(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】移動体、及び移動体制御方法
(51)【国際特許分類】
B61B 10/04 20060101AFI20241004BHJP
B62B 3/02 20060101ALI20241004BHJP
B62B 5/00 20060101ALI20241004BHJP
B61G 7/00 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
B61B10/04 H
B62B3/02 B
B62B5/00 C
B61B10/04 K
B61G7/00 B
B61B10/04 F
(21)【出願番号】P 2021026593
(22)【出願日】2021-02-22
【審査請求日】2023-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】増田 健太郎
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-028974(JP,A)
【文献】特開2001-130414(JP,A)
【文献】特開2020-183149(JP,A)
【文献】特開2021-020481(JP,A)
【文献】特開2020-077295(JP,A)
【文献】国際公開第2020/179386(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0166105(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 10/04
B61G 7/00
B62B 1/00- 5/08
G05D 1/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体本体と、
底部を有する台車本体の下部に設けられた複数の車輪で移動可能な台車の下側に前記移動体本体の少なくとも一部が入り込んだ状態で、前記台車の少なくとも一部を持ち上げることによって前記台車を保持する保持部と、
前記移動体本体を移動させるための駆動部と、
前記駆動部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記台車の前記底部の短辺部分から前記底部の下側に前記移動体本体の少なくとも一部が入り込むように前記駆動部を制御し、
前記制御部は、前記保持部が前記台車を保持している状態で、前記駆動部を制御して前記移動体本体を移動させることによって、前記台車を搬送
し、
前記台車が備える前記複数の車輪は、前記底部の長手方向の一端側に配置され、所定の方向に沿って回転可能な固定輪と、前記底部の長手方向の他端側に配置され、全周方向に回転可能な自由輪と、を含み、
前記制御部は、前記底部の前記長手方向の一端側の短辺部分から前記底部の下側に前記移動体本体の少なくとも一部が入り込むように前記駆動部を制御し、
前記保持部は、前記台車の前記長手方向における少なくとも一方の端部に設けられたピンを保持するピンチャック部を含み、
前記台車に前記ピンが存在するか否かを検知するピン検知部を、更に備え、
前記ピン検知部が前記ピンの非存在を検知すると、前記保持部は、前記自由輪及び前記固定輪が全て移動面から浮いた状態で前記台車を保持する、
移動体。
【請求項2】
移動体本体と、
底部を有する台車本体の下部に設けられた複数の車輪で移動可能な台車の下側に前記移動体本体の少なくとも一部が入り込んだ状態で、前記台車の少なくとも一部を持ち上げることによって前記台車を保持する保持部と、
前記移動体本体を移動させるための駆動部と、
前記駆動部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記台車の前記底部の短辺部分から前記底部の下側に前記移動体本体の少なくとも一部が入り込むように前記駆動部を制御し、
前記制御部は、前記保持部が前記台車を保持している状態で、前記駆動部を制御して前記移動体本体を移動させることによって、前記台車を搬送し、
前記台車が備える前記複数の車輪は、前記底部の長手方向の一端側に配置され、所定の方向に沿って回転可能な固定輪と、前記底部の長手方向の他端側に配置され、全周方向に回転可能な自由輪と、を含み、
前記制御部は、前記底部の前記長手方向の一端側の短辺部分から前記底部の下側に前記移動体本体の少なくとも一部が入り込むように前記駆動部を制御し、
前記移動体本体に設けられ、前記台車本体と当接することによって、前記台車の移動方向を前記移動体本体の移動方向に追従させる操舵補助部を、更に備え、
前記移動体本体の前後方向の両側に前記保持部が少なくとも1つずつあり、
前記操舵補助部は、前記移動体本体の前側にある前記保持部に配置される、
移動体。
【請求項3】
移動体本体と、
底部を有する台車本体の下部に設けられた複数の車輪で移動可能な台車の下側に前記移動体本体の少なくとも一部が入り込んだ状態で、前記台車の少なくとも一部を持ち上げることによって前記台車を保持する保持部と、
前記移動体本体を移動させるための駆動部と、
前記駆動部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記台車の前記底部の短辺部分から前記底部の下側に前記移動体本体の少なくとも一部が入り込むように前記駆動部を制御し、
前記制御部は、前記保持部が前記台車を保持している状態で、前記駆動部を制御して前記移動体本体を移動させることによって、前記台車を搬送し、
前記制御部は、前記保持部が前記台車を保持している状態で、前記移動体本体が先頭になって前記台車をけん引する第1搬送形態で前記移動体本体を第1位置まで前進走行させるように前記駆動部を制御し、
前記制御部は、前記第1位置で、前記移動体本体を回転させることによって前記移動体本体が前記台車を後から押す第2搬送形態となるように前記駆動部を制御し、
前記制御部は、前記移動体本体を前記第2搬送形態で第2位置まで後進走行させるように前記駆動部を制御し、
前記制御部は、前記第2位置で前記保持部に前記台車を分離させた後、前記移動体本体を前進走行させるように前記駆動部を制御する、
移動体。
【請求項4】
前記台車が備える前記複数の車輪は、前記底部の長手方向の一端側に配置され、所定の方向に沿って回転可能な固定輪と、前記底部の長手方向の他端側に配置され、全周方向に回転可能な自由輪と、を含み、
前記制御部は、前記底部の前記長手方向の一端側の短辺部分から前記底部の下側に前記移動体本体の少なくとも一部が入り込むように前記駆動部を制御する、
請求項3に記載の移動体。
【請求項5】
前記複数の車輪が2つの前記固定輪を含み、
前記制御部は、前記2つの前記固定輪の間に前記移動体本体の少なくとも一部が入り込むように前記駆動部を制御する、
請求項1、2又は4に記載の移動体。
【請求項6】
前記保持部は、前記自由輪が移動面に接地し、かつ、前記固定輪が前記移動面から浮いた状態で前記台車を保持する、
請求項1、2、4又は5に記載の移動体。
【請求項7】
前記ピンチャック部が前記台車に設けられた前記ピンを保持しているか否かを検知する保持検知部を、更に備える、
請求項
1に記載の移動体。
【請求項8】
前記制御部は、前記ピンチャック部が前記ピンを保持している状態を前記保持検知部が検知すると、前記駆動部を制御して前記移動体本体を移動させることによって、前記台車を搬送する、
請求項7に記載の移動体。
【請求項9】
前記制御部は、前記保持部が前記台車を保持している状態で、前記移動体本体が先頭になって前記台車をけん引する搬送形態で前記移動体本体を前進走行させるように前記駆動部を制御する、
請求項1又は2に記載の移動体。
【請求項10】
移動体本体と、
底部を有する台車本体の下部に設けられた、前記底部の長手方向の一端側に配置され所定の方向に沿って回転可能な固定輪と、前記底部の長手方向の他端側に配置されて全周方向に回転可能な自由輪とを含む複数の車輪で移動可能な台車の下側に前記移動体本体の少なくとも一部が入り込んだ状態で、前記台車の少なくとも一部を持ち上げることによって前記台車を保持する保持部と、
前記移動体本体に設けられ、前記台車本体と当接することによって、前記台車の移動方向を前記移動体本体の移動方向に追従させる操舵補助部と、を備え、
前記移動体本体の前後方向の両側に前記保持部が少なくとも1つずつあり、
前記操舵補助部は、前記移動体本体の前側にある前記保持部に配置され、
前記保持部は、前記台車の前記自由輪が移動面に接地し、かつ、前記台車の前記固定輪が前記移動面から浮いた状態で前記台車を保持する、
移動体。
【請求項11】
移動体本体と、
底部を有する台車本体の下部に設けられた複数の車輪で移動可能な台車の下側に前記移動体本体の少なくとも一部が入り込んだ状態で、前記台車の少なくとも一部を持ち上げることによって前記台車を保持する保持部と、
前記移動体本体を移動させるための駆動部と、を備え、
前記保持部が、前記台車の長手方向における少なくとも一方の端部に設けられたピンを保持するピンチャック部を含み、
前記台車に前記ピンが存在するか否かを検知するピン検知部を、更に備える移動体を制御する移動体制御方法であって、
前記台車の前記底部の短辺部分から前記底部の下側に前記移動体本体の少なくとも一部が入り込むように前記駆動部を制御する第1ステップと、
前記保持部が前記台車を保持している状態で、前記駆動部を制御して前記移動体本体を走行させることによって、前記台車を搬送する第2ステップと、を含み、
前記台車が備える前記複数の車輪は、前記底部の前記長手方向の一端側に配置され、所定の方向に沿って回転可能な固定輪と、前記底部の前記長手方向の他端側に配置され、全周方向に回転可能な自由輪と、を含み、
前記第1ステップでは、前記底部の前記長手方向の一端側の短辺部分から前記底部の下側に前記移動体本体の少なくとも一部が入り込むように前記駆動部を制御し、
前記ピン検知部が前記ピンの非存在を検知すると、前記保持部が、前記自由輪及び前記固定輪が全て移動面から浮いた状態で前記台車を保持する保持ステップを更に含む、
移動体制御方法。
【請求項12】
移動体本体と、
底部を有する台車本体の下部に設けられた複数の車輪で移動可能な台車の下側に前記移動体本体の少なくとも一部が入り込んだ状態で、前記台車の少なくとも一部を持ち上げることによって前記台車を保持する保持部と、
前記移動体本体を移動させるための駆動部と、
前記台車本体と当接することによって、前記台車の移動方向を前記移動体本体の移動方向に追従させる操舵補助部と、を備え、
前記移動体本体の前後方向の両側に前記保持部が少なくとも1つずつあり、
前記操舵補助部は、前記移動体本体の前側にある前記保持部に配置される移動体を制御する移動体制御方法であって、
前記台車の前記底部の短辺部分から前記底部の下側に前記移動体本体の少なくとも一部が入り込むように前記駆動部を制御する第1ステップと、
前記保持部が前記台車を保持している状態で、前記駆動部を制御して前記移動体本体を走行させることによって、前記台車を搬送する第2ステップと、を含み、
前記台車が備える前記複数の車輪は、前記底部の長手方向の一端側に配置され、所定の方向に沿って回転可能な固定輪と、前記底部の長手方向の他端側に配置され、全周方向に回転可能な自由輪と、を含み、
前記第1ステップでは、前記底部の前記長手方向の一端側の短辺部分から前記底部の下側に前記移動体本体の少なくとも一部が入り込むように前記駆動部を制御する、
移動体制御方法。
【請求項13】
移動体本体と、
