(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】インクジェット印刷装置およびインクジェット印刷方法
(51)【国際特許分類】
B05C 11/10 20060101AFI20241004BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20241004BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20241004BHJP
B05C 13/02 20060101ALI20241004BHJP
B05D 1/26 20060101ALI20241004BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20241004BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20241004BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20241004BHJP
【FI】
B05C11/10
B41J2/01 203
B41J2/01 305
B41J2/01 451
B05C5/00 101
B05C13/02
B05D1/26 Z
B05D3/00 C
B05D3/00 D
H05B33/10
H05B33/14 A
(21)【出願番号】P 2020140124
(22)【出願日】2020-08-21
【審査請求日】2023-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 隆史
(72)【発明者】
【氏名】田中 彰一
【審査官】伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-023955(JP,A)
【文献】特開2012-206322(JP,A)
【文献】特開2010-120215(JP,A)
【文献】米国特許第04922268(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 5/00 -21/00
B05D 1/00 - 7/26
B41J 2/01,
2/165- 2/20,
2/21 - 2/215
H05B 33/00 -33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットヘッドと印刷対象物とを相対移動させながら、前記インクジェットヘッドからインクを吐出して前記印刷対象物に塗布するインクジェット印刷装置であって、
定盤と、
前記印刷対象物が載置されるワーク載置ステージと、
前記相対移動の方向と直交する印刷幅方向に並ぶように複数の前記インクジェットヘッドが設けられたヘッドユニットと、
前記ヘッドユニットと前記ワーク載置ステージとを相対移動させる相対移動部と、
一部が前記定盤に固定され、前記ヘッドユニットに対する前記ワーク載置ステージの相対位置を検出するリニアスケールと、
レーザビームを用いて、前記相対位置を検出するレーザ測長部と、
前記相対移動時に、前記リニアスケールの予め設定された指定位置毎に前記レーザ測長部の検出結果を取得して、前記指定位置毎の前記相対位置の補正値を算出する補正値生成部と、
前記補正値生成部で算出された前記補正値と、前記リニアスケールの検出結果と、に基づいて、前記複数のインクジェットヘッドからインクを吐出するタイミングを制御する吐出制御部と、
前記ヘッドユニットに対して前記印刷幅方向と直交する方向の一方側に設けられた第2ヘッドユニットと、を備え、
前記第2ヘッドユニットは、前記印刷幅方向に並ぶように設けられた複数の第2インクジェットヘッドを備える、インクジェット印刷装置。
【請求項2】
前記補正値生成部は、
前記相対移動を複数回繰り返して得た前記レーザ測長部の複数回の検出結果を蓄積するデータ蓄積部と、
前記複数回の検出結果の平均値に基づいて、前記指定位置毎の補正値を算出する演算部と、を備える、請求項1に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項3】
前記演算部は、前記データ蓄積部に蓄積された前記複数回の検出結果のうち、閾値を超えた検出結果を除く検出結果の平均値に基づいて、前記指定位置毎の補正値を算出する、請求項2に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項4】
前記相対移動部は、前記ヘッドユニットに対して前記ワーク載置ステージを移動させ、
前記リニアスケールは、前記ヘッドユニットに対向する部分が前記定盤に固定され、
前記レーザ測長部は、前記ワーク載置ステージが前記リニアスケールの固定位置に対向する位置に位置するときの検出結果をゼロにするリセット処理を行う、請求項1から3のいずれか一項に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項5】
前記レーザ測長部は、前記印刷幅方向に並んで設けられた複数のレーザ測長器を備え、
前記補正値生成部は、前記複数のレーザ測長器におけるそれぞれの前記相対位置の検出結果に基づいて、前記複数のインクジェットヘッドそれぞれに対する前記補正値を算出し、
前記吐出制御部は、前記複数のインクジェットヘッドそれぞれに対する前記補正値に基づいて、前記複数のインクジェットヘッドそれぞれからインクを吐出するタイミングを制御する、請求項1から4のいずれか一項に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項6】
前記インクジェットヘッドからインクを吐出するタイミングを表す吐出位置データを出力するヘッドコントローラと、
前記吐出位置データを補正する吐出位置データ補正部と、を更に備え、
前記レーザ測長部は、前記印刷幅方向に並んで設けられた複数のレーザ測長器を備え、
前記吐出位置データ補正部は、前記複数のレーザ測長器におけるそれぞれの前記相対位置の検出結果に基づいて、前記吐出位置データを補正し、
前記吐出制御部は、前記補正値生成部で算出された前記補正値と、前記リニアスケールの検出結果と、前記吐出位置データ補正部で補正された前記吐出位置データと、に基づいて、前記複数のインクジェットヘッドからインクを吐出するタイミングを制御する、請求項1から4のいずれか一項に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項7】
一部が前記定盤に固定され、前記第2ヘッドユニットに対する前記ワーク載置ステージの相対位置を検出する第2リニアスケールを更に備え、
前記第2リニアスケールは、前記第2ヘッドユニットに対向する部分が前記定盤に固定され、
前記補正値生成部は、前記ワーク載置ステージが前記第2リニアスケールの固定位置に対向する位置に位置するときの前記第2リニアスケールの検出結果と、前記レーザ測長部の検出結果と、に基づいて、前記ヘッドユニットと前記第2ヘッドユニットとの距離の変化を検出し、
前記吐出制御部は、前記補正値生成部で検出された前記ヘッドユニットと前記第2ヘッドユニットとの距離の変化に基づいて、前記複数の第2インクジェットヘッドからインクを吐出するタイミングを制御する、請求項
1に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項8】
インクジェットヘッドと印刷対象物とを相対移動させながら、前記インクジェットヘッドからインクを吐出して前記印刷対象物に塗布するインクジェット印刷装置であって、
定盤と、
前記印刷対象物が載置されるワーク載置ステージと、
前記相対移動の方向と直交する印刷幅方向に並ぶように複数の前記インクジェットヘッドが設けられたヘッドユニットと、
前記ヘッドユニットと前記ワーク載置ステージとを相対移動させる相対移動部と、
一部が前記定盤に固定され、前記ヘッドユニットに対する前記ワーク載置ステージの相対位置を検出するリニアスケールと、
レーザビームを用いて、前記相対位置を検出するレーザ測長部と、
前記相対移動時に、前記リニアスケールの予め設定された指定位置毎に前記レーザ測長部の検出結果を取得して、前記指定位置毎の前記相対位置の補正値を算出する補正値生成部と、
前記補正値生成部で算出された前記補正値と、前記リニアスケールの検出結果と、に基づいて、前記複数のインクジェットヘッドからインクを吐出するタイミングを制御する吐出制御部と、を備え、
前記レーザ測長部は、前記定盤の上に搭載され、
前記相対移動部は、前記ヘッドユニットに対して前記ワーク載置ステージを移動させ、
前記リニアスケールは、前記ヘッドユニットに対向する部分が前記定盤に固定され、
前記レーザ測長部は、前記ワーク載置ステージが前記リニアスケールの固定位置に対向する位置に位置するときの検出結果をゼロにするリセット処理を行う、
インクジェット印刷装置。
【請求項9】
インクジェットヘッドと印刷対象物とを相対移動させながら、前記インクジェットヘッドからインクを吐出して前記印刷対象物に塗布するインクジェット印刷装置であって、
定盤と、
前記印刷対象物が載置されるワーク載置ステージと、
前記相対移動の方向と直交する印刷幅方向に並ぶように複数の前記インクジェットヘッドが設けられたヘッドユニットと、
前記ヘッドユニットと前記ワーク載置ステージとを相対移動させる相対移動部と、
一部が前記定盤に固定され、前記ヘッドユニットに対する前記ワーク載置ステージの相対位置を検出するリニアスケールと、
レーザビームを用いて、前記相対位置を検出するレーザ測長部と、
前記相対移動時に、前記リニアスケールの予め設定された指定位置毎に前記レーザ測長部の検出結果を取得して、前記指定位置毎の前記相対位置の補正値を算出する補正値生成部と、
前記補正値生成部で算出された前記補正値と、前記リニアスケールの検出結果と、に基づいて、前記複数のインクジェットヘッドからインクを吐出するタイミングを制御する吐出制御部と、を備え、
前記レーザ測長部は、前記印刷幅方向に並んで設けられた複数のレーザ測長器を備え、
前記補正値生成部は、前記複数のレーザ測長器におけるそれぞれの前記相対位置の検出結果に基づいて、前記複数のインクジェットヘッドそれぞれに対する前記補正値を算出し、
前記吐出制御部は、前記複数のインクジェットヘッドそれぞれに対する前記補正値に基づいて、前記複数のインクジェットヘッドそれぞれからインクを吐出するタイミングを制御する、
インクジェット印刷装置。
【請求項10】
インクジェットヘッドと印刷対象物とを相対移動させながら、前記インクジェットヘッドからインクを吐出して前記印刷対象物に塗布するインクジェット印刷装置であって、
定盤と、
前記印刷対象物が載置されるワーク載置ステージと、
前記相対移動の方向と直交する印刷幅方向に並ぶように複数の前記インクジェットヘッドが設けられたヘッドユニットと、
前記ヘッドユニットと前記ワーク載置ステージとを相対移動させる相対移動部と、
一部が前記定盤に固定され、前記ヘッドユニットに対する前記ワーク載置ステージの相対位置を検出するリニアスケールと、
レーザビームを用いて、前記相対位置を検出するレーザ測長部と、
前記相対移動時に、前記リニアスケールの予め設定された指定位置毎に前記レーザ測長部の検出結果を取得して、前記指定位置毎の前記相対位置の補正値を算出する補正値生成部と、
前記補正値生成部で算出された前記補正値と、前記リニアスケールの検出結果と、に基づいて、前記複数のインクジェットヘッドからインクを吐出するタイミングを制御する吐出制御部と、を備え、
前記インクジェットヘッドからインクを吐出するタイミングを表す吐出位置データを出力するヘッドコントローラと、
前記吐出位置データを補正する吐出位置データ補正部と、を更に備え、
前記レーザ測長部は、前記印刷幅方向に並んで設けられた複数のレーザ測長器を備え、
前記吐出位置データ補正部は、前記複数のレーザ測長器におけるそれぞれの前記相対位置の検出結果に基づいて、前記吐出位置データを補正し、
前記補正値生成部は、前記補正値として前記リニアスケールのエンコーダパルスの補正パルス数を算出し、
前記吐出制御部は、前記補正値生成部で算出された前記補正値と、前記リニアスケールの検出結果と、前記吐出位置データ補正部で補正された前記吐出位置データと、に基づいて、前記複数のインクジェットヘッドからインクを吐出するタイミングを制御する、
インクジェット印刷装置。
【請求項11】
印刷対象物を載置するワーク載置ステージとインクジェットヘッドとの相対位置を検出するリニアスケールであって、一部が定盤に固定されたリニアスケールと、レーザビームを用いて前記相対位置を検出するレーザ測長部と、を用いて、前記インクジェットヘッドと前記印刷対象物とを相対移動させながら、前記インクジェットヘッドからインクを吐出して前記印刷対象物に塗布するインクジェット印刷方法であって、
前記相対移動時に、前記リニアスケールの予め設定された指定位置毎に前記レーザ測長部の検出結果を取得するステップと、
前記指定位置毎の前記相対位置の補正値を算出するステップと、
前記補正値と、前記リニアスケールの検出結果と、に基づいて、前記インクジェットヘッドからインクを吐出するタイミングを制御するステップと、を実行
し、
