(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】鉛蓄電池の再生方法および再生鉛蓄電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
H02J 7/02 20160101AFI20241004BHJP
H01M 10/42 20060101ALI20241004BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20241004BHJP
H01M 10/54 20060101ALI20241004BHJP
H01M 10/08 20060101ALI20241004BHJP
H01M 10/12 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
H02J7/02 E
H01M10/42 Z
H01M10/44 A
H01M10/54
H01M10/08
H01M10/12 M
(21)【出願番号】P 2020155621
(22)【出願日】2020-09-16
【審査請求日】2023-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】500372717
【氏名又は名称】学校法人福岡工業大学
(73)【特許権者】
【識別番号】507252328
【氏名又は名称】株式会社関谷
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(72)【発明者】
【氏名】田島 大輔
(72)【発明者】
【氏名】関谷 勝幸
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-016324(JP,A)
【文献】特開2002-190329(JP,A)
【文献】特開2007-213843(JP,A)
【文献】特開2012-022809(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0375276(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/02
H01M 10/42
H01M 10/44
H01M 10/54
H01M 10/08
H01M 10/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、負極および電解液が電槽内に収容される鉛蓄電池の再生方法であって、
水素過電圧を上昇させる添加剤
であり、5質量%水溶液の粘度が1~30mPa・sでありケン化度が70mol%以上99.5mol%以下であるポリビニルアルコールを50質量%以上含む添加剤を前記電解液に添加し、前記電槽内に収容すること、
前記正極と前記負極との間にパルス周波数1kHz以下のパルス電流を印加すること
を含む鉛蓄電池の再生方法。
【請求項2】
正極、負極および電解液が電槽内に収容される鉛蓄電池に対し、水素過電圧を上昇させる添加剤
であり、5質量%水溶液の粘度が1~30mPa・sでありケン化度が70mol%以上99.5mol%以下であるポリビニルアルコールを50質量%以上含む添加剤を前記電解液に添加し、前記電槽内に収容すること、
前記正極と前記負極との間にパルス周波数1kHz以下のパルス電流を印加すること
を含む再生鉛蓄電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非常用電源(UPS)、家庭用蓄電システム、自動車・バス・バイク用バッテリー等として使用される鉛蓄電池の再生方法および再生鉛蓄電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉛蓄電池の使用を重ねていくと、放電時に生成した硫酸鉛が充電時に元の状態に戻りにくくなる。これは生成した硫酸鉛が硬質化したことによるものである。この硬質化した硫酸鉛は絶縁性の物質であり、電極表面において電気抵抗となる。そのため、電池性能が低下してしまい、寿命を迎える要因の一つとなる。このように硫酸鉛が硬質化し抵抗となることをサルフェーションという。
【0003】
従来、サルフェーションの抑制方法としては、電気的方法と化学的方法の2種類が知られている。電気的方法は、特殊なパルス電流を発生させ、鉛蓄電池に供給する方法であり、パルス電流が極板の表面を流れること(表皮効果)で、硫酸鉛を元の希硫酸と鉛に分解し、鉛蓄電池の劣化を抑制する。