底部を有する台車本体の下部に設けられた複数の車輪で移動可能な台車の下側に前記移動体本体の少なくとも一部が入り込んだ状態で、前記台車の少なくとも一部を持ち上げることによって前記台車を保持する保持部と、
前記移動体本体を移動させるための駆動部と、を備える移動体を制御する移動体制御方法であって、
前記台車の前記底部の短辺部分から前記底部の下側に前記移動体本体の少なくとも一部が入り込むように前記駆動部を制御する第1ステップと、
前記保持部が前記台車を保持している状態で、前記駆動部を制御して前記移動体本体を走行させることによって、前記台車を搬送する第2ステップと、を含み、
前記第2ステップでは、
前記保持部が前記台車を保持している状態で、前記移動体本体が先頭になって前記台車をけん引する第1搬送形態で前記移動体本体を第1位置まで前進走行させるように前記駆動部を制御し、
前記第1位置で、前記移動体本体を回転させることによって前記移動体本体が前記台車を後から押す第2搬送形態となるように前記駆動部を制御し、
前記移動体本体を前記第2搬送形態で第2位置まで後進走行させるように前記駆動部を制御し、
前記第2位置で前記保持部に前記台車を分離させた後、前記移動体本体を前進走行させるように前記駆動部を制御する、
移動体制御方法。
【請求項14】
移動体本体が、所定の方向に沿ってそれぞれ回転可能な2つの固定輪と、全周方向に回転可能な自由輪とで移動可能な台車を第1保持状態と第2保持状態とのいずれかで保持する保持ステップと、
前記移動体本体が前記台車を保持した状態で前記台車を搬送する搬送ステップと、を含み、
前記第1保持状態は、前記自由輪が移動面に接地し、かつ、前記2つの固定輪が前記移動面から浮いた状態で前記台車を保持する状態であり、
前記第2保持状態は、前記2つの固定輪と前記自由輪とが全て前記移動面から浮いた状態で前記台車を保持する状態であり、
前記保持ステップでは、前記移動体本体が、前記2つの固定輪の間から前記台車の下側に入り込んだ場合に前記第1保持状態で前記台車を保持する、
移動体制御方法。
【請求項15】
前記移動体本体が前記台車を前記第1保持状態で保持している状態で、前記移動体本体に設けられた操舵補助部を前記台車と当接させることによって、前記台車の移動方向を前記移動体本体の移動方向に追従させる操舵補助ステップを更に含む、
請求項14に記載の移動体制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、移動体、及び移動体制御方法に関する。より詳細には、本開示は、台車を搬送するための移動体、及び移動体制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、かご台車のような台車を搬送する搬送装置を開示する。搬送装置は、台車の下方に潜り込み、昇降板を上昇させて台車の積載部の底面を持ち上げることによって、台車と結合される。無人搬送車は台車と結合された状態で走行することによって台車を搬送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の無人搬送車は、平面視が長方形状の積載板の長辺部分から台車の下方に潜り込んだ状態で、昇降板を上昇させて積載板の底面を持ち上げることによって台車と結合される。ここで、台車には、積載板の外周の3辺(長辺とその両側の2つの短辺)に沿って柵が設けられ、積載板を跳ね上げることによって短辺部分に沿って設けられた2つの柵を折りたたむことができる折りたたみ式の台車がある。このような折りたたみ式の台車を搬送装置が搬送する場合に、搬送装置が積載板の長辺部分から台車の下方に潜り込んだ状態で、昇降板を上昇させて積載板の底面を持ち上げると積載板が跳ね上がり、台車が折りたたみ可能な状態となる。そのため、台車の状態が不安定になり、無人搬送車が台車を搬送する搬送状態が不安定になる可能性があった。
【0005】
本開示の目的は、台車を安定な状態で搬送することができる移動体及び移動体制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様の移動体は、移動体本体と、保持部と、駆動部と、制御部と、を備える。前記保持部は、台車の下側に前記移動体本体の少なくとも一部が入り込んだ状態で、前記台車の少なくとも一部を持ち上げることによって前記台車を保持する。前記台車は、底部を有する台車本体の下部に設けられた複数の車輪で移動可能である。前記駆動部は、前記移動体本体を移動させる。前記制御部は前記駆動部を制御する。前記制御部は、前記台車の前記底部の短辺部分から前記底部の下側に前記移動体本体の少なくとも一部が入り込むように前記駆動部を制御する。前記制御部は、前記保持部が前記台車を保持している状態で、前記駆動部を制御して前記移動体本体を移動させることによって、前記台車を搬送する。前記台車が備える前記複数の車輪は、前記底部の長手方向の一端側に配置され、所定の方向に沿って回転可能な固定輪と、前記底部の長手方向の他端側に配置され、全周方向に回転可能な自由輪と、を含む。前記制御部は、前記底部の前記長手方向の一端側の短辺部分から前記底部の下側に前記移動体本体の少なくとも一部が入り込むように前記駆動部を制御する。前記保持部は、前記台車の前記長手方向における少なくとも一方の端部に設けられたピンを保持するピンチャック部を含む。前記移動体は、前記台車に前記ピンが存在するか否かを検知するピン検知部を、更に備える。前記ピン検知部が前記ピンの非存在を検知すると、前記保持部は、前記自由輪及び前記固定輪が全て移動面から浮いた状態で前記台車を保持する。
本開示の一態様の移動体は、移動体本体と、保持部と、駆動部と、制御部と、を備える。前記保持部は、台車の下側に前記移動体本体の少なくとも一部が入り込んだ状態で、前記台車の少なくとも一部を持ち上げることによって前記台車を保持する。前記台車は、底部を有する台車本体の下部に設けられた複数の車輪で移動可能である。前記駆動部は、前記移動体本体を移動させる。前記制御部は前記駆動部を制御する。前記制御部は、前記台車の前記底部の短辺部分から前記底部の下側に前記移動体本体の少なくとも一部が入り込むように前記駆動部を制御する。前記制御部は、前記保持部が前記台車を保持している状態で、前記駆動部を制御して前記移動体本体を移動させることによって、前記台車を搬送する。前記台車が備える前記複数の車輪は、前記底部の長手方向の一端側に配置され、所定の方向に沿って回転可能な固定輪と、前記底部の長手方向の他端側に配置され、全周方向に回転可能な自由輪と、を含む。前記制御部は、前記底部の前記長手方向の一端側の短辺部分から前記底部の下側に前記移動体本体の少なくとも一部が入り込むように前記駆動部を制御する。前記移動体は、前記移動体本体に設けられ、前記台車本体と当接することによって、前記台車の移動方向を前記移動体本体の移動方向に追従させる操舵補助部を、更に備える。前記移動体本体の前後方向の両側に前記保持部が少なくとも1つずつある。前記操舵補助部は、前記移動体本体の前側にある前記保持部に配置される。
本開示の一態様の移動体は、移動体本体と、保持部と、駆動部と、制御部と、を備える。前記保持部は、台車の下側に前記移動体本体の少なくとも一部が入り込んだ状態で、前記台車の少なくとも一部を持ち上げることによって前記台車を保持する。前記台車は、底部を有する台車本体の下部に設けられた複数の車輪で移動可能である。前記駆動部は、前記移動体本体を移動させる。前記制御部は前記駆動部を制御する。前記制御部は、前記台車の前記底部の短辺部分から前記底部の下側に前記移動体本体の少なくとも一部が入り込むように前記駆動部を制御する。前記制御部は、前記保持部が前記台車を保持している状態で、前記駆動部を制御して前記移動体本体を移動させることによって、前記台車を搬送する。前記制御部は、前記保持部が前記台車を保持している状態で、前記移動体本体が先頭になって前記台車をけん引する第1搬送形態で前記移動体本体を第1位置まで前進走行させるように前記駆動部を制御する。前記制御部は、前記第1位置で、前記移動体本体を回転させることによって前記移動体本体が前記台車を後から押す第2搬送形態となるように前記駆動部を制御する。前記制御部は、前記移動体本体を前記第2搬送形態で第2位置まで後進走行させるように前記駆動部を制御する。前記制御部は、前記第2位置で前記保持部に前記台車を分離させた後、前記移動体本体を前進走行させるように前記駆動部を制御する。
【0007】
本開示の一態様の移動体は、移動体本体と、保持部と、操舵補助部を、備える。前記保持部は、台車の下側に前記移動体本体の少なくとも一部が入り込んだ状態で、前記台車の少なくとも一部を持ち上げることによって前記台車を保持する。前記台車は、底部を有する台車本体の下部に設けられた複数の車輪で移動可能である。前記複数の車輪は、前記底部の長手方向の一端側に配置され所定の方向に沿って回転可能な固定輪と、前記底部の長手方向の他端側に配置されて全周方向に回転可能な自由輪とを含む。前記操舵補助部は、前記移動体本体に設けられ、前記台車本体と当接することによって、前記台車の移動方向を前記移動体本体の移動方向に追従させる。前記移動体本体の前後方向の両側に前記保持部が少なくとも1つずつある。前記操舵補助部は、前記移動体本体の前側にある前記保持部に配置される。前記保持部は、前記台車の前記自由輪が移動面に接地し、かつ、前記台車の前記固定輪が前記移動面から浮いた状態で前記台車を保持する。
【0008】
本開示の一態様の移動体制御方法は、移動体を制御する移動体制御方法である。前記移動体は、移動体本体と、保持部と、駆動部と、を備える。前記保持部は、台車の下側に前記移動体本体の少なくとも一部が入り込んだ状態で、前記台車の少なくとも一部を持ち上げることによって前記台車を保持する。前記台車は、底部を有する台車本体の下部に設けられた複数の車輪で移動可能である。前記駆動部は前記移動体本体を移動させる。前記保持部が、前記台車の長手方向における少なくとも一方の端部に設けられたピンを保持するピンチャック部を含む。前記移動体は、前記台車に前記ピンが存在するか否かを検知するピン検知部を更に備える。前記移動体制御方法は、第1ステップと、第2ステップとを含む。前記第1ステップでは、前記台車の前記底部の短辺部分から前記底部の下側に前記移動体本体の少なくとも一部が入り込むように前記駆動部を制御する。前記第2ステップでは、前記保持部が前記台車を保持している状態で、前記駆動部を制御して前記移動体本体を走行させることによって、前記台車を搬送する。前記台車が備える前記複数の車輪は、前記底部の前記長手方向の一端側に配置され、所定の方向に沿って回転可能な固定輪と、前記底部の前記長手方向の他端側に配置され、全周方向に回転可能な自由輪と、を含む。前記第1ステップでは、前記底部の前記長手方向の一端側の短辺部分から前記底部の下側に前記移動体本体の少なくとも一部が入り込むように前記駆動部を制御する。前記ピン検知部が前記ピンの非存在を検知すると、前記保持部が、前記自由輪及び前記固定輪が全て移動面から浮いた状態で前記台車を保持する保持ステップを更に含む。