複数の前記インクジェットヘッドは、前記相対移動の方向と直交する印刷幅方向に並ぶように設けられており、
前記レーザ測長部は、前記印刷幅方向に並んで設けられた複数のレーザ測長器を備え、
前記補正値を算出するステップは、前記複数のレーザ測長器におけるそれぞれの前記相対位置の検出結果に基づいて、前記複数のインクジェットヘッドそれぞれに対する前記補正値を算出し、
前記インクを吐出するタイミングを制御するステップは、前記複数のインクジェットヘッドそれぞれに対する前記補正値に基づいて、前記複数のインクジェットヘッドそれぞれからインクを吐出するタイミングを制御する、
インクジェット印刷方法。
【請求項12】
前記補正値を算出するステップは、複数回の前記相対移動時における前記指定位置毎の前記レーザ測長部の検出結果の平均値に基づいて、前記指定位置毎の前記相対位置の補正値を算出する、請求項
11に記載のインクジェット印刷方法。
【請求項13】
前記補正値を算出するステップは、複数回の前記相対移動時における前記指定位置毎の前記レーザ測長部の検出結果のうち、閾値を超えた検出結果を除く検出結果の平均値に基づいて、前記指定位置毎の補正値を算出する、請求項
12に記載のインクジェット印刷方法。
【請求項14】
前記リニアスケールは、前記インクジェットヘッドに対向する部分が前記定盤に固定されており、
前記ワーク載置ステージは、前記インクジェットヘッドに対して移動するように構成され、
前記ワーク載置ステージが前記リニアスケールの固定位置に対向する位置に位置するときの前記レーザ測長部の検出結果をゼロにするステップを、前記レーザ測長部の検出結果を取得するステップの前に実行する、請求項
11から
13のいずれか一項に記載のインクジェット印刷方法。
【請求項15】
印刷対象物を載置するワーク載置ステージとインクジェットヘッドとの相対位置を検出するリニアスケールであって、一部が定盤に固定されたリニアスケールと、レーザビームを用いて前記相対位置を検出するレーザ測長部であって、前記定盤の上に搭載されたレーザ測長部と、を用いて、前記インクジェットヘッドと前記印刷対象物とを相対移動させながら、前記インクジェットヘッドからインクを吐出して前記印刷対象物に塗布するインクジェット印刷方法であって、
前記相対移動時に、前記リニアスケールの予め設定された指定位置毎に前記レーザ測長部の検出結果を取得するステップと、
前記指定位置毎の前記相対位置の補正値を算出するステップと、
前記補正値と、前記リニアスケールの検出結果と、に基づいて、前記インクジェットヘッドからインクを吐出するタイミングを制御するステップと、を実行し、
前記リニアスケールは、前記インクジェットヘッドに対向する部分が前記定盤に固定されており、
前記ワーク載置ステージは、前記インクジェットヘッドに対して移動するように構成され、
前記ワーク載置ステージが前記リニアスケールの固定位置に対向する位置に位置するときの前記レーザ測長部の検出結果をゼロにするステップを、前記レーザ測長部の検出結果を取得するステップの前に実行する、
インクジェット印刷方法。
【請求項16】
印刷対象物を載置するワーク載置ステージとインクジェットヘッドとの相対位置を検出するリニアスケールであって、一部が定盤に固定されたリニアスケールと、レーザビームを用いて前記相対位置を検出するレーザ測長部であって、前記定盤の上に搭載されたレーザ測長部と、を用いて、前記インクジェットヘッドと前記印刷対象物とを相対移動させながら、前記インクジェットヘッドからインクを吐出して前記印刷対象物に塗布するインクジェット印刷方法であって、
前記相対移動時に、前記リニアスケールの予め設定された指定位置毎に前記レーザ測長部の検出結果を取得するステップと、
前記指定位置毎の前記相対位置の補正値を算出するステップと、
前記補正値と、前記リニアスケールの検出結果と、に基づいて、前記インクジェットヘッドからインクを吐出するタイミングを制御するステップと、を実行し、
前記レーザ測長部は、前記相対移動の方向と直交する印刷幅方向に並んで設けられた複数のレーザ測長器を備え、
前記複数のレーザ測長器におけるそれぞれの前記相対位置の検出結果に基づいて、前記インクジェットヘッドからインクを吐出するタイミングを表す吐出位置データを補正するステップを、更に実行し、
前記補正値を算出するステップは、前記補正値として前記リニアスケールのエンコーダパルスの補正パルス数を算出し、
前記インクを吐出するタイミングを制御するステップは、前記補正値と、前記リニアスケールの検出結果と、前記補正された前記吐出位置データと、に基づいて、前記インクジェットヘッドからインクを吐出するタイミングを制御する、
インクジェット印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、インクジェット印刷装置およびインクジェット印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット印刷装置を用いて表示デバイスを製造する方法が注目されている。インクジェット印刷装置は、液滴を吐出する複数のノズルを有し、印刷対象物とノズルの位置を相対移動させ、ノズルと印刷対象物の塗布目標部との位置関係を制御しながらノズルから液滴を吐出することで、印刷対象物の塗布目標部に液滴を塗布するものである。印刷対象物としては、表示デバイスに代表されるように、印刷対象物の塗布目標部が一定のピッチで配列されているものがある。
【0003】
表示デバイスの製造には、生産性向上を目的としたガラス基板サイズの大型化が進む一方、表示デバイスの高精細化が進み、印刷対象物の塗布目標部への液滴の吐出位置の合わせ込み精度の要求が高まっている。その要求に対して、特許文献1には、印刷対象のワークを載置した移動台(ステージ)の位置を検出するリニアスケールのピッチ誤差を補正して、塗布する方法が開示されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
特許文献1の液滴吐出装置は、リニアスケールの誤差を、液滴吐出装置とは別の計測部によって計測する。液滴吐出装置は、リニアスケールの誤差の計測結果に基づきエンコーダパルスの補正を行い、液滴を吐出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、近年表示パネルの高精細化により、印刷精度を要求される場合も多くなってきている。更に、表示パネルの製造コストを抑えるために、高い稼働率をも求められるようになってきている。そんな中、稼働中におけるワーク移動機構の機械精度の経時変化さえも、問題になってきている。
【0007】
本開示は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、稼働率を下げることなく、高精度の印刷を実現するインクジェット印刷装置およびインクジェット印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のインクジェット印刷装置は、インクジェットヘッドと印刷対象物とを相対移動させながら、前記インクジェットヘッドからインクを吐出して前記印刷対象物に塗布するインクジェット印刷装置であって、定盤と、前記印刷対象物が載置されるワーク載置ステージと、前記相対移動の方向と直交する印刷幅方向に並ぶように複数の前記インクジェットヘッドが設けられたヘッドユニットと、前記ヘッドユニットと前記ワーク載置ステージとを相対移動させる相対移動部と、一部が前記定盤に固定され、前記ヘッドユニットに対する前記ワーク載置ステージの相対位置を検出するリニアスケールと、レーザビームを用いて、前記相対位置を検出するレーザ測長部と、前記相対移動時に、前記リニアスケールの予め設定された指定位置毎に前記レーザ測長部の検出結果を取得して、前記指定位置毎の前記相対位置の補正値を算出する補正値生成部と、前記補正値生成部で算出された前記補正値と、前記リニアスケールの検出結果と、に基づいて、前記複数のインクジェットヘッドからインクを吐出するタイミングを制御する吐出制御部と、前記ヘッドユニットに対して前記印刷幅方向と直交する方向の一方側に設けられた第2ヘッドユニットと、を備え、前記第2ヘッドユニットは、前記印刷幅方向に並ぶように設けられた複数の第2インクジェットヘッドを備える。
また、本開示のインクジェット印刷装置は、インクジェットヘッドと印刷対象物とを相対移動させながら、前記インクジェットヘッドからインクを吐出して前記印刷対象物に塗布するインクジェット印刷装置であって、定盤と、前記印刷対象物が載置されるワーク載置ステージと、前記相対移動の方向と直交する印刷幅方向に並ぶように複数の前記インクジェットヘッドが設けられたヘッドユニットと、前記ヘッドユニットと前記ワーク載置ステージとを相対移動させる相対移動部と、一部が前記定盤に固定され、前記ヘッドユニットに対する前記ワーク載置ステージの相対位置を検出するリニアスケールと、レーザビームを用いて、前記相対位置を検出するレーザ測長部と、前記相対移動時に、前記リニアスケールの予め設定された指定位置毎に前記レーザ測長部の検出結果を取得して、前記指定位置毎の前記相対位置の補正値を算出する補正値生成部と、前記補正値生成部で算出された前記補正値と、前記リニアスケールの検出結果と、に基づいて、前記複数のインクジェットヘッドからインクを吐出するタイミングを制御する吐出制御部と、を備え、前記レーザ測長部は、前記定盤の上に搭載され、前記相対移動部は、前記ヘッドユニットに対して前記ワーク載置ステージを移動させ、前記リニアスケールは、前記ヘッドユニットに対向する部分が前記定盤に固定され、前記レーザ測長部は、前記ワーク載置ステージが前記リニアスケールの固定位置に対向する位置に位置するときの検出結果をゼロにするリセット処理を行う。
また、本開示のインクジェット印刷装置は、インクジェットヘッドと印刷対象物とを相対移動させながら、前記インクジェットヘッドからインクを吐出して前記印刷対象物に塗布するインクジェット印刷装置であって、定盤と、前記印刷対象物が載置されるワーク載置ステージと、前記相対移動の方向と直交する印刷幅方向に並ぶように複数の前記インクジェットヘッドが設けられたヘッドユニットと、前記ヘッドユニットと前記ワーク載置ステージとを相対移動させる相対移動部と、一部が前記定盤に固定され、前記ヘッドユニットに対する前記ワーク載置ステージの相対位置を検出するリニアスケールと、レーザビームを用いて、前記相対位置を検出するレーザ測長部と、前記相対移動時に、前記リニアスケールの予め設定された指定位置毎に前記レーザ測長部の検出結果を取得して、前記指定位置毎の前記相対位置の補正値を算出する補正値生成部と、前記補正値生成部で算出された前記補正値と、前記リニアスケールの検出結果と、に基づいて、前記複数のインクジェットヘッドからインクを吐出するタイミングを制御する吐出制御部と、を備え、前記レーザ測長部は、前記印刷幅方向に並んで設けられた複数のレーザ測長器を備え、前記補正値生成部は、前記複数のレーザ測長器におけるそれぞれの前記相対位置の検出結果に基づいて、前記複数のインクジェットヘッドそれぞれに対する前記補正値を算出し、前記吐出制御部は、前記複数のインクジェットヘッドそれぞれに対する前記補正値に基づいて、前記複数のインクジェットヘッドそれぞれからインクを吐出するタイミングを制御する。
また、本開示のインクジェット印刷装置は、インクジェットヘッドと印刷対象物とを相対移動させながら、前記インクジェットヘッドからインクを吐出して前記印刷対象物に塗布するインクジェット印刷装置であって、定盤と、前記印刷対象物が載置されるワーク載置ステージと、前記相対移動の方向と直交する印刷幅方向に並ぶように複数の前記インクジェットヘッドが設けられたヘッドユニットと、前記ヘッドユニットと前記ワーク載置ステージとを相対移動させる相対移動部と、一部が前記定盤に固定され、前記ヘッドユニットに対する前記ワーク載置ステージの相対位置を検出するリニアスケールと、レーザビームを用いて、前記相対位置を検出するレーザ測長部と、前記相対移動時に、前記リニアスケールの予め設定された指定位置毎に前記レーザ測長部の検出結果を取得して、前記指定位置毎の前記相対位置の補正値を算出する補正値生成部と、前記補正値生成部で算出された前記補正値と、前記リニアスケールの検出結果と、に基づいて、前記複数のインクジェットヘッドからインクを吐出するタイミングを制御する吐出制御部と、を備え、前記インクジェットヘッドからインクを吐出するタイミングを表す吐出位置データを出力するヘッドコントローラと、前記吐出位置データを補正する吐出位置データ補正部と、を更に備え、前記レーザ測長部は、前記印刷幅方向に並んで設けられた複数のレーザ測長器を備え、前記吐出位置データ補正部は、前記複数のレーザ測長器におけるそれぞれの前記相対位置の検出結果に基づいて、前記吐出位置データを補正し、前記補正値生成部は、前記補正値として前記リニアスケールのエンコーダパルスの補正パルス数を算出し、前記吐出制御部は、前記補正値生成部で算出された前記補正値と、前記リニアスケールの検出結果と、前記吐出位置データ補正部で補正された前記吐出位置データと、に基づいて、前記複数のインクジェットヘッドからインクを吐出するタイミングを制御する。
【0009】
