(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】リニアモータシステム
(51)【国際特許分類】
H02P 25/064 20160101AFI20241004BHJP
【FI】
H02P25/064
(21)【出願番号】P 2021567119
(86)(22)【出願日】2020-12-01
(86)【国際出願番号】 JP2020044738
(87)【国際公開番号】W WO2021131542
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2023-10-06
(31)【優先権主張番号】P 2019238380
(32)【優先日】2019-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】川上 蓮也
(72)【発明者】
【氏名】村上 健太
(72)【発明者】
【氏名】田澤 徹
(72)【発明者】
【氏名】野々垣 雄介
【審査官】谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-033240(JP,A)
【文献】特開2003-345445(JP,A)
【文献】国際公開第2012/056843(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 25/064
H02K 41/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
列状に配列される複数のコイルを有する固定子と、
前記複数のコイルと対向して配置される永久磁石を有する可動子と、
前記複数のコイルのうちの1以上のコイルであって、前記配列方向における前記1以上のコイルのそれぞれの両端部に亘る領域が、前記永久磁石と対向する1以上のコイルを、給電の対象となる1以上の給電対象コイルとして選択し、前記永久磁石の移動に応じて前記1以上の給電対象コイルの切り替えを行う切替部と、
前記可動子の指令速度と前記可動子の実速度との差分である速度偏差を積算することによって得られる偏差積算値を用いて前記1以上の給電対象コイルに給電を行う制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記切り替えの直前に前記1以上の給電対象コイルのそれぞれへの給電に用いられた前記偏差積算値を合算した値である合算後偏差積算値を、前記切り替えの直後の前記1以上の給電対象コイルの個数で除算することによって除算後偏差積算値を算出する補償部と、
前記補償部によって算出された前記除算後偏差積算値を用いてトルク指令を生成する速度制御部と、
前記速度制御部によって生成された前記トルク指令に基づいて、前記切り替えの直後の前記1以上の給電対象コイルに給電を行う電流制御部とを有する、
リニアモータシステム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記複数のコイルのそれぞれに対応して設けられる複数の制御部を含み、
前記複数の制御部のそれぞれは、前記速度制御部と前記電流制御部とを有し、
前記補償部は、前記切り替えの際に、前記除算後偏差積算値を、前記複数の制御部のうちの前記1以上の給電対象コイルに対応する制御部である1以上の給電対象制御部であって、前記切り替えの直後の1以上の給電対象制御部に送信し、
前記切り替えの直後の前記1以上の給電対象制御部の前記速度制御部は、前記除算後偏差積算値を用いて前記トルク指令を生成し、前記切り替えの直後の前記1以上の給電対象制御部の前記電流制御部は、前記トルク指令に基づいて前記切り替えの直後の前記1以上の給電対象コイルに給電を行う、
請求項1に記載のリニアモータシステム。
【請求項3】
前記切り替えの直前の前記1以上の給電対象制御部のそれぞれは、前記速度偏差を前記除算後偏差積算値に積算することによって前記偏差積算値を算出し、
前記補償部は、前記切り替えの直前に前記1以上の給電対象制御部のそれぞれによって算出された前記偏差積算値を合算することによって、前記合算後偏差積算値を算出する、
請求項2に記載のリニアモータシステム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記複数の制御部と通信可能である上位制御部をさらに有し、
前記上位制御部は、前記補償部を有する、
請求項2または3に記載のリニアモータシステム。
【請求項5】
前記複数の制御部は、相互に通信可能であり、
前記複数の制御部のそれぞれは、前記補償部を有し、
前記切り替えの直前の前記1以上の給電対象制御部の前記補償部は、前記切り替えの際に、前記合算後偏差積算値を、前記切り替えの直後の前記1以上の給電対象コイルの個数で除算することによって前記除算後偏差積算値を算出し、前記除算後偏差積算値を、前記切り替えの直後の前記1以上の給電対象制御部のそれぞれに送信する、
請求項2または3に記載のリニアモータシステム。
【請求項6】
前記複数のコイルのそれぞれの前記配列方向の両端部に配置される複数の位置検出部をさらに備え、
前記切替部は、前記複数のコイルのそれぞれについて、前記配列方向における前記永久磁石の進行方向の前方側の前記位置検出部が前記永久磁石の前端部を検出した場合、当該位置検出部が配置されているコイルを前記給電対象コイルとして選択し、前記配列方向における前記永久磁石の進行方向の後方側の前記位置検出部が前記永久磁石の後端部を検出した場合、当該位置検出部が配置されているコイルを前記給電対象コイルとして選択しない、
請求項1から5のいずれか1項に記載のリニアモータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ムービングマグネット型のリニアモータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コイルに対して永久磁石を移動させるムービングマグネット型のリニアモータシステムが知られている。
【0003】
たとえば、特許文献1には、列状に複数の電気子巻線ユニットが配設された固定子と、永久磁石を有し固定子と対向して配設された可動子と、可動子が対向する電気子巻線ユニットを給電対象とし、給電対象の電気子巻線ユニットに順次給電することによって可動子を駆動させる制御装置とを備えるリニアモータシステムが開示されている。制御装置は、給電対象の電気子巻線ユニットを切り替える際に、切り替え先の電気子巻線ユニットに対する給電制御の切替補償を行う機能を有する。具体的には、制御装置は、複数の電気子巻線ユニットに接続される複数の第2制御装置を有しており、直前に給電対象として選択された電気子巻線ユニットに対応する第2制御装置が有する速度積分値を、切り替え先の第2制御装置の速度積分値として設定するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のリニアモータシステムでは、切り替えの前後で給電対象となる電気子巻線ユニットの数が変わると、適切に速度積分値を設定できない。したがって、給電対象となる電気子巻線ユニットを切り替えたときに、可動子にかかる推力が急峻に変化してしまい、切り替えショックを低減できない。
【0006】
そこで、本発明は、切り替えショックを低減できるリニアモータシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係るリニアモータシステムは、列状に配列される複数のコイルを有する固定子と、前記複数のコイルと対向して配置される永久磁石を有する可動子と、前記複数のコイルのうちの1以上のコイルであって、前記配列方向における前記1以上のコイルのそれぞれの両端部に亘る領域が、前記永久磁石と対向する1以上のコイルを、給電の対象となる1以上の給電対象コイルとして選択し、前記永久磁石の移動に応じて前記1以上の給電対象コイルの切り替えを行う切替部と、前記可動子の指令速度と前記可動子の実速度との差分である速度偏差を積算することによって得られる偏差積算値を用いて前記1以上の給電対象コイルに給電を行う制御装置とを備え、前記制御装置は、前記切り替えの直前に前記1以上の給電対象コイルのそれぞれへの給電に用いられた前記偏差積算値を合算した値である合算後偏差積算値を、前記切り替えの直後の前記1以上の給電対象コイルの個数で除算することによって除算後偏差積算値を算出する補償部と、前記補償部によって算出された前記除算後偏差積算値を用いてトルク指令を生成する速度制御部と、前記速度制御部によって生成された前記トルク指令に基づいて、前記切り替えの直後の前記1以上の給電対象コイルに給電を行う電流制御部とを有する。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様に係るリニアモータシステムによれば、切り替えショックを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】