本開示の一態様の移動体制御方法は、移動体を制御する移動体制御方法である。前記移動体は、移動体本体と、保持部と、駆動部と、操舵補助部と、を備える。前記保持部は、台車の下側に前記移動体本体の少なくとも一部が入り込んだ状態で、前記台車の少なくとも一部を持ち上げることによって前記台車を保持する。前記台車は、底部を有する台車本体の下部に設けられた複数の車輪で移動可能である。前記駆動部は前記移動体本体を移動させる。前記操舵補助部は、前記台車本体と当接することによって、前記台車の移動方向を前記移動体本体の移動方向に追従させる。前記移動体本体の前後方向の両側に前記保持部が少なくとも1つずつある。前記操舵補助部は、前記移動体本体の前側にある前記保持部に配置される。前記移動体制御方法は、第1ステップと、第2ステップとを含む。前記第1ステップでは、前記台車の前記底部の短辺部分から前記底部の下側に前記移動体本体の少なくとも一部が入り込むように前記駆動部を制御する。前記第2ステップでは、前記保持部が前記台車を保持している状態で、前記駆動部を制御して前記移動体本体を走行させることによって、前記台車を搬送する。前記台車が備える前記複数の車輪は、前記底部の長手方向の一端側に配置され、所定の方向に沿って回転可能な固定輪と、前記底部の長手方向の他端側に配置され、全周方向に回転可能な自由輪と、を含む。前記第1ステップでは、前記底部の前記長手方向の一端側の短辺部分から前記底部の下側に前記移動体本体の少なくとも一部が入り込むように前記駆動部を制御する。
本開示の一態様の移動体制御方法は、移動体を制御する移動体制御方法である。前記移動体は、移動体本体と、保持部と、駆動部と、を備える。前記保持部は、台車の下側に前記移動体本体の少なくとも一部が入り込んだ状態で、前記台車の少なくとも一部を持ち上げることによって前記台車を保持する。前記台車は、底部を有する台車本体の下部に設けられた複数の車輪で移動可能である。前記駆動部は前記移動体本体を移動させる。前記移動体制御方法は、第1ステップと、第2ステップとを含む。前記第1ステップでは、前記台車の前記底部の短辺部分から前記底部の下側に前記移動体本体の少なくとも一部が入り込むように前記駆動部を制御する。前記第2ステップでは、前記保持部が前記台車を保持している状態で、前記駆動部を制御して前記移動体本体を走行させることによって、前記台車を搬送する。前記第2ステップでは、前記保持部が前記台車を保持している状態で、前記移動体本体が先頭になって前記台車をけん引する第1搬送形態で前記移動体本体を第1位置まで前進走行させるように前記駆動部を制御する。前記第1位置で、前記移動体本体を回転させることによって前記移動体本体が前記台車を後から押す第2搬送形態となるように前記駆動部を制御する。前記移動体本体を前記第2搬送形態で第2位置まで後進走行させるように前記駆動部を制御する。前記第2位置で前記保持部に前記台車を分離させた後、前記移動体本体を前進走行させるように前記駆動部を制御する。
【0009】
本開示の一態様の移動体制御方法は、保持ステップと、搬送ステップと、を含む。前記保持ステップでは、移動体本体が台車を第1保持状態と第2保持状態とのいずれかで保持する。前記台車は、所定の方向に沿ってそれぞれ回転可能な2つの固定輪と、全周方向に回転可能な自由輪とで移動可能である。前記搬送ステップでは、前記移動体本体が前記台車を保持した状態で前記台車を搬送する。前記第1保持状態は、前記自由輪が移動面に接地し、かつ、前記2つの固定輪が前記移動面から浮いた状態で前記台車を保持する状態である。前記第2保持状態は、前記2つの固定輪と前記自由輪とが全て前記移動面から浮いた状態で前記台車を保持する状態である。前記保持ステップでは、前記移動体本体が、前記2つの固定輪の間から前記台車の下側に入り込んだ場合に前記第1保持状態で前記台車を保持する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、台車を安定な状態で搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係る移動体が台車の下側に入り込む前の状態を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、同上の移動体が台車の下側に入り込む前の状態を示す平面図である。
【
図3】
図3は、同上の移動体の外観を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、同上の移動体が台車を保持している状態の斜視図である。
【
図5】
図5は、同上の移動体が台車を保持している状態の平面図である。
【
図6】
図6は、同上の移動体を備える移動体制御システムのブロック図である。
【
図7】
図7は、同上の移動体が搬送する台車の斜視図である。
【
図8】
図8は、同上の移動体が備えるピンチャック部の概略的な平面図である。
【
図9】
図9は、同上の移動体が備えるピンチャック部の概略的な斜視図である。
【
図10】
図10は、同上の移動体による台車の保持動作を説明するフローチャートである。
【
図11】
図11は、同上の移動体が台車を保持している状態の側面図である。
【
図12】
図12は、同上の移動体による台車の搬送動作を説明する動作説明図である。
【
図13】
図13は、同上の移動体による台車の搬送動作を説明する動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態)
(1)概要
本実施形態に係る移動体1(
図1~
図5参照)は、移動面の上を車輪で移動可能な台車300(
図1、
図2、
図4及び
図5参照)を搬送するための移動体である。以下の実施形態において説明する各図は、模式的な図であり、各図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。また、以下の説明では、
図1などにおいて「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」の矢印で示す通りに各方向を規定する。これらの方向は、移動体1が台車300をけん引して前進する状態での方向を規定したものであり、移動体1の使用方向を限定する趣旨ではない。また、図面中の各方向を示す矢印は説明のために表記しているに過ぎず、実体を伴わない。
【0013】
移動体1は、1つ以上の車輪(駆動輪)41(
図1及び
図5参照)で移動面G1の上を移動する装置である。本実施形態では、移動体1は、台車300の搬送用の装置である。移動体1は、例えば物流センター(配送センターを含む)、工場、オフィス、店舗、学校、及び病院等の施設に導入される。移動面G1は、その上を移動体1及び台車300が移動する面であり、移動体1及び台車300が施設内を移動する場合は施設の床面等が移動面G1となり、移動体1及び台車300が屋外を移動する場合は地面等が移動面G1となる。以下では、物流センターに移動体1を導入する場合について説明する。
【0014】
移動体1は、
図1~
図5に示すように、移動面G1の上を移動可能な移動体本体2を備えている。移動体本体2は、車輪41を有しており、車輪41により移動面G1上を移動する。本実施形態では、移動体本体2は、自律移動可能である。
【0015】
本実施形態の移動体1は、
図1及び
図2に示すような台車300を搬送するために用いられる。台車300は、例えば、荷物を載せて運ぶために用いられるかご台車である。
図1、
図4及び
図7に示す台車300は、折りたたみ可能な台車であり、下部に車輪330が設けられた台車本体310を備えている。
【0016】
台車本体310は、第1フレーム311、第2フレーム312、底部320、棚板325、固定柵341~343、及び可動柵351~352等を備える。
【0017】
第1フレーム311は、長辺部材313と、長辺部材313の長手方向の一端部(
図1の前端部)から長辺部材313に対して垂直な方向(
図1の左方向)に突出する短辺部材314とで、平面視の形状がL型に形成されている。長辺部材313及び短辺部材314はそれぞれ鋼材からなり、長辺部材313は短辺部材314に比べて長さが長い。第1フレーム311の短辺部材314の下部には、短辺部材314の両端部(左右方向の両端部)に2個の車輪330が設けられている。ここで、短辺部材314に設けられた2個の車輪330は、所定の方向に沿ってそれぞれ回転可能な固定輪331である。本実施形態では2個の固定輪331は、長辺部材313の長手方向と平行な方向(
図1及び
図2の前後方向)に沿って回転可能なように設けられている。また、第1フレーム311の短辺部材314には、短辺部材314の長手方向の中間部から下向きに突出する円柱状のピン360が設けられている。なお、ピン360が台車300と一体に設けられていることは必須ではなく、後付けでもよい。
【0018】
第2フレーム312は、長辺部材313の長手方向の他端部(
図1の後端部)に、ヒンジを介して回転可能に取り付けられている。ここで、第2フレーム312は、長辺部材313の長手方向の他端部から長辺部材313に対して垂直な方向(
図1の左方向)に突出する第1位置(
図1参照)と、長辺部材313に沿うように長辺部材313と並べて配置される第2位置(
図7参照)との間で回転可能に設けられている。第2フレーム312の下部には、第2フレーム312の長手方向の両端部に、2つの車輪330が設けられている。ここで、第2フレーム312に設けられた2個の車輪330は、移動面G1における全周方向に回転可能な自由輪332である。また、第2フレーム312には、第2フレーム312の長手方向の中間部から下向きに突出する円柱状のピン361が設けられている。なお、ピン361が台車300と一体に設けられていることは必須ではなく、後付けでもよい。また、台車300において固定輪331が設けられた側の短辺部分のみにピン360が設けられていてもよく、車輪330の間隔及びピン361の有無から、固定輪331が設けられている側の短辺部分を検出できる。
【0019】
第1フレーム311の長辺部材313には、物品を載せるための長方形状の板材からなる底部320が、ヒンジを介して回転可能な状態で取り付けられている。底部320は、移動面G1に対してほぼ平行な展開位置と、移動面G1に対してほぼ垂直となる収納位置との間で回転可能に設けられている。
【0020】
また、第1フレーム311の長辺部材313及び短辺部材314、並びに、第2フレーム312には、それぞれ、上方へ突出する固定柵341,342,343が設けられている。ここで、短辺部材314に設けられた固定柵342には、短辺部材314の先端側(長辺部材313から遠い方の端部であって、
図1の左側の端部)に位置する部位に設けられたヒンジを介して、固定柵342に対して回転可能な可動柵351が取り付けられている。また、第2フレーム312に設けられた固定柵343にも、第2フレーム312の先端側(第1フレーム311に連結された側と反対側の端部であって、
図1の左側の端部)に位置する部位に設けられたヒンジを介して、固定柵343に対して回転可能な可動柵352が取り付けられている。
【0021】
上述のように、台車300が備える複数の車輪330は、底部320の長手方向の一端側に配置され、所定の方向に沿って回転可能な固定輪331と、底部320の長手方向の他端側に配置され、移動面G1における全周方向に回転可能な自由輪332と、を含む。なお、本実施形態では固定輪331及び自由輪332の数が2つずつであるが、固定輪331及び自由輪332の数は適宜変更が可能である。
【0022】
図1、
図4及び
図7に示す台車300は折りたたみ可能な台車であり、
図1及び
図4は台車300を物品の運搬に使用するときの運搬状態、
図7は折りたたまれた収納状態を示している。台車300を物品の運搬に使用する場合、
図7の収納状態から、第2フレーム312を矢印DR1の方向に回転させて、第1フレーム311の長辺部材313と直交する位置に第2フレーム312を移動させる。第2フレーム312が長辺部材313と直交する位置まで移動すると、例えば、第2フレーム312及び長辺部材313の一方に設けられた突起が、第2フレーム312及び長辺部材313の他方に設けられた凹部に嵌まることで、第2フレーム312が長辺部材313と直交する位置で保持される。