【0004】
例えば、特許文献1には、パルス周波数8kHz~16kHzの負極性パルスと正極性パルスとを繰り返し与えることにより、硫酸鉛被膜を除去する方法が開示されている。また、特許文献2には、パルス周波数約9.51kHzのパルス電流をバッテリーに印加することにより、電極板に発生したサルフェーションを分解、除去する鉛蓄電池保守装置が開示されている。
【0005】
一方、化学的方法は、添加剤を投入し、化学反応を促すことによって硫酸鉛を分解する方法である。例えば、特許文献3には、鉛電池の電解液中にポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、リグニンからなる群のうち少なくとも1つの有機添加物を加え、0.3C以上、好ましくは1C以上の電流で該電池の公称容量の3%以上、好ましくは10%以上の電気量を連続または断続して放電させることを特徴とする鉛電池の再生方法が開示されている。
【0006】
また、特許文献4にはカルボキシル基とスルホ基を含む添加剤が、特許文献5にはポリビニルアルコールまたはポリアクリル酸を添加することが、特許文献6には有機化合物もしくは無機化合物の添加剤が、特許文献7には微粒子の炭素またはポリビニルアルコールの添加剤が、特許文献8には基板洗浄用のポリマー液と、電圧上昇用のミネラル液と、放電安定化用のカーボン液とを有する再生剤が、それぞれ開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2005/083830号
【文献】登録実用新案第3143629号公報
【文献】特開2004-356076号公報
【文献】特開2013-48074号公報
【文献】特開2009-16324号公報
【文献】特開2003-22845号公報
【文献】特開2000-150004号公報
【文献】特開2005-63876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来の電気的方法では、サルフェーション抑制の詳細なメカニズムが解明されておらず、パルス周波数10kHz前後のパルス電流を与えることで鉛蓄電池の劣化を抑制しているが、その効果が十分ではない。また、10kHz前後の高いパルス周波数を必要とするため、高コスト化が避けられない。一方、上記従来の化学的方法においても、様々な種類の添加剤が開発されているが、効果は十分とはいえない。
【0009】
そこで、本発明においては、低いパルス周波数で十分なサルフェーション抑制を可能とした鉛蓄電池の再生方法および再生鉛蓄電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の鉛蓄電池の再生方法は、正極、負極および電解液が電槽内に収容される鉛蓄電池の再生方法であって、水素過電圧を上昇させる添加剤を電解液に添加し、電槽内に収容すること、正極と負極との間にパルス周波数1kHz以下のパルス電流を印加することを含むことを特徴とする。
【0011】
本発明の鉛蓄電池の再生方法によれば、水素過電圧を上昇させる添加剤を電解液に添加した状態で正極と負極との間にパルス周波数1kHz以下のパルス電流を印加することで、低いパルス周波数1kHz以下で正極および負極の電極表面の硫酸鉛が効果的に破壊されるうえ、添加剤によって電極に硫酸鉛が付着しにくくなり、電極の導電状態が良好に保たれる。
【0012】
本発明の再生鉛蓄電池の製造方法は、正極、負極および電解液が電槽内に収容される鉛蓄電池に対し、水素過電圧を上昇させる添加剤を電解液に添加し、電槽内に収容すること、正極と負極との間にパルス周波数1kHz以下のパルス電流を印加することを含むことを特徴とする。
【0013】