図1Aは、実施の形態1に係るリニアモータシステムの構成を示す図であり、交差方向から見た図である。
【
図1B】
図1Bは、
図1Aのリニアモータシステムの構成を示す図であり、交差方向に直交しかつ配列方向に直交する方向から見た図である。
【
図2】
図2は、
図1Aのリニアモータシステムの機能構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、
図1Aのリニアモータシステムの動作の一例を説明するための説明図であり、第1の状態を示す図である。
【
図4】
図4は、
図1Aのリニアモータシステムの動作の一例を説明するための説明図であり、第2の状態を示す図である。
【
図5】
図5は、
図1Aのリニアモータシステムの動作の一例を説明するための説明図であり、第3の状態を示す図である。
【
図6】
図6は、
図1Aのリニアモータシステムの動作の一例を説明するための説明図であり、第4の状態を示す図である。
【
図7】
図7は、
図1Aのリニアモータシステムにおける給電対象アンプの動作の一例を示すフロー図である。
【
図8】
図8は、
図1Aのリニアモータシステムにおける補償部の動作の一例を示すフロー図である。
【
図9】
図9は、実施の形態2に係るリニアモータシステムの機能構成を示すブロック図である。
【
図10】
図10は、
図9のリニアモータシステムの動作の一例を説明するための説明図であり、第1の状態を示す図である。
【
図11】
図11は、
図9のリニアモータシステムの動作の一例を説明するための説明図であり、第2の状態を示す図である。
【
図12】
図12は、
図9のリニアモータシステムの動作の一例を説明するための説明図であり、第3の状態を示す図である。
【
図13】
図13は、
図9のリニアモータシステムの動作の一例を説明するための説明図であり、第4の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本開示の一態様を得るに至った経緯)
上述したように、特許文献1に開示されたリニアモータシステムでは、切り替えの前後で給電対象となる電気子巻線ユニットの数が変わると、切り替えショックを低減できない。
【0011】
このため、発明者は、切り替えショックを低減すべく鋭意検討、実験を行った。そして、発明者は、1以上の給電対象コイルの切り替えの直前に1以上の給電対象コイルのそれぞれへの給電に用いられていた偏差積算値を合算した値である合算後偏差積算値を、当該切り替えの直後の1以上の給電対象コイルの個数で除算して除算後偏差積算値を算出し、除算後偏差積算値を用いて当該切り替えの直後の1以上の給電対象コイルに給電を行うことによって、可動子にかかる推力が急峻に変化することを抑制でき、切り替えショックを低減できる知見を得た。
【0012】
発明者は、この知見に基づき、さらに、鋭意検討、実験を行い、下記本開示の一態様に係るリニアモータシステムに想到した。
【0013】
本開示の一態様に係るリニアモータシステムは、列状に配列される複数のコイルを有する固定子と、前記複数のコイルと対向して配置される永久磁石を有する可動子と、前記複数のコイルのうちの1以上のコイルであって、前記配列方向における前記1以上のコイルのそれぞれの両端部に亘る領域が、前記永久磁石と対向する1以上のコイルを、給電の対象となる1以上の給電対象コイルとして選択し、前記永久磁石の移動に応じて前記1以上の給電対象コイルの切り替えを行う切替部と、前記可動子の指令速度と前記可動子の実速度との差分である速度偏差を積算することによって得られる偏差積算値を用いて前記1以上の給電対象コイルに給電を行う制御装置とを備え、前記制御装置は、前記切り替えの直前に前記1以上の給電対象コイルのそれぞれへの給電に用いられた前記偏差積算値を合算した値である合算後偏差積算値を、前記切り替えの直後の前記1以上の給電対象コイルの個数で除算することによって除算後偏差積算値を算出する補償部と、前記補償部によって算出された前記除算後偏差積算値を用いてトルク指令を生成する速度制御部と、前記速度制御部によって生成された前記トルク指令に基づいて、前記切り替えの直後の前記1以上の給電対象コイルに給電を行う電流制御部とを有する。
【0014】
上記構成のリニアモータシステムによると、補償部は、1以上の給電対象コイルの切り替えの際に、当該切り替えの直前に1以上の給電対象コイルのそれぞれへの給電に用いられた偏差積算値を合算した値である合算後偏差積算値を、当該切り替えの直後の1以上の給電対象コイルの個数で除算することによって除算後偏差積算値を算出する。そして、速度制御部は、算出された除算後偏差積算値を用いてトルク指令を生成し、電流制御部は、生成されたトルク指令に基づいて、当該切り替えの直後の1以上の給電対象コイルに給電を行う。したがって、当該切り替えの前後で、1以上の給電対象コイルの個数が変わったとしても、当該切り替えの直前に用いられていた偏差積算値の合算値を略均等に分けて、当該切り替え直後の1以上の給電対象コイルのそれぞれに給電を行うことができる。これによって、当該切り替えの際に、可動子にかかる推力が急峻に変化することを抑制でき、1以上の給電対象コイルを切り替える際の切り替えショックを低減できる。
【0015】
また、前記制御装置は、前記複数のコイルのそれぞれに対応して設けられる複数の制御部を含み、前記複数の制御部のそれぞれは、前記速度制御部と前記電流制御部とを有し、前記補償部は、前記切り替えの際に、前記除算後偏差積算値を、前記複数の制御部のうちの前記1以上の給電対象コイルに対応する制御部である1以上の給電対象制御部であって、前記切り替えの直後の1以上の給電対象制御部に送信し、前記切り替えの直後の前記1以上の給電対象制御部の前記速度制御部は、前記除算後偏差積算値を用いて前記トルク指令を生成し、前記切り替えの直後の前記1以上の給電対象制御部の前記電流制御部は、前記トルク指令に基づいて前記切り替えの直後の前記1以上の給電対象コイルに給電を行ってもよい。
【0016】
また、前記切り替えの直前の前記1以上の給電対象制御部のそれぞれは、前記速度偏差を前記除算後偏差積算値に積算することによって前記偏差積算値を算出し、前記補償部は、前記切り替えの直前に前記1以上の給電対象制御部のそれぞれによって算出された前記偏差積算値を合算することによって、前記合算後偏差積算値を算出してもよい。
【0017】
また、前記制御装置は、前記複数の制御部と通信可能である上位制御部をさらに有し、前記上位制御部は、前記補償部を有してもよい。
【0018】
また、前記複数の制御部は、相互に通信可能であり、前記複数の制御部のそれぞれは、前記補償部を有し、前記切り替えの直前の前記1以上の給電対象制御部の前記補償部は、前記切り替えの際に、前記合算後偏差積算値を、前記切り替えの直後の前記1以上の給電対象コイルの個数で除算することによって前記除算後偏差積算値を算出し、前記除算後偏差積算値を、前記切り替えの直後の前記1以上の給電対象制御部のそれぞれに送信してもよい。
【0019】
また、前記複数のコイルのそれぞれの前記配列方向の両端部に配置される複数の位置検出部をさらに備え、前記切替部は、前記複数のコイルのそれぞれについて、前記配列方向における前記永久磁石の進行方向の前方側の前記位置検出部が前記永久磁石の前端部を検出した場合、当該位置検出部が配置されているコイルを前記給電対象コイルとして選択し、前記配列方向における前記永久磁石の進行方向の後方側の前記位置検出部が前記永久磁石の後端部を検出した場合、当該位置検出部が配置されているコイルを前記給電対象コイルとして選択しなくてもよい。
【0020】
以下、本開示の一態様に係るリニアモータシステムの具体例について、図面を参照しながら説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態、等は、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。
【0021】
なお、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略または簡略化される場合がある。
【0022】