【0023】
その後、可動柵351及び352を外向きに開き、底部320を矢印DR3の方向に倒して、底部320を移動面G1に対してほぼ平行となる位置に移動させると、底部320の裏面に設けられたロックレバーが、台車本体310に設けられたフックに引っ掛かり、底部320がその位置で保持される。運搬状態では、底部320の上方の空間は3方向が固定柵341~343で囲まれ、一面が開口した状態となる。また、運搬状態の台車300には、固定柵341~343の上下方向における中間部に、棚板325(
図1及び
図2参照)を取り付けることができる。底部320及び棚板325に物品を載せた後、可動柵351,352を内向きに回転させて開口面を閉じた状態で、ロープ等の結束部材を固定柵341~343及び可動柵351,352の周りに巻いて、可動柵351,352が開かないように固定した後、台車300は移動体1又は人力によって移動させられる。
【0024】
なお、台車300を収納状態に折りたたむ場合は、可動柵351,352をそれぞれ外向きに開き、棚板325を外した状態で、底部320に設けられたロックレバーによるロック状態を解除して、底部320を矢印DR4の方向に跳ね上げる。そして、可動柵351,352を内向きに回転させて畳んだ後、第2フレーム312のロックレバーによるロック状態を解除して、第2フレーム312を矢印DR2の方向に回転させ、台車300を平面視の形状がL型となるように折りたたむ。このように収納状態に折りたたまれた台車300を並べて配置することで、複数の台車300をコンパクトに収納することが可能になる。
【0025】
本実施形態の移動体1は、運搬状態にある台車300(
図1及び
図2参照)の底部320の下側に入り込み、底部320を上側に持ち上げることによって台車300を保持して移動する。ここで、折りたたみ式の台車300の底部320は、台車本体に底部が固定された台車に比べて、底部の強度が低くなる。そのため、台車300に重量物が積載された状態で、移動体1が底部320の長辺部分322から底部320の下側に潜り込んで底部320を持ち上げると、底部320が撓んで底部320の長手方向の両側が下がり、固定輪331が移動面G1に接地する可能性がある。固定輪331が移動面G1に接地した状態で移動体1が走行すると、固定輪331は一方向に沿った方向にしか回転できないので、固定輪331が抵抗となって台車300がスムーズに移動できなくなり、台車300の搬送状態が不安定になる可能性がある。
【0026】
本実施形態の移動体1は台車300を安定な状態で搬送することを目的としており、移動体1は、移動体本体2と、保持部3と、駆動部22と、制御部12と、を備えている。
【0027】
移動体本体2は移動面G1の上を移動可能である。
【0028】
保持部3は、台車300の下側に移動体本体2の少なくとも一部が入り込んだ状態で台車300の少なくとも一部を持ち上げることによって台車300を保持する。台車300は、台車本体310の下部に設けられた車輪330で移動可能である。台車本体310は、底部320を有している。本実施形態では、底部320の平面視の形状が長方形状である。
【0029】
駆動部22は、移動体本体2を移動させる。
【0030】
制御部12は、駆動部22を制御する。制御部12は、台車300の底部320の短辺部分321から底部320の下側に移動体本体2の少なくとも一部が入り込むように駆動部22を制御する。制御部12は、保持部3が台車300を保持している状態で、駆動部22を制御して移動体本体2を移動させることによって、台車300を搬送する。
【0031】
ここで、保持部3は、台車300の下側に潜り込み、台車300の少なくとも一部を持ち上げることによって、台車300を保持する。なお、保持部3による保持は、例えば、引っ掛け又は嵌合等によって、台車300の少なくとも一部を保持することを含み得る。
【0032】
本実施形態の移動体1では、台車300の底部320の短辺部分321から底部320の下側に移動体本体2の少なくとも一部が入り込むように駆動部22を制御し、底部320の下側に移動体本体2の少なくとも一部が入り込んだ状態で保持部3が移動体本体2を保持する。移動体本体2が底部320の長辺部分322から底部320の下側に入り込んだ状態で保持部3が底部320を持ち上げた場合、底部320が撓むことによって、底部320の長辺部分322の両側が下側に下がり、台車300の車輪330が接地する可能性がある。それに対して、本実施形態の移動体1は、移動体本体2が底部320の短辺部分321から底部320の下側に入り込んだ状態で保持部3が台車300の少なくとも一部を持ち上げることによって保持するので、短辺部分321の両側の撓みを小さくでき、車輪330が接地する可能性を低減できる。また、保持部3が台車300を持ち上げる場合に、第1フレーム311の短辺部材314を持ち上げることができるので、底部320が跳ね上げ式の場合でも、底部320のロック状態が外れにくくなり、台車300の搬送状態が不安定になる可能性を低減できる。よって、移動体1が台車300を搬送する際に、車輪330が移動面G1に当たって抵抗となる可能性を低減でき、台車300を安定な状態で搬送することができる。
【0033】
なお、保持部3が台車300を保持した状態で移動体1が台車300を搬送する場合、移動体1が先頭になって台車300をけん引する走行形態と、台車300を先頭にして移動体1が台車300を押していく走行形態とがある。一般的に、台車300を後側から押す走行形態に比べて、台車300をけん引する走行形態の方が、走行状態が安定するので、移動体1は通常は台車300をけん引して移動する。
【0034】
(2)詳細
以下、本実施形態に係る移動体1、及び、移動体1を備える移動体制御システム100の構成について、
図1~
図17を用いて詳細に説明する。
【0035】
(2.1)移動体
移動体1は、
図1~
図6に示すように、移動体本体2と、保持部3と、駆動部22と、制御部12を含む処理部10と、を備えている。また、移動体1は、状態検知部21と、昇降機構23と、開閉機構24と、保持検知部25と、通信部26と、記憶部27と、を更に備えている。保持部3、処理部10、状態検知部21、駆動部22、昇降機構23、開閉機構24、保持検知部25、通信部26、及び、記憶部27は、いずれも移動体本体2に搭載されている。
【0036】
移動体1は、例えば、施設の床面等からなる平坦な移動面G1を自律走行する。ここでは一例として、移動体1は、蓄電池を備え、蓄電池に蓄積された電気エネルギを用いて動作することとする。移動体1は、保持部3が台車300を保持している状態で移動面G1上を走行することによって、施設内のある場所に置かれている台車300を、施設内の別の場所に搬送することが可能である。
【0037】
移動体本体2は、左右方向よりも前後方向に長く、かつ左右方向及び前後方向よりも上下方向の寸法が小さい直方体状である。詳しくは後述するが、本実施形態では、移動体本体2の少なくとも一部が台車300の下方に潜り込み、保持部3が台車300の少なくとも一部を持ち上げ、少なくとも固定輪331を移動面G1から浮かせた状態で、台車300が移動体本体2に積載される。以下では、2つの自由輪332が移動面G1に接地し、かつ、2つの固定輪331が移動面G1から浮いた状態で台車300を保持する状態を第1保持状態ともいう。
【0038】
移動体本体2には、複数の昇降板31,32、ピンチャック部33、及び、一対の操舵補助部37等が設けられている。本実施形態では、移動体本体2は金属製である。ただし、移動体本体2は、金属製に限らず、例えば、樹脂製であってもよい。
【0039】
移動体本体2は、複数(ここでは、2つ)の車輪41と、複数(ここでは、2つ)の補助輪42(
図5参照)と、により移動面G1上に支持される。
【0040】
複数の車輪41は、移動体本体2の長手方向(前後方向)の中央部において、移動体本体2の幅方向(左右方向)に間隔を空けて配置されている。複数の車輪41の各々は、駆動部22からの駆動力を受けて個別に回転可能である。
【0041】
複数の補助輪42は、移動体本体2の幅方向(左右方向)の中央部において、移動体本体2の長手方向(前後方向)に間隔を空けて配置されている。複数の補助輪42の各々は、駆動部22からの駆動力を受けずに個別に回転可能である。
【0042】
本実施形態では、複数の車輪41の全てが、駆動部22によって駆動される駆動輪である。そして、これら複数の車輪41が駆動部22によって個別に駆動されることにより、移動体本体2は全方向に移動可能となる。つまり、複数の車輪41が互いに異なる角速度で回転することで、左右方向のいずれかに旋回することができ、互いに同じ角速度で回転することで、直線的に走行(前進走行又は後進走行)することができる。したがって、移動体本体2は、前進、後進、左右方向への旋回(信地旋回及び超信地旋回を含む)を行うことができる。また、移動体本体2は、曲線の軌道(つまり、カーブ)を描くように移動することも可能である。
【0043】
本実施形態では、台車300を保持する保持部3が、台車300を持ち上げることで台車300を保持する複数の昇降板31,32と、台車300のピン360又は361を保持することで台車300を保持するピンチャック部33と、を含んでいる。つまり、保持部3は、台車300の長手方向における少なくとも一方の端部に設けられたピン360又は361を保持するピンチャック部33を含んでいる。
【0044】
複数の昇降板31,32の各々は、移動体本体2の上面の少なくとも一部を覆うように、移動体本体2の上方に配置されている。前側の2つの昇降板31は、移動体本体2の上面において前側部分の左右の角部付近をそれぞれ覆うように設けられている。後側の2つの昇降板32は、移動体本体2の上面において後側部分の左右の角部付近をそれぞれ覆うように設けられている。各昇降板31,32は、各昇降板31,32を昇降させる昇降機構23(
図6参照)を処理部10が動作させることにより、移動体本体2に対して昇降可能である。
【0045】
図11及び
図14Eは、4つの車輪330のうちの2つが固定輪331で、ピン360,361が設けられた台車300を移動体1が搬送する状態を示している。この場合、移動体1は、前側の2つの昇降板31で台車300の前側部分を持ち上げることによって、2つの固定輪331を移動面G1から浮かせ、かつ、ピンチャック部33でピン360を保持することによって、台車300を保持する。この場合、前側の2つの昇降板31の上面が台車300を積載する積載面となる。
【0046】
また、
図16Eは、4つの車輪330のうちの2つが固定輪331で、ピン360,361が設けられていない台車300Aを移動体1が搬送する状態を示している。移動体1は、前側及び後側の昇降板31,32で台車300Aを持ち上げ、4つの車輪330の全てを移動面G1から浮かせた状態で台車300Aを保持する。この場合、前側及び後側の昇降板31,32の上面が台車300Aを積載する積載面となる。以下では、2つの固定輪331と2つの自由輪332とが全て移動面G1から浮いた状態で台車300を移動体本体2が保持する状態を第2保持状態とも言う。
【0047】
なお、積載面となる昇降板31,32の上面は、例えば、滑り止め加工が施されることによって、移動体本体2の上面に比べて大きな摩擦係数を有することが好ましい。これにより、各昇降板31,32に積載された物体(台車300又は300A)が各昇降板31,32に対して滑りにくくなる。
【0048】