本開示のインクジェット印刷方法は、印刷対象物を載置するワーク載置ステージとインクジェットヘッドとの相対位置を検出するリニアスケールであって、一部が定盤に固定されたリニアスケールと、レーザビームを用いて前記相対位置を検出するレーザ測長部と、を用いて、前記インクジェットヘッドと前記印刷対象物とを相対移動させながら、前記インクジェットヘッドからインクを吐出して前記印刷対象物に塗布するインクジェット印刷方法であって、前記相対移動時に、前記リニアスケールの予め設定された指定位置毎に前記レーザ測長部の検出結果を取得するステップと、前記指定位置毎の前記相対位置の補正値を算出するステップと、前記補正値と、前記リニアスケールの検出結果と、に基づいて、前記インクジェットヘッドからインクを吐出するタイミングを制御するステップと、を実行し、複数の前記インクジェットヘッドは、前記相対移動の方向と直交する印刷幅方向に並ぶように設けられており、前記レーザ測長部は、前記印刷幅方向に並んで設けられた複数のレーザ測長器を備え、前記補正値を算出するステップは、前記複数のレーザ測長器におけるそれぞれの前記相対位置の検出結果に基づいて、前記複数のインクジェットヘッドそれぞれに対する前記補正値を算出し、前記インクを吐出するタイミングを制御するステップは、前記複数のインクジェットヘッドそれぞれに対する前記補正値に基づいて、前記複数のインクジェットヘッドそれぞれからインクを吐出するタイミングを制御する。
また、本開示のインクジェット印刷方法は、印刷対象物を載置するワーク載置ステージとインクジェットヘッドとの相対位置を検出するリニアスケールであって、一部が定盤に固定されたリニアスケールと、レーザビームを用いて前記相対位置を検出するレーザ測長部であって、前記定盤の上に搭載されたレーザ測長部と、を用いて、前記インクジェットヘッドと前記印刷対象物とを相対移動させながら、前記インクジェットヘッドからインクを吐出して前記印刷対象物に塗布するインクジェット印刷方法であって、前記相対移動時に、前記リニアスケールの予め設定された指定位置毎に前記レーザ測長部の検出結果を取得するステップと、前記指定位置毎の前記相対位置の補正値を算出するステップと、前記補正値と、前記リニアスケールの検出結果と、に基づいて、前記インクジェットヘッドからインクを吐出するタイミングを制御するステップと、を実行し、前記リニアスケールは、前記インクジェットヘッドに対向する部分が前記定盤に固定されており、前記ワーク載置ステージは、前記インクジェットヘッドに対して移動するように構成され、前記ワーク載置ステージが前記リニアスケールの固定位置に対向する位置に位置するときの前記レーザ測長部の検出結果をゼロにするステップを、前記レーザ測長部の検出結果を取得するステップの前に実行する。
また、本開示のインクジェット印刷方法は、印刷対象物を載置するワーク載置ステージとインクジェットヘッドとの相対位置を検出するリニアスケールであって、一部が定盤に固定されたリニアスケールと、レーザビームを用いて前記相対位置を検出するレーザ測長部であって、前記定盤の上に搭載されたレーザ測長部と、を用いて、前記インクジェットヘッドと前記印刷対象物とを相対移動させながら、前記インクジェットヘッドからインクを吐出して前記印刷対象物に塗布するインクジェット印刷方法であって、前記相対移動時に、前記リニアスケールの予め設定された指定位置毎に前記レーザ測長部の検出結果を取得するステップと、前記指定位置毎の前記相対位置の補正値を算出するステップと、前記補正値と、前記リニアスケールの検出結果と、に基づいて、前記インクジェットヘッドからインクを吐出するタイミングを制御するステップと、を実行し、前記レーザ測長部は、前記相対移動の方向と直交する印刷幅方向に並んで設けられた複数のレーザ測長器を備え、前記複数のレーザ測長器におけるそれぞれの前記相対位置の検出結果に基づいて、前記インクジェットヘッドからインクを吐出するタイミングを表す吐出位置データを補正するステップを、更に実行し、前記補正値を算出するステップは、前記補正値として前記リニアスケールのエンコーダパルスの補正パルス数を算出し、前記インクを吐出するタイミングを制御するステップは、前記補正値と、前記リニアスケールの検出結果と、前記補正された前記吐出位置データと、に基づいて、前記インクジェットヘッドからインクを吐出するタイミングを制御する。
【0010】
本開示のインクジェット印刷装置およびインクジェット印刷方法によれば、稼働率を下げることなく、高精度の印刷を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の実施の形態1のインクジェット印刷装置の概略平面図
【
図2】本開示の実施の形態1のインクジェット印刷装置の
図1のJ-J断面を示す図
【
図3】本開示の実施の形態1のインクジェット印刷装置を
図1のK-K方向から見た正面図
【
図4】本開示の実施の形態1のインクジェット印刷装置の制御系のブロック図
【
図5】本開示の実施の形態1のインクジェット印刷装置の補正値生成部の説明図
【
図6】本開示の実施の形態1のディスプレイパネルの概略平面図
【
図7】本開示の実施の形態1のインクジェット印刷装置の動作フローを示す図
【
図8】本開示の実施の形態1のインクジェット印刷装置のワーク移動機構のリニアスケールとレーザ測長器の関係を示す概念図
【
図9】本開示の実施の形態1のインクジェット印刷装置のリニアスケールの位置ズレ量とレーザ測長値との関係を示す概念図
【
図10】本開示の実施の形態1の1次元吐出タイミング補正の有無による印刷結果の違いを説明する図であり、(A)は1次元吐出タイミング補正を行わない場合の印刷結果を示す図、(B)は1次元吐出タイミング補正を行った場合の印刷結果を示す図
【
図11】本開示の実施の形態1のリニアスケールの原点位置でレーザ測長制御部の原点リセットをしなかった場合の熱膨張影響を説明する図であり、(A)、(B)、(C)は、ディスプレイパネルの赤色画素の印刷走査方向の中央に液滴を塗布するように調整した状態を表した図、(D)、(E)、(F)は、装置周辺の温度が上昇してリニアスケールのスケール本体がスケール固定部材の位置を中心に左右に熱膨張して定盤も熱膨張した状態を示す図
【
図12】本開示の実施の形態1のリニアスケールの原点位置でのレーザ測長制御部の原点リセットの有無による印刷結果の違いを説明する図であり、(A)は原点リセットを行わない場合の印刷結果を示す図、(B)は原点リセットを行った場合の印刷結果を示す図
【
図13】本開示の実施の形態1のレーザ測長器で測定したリニアスケールの位置ズレ量を示す図
【
図14】本開示の実施の形態1の1次元吐出タイミング補正せずに吐出位置データを倍率補正した場合の液滴の着弾位置のズレ量を示す図
【
図15】本開示の実施の形態1の1次元吐出タイミング補正の補正量を示す図
【
図16】本開示の実施の形態1の1次元吐出タイミング補正の補正パルス数を示す図
【
図17】本開示の実施の形態1の1次元吐出タイミング補正の補正後の液滴の着弾位置のズレ量を示す図
【
図18】本開示の実施の形態2のインクジェット印刷装置の概略平面図
【
図19】本開示の実施の形態2のインクジェット印刷装置の制御系のブロック図
【
図20】本開示の実施の形態2および実施の形態3のインクジェット印刷装置のリニアスケールの位置ズレとレーザ測長値との関係を示す図
【
図21】本開示の実施の形態2のインクジェット印刷装置の吐出位置データおよび印刷結果を示す図であり、(A)は吐出位置データを示す図、(B)は吐出位置データを使って1次元吐出タイミング補正を行った場合の印刷結果を示す図、(C)は吐出位置データを使って1次元吐出タイミング補正および2次元吐出タイミング補正を行った場合の印刷結果を示す図
【
図22】本開示の実施の形態2の2次元吐出タイミング補正の補正量を示す図
【
図23】本開示の実施の形態2の2次元吐出タイミング補正の補正パルス数を示す図であり、(A)はY=-1000mm位置のインクジェットヘッドに対する補正パルス数を示し、(B)はY=+1000mm位置のインクジェットヘッドに対する補正パルス数を示す図
【
図24】本開示の実施の形態2の2次元吐出タイミング補正後の液滴の着弾位置ズレ量を示す図
【
図25】本開示の実施の形態3のインクジェット印刷装置の制御系のブロック図
【
図26】本開示の実施の形態3のインクジェット印刷装置の動作フローを示す図
【
図27】本開示の実施の形態3のインクジェット印刷装置のヨーイング補正吐出位置データおよび印刷結果を示す図であり、(A)はヨーイング補正吐出位置データを示す図、(B)はヨーイング補正吐出位置データを使ってソフトヨーイング補正付き1次元吐出タイミング補正を行った場合の印刷結果を示す図
【
図28】本開示の実施の形態4のインクジェット印刷装置の概略平面図
【
図29】本開示の実施の形態4のインクジェット印刷装置の
図28のJ-J断面を示す図
【
図30】本開示の実施の形態4のインクジェット印刷装置の制御系のブロック図
【
図31】本開示の実施の形態4のインクジェット印刷装置の動作フローを示す図
【
図32】本開示の実施の形態4のインクジェット印刷装置のワーク載置ステージのリニアスケールとレーザ測長器の関係を示す概念図
【
図33】本開示の実施の形態4のインクジェット印刷装置の熱膨張影響を説明する図であり、(A)はインクジェット印刷装置の周辺温度がt1の時に、インクジェットヘッド、第2インクジェットヘッド、第3インクジェットヘッドから吐出された液滴が、印刷対象のディスプレイパネルの各色の画素の中央に塗布できるように印刷位置を調整した時の図であり、(B)は周辺温度がt1より高いt2になった時の状態を示す図
【
図34】本開示の実施の形態4のインクジェット印刷装置の補正値生成部の説明図
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施の形態1]
以下、本開示の実施の形態1について説明する。
【0013】
<構成>
まず、本開示の実施の形態1のインクジェット印刷装置の構成について、
図1~
図6を参照して説明する。
図1は、インクジェット印刷装置の概略平面図である。
図2は、インクジェット印刷装置の
図1のJ-J断面を示す図である。
図3は、インクジェット印刷装置を
図1のK-K方向から見た正面図である。
図4は、インクジェット印刷装置の制御系のブロック図である。
図5は、インクジェット印刷装置の補正値生成部の説明図である。
図6は、ディスプレイパネルの概略平面図である。なお、
図1~3,6,8~12,18,20~21,27~29,32~33は、各構成を右手系の直交座標系(XYZ座標系)で示している。また、以下において、上記XYZ座標系で方向を表す場合がある。
【0014】
図1~
図3に示すように、インクジェット印刷装置1は、架台11と、定盤12と、ワーク載置ステージ20と、印刷部30と、ワーク移動機構40と、リニアスケール50と、レーザ測長部60と、を備える。
【0015】
定盤12は、架台11の上に設置されている。
【0016】
ワーク載置ステージ20は、印刷対象物であるディスプレイパネル7を吸着固定できるように構成されている。
【0017】
印刷部30は、ヘッドガントリー31と、ヘッドユニット32と、を備える。
【0018】
ヘッドガントリー31は、定盤12の上において、ワーク載置ステージ20の移動経路を跨ぐように設置されている。ヘッドガントリー31には、不図示のアライメントカメラシステムが4台設置されている。アライメントカメラシステムは、塗布対象のディスプレイパネル7のXY方向位置およびθ回転位置を計測するために、ディスプレイパネル7上の4隅に形成されたアライメントマーク7m(
図6参照)を画像認識する。
【0019】
ヘッドユニット32は、200個のインクジェットヘッド33を備える。200個のインクジェットヘッド33は、ヘッドガントリー31下面のラインヘッドベース31Aに、印刷幅方向(Y方向)に並んで配置されている。各インクジェットヘッド33には、各インクジェットヘッド33にインクを供給する不図示のインク供給部が接続されている。
【0020】
ワーク移動機構40は、相対移動部の一例である。ワーク移動機構40は、定盤12の上に設置されている。ワーク移動機構40は、一対のガイドレール41と、X軸スライダー42と、摺動機構43と、リニアモータ44と、リニアモータドライバ45(
図4参照)と、Yθ駆動機構46と、を備える。
【0021】
一対のガイドレール41は、定盤12の上において、X方向に延びるように設置されている。
【0022】
X軸スライダー42は、摺動機構43によって、ガイドレール41に沿って、X方向に摺動可能に支持されている。
【0023】
摺動機構43は、静圧軸受けによって構成されている。具体的には、摺動機構43は、
図3に示すように、4個の浮上用静圧軸受け431と、4個の側面静圧軸受け432と、を備える。4個の浮上用静圧軸受け431は、X軸スライダー42の下面において、X方向およびY方向にそれぞれ2個ずつ並ぶように取り付けられている。2個の浮上用静圧軸受け431は、一方(
図3の右側)のガイドレール41の上面に対向するように配置され、残りの2個の浮上用静圧軸受け431は、他方(
