37mm×37mm以上であることが望ましい。撮影距離に応じて、被測定領域11aの必要最小サイズが異なるため、撮影距離に応じた大きさの被測定領域11aを有する温度測定用シート1aをそれぞれ用意してもよい。なお、使用するサーマルカメラの瞬時視野角により、撮影距離に応じて必要な被測定領域11aの大きさは異なるため、必要な被測定領域11aの大きさは必ずしも
図2Bの表に限定されない。
【0041】
<マーカー部>
マーカー部12は、所定の大きさおよび形状で、温度被測定部11に形成される。本実施の形態では、マーカー部12は、L字型の第1マーカー部12aおよび矩形型の第2マーカー部12bにより構成される。マーカー部12は、例えば金属テープ等の、温度被測定部11の放射率よりも小さい放射率を有する材料を、温度被測定部11に貼り付けることにより形成することができる。または、対象物が金属等であり、温度被測定部11の放射率よりも小さい放射率を有する場合には、温度被測定部11の一部を切り抜くことによりマーカー部12を形成してもよい。なお、マーカー部12は、金属に限らず温度被測定部11より小さい放射率を持つ材料により形成することができる。
【0042】
マーカー部12の実際の大きさと、サーマルカメラにより取得された温度分布画像におけるマーカー部12の画素数とに基づいて、サーマルカメラと対象物との距離を算出することができる。したがって、マーカー部12の実際の大きさは、予め決定された所定の値であるとよい。例えば、第1マーカー部12aの縦の長さH、または横の長さWを所定の値にするとよい。あるいは、第1マーカー部12aと第2マーカー部12bとの距離、例えば
図1Aにおける距離L1または距離L2を所定の値にしてもよい。
【0043】
また、マーカー部12の放射率と温度被測定部11の放射率との差が大きいほど、温度分布画像において、マーカー部12と温度被測定部11とのコントラストが大きくなり、温度測定用シート1aの特定が容易になる。したがって、マーカー部12は、金属等の放射率が小さい材料により形成されるのが好ましい。また、第1マーカー部12aはL字型に形成されているが、このように、マーカー部12の形状に特徴を持たせると、温度分布画像における温度測定用シート1aの検出が容易になる。
【0044】
被測定領域11aを確保するため、マーカー部12は、温度被測定部11の外周に沿った領域12cの少なくとも一部に形成されているとよい。温度被測定部11の外周に沿った領域12cの少なくとも一部に形成されているとは、例えば、温度被測定部11の四隅にマーカー部12が形成されていたり、温度被測定部11の半分にマーカー部12が形成され他の半分が被測定領域11aであったりすることを含む。つまり、必要な大きさの被測定領域11aが確保されていれば、マーカー部12の配置、形状、大きさは任意である。
【0045】
また、マーカー部12は、温度測定用シート1aに関する情報を示すコード部を含んでいてもよい。例えば、マーカー部12は、
図1Bの温度測定用シート1bに示すように、一次元コードによって示されるコード部13aを含む。または、
図1Cの温度測定用シート1cに示すように、マーカー部12は、QRコード(登録商標)等の二次元コードによって示されるコード部13bであってもよい。コード部13a、13bは、例えば、温度被測定部11の放射率、またはマーカー部12の形状および実際の大きさ等の温度測定用シート1a~1cに関する情報を含んでいるとよい。コード部13a、13bは、一次元コードまたは二次元コードに限らず、文字列等であってもよい。
【0046】
[温度測定システムの全体構成]
図3は、実施の形態1に係る温度測定システムの構成を示すブロック図である。
【0047】
本実施の形態に係る温度測定システム100は、サーマルカメラ101と、位置特定部102と、距離算出部103と、温度情報算出部104と、コード読取部105と、を備え、温度測定用シートが貼付された対象物の表面温度を測定する。本実施の形態では、位置特定部102、距離算出部103、温度情報算出部104、およびコード読取部105は、制御部110に含まれるが、これに限定されない。制御部110は、例えば、サーマルカメラ101に搭載されるマイコン、またはサーマルカメラ101が接続されるPCまたはタブレット等の情報処理端末に搭載されるCPU等により構成することができる。
【0048】
<サーマルカメラ>
サーマルカメラ101は、対象物の表面温度を取得して温度分布画像を形成する。サーマルカメラ101は、例えば赤外線カメラであり、対象物から放射される赤外線エネルギーを検出して、検出した赤外線エネルギー量を温度に換算することにより、温度分布画像を生成する。本実施の形態のサーマルカメラ101は、瞬時視野角が6.1mradであるが、これに限定されず、対象物から放射される赤外線エネルギーを検出できるものであればよい。