また、移動体本体2の上面には、前側の2つの昇降板31の両側にそれぞれ操舵補助部37が1つずつ配置されている。一対の操舵補助部37は、それぞれ金属製の板材からなる。各操舵補助部37の長手方向の一端部(
図1の前端部)は移動体本体2の上面に起伏可能な状態で取り付けられ、各操舵補助部37の長手方向の他端部(
図1の後端部)は後方に向かって突出している。一対の操舵補助部37は、一対の昇降板31の左右両側に一つずつ設けられている。各操舵補助部37は、隣接する昇降板31が下降している状態では、隣接する昇降板31によって下側に押さえられている。各操舵補助部37は、隣接する昇降板31が上昇すると、隣接する昇降板31による押さえがなくなり、各操舵補助部37の長手方向の他端部が上側に持ち上がる。ここで、昇降板31が上昇している状態では、各操舵補助部37の長手方向の他端部は、昇降板31よりも上側に突出しているので、各操舵補助部37の長手方向の他端部は、昇降板31に載せられた台車300の台車本体310と当接可能になっている。本実施形態では、移動体本体2の前後方向の両側に保持部3(昇降板31,32)が少なくとも1つずつ設けられており、操舵補助部37は、移動体本体2の前側にある保持部3(昇降板31)に配置されている。したがって、移動体1が台車300の固定輪331を浮かせた状態で台車300を保持して後進する場合に、操舵補助部37が台車本体310と当接することで、台車300の移動方向を移動体1の移動方向に追従させることができる。
【0049】
移動体1が台車300を保持している状態で旋回しようとすると、移動体本体2の旋回動作に応じて一対の操舵補助部37のいずれかで台車本体310が押されるから、操舵補助部37で台車本体310の向きを変えることができる。例えば、
図5は移動体1が台車300の前側を持ち上げた状態で搬送する状態を示した平面図であり、この搬送状態では台車300の自由輪332は移動面G1に接地している。この搬送状態で移動体1が前進走行しながら左側に曲がろうとした場合、左側の操舵補助部37が台車本体310の左側の部位を押すことで、台車300の移動方向を移動体1に追従させることができる。また、
図5の搬送状態で移動体1が後進走行しながら左側に曲がろうとした場合、右側の操舵補助部37が台車本体310の右側の部位を押すことで、台車300の移動方向を移動体1に追従させることができる。このように、移動体1は、台車本体310と当接することによって、台車300の移動方向を移動体本体2の移動方向に追従させる操舵補助部37を備えている。台車300を保持している移動体1が曲がろうとする場合に、操舵補助部37が台車本体310を押すことによって、台車300の移動方向を移動体1の移動方向に追従させることができる。
【0050】
ピンチャック部33は、
図3、
図8、及び
図9に示すように、移動体本体2の上面に取り付けられた保持板34と、2つのレバー36,36と、を含む。保持板34は、移動体本体2の上面において、2つの昇降板31の中間に配置されている。保持板34の後辺の左右方向における中間部にはU型の保持溝35が設けられている。保持溝35の開口部には、左右方向の両側部に扇形のレバー36,36が回転可能に取り付けられてる。
【0051】
保持板34は、前側の昇降板31と同様に、昇降機構23により昇降可能に設けられている。すなわち、保持板34は独立の駆動構造は持たず昇降板31に付属しており、昇降板31と共に昇降する。昇降機構23が昇降板31を上昇させると、昇降板31の上昇に伴って保持板34も上昇する。保持板34が下限位置に位置している状態では、台車300のピン360,361の下端よりも保持板34が下方に位置している。保持板34が昇降機構23によって上昇すると、保持板34が台車300のピン360,361の下端よりも上側に位置し、ピンチャック部33によるピン360,361の保持が可能になる。保持板34が上昇している状態で、保持板34の後側からピン360が保持溝35に挿入されると、ピン360に押されてレバー36,36が、保持溝35の開口を開く開方向(矢印DR5の方向)に回転する。そして、保持溝35の最奥部にピン360が挿入されると、レバー36,36が、保持溝35の開口を閉じる閉方向(矢印DR5の方向と反対向き)に回転し、保持板34とレバー36,36とで囲まれた状態でピン360がピンチャック部33に保持される。
【0052】
ここで、各レバー36は、各レバー36を回転させる開閉機構24を処理部10が動作させることにより、開方向又は閉方向に移動可能である。
【0053】
保持検知部25は、保持溝35の最奥部である保持位置に、ピン360又はピン361が存在するか否かを検知することによって、ピン360又はピン361を保持しているか否かを検知する。つまり、保持検知部25は、ピンチャック部33が台車300に設けられたピン360又はピン361を保持しているか否かを検知する。保持検知部25は、レーザ光又は超音波を用いて、保持位置に、ピン360又はピン361が存在するか否かを検知する物体検知センサからなる。保持検知部25は、検知結果を処理部10に出力する。
【0054】
2つの固定輪331及びピン360,361を備える台車300を移動体1が保持する場合は、昇降板31で台車300の前側部分を持ち上げ、ピンチャック部33でピン360又は361を保持することによって、台車300が移動体1に保持される。台車300の保持を解除する場合、移動体1が台車300を保持している状態で、各昇降板31を下降させることによって、移動体1による台車300の保持が解除される。
【0055】
また、ピン360,361が設けられていない台車300Aを移動体1が保持する場合は、昇降板31,32で台車300を持ち上げ、4つの車輪330を全て浮かせることによって、台車300Aが移動体1に保持される。台車300Aの保持を解除する場合、移動体1が台車300Aを保持している状態で、各昇降板31,32を下降させることによって、移動体1による台車300Aの保持が解除される。
【0056】
状態検知部21は、移動体本体2の周辺状況、移動体本体2が存在する位置、及び、移動体本体2の挙動等を検知する。本開示でいう「周辺状況」には、移動体本体2の周辺に存在する台車300の状況を含み得る。台車300の状況は、台車300の存否に関する情報を含み、台車300の存在を検知した場合は、台車300が備える複数の車輪330の間隔の情報、ピン360、361の有無に関する情報を含み得る。すなわち、状態検知部21は、台車300にピン360,361が存在するか否かを検知するピン検知部の機能を有している。本開示でいう「挙動」は、動作及び様子等を意味する。つまり、移動体本体2の挙動は、移動体本体2が移動中であるか停止中であるかを表す移動体本体2の動作状態、移動体本体2の速度(及び速度変化)、移動体本体2に作用する加速度、及び移動体本体2の姿勢等を含む。
【0057】
具体的には、状態検知部21は、例えば、LiDAR(Light Detection and Ranging)、又はレーダ(RADAR:Radio Detection and Ranging)等のセンサ21A,21B(
図5参照)を含む。センサ21A,21Bは、移動体本体2の長手方向の両側(つまり前側及び後側)にそれぞれ設けられており、移動体本体2の前方及び後方の検知領域A1,A2において周辺状況をそれぞれ検知する。なお、LiDARは、光(レーザ光)を用いて、移動体本体2の周辺に存在する物体での反射光に基づいて物体までの距離及び物体の方向を測定するセンサである。レーダは、マイクロ波等の電磁波(電波)を用いて、移動体本体2の周辺に存在する物体での反射波に基づいて物体までの距離及び物体の方向を測定するセンサである。すなわち、センサ21A,21Bの検知結果(状態検知部21の出力)は、移動体1(移動体本体2)と物体との間の距離に関連する情報、及び、物体が存在する方向に関連する情報を少なくとも含んでいる。また、状態検知部21は、例えば、速度センサ、加速度センサ、ジャイロセンサ等のセンサを含み、これらのセンサにて移動体本体2の挙動を検知する。また、状態検知部21は、センサ21A,21Bを用いて検知された周辺の物体までの距離に関連する情報、物体の方向に関連する情報、及び、予め取得している施設内の電子地図情報等を用いて、移動体本体2が存在する位置に関連する情報を求めている。
【0058】
駆動部22は、駆動輪である2つの車輪41に対して、直接的又は間接的に駆動力を与える。駆動部22は、移動体本体2に内蔵されている。駆動部22は、例えば、電動機(モータ)を含み、ギアボックス及びベルト等を介して、電動機で発生する駆動力を間接的に各車輪41に与える。また、駆動部22は、インホイールモータのように、各車輪41に対して直接的に駆動力を与える構成であってもよい。駆動部22は、処理部10から入力される制御信号に基づいて、複数の車輪41の各々を制御信号に応じた回転方向及び回転速度で駆動する。
【0059】
昇降機構23は、処理部10からの制御指令を受けて、前側の2つの昇降板31と、後側の2つの昇降板32とを個別に昇降させる機構である。昇降機構23は、各昇降板31,32を移動体本体2に対して相対的に上下方向に移動させることにより、各昇降板31,32の上面(積載面)を上昇又は下降させる。昇降機構23は、各昇降板31,32の可動域の下限位置と上限位置との間で、各昇降板31,32をそれぞれ移動させる。
【0060】
ピン360,361が設けられた台車300を移動体1が保持する場合、移動体本体2が底部320の短辺部分321から底部320の下側に潜り込んだ状態で、昇降機構23が、前側の昇降板31を上昇させることで、台車300の前側部分を持ち上げる。これにより、固定輪331が浮いた状態で移動体1は台車300を保持することができる。また、ピン360,361が無い台車300Aを移動体1が保持する場合、移動体本体2が底部320の短辺部分321から底部320の下側に潜り込んだ状態で、昇降機構23が、昇降板31,32を全て上昇させることで、台車300Aの全体を持ち上げる。これにより、4つの車輪330が全て浮いた状態で移動体1は台車300Aを保持することができる。
【0061】
開閉機構24は、例えば電動機(モータ)等のアクチュエータを有し、処理部10からの制御指令を受けて、レバー36,36を開方向又は閉方向に回転させる。なお、レバー36,36を閉方向に押すスプリングを設け、レバー36,36を開方向に押す力が開閉機構24によって加えられない場合は、スプリングの力でレバー36,36を閉方向に移動させるようにしてもよい。
【0062】
処理部10は、取得部11と、制御部12と、を有している。取得部11及び制御部12は、処理部10の一機能として実現される。
【0063】
処理部10は、1以上のプロセッサ及びメモリを有するコンピュータシステムを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムを、コンピュータシステムのプロセッサが実行することにより、処理部10の機能が実現される。プログラムは、メモリに記録されていてもよいし、インターネット等の電気通信回線を通して提供されてもよく、メモリカード等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0064】
取得部11は、取得処理を実行する。取得処理は、移動体1における状態検知部21の検知結果、及び、保持検知部25の検知結果を取得する処理である。状態検知部21の検知結果は、既に述べたように、移動体1の周囲に存在する物体までの距離の情報、及び物体の方向の情報を含んでいる。取得部11は、状態検知部21及び保持検知部25から検知結果を随時取得する。