図3の左側)のガイドレール41の上面に対向するように配置されている。4個の側面静圧軸受け432は、X軸スライダー42の下面において、一方のガイドレール41に対向する2個の浮上用静圧軸受け431をそれぞれ挟んでY方向に並んで設けられた側面静圧軸受け用ブラケット433を介して、互いに対向するように取り付けられている。つまり、それぞれ2個ずつの側面静圧軸受け432で、一方のガイドレール41を挟むように構成されている。このような構成によって、X軸スライダー42の高精度な送りを実現することができる。
【0024】
リニアモータ44は、X軸スライダー42をX方向に移動させる。リニアモータ44は、リニアモータ固定バー443を介して定盤12の上に設置された固定子441と、X軸スライダー42の下面に取り付けられた可動子442と、を備える。リニアモータ44は、リニアモータドライバ45によって駆動する。
【0025】
Yθ駆動機構46は、X軸スライダー42の上に設置されている。Yθ駆動機構46の上には、ワーク載置ステージ20が設置されている。Yθ駆動機構46は、不図示の制御部を備える。Yθ駆動機構46は、ワーク載置ステージ20を、X軸スライダー42に対して、目標のY方向位置およびXY面の法線を軸とするθ回転位置に、正確に位置決めできるように構成されている。
【0026】
リニアスケール50は、X軸スライダー42の位置、つまりワーク載置ステージ20のX方向の位置を検出するように構成されている。リニアスケール50は、スケール本体51と、リニアスケール読取りヘッド52と、を備える。
【0027】
スケール本体51は、リニアモータ固定バー443に取り付けられている。スケール本体51は、ヘッドユニット32の下方の位置のみにおいて、スケール固定部材53を介してリニアモータ固定バー443に強固に固定されている。スケール本体51におけるスケール固定部材53で固定された位置は、リニアスケール50の原点に設定されている。スケール本体51におけるスケール固定部材53に固定されていない部分は、リニアモータ固定バー443に対して、相対移動できるようになっている。リニアスケール読取りヘッド52は、読取りヘッドブラケット54を介して、X軸スライダー42に取り付けられている。
【0028】
レーザ測長部60は、定盤12の上に搭載されている。レーザ測長部60は、
図1に示すように、
図1のK-K方向から見たX軸スライダー42の左右(Y方向)の位置を測定するように2軸構成とされている。レーザ測長部60は、レーザ発振器61と、不図示のビームスプリッターおよび不図示のビームベンダーと、左インターフェロメーター62Lと、左参照ミラー63Lと、左測長ミラー64Lと、不図示の左受光器と、左レーザ測長制御部65Lと、右インターフェロメーター62Rと、右参照ミラー63Rと、右測長ミラー64Rと、不図示の右受光器と、右レーザ測長制御部65Rと、を備える。左インターフェロメーター62Lと、左参照ミラー63Lと、左測長ミラー64Lと、不図示の左受光器と、左レーザ測長制御部65Lとは、左レーザ測長器66Lを構成する。右インターフェロメーター62Rと、右参照ミラー63Rと、右測長ミラー64Rと、不図示の右受光器と、右レーザ測長制御部65Rとは、右レーザ測長器66Rを構成する。
【0029】
レーザ発振器61は、定盤12の上面左側に取り付けられた左レーザ光学系ベース67Lの上に設置されている。不図示のビームスプリッターおよび不図示のビームベンダーは、レーザ発振器61から出射されたレーザビームを、左レーザビーム68Lと右レーザビーム68Rに分岐する。左インターフェロメーター62Lは、左レーザビーム68Lの光路上に左レーザ光学系ベース67L上に設置されている。左参照ミラー63Lは、左インターフェロメーター62Lの上面に取り付けられている。左測長ミラー64Lは、左測長ミラーブラケット69Lを介してX軸スライダー42の左側に取り付けられている。不図示の左受光器は、左参照ミラー63Lの反射光と左測長ミラー64Lの反射光を、左インターフェロメーター62L内で光干渉させた干渉光を受光する。左レーザ測長制御部65Lは、左受光器の出力信号を入力して測長値XLを算出する。右インターフェロメーター62Rは、定盤12の上面右側に取り付けられた右レーザ光学系ベース67Rの上に設置されている。右参照ミラー63Rは、右インターフェロメーター62Rの上面に取り付けられている。右測長ミラー64Rは、右測長ミラーブラケット69Rを介してX軸スライダー42の右側に取り付けられている。不図示の右受光器は、右インターフェロメーター62Rから出て来る干渉光を受光する。右レーザ測長制御部65Rは、右受光器の出力信号を入力して測長値XRを算出する。
【0030】
インクジェット印刷装置1は、
図4に示すように、リニアモータ44と、リニアスケール読取りヘッド52と、リニアモータドライバ45と、によってフィードバック制御されるように構成されている。
【0031】
インクジェット印刷装置1の制御系は、上述したフィードバック制御系に加えて、軸コントローラ71と、ヘッドコントローラ72と、カウンター73と、補正値生成部74と、吐出制御部75と、を備える。
【0032】
軸コントローラ71は、リニアモータドライバ45に移動指令を出す。
【0033】
ヘッドコントローラ72は、インクジェットヘッド33から吐出する液滴の吐出位置データを出力する。ヘッドコントローラ72から出力される吐出位置データは、リニアスケール50のスケール本体51が設計値通りに配置されていることを前提にしたビットマップのデータであって、インクジェットヘッド33のノズルの配置位置と描きたい画像を元に作られたビットマップのデータである。
【0034】
カウンター73は、リニアスケール読取りヘッド52から出力されるエンコーダパルスのパルス数をカウントする。
【0035】
補正値生成部74は、左レーザ測長制御部65Lの測長値X
Lと右レーザ測長制御部65Rの測長値X
Rを取り込んで補正パルス数ΔPを出力する。補正値生成部74は、
図5に示すように、レーザ測長値X
L,X
Rを取り込むデータ取り込み部と、レーザ測長値X
L,X
Rを保存するデータ蓄積部と、データ蓄積部に保存されているレーザ測長値から補正パルス数を算出する演算部と、を備える。
【0036】
吐出制御部75は、リニアスケール読取りヘッド52から出力されるエンコーダパルスと、補正値生成部74から出力される補正パルス数ΔPと、ヘッドコントローラ72から出力される吐出位置データと、に基づいて、インクジェットヘッド33に吐出信号を出力する。
【0037】
塗布対象のディスプレイパネル7は、
図6に示すように、ディスプレイパネル7上に形成されたバンク(隔壁)7Lで区画された、赤色画素7R、緑色画素7G、青色画素7BがX方向に繰り返し配列された構造になっており、隣り合う各色の画素7R,7G,7Bの1セットで1ピクセルを構成している。ディスプレイパネル7上には、画素の他に画素の位置を特定するためのアライメントマーク7mが設けられている。
【0038】
<動作>
次に、上記の構成のインクジェット印刷装置1の印刷動作について、前記の
図2、
図4と併せて、
図7~
図9を用いて説明する。
図7は、インクジェット印刷装置の動作フローを示す図である。
図8は、インクジェット印刷装置のワーク移動機構のリニアスケールとレーザ測長器の関係を示す概念図である。
図9は、インクジェット印刷装置のリニアスケールの位置ズレ量とレーザ測長値との関係を示す概念図である。なお、
図7では、X軸スライダー42の位置と関連付けて処理内容を示している。なお、
図8では、図示の簡略化のためにYθ駆動機構46およびX軸スライダー42を省略して、ワーク載置ステージ20を1つの四角形で表現している。
【0039】
(基板投入工程)
まず、
図7に示すように、基板投入工程S1では、ワーク載置ステージ20を、
図2に二点鎖線で示す基板投入取出位置20Dへ移動させる。不図示の基板搬送ロボットと、ワーク載置ステージ20に搭載されている不図示の基板突き上げピンと、を用いて、ワーク載置ステージ20の上に、ディスプレイパネル7を載置して吸着固定する。
【0040】
(レーザ測長原点リセット工程)
レーザ測長原点リセット工程S2では、ディスプレイパネル7の投入後、ワーク載置ステージ20を移動させて、リニアスケール50の原点位置20Bで停止させる。原点位置20Bとは、ワーク載置ステージ20(ディスプレイパネル7)のX方向中心がリニアスケール50の固定位置の真上に位置するような位置である。ワーク載置ステージ20をリニアスケール50の原点位置20Bで停止させているときに、左レーザ測長制御部65Lと右レーザ測長制御部65Rの原点リセット処理を実施する。つまり、ワーク載置ステージ20が原点位置20Bに位置するときの測長値XL,測長値XRがゼロになるようにする。
【0041】
(基板アライメント工程)
基板アライメント工程S3では、レーザ測長原点リセット工程S2の終了後、ワーク載置ステージ20を、リニアスケール50の原点位置近傍の基板アライメント開始位置へ移動させる。不図示の4台の基板アライメントカメラで、ディスプレイパネル7の4隅のアライメントマーク7mを画像認識して、ディスプレイパネル7のX方向、Y方向、θ方向の目標位置に対する位置ズレ量を検出する。検出した位置ズレ量に基づいて、X軸スライダー42とYθ駆動機構46とを制御することによって、ディスプレイパネル7が目標位置に位置するように、ワーク載置ステージ20の位置を調整する。このとき、必要に応じて、アライメントマーク7mの画像認識結果に基づく位置ズレ量の検出、位置ズレ量の検出結果に基づくX軸スライダー42およびYθ駆動機構46の駆動を繰り返し行うことで、ワーク載置ステージ20の位置を調整する(ワーク載置ステージ20の目標位置への追い込みを実施する)。この基板アライメント工程S3の終了後のX軸スライダー42の座標が、
図7に示す基板アライメント終了位置となる。
【0042】
(印刷工程)
印刷工程S4では、基板アライメント工程S3の終了後、X軸スライダー42を、基板アライメント終了位置から、リニアスケール50の目盛りで所定の距離だけ離れた
図2に実線で示す印刷待機位置20Eへ移動させて停止させる。その位置で、カウンター73をゼロにリセットする。
【0043】
その後、X軸スライダー42をリニアモータ44で駆動し、ディスプレイパネル7がインクジェットヘッド33の下に差し掛かる
図8に実線で示す印刷開始位置20Aに到達するまでの間に、印刷走査速度V(本実施の形態1では150mm/s)まで加速する。印刷開始位置20Aに到達すると、ディスプレイパネル7がインクジェットヘッド33の下を通り抜ける
図8に破線で示す印刷終了位置20Cに到達するまでの間、X軸スライダー42を一定の印刷走査速度Vで走査する。同時に、ヘッドコントローラ72から送られた吐出位置データと、リニアスケール50のエンコーダパルスと、補正値生成部74で生成された補正パルス数ΔPと、に基づいて、吐出制御部75は、インクジェットヘッド33に吐出信号を出力する。その結果、インクジェットヘッド33のノズルからインクの液滴が吐出されて、ディスプレイパネル7の上にインクが塗布される。
【0044】
ここで、補正パルス数ΔPは、初回の印刷の場合には、印刷前に、吐出を伴わないX軸スライダー42の走行のみの印刷動作を実施して、その動作中に取得したデータに基づいて、補正値生成部74によって生成されたデータである。また、連続印刷中の場合は、過去の印刷動作中に取得したデータに基づいて、補正値生成部74によって生成されたデータである。そのデータ取得方法および補正値算出方法について、次に説明する。
【0045】
(レーザ測長値取り込み工程)
レーザ測長値取り込み工程S5では、X軸スライダー42が印刷待機位置20Eで停止中に、カウンター73をゼロリセットする。その後、カウンター73は、
図4に示すように、X軸スライダー42の印刷走査に伴いリニアスケール読取りヘッド52から出力されるエンコーダパルスをカウントして、印刷終了位置20Cを超えるまでの区間で、所定のパルス数をカウントする毎にトリガー信号を出力する。
【0046】
カウンター73から出力されたトリガー信号は、左レーザ測長制御部65Lと右レーザ測長制御部65Rに入力され、トリガー信号の入力の度に、その瞬間の左レーザ測長値XL、右レーザ測長値XRが、左右のレーザ測長制御部65L,65R内に蓄積される。つまり、この印刷走査に併せて、リニアスケール50の一定ピッチ毎に、本実施の形態1では1mmピッチ毎(リニアスケール分解能20nmで50000パルスカウント毎)に、左右のレーザ測長器66L,66Rで実移動距離を測定するようになっている。X軸スライダー42が印刷終了位置を超えると、左右のレーザ測長制御部65L,65R内に蓄積されたレーザ測長値XL,XRは、補正値生成部74に取り込まれる。
【0047】
(補正値算出工程)
補正値算出工程S6では、補正値生成部74において、取り込まれたリニアスケール50の1mmピッチ毎のレーザ測長値X
L,X
Rに基づいて、リニアスケール50の1mm区間毎の補正パルス数ΔPが算出される。その具体的な計算方法を、
図9を用いて説明する。
【0048】
図9は、ヨーイングによるワーク載置ステージ20の回転ズレが生じていない場合を示している。
図9の符号8tは、液滴の着弾目標位置であり、符号8は、実際に着弾する着弾位置を示している。符号X