【0049】
<位置特定部>
位置特定部102は、サーマルカメラ101により生成された温度分布画像に基づいて、温度測定用シート1aの温度被測定部11およびマーカー部12の位置を特定し、マーカー部12の形状およびみかけの大きさを取得する。なお、マーカー部12のみかけの大きさとは、温度分布画像上でのマーカー部12の表示画素数のことである。温度被測定部11とマーカー部12との放射率が異なるため、温度分布画像において、温度被測定部11とマーカー部12とは異なる温度分布で表示される。このような、温度被測定部11とマーカー部12とのコントラストにより、温度被測定部11およびマーカー部12の位置を特定することができる。また、位置特定部102は、位置を特定したマーカー部12の、温度分布画像上での形状およびみかけの大きさ、すなわち温度分布画像上での表示画素数を取得する。マーカー部12の温度分布画像上での表示画素数が、本開示の「マーカー部の形状およびみかけの大きさ」に相当する。温度測定用シート1b、1cのようにマーカー部12がコード部13a、13bを含む場合、位置特定部102は、さらにコード部13a、13bの位置を特定する。
【0050】
<距離算出部>
距離算出部103は、マーカー部12の形状およびみかけの大きさに基づいて、サーマルカメラ101と対象物との撮影距離を算出する。位置特定部102により取得された、マーカー部12の温度分布画像上での表示画素数と、マーカー部12の実際の大きさとに基づいて、サーマルカメラ101と対象物との距離を算出することができる。一例として、第1マーカー部12aの横の長さWが30.5mmであり、位置特定部102により取得された第1マーカー部12aの横の長さWの部分の画素数が1画素である場合、
図2Bの表により、サーマルカメラ101と対象物との距離、すなわち撮影距離が5mであると算出される。なお、マーカー部12の実際の大きさは、パラメータとして予め入力しておくことができる。または、温度測定用シート1b、1cのようにマーカー部12がコード部13a、13bを含む場合、マーカー部12の形状およびみかけの大きさの情報をコード部13a、13bに含めてもよい。この場合、後述するコード読取部105により、コード部13a、13bの有する情報を読み取ることができる。距離算出部103により算出された撮影距離は、温度情報算出部104により温度情報を算出する際に使用される。
【0051】
<温度情報算出部>
温度情報算出部104は、温度被測定部11の放射率と距離算出部103により算出された撮影距離とに基づいて、対象物の温度情報を算出する。位置特定部102により特定された温度分布画像上の温度被測定部11の温度情報を、温度被測定部11の放射率および撮影距離に基づいて算出し、温度分布画像の表示を調整する。温度被測定部11の放射率は、パラメータとして予め入力しておくことができる。または、温度測定用シート1b、1cのようにマーカー部12がコード部13a、13bを含む場合、コード部13a、13bに温度被測定部11の放射率の値を含めてもよい。この場合、後述するコード読取部105により、コード部13a、13bの有する情報を取得することができる。
【0052】
<コード読取部>
コード読取部105は、温度測定用シート1b、1cのように、マーカー部12にコード部13a、13bが含まれる場合、コード部13a、13bが示す情報を読み取る。位置特定部102により熱分布画像上における位置が特定されたコード部13a、13bの有する情報が、コード読取部105により解析される。コード読取部105は、例えば、バーコードまたは二次元コードを読み取るバーコードリーダ等を採用することができる。コード読取部105により取得された情報は、温度情報算出部104により温度情報を算出する際に使用される。
【0053】
[動作]
図4は、実施の形態1に係る温度測定システムの動作を示すフローチャートである。
図4を参照して、温度測定システムの動作の一例を説明する。
(1)サーマルカメラ101により、温度測定用シート1a~1cが貼付された対象物の温度分布画像が生成される(ステップS201)。
(2)ステップS201で生成した温度分布画像に基づいて、位置特定部102により、温度測定用シート1a~1cの温度被測定部11およびマーカー部12の位置を特定する(ステップS202)。また、温度分布画像上でのマーカー部のみかけの大きさ(表示画素数)を取得する。さらに、温度測定用シート1b、1cのようにマーカー部12がコード部13a、13bを含む場合、さらにコード部13a、13bの位置を特定する。