【0065】
制御部12は、取得部11が取得した情報、上位システム200から通信部26が受信した制御指令等に基づいて、例えば駆動部22、昇降機構23、及び開閉機構24等の動作を制御することによって移動体本体2の動作を制御する。
【0066】
制御部12は、台車300の搬送指示を上位システム200から通信部26を介して受信すると、搬送対象の台車300が存在する位置に移動体本体2を移動させる。そして、制御部12は、状態検知部21の検知結果に基づいて、台車300が備える車輪330の間隔を求め、車輪330の間隔から台車300の底部320の短辺部分321を特定する。また、ピン検知部としての状態検知部21は、台車300にピン360又は361が設けられているか否かを検知する。
【0067】
状態検知部21がピン360,361の存在を検知した場合、制御部12は、台車300の底部320の短辺部分321から底部320の下側に移動体本体2のほぼ全体が入り込み、台車300のピン360がピンチャック部33の保持溝35内に挿入される位置まで移動体本体2を移動させるように駆動部22を制御する。制御部12は、開閉機構24を制御してピンチャック部33にピン360を保持させるとともに、前側の昇降板31を上昇させて台車300の前側を持ち上げることで、固定輪331が移動面G1から浮いた状態で台車300を移動体1に保持させる。つまり、保持部3は、自由輪332が移動面G1に接地し、固定輪331が移動面G1から浮いた状態で台車300を保持する。さらに言えば、保持部3は、少なくとも1つの自由輪332が移動面G1に接地し、複数(例えば2つ)の固定輪331の全てが移動面G1から浮いた状態で台車300を保持する。そして、制御部12は、保持部3が台車300を保持している状態で、駆動部22を制御して移動体本体2を移動させることによって台車300を移動させるのである。
【0068】
状態検知部21がピン360,361の非存在を検知した場合、制御部12は、台車300の底部320の短辺部分321から底部320の下側に移動体本体2のほぼ全体が入り込む位置に移動体本体2を移動させるように駆動部22を制御する。そして、制御部12は、昇降板31,32をそれぞれ上昇させて台車300Aの全体を持ち上げることで、複数の固定輪331及び複数の自由輪332が移動面G1から浮いた状態で台車300を移動体1に保持させる。つまり、ピン検知部(状態検知部21)がピン360,361の非存在を検知すると、保持部3は、自由輪332及び固定輪331が全て移動面G1から浮いた状態で台車300Aを保持するのである。
【0069】
通信部26は、直接的、又はネットワーク若しくは中継器等を介して間接的に、上位システム200と通信する。通信部26と上位システム200との間の通信方式としては、無線通信又は有線通信の適宜の通信方式が採用される。本実施形態では一例として、通信部26は、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)又は免許を必要としない小電力無線(特定小電力無線)等の規格に準拠した、電波を通信媒体として用いる無線通信を採用する。
【0070】
記憶部27には、例えば、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read-Only Memory)などの書き換え可能な不揮発性メモリを含む。記憶部27は、移動体1が移動する施設内の電子地図の情報、台車300,300Aが備える車輪330の間隔の情報、等が予め記憶されている。
【0071】
また、移動体1は、上記以外の構成、例えば、蓄電池の充電回路等を適宜備えている。
【0072】
(2.2)移動体制御システム
移動体制御システム100は、少なくとも1台の移動体1と、上位システム200と、を備えている。上位システム200は、移動体1を制御するシステムである。
【0073】
上位システム200と移動体1とは、互いに通信可能に構成されている。本開示において「通信可能」とは、有線通信又は無線通信の適宜の通信方式により、直接的、又はネットワーク若しくは中継器等を介して間接的に、情報を授受できることを意味する。すなわち、上位システム200と移動体1とは、互いに情報を授受することができる。本実施形態では、上位システム200と移動体1とは、互いに双方向に通信可能であって、上位システム200から移動体1への情報の送信、及び、移動体1から上位システム200への情報の送信の両方が可能である。
【0074】
上位システム200は、少なくとも1台(本実施形態では複数台)の移動体1を遠隔で制御する。具体的には、上位システム200は、移動体1と通信することによって、移動体1を制御する。つまり、上位システム200は、例えば、ユーザによって入力された搬送指令を移動体1に送信することで、移動体1を制御する。上位システム200は、例えば、搬送指令及び電子地図等のデータを移動体1に送信する。
【0075】
本実施形態では、上位システム200は、例えばサーバであって、1以上のプロセッサ及びメモリを有するコンピュータシステムを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムを、コンピュータシステムのプロセッサが実行することにより、上位システム200の機能が実現される。プログラムは、メモリに記録されていてもよいし、インターネット等の電気通信回線を通して提供されてもよく、メモリカード等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0076】
上位システム200は、移動体1の状態検知部21の検知結果等から、少なくとも移動体1の現在位置を推定し、搬送対象の台車300までの移動体1の移動経路を決定する(経路計画)。上位システム200は、この移動経路に沿って移動体1が移動するように、移動体1に指令を与える。これにより、移動体1の遠隔制御が実現される。
【0077】
(2.3)動作説明
本実施形態の移動体1が、台車300を搬送する動作について
図10及び
図12~
図17Cを参照して説明する。
【0078】
ここでは、上位システム200からの制御指令を受けて移動体1が台車300を搬送する動作について説明する。
【0079】
上位システム200は、例えばユーザからの指示、又は、予め設定された搬送スケジュールに従って、施設内のある場所にある台車300を別の場所に移動させる制御指令を移動体1に与える。ここで、制御指令には、搬送対象の台車300の位置、台車300の向き等の情報が含まれる。上位システム200は、例えば施設内を撮影するカメラの映像から、台車300の種類、向き等の情報を取得する。移動体1の制御部12が、上位システム200からの制御指令を受け取ると、駆動部22を制御して移動体1を搬送対象の台車300の位置へ移動させる。
【0080】
先ず、ピン360,361が設けられた台車300を搬送する場合の動作について
図10及び
図14A~
図15Cを参照して説明する。
図14Aに示すように移動体1が台車300に近づくと、状態検知部21が複数の車輪330の間隔を検知し、制御部12は、状態検知部21の検知結果をもとに台車300の短辺部分を検出する(
図10のST1)。制御部12は、底部320の長手方向の一端側の短辺部分321から底部320の下側に移動体本体2の少なくとも一部が入り込むように駆動部22を制御する(
図10のST2)。なお、本実施形態では複数の車輪330が2つの固定輪331を含んでおり、制御部12は、2つの固定輪331の間に移動体本体2の少なくとも一部が入り込むように駆動部22を制御する。ここで、制御部12は、昇降板32が設けられた後側を先頭に、底部320の下側に入り込むように駆動部22を制御する。また、ピン検知部である状態検知部21がピン360,361の存在を検知している場合(
図10のST3:Yes)、制御部12は、開閉機構24によりピンチャック部33がピン360を保持可能な高さまで昇降板31及び保持板34を上昇させる第1リフト処理(
図10のST4)を行う(
図14B参照)。
【0081】
第1リフト処理が完了すると、制御部12は、底部320の短辺部分321から底部320の下側に移動体本体2を進入させる(
図14C参照)。ピンチャック部33によってピン360が保持される位置まで移動体1が移動すると、保持検知部25がピン360の保持を検知する(
図10のST5:Yes)。
【0082】
保持検知部25によってピン360の保持が検知されると、制御部12は開閉機構24により昇降板31を上限位置まで上昇させる第2リフト処理(
図10のST6)を行い、自由輪332が接地し、固定輪331が浮いた状態で台車300を保持する(
図14E)。台車300の保持が完了すると、制御部12は、ピンチャック部33がピン360を保持している状態を保持検知部25が検知すると、駆動部22を制御して移動体本体2を移動させることによって、台車300を搬送する。
【0083】
なお、ピンチャック部33がピン360を保持可能な位置まで移動しているのに、保持検知部25によってピン360の保持が検知されない場合、制御部12は何らかの異常が発生したと判断して移動体1を停止させる(
図10のST7)。このとき、制御部12は、移動体本体2に設けられた報知部(ランプ又はブザー等)を用いて異常を報知してもよいし、通信部26から上位システム200に異常の発生を通知する信号を送信させてもよい。
【0084】
移動体1が台車300を目的値まで搬送すると(
図15A参照)、制御部12は、昇降機構23を制御して昇降板31及び保持板34を下限位置に降下させ(
図15B参照)、保持部3による台車300の保持を解除する。移動体1が台車300から離れると、制御部12は駆動部22を制御して移動体本体2を前進(又は後進)させ(
図15C参照)、台車300をその場に載置する。これにより、移動体1は台車300Aを目的値まで搬送することができる。
【0085】
次に、ピン360,361が設けられていない台車300Aを搬送する場合の動作について
図10及び
図16A~
図17Cを参照して説明する。
図16Aに示すように移動体1が台車300Aに近づくと、状態検知部21が複数の車輪330の間隔を検知し、制御部12は、状態検知部21の検知結果をもとに台車300Aの短辺部分を検出する(
図10のST1)。制御部12は、底部320の長手方向の一端側の短辺部分321から底部320の下側に移動体本体2の少なくとも一部が入り込むように駆動部22を制御する(
図10のST2)。ここで、制御部12は、昇降板32が設けられた後側を先頭に、底部320の下側に入り込むように駆動部22を制御する(
図16B参照)。また、ピン検知部である状態検知部21がピン360,361の非存在を検知している場合(
図10のST3:No)、制御部12は、昇降板31,32が底部320の下側に入る位置まで移動体1を移動させ、移動体1を停止させる(
図16C参照)。制御部12は、開閉機構24により昇降板31,32を上昇させるリフト処理(
図10のST7)を行い(
図16D参照)、固定輪331及び自由輪332が移動面G1から浮く位置まで昇降板31,32を上昇させる(
図16E参照)。制御部12は、台車300Aの保持が完了すると、駆動部22を制御して移動体本体2を移動させることによって、台車300Aを搬送する。
【0086】
移動体1が台車300Aを目的値まで搬送すると(
図17A参照)、制御部12は、昇降機構23を制御して昇降板31,32を下限位置に降下させ(