Sは、リニアスケール50の読み値であり、符号ΔX
Sは、リニアスケール50の熱膨張や製作誤差による位置ズレ量であり、符号X
Lと符号X
Rは、リニアスケール50の読み値がX
Sの時の左右のレーザ測長器66L,66Rのレーザ測長値である。
【0049】
リニアスケール50の読み値に基づく位置が設計値通りの位置にある場合は、ΔX
Sはゼロであり、着弾位置8は着弾目標位置8tに一致する。しかし、リニアスケール50の読み値がX
Sの位置が設計値通りの位置からずれている場合(リニアスケール50の読み値に誤差が存在する場合)、着弾位置8は、例えば、
図9に示すように、着弾目標位置8tに対してΔX
Sだけ(
図9の+X方向(左方向)にΔX
Sだけ)ずれることになる。このとき、リニアスケール50の読み値がX
Sの位置から-ΔX
Sだけ(
図9の-X方向(右方向)にΔX
Sだけ)補正した位置に関する吐出指令を出せば、着弾目標位置8tへ液滴を着弾させることができる。つまり、リニアスケール50の読み値に基づく位置からの補正量ΔXhとすると、ΔXhは以下の式(1)で表される。ここで、左右それぞれのレーザ測長位置での補正量をリニアスケール50の分解能R
S(本実施の形態1では20nm)で除したパルス数P
L,P
Rは、式(2)、式(3)のように表すことが出来る。
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
実施の形態1では、リニアスケール50の読み値の位置での補正パルス数Pを、左右の補正パルス数PL,PRの平均値で算出し、全てのインクジェットヘッド33に対して同様の補正を行うようにしたので、Pの値は、式(4)で表すことが出来る。
【0054】
【0055】
実際の印刷動作においては、印刷走査中のX軸スライダー42のリニアスケール50の各1mmの区間毎(20nm×50000パルス毎)に、補正パルス数ΔP(1パルス20nm)ずつ補正して吐出制御することで、印刷位置を補正して行く。ΔPは、式(5)に示すように左右それぞれのレーザ測長位置(Y=+1350mm、Y=-1350mmの位置)での補正パルス数ΔPL,ΔPRから求めることができる。
【0056】
【0057】
ΔP
L,ΔP
Rは、式(6)、式(7)に示すように、
図9のX方向に1mm離れた各2点のそれぞれの補正パルス数P
L2とP
L1、P
R2とP
R1の差分で求めることができる。
【0058】
【0059】
【0060】
そして、リニアスケール50の読み値の位置での各1mmの区間毎の補正パルス数ΔPは、式(5)で求められる。以上のように式(1)~式(7)によって、リニアスケール50の各1mmの区間毎の左右のレーザ測長値XL,XRから、リニアスケール50の各1mmの区間毎の補正パルス数ΔPを求めることができる。
【0061】
そして、次回の印刷走査時に、吐出制御部75が、リニアスケール読取りヘッド52から受け取ったエンコーダパルスの1mm区間毎に、上記で算出された各区間毎の補正パルス数ΔPを反映させながら(
図7の工程S7)、ヘッドコントローラ72から送られた吐出位置データに従ってインクジェットヘッド33へ吐出指令を出すことによって、リニアスケール50の位置ズレを補正してディスプレイパネル7へインクを塗布することができる。この印刷位置の補正方法を1次元吐出タイミング補正と呼ぶことにする。
【0062】
(基板取出工程)
図7に示す基板取出工程S8では、印刷工程S4で印刷終了位置20Cまで到達したX軸スライダー42を、基板投入取出位置20Dへと移動させる。その後、不図示の基板突き上げピンと不図示の基板搬送ロボットによって、印刷済みのディスプレイパネル7が取り出され、次のディスプレイパネル7が投入される。
【0063】
<実施の形態1の効果>
以上の一連の工程によってディスプレイパネル7を印刷することによって、目標位置に正確に液滴を塗布することが出来る。
【0064】
その例を
図10を用いて説明する。
図10は、1次元吐出タイミング補正の有無による印刷結果の違いを説明する図であり、(A)は1次元吐出タイミング補正を行わない場合の印刷結果を示す図、(B)は1次元吐出タイミング補正を行った場合の印刷結果を示す図である。
図10(A)および
図10(B)の符号7E
1,7E
2,7E
3は、
図6のディスプレイパネル7の印刷始端部、印刷中央部、印刷終端部を示している。
【0065】
例えば、リニアスケール50のスケール本体51が実際の寸法よりも伸びた状態の場合、本実施の形態1の1次元吐出タイミング補正を実施しないで印刷すると、
図10(A)に示すように、ディスプレイパネル7の印刷始端部7E
1と印刷終端部7E
3で、例えば赤色の液滴Dは、一点鎖線で示す赤色画素7Rの目標位置に対して、ディスプレイパネル7の外側に塗布されてしまう。それに対して、1次元吐出タイミング補正を実施すると、スケール本体51の伸びを補正出来るので、
図10(B)に示すように、目標位置に液滴Dを塗布することができる。
【0066】
本実施の形態1の補正値生成部74において、
図5に示すように、データ蓄積部では、過去N回分のレーザ測長値X
L,X
Rを保存できるようにした。また、演算部では、N以下のn回のレーザ測長値X
L,X
Rの平均値を求めて、その平均値と各回のレーザ測長値X
L,X
Rとの差分を求めるようにした。更に、演算部では、求めた差分が設定した閾値を超えるデータを異常データとして除外し、残ったレーザ測長値X
L,X
Rを元にして、リニアスケール50の各1mm区間の補正パルス数を算出するようにした。
【0067】
左右のレーザ測長器66L,66Rは、光路周辺の気流の揺らぎの影響を受けて一時的にレーザ測長値XL,XRがばらつくことがある。一方、リニアスケール50の位置ズレは、主にスケール本体51の製造時の誤差と、熱変形による伸縮であり、急速に変動することはない。例えば本実施の形態1では、印刷動作を90秒タクトで実施したが、連続した10回の印刷では殆ど変動せず、50回程度印刷する間に、少しずつ変動した。そこで、本実施の形態1においては、N=n=10に設定し、過去10回の印刷動作におけるレーザ測長値XL,XRから、上記の空気揺らぎによる不安定なレーザ測長値XL,XRを除去する処理を行い、より正確な補正パルス数ΔPを求めるようにした。
【0068】
また、本実施の形態1において、前述のとおり、リニアスケール50のスケール本体51は、リニアモータ固定バー443に対して、X方向のヘッドユニット32の位置(ヘッドユニット32の下方の位置)でのみ、スケール固定部材53で強固に固定して、その位置をリニアスケール50の原点とし、ワーク載置ステージ20が原点位置で停止中に、レーザ測長制御部65L,65Rの原点リセットを実施するようにした。このようにすることで、ディスプレイパネル7に対して、インクジェット印刷装置1の周辺温度が変化した場合においても目標の印刷位置に正確に液滴を塗布することができる。
【0069】
その理由を
図11、
図12を用いて説明する。
図11(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)は、リニアスケールの原点位置でレーザ測長制御部の原点リセットをしなかった場合の熱膨張影響を説明する図である。具体的には、
図11(A),(B),(C)は、ディスプレイパネル7の赤色画素7Rの印刷走査方向の中央に液滴を塗布するように調整した状態を表した図で、
図11(D),(E),(F)は、装置周辺の温度が上昇して、リニアスケール50のスケール本体51が、スケール固定部材53の位置を中心に左右に熱膨張して、定盤12も熱膨張した状態を示す図である。
図11(A),(D)は印刷開始位置20Aを、(B),(E)は原点位置20Bを、(C),(F)は印刷終了位置20Cを表している。
図12は、リニアスケールの原点位置でのレーザ測長制御部の原点リセットの有無による印刷結果の違いを説明する図であり、(A)は原点リセットを行わない場合の印刷結果を示す図、(B)は原点リセットを行った場合の印刷結果を示す図である。
図12(A),(B)の符号7E
1,7E
2,7E
3は、
図10(A),(B)と同様に、ディスプレイパネル7の印刷始端部、印刷中央部、印刷終端部を示している。
図11(C),(E)の符号S
Tは、ディスプレイパネル7の印刷範囲の距離、つまり、
図12(A)に示すように、最も印刷始端側に塗布された液滴Dから、最も印刷終端側に塗布された液滴Dまでの距離を示している。
【0070】
スケール本体51の熱膨張の影響については、前述した1次元吐出タイミング補正で解消できる。一方、
図11(A),(B),(C)と
図11(D),(E),(F)とを比較すると、定盤12の熱膨張によって、左右のレーザ測長器66L,66R(
図11では右レーザ測長器66Rのみを図示)だけ遠ざかることになる。その結果、同じレーザ測長値がL
Tの時のワーク載置ステージ20の位置が、
図11(D)に示すように、ヘッドユニット32に対してΔLだけシフトしてしまう。その結果、仮に、本実施の形態1で示したレーザ測長制御部65L,65Rの原点リセットを行わずにディスプレイパネル7への印刷を行うと、
図12(A)のように、一点鎖線で示す赤色画素7Rの目標位置に対して、ΔLだけシフトした位置に液滴Dを塗布することになる。
【0071】
それに対して、本実施の形態1のように、リニアスケール50の原点位置でレーザ測長制御部65L,65Rの原点リセットを実施することで、上記のヘッドユニット32に対するレーザ測長値の位置ズレΔLをキャンセルすることが出来て、
図12(B)に示すように、目標位置に液滴Dを塗布することができる。以上のように、本実施の形態1の方法によれば、インクジェット印刷装置1の周辺温度が変化しても、印刷対象のディスプレイパネル7に対して、液滴Dを目標位置に正確に塗布することが出来る。
【0072】
(実測データ)
本実施の形態1のインクジェット印刷装置1を用いて印刷を行った。その実測データを
図13~
図17に示す。
図13は、レーザ測長器で測定したリニアスケールの位置ズレ量を示す図である。
図14は、1次元吐出タイミング補正せずに吐出位置データを倍率補正した場合の液滴の着弾位置のズレ量を示す図である。
図15は、1次元吐出タイミング補正の補正量を示す図である。
図16は、1次元吐出タイミング補正の補正パルス数を示す図である。
図17は、1次元吐出タイミング補正の補正後の液滴の着弾位置のズレ量を示す図である。
【0073】
ディスプレイパネル7として、サイズが2500mm×2200mmのものを用い、長手方向を印刷方向とした。
図13の横軸は、印刷方向の長さ2500mm(±1250mm)で、縦軸は、リニアスケール1mm毎(分解能20nm×50000パルス毎)に測定した左右のレーザ測長値X
L,X
Rとその2つの平均値である。
図13は、測定を10回繰り返した時の測定値の平均値である。
図13を見ると、印刷方向の長さ2500mmに対して、左右の平均値(左右のレーザ測長値X
L,X
Rの平均値)が約80μm程度変化していることと、レーザ測長値X
L,X
Rの変化を表す線が、リニアスケール50の値がゼロ近辺で交差していることが分かる。
【0074】
本実施の形態1で使用したスケール本体51の熱膨張係数が10.6ppmで、スケール本体51が20℃基準で製作されており、実際のインクジェット印刷装置1の温度が23℃程度であったことから、計算上、スケール本体51は、10.6×10-6×3×2500×1000=79.5μm伸びることになる。印刷方向の全体に対して左右の平均値が約80μm変化しているのは、スケール本体51の熱膨張によるものであることが分かる。
【0075】
一方、レーザ測長値XL,XRの変化を表す線の交差については、X軸スライダー42のヨーイングによるものである。レーザ測長値XL,XRの差は、最大で11μm程度あり、左レーザビーム68Lと右レーザビーム68Rの距離が2700mmであったことから、ヨーイングが最大で0.8arcsec程度生じていたことになる。このヨーイング量は、今回の基板サイズのワーク載置ステージ20(X軸スライダー42)としては、十分に小さい値であり、これ以上ヨーイングを抑え込むことは難しく、出来たとしても製作コストが大幅に上昇することになる。
【0076】
この状態で、本実施の形態1の1次元吐出タイミング補正を実施せずに、吐出位置データを分解能0.625μmで、2500mmに対して80μmの線形倍率補正を実施して印刷した時の液滴の着弾位置のX方向のズレ量を縦軸に、ディスプレイパネル7のX座標を横軸にとって示した図が
図14である。着弾位置の測定は、インクジェットヘッド33の各ノズルの吐出ばらつきによる着弾位置ばらつきを除去するために、300個のノズルを1セットとして、それら300個の着弾位置の平均値で算出した。
図14は、Y=-1000mm、Y=0mm、Y=+1000mmの位置での着弾位置のX方向ズレ量を示している。
【0077】
図14を見て分かるように、リニアスケール50の約80μmの線形の伸びは、吐出位置データの線形補正で取り除けているが、最大で約5μmの非線形の伸縮が残っており、リニアスケール50の位置ズレが単純な線形の補正では不十分であることが分かる。また、Y=-1000mm、Y=+1000mm位置では、ヨーイングによって、更に±5μm程度の位置ズレが生じている。以上の両者を合わせると、最大で10μm程度ずれることになり、求める数μmの着弾位置精度よりも悪くなっている。