本発明の再生鉛蓄電池の製造方法によれば、使用済みで劣化した鉛蓄電池に対し、水素過電圧を上昇させる添加剤を電解液に添加した状態で正極と負極との間にパルス周波数1kHz以下のパルス電流を印加することで、低いパルス周波数1kHz以下で正極および負極の電極表面の硫酸鉛が効果的に破壊され、添加剤によって電極に硫酸鉛が付着しにくくなり、電極の導電状態が良好に保たれる再生鉛蓄電池を得ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、水素過電圧を上昇させる添加剤を電解液に添加し、電槽内に収容し、正極と負極との間にパルス周波数1kHz以下のパルス電流を印加することにより、低いパルス周波数1kHz以下で十分なサルフェーション抑制が可能となり、鉛蓄電池の寿命を長くして、廃棄するまでの使用期間を延ばすことが可能となる。その結果、廃棄される鉛蓄電池が減少し、環境に対する負荷軽減を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施の形態における鉛蓄電池の再生方法の概念図である。
【
図2】周波数に対する各パルス波形のS/PbとO/Pbの関係を示す図である。
【
図3】(a)比較例1と(b)実施例1のCCA値を比較した図である。
【
図4】(a)比較例1と(b)実施例1のサイクル試験結果を比較した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は本発明の実施の形態における鉛蓄電池の再生方法の概念図である。
図1に示すように、使用済みで劣化した(取り換えが必要な)鉛蓄電池1のプラス端子15とマイナス端子16との間にパルスジェネレータ2を接続し、パルス周波数1kHz以下のパルス電流を印加することにより、鉛蓄電池1を再生する。
【0017】
鉛蓄電池1は、電槽10内に正極11、負極12および電解液13が収容された従来公知のものである。正極11と負極12との間にはセパレータ14が配置されている。なお、図示は省略しているが、通常、正極11と負極12とはセパレータ14を介して交互に複数積層された極板群として、電解液13とともに電槽10内に収容されている。
【0018】
正極11は、正極活物質が正極格子間に充填された構成のものを用いることができる。正極格子は、鉛または鉛合金で形成されたものを用いることができる。鉛合金は、鉛元素と、カルシウム、錫やビスマスなどの元素とを含んだ合金などを用いることができる。正極活物質は、通常、二酸化鉛(PbO2)である。また、正極活物質として、カルシウムなどの元素を添加した二酸化鉛を用いることもできる。極板群を構成する各正極11は、集電のための耳部を有しており、これらの耳部がストラップ部分で一体化され、プラス端子15に連結されている。
【0019】
負極12は、負極活物質が負極格子間に充填された構成のものを用いることができる。負極格子は、鉛または鉛合金で形成されたものを用いることができる。鉛合金は、鉛元素と、カルシウム、錫やビスマスなどの元素とを含んだ合金などを用いることができる。負極活物質は、通常、鉛(Pb)である。また、極板群を構成する各負極12は、集電のための耳部を有しており、これらの耳部がストラップ部分で一体化され、マイナス端子16に連結されている。
【0020】
セパレータ14は、正極11と負極12との間に配置されるものであり、正極11と負極12の接触による短絡の防止や、電解液13を保持して硫酸イオンおよび水素イオンを透過させる役割を有する。セパレータ14としては、通常、化学繊維やガラス繊維を主体とする不織布シートが用いられる。また、合成樹脂や無機フィラーで形成された微多孔質シートなどを用いてもよい。負極12と正極11との間に介在させるセパレータ14の厚さや枚数は、極間距離に応じて適宜選択される。
【0021】
電槽10は、上側に開口部を有する容器であり、正極11および負極12から構成される極板群および電解液13を収容可能なものである。電槽10は、電解液13に対して耐性を有する材料で形成されており、通常、ポリエチレン、ポリプロピレンやABS樹脂などの合成樹脂製である。電槽10の開口部は、蓋(図示せず。)により封口される。蓋は、電槽10と同様に合成樹脂で形成することができる。
【0022】
電槽10は、正極11および負極12から構成される極板群と電解液13とが収容されたセルを複数有する構成であってもよい。蓋は、複数のセルの開口部を一括して封口するものを用いることができる。例えば、起電力2Vのセルを6個有する構成とすることで、12Vのバッテリーとすることができる。
【0023】
電解液13は、一般的に希硫酸(H2SO4)が用いられている。本実施形態における鉛蓄電池の再生方法では、電解液13に水素過電圧を上昇させる添加剤を添加する。本実施形態においては、添加剤としてポリビニルアルコールを含む鉛蓄電池用の添加剤を使用する。特に、本実施形態においては、ポリビニルアルコールの5質量%水溶液の粘度が、1~30mPa・sである鉛蓄電池用の添加剤を使用する。