(3)マーカー部12がコード部13a、13bを含む場合(ステップS203でYes)、コード読取部105により、コード部13a、13bの有する情報を読み取る(ステップS204)。なお、コード部13a、13bには、温度被測定部11の放射率の値、またはマーカー部12の実際の大きさ等、温度測定用シート1b、1cに関する情報を含めることができる。また、マーカー部12がコード部13a、13bを含まない場合(ステップS203でNo)、ステップS205に進む。
(4)ステップS202で取得した温度分布画像上でのマーカー部12のみかけの大きさに基づいて、サーマルカメラ101と対象物との撮影距離を算出する(ステップS205)。なお、撮影距離の算出には、予め入力されたマーカー部12の実際の大きさ、またはコード部13a、13bに含まれるマーカー部12の実際の大きさの情報を使用することができる。
(5)予め入力された、またはコード部13a、13bに含まれる温度被測定部11の放射率の値、およびステップS205で算出された撮影距離に基づいて、温度被測定部11の被測定領域11aの温度情報を算出する(ステップS206)。
【0054】
[効果]
本実施の形態の温度測定用シートおよび温度測定システムによると、サーマルカメラにより取得した画像から、温度測定用シートの位置を高精度に検出することができる。本開示の温度測定用シートは、所定の放射率を有する温度被測定部と温度被測定部よりも小さい放射率を有するマーカー部を備えており、温度分布画像上でのマーカー部のみかけの大きさに基づいて対象物とサーマルカメラとの距離を算出することができる。このため、温度測定のたびにパラメータを設定することなく、精度の高い温度測定が可能である。また、マーカー部に温度測定用シートに関する情報を示すコード部を含むことにより、サーマルカメラにより生成された温度分布画像に対して画像処理を施して、コード部に含まれた温度被測定部の放射率およびマーカー部の実際の大きさ等の情報を取得することができる。コード部に必要な情報を含めることで、予め手動でパラメータ設定をしなくてもよく、温度測定時の操作を簡略化することができる。また、温度測定用シートに温度が異なる領域を設けなくてもよいため、温度測定用シートを加熱しなくてもよく、また、温度測定用シートを貼付できる任意の対象物の温度測定に使用することができる。
【0055】
(実施の形態2)
[全体構成]
本開示の実施の形態2に係る温度測定用シートおよび温度測定システムについて説明する。なお、実施の形態2においては、実施の形態1と同一または同等の構成については同じ符号を付して説明する。また、実施の形態2では、実施の形態1と重複する記載は省略する。
【0056】
図5は、実施の形態2に係る温度測定用シートを示す図である。
図6は、実施の形態2に係る温度測定システムの構成を示すブロック図である。
【0057】
実施の形態2に係る温度測定用シート1dは、
図5に示すように、可視カメラにより認識可能であり、任意の情報を示す情報表示部14を備え、情報表示部14は、温度被測定部11に隣接して形成されている点で、実施の形態1と異なっている。また、実施の形態2に係る温度測定システム100aは、
図6に示すように、対象物を撮像し、対象物の可視画像を生成する可視カメラ106を備える点で、実施の形態1と異なっている。
【0058】
温度測定用シート1dの情報表示部14は、可視カメラ106により認識可能な素材で形成することができる。また、温度被測定部11と一体的に形成されていてもよい。情報表示部14には、任意の情報を含めることができる。情報表示部14は、例えば、対象物に関する情報を含むバーコードまたは二次元コード等を含む。この場合、情報表示部14は、可視カメラ106により認識されるため、温度測定用シート1b、1cのマーカー部12に含まれるコード部13a、13bよりも多くの情報を含むことができる。また、情報表示部14は、文字列等を含んでいてもよい。
【0059】
温度測定システム100aの可視カメラ106により生成された可視画像に基づいて、位置特定部102は、情報表示部14の位置を特定する。また、位置特定部102は、可視画像に基づいて、マーカー部12および情報表示部14の位置を特定し、マーカー部12の形状およびみかけの大きさを取得してもよい。一般的に、可視カメラはサーマルカメラよりも安価で高精細なものが多く、マーカー部12および情報表示部14を可視カメラにより生成された可視画像に基づいて特定することにより、温度測定用シートを高い精度で検出することができる。
【0060】
[動作]
図7は、本実施の形態に係る温度測定システム100aの動作を示すフローチャートである。
図7を参照して、本実施の形態に係る温度測定システムの動作を説明する。