【0078】
次に、本実施の形態1の1次元吐出タイミング補正を実施した時の実測データについて説明する。
図15は、
図13のレーザ測長値X
L,X
Rの平均値から符号を反転して得られた補正量ΔXhをリニアスケール50の読み値X
Sを横軸にして示した図である。また、この補正量ΔXhからリニアスケール50の読み値X
Sの各1mm区間の補正パルス数ΔPを求めてリニアスケール50の読み値X
Sを横軸にして示した図が
図16である。
【0079】
図16を見ると、補正パルス数は各X
Sに対して凸凹しているとともに、全体にわたって平均的に-2パルス程度の補正量が載っている。この全体に見られる補正パルス数の-2パルスは、線形倍率に対する補正パルス数を意味している。この
図16の補正パルス数ΔPを用いて本実施の形態1の1次元吐出タイミング補正を実施して印刷した時のX方向の着弾位置のズレ量を縦軸に、ディスプレイパネルのX座標を横軸にとって示した図が
図17である。
【0080】
図17でも
図14と同様に、着弾位置の測定は300個のノズルの平均値で算出した。
図17も、Y=-1000mm、Y=0mm、Y=+1000mmの位置での着弾位置のX方向ズレ量を示している。
図17を見ると、Y=0mmでの着弾位置のズレは、最大で0.3μm程度に収まっており、極めて正確に補正することができている。当然であるが、Y=±1000mm地点で、ヨーイングによって生じている±5μm程度の位置ズレについては残ったままである。
【0081】
[実施の形態2]
次に本開示の実施の形態2について、実施の形態1との違いを、
図18~
図21を用いて説明する。
図18は、実施の形態2のインクジェット印刷装置の概略平面図である。
図19は、実施の形態2のインクジェット印刷装置の制御系のブロック図である。
図20は、実施の形態2および実施の形態3のインクジェット印刷装置のリニアスケールの位置ズレとレーザ測長値との関係を示す図である。
図21は、実施の形態2のインクジェット印刷装置の吐出位置データおよび印刷結果を示す図であり、(A)は吐出位置データを示す図、(B)は吐出位置データを使って1次元吐出タイミング補正を行った場合の印刷結果を示す図、(C)は吐出位置データを使って1次元吐出タイミング補正および2次元吐出タイミング補正を行った場合の印刷結果を示す図である。
【0082】
実施の形態2のインクジェット印刷装置1Aが実施の形態1のインクジェット印刷装置1と異なる点は、
図18のようにワーク載置ステージ20(X軸スライダー42)にヨーイングが生じている場合においても、そのヨーイングに起因する着弾位置ズレを、吐出タイミングの補正によって補正する点である。
【0083】
<構成>
実施の形態2のインクジェット印刷装置1Aと実施の形態1のインクジェット印刷装置1との構成上の違いを
図19で説明する。
図19の実施の形態2のインクジェット印刷装置の吐出制御系のブロック図と、
図4の実施の形態1の吐出制御系のブロック図を見比べて分かるように、実施の形態1では補正値生成部74は、左レーザ測長値X
Lと、右レーザ測長値X
Rを取り込んで演算し1つのリニアスケールの補正パルス数ΔPを吐出制御部75に出力していた。そして、吐出制御部75は、ヘッドコントローラ72から送られる吐出位置データとリニアスケール読取りヘッド52から出力されるエンコーダパルスと補正パルス数ΔPに基づいて、200個全てのインクジェットヘッド33を同じように吐出タイミングを補正して吐出指令を出していた。
【0084】
これに対し、実施の形態2では、
図19に示すように補正値生成部74は、左レーザ測長値X
Lと右レーザ測長値X
Rを取り込んで演算し、左右それぞれのレーザ測長位置(Y=+1350mm、Y=-1350mmの位置)での補正パルス数に相当する左側補正パルス数ΔP
L、右側補正パルス数ΔP
Rを吐出制御部75に出力する。そして、吐出制御部75は、取り込んだ左側補正パルス数ΔP
Lおよび右側補正パルス数ΔP
Rと、ヘッドユニット32に搭載されるインクジェットヘッド33のY方向位置に従って、各インクジェットヘッド33用の200種類の補正パルス数を算出する。そして、吐出制御部75は、ヘッドコントローラ72から送られる吐出位置データと、リニアスケール読取りヘッド52から出力されるエンコーダパルスと、上記で算出した各インクジェットヘッド33毎に異なる補正パルス数とに基づいて、インクジェットヘッド33毎に異なる吐出タイミング補正を実施して,吐出指令を出力するように構成されている。
【0085】
<動作>
実施の形態2と実施の形態1とで、異なる点は補正値算出工程であるので、その部分について
図20を用いて説明する。
【0086】
(補正値算出工程)
実施の形態2においては、補正値生成部74では、印刷走査中に取り込まれたリニアスケール50の1mmピッチ毎のレーザ測長値X
L,X
Rに基づいて、左右のレーザ測長位置それぞれに対して、リニアスケール50の1mm区間毎の左側補正パルス数ΔP
L、と右側補正パルス数ΔP
Rが算出される。その具体的な計算方法を
図20を用いて説明する。
【0087】
図20では、ヨーイングによる回転ズレが生じている場合を示している。
図20の符号8tは、ディスプレイパネル7上のY座標がYの位置での液滴の着弾目標位置であり、符号8は、実際に着弾する着弾位置を示している。また、符号8hは、1次元吐出タイミング補正を実施した場合における液滴の着弾位置を示している。また、実施の形態1と同様に、X
Sは、リニアスケール50の読み値であり、ΔX
Sは、リニアスケール50の熱膨張や製作誤差による位置ズレ量であり、ΔXyは、ワーク載置ステージ20のヨーイングによって生じる位置ズレ量を示している。X
LとX
Rは、リニアスケール50の読み値がX
Sの時の左右のレーザ測長器66L,66Rのレーザ測長値である。符号Yは、ワーク載置ステージ20の中心を通りかつX方向(印刷方向)と平行な中心線から着弾目標位置8tまでの距離であり、符号Wは、前記中心線からインターフェロメーター62L,62Rまでの距離である。なお、本実施の形態2では、前記中心線とリニアスケール50とが同じY方向の位置にあるため、符号Yは、前記中心線から着弾目標位置8tまでの距離を示しているが、前記中心線とリニアスケール50とが異なるY方向の位置にある場合、符号Yは、リニアスケール50から着弾目標位置8tまでの距離を示すことになる。
【0088】
液滴の着弾位置8を着弾目標位置8tに補正するための補正量を、ΔXhhとすると、ΔXhhは、式(8)で示すように、ΔXSとΔXyを足して符号を反転したものとなる。
【0089】
【0090】
そして、ヨーイングによる位置ズレ量ΔXyは、
図20より、式(9)で表される。
【0091】
【0092】
一方、リニアスケールの位置ズレΔXSに対する補正量ΔXhに相当するパルス数Pは、実施の形態1で説明した通り、レーザ測長位置での補正量をリニアスケールの分解能(本実施の形態2では20nm)で除したパルス数PL,PRを用いて式(4)で表すことができる。
【0093】
従って、トータルの補正量ΔXhhをリニアスケール50の分解能で除したパルス数Pyは、式(10)で表すことができる。
【0094】
【0095】
また、各読み値の1mm区間毎の補正パルス数ΔPyは、式(6)、式(7)、式(10)より、式(11)で表すことができる。
【0096】
【0097】
つまり、ヘッドユニット32に搭載された各インクジェットヘッド33毎に、個別に補正パルス数ΔPyを、そのインクジェットヘッド33の中心のY座標と、左右それぞれのレーザ測長位置での補正パルス数ΔPL、ΔPRから求めることができる。本実施の形態2では、インクジェットヘッド33をY方向に12.7mmピッチで200個並べてヘッドユニット32を構成したので、吐出制御部75は、200個のインクジェットヘッド33のそれぞれに対して、リニアスケールの1mm区間毎に、式(11)で補正パルス数ΔPyを計算し、各インクジェットヘッド33を個別の異なる補正パルス数分補正して吐出指令を出すことによって、インクジェットヘッド33毎に吐出タイミング補正を実施できる。その結果、本実施の形態2のようにワーク載置ステージ20にヨーイングが生じている場合においても、ヨーイングによる着弾位置のズレを補正できる。この印刷位置の補正方法を2次元吐出タイミング補正と呼ぶことにする。
【0098】
この2次元吐出タイミング補正を実施した場合の印刷結果の模式図を
図21に示す。なお、
図21(A)の符号9は吐出位置データを示し、
図21(B)、
図21(C)の符号8はインクの着弾位置を示す。
図21(C)に示すように、2次元吐出タイミング補正を実施した場合でも、Y方向の着弾位置8についてはヨーイングの影響が残って円弧状になっているが、X方向についてはヨーイングの影響を除去できている。
【0099】
(実測データ)
本実施の形態2の実測データを
図22~
図24に示す。
図22は、実施の形態2の2次元吐出タイミング補正の補正量を示す図である。
図23は、実施の形態2の2次元吐出タイミング補正の補正パルス数を示す図であり、(A)はY=-1000mm位置のインクジェットヘッドに対する補正パルス数を示し、(B)はY=+1000mm位置のインクジェットヘッドに対する補正パルス数を示す図である。
図24は、実施の形態2の2次元吐出タイミング補正後の液滴の着弾位置ズレ量を示す図である。
【0100】
図22は、左右のレーザ測長値X
L,X
Rから式(2)、式(3)、式(10)を用いて計算した、Y=-1000mm位置を通るインクジェットヘッド33に対する補正量ΔXhhとY=+1000mm位置を通るインクジェットヘッド33に対する補正量ΔXhhを、リニアスケール50の読み値X
Sを横軸にして示した図である。また、この補正量ΔXhhからリニアスケール50の読み値X
Sの各1mm区間の補正パルス数ΔPyを求めてリニアスケール50の読み値X
Sを横軸にして示した図が
図23である。この
図23(A),(B)に示す補正パルス数ΔPyを用いて、本実施の形態2の2次元吐出タイミング補正を実施して印刷した時のX方向の着弾位置のズレ量を縦軸に、ディスプレイパネルのX座標を横軸にとって示した図が
図24である。
図24の白い丸は、
図23(A)に示す補正パルス数で補正したY=-1000mm位置における印刷結果を示し、黒い丸は、
図23(B)に示す補正パルス数で補正したY=+1000mm位置における印刷結果を示す。
【0101】
図24を見て分かるように、本実施の形態2の2次元吐出タイミング補正を実施することで、1次元吐出タイミング補正だけでは補正出来なかったヨーイングによる着弾位置ズレを補正でき、着弾ズレを0.3μm程度に抑え込むことが出来ている。なお、この着弾位置測定も実施の形態1の場合と同様に、インクジェットヘッド33の各ノズルの吐出ばらつきによる着弾位置ばらつきを除去するために、300個のノズルを1セットとして、それら300個の着弾位置の平均値で算出した。
【0102】
実施の形態2の2次元吐出タイミング補正は、上記で説明した通り、扱うデータ量が少なく、補正計算も単純であるので、補正のための計算時間が短く、印刷タクト90秒の中の印刷時間を除いた約50秒の中で処理が出来るため1回の印刷毎に補正が出来る。
【0103】
[実施の形態3]
次に、本開示の実施の形態3について、実施の形態1との違いを、
図25を用いて説明する。
図25は、実施の形態3のインクジェット印刷装置の制御系のブロック図である。
【0104】
実施の形態3のインクジェット印刷装置1Bが実施の形態1のインクジェット印刷装置1と異なる点は、
図18のようにワーク載置ステージ20にヨーイングが生じている場合においても、そのヨーイングに起因する着弾位置ズレを吐出位置データで補正し、1次元吐出タイミング補正と併せて着弾位置を補正する点である。
【0105】
<構成>
実施の形態3のインクジェット印刷装置1Bと実施の形態1のインクジェット印刷装置1との構成上の違いを
図25で説明する。
図25の実施の形態3のインクジェット印刷装置1Bの吐出制御系のブロック図と、
図4の実施の形態1のインクジェット印刷装置1の吐出制御系のブロック図を見比べて分かるように、実施の形態1では、左レーザ測長制御部65Lで取得された左レーザ測長値X
Lと、右レーザ測長制御部65Rで取得された右レーザ測長値X
Rは、補正値生成部74に取り込まれて、リニアスケール50の補正パルス数ΔPを生成するためだけに使用されていた。生成された補正パルス数ΔPは、吐出制御部75に出力される。吐出制御部75は、補正パルス数ΔPに加えて、ヘッドコントローラ72から送られる吐出位置データと、リニアスケール読取りヘッド52から出力されるエンコーダパルスとに基づいて、全てのインクジェットヘッド33の吐出タイミングを同じように補正して吐出指令を出していた。
【0106】