また、以下の実施の形態の説明に用いられる図面においては座標系が示される場合がある。座標系におけるX軸方向は、複数のコイルが配列されている配列方向である。また、座標系におけるY軸方向は、X軸方向に直交する方向であり、当該配列方向と直交する交差方向である。また、座標系におけるZ軸方向は、X軸方向に直交しかつY軸方向に直交する方向である。
【0023】
(実施の形態1)
以下、実施の形態1に係るリニアモータシステム10について、図面を参照しながら説明する。
【0024】
図1Aは、実施の形態1に係るリニアモータシステム10の構成を示す図であり、交差方向から見た図である。
図1Bは、
図1Aのリニアモータシステム10の構成を示す図であり、交差方向に直交しかつ配列方向に直交する方向から見た図である。なお、
図1Aでは、図面が煩雑になることを避けるため、基台22および荷台26等の図示を省略する。
図1Aおよび
図1Bを参照して、実施の形態1に係るリニアモータシステム10の構成について説明する。
【0025】
図1Aおよび
図1Bに示すように、リニアモータシステム10は、リニアモータ12と、制御装置14と、位置検出装置15とを備える。
【0026】
リニアモータ12は、固定子16と、固定子16に対して移動可能な可動子18とを有する。リニアモータ12は、第1~第10コイル20a~20j(後述)に対して、永久磁石24(後述)が移動するムービングマグネット型のリニアモータである。
【0027】
固定子16は、第1~第10コイル20a~20jと、第1~第10コイル20a~20jが固定される基台22とを有する。このように、固定子16は、複数(この実施の形態では、10個)のコイルを有する。なお、固定子16は、11個以上のコイルを有していてもよいし、9個以下のコイルを有していてもよい。
【0028】
第1~第10コイル20a~20jは、列状に配列されている。なお、第1~第10コイル20a~20jは、直線状に配列されているが、曲線状に配列されていてもよい。
図1Aに示すように、第1~第10コイル20a~20jのそれぞれは、第1~第10コイル20a~20jが配列されている配列方向(X軸方向)と直交する交差方向(Y軸方向)周りに巻回されており、交差方向に開口するように配置されている。
【0029】
可動子18は、永久磁石24と、永久磁石24に取り付けられる荷台26とを有する。
【0030】
永久磁石24は、交差方向において、第1~第10コイル20a~20jと対向して配置されている。具体的には、永久磁石24は、交差方向において、第1~第10コイル20a~20jのうちの一部のコイルと対向して配置される。永久磁石24は、第1~第10コイル20a~20jに沿って配列方向に移動可能である(
図1Bの矢印A参照)。永久磁石24は、配列方向に並んで形成される磁極(図示せず)を有している。たとえば、永久磁石24は、複数のN極と複数のS極とを有しており、N極とS極とが配列方向に交互に設けられている。永久磁石24は、交差方向から見たとき、第1~第10コイル20a~20jのうちの隣り合う3個のコイルの全部と重なるような大きさに形成されている。
図1Aおよび
図1Bに示す状態では、永久磁石24は、交差方向から見たとき、第1~第10コイル20a~20jのうちの隣り合う第2コイル20b、第3コイル20c、および第4コイル20dの全部と重なるように配置されている。言い換えると、
図1Aおよび
図1Bに示す状態では、交差方向から見たときの配列方向における第2コイル20b、第3コイル20c、および第4コイル20dのそれぞれの両端部に亘る領域(
図1Aの矢印Bおよびドット部分の領域参照)は、永久磁石24と対向しており、交差方向から見たとき、永久磁石24と重なっている。なお、永久磁石24の大きさは、これに限定されず、たとえば、交差方向から見たとき、第1~第10コイル20a~20jのうちの隣り合う2個のコイルの全部と重なる大きさに形成されていてもよいし、第1~第10コイル20a~20jのうちの隣り合う4個以上のコイルの全部と重なる大きさに形成されていてもよい。また、永久磁石24は、交差方向に第1~第10コイル20a~20jを挟むように略U字状に形成されていてもよい。また、永久磁石24は、配列方向に直交しかつ交差方向に直交する方向(Z軸方向)に第1~第10コイル20a~20jを挟むように略U字状に形成されていてもよい。
【0031】
制御装置14は、リニアモータ12を制御する装置である。制御装置14は、第1~第10コイル20a~20jのうちの給電の対象となるコイルである1以上の給電対象コイルに給電を行うことによって、固定子16に対して可動子18を移動させ、可動子18を所望の位置まで移動させる。制御装置14は、コントローラ28と、コントローラ28および第1~第10コイル20a~20jに接続される第1~第10アンプ30a~30jとを有する。このように、制御装置14は、複数(この実施の形態では、10個)のアンプを有する。この実施の形態では、コントローラ28が、上位制御部に相当し、第1~第10アンプ30a~30jが、複数の制御部に相当する。
【0032】
コントローラ28は、位置検出装置15からの情報に基づいて永久磁石24の位置を認識し、永久磁石24の位置に応じて、1以上の給電対象コイルを選択する。コントローラ28は、第1~第10アンプ30a~30jと通信可能であり、第1~第10アンプ30a~30jのうちの1以上の給電対象コイルに対応するアンプである1以上の給電対象アンプに対して、速度指令または位置指令等の指令を送信する。
図1Aおよび
図1Bに示す状態では、第2コイル20b、第3コイル20c、および第4コイル20dのそれぞれが、給電対象コイルとなり、第2アンプ30b、第3アンプ30c、および第4アンプ30dのそれぞれが、給電対象アンプとなる。この実施の形態では、給電対象アンプが、給電対象制御部に相当する。
【0033】
第1~第10アンプ30a~30jは、第1~第10コイル20a~20jに対応して設けられている。具体的には、第1アンプ30aは、第1コイル20aに対応して設けられており、第2アンプ30bは、第2コイル20bに対応して設けられている。第3~第10アンプ30c~30jについても同様である。第1~第10アンプ30a~30jのうちの1以上の給電対象コイルに対応するアンプである1以上の給電対象アンプのそれぞれは、可動子18の指令速度と可動子18の実速度との差分である速度偏差を積算することによって得られる偏差積算値を用いて、対応する給電対象コイルに給電を行う。
図1Aおよび
図1Bに示す状態では、第2アンプ30bが偏差積算値を用いて第2コイル20bに給電を行い、第3アンプ30cが偏差積算値を用いて第3コイル20cに給電を行い、第4アンプ30dが偏差積算値を用いて第4コイル20dに給電を行う。
【0034】
給電対象コイルに給電を行うと、給電対象コイルが磁化し、永久磁石24が給電対象コイルに引っ張られてまたは給電対象コイルに押し出されて、可動子18が移動する。なお、給電対象コイルに供給する電流の向きを変えることによって、給電対象コイルの磁極を変更できる。たとえば、交差方向における可動子18側から見たときに時計回りに流れるように電流を流せば、交差方向において、給電対象コイルの可動子18側がS極となり、給電対象コイルの可動子18とは反対側がN極となる。これに対して、交差方向における可動子18側から見たときに反時計回りに流れるように電流を流せば、給電対象コイルの可動子18側がN極となり、給電対象コイルの可動子18とは反対側がS極となる。給電対象アンプは、永久磁石24の磁極(N極、S極)の位置に応じて、給電対象コイルに供給する電流の向きを決定する。
【0035】
コントローラ28は、永久磁石24が移動することに伴って、順次給電対象コイルを切り替えて給電を行い、所望の位置まで可動子18を移動させる。
【0036】