図17B参照)、保持部3による台車300Aの保持を解除する。移動体1が台車300Aから離れると、制御部12は駆動部22を制御して移動体本体2を前進(又は後進)させ(
図17C参照)、台車300Aをその場に載置する。これにより、移動体1は台車300Aを目的値まで搬送することができる。
【0087】
ところで、移動体1が台車300を搬送する搬送形態には、台車300をけん引する搬送形態(第1搬送形態とも言う)と、台車300を後ろから押す搬送形態(第2搬送形態とも言う)と、がある。一般的に台車300をけん引する搬送形態の方が安定して搬送できるので、制御部12は、保持部3が台車300を保持している状態で、移動体本体2が先頭になって台車300をけん引する搬送形態で移動体本体2を前進走行させるように駆動部を制御するのが好ましい。
【0088】
一方、
図12及び
図13に示すように、複数の台車300が複数列に並べて配列されるような置き場所に移動体1が台車300を搬送する場合は上記の第1搬送形態と第2搬送形態との両方の搬送形態で台車300を搬送するのが好ましい。
【0089】
まず、制御部12は、
図12に示すように、保持部3が台車300を保持している状態で、移動体本体2が先頭になって台車300をけん引する第1搬送形態で移動体本体2を第1位置P1まで前進走行させるように駆動部22を制御する。制御部12は、第1位置P1で、移動体本体2を回転させることによって移動体本体2が台車300を後から押す第2搬送形態となるように駆動部22を制御する。制御部12は、
図13に示すように、移動体本体2を第2搬送形態で第2位置P2まで後進走行させるように駆動部22を制御する。制御部12は、第2位置P2で保持部3に台車300を分離させた後、移動体本体2を前進走行させるように駆動部を制御する。これにより、移動体1は、台車300を複数列に並ぶように配列することができ、複数の台車300をコンパクトに配置することができる。
【0090】
なお、移動体本体2が第2搬送形態で台車300を搬送しながら後進する場合、台車300は自由輪332側を先頭にして移動する。このとき、一対の操舵補助部37が台車本体310の左右両側をそれぞれ押しているので、台車300の進行方向がぐらつくのを抑制して、台車300を安定に走行させることができる。なお、移動体1が搬送物である台車300に対して十分な重さがあり、車輪41に十分なグリップ力があって、トラクションが確保されていることが好ましい。
【0091】
また、本実施形態の移動体1は、移動体本体2と、保持部3と、操舵補助部37と、を備えている。移動体本体2の前後方向の両側に保持部3が少なくとも1つずつ設けられており、操舵補助部37は、移動体本体2の前側にある保持部3に配置されている。そして、保持部3は、台車300の自由輪332が移動面G1に接地し、かつ、台車300の固定輪331が移動面G1から浮いた状態で台車300を保持する。このように、移動体1は、台車300の固定輪331を浮かせた状態で台車300を保持して後進する場合に、操舵補助部37が台車本体310と当接することで、台車300の移動方向を移動体1の移動方向に追従させることができる。
【0092】
(3)変形例
上記実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上記実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、移動体1と同様の機能は、移動体1を制禦する移動体制御方法、コンピュータプログラム、又はプログラムを記録した非一時的な記録媒体等で具現化されてもよい。一態様に係る移動体制御方法は、移動体1を制御する方法である。移動体1は、移動体本体2と、保持部3と、駆動部22と、を備える。移動体本体2は、移動面G1の上を移動可能である。保持部3は、台車300の下側に移動体本体2の少なくとも一部が入り込んだ状態で、台車300の少なくとも一部を持ち上げることによって台車300を保持する。台車300は、底部320を有する台車本体310の下部に設けられた車輪330で移動面G1の上を移動可能である。底部320の平面視の形状は長方形状である。駆動部22は、移動面G1の上で移動体本体2を移動させる。移動体制御方法は、第1ステップと、第2ステップとを含む。第1ステップでは、台車300の底部320の短辺部分321から底部320の下側に移動体本体2の少なくとも一部が入り込むように駆動部22を制御する。第2ステップでは、保持部3が台車300を保持している状態で、駆動部22を制御して移動体本体2を走行させることによって、台車300を搬送する。
【0093】
また、本実施形態の移動体制御方法は、保持ステップと、搬送ステップと、を含む。保持ステップでは、移動体本体2が台車300を第1保持状態と第2保持状態とのいずれかで保持する。台車300は、所定の方向に沿ってそれぞれ回転可能な2つの固定輪331と、全周方向に回転可能な自由輪332とで移動可能である。搬送ステップでは、移動体本体2が台車300を保持した状態で台車300を搬送する。第1保持状態は、自由輪332が移動面G1に接地し、かつ、2つの固定輪331が移動面G1から浮いた状態で台車300を保持する状態である。第2保持状態は、2つの固定輪331と自由輪332とが全て移動面G1から浮いた状態で台車300を保持する状態である。保持ステップでは、移動体本体2が、2つの固定輪331の間から台車300の下側に入り込んだ場合に第1保持状態で台車300を保持する。なお、保持ステップにおいて、移動体本体2が、2つの固定輪331の間から台車300の下側に入り込んだ場合でも、台車300にピン361が設けられていない場合、移動体本体2は、第2保持状態で台車300を保持してもよい。つまり、保持ステップにおいて、移動体本体2が、2つの固定輪331の間から台車300の下側に入り込んだ場合に、台車300にピン361が設けられている場合、移動体本体2は、第1保持状態で台車300を保持すればよい。なお、搬送対象の台車300にピン361が必ず設けられている場合にはピン361の有無を判断することなく、移動体本体2が、2つの固定輪331の間から台車300の下側に入り込んだ場合は、移動体本体2が、第1保持状態で台車300を保持すればよい。
【0094】
また、本実施形態の移動体制御方法は、操舵補助ステップを更に含んでいる。操舵補助ステップでは、移動体本体2が台車300を第1保持状態で保持している状態で、移動体本体2に設けられた操舵補助部37を台車300と当接させることによって、台車300の移動方向を移動体本体2の移動方向に追従させる。
【0095】
一態様に係る(コンピュータ)プログラムは、コンピュータシステムに、上記の移動体制御方法を実行させるためのプログラムである。
【0096】
以下、上記の実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0097】
本開示における移動体1及び上位システム200は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における移動体1及び上位システム200としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1ないし複数の電子回路で構成される。ここでいうIC又はLSI等の集積回路は、集積の度合いによって呼び方が異なっており、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又はULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれる集積回路を含む。さらに、LSIの製造後にプログラムされる、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はLSI内部の接合関係の再構成若しくはLSI内部の回路区画の再構成が可能な論理デバイスについても、プロセッサとして採用することができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。ここでいうコンピュータシステムは、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを含む。したがって、マイクロコントローラについても、半導体集積回路又は大規模集積回路を含む1ないし複数の電子回路で構成される。
【0098】
また、移動体制御システム100における複数の機能が、1つの筐体内に集約されていることは移動体制御システム100に必須の構成ではなく、移動体制御システム100の構成要素(例えば移動体1の制御部12)は、複数の筐体に分散して設けられていてもよい。さらに、移動体制御システム100の少なくとも一部の機能(例えば移動体1の制御部12)がクラウド(クラウドコンピューティング)等によって実現されてもよい。
【0099】
反対に、実施形態1において、複数の装置に分散されている移動体制御システム100の少なくとも一部の機能が、1つの筐体内に集約されていてもよい。例えば、移動体1と上位システム200とに分散されている移動体制御システム100の一部の機能が、1つの筐体内に集約されていてもよい。
【0100】
上記実施形態において、測定データなどの2値の比較において、「より大きい」としているところは「以上」であってもよい。つまり、2値の比較において、2値が等しい場合を含むか否かは、基準値等の設定次第で任意に変更できるので、「より大きい」か「以上」かに技術上の差異はない。同様に、「以下」としているところは「未満」であってもよい。
【0101】
(まとめ)
以上説明したように、第1の態様の移動体(1)は、移動体本体(2)と、保持部(3)と、駆動部(22)と、制御部(12)と、を備える。保持部(3)は、台車(300)の下側に移動体本体(2)の少なくとも一部が入り込んだ状態で、台車(300)の少なくとも一部を持ち上げることによって台車(300)を保持する。台車(300)は、底部(320)を有する台車本体(310)の下部に設けられた複数の車輪(330)で移動可能である。駆動部(22)は、移動体本体(2)を移動させる。制御部(12)は駆動部(22)を制御する。制御部(12)は、台車(300)の底部(320)の短辺部分(321)から底部(320)の下側に移動体本体(2)の少なくとも一部が入り込むように駆動部(22)を制御する。制御部(12)は、保持部(3)が台車(300)を保持している状態で、駆動部(22)を制御して移動体本体(2)を移動させることによって、台車(300)を搬送する。
【0102】
この態様によれば、移動体本体(2)が底部(320)の短辺部分(321)から底部(320)の下側に入り込んだ状態で保持部(3)が台車(300)の少なくとも一部を持ち上げることによって、移動体(1)が台車(300)を保持するので、短辺部分(321)の両側の撓みが小さくなり、台車(300)の車輪(330)が接地する可能性を低減できる。よって、移動体(1)が台車(300)を搬送する際に、車輪(330)が移動面(G1)に当たって抵抗となる可能性を低減でき、台車(300)を安定な状態で搬送することができる。
【0103】
第2の態様の移動体(1)では、第1の態様において、台車(300)が備える複数の車輪(330)は、固定輪(331)と、自由輪(332)と、を含む。固定輪(331)は、底部(320)の長手方向の一端側に配置され、所定の方向に沿って回転可能である。複数の自由輪(332)は、底部(320)の長手方向の他端側に配置され、移動面(G1)における全周方向に回転可能である。制御部(12)は、底部(320)の長手方向の一端側の短辺部分(321)から底部(320)の下側に移動体本体(2)の少なくとも一部が入り込むように駆動部(22)を制御する。