これに対し、実施の形態3では、左レーザ測長制御部65Lで取得された左レーザ測長値XLと、右レーザ測長制御部65Rで取得された右レーザ測長値XRは、補正値生成部74に取り込まれるのと併せて、新たに設けた吐出位置データ補正部76へも取り込まれる。吐出位置データ補正部76は、左右のレーザ測長値XL,XRに加えてヘッドコントローラ72から出力される吐出位置データも取り込むように構成されている。吐出位置データ補正部76は、左右のレーザ測長値XL,XRに基づいて、吐出位置データに対して、ヨーイングによって生じる各液滴の着弾位置のズレ量の推定値を算出し、それを打ち消すように補正を加えたヨーイング補正吐出位置データを生成する。生成されたヨーイング補正吐出位置データは、吐出制御部75へと出力されるように構成されている。吐出制御部75は、そのヨーイング補正吐出位置データと、補正値生成部74で生成された補正パルス数ΔPと、リニアスケール読取りヘッド52から出力されるエンコーダパルスとに基づいて、全てのインクジェットヘッド33を同じように吐出タイミングを補正(1次元吐出タイミング補正)して吐出指令を出力するように構成されている。
【0107】
<動作>
実施の形態3と実施の形態1とで、1次元吐出タイミング補正の動作については全く同じであるので、説明を省略し、実施の形態3で新たに実施した吐出位置データ補正部76による吐出位置データの補正について、
図26、
図27を用いて説明する。
図26は、実施の形態3のインクジェット印刷装置の動作フローを示す図である。
図27は、実施の形態3のインクジェット印刷装置のヨーイング補正吐出位置データおよび印刷結果を示す図であり、(A)はヨーイング補正吐出位置データを示す図、(B)はヨーイング補正吐出位置データを使ってソフトヨーイング補正付き1次元吐出タイミング補正を行った場合の印刷結果を示す図である。なお、1次元吐出タイミング補正のみ実施した場合の印刷結果は、
図21(B)に示すとおりである。
【0108】
(吐出位置データ補正工程)
図26に示す実施の形態3で新たに加わった吐出位置データ補正工程S9では、吐出位置データ補正部76において、印刷走査中に取り込まれたリニアスケール50の1mmピッチ毎に取得されたレーザ測長値X
L,X
Rに基づいてヨーイング補正吐出位置データを算出する。その具体的な計算方法を
図20を用いて説明する。
【0109】
実施の形態3でも、実施の形態1と同様の1次元吐出タイミング補正を実施するので、ΔX
Sについては、1次元吐出タイミング補正で除去することができる。実施の形態3における吐出位置データ補正部76での吐出位置データの補正は、ヨーイングによって生じるΔXyに対して行われる補正である。
図20のX
LとX
Rは、リニアスケール50の読み値がX
Sの時の左右のレーザ測長器の測長値である。
【0110】
1次元吐出タイミング補正を実施した場合の液滴の着弾位置8hを着弾目標位置8tに補正するための補正量をΔXhyとすると、ΔXhyは、式(12)で示すように、ΔXyの符号を反転したものとなる。
【0111】
【0112】
そして、ヨーイングによる位置ズレ量ΔXyは、
図20より、式(9)で表されるので、補正量ΔXhyは、吐出位置データ補正部に取り込まれた左右のレーザ測長値X
L,X
Rから、吐出位置データ補正部76で式(9)、式(12)に従って算出される。更に、吐出位置データ補正部76は、ヘッドコントローラ72から送られた吐出位置データに補正量ΔXhyを加えて、ヨーイング補正吐出位置データを生成し、生成したヨーイング補正吐出位置データを吐出制御部75へと出力する。以上が、実施の形態3で新たに加わった吐出データ補正工程の処理内容である。
【0113】
そして、次回の印刷走査時に、吐出制御部75は、実施の形態1と同様に
図26の工程S6によって算出したエンコーダパルスの1mm区間毎の補正パルス数ΔPを反映させながら(
図26の工程S7)、吐出位置データ補正部76から送られたヨーイング補正吐出位置データに従ってインクジェットヘッド33へ吐出指令を出す(
図26の工程S10)。つまり上記の吐出位置データ補正工程S9と、実施の形態1で説明した1次元吐出タイミング補正を併せて実施することによって、ワーク載置ステージ20にヨーイングが発生する場合においても2次元での着弾位置補正を実施することができる。この補正方法を実施の形態2の2次元吐出タイミング補正に対して、ソフトヨーイング補正付き1次元吐出タイミング補正と呼ぶことにする。
【0114】
このソフトヨーイング補正付き1次元吐出タイミング補正を実施した場合の印刷結果の模式図を
図27に示す。なお、
図27(A)の符号9Aはヨーイング補正吐出位置データを示し、
図27(B)の符号8はインクの着弾位置を示す。
図27(B)に示すように、ソフトヨーイング補正付き1次元吐出タイミング補正を実施した場合、吐出データの補正によって、
図21(B)に示す場合と比べて、X方向のヨーイングの影響を除去できている。
【0115】
実施の形態3の吐出位置データ補正工程S9は、印刷対象物が大面積の大型基板の場合には、補正するための計算量が非常に多くなる。そのため、吐出位置データの補正計算処理時間を90秒の印刷タクト内で処理することが困難になる。しかしながら、インクジェット印刷装置1Bを設置する場所の床の状態にもよるが、ワーク載置ステージ20のヨーイング癖の変化は、リニアスケール50の伸縮癖の変化に比べて遅い場合が多く、そのような場合であれば、1回の印刷毎に吐出位置データをヨーイング補正する必要はない。その場合には、吐出位置データの補正計算処理時間が90秒の印刷タクトを超えて、複数枚の印刷処理時間に及んでも構わないので、稼働率の低下やタクトの延長にはつながらない。逆にヨーイング癖の変化が激しく、1回の印刷毎にヨーイングの補正を行う必要があるような場合には、実施の形態2の2次元吐出タイミング補正が稼働率低下に繋がらない有効な手段になる。
【0116】
[実施の形態4]
次に本開示の実施の形態4について、
図28~
図34を用いて説明する。
図28は、実施の形態4のインクジェット印刷装置の概略平面図である。
図29は、実施の形態4のインクジェット印刷装置の
図28のJ-J断面を示す図である。
図30は、実施の形態4のインクジェット印刷装置の制御系のブロック図である。
図31は、実施の形態4のインクジェット印刷装置の動作フローを示す図である。
図32は、実施の形態4のインクジェット印刷装置のワーク載置ステージのリニアスケールとレーザ測長器の関係を示す概念図である。
図33は、実施の形態4のインクジェット印刷装置の熱膨張影響を説明する図であり、(A)はインクジェット印刷装置の周辺温度がt1の時に、インクジェットヘッド、第2インクジェットヘッド、第3インクジェットヘッドから吐出された液滴が、印刷対象のディスプレイパネルの各色の画素の中央に塗布できるように印刷位置を調整した時の図であり、(B)は周辺温度がt1より高いt2になった時の状態を示す図である。
図34は、実施の形態4のインクジェット印刷装置の補正値生成部の説明図である。なお、
図32では、図示の簡略化のためにYθ駆動機構46およびX軸スライダー42を省略して、ワーク載置ステージ20を1つの四角形で表現している。
【0117】
<構成>
実施の形態4のインクジェット印刷装置1Cと、実施の形態1のインクジェット印刷装置1との構成の違いは、
図28および
図29と
図1および
図2とを見て分かるように、実施の形態1では、定盤12の上にヘッドガントリー31が1つ搭載されていたのに対して、実施の形態4では、定盤12の上に、第2ヘッドガントリー34が追加されている。ヘッドガントリー31には、ヘッドユニット32が1つしか搭載されていなかったのに対して、第2ヘッドガントリー34には、第2ヘッドユニット35と、第3ヘッドユニット36が搭載されている。更に、実施の形態4では、リニアモータ固定バー443に、第2リニアスケール55が追加されていることである。
【0118】
第2リニアスケール55の第2スケール本体56は、第2ヘッドガントリー34の印刷方向(X方向)中心の下方において、第2スケール固定部材58を介してリニアモータ固定バー443に強固に固定されている。第2スケール本体56における第2スケール固定部材58に固定されていない部分は、リニアモータ固定バー443に対して相対移動できるようになっている。第2リニアスケール55の第2リニアスケール読取りヘッド57は、リニアスケール読取りヘッド52と同様に、読取りヘッドブラケット54を介して、X軸スライダー42に取り付けられている。
【0119】
第2ヘッドユニット35には、第2のインクを吐出する第2インクジェットヘッド37が、第2ラインヘッドベース34A上において、印刷幅方向(Y方向)に200個並べて搭載されている。第3ヘッドユニット36には、第3のインクを吐出する第3インクジェットヘッド38が、第3ラインヘッドベース34B上において、印刷幅方向(Y方向)に200個並べて搭載されている。インクジェットヘッド33、第2インクジェットヘッド37、第3インクジェットヘッド38には、それぞれ別々に3種類のインクを供給する不図示のインク供給系が接続されおり、ワーク載置ステージ20の1回の印刷走査によって、印刷対象のディスプレイパネル7に、3種類のインクを塗布することが出来るようになっている。
【0120】
制御系について、実施の形態4のインクジェット印刷装置1Cと、実施の形態1のインクジェット印刷装置1との構成の違いは、
図4と
図30を見て分かるように、第2リニアスケール読取りヘッド57と、リニアスケール制御部77と、第2吐出制御部78と、第3吐出制御部79とが追加されたことである。リニアスケール制御部77は、第2リニアスケール読取りヘッド57のエンコーダパルスから測長値を求めて補正値生成部74へ出力する。第2吐出制御部78および第3吐出制御部79は、それぞれ第2インクジェットヘッド37および第3インクジェットヘッド38に吐出指令を出す。
【0121】
実施の形態4のインクジェット印刷装置1Cには、リニアスケール50と、第2リニアスケール55の2つのリニアスケールが搭載されているが、リニアスケール50は、実施の形態1と同様の1次元吐出タイミング補正のために使用される。第2リニアスケール55は、ヘッドガントリー31と第2ヘッドガントリー34との距離の変動を測り取るために使用される。なお、リニアスケール50の原点は、実施の形態1と同様に、ヘッドガントリー31の中心下方に位置するスケール固定部材53で固定された位置に設定されている。第2リニアスケール55の原点は、第2ヘッドガントリー34の中心下方に位置する第2スケール固定部材58で固定された位置に設定されている。また、X軸スライダー42を駆動するリニアモータ44へのフィードバックには、リニアスケール読取りヘッド52のエンコーダパルスを使用している。
【0122】
<動作>
実施の形態4と実施の形態1とで、
図31に示すように、ヘッドガントリー31に搭載されたインクジェットヘッド33による一連の印刷動作は全く同じである。基板投入工程S1は、ワーク載置ステージ20が
図29の基板投入取出位置20Dで行われる。レーザ測長原点リセット工程S2は、ワーク載置ステージ20がリニアスケール50の原点位置で停止している時に行われる。基板アライメント工程S3は、ヘッドガントリー31の下において、不図示のアライメントカメラシステムによってディスプレイパネル7の4隅のアライメントマーク7mを画像認識して、ディスプレイパネル7のX方向、Y方向、θ方向の目標位置に対する位置ズレ量を検出する。検出した位置ズレ量に基づいて、X軸スライダー42およびYθ駆動機構46の駆動と、アライメントカメラシステムでの画像認識とを繰り返しながら、ワーク載置ステージ20上のディスプレイパネル7の目標位置への追い込みを実施する。このアライメント完了時のX軸スライダー42の座標が、
図31の基板アライメント終了位置となる。
【0123】
その後、実施の形態1では、X軸スライダー42を、基板アライメント終了位置から、リニアスケール50の目盛りで所定の距離だけ離れた印刷待機位置へ移動させた後、リニアスケール50のエンコーダパルスをカウントするカウンター73をゼロにリセットしていた。
【0124】
これに対し、実施の形態4では、上記実施の形態1におけるX軸スライダー42の基板アライメント終了位置から印刷待機位置への移動の途中に、新たに、第2ヘッドガントリー位置ズレ量取得工程S11を追加している。ここでは、実施の形態4で新たに追加した第2ヘッドガントリー位置ズレ量取得工程S11と、その次の印刷工程S4について説明する。レーザ測長値取込み工程S5、補正値算出工程S6および基板取出工程S8については、実施の形態1と同じであるので説明を省略する。
【0125】
(第2ヘッドガントリー位置ズレ量取得工程)
図32の構成において、ワーク載置ステージ20(X軸スライダー42)のフィードバック制御には下側のリニアスケール50を使用している。
図33(A)に示すインクジェット印刷装置1Cの周辺温度がt1の状態では、ヘッドガントリー31と第2ヘッドガントリー34の中心間距離はLg
1になっており、その距離に相当するリニアスケール50上で計測した距離がLs
1となっている。
【0126】
それに対して、