位置検出装置15は、永久磁石24の位置を検出する装置である。位置検出装置15は、第1~第10コイル20a~20jのそれぞれの配列方向の両端部に配置される第1~第20位置センサ34a~34tを有する。このように、位置検出装置15は、複数(この実施の形態では、20個)の位置センサを有する。第1位置センサ34aおよび第2位置センサ34bは、配列方向における第1コイル20aの両端部に配置されており、第3位置センサ34cおよび第4位置センサ34dは、配列方向における第2コイル20bの両端部に配置されており、第5位置センサ34eおよび第6位置センサ34fは、配列方向における第3コイル20cの両端部に配置されており、第7位置センサ34gおよび第8位置センサ34hは、配列方向における第4コイル20dの両端部に配置されており、第9位置センサ34iおよび第10位置センサ34jは、配列方向における第5コイル20eの両端部に配置されている。第11位置センサ34kおよび第12位置センサ34lは、配列方向における第6コイル20fの両端部に配置されており、第13位置センサ34mおよび第14位置センサ34nは、配列方向における第7コイル20gの両端部に配置されており、第15位置センサ34oおよび第16位置センサ34pは、配列方向における第8コイル20hの両端部に配置されており、第17位置センサ34qおよび第18位置センサ34rは、配列方向における第9コイル20iの両端部に配置されており、第19位置センサ34sおよび第20位置センサ34tは、配列方向における第10コイル20jの両端部に配置されている。この実施の形態では、第1~第20位置センサ34a~34tが、複数の位置検出部に相当する。
【0037】
第1~第20位置センサ34a~34tのそれぞれは、交差方向に対向する永久磁石24を検出する。
図1Aおよび
図1Bに示す状態では、第1位置センサ34aおよび第2位置センサ34bは、交差方向において永久磁石24と対向しておらず、永久磁石24を検出していないことを示す信号をコントローラ28および第1~第10アンプ30a~30jに送信する。これによって、コントローラ28および第1~第10アンプ30a~30jは、交差方向から見たときの配列方向における第1コイル20aの両端部に亘る領域が、交差方向において永久磁石24と対向していないことを認識する。言い換えると、これによって、コントローラ28および第1~第10アンプ30a~30jは、第1コイル20aの全部が、交差方向から見たときに永久磁石24と重なっていないことを認識する。第9~第20位置センサ34i~34tについても同様である。これに対して、第3位置センサ34cおよび第4位置センサ34dは、交差方向において永久磁石24と対向しており、永久磁石24を検出していることを示す信号をコントローラ28および第1~第10アンプ30a~30jに送信する。これによって、コントローラ28および第1~第10アンプ30a~30jは、交差方向から見たときの配列方向における第2コイル20bの両端部に亘る領域が、永久磁石24と対向しており、交差方向において永久磁石24と重なっていることを認識する。言い換えると、これによって、コントローラ28および第1~第10アンプ30a~30jは、第2コイル20bの全部が、交差方向から見たときに永久磁石24と重なっていることを認識する。第5~第8位置センサ34e~34hについても同様である。
【0038】
また、第1~第20位置センサ34a~34tのそれぞれは、永久磁石24の移動方向における前端部および後端部を検出する。たとえば、第1位置センサ34aは、永久磁石24の移動方向における前端部と、交差方向において対向した場合、永久磁石24の前端部を検出したことを示す信号をコントローラ28および第1~第10アンプ30a~30jに送信する。たとえば、第1位置センサ34aは、永久磁石24の前端部に設けられたマーク等を検出することによって、永久磁石24の前端部を検出する。また、第1位置センサ34aは、永久磁石24の移動方向における後端部と、交差方向において対向した場合、永久磁石24の後端部を検出したことを示す信号をコントローラ28および第1~第10アンプ30a~30jに送信する。たとえば、第1位置センサ34aは、永久磁石24の後端部に設けられたマーク等を検出することによって、永久磁石24の後端部を検出する。第2~第20位置センサ34b~34tについても同様である。
【0039】
図2は、
図1Aのリニアモータシステム10の機能構成を示すブロック図である。
図2を参照して、
図1Aのリニアモータシステム10の機能構成について説明する。
【0040】
図2に示すように、リニアモータシステム10は、スケール検出装置35をさらに備える。スケール検出装置35は、可動子18に設けられたスケール(図示せず)を検出する装置である。スケール検出部35は、たとえば、エンコーダ等によって実現される。
【0041】
コントローラ28は、切替部36と、指令部38と、補償部40とを有する。
【0042】
切替部36は、位置検出装置15に接続されており、位置検出装置15からの情報に基づいて、1以上の給電対象コイルを選択し、第1~第10アンプ30a~30jの切替処理部56(後述)に給電対象であるか否かを判定する切替信号を送信する。具体的には、切替部36は、第1~第10コイル20a~20jのうちの1以上のコイルであって、交差方向から見たときの配列方向における当該1以上のコイルのそれぞれの両端部に亘る領域が、交差方向において永久磁石24と対向している1以上のコイルを、1以上の給電対象コイルとして選択する。言い換えると、切替部36は、第1~第10コイル20a~20jのうちの1以上のコイルであって、当該1以上のコイルの全部が、交差方向から見たときに永久磁石24と重なっている1以上のコイルを、1以上の給電対象コイルとして選択する。さらに、切替部36は、1以上の給電対象アンプの切替処理部56へ給電対象であると判定する切替信号を送信する。
【0043】
たとえば、切替部36は、第1~第10コイル20a~20jのそれぞれについて、配列方向における永久磁石24の進行方向の前方側の位置センサが永久磁石24の前端部を検出した場合、当該位置センサが配置されているコイルを給電対象コイルとして選択する。さらに、切替部36は、給電対象アンプの切替処理部56へ給電対象であると判定する切替信号を送信する。たとえば、
図1Aおよび
図1Bを参照して、永久磁石24の進行方向が第1コイル20a側から第10コイル20j側に向かう方向(X軸プラス方向)である場合、切替部36は、永久磁石24の進行方向の前方側の第8位置センサ34hが永久磁石24の前端部を検出した場合、第8位置センサ34hが配置されている第4コイル20dを給電対象コイルとする。さらに、切替部36は、第4アンプ30dの切替処理部56へ給電対象であると判定する切替信号を送信する。第1~第3コイル20a~20c、および第5~第10コイル20e~20jについても同様である。
【0044】
また、たとえば、切替部36は、第1~第10コイル20a~20jのそれぞれについて、配列方向における永久磁石24の進行方向の後方側の位置センサが永久磁石24の後端部を検出した場合、当該位置センサが配置されているコイルを給電対象コイルとして選択しない。さらに、切替部36は、当該コイルに対応するアンプの切替処理部56へ給電対象ではないと判定する切替信号を送信する。
【0045】
たとえば、
図1Aおよび
図1Bを参照して、永久磁石24の進行方向が第1コイル20a側から第10コイル20j側に向かう方向(X軸プラス方向)である場合、切替部36は、永久磁石24の進行方向の後方側の第3位置センサ34cが永久磁石24の後端部を検出した場合、第3位置センサ34cが配置されている第2コイル20bを給電対象コイルとしない。さらに、切替部36は、第2アンプ30bの切替処理部56へ給電対象ではないと判定する切替信号を送信する。第1コイル20a、および第3~第10コイル20c~20jについても同様である。
【0046】
図1Aおよび
図1Bに示す状態では、切替部36は、第2コイル20b、第3コイル20c、および第4コイル20dを給電対象コイルとして選択する。さらに、切替部36は、第2アンプ30b、第3アンプ30c、および第4アンプ30dの切替処理部56へ給電対象であると判定する切替信号を送信する。また、切替部36は、1以上の給電対象コイルに給電を行うこと等によって永久磁石24が移動すると、永久磁石24の位置に応じて1以上の給電対象コイルの切り替えを行う。
【0047】
指令部38は、第1~第10アンプ30a~30jに接続されており、第1~第10アンプ30a~30jのうち切替部36によって選択された1以上の給電対象コイルに対応する1以上の給電対象アンプに、速度指令または位置指令等の指令を送信する。たとえば、第1コイル20aが給電対象コイルの場合、給電対象コイルに対応するアンプは、第1アンプ30aであり、指令部38は、第1アンプ30aに指令を送信する。また、第2コイル20bが給電対象コイルの場合、給電対象コイルに対応するアンプは、第2アンプ30bであり、指令部38は、第2アンプ30bに指令を送信する。第3~第10アンプ30c~30jについても同様である。
図1に示す状態では、第2~第4アンプ30b~30dが給電対象アンプとなり、指令部38は、第2~第4アンプ30b~30dに指令を送信する。
【0048】