【0024】
この添加剤を電解液13に添加した状態で正極11と負極12との間にパルス周波数1kHz以下のパルス電流を印加することで、低いパルス周波数1kHz以下で正極11および負極12の電極表面の硫酸鉛が効果的に破壊され、添加剤によって電極(正極11・負極12)に硫酸鉛が付着しにくくなり、電極の導電状態が良好に保たれる再生鉛蓄電池が得られる。また、電極に付着する硫酸鉛も繊維状など細かい状態で付着するため電極の導電性が阻害されにくく、電極の導電状態が良好に保たれる。結果として、サルフェーションが抑制され、電池性能の劣化が抑制される。
【0025】
なお、本発明者らは、サイクリックボルタンメトリー法(CV法)により得られる酸化波ピークの立ち上がり付近の電流変化と、負極の電極表面の硫酸鉛の付着量とはある程度相関があることを見出した。希硫酸と添加剤との混合液を電解液としてCV法で評価したときに、酸化波ピークの立ち上がり付近の電流変化が大きいものほど、サルフェーションを抑制し、電池性能の劣化を抑制することができる。
【0026】
また、本発明者らは、5質量%水溶液の粘度が1~30mPa・sであるポリビニルアルコールを含む添加剤を用いることで、CVにより得られる酸化波ピークの立ち上がり付近の電流変化を大きくすることができ、従来の添加剤に比べて電池性能の劣化を抑制できることを見出した。その理由は明らかではないが、5質量%水溶液の粘度が1~30mPa・sであるポリビニルアルコールを含む添加剤を用いることで、ポリビニルアルコールが適度に電極表面にとどまり、サルフェーションの形成を抑制することができる一方で、正極11と負極12の間のイオンのやりとりを妨げないため、電池性能が劣化しにくいと推察される。
【0027】
本実施形態における添加剤に含まれるポリビニルアルコールは、5質量%水溶液の粘度が、1~30mPa・sである。なお、本実施形態において、「ポリビニルアルコールの5質量%水溶液の粘度」とは、株式会社エーアンドデイ製の音叉型振動式粘度計(SV-1A)を用いて、温度が25~30℃の範囲内で5回測定を行い、その値を平均した平均値を意味する。
【0028】
ポリビニルアルコールは、粘度が小さいほど電極表面にとどまるポリビニルアルコールの量が少なくなり、サルフェーションの抑制効果が小さくなる傾向となる。そのため、ポリビニルアルコールの5質量%水溶液の粘度は、5mPa・s以上が好ましく、10mPa・s以上がより好ましく、15mPa・s以上がさらに好ましい。
【0029】
また、ポリビニルアルコールの粘度が大きいほど、正極および負極の電極表面に存在するポリビニルアルコールの量が増え、ポリビニルアルコールにより正極と負極との間のイオンのやりとりが妨げられる傾向となる。そのため、ポリビニルアルコールの5質量%水溶液の粘度は、25mPa・s以下が好ましく、20mPa・s以下がより好ましい。
【0030】
ポリビニルアルコールは、水酸基の割合が少ない(ケン化度が小さい)ほど、疎水的になり、電解液の成分である硫酸水溶液と混ざりにくくなる。そのため、ポリビニルアルコールのケン化度は、70mol%以上が好ましく、80mol%以上がより好ましい。特に、90mol%以上が好ましく、93mol%以上がより好ましく、95mol%以上がさらに好ましい。
【0031】
また、ポリビニルアルコールは、水酸基の割合が多い(ケン化度が高い、酢酸基の割合が少ない)ほど、電極表面の導電性が低くなり、サルフェーションが起こりやすくなり、電解液抵抗が大きくなる傾向にある。そのため、ケン化度は、99.5mol%以下であることが好ましく、99mol%以下がより好ましく、97mol%以下がさらに好ましい。
【0032】
本実施形態における添加剤は、5質量%水溶液の粘度が1~30mPa・sであるポリビニルアルコールを1種含むものでも、2種以上含むものであってもよい。また、本発明の添加剤に含まれるポリビニルアルコールは、市販のポリビニルアルコールを用いてもよい。中でも、日本合成化学社製のゴーセノールC-500、ゴーセノールN-300およびゴーセノールA-300からなる群から選択される1以上であることが好ましく、日本合成化学社製のゴーセノールC-500、ゴーセノールN-300およびゴーセノールA-300からなる群から選択されるいずれかであることが好ましい。