図33(B)に示す周辺温度がt2に上昇した時の状態では、定盤12が熱膨張している。更に、ワーク載置ステージ20(X軸スライダー42)の位置フィードバックに使用しているリニアスケール50のスケール本体51が、スケール固定部材53の位置(ヘッドガントリー31の中心)を中心にして印刷方向両側に熱膨張している。また、第2リニアスケール55については、第2スケール本体56が第2スケール固定部材58(第2ヘッドガントリー34の中心)を中心にして印刷方向両側に熱膨張している。その結果、ヘッドガントリー31と第2ヘッドガントリー34の中心間距離は、ΔLg伸びてLg
2となり、リニアスケール50上で計測した距離はLs
1のままスケール本体51の伸びΔLs分距離が長くなっている。
【0127】
スケール本体51の伸びΔLsについては、1次元吐出タイミング補正によって取り除くことができる。しかし、この状態で、第2ヘッドガントリー34に搭載されている第2インクジェットヘッド37と第3インクジェットヘッド38を、ヘッドガントリー31に搭載されているインクジェットヘッド33と同様に使用して、ディスプレイパネル7に3種類のインクを塗布すると、第2ヘッドガントリー34に搭載されたインクジェットヘッドから吐出された2種類の液滴は、第2ヘッドガントリー34の位置ズレ量ΔLg分オフセットズレを起こして、狙いの画素の中央に印刷できない。
【0128】
それを防ぐためには、第2ヘッドガントリー34の位置ズレ量ΔLgを測り取って、オフセット補正する必要がある。そのために追加した工程が、
図31に示す第2ヘッドガントリー位置ズレ量取得工程S11である。
【0129】
第2ヘッドガントリー位置ズレ量取得工程S11では、基板アライメント工程S3を終了した後、基板のアライメント終了位置からリニアスケール50の目盛りで所定の距離だけワーク載置ステージ20(X軸スライダー42)を移動させて、
図32に破線で示す第2ヘッドガントリー34の中央の第2ヘッドガントリー位置20Fに位置決めする。第2ヘッドガントリー位置20Fは、ディスプレイパネル7の中心が第2リニアスケール55の原点近傍の上方に位置する位置である。その時のワーク載置ステージ20の位置を左右のレーザ測長器66L,66Rおよび第2リニアスケール55で計測する。
【0130】
図33(A)の温度t1での左右のレーザ測長値X
L,X
Rの平均値をL
L1とし、第2リニアスケール55の測長値をLs
21とし、
図33(B)の温度t2での左右のレーザ測長値X
L,X
Rの平均値をL
L2、第2リニアスケール55の測長値をLs
22とすると、リニアスケール50のスケール本体51の熱膨張による伸びΔLsは、式(13)の通り上記のL
L1とL
L2から求めることができる。
【0131】
【0132】
また、
図33(B)の温度t2で伸びた状態でのリニアスケール50で位置決めされたワーク載置ステージ20の第2ヘッドガントリー位置20Fと第2リニアスケール55の原点近傍のLs
21からの距離の変化ΔLs
2は、式(14)で表される。
【0133】
【0134】
従って、式(13)、式(14)より、第2ヘッドガントリー34の位置ズレ量ΔLgは、式(15)のように、温度t1およびt2の時のレーザ測長値XL、XRの平均値LL1,LL2と第2リニアスケール55の測長値Ls21,Ls22から求めることができる。
【0135】
【0136】
このレーザ測長値と第2リニアスケール55の測長値を取得するのが、第2ヘッドガントリー位置ズレ量取得工程S11で、ここで得られた測定データは、補正値生成部74に送られる。本実施の形態4のインクジェット印刷装置1Cの補正値生成部74は、
図34に示すように、上記で取り込んだレーザ測長値と第2リニアスケールの測長値から第2インクジェットヘッドおよび第3インクジェット用の印刷エリア全体のオフセットパルス数P
offsetを算出する。計算方法を式(16)に示す。
【0137】
【0138】
なお、実施の形態4では測定精度を高めるために、ワーク載置ステージ20を第2ヘッドガントリー位置20Fで1秒間停止しておき、その間に10回測定を繰り返してその平均値を測定結果として用いた。
【0139】
なお、実施の形態4では、ワーク載置ステージ20(X軸スライダー42)を第2ヘッドガントリー位置20Fで停止中に、左右のレーザ測長器66L,66Rおよび第2リニアスケール55の測長値を取得したが、必ずしもワーク載置ステージ20(X軸スライダー42)を停止させなくても良く、走行させながら測長値を取得しても構わない。
【0140】
(印刷工程)
図31の印刷工程S4では、第2ヘッドガントリー位置ズレ量取得工程S11の完了後、ワーク載置ステージ20(X軸スライダー42)を第2ヘッドガントリー位置20Fからリニアスケール50の目盛りで所定の距離だけ離れた、
図29の印刷待機位置20Eへ移動させて停止させる。その位置でカウンター73をゼロリセットする。
【0141】
その後、X軸スライダー42を駆動し、ディスプレイパネル7が第3インクジェットヘッド38の下に差し掛かる印刷開始位置20Aに到達するまでに、印刷走査速度V(本実施例では150mm/s)まで加速する。ディスプレイパネル7が印刷開始位置20Aに到達すると、ディスプレイパネル7がインクジェットヘッド33の下を通り抜ける印刷終了位置20Cに到達するまでの間、ワーク載置ステージ20(X軸スライダー42)を一定の印刷走査速度Vで走査させながら、ヘッドコントローラ72から送られた吐出位置データと、リニアスケール50のエンコーダパルスと、補正値生成部74で生成された補正パルス数ΔPとに従って、吐出制御部75がインクジェットヘッド33に吐出信号を出力する。更に、第2吐出制御部78、第3吐出制御部79は、ヘッドコントローラ72から送られた吐出位置データと、リニアスケール50のエンコーダパルスと、補正値生成部74で生成された補正パルス数ΔPと、オフセットパルス数Poffsetとに従って、それぞれ第2インクジェットヘッド37、第3インクジェットヘッド38に吐出信号を出力する。インクジェットヘッド33、第2インクジェットヘッド37、第3インクジェットヘッド38は、入力された吐出信号に従って、それぞれのノズルからそれぞれ異なるインクの液滴を吐出させて、ディスプレイパネル7の上にインクを塗布する。
【0142】
ここで、補正パルス数ΔPおよびオフセットパルス数Poffsetは、初回の印刷の場合には、印刷前にX軸スライダー42を吐出を伴わない走行のみの印刷動作を実施して、その動作中に取得したデータに基づいて、補正値生成部74によって生成されたデータである。また、連続印刷中の場合は、過去の印刷動作中に取得したデータに基づいて、補正値生成部74によって生成されたデータである。
【0143】
以上のように、実施の形態4によれば、2つのヘッドガントリーが存在し、そのヘッドガントリー間の距離が変動した場合であっても、2つのヘッドガントリー間の位置ズレ量を測定して補正することにより、3種類のインクを1回の印刷走査でディスプレイパネル7の画素7R,7G,7Bに精度良く塗布することができる。
【0144】
[まとめ]
以上のように、本開示の実施の形態1~4によれば、大型の印刷対象物の印刷においても、印刷動作以外の特別な精度校正動作をする必要がないので、稼働率が高く、高精度の印刷ができるインクジェット印刷機を提供できる。
【0145】
なお、実施の形態1~4の説明の中で、理解しやすいように吐出位置データを
図21(A)のように表したが、これはインクジェットヘッドのノズル配置が印刷幅方向(Y方向)に直線上に並んでいる場合であって、実際にはX方向にも位置をずらして配置されているので、実際の吐出位置データは、
図21(A)のように単純ではなく、ノズル配置を反映させたデータになっている。
【0146】
なお、実施の形態1、実施の形態2、実施の形態3では1種類のインクを吐出する1種類のインクジェットヘッドを搭載したインクジェット印刷機について説明したが、この場合、
図6に示すディスプレイパネルを印刷する場合は、3種類のインクそれぞれを搭載したインクジェット印刷装置を3台使用して、3種類のインクを順番に塗布して行く必要がある。
【0147】
[変形例]
なお、実施の形態の説明で、リニアスケール50の原点をスケール本体51をスケール固定部材53によって固定した位置とし、第2リニアスケール55の原点を第2スケール本体56を第2スケール固定部材58によって固定した位置としたが、原点は必ずしもここに設定する必要はない。レーザ測長原点リセット工程S2を、ワーク載置ステージ20がヘッドガントリー31の中心位置にいる時に行われ、第2ヘッドガントリー位置ズレ量取得工程S11を、ワーク載置ステージ20が第2ヘッドガントリー34の中心位置にいる時に行われればそれで良い。
【0148】
実施の形態4で、2本のヘッドガントリーを設けて、3種類のインクジェットヘッドを搭載する構成としたが、2本のヘッドガントリーに、必要に応じて2種類以上のインクジェットヘッドを搭載するのでも良いし、更にヘッドガントリーを3本以上設けた構成にして、ヘッドガントリーの数に応じてリニアスケールを設けても構わない。
【0149】
実施の形態2の2次元吐出タイミング補正および実施の形態3のソフトヨーイング補正付き1次元吐出タイミング補正の説明では、ヘッドガントリーが1つで1種類のインクを吐出するインクジェット印刷装置として説明したが、実施の形態4に組み合わせて、3種類のインクを吐出できるインクジェット印刷装置において、2次元吐出タイミング補正やソフトヨーイング補正付き1次元吐出タイミング補正を行っても良い。
【0150】
実施の形態1~3において、ヘッドガントリー31を定盤12に固定してワーク載置ステージ20を移動させることによって印刷を行ったが、ワーク載置ステージ20を定盤12に固定してヘッドガントリー31を移動させるようにしても良いし、ワーク載置ステージ20およびヘッドガントリー31の両方を移動させても良い。実施の形態4においても、ワーク載置ステージ20を定盤12に固定してヘッドガントリー31および第2ヘッドガントリー34を移動させるようにしても良いし、ワーク載置ステージ20、ヘッドガントリー31および第2ヘッドガントリー34の全てを移動させても良い。これらのような構成では、実施の形態1~4の効果を奏することができるように、印刷部30、ワーク移動機構40、リニアスケール50、レーザ測長部60および制御系を構成すれば良い。実施の形態1~4において、左右のレーザ測長器66L,66Rを、ワーク載置ステージ20の印刷幅方向両端側の下方に設け、ワーク載置ステージ20の下端よりも下側をレーザビーム68L,68Rが進行するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0151】
本開示の態様にかかるインクジェット印刷装置およびインクジェット印刷方法は、大面積の印刷対象物に対しても高精度にインク等を塗布するのに有効であり、有機ELの発光体、ホール輸送層、又は電子輸送層の印刷、又は、カラーフィルターの印刷等におけるインクジェット印刷に適用することができる。
【符号の説明】
【0152】
1,1A,1B,1C インクジェット印刷装置
7 ディスプレイパネル
7B 青色画素
7E1 印刷始端部
7E2 印刷中央部
7E3 印刷終端部
7G 緑色画素
7L バンク(隔壁)
7m アライメントマーク
7R 赤色画素
8 着弾位置
8h 着弾位置
8t 着弾目標位置
9 吐出位置データ
9A ヨーイング補正吐出位置データ
11 架台
12 定盤
20 ワーク載置ステージ
20A 印刷開始位置
20B 原点位置
20C 印刷終了位置
20D 基板投入取出位置
20E 印刷待機位置
20F 第2ヘッドガントリー位置
30 印刷部
31 ヘッドガントリー
31A ラインヘッドベース
32 ヘッドユニット
33 インクジェットヘッド
34 第2ヘッドガントリー
34A 第2ラインヘッドベース
34B 第3ラインヘッドベース
35 第2ヘッドユニット
36 第3ヘッドユニット
37 第2インクジェットヘッド
38 第3インクジェットヘッド
40 ワーク移動機構
41 ガイドレール
42 X軸スライダー
43 摺動機構
44 リニアモータ
45 リニアモータドライバ
46 Yθ駆動機構
50 リニアスケール
51 スケール本体
52 リニアスケール読取りヘッド
53 スケール固定部材
54 読取りヘッドブラケット
55 第2リニアスケール
56 第2スケール本体
57 第2リニアスケール読取りヘッド
58 第2スケール固定部材
60 レーザ測長部
61 レーザ発振器
62L 左インターフェロメーター
62R 右インターフェロメーター
63L 左参照ミラー
63R 右参照ミラー
64L 左測長ミラー
64R 右測長ミラー
65L 左レーザ測長制御部
65R 右レーザ測長制御部
66L 左レーザ測長器
66R 右レーザ測長器
67L 左レーザ光学系ベース
67R 右レーザ光学系ベース
68L 左レーザビーム
68R 右レーザビーム
69L 左測長ミラーブラケット
69R 右測長ミラーブラケット
71 軸コントローラ
72 ヘッドコントローラ
73 カウンター
74 補正値生成部
75 吐出制御部
76 吐出位置データ補正部
77 リニアスケール制御部
78 第2吐出制御部
79 第3吐出制御部
431 浮上用静圧軸受け
432 側面静圧軸受け
433 側面静圧軸受け用ブラケット
441 固定子
442 可動子
443 リニアモータ固定バー
D 液滴