補償部40は、切替部36による1以上の給電対象コイルの切り替えの際に、当該切り替えの直後の1以上の給電対象アンプに対して補償を行う。具体的には、補償部40は、切替部36による1以上の給電対象コイルの切り替えの際に、当該切り替えの直前に1以上の給電対象コイルのそれぞれへの給電に用いられた偏差積算値を合算した値である合算後偏差積算値を、当該切り替えの直後の1以上の給電対象コイルの個数で除算することによって除算後偏差積算値を算出し、算出した除算後偏差積算値を、当該切り替えの直後の1以上の給電対象アンプのそれぞれに送信することによって、補償を行う。補償部40は、加算器41と、除算器42とを有する。
【0049】
加算器41は、第1~第10アンプ30a~30jに接続されており、切替部36による1以上の給電対象コイルの切り替えの際に、当該切り替えの直前に1以上の給電対象アンプのそれぞれによって算出された偏差積算値を取得し、取得した偏差積算値を合算することによって、当該切り替えの直前に1以上の給電対象コイルのそれぞれへの給電に用いられた偏差積算値の合算値である合算後偏差積算値を算出する。
【0050】
除算器42は、加算器41によって算出された合算後偏差積算値を、切替部36による1以上の給電対象コイルの切り替えの直後の1以上の給電対象コイルの個数で除算することによって除算後偏差積算値を算出する。除算器42は、算出した除算後偏差積算値を、当該切り替えの直後の1以上の給電対象アンプのそれぞれに送信する。
【0051】
第1アンプ30aは、速度算出部44と、偏差算出部46と、速度制御部48と、電流制御部50と、切替処理部56とを有する。
【0052】
速度算出部44は、スケール検出装置35に接続されており、スケール検出装置35からの情報等に基づいて永久磁石24の実速度を算出する。たとえば、速度算出部44は、スケール検出装置35が可動子18に設けられたスケール(図示せず)を読み取った値から、可動子18の移動距離を算出する。また、速度算出部44は、タイマー(図示せず)等から、可動子18が当該移動距離を移動するのにかかった移動時間を取得する。そして、速度算出部44は、当該移動距離および当該移動時間から永久磁石24の実速度を算出する。
【0053】
偏差算出部46は、指令部38に接続されており、指令部38から送信される速度指令または位置指令等の指令を受信する。また、偏差算出部46は、速度算出部44に接続されており、速度算出部44によって算出された永久磁石24の実速度を取得する。たとえば、偏差算出部46は、速度指令を受信した場合、速度指令で指令される指令速度と、永久磁石24の実速度との差分である速度偏差を算出する。また、偏差算出部46は、位置指令を受信した場合、位置指令に基づいて算出される指令速度と、永久磁石24の実速度との差分である速度偏差を算出する。位置指令は、たとえば、所定の時間の間に、可動子18を所定の位置まで移動させる旨の指令であり、当該所定の時間と当該所定の位置までの距離とに基づいて、指令速度を算出できる。
【0054】
速度制御部48は、加算器51と、スイッチ52と、加算器54とを有する。
【0055】
加算器51は、偏差算出部46によって算出された速度偏差を積算することによって、偏差積算値を算出する。加算器51は、速度偏差を、直前に算出した偏差積算値に加算することによって、新たに偏差積算値を算出する。算出された偏差積算値は、積分ゲイン53が乗算されて加算器54に入力されるとともに、コントローラ28の加算器41に送信され、加算器51に入力される。その後、加算器51は、新たに速度偏差が算出される度に、新たに算出された速度偏差を、直前に算出した偏差積算値に加算し、新たに偏差積算値を算出する。このようにして、加算器51は、速度偏差を積算することによって、偏差積算値を算出する。
【0056】
スイッチ52は、加算器51と加算器54とを接続する状態(
図2のD参照)と、補償部40と加算器54とを接続する状態(
図2のE参照)とに、切り替え可能に構成されている。スイッチ52は、通常、加算器51と加算器54とを接続する状態になっている。スイッチ52は、切替部36による1以上の給電対象コイルの切り替えの際に、加算器51と加算器54とを接続する状態から、補償部40と加算器54とを接続する状態に一瞬切り替えられる。たとえば、当該切り替えの直後の給電対象アンプが、指令部38からの指令を受信したときに、当該切り替えの直後の給電対象アンプのスイッチ52が、加算器51と加算器54とを接続する状態から、補償部40と加算器54とを接続する状態に一瞬切り替えられる。
【0057】
スイッチ52が、加算器51と加算器54とを接続する状態(
図2のD参照)では、加算器51によって算出された偏差積算値は、積分ゲイン53が乗算されて、加算器54に入力される。また、加算器51によって算出された偏差積算値は、コントローラ28の加算器41に送信されるとともに、加算器51に入力される。
【0058】
スイッチ52が、補償部40と加算器54とを接続する状態(
図2のE参照)では、補償部40が送信した除算後偏差積算値が、速度制御部48に入力される。具体的には、補償部40が送信した除算後偏差積算値は、積分ゲイン53が乗算されて、加算器54に入力される。また、補償部40が送信した除算後偏差積算値は、コントローラ28の加算器41に送信されるとともに、加算器51に入力される。加算器51は、除算後偏差積算値が入力されると、入力された除算後偏差積算値に、速度偏差を積算することによって、偏差積算値を算出する。
【0059】
加算器54は、偏差算出部46によって算出された速度偏差と、偏差積算値または除算後偏差積算値に積分ゲイン53を乗算することによって算出された値とを加算する。加算器54によって算出された値は、比例ゲイン55が乗算され、トルク指令としてトルクフィルタ(図示せず)を介して電流制御部50に入力される。このように、速度制御部48は、偏差積算値または除算後偏差積算値を用いてトルク指令を生成する。トルクフィルタを介することで、給電対象コイルの切り替えの際のショックを低減できる。
【0060】
切替処理部56は、切替部36から給電対象と判定する切替信号が送信された場合は、速度制御部48から出力されたトルク指令を電流制御部50に印加する。切替部36から給電対象ではないと判定する切替信号が送信された場合は、トルク指令0を電流制御部50に印加する。具体的には、切替処理部56は、スイッチ57を有しており、切替部36から給電対象であると判定する切替信号を受信した場合には、スイッチ57を速度制御部48と電流制御部50とを接続する状態(
図2のF参照)にし、速度制御部48から出力されたトルク指令を電流制御部50に印加する。一方、切替処理部56は、切替部36から給電対象ではないと判定する切替信号を受信した場合には、スイッチ57を速度制御部48と電流制御部50とを接続しない状態(
図2のG参照)にし、トルク指令0を電流制御部50に印加する。
【0061】
電流制御部50は、生成されたトルク指令に基づいて、給電対象コイルに給電を行う。たとえば、電流制御部50は、受信したトルク指令に基づいて電圧値を設定し、設定した電圧値に基づいて給電対象コイルに給電を行う。これによって、永久磁石24は、1以上の給電対象コイルに引っ張られ、または1以上の給電対象コイルに押し出され、配列方向に移動する。
【0062】
第2~第10アンプ30b~30jは、第1アンプ30aと同様の構成であるので、上述した第1アンプ30aの説明を参照することによって、第2~第10アンプ30b~30jの詳細な説明を省略する。
【0063】
たとえば、制御装置14は、除算後偏差積算値または偏差積算値等を用いて、PID(Proportional-Integral-Differential Controller)制御を行うことができる。
【0064】
次に、以上のように構成されたリニアモータシステム10の動作の一例について説明する。
【0065】
図3は、
図1Aのリニアモータシステム10の動作の一例を説明するための説明図であり、第1の状態を示す図である。
図4は、
図1Aのリニアモータシステム10の動作の一例を説明するための説明図であり、第2の状態を示す図である。
図5は、
図1Aのリニアモータシステム10の動作の一例を説明するための説明図であり、第3の状態を示す図である。
図6は、
図1Aのリニアモータシステム10の動作の一例を説明するための説明図であり、第4の状態を示す図である。
図3~
図6を参照して、リニアモータシステム10の動作の一例について説明する。
【0066】