【0104】
この態様によれば、保持部(3)は台車(300)を持ち上げることによって少なくとも固定輪(331)を持ち上げることができる。よって、移動体(1)が台車(300)を搬送する際に、固定輪(331)が移動面(G1)に当たって抵抗となる可能性を低減でき、台車(300)を安定な状態で搬送することができる。
【0105】
第3の態様の移動体(1)では、第2の態様において、複数の車輪(330)が2つの固定輪(331)を含み、制御部(12)は、2つの固定輪(331)の間に移動体本体(2)の少なくとも一部が入り込むように駆動部(22)を制御する。
【0106】
この態様によれば、保持部(3)が、台車本体(310)において隣接する2つの固定輪(331)の間の部位を持ち上げるので、隣接する2つの固定輪(331)が移動面(G1)に接地する可能性を低減することができる。
【0107】
第4の態様の移動体(1)では、第2又は3の態様において、保持部(3)は、自由輪(332)が移動面(G1)に接地し、かつ、固定輪(331)が移動面(G1)から浮いた状態で台車(300)を保持する。
【0108】
この態様によれば、自由輪(332)のみが移動面(G1)に接地している状態で台車(300)を搬送することができる。
【0109】
第5の態様の移動体(1)では、第2~4のいずれかの態様において、保持部(3)は、台車(300)の長手方向における少なくとも一方の端部に設けられたピン(360,361)を保持するピンチャック部(33)を含む。
【0110】
この態様によれば、移動体(1)は、保持部(3)は台車(300)を持ち上げるとともに、ピンチャック部(33)でピン(360,361)を保持することによって、台車(300)を保持することができる。
【0111】
第6の態様の移動体(1)では、第5の態様において、台車(300A)にピン(360,361)が存在するか否かを検知するピン検知部(21)を、更に備える。ピン検知部(21)がピン(360,361)の非存在を検知すると、保持部(3)は、自由輪(332)及び固定輪(331)が全て移動面(G1)から浮いた状態で台車(300)を保持する。
【0112】
この態様によれば、ピン(360,361)が設けられていない台車(300A)は、複数の自由輪(332)及び複数の固定輪(331)を全て移動面(G1)から浮かせた状態で保持することができる。
【0113】
第7の態様の移動体(1)では、第5又は6の態様において、ピンチャック部(33)が、台車(300)に設けられたピン(360,361)を保持しているか否かを検知する保持検知部(25)を、更に備える。
【0114】
この態様によれば、ピンチャック部(33)によってピン(360,361)が保持されているか否かを保持検知部(25)で検知することができる。
【0115】
第8の態様の移動体(1)では、第7の態様において、制御部(12)は、ピンチャック部(33)がピン(360,361)を保持している状態を保持検知部(25)が検知すると、駆動部(22)を制御して移動体本体(2)を移動させることによって、台車(300)を搬送する。
【0116】
この態様によれば、ピンチャック部(33)によってピン(360,361)が保持された状態で台車(300)を搬送することができる。
【0117】
第9の態様の移動体(1)は、第2~8のいずれかの態様において、操舵補助部(37)を、更に備える。操舵補助部(37)は、移動体本体(2)に設けられ、台車本体(310)と当接することによって、台車(300)の移動方向を移動体本体(2)の移動方向に追従させる。
【0118】
この態様によれば、台車(300)を保持している移動体(1)が曲がろうとする場合に、操舵補助部(37)が移動体本体(2)を押すことによって、台車(300)の移動方向を移動体(1)の移動方向に追従させることができる。
【0119】
第10の態様の移動体(1)では、第9の態様において、移動体本体(2)の前後方向の両側に保持部(3)が少なくとも1つずつあり、操舵補助部(37)は、移動体本体(2)の前側にある保持部(3)に配置される。
【0120】
この態様によれば、操舵補助部(37)が移動体本体(2)を押すことによって、台車(300)の移動方向を移動体(1)の移動方向に追従させることができる。
【0121】
第11の態様の移動体(1)では、第1~10のいずれかの態様において、制御部(12)は、保持部(3)が台車(300)を保持している状態で、移動体本体(2)が先頭になって台車(300)をけん引する搬送形態で移動体本体(2)を前進走行させるように駆動部(22)を制御する。
【0122】
この態様によれば、移動体(1)が台車(300)をけん引して移動させることができる。
【0123】
第12の態様の移動体(1)では、第1~11のいずれかの態様において、制御部(12)は、保持部(3)が台車(300)を保持している状態で、移動体本体(2)が先頭になって台車(300)をけん引する第1搬送形態で移動体本体(2)を第1位置まで前進走行させるように駆動部(22)を制御する。制御部(12)は、第1位置で、移動体本体(2)を回転させることによって移動体本体(2)が台車(300)を後から押す第2搬送形態となるように駆動部(22)を制御する。制御部(12)は、移動体本体(2)を第2搬送形態で第2位置まで後進走行させるように駆動部(22)を制御する。制御部(12)は、第2位置で保持部(3)に台車(300)を分離させた後、移動体本体(2)を前進走行させるように駆動部(22)を制御する。
【0124】
この態様によれば、移動体(1)が台車(300)を第1位置から第2位置へ移動させることができる。
【0125】
第13の態様の移動体(1)は、移動体本体(2)と、保持部(3)と、操舵補助部(37)と、を備える。保持部(3)は、台車(300)の下側に移動体本体(2)の少なくとも一部が入り込んだ状態で、台車(300)の少なくとも一部を持ち上げることによって台車(300)を保持する。台車(300)は、底部(320)を有する台車本体(310)の下部に設けられた複数の車輪(330)で移動可能である。複数の車輪(330)は、底部(320)の長手方向の一端側に配置され所定の方向に沿って回転可能な固定輪(331)と、底部(320)の長手方向の他端側に配置されて全周方向に回転可能な自由輪(332)とを含む。操舵補助部(37)は、移動体本体(2)に設けられ、台車本体(310)と当接することによって、台車(300)の移動方向を移動体本体(2)の移動方向に追従させる。移動体本体(2)の前後方向の両側に保持部(3)が少なくとも1つずつあり、操舵補助部(37)は、移動体本体(2)の前側にある保持部(3)に配置される。保持部(3)は、台車(300)の自由輪(332)が移動面(G1)に接地し、かつ、台車(300)の固定輪(331)が移動面(G1)から浮いた状態で台車(300)を保持する。
【0126】
この態様によれば、操舵補助部(37)が台車(300)の移動方向を移動体本体(2)の移動方向に追従させることによって、台車(300)を安定な状態で搬送することができる。
【0127】
第14の態様の移動体制御方法は、移動体(1)を制御する移動体制御方法である。移動体(1)は、移動体本体(2)と、保持部(3)と、駆動部(22)と、を備える。保持部(3)は、台車(300)の下側に移動体本体(2)の少なくとも一部が入り込んだ状態で、台車(300)の少なくとも一部を持ち上げることによって台車(300)を保持する。台車(300)は、底部(320)を有する台車本体(310)の下部に設けられた車輪(330)で移動可能である。駆動部(22)は、移動体本体(2)を移動させる。移動体制御方法は、第1ステップと、第2ステップとを含む。第1ステップでは、台車(300)の底部(320)の短辺部分(321)から底部(320)の下側に移動体本体(2)の少なくとも一部が入り込むように駆動部(22)を制御する。第2ステップでは、保持部(3)が台車(300)を保持している状態で、駆動部(22)を制御して移動体本体(2)を走行させることによって、台車(300)を搬送する。
【0128】
この態様によれば、移動体本体(2)が底部(320)の短辺部分(321)から底部(320)の下側に入り込んだ状態で保持部(3)が台車(300)の少なくとも一部を持ち上げることによって、移動体(1)が台車(300)を保持するので、短辺部分(321)の両側の撓みが小さくなり、台車(300)の車輪(330)が接地する可能性を低減できる。よって、移動体(1)が台車(300)を搬送する際に、車輪(330)が移動面(G1)に当たって抵抗となる可能性を低減でき、台車(300)を安定な状態で搬送することができる。
【0129】
第15の態様の移動体制御方法は、保持ステップと、搬送ステップと、を含む。保持ステップでは、移動体本体(2)が台車(300)を第1保持状態と第2保持状態とのいずれかで保持する。台車(300)は、所定の方向に沿ってそれぞれ回転可能な2つの固定輪(331)と、全周方向に回転可能な自由輪(332)とで移動可能である。搬送ステップでは、移動体本体(2)が台車(300)を保持した状態で台車(3009を搬送する。第1保持状態は、自由輪(332)が移動面(G1)に接地し、かつ、2つの固定輪(331)が移動面(G1)から浮いた状態で台車(300)を保持する状態である。第2保持状態は、2つの固定輪(331)と自由輪(332)とが全て移動面(G1)から浮いた状態で台車(300)を保持する状態である。保持ステップでは、移動体本体(2)が、2つの固定輪(331)の間から台車(300)の下側に入り込んだ場合に第1保持状態で台車(300)を保持する。
【0130】
この態様によれば、移動体本体(2)が、2つの固定輪(331)の間から台車(300)の下側に入り込んだ場合は第1保持状態で台車(300)を保持するので、固定輪(331)が移動面(G1)に当たって抵抗となる可能性を低減できる。よって、この態様によれば、台車(300)を安定な状態で搬送することができる。
【0131】
第16の態様の移動体制御方法では、第15の態様において、操舵補助ステップを更に含む。操舵補助ステップでは、移動体本体(2)が台車(300)を第1保持状態で保持している状態で、移動体本体(2)に設けられた操舵補助部(37)を台車(300)と当接させることによって、台車(300)の移動方向を移動体本体(2)の移動方向に追従させる。
【0132】
この態様によれば、台車(300)を安定な状態で搬送することができる。
【0133】
上記態様に限らず、上記実施形態に係る移動体(1)の種々の構成(変形例を含む)は、移動体制御方法、(コンピュータ)プログラム、又はプログラムを記録した非一時的記録媒体等で具現化可能である。
【0134】
第2~第12の態様に係る構成については、移動体(1)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。第16の態様に係る構成については、移動体制御方法に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0135】
1 移動体
2 移動体本体
3 保持部
12 制御部
21 状態検知部(ピン検知部)
22 駆動部
25 保持検知部
33 ピンチャック部
37 操舵補助部
300 台車
310 台車本体
320 底部
321 短辺部分
330 車輪
331 固定輪
332 自由輪
360,361 ピン
G1 移動面