(1)可視カメラ106により、温度測定用シート1dが貼付された対象物の可視画像が生成される(ステップS211)。
(2)ステップS211で生成された可視画像に基づいて、位置特定部102により、マーカー部12および情報表示部14が特定される(ステップS212)。なお、温度測定用シート1dは情報表示部14を含まなくてもよく、その場合、位置特定部102は、可視画像に基づいてマーカー部12の位置を特定する。
(3)温度測定システム100aは情報表示部14により示される情報を取得する(ステップS213)。
(4)ステップS214~ステップS219は、
図4に示す実施の形態1の温度測定システム100のフローチャートのステップS201~S206と同一である。
【0061】
なお、本実施の形態では、可視カメラにより可視画像を生成した後、サーマルカメラにより温度分布画像を生成しているが、サーマルカメラによる温度分布画像の生成後に、可視カメラによる可視画像を生成する等、それぞれの動作の順序が異なっていてもよい。
【0062】
[効果]
本実施の形態の温度測定用シート1dおよび温度測定システム100aによると、サーマルカメラ101の解像度が低い場合であっても、可視カメラ106を併用することにより、高精度に温度測定用シート1dの検出をすることができる。また、可視カメラにより認識可能な情報表示部14を有するため、温度測定用シートにより多くの情報を埋め込むことができる。
【0063】
(実施の形態3)
本開示の実施の形態3に係る温度測定システムについて説明する。なお、実施の形態3においては、実施の形態1と同一または同等の構成については同じ符号を付して説明する。また、実施の形態3では、実施の形態1と重複する記載は省略する。
【0064】
図8は、実施の形態3に係る温度測定システム100bの構成を示すブロック図である。実施の形態3に係る温度測定システム100bは、対象物と、温度情報、コード部の情報、および情報表示部の情報のうち、少なくとも1つとを関連付ける情報管理部107を備える点で実施の形態1と異なっている。温度測定システム100bは、対象物に貼付される温度測定用シート1a~1dのいずれをも測定対象とすることができる。
【0065】
情報管理部107は、コード読取部105により取得された情報と、温度情報算出部104により取得された情報とを関連付けて管理する。例えば、コード部13a、13bまたは情報表示部14に対象物に関する情報(例えば、対象物IDまたは異常温度情報等)を含めることで、温度分布画像と対象物に関する情報とを関連付けて画像を管理することができる。温度分布画像と対象物IDとを関連付けると、どの画像がどの対象物のものであるかの認識が容易になり、温度分布画像の管理を効率的に行うことができる。また、温度分布画像と異常温度情報を関連付けると、対象物が異常な温度状態となった場合に、アラートを出力することができ、異常検知を容易に行うことができる。
【0066】
(他の実施の形態)
上述の実施の形態を挙げて本開示を説明したが、本開示の実施の形態はこれに限定されない。
【0067】
例えば、実施の形態1では、温度測定用シート1b、1cのコード部13a、13bは、温度測定用シート1b、1cに関する情報(例えば、温度被測定部11の放射率またはマーカー部12の実際の大きさ等)を有するが、その他の情報が含まれていてもよい。
【0068】
また、実施の形態2では、温度測定システム100aで温度測定を行う際に、可視カメラ106により認識可能な情報表示部14を有する温度測定用シート1dを使用しているが、温度測定用シート1a~1cを使用してもよい。コード部13a、13bを可視カメラにより認識することで、コード部13a、13bにより多くの情報を埋め込むことができる。
【0069】
また、実施の形態3では、温度測定システム100bは可視カメラ106を持たない構成であるが、可視カメラ106を備える構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本開示は、サーマルカメラによる表面温度を測定する際の温度測定用シート、および温度測定システムに適用可能である。
【符号の説明】
【0071】
1a 温度測定用シート
1b 温度測定用シート
1c 温度測定用シート
1d 温度測定用シート
11 温度被測定部
11a 被測定領域
12 マーカー部
12a 第1マーカー部
12b 第2マーカー部
12c 領域
13a コード部
13b コード部
14 情報表示部
100 温度測定システム
100a 温度測定システム
100b 温度測定システム
101 サーマルカメラ
102 位置特定部
103 距離算出部
104 温度情報算出部
105 コード読取部
106 可視カメラ
107 情報管理部
110 制御部