図3に示す状態では、配列方向において第1コイル20aの両端部に配置された第1位置センサ34aおよび第2位置センサ34bの両方は、交差方向に永久磁石24と対向しており、永久磁石24を検出する。したがって、コントローラ28は、第1コイル20aを給電対象コイルとして選択する。さらに、コントローラ28は、第1アンプ30aの切替処理部56へ給電対象であると判定する切替信号を送信する。これに対して、配列方向において第2コイル20bの一端部に配置された第3位置センサ34cは、交差方向に永久磁石24と対向しており、永久磁石24を検出するが、配列方向において第2コイル20bの他端部に配置された第4位置センサ34dは、交差方向に永久磁石24と対向しておらず、永久磁石24を検出しない。したがって、コントローラ28は、第2コイル20bを給電対象コイルとして選択しない。さらに、コントローラ28は、第2アンプ30bの切替処理部56へ給電対象ではないと判定する切替信号を送信する。また、配列方向において第3コイル20cの両端部に配置された第5位置センサ34eおよび第6位置センサ34fの両方は、交差方向に永久磁石24と対向しておらず、永久磁石24を検出しない。したがって、コントローラ28は、第3コイル20cを給電対象コイルとして選択しない。さらに、コントローラ28は、第3アンプ30cの切替処理部56へ給電対象ではないと判定する切替信号を送信する。このように、
図3に示す状態では、コントローラ28は、第1コイル20aを給電対象コイルとして選択し、第1コイル20aに対応する第1アンプ30aが、給電対象アンプとなる。
【0067】
コントローラ28は、給電対象コイルを選択すると、当該給電対象コイルに対応する給電対象アンプに速度指令または位置指令等の指令を送信する。
図3に示す状態では、コントローラ28は、第1アンプ30aに指令を送信する。
【0068】
コントロ-ラ28から指令を受信した第1アンプ30aは、速度偏差を算出し、算出した速度偏差を用いて、給電対象コイルである第1コイル20aに給電を行う。
図7は、給電対象アンプの動作の一例を示すフロー図である。
図7をも参照して、
図3に示す状態における第1アンプ30aの動作について説明する。
【0069】
まず、第1アンプ30aは、指令に基づく永久磁石24の指令速度と、永久磁石24の実速度との差分である速度偏差を算出する(ステップS1)。
【0070】
次に、第1アンプ30aは、算出した速度偏差を、除算後偏差積算値に積算することによって、偏差積算値を算出する(ステップS2)。なお、
図3に示す状態では、給電対象コイルの切り替えがまだ行われていないので、除算後偏差積算値は0である。
【0071】
最後に、第1アンプ30aは、偏差積算値を用いて、給電対象コイルである第1コイル20aに給電を行う(ステップS3)。具体的には、第1アンプ30aは、直前に算出した偏差積算値を用いて、給電対象コイルである第1コイル20aに給電を行う。
【0072】
第1アンプ30aは、上述した動作を繰り返し行う。
【0073】
第1コイル20aに給電を行うことによって、永久磁石24は、第1コイル20aに引っ張られてまたは押し出されて配列方向に移動する(
図3の矢印C参照)。第1コイル20aに供給する電流の向きは、永久磁石24の磁極の位置に応じて設定する。永久磁石24の大きさおよび磁極の位置等の情報を、予め第1アンプ30a等に入力しておくことによって、第1アンプ30aは、永久磁石24の位置に応じて、永久磁石24の磁極の位置を判断し、電流の向きを設定する。
【0074】
次に、
図3および
図4を参照して、給電対象コイルを1個から2個に切り替える際の動作の一例について説明する。
図3から
図4に示す状態になる場合、永久磁石24の進行方向(矢印C参照)の前方側の第4位置センサ34dは、永久磁石24の前端部と交差方向に対向することによって、永久磁石24の前端部を検出する。したがって、コントローラ28は、第4位置センサ34dが配置されている第2コイル20bを給電対象コイルとする。したがって、
図4に示す状態では、第1アンプ30aおよび第2アンプ30bが給電対象アンプとなる。コントローラ28は、給電対象アンプである第1アンプ30aおよび第2アンプ30bの切替処理部56へ給電対象であると判定する切替信号を送信するとともに、指令を送信し、第1アンプ30aおよび第2アンプ30bに対して補償を行う。
【0075】
図8は、コントローラ28の動作の一例を示すフロー図である。
図8をも参照して、給電対象コイルの切り替えを行う際のコントローラ28の動作について説明する。
【0076】
まず、コントローラ28は、1以上の給電対象コイルの切り替えの直前に、1以上の給電対象アンプのそれぞれによって算出された偏差積算値を取得する(ステップS11)。
図3に示す状態から
図4に示す状態に切り替える場合、コントローラ28は、当該切り替えの直前に給電対象アンプである第1アンプ30aによって算出された偏差積算値を取得する。
【0077】
次に、コントローラ28は、取得した偏差積算値を合算することによって、当該切り替えの直前に給電に用いられていた偏差積算値の合算値である合算後偏差積算値を算出する(ステップS12)。
図3に示すように、当該切り替えの直前の給電対象アンプは第1アンプの1個であるので、ここでは、偏差積算値と合算後偏差積算値とは等しい。
【0078】
次に、コントローラ28は、算出した合算後偏差積算値を、当該切り替えの直後の給電対象コイルの個数で除算し、除算後偏差積算値を算出する(ステップS13)。
図4に示すように、当該切り替えの直後の給電対象コイルは第1コイル20aと第2コイル20bの2個であるので、コントローラ28は、合算後偏差積算値を2で除算することによって、除算後偏差積算値を算出する。
【0079】
最後に、コントローラ28は、除算後偏差積算値を、当該切り替えの直後の給電対象アンプに送信するとともに、当該給電対象アンプの切替処理部56へ給電対象であると判定する切替信号を送信する(ステップS14)。
図4に示すように、コントローラ28は、除算後偏差積算値を、当該切り替えの直後の給電対象アンプである第1アンプ30aと第2アンプ30bとに送信する。なお、当該切り替えの際に、スイッチ52は、補償部40と加算器54とを接続する状態に一瞬切り替えられ、コントローラ28から送信された除算後偏差積算値は、給電対象アンプである第1アンプ30aの加算器54(積分ゲイン53の乗算後に)および加算器51に入力されるとともに、給電対象アンプである第2アンプ30bの加算器54(積分ゲイン53の乗算後に)および加算器51に入力される。
【0080】
以上のように、コントローラ28は、切り替えの直前に給電対象アンプによる給電に用いられていた偏差積算値の合算値である合算後偏差積算値を、切り替えの直後の給電対象アンプの個数で除算して送信することによって、補償を行う。これによって、切り替えの直後の給電対象アンプである第1アンプ30aおよび第2アンプ30bは、切り替えの直前の偏差積算値を引き継ぐことができ、ともに除算後偏差積算値を用いて給電を行える。これによって、切り替えショックを低減できる。
【0081】
次に、
図4、
図5および
図7を参照して、給電対象アンプである第1アンプ30aおよび第2アンプ30bの動作の一例について説明する。
【0082】
まず、第1アンプ30aは、指令に基づく永久磁石24の指令速度と、永久磁石24の実速度との差分である速度偏差を算出する(ステップS1)。
【0083】
次に、第1アンプ30aは、算出した速度偏差を、除算後偏差積算値に積算することによって、偏差積算値を算出する(ステップS2)。
【0084】
最後に、第1アンプ30aは、偏差積算値を用いて、給電対象コイルである第1コイル20aに給電を行う(ステップS3)。具体的には、第1アンプ30aは、直前に算出した偏差積算値を用いて、給電対象コイルである第1コイル20aに給電を行う。
【0085】
第1アンプ30aは、上述した動作を繰り返し行う。
【0086】
第2アンプ30bも上述したような第1アンプ30aの動作と同様の動作を繰り返し行い、第2コイル20bに給電を行う。
【0087】
第1コイル20aに給電を行うことによって、永久磁石24は、第1コイル20aに引っ張られてまたは押し出されて配列方向に移動するとともに(
図3の矢印C参照)、第2コイル20bに給電を行うことによって、永久磁石24は、第2コイル20bに引っ張られてまたは押し出されて配列方向に移動する。第1コイル20aに供給する電流の向きおよび第2コイル20bに供給する電流の向きは、永久磁石24の磁極の位置に応じて設定する。
【0088】
次に、
図5、
図6および