【0033】
本実施形態における添加剤は、消泡剤などのその他の成分を含んでもよい。一方で、その他の成分が鉛蓄電池1の電極表面の導電性に影響を及ぼす場合もあるため、ポリビニルアルコールを主成分とすることが好ましい。本実施形態における添加剤中のポリビニルアルコールの含有量は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、90質量%以上が特に好ましい。また、本実施形態における添加剤は、ポリビニルアルコールからなってもよい。ポリビニルアルコール中に不純物が含まれることもあるので、本実施形態における添加剤中のポリビニルアルコールの含有量は、99質量%以下や97質量%以下、95質量%以下としてもよい。
【0034】
本実施形態における添加剤の形態は液状であっても、固形物であってもよい。例えば、ポリビニルアルコールと水との混合液であるポリビニルアルコール水溶液を添加剤としてもよい。取り扱いのしやすさからは、添加剤は、微粉や顆粒、パウダーなどの固形物であることが好ましい。
【実施例】
【0035】
<周波数に対するサルフェーション抑制効果の確認>
本発明の鉛蓄電池の再生方法におけるパルス周波数1kHz以下でのサルフェーション抑制効果について確認した。周波数に対するそれぞれのパルス波形のS/PbとO/Pbの関係を
図2に示した。
【0036】
図2に示されるように、矩形波(Square wave)については周波数が低いほどS/Pb、O/Pbともに低い値が得られており、立ち上がりの電圧・電流の変化が効いていることが確認できた。三角波(Ramp wave)についてはS/Pb、O/Pbともに周波数15kHz付近を境に山なりの傾向があることが分かり、低い周波数でも高い周波数でも効果は見られることが分かった。
【0037】
サイン波(Sine wave)についてはS/Pbは周波数15kHz付近を境に山なりの傾向、O/Pbについては周波数が低いほど低くなり、矩形波と同じ傾向を示すことが示された。よって、パルス周波数が1kHz以下の低い矩形波やサイン波に、サルフェーション抑制効果があることが確認できた。
【0038】
<実際の鉛蓄電池による試験>
添加剤を電解液に添加し、パルス電流を印加した場合(実施例1)と、添加剤のみを使用した場合(比較例1)とで、以下の条件でサイクル試験を行った。測定は、バッテリーから瞬間的に負荷に電流を流し(図中の放電電圧が急激に変化する部分に対応。)、このときに負荷に流れる電流値をCCA値として記録した。CCA(Cold Cranking Ampere)値は、一般的に車などのエンジン始動性能を表す値とされている。
【0039】
実験サンプル:廃棄バッテリー(ENEOS製VFL-60B19L)
添加剤:日本合成化学社製ゴーセノールC-500(陽イオン活性剤)
パルス条件:交流波形(サイン波)、周波数60Hz
評価指標:CCA値
【0040】
図3は(a)比較例1と(b)実施例1のCCA値を比較した図である。
図3に示すように、(b)実施例1はCCA値360であり、(a)比較例1のCCA値315と比較して約14%高かった。また、
図4は(a)比較例1と(b)実施例1のサイクル試験の比較である。
図4に示すように、(b)実施例1が効果的であった。このように、低い周波数60Hzの交流波と添加剤との組み合わせ試験において、サルフェーション抑制効果があることが示された。
【0041】
また、上記条件において周波数を1kHzとし、添加剤を電解液に添加し、パルス電流を印加した場合(実施例2)と、添加剤のみを使用した場合(比較例2)とで、サイクル試験を行ったところ、実施例2のCCA値は320、比較例2のCCA値は310であった。この結果から、パルス周波数1kHzにおける実施例2の上昇割合は約3%と低めであり、パルス周波数60Hzの方がより効果的であることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、非常用電源(UPS)、家庭用蓄電システム、自動車・バス・バイク用バッテリー等として使用される鉛蓄電池の再生方法および再生鉛蓄電池の製造方法として有用である。
【符号の説明】
【0043】
1 鉛蓄電池
2 パルスジェネレータ
10 電槽
11 正極
12 負極
13 電解液
14 セパレータ
15 プラス端子
16 マイナス端子