図8を参照して、給電対象コイルを2個から3個に切り替える際の動作の一例について説明する。
図5から
図6に示す状態になる場合、永久磁石24の進行方向(矢印C参照)の前方側の第6位置センサ34fは、永久磁石24の前端部と交差方向に対向することによって、永久磁石24の前端部を検出する。したがって、コントローラ28は、第6位置センサ34fが配置されている第3コイル20cを給電対象コイルとする。したがって、
図6に示す状態では、第1アンプ30a、第2アンプ30b、および第3アンプ30cが給電対象アンプとなる。コントローラ28は、給電対象アンプである第1アンプ30a、第2アンプ30b、および第3アンプ30cの切替処理部56へ給電対象であると判定する切替信号を送信するとともに、指令を送信し、第1アンプ30a、第2アンプ30bおよび第3アンプ30cに対して補償を行う。
【0089】
図8をも参照して、給電対象コイルの切り替えを行う際のコントローラ28の動作について説明する。
【0090】
まず、コントローラ28は、1以上の給電対象コイルの切り替えの直前に、1以上の給電対象アンプのそれぞれによって算出された偏差積算値を取得する(ステップS11)。
図5に示す状態から
図6に示す状態に切り替える場合、コントローラ28は、当該切り替えの直前に給電対象アンプである第1アンプ30aによって算出された偏差積算値および第2アンプ30bによって算出された偏差積算値を取得する。
【0091】
次に、コントローラ28は、取得した偏差積算値を合算することによって、当該切り替えの直前に給電に用いられていた偏差積算値の合算値である合算後偏差積算値を算出する(ステップS12)。
図5に示すように、当該切り替えの直前の給電対象アンプは第1アンプ30aおよび第2アンプ30bであるので、コントローラ28は、第1アンプ30aから取得した偏差積算値と、第2アンプ30bから取得した偏差積算値とを合算することによって、当該切り替えの直前に給電に用いられていた偏差積算値の合算値である合算後偏差積算値を算出する。
【0092】
次に、コントローラ28は、算出した偏差積算値を、当該切り替えの直後の給電対象コイルの個数で除算し、除算後偏差積算値を算出する(ステップS13)。
図6に示すように、当該切り替えの直後の給電対象コイルは第1コイル20a、第2コイル20bおよび第3コイル20cの3個であるので、コントローラ28は、算出した合算後偏差積算値を3で除算することによって、除算後偏差積算値を算出する。
【0093】
最後に、コントローラ28は、除算後偏差積算値を、当該切り替えの直後の給電対象アンプに送信するとともに、当該給電対象アンプの切替処理部56へ給電対象であると判定する切替信号を送信する(ステップS14)。
図6に示すように、コントローラ28は、除算後偏差積算値を、当該切り替えの直後の給電対象アンプである第1アンプ30aと第2アンプ30bと第3アンプ30cとに送信する。なお、当該切り替えの際に、スイッチ52は、補償部40と加算器54とを接続する状態に一瞬切り替えられ、コントローラ28から送信された除算後偏差積算値は、給電対象アンプである第1アンプ30aの加算器54(積分ゲイン53の乗算後に)および加算器51に入力されるとともに、給電対象アンプである第2アンプ30bの加算器54(積分ゲイン53の乗算後に)および加算器51に入力され、給電対象アンプである第3アンプ30cの加算器54(積分ゲイン53の乗算後に)および加算器51に入力される。
【0094】
なお、可動子18がさらに移動し、配列方向における永久磁石24の進行方向の後方側の第1位置センサ34aが、永久磁石24の後端部と交差方向に対向し、永久磁石24の後端部を検出した場合、コントローラ28は、第1位置センサ34aが配置されている第1コイル20aを給電対象コイルとしない。
【0095】
以上のように、コントローラ28は、切り替えの直前に給電対象アンプによる給電に用いられていた偏差積算値の合算値である合算後偏差積算値を、切り替えの直後の給電対象コイルの個数で除算して送信することによって、補償を行う。これによって、切り替えの直後の給電対象アンプである第1アンプ30a、第2アンプ30bおよび第3アンプ30cは、切り替えの直前の偏差積算値を引き継ぐことができ、ともに除算後偏差積算値を用いて給電を行える。これによって、切り替えショックを低減できる。
【0096】
以上のようなリニアモータシステム10によれば、補償部40は、1以上の給電対象コイルの切り替えの際に、当該切り替えの直前に1以上の給電対象コイルのそれぞれへの給電に用いられた偏差積算値を合算した値である合算後偏差積算値を、当該切り替えの直後の1以上の給電対象コイルの個数で除算することによって除算後偏差積算値を算出する。そして、速度制御部48は、算出された除算後偏差積算値を用いてトルク指令を生成し、電流制御部50は、生成されたトルク指令に基づいて、当該切り替えの直後の1以上の給電対象コイルに給電を行う。したがって、当該切り替えの前後で、1以上の給電対象コイルの個数が変わったとしても、当該切り替えの直前に用いられていた偏差積算値を合算した値である合算後偏差積算値を略均等に分けて、当該切り替え直後の1以上の給電対象コイルのそれぞれに給電を行うことができる。これによって、当該切り替えの際に、可動子にかかる推力が急峻に変化することを抑制でき、1以上の給電対象コイルを切り替える際の切り替えショックを低減できる。
【0097】
また、補償部40は、当該切り替えの際に、除算後偏差積算値を当該切り替えの直後の1以上の給電対象アンプに送信し、当該切り替えの直後の1以上の給電対象アンプの速度制御部48は、除算後偏差積算値を用いてトルク指令を生成し、当該切り替えの直後の1以上の給電対象アンプの電流制御部50は、トルク指令に基づいて当該切り替えの直後の1以上の給電対象コイルに給電を行う。このように、当該切り替えの直後の1以上の給電対象アンプのそれぞれは、当該切り替えの直前に用いられていた偏差積算値を合算した値である合算後偏差積算値を略均等に分けた除算後偏差積算値を用いて給電を行うことができる。これによって、当該切り替えの際に、可動子にかかる推力が急峻に変化することを抑制でき、1以上の給電対象コイルを切り替える際の切り替えショックを低減できる。
【0098】
また、当該切り替えの直前の1以上の給電対象アンプのそれぞれは、速度偏差を除算後偏差積算値に積算することによって偏差積算値を算出し、補償部40は、当該切り替えの直前に1以上の給電対象アンプのそれぞれによって算出された偏差積算値を合算することによって、当該切り替えの直前に1以上の給電対象コイルのそれぞれへの給電に用いられた偏差積算値を合算した値である合算後偏差積算値を算出する。これによって、補償部40は、当該切り替えの直前に1以上の給電対象コイルのそれぞれへの給電に用いられた偏差積算値の合算値を容易に算出できる。
【0099】
また、制御装置14は、第1~第10アンプ30a~30jと通信可能であるコントローラ28をさらに有し、コントローラ28は、補償部40を有する。このように、コントローラ28は、第1~第10アンプ30a~30jと通信可能であるので、第1~第10アンプ30a~30jに対して容易に補償を行うことができる。
【0100】
また、第1~第10コイル20a~20jのそれぞれの配列方向の両端部に配置される第1~第20位置センサをさらに備え、切替部36は、第1~第10コイル20a~20jのそれぞれについて、配列方向における永久磁石24の進行方向の前方側の位置センサが永久磁石24の前端部を検出した場合、当該位置センサが配置されているコイルを給電対象コイルとして選択し、配列方向における永久磁石24の進行方向の後方側の位置センサが永久磁石24の後端部を検出した場合、当該位置センサが配置されているコイルを給電対象コイルとして選択しない。これによって、切替部36は、給電対象コイルを容易に切り替えることができる。
【0101】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について説明する。実施の形態2では、第1~第10アンプが、補償部40を有している点において、実施の形態1と主に異なっている。なお、以下の説明では、実施の形態1との相違点を中心に説明する。
【0102】
図9は、実施の形態2に係るリニアモータシステム10aの機能構成を示すブロック図である。
図9に示すように、実施の形態2に係るリニアモータシステム10aは、コントローラ28aと、第1~第3アンプ60a~60cとを有している。なお、図示は省略するが、リニアモータシステム10aは、第4~第10アンプも有している。
【0103】
コントローラ28aは、補償部40を有していない点において、コントローラ28と異なっている。
【0104】
第1アンプ60aは、補償部40を有している点において、第1アンプ30aと異なっている。第2アンプ60bおよび第3アンプ60cは、第1アンプ60aと同様の構成である。また、リニアモータシステム10aにおける第4~第10アンプも、第1アンプ60aと同様の構成である。リニアモータシステム10aにおいて、第1アンプ60a、第2アンプ60b、第3アンプ60c、および第4~第10アンプは相互に通信可能である。
【0105】
図10は、
図9のリニアモータシステム10aの動作の一例を説明するための説明図であり、第1の状態を示す図である。
図11は、
図9のリニアモータシステム10aの動作の一例を説明するための説明図であり、第2の状態を示す図である。
図12は、
図1のリニアモータシステム10aの動作の一例を説明するための説明図であり、第3の状態を示す図である。
図13は、
図1のリニアモータシステム10aの動作の一例を説明するための説明図であり、第4の状態を示す図である。
図10~
図13を参照して、リニアモータシステム10aの動作の一例について説明する。
【0106】
図10および
図11を参照して、給電対象コイルを1個から2個に切り替える際の動作の一例について説明する。
図10に示す状態では、第1アンプ60aが給電対象アンプとなり、
図11に示す状態では、第1アンプ60aおよび第2アンプ60bが給電対象アンプとなる。切り替えの直前の給電対象アンプである第1アンプ60aの補償部40は、当該切り替えの直後の給電対象アンプである第1アンプ60aおよび第2アンプ60bに対して補償を行う。具体的には、第1アンプ60aの補償部40は、
図3に示す状態から
図4に示す状態に切り替える際のコントローラ28の補償部40の動作と同様の動作を行うことによって、当該切り替えの直後の給電対象アンプである第1アンプ60aおよび第2アンプ60bに対して補償を行う。すなわち、当該切り替えの直前の第1アンプ60aの補償部40は、当該切り替えの際に、合算後偏差積算値を、当該切り替えの直後の1以上の給電対象コイルの個数で除算することによって除算後偏差積算値を算出し、除算後偏差積算値を当該切り替えの直後の給電対象アンプである第1アンプ60aおよび第2アンプ60bに送信する。
【0107】
次に、
図12および
図13を参照して、給電対象コイルを2個から3個に切り替える際の動作の一例について説明する。
図12に示す状態では、第1アンプ60aおよび第2アンプ60bが給電対象アンプとなり、
図13に示す状態では、第1アンプ60a、第2アンプ60bおよび第3アンプ60cが給電対象アンプとなる。切り替えの直前の給電対象アンプである第1アンプ60aの補償部40および第2アンプ60bの補償部40のいずれか一方は、当該切り替えの直後の給電対象アンプである第1アンプ60a、第2アンプ60bおよび第3アンプ60cに対して補償を行う。具体的には、第1アンプ60aの補償部40および第2アンプ60bの補償部40のいずれか一方は、
図5に示す状態から
図6に示す状態に切り替える際のコントローラ28の動作と同様の動作を行うことによって、当該切り替えの直後の給電対象アンプである第1アンプ60a、第2アンプ60bおよび第3アンプ60cに対して補償を行う。すなわち、当該切り替えの直前の第1アンプ60aの補償部40または第2アンプ60bの補償部40は、当該切り替えの際に、合算後偏差積算値を、当該切り替えの直後の1以上の給電対象コイルの個数で除算することによって除算後偏差積算値を算出し、除算後偏差積算値を当該切り替えの直後の給電対象アンプである第1アンプ60a、第2アンプ60bおよび第3アンプ60cに送信する。
図13では、第1アンプ60aの補償部40が、補償を行う場合について示している。
【0108】
なお、たとえば、1以上の給電対象コイルの切り替えの直前に給電対象アンプではなかったアンプが、当該切り替えの直後の1以上の給電対象アンプに対して、補償を行ってもよい。
【0109】
以上のようなリニアモータシステム10aによれば、第1~第3アンプ60a~60cおよび第4~第10アンプは、相互に通信可能であり、第1~第3アンプ60a~60cおよび第4~第10アンプのそれぞれは、補償部40を有し、切り替えの直前の1以上の給電対象アンプの補償部40は、合算後偏差積算値を、当該切り替えの直後の1以上の給電対象コイルの個数で除算することによって除算後偏差積算値を算出し、除算後偏差積算値を、当該切り替えの直後の1以上の給電対象アンプのそれぞれに送信する。このように、第1~第3アンプ60a~60cおよび第4~第10アンプは、相互に通信可能であるので、上位制御部を設けることなく、当該切り替えの直後の1以上の給電対象アンプに対して補償を行うことができる。
【0110】
(補足)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態1および実施の形態2について説明した。しかしながら、本開示による技術は、これらに限定されず、本開示の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更、置き換え、付加、省略等を行った実施の形態または変形例にも適用可能である。
【0111】
たとえば、上述した実施の形態において、第1~第10アンプが、速度算出部44、および偏差算出部46を有する場合について説明したが、これに限定されない。たとえば、コントローラが、速度算出部44、および偏差算出部46を有していてもよい。
【0112】
また、たとえば、上述した実施の形態において、リニアモータシステム10aが、コントローラ28aを備える場合について説明したが、これに限定されない。たとえば、リニアモータシステムは、コントローラを備えていなくてもよい。この場合、第1~第10アンプのそれぞれが、指令部および切替部を有していてもよい。
【0113】
なお、上述の説明では、切替部36は、複数のコイルのうちの1以上のコイルであって、配列方向における前記1以上のコイルのそれぞれの両端部に亘る領域の全部が、永久磁石24と対向する1以上のコイルを、給電の対象となる1以上の給電対象コイルとして選択する構成としていたが、これに限らない。例えば、
図1Aにおいて、交差方向から見たときに第2コイル20bの両端部に亘る領域の全部が永久磁石24と対向しているが、例えば、交差方向から見たときに、第2コイル20bが部分的に永久磁石24と対向していなくても、配列方向(X方向)における第2コイル20bの両端部が永久磁石24と対向していれば給電対象コイルとして選択させる構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本開示に係るリニアモータシステムは、搬送装置等に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0115】
10,10a リニアモータシステム
12 リニアモータ
14 制御装置
15 位置検出装置
16 固定子
18 可動子
20a 第1コイル
20b 第2コイル
20c 第3コイル
20d 第4コイル
20e 第5コイル
20f 第6コイル
20g 第7コイル
20h 第8コイル
20i 第9コイル
20j 第10コイル
22 基台
24 永久磁石
26 荷台
28,28a コントローラ
30a 第1アンプ
30b 第2アンプ
30c 第3アンプ
30d 第4アンプ
30e 第5アンプ
30f 第6アンプ
30g 第7アンプ
30h 第8アンプ
30i 第9アンプ
30j 第10アンプ
34a 第1位置センサ
34b 第2位置センサ
34c 第3位置センサ
34d 第4位置センサ
34e 第5位置センサ
34f 第6位置センサ
34g 第7位置センサ
34h 第8位置センサ
34i 第9位置センサ
34j 第10位置センサ
34k 第11位置センサ
34l 第12位置センサ
34m 第13位置センサ
34n 第14位置センサ
34o 第15位置センサ
34p 第16位置センサ
34q 第17位置センサ
34r 第18位置センサ
34s 第19位置センサ
34t 第20位置センサ
35 スケール検出装置
36 切替部
38 指令部
40 補償部
41 加算器
42 除算器
44 速度算出部
46 偏差算出部
48 速度制御部
50 電流制御部
51 加算器
52,57 スイッチ
53 積分ゲイン
54 加算器
55 比例ゲイン
56 切替処理部
60a 第1アンプ
60b 第2アンプ
60c 第3アンプ